説明

パワーアシストロボット

【課題】操作者の操作力を増幅して操作者の作業をアシストするパワーアシストロボットの利便性を向上させる。
【解決手段】パワーアシストロボット10は、駆動源11と、操作者によって操作される操作部12と、対象物に力を与える作業部13と、操作部12に入力された操作力を増幅し、増幅した力を駆動源11を介して作業部13に供給する増幅部14と、作業部13が操作部12の操作に追従するように制御を行う制御部16と、作業部13が操作部12の操作に追従しているか否かを表す状態であるパワーアシスト状態を判断するパワーアシスト状態判断部17と、パワーアシスト状態が不安定であるときに操作者等に対して所定の提示を行う状態提示部20と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者の操作力を増幅して操作者の作業をアシストするパワーアシストロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば工場等において、各種のロボットが用いられている。一般に、ロボットは、目的の作業を人に代わって自動的に行うものとして知られている。
【0003】
ロボットには、電気的または機械的な理由によって、異常が生じる場合がある。そのような場合には、所定の作業を正確に実行することができなくなる。そのため、従来から、ロボットに異常が生じたときにその旨を提示する装置がよく用いられている。
【0004】
近年、ロボットの一種として、人の作業をアシストするパワーアシストロボットの開発が進められている(例えば特許文献1参照)。パワーアシストロボットは、予め定められた作業を自動的に実行するのではなく、操作者によって任意に操作されるものである。例えば、パワーアシストロボットの一例として、対象物を把持して移動させるパワーアシストアームが知られている。パワーアシストアームによれば、人の操作力を油圧機構等によって増幅することにより、重量物の運搬等が可能となる。
【特許文献1】特開2004−148466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーアシストロボットは、操作者によって操作され、その操作者の操作に追従した動作を行う。そのため、例えば、操作者が急激な操作を行った場合や、複雑な操作を行った場合等では、システムの時間遅れ、あるいは機械的な遅れにより一時的に、パワーアシストロボットが操作者の操作に迅速かつ正確に追従できない状態になるおそれがある。また、パワーアシストロボットに大きな外乱が加わった場合等においても、一時的に、パワーアシストロボットが操作者の操作に迅速かつ正確に追従できない状態になる場合がある。なお、以下では、パワーアシストロボットが操作者の操作に追従した動作を行っている状態を「パワーアシスト状態」といい、パワーアシストロボットに電気的および機械的な異常が生じていないにも拘わらず操作者の操作に迅速かつ正確に追従できない状態を、「パワーアシスト状態が不安定な状態」ということとする。
【0006】
従来のパワーアシストロボットでは、操作者の操作に迅速かつ正確に追従していない場合に、電気的または機械的な異常が生じているのか、あるいは、パワーアシスト状態が不安定な状態にあるのかを、操作者の勘で判断するしかなかった。そのため、従来のパワーアシストロボットは、操作者にとって必ずしも十分な利便性を備えているものとは言い難かった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パワーアシストロボットの利便性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパワーアシストロボットは、操作者によって操作され、前記操作者の操作力を増幅して対象物に与えることによって前記操作者の作業をアシストするパワーアシストロボットであって、駆動力を発生させる駆動源と、前記操作者によって操作され、前記操作者の操作力が入力される操作手段と、前記対象物に力を与える作業手段と、前記操作手段に入力される操作力を増幅し、増幅した力を前記駆動源を介して前記作業手段に供給する増幅手段と、前記操作者による前記操作手段に対する操作に基づいて、前記作業手段が前記操作者の操作に追従するように前記作業手段および前記増幅手段を制御する制御手段と、前記作業手段が前記操作手段に対する操作に追従しているか否かを表す状態であるパワーアシスト状態を判断する判断手段と、前記判断手段によってパワーアシスト状態が不安定であると判断されると、所定の提示を行う状態提示手段と、を備えたものである。
【0009】
