フィルタ回路
【課題】本発明は、ゼロIF方式と低IF方式を共用するフィルタ回路において、回路構成を簡素化することによりチップ面積が消費電力を低減する。
【解決手段】受信信号から分離されたI成分(Iin,Iinx)及びQ成分(Qin,Qinx)に対して、それぞれ設けられたゼロIF方式の第1及び第2の実フィルタ(7,8)と、該ゼロIF方式から低IF方式への切替信号を受けたとき該第1及び第2の実フィルタ(7,8)間を相互素子(R21a〜R64b)で接続して複素フィルタにするスイッチ部(SW)とを備える。
【解決手段】受信信号から分離されたI成分(Iin,Iinx)及びQ成分(Qin,Qinx)に対して、それぞれ設けられたゼロIF方式の第1及び第2の実フィルタ(7,8)と、該ゼロIF方式から低IF方式への切替信号を受けたとき該第1及び第2の実フィルタ(7,8)間を相互素子(R21a〜R64b)で接続して複素フィルタにするスイッチ部(SW)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ回路に関し、特にQPSK、QAM、OFDM、OFDMAなどの通信方式を組み込んだ無線通信装置における高周波送受信回路においてイメージを処理するために使用するフィルタ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような無線通信装置における高周波送受信回路としてのRFモジュールの一般的な構成例が図3に示されている。このRFモジュール100の受信系統においては、高周波受信信号RFin(例えば、2.5GHz)をオペアンプ1で増幅し、これをミキサ2に送る。このときのミキサ2への入力信号はオペアンプ1の非反転(正側)出力信号及びこれと180°位相が異なる反転(負側)信号の一対の信号が与えられるようになっている。なお、以下に述べる各信号は、特に記載はしないが、全て非反転信号と反転信号の双方を含むものとする。
【0003】
このミキサ2には、PLL回路40に設けられている電圧制御発振器VCOによって基準周波数信号frefから得られた局部発振信号も与えられており、両者の差分のIF(中間周波数)信号が出力される。この場合のIF信号は数100MHzの比較的高い周波数のIF信号である。このミキサ2から出力されたIF信号はローパスフィルタ3で低周波成分のみが抽出され、ミキサ4及び5に共通に送られる。ミキサ4及び5においては、分周器6からの信号が与えられている。この分周器6はPLL回路40からミキサ2に与えられた局部発振信号と同じ信号を受けて、位相回転させない(0°)信号をミキサ5に送るとともに、90°位相回転させた信号をミキサ4に送っている。
【0004】
これにより、ミキサ4及び5は、ミキサ2から出力された比較的高いIF信号を、より低いIF信号(又はベースバンド信号)に変換して出力する。この時、ミキサ4及び5からは、I成分(同相信号成分)信号とQ成分(直交位相信号成分)信号とが分離されて出力される。ミキサ4及び5の各出力信号はローパスフィルタ7及び8(これらでフィルタ回路9を構成する。)にそれぞれ送られて、その内の低周波信号成分(ベースバンド信号)のみが抽出され、オペアンプ10及び11を介して出力される。
【0005】
この結果、このRFモジュール100からは、I成分のベースバンド信号として、非反転信号RX-Iout及びその反転信号RX-Ioutx(添字xが付く。)が出力され、Q成分のベースバンド信号として、非反転信号RX-Qout及びその反転信号RX-Qoutxが出力されることになる。
【0006】
このRFモジュール100の送信系統においては、上記の受信系統と丁度逆の経路を辿る。
【0007】
すなわち、Q成分のベースバンド信号TX-Qin及びその反転信号TX-Qinxがオペアンプ21に与えられ、I成分のベースバンド信号TX-Iin及びその反転信号TX-Iinxがオペアンプ22に与えられてそれぞれ増幅される。オペアンプ21及び22からの各出力信号は、ローパスフィルタ23及び24で所定の低周波信号成分のみが抽出されてミキサ25及び26にそれぞれ送られる。
【0008】
ミキサ25及び26は、上記の分周器6に対応する分周器27からの出力信号を入力するように接続されている。この分周器27は、やはりPLL回路40からの局部発振信号を用いて、非反転信号成分をミキサ26に与え、90°位相回転させた反転信号をミキサ25に与える。
【0009】
この結果、ミキサ25及び26からは周波数変換によりそれぞれQ成分及びI成分のIF信号が出力されて合成器28に送られる。合成器28はこれらのミキサ25及び26からのIF信号を合成してミキサ29に送る。ミキサ29は、やはりPLL回路40からの局部発振信号を受けて高周波信号に変換し、オペアンプ30で増幅した後、高周波信号RFout信号(2.5GHz)として出力する。
【0010】
図3に示したRFモジュール100におけるフィルタ回路9を構成するローパスフィルタ7又は8の従来構成例が図4(1)に示されている。この図4(1)では、特にQ成分についてのローパスフィルタ7(Qch)のみが示されているが、I成分についてのローパスフィルタ8(Ich)についても全く同様である。
【0011】
この従来例によるローパスフィルタ7は、5段縦続接続した1次のローパスフィルタ7a〜7eで構成され、帯域が1MHzの実フィルタである。ローパスフィルタ7a〜7eの各々はオペアンプOP1〜OP5を有し、各オペアンプの反転入力端子及び非反転入力端子のそれぞれに入力抵抗が接続されるとともに、反転入力端子と非反転出力端子との間には抵抗とコンデンサからなる並列回路が接続され、非反転入力端子と反転出力端子との間にも抵抗とコンデンサからなる別の並列回路が接続されている。
【0012】
すなわち、例えばローパスフィルタ7aの場合には、入力信号Qinを受ける入力抵抗R1と、反転入力信号Qinxを受ける入力抵抗R2と、オペアンプOP1の非反転入力端子と反転出力端子との間に並列接続された抵抗R3及びコンデンサC1と、反転入力端子と非反転出力端子との間に並列接続された抵抗R4及びコンデンサC2とで構成されている。同様の接続形態で、ローパスフィルタ7b〜7eにおいてもぞれぞれのオペアンプOP2〜OP5に対して抵抗及びコンデンサが図示のように接続されている。
