フィルム状接着剤、接着シート及び半導体装置
【課題】本発明は、極薄ウェハの保護テープ、又は貼り合わせるダイシングテープの軟化温度よりも低い温度でウェハ裏面にラミネートでき、かつウェハの反り等の熱応力を低減でき、半導体装置の製造工程を簡略化でき、さらに耐熱性及び耐湿信頼性に優れるダイ接着用フィルム状接着剤、当該フィルム状接着剤とダイシングテープを貼り合せた接着シートならびに半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも接着剤層を有してなるフィルム状接着剤であって、前記接着剤層は、(A)SP値が10.0〜11.0(cal/cm3)1/2であるポリイミド樹脂、及び(B)エポキシ樹脂を含有し、
tanδピーク温度が−20〜60℃かつフロー量が100〜1500μmであるフィルム状接着剤とする。
【解決手段】少なくとも接着剤層を有してなるフィルム状接着剤であって、前記接着剤層は、(A)SP値が10.0〜11.0(cal/cm3)1/2であるポリイミド樹脂、及び(B)エポキシ樹脂を含有し、
tanδピーク温度が−20〜60℃かつフロー量が100〜1500μmであるフィルム状接着剤とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤、接着シート及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材の接合には、銀ペーストが主に使用されていたが、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化、細密化が要求されるようになってきており、こうした要求に対して、銀ペーストでは、はみ出しや半導体素子の傾きに起因するワイヤボンディング時における不具合の発生、接着剤層の膜厚の制御困難性、及び接着剤層のボイド発生などにより、上記要求に対処しきれなくなってきている。そのため、上記要求に対処するべく、近年、フィルム状の接着剤が使用されるようになってきた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
このフィルム状接着剤は、個片貼付け方式あるいはウェハ裏面貼付方式において使用されている。前者の個片貼付け方式のフィルム状接着剤を用いて半導体装置を製造する場合、リール状のフィルム状接着剤をカッティングあるいはパンチングによって個片に切り出した後、支持部材に接着し、上記フィルム状接着剤付き支持部材に、ダイシング工程によって個片化された半導体素子を接合して半導体素子付き支持部材を作製し、その後、ワイヤボンド工程、封止工程などを経ることによって半導体装置が得られる(例えば、特許文献3参照)。しかし、上記個片貼付け方式のフィルム状接着剤を用いるためには、フィルム状接着剤を切り出して支持部材に接着する専用の組立装置が必要であることから、銀ペーストを使用する方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0004】
一方、ウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤を用いて半導体装置を製造する場合、まず半導体ウェハの裏面にフィルム状接着剤を貼付け、さらにフィルム状接着剤の他面にダイシングテープを貼り合わせ、その後、上記ウェハからダイシングによって半導体素子を個片化し、個片化したフィルム状接着剤付き半導体素子をピックアップし、それを支持部材に接合し、その後の加熱、硬化、ワイヤボンドなどの工程を経ることにより、半導体装置が得られることとなる。このウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤は、フィルム状接着剤付き半導体素子を支持部材に接合するため、フィルム状接着剤を個片化する装置を必要とせず、従来の銀ペースト用の組立装置をそのままあるいは熱盤を付加するなどの装置の一部を改良することにより使用できる。そのため、フィルム状接着剤を用いた組立方法の中で製造コストが比較的安く抑えられる方法として注目されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
しかし、最近になって、上述の半導体素子の小型薄型化・高性能化に加えて、多機能化が進み、それに伴って2個以上の半導体素子を積層化した3Dパッケージが急増しており、それに伴って半導体ウェハのさらなる極薄化が進んでいる。このような極薄ウェハは脆く割れやすいため、搬送時のウェハ割れや、ウェハ裏面へのフィルム状接着剤の貼付け時(すなわちラミネート時)のウェハ割れの発生が顕在化してきた。これを防止するため、ウェハ表面に材質がポリオレフィン系のバックグラインドテープを保護テープとして貼り合わせる手法が採用されつつある。しかし、上記バックグラインドテープの軟化温度が100℃以下であるため、ウェハ裏面に100℃以下の温度でラミネートが可能なフィルム状接着剤の要求が強くなってきている。
【0006】
さらに、ダイシング後のピックアップ性、すなわち上記フィルム状接着剤とダイシングテープとの易剥離性等、パッケージ組立時の良好なプロセス特性が求められる。このような低温ラミネート性を含むプロセス特性とパッケージとしての信頼性、すなわち耐リフロー性を高度に両立できるフィルム状接着剤に対する要求が強くなってきている。これまで、低温加工性と耐熱性を両立すべく、比較的Tgが低い熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂を組み合わせたフィルム状接着剤が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−192178号公報
【特許文献2】特開平4−234472号公報
【特許文献3】特開平9−17810号公報
【特許文献4】特開平4−196246号公報
【特許文献5】特許第3014578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、低温ラミネート性と耐リフロー性を両立させるためには、さらなる詳細な材料設計が必要である。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、極薄ウェハに対応できるウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤、及び前記フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼りあわせた接着シートを提供することにより、上述のダイシング工程までの貼付工程を簡略化することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、フィルム状接着剤を溶融する温度まで加熱し、ウェハ裏面に前記接着シートを貼り付ける(以下、ラミネートという)際の加熱温度を上記のUV型ダイシングテープの軟化温度よりも低くすることができるフィルム状接着剤を提供することで、作業性の改善のみならず、大径化薄膜化するウェハの反り、ダイシング時のチップ飛び、ピックアップ性といった問題を解決することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、半導体素子搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性および耐湿性を有し、かつ作業性、低アウトガス性に優れるフィルム状接着剤を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、半導体装置の製造工程を簡略化でき、かつ信頼性に優れる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、極薄ウェハの保護テープ、又は貼り合わせるダイシングテープの軟化温度よりも低い温度でウェハ裏面にラミネートでき、かつウェハの反り等の熱応力を低減でき、半導体装置の製造工程を簡略化でき、さらに耐熱性及び耐湿信頼性に優れるダイ接着用フィルム状接着剤、及び前記フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼り合せた接着シートの開発及び半導体装置について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記<1>〜<23>のフィルム状接着剤ならびに接着シート及び半導体装置を提供するものである。
【0015】
<1>少なくとも接着剤層を有してなるフィルム状接着剤であって、前記接着剤層は、(A)SP値が10.0〜11.0(cal/cm3)1/2であるポリイミド樹脂、及び(B)エポキシ樹脂を含有し、tanδピーク温度が−20〜60℃かつフロー量が100〜1500μmであるフィルム状接着剤。
【0016】
<2>前記(B)エポキシ樹脂は3官能以上のエポキシ樹脂および/または室温で固体状のエポキシ樹脂を含む上記<1>に記載のフィルム状接着剤。
【0017】
<3>前記(B)エポキシ樹脂は、3官能以上のエポキシ樹脂10〜90重量%、かつ室温で液状のエポキシ樹脂10〜90重量%を含む上記<1>に記載のフィルム状接着剤。
【0018】
<4>前記(A)ポリイミド樹脂100重量部に対して、前記(B)エポキシ樹脂が1〜50重量部含まれる上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0019】
<5>前記(A)ポリイミド樹脂として、DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差が10℃以内の条件を満たす酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂を、全ポリイミド樹脂の50重量%以上含有する上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0020】
<6>さらに(C)エポキシ樹脂硬化剤を含有してなる上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0021】
<7>前記(C)エポキシ樹脂硬化剤は、分子内に水酸基を2個以上有し、数平均分子量が400〜1500であるフェノール系化合物である上記<6>に記載のフィルム状接着剤。
【0022】
<8>前記(C)エポキシ樹脂硬化剤は、分子内に芳香環を3個以上有するナフトール系化合物、又は、トリスフェノール系化合物である上記<6>に記載のフィルム状接着剤。
【0023】
<9>前記(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量と、前記(C)エポキシ樹脂硬化剤のOH当量の当量比が、0.95〜1.05:0.95〜1.05である上記<7>または<8>に記載のフィルム状接着剤。
【0024】
<10>前記(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と下記式(I)
【化1】
【0025】
(式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示しmは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの1モル%以上含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0026】
<11>前記(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と下記式(I)
【化2】
【0027】
(式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示しmは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの1〜90モル%、下記一般式(II)
【化3】
【0028】
(式中、nは5〜20の整数を示す)
で表される脂肪族ジアミンを全ジアミンの0〜99モル%、及び下記一般式(III)
【化4】
【0029】
(式中、Q4及びQ9は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7、及びQ8は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜5の整数を示す)
で表されるシロキサンジアミンを全ジアミンの0〜99モル%含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0030】
<12>前記(A)ポリイミド樹脂が、エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物を全テトラカルボン酸二無水物の50モル%以上含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である上記<1>〜<11>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0031】
<13>前記エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(IV)
【化5】
【0032】
で表されるテトラカルボン酸二無水物である上記<12>に記載のフィルム状接着剤。
【0033】
<14>前記3官能以上のエポキシ樹脂が、下記一般式(VII)
【化6】
【0034】
(式中、Q10、Q11及びQ12は各々独立に水素又は炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、rは1〜20の整数を示す)
で表されるノボラック型エポキシ樹脂である上記<2>〜<13>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0035】
<15>さらに(D)フィラーを含有してなる上記<1>〜<14>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0036】
<16>前記(D)フィラーが絶縁性のフィラーである上記<15>に記載のフィルム状接着剤。
【0037】
<17>前記(D)フィラーの平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が25μm以下である上記<15>または<16>に記載のフィルム状接着剤。
【0038】
<18>前記(D)フィラーの含量が1〜50体積%である上記<15>〜<17>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0039】
<19>前記フィルム状接着剤の表面エネルギーと、ソルダーレジスト材が付いた有機基板の表面エネルギーの差が10mN/m以内である上記<1>〜<18>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0040】
<20>シリコンウェハに80℃でラミネートした段階で、前記シリコンウェハに対する25℃での90°ピール剥離力が5N/m以上である上記<1>〜<19>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0041】
<21>基材層、粘着剤層、及び上記<1>〜<20>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤層とがこの順に形成されてなる接着シート。
【0042】
<22>前記粘着剤層が、放射線硬化型粘着剤層である上記<21>に記載の接着シート。
【0043】
<23>上記<1>〜<20>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤を介して、(1)半導体素子と半導体搭載用支持部材、及び(2)半導体素子同士、の少なくとも1つが接着された構造を有してなる半導体装置。
【0044】
本出願は、同出願人により先にされた日本国特許出願、すなわち、2003−164802号(出願日2003年6月10日)および2003−166187号(出願日2003年6月11日)に基づく優先権主張を伴うものであって、これらの明細書を参照のためにここに組み込むものとする。
【発明の効果】
【0045】
以上のような本発明によれば、(1)極薄ウェハ用途や100℃以下の低温貼り付けに対応できるウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤、(2)上述のダイシング工程までの貼付工程を簡略化可能とする、上記フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼りあわせた接着シート、(3)ウェハ裏面に上記接着シートを貼り付ける(以下、ラミネートという)際に、フィルム状接着剤が溶融する温度まで加熱するが、この加熱温度を上記のUV型ダイシングテープの軟化温度よりも低くすることができ、作業性の改善のみならず、大径化薄膜化するウェハの反りの問題を解消可能なフィルム状接着剤、(4)半導体素子搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有し、かつ作業性、低汚染性に優れるフィルム状接着剤、(5)半導体装置の製造工程を簡略化でき、信頼性に優れる半導体装置、を提供することが可能となる。
【0046】
前述したところが、この発明の好ましい実施態様であること、多くの変更及び修正をこの発明の精神と範囲とにそむくことなく実行できることは当業者によって了承されよう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に関わるラミネート方法の一例を示す図である。
【図2】本発明に関わるラミネート方法の一例を示す図である。
【図3】シリコンウェハに対する90°ピール剥離力の測定方法の一例を示す図である。
【図4】ダイシングテープに対する90°ピール剥離力の測定方法の一例を示す図である。
【図5】一般的な構造の半導体装置の一例を示す図である。
【図6】半導体素子同士を接着した構造を有する半導体装置の一例を示す図である。
【図7】接着剤層15のみからなる単層のフィルム状接着剤の断面図である。
【図8】基材フィルム16の両面に接着剤層15を設けてなるフィルム状接着剤の断面図である。
【図9】基材フィルム17と接着剤層18とカバーフィルム19とを備えるフィルム状接着剤の断面図である。
【図10】プッシュプルゲージを用いたピール強度測定方法を表す図である。
【図11】ポリイミドの主鎖骨格の種類とフロー量との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明のフィルム状接着剤は、(A)熱可塑性樹脂および(B)エポキシ樹脂を必須成分として含有してなり、極薄ウェハの保護テープ、又は貼り合わせるダイシングテープの軟化温度よりも低い温度でウェハ裏面にラミネートでき、ダイシング後のダイシングテープとの良好なピックアップ性を確保でき、かつ優れた耐熱性及び耐湿信頼性を有するものである。
【0049】
(A)熱可塑性樹脂
上記(A)熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、フェノキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の樹脂であり、中でもポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂が好ましい。
【0050】
上記ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを等モル又はほぼ等モル用い(各成分の添加順序は任意)、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。
【0051】
上記ポリアミド酸は、50〜80℃の温度で加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法と、脱水剤を使用する化学閉環法で行うことができる。
【0052】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(IX)
【化7】
【0053】
(式中、nは2〜20の整数を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物、下記式(IV)
【化8】
【0054】
で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、上記一般式(IX)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。中でも、優れた耐湿信頼性を付与できる点で上記式(IV)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらテトラカルボン酸二無水物は単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
また、上記一般式(IV)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物の好ましい代表例であり、このようなテトラカルボン酸二無水物を用いることで、フィルム状接着剤の耐湿信頼性を向上させることができる。その含量は、全テトラカルボン酸二無水物に対して40モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上が極めて好ましい。40モル%未満であると、上記式(IV)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用したことによる耐湿信頼性の効果を充分に確保することができない。
【0056】
以上の酸二無水物は、無水酢酸で再結晶精製したものを使用することが適度な流動性と硬化反応の高効率を両立できる点で好ましい。具体的には、DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差が10℃以内となるように精製処理する。この処理により純度を高めた酸二無水物を用いて合成したポリイミド樹脂の含量が、全ポリイミド樹脂の50wt%以上とする。50wt%以上にすると、フィルム状接着剤の諸特性(特に接着性や耐リフロークラック性)を向上させることができるため好ましい。
【0057】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記式(I)
【化9】
【0058】
(式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示しmは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(II)
【化10】
【0059】
(式中、nは5〜20の整数を示す)
で表される脂肪族ジアミン、下記一般式(III)
【化11】
【0060】
(式中、Q4及びQ9は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7、及びQ8は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜5の整数を示す)
で表されるシロキサンジアミン等が挙げられ、中でも低応力性、低温ラミネート性、低温接着性、レジスト材付き有機基板に対する高接着性を付与できる点、また、熱時の適度な流動性を確保できる点で、上記一般式(I)が好ましい。この場合、全ジアミンの1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらにより好ましい。1モル%未満では、上記特性の付与ができず、好ましくない。
【0061】
また、酸二無水物との反応性の確保、低吸水性及び低吸湿性を付与できる点で、上記一般式(I)に加えて、上記一般式(II)及び/又は(III)の組み合わせが好ましい。この場合、一般式(I)で表される脂肪族エーテルジアミンが全ジアミンの1〜90モル%、一般式(II)で表される脂肪族ジアミンが全ジアミンの0〜99モル%、下記一般式(III)で表されるシロキサンジアミンが全ジアミンの0〜99モル%であることが好ましい。より好ましくは、一般式(I)で表される脂肪族エーテルジアミンが全ジアミンの1〜50モル%、一般式(II)で表される脂肪族ジアミンが全ジアミンの20〜80モル%、下記一般式(III)で表されるシロキサンジアミンが全ジアミンの20〜80モル%である。上記モル%の範囲外であると、低温ラミネート性及び低吸水性の付与の効果が小さくなり好ましくない。
【0062】
また、上記一般式(I)で表される脂肪族エーテルジアミンとしては、具体的には、
【化12】
【0063】
等があり、中でも、低温ラミネート性と有機レジスト付き基板に対する良好な接着性を確保できる点で、下記式(V)
【化13】
【0064】
(式中、mは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンがより好ましい。具体的には、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、ED−600、ED−900、ED−2001、EDR−148(以上、サン テクノケミカル(株)製 商品名)、ポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000(以上、BASF(製)、商品名)等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0065】
また、上記一般式(II)で表される脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられ、中でも1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンが好ましい。
【0066】
また、上記一般式(III)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、前記式(III)中、<pが1のとき>、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等があり、<pが2のとき>、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等がある。
【0067】
上記ポリイミド樹脂は単独又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)してもよい。
【0068】
本発明のフィルム状接着剤のラミネート可能温度は、ウェハの保護テープ、すなわちバックグラインドテープの耐熱性あるいは軟化温度以下、又はダイシングテープの耐熱性あるいは軟化温度以下であることが好ましく、また半導体ウェハの反りを抑えるという観点からも10〜80℃が好ましく、さらに好ましくは10〜60℃、さらにより好ましくは10〜40℃である。上記ラミネート温度を達成するためには、上記ポリイミド樹脂のTgは−20〜60℃が好ましく、−10〜40℃がより好ましい。上記Tgが60℃を超えると、上記ラミネート温度が80℃を超える可能性が高くなる傾向がある。また、ポリイミドの組成を決定する際には、そのTgが−20〜60℃となるようにすることが好ましい。
【0069】
また、上記ポリイミド樹脂の重量平均分子量は10000〜200000の範囲内で制御されていることが好ましく、10000〜100000がより好ましく、10000〜80000が極めて好ましい。上記重量平均分子量が10000より小さいと、フィルム形成性が悪くなる、また、フィルムの強度が小さくなり、200000を超えると、熱時の流動性が悪くなり、基板上の凹凸に対する埋め込み性が低下するので、いずれも好ましくない。
【0070】