前記パワーアシストロボットによれば、パワーアシスト状態が不安定である場合、すなわち、作業手段が操作手段の操作に追従していない場合には、状態提示手段によって所定の提示が行われる。これにより、操作者等は、パワーアシスト状態を正確に認識することができる。したがって、パワーアシストロボットの利便性が向上する。
【0010】
前記制御手段は、所定の制御パラメータを所定の範囲内で変化させることにより前記パワーアシストロボットを安定化させるような制御を行い、前記判断手段は、前記制御パラメータの値が所定範囲外になるとパワーアシスト状態が不安定であると判断するものであってもよい。
【0011】
このことにより、比較的簡単な方法によってパワーアシスト状態を判断することができる。
【0012】
前記パワーアシストロボットは、過負荷状態を検出する過負荷状態検出手段をさらに備え、前記状態提示手段は、前記過負荷状態検出手段によって過負荷状態が検出されると、所定の提示を行うものであってもよい。
【0013】
このことにより、パワーアシスト状態が不安定な状態と過負荷状態とを、区別して提示することができる。したがって、操作者等は、それらを区別して認識することができるので、パワーアシストロボットの利便性がより一層向上する。
【0014】
前記状態提示手段は、少なくとも前記操作者に向かって発光または光を反射する視覚的提示手段を有していてもよい。
【0015】
このことにより、周囲の騒音が大きい場合であっても、操作者はパワーアシスト状態を容易に認識することができる。
【0016】
前記状態提示手段は、前記操作者の周囲に向かって発光または光を反射する視覚的提示手段を有していてもよい。
【0017】
このことにより、操作者だけでなく、操作者の周囲にいる人も、パワーアシスト状態を認識することができる。したがって、パワーアシストロボットの周囲にいる人に対する安全性が高まることになる。
【0018】
前記パワーアシストロボットは、前記操作手段を介して前記操作者に力覚を提示する力覚提示手段をさらに備え、前記状態提示手段は、前記力覚提示手段による提示を行ってもよい。
【0019】
このことにより、操作者に対してパワーアシスト状態がより敏感に伝達される。そのため、操作性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、パワーアシストロボットの利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
《本実施形態の概要》
図1は、本実施形態に係るパワーアシストロボット10の概略構成図である。パワーアシストロボット10は、駆動力を発生させる駆動源11を備えている。駆動源11の種類は特に限定されず、例えば、油圧モータ、電動モータ等を好適に利用することができる。
【0022】
また、パワーアシストロボット10は、操作者によって操作される操作部12と、対象物に力を与える作業部13と、操作部12に入力される操作力を増幅し、増幅した力を駆動源11を介して作業部13に供給する増幅部14とを備えている。操作部12には、例えば、操作レバー、操作ハンドル、操作ペダル等を好適に用いることができる。作業部13には、例えば、対象物に把持力を与えることによって対象物を把持する把持機構等を好適に用いることができる。また、作業部13には、対象物を吸引する吸引機構、対象物を押圧する押圧機構、対象物を回転させる回転機構等、各種の機構を利用することができる。
【0023】
また、パワーアシストロボット10には、作業部13の力覚を操作部12を介して操作者に伝達する力覚提示部15が設けられている。力覚提示部15の具体的機構は特に限定されるものではない。例えば、力覚提示部15は、電気信号を用いた電気式の力覚提示機構を備えていてもよく、油圧シリンダ等を用いた機械式の力覚提示機構を備えていてもよい。
【0024】
また、パワーアシストロボット10は、制御部16を備えている。制御部16は、操作者による操作部12に対する操作に基づいて、作業部13が操作者の操作に追従して所定の作業を行うように、作業部13および増幅部14を制御する。
【0025】
また、パワーアシストロボット10は、パワーアシスト状態を判断するパワーアシスト状態判断部17を備えている。ここで、「パワーアシスト状態」とは、操作者の操作部12に対する操作に作業部13が追従しているか否かを表す状態である。作業部13の追従性が良好な場合は、パワーアシスト状態は安定し、逆に、作業部13の追従性が良好でない場合は、パワーアシスト状態は不安定となる。なお、作業部13の追従性が良好か否か(言い換えると、パワーアシスト状態が安定しているか否か)は、予め設定される種々の判断ルールに基づいて判断することができる。例えば、判断ルールの一例として、操作者が操作部12を操作した後、所定時間内に作業部13がその操作に対応する動作を完了したか否か等を挙げることができる。
