説明

ブラシ付きモータの製造方法及び製造システム並びにブラシホルダの保持構造、ブラシ付きモータ

【課題】電機子の中心軸とブラシホルダの中心との一致精度を向上させると共に、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させる。
【解決手段】モータハウジング14にブラシホルダ22を載置した状態で、軸受収容部50と周方向壁部88に入れ子118を挿入して軸受収容部50の中心軸Lと複数のブラシ62の中心部Oとを一致させる。また、入れ子118をモータハウジング14に対して周方向に位置決めした状態で、入れ子118に形成された位置決め突起122とブラシホルダ22に形成された溝部94とを周方向に係合させることにより、複数のブラシ62をモータハウジング14の周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させる。そして、モータハウジング14とモータヨーク16とを互いに周方向に位置決めした状態で固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付きモータの製造方法及び製造システム並びにブラシホルダの保持構造、ブラシ付きモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシホルダの保持構造としては、例えば、次のものがある(特許文献1参照)。すなわち、特許文献1に記載の技術では、ブラシ装置に備えられた基板に切り欠き部が形成されており、この切り欠き部には、フローティングゴムが嵌め込まれている。また、フローティングゴムには、孔部が形成されており、この孔部には、円筒状のカラーが挿入されている。そして、このカラーにネジが挿入され、このネジがハウジングのネジ孔に螺入されることで、ブラシ装置がハウジングに固定されている。
【特許文献1】特開2003−37963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、例えば、フローティングゴムが撓んだ状態でブラシ装置がハウジングに固定される場合がある。この場合には、電機子の中心軸とブラシホルダの中心との一致精度が低下したり、ブラシホルダのモータハウジングに対する取付位置が周方向にずれたりする。
【0004】
ここで、電機子の中心軸とブラシホルダの中心との一致精度が低下した場合には、ブラシの整流子への接触位置がずれて、整流状態の悪化を伴って磁気音が発生したり、ブラシの整流子への接触圧が十分に得られないことに伴ってブラシが暴れてブラシ音が発生したりする。
【0005】
一方、モータハウジングには、モータヨークがネジ止め固定され、このモータヨークの内周面には、マグネットが固定されているが、上述のように、ブラシホルダのモータハウジングに対する取付位置が周方向にずれた場合には、複数のブラシがマグネットの磁極に対して周方向にずれて配置されることになる。この場合には、ブラシ及び整流子による電流切替タイミング、すなわち、各巻線に磁界が発生するタイミングと、各巻線がマグネットの磁極を通過するタイミングとにずれが生じ、巻線に生じる磁界とマグネットの磁界との吸引反発力の低下に伴ってモータトルクが低下したり、振動や騒音の原因となるトルクリップルが発生したりする。
【0006】
さらに、特許文献1に記載の技術では、フローティングゴムがネジの周辺部のみに設けられており、フローティングゴムとブラシホルダの基板との接触面積が小さい。このため、ブラシホルダがモータハウジングに(電機子の回転軸に対して)傾いて固定される場合がある。この場合にも、ブラシの整流子に対する接触角度や相対位置にずれが生じ、ブラシの整流子への接触状態が悪化する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、電機子の中心軸とブラシホルダの中心との一致精度を向上させると共に、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させることにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、ブラシホルダをモータハウジングに電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で保持させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のブラシ付きモータの製造方法は、モータハウジングに形成された支持部にブラシホルダを載置する第一工程と、前記モータハウジングに形成された軸受収容部と前記ブラシホルダに形成された被装着部とに治具を装着することにより、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して前記軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めして前記軸受収容部の中心軸と前記ブラシホルダに同心状に設けられた複数のブラシの中心部とを一致させると共に前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して周方向に位置決めして前記複数のブラシを前記モータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させる第二工程と、前記軸受収容部と前記被装着部とに前記治具を装着した状態で前記ブラシホルダを前記モータハウジングに固定する第三工程と、前記軸受収容部及び前記被装着部から前記治具を取り外して、前記モータハウジングに電機子のモータシャフトを収容すると共に前記モータシャフトが挿入された軸受を前記軸受収容部に収容する第四工程と、内周面にマグネットが固定されたモータヨーク及び前記モータハウジングに前記電機子を回転可能に収容し、前記モータハウジングと前記モータヨークとを互いに周方向に位置決めした状態で固定する第五工程と、を含む。
【0010】
請求項1に記載のブラシ付きモータの製造方法では、第二工程において、モータハウジングに形成された軸受収容部とブラシホルダに形成された被装着部とに治具を装着してブラシホルダをモータハウジングに対して軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めし、軸受収容部の中心軸と複数のブラシの中心部(ブラシホルダの中心)とを一致させる。すなわち、換言すれば、モータハウジングに形成された軸受収容部を基準にブラシホルダの芯出しを行う。従って、例えば、モータハウジングにおける軸受収容部以外の部分を基準にブラシホルダの芯出しを行う場合に比して、軸受収容部に軸受を介して支持される電機子の中心軸とブラシホルダの中心(すなわち、整流子の中心軸と複数のブラシの中心部)との一致精度を向上させることができる。
【0011】
また、請求項1に記載のブラシ付きモータの製造方法では、第二工程において治具を用いてブラシホルダをモータハウジングに対して周方向に位置決めし、これにより、複数のブラシをモータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させる。そして、第三工程において、軸受収容部と被装着部とに治具を装着した状態で、すなわち、第二工程における位置決め状態を維持した状態で、ブラシホルダをモータハウジングに固定する。従って、複数のブラシのモータハウジングに対する周方向への位置ずれを防止して、複数のブラシをモータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ精度良く配置させることができる。
