説明

フェニルエチルシラン化合物及びこれを重合した高分子

【課題】 新規なペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物を提供する。
【解決手段】化学式1で表示される本発明のペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物において、上記ペルフルオロアルキレンオキシ基は、熱架橋によって膜(film)を形成する時に必ず必要な作用基であるから、構造式内にペルフルオロアルキレンオキシ基が1つ以上置換されている。すなわち、上記R1、R2及びR3のうち少なくとも1つ以上がフッ素原子である。
(化学式1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱的、化学的安定性に優れていて、単量体状態で溶液工程が可能なペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物と、これを加熱、重合したもので、有機溶媒に対する抵抗性が高い高分子及びこれらを適用した用途に関する。
【背景技術】
【0002】
製作工程が簡単で、且つ低コストであり、衝撃により割れず、曲げたり、折り畳むことができる電子回路基板が未来の産業に必須な要素になると予想されていて、このような要求を充足させることができる有機トランジスタの開発は、非常に重要な研究分野として注目されている。
【0003】
上記有機トランジスタは、広い面積上に素子を製作する必要がある時や低い工程温度を必要とする場合、曲げられなければならない場合、特に低価な工程が必要な場合、有用に使われることができるが、有機半導体の特性上、電荷移動度が低いため、ケイ素(Si)やゲルマニウム(Ge)などが使われるような速い速度を必要とする素子には使用することができない。
【0004】
優秀な性能のトランジスタ素子を形成するためには、点滅比(on/off ratio)と電荷移動度が大きくなければならないし、低い温度で薄膜形成が可能でなければならない。これは、プラスチック基板の特性上、ガラス転移温度が低くて(ポリイミドの場合、250℃付近)、加工温度を高めることが難しいからである。また、漏洩電流の低さは、素子信頼性の面で必須であると言える。
【0005】
一方、ボトムコンタクト有機薄膜トランジスタは、トップコンタクト有機薄膜トランジスタに比べて電極パターニング過程で有機半導体高分子の汚染を防ぐため、素子性能を低下させない構造として有用である。したがって、大面積の素子を製作するために、ボトムコンタクト有機薄膜トランジスタの開発が要求され、このためには、溶液抵抗性に優れたゲート絶縁材の開発が必要である。
【0006】
しかし、現在まで開発された高分子絶縁材は、点滅比が低いという問題点を有する。したがって、上記提示された有機薄膜トランジスタの性質を充足させる新しい有機物の開発が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これより、本発明の発明者らは、前述のような問題点を解決するために研究努力した結果、ペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物がフェネチル基(phenethyl)を有していて、単量体状態で溶液工程が可能であり、200℃以下の温度で熱を加える場合、単量体が重合されながらペルフルオロシクロブタン基(perfluorocyclobutane;PFCB)を主軸とする高分子重合反応が生じ、このように得られた高分子は、有機溶媒に対する高い抵抗性を示すことを知見し、本発明を完成した。
【0008】
前述した本発明に係るペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物は、有機溶媒に対する抵抗性が高いため、溶液工程を適用することができ、これを熱重合した高分子も有機溶媒に対する抵抗性をはじめとして熱的、物理的抵抗性が高いことを確認した。また、前述したペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物及びこれを単量体とする高分子は、絶縁膜に適用される場合、前述した特性に起因して溶液工程が可能であることを確認した。特に有機薄膜ゲート絶縁材への適用時、熱的、物理的抵抗性に優れていて、写真石版術(photolithography)を用いて大面積製造方法を適用することができることを確認し、上記有機薄膜ゲート絶縁材が適用された有機薄膜トランジスタは、優れた点滅比(on/off ratio)を示すことを確認した。
【0009】
本発明の目的は、新規なペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前述したペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物が重合された高分子を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、ペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物及びこれを単量体とする高分子が適用された絶縁膜を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、ペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物及びこれを単量体とする高分子が適用された有機薄膜トランジスタ用ゲート絶縁材並びに有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ペルフルオロアルキレンオキシ基が置換された次の化学式1で表示されるフェニルエチルシラン化合物であることを特徴とする。
【0014】
【化1】