【0026】
また、パワーアシストロボット10は、過負荷状態を検出する過負荷状態検出部18を備えている。過負荷状態検出部18は、駆動源11や作業部13等の過負荷状態を検出するものである。例えば、対象物が重量物であったり、あるいは、作業部13が高速で繰り返し移動する場合等の際に、作業部13等は過負荷状態になりやすい。なお、過負荷状態を検出する手段および方法には、周知の手段および方法を用いることができる。例えば、駆動源11として電動モータを用いる場合に、モータのトルクに基づいて過負荷状態を検出することができる。また、駆動源11として油圧モータを用いる場合に、油圧に基づいて過負荷状態を検出することができる。
【0027】
また、パワーアシストロボット10は、パワーアシスト状態および過負荷状態を提示する状態提示部20を備えている。状態提示部20として、視覚や聴覚に訴える手段を好適に用いることができる。例えば、視覚に訴える視覚的状態提示手段として、光を発するもの(LED、ランプ等)や、光を反射するもの等を利用することができる。また、所定の画像を表示するディスプレイ等も利用することができる。聴覚に訴える状態提示手段としては、例えば、ブザー、サイレン、スピーカ等を用いることができる。本実施形態に係る状態提示部20は、パワーアシスト状態判断部17によって判断されるパワーアシスト状態と、過負荷状態検出部18によって検出される過負荷状態とを、区別して提示するように形成されている。状態提示部20は、それら各状態を別々の手段で提示するようになっていてもよく、単一の手段で提示するようになっていてもよい。例えば、状態提示部20は複数のランプを備え、上記各状態ごとに異なるランプを点灯させるように構成されていてもよい。また、状態提示部20は、複数の色を出力可能なランプを備え、上記各状態ごとにランプから異なる色を出力させるようになっていてもよい。
【0028】
以上がパワーアシストロボット10の概略構成である。
【0029】
制御部16による制御方法およびパワーアシスト状態判断部17における判断方法等は、何ら限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。例えば、パワーアシスト状態判断部17は、その制御パラメータの値が所定範囲外になるとパワーアシスト状態が不安定であると判断するもので、制御部16は、所定の制御パラメータに基づいてシステム(パワーアシストロボット10)を受動的に保つよう種々のパラメータを変化させることによりシステムを安定化させるような制御を行うものであってもよい。
【0030】
なお、システムが受動的であるとは、例えば、以下の通りである。力制御を行うパワーアシストロボットにおいて、パワーアシストロボットへの入力を操作者の操作力とし、パワーアシストロボットからの出力を速度(例えばロボットの手先の速度)とする。操作者の意図する向き(動かしたい向き)にロボットが追従する時、システムは安定に動作しているとみなすと、この時、入力する操作力の向きと、ロボットから出力される速度の向きとが一致する。このようなパワーアシストロボットのシステムでは、入力の向きと出力の向きが一致する(入力と出力の積が零以上となる)とき、システムは受動的である。
【0031】
パワーアシスト状態判断部17は、フィードバック制御におけるゲインの調整と関連してパワーアシスト状態を判断するものであってもよい。状態提示部20における提示を、ゲインの調整の表示とみなすこともできる。
【0032】
また、例えば、図2に示すような制御システム(特許第3809614号公報参照)を応用し、当該制御システム中の「仮想エネルギ」あるいは「可変重みWusr」あるいは「可変重みWv」に基づいてパワーアシスト状態を判断するようにしてもよい。
【0033】
この制御システムでは、システムの入出力(ここでは入力を人間の操作力:uh、出力をロボットハードウェアの速度:yとしている)を「仮想パワーモニタ(Virtual power monitor)」で観測し、観測結果Pvからシステムの安定性を評価する。安定性の評価は、観測結果Pvから計算される「仮想エネルギ」によって行い、この仮想エネルギ に基づいて、「仮想パワーリミッタ(Virtual power limiter)」で受動性の定義を拡張した式(1)における可変重みWusr、あるいは可変重みWvをあるいはその両方を調整することでシステムが安定となるようにする。
