説明

パターン欠陥検査装置およびパターン欠陥検査方法

【課題】パターン画像検出部110の特性変動や被検査ウェーハ6の表面特性の個体ばらつきに応じて、欠陥判定のしきい値を自動的に調整する。
【解決手段】画像処理部120は、被検査ウェーハ6表面のある領域の検出画像とその領域と同じパターンを有する他の領域の検出画像との差分画像に基づき、欠陥信号を抽出する欠陥信号抽出部21、前記差分画像の全画素について、その各画素の欠陥信号量を累積して、その頻度分布および分散を算出する欠陥信号累積部23、その算出した分散を、基準の被検査ウェーハ6から得られた基準の頻度分布の分散と比較して、頻度分布のオフセット量を算出するオフセット算出部24、あらかじめ設定された基準の欠陥判定しきい値を前記オフセット量により修正し、その修正した欠陥判定しきい値に基づき、前記欠陥画像についての欠陥信号の欠陥判定を行う欠陥判定部25、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶基板、フォトマスクなど所定のパターンが形成された基板装置に、光または荷電粒子を照射して得られる表面画像を処理することにより、その基板装置のパターン欠陥を検出するパターン欠陥検査装置およびパターン欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パターン欠陥検査装置においては、光学顕微鏡や電子顕微鏡などにより被検査パターンの画像を取得したとき、その取得した被検査パターンの画像を、その同一のパターンとしてあらかじめ取得しておいた参照画像とを比較し、両者の画像信号の差分信号を求め、その差分信号が大きい部位には欠陥があると判定する。そのとき、その差分信号には、パターンの形成誤差や画像取得時の検出誤差に伴うノイズが含まれる。
【0003】
従って、この判定においては、パターンの相違(つまり、パターン欠陥)によって生じる差分信号とノイズとをいかにして分離すればよいか、換言すれば、欠陥判定のしきい値をどのようにして決定すればよいかが問題となる。すなわち、欠陥判定のしきい値を大きめに設定すると、実際に存在するパターン欠陥(以下、実の欠陥という)を見逃す可能性があり、欠陥判定のしきい値を小さめに設定すると、ノイズによって生じる実際には存在しない虚の欠陥を検出することになる。
【0004】
パターン欠陥検査装置において欠陥判定のしきい値を決定する方法は、従来すでに、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、所定の事前検査を行い、その事前検査の中で本番検査における欠陥判定のしきい値を決定している。すなわち、パターン欠陥検査装置は、事前検査として、被検査パターンの取得画像と参照画像との差分画像について、あらかじめ設定した仮のしきい値により欠陥判定を行い、そのとき欠陥と判定された画素の差分画像信号量について頻度分布(ヒストグラム)を生成し、その頻度分布に基づき手動または自動により本番検査のための欠陥判定のしきい値を定める。
【0005】
このとき、その事前検査においては、実の欠陥によって生じる差分画像信号を見逃さないようにするために、仮のしきい値を小さめに設定している。その場合、その差分画像信号量のヒストグラムには、通常、2つの山が形成される。すなわち、差分画像信号量が大きい領域に、実の欠陥によるヒストグラムの山が形成され、また、差分画像信号量が小さい領域に、ノイズによるヒストグラムの山が形成される。
【0006】
従って、パターン欠陥検査の作業者は、パターン欠陥検査装置が表示装置などに表示する差分画像信号量のヒストグラムにより、そのヒストグラムに形成される2つの山の間の谷を認識することができ、その谷となる差分画素信号量を目安に、適宜、欠陥判定のしきい値を定めることができる。そこで、パターン欠陥検査装置は、パターン欠陥検査の作業者が定めるしきい値を入力することにより、本番検査における欠陥判定のしきい値を設定することができる。
【0007】
さらに、特許文献1においては、パターン欠陥検査装置は、前記のヒストグラムの2つの山の間に生じる谷を自動的に認識して、そのとき認識される谷における差分画素信号量に基づき、適宜、欠陥判定のしきい値を定めることができるとしている。
【特許文献1】特開2003−6614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、パターン欠陥検査装置の主要な適用対象である半導体ウェーハにおいては、その半導体ウェーハ上に形成されるパターンの微細化が今なお進行しており、その最小線幅は、今や、60nm、さらには、45nmを割ろうとしている。被検査パターンが微細化すると、パターン欠陥検査装置では、その画像検出装置である光学顕微鏡や電子顕微鏡などから出力される画像信号のコントラストが低下することになる。すなわち、画像信号のS/N比(Signal to Noise Ratio)が低下し、画像信号はノイズの影響を受けやすくなる。
【0009】
その結果、特許文献1に開示されたパターン欠陥検査装置においては、生成される差分画像信号量の頻度分布に形成される2つの山が接近することになるので、その谷を識別するのが困難になってくる。従って、その場合には、パターン欠陥検査の作業者がその頻度分布を見て、その谷、つまり、欠陥判定のしきい値を、適宜、定めることは可能であっても、自動で決定しようとすると、その決定されたしきい値は、ばらつきが大きく、充分な精度を得るのが困難になる。
【0010】
