ブレーキ装置
【課題】ブレーキ装置において、ノックバックによる応答性の低下を防止しつつ、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を防止する。
【解決手段】通常は、ブレーキペダル19の操作によってマスタシリンダ4で発生した液圧をディスクブレーキ2に直接供給して制動力を発生させる。また、コントローラ14によって液圧ポンプモータ7を作動させてディスクブレーキ2に液圧を供給することによって制動力を発生させることができる。急旋回等によってノックバックが生じた場合、ピストン16の後退を許容することにより、ブレーキパッド17及びディスクロータ18の偏摩耗を防止する。その後、ノックバックの要因が解除されたとき、コントローラ14によって液圧ポンプモータ7を作動させ、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整することにより、応答性の低下を防止する。
【解決手段】通常は、ブレーキペダル19の操作によってマスタシリンダ4で発生した液圧をディスクブレーキ2に直接供給して制動力を発生させる。また、コントローラ14によって液圧ポンプモータ7を作動させてディスクブレーキ2に液圧を供給することによって制動力を発生させることができる。急旋回等によってノックバックが生じた場合、ピストン16の後退を許容することにより、ブレーキパッド17及びディスクロータ18の偏摩耗を防止する。その後、ノックバックの要因が解除されたとき、コントローラ14によって液圧ポンプモータ7を作動させ、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整することにより、応答性の低下を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用のブレーキ装置において、車両の急旋回等によって車輪に大きな荷重が作用したとき、ディスクブレーキのディスクロータに倒れが生じてブレーキパットが押し戻されるいわゆるノックバックが発生することがある。また、悪路走行等による車輪およびその周辺部品の激しい振動によってブレーキキャリパが変位してブレーキパッドがディスクロータに接触することによってノックバックが生じることがある。このようなノックバックが生じると、パッドクリアランスが増大することにより、ブレーキ装置の応答性が低下し、また、ディスクロータとブレーキパッドとの不規則な接触によって、これらが偏摩耗し易くなり、問題となる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、ノックバックに対して、ブレーキキャリパのピストン位置を保持することにより、パッドクリアランスの増大を防止してブレーキ装置の応答性の低下を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−154931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものでは、次のような問題がある。ノックバックに対して、ブレーキキャリパのピストンの位置を保持すると、ディスクロータがブレーキパッドに不規則に接触することになり、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を助長してブレーキジャダーの原因となる虞がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ノックバックによる応答性の低下を防止しつつ、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を防止することができるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、ブレーキペダルの操作により、車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧する押圧手段を作動する第1の制動機構と、前記押圧手段を前記ブレーキペダルの操作とは関係なく作動可能な第2の制動機構と、該第2の制動機構の作動を制御する制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記押圧手段が前記ディスクロータから離間する方向へ移動する離間移動を検出する検出手段を備え、該検出手段によって前記押圧手段の離間移動が検出された後、該離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブレーキ装置によれば、ノックバックが生じたとき、ブレーキパッドの後退を許容することにより、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を防止することができ、また、ノックバックの要因が解除されたとき、ブレーキパッドの押圧手段を前進させることにより、応答性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すブレーキ装置において、ノックバックによるディスクブレーキのピストンの移動量と車両の横加速度との関係を示すグラフ図である。
【図3】図1に示すブレーキ装置において、液圧ポンプモータの吐出量とディスクブレーキのピストンの移動量との関係を示すグラフ図である。
【図4】図1に示すブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示すブレーキ装置において、コントローラのノックバック制御部による制御を示すタイムチャートである。
【図7】図5に示すブレーキ装置において、ノックバックによるディスクブレーキのピストンの移動量とシリンダ内の液圧との関係を示すグラフ図である。
【図8】図5に示すブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態に係るブレーキ装置において、コントローラのノックバック制御部による制御を示すタイムチャートである。
【図10】本発明の第3実施形態に係るブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第4実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図11に示すブレーキ装置のディスクブレーキを拡大して示す縦断面図である。
【図13】図11に示すブレーキ装置において、コントローラのノックバック制御部による制御を示すタイムチャートである。
【図14】図11に示すブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第5実施形態に係るブレーキ装置において、コントローラのノックバック制御部による制御を示すタイムチャートである。
【図16】本発明の第5実施形態に係るブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態について図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を図1に示す。図1に示すように、ブレーキ装置1は、各車輪に設けられたディスクブレーキ2(1輪分のみ図示する)と、ディスクブレーキ2に管路3を介して接続されたマスタシリンダ4(第1の制動機構、メインの制動機構)と、管路3に設けられた増圧弁5及びカット弁6と、管路3の増圧弁5とカット弁6と間に接続された液圧ポンプモータ7(液圧ポンプ、第2の制動機構、サブの制動機構)と、液圧ポンプモータ7とリザーバ8との間に設けられた供給弁9と、横加速度センサ10、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ13等の車両状態を検知するための各種センサ(ノックバック検出手段、検出手段)と、これらの各種センサの検出に基づいて増圧弁5、カット弁6、液圧ポンプモータ7及び供給弁9を制御するコントローラ14(制御手段)とを備えている。
【0011】
ディスクブレーキ2は、シリンダ15に液圧を供給してピストン16(押圧手段)を前進させ、ブレーキパッド17を車輪(図示せず)と共に回転するディスクロータ18に押圧して制動力を発生させる一般的な液圧ディスクブレーキである。
【0012】
マスタシリンダ4は、ブレーキペダル19の操作に応じて、ディスクブレーキ2に供給する液圧を発生させるものであり、適宜、気圧式倍力装置等の倍力装置を設けることによってブレーキペダル19の操作力を軽減することができる。
【0013】
増圧弁5及びカット弁6は、コントローラ14からの制御信号に応答して管路3を開閉する常開の電磁開閉弁である。液圧ポンプモータ7は、液圧ポンプと電動モータを一体化したものであり、コントローラ14からの制御信号に応じて作動して、リザーバ8からディスクブレーキ2に供給する液圧を発生させる。供給弁9は、コントローラ14からの制御信号に応答してリザーバ8から液圧ポンプモータ7にブレーキ液を供給する管路を開閉する常閉の電磁開閉弁である。
【0014】
コントローラ14は、横加速度センサ10、車輪速センサ11及びヨーレートセンサ12等の車両状態を検知するための各種センサの検出に基づいて、増圧弁5、カット弁6、液圧ポンプモータ7及び供給弁9に制御信号を出力してディスクブレーキ2の作動を次のように制御する。
【0015】
(運転者の操作による通常のブレーキ作動)
コントローラ14は、通常は、増圧弁5、カット弁6、液圧ポンプモータ7及び供給弁9に制御信号(制御電流)を出力せず、増圧弁5及びカット弁6を開き、液圧ポンプモータ7を停止させ、供給弁9を閉じる。この状態では、運転者がブレーキペダル19を操作することにより、マスタシリンダ4で発生した液圧が管路3によってディスクブレーキ2のシリンダ15に供給され、ピストン16がブレーキパッド17をディスクロータ18に押圧してブレーキペダル1の操作力に応じて制動力が発生する。
【0016】
(コントローラによるブレーキ制御)
コントローラ14は、制御信号を出力して、カット弁6を閉じ、供給弁9を開き、液圧ポンプモータ7を作動させ、マスタシリンダ4をディスクブレーキ2から遮断すると共に、液圧ポンプモータ7によって発生した液圧をディスクブレーキ2のシリンダ15に供給することにより、ブレーキペダル19を操作することなく、制動力を発生させることができる。そして、増圧弁5を閉じてディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧を保持し、また、増圧弁5を開き、液圧ポンプモータ7を停止し、カット弁6を開くことにより、ディスクブレーキ2のシリンダ内の液圧を減圧することができる。これにより、車両状態に基づいて、各車輪のディスクブレーキ2の制動力を制御することができ、アンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等が可能になる。
【0017】
また、コントローラ14は、ノックバック制御部20を有しており、ノックバック制御部20によって次のノックバック制御を実行する。
【0018】
(ノックバック検知)
車両の旋回中に車体に大きな横加速度(例えば3m/s2以上)が生じたとき、車輪に作用する横力によってディスクロータ18に倒れが生じ、ブレーキパッド17すなわちピストン16が押し戻されてノックバックが発生することがある。このとき、ノックバック制御部20は、横加速度センサ10の検出に基づき、横加速度が所定の閾値を超えたとき、ノックバックが発生したと判断する。その後、横加速度が所定の閾値以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断したとき、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15に液圧を供給することにより、ノックバックによって後退したピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0019】
(パッドクリアランス調整)
パッドクリアランスの調整は、次のようにして行うことができる。図2に示すように、ノックバックが生じる際に車体に作用する横加速度とピストン16の後退量(シリンダ15から排出されるブレーキ液量)との関係を予め実験等を行うことよって決定しておく。また、図3に示すように、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15にブレーキ液を供給する際のピストン16の移動量と液圧ポンプモータ7の吐出量(例えば、回転数(rpm)×運転時間)との関係を液圧ポンプモータ7の特性等から予め決定しておく。そして、図2及び図3に示す関係から、パッドクリアランスが適正となるように、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15にブレーキ液を供給し、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0020】
次に、ノックバック制御部20によるノックバック制御について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。図4を参照して、ステップS1は、横加速度センサ10の検出した横加速度が所定の閾値を超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2に進み、横加速度の検出値に基づき、図2からピストン16の後退量を算出し、ステップS3でピストン16の後退量を記憶する。
【0021】