【0013】
図4(2)には、ローパスフィルタ7a〜7eに共通な動作特性が示されており、図示のように、それぞれ1次の帯域において3dB減衰する特性を有する。ただし、同図(1)の構成ではピーキング動作は行われない。
【0014】
同図(2)に示すような減衰特性を有するローパスフィルタ7a〜7eを、同図(1)に示したように5段縦続接続した場合、同図(3)に示すように、合計で3dB×5=15dB減衰する特性が得られることになる。
【0015】
図3に示したフィルタ回路9を構成するローパスフィルタ7及び8の実フィルタ例として、図4(1)に示す従来例のほか、図5(1)に示すような5次のバタワースローパスフィルタを用いてもよい。
【0016】
この実フィルタは、図示のように、5段縦続接続したオペアンプOP1〜OP5を有し、その1段目のローパスフィルタ7_1は、図4(1)に示した実フィルタ7におけるローパスフィルタ7aと同じ構成であるが、オペアンプOP2とOP3は、図示のように抵抗とコンデンサを接続することによりピーキング機能を備えた2次のローパスフィルタ7_2を構成している。同様に、オペアンプOP4及びOP5も、図示のような抵抗とコンデンサを接続することにより、やはりピーキング機能を備えた2次のローパスフィルタ7_3を構成している。ただし、ローパスフィルタ7_2及び7_8において、各コンデンサには可変コンデンサが使用される。
【0017】
このようにして、1次+2次×2=5次のバタワースローパスフィルタが構成されるが、ローパスフィルタ7_1は、図5(2)に示すように、図4(2)に示した減衰特性と同様に3dBの減衰を呈する。また、2次のローパスフィルタ7_2は、図5(2)に示すように、2次の帯域において6dBの減衰を有するが、2dBのピーキングがあるので、結果として4dBの減衰特性を呈する。さらに、2次のローパスフィルタ7_3は、同図(2)に示すように、2次の帯域において6dBの減衰を呈するが、10dBのピーキングがあるので、結果として4dBの増幅特性を呈する。
【0018】
この結果、同図(3)に示すように、ローパスフィルタ7_1〜7_3で合計15dBの減衰が生ずるが、2次ローパスフィルタ7_2及び7_3で12dBのピーキングが与えられるので、合計として帯域における減衰は3dBに抑制される。
【0019】
図6には、図4(1)に示した1次のローパスフィルタを5段縦続接続した場合の実フィルタの減衰特性と、図5(1)に示した5次のバタワースローパスフィルタによる実フィルタの減衰特性を比較して示したものである。
【0020】
図6(1)に示す減衰特性は、図4(3)に示す減衰特性と同じものであるが、これは1次のローパスフィルタを5段縦続接続した実フィルタの減衰特性であるため、信号の高い周波数部分は15dB減衰してしまう。図6(2)に示す5次のバタワースローパスフィルタによる実フィルタの減衰特性は、3dBの減衰で抑えられることが分かる。
【0021】
従って、図3のRFモジュール100におけるフィルタ回路9には、図7に示すように、ローパスフィルタ7及び8として、図5(1)に示した5次のバタワースローパスフィルタを用いることが好ましい。なお、バタワースローパスフィルタには、5次だけでなく、3次や7次、或いはは9次などの次数も存在する。
【0022】
図7に示すようにフィルタ回路9に実フィルタ7及び8を用いた場合の周波数特性が図8(1)に示されている。この周波数特性は、ゼロIF方式の周波数特性と称され、正の周波数と負の周波数の区別が無く、-f-3dB〜f-3dBの周波数帯域の信号を通過させる。
【0023】
このようなゼロIF方式のフィルタは、OFDM(Orthogonal FrequencyDivision Multiplexing)やUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)のようなスペクトル拡散を行う方式において有効である。
【0024】
一方、GSM(Global System for Mobile communication)やDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)では、低IF方式が有効であることが知られており、この低IF方式の周波数特性が図8(2)に示されている。
【0025】
この低IF方式の周波数特性では、図示のようにf-3dBの周波数帯域の信号は通すが、-f-3dBの周波数帯域の信号は通さない。すなわち、信号が実質的に正の周波数帯域成分しか無く、負の周波数帯域成分が無い場合、負の周波数帯域に雑音があっても取り除くことができる利点がある。
【0026】
このような、図8(2)に示す周波数特性を得るには、図7に示すような実フィルタ7及び8によるフィルタ回路9では実現できず、図9に示すような複素フィルタを用いる必要がある。
【0027】
この複素フィルタは、図7に示したフィルタ回路9において、実フィルタ7と実フィルタ8との間を抵抗によって相互接続したものである。すなわち、各実フィルタにおける同一段のオペアンプ間同士において、実フィルタ7の側のオペアンプの入力端子は、実フィルタ8の側の対応するオペアンプの出力端子と同じ極性の関係、すなわち、非反転入力端子は非反転出力端子、反転入力端子は反転出力端子というように同じ極性の関係で接続されており、実フィルタ7の出力端子は、対応する実フィルタ8のオペアンプの入力端子と反転した関係、すなわち、非反転出力端子は反転入力端子に接続され、反転出力端子は非反転入力端子に接続される。
【0028】
例えば、実フィルタ7の1次ローパスフィルタ7_1のオペアンプOP1の反転入力端子は、抵抗R21を介して実フィルタ8の1次ローパスフィルタ8_1のオペアンプOP1の反転出力端子に接続され、同様にローパスフィルタ7_1のオペアンプOP1の非反転入力端子は、抵抗R22を介してローパスフィルタ8_1のオペアンプOP1の非反転出力端子に接続されている。また、1次ローパスフィルタ7_1のオペアンプOP1の非反転出力端子は、抵抗R23を介して1次ローパスフィルタ8_1のオペアンプOP1の反転入力端子に接続され、ローパスフィルタ7_1のオペアンプOP1の反転出力端子は、抵抗R24を介してローパスフィルタ8_1のオペアンプ8_1の非反転入力端子に接続されるというように構成されている。