【0012】
そして、第五工程において、ブラシが周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置されたモータハウジングと、内周面にマグネットが固定されたモータヨークとを固定するが、このときに、モータハウジングとモータヨークと互いに周方向に位置決めする。この結果、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させることができる。
【0013】
このように、請求項1に記載のブラシ付きモータの製造方法によれば、電機子の中心軸とブラシホルダの中心(すなわち、整流子の中心軸と複数のブラシの中心部)との一致精度を向上させることができると共に、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させることができる。
【0014】
なお、請求項2に記載のブラシ付きモータの製造方法のように、上述の第二工程において、例えば、前記複数のブラシの中心部と同軸状となるように前記ブラシホルダに形成された前記被装着部としての周方向壁部の内周面と前記軸受収容部の内周面とに前記治具としての入れ子の外周面が接するように前記周方向壁部と前記軸受収容部に前記入れ子を挿入することにより、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して前記軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めして前記軸受収容部の中心軸と前記複数のブラシの中心部とを一致させると共に、前記入れ子を前記モータハウジングに対して周方向に位置決めした状態で前記入れ子に形成された係合部と前記ブラシホルダに形成された被係合部とを周方向に係合させることにより、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して周方向に位置決めして前記複数のブラシを前記モータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させると好適である。
【0015】
請求項3に記載のブラシ付きモータの製造方法は、前記第一工程において、前記支持部に形成され前記軸受収容部の軸方向と直交する第一当接面と、前記ブラシホルダに前記第一当接面と前記軸受収容部の軸方向に対向して形成された第二当接面とを当接させ、前記第三工程において、前記第一当接面と前記第二当接面との当接状態を維持した状態で前記ブラシホルダを前記モータハウジングに固定する方法である。
【0016】
請求項3に記載のブラシ付きモータの製造方法によれば、第一工程においてブラシホルダを支持部に載置する際に、支持部に形成された第一当接面とブラシホルダに形成された第二当接面とを当接させるので、ブラシホルダをモータハウジングの支持部に電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で載置することができる。そして、第三工程において、この第一当接面と第二当接面との当接状態を維持した状態でブラシホルダをモータハウジングに固定するので、ブラシホルダをモータハウジングに電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で保持させることができる。
【0017】
また、前記課題を解決するために、請求項4に記載のブラシ付きモータの製造システムは、モータハウジングを保持するモータハウジング保持装置と、前記モータハウジングに形成された支持部にブラシホルダを載置するブラシホルダ組付装置と、前記モータハウジングに形成された軸受収容部と前記ブラシホルダに形成された被装着部とに装着されることにより、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して前記軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めして前記軸受収容部の中心軸と前記ブラシホルダに同心状に設けられた複数のブラシの中心部とを一致させると共に前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して周方向に位置決めして前記複数のブラシを前記モータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させる治具と、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに固定するブラシホルダ固定装置と、前記モータハウジングに電機子のモータシャフトを収容すると共に前記モータシャフトが挿入された軸受を前記軸受収容部に収容する電機子組付装置と、前記モータハウジングにモータヨークを組み付けるモータヨーク組付装置と、前記モータハウジングと前記モータヨークとを互いに周方向に位置決めした状態で固定するモータヨーク固定装置と、を備える。
【0018】
請求項4に記載のブラシ付きモータの製造システムでは、例えば、以下の要領により、ブラシ付きモータが製造される。すなわち、モータハウジング保持装置によってモータハウジングが保持された状態で、このモータハウジングに形成された支持部にブラシホルダがブラシホルダ組付装置によって載置される(第一工程)。
【0019】
続いて、モータハウジングに形成された軸受収容部とブラシホルダに形成された被装着部とに治具が装着される。そして、この治具により、ブラシホルダがモータハウジングに対して軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めされて、軸受収容部の中心軸と複数のブラシの中心部(ブラシホルダの中心)とが一致される。また、これと共に、上述の治具により、ブラシホルダがモータハウジングに対して周方向に位置決めされて、複数のブラシがモータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置される(第二工程)。
【0020】
そして、軸受収容部と被装着部とに治具が装着された状態で、ブラシホルダ固定装置によってブラシホルダがモータハウジングに位置決めされた状態で固定される(第三工程)。
【0021】
続いて、軸受収容部及び被装着部から治具が取り外され、電機子組付装置によってモータハウジングに電機子のモータシャフトが収容されると共にモータシャフトが挿入された軸受が軸受収容部に収容される(第四工程)。
【0022】
そして、モータヨーク組付装置によってモータハウジングにモータヨークが組み付けられ、モータヨーク固定装置によってモータハウジングとモータヨークとが互いに周方向に位置決めされた状態で固定される(第五工程)。以上の要領により、ブラシ付きモータは製造される。
【0023】
