説明

フェナントロリン励起子阻止層を有する有機感光性オプトエレクトロニックデバイス

アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間の有機阻止層を有する有機感光性オプトエレクトロニックデバイスであって、前記阻止層はフェナントロリン誘導体を含有し、励起子、電子及び正孔のうち少なくとも一つを、少なくとも部分的に阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年11月24日に出願された米国仮特許出願第60/630,629の利益を主張し、その内容は全てここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、米国空軍科学研究局による契約第339−6002の下で、及び米国エネルギー省、国立再生可能エネルギー研究所による契約第341−4141の下で、米国政府の援助の下で行なわれた。政府は本発明に一定の権利を有している。
【0003】
請求の範囲に記載されている発明は、大学−企業共同研究契約に基づき、一つ以上の以下の団体によって、それらを代表して、及び/またはそれらに関連してなされた:プリンストン大学、南カリフォルニア大学、及びGlobal Photonic Energy Corporation。前記契約は、請求の範囲に記載されている発明がなされた日及びそれ以前に有効であったもので、請求の範囲に記載されている発明は前記契約の範囲内で行なわれた活動の結果としてなされた。
【0004】
本発明は有機感光性オプトエレクトロニックデバイスに広く関する。より詳細には、本発明は有機感光性オプトエレクトロニックデバイス、例えばフェナントロリン誘導体を含む励起子阻止層を有する太陽電池及び可視スペクトル光検出器に関する。
【背景技術】
【0005】
オプトエレクトロニックデバイスは、電磁放射線を電子的に製造または検知するため、または周囲の電磁放射線から電気を作り出すため、材料の光学的な及び電子的な性質を利用する。
【0006】
感光性オプトエレクトロニックデバイスは電磁放射線を電気信号又は電流に変換する。光起電性(“PV”)デバイスとも呼ばれる太陽電池は感光性オプトエレクトロニックデバイスの一種であり、電力を生成するため特に使用される。光導電セルは、吸収される光に起因する変化を検知するためにデバイスの抵抗を監視する信号検出回路とともに使用される感光性オプトエレクトロニックデバイスの一種である。光検出器は、印加されたバイアス電圧を受けてよく、光検出器が電磁放射線に露出されるとき生成される電流を測定する電流検出回路とともに使用される感光性オプトエレクトロニックデバイスの一種である。
【0007】
感光性オプトエレクトロニックデバイスのこれら三つの分類は、以下に定義されるような整流接合が存在するか否かにより、及び、デバイスが、バイアスまたはバイアス電圧としても知られる、外部から印加された電圧で操作されるか否かにより区別されてよい。光導電セルは整流接合を持たず、通常バイアスで操作される。PVデバイスは少なくとも一つの整流接合を有し、バイアスの無い状態で操作される。光検出器は少なくとも一つの整流接合を有し、通常、しかし常にではないが、バイアスで操作される。
【0008】
ここで、用語“整流”は、一つには、界面が非対称な伝導特性を有することを、すなわち、界面が好ましくは一方向への電子電荷移動を維持することを示す。用語“半導体”は、熱的または電磁的励起によって電荷キャリアが誘起されるとき電流を伝えることができる材料を示す。用語“光導電性”は、電磁放射エネルギーが吸収され、キャリアが材料中で電荷を伝導(すなわち、輸送)し得るように、結果的に電荷キャリアの励起エネルギーに変換されるプロセスに広く関する。用語“光導電材料”は、電荷キャリアを生成するため、それらが電磁放射線を吸収する性質を使用した半導体材料をさす。ここで“最上部”とは基板から最も離れていることを意味し、それに対して“底部”は基板に最も近いことを意味する。第1層が、第2層と“物理的に接触して”いることが明記されることなく、介在層が存在してよい。
【0009】
適切なエネルギーを有する電磁放射線が有機半導体材料の上に入射するとき、励起された分子状態を作るためフォトンが吸収されてよい。有機光導電材料において、生成された分子状態は一般的に“励起子”、すなわち偽−粒子として移送される結合状態の電子−正孔対、であると一般的に考えられる。励起子は電子正孔対が再結合(“クエンチング”)をする前に評価可能な寿命を有してよく、前記再結合とは(他のペアからの正孔または電子との再結合とは対照的に)元々の電子及び正孔が互いに再結合することを示す。光電流を生成するために、励起子を形成する電子−正孔が整流接合において一般的に分離される。
【0010】
感光性デバイスの場合、整流接合は光起電性ヘテロ接合とみなされる。有機光起電性ヘテロ接合は、ドナー材料とアクセプター材料との界面に形成されるドナー・アクセプターヘテロ接合、及び光導電材料と金属との界面に形成されるショットキーバリアヘテロ接合を含む。
【0011】
図1は、ドナー・アクセプターヘテロ接合の例を説明するエネルギー準位図である。有機材料に関連して、“ドナー”及び“アクセプター”という用語は、二つの接触する、ただし異なる有機材料における、最高被占分子軌道(“HOMO”)及び最低空分子軌道(“LUMO”)エネルギー準位の相対的な位置を示す。もしも他の材料と接触している一つの材料のLUMOエネルギー準位がより低い場合には、その材料はアクセプターである。他方はドナーである。それは外部のバイアスがない条件下で、ドナー・アクセプター接合において電子がアクセプター材料の内部に移動するためにエネルギー的に好ましい。
【0012】
もしも第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位10により近い場合には、第1のHOMOまたはLUMOエネルギー準位は、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位と比較して“大きい”または“高い”。HOMOエネルギー準位が高いことは、真空準位に関連して、イオン化ポテンシャル(“IP”)の絶対エネルギーが小さいことに対応する。同様に、LUMOエネルギー準位が高いことは、真空準位に関連して、電子親和力(“EA”)の絶対エネルギーが小さいことに対応する。最上部に真空準位を有する従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。
【0013】
ドナー152またはアクセプター154内でのフォトン6の吸収の後、励起子8が形成され、励起子8は整流界面において分離する。ドナー152は正孔(白丸)を輸送し、アクセプター154は電子(黒丸)を輸送する。
【0014】
有機半導体の重要な性質は、キャリア易動度である。易動度とは、電場に応答して電荷キャリアが半導体材料を通じて移動することができる容易さを評価するものである。有機感光性デバイスに関して、電子易動度が高いことに起因して電子を選択的に伝導する材料は電子輸送材料とみなされてよい。正孔易動度が高いことに起因して正孔を選択的に伝導する材料は正孔輸送材料とみなされてよい。デバイス内の易動度及び/または位置に起因して電子を選択的に伝導する層は、電子輸送層(“ETL”)とみなされてよい。デバイス内の易動度及び/または位置に起因して、正孔を選択的に伝導する層は正孔輸送層(“HTL”)とみなされてよい。好ましくは、ただし必要ではないが、アクセプター材料が電子輸送材料であり、ドナー材料が正孔輸送材料である。
【0015】
光起電性ヘテロ接合において、キャリア易動度、及び、相対的なHOMO及びLUMO準位に基づき、ドナー及びアクセプターとして働く二つの有機光導電材料を如何に組み合わせるかは従来技術でよく知られているので、ここでは述べない。
【0016】
用語“有機”は、有機オプトエレクトロニックデバイスを作製するために使用される低分子有機材料と同様に、ポリマー材料を含む。“低分子”は、ポリマーではないどのような有機材料も示すもので、“低分子”は実際には非常に大きくてもよい。低分子は、ある状況では繰り返し単位を含んでよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いても、その分子は“低分子”として分類される。低分子は、例えばポリマー主鎖のペンダント基として、または主鎖の一部としてポリマー内部に組み込まれてもよい。低分子は、デンドリマーのコア部分として使われてもよく、前記デンドリマーはコア部分に接して構築された一連の化学的殻からなる。デンドリマーのコア部分は蛍光またはリン光低分子発光体であってよい。デンドリマーは“低分子”であってよい。一般的に、高分子は明確な化学式で表されるが分子どうしが異なる分子量を持つのに対して、低分子は明確な化学式で表されて分子どうしも等しい分子量を持つ。ここで、“有機”はヒドロカルビルリガンド及びヘテロ原子で置換されたヒドロカルビルリガンドの金属錯体を含む。
【0017】
一般的な構造、特性、材料及び特徴を含む、有機感光性デバイスの従来技術に関するさらなる背景説明及び記述に関しては、Forrestらの米国特許第6,657,378号明細書、Forrestらの米国特許第6,580,027号明細書、及びBulovicらの米国特許第6,352,777号明細書が参照としてここに組み込まれる。