また、画像検出装置から出力される画像信号のコントラストが小さくなった場合には、画像検出装置である光学顕微鏡や電子顕微鏡自体の画像検出特性の変動や、検査対象である半導体ウェーハなどの個体ばらつきの影響を、より大きく受けることになる。従って、あるとき、ある検査対象の個体によって定めた欠陥判定のしきい値を、別のとき、別の検査対象の個体に適用することが適切とは、必ずしも言えなくなってしまう。欠陥判定のしきい値は、画像検出装置の特性変動や検査対象の個体に応じて、微調整する必要があると考えられる。しかしながら、特許文献1に開示されたパターン欠陥検査装置には、画像検出装置の特性変動や検査対象の表面特性の個体ばらつきに応じて欠陥判定のしきい値を、自動的に微調整する方法や手段についての記載はされていない。
【0011】
以上のような従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、画像検出装置の特性変動や検査対象の個体ばらつきに応じて、欠陥判定のしきい値が自動的に調整されるパターン欠陥検査装置およびパターン欠陥検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明のパターン欠陥検査装置は、基板装置の表面の一部の領域のパターン画像を検出する画像検出部と、そのパターン画像検出部によって検出されたパターン画像を処理する画像処理部と、を備え、その画像処理部が、前記パターン画像検出部によって検出された前記基板装置の表面の第1の領域の検出画像と、前記第1の領域と同じパターンを有する第2の領域の検出画像と、により得られる差分画像に基づき、欠陥信号を抽出する欠陥信号抽出部と、前記差分画像の全画素について、その各画素に対応する前記欠陥信号の欠陥信号量を累積して、前記欠陥信号量に係る統計量を算出する欠陥信号累積部と、前記算出された統計量を、前記基板装置の基準のパターン画像について、別途、あらかじめ算出された基準統計量と比較して、前記統計量の前記基準統計量に対するオフセット量を算出するオフセット算出部と、あらかじめ設定された基準の欠陥判定しきい値を前記オフセット量により修正し、その修正した欠陥判定しきい値に基づき、前記欠陥画像についての欠陥信号の欠陥判定を行う欠陥判定部と、を含んで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パターン欠陥検査装置において、画像検出装置の特性変動や検査対象の表面特性の個体ばらつきに応じて、欠陥判定のしきい値が自動的に調整されるパターン欠陥検査装置およびパターン欠陥検査方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るパターン欠陥検査装置の構成の例を示した図である。図1に示すように、パターン欠陥検査装置100は、パターン画像検出部110と画像信号処理部120と主制御部130とコンソール部140とを含んで構成される。
【0016】
図1において、パターン画像検出部110は、検査対象となる半導体ウェーハなどの基板装置の表面に形成されたパターンの画像を取得する装置であり、ここでは、走査型電子顕微鏡で構成されているものとしている。ただし、パターン画像検出部110は、走査型電子顕微鏡に代えて、例えば、光学顕微鏡であってもよい。また、検査対象も半導体ウェーハに限定されず、フォトマスクや液晶基板などであってもよい。
【0017】
ここで、走査型電子顕微鏡で構成されたパターン画像検出部110は、電子源1と、電子源1から出射される電子線2を偏向する偏向器3と、電子線2を絞る対物レンズ4と、被検査ウェーハ6の近傍の電界強度を制御する帯電制御電極5と、被検査ウェーハ6の高さ位置を計測するZセンサ8と、被検査ウェーハ6を載置する試料台9と、被検査ウェーハ6を載置した試料台9をXY方向に移動させるXYステージ7と、電子線2を照射した被検査ウェーハ6の表面から発生する2次電子または反射電子10を反射板11上に収束させる収束光学系12と、その収束させた2次電子または反射電子10を受けて2次電子を発生させる反射板11と、その反射板11から発生する2次電子を検出し、その検出量を電気信号に変換するセンサ13と、センサ13から出力される信号をディジタル信号に変換するAD変換器14と、被検査ウェーハ6の光学像を撮像する光学顕微鏡15と、被検査ウェーハ6と同じ高さに設定されて電子光学条件の詳細調整のために用いられる標準試料片16と、を含んで構成される。
【0018】
なお、パターン画像検出部110を構成する走査型電子顕微鏡は、この他にも被検査ウェーハ6から発生する2次電子または反射電子10の軌道を曲げるExB(EクロスB)、被検査ウェーハ6を保管するウェーハカセット、ウェーハカセットに収納された被検査ウェーハ6をロード・アンロードするローダなどを含んでいるが、図が煩雑になるため、ここでは図示を省略している。
【0019】
また、図1を参照すると、画像信号処理部120は、欠陥信号抽出部21と、欠陥候補抽出部22と、欠陥信号累積部23と、オフセット算出部24と、欠陥判定部25と、を含んで構成され、パターン画像検出部110から供給される検査対象の被検査ウェーハ6のパターン画像を取得し、被検査ウェーハ6の表面に形成された回路パターンなどの欠陥を抽出する。
【0020】
すなわち、画像信号処理部120において、欠陥信号抽出部21は、AD変換器14から出力されるディジタル信号、つまり、パターン画像検出部110から出力される被検査ウェーハ6のパターン画像の信号を処理して、被検査ウェーハ6のパターン欠陥の存在を表す欠陥信号を抽出する。以下、本明細書では、単に「欠陥」と記載したときは、その「欠陥」は、「パターン欠陥」を意味するものとする。また、欠陥信号の定義は、後記するところによる。
【0021】
また、欠陥候補抽出部22は、欠陥信号抽出部21により抽出される欠陥信号をあらかじめ設定した仮のしきい値と比較することにより、パターン欠陥の候補を抽出する。一方で、欠陥信号累積部23は、被検査ウェーハ6の所定の部分のパターン画像の全画素について、欠陥信号抽出部21により抽出される欠陥信号の値(以下、欠陥信号量という)ごとの頻度を累積し、欠陥信号量の頻度分布(ヒストグラム)を生成する。
