説明

フロアプランデータ生成装置及び方法

【課題】チップの設計期間を短縮する。
【解決手段】CPU1は、設計対象の回路を構成するセルのうち、所定のサイズより大きいセルサイズを有するセルのみの回路情報をゲートレベルで記述した簡易ネットリスト43と、所定のサイズより大きいセルサイズを有するセルのみの仕様データを含むセルリスト44とを用いてフロアプランを行い、仮フロアプランデータ47を生成する。CPU1は、ユーザによって回路全体のフロアプランが行われるときに、回路を構成するセルの仕様データである全体ライブラリ42と、回路を構成するセルの回路情報をゲートレベルで記述した全体ネットリスト45と、仮フロアプランデータ47と、簡易ネットリスト43を全体ネットリスト45に整合させるためのセルリスト44とを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI(Large Scale Integrated Circuit)の開発時のレイアウト設計において、チップを構成する各セルの配置を決定するフロアプランを行うためのフロアプランデータを生成するフロアプランデータ生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSIの開発時のレイアウト設計において、チップを構成する各セルの配置を決定するフロアプラン装置が知られている。このようなフロアプラン装置は、レジスタトランスファレベルでの設計対象のチップの記述データであるRTL(Regeister Transfer Level)記述データを、ゲートレベルでの設計対象のチップの記述データであるネットリストに論理合成する。そして、設計者は、フロアプラン装置を用いて、ネットリストと、各セルの仕様(セル名、セル種、セル形状、セルサイズ及び端子位置)の図形データであるライブラリとに基づいて、対話形式で設計対象のチップのフロアプランを行う(特許文献1及び2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、フロアプランを行うためには、設計対象のチップ全体のRTL記述データ及びライブラリを設計者が予め作成しておく必要があり、当該作成のための期間をさらに短縮することは困難である。また、設計者は経験に基づいてフロアプランを行うので、フロアプランのための期間を大幅に短縮することも困難である。このため、チップの設計期間を大幅に短縮することは難しかった。
【0004】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、チップの設計期間を従来技術に比較して短縮できる、フロアプランに用いるフロアプランデータを生成するフロアプランデータ生成装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係るフロアプランデータ生成装置は、所定のサイズより大きいセルサイズを有する第1のセルと、上記サイズ以下のセルサイズを有する第2のセルとを含む設計対象の回路のフロアプランに用いるフロアプランデータを生成して出力する制御手段を備えたフロアプランデータ生成装置において、
(a)上記回路全体の回路情報をレジスタトランスファレベルで記述したRTL(Register Transfer Level)記述データと、(b)上記第1のセルの仕様データ及び上記第2のセルの仕様データを含む図形データである全体ライブラリと、(c)上記第1のセルのみの回路情報をゲートレベルで記述した簡易ネットリストと、(d)上記第1のセルのみの仕様データを含むセルリストとを予め格納する記憶手段を備え、
上記制御手段は、
上記セルリストを図形データである簡易ライブラリに変換し、
上記簡易ライブラリと上記簡易ネットリストとを用いて上記第1のセルの配置情報を含む仮フロアプランデータを生成し、
上記仮フロアプランデータの生成後に、上記RTL記述データを、上記第1及び第2のセルの回路情報をゲートレベルで記述した全体ネットリストに論理合成し、
上記全体ネットリストと上記簡易ネットリストとに基づいて、上記簡易ネットリストを上記全体ネットリストに整合させるためのマッチングリストを生成し、
上記全体ライブラリと、上記全体ネットリストと、上記マッチングリストと、上記仮フロアプランデータとを、上記フロアプランデータとして出力することを特徴とする。
【0006】
上記フロアプランデータ生成装置において、上記セルリストは、エクセル(登録商標)形式の表データであることを特徴とする。
【0007】
第2の発明に係るフロアプランデータ生成方法は、所定のサイズより大きいセルサイズを有する第1のセルと、上記サイズ以下のセルサイズを有する第2のセルとを含む設計対象の回路のフロアプランに用いるフロアプランデータを生成して出力する制御手段を備えたフロアプランデータ生成装置のためのフロアプランデータ生成方法において、