【0029】
同様に他のオペアンプOP2〜OP5においても実フィルタ7及び8の間で図示のとおり抵抗R31〜R34,R41〜R44,R51〜R54,及びR61〜R64で相互接続されている。
【0030】
このように、図9に示すような複素フィルタを用いることにより、図8(2)に示すような低IF特性を示す理由を説明したものが図10に示されている。
【0031】
図10において、まず、正の周波数とは同図(1)(a)に示すように、I成分の位相に比べて、Q成分の位相が90°遅れていることを示す。また、負の周波数とは、同図(2)(a)に示すように、I成分の位相に比べてQ成分の位相が90°進んでいることを示す。また、正の周波数の場合、図10(1)(a)に示すように、Iin,Qin ,Iinx ,Qinxはそれぞれ90°ずつ位相がずれている。
【0032】
そして、ローパスフィルタの遅延動作により、信号周波数では、入力対出力が90°ずれるように接続する。例えば、帯域1MHzの信号では周期が1μsであるので、ローパスフィルタでは、その1/4の0.25μsの遅延が生じると90°ずれることになる。
【0033】
従って、正の周波数帯域の信号を通過させ、負の周波数帯域の信号を減衰させ複素フィルタでは、図9に示したように、Iin‐Qout1x, Qin‐Iout1 , Iinx‐Qout1, 及びQinx‐Iout1x間をそれぞれ抵抗を介して接続すればよい。これにより、正の周波数では図10(1)(b)に示す如く同極性になって強め合うので信号が良好に通過し、負の周波数では図10(2)(b)に示す如く逆極性になって弱め合うので信号が減衰することになる。以って、図8(2)に示すような低IF特性が得られることになる。
【0034】
図3に示したフィルタ回路9を、図7に示すようなゼロIF特性の実フィルタ7及び8で構成する場合には、上述したように、OFDMやUMTSのような通信方式が有効である。これは、802.11b方式による信号スペクトルにおいて望ましい。
【0035】
これを示したのが図11であり、ローパスフィルタの問題として、ゼロMHz付近は1/fノイズによって信号のSN(信号/ノイズ比)が劣化するとともに、周波数が高いと回路の利得や帯域劣化で波形歪みが大きくなるということから、802.11b信号とゼロIF方式及び低IF方式との関係は次のとおりである。
【0036】
(1)スペクトルの中心は信号が無いので、ゼロIF方式において1/fノイズがあっても問題無い(同図(1))。
【0037】
(2)信号スペクトルが広いため、低IF方式では波形歪みの悪影響を受ける領域に信号が入る(同図(2))。
【0038】
従って、このような802.11bの信号に対しては、図7に示すようなゼロIF方式の実フィルタの方が好ましいことが分かる。
【0039】
また、Bluetooth方式に関しては、図12に示すように、下記の点から、低IF方式の複素フィルタ(特許文献1)が好ましい。
【0040】
(1)スペクトルの中心に信号があり、ゼロIF方式では1/ fノイズがあると悪影響を受ける(同図(1))。
【0041】
(2)信号スペクトルが狭いため、低IF方式でも波形歪みの無い領域に設計できる(同図(2))。
【0042】
従って、802.11b方式とBluetooth方式の両方を受信できる無線受信装置では、ゼロIF方式と低IF方式の両方が必要となる。
【0043】
このように、ゼロIF方式と低IF方式を共用する方式として、特表2004-515104号公報(特許文献2)がある。これは、ゼロIF方式を前提に実フィルタを用い、低IF方式の場合はフィルタ出力の一方を用い、後段のデジタル複素フィルタを用いるという構成を採っている。
【特許文献1】米国特許第4,914,408号
【特許文献2】特表2004-515104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
上記の特許文献2では、ゼロIF方式と低IF方式とを共用するが、実フィルタは部分的にしか共用されていないため、設置する後段のデジタル複素フィルタがチップ面積及び消費電力の点で大きくなってしまうという問題があった。
【0045】
従って本発明は、ゼロIF方式と低IF方式を共用するフィルタ回路において、回路構成を簡素化することによりチップ面積及び消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0046】
上記の目的を達成するため、本発明に係るフィルタ回路は、受信信号から分離されたI成分及びQ成分に対して、それぞれ設けられたゼロIF方式の第1及び第2の実フィルタと、該ゼロIF方式から低IF方式への切替信号を受けたとき該第1及び第2の実フィルタ間を相互素子で接続して複素フィルタにするスイッチ部と、を備えたことを特徴とする。
【0047】
すなわち、本発明では、例えば無線通信の受信信号処理系統にあるフィルタ回路が、I成分とQ成分に信号分離後、複素フィルタを実現するためにI成分とQ成分の実フィルタ間に相互素子をオン/オフするためのスイッチ部を有し、このスイッチ部をオンにすると低IF方式の複素フィルタになり、オフにするとゼロIF方式の実フィルタになるようにしたものである。
【0048】
ここで、上記の相互素子としては抵抗を用いることができる。
【0049】
また、上記の実フィルタは、例えばバタワースローパスフィルタである。
【0050】
さらに、上記の切替信号は、例えば、所定データを受けた信号変換回路によって発生するか、又は2つの特定の電源に基づく信号である。
【発明の効果】
【0051】
このように本発明によれば、ゼロIF方式と低IF方式を切替方式化することにより、実フィルタは全て共用化されることになり、簡単な構成で製造時のマスク費用や、品質管理にかかるコストを半減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