【0022】
オフセット算出部24は、欠陥信号累積部23により生成された欠陥信号量の頻度分布を、事前検査などによってあらかじめ求められた基準の頻度分布と比較することにより、そのとき取得された欠陥信号量の基準の頻度分布からのずれ、つまり、オフセットを算出する。
【0023】
そこで、欠陥判定部25は、オフセット算出部24により算出されたオフセットに基づき、事前検査などによってあらかじめ求められた基準の欠陥判定しきい値を修正する。そして、欠陥候補抽出部22によって抽出されたパターン欠陥の候補について、その修正した欠陥判定のしきい値に基づき欠陥判定を行い、実のパターン欠陥を抽出する。
【0024】
以上に示した構成および機能を有する画像信号処理部120は、一般的には、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを備えたコンピュータの処理によって実現することができる。その場合、その処理を実行するコンピュータは、1つのコンピュータであってもよく、また、処理の高速化を図るために、複数のコンピュータ、例えば、多数のマイクロプロセッサを用いた並列処理プロセッサであってもよい。さらには、その並列処理プロセッサに相当するものを、マイクロプロセッサではなく、専用の画像処理回路を作り込んだFPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いて構成してもよい。
【0025】
さらに、図1を参照すると、パターン画像検出部110および画像信号処理部120には、主制御部130が接続されている。主制御部130は、コンソール部140からの検査オペレータの入力操作に応じて、パターン欠陥検査の処理を制御する。すなわち、主制御部130は、そのパターン欠陥検査処理の一部として、パターン画像検出部110による画像検出に際しては、走査型電子顕微鏡の種々の動作制御を行うとともに、画像信号処理部120によって抽出された欠陥情報を画像信号処理部120から受け取り、適宜、コンソール部140の表示装置に表示する。
【0026】
ここで、主制御部130は、CPUとメモリとを備えたコンピュータによって構成される。また、コンソール部140は、LCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示装置と、キーボード、マウス、専用のスイッチなどからなる入力装置と、を含んで構成される。
【0027】
続いて、図2を参照して、本発明の実施形態に係るパターン欠陥検査装置100の画像信号処理部120において実行される欠陥判定の処理について、さらに詳しく説明する。ここで、図2は、画像信号処理部120において実行される欠陥判定の処理の例をデータフローにより示した図である。
【0028】
図2において、検出画像211は、パターン画像検出部110によって検出された被検査ウェーハ6のパターン画像である。また、参照画像212は、検出画像211にパターン欠陥があるか否かを判定するための基準となるパターン画像である。一般に、被検査ウェーハ6には、後記するように、同じパターンが複数形成されているので、検出画像211と同じパターンを有する他の部分のパターン画像を、その参照画像212として用いることが多い。すなわち、参照画像212は、パターン画像検出部110によって以前に検出された被検査ウェーハ6の他の部分のパターン画像である。
【0029】
そこで、画像信号処理部120は、パターン画像検出部110から入力される画像信号に応じた値(以下、画像信号量という)を検出画像211として記憶する画像メモリ(図示省略)を備えている。すなわち、欠陥信号抽出部21は、パターン画像検出部110から検出された画像信号が入力されると、その入力された画像信号の画像信号量を検出画像211として画像メモリに格納する。
【0030】
欠陥信号抽出部21は、そのとき、パターン画像検出部110から入力される画像信号の画像信号量と、以前にその画像メモリに検出画像211として格納済みの参照画像212から得られる画像信号量と、の差分量を算出することによって、欠陥信号量を抽出し、その欠陥信号量を欠陥画像213として前記の画像メモリに格納する。
【0031】
すなわち、欠陥信号抽出部21は、検出画像211と参照画像212との差分量により欠陥画像213を生成する。従って、欠陥画像213は、検出画像211と参照画像212との差分画像であり、欠陥信号は、その欠陥画像213を生成するための信号として定義することができる。なお、ここでいう差分量は、単純な差分量だけではなく、その差分量に依存する他の量、例えば、差分量の2乗などであってもよい。
【0032】
次に、欠陥候補抽出部22は、欠陥画像213の各画素に対応する欠陥信号量をあらかじめ定めた仮のしきい値と比較し、欠陥信号量がその仮のしきい値よりも大きかったときには、その画素の部分にはパターン欠陥の可能性があるとして、その画素の座標と欠陥信号量とを欠陥情報220に登録する。
【0033】
一方、欠陥信号累積部23は、欠陥画像213の全画素の欠陥信号量を対象に、その欠陥信号量ごとの頻度を累積し、欠陥信号量頻度分布231を生成する。なお、このとき、事前検査がすでに済んでいるものとする。そして、その事前検査では、パターン画像検出部110は、画像信号の検出特性が最適になるような基準状態に調整され、その基準状態での欠陥判定しきい値が決定され、さらに、その基準状態での基準欠陥信号量頻度分布230が生成されているものとする。
【0034】