【特許文献1】米国特許第6,657,378号明細書
【特許文献2】米国特許第6,580,027号明細書
【特許文献3】米国特許第6,352,777号明細書
【特許文献4】米国特許第6,451,415号明細書
【特許文献5】米国特許第6,420,031号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0224113A1号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0110007A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願第10/915,410号明細書
【特許文献9】米国特許出願第10/979,145号明細書
【特許文献10】米国特許第6,333,458号明細書
【特許文献11】米国特許第6,440,769号明細書
【特許文献12】米国特許出願第10/857,747号明細書
【非特許文献1】Applied Physics Letters 76、2650−52(2000)
【非特許文献2】Inorganic Chemistry(2nd Edition)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間の有機阻止層とを備えた有機感光性オプトエレクトロニックデバイスに関し、前記阻止層はフェナントロリン誘導体を含み、励起子、電子及び正孔のうち少なくとも一つを、少なくとも部分的に阻止する。阻止層は励起子阻止層であることが好ましい。フェナントロリン誘導体は、mono−t−BBP、mono−PBP、mono−o−TBP、mono−XYBP、n−BBP、t−BBP、PBP、o−TBP、m−TBP及びP(o−T)BPからなる群から選択されることが好ましい。
【0019】
本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、太陽電池、又は例えば太陽スペクトル光検出器若しくは可視スペクトル光検出器等の、光検出器である。本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを含んでよい。
【0020】
本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは感光性ヘテロ結合をさらに含むことが好ましく、前記感光性ヘテロ結合はドナー/アクセプターヘテロ結合であることがより好ましい。EBLは、感光性ヘテロ構造と、アノード及び電極のうちの一つとの間に配置されることが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、感光性ヘテロ構造、感光性ヘテロ構造とアノードとの間の第1のEBL、及び感光性ヘテロ構造とカソードとの間の第2のEBLをさらに含む。
【0021】
本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスのEBLはアノード又はカソードに隣接してよい。本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、アノードに隣接した第1のEBL、及びカソードに隣接した第2のEBLを含んでもよい。さらに本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスはETLを含んでもよく、阻止層はETLとアノード及びカソードのうち一つとの間に配置される。例えば、阻止層はETLとカソードとの間に配置されてよく、デバイスはアノードとETLとの間にHTLをさらに備えてよく、その場合阻止層は励起子阻止層であることが好ましい。好ましいETL材料はC60を含有する。
【0022】
本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスのフェナントロリン誘導体は以下の構造を持つことが好ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
上記式でR〜R16は、水素、アルキル基、フェニル基又は置換されたフェニル基であるが、ただしR〜R16が全て水素である場合、R及びRが両方水素であることはなく、及び両方メチル基であることはない。
【0025】
一つの実施形態では、本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは電子輸送層、正孔輸送層及び阻止層を含み、それらは二つの平行な平面反射面の間に配置され、導波路を形成する。二つの反射面のうち一つはデバイスに光を入射することができるように隙間を有することが好ましい。光が反射面の平面と実質的に平行な方向からデバイスに入ることができるように、その実施形態の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、二つの反射面の間に透明な部分をさらに含んでよい。
【0026】
複数の本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスが、積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを形成するために積層されてもよい。
【0027】
本発明は、有機感光性オプトエレクトロニックデバイス又はサブセルの内部量子効率を増大するため、一つ以上のフェナントロリン誘導体励起子阻止層を含む有機感光性オプトエレクトロニックデバイス及び有機感光性オプトエレクトロニックデバイスサブセルを提供する。本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは高外部量子効率で運転することができ、積層されたサブセルを含んでよい。好ましくは、本発明の積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、最適なサブセルにおける最大の内部量子効率に匹敵する高外部量子効率で運転することができる。本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、励起子阻止層を含まないデバイスと比較してVOC及びISCが改良された。本発明の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの基板は、導電性又は絶縁性であってよく、剛直又は柔軟であってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
有機感光性デバイスは、光が吸収されて励起子を形成し、その後電子及び正孔に解離する少なくとも一つの光活性領域を含む。図2は有機感光性オプトエレクトロニックデバイス100の例を示し、光活性領域150はドナー・アクセプターヘテロ接合を含む。“光活性領域”は感光性デバイスの一部分であり、電磁放射線を吸収して励起子を形成し、前記励起子は電流を生成するために解離してよい。デバイス100は、アノード120、アノード平滑層122、ドナー152、アクセプター154、励起子阻止層(“EBL”)156及びカソード170を、基板の上に含む。
【0029】
Forrestらの米国特許第6,451,415号明細書にEBL156の例が記述され、それは参考にここに組み込まれる。EBLのさらなる背景説明が同じくPeumansらの、“Efficient photon harvesting at high optical intensities in ultrathin organic double−heterostructure photovoltaic diodes,”、Applied Physics Letters 76、2650−52(2000)に見出されてよい。ドナー及び/又はアクセプター材料から励起子が移動するのを阻止することによって、EBLはクエンチングを低減する。
【0030】
ここで用語「電極」及び「コンタクト」は外部回路に光生成電流を運ぶため、又は装置にバイアス電流若しくは電圧を提供するための媒体を提供する層を参照するため交換可能に使われる。図2に示すように、アノード120及びカソード170がその例である。電極は、金属または“金属代替物”で構成されてよい。ここで、用語“金属”は、本質的に純粋な金属からなる材料、及び二つ以上の本質的に純粋な金属からなる材料である金属アロイの双方を包含して使用される。用語“金属代替物”は、通常の定義の範囲では金属ではないが、例えば導電性等、金属のような性質を有する、ドープされた広バンドギャップ半導体、縮退半導体、導電性酸化物及び導電性ポリマー等の材料をさす。電極は、単一の層または複数の層(“化合物”電極)を含んでよく、透明、半透明または不透明であってよい。電極及び電極材料の例としては、Bulovicらの米国特許第6,352,777号明細書、Parthasarathyらの米国特許第6,420,031号明細書に開示されるものが含まれ、これらは各々の特徴を開示するために参考としてここに組み込まれる。ここでは、もしも関連する波長において周囲の電磁放射線の少なくとも50%を透過する場合、層は“透明”であるといわれる。
【0031】
基板110は、所望される構造的な性質を提供するどのような適切な基板であってもよい。基板は柔軟または剛直、平面または非平面であってよい。基板は、透明、半透明または不透明であってよい。剛直なプラスチック及びガラスが、剛直な基板材料の好ましい例である。柔軟なプラスチックまたは金属ホイルが、柔軟な基板材料の好ましい例である。
