説明

フレキシブルチューブ

【課題】 エンジンに連なる排気系に接続されて、その排気系の軸方向の振動を減衰するフレキシブルチューブであって、そこに発生する衝突音の発生を防止し、かつその小型化と軽量化を達成する。
【解決手段】 ベローズ管10と、その内側のインタロック管20よりなり、ベローズ管10のベローズ部11の山部12と谷部13を螺旋状に形成し、インタロック管20の隣接するインタロック機構24,24の間に螺旋状の凹み部25を形成し、この凹み部25に谷部13を入り込ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルチューブ、主として車両用などのエンジンの排気系に接続されてエンジンからの振動を吸収するようにした、振動吸収パイプとしてのフレキシブルチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の排気系は、エンジンに組み付けられたエキゾーストマニホールドに連なる排気管に、触媒コンバータ、サブマフラ、メインマフラなどを接続して構成され、エンジンからの振動を排気系後方のマフラなどに伝達しないように、たとえば、エキゾーストマニホールドと触媒コンバータとの間の排気管に振動吸収パイプとしてのフレキシブルチューブを介在させ、エンジンからの振動を吸収するものが知られている。
【0003】
フレキシブルチューブは、一般にベローズ管と、ベローズ管の外側に配置されたアウタブレードとを有する。ベローズ管は、その前後の排気管の振動による変位を吸収するもので、ステンレス製で円筒状に形成され、山部と谷部が軸方向に交互に形成された蛇腹部(ベローズ部)を有する。また、アウタブレードは飛石などからベローズ管を保護するもので、線状のステンレス材を円筒状に編み込んで形成される。また、インタロック管は軸方向の過大な引張・圧縮荷重からベローズ管を保護するもので、両側縁が鉤状に形成されたステンレス製の帯板材を螺旋状に巻回して円筒状に形成されると共に、隣接する帯板材の鉤状部を所定の範囲で軸方向に相対移動可能に係合させたインタロック機構を備える(後記特許文献1の図8(a)(b)、後記特許文献2の第4図、第5図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−312342号公報
【特許文献2】実開昭57−120713号マイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インタロック管は、軸方向の振動による伸縮力が作用したとき、インタロック機構において隣接する帯板材の鉤状部同士が軸方向で当接することにより一定以上の軸方向の変位を規制でき(特許文献1の図8(a)伸張時、(b)圧縮時を参照)、これにより過大な引張・圧縮荷重が作用することによるベローズ管の破損を防止しているが、隣接する鉤状部同士が軸方向で当接する際に衝突音が発生し、しかもインタロック管は軸方向の一定以上の変位を規制できるものの、インタロック管に生じている軸方向の振動そのものを減衰させる減衰要素を備えていないため、一度軸方向に振動が発生すると、その振動が消滅するまでに時間がかかり、このため衝突音が連続して発生する問題がある。
【0006】
そこで、インタロック管にそれを覆うようにインナブレードを被せ、インナブレードによりインタロック管の振動を減衰させ、前記した連続する衝突音の発生を防止するものが知られる(前記特許文献1の図6、前記特許文献2の第5図参照)が、インナブレードを設けると、その分フレキシブルチューブの外径が大きくなり、その上、重量も増加し、部品点数も増加してコストの上昇を招くという新たな問題を生じる。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、インナブレードを設けることなく、インタロックに発生した軸方向の振動を減衰して前記した連続する衝突音の発生を防止できるようにして、前記問題を解決した、新規なフレキシブルチューブを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本請求項1記載の発明は、円筒状のベローズ管と、ベローズ管の内側に配置される円筒状のインタロック管とを備えるフレキシブルチューブであって、前記ベローズ管は、軸方向に交互に形成される山部と谷部とが一端側から他端側へ螺旋状に連続するベローズ部を備え、前記インタロック管は、両側縁が鉤状に形成された帯板材を螺旋状に巻回して円筒状に形成され、隣接する帯板材の鉤状部を所定の範囲で軸方向に相対移動可能に係合させたインタロック機構を有し、隣接するインタロック機構の間に、インタロック管の一端側から他端側へ螺旋状に連続する凹み部が形成され、前記凹み部にベローズ部の谷部を入り込ませ、その谷部の両側部を隣接するインタロック機構の鉤状部に当接させたことを特徴としている。
【0009】
前記目的を達成するため、本請求項2記載の発明は、前記請求項1記載のものにおいて、前記ベローズ部の谷部の底を、前記インタロック管の凹み部の底に当接させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1記載の発明によれば、ベローズ部の谷部を、インタロック管の凹み部に入り込ませ、ベローズ部の谷部の両側部をインタロック機構の鉤状部に当接させたので、ベローズ部の谷部がインタロック管の軸方向の振動を減衰する減衰要素として作用して、インタロック管に発生した軸方向の振動を速やかに減衰して、前記した連続する衝突音の発生を防止することができる。