ここで、請求項4に記載のブラシ付きモータの製造システムでは、上述のように、モータハウジングに形成された軸受収容部とブラシホルダに形成された被装着部とに治具が装着されることにより、ブラシホルダがモータハウジングに対して軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めされ、軸受収容部の中心軸と複数のブラシの中心部(ブラシホルダの中心)とが一致される。すなわち、換言すれば、モータハウジングに形成された軸受収容部を基準にブラシホルダの芯出しが行われる。従って、例えば、モータハウジングにおける軸受収容部以外の部分を基準にブラシホルダの芯出しが行われる場合に比して、軸受収容部に軸受を介して支持される電機子の中心軸とブラシホルダの中心(すなわち、整流子の中心軸と複数のブラシの中心部)との一致精度を向上させることができる。
【0024】
また、請求項4に記載のブラシ付きモータの製造システムでは、上述のように、治具によってブラシホルダがモータハウジングに対して周方向に位置決めされ、これにより、複数のブラシがモータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置される。そして、軸受収容部と被装着部とに治具が装着された状態で、すなわち、上述のモータハウジングに対するブラシホルダの位置決め状態が維持された状態で、ブラシホルダ固定装置によって、ブラシホルダがモータハウジングに固定される。従って、複数のブラシのモータハウジングに対する周方向への位置ずれを防止して、複数のブラシをモータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ精度良く配置させることができる。
【0025】
そして、モータヨーク固定装置によって、ブラシが周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置されたモータハウジングと、内周面にマグネットが固定されたモータヨークとが固定されるが、このときに、モータハウジングとモータヨークとが互いに周方向に位置決めされる。この結果、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させることができる。
【0026】
このように、請求項4に記載のブラシ付きモータの製造システムによれば、電機子の中心軸とブラシホルダの中心(すなわち、整流子の中心軸と複数のブラシの中心部)との一致精度を向上させることができると共に、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させることができる。
【0027】
なお、請求項5に記載のブラシ付きモータの製造システムのように、上述の治具として、例えば、前記複数のブラシの中心部と同軸状となるように前記ブラシホルダに形成された前記被装着部としての周方向壁部の内周面と前記軸受収容部の内周面とに外周面が接するように前記周方向壁部と前記軸受収容部に挿入される本体部と、前記本体部に形成され、前記ブラシホルダに形成された被係合部と周方向に係合される係合部と、を有する入れ子が用いられると好適である。
【0028】
請求項6に記載のブラシ付きモータの製造システムは、請求項4又は請求項5に記載のブラシ付きモータの製造システムにおいて、前記ブラシホルダ組付装置が、前記支持部に形成され前記軸受収容部の軸方向と直交する第一当接面と、前記ブラシホルダに前記第一当接面と前記軸受収容部の軸方向に対向して形成された第二当接面とが当接されるように、前記支持部に前記ブラシホルダを載置し、前記ブラシホルダ固定装置が、前記第一当接面と前記第二当接面との当接状態を維持した状態で前記ブラシホルダを前記モータハウジングに固定する、構成である。
【0029】
請求項6に記載のブラシ付きモータの製造システムでは、支持部に形成された第一当接面とブラシホルダに形成された第二当接面とが当接されるようにブラシホルダ組付装置によってブラシホルダが支持部に載置され、この第一当接面と第二当接面との当接状態を維持した状態でブラシホルダがモータハウジングにブラシホルダ固定装置によって固定される。
【0030】
このように、請求項6に記載のブラシ付きモータの製造システムによれば、ブラシホルダ組付装置によってブラシホルダが支持部に載置される際に、支持部に形成された第一当接面とブラシホルダに形成された第二当接面とが当接されるので、ブラシホルダをモータハウジングの支持部に電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で載置することができる。そして、ブラシホルダ固定装置によって、この第一当接面と第二当接面との当接状態を維持した状態でブラシホルダがモータハウジングに固定されるので、ブラシホルダをモータハウジングに電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で保持させることができる。
【0031】
また、前記課題を解決するために、請求項7に記載のブラシホルダの保持構造は、モータハウジングにおけるモータヨーク側であって軸受収容部の周囲に設けられた支持部と、前記支持部に対する前記モータヨーク側に配置されたブラシホルダに設けられ、前記支持部に支持された被支持部と、前記モータハウジングに形成された固定部と、前記ブラシホルダに形成され、前記固定部に固定された被固定部と、前記ブラシホルダに同心状に設けられた複数のブラシの中心部と同軸状となるように前記ブラシホルダに形成された周方向壁部と、前記ブラシホルダに形成された被係合部と、を備える。
【0032】
請求項7に記載のブラシホルダの保持構造では、例えば、以下の要領により、ブラシホルダがモータハウジングに保持される。すなわち、モータハウジングに形成された支持部にブラシホルダが載置され、ブラシホルダに形成された周方向壁部の内周面とモータハウジングに形成された軸受収容部の内周面とに治具としての入れ子の外周面が接するように周方向壁部と軸受収容部に上述の入れ子が挿入される。そして、この入れ子により、ブラシホルダがモータハウジングに対して軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めされて、軸受収容部の中心軸と複数のブラシの中心部(ブラシホルダの中心)とが一致される。
【0033】
また、これと共に、上述の入れ子がモータハウジングに対して周方向に位置決めされた状態で、この入れ子に形成された係合部とブラシホルダに形成された被係合部とが周方向に係合される。そして、この係合部と被係合部の係合により、ブラシホルダがモータハウジングに対して周方向に位置決めされて、複数のブラシがモータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置される。
【0034】
そして、周方向壁部と軸受収容部に入れ子が挿入された状態で、ブラシホルダがモータハウジングに固定される。以上の要領により、ブラシホルダはモータハウジングに保持される。
【0035】