上記フロアプランデータ生成装置は、(a)上記回路全体の回路情報をレジスタトランスファレベルで記述したRTL(Register Transfer Level)記述データと、(b)上記第1のセルの仕様データ及び上記第2のセルの仕様データを含む図形データである全体ライブラリと、(c)上記第1のセルのみの回路情報をゲートレベルで記述した簡易ネットリストと、(d)上記第1のセルのみの仕様データを含むセルリストとを予め格納する記憶手段を備え、
上記フロアプランデータ生成方法は、
上記制御手段が、上記セルリストを図形データである簡易ライブラリに変換するステップと、
上記制御手段が、上記簡易ライブラリと上記簡易ネットリストとを用いて上記第1のセルの配置情報を含む仮フロアプランデータを生成するステップと、
上記制御手段が、上記仮フロアプランデータの生成後に、上記RTL記述データを、上記第1及び第2のセルの回路情報をゲートレベルで記述した全体ネットリストに論理合成するステップと、
上記制御手段が、上記全体ネットリストと上記簡易ネットリストとに基づいて、上記簡易ネットリストを上記全体ネットリストに整合させるためのマッチングリストを生成するステップと、
上記制御手段が、上記全体ライブラリと、上記全体ネットリストと、上記マッチングリストと、上記仮フロアプランデータとを、上記フロアプランデータとして出力するステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
上記フロアプランデータ生成方法において、上記セルリストは、エクセル(登録商標)形式の表データであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフロアプランデータ生成装置及び方法によれば、全体ライブラリ及び全体ネットリストに加えて、マッチングリストと、仮フロアプランデータとをさらに出力するので、設計者が設計対象の回路全体のフロアプランを行うために必要とする時間を従来技術に比較して短縮でき、これにより、チップの設計期間を従来技術に比較して短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るフロアプランデータ生成装置であるパーソナルコンピュータ10の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のCPU1によって実行されるフロアプランデータ生成処理を示すフローチャートである。
【図3】図1のパーソナルコンピュータ10によってフロアプランを行う設計対象のチップ100の回路図である。
【図4】図3の回路のRTL記述データ41の一例を示すブロック図である。
【図5】図3の回路の全体ライブラリ42の図形データの、ディスプレイ5における表示例を示すブロック図である。
【図6】図3の回路の簡易ネットリスト43の一例を示すブロック図である。
【図7】図3の回路のセルリスト44の一例を示す表である。
【図8】図3のセルリスト44に基づいて生成される簡易ライブラリの、ディスプレイ5における表示例を示すブロック図である。
【図9】図6の簡易ネットリスト43と、図8の簡易ライブラリとに基づいて生成される仮フロアプランデータ47の、ディスプレイ5における表示例を示すブロック図である。
【図10】図4のRTL記述データ41に基づいて生成される全体ネットリスト45の一例を示すブロック図である。
【図11】図10の全体ネットリスト45と、図6の簡易ネットリスト43とに基づいて生成されるマッチングリスト46の一例を示すブロック図である。
【図12】図10の全体ネットリスト45と、図5の全体ライブラリ42と、図11のマッチングリスト46と、図9の仮フロアプランデータ47とを用いて図3の回路のフロアプランを行った結果の、ディスプレイ5における表示例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るフロアプランデータ生成装置であるパーソナルコンピュータ10の構成を示すブロック図である。図1において、パーソナルコンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)1と、ROM(Read Only Memory)2と、RAM(Random Access Memory)3と、ハードディスクドライブ4と、ディスプレイ5と、マウス6と、キーボード7とを備えて構成される。CPU1は、ROM2、RAM3、ハードディスクドライブ4、ディスプレイ5、マウス6及びキーボード7と接続されていてそれらを制御するほか、種々のソフトウェアの機能を実行する。また、ROM2は、パーソナルコンピュータ10の動作に必要であってCPU1によって実行される種々のソフトウェアのプログラムを予め格納する。