【0034】
つまり、この制御システムでは、システムの安定性を仮想エネルギによって判断していることから、この仮想エネルギをパワーアシスト状態の安定性を判断しているパラメータとみなしてよい。
【0035】
また、不安定な仮想エネルギが示された場合、式(1)を満たすよう、可変重みWusrを減少、あるいは可変重みWvを増加させてシステムを安定化させるため、可変重みWusr、あるいは可変重みWv、あるいはその両方をパワーアシスト状態を判断するパラメータとみなすこともできる。
【数1】

u:システムの入力 u = uh + WusrKusruh + udis + Wvuv
uh:人間の操作力
udis:外乱などの未知の入力
uv:ユーザ制御対象に接続される負の出力フィードバック uv = −Kvy
y:システムの出力
Kusr:パワーアシストゲインを表わす正の対角行列
Kv:負の出力フィードバックゲインを表わす正の対角行列
Wusr:仮想パワーリミッタを構成する可変重みを表わす正の対角行列
Wv:仮想パワーリミッタを構成する可変重みを表わす正の対角行列
Ev0:設計者が定める任意の定数
Pv:仮想パワーモニタにおける観測量 Pv = yT×uh
【0036】
《パワーアシストアーム》
次に、図3〜図5を参照しながら、本実施形態に係るパワーアシストロボット10をパワーアシストアーム10Aに応用した実施形態について説明する。
【0037】
パワーアシストアーム10Aは、操作部12として操作ハンドル12Aを備え、作業部13として把持機構13Aを備えている。また、パワーアシストアーム10Aは、駆動源11が収容された駆動ユニット11Aを備えている。駆動ユニット11Aと把持機構13Aとは、第1アーム33a、第2アーム33b、および第3アーム33cを有するリンク機構によって連結されている。第1アーム33aと第2アーム33bとは回転自在に連結されている。また、第2アーム33bと第3アーム33cも回転自在に連結されている。操作ハンドル12Aは、第2アーム33bの中途部に配置されている。ただし、操作ハンドル12Aの位置および形状等は、何ら限定されるものではない。このパワーアシストアーム10Aによれば、操作者30は、操作ハンドル12Aを操作することにより、重量の大きな対象物31を小さな力で把持することができ、かつ小さな力で移動させることができる。
【0038】
パワーアシストアーム10Aは、状態提示部として、発光装置20Aを備えている。発光装置20Aは、パワーアシスト状態を示す第1LED21、過負荷状態を示す第2LED22、およびバッテリ残量を示す第3LED23を有している。操作者30が見やすいように、これらLED21〜23は操作ハンドル12Aよりも前側に配置されている。具体的には、発光装置20Aは、操作ハンドル12Aと把持機構13Aとの間に設けられている。
【0039】
本パワーアシストアーム10Aでは、操作者30が操作ハンドル12Aを操作したときに、パワーアシスト状態が不安定になると、第1LED21が発光する。これにより、操作者30は、パワーアシスト状態が不安定であることを認識することができる。そのため、操作者30は、把持機構31の動作が操作ハンドル12Aの操作に追従していない場合に、パワーアシストアーム10Aに異常が生じているのではなく、制御的な要因によって把持機構31の追従性が低下していることを認識することができる。したがって、本実施形態によれば、パワーアシストアーム10Aの利便性を向上させることができる。また、本パワーアシストアーム10Aによれば、パワーアシスト状態を把握したうえで操作を行うことができるので、操作性を向上させることができる。
【0040】
ところで、把持機構31の動作が操作ハンドル12Aの操作に追従していない場合に、パワーアシスト状態を把握していないと、操作者は自分の操作が不十分だと考え、過剰な操作を行ってしまうおそれがある。しかし、本パワーアシストアーム10Aによれば、操作者30は第1LED21の発光によって、パワーアシスト状態が不安定であることを正確に把握することができるので、そのような過剰な操作を未然に防止することができる。また、操作者30はパワーアシスト状態を把握したうえでパワーアシストアーム10Aを操作することができるので、パワーアシストアーム10Aの作業の安全性を向上させることができる。
【0041】