【0032】
アノード平滑層122は、アノード層120とドナー層152との間に配置されてよい。アノード平滑層は、Forrestらの米国特許第6,657,378号明細書に記述され、この特徴についての開示に関して参考のためここに組み込まれる。
【0033】
図2において、光活性領域150はドナー材料152及びアクセプター材料154を含む。光活性領域で使用される有機材料は、シクロメタレート有機金属化合物を含む有機金属化合物を含んでよい。ここで、用語“有機金属”は、当業者に一般的に理解されるようなものであり、例えば、Gary L.Miessler、Donald A.Tarrによる“Inorganic Chemistry”(2nd Edition)、Prentice Hall(1999)の13章に与えられるようなものである。
【0034】
有機層は、真空蒸着、スピンコーティング、有機気相蒸着法、インクジェット印刷及び従来技術で知られる他の方法を用いて作製されてよい。
【0035】
様々なタイプのドナー・アクセプターヘテロ接合の例が図3−5に示される。図3は、平坦なヘテロ接合を形成するドナー・アクセプター二層を説明する。図4は、ドナー及びアクセプター材料の混合物を含む混合ヘテロ接合153を含むハイブリッドヘテロ接合を説明する。図5は理想的な“バルク”ヘテロ接合を説明する。実際のデバイスでは複数の界面が一般的に存在するけれども、バルクヘテロ接合は、理想的な光電流の場合、ドナー材料252とアクセプター材料254との間に単一の連続的な界面を有する。混合及びバルクヘテロ接合は複数の材料ドメインを有する結果として、複数のドナー・アクセプター界面を有する可能性がある。反対のタイプの材料によって囲まれたドメイン(例えば、アクセプター材料によって囲まれたドナー材料のドメイン)は、これらのドメインが光電流に寄与しないように電気的に隔離されてよい。他のドメインが、これら他のドメインが光電流に寄与し得るように、パーコレーション経路(連続的な光電流経路)によって接続されてよい。混合ヘテロ接合とバルクヘテロ接合との間の差異は、ドナー材料とアクセプター材料との間の相分離の程度にある。バルクヘテロ接合において有意の相分離が存在する(例えば、数ナノメータから100nmのサイズのドメインを形成する)のに対して、混合ヘテロ接合においては、相分離は殆ど存在しないか、または全く存在しない(ドメインは非常に小さく、例えば数ナノメータ未満である)。
【0036】
低分子混合ヘテロ接合は、例えば真空蒸着または気相蒸着を用いたドナー及びアクセプター材料の共蒸着によって形成されてよい。低分子バルクヘテロ接合は、例えば制御成長(controlled growth)、蒸着後のアニーリングを伴う共蒸着、または溶液処理によって形成されてよい。ポリマーの混合またはバルクヘテロ接合は、例えばドナー及びアクセプター材料のポリマーブレンドの溶液処理によって形成されてよい。
【0037】
もしも光活性領域が混合層(153)またはバルク層(252、254)及びドナー層(152)及びアクセプター層(154)のうち少なくとも一つを含む場合には、前記光活性領域は“ハイブリッド”ヘテロ接合を含むといわれる。図4における層の配置はその例である。ハイブリッドヘテロ接合のさらなる説明に関しては、Jiangeng Xueらによる、発明の名称が“High efficiency organic photovoltaic cells employing hybridized mixed−planar heterojunctions”である、2005年10月13日に公開された、米国特許出願公開第2005/0224113A1号明細書が参考のためここに組み込まれる。
【0038】
一般的には、平坦なヘテロ接合は良好なキャリア伝導性を有するが、励起子分離に乏しい;混合層はキャリア伝導性に乏しく、励起子分離が良好であり、バルクヘテロ接合はキャリア伝導性が良好であり、励起子分離も良好であるが、材料の“行き止まり”の末端で電荷の集積が起こり効率を低下させる可能性がある。特に記述しなければ、平坦な、混合、バルク及びハイブリッドヘテロ接合は、ここで開示される実施形態全体で、ドナー・アクセプターヘテロ接合と殆ど同じ意味で使用されてよい。
【0039】
図6は、光活性領域350がショットキーバリアヘテロ接合の一部分である有機感光性オプトエレクトロニックデバイス300の例を示す。デバイス300は、透明コンタクト320、有機光導電材料358を含む光活性領域350、及びショットキーコンタクト370を含む。ショットキーコンタクト370は、一般的に金属層として形成される。もしも光導電層358がHTLである場合には、アルミニウム、マグネシウムまたはインジウム等の低仕事関数金属が使われてよいのに対して、もしも光導電層358がETLの場合には、金などの高仕事関数金属が使用されてよい。ショットキーバリアセルにおいて、ショットキーバリアに関連して組み込まれた電場は、分離した励起子内の電子及び正孔を引き付ける。一般的に、電界励起子分離はドナー・アクセプター界面における分離ほど効率的ではない。
【0040】
説明されたようなデバイスは、エレメント190に接続されてよい。もしも前記デバイスが光起電性デバイスである場合、エレメント190は電力を消費または保存する抵抗型負荷である。もしも前記デバイスが光検出器である場合、エレメント190は、光検出器が光に露出されるとき生成される電流を測定し、及びバイアスをデバイスに印加することができる、電流検出回路である(例えば、Forrestらによる、2005年5月26日に公開された、米国特許出願公開第2005−0110007A1号明細書において記述される)。もしも整流接合がデバイスから除去される場合(例えば、光活性領域として単一の光導電材料を用いて)、結果として得られる構造は光導電セルとして使用されてよく、その場合エレメント190は、光の吸収に起因するデバイスを横切る抵抗の変化を監視する信号検出回路である。特に記述しなければ、ここで開示される図面及び実施形態の各々において、これらの配列及び修正の各々がデバイスに使用されてよい。
【0041】
有機感光性オプトエレクトロニックデバイスは、透明な電荷輸送層、電極、または電荷再結合領域を含んでもよい。電荷輸送層は、有機物または無機物であってよく、光導電的に活性であってよく或いは光導電的に活性でなくてよい。電荷輸送層は電極と類似しているが、デバイス外部への電気的な接続を持たず、オプトエレクトロニックデバイスの一つのサブセクションから隣接するサブセクションへと単に電荷キャリアを輸送する。電荷再結合領域は、電荷輸送層と類似しているが、オプトエレクトロニックデバイスの隣接するサブセクションの間で電子及び正孔の再結合を可能にする。電荷再結合領域は、ナノクラスター、ナノ粒子、及び/またはナノロッドを含む半透明金属または金属代替物の再結合中心を含んでよく、例えば以下の文献、Forrestらの米国特許第6,657,378号明細書;Randらによる、発明の名称が“Organic Photosensitive Devices”である、2004年8月11日に出願された、米国特許出願10/915,410;Forrestらによる、発明の名称が“Stacked Organic Photosensitive Devices”である、2004年11月3日に出願された米国特許出願10/979,145;に記述され、各々は再結合領域の材料及び構造の開示に関して参考のためにここに組み込まれる。電荷再結合領域は、再結合中心が埋め込まれた透明なマトリックス層を含んでもよく、含まなくてもよい。電荷輸送層、電極、または電荷再結合領域は、オプトエレクトロニックデバイスのサブセクションのカソード及び/またはアノードとして働いてよい。電極または電荷輸送層は、ショットキーコンタクトとして働いてよい。
【0042】
図7及び8は、そのような透明な電荷輸送層、電極、及び電荷再結合領域を含むタンデムデバイスの例を説明する。図7のデバイス400において、光活性領域150及び150’が、介在する導電性領域460と電気的に直列に積層される。外部の電気的な接続がなく図示されるように、介在する導電性領域460は電荷再結合領域であってよく、または電荷輸送層であってよい。再結合領域として、領域460は再結合中心461を、透明マトリックス層とともに、または透明マトリックス層なしに、含む。もしもマトリックス層がない場合には、前記領域を形成する材料の配列が領域460を横切って連続ではない可能性がある。図8におけるデバイス500は、電気的に並列に積層され、最上部のセルが逆転された構造である(すなわち、カソードが下)光活性領域150及び150’を説明する。図7及び8の各々において、光活性領域150及び150’、阻止層156、156’が、用途に依存して、同じ各々の材料、または異なる材料から形成されてよい。同様に、光活性領域150及び150’は同じタイプ(すなわち、平坦、混合、バルク、ハイブリッド)のヘテロ接合であってよく、または異なるタイプのヘテロ接合であってよい。
【0043】