上記ポリイミドのTg及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、ラミネート温度を低く抑えることができるだけでなく、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができ、チップの反りの増大を抑制できる。なお、上記のTgとは、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときのTgである。また、上記の重量平均分子量とは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製C−R4A)を用いて、合成したポリイミドをポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量のことである。
【0071】
また、上記ポリイミド樹脂のSP値(溶解度パラメータ)は、10.0〜11.0(cal/cm3)1/2の範囲内で制御されていることが好ましい。上記SP値が10.0より小さいと、分子間の凝集力が小さく、フィルム状接着剤のBステージでの熱時流動性が必要以上に大きくなる、また、低極性化あるいは疎水性化の方向に進むため、フィルム状接着剤の表面エネルギーが低くなり、基板上のレジスト材の表面エネルギー(40mN/m前後)との差が大きくなる結果、該基板との接着性の低下を招くため好ましくない。上記SP値が11.0よりも大きくなると、親水性化に伴い、フィルム状接着剤の吸水率の上昇を招くため好ましくない。なお、上記SP値は、下記式により算出する。
【0072】
SP値(δ)=ΣΔF/ΣΔυ
上記のΣΔFは各種原子あるいは各種原子団の25℃におけるモル引力定数の総和、ΣΔυは各種原子あるいは各種原子団のモル体積の総和であり、各種原子あるいは各種原子団のΔF及びΔυの値は、下記表1に記載されているOkitsuの定数(沖津俊直著、「接着」、第40巻8号、p342(1996))を用いた。
【表1】
【0073】
前記SP値は、ポリイミドのイミド基濃度、あるいはポリイミド主鎖骨格中の極性基濃度を変化させることによって制御できる。ポリイミドのイミド基濃度については、イミド基間の距離によって制御する。例えば、ポリイミドの主鎖に、長鎖のアルキレン結合、あるいは長鎖のシロキサン結合などを導入することによって、イミド基間の距離を大きくすると、イミド基濃度は低くなる。また、前記の結合は比較的極性が低いので、これらの結合を含む骨格を選択、導入すると、構造全体の極性基濃度は低くなる。結果として、ポリイミドのSP値は低くなる方向に進む。一方、上記とは逆の手法、すなわち、イミド基間の距離を小さくする、あるいは、主鎖にエーテル結合のような極性の高い結合を含む骨格を選択、導入することにより、ポリイミドのSP値は高くなる方向に進む。このようにして、使用ポリイミドのSP値を10.0〜11.0の範囲内に調整する。
【0074】
ポリイミドのTgを下げるためには、通常、主鎖骨格に、長鎖のシロキサン結合、長鎖の脂肪族エーテル結合、長鎖のメチレン結合等を導入し、ポリイミドの主鎖を柔軟な構造にする手法が考えられる。
【0075】
また、ポリイミドの主鎖構造の種類とフロー量との関係を検討した結果、長鎖のシロキサン結合を導入したポリイミドを用いたフィルムは、この骨格を含有しないフィルムよりもフロー量が大きくなる傾向にあることを見出した(図11)。これは、骨格自体のTgの差に起因し、上記の長鎖骨格の中では、シロキサン骨格のTgが最も低く、最も柔軟であるためであると考えられる。このようにして、導入骨格のTgおよび骨格の長さを調整することによって、フィルムのフロー量を制御できる。また、フィルム組成中に、常温で低粘度の液状エポキシ樹脂を導入することによって、フィルムのフロー量は大きくなる方向に進むため、前記エポキシ樹脂の導入量を調整することによって、フィルムのフロー量を制御できる。
【0076】
以上の知見を基に、ポリイミドのSP値を下げずに、フィルムのtanδピーク温度を下げる手法としては、使用ポリイミドの主鎖に、比較的極性の高いエーテル結合を含有する長鎖の脂肪族エーテル骨格などを選択、導入し、使用ポリイミドのSP値の低下を抑制しつつ、ポリイミドのTgを下げる。それによってフィルムのtanδピーク温度を有効に低減できる。また、フィルム組成中に、常温で低粘度の液状エポキシ樹脂を導入することは、フィルムのtanδピーク温度を有効に低減できるので、使用ポリイミドのSP値とフィルムのtanδピーク温度のバランスをとる手法として有効である。このようにして、ポリイミドのSP値を10.0〜11.0(cal/cm3)1/2、フロー量を100〜1500μm、さらにフィルムのTg付近のtanδピーク温度を−20〜60℃の範囲内に制御できるように材料設計する。
【0077】
(B)エポキシ樹脂
本発明に用いる(B)エポキシ樹脂は、特に限定されないが、3官能以上のエポキシ樹脂および/または室温で固体状のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0078】
本発明において、(B)エポキシ樹脂の含有量は、(A)ポリイミド100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは5〜20重量部である。1重量部未満ではポリイミド樹脂との反応による橋かけ効果が得られず、また、50重量部を超えると、熱時アウトガスによる半導体素子又は装置の汚染が懸念されるため、いずれも好ましくない。
【0079】
また、3官能以上のエポキシ樹脂を用いることで、フィルム状接着剤のフロー量が低下してしまう場合には、これを調整する目的で液状のエポキシ樹脂を併用することが好ましい。この場合の配合量としては、3官能以上のエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の10〜90重量%、液状のエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の10〜90重量%含むことが好ましい。例えば、(B1)3官能以上の固形エポキシ樹脂と、(B2)3官能以上の液状エポキシ樹脂と、(B3)2官能の液状エポキシ樹脂とを併用した場合には、(B1)と(B2)の合計(すなわち3官能以上のエポキシ樹脂の合計)を10〜90重量%とし、かつ(B2)と(B3)の合計(すなわち液状エポキシ樹脂の合計)を10〜90重量%とする。また、上記(B1)3官能以上のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂に対する配合量は、より好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜70重量%、極めて好ましくは10〜60重量%である。10重量%未満では硬化物の架橋密度を有効に上げることができない傾向があり、90重量%を超えると硬化前の熱時の流動性が十分に得られない傾向がある。
【0080】
また、(B)エポキシ樹脂として3官能以上のエポキシ樹脂を用いる場合には、上記(A)ポリイミド樹脂100重量部に対して、3官能以上のエポキシ樹脂を5〜30重量部、液状エポキシ樹脂を10〜50重量部含有してなることが、ラミネート温度25〜100℃、組み立て加熱時の低アウトガス性、耐リフロー性、耐湿信頼性等のパッケージとしての良好な信頼性を同時に確保できる点で好ましい。
【0081】
3官能以上のエポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも3個以上のエポキシ基を含むものであれば特に制限はなく、このようなエポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(VII)
【化14】
【0082】
(式中、Q10、Q11及びQ12は各々独立に水素又は炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、rは1〜20の整数を示す)
で表されるノボラック型エポキシ樹脂の他、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン等が挙げられ、上記一般式(VII)で表されるノボラック型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも、硬化物の架橋密度が高く、フィルムの熱時の接着強度を高くすることができる点で、上記一般式(VII)で表されるノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
また、液状のエポキシ樹脂とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有し、10〜30℃で液状エポキシ樹脂であり、前記の液状とは粘調液体の状態も含むものとする。なお、上記固体状とは、室温で固体状の意味であって、温度は特に制限されるものではないが、10〜30℃で固体状の意味である。
【0084】
液状のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等の他、下記一般式(VIII)
【化15】
【0085】
(式中、Q13及びQ16は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基又はフェノキシ基を示し、Q14及びQ15は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基又は水素を示し、tは1〜10の整数を示す)
で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0086】
上記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂としては、例えば、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中から10〜30℃で液状のものを選択する。
【0087】
液状のエポキシ樹脂を選択する場合は、数平均分子量が400〜1500の範囲内のものを選択することが好ましい。これにより、パッケージ組み立て加熱時に、チップ表面、又は装置等の汚染の原因となるアウトガスを有効に低減できる。フィルムの良好な熱時流動性を確保し、低温ラミネート性を付与し、かつ上記のアウトガスを低減できるという点で、一般式(VIII)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0088】
本発明のフィルム状接着剤は、さらに(C)エポキシ樹脂硬化剤を含んでもよい。(C)エポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はなく、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられるが、中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。
【0089】
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中で、数平均分子量が400〜1500の範囲内のものが好ましい。これにより、パッケージ組み立て加熱時に、チップ表面、又は装置等の汚染の原因となるアウトガスを有効に低減できる。中でもパッケージ組み立て加熱時に、チップ表面、又は装置等の汚染、又は臭気の原因となるアウトガスを有効に低減できる点で、ナフトールノボラック樹脂、又はトリスフェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0090】
前記ナフトールノボラック樹脂とは、下記一般式(XI)、又は下記一般式(XII)で表される、分子内に芳香環を3個以上有するナフトール系化合物である。
【化16】
【0091】
上記式(XI)及び(XII)中、R1〜R20はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、又は水酸基を示し、nは1〜10の整数を示す。また、Xは2価の有機基で、例えば、次に示されるような基がある。
【化17】
【0092】
このようなナフトール系化合物をさらに具体的に例示すれば、次の一般式(XIII)、(XIV)で表されるキシリレン変性ナフトールノボラックや、(XV)で表されるp−クレゾールとの縮合によるナフトールノボラック等が挙げられる。
【化18】
【0093】
上記一般式(XIII)および(XIV)中の繰り返し数nは1〜10であることが好ましい。
【0094】
前記トリスフェノール系化合物とは、分子内に3個のヒドロキシフェニル基を有するトリスフェノールノボラック樹脂であり、好ましくは下記一般式(XVI)で表される。
【化19】
【0095】
ただし、上記式(XVI)中、R1〜R10はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、及び水酸基から選ばれる基を示す。また、Dは4価の有機基を示し、そのような4価の有機基の例を以下に示す。
【化20】
【0096】
このようなトリスフェノール系化合物の具体的な例としては、例えば、4,4′,4″−メチリデントリスフェノール、4,4′−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4′,4″−エチリジントリス[2−メチルフェノール]、4,4′,4″−エチリジントリスフェノール、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、2,2′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,5−トリメチルフェノール]、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4′,4″−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリデン)トリスフェノール、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、2,2′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、2,2′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4′−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2、6−ジメチルフェノール]、4,4′,4″−メチリジントリス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4′−[1−[4−[1−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、2,2′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−(メチルエチル)フェノール]、2,2′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、α,α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等がある。
【0097】
上記(C)エポキシ樹脂硬化剤に、分子中に水酸基を2個以上有するフェノール系化合物を用いる場合は、上記(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量と、上記のフェノール系化合物のOH当量の当量比を0.95〜1.05:0.95〜1.05の範囲とすることが好ましい。この範囲外であると、未反応モノマが残存する、又硬化物の架橋密度が十分に上がらず、好ましくない。
【0098】
また、本発明のフィルム状接着剤には、硬化促進剤を添加することもできる。硬化促進剤には、特に制限が無く、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等を用いることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0099】
硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。添加量が0.01重量部未満であると硬化性が劣る傾向があり、20重量部を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0100】
本発明のフィルム状接着剤は、さらに(D)フィラーを含有しても良い。(D)フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、フィラーの形状は特に制限されるものではない。
【0101】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着フィルムに熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着フィルムに靭性等を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置に求められる特性を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー、又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好で、かつ加熱時の高い接着力を付与できる点で窒化ホウ素がより好ましい。
【0102】
上記フィラーの平均粒子径は10μm以下、最大粒子径は25μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、かつ最大粒子径が25μmを超えると、破壊靭性向上の効果が得られない傾向がある。下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.1μm程度である。
【0103】
上記フィラーは、平均粒子径10μm以下、最大粒子径は25μm以下の両方を同時に満たすことが好ましい。最大粒子径が25μm以下であるが平均粒子径が10μmを超えるフィラーを使用すると、高い接着強度が得られない傾向がある。また、平均粒子径は10μm以下であるが最大粒子径が25μmを超えるフィラーを使用すると、粒径分布が広くなり接着強度にばらつきが出やすくなる。また、本発明の接着剤組成物を薄膜フィルム状に加工して使用する場合、表面が粗くなり接着力が低下する傾向がある。
【0104】
上記フィラーの平均粒子径及び最大粒子径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、200個程度のフィラーの粒径を測定する方法等が挙げられる。
【0105】
SEMを用いた測定方法としては、例えば、接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体支持基板とを接着した後、加熱硬化(好ましくは150〜200℃で1〜10時間)させたサンプルを作製し、このサンプルの中心部分を切断して、その断面をSEMで観察する方法等が挙げられる。
【0106】
また、用いるフィラーが金属フィラー又は無機フィラーである場合は、接着剤組成物を600℃のオーブンで2時間加熱し、樹脂成分を分解、揮発させ、残ったフィラーをSEMで観察、測定する方法をとることもできる。フィラーそのものをSEMで観察する場合、サンプルとしては、SEM観察用の試料台の上に両面粘着テープを貼り付け、この粘着面にフィラーを振り掛け、その後、イオンスパッタで蒸着したものを用いる。このとき、前述のフィラーの存在確率が全フィラーの80%以上であるとする。
【0107】
上記(D)フィラーの使用量は、付与する特性、又は機能に応じて決められるが、(A)熱可塑性樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂成分と(D)フィラーの合計に対して1〜50体積%、好ましくは2〜40体積%、さらに好ましくは5〜30体積%である。1体積%未満であるとフィラー添加による特性、又は機能の付与の効果が得られない傾向があり、50体積%を超えると接着性が低下する傾向がある。フィラーを増量させることにより、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上できるが、必要以上に増量させると、本発明の特徴である低温貼付性及び被着体との界面接着性が損なわれ、耐リフロー性を含む信頼性の低下を招くため好ましくない。求められる特性のバランスをとるべく、最適なフィラー含量を決定する。
【0108】
本発明のフィルム状接着剤には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。
【0109】
本発明のフィルム状接着剤は、(A)熱可塑性樹脂、(B)エポキシ樹脂、必要に応じて、(C)エポキシ樹脂硬化剤、(D)フィラー、及び他の成分を有機溶媒中で混合、混練してワニス(フィルム状接着剤塗工用のワニス)を調製した後、基材フィルム上に上記塗工ワニスの層を形成させ、加熱乾燥した後、基材を除去して得ることができる。上記の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。上記の加熱乾燥の条件は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常60℃〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。ここで、Bステージ状態でのフロー量を100〜1500μmの範囲内に制御するためには、残存溶媒をできるだけ低減することが望ましく、また、貼付性が損なわれない程度に、エポキシ樹脂の硬化反応、またはポリイミド樹脂とエポキシ樹脂間の橋かけ反応をある程度進めておくことが望ましい。この観点から、フィルム調製時に、120〜160℃、10〜60分の乾燥工程が含まれることが好ましい。
【0110】
上記フィルム状接着剤の製造における上記ワニスの調整に用いる有機溶媒、即ちワニス溶剤は、材料を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等が挙げられるが、熱可塑性樹脂としてポリイミド樹脂を用いる場合には、ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂間の橋かけ反応を有効に進める点で、含窒素化合物が好ましい。このような溶剤としては、例えば、上記のジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン等が挙げられ、中でもポリイミド樹脂の溶解性に優れるという点で、N―メチルピロリドンが好ましい。
【0111】
上記フィルム状接着剤の製造時に使用する基材フィルムは、上記の加熱、乾燥条件に耐えるものであれば特に限定するものではなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。これらの基材としてのフィルムは2種以上組み合わせて多層フィルムとしてもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0112】
次に、好ましい態様をいくつか挙げながら本発明をより詳細に説明する。
【0113】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、tanδピーク温度が−20〜60℃、フロー量が100〜1500μmであることを特徴とする。上記tanδピーク温度とは、180℃5hの条件で加熱硬化したフィルムを、レオメトリックス製粘弾性アナライザーRSA−2を用いて、フィルムサイズ35mm×10mm、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−100〜300℃の条件で測定したときのTg付近のtanδピーク温度である。上記フィルムのtanδピーク温度が−20℃より低いと、フィルムとしての自己支持性がなくなり、tanδピーク温度が60℃を超えるとラミネート温度が80℃を超える可能性が高くなり、いずれも好ましくない。また、上記フロー量とは、10mm×10mm×40μm厚サイズ(尚、フィルム厚は±5μmの誤差で調製した。以下、フィルム厚の誤差についての記載は上記と同様のため省略する。)の上記フィルム(未硬化フィルム)の上に10mm×10mm×50μm厚のユーピレックスフィルムを重ね合わせ、2枚のスライドグラス(MATSUNAMI製、76mm×26mm×1.0〜1.2mm厚)の間に挟んだサンプルについて、180℃の熱盤上で100kgf/cm2の荷重をかけ、120sec加熱圧着した後の上記ユーピレックスフィルムからのはみ出し量を光学顕微鏡で観測したときの最大値である。このときのフロー量が100μm未満であると、トランスファモールド時の熱と圧力によって、配線付き基板上の凹凸を十分に埋め込むことができず、また、1500μmを超えると、ダイボンド又はワイヤボンド時の熱履歴によって流動し、上記の基板上の凹凸に対して、凹凸間に残存する気泡を巻き込み易くなり、トランスファモールド工程での熱と圧力を加えても、この気泡が抜けきれずにボイドとなってフィルム層に残存し、このボイドが起点となって、吸湿リフロー時に発泡し易くなるため、いずれも好ましくない。なお、40μm以下のフィルム状接着剤についてフロー量を測定する際には適当枚数貼り合わせて厚みを調整し、逆にあつい場合には注意深く削る等の手段により厚みを調整することによってフロー量測定サンプルとすることもできる。
【0114】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、シリコンウェハ裏面(バックグラインド処理面)に80℃でラミネートした段階で、上記シリコンウェハに対する25℃での90°ピール剥離力が5N/m以上であることを特徴とする。ここで、90°ピール剥離力について図1〜図3の概略図を用いて説明する。
【0115】
図1及び図2には、本発明のフィルム状接着剤1がシリコンウェハ3上に、ロール2と支持台4とを有する装置を用いてラミネートされるラミネート方法の概略図が示されている。90°ピール剥離力とは、装置のロール温度:40℃、送り速度:0.5m/minのラミネート条件下で、5inch、400μm厚のシリコンウェハ裏面に40μm厚のフィルム状接着剤をラミネートした後、図3に示す方法でフィルム状接着剤(1cm幅)を90°方向に100mm/minの条件で引き剥がしたときのピール剥離力をいう。90°ピール剥離力は5N/m以上であることが好ましい。上記ピール剥離力が5N/m未満であると、ダイシング時にチップ飛びが発生する可能性が高くなり、また良好なピックアップ性の確保が困難となる。チップ飛びを発生させずに、良好なピックアップ性を確実に確保するためには上記ピール剥離力が20N/m以上であることがより好ましく、50N/m以上であることが特に好ましい。
【0116】
上記ラミネート条件において、ラミネート圧力は、被着体である半導体ウェハの厚みや大きさから定めることが好ましい。具体的には、ウェハの厚みが10〜600μmの場合は線圧が0.5〜20kgf/cmであることが好ましく、ウェハ厚みが10〜200μm場合は線圧0.5〜5kgf/cmが好ましい。ウェハの大きさは4〜10インチ程度が一般的であるが、特にこれに限定されるものではない。上記ラミネート条件とすることによって、ラミネート時のウェハ割れ防止と密着性確保のバランスを保つことができる。
【0117】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、表面に厚さ15μmのソルダーレジスト層が付いた厚さ0.1mmの有機基板に5mm×5mm×0.55mm厚のガラスチップを5mm×5mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg(ここではtanδピーク温度)+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、85℃85%相対湿度(以下「RH」ともいう。)の条件で15時間吸湿処理した後、260℃の熱盤上で30秒加熱したとき、発泡の発生が認められないことを特徴とする。