続いて、オフセット算出部24は、欠陥信号量頻度分布231と基準欠陥信号量頻度分布230とに基づきオフセットδを算出する。オフセットδの算出法の詳細については後記するが、オフセットδは、そのときの欠陥画像213から得られた欠陥信号量の大きさの傾向を、基準状態での欠陥信号量の大きさの傾向と比較し、その欠陥信号量の大きさのずれを表した量である。
【0035】
例えば、図2において、欠陥信号量頻度分布231と基準欠陥信号量頻度分布230とを比較して見ると、欠陥信号量頻度分布231のほうが基準欠陥信号量頻度分布230よりも欠陥信号量が大きめに出ていることが分かる。その欠陥信号量が大きめに出た分の量をオフセットδとする。
【0036】
従って、欠陥判定部25は、そのとき取得された欠陥画像213について欠陥判定をする場合、つまり、欠陥情報220に登録された欠陥候補の欠陥信号量について欠陥判定をする場合には、その欠陥判定のしきい値を、事前検査などによりあらかじめ定めた基準の欠陥判定のしきい値よりもオフセットδだけ大きくして、欠陥判定を行う。あるいは、図2に示すように、欠陥情報220の欠陥信号量からオフセットδを差し引いて修正欠陥信号量とし、修正欠陥信号量について、基準の欠陥判定のしきい値により欠陥判定を行ってもよい。
【0037】
以上のように、オフセット算出部24では、オフセットδを算出し、欠陥判定部25では、基準の欠陥判定しきい値をオフセットδにより修正した欠陥判定しきい値を用いて欠陥判定を行うことによって、パターン画像検出部110の検出特性の状態や、検査対象である被検査ウェーハ6の表面状態などに依存する欠陥信号量のばらつきを補正することが可能になる。
【0038】
ここで、図2の説明に関連して、被検査ウェーハ6における検出画像211と参照画像212との関係について補足しておく。
【0039】
一般に、半導体の被検査ウェーハ6には、通常、同じ集積回路などのパターンが多数繰り返して形成されている。このとき、その繰り返しの単位は、同じ大きさの矩形を呈し、互いに切り離されると、ダイ(die)と呼ばれる。そして、その1つのダイには、通常、1単位の集積回路などが形成されている。
【0040】
従って、被検査ウェーハ6のある1つのダイの、ある領域のパターン画像を取得して検出画像211とした場合には、前記の「ある1つダイ」とは異なるダイ(通常は、前記の「ある1つダイ」に隣接するダイ)の、前記の「ある領域」と同じ領域について、以前に取得したパターン画像を参照画像212とする。これらのパターン画像は、パターン欠陥がなければ同じになる筈であるので、その差分画像、つまり、欠陥画像213においてその差分量が大きい箇所をパターン欠陥として抽出することができる。このように2つのダイの同じ部分を比較してパターン欠陥を抽出する方法は、ダイ−ダイ比較と呼ばれる。
【0041】
また、被検査ウェーハ6に形成される集積回路が、例えば、メモリ集積回路であったような場合には、同じパターンを有するメモリセルが1つのダイの中にアレイ状に多数配置されている。このような場合には、1つのダイから取得したあるメモリセルの画像(検出画像211に対応)と、そのメモリセルに隣接するメモリセルの画像(参照画像212に対応)とを比較することによって、メモリセルのパターン欠陥を抽出することができる。このように1つのダイの中で、2つのメモリセルなどを比較してパターン欠陥を抽出する方法は、アレイ比較と呼ばれる。
【0042】
なお、ダイ−ダイ比較にしても、アレイ比較にしても、2つの部分の画像比較では、どちらのダイまたはメモリセルにパターン欠陥があるかを判定することができない。そこで、実際にパターン欠陥のあるダイまたはメモリセルを判定するときには、同じパターンを有する少なくとも3つ以上の部分の画像比較を行い、その多数決によって欠陥のあるダイまたはメモリセルを定める。なお、3つの部分(例えば、部分A,部分B,部分C)の画像比較は、2つの部分の画像比較を2回(すなわち、部分A−部分Bの比較、および、部分B−部分Cの比較)行うことによって実現される。
【0043】
続いて、以上に説明したパターン欠陥検査装置100を用い、半導体ウェーハを検査対象としたパターン欠陥検査の手順を、図3および図4を参照して詳しく説明する。なお、本実施形態では、パターン欠陥検査は、レシピを作成する事前検査と、そのレシピに従って被検査ウェーハ6のパターン欠陥を検出する欠陥検査と、により構成される。ここで、図3は、レシピを作成する事前検査のフローの例を示した図、図4は、欠陥検査のフローの例を示した図である。
【0044】
図3に示すように、事前検査では、検査オペレータがコンソール部140から所定のコマンドを入力すると、主制御部130は、補助記憶装置のハードディスク(図示せず)などから標準レシピを読み込み、ウェーハローダ(図示せず)に指示して、被検査ウェーハ6をウェーハカセット(図示せず)から取り出し、試料台9にロードする(ステップS01)。
【0045】
次に、主制御部130は、標準レシピに含まれる情報や検査オペレータがコンソール部140から入力する情報などに基づき、電子源1、偏向器3、対物レンズ4、帯電制御電極5、反射板11、収束光学系12、センサ13、AD変換器14などの光学系の動作条件を設定する(ステップS02)。このとき、主制御部130は、その設定した光学系の動作条件で標準試料片16のパターン画像を検出し、そのパターン画像をコンソール部140の表示装置などに表示するとともに、そのパターン画像を見た検査オペレータが、適宜、入力する情報に基づき、前記設定した光学系の動作条件を補正する。
【0046】