ここで、請求項7に記載のブラシホルダの保持構造では、上述のように、モータハウジングに形成された軸受収容部とブラシホルダに形成された周方向壁部とに入れ子を挿入してブラシホルダをモータハウジングに対して軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めし、軸受収容部の中心軸と複数のブラシの中心部(ブラシホルダの中心)とを一致させることができる。すなわち、換言すれば、モータハウジングに形成された軸受収容部を基準にブラシホルダの芯出しを行うことができる。従って、例えば、モータハウジングにおける軸受収容部以外の部分を基準にブラシホルダの芯出しを行う場合に比して、軸受収容部に軸受を介して支持される電機子の中心軸とブラシホルダの中心(すなわち、整流子の中心軸と複数のブラシの中心部)との一致精度を向上させることができる。
【0036】
また、請求項7に記載のブラシホルダの保持構造では、上述のように、入れ子を用いてブラシホルダをモータハウジングに対して周方向に位置決めし、これにより、複数のブラシをモータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させることができる。従って、ブラシホルダを上述の周方向への位置決め状態を維持した状態でモータハウジングに固定すれば、複数のブラシのモータハウジングに対する周方向への位置ずれを防止して、複数のブラシをモータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ精度良く配置させることができる。
【0037】
そして、その後、上述のようにブラシが周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置されたモータハウジングと、内周面にマグネットが固定されたモータヨークとを固定する際に、モータハウジングとモータヨークと互いに周方向に位置決めすれば、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させることができる。
【0038】
このように、請求項7に記載のブラシホルダの保持構造よれば、電機子の中心軸とブラシホルダの中心(すなわち、整流子の中心軸と複数のブラシの中心部)との一致精度を向上させることができると共に、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させることができる。
【0039】
請求項8に記載のブラシホルダの保持構造は、請求項7に記載のブラシホルダの保持構造において、前記支持部に形成され前記軸受収容部の軸方向と直交する第一当接面と、前記被支持部に前記第一当接面と前記軸受収容部の軸方向に対向して形成されて前記第一当接面と当接された第二当接面と、をさらに備える。
【0040】
請求項8に記載のブラシホルダの保持構造によれば、支持部に形成された第一当接面と被支持部に形成された第二当接面とが当接されることにより、ブラシホルダをモータハウジングの支持部に電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で載置することができる。そして、この第一当接面と第二当接面との当接状態を維持した状態でブラシホルダがモータハウジングに固定されれば、ブラシホルダをモータハウジングに電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で保持させることができる。
【0041】
また、前記課題を解決するために、請求項9に記載のブラシ付きモータは、モータシャフト、コア、巻線、整流子を有して構成された電機子と、前記電機子を収容し支持するモータハウジング及びモータヨークと、前記整流子に押圧されたブラシを保持すると共に、請求項7又は請求項8に記載のブラシホルダの保持構造によって前記モータハウジングに保持されたブラシホルダと、を備える。
【0042】
請求項9に記載のブラシ付きモータによれば、少なくとも請求項7に記載のブラシホルダの保持構造を備えているので、電機子の中心軸とブラシホルダの中心(すなわち、整流子の中心軸と複数のブラシの中心部)との一致精度を向上させることができると共に、複数のブラシをマグネットの磁極に対して周方向に精度良く配置させることができる。また、請求項8に記載のブラシホルダの保持構造を備えれば、ブラシホルダをモータハウジングに電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で保持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0044】
図1〜図5には、本発明の一実施形態に係るブラシホルダの保持構造10が適用されたブラシ付きモータ12の構成が示されている。これらの図に示されるブラシ付きモータ12は、例えば、車両用ワイパ装置に組み込まれるワイパモータとして好適に用いられるものであり、次の構成とされている。
【0045】
すなわち、このブラシ付きモータ12は、図1に示されるように、モータハウジング14と、モータヨーク16と、電機子18と、減速機構20と、ブラシホルダ22とを主要な構成として備えている。
【0046】
モータハウジング14には、図3に示されるように、外周部24から径方向外側に延びるフランジ部26が外周部24に沿って形成されている。このフランジ部26には、周方向における二箇所の位置に締結部28が形成されており、この締結部28には、ネジ孔30が形成されている。一方、モータヨーク16には、図4に示されるように、外周部32から径方向外側に延びるフランジ部34が外周部32に沿って形成されている。このフランジ部34には、上述の締結部28と整合する位置に被締結部36が形成されており、この被締結部36には、貫通孔38が形成されている。
【0047】
そして、モータハウジング14及びモータヨーク16は、図5に示されるように、フランジ部26とフランジ部34とを合わせた状態で、モータヨーク16側から貫通孔38にネジ40を挿入し、このネジ40をネジ孔30に螺入することで、一体に組み付けられている。
【0048】
電機子18は、図1に示されるように、モータシャフト42、コア44、巻線46、整流子48を有して構成されており、上述のモータハウジング14及びモータヨーク16の内部に回転可能に収容されている。モータシャフト42は、モータハウジング14に形成された軸受収容部50及びモータヨーク16に形成された軸受収容部52にそれぞれ収容された軸受54,56によって回転可能に支持されている。
【0049】
コア44は、モータヨーク16の内周面に固定されたマグネット58とモータシャフト42の径方向に対向して配置されており、整流子48には、ブラシホルダ22に一体又は別体に設けられたブラシボックス60によって保持されたブラシ62が押圧されている。
【0050】
また、モータハウジング14には、モータシャフト42の先端部に形成されたウォームギア64とで減速機構20を構成するウォームホイール66が回転可能に収容されており、このウォームホイール66には、出力シャフト68が一体回転可能に設けられている。
【0051】
そして、このブラシ付きモータ12では、ブラシ62からの電流が整流子48によって切り替えられて各巻線46へ供給され、巻線46に生じる磁界とマグネット58の磁界が吸引又は反発することで電機子18が回転される。また、電機子18の回転に伴ってウォームギア64が回転されると、このウォームギア64の回転力がウォームホイール66に伝達されてウォームホイール66と共に出力シャフト68が回転される。