【0015】
上記化学式1で、R1、R2及びR3は、互いに同じか、または異なるものであって、水素原子、フッ素原子、炭素数1から4のアルキル基、及びフッ素原子が1から6個置換された炭素数1から4のフルオロアルキル基の中から選択され、また、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つ以上がフッ素原子又はフルオロアルキル基であり、Z1、Z2及びZ3は、互いに同じか、または異なるものであって、水素原子、及び炭素数1から4のアルキル基の中から選択され、nは、0、1、2又は3を示す。
(発明の効果)
【0016】
以上説明したように、本発明によるペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物は、熱的、化学的特性に優れ、単量体状態で溶液工程が可能であり、これを架橋させた高分子状態では、熱的、物理的安定性に優れ、有機溶媒に溶解しない特性を有する。
【0017】
前述した特性によって、本発明で提示された上記ペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物及びこれを重合した高分子を膜で製造する時には、溶液工程が可能であるという利点があり、上記ペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物及びこれを重合した高分子を有機薄膜トランジスタ用ゲート絶縁材に使用する時には、半導体物質のコーティング時、溶液工程を適用することができるという利点があり、柔軟性が高い材質の基板を使用する場合にも、容易に導入が可能である。
【0018】
前述したペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物及びこれを重合した高分子は、機械抵抗性に優れているので、電極の製造時に、写真石版術などの大面積接触によるパターニング方法を導入することができ、より簡単な工程で大量生産が可能であるという効果を示し、使い捨て電子製品や、スマートタグ、RFIDなどのような今後渡来するものと予想されるユビキタス社会に必須な構成要素として作用できるものと期待される。
【0019】
また、本発明のペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物及びこれを重合した高分子が導入された有機薄膜トランジスタは、優れた点滅比(on/off ratio)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、上記化学式1で表示されるペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物に関し、製造された新規化合物が熱的、化学的安定性などに優れていることを確認した。これを有機薄膜トランジスタの有機ゲート絶縁材に適用する場合、有機溶媒に対して難溶性であるため、有機半導体物質のスピンコーティングが可能である。また、上記新規化合物の熱的、物理的抵抗性が高いため、電極の写真石版術(photolithography)を用いて大面積製作が可能であり、このように製造された有機薄膜トランジスタは、高い点滅比(on/off ratio)特性を示す効果を期待することができる。
【0021】
上記化学式1で表示される本発明のペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物において、上記ペルフルオロアルキレンオキシ基は、熱架橋によって膜(film)を形成する時に必ず必要な作用基であるから、構造式内にペルフルオロアルキレンオキシ基が必ず1つ以上置換されなければならない。すなわち、上記R1、R2及びR3のうち少なくとも1つ以上がフッ素原子でなければならないし、次の化学式1aで表示される化合物であることができる。
【0022】
【化1a】

【0023】
本発明は、上記化学式1で表示されるペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物を重合して製造されたペルフルオロ高分子を含み、これは、熱架橋時に、シクロダイマリゼイション(cyclodimerization)され、膜を形成することができるようになる。
【0024】
すなわち、本発明は、次の化学式2で表示される反復単位構造を有するペルフルオロ高分子を含む。
【0025】
【化2】

【0026】
上記化学式2で、R1、R2、R3、Z1、Z2、Z3、及びnは、各々上記化学式1で定義した通りである。
【0027】
より好ましくは、本発明は、次の化学式2aで表示される反復単位構造を有するペルフルオロ高分子を含む。
【0028】
【化2a】