ステップS1で横加速度が閾値を超えない場合には、ステップS4に進み、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ13等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS4で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS4で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS5に進み、ピストン16の後退量が記憶されているか否かを判断する。ステップS5でピストン16の後退量が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS5でピストンの後退量が記憶されている場合には、ステップS6に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0022】
ステップS6で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS7に進み、ピストン16の後退量に応じて液圧ポンプモータ7の吐出量を調整してピストン16を前進させることによってパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS8に進んでピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS6で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS8に進み、ピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ14によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS7のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0023】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン16の後退を許容することにより、ブレーキパッド17及びディスクロータ18の偏摩耗を防止する共に、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置1の応答性の低下を防止することができる。
【0024】
次に、本発明の第2実施形態について、図5乃至図8を参照して説明する。なお、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0025】
図5に示すように、本実施形態に係るブレーキ装置21では、ディスクブレーキ2のシリンダ15の液圧を検知する液圧センサ22が設けられており、コントローラ14のノックバック制御部20は、液圧センサ22の検出に基づいて次のようにノックバック制御を実行する。
【0026】
(ノックバック検知)
ノックバック制御部20のノックバック制御について図6に示すタイムチャートを参照して説明する。ノックバック制御部20は、横加速度センサ10の検出に基づき、横加速度が所定の閾値aを超えた場合、ノックバックが発生の可能性ありと判断し、増圧弁5を閉じて、液圧センサ22によるディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧の監視を開始する(時刻t1)。シリンダ内の液圧が所定の液圧閾値bを超えた場合(あるいは、液圧変化の時間積分が所定の閾値を超えた場合)、ノックバックの発生を決定する(時刻t2)。そして、ノックバックの発生を決定した場合には、増圧弁5を一定時間開いてシリンダ15内の液圧をリリーフした後、増圧弁5を閉じてシリンダ15内の液圧の監視を再開し(時刻t3)、これを繰返す。
【0027】
その後、横加速度が所定の閾値a以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断した場合に、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15に液圧を供給することにより、ノックバックによって後退したピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0028】
(パッドクリアランス調整)
パッドクリアランスの調整は、次のようにして行うことができる。図6に示すように、ノックバックによるピストン16の後退量は、シリンダ15内の液圧が液圧閾値bを超えた後、増圧弁5が開いて、その液圧がリリーフされる度に増大するので、ノックバックの発生を決定した後、増圧弁5の開弁回数をカウントすることによって決定することができる。あるいは、図7に示すように、シリンダ15内の液圧とピストン16の後退量との関係を実験等によって予め設定しておき、シリンダ15内の液圧を液圧センサ22によって監視することによって、ピストン16の後退量を決定することができる。このようにして決定したノックバックによるピストン16の後退量に対して、上記第1実施形態のものと同様、図3に示すピストン移動量と液圧ポンプモータ7の吐出量との関係に基づき、液圧ポンプモータ7によってシリンダ15にブレーキ液を供給し、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0029】
次に、ノックバック制御部20によるノックバック制御について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。図8を参照して、ステップS1で、横加速度センサ10の検出した横加速度が所定の閾値aを超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2に進み、増圧弁5を閉じて液圧センサ22によるディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧の監視を開始し、ステップS3に進む。
【0030】
ステップS3で、シリンダ15内の液圧が所定の液圧閾値bを超えているか否かを判断する。シリンダ15内の液圧が液圧閾値bを超えている場合には、ステップS4へ進み、増圧弁5を開き、ステップS5で、増圧弁5の開弁頻度あるいはシリンダ15内の液圧に基づいてピストン16の後退量を算出し、ステップS6でピストン16の後退量を記憶し、本周期のルーチンを終了する。また、ステップS3でシリンダ15内の液圧が液圧閾値bを超えない場合には、そのまま本周期のルーチンを終了する。
【0031】
一方、ステップS1で、横加速度が閾値aを超えない場合は、ステップS7に進み、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ13等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS7で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS7で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS8に進み、ピストン16の後退量が記憶されているか否かを判断する。ステップS8でピストン16の後退量が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS8でピストンの後退量が記憶されている場合には、ステップS9に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0032】
ステップS9で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS10に進み、ピストン16の後退量に応じて液圧ポンプモータ7の吐出量を調整してピストン16を前進させることによってパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS11に進んでピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS9で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS11に進み、ピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ14によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS10のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0033】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン16の後退を許容することにより、ブレーキパッド17及びディスクロータ18の偏摩耗を防止する共に、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置21の応答性の低下を防止することができる。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。なお、上記第2実施形態に対して、同様の部分には同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0035】
悪路走行等による車輪及びその周辺部品の振動によってブレーキキャリパが変位し、ブレーキパッドがディスクロータに接触してノックバックが生じることがある。本実施形態に係るブレーキ装置は、このようなノックバックに対して応答性の低下を防止し、また、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を防止するためのものである。
【0036】
本実施形態に係るブレーキ装置では、図5に示す第2実施形態のものに対して、横加速度センサ10が省略され、また、コントローラ14のノックバック制御部20は、車輪速センサ11の検出に基づいて、次のようにノックバック制御を実行する。
【0037】
(ノックバック検知)
ノックバック制御部20のノックバック制御について図9に示すタイムチャートを参照して説明する。悪路走行中には、車輪がバウンドし、このとき、車輪の回転速度が急激に変化する。ノックバック制御部20は、車輪速センサ11が検出する車輪速を監視し、車輪速度の変化(車輪加速度の絶対値)が所定の閾値cを超えたとき、ノックバックが発生の可能性ありと判断し、増圧弁5を閉じて、液圧センサ22によるディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧の監視を開始する(時刻t1)。シリンダ内の液圧が所定の液圧閾値dを超えた場合(あるいは、液圧変化の時間積分が所定の閾値を超えた場合)、ノックバックの発生を決定する(時刻t2)。そして、ノックバックの発生を決定した場合には、増圧弁5を一定時間開いてシリンダ15内の液圧をリリーフした後、増圧弁5を閉じてシリンダ15内の液圧の監視を再開し(時刻t3)、これを繰返す。
【0038】
その後、一定時間以上、車輪加速度の絶対値が所定の閾値c以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断した場合に、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15に液圧を供給することにより、ノックバックによって後退したピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0039】
(パッドクリアランス調整)
パッドクリアランスの調整は、次のようにして行うことができる。図9に示すように、ノックバックによるピストン16の後退量は、シリンダ15内の液圧が液圧閾値dを超えた後、増圧弁5が開いて、その液圧がリリーフされる度に増大するので、ノックバックの発生を決定した後、増圧弁5の開弁回数をカウントすることによって決定することができる。あるいは、図7に示すように、シリンダ15内の液圧とピストン16の後退量との関係を実験等によって予め設定しておき、シリンダ15内の液圧を液圧センサ22によって監視することによって、ピストン16の後退量を決定することができる。このようにして決定したノックバックによるピストン16の後退量に対して、上記第1実施形態のものと同様、図3に示すピストン移動量と液圧ポンプモータ7の吐出量との関係に基づき、液圧ポンプモータ7によってシリンダ15にブレーキ液を供給し、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0040】
次に、ノックバック制御部20によるノックバック制御について、図10に示すフローチャートを参照して説明する。図10を参照して、ステップS1で、車輪速センサ11が検出する車輪速を監視し、車輪速度の変化(車輪加速度の絶対値)が所定の閾値cを超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2に進み、増圧弁5を閉じて液圧センサ22によるディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧の監視を開始し、ステップS3に進む。
【0041】