次に、主制御部130は、検査オペレータがコンソール部140から入力する情報などに基づき、被検査ウェーハ6のパターンレイアウトを設定し、その一部のパターンと座標とを登録し、アライメント条件を設定する(ステップS03)。そして、主制御部130は、検査オペレータがコンソール部140から入力する情報などに基づき、メモリセル領域、ダイ領域など検査領域に係る情報を設定し(ステップS04)、さらに、キャリブレーションに適切な画像を取得する座標点を選択し、初期ゲイン、キャリブレーション座標点などのキャリブレーション条件を設定する(ステップS05)。
【0047】
次に、主制御部130は、コンソール部140に表示した検査条件から、検査オペレータが検査領域、画素寸法、加算回数などの検査条件を選択すると、その選択された条件に基づき、検査条件を設定し(ステップS06)、その検査条件に従って、試し検査を実施し(ステップS07)、その検査結果をコンソール部140の表示装置に表示する(ステップS08)。
【0048】
ここで、図3の説明を中断し、図1、図2および図5〜図7を参照して、試し検査時におけるパターン画像検出部110、画像信号処理部120、主制御部130の動作の詳細、並びに、コンソール部140の表示装置への表示例について説明する。
【0049】
パターン画像検出部110(図1参照)は、この試し検査において、次のように動作して、被検査ウェーハ6の所定の検査領域のパターン画像を検出する。すなわち、主制御部130は、XYステージ7を、例えば、Y方向に移動させ、また、その移動に同期して偏向器3を、例えば、X方向に走査し、電子線源1から出射された電子線2を、対物レンズ4によりそのビーム径を絞って、被検査ウェーハ6上に照射する。そうすると、被検査ウェーハ6の電子線2が照射された部分から、2次電子または反射電子10が放出されるので、それを収束光学系12で集めて、反射板11を介してセンサ13で検出する。このとき、Zセンサ8で検出した被検査ウェーハ6の高さに基づき、対物レンズ4の励磁電流を制御することによって電子線2の焦点位置を補正する。
【0050】
ここで、センサ13で検出される量は、被検査ウェーハ6の表面状態によって定まる量であり、従って、被検査ウェーハ6の表面に形成されたパターンの形状などが表されている量である。そこで、パターン画像検出部110は、センサ13で検出した量(信号)をAD変換器14によりディジタル量に変換し、検出パターン画像信号として、画像信号処理部120へ出力する。
【0051】
それに対し、画像信号処理部120は、パターン画像検出部110から出力された検出パターン画像信号を入力すると、その入力したパターン画像信号を検出画像211(図2参照)として画像メモリに格納する。以下、図2で説明したように、欠陥信号抽出部21は、検出画像211と以前に取得した参照画像212とを比較し、その差分量により欠陥信号を抽出し、欠陥画像213を得る。
【0052】
図5は、欠陥画像およびその欠陥画像に対応した欠陥信号波形の例を示した図である。ここで、図5(a)の欠陥画像30には、欠陥信号量の大きい欠陥領域31と、欠陥信号量が通常のノイズより大きいが正常と判断される領域32と、が図示されている。また、図5(b)には、欠陥画像30上のX1〜X2に沿った欠陥信号波形33と、標準レシピで設定された欠陥判定しきい値34とが図示されている。なお、標準レシピで設定された欠陥判定しきい値34は、実の欠陥を判定するしきい値ではなく、とりあえず定められた仮の欠陥判定しきい値である。
【0053】
欠陥候補抽出部22では、仮の欠陥判定しきい値である欠陥判定しきい値34以上の領域を欠陥領域31として抽出し、抽出した領域の位置、欠陥信号量、投影長、面積などの欠陥特徴量を取得する。そして、その欠陥特徴量があらかじめ定めた条件に照らして実の欠陥であるか否かを判定し、実の欠陥であると判定されたときには、その欠陥特徴量などを欠陥候補情報としてメモリに格納する。
【0054】
一方、欠陥信号累積部23では、欠陥画像30の全画素について、各画素の欠陥信号量の頻度を累積し、欠陥信号量についての頻度分布(ヒストグラム)を生成する。図6は、欠陥信号累積部23によって生成された欠陥信号量頻度分布の例を示した図である。
【0055】
図6に示すように、欠陥信号累積部23によって生成された欠陥信号量頻度分布は、欠陥領域のみならず検査対象領域の全画素の欠陥信号量についての頻度分布がとられているので、そのほとんどが欠陥判定しきい値34以下であるという特徴を有している。従って、このようにして得られた欠陥信号量頻度分布は、欠陥領域における欠陥信号量頻度を表すというより、ノイズの信号量頻度を表しているといえる。
【0056】
ステップS04で設定された検査領域に対する所定の検査が終了すると、欠陥判定部25は、欠陥候補抽出部22で抽出した欠陥候補のうち、その位置が近接した欠陥候補をマージ処理し、また、そのマージした欠陥候補について投影長など欠陥の特徴量を求める。そして、そのマージした欠陥候補の位置、欠陥信号量、特徴量などの情報を主制御部130に通知する。また、必要に応じて、欠陥信号累積部23によって生成された欠陥信号量頻度分布を主制御部130に通知する。なお、この場合は、試し検査(ステップS07)なので、オフセット算出部24は機能しない。
【0057】
次に、主制御部130は、欠陥判定部25から通知された欠陥候補情報をコンソール部140の表示装置にウェーハのマップ形式などで表示する。図7は、被検査ウェーハ6の欠陥候補情報を表示した表示画面の例を示した図である。なお、図7の例の表示画面は、後記する実の欠陥についての欠陥情報を表示する場合にも利用するので、以下の図7の説明では、欠陥候補も、単に、欠陥という。
【0058】
図7において、表示画面の左半分には、被検査ウェーハ6の欠陥マップ50が表示される。そして、その欠陥マップ50には、前記の特徴量などにより、適宜、分類された欠陥52の位置が△印、×印などで表示される。なお、被検査ウェーハ6の中に描かれた複数の矩形は、ダイ61の形状を表し、網掛け表示した部分は、そのとき行われた試し検査における検査領域51を表している。