また、RAM3は、SRAM(Static RAM)、DRAM(Dynamic RAM)、SDRAM(Synchronous DRAM)などで構成され、CPU1のワーキングエリアとして使用されてプログラムの実行時に発生する一時的なデータを記憶する。さらに、ハードディスクドライブ4は、記録媒体を内蔵する記憶装置であり、詳細後述するように、RTL記述データ41と、全体ライブラリ42と、簡易ネットリスト43と、セルリスト44と、全体ネットリスト45と、マッチングリスト46と、仮フロアプランデータ47とを格納するために用いられる。ディスプレイ5は、液晶表示装置(LCD(Liquid Crystal Display))又はCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどの表示装置であり、パーソナルコンピュータ10の動作状態の表示及び、簡易ネットリスト43の図形データの表示などを行う。マウス6及びキーボード7は、設計者がフロアプランを行うための指示コマンドなどを入力するためのものである。
【0013】
詳細後述するように、本実施形態に係るフロアプランデータ生成装置であるパーソナルコンピュータ10は、所定のサイズより大きいセルサイズを有する第1のセル(例えば、図3の入力端子IO1、IO2、IO3と、出力端子IO4と、A/D変換器ADC1、ADC2、ADC3と、D/A変換器DACである。)と、上記サイズ以下のセルサイズを有する第2のセル(例えば、図3のアンドゲートANDおと、インバータINVと、オアゲートORである。)とを含む設計対象の回路(例えば、図3参照。)のフロアプランに用いるフロアプランデータを生成して出力するCPU1を備える。ここで、パーソナルコンピュータ10は、(a)設計対象の回路全体の回路情報をレジスタトランスファレベルで記述したRTL記述データ41と、(b)第1のセルの仕様データ及び第2のセルの仕様データを含む図形データである全体ライブラリ42と、(c)第1のセルのみの回路情報をゲートレベルで記述した簡易ネットリスト43と、(d)第1のセルのみの仕様データを含むセルリスト44とを予め格納するハードディスクドライブ4を備えて構成されたことを特徴としている。さらに、CPU1は、セルリスト44を図形データである簡易ライブラリに変換し、上記簡易ライブラリと簡易ネットリスト43とを用いて第1のセルの配置情報を含む仮フロアプランデータ47を生成し、仮フロアプランデータ47の生成後に、RTL記述データ41を、第1及び第2のセルの回路情報をゲートレベルで記述した全体ネットリスト45に論理合成し、全体ネットリスト45と簡易ネットリスト43とに基づいて、簡易ネットリスト43を全体ネットリスト45に整合させるためのマッチングリスト46を生成し、全体ライブラリ42と、全体ネットリスト45と、マッチングリスト46と、仮フロアプランデータ47とを、フロアプランデータとして出力することを特徴としている。
【0014】
以下、図3の回路を搭載するチップ100のフロアプランを行う場合を例に挙げて、図1のパーソナルコンピュータ10の動作を説明する。図3は、図1のパーソナルコンピュータ10によってフロアプランを行う設計対象のチップ100の回路図である。図3において、設計対象の回路は、入力端子IO1、IO2及びIO3と、A/D変換器ADC1、ADC2及びADC3と、アンドゲートANDと、インバータINVと、オアゲートORと、D/A変換器DACと、出力端子IO4とを備えて構成される。以下、設計対象のチップ100の構成要素を、セルともいう。図3において、入力信号ADI1は、チップ100の周囲に設けられた入出力端子20(図12参照。)から、入力端子IO1を介してA/D変換器ADC1の入力端子T1に出力され、デジタル信号I1に変換されて、A/D変換器ADC1の出力端子T2から、アンドゲートANDの入力端子T7に出力される。また、入力信号ADI2は、チップ100の周囲に設けられた入出力端子20から、入力端子IO2を介してA/D変換器ADC2の入力端子T3に出力され、デジタル信号I2に変換されて、A/D変換器ADC2の出力端子T4から、アンドゲートANDの入力端子T8に出力される。さらに、入力信号ADI3は、チップ100の周囲に設けられた入出力端子20から、入力端子IO3を介してA/D変換器ADC3の入力端子T5に出力され、デジタル信号I3に変換されて、A/D変換器ADC3の出力端子T6から、インバータINVの入力端子T10に出力される。そして、アンドゲートANDからの出力信号AOは、アンドゲートANDの出力端子T9からオアゲートORの入力端子T12に出力され、インバータINVからの出力信号O1は、インバータINVの出力端子T11からオアゲートORの入力端子T13に出力される。オアゲートORからの出力信号O2は、オアゲートORの出力端子T14からD/A変換器DACの入力端子T15に出力され、出力信号DOUTに変換された後に、D/A変換器DACの出力端子T16及び出力端子IOを介してチップ100の周囲に設けられた入出力端子20に出力される。