ステップS3で、シリンダ15内の液圧が所定の液圧閾値dを超えているか否かを判断する。シリンダ15内の液圧が液圧閾値dを超えている場合には、ステップS4へ進み、増圧弁5を開き、ステップS5で、増圧弁5の開弁頻度あるいはシリンダ15内の液圧に基づいてピストン16の後退量を算出し、ステップS6でピストン16の後退量を記憶し、本周期のルーチンを終了する。また、ステップS3でシリンダ15内の液圧が液圧閾値dを超えない場合には、そのまま本周期のルーチンを終了する。
【0042】
一方、ステップS1で、車輪加速度の絶対値が閾値cを超えない場合は、ステップS7に進み、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ13等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS7で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS7で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS8に進み、ピストン16の後退量が記憶されているか否かを判断する。ステップS8でピストン16の後退量が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS8でピストンの後退量が記憶されている場合には、ステップS9に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0043】
ステップS9で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS10に進み、ピストン16の後退量に応じて液圧ポンプモータ7の吐出量を調整してピストン16を前進させることによってパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS11に進んでピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS9で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS11に進み、ピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ14によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS10のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0044】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン16の後退を許容することにより、ブレーキパッド17及びディスクロータ18の偏摩耗を防止する共に、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置21の応答性の低下を防止することができる。
【0045】
次に、本発明の第4実施形態について、図11乃至図14を参照して説明する。
本実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を図11に示す。図11に示すように、ブレーキ装置23は、各車輪に設けられた電動ディスクブレーキ24(一輪のみ図示する)と、ブレーキペダル25に連結されたペダル操作量センサ26と、ペダル操作量センサ26に接続された車両側制御部27と、横加速度センサ28、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の車両状態を検知するための各種センサと、これらの各種センサからの検出信号及び車両側制御部27からの指令信号に基づいて、各車輪の電動ディスクブレーキ24を制御するコントローラ32(制御手段)とを備えている。これらのブレーキ装置23を構成する各要素は、車載ネットワークによって相互接続されており、必要な制御信号を授受するようになっている。
【0046】
図12に示すように、電動ディスクブレーキ24は、キャリパ浮動型ディスクブレーキであって、車輪と共に回転するディスクロータ33と、サスペンション部材等の車体側の非回転部分(図示せず)に固定されるキャリア34と、ディスクロータ33の両側に配置されてキャリア34によって支持される一対のブレーキパッド35A、35Bと、ディスクロータ33を跨ぐように配置されてキャリア34に対してディスクロータ33の軸方向に沿って移動可能に支持されたキャリパ本体36とを備えている。
【0047】
キャリパ本体36には、ディスクロータ33の一側に対向して開口する貫通穴を有する円筒状のシリンダ部37及びシリンダ部37からディスクロータ33を跨いで反対側へ延びる爪部38が一体的に形成されている。キャリパ本体36のシリンダ部37内には、ピストンユニット53及びモータユニット39が設けられている。
【0048】
ピストンユニット53は、シリンダ部37に摺動可能に嵌装される有底円筒状のピストン40(押圧手段)と、ピストン40の内部に収容されたボールランプ機構41(回転−直動変換機構)及び差動減速機構42と、パッド摩耗補償機構43とを一体化したものである。ボールランプ機構41は、回転ディスク44と直動ディスク45との間の傾斜溝にボール46(鋼球)が介装されており、回転ディスク44と直動ディスク45とを相対回転させることにより、傾斜溝間でボール46が転動して、回転ディスク44と直動ディスク45とを回転角度に応じて軸方向に相対移動させる。これにより、回転運動を直線運動に変換する。なお、本実施形態においては、回転−直動変換機構をボールランプ機構41としているが、ボールネジ機構やローラランプ機構、精密ローラネジ機構等としてもよい。
【0049】
差動減速機構42は、ボールランプ機構41と、モータユニット39(電動機構)の電動モータ47(電動アクチュエータ)との間に介装され、電動モータ47のロータ48の回転を所定の減速比で減速してボールランプ機構41の回転ディスク44に伝達する。パッド摩耗補償機構43は、ブレーキパッド35A、35Bの摩耗(ディスクロータ33との接触位置の変化)に対して、調整スクリュ49を前進させて、ボールランプ機構41を追従させるものである。
【0050】
モータユニット39には、電動モータ47及びレゾルバ50が組込まれている。電動モータ47のステータ51のコイルへの通電によって、ロータ48を回転させ、差動減速機構42を介してボールランプ機構41を駆動し、このとき、レゾルバ50によってロータ48の回転位置を検出する。
【0051】
次にコントローラ32による電動ディスクブレーキ2の作動について説明する。
(運転者の操作による通常のブレーキ作動)
車両側制御部27は、ペダル操作量センサ26によって検出した運転者によるブレーキペダル25の操作に基づいて、ピストン40の推力(制動力)の指令値を決定する。コントローラ32は、車両制御部27によって決定されたピストン40の推力指令値に基づいて、電動モータ47に制御電流を供給してロータ48を回転させる。ロータ48の回転は、差動減速機構42によって所定の減速比で減速され、ボールランプ機構41によって直線運動に変換されてピストン40を前進させる。ピストン40の前進によって、一方のブレーキパッド35Bがディスクロータ33に押圧され、その反力によってキャリパ本体36が移動して、爪部38が他方のブレーキパッド35Aをディスクロータ33に押圧して制動力を発生させる。そして、レゾルバ50によって検出したロータ48の回転位置に基づいて電動モータ47の回転を調整して、ピストン40の推力(制動力)を指令値に制御する。ブレーキパッド35A、35Bの摩耗に対しては、パッド摩耗補償機構43の調整スクリュ49が前進してボールランプ機構41を摩耗に追従させることによって補償する。
【0052】
(コントローラによるブレーキ制御)
また、コントローラ32は、横加速度センサ28、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30、操舵角センサ31等の各種センサを用いて、各車輪の回転速度、車両速度、車両加速度、操舵角および車両横加速度等の車両状態を検出し、これらの検出に基づいて電動モータ47の回転を制御することにより、倍力制御、アンチロック制御、トラクション制御および車両安定化制御等を実行することができる。
【0053】
また、コントローラ32は、ノックバック制御部52を有しており、ノックバック制御部52によって次のノックバック制御を実行する。ノックバック制御部52のノックバック制御について図13に示すタイムチャートを参照して説明する。
【0054】
(ノックバック検知)
車両の旋回中に車体に大きな横加速度(例えば3m/s2以上)が生じたとき、車輪に作用する横力によってディスクロータ33に倒れが生じ、ブレーキパッド35A、35Bが押し戻されてノックバックが発生することがある。このとき、ノックバック制御部52は、横加速度センサ28の検出に基づき、横加速度が所定の閾値eを超えた場合、ノックバックが発生の可能性ありと判断し、レゾルバ50が検出するロータ48の回転位置信号に基づいて、ピストン40の位置を保持する位置保持制御を開始(オン)すると共に、電動モータ47の電流を監視する(時刻t1)。そして、電動モータ47の電流が所定の閾値fを超えたとき、ノックバックによってピストン40にディスクロータ33から離間する方向の力が作用したことを検知してノックバックの発生を決定し(時刻t2)、ピストン40の位置保持制御を解除(オフ)し、一定量だけピストン40を後退させて位置保持制御を再開する(時刻t3)。その後、継続してノックバックの可能性ありと判断されている場合(電動モータ47の電流>閾値f)、順次この動作を繰返してノックバックに対してピストン40を後退させる。なお、上記において、ノックバックの発生の決定は、電動モータ47の電流を閾値fと比較することによって行っているが、このほか、電動モータ47の電流の時間積分を所定の閾値と比較することによって行うようにしてもよい。
【0055】
(パッドクリアランス調整)
その後、横加速度が所定の閾値e以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断した場合、電動モータ47を作動させ、ピストン40を前進させて、ブレーキパッド35A、35Bとディスクロータ33との隙間を調整する。このとき、レゾルバ50が検出するロータ48の回転位置信号に基づいて、ノックバックが生じる前の位置までピストン40を前進させることにより、パッドクリアランスを適切に調整することができる。
【0056】
次に、ノックバック制御部52によるノックバック制御について、図14に示すフローチャートを参照して説明する。図14を参照して、ステップS1で、横加速度センサ28の検出した横加速度が所定の閾値eを超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2に進み、ピストン40の位置を保持する位置保持制御を開始して、電動モータ47の電流を監視し、ステップS3に進む。ステップS3で、電動モータ47の通電電流を閾値fと比較する。電動モータ47の通電電流が閾値fを超えている場合、ステップS4に進んでピストン40の位置を記憶し、ステップS5で位置保持制御を停止し、ステップS6で、電動モータ47を作動させてピストントン40を一定量だけ後退させて本周期のルーチンを終了する。また、ステップS3で、電動モータ47の通電電流が閾値fを超えない場合には、そのまま本周期のルーチンを終了する。
【0057】
一方、ステップS1で、横加速度が閾値eを超えない場合は、ステップS7に進み、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS7で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS7で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS8に進み、ピストン40の位置が記憶されているか否かを判断する。ステップS8でピストン40の位置が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS8でピストン40の位置が記憶されている場合には、ステップS9に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0058】
ステップS9で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS10に進み、電動モータ47を作動させて、ピストン40をノックバックが生じる前の記憶位置まで前進させてパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS11に進んでピストン40の記憶位置をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS9で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS11に進み、ピストン40の記憶位置をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ32によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS10のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0059】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン40を後退させることにより、ブレーキパッド35A、35B及びディスクロータ33の偏摩耗を防止し、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン40を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置23の応答性の低下を防止することができる。