【0059】
一方、図7において、表示画面の右半分は、拡大画像表示部53であり、その拡大画像表示部53には、検査領域の51の一部分を拡大表示した検出画像211(図2参照)などが表示される。このとき、拡大画像表示部53における拡大表示モードには各種の表示モードがあるものとし、図7の例では、3つの部分の拡大した検出画像54(図2では、211)と、1つの欠陥画像55(図2では、213)と、が表示されている。
【0060】
拡大画像表示部53の表示は、検査オペレータがマウスなどの位置入力装置を用いて、欠陥マップ50に表示された欠陥の1つを選択することによって行われる。このとき、併せて、その欠陥についての投影長などの特徴量56が表示される。また、拡大画像表示部53における検出画像54の表示は、検査オペレータの入力指示により、さらに拡大表示することができ、検査オペレータは、その拡大された欠陥の画像を観察し、必要に応じて、その欠陥の分類を修正してもよい。
【0061】
なお、図7の表示画面において、欠陥マップ50および拡大画像表示部53の上部および下部には、検査オペレータが主制御部130に各種の指示情報を入力するためのボタン(網掛け部分)が用意されている。図7の例では、「事前検査」および「レシピ作成中」ボタンが選択された状態にあり、事前検査でレシピ作成中であることが示されている。
【0062】
さらに、図7の表示画面の上部および下部に表示されたボタンの1つを選択することによって、その表示画面に、図6に示した欠陥信号量頻度分布を表示させることができる。また、そのボタンの他の1つを選択することによって、試し検査(ステップS07)で欠陥候補と判定された部分に限っての欠陥信号量頻度分布を表示させることができる。
【0063】
ここで、図8は、欠陥候補と判定された部分の画素についての欠陥信号量頻度分布の例を示した図である。試し検査(ステップS07)では、欠陥判定しきい値34をしきい値として欠陥候補を抽出しているので、図8に示すように、欠陥信号量が欠陥判定しきい値34以下の部分については、その頻度はゼロとなる。
【0064】
検査オペレータは、図6または図8の欠陥信号量の分布を見て、欠陥判定しきい値34より大きい表示しきい値35を設定することができる。表示しきい値35を設定すると、その表示しきい値35を欠陥判定しきい値34に設定し直したものとして、被検査ウェーハ6の欠陥情報を図7の表示画面に表示させることができる。従って、表示しきい値35を適切に設定すると、図7の表示画面には実の欠陥が選択されて表示されることになる。
なお、ここで選択された欠陥が実の欠陥であるか否か、または、表示しきい値35が適切であるか否かは、最終的には、検査オペレータの経験などに頼らざるを得ない。
【0065】
再度、図3の事前検査のフローの説明に戻る。
【0066】
以上のようにして、検査オペレータは、検査結果や検査条件を確認し、それが満足できるものであったときには、例えば、コンソール部140の表示装置に表示されたボタンなどをマウスなどで選択することによって、そのときの検査条件を確定することができる。そこで、主制御部130は、コンソール部140の入力装置から検査条件を確定しない旨の入力を受け付けたときには(ステップS09でNo)、ステップS06戻り、検査条件を設定し直して、再度、試し検査をやり直す。一方、主制御部130は、コンソール部140の入力装置から検査条件を確定する旨の入力を受け付けたときには(ステップS09でYes)、そのとき欠陥信号累積部23により生成していた欠陥信号頻度分布を、後続する欠陥検査で用いる基準欠陥信号頻度分布として確定する(ステップS10)。なお、そのとき併せて表示しきい値が確定され、その表示しきい値は、後続する欠陥検査では、基準欠陥判定しきい値として用いられる。
【0067】
次に、主制御部130は、以上の事前検査のフローおよび各種設定条件に基づき、レシピを作成し、その作成したレシピをハードディスクなどの補助記憶装置に保存し、被検査ウェーハ6をアンロードして(ステップS11)、事前検査の処理を終了する。
【0068】
続いて、図4を参照して、検査対象の被検査ウェーハ6のパターン欠陥を検出する欠陥検査のフローについて説明する。
【0069】
検査オペレータがコンソール部140から被検査ウェーハ6の品種や品番などを指定して所定のコマンドを入力すると、主制御部130は、補助記憶装置のハードディスクなどからその被検査ウェーハ6に該当するレシピを読み込む(ステップS21)。そして、ウェーハローダに指示して、被検査ウェーハ6をウェーハカセットから取り出し、試料台9にロードする(ステップS22)。
【0070】
次に、主制御部130は、前記読み込んだレシピに基づき、電子源1、偏向器3、対物レンズ4、帯電制御電極5、反射板11、収束光学系12、センサ13、AD変換器14などの光学系の動作条件を設定する(ステップS23)。このとき、主制御部130は、その設定した光学系の動作条件で標準試料片16のパターン画像を検出し、そのパターン画像をコンソール部140の表示装置などに表示するとともに、そのパターン画像を見た検査オペレータが、適宜、入力する情報に基づき、前記設定した光学系の動作条件を補正する。
【0071】
次に、主制御部130は、レシピによって指示された条件でアライメントを行い(ステップS24)、キャリブレーション用の画像を取得し、光量不足や光量過多などの発生しない適切な光量になるようにセンサ13のゲインなどの画像取得条件を設定するなどのキャリブレーションを行う(ステップS25)。
【0072】