【0118】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、上記の発泡の発生が認められないという特徴に加えてさらに、上記有機基板に3.2mm×3.2mm×0.4mm厚のシリコンチップを3.2mm×3.2mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、85℃60%RHの条件で168時間吸湿処理した後、260℃の熱盤上で30秒加熱した後のせん断接着強度が5N/chip以上であり、さらに、上記有機基板に5mm×5mm×0.4mm厚のシリコンチップを5mm×5mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、260℃の熱盤上で30秒加熱した後のピール強度(シリコンチップ引き剥がし強度)が5N/chip以上であることを特徴とする。
【0119】
上記発泡の発生の有無は、光学顕微鏡(×20倍)で目視で観測して判定する。上記のせん断接着強度は、Dage製BT2400を用い、測定速度:500μm/sec、測定ギャップ:50μmの条件で測定する。上記のピール強度は図10に示す接着力試験機で、測定速度0.5mm/secの条件で測定する。
【0120】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、使用前の上記フィルム状接着剤の表面エネルギーと、ソルダーレジスト材が付いた有機基板の表面エネルギーの差が、10mN/m以内であることを特徴とする。この差が10mN/mを超えると、上記有機基板に対する良好なぬれ性の確保が困難となり、界面接着力が低下する可能性が高くなるため好ましくない。尚、上記表面エネルギーは、水及びヨウ化メチレンに対する接触角の実測値から、下記式(1)〜(3)により算出する。
【数1】
【0121】
上記θ1は水に対する接触角(deg)、θ2はヨウ化メチレンに対する接触角(deg)、γは表面エネルギー、γdは表面エネルギーの分散成分、γpは表面エネルギーの極性成分である。
【0122】
尚、上記の接触角は、次のようにして測定した。フィルム状接着剤を適当な大きさに切り取り、両面接着テープでスライドグラスに貼り付けて固定し、上記フィルム状接着剤の表面をヘキサンで洗浄し、窒素パージ処理したのち、60℃30分の条件で乾燥した試料を測定に用いた。なお、接触角の測定面は、フィルム塗工時の基材側とした。接触角は、協和表面科学製(Model CA−D)を用いて、室温で測定した。
【0123】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを少なくとも含有するフィルム状ダイボンディング材に用いられものであって、前記フィルム状接着剤の残存揮発分をV(重量%)、加熱硬化後の吸水率をM(重量%)、フロー量をF(μm)、加熱硬化後の260℃における貯蔵弾性率をE(MPa)としたとき、以下の(1)〜(4):
(1)V≦10.65×E、
(2)M≦0.22×E、
(3)V≦―0.0043F+11.35、
(4)M≦―0.0002F+0.6
の少なくとも1つの条件を満たすことを特徴とする。
【0124】
この場合、上記(3)、(4)の条件を同時に満たすことが好ましく、また上記(2)〜(4)の条件を満たすことがより好ましく、上記(1)〜(4)のすべての条件を満たすことがさらに好ましい。
【0125】
上記の残存揮発分Vは、調製後のフィルムについて、V=(加熱前のフィルム重量−オーブン中で260℃2hの条件で加熱した後のフィルム重量)/加熱前のフィルム重量より求める。上記の加熱硬化後の吸水率Mは、180℃5hの条件で加熱硬化したフィルムについて、M=(イオン交換水で24h浸漬後のフィルムの重量−吸水前のフィルムの重量)/吸水前のフィルムの重量より求める。吸水前のフィルムの重量は、真空乾燥器中で120℃3hの条件で乾燥した後の重量である。上記のフロー量Fとは上述した条件で測定したときの値である。加熱硬化後の260℃における貯蔵弾性率Eとは、180℃5hの条件で加熱硬化したフィルムについて、レオメトリックス製粘弾性アナライザーRSA−2を用いて、フィルムサイズ35mm×10mm、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−50〜300℃の条件で測定したときの260℃における貯蔵弾性率である。上記の残存揮発分V、吸水率をM、フロー量F、及び貯蔵弾性率をE(MPa)のいずれかが上記式の範囲外であると、本発明での低温ラミネート性と良好な耐リフロー性を同時に確保することが困難となる。
【0126】
また、本発明の1態様として、基材層、粘着剤層、及び本発明のフィルム状接着剤層とがこの順に形成されてなる接着シート(すなわち従来のダイシングテープと本発明のフィルム状接着剤層が積層された構造の接着シート)が提供される。この接着シートは、半導体装置製造工程を簡略化する目的で、フィルム状接着剤とダイシングフィルムとを少なくとも備える一体型の接着シートである。即ち、ダイシングフィルムとダイボンディングフィルムの両者に要求される特性を兼ね備える接着シートである。
【0127】
このように基材層の上にダイシングフィルムとしての機能を果たす粘着剤層を設け、さらに粘着剤層の上にダイボンディングフィルムとしての機能を果たす本発明のフィルム状接着剤層とを積層させたことにより、ダイシング時にはダイシングフィルムとして、ダイボンディング時にはダイボンディングフィルムとしての機能を発揮する。そのため、前記の一体型の接着シートは、半導体ウェハの裏面に一体型接着シートのフィルム状接着剤層を加熱しながらウェハ裏面にラミネートし、ダイシングした後、フィルム状接着剤付き半導体素子としてピックアップして使用することができる。
【0128】
上記の粘着剤層は、感圧型、又は放射線硬化型のどちらでも良いが、放射線硬化型の方が、ダイシング時には高粘着力を有し、ピックアップする前に紫外線(UV)を照射することにより、低粘着力になり、粘着力の制御がし易いという点で好ましい。前記の放射線硬化型粘着剤層としては、ダイシング時には半導体素子が飛散しない十分な粘着力を有し、その後の半導体素子のピックアップ工程においては半導体素子を傷つけない程度の低い粘着力を有するものであれば特に制限されることなく従来公知のものを使用することができる。このとき、シリコンウェハに80℃でラミネートした段階で、上記シリコンウェハに対するフィルム状接着剤の25℃での90°ピール剥離力をA、露光量500mJ/cm2の条件でUV照射した後の放射線硬化型粘着剤層のフィルム状接着剤に対する25℃での90°ピール剥離力をBとしたとき、A−Bの値が1N/m以上であることが好ましく、5N/m以上がより好ましく、10N/m以上がさらにより好ましい。シリコンウェハに対するフィルム状接着剤の25℃での90°ピール剥離力は上述の通りである。また、露光量500mJ/cm2の条件でUV照射した後の放射線硬化型粘着剤層のフィルム状接着剤に対する25℃での90°ピール剥離力は、シリコンウェハ裏面(バックグラインド処理面)に80℃でラミネートした後(ラミネート方法は上述)、上記のダイシングテープを室温でラミネートし、その後、露光量500mJ/cm2の条件でUV照射してから、ダイシングテープを25℃においてフィルム状接着剤から90°方向に引き剥がしたときのピール剥離力である。より具体的には、図4に示すように、ダイシングテープ5(1cm幅)(1:フィルム状接着剤、3:シリコンウェハ、4:支持体)を25℃において90°方向に100mm/minの条件で引き剥がす。上記の値(A−B)が1N/m未満であると、ピックアップ時に各素子を傷つける傾向にある、またはピックアップ時に、シリコンチップ及びフィルム状接着剤界面で先に剥がれてしまい、有効にピックアップできないため、好ましくない。尚、「ピール剥離力」については後に実施例の欄でさらに詳しく説明する。
【0129】
放射線硬化型粘着剤層としては、前記の特性を有するものであれば特に制限されることなく従来公知のものを使用することができる。放射線硬化型粘着剤層としては、具体的には粘着剤と放射線重合性オリゴマーを含有してなる層を用いることができる。この場合、前記放射線硬化型粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましい。より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体を主たる構成単量体単位とする(メタ)アクリル酸エステル共重合体、又はこれら共重合体の混合物等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルのように記載した場合、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの両方を示す。
【0130】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜15である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)と、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル、スチレン及び塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種の酸基を有しない極性モノマー(b)と、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸基を有するコモノマー(c)との共重合体等が挙げられる。
【0131】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)と、酸基を有しない極性モノマー(b)と、酸基を有するコモノマー(c)との共重合比としては、重量比で、a/b/c=35〜99/1〜60/0〜5の範囲で配合することが好ましい。また、酸基を有するコモノマー(c)は使用しなくてもよく、その場合には、a/b=70〜95/5〜30の範囲で配合することが好ましい。
【0132】
コモノマーとして、酸基を有しない極性モノマー(b)が60重量%を超えて共重合されると、放射線硬化型粘着剤層3は、完全相溶系となり、放射線硬化後における弾性率が10MPaを超えてしまい、充分なエキスパンド性、ピックアップ性が得られなくなる傾向がある。一方、酸基を有しない極性モノマー(b)が1重量%未満で共重合されると、放射線硬化型粘着剤層3は不均一な分散系となり、良好な粘着物性が得られなくなる傾向がある。
【0133】
なお、酸基を有するコモノマーとして(メタ)アクリル酸を用いる場合には、(メタ)アクリル酸の共重合量は5重量%以下であることが好ましい。酸基を有するコモノマーとして(メタ)アクリル酸が5重量%を超えて共重合されると、放射線硬化型粘着剤層3は、完全相溶系となり充分なエキスパンド性、ピックアップ性が得られなくなる傾向がある。
【0134】
またこれらのモノマーを共重合して得ることができる(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量としては、2.0×105〜10.0×105が好ましく、4.0×105〜8.0×105がより好ましい。
【0135】
放射線硬化型粘着剤層を構成する放射線重合性オリゴマーの分子量としては、特に制限はないが、通常3000〜30000程度であり、5000〜10000程度が好ましい。
【0136】
上記放射線重合性オリゴマーは、放射線硬化型粘着剤層中に均一に分散していることが好ましい。その分散粒径としては、1〜30μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。分散粒径とは、放射線硬化型粘着剤層3を、600倍の顕微鏡で観察して、顕微鏡内のスケールで分散しているオリゴマーの粒子径を実測することで決定される値である。また、均一に分散している状態(均一分散)とは、隣接する粒子間の距離が、0.1〜10μmである状態をいう。
【0137】
上記放射線重合性オリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等の分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有する化合物などが挙げられ、中でも所望する目的に応じて種々の化合物を選択できる点でウレタンアクリレート系オリゴマーが好ましい。
【0138】
上記ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエステル型又はポリエーテル等のポリオール化合物と、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン、4,4−ジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物とを反応させて得ることができる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等のヒドロキシル基を有するアクリレート又はメタクリレートなどとを反応させて得ることができる。
【0139】
上記ウレタンアクリレート系オリゴマーの分子量としては特に制限はないが、3000〜30000が好ましく、3000〜10000がより好ましく、4000〜8000が極めて好ましい。
【0140】
本発明の接着用シートにおいて、放射線硬化型粘着剤層中の粘着剤と放射線重合性オリゴマーとの配合比は、粘着剤100重量部に対して、放射線重合性オリゴマーが20〜200重量部用いられることが好ましく、50〜150重量部用いられることがより好ましい。
【0141】
上記の配合比とすることで、放射線硬化型粘着剤層とダイ接着用接着剤層との間に大きな初期接着力が得られ、しかも放射線照射後には接着力は大きく低下し、容易にウェハチップとダイ接着用接着剤層とを該粘着シートからピックアップすることができる。またある程度の弾性率が維持されるため、エキスパンディング工程において、所望のチップ間隔を得ることが容易になり、かつチップ体のズレ等も発生せず、ピックアップを安定して行えるようになる。また、必要により前記成分のほかにさらに他の成分を加えても構わない。
【0142】
本発明のフィルム状接着剤は、IC、LSI等の半導体素子と42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチックフィルム、ガラス不織布等基材にポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチックを含浸、硬化させたもの、アルミナ等のセラミックス等の半導体搭載用支持部材とを貼り合せるためのダイボンディング用接着材料である。中でも、有機レジスト層を具備してなる有機基板とを貼り合わせるためのダイボンディング用接着材料として好適に用いられる。また、複数の半導体素子を積み重ねた構造のStacked−PKGにおいて、半導体素子と半導体素子とを接着するための接着材料としても好適に用いられる。
【0143】
図5に一般的な構造の半導体装置を示す。
【0144】
図5において、半導体素子10aは本発明の接着フィルム11aを介して半導体素子支持部材12に接着され、半導体素子10aの接続端子(図示せず)はワイヤ13を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材14によって封止されている。近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明の接着フィルムの用途は、この構造に限定されるものではない。
【0145】
また、図6に半導体素子同士を接着した構造を有する半導体装置の一例を示す。
【0146】
図6において、一段目の半導体素子10aは本発明の接着フィルム11aを介して半導体素子支持部材12に接着され、一段目の半導体素子10aの上に更に本発明の接着フィルム11bを介して二段目の半導体素子10bが接着されている。一段目の半導体素子10a及び二段目の半導体素子10bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ13を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材(図示せず)によって封止されている。このように、本発明の接着フィルムは、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0147】
尚、半導体素子と支持部材との間に本発明のフィルム状接着剤を挾み、加熱圧着するときの加熱温度は、通常、25〜200℃、0.1〜300秒間である。その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経て、半導体装置(半導体パッケージ)とされる。
【0148】
本発明のフィルム状接着剤は、図7に示すように、接着剤層15のみからなる単層のフィルム状接着剤であることが好ましいが、図8に示すように基材フィルム16の両面に接着剤層15を設けてなる構造でもよい。尚、接着剤層の損傷・汚染を防ぐために適宜接着剤層にカバーフィルムを設けることなどもできる。本発明のフィルム状接着剤は、0.5mm〜20mm程度の幅のテープ状、半導体ウエハ1枚ごとに貼り付ける大きさのシート状、長尺のシート状等の形状とすることが好ましい。また、テープ状、長尺シート状のような形態の場合は、巻芯に巻き取れば保管が容易で、使用する際にも便利である。巻き取り長さとしては特に制限はないが、短すぎると交換が煩雑になり、長すぎると中心部に高い圧力が加わり厚みが変化するおそれがあるため、通常20m〜1000mの範囲で適宜設定される。
【0149】
また、本発明の1態様として、基材層17、放射線硬化型粘着剤層18、及び上記のフィルム状接着剤層19とがこの順に形成されてなる接着シートが提供される(図9)。上記接着シートは、半導体装置製造工程を簡略化する目的で、得られた基材付きフィルム状接着剤にダイシングフィルムを積層した一体型の接着シートである。上記の一体型の接着シートは、半導体ウェハの裏面に一体型接着シートのフィルム状接着剤層を加熱しながらウェハ裏面にラミネートし、ダイシングした後、フィルム状接着剤付き半導体素子としてピックアップして使用する。
【0150】
本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子等の電子部品とリードフレームや絶縁性支持基板等の支持部材の接着材料として、低温ラミネート性及びダイシング後のピックアップ性に優れると共に、良好な熱時接着力及び実装時の高温半田付けの熱履歴に対して優れた信頼性を有し、鉛フリーに対応した半導体パッケージのダイボンド材として好適に使用できる。また、本発明の接着剤組成物又はフィルム状接着剤を用いて半導体素子と支持部材とを接着した構造を含有してなる半導体装置は信頼性に優れる。
【実施例】
【0151】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は、これらに限定されるものではない。
【0152】
(実施例1〜17、比較例1〜10)
下記ポリイミドA〜Mを熱可塑性樹脂として用い、下記表2の配合表に示す通り、フィルム塗工ワニスを調合した。
【0153】
<ポリイミドA>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、1,12−ジアミノドデカン2.10g(0.035モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))17.31g(0.03モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)2.61g(0.035モル)及びN−メチル−2−ピロリドン150gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)15.62g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン100gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドA)を得た。(ポリイミドのTg:22℃、重量平均分子量:47000、SP値:10.2)
<ポリイミドA'>
精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)の代わりに、未精製の4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:11.1℃)を用いた他は<ポリイミドA>と同様にしてポリイミド溶液(ポリイミドA')を得た。(ポリイミドのTg:22℃、重量平均分子量:42000、SP値:10.2)
<ポリイミドB>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン8.63g(0.07モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))17.31g(0.03モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン166.4gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)7.82g(0.05モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)7.85g(0.05モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン111gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドB)を得た。(ポリイミドのTg:33℃、重量平均分子量:114800、SP値:10.1)
<ポリイミドC>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン5.81g(0.095モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))2.88g(0.005モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン112.36gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)10.94g(0.07モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)4.71g(0.03モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン74.91gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドC)を得た。(ポリイミドのTg:35℃、重量平均分子量:172300、SP値:11.0)
<ポリイミドD>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン4.62g(0.07モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)2.24g(0.03モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン90.00gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)12.50g(0.08モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0)3.14g(0.02モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン60.00gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドD)を得た。(ポリイミドのTg:24℃、重量平均分子量:42800、SP値:11.0)
<ポリイミドE>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン5.81g(0.095モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))2.88g(0.005モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン97.32gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)12.50g(0.08モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)3.14g(0.02モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン64.88gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドE)を得た。(ポリイミドのTg:37℃、重量平均分子量:48500、SP値:10.9)
<ポリイミドF>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、1,12−ジアミノドデカン5.41g(0.045モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))11.54g(0.01モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900))24.3g(0.045モル)及びN−メチル−2−ピロリドン169gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、4,無水酢酸で再結晶精製した4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)31.23g(0.1モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン112.7gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドF)を得た。(ポリイミドのTg:25℃、重量平均分子量:35000、SP値:9.8)
<ポリイミドG>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン6.83g(0.05モル)、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン3.40g(0.05モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン110.5gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製したデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)17.40g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン74gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドG)を得た。(ポリイミドのTg:73℃、重量平均分子量:84300、SP値:10.9)