上述の各デバイスにおいて、層は省略されてよい。例えば、反射層またはさらなる光活性層等の他の層が加えられてよい。層の順序は変更されてよく、または逆転されてよい。濃縮のための構成またはトラッピングのための構成が、以下に記述されるように、効率を増大するために用いられてよい。例えば、Forrestらの米国特許第6,333,458号明細書、及びPeumansらの米国特許第6,440,769号明細書であり、これらは参考のためここに組み込まれる。光学エネルギーをデバイスの所望の領域内部に集中させるためにコーティングが使用されてよく、例えば、Peumansらによる、発明の名称が“Aperiodic dielectric multilayer stack”である、2004年6月1日に出願された、米国特許出願第10/857,747に記述され、この内容は参考としてここに組み込まれる。タンデムデバイスにおいて、セル間の電気的な接続が電極を経由して提供される状態で、透明絶縁層がセル間に形成されてよい。また、タンデムデバイスにおいて、一つ以上の光活性領域がドナー・アクセプターヘテロ接合である代わりに、ショットキーバリアヘテロ接合であってよい。これら特に記述されたもの以外の配置が使われてよい。
【0044】
用語「サブセル」は有機感光性オプトエレクトロニック構造を示し、本発明による励起子阻止層を含んでよい。サブセルが個々に感光性オプトエレクトロニックデバイスとして使用されるとき、それは典型的に電極、すなわち正及び負の一式を含む。ここで開示されるように、ある積層された構成において、隣接したサブセルが、共通のすなわち、共有された電極又は電荷輸送層を利用することが可能である。他の場合では、隣接したサブセルは共通の電極又は電荷輸送層を共有しない。それぞれのサブユニットがそれ自身の別の電極を持っているか、又は隣接したサブユニットと電極又は電荷輸送層を共有するかどうかにかかわらず、用語「サブセル」はサブユニット構造を包含することがここに示される。用語“セル”、“サブセル”、“ユニット”、“サブユニット”、“セクション”と“サブセクション”は交換可能に光導電性層、又は層と隣接の電極又は電荷輸送層との組を示すために使われる。用語“積層”、“積層された”、“マルチセクション”及び“マルチセル”は、1つ以上の電極又は電荷輸送層によって分割された光導電材料の多層を有するどのようなオプトエレクトロニックデバイスをも意味する。
【0045】
太陽電池の積層されたサブセルが、外部への電気的接続がサブセルを分離する電極に形成されることを可能にする真空蒸着技術を用いて製造されてよいので、太陽電池によって生み出された電力及び/又は電圧が最大にされるかどうかに依存して、上述のように、デバイス内の各サブセルが電気的に並列に又は直列に接続されてよい。サブセルが直列に接続されるときと比較して並列な電気的配置は実質的に高いフィルファクターの実現を可能にするので、本発明の積層された太陽電池の実施形態において外部量子効率が改良され得るのは、積層された太陽電池のサブセルが電気的に並列に接続されてよいということによるかもしれない。
【0046】
光導電性有機材料の直列抵抗が高いことが、高出力の用途における直列配置でのサブセルの使用を妨げるけれども、例えば、より高い電圧が必要とされる可能性がある液晶ディスプレイ(LCD)の操作において、但し低い電流においてのみ、従って、低い出力レベルにおいてのみ、ある特定の用途がある。この種の用途のために、積層され、直列に接続された太陽電池はLCDに必要とされる電圧を提供するのに適している可能性がある。望ましい高電圧デバイスを生産するために太陽電池が電気的に直列に接続されたサブセルを備える場合、積層された太陽電池は、各サブセルが非能率を減らすためにおよそ同じ電流を生成するように製造されてよい。例えば、もし入射放射線が1つの方向にのみ通過するならば、積層されたサブセルにおいて、最も直接入射放射線にさらされる、最も薄い、最も外側のサブセルの厚さを増やしてよい。代わりに、もしサブセルが反射表面の上に重ね合わせられる場合には、個別のサブセル層の厚みは、元の、及び反射された方向から各サブセルに入射された全放射線を捕らえるように調節されてよい。
【0047】
さらに、多くの異なる電圧を生成することが可能な直流電力供給源を持つことは望ましいかもしれない。この用途のために、介在する電極への外部接続が非常に有用であり得る。従って、サブセルの全組を横切って生成される最大電圧を提供することができることに加えて、例示的な実施形態において、本発明の積層された太陽電池は、サブセルの選択されたサブセットから選択された電圧をつなぐことによって、単一の動力源から多数の電圧を提供するために使われてもよい。
【0048】
本発明は、フェナントロリン誘導体を含む励起子阻止層、EBL、及び、本発明のEBLを含む有機薄膜感光性オプトエレクトロニックデバイスに関する。
【0049】
ここで使用される用語「フェナントロリン誘導体」は下記の化合物を意味する。
【0050】
【化2】

【0051】
上記式でR〜R16は、水素、アルキル基、フェニル基又は置換されたフェニル基であるが、ただしR〜R16が全て水素である場合、R及びRが両方水素であることはなく、及び両方メチル基であることはない。同様に、ここで使用される「BCP誘導体又は類似物」はR〜R16が全て水素であるフェナントロリン誘導体、すなわち以下の化学式の化合物である。
【0052】
【化3】

【0053】
BCPはR及びRがどちらもメチルである化学式の化合物であり、BPhenはR及びRがどちらもHである化学式の化合物であり、n−BBPはRがH、Rがn−ブチルである化学式の化合物である。
【0054】
ここで、以下のBCP類似物の各々において、Rは水素、H、及びRは示された構造を有する。
【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
【化6】

【0058】
【化7】

【0059】
ここで、以下のBCP類似物の各々において、R及びRは各々示された構造を有する。
【0060】
【化8】

【0061】
【化9】

【0062】
【化10】

【0063】
【化11】

【0064】
ここでP(o−T)BPはBCP類似物であって、Rは化12に示され、Rは化13に示される。
【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
ここで用語「非対称フェナントロリン誘導体」及び「非対称BCP誘導体」又は「非対称BCP類似物」は非対称な置換基を有するフェナントロリン誘導体及びBCP誘導体を示す。すなわち、対応する置換基、例えば、RとR、RとR16、RとR12等が異なる。従って、mono−t−BBP、mono−PBP、mono−o−TBP、mono−XYBPは非対称なBCP誘導体又は類似物である。フェナントロリン誘導体及びBCP誘導体上の置換基、特に非対称な置換基は、EBLの結晶成長速度を減少させてデバイスの寿命を延ばす。但し、ある場合には、同様にTgが減少する可能性がある。
【0068】
例示的な実施形態において、透明で導電性のインジウムスズ酸化物(ITO)アノード(面抵抗40Ω/D)が〜1500Åの厚みで、前もって洗浄されたガラス基板の上に製造された。蒸着の前に、有機材料は温度勾配昇華を用いて3サイクル精製された。超高真空(1×10−10Torr)有機分子線蒸着を以下の順に用いて、膜がITO上部に成長された:厚み30Åから600Åのドナーライクな銅-フタロシアニンの膜の後は、厚み30Åから600Åのアクセプターライクな材料、例えば3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシビスイミダゾール(PTCBI)、又はC60等である。次に、厚み100Åから200Åの本発明のEBL材料、又は、比較のために、バソクプロイン(BCP)が蒸着された。3.5eVのエネルギーギャップを有するBCPが、有効な励起子阻止材であることが以前に示されており、隣接するPTCBI層から(有機物を大気に露出した後別個の真空チャンバ内で、直径1mmの開口部を有するマスクを通じて1×10−6Torrで蒸発堆積された)最上部の厚み800ÅのAgカソードまで電子を容易に輸送することができる。3.2eVのエネルギーギャップを有するPBPは、同じく容易に電子を輸送することができる有効な励起子阻止材であることが判明した。ギャップがほぼ固定された値であるように、置換基は等しくHOMO及びLUMO準位に影響を与えるべきであるから、本発明の他のEBL材料のエネルギーギャップが、BCPのそれと大きく異なるとは考えられない。特に明記されなければ、完成した有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの電気測定は全て空気中で行なわれた。
【0069】
図9は右の界面に関する2つの異なる境界条件の下での感光性有機材料内の位置の関数としての励起子密度の理論的な計算である。両方の励起子プロファイルは厚み60Åの有機感光性材料例えば、PTCBI又はC60の層に関し、膜全体での励起子の均一な生成を仮定している。均一な生成は、仮定したLD<<α−1、すなわち、吸収長さは励起子拡散距離よりずっと大きい、から当然に起きる。ここで、励起子拡散距離、LD、は30Åであるとみなされた。実線は右側にEBLを仮定する。破線は右側にクエンチング界面を有する。双方のケースで、左側界面は意図的な励起子シンク(例えばCuPc/PTCBI又はC60界面)である。本発明によるデバイスにおいて、励起子はそれらが自由な電荷キャリアの対に変換される励起子シンク界面において意図的に失われる。グラフの右端における実線曲線の値がより高いことは、EBLとの界面における励起子再結合速度が非常に低く、好ましくは無視できる程度であることを例証する。