次に、主制御部130は、レシピによって指示された検査条件に従って、同じく指示された検査領域のパターン画像を検出し、その検出したパターン画像について欠陥判定を行う(ステップS26)。なお、検査領域のパターン画像の検出に際してのパターン画像検出部110の動作は、前記の試し検査のときの動作と同じである。また、欠陥判定を行うに際しての画像信号処理部120における欠陥信号抽出部21、欠陥候補抽出部22、欠陥信号累積部23の動作も、前記の試し検査のときの動作と同じである。従って、ステップS26における欠陥判定しきい値は、欠陥候補を抽出するための仮の欠陥判定しきい値である。
【0073】
よって、ステップS26が終了したときは、欠陥候補が抽出された時点であり、図2の欠陥情報220として欠陥の座標値および欠陥信号量が登録されたところである。また、一方では、欠陥信号累積部23により検査領域の全画素の欠陥信号量頻度分布231が取得された状態にある。そこで、オフセット算出部24は、その取得された欠陥信号量頻度分布231と事前検査により確定させた基準欠陥信号量頻度分布230とに基づき、オフセットδを計算する(ステップS27)。
【0074】
次に、欠陥判定部25は、レシピで指定した基準欠陥判定しきい値(事前検査において表示しきい値として確定した欠陥判定しきい値)にオフセットδを加算した値を修正しきい値とし、その修正しきい値を用いて欠陥情報220に登録された欠陥候補について欠陥判定する(ステップS28)。その判定により欠陥と判定されたものは、実の欠陥であると判断され、その実の欠陥についての欠陥情報を主制御部130へ送付する。
【0075】
主制御部130は、その実の欠陥についての欠陥情報を含む検査結果を、補助記憶装置のハードディスクなどに保存する(ステップS29)。そして、主制御部130は、被検査ウェーハ6をアンロードし、図4の欠陥検査を完了する(ステップS30)。
【0076】
図9は、オフセット算出部24におけるオフセットの例を説明するための図である。図9に示すように、オフセットδは、欠陥検査のステップ27で取得された欠陥信号量頻度分布72の基準欠陥信号量頻度分布71からの「ずれ」として捉えられ、その「ずれ」の量をオフセットδとする。
【0077】
このとき、オフセットδは、種々の方法により求めることができる。例えば、基準欠陥信号量頻度分布71および欠陥信号量頻度分布72を、それぞれ平均値が0(ゼロ)の正規分布の正側の分布に近似するものとし、その負側も正側と同様の分布(正側の分布を反転したもの)であるとする。そして、それぞれの分布の分散を求め、その分散の差をオフセットδとする。すなわち、 δ=σ−σ とする。ここで、σは、欠陥信号量頻度分布72の分散、σは、基準欠陥信号量頻度分布71の分散である。なお、オフセットδは、分散の差に限定する必要はなく、分散の差に依存する他の量であってもよい。
【0078】
あるいは、基準欠陥信号量頻度分布71および欠陥信号量頻度分布72のそれぞれの欠陥信号量平均値をaおよびaとしたとき、オフセットδは、その平均値の差、すなわち、 δ=a−a であってもよく、または、その平均値の差に依存する他の量であってもよい。
【0079】
以上のように、本実施形態においては、事前検査で基準欠陥判定しきい値と基準欠陥信号量頻度分布71とを適切に定めておき、実のパターン欠陥を検出する欠陥検査では、検査対象の検出画像についての欠陥信号量頻度分布72を取得し、その欠陥信号量頻度分布72の基準欠陥信号量頻度分布71からのずれの量をオフセットδとして求め、基準欠陥判定しきい値をオフセットδにより修正し、さらに、その修正した欠陥判定しきい値に基づき、検査対象の検出画像について欠陥判定を行う。
【0080】
従って、検査対象の検出画像の欠陥信号量がパターン画像検出部110の時間的な特性変動や検査対象個体の表面特性のばらつきなどによって変動しても、欠陥判定のしきい値がそれに追従するように自動的に調整される。従って、本実施形態のパターン欠陥検査装置は、パターン画像検出部110の時間的な特性変動や検査対象個体の表面特性のばらつきに依存することなく、検査対象のパターン欠陥検査を安定的に行うことができるようになる。
【0081】
なお、以上に説明した実施形態では、欠陥信号累積部23は、欠陥信号量の累積を1次元で行っているが、それを2次元に変更することも可能である。例えば、図2において、検出画像211および欠陥画像213の各画素位置を(x,y)で表し、検出画像211の各画素位置における検出信号量をF(x,y)とし、検出画像211の各画素位置における欠陥信号量をD(x,y)とする。このとき、欠陥信号累積部23は、検出信号量Fごとに欠陥信号量Dについての頻度を累積し、その頻度分布を生成する。すなわち、欠陥信号量Dの頻度分布は、検出信号量Fの大きさ、つまり、検出画像信号の明るさごとに生成される。
【0082】
このような実施形態の変更例においては、欠陥判定のしきい値は、検出画像信号の明るさごとに設定され、さらに、そのオフセットδもその明るさごとに設定される。従って、ショットノイズなど、検出信号量に依存する成分のノイズの分別が容易になり、欠陥判定の精度向上を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係るパターン欠陥検査装置の構成の例を示した図。
【図2】画像信号処理部において実行される欠陥判定の処理の例をデータフローにより示した図。
【図3】パターン欠陥検査装置においてレシピを作成する事前検査のフローの例を示した図。
【図4】パターン欠陥検査装置によるパターン欠陥検査のフローの例を示した図。
【図5】欠陥画像およびその欠陥画像に対応した欠陥信号波形の例を示した図。
【図6】欠陥信号累積部によって生成された欠陥信号量頻度分布の例を示した図。
【図7】被検査ウェーハの欠陥候補情報を表示した表示画面の例を示した図。