【0015】
図1において、RTL記述データ41と、全体ライブラリ42と、簡易ネットリスト43と、セルリスト44とは、設計者によって予め作成されてハードディスクドライブ4に格納されている。図4は、図3の回路のRTL記述データ41の一例を示すブロック図であり、図5は、図3の回路の全体ライブラリ42の図形データの、ディスプレイ5における表示例を示すブロック図であり、図6は、図3の回路の簡易ネットリスト43の一例を示すブロック図であり、図7は、図3の回路のセルリスト44の一例を示す表である。
【0016】
図4に示すように、RTL記述データ41は、設計対象の回路全体の回路情報を所定のハードウエア記述言語を用いてレジスタトランスファレベルで記述したものである。ここで、RTL記述データ41における「回路情報」とは、回路における各信号の流れの情報である。RTL記述データ41設計では、回路の接続形態をフリップフロップなどのハードウェアレジスタとブール論理回路の間の信号の流れとして定義する。具体的には、図4において、「wire O2=AO|O1」は、入力信号AO及び入力信号O1に対して論理和演算を行い、出力信号O2として出力することを意味する。また、「D/A_x D/A1(DOUT,O2)」は、入力信号O2を出力信号DOUTにD/A変換して出力することを意味する。
【0017】
また、図5に示すように、全体ライブラリ42は、設計対象の回路を構成する全てのセルの仕様データを含む図形データである。具体的には、仕様データは、セルのセル名と、セルサイズと、セル種と、端子位置との各情報を含む。例えば、図5に示すように、全体ライブラリ42内のA/D変換器ADC1は、セル名「ADC1」と、セル種「analog」と、セルサイズ(1500μm×1000μm)と、端子T1及びT2とともにディスプレイ5に表示される。
【0018】
さらに、簡易ネットリスト43は、設計対象の回路を構成するセルのうち、入出力端子、A/D変換器、及びD/A変換器などの所定のサイズより大きいセルサイズを有するセルの回路情報を、所定のハードウエア記述言語を用いてゲートレベルで記述したものである。ここで、簡易ネットリスト43における「回路情報」は、回路を構成する各セルのセル名と端子名とを含む。図6において、図3の回路の簡易ネットリスト43は、入力端子IO1、IO2及びIO3と、A/D変換器ADC1、ADC2及びADC3と、D/A変換器DACと、出力端子IO4との各回路情報を含む。例えば、図6の簡易ネットリスト43において、「INST_A A/D1(T1,T2)」は、インスタンスINST_Aにおいて、セル名A/D1を有するセルが入力端子T1及び出力端子T2を有することを意味する。
【0019】
また、セルリスト44は、設計対象の回路を構成するセルのうち、入出力端子、A/D変換器、及びD/A変換器などの所定のサイズより大きいセルサイズを有するセルの仕様データを、Excell(エクセル(登録商標))形式の表データとして記述したものである。ここで、セルリスト44に含まれる仕様データは、各セルのセル名と、セルサイズと、セル種とを含むが、各セルの端子情報を含まない。図7に示すように、図3の回路のセルリスト44は、入力端子IO1、IO2及びIO3と、A/D変換器ADC1、ADC2及びADC3と、D/A変換器DACと、出力端子IO4との各セル名と、各セルサイズと、各セル種とを含む。
【0020】
図2は、図1のCPU1によって実行されるフロアプランデータ生成処理を示すフローチャートである。図1において、まず始めにステップS1において、CPU1は、セルリスト44を、所定のコンパイラを用いて図形データである簡易ライブラリに変換し、ディスプレイ5に表示する。図8は、図3のセルリスト44に基づいて生成される簡易ライブラリの、ディスプレイ5における表示例を示すブロック図である。図8に示すように、簡易ライブラリ内のA/D変換器ADC1は、セル名「ADC1」と、セル種「analog(アナログ)」と、セルサイズ(1500μm×1000μmである。)とともにディスプレイ5に表示される。
【0021】