【0070】
図10において、ある特定のデバイス構成におけるEBLのもう1つの有益な特質を説明する。励起子阻止層が、例えばAg等の金属の後方電極を有する有機感光性オプトエレクトロニックデバイスに挿入されるとき、活性領域は消滅している光電気場の領域から移行すると予測される。このグラフにみられるように、本発明の励起子阻止材料の励起子阻止層の挿入は、デバイスの活性領域における光学場の電気成分、ξ、の二乗平均値を効果的に増やす。描写される光電気場のプロファイルは概念的であって、光学的反射に対応する金属界面における境界条件のために起こる。実際の光電気場プロファイルは入射光によって横断される各層の誘電率に依存し、及び入射放射線の異なる波長に関連して変化することに注意されたい。詳細は変わる可能性があるが、EBL層を、図10で描写されたような、例示的なデバイス構成に挿入することは、後部反射電極とヘテロ接合との間に若干のさらなる分離を与えることは明白である。これはヘテロ接合をより高い光電気場の領域に置くようなものである。光電気場のシフトは、活性層の吸収と、それ故の、フォトン収集率を増やす。これは内部量子効率に影響を与えない。しかしながら、後に記述される導波管形状のような、捕えられた光が光活性層を通って複数回反射される装置において、それは光が高い外部効率を得るために経なくてはならない、必要とされるパスの数に影響を与える。一般的に反射層を持たない積層された装置においては、光電気場の二乗平均値が一般的に入射放射線のデバイス内部への貫通深さに応じて純粋に減衰するため、この吸収向上効果は存在しないであろう。
【0071】
図11は幾つかの例示的デバイスのλ=620nm(CuPcの吸収のピークに対応)における外部量子効率(ηEXT)を示し、該デバイスは異なる層の厚みの関数として、BCP EBL、例えば、ITO/CuPc/PTCBI/BCP/Ag、を備える。300ÅのPTCBIと100ÅのBCP(黒円)を有するデバイスに関して、CuPc層の厚みとして観察されたηEXTの増加が減少する。同様に300ÅのCuPcと100ÅのBCP(黒四角)を有するデバイスに関して、PTCBI層の厚みとしてλ=540nm(PTCBIの吸収のピークに対応)において観察されたηEXTの増加が減少する。もしもEBLが除かれる場合、PVセル光電流応答は最も薄いセルに関して大きく減少する。EBL層が電気的短絡なしで全活性層厚みがたった60Åであるデバイスの製作を可能にすることに注意されたい。さらに、電気測定によって、セルの直列抵抗が200Å程度の厚みのBCP層において影響されないままでいることが示される。類似の結果が本発明のフェナントロリン誘導体を含むEBL層を使って得られる。
【0072】
ηEXTの単調な増加及びEBLが存在するときの光活性層厚みの減少に伴うηEXTのさらなる増加は、励起子が効率的な分離のため及びその後の電荷収集のためヘテロ界面に拡散しなくてはならないという顕著な証拠を提供する。より厚い膜における外部量子効率の減少は、単に不活性領域(すなわちヘテロ界面から1つの拡散距離よりさらに遠い領域)における吸収の増加に起因する。光生成励起子をクエンチングAg界面から遠ざけることに加えて、EBLは電子輸送層内部へのAgクラスターの流入を防ぐことを同じく助けると考えられている。そのようなクラスターは欠陥の短絡を引き起こして、励起子にさらなるクエンチングサイトを提供する可能性がある。
【0073】
異なる強度のAM1.5のスペクトル照明の下での、BCP ETL、すなわちITO/150ÅCuPC/60ÅPTCBI/150ÅBCP:PTCBI/800ÅAgを含むもう1つのデバイスの電流対電圧、I−V、測定が、図12Aにおいて説明される。可変強度の模擬スペクトル照明が、窒素雰囲気下でAM1.5及びレーザを減衰するための中間的な密度のフィルターを備えた150WのXeアークランプを用いて得られた。(光パワーはキャリブレーションされたNewport,Inc.のSiフォトダイオードを用いて測定された。XeアークランプはOrielのものであった。)IV応答が並列抵抗(R0A、Aは接合面積)20プラスマイナス2kΩcm、及び小さい直列抵抗30プラスマイナス10Ωcmによって特徴付けられる。暗電流は理想係数n=1.4−1.7の古典的なpn接合ダイオードに関する表現に従う。これらの値はアモルファスシリコンセルに匹敵し、ポリマー薄膜セルについて以前報告された結果を大きく改善している。
【0074】
PBP EBLすなわちITO/CuPc(200Å)/C60(400Å)/PBP(xÅ)/Ag(1000Å)を含む本発明によるデバイスに関する、127mW/cmにおける、同様な電流対電圧、IV、測定結果が図12Bで説明される。データはPBP EBLの厚さを増やすことは、短絡電流、ISC、において大きな減少をもたらすが、開放電圧VOCにおいてはほとんど変化をもたらさないことを示す。
【0075】
図12AのデバイスのBCP層が〜10%(重量)のPTCBIでドープされたことは評価されるべきである。上述のデバイスに蒸着されるので、BCPはアモルファスであると考えられる。高品質の結晶BCPも同じくEBLとして機能し、より良好な電子輸送性を持つ可能性があると考えられる。しかしながら、良好な結晶材料を調製することは難しいか、又は非効率的である可能性がある。上述のように、アモルファスBCP励起子阻止層は膜の再結晶化を示し、高い光強度の下で特に迅速である。多結晶材料において結果として生じるモルフォロジー変化は、例えば短絡、ボイド又は電極材料の貫入等、起こりうる欠陥を有する低品質の膜をもたらす。米国特許第6,451,415号明細書は、適切な、比較的大きい、及び安定な分子で、例えばこの効果を示すBCP等のEBL材料をドーピングすることが、EBL構造の安定化を可能にして、性能を劣化するモルフォロジー変化を防ぐことを見出したことを開示する。それは、所定のデバイスにおいて電子を輸送するEBLを、該EBLに近いLUMOエネルギー準位を持つ材料でドーピングすることによって、空間電荷の蓄積を生み出し性能を下げる電子トラップが形成されないことを確実にするよう働く。さらに、比較的低いドーピング密度が孤立したドーパントサイトで励起子生成を最小にすることは理解されるべきである。このような励起子が拡散することが周囲のEBL材料によって効果的に禁じられるので、このような吸収はデバイスの光変換効率を低減する。
【0076】
しかしながら、本発明のフェナントロリン誘導体、特にBCP類似物が、高い熱安定性を持ち、及びBCPと比較して非常に結晶成長速度が低いことも同じく見出された。結果として、本発明のEBL材料ではドーピングが必要とされず、及び本発明によるデバイスの寿命はBCP ETLを含むデバイスと比較して非常に長い。本発明のEBL材料の熱特性が表1で与えられ、図13A及び13Bで例証される。図13AはBPhenに関する第1及び第2の示差走査熱量測定(DSC)走査を示し、第1の走査結果は結晶材料のものであり、第2の走査結果はサンプルを溶融した後にサンプルを急冷して凝固することによって形成されたアモルファス材料のものである。第1の走査結果において、ガラス転移温度、Tg、又は結晶転移温度、Tcはみられないが、第2の走査結果では観察される。図13Bで説明されるように、PBPはBCPより融点が高く、mono−PBPは結晶成長速度がより小さい。
【0077】
【表1】

【0078】
ΔH値は”a.”と示さない限り、第2の走査結果における融解転移のエンタルピーである。
【0079】
PBP EBLを含む本発明によるデバイスに関するI−V曲線が、図14AにおいてBCPデバイスと比較され、二つのデバイスの出力効率ηpが図14Bで比較され、本発明のEBL材料の有効性を証明する。さらに、本発明のフェナントロリン誘導体EBL材料は、本発明のフェナントロリン誘導体EBL材料が重要な光吸収材ではないように、BCPと比較してごくわずかなレッドシフト及び低減された還元ポテンシャルを有するので、その結果、EBL内で形成される励起子の数は有意ではない。同じく、EBLの低減された還元ポテンシャルを減らすことは、例えばC60等のETLのそれに近いEBLのLUMOエネルギーを移動させ、ETLからEBLへの電子移動に対するどのような障壁をも減少する。これらの比較は、BCPと比較して熱特性が改善され、その結果より長い寿命を有する本発明のEBL材料が、有機感光性オプトエレクトロニックデバイスにおいて少なくともBCPと同様の性能を発揮することを明示する。
【0080】
米国特許第6,451,415号明細書に開示されたBCP EBLを含むタイプの有機感光性オプトエレクトロニックデバイスに関するAM1.5の光フラックスに対する性能パラメータの依存性が、図15Aから15Dに示される。短絡電流(Isc)は照度に対して線形であって、〜15sunsの最も高い照明レベルにおいてさえ、有意の空間電荷蓄積が起こらない。開放電圧(Voc)は照度>10sunsでVoc=0.54Vの水平域に達するまで、単調増加する。
【0081】
【数1】

【0082】