【図8】欠陥候補と判定された部分の画素についての欠陥信号量頻度分布の例を示した図。
【図9】オフセット算出部におけるオフセットの例を説明するための図。
【符号の説明】
【0084】
1 電子源
2 電子線
3 偏向器
4 対物レンズ
5 帯電制御電極
6 被検査ウェーハ
7 XYステージ
8 Zセンサ
9 試料台
10 反射電子
11 反射板
12 収束光学系
13 センサ
14 AD変換器
15 光学顕微鏡
16 標準試料片
21 欠陥信号抽出部
22 欠陥候補抽出部
23 欠陥信号累積部
24 オフセット算出部
25 欠陥判定部
100 パターン欠陥検査装置
110 パターン画像検出部
120 画像信号処理部
130 主制御部
140 コンソール部
211 検出画像
212 参照画像
213 欠陥画像
220 欠陥情報
230 基準欠陥信号量頻度分布
231 欠陥信号量頻度分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面に同形のパターンが複数個形成された基板装置のパターン欠陥を検出するパターン欠陥検査装置であって、
前記基板装置の表面の一部の領域のパターン画像を検出する画像検出部と、
前記パターン画像検出部によって検出されたパターン画像を処理する画像処理部と、
を備え、
前記画像処理部が、
前記パターン画像検出部によって検出された前記基板装置の表面の第1の領域の検出画像と、前記第1の領域と同じパターンを有する第2の領域の検出画像と、により得られる差分画像に基づき、欠陥信号を抽出する欠陥信号抽出部と、
前記差分画像の全画素について、その各画素に対応する前記欠陥信号の欠陥信号量を累積して、前記欠陥信号量に係る統計量を算出する欠陥信号累積部と、
前記算出された統計量を、前記基板装置の基準のパターン画像について、別途、算出された基準統計量と比較して、前記統計量の前記基準統計量に対するオフセット量を算出するオフセット算出部と、
あらかじめ設定された基準の欠陥判定しきい値を前記オフセット量により修正し、その修正した欠陥判定しきい値に基づき、前記欠陥画像についての欠陥信号の欠陥判定を行う欠陥判定部と、
を含んで構成されることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項2】
前記欠陥累積部は、前記欠陥信号量ごとの頻度を累積し、その結果として前記欠陥信号量についての頻度分布を生成し、その頻度分布に基づき前記統計量を算出すること
を特徴とする請求項1に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項3】
前記欠陥累積部は、前記統計量として、前記頻度分布に基づく前記欠陥信号量の分散を算出すること
を特徴とする請求項2に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項4】
前記欠陥累積部は、前記統計量として、前記頻度分布に基づく前記欠陥信号量の平均値を算出すること
を特徴とする請求項2に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項5】
その表面に同形のパターンが複数個形成された基板装置のパターン欠陥を検出するパターン欠陥検査装置におけるパターン欠陥検査方法であって、
前記パターン欠陥検査装置が、
前記基板装置の表面の一部の領域のパターン画像を検出する画像検出部と、
前記パターン画像検出部によって検出されたパターン画像を処理する画像処理部と、
を備え、
前記画像処理部が
前記パターン画像検出部によって検出された前記基板装置の表面の第1の領域の検出画像と、前記第1の領域と同じパターンを有する第2の領域の検出画像と、により差分画像を取得し、その差分画像に基づき欠陥信号を抽出するステップと、
前記差分画像の全画素について、その各画素に対応する前記欠陥信号の欠陥信号量を累積して、前記欠陥信号量に係る統計量を算出するステップと、
前記算出された統計量を、前記基板装置の基準のパターン画像について、別途、算出された基準統計量と比較して、前記統計量の前記基準統計量に対するオフセット量を算出するステップと、
あらかじめ設定された基準の欠陥判定しきい値を前記オフセット量により修正し、その修正した欠陥判定しきい値に基づき、前記欠陥画像についての欠陥信号の欠陥判定を行うステップと、
を実行することを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項6】
前記画像処理部は、
前記欠陥信号の欠陥信号量を累積するときには、前記欠陥信号量ごとの頻度を累積し、その結果として前記欠陥信号量についての頻度分布を生成し、その頻度分布に基づき前記統計量を算出すること
を特徴とする請求項5に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項7】
前記画像処理部は、
前記統計量として、前記頻度分布に基づく前記欠陥信号量の分散を算出すること
を特徴とする請求項6に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項8】
前記画像処理部は、
前記統計量として、前記頻度分布に基づく前記欠陥信号量の平均値を算出すること
を特徴とする請求項6に記載のパターン欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−304195(P2008−304195A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148920(P2007−148920)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】