【0029】
上記化学式2aで、R1、R2及びR3は、各々化学式1で定義した通りである。
【0030】
上記高分子は、有機溶媒に対する抵抗性に優れていて、したがって、上記高分子を含んで製造された膜は、有機溶媒に溶解されないので、スピンコーティングなどの溶液工程が可能となり、このような特性は、膜の製造工程を容易にする効果がある。特に、上記高分子を絶縁膜の原料物質に適用する時には、溶液工程が可能となるので、製造工程上の利点を期待することができる。
【0031】
本発明は、上記化学式1の化合物を単量体とする化学式2の高分子が導入された有機薄膜トランジスタ用ゲート絶縁材を含む。すなわち、上記化学式2の高分子は、有機溶媒に対して難溶性で、熱的及び物理的に安定しているため、有機薄膜トランジスタ用ゲート絶縁材を製造する場合に非常に有利である。
【0032】
上記ゲート絶縁材は、化学式1の化合物が単量体で溶解された溶液を基板に塗布し、乾燥した後、熱処理して製造することができる。
【0033】
上記熱処理は、150〜250℃条件で行われることが高分子重合度を増加させる側面から好ましく、上記熱処理は、真空条件または当分野で通常的に使用する窒素、アルゴンなどの不活性ガスの存在下に行われることが好ましい。
【0034】
本発明は、上記ゲート絶縁材が導入された有機薄膜トランジスタを含む。
【0035】
この時、上記ゲート絶縁材は、有機薄膜トランジスタを構成する有機半導体層の上部に形成されたり(top gate)、下部に形成されることができる(bottom gate)。
【0036】
すなわち、基板と、上記基板上に形成され上記化学式2で表示されるペルフルオロ高分子が含有されてなるゲート絶縁材層と、上記ゲート絶縁材層上に形成されたソース/ドレイン電極と、上記ゲート絶縁材層上に形成され、上記ソース/ドレイン電極とこれらの間にわたって形成されるチャネル層を具備した半導体層とを備えてなるボトムコンタクト有機薄膜トランジスタを含む。
【0037】
本発明は、基板と、上記基板上に形成されたソース/ドレイン電極と、上記基板上に形成され、上記ソース/ドレイン電極とこれらの間にわたって形成されるチャネル層を具備した半導体層と、上記半導体層上に形成された上記化学式2で表示されるペルフルオロ高分子が含有されてなるゲート絶縁材層とを備えてなるトップコンタクト有機薄膜トランジスタを含む。
【0038】
上記基板としては、当分野で通常的に使用する基板を使用することができ、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、シリコンウェーハ基板、ITO(indium tin oxide)基板などを使用することができる。
【0039】
上記ソース/ドレイン電極を構成する金属薄膜としては、通常的に当分野で使用する電極形成用金属または導電性高分子を使用することができ、具体的には、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)及び白金(Pt)などを含む金属または導電性高分子を使用することができる。
【0040】
有機FET(field effect transistor)のチャネルとして使われる上記半導体層を構成する有機半導体物質は、当分野で通常的に使用する有機半導体層用単分子または高分子物質を使用することができ、具体的には、例えば、ペンタセン(pentacene)などを含む単分子(Small molecules)物質とポリ(3−ヘキシルチオフェン)[Poly(3−hexylthiophene)]などを含む高分子物質を使用することができる。
【0041】
以下、本発明の化学式1のペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物が適用されたゲート絶縁材が導入された有機薄膜トランジスタを製造する方法を説明する。
【0042】
まず、ボトムコンタクト有機薄膜トランジスタを製造する方法を説明する。図6は、上記化学式1のペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物が重合された化学式2で表示される高分子を使用して製造された有機ゲート絶縁材上に写真石版術で電極を製作した後、ボトムコンタクト有機薄膜トランジスタ素子を製造する方法の一例を示す流れ図である。
【0043】
すなわち、基板に、上記化学式1のペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物を含む溶液を塗布し、乾燥した後、熱処理し、ゲート絶縁材層を形成する。基板は、シリコンウェーハ基板、ITO(indium tin oxide)基板などを使用することができ、その上に上記化学式1の化合物を溶媒に溶解させてコーティングした後、高温で重合する。前述した溶媒としては、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、アセトン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン(tetrachloroethane)、及びサイクロヘキサノン(cyclohexanone)などを選択して使用する。
【0044】