米国特許第6,451,415号明細書で定義され、及び図12Aで例証される曲線因子ffは、低強度において0.57に近づくが、この値は従来の無機太陽電池に関して典型的なものであって、考えられる最高の照度においてさえ他の有機PVではff<0.35が典型的な値であり、それを超える。Voc及び照度の増加に伴いffが減少するので、AM1.5における外部出力変換効率(ηp)は照度に応じてただゆっくりと変化し、0.1から10sunsまで広がる広い水平域上で最大値ηp=(1.1プラスマイナス0.1)%に達する。これらの結果及び米国特許第6,451,415号明細書で開示されたデバイスは、以前の薄膜有機PVセルの実証結果に対して大きな改良を示し、及び出力変換効率における減少なしで多sunsの模擬的な太陽照度の下で効率的な動作を提供する。
【0083】
本発明のデバイスに関する同様のデータが、図16で例証されるように、PBP EBLを含むデバイスに関して、高い出力変換効率を得ることができるが、しかし層の厚みが増加すると減少する可能性があることを示す。図17は、PBP層の厚さの増加が、デバイスのフィールド効果(FF)及び短絡電流を減少させ、より高い光学的パワーにおいての出力変換効率の減少をもたらすことを説明する;結果はBCPベースのデバイスに類似する。
【0084】
全体的に、しかしながら、PBPデバイスデータは本発明によるEBLとしてのフェナントロリン誘導体の使用が、BCP EBL材料を含むデバイスと同様に働く有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを提供することを示す。特に非対称誘導体においてより低い結晶化速度を有する本発明のEBL材料の改善された安定性は、有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの安定性を改善し、及びこのようなデバイスの使用可能な寿命を延ばす。
【0085】
図18は、米国特許第6,451,415号明細書によるデバイスのゼロバイアス(短絡条件)における光電流作用スペクトル(ηEXT、黒丸)を示す。デバイス構造はITO/90ÅCuPc/90ÅPTCBI/100ÅBCP//Ag(非ドープEBL)であった。太陽のスペクトルに対して作用スペクトルの優れた一致は明白である。作用スペクトルは同じく、(ガラス基板を通過した各吸収層上の光フラックス入射によって重み付けされた)有機膜の吸収スペクトルの合計によってよく記述され、励起子種がフォトン吸収と分離された電子−正孔対との間の中間の状態であるという仮定を実証している。今、ηEXTが逆バイアスに対して線形に増加することが観察され、光電流対印加電圧の傾きがPTCBI層の厚さだけに依存する。さらに、ηEXTの増加はPTCBI吸収スペクトルの後に続く。従って、電圧に対する光電流の依存性はPTCBIにおける固有の光伝導、すなわち、膜の大部分での励起子分離に起因すると思われる。
【0086】
図18は、PTCBI及びCuPc厚み90Åで観察された最大効率25%で同じく計算された内部量子効率(ηINT、白丸)のスペクトル依存性をプロットしたものである。〜25%の内部量子効率は、興味ある幾何学的形状に関する励起子拡散方程式に対する解析解と矛盾しないことは理解されるべきである。これはフォトン収集効率が励起子拡散によってのみ制限されることを強く示す。
【0087】
増大されたηが、フォトンが薄い吸収領域を多数回通過することを強いられる濃縮構造内で達成され得ることは、ηINTの測定から明らかである。デバイスの透明な表面上の光入射は、一般的に反対側の内部反射層で一度反射され、及びその後吸収され、又は場合によりデバイスから後方に伝達されてよいことは理解されるべきである。デバイス形状が米国特許第6,333,458号明細書に記述され(ここに参考として組み込まれる)、デバイスに入射された光が複数回反射されるようにして吸収効率を増やす。
【0088】
この効率の増加を実証するために使われる、基板表面に小さな隙間を有する反射Ag層1101を有するデバイスが、図19で説明される。例えば、ガラス又はプラスチックである透明層1102は、光学式コヒーレンス長よりずっと幅広い。縮退的にドープされたITO1103の透明なアノードは光が電子活性層1104に到達することを可能にし、金属カソード1105が吸収されない光を反射する。反射層1101内の隙間に集中された、及びほぼ垂直な入射ビームを形成した集積された放射線が、カソードとAg反射表面1101との間で何度か反射し、各々のパスはEBLに隣接する二層(図2と同様に、1104としてまとめて示される)によってさらに吸収される。
【0089】
図19における線A−Aに沿って取られた実施形態1100の図において層1102が隙間を通じて見ることができるので、図20は図19と同じ参照数字を用いて反射層1101における円形の隙間を説明する。この技術を用いて、外部出力効率η=2.4プラスマイナス0.3%が、60ÅCuPc、60ÅPTCBI及び150ÅBCPを有するセルに関して測定された。これは有機薄膜光電池に関して報告されたAM1.5における最も高い外部出力変換効率であると考えられる。同様の効率は、動作寿命が改善された本発明のフェナントロリン誘導体EBL材料を含むデバイスにおいて可能であると考えられる。同じく小さい上部電極に起因して、この例において入射放射線の全てが捕捉されたわけではないことに注意されたい。従って、得られた出力効率は下限値を表す。多数の、平行に接続されたセルを反射ビーム経路内に置くことによって、十分な数のパスが与えられるという条件のもとで、3%を超える効率が改善された光トラッピングの下で達成され得ると考えられる。このデバイス構造において、特に図10で描写される光電場の強化を利用することが可能であることは理解されるべきである。
【0090】
成長プロセスをより良く制御することによって、より薄い、そして結果的により効率のよいデバイスが可能になるであろうことは同じく理解されるべきである。電極の透明度及び反射率のさらなる最適化が寄生的な吸収を減らすであろう。さらに、励起子の結合エネルギー(〜1eV)が開放電圧により一致するように、電子ドナー及びアクセプター材料のエネルギー準位のアライメントを調節することは、さらにデバイス性能を高めるだろう。〜8%の出力変換効率に対応する、〜80%の内部効率は、そのような最適化された有機太陽電池によって達成可能な範囲である。
【0091】
導波管タイプのデバイス内にEBLを有する有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの利点が模擬的な集積された太陽光を使って実証されたことは理解されるべきである。それにもかかわらず、米国特許第6,333,458号明細書に記述されるように、実際の太陽光は集約されることができ、及び有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの光活性領域に向けられることができる。
【0092】
図21、22、及び23は、EBLを有する多層光検出器の例からのデータを説明する。電極に隣接するHTL層及び電極に隣接するETL層は、典型的には電極から離れたデバイス内部の多数対のHTL/ETL層と比較して厚い。典型的には、カソードに隣接するHTL層は約30から約100ÅのCuPcである。同様に、アノードに隣接するETL層は、典型的には30から100Åの、例えばPTCBI又はC60、であり、及びEBLは例えば約50から約200Åである。多数対のHTL/ETL層は、2から50回繰り返された対、例えば、約2から約10Åの厚みを有する、ETL及びHTL層を有してよい。
【0093】
図21は多層光検出器の電流−電圧を示し、及びこの例において20HTL/ETL対が、そのような界面が40の場合と比較してより高い電流応答を生成することを示す。図22はこのような多層光検出器の量子効率及び吸収データを示し、広範囲のフラットなスペクトル応答を説明する。図23は20又は40HTL/ETL対を有する光検出器の外部量子効率データを示し、及び20層デバイスが改善された外部量子効率を持つことを示す。20対及び40対光検出器において、全体的なデバイス厚さは対の数と同じ係数、すなわち2倍までには増えず、対を形成する感光性層は40対デバイスに対してずっと薄かった。電流応答及び量子効率が20対デバイスに関してより良かったと考えられる。なぜなら40対デバイスにおけるHTL及びETL層の薄さによって、不連続層としての性質を失い始めさせた可能性があるからである。代わりに、層を形成している材料がいくらか内部混合され幾分低い性能を提供する可能性があるとも考えられる。
【0094】
合成
本発明の例示的なEBL材料を合成する例示的プロセスが以下に提供される。これらの非制限的な例は単に本発明の望ましい実施形態を説明するものであり、添付されたクレームによって明確にされる範囲の発明を制限しているとは解釈されない。
【0095】
2,4,7,9−テトラフェニル−1,10−フェナントロリン(PBP)
窒素雰囲気下で、1.6mol/lのフェニルリチウム溶液15ml(24mmole)が、60mlのトルエン及び20mlのTHFの混合物内のバソフェナントロリン2.0g(6mmole)の攪拌された懸濁液に添加され、結果として生じた混合物は0℃に冷却された。結果として生じた深赤色の溶液は室温で終夜攪拌され、その後10mlの水が加えられた。有機層は分離され、水層は40mlのジクロロメタンで3回抽出された。一緒にされた抽出物は30gのMnOと共に2時間攪拌された。混合物は、無水MgSO30g上で乾燥され、ろ過され、蒸発されて収率90パーセントで薄い黄色の固体2.6gを得た。HNMR(500MHz、CDCl)、ppm:8.50(d、J=7.5Hz、4H)、8.09(s、2H)、7.81(s、2H)、7.61−7.57(m、8H)、7.55(dd、J=7.5、7.5Hz、4H)、7.52−7.47(m、4H)。PBPの分析。実測量:C88.62、H4.56、N5.82。計算値:C89.23、H4.99、N5.78。