【0052】
続いて、ブラシ付きモータ12の特徴的な構成について説明する。
【0053】
図2に示されるように、モータハウジング14におけるモータヨーク16側であって軸受収容部50の周囲には、支持部70が環状に形成されている。この支持部70には、モータシャフト42の軸方向に沿ってモータヨーク16側に延びる固定部としてのボス部72が形成されており、このボス部72には、ネジ孔74が形成されている。また、この支持部70におけるモータヨーク16側には、モータシャフト42の軸方向(軸受収容部50の軸方向と同一)と直交する平面の第一当接面70Aが環状に形成されている。
【0054】
一方、ブラシホルダ22は、上述の支持部70に対するモータヨーク16側に配置されており、円盤状のホルダ本体部76を有して構成されている。そして、このホルダ本体部76におけるモータシャフト42の径方向両側には、例えば、ゴム等の弾性体により形成された弾性支持部78が一対設けられている。
【0055】
弾性支持部78は、ホルダ本体部76における支持部70側の面に設けられた被支持部としての第一弾性支持部80と、ホルダ本体部76におけるモータヨーク16側の面に設けられた被固定部としての第二弾性支持部82と、ホルダ本体部76に形成された孔部83を介して第一弾性支持部80と第二弾性支持部82とを連結する連結部84とを有する構成とされている。この弾性支持部78は、例えば加硫成形等によって形成されることでブラシホルダ22に一体的に固定されている。
【0056】
また、第一弾性支持部80における支持部70側には、モータシャフト42の軸方向と直交する平面の第二当接面80Aが上述の第一当接面70Aとモータシャフト42の軸方向に対向して形成されており、連結部84には、上述のボス部72が遊挿される大きさ及び形状の孔部86が形成されている。
【0057】
そして、ブラシホルダ22は、孔部86にボス部72が挿入されると共に第一当接面70Aと第二当接面80Aが当接された状態で、ネジ87がモータヨーク16側から孔部86を介してボス部72のネジ孔74に螺入されることで、モータハウジング14に一体に組み付けられている。
【0058】
また、図3に示されるように、ブラシホルダ22には、ホルダ本体部76の周方向に沿って被装着部としての周方向壁部88が形成されている。この周方向壁部88は、ブラシホルダ22に同心状に設けられた複数のブラシ62の中心部Oと同軸状に形成されると共に、図2に示されるように、ホルダ本体部76からモータシャフト42の軸方向両側に突出して形成されている。
【0059】
なお、図2に示されるように、この周方向壁部88の内周面は、整流子48を回転可能に収容するためにホルダ本体部76に形成された孔部90の内周面とモータシャフト42の軸方向に連続的に形成されている。また、図3に示されるように、周方向壁部88には、ブラシ62を径方向内側に突出させるための切り欠き部92がブラシ62と対応する位置に形成されている。
【0060】
さらに、ブラシホルダ22には、図3に示されるように、ホルダ本体部76に形成された孔部90の内周面及び周方向壁部88の内周面に被係合部としての溝部94が形成されている。この溝部94は、平面視にてV字状に形成されると共に、ホルダ本体部76の板厚方向(モータシャフト42の軸方向と同一)に沿って形成されている。
【0061】
次に、上記構成からなるブラシ付きモータ12を製造するための製造システム100について説明する。
【0062】
図6には、本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータ12を製造するための製造システム100が示されている。この図に示されるように、製造システム100は、自動搬送装置102、モータハウジング保持装置104、ブラシホルダ組付装置106、位置決め装置108、ブラシホルダ固定装置110、電機子組付装置112、モータヨーク組付装置114、モータヨーク固定装置116を有して構成されている。
【0063】
自動搬送装置102は、後述するモータハウジング保持装置104と共にモータハウジング14を各工程に搬送するためのものであり、例えば、コンベア装置等により構成されている。モータハウジング保持装置104は、モータハウジング14を保持するためのものであり、例えばパレット等により構成されている。ブラシホルダ組付装置106は、ブラシ62等が実装された完成品のブラシホルダ22をモータハウジング14に形成された支持部70に載置するためのものであり、例えば部品自動組付ロボット等により構成されている。
【0064】
位置決め装置108は、支持部70に載置されたブラシホルダ22をモータハウジング14に対して位置決めするためのものであり、治具としての入れ子118と、この入れ子118をモータハウジング14の軸受収容部50及びブラシホルダ22の周方向壁部88に出し入れするためのアクチュエータ等を有して構成されている。なお、入れ子については後に詳述する。
【0065】
ブラシホルダ固定装置110は、ブラシホルダ22をモータハウジング14に固定するためのものであり、ネジ87をボス部72のネジ孔74に螺入する自動ネジ締め装置等により構成されている。電機子組付装置112は、完成品の電機子18のモータシャフト42をモータハウジング14に収容すると共にモータシャフト42が挿入された軸受54を軸受収容部50に収容するためのものであり、例えば部品自動組付ロボット等により構成されている。
【0066】
モータヨーク組付装置114は、モータハウジング14にモータヨーク16を組み付けるためのものであり、例えば部品自動組付ロボット等により構成されている。モータヨーク固定装置116は、モータハウジング14とモータヨーク16とを互いに周方向に位置決めした状態で固定するためのものであり、ネジ40を貫通孔38に挿入し、このネジ40をネジ孔30に螺入する自動ネジ締め装置等により構成されている。
【0067】
なお、特に図示していないが、製造システム100には、モータハウジング14にウォームホイール66や出力シャフト68を組み付ける減速機構組付装置や、その他の必要な装置が備えられている。
【0068】
ここで、図7には、上述の位置決め装置108に備えられた入れ子118が詳細に示されている。入れ子118は、本体部120と、係合部としての位置決め突起122を有して構成されている。
【0069】
本体部120は、円柱状に形成されており、後に詳述するように、周方向壁部88と軸受収容部50に挿入された際に、周方向壁部88の内周面と軸受収容部50の内周面とに外周面が接するように、その大きさ及び形状が設定されている。一方、位置決め突起122は、上述の溝部94と周方向に係合されるものであり、本体部120の外周面から径方向外側に向けて突出されると共に、本体部120の軸方向に沿って形成されている。
【0070】
次に、上記構成からなる製造システム100を用いてブラシ付きモータ12を製造する方法について説明する。
【0071】
本発明の一実施形態に係る製造システム100では、例えば、以下の要領により、ブラシ付きモータ12が製造される。図8A〜図12には、ブラシ付きモータ12を製造する過程が示されている。なお、以下の説明中における製造システム100の各装置については図6を参照することとする。
【0072】