図1は、本発明に係るフィルタ回路の実施例を示したものである。この実施例では、図9に示した従来例において、実フィルタ7と8を接続する抵抗をオン/オフするためのスイッチを設け、該抵抗とスイッチでスイッチ部SWを構成した点が異なっている。
【0053】
このスイッチ部SWにおいて、1次ローパスフィルタ7_1と8_1の各オペアンプOP1同士を接続する抵抗R21,R22,R23,R24を、それぞれ、R21a及びR21b,R22a及びR22b,R23a及びR23b,R24a及びR24bに分割するとともに、これらをスイッチSW1でオン/オフ接続する。同様に2次ローパスフィルタ7_2と8_2の各オペアンプOP2同士を接続する抵抗R31,R32,R33,R34を、それぞれ抵抗R31a及びR31b,R32a及びR32b,R33a及びR33b,R34a及びR34bに分割するとともに、これらをスイッチSW2でオン/オフ接続する。同様に2次ローパスフィルタ7_2と8_2の各オペアンプOP3同士を接続する抵抗R41,R42,R43,R44を、それぞれ抵抗R41a及びR41b,R42a及びR42b,R43a及びR43b,R44a及びR44bに分割するとともに、これらをスイッチSW3でオン/オフ接続する。
【0054】
さらに、2次ローパスフィルタ7_3と8_3の各オペアンプOP4同士を接続する抵抗R51,R52,R53,R54を、それぞれ抵抗R51a及びR51b,R52a及びR52b,R53a及びR53b,R54a及びR54bに分割するとともに、これらをスイッチSW4でオン/オフ接続する。同様に2次ローパスフィルタ7_3と8_3の各オペアンプOP5同士を接続する抵抗R61,R62,R63,R64を、それぞれ抵抗R61a及びR61b,R62a及びR62b,R63a及びR63b,R64a及びR64bに分割するとともに、これらをスイッチSW5でオン/オフ接続するように構成している。なお、抵抗R21a〜R64bはスイッチSW1〜SW5の両端間で分割されているが、分割せずにスイッチSW1〜SW5の一方に接続するように構成してもよいことは言うまでもない。
【0055】
このような構成において、ゼロIF/低IF切替信号SSをSW1〜SW5に与えることにより、切替信号SSが“オフ”でゼロIFを示している時には、スイッチSW1〜SW5は共にオフ状態に制御されて図7に示した実フィルタによるフィルタ回路が実現され、切替信号SSが“オン”で低IF方式を示している時には、スイッチSW1〜SW5を共にオン状態に制御することにより、それぞれ図9に示した複素フィルタによるフィルタ回路を実現することができる。
【0056】
図2には、図1に示したスイッチ部SWの実施例が示されている。この内、図2(1)に示した実施例の場合には、スイッチ部SWを、集積回路50に搭載するとき、この集積回路50の特定の端子(PAD)51を電源1に接続するか、又は電源2に接続するかによってゼロIF方式か又は低IF方式かを選択切替することができる。
【0057】
また、同図(2)の実施例の場合には、データとクロックとトリガ信号とを用いることにより、これを入力した信号変換回路52が該データを判別し、このデータがゼロIF方式を示しているか、または低IF方式を示しているかを判別し、これに応じて切替信号SSを発生してスイッチ部SWに送るように構成している。
【0058】
なお、本発明は、上記実施例によって限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るフィルタ回路の一実施例を示した回路図である。
【図2】本発明に係るフィルタ回路に用いるスイッチ部の実施例を示したブロック図である。
【図3】本発明及び従来例に係るフィルタ回路を備えた無線通信装置における一般的なRFモジュールを示した回路図である。
【図4】図3に示したフィルタ回路において1次のローパスフィルタを5段縦続接続した実フィルタ例を示した図である。
【図5】図3に示したフィルタ回路において5次のバタワースローパスフィルタを用いた実フィルタ例を示した図である。
【図6】1次のローパスフィルタを5段縦続接続した実フィルタと5次のバタワースローパスフィルタを用いた実フィルタの減衰特性を比較したグラフ図である。
【図7】図3に示したフィルタ回路において5次のバタワースローパスフィルタを使用した構成例を示した回路図である。
【図8】ゼロIF方式と低IF方式の周波数特性を示した波形図である。
【図9】図3に示すフィルタ回路に5次のバタワースローパスフィルタを用い、且つ両者を抵抗で接続した従来の複素フィルタを示した回路図である。
【図10】図9に示した複素フィルタのI成分とQ成分の位相関係を示した図である。
【図11】ゼロIF方式と低IF方式の適用信号例(その1)を説明するための波形図である。
【図12】ゼロIF方式と低IF方式の適用信号例(その2)を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0060】
100 RFモジュール
7,8 ローパスフィルタ
9 フィルタ回路
7_1, 8_1 1次ローパスフィルタ
7_2, 7_3, 8_2, 8_3 2次ローパスフィルタ
50 IC回路
52 信号変換回路
SW スイッチ部
SW1〜SW5 スイッチ
SS ゼロIF/低IF切替信号
OP1〜OP5 オペアンプ
R1〜R20, R21a〜R64b 抵抗
C1〜C10 コンデンサ
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ回路に関し、特にQPSK、QAM、OFDM、OFDMAなどの通信方式を組み込んだ無線通信装置における高周波送受信回路においてイメージを処理するために使用するフィルタ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような無線通信装置における高周波送受信回路としてのRFモジュールの一般的な構成例が図3に示されている。このRFモジュール100の受信系統においては、高周波受信信号RFin(例えば、2.5GHz)をオペアンプ1で増幅し、これをミキサ2に送る。このときのミキサ2への入力信号はオペアンプ1の非反転(正側)出力信号及びこれと180°位相が異なる反転(負側)信号の一対の信号が与えられるようになっている。なお、以下に述べる各信号は、特に記載はしないが、全て非反転信号と反転信号の双方を含むものとする。