コーティング方法は、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロップキャスティング及びドクターブレードなどの通常の溶液工程を適用できる方法を選択することができる。従来の場合には、ゲート絶縁材を構成するにあたって、上層を塗布する時、その溶液で下部層が損傷される理由から溶液工程が困難であり、本発明は、上記化学式1で表示される新規化合物であるペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物を使用することによって、このような溶液工程が可能となる。前述したコーティング後、真空または不活性気体の雰囲気下で熱重合させ、上記熱重合は、150〜250℃条件、1〜3時間(または熱重合が完了する時点を確認することができる時点)行う。
【0045】
次に、上記ゲート絶縁材層の上部にソース/ドレイン電極用金属膜をパターニングし、紫外線重合用塗料をコーティングした後、紫外線を照射し、ソース/ドレイン電極を形成する。
【0046】
電極は、写真石版術を用いて製作する。より好ましくは、上記ソース/ドレイン電極は、シャドーマスク(shadow mask)法によって形成されることが、漏電電流を低くするという側面から好ましい。
【0047】
ソース及びドレイン電極として用いられる金を写真石版術を用いてパターニングする。写真石版術のための光重合塗料(PR6612)をコーティングした後、紫外線光を用いて光重合し、電極形態を製作する。上記ソース/ドレイン電極に電極用金属を蒸着し、現像(develop)して、電極を形成する。写真石版術を用いて電極を形成しようとする場合には、有機絶縁材の溶液抵抗性及び優れた機械的性質が要求され、既存に報告されている有機絶縁材、ポリビニルフェノール[poly(vinylphenol)]、ポリスチレン[poly(styrene)]、ポリメチルメタクリレート[polymethylmethacrylate]などは、工程過程中に漏電電流の増加に起因して絶縁特性が低下する。また、写真石版術が容易なポリイミド[poly(imide)]系の絶縁材高分子は、低価の溶液工程が容易でなく、300℃以上の高温の熱処理を必要とするので、曲げが可能な素子の製作に適当な絶縁材物質ではない。本発明の有機絶縁材は、溶液工程で塗布が可能であり、熱重合後、高分子状態で大きい漏電電流の増加なく、大面積の写真石版術を利用した電極製作が可能である。
【0048】
前述した金属としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)及び白金(Pt)などを選択して使用することができる。上記電極上に有機半導体を溶解した溶液を塗布した後、熱処理して、半導体層を形成する過程を含んで有機薄膜トランジスタを製造する。上記半導体は、よく知られたペンタセン(pentacene)、CuPc系列、チオフェン系の有機単分子(sexithiophene)及びフロレン系列(fullerene derivative)などの有機単分子及びチオフェン系の高分子、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)[poly(3-hexylthiophene)]、フロレン系の高分子[poly(9、9-dioctylfluorene-co-bithiophene)]などの有機半導体を使用することができ、これらをクロロホルム(chloroform)、トルエン(toluene)、クロロベンゼン(chlorobenzene)に溶解した後、コーティングし、熱処理して、半導体層を形成する。
【0049】
前述した有機半導体溶液のコーティングは、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロップキャスティング及びドクターブレードなどの方法を選択することができ、熱処理条件は、80〜150℃、10〜60分間(または反応の終了時点)行われることが好ましい。
【0050】
前述したボトムコンタクト有機薄膜トランジスタと類似の方法でトップコンタクト有機薄膜トランジスタを製造することができ、異なる点は、絶縁材層が半導体層上に位置する点である。
【0051】
前述した方法で製造された有機素子の写真を図7に示し、電極が有機絶縁材層上にきれいにパターニングされたことを確認することができる。透明な基板を用いて製作した素子は、透明電気素子として適用可能であることを示す。
【0052】
図8は、製造された有機絶縁膜の電気的性質を示すグラフであり、電気電流が10ないし9A以下で流れることを示し、絶縁効果に優れていることが分かる。図9は、実施例2によって製造されたボトムコンタクト有機薄膜トランジスタ素子の電気的性質を示すグラフであり、高分子チオフェンを使用した時、1.8×10-3cm2/Vsの電荷移動度と8.3×106の優秀な点滅比を示す。
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、下記の実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0054】
実施例1:化合物の合成
本発明の化学式1で表示されるペルフルオロアルキレンオキシ基が置換されたフェニルエチルシラン化合物及びこれを重合した化学式2で表示される高分子を合成する一例を次の反応式1で表示した。
【0055】
出発物質であるトリフルオロビニルオキシブロモベンゼン(4-(trifluorovinyloxy)bromobenzene)は、広く知られた方法(米国特許第5,066,746号参照)を用いて合成され、Oakwood会社が販売する物質を使用した。
【0056】
【化3】