(第一工程)
すなわち、図8A,図8Bに示されるように、モータハウジング保持装置104によってモータハウジング14が保持された状態で、孔部86にボス部72が挿入されると共に、第一当接面70Aと第二当接面80Aとが当接されるように、ブラシホルダ22がブラシホルダ組付装置106によって支持部70に載置される。
【0073】
なお、このとき、ボス部72は孔部86に遊挿(隙間を有して挿入)されている。従って、ブラシホルダ22は、ボス部72の外周面と孔部86の内周面とが干渉しない範囲で、モータハウジング14に対して軸受収容部50の軸方向と直交方向(すなわち、図8Bの矢印X方向及び矢印Y方向)に移動可能であると共に、軸受収容部50の周方向(すなわち、図8Bの矢印R方向)に回動可能とされている。
【0074】
(第二工程)
続いて、図9A,図9Bに示されるように、周方向壁部88の内周面と軸受収容部50の内周面とに本体部120の外周面が接するように周方向壁部88と軸受収容部50に入れ子118が挿入される。そして、この入れ子118により、ブラシホルダ22がモータハウジング14に対して軸受収容部50の軸方向と直交方向(すなわち、図9Bの矢印X方向及び矢印Y方向)に位置決めされて、軸受収容部50の中心軸Lと複数のブラシ62の中心部O(ブラシホルダ22の中心)とが一致される。
【0075】
また、これと共に、入れ子118がモータハウジング14(モータハウジング保持装置104)に対して周方向に位置決めされた状態で、この入れ子118に形成された位置決め突起122とブラシホルダ22に形成された溝部94とが周方向に係合される。そして、この位置決め突起122と溝部94の係合により、ブラシホルダ22がモータハウジング14に対して周方向(すなわち、図9Bの矢印R方向)に位置決めされて、複数のブラシ62がモータハウジング14の周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置される。
【0076】
(第三工程)
そして、図10A,図10Bに示されるように、周方向壁部88と軸受収容部50に入れ子118が挿入された状態で、ブラシホルダ固定装置110によってネジ87がボス部72のネジ孔74に螺入されることで、ブラシホルダ22がモータハウジング14に位置決めされた状態で固定される。また、このとき、ブラシホルダ22は、第一当接面70Aと第二当接面80Aとの当接状態が維持された状態でモータハウジング14に固定される。
【0077】
(第四工程)
続いて、軸受収容部50及び周方向壁部88から上述の入れ子118が取り外され、図11に示されるように、電機子組付装置112によってモータハウジング14に電機子18のモータシャフト42が収容されると共にモータシャフト42が挿入された軸受54が軸受収容部50に収容される。
【0078】
(第五工程)
そして、図12に示されるように、モータヨーク組付装置114によってモータハウジング14にモータヨーク16が組み付けられる。このとき、フランジ部26とフランジ部34とが合わせられて締結部28と被締結部36(図3〜図5参照)が整合される。そして、この状態で、図5に示されるように、モータヨーク固定装置116によってモータヨーク16側から貫通孔38にネジ40が挿入されて、このネジ40がネジ孔30に螺入される。これにより、モータハウジング14とモータヨーク16とが互いに周方向に位置決めされた状態で固定される。
【0079】
そして、減速機構組付装置によってモータハウジング14にウォームホイール66や出力シャフト68が組み付けられると共に、その他の必要な部品が組み付けられて、ブラシ付きモータ12が完成される。
【0080】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0081】
本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータ12の製造方法では、第二工程において、モータハウジング14に形成された軸受収容部50とブラシホルダ22に形成された周方向壁部88とに入れ子118を挿入してブラシホルダ22をモータハウジング14に対して軸受収容部50の軸方向と直交方向に位置決めし、軸受収容部50の中心軸Lと複数のブラシ62の中心部O(ブラシホルダ22の中心)とを一致させる。すなわち、換言すれば、モータハウジング14に形成された軸受収容部50を基準にブラシホルダ22の芯出しを行う。従って、例えば、モータハウジング14における軸受収容部50以外の部分を基準にブラシホルダ22の芯出しを行う場合に比して、軸受収容部50に軸受54を介して支持される電機子18の中心軸とブラシホルダ22の中心(すなわち、整流子48の中心軸Lと複数のブラシ62の中心部O)との一致精度を向上させることができる。
【0082】
また、本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータ12の製造方法では、第二工程において、入れ子118に形成された位置決め突起122とブラシホルダ22に形成された溝部94とを周方向に係合させてブラシホルダ22をモータハウジング14に対して周方向に位置決めし、これにより、複数のブラシ62をモータハウジング14の周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させる。そして、第三工程において、軸受収容部50と周方向壁部88に入れ子118を挿入した状態で、すなわち、第二工程における位置決め状態を維持した状態で、ブラシホルダ22をモータハウジング14に固定する。従って、複数のブラシ62のモータハウジング14に対する周方向への位置ずれを防止して、複数のブラシ62をモータハウジング14の周方向における予め定められた位置にそれぞれ精度良く配置させることができる。さらに、上記実施形態においては、弾性支持部78の軸方向高さは、ボス部72の軸方向高さよりも高く設定されているので、ネジ87が螺入されることでブラシホルダ22は弾性支持部78の圧縮状態で固定されるので、ボス部72が孔部86に遊挿されていても摩擦力により位置ズレが防止される。
【0083】
そして、第五工程において、ブラシ62が周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置されたモータハウジング14と、内周面にマグネット58が固定されたモータヨーク16とを固定するが、このときに、予め定められた周方向位置に設けられた締結部28と被締結部36を固定することで、モータハウジング14とモータヨーク16と互いに周方向に位置決めする。この結果、複数のブラシ62をマグネット58の磁極に対して周方向に精度良く配置させることができる。なお、モータハウジング14にモータヨーク16を固定する際、組付作業性の点からモータヨーク16の内周面に固定されたマグネット58は非着磁状態のものであることが好ましい。その場合、モータハウジング14とモータヨーク16とを固定した後に、モータヨーク16の外周面から着磁装置によりマグネット58に着磁を行う。
【0084】