<ポリイミドH>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン4.28g(0.07モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)1.87g(0.025モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900))1.32g(0.005モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン72.2gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−オキシジフタル酸二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:3.2℃)7.44g(0.08モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)3.14g(0.02モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン48.13gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドH)を得た。(ポリイミドのTg:40℃、重量平均分子量:91800、SP値:12.3)
<ポリイミドI>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン4.62g(0.07モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)1.87g(0.025モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900))1.32g(0.005モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン73.56gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−オキシジフタル酸二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:3.2℃)7.44g(0.08モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)3.14g(0.02モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン49.04gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドI)を得た。(ポリイミドのTg:37℃、重量平均分子量:35600、SP値:12.4)
<ポリイミドJ>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン6.17g(0.05モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900))13.20g(0.05モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン140.24gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製したデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)15.69g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン93.49gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドJ)を得た。(ポリイミドのTg:30℃、重量平均分子量:45600、SP値:9.9)
<ポリイミドK>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、1,12−ジアミノドデカン2.71g(0.045モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ポリエーテルジアミン2000(分子量:1923))5.77g(0.01モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)3.35g(0.045モル)及びN−メチル−2−ピロリドン113gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸を用いて再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)15.62g(0.1モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン75.5gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドK)を得た。(ポリイミドのTg:53℃、重量平均分子量:58000、SP値:10.3)
<ポリイミドL>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン13.67g(0.10モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン124gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸を用いて再結晶精製したデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)17.40g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン83gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドL)を得た。(ポリイミドのTg:120℃、重量平均分子量:121000、SP値:10.8)
<ポリイミドM>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン2.73g(0.02モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製KF−8010(分子量:900))24.00g(0.08モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン176.5gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸を用いて再結晶精製したデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)17.40g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン117.7gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドM)を得た。(ポリイミドのTg:40℃、重量平均分子量:19700、SP値:9.7)
【表2】
【表3】
【0154】
略号
エポキシ樹脂
ESCN−195:住友化学、クレゾールノボラック型固体状エポキシ樹脂(エポキシ当量200、分子量:778)、
BEO−60E:新日本理化学、エチレンオキシド6モル付加体ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:373、分子量:746)、
BPO−20E:新日本理化学、プロピレンオキシド6モル付加体ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:314、分子量:628)、
XB−4122:旭チバ、アルキレンオキシド付加体ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:336、分子量:672)、
N−730:大日本インキ化学、フェノールノボラック型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:175、分子量:600〜800)、
EXA830CRP:大日本化学、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:160、分子量:320)、
ESLV−80DE:新日本理化学、フェニルエーテル型固体状エポキシ樹脂(エポキシ当量:174、分子量:348)
その他の成分
H−1:明和化成、フェノールノボラック(OH当量:106、分子量:653)、
NH−7000:日本化薬、ナフトールノボラック(OH当量:140、分子量:420)、
XL−225、三井東圧化学、キシリレン変性フェノールノボラック(OH当量:175、分子量:420)、
NH−7000:日本化薬、ナフトールノボラック(OH当量:175、分子量:420)、
TrisP−PA:本州化学、トリスフェノールノボラック(OH当量:141、分子量:424)、
TPPK:東京化成、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート、2PZ−CN:四国化成工業、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、
NMP:関東化学、N−メチル−2−ピロリドン、
HP−P1:水島合金鉄、窒化ホウ素(平均粒子径:1.0μm、最大粒子径:5.1μm)、
E−03:東海ミネラル、シリカ(平均粒子径:4.0μm、最大粒子径:11.4μm)、
SE−1:トクヤマ、シリカ(平均粒子径:0.8μm、最大粒子径:3.1μm)
これらワニスを40μmの厚さに、それぞれ基材(剥離剤処理PET)上に塗布し、オーブン中で80℃30分、続いて150℃30分加熱し、その後、室温で基材から剥がして、フィルム状接着剤を得た。
【0155】
実施例1〜17及び比較例1〜10のフィルム状接着剤の特性評価結果を表3に示す。なお、各特性の測定方法は下記のとおりである。
【0156】
<表面エネルギー>
フィルム状接着剤又はレジスト材付き有機基板を両面接着テープでスライドグラスに貼り付けて固定し、上記フィルム状接着剤又はレジスト材付き有機基板の表面をヘキサンで洗浄し、窒素パージ処理したのち、60℃30分の条件で乾燥した試料を用い、水及びヨウ化メチレンに対する接触角を協和表面科学製(Model CA−D)を用いて、室温で測定した。フィルム状接着剤については、フィルム塗工時の基材側を測定面とした。
【0157】
上記接触角の実測値を用いて、下記式によりフィルム状接着剤又はレジスト材付き有機基板の表面エネルギーを算出した。
【数2】
【0158】
上記θ1は水に対する接触角(deg)、θ2はヨウ化メチレンに対する接触角(deg)、γは表面エネルギー、γdは表面エネルギーの分散成分、γpは表面エネルギーの極性成分である。尚、レジスト材付き有機基板の表面エネルギーは41mN/mであった。
【0159】
<フロー量>
10mm×10mm×40μm厚サイズのフィルム状接着剤(未硬化フィルム)をサンプルとし、上記サンプルの上に10mm×10mm×50μm厚サイズのユーピレックスフィルムを重ね合わせ、2枚のスライドグラス(MATSUNAMI製、76mm×26mm×1.0〜1.2mm厚)の間に挟み、180℃の熱盤上で100kgf/cm2の荷重をかけ、120sec加熱圧着した後の上記ユーピレックスフィルムからのはみ出し量を、目盛り付き光学顕微鏡で観測したときの最大値をフロー量とした。
【0160】
<吸水率>
20mm×20mm×40μm厚サイズのフィルム状接着剤(180℃5hの条件で加熱硬化したフィルム)をサンプルとし、サンプルを真空乾燥機中で、120℃3h乾燥させ、デシケータ中で放冷後、乾燥重量をM1とし、乾燥後のサンプルをイオン交換水に室温で24時間浸漬してから取り出し、サンプル表面をろ紙でふきとり、すばやく秤量して、M2とする。[(M2−M1)/M1]×100=吸水率(wt%)として、吸水率を算出した。
【0161】
<260℃貯蔵弾性率及びtanδピーク温度>
180℃5hの条件で加熱硬化したフィルム状接着剤について、レオメトリックス製粘弾性アナライザーRSA−2を用いて、フィルムサイズ35mm×10mm×40μm厚、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−100〜300℃の条件で測定し、260℃における貯蔵弾性率、及びTg付近のtanδピーク温度を見積もった。
【0162】
<ピール剥離力>
ウェハに対するピール剥離力(対ウェハ):調製後の40μm厚のフィルム状接着剤(未硬化フィルム)1をシリコンウェハ3の裏面に、図2に示されるロール2と、支持台4とを有する装置を用いてラミネートした。その際、装置のロール温度:80℃、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で、5inch、300μm厚のシリコンウェハ3の裏面に上記フィルム状接着剤1をラミネートした。その後、図3に示す方法でフィルム状接着剤1(1cm幅)を90°方向に引き剥がしたときのピール剥離力を、ウェハに対するピール剥離力とした(測定速度:100mm/min)。
【0163】
フィルム状接着剤の放射線硬化型粘着剤層に対するピール剥離力(対ダイシングテープ):上記ウェハ付きフィルム状接着剤1のウェハに対向する面の他面に、さらに放射線硬化型粘着剤層としてのUV型ダイシングテープ5をラミネートした。ラミネート条件は、装置のロール温度を室温(25℃)としたことを除いて上記のフィルム状接着剤のラミネート条件と同様とした。その後、(株)オーク製作所製UV−330 HQP−2型露光機を用い、波長300〜450nm(ランプの電力:3kW、照度:15mW/cm2)、露光量500mJ/cm2の条件で図4中矢印で示される方向から上記ダイシングテープに放射線を照射した。次に、図4に示す方法でダイシングテープ(1cm幅)を90°方向に引き剥がしたときのピール剥離力を、フィルム状接着剤の放射線硬化型粘着剤層(ダイシングテープ)に対するピール剥離力とした(測定速度:100mm/min)。
【0164】
<ダイシング時のチップ飛び及びピックアップ性>
上記の条件で、5inch、400μm厚のシリコンウェハ裏面にフィルム状接着剤をラミネートし(ラミネート温度:80℃)、続いて上記のダイシングテープを上記と同様の条件でラミネートし、その後、ダイサーを用いて、ダイシング速度10mm/sec、回転数30000rpmの条件で、5mm×5mmサイズにダイシングしたときのチップ飛びの有無を観測し、上記チップ飛びが10%以下のときをチップ飛びなしとした。尚、ウェハ端部のチップ切り出し残部の飛びは評価の対象外とした。
【0165】
次に、上記チップ飛びなしのサンプルについて、ダイシングテープ側を上記と同様の条件で露光した後、個々のチップについてピンセットでピックアップしたときのダイシングテープとフィルム状接着剤間の剥離性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0166】
○:ピックアップ可能なチップが90%以上
△:ピックアップ可能なチップが50%以上90%未満
×:ピックアップ可能なチップが50%未満
<耐発泡性>
表面に厚さ15μmのソルダーレジスト層が付いた厚さ0.1mmの有機基板に5mm×5mm×0.55mm厚のガラスチップを5mm×5mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg(ここではtanδピーク温度)+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃、5hの条件で加熱硬化したのち、85℃85%RHの条件で15時間吸湿処理した後、260℃の熱盤上で30秒加熱したときのサンプルを、光学顕微鏡(×20倍)を用いて評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0167】
○:発泡がフィルム全体の10%未満
△:発泡がフィルム全体の10%以上50%未満
×:発泡がフィルム全体の50%以上
<せん断接着強度>
上記と同様の有機基板に3.2mm×3.2mm×0.4mm厚のシリコンチップを3.2mm×3.2mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、85℃60%RHの条件で168時間吸湿処理した後、260℃の熱盤上で30秒加熱した後、Dage製BT2400を用い、測定速度:500μm/sec、測定ギャップ:50μmの条件でせん断接着強度を測定した。
【0168】
<ピール強度>
上記と同様の有機基板に5mm×5mm×0.4mm厚のシリコンチップを5mm×5mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、260℃の熱盤上で30秒加熱した後、図10に示す接着力評価装置を用い、測定速度:0.5mm/secの条件でピール強度を測定した。
【0169】
<耐リフロー性>
表面に厚さ15μmのソルダーレジスト層が付いた、銅配線(配線高さ12μm)付きの厚さ0.1mmの有機基板に、6.5mm×6.5mm×280μm厚のシリコンチップを6.5mm×6.5mm×40μm厚のフィルム状接着剤で、フィルムのTg(ここではtanδピーク温度)+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、170℃3minの条件でワイヤボンディング相当の熱履歴をかけ、その後、トランスファモールドを行い(金型温度:180℃、キュアタイム:2min)、封止材をオーブン中で180℃5hの条件で加熱硬化して半導体パッケージを得た(CSP96pin、封止領域:10mm×10mm、厚み:0.8mm)。このパッケージを恒温恒湿器中で30℃60%RH192h吸湿処理した後、TAMURA製IRリフロー装置(パッケージ表面ピーク温度:265℃、温度プロファイル:パッケージ表面温度を基準にし、JEDEC規格に沿って調整)に3回繰り返し投入し、日立製作所製超音波探査映像装置HYE−FOUCUSを用いて、ダイボンディング層の剥離、及び破壊の有無を調べた。その後、パッケージの中心部を切断し、切断面を研磨した後、オリンパス製金属顕微鏡を用いて、パッケージの断面を観察し、ダイボンディング層の剥離、及び破壊の有無を調べた。これらの剥離、及び破壊が認められないことを耐リフロー性の評価基準とした。
【0170】
<耐湿信頼性>
耐湿性評価は、上記パッケージを温度121℃、湿度100%、2.03×105Paの雰囲気(プレッシャークッカ−テスト:PCT処理)で72時間処理後に、上記の方法で剥離を観察することにより行った。評価基準は以下のとおりである。
【0171】
○:剥離発生率:10%未満
△:剥離発生率:10%以上50%未満
×:剥離発生率:50%以上
【表4】
【表5】
【0172】
表3から、本発明のフィルム状接着剤は、極薄ウェハの保護テープ、又は貼り合わせるダイシングテープの軟化温度よりも低い温度でウェハ裏面にラミネートでき、かつウェハの反り等の熱応力を低減でき、ダイシング時のチップ飛びも無く、ピックアップ性も良好であり、半導体装置の製造工程を簡略化でき、さらに耐熱性及び耐湿信頼性に優れるものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0173】
以上のような本発明によれば、(1)極薄ウェハ用途や100℃以下の低温貼り付けに対応できるウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤、(2)上述のダイシング工程までの貼付工程を簡略化可能とする、上記フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼りあわせた接着シート、(3)ウェハ裏面に上記接着シートを貼り付ける(以下、ラミネートという)際に、フィルム状接着剤が溶融する温度まで加熱するが、この加熱温度を上記のUV型ダイシングテープの軟化温度よりも低くすることができ、作業性の改善のみならず、大径化薄膜化するウェハの反りの問題を解消可能なフィルム状接着剤、(4)半導体素子搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有し、かつ作業性、低汚染性に優れるフィルム状接着剤、(5)半導体装置の製造工程を簡略化でき、信頼性に優れる半導体装置、を提供することが可能となる。
【0174】
前述したところが、この発明の好ましい実施態様であること、多くの変更及び修正をこの発明の精神と範囲とにそむくことなく実行できることは当業者によって了承されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤、接着シート及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材の接合には、銀ペーストが主に使用されていたが、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化、細密化が要求されるようになってきており、こうした要求に対して、銀ペーストでは、はみ出しや半導体素子の傾きに起因するワイヤボンディング時における不具合の発生、接着剤層の膜厚の制御困難性、及び接着剤層のボイド発生などにより、上記要求に対処しきれなくなってきている。そのため、上記要求に対処するべく、近年、フィルム状の接着剤が使用されるようになってきた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
このフィルム状接着剤は、個片貼付け方式あるいはウェハ裏面貼付方式において使用されている。前者の個片貼付け方式のフィルム状接着剤を用いて半導体装置を製造する場合、リール状のフィルム状接着剤をカッティングあるいはパンチングによって個片に切り出した後、支持部材に接着し、上記フィルム状接着剤付き支持部材に、ダイシング工程によって個片化された半導体素子を接合して半導体素子付き支持部材を作製し、その後、ワイヤボンド工程、封止工程などを経ることによって半導体装置が得られる(例えば、特許文献3参照)。しかし、上記個片貼付け方式のフィルム状接着剤を用いるためには、フィルム状接着剤を切り出して支持部材に接着する専用の組立装置が必要であることから、銀ペーストを使用する方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0004】
一方、ウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤を用いて半導体装置を製造する場合、まず半導体ウェハの裏面にフィルム状接着剤を貼付け、さらにフィルム状接着剤の他面にダイシングテープを貼り合わせ、その後、上記ウェハからダイシングによって半導体素子を個片化し、個片化したフィルム状接着剤付き半導体素子をピックアップし、それを支持部材に接合し、その後の加熱、硬化、ワイヤボンドなどの工程を経ることにより、半導体装置が得られることとなる。このウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤は、フィルム状接着剤付き半導体素子を支持部材に接合するため、フィルム状接着剤を個片化する装置を必要とせず、従来の銀ペースト用の組立装置をそのままあるいは熱盤を付加するなどの装置の一部を改良することにより使用できる。そのため、フィルム状接着剤を用いた組立方法の中で製造コストが比較的安く抑えられる方法として注目されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
しかし、最近になって、上述の半導体素子の小型薄型化・高性能化に加えて、多機能化が進み、それに伴って2個以上の半導体素子を積層化した3Dパッケージが急増しており、それに伴って半導体ウェハのさらなる極薄化が進んでいる。このような極薄ウェハは脆く割れやすいため、搬送時のウェハ割れや、ウェハ裏面へのフィルム状接着剤の貼付け時(すなわちラミネート時)のウェハ割れの発生が顕在化してきた。これを防止するため、ウェハ表面に材質がポリオレフィン系のバックグラインドテープを保護テープとして貼り合わせる手法が採用されつつある。しかし、上記バックグラインドテープの軟化温度が100℃以下であるため、ウェハ裏面に100℃以下の温度でラミネートが可能なフィルム状接着剤の要求が強くなってきている。
【0006】
さらに、ダイシング後のピックアップ性、すなわち上記フィルム状接着剤とダイシングテープとの易剥離性等、パッケージ組立時の良好なプロセス特性が求められる。このような低温ラミネート性を含むプロセス特性とパッケージとしての信頼性、すなわち耐リフロー性を高度に両立できるフィルム状接着剤に対する要求が強くなってきている。これまで、低温加工性と耐熱性を両立すべく、比較的Tgが低い熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂を組み合わせたフィルム状接着剤が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−192178号公報
【特許文献2】特開平4−234472号公報
【特許文献3】特開平9−17810号公報
【特許文献4】特開平4−196246号公報
【特許文献5】特許第3014578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、低温ラミネート性と耐リフロー性を両立させるためには、さらなる詳細な材料設計が必要である。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、極薄ウェハに対応できるウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤、及び前記フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼りあわせた接着シートを提供することにより、上述のダイシング工程までの貼付工程を簡略化することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、フィルム状接着剤を溶融する温度まで加熱し、ウェハ裏面に前記接着シートを貼り付ける(以下、ラミネートという)際の加熱温度を上記のUV型ダイシングテープの軟化温度よりも低くすることができるフィルム状接着剤を提供することで、作業性の改善のみならず、大径化薄膜化するウェハの反り、ダイシング時のチップ飛び、ピックアップ性といった問題を解決することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、半導体素子搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性および耐湿性を有し、かつ作業性、低アウトガス性に優れるフィルム状接着剤を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、半導体装置の製造工程を簡略化でき、かつ信頼性に優れる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、極薄ウェハの保護テープ、又は貼り合わせるダイシングテープの軟化温度よりも低い温度でウェハ裏面にラミネートでき、かつウェハの反り等の熱応力を低減でき、半導体装置の製造工程を簡略化でき、さらに耐熱性及び耐湿信頼性に優れるダイ接着用フィルム状接着剤、及び前記フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼り合せた接着シートの開発及び半導体装置について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記<1>〜<23>のフィルム状接着剤ならびに接着シート及び半導体装置を提供するものである。
【0015】
<1>少なくとも接着剤層を有してなるフィルム状接着剤であって、前記接着剤層は、(A)SP値が10.0〜11.0(cal/cm3)1/2であるポリイミド樹脂、及び(B)エポキシ樹脂を含有し、tanδピーク温度が−20〜60℃かつフロー量が100〜1500μmであるフィルム状接着剤。
【0016】