【0011】
これにより、前記従来技術に見られるようなインタロック管に被せるインナブレードが不要になり、部品点数の削減が可能になり、さらに、ベローズ部の谷部をインタロック管の凹み部に入り込ませているので、ベローズ管の外径を格段に小さくすることができ、フレキシブルチューブの大幅な小型化と重量低減を達成できる。
【0012】
また、本請求項2記載の発明によれば、ベローズ部の谷部の底をインタロック管の凹み部の底に当接させたので、インタロック管の径方向の振れを抑制でき、これに起因する騒音の発生を防止できる。また、ベローズ部の谷部が一層深くインタロック管の凹み部に入り込むので、ベローズ管の外径をさらに小さくでき、フレキシブルチューブの一層の小型化と重量低減を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明フレキシブルチューブを備えた車両用エンジンの排気系の全体側面図
【図2】図1の2−2線に沿うフレキシブルチューブの拡大断面図
【図3】図2の3矢視仮想線囲い部分の拡大図
【図4】ベローズ管とインタロック管の斜視図
【図5】フレキシブルチューブの組立順序を示す図
【図6】フレキシブルチューブの組立順序を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0015】
本実施例は、本発明フレキシブルチューブを、車両用エンジンの排気系に実施した場合であり、以下の説明において、前後、左右および上下とは、車両の前進方向を基準にしていう。
【0016】
図1において、自動車の前部には、その走行用エンジンEが横置きに搭載されており、そのエンジンEの頭部後面に開口される排気ポートには排気系EXが接続される。この排気系EXは、排気ポートに一体に接続されるエキゾーストマニホールドMeの下流側に排気管Peが接続されており、この排気管Peは、自動車の床下を前後方向に長く延びていて上流側排気管1と下流側排気管2とを備え、上流側排気管1には触媒コンバータCが介在されている。また、上流側排気管1と下流側排気管2との間には、本発明にかかるフレキシブルチューブTfが介在され、下流側排気管2には、サブマフラMsおよびメインマフラMmが接続されている。
【0017】
そして、エンジンEの運転により、そこから排出された排気ガスは、触媒コンバータCにより、そこに含まれるHC、CO、NOxなどの有害成分が浄化されたのち、サブマフラMsを通って補助的に消音されたのち、メインマフラMmにより主たる消音がなされて外部に排出される。そして、エンジンEからの振動は、フレキシブルチューブTfにより吸収される。
【0018】
つぎに、本発明にかかるフレキシブルチューブTfの構成について、図2〜4を参照して詳細に説明する。
【0019】
このフレキシブルチューブTfは、円筒状のベローズ管10と、その内側に配置される円筒状のインタロック管20と、その外周を覆うアウタブレード30を備える。
【0020】
ベローズ管10の主体部分を構成するベローズ部(蛇腹部)11は、軸方向に交互に形成される断面ループ状の、山部12と谷部13のそれぞれがベローズ管10の一端側から他端側へ螺旋状に連続して形成されており、そのベローズ部11の前後両端には、ベローズ部11の外径よりも小径な円筒状の前後の接続端部14,15が形成される。
【0021】
また、インタロック管20は、両側縁が鉤状に形成された帯板材21を連続的に螺旋状に巻回して円筒状に形成されており、この帯板材21の両側縁に、鉤状に形成された鉤状部22,23を有して、その鉤状部22,23を所定の範囲で軸方向に相対移動可能に係合させたインタロック機構24を備えている。そして、隣接するインタロック機構24の間には、インタロック管20の一端側から他端側へ螺旋状に連続する凹み部25が形成されている。
【0022】
この螺旋状の凹み部25には、後に述べるように、前記ベローズ管10のベローズ部11の谷部13を入り込ませて、その谷部13の両側部を隣接するインタロック機構24,24の鉤状部23,23に当接させ、その谷部13の底をインタロック管20の凹み部25の底に当接させることにより、インタロック管20は、ベローズ管10に組み付けられる。
【0023】
前記アウタブレード30は、円筒状に形成されており、その内周面に、ベローズ管10の山部12の頂が当接され、その前後両端部は漸次に縮径されてその前後両端に接続端部31,32が形成されている。
【0024】
つぎに、図4,5を参照して、本発明にかかるフレキシブルチューブTfの組付順序について説明する。
【0025】
(1) 螺旋状に形成される円筒状のインタロック管20の前後端部に、前、後のジョイントパイプ40,41をそれぞれ溶接で固定する。このとき、後ジョイントパイプ41は拡管せずに直状のままとする〔図5(A)〕。
【0026】
なお、図2に示すように、通常、フレキシブルチューブTfの前、後ジョイントパイプ40,41の排気管への接続端部は拡開されている。
【0027】