【0060】
次に、本発明の第5実施形態について、図15及び図16を参照して説明する。なお、本実施形態は、上記第4実施形態に対して、コントローラ32のノックバック制御部によるノックバック制御の一部が異なる以外は、ほぼ同様の構成であるから、同様の部分には同一の符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0061】
(ノックバック検知)
本実施形態のノックバック制御について図15に示すタイムチャートを参照して説明する。本実施形態に係るブレーキ装置では、コントローラ32のノックバック制御部は、横加速度センサ28の検出に基づき、横加速度が所定の閾値eを超えたとき(時刻t1)、ノックバックが発生の可能性ありと判断する。そして、その時点において、ピストン40の位置を保持するために必要な電動モータ47への通電電流及びピストン40の初期位置(ロータ48の回転位置)を記憶し、電動モータ47の通電電流による電流制御を開始すると共に、レゾルバ50が検出するロータ48の回転位置信号を監視する。ノックバックによってピストン40にディスクロータ33から離間する方向の力が作用すると、ピストン40が後退して、その後退量がロータ48の回転位置信号としてレゾルバ50によって検出される。
【0062】
(パッドクリアランス調整)
その後、横加速度が所定の閾値e以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断した場合、電動モータ47を作動させ、ピストン40を前進させて、ブレーキパッド35A、35Bとディスクロータ33との隙間を調整する。このとき、レゾルバ50が検出するロータ48の回転位置信号に基づいて、ノックバックが生じる前の位置までピストン40を前進させることにより、パッドクリアランを適切に調整することができる。
【0063】
次に、ノックバック制御部52によるノックバック制御について、図16に示すフローチャートを参照して説明する。図16を参照して、ステップS1で、横加速度センサ28の検出した横加速度が所定の閾値eを超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2で、ピストン40の初期位置(ロータ48の回転位置)を記憶し、ステップS3で、電動モータ47の位置制御を停止して電流制御を開始し、ステップS4に進む。ステップS4で、ピストン40の後退量が所定値を超えたとき、ステップS5でピストン40の現在位置を記憶して、ステップS5Aで電流制御を停止し、位置制御を開始して本周期のルーチンを終了する。
【0064】
一方、ステップS1で、横加速度が閾値eを超えない場合は、ステップS6に進み、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS6で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS6で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS7に進み、ピストン40の現在位置が記憶されているか否かを判断する。ステップS7でピストン40の現在位置が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS7でピストン40の現在位置が記憶されている場合には、ステップS8に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0065】
ステップS8で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS9に進み、電動モータ47を作動させて、ピストン40をノックバックが生じる前の初期記憶位置まで前進させてパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS10´に進んでピストン40の初期記憶位置及び現在記憶位置をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS8で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS10´に進み、ピストン40の記憶位置をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ32によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS9のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0066】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン40の後退を許容することにより、ブレーキパッド35A、35B及びディスクロータ33の偏摩耗を防止し、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン40を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置23の応答性の低下を防止することができる。
【0067】
なお、上記第1乃至第3実施形態では、運転者による通常のブレーキ操作に対しては、マスタシリンダによって発生した液圧をディスクブレーキ2のシリンダ15に直接供給することによって制動力を発生させているが、これらの実施形態において、上記第4及び第5実施形態のように、ブレーキペダル19の操作を電気的な信号に変換し、コントローラの制御信号によって増圧弁5、液圧ポンプモータ7及び供給弁9を制御することによって制動力を発生させるいわゆる「ブレーキバイワイヤ」システムを採用することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1 ブレーキ装置、4 マスタシリンダ(第1の制動機構)、7 液圧ポンプモータ(第2の制動機構)、10 横加速度センサ(検出手段)、16 ピストン(押圧手段)、14 コントローラ(制御手段)、17 ブレーキパッド、18 ディスクロータ、19ブレーキペダル
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用のブレーキ装置において、車両の急旋回等によって車輪に大きな荷重が作用したとき、ディスクブレーキのディスクロータに倒れが生じてブレーキパットが押し戻されるいわゆるノックバックが発生することがある。また、悪路走行等による車輪およびその周辺部品の激しい振動によってブレーキキャリパが変位してブレーキパッドがディスクロータに接触することによってノックバックが生じることがある。このようなノックバックが生じると、パッドクリアランスが増大することにより、ブレーキ装置の応答性が低下し、また、ディスクロータとブレーキパッドとの不規則な接触によって、これらが偏摩耗し易くなり、問題となる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、ノックバックに対して、ブレーキキャリパのピストン位置を保持することにより、パッドクリアランスの増大を防止してブレーキ装置の応答性の低下を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−154931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものでは、次のような問題がある。ノックバックに対して、ブレーキキャリパのピストンの位置を保持すると、ディスクロータがブレーキパッドに不規則に接触することになり、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を助長してブレーキジャダーの原因となる虞がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ノックバックによる応答性の低下を防止しつつ、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を防止することができるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、ブレーキペダルの操作により、車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧する押圧手段を作動する第1の制動機構と、前記押圧手段を前記ブレーキペダルの操作とは関係なく作動可能な第2の制動機構と、該第2の制動機構の作動を制御する制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記押圧手段が前記ディスクロータから離間する方向へ移動する離間移動を検出する検出手段を備え、該検出手段によって前記押圧手段の離間移動が検出された後、該離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブレーキ装置によれば、ノックバックが生じたとき、ブレーキパッドの後退を許容することにより、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を防止することができ、また、ノックバックの要因が解除されたとき、ブレーキパッドの押圧手段を前進させることにより、応答性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すブレーキ装置において、ノックバックによるディスクブレーキのピストンの移動量と車両の横加速度との関係を示すグラフ図である。
【図3】図1に示すブレーキ装置において、液圧ポンプモータの吐出量とディスクブレーキのピストンの移動量との関係を示すグラフ図である。
【図4】図1に示すブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示すブレーキ装置において、コントローラのノックバック制御部による制御を示すタイムチャートである。
【図7】図5に示すブレーキ装置において、ノックバックによるディスクブレーキのピストンの移動量とシリンダ内の液圧との関係を示すグラフ図である。
【図8】図5に示すブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態に係るブレーキ装置において、コントローラのノックバック制御部による制御を示すタイムチャートである。
【図10】本発明の第3実施形態に係るブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第4実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図11に示すブレーキ装置のディスクブレーキを拡大して示す縦断面図である。
【図13】図11に示すブレーキ装置において、コントローラのノックバック制御部による制御を示すタイムチャートである。
【図14】図11に示すブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第5実施形態に係るブレーキ装置において、コントローラのノックバック制御部による制御を示すタイムチャートである。
【図16】本発明の第5実施形態に係るブレーキ装置のコントローラのノックバック制御部による制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態について図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を図1に示す。図1に示すように、ブレーキ装置1は、各車輪に設けられたディスクブレーキ2(1輪分のみ図示する)と、ディスクブレーキ2に管路3を介して接続されたマスタシリンダ4(第1の制動機構、メインの制動機構)と、管路3に設けられた増圧弁5及びカット弁6と、管路3の増圧弁5とカット弁6と間に接続された液圧ポンプモータ7(液圧ポンプ、第2の制動機構、サブの制動機構)と、液圧ポンプモータ7とリザーバ8との間に設けられた供給弁9と、横加速度センサ10、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ13等の車両状態を検知するための各種センサ(ノックバック検出手段、検出手段)と、これらの各種センサの検出に基づいて増圧弁5、カット弁6、液圧ポンプモータ7及び供給弁9を制御するコントローラ14(制御手段)とを備えている。
【0011】
ディスクブレーキ2は、シリンダ15に液圧を供給してピストン16(押圧手段)を前進させ、ブレーキパッド17を車輪(図示せず)と共に回転するディスクロータ18に押圧して制動力を発生させる一般的な液圧ディスクブレーキである。
【0012】
マスタシリンダ4は、ブレーキペダル19の操作に応じて、ディスクブレーキ2に供給する液圧を発生させるものであり、適宜、気圧式倍力装置等の倍力装置を設けることによってブレーキペダル19の操作力を軽減することができる。
【0013】