<2>前記(B)エポキシ樹脂は3官能以上のエポキシ樹脂および/または室温で固体状のエポキシ樹脂を含む上記<1>に記載のフィルム状接着剤。
【0017】
<3>前記(B)エポキシ樹脂は、3官能以上のエポキシ樹脂10〜90重量%、かつ室温で液状のエポキシ樹脂10〜90重量%を含む上記<1>に記載のフィルム状接着剤。
【0018】
<4>前記(A)ポリイミド樹脂100重量部に対して、前記(B)エポキシ樹脂が1〜50重量部含まれる上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0019】
<5>前記(A)ポリイミド樹脂として、DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差が10℃以内の条件を満たす酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂を、全ポリイミド樹脂の50重量%以上含有する上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0020】
<6>さらに(C)エポキシ樹脂硬化剤を含有してなる上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0021】
<7>前記(C)エポキシ樹脂硬化剤は、分子内に水酸基を2個以上有し、数平均分子量が400〜1500であるフェノール系化合物である上記<6>に記載のフィルム状接着剤。
【0022】
<8>前記(C)エポキシ樹脂硬化剤は、分子内に芳香環を3個以上有するナフトール系化合物、又は、トリスフェノール系化合物である上記<6>に記載のフィルム状接着剤。
【0023】
<9>前記(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量と、前記(C)エポキシ樹脂硬化剤のOH当量の当量比が、0.95〜1.05:0.95〜1.05である上記<7>または<8>に記載のフィルム状接着剤。
【0024】
<10>前記(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と下記式(I)
【化1】
【0025】
(式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示しmは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの1モル%以上含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0026】
<11>前記(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と下記式(I)
【化2】
【0027】
(式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示しmは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの1〜90モル%、下記一般式(II)
【化3】
【0028】
(式中、nは5〜20の整数を示す)
で表される脂肪族ジアミンを全ジアミンの0〜99モル%、及び下記一般式(III)
【化4】
【0029】
(式中、Q4及びQ9は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7、及びQ8は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜5の整数を示す)
で表されるシロキサンジアミンを全ジアミンの0〜99モル%含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0030】
<12>前記(A)ポリイミド樹脂が、エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物を全テトラカルボン酸二無水物の50モル%以上含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である上記<1>〜<11>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0031】
<13>前記エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(IV)
【化5】
【0032】
で表されるテトラカルボン酸二無水物である上記<12>に記載のフィルム状接着剤。
【0033】
<14>前記3官能以上のエポキシ樹脂が、下記一般式(VII)
【化6】
【0034】
(式中、Q10、Q11及びQ12は各々独立に水素又は炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、rは1〜20の整数を示す)
で表されるノボラック型エポキシ樹脂である上記<2>〜<13>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0035】
<15>さらに(D)フィラーを含有してなる上記<1>〜<14>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0036】
<16>前記(D)フィラーが絶縁性のフィラーである上記<15>に記載のフィルム状接着剤。
【0037】
<17>前記(D)フィラーの平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が25μm以下である上記<15>または<16>に記載のフィルム状接着剤。
【0038】
<18>前記(D)フィラーの含量が1〜50体積%である上記<15>〜<17>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0039】
<19>前記フィルム状接着剤の表面エネルギーと、ソルダーレジスト材が付いた有機基板の表面エネルギーの差が10mN/m以内である上記<1>〜<18>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0040】
<20>シリコンウェハに80℃でラミネートした段階で、前記シリコンウェハに対する25℃での90°ピール剥離力が5N/m以上である上記<1>〜<19>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【0041】
<21>基材層、粘着剤層、及び上記<1>〜<20>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤層とがこの順に形成されてなる接着シート。
【0042】
<22>前記粘着剤層が、放射線硬化型粘着剤層である上記<21>に記載の接着シート。
【0043】
<23>上記<1>〜<20>のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤を介して、(1)半導体素子と半導体搭載用支持部材、及び(2)半導体素子同士、の少なくとも1つが接着された構造を有してなる半導体装置。
【0044】
本出願は、同出願人により先にされた日本国特許出願、すなわち、2003−164802号(出願日2003年6月10日)および2003−166187号(出願日2003年6月11日)に基づく優先権主張を伴うものであって、これらの明細書を参照のためにここに組み込むものとする。
【発明の効果】
【0045】
以上のような本発明によれば、(1)極薄ウェハ用途や100℃以下の低温貼り付けに対応できるウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤、(2)上述のダイシング工程までの貼付工程を簡略化可能とする、上記フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼りあわせた接着シート、(3)ウェハ裏面に上記接着シートを貼り付ける(以下、ラミネートという)際に、フィルム状接着剤が溶融する温度まで加熱するが、この加熱温度を上記のUV型ダイシングテープの軟化温度よりも低くすることができ、作業性の改善のみならず、大径化薄膜化するウェハの反りの問題を解消可能なフィルム状接着剤、(4)半導体素子搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有し、かつ作業性、低汚染性に優れるフィルム状接着剤、(5)半導体装置の製造工程を簡略化でき、信頼性に優れる半導体装置、を提供することが可能となる。
【0046】
前述したところが、この発明の好ましい実施態様であること、多くの変更及び修正をこの発明の精神と範囲とにそむくことなく実行できることは当業者によって了承されよう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に関わるラミネート方法の一例を示す図である。
【図2】本発明に関わるラミネート方法の一例を示す図である。
【図3】シリコンウェハに対する90°ピール剥離力の測定方法の一例を示す図である。
【図4】ダイシングテープに対する90°ピール剥離力の測定方法の一例を示す図である。
【図5】一般的な構造の半導体装置の一例を示す図である。
【図6】半導体素子同士を接着した構造を有する半導体装置の一例を示す図である。
【図7】接着剤層15のみからなる単層のフィルム状接着剤の断面図である。
【図8】基材フィルム16の両面に接着剤層15を設けてなるフィルム状接着剤の断面図である。
【図9】基材フィルム17と接着剤層18とカバーフィルム19とを備えるフィルム状接着剤の断面図である。
【図10】プッシュプルゲージを用いたピール強度測定方法を表す図である。
【図11】ポリイミドの主鎖骨格の種類とフロー量との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明のフィルム状接着剤は、(A)熱可塑性樹脂および(B)エポキシ樹脂を必須成分として含有してなり、極薄ウェハの保護テープ、又は貼り合わせるダイシングテープの軟化温度よりも低い温度でウェハ裏面にラミネートでき、ダイシング後のダイシングテープとの良好なピックアップ性を確保でき、かつ優れた耐熱性及び耐湿信頼性を有するものである。
【0049】
(A)熱可塑性樹脂
上記(A)熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、フェノキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の樹脂であり、中でもポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂が好ましい。
【0050】
上記ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを等モル又はほぼ等モル用い(各成分の添加順序は任意)、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。
【0051】
上記ポリアミド酸は、50〜80℃の温度で加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法と、脱水剤を使用する化学閉環法で行うことができる。
【0052】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(IX)
【化7】
【0053】
(式中、nは2〜20の整数を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物、下記式(IV)
【化8】
【0054】
で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、上記一般式(IX)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。中でも、優れた耐湿信頼性を付与できる点で上記式(IV)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらテトラカルボン酸二無水物は単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
また、上記一般式(IV)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物の好ましい代表例であり、このようなテトラカルボン酸二無水物を用いることで、フィルム状接着剤の耐湿信頼性を向上させることができる。その含量は、全テトラカルボン酸二無水物に対して40モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上が極めて好ましい。40モル%未満であると、上記式(IV)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用したことによる耐湿信頼性の効果を充分に確保することができない。
【0056】
以上の酸二無水物は、無水酢酸で再結晶精製したものを使用することが適度な流動性と硬化反応の高効率を両立できる点で好ましい。具体的には、DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差が10℃以内となるように精製処理する。この処理により純度を高めた酸二無水物を用いて合成したポリイミド樹脂の含量が、全ポリイミド樹脂の50wt%以上とする。50wt%以上にすると、フィルム状接着剤の諸特性(特に接着性や耐リフロークラック性)を向上させることができるため好ましい。
【0057】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記式(I)
【化9】
【0058】
(式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示しmは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(II)
【化10】
【0059】
(式中、nは5〜20の整数を示す)
で表される脂肪族ジアミン、下記一般式(III)
【化11】
【0060】
(式中、Q4及びQ9は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7、及びQ8は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜5の整数を示す)
で表されるシロキサンジアミン等が挙げられ、中でも低応力性、低温ラミネート性、低温接着性、レジスト材付き有機基板に対する高接着性を付与できる点、また、熱時の適度な流動性を確保できる点で、上記一般式(I)が好ましい。この場合、全ジアミンの1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらにより好ましい。1モル%未満では、上記特性の付与ができず、好ましくない。
【0061】
また、酸二無水物との反応性の確保、低吸水性及び低吸湿性を付与できる点で、上記一般式(I)に加えて、上記一般式(II)及び/又は(III)の組み合わせが好ましい。この場合、一般式(I)で表される脂肪族エーテルジアミンが全ジアミンの1〜90モル%、一般式(II)で表される脂肪族ジアミンが全ジアミンの0〜99モル%、下記一般式(III)で表されるシロキサンジアミンが全ジアミンの0〜99モル%であることが好ましい。より好ましくは、一般式(I)で表される脂肪族エーテルジアミンが全ジアミンの1〜50モル%、一般式(II)で表される脂肪族ジアミンが全ジアミンの20〜80モル%、下記一般式(III)で表されるシロキサンジアミンが全ジアミンの20〜80モル%である。上記モル%の範囲外であると、低温ラミネート性及び低吸水性の付与の効果が小さくなり好ましくない。
【0062】
また、上記一般式(I)で表される脂肪族エーテルジアミンとしては、具体的には、
【化12】
【0063】
等があり、中でも、低温ラミネート性と有機レジスト付き基板に対する良好な接着性を確保できる点で、下記式(V)
【化13】
【0064】
(式中、mは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンがより好ましい。具体的には、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、ED−600、ED−900、ED−2001、EDR−148(以上、サン テクノケミカル(株)製 商品名)、ポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000(以上、BASF(製)、商品名)等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0065】
また、上記一般式(II)で表される脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられ、中でも1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンが好ましい。
【0066】
また、上記一般式(III)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、前記式(III)中、<pが1のとき>、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等があり、<pが2のとき>、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等がある。
【0067】
上記ポリイミド樹脂は単独又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)してもよい。
【0068】
本発明のフィルム状接着剤のラミネート可能温度は、ウェハの保護テープ、すなわちバックグラインドテープの耐熱性あるいは軟化温度以下、又はダイシングテープの耐熱性あるいは軟化温度以下であることが好ましく、また半導体ウェハの反りを抑えるという観点からも10〜80℃が好ましく、さらに好ましくは10〜60℃、さらにより好ましくは10〜40℃である。上記ラミネート温度を達成するためには、上記ポリイミド樹脂のTgは−20〜60℃が好ましく、−10〜40℃がより好ましい。上記Tgが60℃を超えると、上記ラミネート温度が80℃を超える可能性が高くなる傾向がある。また、ポリイミドの組成を決定する際には、そのTgが−20〜60℃となるようにすることが好ましい。
【0069】
また、上記ポリイミド樹脂の重量平均分子量は10000〜200000の範囲内で制御されていることが好ましく、10000〜100000がより好ましく、10000〜80000が極めて好ましい。上記重量平均分子量が10000より小さいと、フィルム形成性が悪くなる、また、フィルムの強度が小さくなり、200000を超えると、熱時の流動性が悪くなり、基板上の凹凸に対する埋め込み性が低下するので、いずれも好ましくない。
【0070】
上記ポリイミドのTg及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、ラミネート温度を低く抑えることができるだけでなく、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができ、チップの反りの増大を抑制できる。なお、上記のTgとは、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときのTgである。また、上記の重量平均分子量とは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製C−R4A)を用いて、合成したポリイミドをポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量のことである。
【0071】
また、上記ポリイミド樹脂のSP値(溶解度パラメータ)は、10.0〜11.0(cal/cm3)1/2の範囲内で制御されていることが好ましい。上記SP値が10.0より小さいと、分子間の凝集力が小さく、フィルム状接着剤のBステージでの熱時流動性が必要以上に大きくなる、また、低極性化あるいは疎水性化の方向に進むため、フィルム状接着剤の表面エネルギーが低くなり、基板上のレジスト材の表面エネルギー(40mN/m前後)との差が大きくなる結果、該基板との接着性の低下を招くため好ましくない。上記SP値が11.0よりも大きくなると、親水性化に伴い、フィルム状接着剤の吸水率の上昇を招くため好ましくない。なお、上記SP値は、下記式により算出する。
【0072】
SP値(δ)=ΣΔF/ΣΔυ
上記のΣΔFは各種原子あるいは各種原子団の25℃におけるモル引力定数の総和、ΣΔυは各種原子あるいは各種原子団のモル体積の総和であり、各種原子あるいは各種原子団のΔF及びΔυの値は、下記表1に記載されているOkitsuの定数(沖津俊直著、「接着」、第40巻8号、p342(1996))を用いた。
【表1】
【0073】
前記SP値は、ポリイミドのイミド基濃度、あるいはポリイミド主鎖骨格中の極性基濃度を変化させることによって制御できる。ポリイミドのイミド基濃度については、イミド基間の距離によって制御する。例えば、ポリイミドの主鎖に、長鎖のアルキレン結合、あるいは長鎖のシロキサン結合などを導入することによって、イミド基間の距離を大きくすると、イミド基濃度は低くなる。また、前記の結合は比較的極性が低いので、これらの結合を含む骨格を選択、導入すると、構造全体の極性基濃度は低くなる。結果として、ポリイミドのSP値は低くなる方向に進む。一方、上記とは逆の手法、すなわち、イミド基間の距離を小さくする、あるいは、主鎖にエーテル結合のような極性の高い結合を含む骨格を選択、導入することにより、ポリイミドのSP値は高くなる方向に進む。このようにして、使用ポリイミドのSP値を10.0〜11.0の範囲内に調整する。
【0074】
ポリイミドのTgを下げるためには、通常、主鎖骨格に、長鎖のシロキサン結合、長鎖の脂肪族エーテル結合、長鎖のメチレン結合等を導入し、ポリイミドの主鎖を柔軟な構造にする手法が考えられる。
【0075】
また、ポリイミドの主鎖構造の種類とフロー量との関係を検討した結果、長鎖のシロキサン結合を導入したポリイミドを用いたフィルムは、この骨格を含有しないフィルムよりもフロー量が大きくなる傾向にあることを見出した(図11)。これは、骨格自体のTgの差に起因し、上記の長鎖骨格の中では、シロキサン骨格のTgが最も低く、最も柔軟であるためであると考えられる。このようにして、導入骨格のTgおよび骨格の長さを調整することによって、フィルムのフロー量を制御できる。また、フィルム組成中に、常温で低粘度の液状エポキシ樹脂を導入することによって、フィルムのフロー量は大きくなる方向に進むため、前記エポキシ樹脂の導入量を調整することによって、フィルムのフロー量を制御できる。
【0076】
以上の知見を基に、ポリイミドのSP値を下げずに、フィルムのtanδピーク温度を下げる手法としては、使用ポリイミドの主鎖に、比較的極性の高いエーテル結合を含有する長鎖の脂肪族エーテル骨格などを選択、導入し、使用ポリイミドのSP値の低下を抑制しつつ、ポリイミドのTgを下げる。それによってフィルムのtanδピーク温度を有効に低減できる。また、フィルム組成中に、常温で低粘度の液状エポキシ樹脂を導入することは、フィルムのtanδピーク温度を有効に低減できるので、使用ポリイミドのSP値とフィルムのtanδピーク温度のバランスをとる手法として有効である。このようにして、ポリイミドのSP値を10.0〜11.0(cal/cm3)1/2、フロー量を100〜1500μm、さらにフィルムのTg付近のtanδピーク温度を−20〜60℃の範囲内に制御できるように材料設計する。
【0077】
(B)エポキシ樹脂
本発明に用いる(B)エポキシ樹脂は、特に限定されないが、3官能以上のエポキシ樹脂および/または室温で固体状のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0078】
本発明において、(B)エポキシ樹脂の含有量は、(A)ポリイミド100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは5〜20重量部である。1重量部未満ではポリイミド樹脂との反応による橋かけ効果が得られず、また、50重量部を超えると、熱時アウトガスによる半導体素子又は装置の汚染が懸念されるため、いずれも好ましくない。
【0079】
また、3官能以上のエポキシ樹脂を用いることで、フィルム状接着剤のフロー量が低下してしまう場合には、これを調整する目的で液状のエポキシ樹脂を併用することが好ましい。この場合の配合量としては、3官能以上のエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の10〜90重量%、液状のエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂の10〜90重量%含むことが好ましい。例えば、(B1)3官能以上の固形エポキシ樹脂と、(B2)3官能以上の液状エポキシ樹脂と、(B3)2官能の液状エポキシ樹脂とを併用した場合には、(B1)と(B2)の合計(すなわち3官能以上のエポキシ樹脂の合計)を10〜90重量%とし、かつ(B2)と(B3)の合計(すなわち液状エポキシ樹脂の合計)を10〜90重量%とする。また、上記(B1)3官能以上のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂に対する配合量は、より好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜70重量%、極めて好ましくは10〜60重量%である。10重量%未満では硬化物の架橋密度を有効に上げることができない傾向があり、90重量%を超えると硬化前の熱時の流動性が十分に得られない傾向がある。
【0080】
また、(B)エポキシ樹脂として3官能以上のエポキシ樹脂を用いる場合には、上記(A)ポリイミド樹脂100重量部に対して、3官能以上のエポキシ樹脂を5〜30重量部、液状エポキシ樹脂を10〜50重量部含有してなることが、ラミネート温度25〜100℃、組み立て加熱時の低アウトガス性、耐リフロー性、耐湿信頼性等のパッケージとしての良好な信頼性を同時に確保できる点で好ましい。
【0081】
3官能以上のエポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも3個以上のエポキシ基を含むものであれば特に制限はなく、このようなエポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(VII)
【化14】
【0082】
(式中、Q10、Q11及びQ12は各々独立に水素又は炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、rは1〜20の整数を示す)
で表されるノボラック型エポキシ樹脂の他、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン等が挙げられ、上記一般式(VII)で表されるノボラック型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも、硬化物の架橋密度が高く、フィルムの熱時の接着強度を高くすることができる点で、上記一般式(VII)で表されるノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
また、液状のエポキシ樹脂とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有し、10〜30℃で液状エポキシ樹脂であり、前記の液状とは粘調液体の状態も含むものとする。なお、上記固体状とは、室温で固体状の意味であって、温度は特に制限されるものではないが、10〜30℃で固体状の意味である。