【0096】
2,9−ジ−n−ブチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(n−BBP)
この黄色の化合物はPBPの合成と類似のプロセスにおいて調製され、シリカ/CHClカラムでクロマトグラフィーを走らせた後で、80パーセントの収率で生成物が得られた。HNMR(500MHz、CDCl)、ppm:7.72(s、2H)、7.50(d,J=4.7Hz,8H),7.47(dd,J=3.8,7.5Hz,2H),7.44(s,2H),3.24(t,J=8.2Hz,4H),1.99−1.89(m,4H),1.57−1.49(m,4H),1.00(dd,J=7.5,7.5Hz,6H)。n−BBPの分析。実測量:C86.05,H7.18,N6.47。計算値:C86.44,H7.25,N6.30。
【0097】
2,9−ジ−t−ブチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(t−BBP)
この黄色の化合物はPBPの合成と類似のプロセスにおいて調製され、シリカ/ヘキサン/CHCl混合物(1:1)カラムでクロマトグラフィーを走らせた後で、70パーセントの収率で生成物が得られた。HNMR(500MHz,CDCl),ppm:7.71(s,2H),7.62(s,2H),7.49(s,10H),1.62(s,18H)。t−BBPの分析。実測量:C85.89,H7.40,N6.24。計算値:C86.44,H7.25,N6.30。
【0098】
2,4,7−トリフェニル−1,10−フェナントロリン(mono−PBP)
この黄色の化合物はPBPの合成と類似のプロセスにおいて調製され、バソフェナントロリンの各等量に関して2等量のフェニルリチウムが使用された。シリカ/メタノール/CHCl混合物(1:1)カラムでクロマトグラフィーを走らせた後で、75パーセントの収率で純粋な生成物が得られた。HNMR(500MHz,CDCl),ppm:9.26(d,J=7.7Hz,1H),8.37(d,J=7.0Hz,2H),8.04(s,1H),7.82(m,2H),7.59−7.45(m,14H)。mono−PBP・1/8CHClの分析。実測量:C86.10,H4.50,N6.79。計算値:C86.33,H4.87,N6.68。
【0099】
2−t−ブチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(mono−t−BBP)
この黄色の化合物はPBPの合成と類似のプロセスにおいて調製され、バソフェナントロリンの各等量に関して2等量のt−ブチルリチウムが使用された。シリカ/メタノール/CHCl混合物(1:1)カラムでクロマトグラフィーを走らせた後で、70パーセントの収率で純粋な生成物が得られた。HNMR(500MHz,CDCl),ppm:9.28(m,1H),7.81−7.74(m,2H),7.68(s,1H),7.57−7.35(m,11H),1.62(s,9H)。mono−t−BBPの分析。実測量:C86.19,H6.18,N7.19。計算値:C86.56,H6.25,N7.21。
【0100】
4,7−ジフェニル−2,9−ジ−m−トリル−1,10−フェナントロリン(m−TBP)
窒素雰囲気下で、1.7mol/lのt−ブチルリチウム溶液8.8ml(15mmole)が、20mlのTHFに対して2−ブロモトルエン2.55gを含む溶液に対して、0℃で段階的に添加された。結果として得られた混合物は2時間攪拌され、その後、アイスバス内でトルエン40mlにバソフェナントロリン1.0gを含む(3mmole)攪拌された懸濁液に移された。結果として得られる深赤色の溶液は終夜室温で攪拌され、その後10mlの水が加えられた。有機層は分離され、水層は3回30mlのジクロロメタンで3回抽出された。一緒にされた抽出物は15gのMnOと共に2時間攪拌された。混合物は、無水MgSO15g上で乾燥され、ろ過され、乾燥するまで蒸発された。シリカ/CHClカラムでクロマトグラフィーを走らせた後で、75パーセントの収率で純粋な生成物が得られた。HNMR(500MHz,CDCl),ppm:8.50(s,2H),8.22(d,J=7.5Hz,2H),8.09(s,2H),7.80(s,2H),7.63−7.48(m,10H),7.45(dd,J=7.0,7.0Hz,2H),7.31(d,J=7.0Hz,2H),2.54(s,6H)。m−TBPの分析。実測量:C88.29,H5.40,N5.57。計算値:C89.03,H5.51,N5.46。
【0101】
4,7−ジフェニル−2,9−ジ−o−トリル−1,10−フェナントロリン(o−TBP)
この黄色の化合物はm−TBPの合成と類似のプロセスにおいて調製された。しかしながら、反応生成物は一置換及び二置換バソフェナントロリンで構成されていた。シリカ/メタノール/CHCl混合物(1:1)カラムでクロマトグラフィーを走らせた後で、第1の溶離液として20パーセントの収率でOTBPが得られた。第2の溶離液として50パーセントの収率でMono−o−TBPが得られた。HNMR(500MHz,CDCl),ppm:7.97(s,2H),7.85(s,2H),7.77(s,2H),7.64−7.59(m,4H),7.95−7.50(m,6H),7.35(m,6H),2.65(s,6H)。o−TBP・1/8CHCl分析結果。実測量:C87.03,H5.41,N5.23。計算値:C87.51,H5.44,N5.35。
【0102】
4,7−ジフェニル−2−o−トリル−1,10−フェナントロリン(mono−o−TBP)
HNMR(500MHz,CDCl),ppm:9.23(d,J=4.2Hz,1H),7.87(dd,J=9.4,22.1Hz,2H),7.71(s,1H),7.67−7.64(m,1H),7.57−7.45(m,11H),7.32(m,3H),2.52(s,3H)。mono−o−TBP分析結果。実測量:C87.57,H5.26,N6.63。計算値:C88.12,H5.25,N6.63。
【0103】
4,7−ジフェニル−2−キシレニル−1,10−フェナントロリン(mono−XYBP)
この黄色の化合物はm−TBPの合成と類似のプロセスにおいて調製された。シリカ/メタノール/CHCl混合物(1:1)カラムでクロマトグラフィーを走らせた後で、50パーセントの収率で生成物が得られた。HNMR(500MHz,CDCl),ppm:9.24(d,J=4.2Hz,1H),7.89(dd,J=9.4,33.3Hz,2H),7.58−7.45(m,12H),7.20(dd,J=8.0Hz,1H),7.11(d,J=7.51Hz,2H),2.17(s,6H)。mono−XYBP・CHCl分析結果。実測量:C86.74,H5.15,N6.35。計算値:C86.29,H5.47,N6.26。
【0104】
2,4,7−トリフェニル−9−o−トリル−1,10−フェナントロリン(P(o−T)BP)
この黄色の化合物はPBPの合成と類似のプロセスにおいて調製され、mono−o−TBPの各等量に関して2等量のフェニルリチウム試薬が使用された。シリカ/メタノール/CHCl混合物(1:1)カラムでクロマトグラフィーを走らせた後で、50パーセントの収率で純粋な生成物が得られた。HNMR(500MHz,CDCl),ppm:8.40(d,J=7.0Hz,2H),8.06(s,1H),7.88−7.80(m,2H),7.79(s,1H),7.76−7.73(m,1H),7.60−7.48(m,12H),7.45(d,J=7.0Hz,1H),7.41−7.38(m,1H),7.37−7.33(m,2H),2.84(s,3H)。P(o−T)BP・CHCl分析結果。実測量:C87.19,H5.21,N5.48。計算値:C87.56,H5.20,N5.50。
【0105】
このように、ここに有機感光性オプトエレクトロニックデバイス及びその製造方法が記述され、説明された。ここに開示された発明が上述の目的を満たすと予想されることは明白である一方、多数の修正及び実施形態が当業者によって考案されるかもしれないことは理解されるであろう。そのために、本発明の真の精神及び範囲内で、添付されたクレームがすべてのそのような修正及び実施形態を包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】ドナー・アクセプターへテロ接合を説明するエネルギー準位図である。
【図2】ドナー・アクセプターへテロ接合を含む有機感光性デバイスを説明する図である。
【図3】平面へテロ接合を形成するドナー・アクセプター二層を説明する図である。
【図4】ドナー層とアクセプター層との間に混合へテロ層を含むハイブリッドへテロ接合を説明する図である。
【図5】バルクへテロ接合を説明する図である。
【図6】ショットキーバリアへテロ接合を含む有機感光性デバイスを説明する図である。
【図7】直列タンデム感光性セルを説明する図である。
【図8】並列タンデム感光性セルを説明する図である。
【図9】励起子クエンチング界面の効果とEBLの効果とを比較する、計算された励起子密度プロファイルのグラフである。