増圧弁5及びカット弁6は、コントローラ14からの制御信号に応答して管路3を開閉する常開の電磁開閉弁である。液圧ポンプモータ7は、液圧ポンプと電動モータを一体化したものであり、コントローラ14からの制御信号に応じて作動して、リザーバ8からディスクブレーキ2に供給する液圧を発生させる。供給弁9は、コントローラ14からの制御信号に応答してリザーバ8から液圧ポンプモータ7にブレーキ液を供給する管路を開閉する常閉の電磁開閉弁である。
【0014】
コントローラ14は、横加速度センサ10、車輪速センサ11及びヨーレートセンサ12等の車両状態を検知するための各種センサの検出に基づいて、増圧弁5、カット弁6、液圧ポンプモータ7及び供給弁9に制御信号を出力してディスクブレーキ2の作動を次のように制御する。
【0015】
(運転者の操作による通常のブレーキ作動)
コントローラ14は、通常は、増圧弁5、カット弁6、液圧ポンプモータ7及び供給弁9に制御信号(制御電流)を出力せず、増圧弁5及びカット弁6を開き、液圧ポンプモータ7を停止させ、供給弁9を閉じる。この状態では、運転者がブレーキペダル19を操作することにより、マスタシリンダ4で発生した液圧が管路3によってディスクブレーキ2のシリンダ15に供給され、ピストン16がブレーキパッド17をディスクロータ18に押圧してブレーキペダル1の操作力に応じて制動力が発生する。
【0016】
(コントローラによるブレーキ制御)
コントローラ14は、制御信号を出力して、カット弁6を閉じ、供給弁9を開き、液圧ポンプモータ7を作動させ、マスタシリンダ4をディスクブレーキ2から遮断すると共に、液圧ポンプモータ7によって発生した液圧をディスクブレーキ2のシリンダ15に供給することにより、ブレーキペダル19を操作することなく、制動力を発生させることができる。そして、増圧弁5を閉じてディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧を保持し、また、増圧弁5を開き、液圧ポンプモータ7を停止し、カット弁6を開くことにより、ディスクブレーキ2のシリンダ内の液圧を減圧することができる。これにより、車両状態に基づいて、各車輪のディスクブレーキ2の制動力を制御することができ、アンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等が可能になる。
【0017】
また、コントローラ14は、ノックバック制御部20を有しており、ノックバック制御部20によって次のノックバック制御を実行する。
【0018】
(ノックバック検知)
車両の旋回中に車体に大きな横加速度(例えば3m/s2以上)が生じたとき、車輪に作用する横力によってディスクロータ18に倒れが生じ、ブレーキパッド17すなわちピストン16が押し戻されてノックバックが発生することがある。このとき、ノックバック制御部20は、横加速度センサ10の検出に基づき、横加速度が所定の閾値を超えたとき、ノックバックが発生したと判断する。その後、横加速度が所定の閾値以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断したとき、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15に液圧を供給することにより、ノックバックによって後退したピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0019】
(パッドクリアランス調整)
パッドクリアランスの調整は、次のようにして行うことができる。図2に示すように、ノックバックが生じる際に車体に作用する横加速度とピストン16の後退量(シリンダ15から排出されるブレーキ液量)との関係を予め実験等を行うことよって決定しておく。また、図3に示すように、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15にブレーキ液を供給する際のピストン16の移動量と液圧ポンプモータ7の吐出量(例えば、回転数(rpm)×運転時間)との関係を液圧ポンプモータ7の特性等から予め決定しておく。そして、図2及び図3に示す関係から、パッドクリアランスが適正となるように、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15にブレーキ液を供給し、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0020】
次に、ノックバック制御部20によるノックバック制御について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。図4を参照して、ステップS1は、横加速度センサ10の検出した横加速度が所定の閾値を超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2に進み、横加速度の検出値に基づき、図2からピストン16の後退量を算出し、ステップS3でピストン16の後退量を記憶する。
【0021】
ステップS1で横加速度が閾値を超えない場合には、ステップS4に進み、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ13等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS4で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS4で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS5に進み、ピストン16の後退量が記憶されているか否かを判断する。ステップS5でピストン16の後退量が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS5でピストンの後退量が記憶されている場合には、ステップS6に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0022】
ステップS6で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS7に進み、ピストン16の後退量に応じて液圧ポンプモータ7の吐出量を調整してピストン16を前進させることによってパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS8に進んでピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS6で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS8に進み、ピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ14によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS7のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0023】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン16の後退を許容することにより、ブレーキパッド17及びディスクロータ18の偏摩耗を防止する共に、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置1の応答性の低下を防止することができる。
【0024】
次に、本発明の第2実施形態について、図5乃至図8を参照して説明する。なお、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0025】
図5に示すように、本実施形態に係るブレーキ装置21では、ディスクブレーキ2のシリンダ15の液圧を検知する液圧センサ22が設けられており、コントローラ14のノックバック制御部20は、液圧センサ22の検出に基づいて次のようにノックバック制御を実行する。
【0026】
(ノックバック検知)
ノックバック制御部20のノックバック制御について図6に示すタイムチャートを参照して説明する。ノックバック制御部20は、横加速度センサ10の検出に基づき、横加速度が所定の閾値aを超えた場合、ノックバックが発生の可能性ありと判断し、増圧弁5を閉じて、液圧センサ22によるディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧の監視を開始する(時刻t1)。シリンダ内の液圧が所定の液圧閾値bを超えた場合(あるいは、液圧変化の時間積分が所定の閾値を超えた場合)、ノックバックの発生を決定する(時刻t2)。そして、ノックバックの発生を決定した場合には、増圧弁5を一定時間開いてシリンダ15内の液圧をリリーフした後、増圧弁5を閉じてシリンダ15内の液圧の監視を再開し(時刻t3)、これを繰返す。
【0027】
その後、横加速度が所定の閾値a以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断した場合に、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15に液圧を供給することにより、ノックバックによって後退したピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0028】
(パッドクリアランス調整)
パッドクリアランスの調整は、次のようにして行うことができる。図6に示すように、ノックバックによるピストン16の後退量は、シリンダ15内の液圧が液圧閾値bを超えた後、増圧弁5が開いて、その液圧がリリーフされる度に増大するので、ノックバックの発生を決定した後、増圧弁5の開弁回数をカウントすることによって決定することができる。あるいは、図7に示すように、シリンダ15内の液圧とピストン16の後退量との関係を実験等によって予め設定しておき、シリンダ15内の液圧を液圧センサ22によって監視することによって、ピストン16の後退量を決定することができる。このようにして決定したノックバックによるピストン16の後退量に対して、上記第1実施形態のものと同様、図3に示すピストン移動量と液圧ポンプモータ7の吐出量との関係に基づき、液圧ポンプモータ7によってシリンダ15にブレーキ液を供給し、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0029】
次に、ノックバック制御部20によるノックバック制御について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。図8を参照して、ステップS1で、横加速度センサ10の検出した横加速度が所定の閾値aを超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2に進み、増圧弁5を閉じて液圧センサ22によるディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧の監視を開始し、ステップS3に進む。
【0030】
ステップS3で、シリンダ15内の液圧が所定の液圧閾値bを超えているか否かを判断する。シリンダ15内の液圧が液圧閾値bを超えている場合には、ステップS4へ進み、増圧弁5を開き、ステップS5で、増圧弁5の開弁頻度あるいはシリンダ15内の液圧に基づいてピストン16の後退量を算出し、ステップS6でピストン16の後退量を記憶し、本周期のルーチンを終了する。また、ステップS3でシリンダ15内の液圧が液圧閾値bを超えない場合には、そのまま本周期のルーチンを終了する。
【0031】
一方、ステップS1で、横加速度が閾値aを超えない場合は、ステップS7に進み、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ13等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS7で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS7で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS8に進み、ピストン16の後退量が記憶されているか否かを判断する。ステップS8でピストン16の後退量が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS8でピストンの後退量が記憶されている場合には、ステップS9に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0032】
ステップS9で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS10に進み、ピストン16の後退量に応じて液圧ポンプモータ7の吐出量を調整してピストン16を前進させることによってパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS11に進んでピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS9で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS11に進み、ピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ14によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS10のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0033】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン16の後退を許容することにより、ブレーキパッド17及びディスクロータ18の偏摩耗を防止する共に、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置21の応答性の低下を防止することができる。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。なお、上記第2実施形態に対して、同様の部分には同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0035】