【0084】
液状のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等の他、下記一般式(VIII)
【化15】
【0085】
(式中、Q13及びQ16は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基又はフェノキシ基を示し、Q14及びQ15は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基又は水素を示し、tは1〜10の整数を示す)
で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0086】
上記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂としては、例えば、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中から10〜30℃で液状のものを選択する。
【0087】
液状のエポキシ樹脂を選択する場合は、数平均分子量が400〜1500の範囲内のものを選択することが好ましい。これにより、パッケージ組み立て加熱時に、チップ表面、又は装置等の汚染の原因となるアウトガスを有効に低減できる。フィルムの良好な熱時流動性を確保し、低温ラミネート性を付与し、かつ上記のアウトガスを低減できるという点で、一般式(VIII)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0088】
本発明のフィルム状接着剤は、さらに(C)エポキシ樹脂硬化剤を含んでもよい。(C)エポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はなく、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられるが、中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。
【0089】
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中で、数平均分子量が400〜1500の範囲内のものが好ましい。これにより、パッケージ組み立て加熱時に、チップ表面、又は装置等の汚染の原因となるアウトガスを有効に低減できる。中でもパッケージ組み立て加熱時に、チップ表面、又は装置等の汚染、又は臭気の原因となるアウトガスを有効に低減できる点で、ナフトールノボラック樹脂、又はトリスフェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0090】
前記ナフトールノボラック樹脂とは、下記一般式(XI)、又は下記一般式(XII)で表される、分子内に芳香環を3個以上有するナフトール系化合物である。
【化16】
【0091】
上記式(XI)及び(XII)中、R1〜R20はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、又は水酸基を示し、nは1〜10の整数を示す。また、Xは2価の有機基で、例えば、次に示されるような基がある。
【化17】
【0092】
このようなナフトール系化合物をさらに具体的に例示すれば、次の一般式(XIII)、(XIV)で表されるキシリレン変性ナフトールノボラックや、(XV)で表されるp−クレゾールとの縮合によるナフトールノボラック等が挙げられる。
【化18】
【0093】
上記一般式(XIII)および(XIV)中の繰り返し数nは1〜10であることが好ましい。
【0094】
前記トリスフェノール系化合物とは、分子内に3個のヒドロキシフェニル基を有するトリスフェノールノボラック樹脂であり、好ましくは下記一般式(XVI)で表される。
【化19】
【0095】
ただし、上記式(XVI)中、R1〜R10はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、及び水酸基から選ばれる基を示す。また、Dは4価の有機基を示し、そのような4価の有機基の例を以下に示す。
【化20】
【0096】
このようなトリスフェノール系化合物の具体的な例としては、例えば、4,4′,4″−メチリデントリスフェノール、4,4′−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4′,4″−エチリジントリス[2−メチルフェノール]、4,4′,4″−エチリジントリスフェノール、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、2,2′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,5−トリメチルフェノール]、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4′,4″−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリデン)トリスフェノール、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、2,2′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、2,2′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4′−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4′−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2、6−ジメチルフェノール]、4,4′,4″−メチリジントリス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4′−[1−[4−[1−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、2,2′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−(メチルエチル)フェノール]、2,2′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、4,4′−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、α,α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等がある。
【0097】
上記(C)エポキシ樹脂硬化剤に、分子中に水酸基を2個以上有するフェノール系化合物を用いる場合は、上記(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量と、上記のフェノール系化合物のOH当量の当量比を0.95〜1.05:0.95〜1.05の範囲とすることが好ましい。この範囲外であると、未反応モノマが残存する、又硬化物の架橋密度が十分に上がらず、好ましくない。
【0098】
また、本発明のフィルム状接着剤には、硬化促進剤を添加することもできる。硬化促進剤には、特に制限が無く、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等を用いることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0099】
硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。添加量が0.01重量部未満であると硬化性が劣る傾向があり、20重量部を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0100】
本発明のフィルム状接着剤は、さらに(D)フィラーを含有しても良い。(D)フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、フィラーの形状は特に制限されるものではない。
【0101】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着フィルムに熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着フィルムに靭性等を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置に求められる特性を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー、又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好で、かつ加熱時の高い接着力を付与できる点で窒化ホウ素がより好ましい。
【0102】
上記フィラーの平均粒子径は10μm以下、最大粒子径は25μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、かつ最大粒子径が25μmを超えると、破壊靭性向上の効果が得られない傾向がある。下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.1μm程度である。
【0103】
上記フィラーは、平均粒子径10μm以下、最大粒子径は25μm以下の両方を同時に満たすことが好ましい。最大粒子径が25μm以下であるが平均粒子径が10μmを超えるフィラーを使用すると、高い接着強度が得られない傾向がある。また、平均粒子径は10μm以下であるが最大粒子径が25μmを超えるフィラーを使用すると、粒径分布が広くなり接着強度にばらつきが出やすくなる。また、本発明の接着剤組成物を薄膜フィルム状に加工して使用する場合、表面が粗くなり接着力が低下する傾向がある。
【0104】
上記フィラーの平均粒子径及び最大粒子径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、200個程度のフィラーの粒径を測定する方法等が挙げられる。
【0105】
SEMを用いた測定方法としては、例えば、接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体支持基板とを接着した後、加熱硬化(好ましくは150〜200℃で1〜10時間)させたサンプルを作製し、このサンプルの中心部分を切断して、その断面をSEMで観察する方法等が挙げられる。
【0106】
また、用いるフィラーが金属フィラー又は無機フィラーである場合は、接着剤組成物を600℃のオーブンで2時間加熱し、樹脂成分を分解、揮発させ、残ったフィラーをSEMで観察、測定する方法をとることもできる。フィラーそのものをSEMで観察する場合、サンプルとしては、SEM観察用の試料台の上に両面粘着テープを貼り付け、この粘着面にフィラーを振り掛け、その後、イオンスパッタで蒸着したものを用いる。このとき、前述のフィラーの存在確率が全フィラーの80%以上であるとする。
【0107】
上記(D)フィラーの使用量は、付与する特性、又は機能に応じて決められるが、(A)熱可塑性樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂成分と(D)フィラーの合計に対して1〜50体積%、好ましくは2〜40体積%、さらに好ましくは5〜30体積%である。1体積%未満であるとフィラー添加による特性、又は機能の付与の効果が得られない傾向があり、50体積%を超えると接着性が低下する傾向がある。フィラーを増量させることにより、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上できるが、必要以上に増量させると、本発明の特徴である低温貼付性及び被着体との界面接着性が損なわれ、耐リフロー性を含む信頼性の低下を招くため好ましくない。求められる特性のバランスをとるべく、最適なフィラー含量を決定する。
【0108】
本発明のフィルム状接着剤には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。
【0109】
本発明のフィルム状接着剤は、(A)熱可塑性樹脂、(B)エポキシ樹脂、必要に応じて、(C)エポキシ樹脂硬化剤、(D)フィラー、及び他の成分を有機溶媒中で混合、混練してワニス(フィルム状接着剤塗工用のワニス)を調製した後、基材フィルム上に上記塗工ワニスの層を形成させ、加熱乾燥した後、基材を除去して得ることができる。上記の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。上記の加熱乾燥の条件は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常60℃〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。ここで、Bステージ状態でのフロー量を100〜1500μmの範囲内に制御するためには、残存溶媒をできるだけ低減することが望ましく、また、貼付性が損なわれない程度に、エポキシ樹脂の硬化反応、またはポリイミド樹脂とエポキシ樹脂間の橋かけ反応をある程度進めておくことが望ましい。この観点から、フィルム調製時に、120〜160℃、10〜60分の乾燥工程が含まれることが好ましい。
【0110】
上記フィルム状接着剤の製造における上記ワニスの調整に用いる有機溶媒、即ちワニス溶剤は、材料を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等が挙げられるが、熱可塑性樹脂としてポリイミド樹脂を用いる場合には、ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂間の橋かけ反応を有効に進める点で、含窒素化合物が好ましい。このような溶剤としては、例えば、上記のジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン等が挙げられ、中でもポリイミド樹脂の溶解性に優れるという点で、N―メチルピロリドンが好ましい。
【0111】
上記フィルム状接着剤の製造時に使用する基材フィルムは、上記の加熱、乾燥条件に耐えるものであれば特に限定するものではなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。これらの基材としてのフィルムは2種以上組み合わせて多層フィルムとしてもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0112】
次に、好ましい態様をいくつか挙げながら本発明をより詳細に説明する。
【0113】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、tanδピーク温度が−20〜60℃、フロー量が100〜1500μmであることを特徴とする。上記tanδピーク温度とは、180℃5hの条件で加熱硬化したフィルムを、レオメトリックス製粘弾性アナライザーRSA−2を用いて、フィルムサイズ35mm×10mm、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−100〜300℃の条件で測定したときのTg付近のtanδピーク温度である。上記フィルムのtanδピーク温度が−20℃より低いと、フィルムとしての自己支持性がなくなり、tanδピーク温度が60℃を超えるとラミネート温度が80℃を超える可能性が高くなり、いずれも好ましくない。また、上記フロー量とは、10mm×10mm×40μm厚サイズ(尚、フィルム厚は±5μmの誤差で調製した。以下、フィルム厚の誤差についての記載は上記と同様のため省略する。)の上記フィルム(未硬化フィルム)の上に10mm×10mm×50μm厚のユーピレックスフィルムを重ね合わせ、2枚のスライドグラス(MATSUNAMI製、76mm×26mm×1.0〜1.2mm厚)の間に挟んだサンプルについて、180℃の熱盤上で100kgf/cm2の荷重をかけ、120sec加熱圧着した後の上記ユーピレックスフィルムからのはみ出し量を光学顕微鏡で観測したときの最大値である。このときのフロー量が100μm未満であると、トランスファモールド時の熱と圧力によって、配線付き基板上の凹凸を十分に埋め込むことができず、また、1500μmを超えると、ダイボンド又はワイヤボンド時の熱履歴によって流動し、上記の基板上の凹凸に対して、凹凸間に残存する気泡を巻き込み易くなり、トランスファモールド工程での熱と圧力を加えても、この気泡が抜けきれずにボイドとなってフィルム層に残存し、このボイドが起点となって、吸湿リフロー時に発泡し易くなるため、いずれも好ましくない。なお、40μm以下のフィルム状接着剤についてフロー量を測定する際には適当枚数貼り合わせて厚みを調整し、逆にあつい場合には注意深く削る等の手段により厚みを調整することによってフロー量測定サンプルとすることもできる。
【0114】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、シリコンウェハ裏面(バックグラインド処理面)に80℃でラミネートした段階で、上記シリコンウェハに対する25℃での90°ピール剥離力が5N/m以上であることを特徴とする。ここで、90°ピール剥離力について図1〜図3の概略図を用いて説明する。
【0115】
図1及び図2には、本発明のフィルム状接着剤1がシリコンウェハ3上に、ロール2と支持台4とを有する装置を用いてラミネートされるラミネート方法の概略図が示されている。90°ピール剥離力とは、装置のロール温度:40℃、送り速度:0.5m/minのラミネート条件下で、5inch、400μm厚のシリコンウェハ裏面に40μm厚のフィルム状接着剤をラミネートした後、図3に示す方法でフィルム状接着剤(1cm幅)を90°方向に100mm/minの条件で引き剥がしたときのピール剥離力をいう。90°ピール剥離力は5N/m以上であることが好ましい。上記ピール剥離力が5N/m未満であると、ダイシング時にチップ飛びが発生する可能性が高くなり、また良好なピックアップ性の確保が困難となる。チップ飛びを発生させずに、良好なピックアップ性を確実に確保するためには上記ピール剥離力が20N/m以上であることがより好ましく、50N/m以上であることが特に好ましい。
【0116】
上記ラミネート条件において、ラミネート圧力は、被着体である半導体ウェハの厚みや大きさから定めることが好ましい。具体的には、ウェハの厚みが10〜600μmの場合は線圧が0.5〜20kgf/cmであることが好ましく、ウェハ厚みが10〜200μm場合は線圧0.5〜5kgf/cmが好ましい。ウェハの大きさは4〜10インチ程度が一般的であるが、特にこれに限定されるものではない。上記ラミネート条件とすることによって、ラミネート時のウェハ割れ防止と密着性確保のバランスを保つことができる。
【0117】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、表面に厚さ15μmのソルダーレジスト層が付いた厚さ0.1mmの有機基板に5mm×5mm×0.55mm厚のガラスチップを5mm×5mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg(ここではtanδピーク温度)+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、85℃85%相対湿度(以下「RH」ともいう。)の条件で15時間吸湿処理した後、260℃の熱盤上で30秒加熱したとき、発泡の発生が認められないことを特徴とする。
【0118】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、上記の発泡の発生が認められないという特徴に加えてさらに、上記有機基板に3.2mm×3.2mm×0.4mm厚のシリコンチップを3.2mm×3.2mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、85℃60%RHの条件で168時間吸湿処理した後、260℃の熱盤上で30秒加熱した後のせん断接着強度が5N/chip以上であり、さらに、上記有機基板に5mm×5mm×0.4mm厚のシリコンチップを5mm×5mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、260℃の熱盤上で30秒加熱した後のピール強度(シリコンチップ引き剥がし強度)が5N/chip以上であることを特徴とする。
【0119】
上記発泡の発生の有無は、光学顕微鏡(×20倍)で目視で観測して判定する。上記のせん断接着強度は、Dage製BT2400を用い、測定速度:500μm/sec、測定ギャップ:50μmの条件で測定する。上記のピール強度は図10に示す接着力試験機で、測定速度0.5mm/secの条件で測定する。
【0120】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、使用前の上記フィルム状接着剤の表面エネルギーと、ソルダーレジスト材が付いた有機基板の表面エネルギーの差が、10mN/m以内であることを特徴とする。この差が10mN/mを超えると、上記有機基板に対する良好なぬれ性の確保が困難となり、界面接着力が低下する可能性が高くなるため好ましくない。尚、上記表面エネルギーは、水及びヨウ化メチレンに対する接触角の実測値から、下記式(1)〜(3)により算出する。
【数1】
【0121】
上記θ1は水に対する接触角(deg)、θ2はヨウ化メチレンに対する接触角(deg)、γは表面エネルギー、γdは表面エネルギーの分散成分、γpは表面エネルギーの極性成分である。
【0122】
尚、上記の接触角は、次のようにして測定した。フィルム状接着剤を適当な大きさに切り取り、両面接着テープでスライドグラスに貼り付けて固定し、上記フィルム状接着剤の表面をヘキサンで洗浄し、窒素パージ処理したのち、60℃30分の条件で乾燥した試料を測定に用いた。なお、接触角の測定面は、フィルム塗工時の基材側とした。接触角は、協和表面科学製(Model CA−D)を用いて、室温で測定した。
【0123】
本発明の1態様としてのフィルム状接着剤は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを少なくとも含有するフィルム状ダイボンディング材に用いられものであって、前記フィルム状接着剤の残存揮発分をV(重量%)、加熱硬化後の吸水率をM(重量%)、フロー量をF(μm)、加熱硬化後の260℃における貯蔵弾性率をE(MPa)としたとき、以下の(1)〜(4):
(1)V≦10.65×E、
(2)M≦0.22×E、
(3)V≦―0.0043F+11.35、
(4)M≦―0.0002F+0.6
の少なくとも1つの条件を満たすことを特徴とする。
【0124】
この場合、上記(3)、(4)の条件を同時に満たすことが好ましく、また上記(2)〜(4)の条件を満たすことがより好ましく、上記(1)〜(4)のすべての条件を満たすことがさらに好ましい。
【0125】
上記の残存揮発分Vは、調製後のフィルムについて、V=(加熱前のフィルム重量−オーブン中で260℃2hの条件で加熱した後のフィルム重量)/加熱前のフィルム重量より求める。上記の加熱硬化後の吸水率Mは、180℃5hの条件で加熱硬化したフィルムについて、M=(イオン交換水で24h浸漬後のフィルムの重量−吸水前のフィルムの重量)/吸水前のフィルムの重量より求める。吸水前のフィルムの重量は、真空乾燥器中で120℃3hの条件で乾燥した後の重量である。上記のフロー量Fとは上述した条件で測定したときの値である。加熱硬化後の260℃における貯蔵弾性率Eとは、180℃5hの条件で加熱硬化したフィルムについて、レオメトリックス製粘弾性アナライザーRSA−2を用いて、フィルムサイズ35mm×10mm、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−50〜300℃の条件で測定したときの260℃における貯蔵弾性率である。上記の残存揮発分V、吸水率をM、フロー量F、及び貯蔵弾性率をE(MPa)のいずれかが上記式の範囲外であると、本発明での低温ラミネート性と良好な耐リフロー性を同時に確保することが困難となる。
【0126】
また、本発明の1態様として、基材層、粘着剤層、及び本発明のフィルム状接着剤層とがこの順に形成されてなる接着シート(すなわち従来のダイシングテープと本発明のフィルム状接着剤層が積層された構造の接着シート)が提供される。この接着シートは、半導体装置製造工程を簡略化する目的で、フィルム状接着剤とダイシングフィルムとを少なくとも備える一体型の接着シートである。即ち、ダイシングフィルムとダイボンディングフィルムの両者に要求される特性を兼ね備える接着シートである。
【0127】
このように基材層の上にダイシングフィルムとしての機能を果たす粘着剤層を設け、さらに粘着剤層の上にダイボンディングフィルムとしての機能を果たす本発明のフィルム状接着剤層とを積層させたことにより、ダイシング時にはダイシングフィルムとして、ダイボンディング時にはダイボンディングフィルムとしての機能を発揮する。そのため、前記の一体型の接着シートは、半導体ウェハの裏面に一体型接着シートのフィルム状接着剤層を加熱しながらウェハ裏面にラミネートし、ダイシングした後、フィルム状接着剤付き半導体素子としてピックアップして使用することができる。
【0128】
上記の粘着剤層は、感圧型、又は放射線硬化型のどちらでも良いが、放射線硬化型の方が、ダイシング時には高粘着力を有し、ピックアップする前に紫外線(UV)を照射することにより、低粘着力になり、粘着力の制御がし易いという点で好ましい。前記の放射線硬化型粘着剤層としては、ダイシング時には半導体素子が飛散しない十分な粘着力を有し、その後の半導体素子のピックアップ工程においては半導体素子を傷つけない程度の低い粘着力を有するものであれば特に制限されることなく従来公知のものを使用することができる。このとき、シリコンウェハに80℃でラミネートした段階で、上記シリコンウェハに対するフィルム状接着剤の25℃での90°ピール剥離力をA、露光量500mJ/cm2の条件でUV照射した後の放射線硬化型粘着剤層のフィルム状接着剤に対する25℃での90°ピール剥離力をBとしたとき、A−Bの値が1N/m以上であることが好ましく、5N/m以上がより好ましく、10N/m以上がさらにより好ましい。シリコンウェハに対するフィルム状接着剤の25℃での90°ピール剥離力は上述の通りである。また、露光量500mJ/cm2の条件でUV照射した後の放射線硬化型粘着剤層のフィルム状接着剤に対する25℃での90°ピール剥離力は、シリコンウェハ裏面(バックグラインド処理面)に80℃でラミネートした後(ラミネート方法は上述)、上記のダイシングテープを室温でラミネートし、その後、露光量500mJ/cm2の条件でUV照射してから、ダイシングテープを25℃においてフィルム状接着剤から90°方向に引き剥がしたときのピール剥離力である。より具体的には、図4に示すように、ダイシングテープ5(1cm幅)(1:フィルム状接着剤、3:シリコンウェハ、4:支持体)を25℃において90°方向に100mm/minの条件で引き剥がす。上記の値(A−B)が1N/m未満であると、ピックアップ時に各素子を傷つける傾向にある、またはピックアップ時に、シリコンチップ及びフィルム状接着剤界面で先に剥がれてしまい、有効にピックアップできないため、好ましくない。尚、「ピール剥離力」については後に実施例の欄でさらに詳しく説明する。
【0129】