図2において、ステップS1に続いて、ステップS2において、簡易ライブラリ及び簡易ネットリスト43を用いて、入力端子IO1、IO2、IO3及び出力端子IO4をチップ100の端部に配置し、A/D変換器ADC1、ADC2、ADC3及びD/A変換器DACを入出力端子の近傍に配置し、かつチップ100のサイズが所定のサイズ以下になるように、フロアプランを行って、仮フロアプランデータ47を生成してハードディスクドライブ4に出力するとともに、ディスプレイ5に表示する。図9は、図6の簡易ネットリスト43と、図8の簡易ライブラリとに基づいて生成される仮フロアプランデータ47の、ディスプレイ5における表示例を示すブロック図である。図9に示すように、設計対象の回路を搭載するチップ100の周囲には入出力端子20が設けられる。入出力端子IO1、IO2、IO3及びIO4は、チップ100の4隅にそれぞれ配置され、A/D変換器ADC1、ADC2及びADC3は、入出力端子IO1、IO2、及びIO3の近傍にそれぞれ配置され、D/A変換器DACは入出力端子IO4の近傍に配置されている。仮フロアプランデータ47は、設計対象の回路を構成するセルのうち、入出力端子IO1、IO2、IO3及びIO4、A/D変換器ADC1、ADC2及びADC3、及びD/A変換器DACなどの所定のサイズより大きいセルサイズを有するセルに対してフロアプランを行ったときの各セルの配置情報を含む。ここで、「配置情報」は、セルの位置情報を含む。
【0022】
図2に戻り、ステップS2に引き続いて、ステップS3において、RTL記述データ41は、所定のコンパイラを用いて全体ネットリスト45に論理合成される。ここで、「論理合成」とは、所定のハードウェア記述言語で書かれた回路動作仕様データ(例えば、RTL記述データ41である。)を、ゲートの接続形態で表現された論理回路(例えば、全体ネットリスト45)に変換することを意味する。図10は、図4のRTL記述データ41に基づいて生成される全体ネットリスト45の一例を示すブロック図である。さらに、図2のステップS4において、全体ネットリスト45と簡易ネットリスト43とに基づいて、マッチングリスト46を生成する。ここで、マッチングリスト46は、簡易ネットリスト43を全体ネットリスト45に整合させるためのリストであり、設計対象の回路に含まれる全てのセルと簡易ネットリスト43に含まれるセルとの対応関係を示す。図11は、図10の全体ネットリスト45と、図6の簡易ネットリスト43とに基づいて生成されるマッチングリスト46の一例を示すブロック図である。図11に示すように、マッチングリスト46は、全体ネットリスト45におけるセル名と、簡易ネットリスト43におけるセル名との対応関係を含む。ここで、マッチングリスト46において、全体ネットリスト45におけるセル名に対応するセルが簡易ネットリスト43に存在しないときには、「なし」と記載される。
【0023】
最後に、ステップS5において、全体ライブラリ42をディスプレイ5に表示し、全体ネットリスト45とマッチングリスト46とをハードディスクドライブ4に出力し、フロアプランデータ生成処理を終了する。CPU1は、設計者によって設計対象の回路全体のフロアプランが行われるときに、全体ライブラリ42と、全体ネットリスト45と、仮フロアプランデータ47と、マッチングリスト46とを、上記フロアプランに用いるフロアプランデータとして出力する。そして、設計者は、全体ライブラリ42と、全体ネットリスト45と、仮フロアプランデータ47と、マッチングリスト46とを用いて、フロアプランを行う。具体的には、設計者は、仮フロアプランデータ47を初期値又は位置が固定されたセルの回路情報として用いる。図12は、図10の全体ネットリスト45と、図5の全体ライブラリ42と、図11のマッチングリスト46と、図9の仮フロアプランデータ47とを用いて図3の回路のフロアプランを行った結果の、ディスプレイ5における表示例を示すブロック図である。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、設計者は、従来技術に比較して、セルリスト44及び簡易ネットリスト43をさらに作成しておく必要があるが、セルリスト44及び簡易ネットリスト43は、設計対象の回路を構成するセルのうち所定のサイズより大きいセルサイズを有するセルの回路情報のみを含み、セルリスト44は、エクセルを用いて比較的に容易に作成可能である。従って、設計者の負担を従来技術に比較して大きく増やすことなく仮フロアプランデータ47を作成することができる。本実施形態によれば、設計者は仮フロアプランデータ47を、回路全体のフロアプランにおける初期値又は位置が固定されたセルの回路情報として用いることができるので、仮フロアプランデータ47を用いない場合に比較して、チップの設計期間を短縮できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したように、本発明に係るフロアプランデータ生成装置及び方法によれば、全体ライブラリ及び全体ネットリストに加えて、マッチングリストと、仮フロアプランデータとをさらに出力するので、設計者が設計対象の回路全体のフロアプランを行うために必要とする時間を従来技術に比較して短縮でき、これにより、チップの設計期間を従来技術に比較して短縮できる。