【0003】
このミキサ2には、PLL回路40に設けられている電圧制御発振器VCOによって基準周波数信号frefから得られた局部発振信号も与えられており、両者の差分のIF(中間周波数)信号が出力される。この場合のIF信号は数100MHzの比較的高い周波数のIF信号である。このミキサ2から出力されたIF信号はローパスフィルタ3で低周波成分のみが抽出され、ミキサ4及び5に共通に送られる。ミキサ4及び5においては、分周器6からの信号が与えられている。この分周器6はPLL回路40からミキサ2に与えられた局部発振信号と同じ信号を受けて、位相回転させない(0°)信号をミキサ5に送るとともに、90°位相回転させた信号をミキサ4に送っている。
【0004】
これにより、ミキサ4及び5は、ミキサ2から出力された比較的高いIF信号を、より低いIF信号(又はベースバンド信号)に変換して出力する。この時、ミキサ4及び5からは、I成分(同相信号成分)信号とQ成分(直交位相信号成分)信号とが分離されて出力される。ミキサ4及び5の各出力信号はローパスフィルタ7及び8(これらでフィルタ回路9を構成する。)にそれぞれ送られて、その内の低周波信号成分(ベースバンド信号)のみが抽出され、オペアンプ10及び11を介して出力される。
【0005】
この結果、このRFモジュール100からは、I成分のベースバンド信号として、非反転信号RX-Iout及びその反転信号RX-Ioutx(添字xが付く。)が出力され、Q成分のベースバンド信号として、非反転信号RX-Qout及びその反転信号RX-Qoutxが出力されることになる。
【0006】
このRFモジュール100の送信系統においては、上記の受信系統と丁度逆の経路を辿る。
【0007】
すなわち、Q成分のベースバンド信号TX-Qin及びその反転信号TX-Qinxがオペアンプ21に与えられ、I成分のベースバンド信号TX-Iin及びその反転信号TX-Iinxがオペアンプ22に与えられてそれぞれ増幅される。オペアンプ21及び22からの各出力信号は、ローパスフィルタ23及び24で所定の低周波信号成分のみが抽出されてミキサ25及び26にそれぞれ送られる。
【0008】
ミキサ25及び26は、上記の分周器6に対応する分周器27からの出力信号を入力するように接続されている。この分周器27は、やはりPLL回路40からの局部発振信号を用いて、非反転信号成分をミキサ26に与え、90°位相回転させた反転信号をミキサ25に与える。
【0009】
この結果、ミキサ25及び26からは周波数変換によりそれぞれQ成分及びI成分のIF信号が出力されて合成器28に送られる。合成器28はこれらのミキサ25及び26からのIF信号を合成してミキサ29に送る。ミキサ29は、やはりPLL回路40からの局部発振信号を受けて高周波信号に変換し、オペアンプ30で増幅した後、高周波信号RFout信号(2.5GHz)として出力する。
【0010】
図3に示したRFモジュール100におけるフィルタ回路9を構成するローパスフィルタ7又は8の従来構成例が図4(1)に示されている。この図4(1)では、特にQ成分についてのローパスフィルタ7(Qch)のみが示されているが、I成分についてのローパスフィルタ8(Ich)についても全く同様である。
【0011】
この従来例によるローパスフィルタ7は、5段縦続接続した1次のローパスフィルタ7a〜7eで構成され、帯域が1MHzの実フィルタである。ローパスフィルタ7a〜7eの各々はオペアンプOP1〜OP5を有し、各オペアンプの反転入力端子及び非反転入力端子のそれぞれに入力抵抗が接続されるとともに、反転入力端子と非反転出力端子との間には抵抗とコンデンサからなる並列回路が接続され、非反転入力端子と反転出力端子との間にも抵抗とコンデンサからなる別の並列回路が接続されている。
【0012】
すなわち、例えばローパスフィルタ7aの場合には、入力信号Qinを受ける入力抵抗R1と、反転入力信号Qinxを受ける入力抵抗R2と、オペアンプOP1の非反転入力端子と反転出力端子との間に並列接続された抵抗R3及びコンデンサC1と、反転入力端子と非反転出力端子との間に並列接続された抵抗R4及びコンデンサC2とで構成されている。同様の接続形態で、ローパスフィルタ7b〜7eにおいてもぞれぞれのオペアンプOP2〜OP5に対して抵抗及びコンデンサが図示のように接続されている。
【0013】
図4(2)には、ローパスフィルタ7a〜7eに共通な動作特性が示されており、図示のように、それぞれ1次の帯域において3dB減衰する特性を有する。ただし、同図(1)の構成ではピーキング動作は行われない。
【0014】
同図(2)に示すような減衰特性を有するローパスフィルタ7a〜7eを、同図(1)に示したように5段縦続接続した場合、同図(3)に示すように、合計で3dB×5=15dB減衰する特性が得られることになる。
【0015】
図3に示したフィルタ回路9を構成するローパスフィルタ7及び8の実フィルタ例として、図4(1)に示す従来例のほか、図5(1)に示すような5次のバタワースローパスフィルタを用いてもよい。
【0016】
この実フィルタは、図示のように、5段縦続接続したオペアンプOP1〜OP5を有し、その1段目のローパスフィルタ7_1は、図4(1)に示した実フィルタ7におけるローパスフィルタ7aと同じ構成であるが、オペアンプOP2とOP3は、図示のように抵抗とコンデンサを接続することによりピーキング機能を備えた2次のローパスフィルタ7_2を構成している。同様に、オペアンプOP4及びOP5も、図示のような抵抗とコンデンサを接続することにより、やはりピーキング機能を備えた2次のローパスフィルタ7_3を構成している。ただし、ローパスフィルタ7_2及び7_8において、各コンデンサには可変コンデンサが使用される。
【0017】