放射線硬化型粘着剤層としては、前記の特性を有するものであれば特に制限されることなく従来公知のものを使用することができる。放射線硬化型粘着剤層としては、具体的には粘着剤と放射線重合性オリゴマーを含有してなる層を用いることができる。この場合、前記放射線硬化型粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましい。より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体を主たる構成単量体単位とする(メタ)アクリル酸エステル共重合体、又はこれら共重合体の混合物等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルのように記載した場合、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの両方を示す。
【0130】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜15である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)と、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル、スチレン及び塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種の酸基を有しない極性モノマー(b)と、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸基を有するコモノマー(c)との共重合体等が挙げられる。
【0131】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)と、酸基を有しない極性モノマー(b)と、酸基を有するコモノマー(c)との共重合比としては、重量比で、a/b/c=35〜99/1〜60/0〜5の範囲で配合することが好ましい。また、酸基を有するコモノマー(c)は使用しなくてもよく、その場合には、a/b=70〜95/5〜30の範囲で配合することが好ましい。
【0132】
コモノマーとして、酸基を有しない極性モノマー(b)が60重量%を超えて共重合されると、放射線硬化型粘着剤層3は、完全相溶系となり、放射線硬化後における弾性率が10MPaを超えてしまい、充分なエキスパンド性、ピックアップ性が得られなくなる傾向がある。一方、酸基を有しない極性モノマー(b)が1重量%未満で共重合されると、放射線硬化型粘着剤層3は不均一な分散系となり、良好な粘着物性が得られなくなる傾向がある。
【0133】
なお、酸基を有するコモノマーとして(メタ)アクリル酸を用いる場合には、(メタ)アクリル酸の共重合量は5重量%以下であることが好ましい。酸基を有するコモノマーとして(メタ)アクリル酸が5重量%を超えて共重合されると、放射線硬化型粘着剤層3は、完全相溶系となり充分なエキスパンド性、ピックアップ性が得られなくなる傾向がある。
【0134】
またこれらのモノマーを共重合して得ることができる(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量としては、2.0×105〜10.0×105が好ましく、4.0×105〜8.0×105がより好ましい。
【0135】
放射線硬化型粘着剤層を構成する放射線重合性オリゴマーの分子量としては、特に制限はないが、通常3000〜30000程度であり、5000〜10000程度が好ましい。
【0136】
上記放射線重合性オリゴマーは、放射線硬化型粘着剤層中に均一に分散していることが好ましい。その分散粒径としては、1〜30μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。分散粒径とは、放射線硬化型粘着剤層3を、600倍の顕微鏡で観察して、顕微鏡内のスケールで分散しているオリゴマーの粒子径を実測することで決定される値である。また、均一に分散している状態(均一分散)とは、隣接する粒子間の距離が、0.1〜10μmである状態をいう。
【0137】
上記放射線重合性オリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等の分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有する化合物などが挙げられ、中でも所望する目的に応じて種々の化合物を選択できる点でウレタンアクリレート系オリゴマーが好ましい。
【0138】
上記ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエステル型又はポリエーテル等のポリオール化合物と、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン、4,4−ジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物とを反応させて得ることができる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等のヒドロキシル基を有するアクリレート又はメタクリレートなどとを反応させて得ることができる。
【0139】
上記ウレタンアクリレート系オリゴマーの分子量としては特に制限はないが、3000〜30000が好ましく、3000〜10000がより好ましく、4000〜8000が極めて好ましい。
【0140】
本発明の接着用シートにおいて、放射線硬化型粘着剤層中の粘着剤と放射線重合性オリゴマーとの配合比は、粘着剤100重量部に対して、放射線重合性オリゴマーが20〜200重量部用いられることが好ましく、50〜150重量部用いられることがより好ましい。
【0141】
上記の配合比とすることで、放射線硬化型粘着剤層とダイ接着用接着剤層との間に大きな初期接着力が得られ、しかも放射線照射後には接着力は大きく低下し、容易にウェハチップとダイ接着用接着剤層とを該粘着シートからピックアップすることができる。またある程度の弾性率が維持されるため、エキスパンディング工程において、所望のチップ間隔を得ることが容易になり、かつチップ体のズレ等も発生せず、ピックアップを安定して行えるようになる。また、必要により前記成分のほかにさらに他の成分を加えても構わない。
【0142】
本発明のフィルム状接着剤は、IC、LSI等の半導体素子と42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチックフィルム、ガラス不織布等基材にポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチックを含浸、硬化させたもの、アルミナ等のセラミックス等の半導体搭載用支持部材とを貼り合せるためのダイボンディング用接着材料である。中でも、有機レジスト層を具備してなる有機基板とを貼り合わせるためのダイボンディング用接着材料として好適に用いられる。また、複数の半導体素子を積み重ねた構造のStacked−PKGにおいて、半導体素子と半導体素子とを接着するための接着材料としても好適に用いられる。
【0143】
図5に一般的な構造の半導体装置を示す。
【0144】
図5において、半導体素子10aは本発明の接着フィルム11aを介して半導体素子支持部材12に接着され、半導体素子10aの接続端子(図示せず)はワイヤ13を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材14によって封止されている。近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明の接着フィルムの用途は、この構造に限定されるものではない。
【0145】
また、図6に半導体素子同士を接着した構造を有する半導体装置の一例を示す。
【0146】
図6において、一段目の半導体素子10aは本発明の接着フィルム11aを介して半導体素子支持部材12に接着され、一段目の半導体素子10aの上に更に本発明の接着フィルム11bを介して二段目の半導体素子10bが接着されている。一段目の半導体素子10a及び二段目の半導体素子10bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ13を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材(図示せず)によって封止されている。このように、本発明の接着フィルムは、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0147】
尚、半導体素子と支持部材との間に本発明のフィルム状接着剤を挾み、加熱圧着するときの加熱温度は、通常、25〜200℃、0.1〜300秒間である。その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経て、半導体装置(半導体パッケージ)とされる。
【0148】
本発明のフィルム状接着剤は、図7に示すように、接着剤層15のみからなる単層のフィルム状接着剤であることが好ましいが、図8に示すように基材フィルム16の両面に接着剤層15を設けてなる構造でもよい。尚、接着剤層の損傷・汚染を防ぐために適宜接着剤層にカバーフィルムを設けることなどもできる。本発明のフィルム状接着剤は、0.5mm〜20mm程度の幅のテープ状、半導体ウエハ1枚ごとに貼り付ける大きさのシート状、長尺のシート状等の形状とすることが好ましい。また、テープ状、長尺シート状のような形態の場合は、巻芯に巻き取れば保管が容易で、使用する際にも便利である。巻き取り長さとしては特に制限はないが、短すぎると交換が煩雑になり、長すぎると中心部に高い圧力が加わり厚みが変化するおそれがあるため、通常20m〜1000mの範囲で適宜設定される。
【0149】
また、本発明の1態様として、基材層17、放射線硬化型粘着剤層18、及び上記のフィルム状接着剤層19とがこの順に形成されてなる接着シートが提供される(図9)。上記接着シートは、半導体装置製造工程を簡略化する目的で、得られた基材付きフィルム状接着剤にダイシングフィルムを積層した一体型の接着シートである。上記の一体型の接着シートは、半導体ウェハの裏面に一体型接着シートのフィルム状接着剤層を加熱しながらウェハ裏面にラミネートし、ダイシングした後、フィルム状接着剤付き半導体素子としてピックアップして使用する。
【0150】
本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子等の電子部品とリードフレームや絶縁性支持基板等の支持部材の接着材料として、低温ラミネート性及びダイシング後のピックアップ性に優れると共に、良好な熱時接着力及び実装時の高温半田付けの熱履歴に対して優れた信頼性を有し、鉛フリーに対応した半導体パッケージのダイボンド材として好適に使用できる。また、本発明の接着剤組成物又はフィルム状接着剤を用いて半導体素子と支持部材とを接着した構造を含有してなる半導体装置は信頼性に優れる。
【実施例】
【0151】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は、これらに限定されるものではない。
【0152】
(実施例1〜17、比較例1〜10)
下記ポリイミドA〜Mを熱可塑性樹脂として用い、下記表2の配合表に示す通り、フィルム塗工ワニスを調合した。
【0153】
<ポリイミドA>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、1,12−ジアミノドデカン2.10g(0.035モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))17.31g(0.03モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)2.61g(0.035モル)及びN−メチル−2−ピロリドン150gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)15.62g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン100gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドA)を得た。(ポリイミドのTg:22℃、重量平均分子量:47000、SP値:10.2)
<ポリイミドA'>
精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)の代わりに、未精製の4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:11.1℃)を用いた他は<ポリイミドA>と同様にしてポリイミド溶液(ポリイミドA')を得た。(ポリイミドのTg:22℃、重量平均分子量:42000、SP値:10.2)
<ポリイミドB>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン8.63g(0.07モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))17.31g(0.03モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン166.4gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)7.82g(0.05モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)7.85g(0.05モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン111gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドB)を得た。(ポリイミドのTg:33℃、重量平均分子量:114800、SP値:10.1)
<ポリイミドC>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン5.81g(0.095モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))2.88g(0.005モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン112.36gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)10.94g(0.07モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)4.71g(0.03モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン74.91gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドC)を得た。(ポリイミドのTg:35℃、重量平均分子量:172300、SP値:11.0)
<ポリイミドD>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン4.62g(0.07モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)2.24g(0.03モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン90.00gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)12.50g(0.08モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0)3.14g(0.02モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン60.00gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドD)を得た。(ポリイミドのTg:24℃、重量平均分子量:42800、SP値:11.0)
<ポリイミドE>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン5.81g(0.095モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))2.88g(0.005モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン97.32gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)12.50g(0.08モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)3.14g(0.02モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン64.88gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドE)を得た。(ポリイミドのTg:37℃、重量平均分子量:48500、SP値:10.9)
<ポリイミドF>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、1,12−ジアミノドデカン5.41g(0.045モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000(分子量:1923))11.54g(0.01モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900))24.3g(0.045モル)及びN−メチル−2−ピロリドン169gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、4,無水酢酸で再結晶精製した4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)31.23g(0.1モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン112.7gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドF)を得た。(ポリイミドのTg:25℃、重量平均分子量:35000、SP値:9.8)
<ポリイミドG>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン6.83g(0.05モル)、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン3.40g(0.05モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン110.5gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製したデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)17.40g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン74gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドG)を得た。(ポリイミドのTg:73℃、重量平均分子量:84300、SP値:10.9)
<ポリイミドH>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン4.28g(0.07モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)1.87g(0.025モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900))1.32g(0.005モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン72.2gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−オキシジフタル酸二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:3.2℃)7.44g(0.08モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)3.14g(0.02モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン48.13gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドH)を得た。(ポリイミドのTg:40℃、重量平均分子量:91800、SP値:12.3)
<ポリイミドI>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン4.62g(0.07モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)1.87g(0.025モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900))1.32g(0.005モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン73.56gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製した4,4´−オキシジフタル酸二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:3.2℃)7.44g(0.08モル)、及びデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)3.14g(0.02モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン49.04gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドI)を得た。(ポリイミドのTg:37℃、重量平均分子量:35600、SP値:12.4)
<ポリイミドJ>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン6.17g(0.05モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製、KF−8010(分子量:900))13.20g(0.05モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン140.24gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸で再結晶精製したデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)15.69g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン93.49gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドJ)を得た。(ポリイミドのTg:30℃、重量平均分子量:45600、SP値:9.9)
<ポリイミドK>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、1,12−ジアミノドデカン2.71g(0.045モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ポリエーテルジアミン2000(分子量:1923))5.77g(0.01モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学製、LP−7100)3.35g(0.045モル)及びN−メチル−2−ピロリドン113gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸を用いて再結晶精製した4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:2.5℃)15.62g(0.1モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン75.5gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドK)を得た。(ポリイミドのTg:53℃、重量平均分子量:58000、SP値:10.3)
<ポリイミドL>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン13.67g(0.10モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン124gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸を用いて再結晶精製したデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)17.40g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン83gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドL)を得た。(ポリイミドのTg:120℃、重量平均分子量:121000、SP値:10.8)
<ポリイミドM>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン2.73g(0.02モル)、ポリシロキサンジアミン(信越シリコーン製KF−8010(分子量:900))24.00g(0.08モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン176.5gを仕込み攪拌した。ジアミンの溶解後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、無水酢酸を用いて再結晶精製したデカメチレンビストリメリテート二無水物(DSCによる発熱開始温度と発熱ピーク温度の差:5.0℃)17.40g(0.10モル)を少量ずつ添加した。室温で8時間反応させたのち、キシレン117.7gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱し、水と共にキシレンを共沸除去し、ポリイミド溶液(ポリイミドM)を得た。(ポリイミドのTg:40℃、重量平均分子量:19700、SP値:9.7)
【表2】
【表3】
【0154】
略号
エポキシ樹脂
ESCN−195:住友化学、クレゾールノボラック型固体状エポキシ樹脂(エポキシ当量200、分子量:778)、
BEO−60E:新日本理化学、エチレンオキシド6モル付加体ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:373、分子量:746)、
BPO−20E:新日本理化学、プロピレンオキシド6モル付加体ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:314、分子量:628)、
XB−4122:旭チバ、アルキレンオキシド付加体ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:336、分子量:672)、
N−730:大日本インキ化学、フェノールノボラック型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:175、分子量:600〜800)、
EXA830CRP:大日本化学、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:160、分子量:320)、
ESLV−80DE:新日本理化学、フェニルエーテル型固体状エポキシ樹脂(エポキシ当量:174、分子量:348)
その他の成分
H−1:明和化成、フェノールノボラック(OH当量:106、分子量:653)、