【符号の説明】
【0026】
1…CPU、
2…ROM、
3…RAM、
4…ハードディスクドライブ、
5…ディスプレイ、
6…マウス、
7…キーボード、
10…パーソナルコンピュータ、
41…RTL記述データ、
42…全体ライブラリ、
43…簡易ネットリスト、
44…セルリスト、
45…全体ネットリスト、
46…マッチングリスト、
47…仮フロアプランデータ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特表2004−513436号公報。
【特許文献2】特開平5−21760号公報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のサイズより大きいセルサイズを有する第1のセルと、上記サイズ以下のセルサイズを有する第2のセルとを含む設計対象の回路のフロアプランに用いるフロアプランデータを生成して出力する制御手段を備えたフロアプランデータ生成装置において、
(a)上記回路全体の回路情報をレジスタトランスファレベルで記述したRTL(Register Transfer Level)記述データと、(b)上記第1のセルの仕様データ及び上記第2のセルの仕様データを含む図形データである全体ライブラリと、(c)上記第1のセルのみの回路情報をゲートレベルで記述した簡易ネットリストと、(d)上記第1のセルのみの仕様データを含むセルリストとを予め格納する記憶手段を備え、
上記制御手段は、
上記セルリストを図形データである簡易ライブラリに変換し、
上記簡易ライブラリと上記簡易ネットリストとを用いて上記第1のセルの配置情報を含む仮フロアプランデータを生成し、
上記仮フロアプランデータの生成後に、上記RTL記述データを、上記第1及び第2のセルの回路情報をゲートレベルで記述した全体ネットリストに論理合成し、
上記全体ネットリストと上記簡易ネットリストとに基づいて、上記簡易ネットリストを上記全体ネットリストに整合させるためのマッチングリストを生成し、
上記全体ライブラリと、上記全体ネットリストと、上記マッチングリストと、上記仮フロアプランデータとを、上記フロアプランデータとして出力することを特徴とするフロアプランデータ生成装置。
【請求項2】
上記セルリストは、エクセル(登録商標)形式の表データであることを特徴とする請求項1記載のフロアプランデータ生成装置。
【請求項3】
所定のサイズより大きいセルサイズを有する第1のセルと、上記サイズ以下のセルサイズを有する第2のセルとを含む設計対象の回路のフロアプランに用いるフロアプランデータを生成して出力する制御手段を備えたフロアプランデータ生成装置のためのフロアプランデータ生成方法において、
上記フロアプランデータ生成装置は、(a)上記回路全体の回路情報をレジスタトランスファレベルで記述したRTL(Register Transfer Level)記述データと、(b)上記第1のセルの仕様データ及び上記第2のセルの仕様データを含む図形データである全体ライブラリと、(c)上記第1のセルのみの回路情報をゲートレベルで記述した簡易ネットリストと、(d)上記第1のセルのみの仕様データを含むセルリストとを予め格納する記憶手段を備え、
上記フロアプランデータ生成方法は、
上記制御手段が、上記セルリストを図形データである簡易ライブラリに変換するステップと、
上記制御手段が、上記簡易ライブラリと上記簡易ネットリストとを用いて上記第1のセルの配置情報を含む仮フロアプランデータを生成するステップと、
上記制御手段が、上記仮フロアプランデータの生成後に、上記RTL記述データを、上記第1及び第2のセルの回路情報をゲートレベルで記述した全体ネットリストに論理合成するステップと、
上記制御手段が、上記全体ネットリストと上記簡易ネットリストとに基づいて、上記簡易ネットリストを上記全体ネットリストに整合させるためのマッチングリストを生成するステップと、
上記制御手段が、上記全体ライブラリと、上記全体ネットリストと、上記マッチングリストと、上記仮フロアプランデータとを、上記フロアプランデータとして出力するステップとを含むことを特徴とするフロアプランデータ生成方法。
【請求項4】
上記セルリストは、エクセル(登録商標)形式の表データであることを特徴とする請求項3記載のフロアプランデータ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−192172(P2011−192172A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59560(P2010−59560)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】