さらに、本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータ12の製造方法では、第一工程においてブラシホルダ22を支持部70に載置する際に、支持部70に形成された第一当接面70Aと弾性支持部78に形成された第二当接面80Aとを当接させるので、ブラシホルダ22をモータハウジング14の支持部70に軸受収容部50の軸方向(電機子18の回転軸の軸線方向)に直交した状態(傾きを防止した状態)で載置することができる。そして、第三工程において、この第一当接面70Aと第二当接面80Aとの当接状態を維持した状態でブラシホルダ22をモータハウジング14に固定するので、ブラシホルダ22をモータハウジング14に軸受収容部50の軸方向(電機子18の回転軸の軸線方向)に直交した状態(傾きを防止した状態)で保持させることができる。
【0085】
このように、本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータ12の製造方法によれば、電機子18の中心軸とブラシホルダ22の中心(すなわち、整流子48の中心軸Lと複数のブラシ62の中心部O)との一致精度を向上させることができると共に、複数のブラシ62をマグネット58の磁極に対して周方向に精度良く配置させることができ、しかも、ブラシホルダ22をモータハウジング14に電機子の回転軸に直交した状態(傾きを防止した状態)で保持させることができる。これにより、磁気音やブラシ62音が発生したり、モータトルクの低下やトルクリップルが発生したりすることを抑制することができる。
【0086】
しかも、本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータ12の製造方法によれば、ブラシホルダ22に周方向壁部88と溝部94を追加すると共に、入れ子118を用いるという簡単な手法により、上記効果を奏することができる。従って、製造コストの増加も抑えることができるので、低コストで高品質のブラシ付きモータ12を提供することができる。
【0087】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0088】
例えば、上記実施形態において、周方向壁部88における軸受収容部50側は、図2に示されるように、第一弾性支持部80と略同一高さとされていたが、図13に示されるように、第一弾性支持部80よりも軸受収容部50側に突出されていても良い。このように構成されていると、周方向壁部88のモータハウジング14側の突出長さを抑えつつ、周方向壁部88全体の軸長(つまり、入れ子118の本体部120と接触される部分の長さ)を長くすることができるので、電機子18の中心軸とブラシホルダ22の中心との一致精度をより一層向上させることができる。
【0089】
また、上記実施形態において、周方向壁部88は、図2に示されるように、軸受収容部50と互いの内径寸法が略同一となるように形成されていたが、図14に示されるように、軸受収容部50よりも内径寸法が大きくなるように形成されていても良い。また、これに伴い、入れ子118の本体部120も、図14に示されるように、周方向壁部88に挿入される部分と軸受収容部50に挿入される部分の外径が異なるように構成されていても良い。
【0090】
また、上記実施形態において、溝部94は、ブラシホルダ22に一つだけ形成されていたが、図15に示されるように、ブラシホルダ22の周方向における複数箇所(この場合、二箇所)に形成されていても良い。また、これに伴い、入れ子118の位置決め突起122も溝部94の数に合わせて複数設けられていても良い。
【0091】
また、上記実施形態において、ブラシ付きモータ12の製造方法及び製造システム100は、ブラシホルダ22がモータハウジング14に弾性支持部78を介して支持される、所謂、フローティング支持構造が用いられたブラシ付きモータ12に適用されていたが、ブラシホルダ22がモータハウジング14に弾性支持部78を介さずに直接的に支持される構造を備えたブラシ付きモータに適用されても良い。
【0092】
また、上記実施形態において、ブラシ付きモータ12の製造方法は、製造システム10が用いられることにより自動的に行われていたが、製造システム10による各工程を手作業により行うようにしても良い。
【0093】
また、上記実施形態では、軸受収容部50と周方向壁部88に入れ子118が挿入されることにより、ブラシホルダ22がモータハウジング14に対して位置決めされていたが、ブラシホルダ22に周方向壁部88とは異なる形態の被装着部が形成されると共に、この被装着部と軸受収容部50に入れ子118とは異なる形態の治具が装着され、これにより、ブラシホルダ22がモータハウジング14に対して位置決めされても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータの側面断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1に示されるモータハウジング及びブラシホルダの平面図である。
【図4】図1に示されるモータヨークの底面図である。
【図5】図1に示されるモータハウジング及びモータヨークの側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータの製造システムの構成図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るブラシ付きモータの製造システムに用いられる入れ子(治具)の斜視図である。
【図8A】図1に示されるブラシ付きモータの製造過程(第一工程)を説明する図である。
【図8B】図1に示されるブラシ付きモータの製造過程(第一工程)を説明する図である。
【図9A】図1に示されるブラシ付きモータの製造過程(第二工程)を説明する図である。
【図9B】図1に示されるブラシ付きモータの製造過程(第二工程)を説明する図である。
【図10A】図1に示されるブラシ付きモータの製造過程(第三工程)を説明する図である。
【図10B】図1に示されるブラシ付きモータの製造過程(第三工程)を説明する図である。
【図11】図1に示されるブラシ付きモータの製造過程(第四工程)を説明する図である。
【図12】図1に示されるブラシ付きモータの製造過程(第五工程)を説明する図である。
【図13】本発明の一実施形態の変形例を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態の変形例を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
10…ブラシホルダの保持構造、12…ブラシ付きモータ、14…モータハウジング、16…モータヨーク、18…電機子、20…減速機構、22…ブラシホルダ、28…締結部、36…被締結部、42…モータシャフト、44…コア、46…巻線、48…整流子、50,52…軸受収容部、54,56…軸受、58…マグネット、60…ブラシボックス、62…ブラシ、64…ウォームギア、66…ウォームホイール、68…出力シャフト、70…支持部、70A…第一当接面、72…ボス部(固定部)、76…ホルダ本体部、78…弾性支持部、80…第一弾性支持部(被支持部)、80A…第二当接面、82…第二弾性支持部(被固定部)、84…連結部、88…周方向壁部(被装着部)、92…切り欠き部、94…溝部、100…製造システム、118…入れ子(治具)、120…本体部、122…突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングに形成された支持部にブラシホルダを載置する第一工程と、