また、本パワーアシストアーム10Aでは、過負荷状態になると第2LED22が発光する。これにより、操作者30は、パワーアシストアーム10Aが過負荷状態にあることを認識することができる。したがって、操作者30は、例えば対象物31の重力が非常に大きく、それが原因となって把持機構31の動作が操作ハンドル12Aの操作に追従していない場合等において、パワーアシストアーム10A自体に異常が生じているのではなく、過負荷状態が原因であることを正確に認識することができる。これにより、操作者30は、その後、パワーアシストアーム10Aの過負荷状態を避けるための処置を講ずることができる。したがって、本実施形態によれば、過負荷状態での運転を長時間にわたって継続すること等を効果的に避けることができるので、パワーアシストアーム10Aの長寿命化を図ることができる。
【0042】
なお、把持機構31の動作が操作ハンドル12Aの操作に追従していない場合に、第1LED21、第2LED22、および第3LED23のいずれも発光していないときには、パワーアシストアーム10Aに何らかの異常が生じたものと推定することができる。すなわち、発光装置20Aの発光状態に基づいて、パワーアシストアーム10Aの電気的または機械的な異常を推定することができる。
【0043】
上記実施形態は、状態提示部20として3つのLED21〜23を有し、パワーアシスト状態と過負荷状態とバッテリ残量状態とを別々に表示するものであった。しかし、状態提示部20は、それらの各状態を1つの画面上に表示するものであってもよい。例えば、図6に示すように、状態提示部20として、上記各状態を表示するディスプレイ24を用いてもよい。また、図示は省略するが、パワーアシスト状態と過負荷状態とを別々のディスプレイに表示することも勿論可能である。
【0044】
上記実施形態の状態提示部20は、光を発する発光装置20Aであった。しかし、状態提示部20は、光を反射する装置であってもよい。また、状態提示部20は、操作者30等の視覚に訴える視覚的提示部に限らず、操作者30等の聴覚に訴える聴覚的提示部であってもよい。状態提示部20は、視覚的な提示と聴覚的な提示との両方を行うものであってもよい。ただし、視覚的提示部を用いると、例えば、騒がしい工事現場等においても、操作者30等に対して、状態の提示をより確実に行うことができる。また、視覚的提示部のみを用いることとすれば、深夜作業等に際して、周囲に騒音を発生させることなく状態提示を行うことができる。なお、複数の状態を提示する際に複数の音を用いると、各音を識別することが困難になる場合もある。しかし、本実施形態のように複数のLED21〜23を用いることとすると、各状態を容易に識別することができる。
【0045】
上記実施形態では、状態提示部20は、主に操作者30に対して提示を行うものであった。しかし、状態提示部20は、操作者30だけでなく、操作者30の周囲にいる人に対しても状態提示を行うものであってもよい。例えば、図7に示すように、発光装置20Aを、操作ハンドル12Aの前方だけでなく、後方にも配置するようにしてもよい。図7の例では、操作者30の前方に位置する第3アーム33cと、操作者30の後方に位置する第1アーム33aとに、それぞれ発光装置20Aが設けられている。すなわち、状態提示部20は、操作者30の前方に配置された発光装置20Aと、操作者30の後方に配置された発光装置20Aとを備えている。これにより、操作者30だけでなく、操作者30の周りにいる人30Bに対しても、パワーアシスト状態、過負荷状態、およびバッテリ残量状態を提示することができる。したがって、周囲の人30Bも、パワーアシスト状態が不安定か否かを把握することができるので、パワーアシストアーム10Aの安全性がより一層向上する。なお、操作者30用には聴覚的な状態提示部(例えば、音を発する装置等)を設け、周囲の人30B用には視覚的な状態提示部を設けるようにしてもよい。あるいは、操作者30用には視覚的な状態提示部を設け、周囲の人30B用には聴覚的な状態提示部を設けるようにしてもよい。
【0046】
上述の通り、上記実施形態では、状態提示部20は、操作者30等に対して視覚的な提示を行うものであった。しかし、状態提示部20は、視覚的な提示の代わりに、または視覚的な提示とともに、操作ハンドル12Aを介して操作者30に力覚を提示するものであってもよい。例えば、パワーアシスト状態が不安定の場合には、パワーアシスト状態が安定している場合に比べて、操作者30に対して指、手、腕等の体の一部を圧迫する刺激を加えるようにしてもよい。
【0047】
本発明に係るパワーアシストロボットは、様々な形態で実施することができる。本発明に係るパワーアシストロボットは、パワーアシストアームの他、例えば、パワーアシストレッグ、パワーアシストスーツ、パワードローダー等であってもよい。本発明は、いわゆる力制御を用いる各種のロボットに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明は、操作者の操作力を増幅して操作者の作業をアシストするパワーアシストロボットについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】パワーアシストロボットの概略構成図である。