悪路走行等による車輪及びその周辺部品の振動によってブレーキキャリパが変位し、ブレーキパッドがディスクロータに接触してノックバックが生じることがある。本実施形態に係るブレーキ装置は、このようなノックバックに対して応答性の低下を防止し、また、ディスクロータ及びブレーキパッドの偏摩耗を防止するためのものである。
【0036】
本実施形態に係るブレーキ装置では、図5に示す第2実施形態のものに対して、横加速度センサ10が省略され、また、コントローラ14のノックバック制御部20は、車輪速センサ11の検出に基づいて、次のようにノックバック制御を実行する。
【0037】
(ノックバック検知)
ノックバック制御部20のノックバック制御について図9に示すタイムチャートを参照して説明する。悪路走行中には、車輪がバウンドし、このとき、車輪の回転速度が急激に変化する。ノックバック制御部20は、車輪速センサ11が検出する車輪速を監視し、車輪速度の変化(車輪加速度の絶対値)が所定の閾値cを超えたとき、ノックバックが発生の可能性ありと判断し、増圧弁5を閉じて、液圧センサ22によるディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧の監視を開始する(時刻t1)。シリンダ内の液圧が所定の液圧閾値dを超えた場合(あるいは、液圧変化の時間積分が所定の閾値を超えた場合)、ノックバックの発生を決定する(時刻t2)。そして、ノックバックの発生を決定した場合には、増圧弁5を一定時間開いてシリンダ15内の液圧をリリーフした後、増圧弁5を閉じてシリンダ15内の液圧の監視を再開し(時刻t3)、これを繰返す。
【0038】
その後、一定時間以上、車輪加速度の絶対値が所定の閾値c以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断した場合に、液圧ポンプモータ7によってディスクブレーキ2のシリンダ15に液圧を供給することにより、ノックバックによって後退したピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0039】
(パッドクリアランス調整)
パッドクリアランスの調整は、次のようにして行うことができる。図9に示すように、ノックバックによるピストン16の後退量は、シリンダ15内の液圧が液圧閾値dを超えた後、増圧弁5が開いて、その液圧がリリーフされる度に増大するので、ノックバックの発生を決定した後、増圧弁5の開弁回数をカウントすることによって決定することができる。あるいは、図7に示すように、シリンダ15内の液圧とピストン16の後退量との関係を実験等によって予め設定しておき、シリンダ15内の液圧を液圧センサ22によって監視することによって、ピストン16の後退量を決定することができる。このようにして決定したノックバックによるピストン16の後退量に対して、上記第1実施形態のものと同様、図3に示すピストン移動量と液圧ポンプモータ7の吐出量との関係に基づき、液圧ポンプモータ7によってシリンダ15にブレーキ液を供給し、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを調整する。
【0040】
次に、ノックバック制御部20によるノックバック制御について、図10に示すフローチャートを参照して説明する。図10を参照して、ステップS1で、車輪速センサ11が検出する車輪速を監視し、車輪速度の変化(車輪加速度の絶対値)が所定の閾値cを超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2に進み、増圧弁5を閉じて液圧センサ22によるディスクブレーキ2のシリンダ15内の液圧の監視を開始し、ステップS3に進む。
【0041】
ステップS3で、シリンダ15内の液圧が所定の液圧閾値dを超えているか否かを判断する。シリンダ15内の液圧が液圧閾値dを超えている場合には、ステップS4へ進み、増圧弁5を開き、ステップS5で、増圧弁5の開弁頻度あるいはシリンダ15内の液圧に基づいてピストン16の後退量を算出し、ステップS6でピストン16の後退量を記憶し、本周期のルーチンを終了する。また、ステップS3でシリンダ15内の液圧が液圧閾値dを超えない場合には、そのまま本周期のルーチンを終了する。
【0042】
一方、ステップS1で、車輪加速度の絶対値が閾値cを超えない場合は、ステップS7に進み、車輪速センサ11、ヨーレートセンサ12及び操舵角センサ13等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS7で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS7で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS8に進み、ピストン16の後退量が記憶されているか否かを判断する。ステップS8でピストン16の後退量が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS8でピストンの後退量が記憶されている場合には、ステップS9に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0043】
ステップS9で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS10に進み、ピストン16の後退量に応じて液圧ポンプモータ7の吐出量を調整してピストン16を前進させることによってパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS11に進んでピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS9で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS11に進み、ピストン16の後退量の記憶をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ14によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS10のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0044】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン16の後退を許容することにより、ブレーキパッド17及びディスクロータ18の偏摩耗を防止する共に、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン16を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置21の応答性の低下を防止することができる。
【0045】
次に、本発明の第4実施形態について、図11乃至図14を参照して説明する。
本実施形態に係るブレーキ装置の概略構成を図11に示す。図11に示すように、ブレーキ装置23は、各車輪に設けられた電動ディスクブレーキ24(一輪のみ図示する)と、ブレーキペダル25に連結されたペダル操作量センサ26と、ペダル操作量センサ26に接続された車両側制御部27と、横加速度センサ28、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の車両状態を検知するための各種センサと、これらの各種センサからの検出信号及び車両側制御部27からの指令信号に基づいて、各車輪の電動ディスクブレーキ24を制御するコントローラ32(制御手段)とを備えている。これらのブレーキ装置23を構成する各要素は、車載ネットワークによって相互接続されており、必要な制御信号を授受するようになっている。
【0046】
図12に示すように、電動ディスクブレーキ24は、キャリパ浮動型ディスクブレーキであって、車輪と共に回転するディスクロータ33と、サスペンション部材等の車体側の非回転部分(図示せず)に固定されるキャリア34と、ディスクロータ33の両側に配置されてキャリア34によって支持される一対のブレーキパッド35A、35Bと、ディスクロータ33を跨ぐように配置されてキャリア34に対してディスクロータ33の軸方向に沿って移動可能に支持されたキャリパ本体36とを備えている。
【0047】
キャリパ本体36には、ディスクロータ33の一側に対向して開口する貫通穴を有する円筒状のシリンダ部37及びシリンダ部37からディスクロータ33を跨いで反対側へ延びる爪部38が一体的に形成されている。キャリパ本体36のシリンダ部37内には、ピストンユニット53及びモータユニット39が設けられている。
【0048】
ピストンユニット53は、シリンダ部37に摺動可能に嵌装される有底円筒状のピストン40(押圧手段)と、ピストン40の内部に収容されたボールランプ機構41(回転−直動変換機構)及び差動減速機構42と、パッド摩耗補償機構43とを一体化したものである。ボールランプ機構41は、回転ディスク44と直動ディスク45との間の傾斜溝にボール46(鋼球)が介装されており、回転ディスク44と直動ディスク45とを相対回転させることにより、傾斜溝間でボール46が転動して、回転ディスク44と直動ディスク45とを回転角度に応じて軸方向に相対移動させる。これにより、回転運動を直線運動に変換する。なお、本実施形態においては、回転−直動変換機構をボールランプ機構41としているが、ボールネジ機構やローラランプ機構、精密ローラネジ機構等としてもよい。
【0049】
差動減速機構42は、ボールランプ機構41と、モータユニット39(電動機構)の電動モータ47(電動アクチュエータ)との間に介装され、電動モータ47のロータ48の回転を所定の減速比で減速してボールランプ機構41の回転ディスク44に伝達する。パッド摩耗補償機構43は、ブレーキパッド35A、35Bの摩耗(ディスクロータ33との接触位置の変化)に対して、調整スクリュ49を前進させて、ボールランプ機構41を追従させるものである。
【0050】
モータユニット39には、電動モータ47及びレゾルバ50が組込まれている。電動モータ47のステータ51のコイルへの通電によって、ロータ48を回転させ、差動減速機構42を介してボールランプ機構41を駆動し、このとき、レゾルバ50によってロータ48の回転位置を検出する。
【0051】
次にコントローラ32による電動ディスクブレーキ2の作動について説明する。
(運転者の操作による通常のブレーキ作動)
車両側制御部27は、ペダル操作量センサ26によって検出した運転者によるブレーキペダル25の操作に基づいて、ピストン40の推力(制動力)の指令値を決定する。コントローラ32は、車両制御部27によって決定されたピストン40の推力指令値に基づいて、電動モータ47に制御電流を供給してロータ48を回転させる。ロータ48の回転は、差動減速機構42によって所定の減速比で減速され、ボールランプ機構41によって直線運動に変換されてピストン40を前進させる。ピストン40の前進によって、一方のブレーキパッド35Bがディスクロータ33に押圧され、その反力によってキャリパ本体36が移動して、爪部38が他方のブレーキパッド35Aをディスクロータ33に押圧して制動力を発生させる。そして、レゾルバ50によって検出したロータ48の回転位置に基づいて電動モータ47の回転を調整して、ピストン40の推力(制動力)を指令値に制御する。ブレーキパッド35A、35Bの摩耗に対しては、パッド摩耗補償機構43の調整スクリュ49が前進してボールランプ機構41を摩耗に追従させることによって補償する。
【0052】
(コントローラによるブレーキ制御)
また、コントローラ32は、横加速度センサ28、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30、操舵角センサ31等の各種センサを用いて、各車輪の回転速度、車両速度、車両加速度、操舵角および車両横加速度等の車両状態を検出し、これらの検出に基づいて電動モータ47の回転を制御することにより、倍力制御、アンチロック制御、トラクション制御および車両安定化制御等を実行することができる。
【0053】
また、コントローラ32は、ノックバック制御部52を有しており、ノックバック制御部52によって次のノックバック制御を実行する。ノックバック制御部52のノックバック制御について図13に示すタイムチャートを参照して説明する。
【0054】
(ノックバック検知)