【0057】
次の反応は、低温反応器を用いて−78℃で進行した。
3g(12mmol)のトリフルオロビニルオキシブロモベンゼンをジエチルエーテル50mLに溶解し、窒素雰囲気下で7mL(12mmol)の1.7M−ブチルリチウム(butyllithium)を徐々に滴加した。リチウム置換されたトリフルオロビニルオキシブロモベンゼンは、フェネチルトリクロロシラン(phenethyltrichlorosilane)との反応性を有するようになる。溶液を約1時間攪拌した後、1g(4mmol)のフェネチルトリクロロシランを滴加し、 約1時間攪拌した後、温度を常温に上げた。ここに50mLの水を注いで、層分離し、水層を捨て、残った有機溶媒を蒸発させた後、シリカゲル分離装置を用いて精製し、化合物1bを得た(収率15%)。
【0058】
上記化合物1bは、有機溶媒としてTHF(tetrahydrofuran)、アセトン、クロロホルム、ジクロロエタンに40重量%以上の溶解度を有する。
【0059】
上記化学式1bの構造は、1H−NMR及び19F−NMRを用いて分析し、図1及び図2に各々1H−NMR及び19F−NMRスペクトルの結果を示した。上記提示された反応式1のようにフッ素ビニル基を含有するフェネチルシランに熱を加える場合、熱によってフッ素ビニル基(trifluorovinyl)が2p+2pサイクロダイマリゼイションしながら化学式1bが熱架橋され、重合体である高分子化学式2aを形成する。
【0060】
図3は、上記化学式1bが熱によってシクロダイマリゼイションされ、高分子である化学式2bを形成した結果を示すものである。
【0061】
図4は、上記化学式2aの有機溶媒に対する溶解度を示すグラフであり、有機溶媒(クロロホルム)で洗浄した後、重合体である化学式2aからなる高分子フィルムの厚さが変わらないことをUV−Vis吸光スペクトルで確認することができる。
【0062】
図5は、前述した有機溶媒で洗浄した後にも化学式2aの高分子の表面構造が変わらないことを原子間力顕微鏡(Atomic force microscopy;AFM)形状イメージで確認した結果を示すものである。
【0063】
実施例2:有機薄膜トランジスタの製造
シリコンやITO(indium tin oxide)基板上に、絶縁材層の単量体である上記実施例1で合成された化学式1bの単量体をテトラクロロエタン溶媒に20重量%濃度で溶解し、1000rpmの回転速度で60秒間スピンコーティングした後、乾燥させ、窒素雰囲気下で180℃以上の温度を加えて熱架橋させて、化学式2aの高分子を合成した。
【0064】
ソース及びドレイン電極として用いられる金を写真石版術を用いてパターニングする。写真石版術のための光重合塗料(PR6612)をコーティングした後、紫外線光を用いて光重合して電極形態を製作した後、電極用金属をe-ビーム(beam)や熱的(thermal)蒸着方法で蒸着し、現像(develop)過程を通じて電極を製作した。
【0065】
電極用金属は、e-ビーム(beam)蒸着方法を通じて10-6Torr雰囲気の高真空状態で0.3Å/sの低い速度で形成した。この時、長さ1mm、幅5μmのパターンを形成した。
【0066】
上記パターン上に有機半導体物質であるポリヘキシルチオフェンをクロロホルムに1mg/mLで溶解した後、2000rpmの回転速度で40秒間スピンコーティングし、結晶伸長させるために、120℃で10分間熱を加えた。
【0067】
実験例:素子の特性分析
上記実施例2によって製造された素子を半導体特性分析装備[Keithley4200]を使用して有機電界効果トランジスタ特性を測定し、その結果を図9に示した。
【0068】
図9によると、電流比106以上の良いトランジスタ性能を示す素子を製作した。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1によって合成された化学式1bで表示される化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1によって合成された化学式1bで表示される化合物の19F−NMRスペクトルである。
【図3】実施例1において化学式2bで表示される高分子の状態をDSC(differential scanning calorimeters)を通じて確認した結果を示すグラフである。
【図4】実施例1において化学式2bで表示される高分子を含有してなるフィルム(絶縁膜)を有機溶媒で洗浄した前後の厚さを測定したUV−Vis吸光スペクトルである。
【図5】実施例1において化学式2bで表示される高分子を含有してなるフィルム(絶縁膜)を有機溶媒で洗浄した前後の高分子の表面構造を示す原子間力顕微鏡(Atomic force microscopy;AFM)の形状イメージを示す写真である。
【図6】本発明のボトムコンタクト有機薄膜トランジスタ素子を製造する方法の一例を示す流れ図である。
【図7】実施例2によって写真石版術で製造した電極が適用されたボトムコンタクト有機薄膜トランジスタ素子のイメージ写真を示す図である。
【図8】実施例2によって製造された有機絶縁膜の電気的性質を示すグラフである。
【図9】実施例2によって製造されたボトムコンタクト有機薄膜トランジスタ素子の電気的性質を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学式1で表示されたフェニルエチルシラン化合物は、ペルフルオロアルキレンオキシ基が置換され、
【化1】