前記モータハウジングに形成された軸受収容部と前記ブラシホルダに形成された被装着部とに治具を装着することにより、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して前記軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めして前記軸受収容部の中心軸と前記ブラシホルダに同心状に設けられた複数のブラシの中心部とを一致させると共に前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して周方向に位置決めして前記複数のブラシを前記モータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させる第二工程と、
前記軸受収容部と前記被装着部とに前記治具を装着した状態で前記ブラシホルダを前記モータハウジングに固定する第三工程と、
前記軸受収容部及び前記被装着部から前記治具を取り外して、前記モータハウジングに電機子のモータシャフトを収容すると共に前記モータシャフトが挿入された軸受を前記軸受収容部に収容する第四工程と、
内周面にマグネットが固定されたモータヨーク及び前記モータハウジングに前記電機子を回転可能に収容し、前記モータハウジングと前記モータヨークとを互いに周方向に位置決めした状態で固定する第五工程と、
を含むブラシ付きモータの製造方法。
【請求項2】
前記第二工程において、
前記複数のブラシの中心部と同軸状となるように前記ブラシホルダに形成された前記被装着部としての周方向壁部の内周面と前記軸受収容部の内周面とに前記治具としての入れ子の外周面が接するように前記周方向壁部と前記軸受収容部に前記入れ子を挿入することにより、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して前記軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めして前記軸受収容部の中心軸と前記複数のブラシの中心部とを一致させると共に、
前記入れ子を前記モータハウジングに対して周方向に位置決めした状態で前記入れ子に形成された係合部と前記ブラシホルダに形成された被係合部とを周方向に係合させることにより、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して周方向に位置決めして前記複数のブラシを前記モータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させる、
請求項1に記載のブラシ付きモータの製造方法。
【請求項3】
前記第一工程において、
前記支持部に形成され前記軸受収容部の軸方向と直交する第一当接面と、前記ブラシホルダに前記第一当接面と前記軸受収容部の軸方向に対向して形成された第二当接面とを当接させ、
前記第三工程において、
前記第一当接面と前記第二当接面との当接状態を維持した状態で前記ブラシホルダを前記モータハウジングに固定する、
請求項1又は請求項2に記載のブラシ付きモータの製造方法。
【請求項4】
モータハウジングを保持するモータハウジング保持装置と、
前記モータハウジングに形成された支持部にブラシホルダを載置するブラシホルダ組付装置と、
前記モータハウジングに形成された軸受収容部と前記ブラシホルダに形成された被装着部とに装着されることにより、前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して前記軸受収容部の軸方向と直交方向に位置決めして前記軸受収容部の中心軸と前記ブラシホルダに同心状に設けられた複数のブラシの中心部とを一致させると共に前記ブラシホルダを前記モータハウジングに対して周方向に位置決めして前記複数のブラシを前記モータハウジングの周方向における予め定められた位置にそれぞれ配置させる治具と、
前記ブラシホルダを前記モータハウジングに固定するブラシホルダ固定装置と、
前記モータハウジングに電機子のモータシャフトを収容すると共に前記モータシャフトが挿入された軸受を前記軸受収容部に収容する電機子組付装置と、
前記モータハウジングにモータヨークを組み付けるモータヨーク組付装置と、
前記モータハウジングと前記モータヨークとを互いに周方向に位置決めした状態で固定するモータヨーク固定装置と、
を備えたブラシ付きモータの製造システム。
【請求項5】
前記治具は、
前記複数のブラシの中心部と同軸状となるように前記ブラシホルダに形成された前記被装着部としての周方向壁部の内周面と前記軸受収容部の内周面とに外周面が接するように前記周方向壁部と前記軸受収容部に挿入される本体部と、
前記本体部に形成され、前記ブラシホルダに形成された被係合部と周方向に係合される係合部と、
を有する入れ子とされている、
請求項4に記載のブラシ付きモータの製造システム。
【請求項6】
前記ブラシホルダ組付装置は、
前記支持部に形成され前記軸受収容部の軸方向と直交する第一当接面と、前記ブラシホルダに前記第一当接面と前記軸受収容部の軸方向に対向して形成された第二当接面とが当接されるように、前記支持部に前記ブラシホルダを載置し、
前記ブラシホルダ固定装置は、
前記第一当接面と前記第二当接面との当接状態を維持した状態で前記ブラシホルダを前記モータハウジングに固定する、
請求項4又は請求項5に記載のブラシ付きモータの製造システム。
【請求項7】
モータハウジングにおけるモータヨーク側であって軸受収容部の周囲に設けられた支持部と、
前記支持部に対する前記モータヨーク側に配置されたブラシホルダに設けられ、前記支持部に支持された被支持部と、
前記モータハウジングに形成された固定部と、
前記ブラシホルダに形成され、前記固定部に固定された被固定部と、
前記ブラシホルダに同心状に設けられた複数のブラシの中心部と同軸状となるように前記ブラシホルダに形成された周方向壁部と、
前記ブラシホルダに形成された被係合部と、
を備えたブラシホルダの保持構造。
【請求項8】
前記支持部に形成され前記軸受収容部の軸方向と直交する第一当接面と、
前記被支持部に前記第一当接面と前記軸受収容部の軸方向に対向して形成されて前記第一当接面と当接された第二当接面と、
を備えた請求項7に記載のブラシホルダの保持構造。
【請求項9】
モータシャフト、コア、巻線、整流子を有して構成された電機子と、
前記電機子を収容し支持するモータハウジング及びモータヨークと、
前記整流子に押圧されたブラシを保持すると共に、請求項7又は請求項8に記載のブラシホルダの保持構造によって前記モータハウジングに保持されたブラシホルダと、
を備えたブラシ付きモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−278742(P2009−278742A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126302(P2008−126302)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】