このようにして、1次+2次×2=5次のバタワースローパスフィルタが構成されるが、ローパスフィルタ7_1は、図5(2)に示すように、図4(2)に示した減衰特性と同様に3dBの減衰を呈する。また、2次のローパスフィルタ7_2は、図5(2)に示すように、2次の帯域において6dBの減衰を有するが、2dBのピーキングがあるので、結果として4dBの減衰特性を呈する。さらに、2次のローパスフィルタ7_3は、同図(2)に示すように、2次の帯域において6dBの減衰を呈するが、10dBのピーキングがあるので、結果として4dBの増幅特性を呈する。
【0018】
この結果、同図(3)に示すように、ローパスフィルタ7_1〜7_3で合計15dBの減衰が生ずるが、2次ローパスフィルタ7_2及び7_3で12dBのピーキングが与えられるので、合計として帯域における減衰は3dBに抑制される。
【0019】
図6には、図4(1)に示した1次のローパスフィルタを5段縦続接続した場合の実フィルタの減衰特性と、図5(1)に示した5次のバタワースローパスフィルタによる実フィルタの減衰特性を比較して示したものである。
【0020】
図6(1)に示す減衰特性は、図4(3)に示す減衰特性と同じものであるが、これは1次のローパスフィルタを5段縦続接続した実フィルタの減衰特性であるため、信号の高い周波数部分は15dB減衰してしまう。図6(2)に示す5次のバタワースローパスフィルタによる実フィルタの減衰特性は、3dBの減衰で抑えられることが分かる。
【0021】
従って、図3のRFモジュール100におけるフィルタ回路9には、図7に示すように、ローパスフィルタ7及び8として、図5(1)に示した5次のバタワースローパスフィルタを用いることが好ましい。なお、バタワースローパスフィルタには、5次だけでなく、3次や7次、或いはは9次などの次数も存在する。
【0022】
図7に示すようにフィルタ回路9に実フィルタ7及び8を用いた場合の周波数特性が図8(1)に示されている。この周波数特性は、ゼロIF方式の周波数特性と称され、正の周波数と負の周波数の区別が無く、-f-3dB〜f-3dBの周波数帯域の信号を通過させる。
【0023】
このようなゼロIF方式のフィルタは、OFDM(Orthogonal FrequencyDivision Multiplexing)やUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)のようなスペクトル拡散を行う方式において有効である。
【0024】
一方、GSM(Global System for Mobile communication)やDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)では、低IF方式が有効であることが知られており、この低IF方式の周波数特性が図8(2)に示されている。
【0025】
この低IF方式の周波数特性では、図示のようにf-3dBの周波数帯域の信号は通すが、-f-3dBの周波数帯域の信号は通さない。すなわち、信号が実質的に正の周波数帯域成分しか無く、負の周波数帯域成分が無い場合、負の周波数帯域に雑音があっても取り除くことができる利点がある。
【0026】
このような、図8(2)に示す周波数特性を得るには、図7に示すような実フィルタ7及び8によるフィルタ回路9では実現できず、図9に示すような複素フィルタを用いる必要がある。
【0027】
この複素フィルタは、図7に示したフィルタ回路9において、実フィルタ7と実フィルタ8との間を抵抗によって相互接続したものである。すなわち、各実フィルタにおける同一段のオペアンプ間同士において、実フィルタ7の側のオペアンプの入力端子は、実フィルタ8の側の対応するオペアンプの出力端子と同じ極性の関係、すなわち、非反転入力端子は非反転出力端子、反転入力端子は反転出力端子というように同じ極性の関係で接続されており、実フィルタ7の出力端子は、対応する実フィルタ8のオペアンプの入力端子と反転した関係、すなわち、非反転出力端子は反転入力端子に接続され、反転出力端子は非反転入力端子に接続される。
【0028】
例えば、実フィルタ7の1次ローパスフィルタ7_1のオペアンプOP1の反転入力端子は、抵抗R21を介して実フィルタ8の1次ローパスフィルタ8_1のオペアンプOP1の反転出力端子に接続され、同様にローパスフィルタ7_1のオペアンプOP1の非反転入力端子は、抵抗R22を介してローパスフィルタ8_1のオペアンプOP1の非反転出力端子に接続されている。また、1次ローパスフィルタ7_1のオペアンプOP1の非反転出力端子は、抵抗R23を介して1次ローパスフィルタ8_1のオペアンプOP1の反転入力端子に接続され、ローパスフィルタ7_1のオペアンプOP1の反転出力端子は、抵抗R24を介してローパスフィルタ8_1のオペアンプ8_1の非反転入力端子に接続されるというように構成されている。
【0029】
同様に他のオペアンプOP2〜OP5においても実フィルタ7及び8の間で図示のとおり抵抗R31〜R34,R41〜R44,R51〜R54,及びR61〜R64で相互接続されている。
【0030】
このように、図9に示すような複素フィルタを用いることにより、図8(2)に示すような低IF特性を示す理由を説明したものが図10に示されている。
【0031】
図10において、まず、正の周波数とは同図(1)(a)に示すように、I成分の位相に比べて、Q成分の位相が90°遅れていることを示す。また、負の周波数とは、同図(2)(a)に示すように、I成分の位相に比べてQ成分の位相が90°進んでいることを示す。また、正の周波数の場合、図10(1)(a)に示すように、Iin,Qin ,Iinx ,Qinxはそれぞれ90°ずつ位相がずれている。
【0032】
そして、ローパスフィルタの遅延動作により、信号周波数では、入力対出力が90°ずれるように接続する。例えば、帯域1MHzの信号では周期が1μsであるので、ローパスフィルタでは、その1/4の0.25μsの遅延が生じると90°ずれることになる。
【0033】