上記化学式1で、R1、R2及びR3は、互いに同じか、または異なるものであって、水素原子、フッ素原子、炭素数1から4のアルキル基、及びフッ素原子が1から6個置換された炭素数1から4のフルオロアルキル基の中から選択され、また、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つ以上がフッ素原子又はフルオロアルキル基であり、Z1、Z2及びZ3は、互いに同じか、または異なるものであって、水素原子、及び炭素数1から4のアルキル基の中から選択され、nは、0、1、2又は3を示すフェニルエチルシラン化合物。
【請求項2】
上記R1、R2及びR3のうち少なくとも1つ以上がフッ素原子であることを特徴とする請求項1に記載のフェニルエチルシラン化合物。
【請求項3】
化学式1aで表示されることを特徴とする請求項1に記載のフェニルエチルシラン化合物。
【化1a】

【請求項4】
ペルフルオロアルキレンオキシ基が置換された次の化学式1で表示されるフェニルエチルシラン化合物を重合して製造され、R1、R2及びR3は、互いに同じか、または異なるものであって、水素原子、フッ素原子、炭素数1から4のアルキル基、及びフッ素原子が1から6個置換された炭素数1から4のフルオロアルキル基の中から選択され、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つ以上がフッ素原子又はフルオロアルキル基であり、Z1、Z2及びZ3は、互いに同じか、または異なるものであって、水素原子、及び炭素数1から4のアルキル基の中から選択され、nは、0、1、2又は3を示すペルフルオロ高分子。
【化1】

【請求項5】
次の化学式2で表示される反復単位構造を有し、R1、R2及びR3は、互いに同じか、または異なるものであって、水素原子、フッ素原子、炭素数1から4のアルキル基、及びフッ素原子が1から6個置換された炭素数1から4のフルオロアルキル基の中から選択され、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つ以上がフッ素原子又はフルオロアルキル基であり、nは、0、1、2又は3を示すことを特徴とする請求項4に記載のペルフルオロ高分子。
【化2】

【請求項6】
次の化学式2aで表示される反復単位構造を有し、R1、R2及びR3は、互いに同じか、または異なるものであって、水素原子、フッ素原子、炭素数1から4のアルキル基、及びフッ素原子が1から6個置換された炭素数1から4のフルオロアルキル基の中から選択され、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つ以上がフッ素原子又はフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項5に記載のペルフルオロ高分子。
【化2a】

【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載のペルフルオロ高分子を含有することを特徴とする絶縁膜。
【請求項8】
請求項4から6のいずれか1項に記載のペルフルオロ高分子を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ用ゲート絶縁材。
【請求項9】
基板と、
上記基板上に形成され、請求項4から6のいずれか1項に記載のペルフルオロ高分子が含有されてなるゲート絶縁材層と、
上記ゲート絶縁材層上に形成されたソース/ドレイン電極と、
上記ゲート絶縁材層上に形成され、上記ソース/ドレイン電極とこれらの間にわたって形成されるチャネル層を具備した半導体層とを備えることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項10】
基板と、
上記基板上に形成された形成されたソース/ドレイン電極と、
上記基板上に形成され、上記ソース/ドレイン電極とこれらの間にわたって形成されるチャネル層を具備した半導体層と、
上記半導体層上に形成された請求項4から6のいずれか1項に記載のペルフルオロ高分子を含有するゲート絶縁材層と、を備えることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−81731(P2008−81731A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178259(P2007−178259)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(507012700)グァンジュ インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】