NH−7000:日本化薬、ナフトールノボラック(OH当量:140、分子量:420)、
XL−225、三井東圧化学、キシリレン変性フェノールノボラック(OH当量:175、分子量:420)、
NH−7000:日本化薬、ナフトールノボラック(OH当量:175、分子量:420)、
TrisP−PA:本州化学、トリスフェノールノボラック(OH当量:141、分子量:424)、
TPPK:東京化成、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート、2PZ−CN:四国化成工業、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、
NMP:関東化学、N−メチル−2−ピロリドン、
HP−P1:水島合金鉄、窒化ホウ素(平均粒子径:1.0μm、最大粒子径:5.1μm)、
E−03:東海ミネラル、シリカ(平均粒子径:4.0μm、最大粒子径:11.4μm)、
SE−1:トクヤマ、シリカ(平均粒子径:0.8μm、最大粒子径:3.1μm)
これらワニスを40μmの厚さに、それぞれ基材(剥離剤処理PET)上に塗布し、オーブン中で80℃30分、続いて150℃30分加熱し、その後、室温で基材から剥がして、フィルム状接着剤を得た。
【0155】
実施例1〜17及び比較例1〜10のフィルム状接着剤の特性評価結果を表3に示す。なお、各特性の測定方法は下記のとおりである。
【0156】
<表面エネルギー>
フィルム状接着剤又はレジスト材付き有機基板を両面接着テープでスライドグラスに貼り付けて固定し、上記フィルム状接着剤又はレジスト材付き有機基板の表面をヘキサンで洗浄し、窒素パージ処理したのち、60℃30分の条件で乾燥した試料を用い、水及びヨウ化メチレンに対する接触角を協和表面科学製(Model CA−D)を用いて、室温で測定した。フィルム状接着剤については、フィルム塗工時の基材側を測定面とした。
【0157】
上記接触角の実測値を用いて、下記式によりフィルム状接着剤又はレジスト材付き有機基板の表面エネルギーを算出した。
【数2】
【0158】
上記θ1は水に対する接触角(deg)、θ2はヨウ化メチレンに対する接触角(deg)、γは表面エネルギー、γdは表面エネルギーの分散成分、γpは表面エネルギーの極性成分である。尚、レジスト材付き有機基板の表面エネルギーは41mN/mであった。
【0159】
<フロー量>
10mm×10mm×40μm厚サイズのフィルム状接着剤(未硬化フィルム)をサンプルとし、上記サンプルの上に10mm×10mm×50μm厚サイズのユーピレックスフィルムを重ね合わせ、2枚のスライドグラス(MATSUNAMI製、76mm×26mm×1.0〜1.2mm厚)の間に挟み、180℃の熱盤上で100kgf/cm2の荷重をかけ、120sec加熱圧着した後の上記ユーピレックスフィルムからのはみ出し量を、目盛り付き光学顕微鏡で観測したときの最大値をフロー量とした。
【0160】
<吸水率>
20mm×20mm×40μm厚サイズのフィルム状接着剤(180℃5hの条件で加熱硬化したフィルム)をサンプルとし、サンプルを真空乾燥機中で、120℃3h乾燥させ、デシケータ中で放冷後、乾燥重量をM1とし、乾燥後のサンプルをイオン交換水に室温で24時間浸漬してから取り出し、サンプル表面をろ紙でふきとり、すばやく秤量して、M2とする。[(M2−M1)/M1]×100=吸水率(wt%)として、吸水率を算出した。
【0161】
<260℃貯蔵弾性率及びtanδピーク温度>
180℃5hの条件で加熱硬化したフィルム状接着剤について、レオメトリックス製粘弾性アナライザーRSA−2を用いて、フィルムサイズ35mm×10mm×40μm厚、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−100〜300℃の条件で測定し、260℃における貯蔵弾性率、及びTg付近のtanδピーク温度を見積もった。
【0162】
<ピール剥離力>
ウェハに対するピール剥離力(対ウェハ):調製後の40μm厚のフィルム状接着剤(未硬化フィルム)1をシリコンウェハ3の裏面に、図2に示されるロール2と、支持台4とを有する装置を用いてラミネートした。その際、装置のロール温度:80℃、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で、5inch、300μm厚のシリコンウェハ3の裏面に上記フィルム状接着剤1をラミネートした。その後、図3に示す方法でフィルム状接着剤1(1cm幅)を90°方向に引き剥がしたときのピール剥離力を、ウェハに対するピール剥離力とした(測定速度:100mm/min)。
【0163】
フィルム状接着剤の放射線硬化型粘着剤層に対するピール剥離力(対ダイシングテープ):上記ウェハ付きフィルム状接着剤1のウェハに対向する面の他面に、さらに放射線硬化型粘着剤層としてのUV型ダイシングテープ5をラミネートした。ラミネート条件は、装置のロール温度を室温(25℃)としたことを除いて上記のフィルム状接着剤のラミネート条件と同様とした。その後、(株)オーク製作所製UV−330 HQP−2型露光機を用い、波長300〜450nm(ランプの電力:3kW、照度:15mW/cm2)、露光量500mJ/cm2の条件で図4中矢印で示される方向から上記ダイシングテープに放射線を照射した。次に、図4に示す方法でダイシングテープ(1cm幅)を90°方向に引き剥がしたときのピール剥離力を、フィルム状接着剤の放射線硬化型粘着剤層(ダイシングテープ)に対するピール剥離力とした(測定速度:100mm/min)。
【0164】
<ダイシング時のチップ飛び及びピックアップ性>
上記の条件で、5inch、400μm厚のシリコンウェハ裏面にフィルム状接着剤をラミネートし(ラミネート温度:80℃)、続いて上記のダイシングテープを上記と同様の条件でラミネートし、その後、ダイサーを用いて、ダイシング速度10mm/sec、回転数30000rpmの条件で、5mm×5mmサイズにダイシングしたときのチップ飛びの有無を観測し、上記チップ飛びが10%以下のときをチップ飛びなしとした。尚、ウェハ端部のチップ切り出し残部の飛びは評価の対象外とした。
【0165】
次に、上記チップ飛びなしのサンプルについて、ダイシングテープ側を上記と同様の条件で露光した後、個々のチップについてピンセットでピックアップしたときのダイシングテープとフィルム状接着剤間の剥離性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0166】
○:ピックアップ可能なチップが90%以上
△:ピックアップ可能なチップが50%以上90%未満
×:ピックアップ可能なチップが50%未満
<耐発泡性>
表面に厚さ15μmのソルダーレジスト層が付いた厚さ0.1mmの有機基板に5mm×5mm×0.55mm厚のガラスチップを5mm×5mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg(ここではtanδピーク温度)+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃、5hの条件で加熱硬化したのち、85℃85%RHの条件で15時間吸湿処理した後、260℃の熱盤上で30秒加熱したときのサンプルを、光学顕微鏡(×20倍)を用いて評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0167】
○:発泡がフィルム全体の10%未満
△:発泡がフィルム全体の10%以上50%未満
×:発泡がフィルム全体の50%以上
<せん断接着強度>
上記と同様の有機基板に3.2mm×3.2mm×0.4mm厚のシリコンチップを3.2mm×3.2mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、85℃60%RHの条件で168時間吸湿処理した後、260℃の熱盤上で30秒加熱した後、Dage製BT2400を用い、測定速度:500μm/sec、測定ギャップ:50μmの条件でせん断接着強度を測定した。
【0168】
<ピール強度>
上記と同様の有機基板に5mm×5mm×0.4mm厚のシリコンチップを5mm×5mm×40μm厚のフィルム状接着剤でフィルムのTg+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、180℃×5kgf/chip×90secの条件で加熱圧着し、上記フィルム状接着剤を180℃5hの条件で加熱硬化したのち、260℃の熱盤上で30秒加熱した後、図10に示す接着力評価装置を用い、測定速度:0.5mm/secの条件でピール強度を測定した。
【0169】
<耐リフロー性>
表面に厚さ15μmのソルダーレジスト層が付いた、銅配線(配線高さ12μm)付きの厚さ0.1mmの有機基板に、6.5mm×6.5mm×280μm厚のシリコンチップを6.5mm×6.5mm×40μm厚のフィルム状接着剤で、フィルムのTg(ここではtanδピーク温度)+100℃×500gf/chip×3secの条件でダイボンディングした後、170℃3minの条件でワイヤボンディング相当の熱履歴をかけ、その後、トランスファモールドを行い(金型温度:180℃、キュアタイム:2min)、封止材をオーブン中で180℃5hの条件で加熱硬化して半導体パッケージを得た(CSP96pin、封止領域:10mm×10mm、厚み:0.8mm)。このパッケージを恒温恒湿器中で30℃60%RH192h吸湿処理した後、TAMURA製IRリフロー装置(パッケージ表面ピーク温度:265℃、温度プロファイル:パッケージ表面温度を基準にし、JEDEC規格に沿って調整)に3回繰り返し投入し、日立製作所製超音波探査映像装置HYE−FOUCUSを用いて、ダイボンディング層の剥離、及び破壊の有無を調べた。その後、パッケージの中心部を切断し、切断面を研磨した後、オリンパス製金属顕微鏡を用いて、パッケージの断面を観察し、ダイボンディング層の剥離、及び破壊の有無を調べた。これらの剥離、及び破壊が認められないことを耐リフロー性の評価基準とした。
【0170】
<耐湿信頼性>
耐湿性評価は、上記パッケージを温度121℃、湿度100%、2.03×105Paの雰囲気(プレッシャークッカ−テスト:PCT処理)で72時間処理後に、上記の方法で剥離を観察することにより行った。評価基準は以下のとおりである。
【0171】
○:剥離発生率:10%未満
△:剥離発生率:10%以上50%未満
×:剥離発生率:50%以上
【表4】
【表5】
【0172】
表3から、本発明のフィルム状接着剤は、極薄ウェハの保護テープ、又は貼り合わせるダイシングテープの軟化温度よりも低い温度でウェハ裏面にラミネートでき、かつウェハの反り等の熱応力を低減でき、ダイシング時のチップ飛びも無く、ピックアップ性も良好であり、半導体装置の製造工程を簡略化でき、さらに耐熱性及び耐湿信頼性に優れるものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0173】
以上のような本発明によれば、(1)極薄ウェハ用途や100℃以下の低温貼り付けに対応できるウェハ裏面貼付け方式のフィルム状接着剤、(2)上述のダイシング工程までの貼付工程を簡略化可能とする、上記フィルム状接着剤とUV型ダイシングテープを貼りあわせた接着シート、(3)ウェハ裏面に上記接着シートを貼り付ける(以下、ラミネートという)際に、フィルム状接着剤が溶融する温度まで加熱するが、この加熱温度を上記のUV型ダイシングテープの軟化温度よりも低くすることができ、作業性の改善のみならず、大径化薄膜化するウェハの反りの問題を解消可能なフィルム状接着剤、(4)半導体素子搭載用支持部材に熱膨張係数の差が大きい半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有し、かつ作業性、低汚染性に優れるフィルム状接着剤、(5)半導体装置の製造工程を簡略化でき、信頼性に優れる半導体装置、を提供することが可能となる。
【0174】
前述したところが、この発明の好ましい実施態様であること、多くの変更及び修正をこの発明の精神と範囲とにそむくことなく実行できることは当業者によって了承されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイミド樹脂、(B)3官能以上のエポキシ樹脂および/または室温で固体状のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤、並びに(D)フィラーを含有する接着剤層を少なくとも備えたフィルム状接着剤であって、
(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(V)で表される脂肪族エーテルジアミンを含むジアミンと、を反応させることにより得られ、SP値が10.0〜11.0(cal/cm3)1/2、Tgが−20〜60℃であり、かつ、再結晶精製されたテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンと、を反応させて得られるポリイミド樹脂を、全ポリイミド樹脂の50重量%以上含有し、
【化1】
(式中、mは2〜80の整数を示す)
tanδピーク温度が−20〜60℃であり、かつ、フロー量が100〜1500μmである、フィルム状接着剤。
なお、前記SP値は、以下の式により算出された値であり
SP値(δ)=ΣΔF/ΣΔυ
(ΣΔFは各種原子あるいは各種原子団の25℃におけるモル引力定数の総和、ΣΔυは各種原子あるいは各種原子団のモル体積の総和である。)、
前記tanδピーク温度は、加熱硬化した後の接着剤層について動的粘弾性測定を行うことにより得られるTg付近のtanδピーク温度であり、
前記フロー量は、加熱硬化する前の接着剤層と他のフィルムとを温度180℃、荷重100kgf/cm2で加熱圧着した際の、他のフィルムからの接着剤層のはみ出し量である。
【請求項2】
前記(B)エポキシ樹脂は、3官能以上のエポキシ樹脂10〜90重量%、かつ室温で液状のエポキシ樹脂10〜90重量%を含む請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
前記(A)ポリイミド樹脂100重量部に対して、前記(B)エポキシ樹脂が1〜50重量部含まれる請求項1または2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
前記(C)エポキシ樹脂硬化剤は、分子内に水酸基を2個以上有し、数平均分子量が400〜1500であるフェノール系化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
前記(C)エポキシ樹脂硬化剤は、分子内に芳香環を3個以上有するナフトール系化合物、又は、トリスフェノール系化合物である請求項請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
前記(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量と、前記(C)エポキシ樹脂硬化剤のOH当量の当量比が、0.95〜1.05:0.95〜1.05である請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項7】
前記(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と下記一般式(V)
【化2】
(式中、mは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの1モル%以上含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項8】
前記(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と下記一般式(V)
【化3】
(式中、mは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの1〜90モル%、下記一般式(II)
【化4】
(式中、nは5〜20の整数を示す)
で表される脂肪族ジアミンを全ジアミンの0〜99モル%、及び下記一般式(III)
【化5】
(式中、Q4及びQ9は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7、及びQ8は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜5の整数を示す)
で表されるシロキサンジアミンを全ジアミンの0〜99モル%含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項9】
前記(A)ポリイミド樹脂が、エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物を全テトラカルボン酸二無水物の50モル%以上含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項10】
前記エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(IV)
【化6】
で表されるテトラカルボン酸二無水物である請求項9に記載のフィルム状接着剤。
【請求項11】
前記3官能以上のエポキシ樹脂が、下記一般式(VII)
【化7】
(式中、Q10、Q11及びQ12は各々独立に水素又は炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、rは1〜20の整数を示す)
で表されるノボラック型エポキシ樹脂である請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項12】
前記(D)フィラーが絶縁性のフィラーである請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項13】
前記(D)フィラーの平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が25μm以下である請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項14】
前記(D)フィラーの含量が1〜50体積%である請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項15】
前記フィルム状接着剤の表面エネルギーと、ソルダーレジスト材が付いた有機基板の表面エネルギーの差が10mN/m以内である請求項1〜14のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項16】
シリコンウェハに80℃でラミネートした段階で、前記シリコンウェハに対する25℃での90°ピール剥離力が5N/m以上である請求項1〜15のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項17】
基材層、粘着剤層、及び請求項1〜16のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤がこの順に形成されてなる接着シート。
【請求項18】
前記粘着剤層が、放射線硬化型粘着剤層である請求項17に記載の接着シート。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤を介して、
(1)半導体素子と半導体搭載用支持部材、及び
(2)半導体素子同士
の少なくとも1つが接着された構造を有してなる半導体装置。
【請求項1】
(A)ポリイミド樹脂、(B)3官能以上のエポキシ樹脂および/または室温で固体状のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、(C)エポキシ樹脂硬化剤、並びに(D)フィラーを含有する接着剤層を少なくとも備えたフィルム状接着剤であって、
(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(V)で表される脂肪族エーテルジアミンを含むジアミンと、を反応させることにより得られ、SP値が10.0〜11.0(cal/cm3)1/2、Tgが−20〜60℃であり、かつ、再結晶精製されたテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンと、を反応させて得られるポリイミド樹脂を、全ポリイミド樹脂の50重量%以上含有し、
【化1】
(式中、mは2〜80の整数を示す)
tanδピーク温度が−20〜60℃であり、かつ、フロー量が100〜1500μmである、フィルム状接着剤。
なお、前記SP値は、以下の式により算出された値であり
SP値(δ)=ΣΔF/ΣΔυ
(ΣΔFは各種原子あるいは各種原子団の25℃におけるモル引力定数の総和、ΣΔυは各種原子あるいは各種原子団のモル体積の総和である。)、
前記tanδピーク温度は、加熱硬化した後の接着剤層について動的粘弾性測定を行うことにより得られるTg付近のtanδピーク温度であり、
前記フロー量は、加熱硬化する前の接着剤層と他のフィルムとを温度180℃、荷重100kgf/cm2で加熱圧着した際の、他のフィルムからの接着剤層のはみ出し量である。
【請求項2】
前記(B)エポキシ樹脂は、3官能以上のエポキシ樹脂10〜90重量%、かつ室温で液状のエポキシ樹脂10〜90重量%を含む請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
前記(A)ポリイミド樹脂100重量部に対して、前記(B)エポキシ樹脂が1〜50重量部含まれる請求項1または2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
前記(C)エポキシ樹脂硬化剤は、分子内に水酸基を2個以上有し、数平均分子量が400〜1500であるフェノール系化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
前記(C)エポキシ樹脂硬化剤は、分子内に芳香環を3個以上有するナフトール系化合物、又は、トリスフェノール系化合物である請求項請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
前記(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量と、前記(C)エポキシ樹脂硬化剤のOH当量の当量比が、0.95〜1.05:0.95〜1.05である請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項7】
前記(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と下記一般式(V)
【化2】
(式中、mは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの1モル%以上含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項8】
前記(A)ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と下記一般式(V)
【化3】
(式中、mは2〜80の整数を示す)
で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの1〜90モル%、下記一般式(II)
【化4】
(式中、nは5〜20の整数を示す)
で表される脂肪族ジアミンを全ジアミンの0〜99モル%、及び下記一般式(III)
【化5】
(式中、Q4及びQ9は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7、及びQ8は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜5の整数を示す)
で表されるシロキサンジアミンを全ジアミンの0〜99モル%含むジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項9】
前記(A)ポリイミド樹脂が、エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物を全テトラカルボン酸二無水物の50モル%以上含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂である請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項10】
前記エステル結合を含有しないテトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(IV)
【化6】
で表されるテトラカルボン酸二無水物である請求項9に記載のフィルム状接着剤。
【請求項11】
前記3官能以上のエポキシ樹脂が、下記一般式(VII)
【化7】
(式中、Q10、Q11及びQ12は各々独立に水素又は炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、rは1〜20の整数を示す)
で表されるノボラック型エポキシ樹脂である請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項12】
前記(D)フィラーが絶縁性のフィラーである請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項13】
前記(D)フィラーの平均粒子径が10μm以下、最大粒子径が25μm以下である請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項14】
前記(D)フィラーの含量が1〜50体積%である請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項15】
前記フィルム状接着剤の表面エネルギーと、ソルダーレジスト材が付いた有機基板の表面エネルギーの差が10mN/m以内である請求項1〜14のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項16】
シリコンウェハに80℃でラミネートした段階で、前記シリコンウェハに対する25℃での90°ピール剥離力が5N/m以上である請求項1〜15のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項17】
基材層、粘着剤層、及び請求項1〜16のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤がこの順に形成されてなる接着シート。
【請求項18】
前記粘着剤層が、放射線硬化型粘着剤層である請求項17に記載の接着シート。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のフィルム状接着剤を介して、
(1)半導体素子と半導体搭載用支持部材、及び
(2)半導体素子同士
の少なくとも1つが接着された構造を有してなる半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−10961(P2013−10961A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181703(P2012−181703)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2009−240348(P2009−240348)の分割
【原出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2009−240348(P2009−240348)の分割
【原出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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