従って、正の周波数帯域の信号を通過させ、負の周波数帯域の信号を減衰させ複素フィルタでは、図9に示したように、Iin‐Qout1x, Qin‐Iout1 , Iinx‐Qout1, 及びQinx‐Iout1x間をそれぞれ抵抗を介して接続すればよい。これにより、正の周波数では図10(1)(b)に示す如く同極性になって強め合うので信号が良好に通過し、負の周波数では図10(2)(b)に示す如く逆極性になって弱め合うので信号が減衰することになる。以って、図8(2)に示すような低IF特性が得られることになる。
【0034】
図3に示したフィルタ回路9を、図7に示すようなゼロIF特性の実フィルタ7及び8で構成する場合には、上述したように、OFDMやUMTSのような通信方式が有効である。これは、802.11b方式による信号スペクトルにおいて望ましい。
【0035】
これを示したのが図11であり、ローパスフィルタの問題として、ゼロMHz付近は1/fノイズによって信号のSN(信号/ノイズ比)が劣化するとともに、周波数が高いと回路の利得や帯域劣化で波形歪みが大きくなるということから、802.11b信号とゼロIF方式及び低IF方式との関係は次のとおりである。
【0036】
(1)スペクトルの中心は信号が無いので、ゼロIF方式において1/fノイズがあっても問題無い(同図(1))。
【0037】
(2)信号スペクトルが広いため、低IF方式では波形歪みの悪影響を受ける領域に信号が入る(同図(2))。
【0038】
従って、このような802.11bの信号に対しては、図7に示すようなゼロIF方式の実フィルタの方が好ましいことが分かる。
【0039】
また、Bluetooth方式に関しては、図12に示すように、下記の点から、低IF方式の複素フィルタ(特許文献1)が好ましい。
【0040】
(1)スペクトルの中心に信号があり、ゼロIF方式では1/ fノイズがあると悪影響を受ける(同図(1))。
【0041】
(2)信号スペクトルが狭いため、低IF方式でも波形歪みの無い領域に設計できる(同図(2))。
【0042】
従って、802.11b方式とBluetooth方式の両方を受信できる無線受信装置では、ゼロIF方式と低IF方式の両方が必要となる。
【0043】
このように、ゼロIF方式と低IF方式を共用する方式として、特表2004-515104号公報(特許文献2)がある。これは、ゼロIF方式を前提に実フィルタを用い、低IF方式の場合はフィルタ出力の一方を用い、後段のデジタル複素フィルタを用いるという構成を採っている。
【特許文献1】米国特許第4,914,408号
【特許文献2】特表2004-515104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
上記の特許文献2では、ゼロIF方式と低IF方式とを共用するが、実フィルタは部分的にしか共用されていないため、設置する後段のデジタル複素フィルタがチップ面積及び消費電力の点で大きくなってしまうという問題があった。
【0045】
従って本発明は、ゼロIF方式と低IF方式を共用するフィルタ回路において、回路構成を簡素化することによりチップ面積及び消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0046】
上記の目的を達成するため、本発明に係るフィルタ回路は、受信信号から分離されたI成分及びQ成分に対して、それぞれ設けられたゼロIF方式の第1及び第2の実フィルタと、該ゼロIF方式から低IF方式への切替信号を受けたとき該第1及び第2の実フィルタ間を相互素子で接続して複素フィルタにするスイッチ部と、を備えたことを特徴とする。
【0047】
すなわち、本発明では、例えば無線通信の受信信号処理系統にあるフィルタ回路が、I成分とQ成分に信号分離後、複素フィルタを実現するためにI成分とQ成分の実フィルタ間に相互素子をオン/オフするためのスイッチ部を有し、このスイッチ部をオンにすると低IF方式の複素フィルタになり、オフにするとゼロIF方式の実フィルタになるようにしたものである。
【0048】
ここで、上記の相互素子としては抵抗を用いることができる。
【0049】
また、上記の実フィルタは、例えばバタワースローパスフィルタである。
【0050】
さらに、上記の切替信号は、例えば、所定データを受けた信号変換回路によって発生するか、又は2つの特定の電源に基づく信号である。
【発明の効果】
【0051】
このように本発明によれば、ゼロIF方式と低IF方式を切替方式化することにより、実フィルタは全て共用化されることになり、簡単な構成で製造時のマスク費用や、品質管理にかかるコストを半減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
図1は、本発明に係るフィルタ回路の実施例を示したものである。この実施例では、図9に示した従来例において、実フィルタ7と8を接続する抵抗をオン/オフするためのスイッチを設け、該抵抗とスイッチでスイッチ部SWを構成した点が異なっている。
【0053】
このスイッチ部SWにおいて、1次ローパスフィルタ7_1と8_1の各オペアンプOP1同士を接続する抵抗R21,R22,R23,R24を、それぞれ、R21a及びR21b,R22a及びR22b,R23a及びR23b,R24a及びR24bに分割するとともに、これらをスイッチSW1でオン/オフ接続する。同様に2次ローパスフィルタ7_2と8_2の各オペアンプOP2同士を接続する抵抗R31,R32,R33,R34を、それぞれ抵抗R31a及びR31b,R32a及びR32b,R33a及びR33b,R34a及びR34bに分割するとともに、これらをスイッチSW2でオン/オフ接続する。同様に2次ローパスフィルタ7_2と8_2の各オペアンプOP3同士を接続する抵抗R41,R42,R43,R44を、それぞれ抵抗R41a及びR41b,R42a及びR42b,R43a及びR43b,R44a及びR44bに分割するとともに、これらをスイッチSW3でオン/オフ接続する。
【0054】