【図2】制御システムの一例を示すブロック線図である。
【図3】第1LEDが発光したときのパワーアシストアームの側面図である。
【図4】第2LEDが発光したときのパワーアシストアームの側面図である。
【図5】第3LEDが発光したときのパワーアシストアームの側面図である。
【図6】他の実施形態に係るパワーアシストアームの側面図である。
【図7】他の実施形態に係るパワーアシストアームの側面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 パワーアシストロボット
10A パワーアシストアーム(パワーアシストロボット)
11 駆動源(駆動手段)
12 操作部(操作手段)
12A 操作ハンドル(操作手段)
13 作業部(作業手段)
13A 把持機構(作業手段)
14 増幅部(増幅手段)
15 力覚提示部(力覚提示手段)
16 制御部(制御手段)
17 パワーアシスト状態判断部(判断手段)
18 過負荷状態検出部(過負荷状態検出手段)
20 状態提示部(状態提示手段)
20A 発光装置(状態提示手段)
30 操作者
31 対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者によって操作され、前記操作者の操作力を増幅して対象物に与えることによって前記操作者の作業をアシストするパワーアシストロボットであって、
駆動力を発生させる駆動源と、
前記操作者によって操作され、前記操作者の操作力が入力される操作手段と、
前記対象物に力を与える作業手段と、
前記操作手段に入力される操作力を増幅し、増幅した力を前記駆動源を介して前記作業手段に供給する増幅手段と、
前記操作者による前記操作手段に対する操作に基づいて、前記作業手段が前記操作者の操作に追従するように前記作業手段および前記増幅手段を制御する制御手段と、
前記作業手段が前記操作手段に対する操作に追従しているか否かを表す状態であるパワーアシスト状態を判断する判断手段と、
前記判断手段によってパワーアシスト状態が不安定であると判断されると、所定の提示を行う状態提示手段と、
を備えたパワーアシストロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーアシストロボットにおいて、
前記制御手段は、所定の制御パラメータを所定の範囲内で変化させることにより前記パワーアシストロボットを安定化させるような制御を行い、
前記判断手段は、前記制御パラメータの値が所定範囲外になるとパワーアシスト状態が不安定であると判断するパワーアシストロボット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパワーアシストロボットにおいて、
過負荷状態を検出する過負荷状態検出手段をさらに備え、
前記状態提示手段は、前記過負荷状態検出手段によって過負荷状態が検出されると、所定の提示を行うパワーアシストロボット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のパワーアシストロボットにおいて、
前記状態提示手段は、少なくとも前記操作者に向かって発光または光を反射する視覚的提示手段を有しているパワーアシストロボット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載のパワーアシストロボットにおいて、
前記状態提示手段は、前記操作者の周囲に向かって発光または光を反射する視覚的提示手段を有しているパワーアシストロボット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のパワーアシストロボットにおいて、
前記操作手段を介して前記操作者に力覚を提示する力覚提示手段をさらに備え、
前記状態提示手段は、前記力覚提示手段による提示を行うパワーアシストロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−12125(P2009−12125A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176858(P2007−176858)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】