車両の旋回中に車体に大きな横加速度(例えば3m/s2以上)が生じたとき、車輪に作用する横力によってディスクロータ33に倒れが生じ、ブレーキパッド35A、35Bが押し戻されてノックバックが発生することがある。このとき、ノックバック制御部52は、横加速度センサ28の検出に基づき、横加速度が所定の閾値eを超えた場合、ノックバックが発生の可能性ありと判断し、レゾルバ50が検出するロータ48の回転位置信号に基づいて、ピストン40の位置を保持する位置保持制御を開始(オン)すると共に、電動モータ47の電流を監視する(時刻t1)。そして、電動モータ47の電流が所定の閾値fを超えたとき、ノックバックによってピストン40にディスクロータ33から離間する方向の力が作用したことを検知してノックバックの発生を決定し(時刻t2)、ピストン40の位置保持制御を解除(オフ)し、一定量だけピストン40を後退させて位置保持制御を再開する(時刻t3)。その後、継続してノックバックの可能性ありと判断されている場合(電動モータ47の電流>閾値f)、順次この動作を繰返してノックバックに対してピストン40を後退させる。なお、上記において、ノックバックの発生の決定は、電動モータ47の電流を閾値fと比較することによって行っているが、このほか、電動モータ47の電流の時間積分を所定の閾値と比較することによって行うようにしてもよい。
【0055】
(パッドクリアランス調整)
その後、横加速度が所定の閾値e以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断した場合、電動モータ47を作動させ、ピストン40を前進させて、ブレーキパッド35A、35Bとディスクロータ33との隙間を調整する。このとき、レゾルバ50が検出するロータ48の回転位置信号に基づいて、ノックバックが生じる前の位置までピストン40を前進させることにより、パッドクリアランスを適切に調整することができる。
【0056】
次に、ノックバック制御部52によるノックバック制御について、図14に示すフローチャートを参照して説明する。図14を参照して、ステップS1で、横加速度センサ28の検出した横加速度が所定の閾値eを超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2に進み、ピストン40の位置を保持する位置保持制御を開始して、電動モータ47の電流を監視し、ステップS3に進む。ステップS3で、電動モータ47の通電電流を閾値fと比較する。電動モータ47の通電電流が閾値fを超えている場合、ステップS4に進んでピストン40の位置を記憶し、ステップS5で位置保持制御を停止し、ステップS6で、電動モータ47を作動させてピストントン40を一定量だけ後退させて本周期のルーチンを終了する。また、ステップS3で、電動モータ47の通電電流が閾値fを超えない場合には、そのまま本周期のルーチンを終了する。
【0057】
一方、ステップS1で、横加速度が閾値eを超えない場合は、ステップS7に進み、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS7で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS7で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS8に進み、ピストン40の位置が記憶されているか否かを判断する。ステップS8でピストン40の位置が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS8でピストン40の位置が記憶されている場合には、ステップS9に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0058】
ステップS9で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS10に進み、電動モータ47を作動させて、ピストン40をノックバックが生じる前の記憶位置まで前進させてパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS11に進んでピストン40の記憶位置をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS9で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ14のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS11に進み、ピストン40の記憶位置をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ32によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS10のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0059】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン40を後退させることにより、ブレーキパッド35A、35B及びディスクロータ33の偏摩耗を防止し、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン40を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置23の応答性の低下を防止することができる。
【0060】
次に、本発明の第5実施形態について、図15及び図16を参照して説明する。なお、本実施形態は、上記第4実施形態に対して、コントローラ32のノックバック制御部によるノックバック制御の一部が異なる以外は、ほぼ同様の構成であるから、同様の部分には同一の符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0061】
(ノックバック検知)
本実施形態のノックバック制御について図15に示すタイムチャートを参照して説明する。本実施形態に係るブレーキ装置では、コントローラ32のノックバック制御部は、横加速度センサ28の検出に基づき、横加速度が所定の閾値eを超えたとき(時刻t1)、ノックバックが発生の可能性ありと判断する。そして、その時点において、ピストン40の位置を保持するために必要な電動モータ47への通電電流及びピストン40の初期位置(ロータ48の回転位置)を記憶し、電動モータ47の通電電流による電流制御を開始すると共に、レゾルバ50が検出するロータ48の回転位置信号を監視する。ノックバックによってピストン40にディスクロータ33から離間する方向の力が作用すると、ピストン40が後退して、その後退量がロータ48の回転位置信号としてレゾルバ50によって検出される。
【0062】
(パッドクリアランス調整)
その後、横加速度が所定の閾値e以下となっとき、ノックバック要因が解除されたと判断する。そして、ノックバック要因の解除が判断された後、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であると判断した場合、電動モータ47を作動させ、ピストン40を前進させて、ブレーキパッド35A、35Bとディスクロータ33との隙間を調整する。このとき、レゾルバ50が検出するロータ48の回転位置信号に基づいて、ノックバックが生じる前の位置までピストン40を前進させることにより、パッドクリアランを適切に調整することができる。
【0063】
次に、ノックバック制御部52によるノックバック制御について、図16に示すフローチャートを参照して説明する。図16を参照して、ステップS1で、横加速度センサ28の検出した横加速度が所定の閾値eを超えているか否かを判断する。そして、超えている場合には、ステップS2で、ピストン40の初期位置(ロータ48の回転位置)を記憶し、ステップS3で、電動モータ47の位置制御を停止して電流制御を開始し、ステップS4に進む。ステップS4で、ピストン40の後退量が所定値を超えたとき、ステップS5でピストン40の現在位置を記憶して、ステップS5Aで電流制御を停止し、位置制御を開始して本周期のルーチンを終了する。
【0064】
一方、ステップS1で、横加速度が閾値eを超えない場合は、ステップS6に進み、車輪速センサ29、ヨーレートセンサ30及び操舵角センサ31等の検出に基づいて車両の走行状態を判断し、走行状態がノックバックを生じない通常走行状態(直線走行等)であるか否かを判断する。ステップS6で通常走行状態ではないと判断した場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS6で通常走行状態であると判断した場合は、ステップS7に進み、ピストン40の現在位置が記憶されているか否かを判断する。ステップS7でピストン40の現在位置が記憶されていない場合には、本周期のルーチンを終了する。ステップS7でピストン40の現在位置が記憶されている場合には、ステップS8に進み、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32によるアンチロック制御、トラクション制御及び車両安定化制御等のブレーキ制御の介入の有無を判断する。
【0065】
ステップS8で、運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32のブレーキ制御の介入がないと判断した場合、ステップS9に進み、電動モータ47を作動させて、ピストン40をノックバックが生じる前の初期記憶位置まで前進させてパッドクリアランスを調整する。そして、ステップS10´に進んでピストン40の初期記憶位置及び現在記憶位置をリセットして本周期のルーチンを終了する。ステップS8で運転者によるブレーキ操作又はコントローラ32のブレーキ制御の介入があると判断した場合、ステップS10´に進み、ピストン40の記憶位置をリセットして本周期のルーチンを終了する。このとき、コントローラ32によるブレーキ制御の介入は、各車輪毎に実行されるので、ブレーキ制御の介入が実行された車輪については、ステップS9のパッドクリアランスの調整が実行されないことになる。
【0066】
このようにして、ノックバックが生じた場合、ピストン40の後退を許容することにより、ブレーキパッド35A、35B及びディスクロータ33の偏摩耗を防止し、ノックバックの要因が解除され、通常走行状態になったとき、ピストン40を前進させてパッドクリアランスを適正に調整することにより、ブレーキ装置23の応答性の低下を防止することができる。
【0067】
なお、上記第1乃至第3実施形態では、運転者による通常のブレーキ操作に対しては、マスタシリンダによって発生した液圧をディスクブレーキ2のシリンダ15に直接供給することによって制動力を発生させているが、これらの実施形態において、上記第4及び第5実施形態のように、ブレーキペダル19の操作を電気的な信号に変換し、コントローラの制御信号によって増圧弁5、液圧ポンプモータ7及び供給弁9を制御することによって制動力を発生させるいわゆる「ブレーキバイワイヤ」システムを採用することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1 ブレーキ装置、4 マスタシリンダ(第1の制動機構)、7 液圧ポンプモータ(第2の制動機構)、10 横加速度センサ(検出手段)、16 ピストン(押圧手段)、14 コントローラ(制御手段)、17 ブレーキパッド、18 ディスクロータ、19ブレーキペダル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルの操作により、車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧する押圧手段を作動する第1の制動機構と、前記押圧手段を前記ブレーキペダルの操作とは関係なく作動可能な第2の制動機構と、該第2の制動機構の作動を制御する制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記押圧手段が前記ディスクロータから離間する方向へ移動する離間移動を検出する検出手段を備え、該検出手段によって前記押圧手段の離間移動が検出された後、該離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記第2の制動機構は、液圧ポンプを有する液圧機構であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記液圧機構において、前記押圧手段の離間移動に伴う離間液量を検出する液量検出手段を備え、前記離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記離間液量に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記車両の旋回状態を検出し、前記離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記検出手段が検出した前記車両の旋回状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記液圧機構において、前記押圧手段の離間移動の際の離間液圧を検出する液圧検出手段を備え、前記離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記離間液圧に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