さらに、2次ローパスフィルタ7_3と8_3の各オペアンプOP4同士を接続する抵抗R51,R52,R53,R54を、それぞれ抵抗R51a及びR51b,R52a及びR52b,R53a及びR53b,R54a及びR54bに分割するとともに、これらをスイッチSW4でオン/オフ接続する。同様に2次ローパスフィルタ7_3と8_3の各オペアンプOP5同士を接続する抵抗R61,R62,R63,R64を、それぞれ抵抗R61a及びR61b,R62a及びR62b,R63a及びR63b,R64a及びR64bに分割するとともに、これらをスイッチSW5でオン/オフ接続するように構成している。なお、抵抗R21a〜R64bはスイッチSW1〜SW5の両端間で分割されているが、分割せずにスイッチSW1〜SW5の一方に接続するように構成してもよいことは言うまでもない。
【0055】
このような構成において、ゼロIF/低IF切替信号SSをSW1〜SW5に与えることにより、切替信号SSが“オフ”でゼロIFを示している時には、スイッチSW1〜SW5は共にオフ状態に制御されて図7に示した実フィルタによるフィルタ回路が実現され、切替信号SSが“オン”で低IF方式を示している時には、スイッチSW1〜SW5を共にオン状態に制御することにより、それぞれ図9に示した複素フィルタによるフィルタ回路を実現することができる。
【0056】
図2には、図1に示したスイッチ部SWの実施例が示されている。この内、図2(1)に示した実施例の場合には、スイッチ部SWを、集積回路50に搭載するとき、この集積回路50の特定の端子(PAD)51を電源1に接続するか、又は電源2に接続するかによってゼロIF方式か又は低IF方式かを選択切替することができる。
【0057】
また、同図(2)の実施例の場合には、データとクロックとトリガ信号とを用いることにより、これを入力した信号変換回路52が該データを判別し、このデータがゼロIF方式を示しているか、または低IF方式を示しているかを判別し、これに応じて切替信号SSを発生してスイッチ部SWに送るように構成している。
【0058】
なお、本発明は、上記実施例によって限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るフィルタ回路の一実施例を示した回路図である。
【図2】本発明に係るフィルタ回路に用いるスイッチ部の実施例を示したブロック図である。
【図3】本発明及び従来例に係るフィルタ回路を備えた無線通信装置における一般的なRFモジュールを示した回路図である。
【図4】図3に示したフィルタ回路において1次のローパスフィルタを5段縦続接続した実フィルタ例を示した図である。
【図5】図3に示したフィルタ回路において5次のバタワースローパスフィルタを用いた実フィルタ例を示した図である。
【図6】1次のローパスフィルタを5段縦続接続した実フィルタと5次のバタワースローパスフィルタを用いた実フィルタの減衰特性を比較したグラフ図である。
【図7】図3に示したフィルタ回路において5次のバタワースローパスフィルタを使用した構成例を示した回路図である。
【図8】ゼロIF方式と低IF方式の周波数特性を示した波形図である。
【図9】図3に示すフィルタ回路に5次のバタワースローパスフィルタを用い、且つ両者を抵抗で接続した従来の複素フィルタを示した回路図である。
【図10】図9に示した複素フィルタのI成分とQ成分の位相関係を示した図である。
【図11】ゼロIF方式と低IF方式の適用信号例(その1)を説明するための波形図である。
【図12】ゼロIF方式と低IF方式の適用信号例(その2)を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0060】
100 RFモジュール
7,8 ローパスフィルタ
9 フィルタ回路
7_1, 8_1 1次ローパスフィルタ
7_2, 7_3, 8_2, 8_3 2次ローパスフィルタ
50 IC回路
52 信号変換回路
SW スイッチ部
SW1〜SW5 スイッチ
SS ゼロIF/低IF切替信号
OP1〜OP5 オペアンプ
R1〜R20, R21a〜R64b 抵抗
C1〜C10 コンデンサ
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号から分離されたI成分及びQ成分に対して、それぞれ設けられたゼロIF方式の第1及び第2の実フィルタと、
該ゼロIF方式から低IF方式への切替信号を受けたとき該第1及び第2の実フィルタ間を相互素子で接続して複素フィルタにするスイッチ部と、
を備えたことを特徴とするフィルタ回路。
【請求項2】
請求項1において、
該相互素子が抵抗であることを特徴とするフィルタ回路。
【請求項3】
請求項1において、
該実フィルタが、バタワースローパスフィルタであることを特徴とするフィルタ回路。
【請求項4】
請求項1において、
該切替信号が、所定データを受けた信号変換回路によって発生されることを特徴とするフィルタ回路。
【請求項5】
請求項1において、
該切替信号が、2つの特定の電源に基づく信号であることを特徴とするフィルタ回路。
【請求項1】
受信信号から分離されたI成分及びQ成分に対して、それぞれ設けられたゼロIF方式の第1及び第2の実フィルタと、
該ゼロIF方式から低IF方式への切替信号を受けたとき該第1及び第2の実フィルタ間を相互素子で接続して複素フィルタにするスイッチ部と、
を備えたことを特徴とするフィルタ回路。
【請求項2】
請求項1において、
該相互素子が抵抗であることを特徴とするフィルタ回路。
【請求項3】
請求項1において、
該実フィルタが、バタワースローパスフィルタであることを特徴とするフィルタ回路。
【請求項4】
請求項1において、
該切替信号が、所定データを受けた信号変換回路によって発生されることを特徴とするフィルタ回路。
【請求項5】
請求項1において、
該切替信号が、2つの特定の電源に基づく信号であることを特徴とするフィルタ回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−205962(P2008−205962A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41304(P2007−41304)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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