(2) つぎに、前、後ジョイントパイプ40,41とインタロック管20を、後ジョイントパイプ41側から螺旋状のベローズ管10内に差し込む〔図5(B)〕。その後、インタロック管20の凹み部25に、ベローズ管10の谷部13を沿わせるように、両者を相対回転させながら(図4参照)、インタロック管20の凹み部25にベローズ管10の谷部13を入り込ませ、その谷部13の両側部を隣接するインタロック機構24,24の鉤状部23,23に当接させると共にその谷部13の底を凹み部25の底に当接させる。これにより、ベローズ管10の内部にインタロック管20が螺入される〔図6(C)〕。
【0028】
(3) 後ジョイントパイプ41を、前ジョイントパイプ40と同じ形状に拡管する〔図6(C)〕。
【0029】
(4) ベローズ管10の外側にアウタブレード30を被せ、アウタブレード30の前後の接続端部31,32にキャップ42,42をそれぞれ取り付ける〔図6(D)〕。
【0030】
(5) キャップ42,42、アウタブレード30の接続端部31,32、ベローズ管10の接続端部14,15を、前、後ジョイントパイプ41,42にそれぞれ溶接で固定する。以上により、フレキシブルチューブTfが完成する。
【0031】
そして、このフレキシブルチューブTfを、排気系Exに接続するには、前、後のジョイントパイプ40,41に、上、下流側流側排気管1、2を内側からそれぞれ嵌合して溶接で固定する。以上により、図1に示すように、排気系Exの、上流側排気管1と下流側排気管2との間にフレキシブルチューブTfが接続される〔図6(D)〕。
【0032】
しかして、この実施例のフレキシブルチューブTfは、ベローズ管10のベローズ部11の谷部13を、インタロック管20の凹み部25に入り込ませ、ベローズ部11の谷部13の両側部を隣接するインタロック機構24,24の鉤状部23,23に当接させたので、ベローズ部11の谷部13がインタロック管20の軸方向の振動を減衰する減衰要素として作用し、インタロック管20に発生した軸方向の振動を速やかに減衰して、前記した連続する衝突音の発生を防止することができる。
【0033】
また、従来のインナブレードが不要になり、部品点数の削減が可能になり、さらに、ベローズ部11の谷部13をインタロック管20の凹み部25に入り込ませているので、ベローズ管20の外径を格段に小さくすることができ、フレキシブルチューブTfの大幅な小型化と重量低減を達成できる。
【0034】
また、ベローズ部11の谷部13の底をインタロック管20の凹み部25の底に当接させたので、インタロック管20の径方向の振れを抑制でき、これに起因する騒音の発生を防止でき、さらに、ベローズ部11の谷部13が一層深くインタロック管20の凹み部25に入り込むので、ベローズ管10の外径をさらに小さくでき、フレキシブルチューブTfの一層の小型化と重量低減を達成できる。
【0035】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0036】
たとえば、前記実施例では、本発明フレキシブルチューブを車両用エンジンEの排気系Exに実施した場合を説明したが、これを汎用など、他の用途のエンジンの排気系、その他の軸方向の振動を伴う配管に実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
10・・・・ベローズ管
11・・・・ベローズ部
12・・・・山部
13・・・・谷部
20・・・・インタロック管
21・・・・帯板材
22・・・・鉤状部
23・・・・鉤状部
24・・・・インタロック機構
25・・・・凹み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のベローズ管(10)と、ベローズ管(10)の内側に配置される円筒状のインタロック管(20)とを備えるフレキシブルチューブであって、
前記ベローズ管(10)は、軸方向に交互に形成される山部(12)と谷部(13)とが一端側から他端側へ螺旋状に連続するベローズ部(11)を備え、
前記インタロック管(20)は、両側縁が鉤状に形成された帯板材(21)を螺旋状に巻回して円筒状に形成され、隣接する帯板材(21)の鉤状部(22,23)を所定の範囲で軸方向に相対移動可能に係合させたインタロック機構(24)を有し、隣接するインタロック機構(24)の間に、インタロック管(20)の一端側から他端側へ螺旋状に連続する凹み部(25)が形成され、
前記凹み部(25)にベローズ部(11)の谷部(13)を入り込ませ、その谷部(13)の両側部を隣接するインタロック機構(24,24)の鉤状部(23,23)に当接させたことを特徴とするフレキシブルチューブ。
【請求項2】
前記ベローズ部(11)の谷部(13)の底を、前記インタロック管(20)の凹み部(25)の底に当接させたことを特徴とする、前記請求項1記載のフレキシブルチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−26995(P2011−26995A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171913(P2009−171913)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】