【図10】励起子解離活性領域を最大光電場強度領域へとシフトするEBLの効果を表す。
【図11】ITO/CuPc/PTCBI/BCP/Agデバイスのλ=620nmにおける、層厚みの関数としての外部量子効率(ηEXT)測定値のグラフである。
【図12A】AM1.5スペクトル照明の異なる強度の下での、EBLを組み込んだ薄いデバイス(ITO/150Å CuPc/160Å PTCBI/150Å BCP/:PTCBI/800Å Ag)の電流対電圧(I−V)測定のグラフである。
【図12B】PBP EBL層の変化に対する短絡電流及び開放電流における変化を説明する図である。
【図13A】異なる走査熱量計を用いて測定された、本発明において有効なEBL材料の熱特性を説明する図である。
【図13B】BCPの熱特性と本発明において有効なEBL材料における熱特性との比較を説明する図である。
【図14A】BCPのEBLと本発明で有効なEBL材料を含むデバイスの電流密度対電圧のプロットである。
【図14B】図9Aのデバイスの出力効率の比較を示す図である。
【図15A】BCP EBLを含む積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの特性を説明する図である。
【図15B】BCP EBLを含む積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの特性を説明する図である。
【図15C】BCP EBLを含む積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの特性を説明する図である。
【図15D】BCP EBLを含む積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの特性を説明する図である。
【図16】光の出力及びEBL厚みの関数としてPBP EBLを含むデバイスの出力変換効率を説明する図である。
【図17】出力変換効率におけるEBL厚みの増加の効果を説明する図である。
【図18】例示的な導波路形状型有機感光性オプトエレクトロニックデバイスの特性を説明する図である。
【図19】励起子阻止層を有する導波路型有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを示す。
【図20】A−A線を通じた図19の上面図である。
【図21】多層光検出器の電流/電圧特性のグラフである。
【図22】多層光検出器において入射波長の関数として効率及び吸収データをプロットした図である。
【図23】幾つかの多層光検出器において電圧の関数として外部量子効率をプロットしたものである。
【符号の説明】
【0107】
6 フォトン
8 励起子
100 デバイス
120 アノード
122 アノード平滑層
150 光活性領域
152 ドナー
153 混合ヘテロ接合
154 アクセプター
156 励起子阻止層
170 カソード
252 ドナー材料
254 アクセプター材料
300 デバイス
320 透明コンタクト
350 光活性領域
358 有機光導電材料
400 デバイス
460 導電性領域
461 再結合中心
500 デバイス
1101 反射層
1102 透明層
1103 ITO
1104 電子活性層
1105 金属カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間の有機阻止層を含み、前記阻止層は下記化学式のフェナントロリン誘導体を含み、
【化1】

上記式でR〜R16は、水素、アルキル基、フェニル基又は置換されたフェニル基であるが、ただしR〜R16が全て水素である場合、R及びRが両方水素であることはなく、及びR及びRが両方メチル基であることはなく、
前記阻止層は励起子、電子及び正孔のうち少なくとも一つを少なくとも部分的に阻止する、有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項2】
前記フェナントロリン誘導体はmono−t−BBP、mono−PBP、mono−o−TBP、mono−XYBP、n−BBP、t−BBP、PBP、o−TBP、m−TBP及びP(o−T)BPからなる群から選択される、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項3】
前記阻止層が励起子阻止層(EBL)である、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項4】
前記デバイスが太陽電池又は光検出器である、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項5】
前記デバイスが太陽スペクトル光検出器である、請求項4に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項6】
前記デバイスが可視スペクトル光検出器である、請求項5に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを含む、請求項3に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項8】
前記デバイスが感光性ヘテロ接合をさらに含む、請求項3に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項9】
前記感光性ヘテロ構造がドナー・アクセプターへテロ接合を含む、請求項8に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項10】
前記EBLが、前記感光性ヘテロ構造と、前記アノード及び前記電極のうち一つとの間に配置される、請求項8に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項11】
感光性ヘテロ構造と、前記感光性ヘテロ構造と前記アノードとの間の第1EBLと、前記感光性ヘテロ構造と前記カソードとの間の第2EBLとをさらに含む、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項12】
前記EBLが前記アノード又は前記カソードに隣接する、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項13】
前記アノードに隣接した第1EBL及び前記カソードに隣接した第2EBLを含む、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項14】
前記デバイスがETLを含み、前記阻止層が前記ETLと前記アノード及び前記カソードのうち一つとの間に配置される、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項15】
前記阻止層が前記ETLと前記カソードとの間に配置され、前記デバイスが前記アノードと前記ETLとの間にHTLをさらに含む、請求項14に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項16】
前記阻止層が励起子阻止層である、請求項15に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項17】
前記ETLがC60を含む、請求項14に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項18】
前記フェナントロリン誘導体が非対称である、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項19】
電子輸送層、正孔輸送層、及び阻止層が二つの平行平面である反射表面間に配置され、導波路を形成する、請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項20】
二つの前記反射表面のうち一つは、前記デバイスへの光の入射を可能にする隙間を有する、請求項19に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項21】
前記反射表面の平面に実質的に平行な方向から前記デバイスに光が入射することが可能なように前記二つの反射表面間に透明な部分をさらに含む、請求項19に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。
【請求項22】
請求項1に記載の有機感光性オプトエレクトロニックデバイスを複数含む、積層された有機感光性オプトエレクトロニックデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2008−522413(P2008−522413A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543511(P2007−543511)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042699
【国際公開番号】WO2006/086040
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【出願人】(502023332)ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (20)
【Fターム(参考)】