ブレーキペダルの操作により、車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧する押圧手段を作動するメインの制動機構と、前記押圧手段を前記ブレーキペダルの操作とは関係なく作動可能なサブの制動機構と、該サブの制動機構の作動を制御する制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記押圧手段が前記ディスクロータからノックバックするのを検出するノックバック検出手段を備え、該ノックバック検出手段によるノックバックの検出後、該ノックバックの要因が解除されたとき、前記サブの制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項7】
前記ノックバック検出手段は、前記車両の旋回状態に基づいてノックバックを検出することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
ノックバックの要因が解除されたとき、前記サブの制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記ノックバック検出手段が検出する車両の旋回状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項7に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
前記ノックバック検出手段は、前記車両の悪路走行状態に基づいてノックバックを検出することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項10】
ノックバックの要因が解除されたとき、前記サブの制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記ノックバック検出手段が検出する車両の悪路走行状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項7に記載のブレーキ装置。
【請求項11】
車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧する押圧手段を作動する制動機構と、該制動機構をブレーキペダルの操作に基づいて制御し、また、前記ブレーキペダルの操作とは関係なく前記制動機構を制御可能な制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記押圧手段が前記ディスクロータから離間する方向に移動する離間移動を検出する検出手段を備え、該検出手段によって前記押圧手段の離間移動が検出された後、該離間移動の要因が解除されたとき、前記制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項12】
前記制動機構は、液圧ポンプを有する液圧機構であることを特徴とする請求項11に記載のブレーキ装置。
【請求項13】
離間移動の要因が解除されたとき、前記制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、離間移動時の前記押圧手段の移動量に基づいて決定した液量によるものであることを特徴とする請求項12に記載のブレーキ装置。
【請求項14】
前記制動機構は、電動アクチュエータを有する電動機構であることを特徴とする請求項11に記載のブレーキ装置。
【請求項15】
離間移動の要因が解除されたとき、前記制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、離間移動時の前記押圧手段の移動量に基づいて決定されることを特徴とする請求項14に記載のブレーキ装置。
【請求項16】
車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧するピストンを作動する制動機構と、該制動機構をブレーキペダルの操作に基づいて制御し、また、前記ブレーキペダルの操作とは関係なく前記制動機構を制御可能な制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記ピストンが前記ディスクロータからノックバックするのを検出するノックバック検出手段を備え、該ノックバック検出手段によってノックバックが検出された後、該ノックバックの要因が解除されたとき、前記制御手段により、前記ピストンを前記ディスクロータに接近させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項17】
前記ノックバック検出手段は、前記車両の旋回状態に基づいてノックバックを検出することを特徴とする請求項16に記載のブレーキ装置。
【請求項18】
ノックバックの要因が解除されたとき、前記制御手段により、前記ピストンを前記ディスクロータに接近させる量は、前記ノックバック検出手段が検出する車両の旋回状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項17に記載のブレーキ装置。
【請求項19】
前記ノックバック検出手段は、前記車両の悪路走行状態に基づいてノックバックを検出することを特徴とする請求項16に記載のブレーキ装置。
【請求項20】
ノックバックの要因が解除されたとき、前記制御手段により、前記ピストンを前記ディスクロータに接近させる量は、前記ノックバック検出手段が検出する車両の悪路走行状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項19に記載のブレーキ装置。
【請求項1】
ブレーキペダルの操作により、車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧する押圧手段を作動する第1の制動機構と、前記押圧手段を前記ブレーキペダルの操作とは関係なく作動可能な第2の制動機構と、該第2の制動機構の作動を制御する制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記押圧手段が前記ディスクロータから離間する方向へ移動する離間移動を検出する検出手段を備え、該検出手段によって前記押圧手段の離間移動が検出された後、該離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記第2の制動機構は、液圧ポンプを有する液圧機構であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記液圧機構において、前記押圧手段の離間移動に伴う離間液量を検出する液量検出手段を備え、前記離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記離間液量に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記車両の旋回状態を検出し、前記離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記検出手段が検出した前記車両の旋回状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記液圧機構において、前記押圧手段の離間移動の際の離間液圧を検出する液圧検出手段を備え、前記離間移動の要因が解除されたとき、前記第2の制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記離間液圧に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
ブレーキペダルの操作により、車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧する押圧手段を作動するメインの制動機構と、前記押圧手段を前記ブレーキペダルの操作とは関係なく作動可能なサブの制動機構と、該サブの制動機構の作動を制御する制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記押圧手段が前記ディスクロータからノックバックするのを検出するノックバック検出手段を備え、該ノックバック検出手段によるノックバックの検出後、該ノックバックの要因が解除されたとき、前記サブの制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項7】
前記ノックバック検出手段は、前記車両の旋回状態に基づいてノックバックを検出することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
ノックバックの要因が解除されたとき、前記サブの制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記ノックバック検出手段が検出する車両の旋回状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項7に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
前記ノックバック検出手段は、前記車両の悪路走行状態に基づいてノックバックを検出することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項10】
ノックバックの要因が解除されたとき、前記サブの制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、前記ノックバック検出手段が検出する車両の悪路走行状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項7に記載のブレーキ装置。
【請求項11】
車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧する押圧手段を作動する制動機構と、該制動機構をブレーキペダルの操作に基づいて制御し、また、前記ブレーキペダルの操作とは関係なく前記制動機構を制御可能な制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記押圧手段が前記ディスクロータから離間する方向に移動する離間移動を検出する検出手段を備え、該検出手段によって前記押圧手段の離間移動が検出された後、該離間移動の要因が解除されたとき、前記制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項12】
前記制動機構は、液圧ポンプを有する液圧機構であることを特徴とする請求項11に記載のブレーキ装置。
【請求項13】
離間移動の要因が解除されたとき、前記制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、離間移動時の前記押圧手段の移動量に基づいて決定した液量によるものであることを特徴とする請求項12に記載のブレーキ装置。
【請求項14】
前記制動機構は、電動アクチュエータを有する電動機構であることを特徴とする請求項11に記載のブレーキ装置。
【請求項15】
離間移動の要因が解除されたとき、前記制動機構により、前記押圧手段を前記ディスクロータに接近させる量は、離間移動時の前記押圧手段の移動量に基づいて決定されることを特徴とする請求項14に記載のブレーキ装置。
【請求項16】
車両のディスクロータにブレーキパッドを押圧するピストンを作動する制動機構と、該制動機構をブレーキペダルの操作に基づいて制御し、また、前記ブレーキペダルの操作とは関係なく前記制動機構を制御可能な制御手段とを備えたブレーキ装置において、
非制動中に前記ピストンが前記ディスクロータからノックバックするのを検出するノックバック検出手段を備え、該ノックバック検出手段によってノックバックが検出された後、該ノックバックの要因が解除されたとき、前記制御手段により、前記ピストンを前記ディスクロータに接近させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項17】
前記ノックバック検出手段は、前記車両の旋回状態に基づいてノックバックを検出することを特徴とする請求項16に記載のブレーキ装置。
【請求項18】
ノックバックの要因が解除されたとき、前記制御手段により、前記ピストンを前記ディスクロータに接近させる量は、前記ノックバック検出手段が検出する車両の旋回状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項17に記載のブレーキ装置。
【請求項19】
前記ノックバック検出手段は、前記車両の悪路走行状態に基づいてノックバックを検出することを特徴とする請求項16に記載のブレーキ装置。
【請求項20】
ノックバックの要因が解除されたとき、前記制御手段により、前記ピストンを前記ディスクロータに接近させる量は、前記ノックバック検出手段が検出する車両の悪路走行状態に基づいて決定されることを特徴とする請求項19に記載のブレーキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−245975(P2012−245975A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168429(P2012−168429)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2008−11708(P2008−11708)の分割
【原出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2008−11708(P2008−11708)の分割
【原出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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