説明

プラスチックを含有する絶縁層を備えたトナーローラ

トナーローラは、ローラ状の基体(12)を備えており、基体(12)に、絶縁層(14)が配置されており、絶縁層(14)は、プラスチックを含有している。好適には絶縁層は、プラスチックの他に充填剤、たとえば導電カーボンブラックおよび酸化セラミックを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタまたはコピー機の現像ステーションに用いるためのトナーローラであって、ローラ状の基体を備えており、基体は、導電性の表面を有しており、表面に、絶縁層が配置されているものに関する。さらに本発明は、トナーローラを製造する方法に関する。
【0002】
トナーローラは、プリンタまたはコピー機の現像ステーションにおける重要な構成要素を成している。典型的なトナーローラは、アプリケータローラとして用いられ、アプリケータローラは、中間担体、たとえば感光ドラムまたは感光ベルトに対向している。アプリケータローラは、運転中にトナー粒子から成る均質な層を支持する。中間担体の表面は、印刷しようとする像に応じた電荷潜像を備えている。電場の力に基づいて、トナー粒子は中間担体の表面から引き付けられ、場合によっては空隙を越えてアプリケータローラから中間担体の表面に搬送され、電荷潜像に応じて配置される。
【0003】
ローラ状の基体は、導電性の表面を備えており、これによってトナー粒子は電圧を用いてトナー粒子の表面に保持することができる。現像ステーションの内側で中間担体に向かってフラッシュオーバーが生じないようにするために、トナーローラは、絶縁層を備える必要がある。絶縁層は、トナー粒子と強磁性のキャリヤ粒子とを含有する現像剤混合物に対して十分な耐磨耗性を有する必要がある。
【0004】
米国特許第6327452号明細書および米国特許第5473418号明細書においてトナーローラが公知であり、トナーローラは、絶縁層として、セラミック層を用いている。このセラミック層は、湿気を吸収することのできる多孔を備えており、これにより特にトナー粒子を受け取り、引き渡すというトナーローラの機能が抑制される。
【0005】
本発明の課題は、トナーローラおよびトナーローラを製造する方法を改善して、トナーローラの表面が、トナー層を支持するのに適切で、高電圧耐性を有し、耐磨耗性を有するものを提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成を有するトナーローラによって解決される。有利な改良形は、従属請求項に記載した。
【0007】
本発明によれば、絶縁層は、プラスチックを含有していて、150μm〜1000μmの範囲の層厚を有している。絶縁層は、シリンダスリーブとして構成され、基体の表面と接触する。
【0008】
好適な形態によれば、絶縁層は、プラスチックの他に充填剤を含有しており、絶縁層は、所定の電気抵抗と、所定の高電圧耐性と、所定の耐磨耗性とを提供する。プラスチック材料として、特にウレタン(たとえばPUポリウレタン)またはフッ化炭素材料(ポリフルオロカーボン、たとえばPTFE(テフロン(R))、ECTFE、ETFE、PVDF、PFE)のグループが考えられる。ウレタンのグループから成るプラスチックは、イソシアネート基もしくはNCO基を特徴としており、ポリフルオロカーボンのグループから成るプラスチックは、フッ素原子によるCH基の置換を特徴としている。両方のプラスチックグループは、多量の充填剤を混合できることを特徴としている。さらに両方のプラスチックグループは、ポリマー構造に基づいて格別な耐磨耗性を有している。電気抵抗を調節するために、導電性の添加物が用いられ、好適には導電カーボンブラックまたはナノ粒子、たとえばカーボンナノチューブが用いられる。プラスチックに混合される充填剤として、特に非プラスチック材料、たとえばSiO、炭素、酸化セラミック、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび/または酸化クロムおよびこれらの混合物が考えられる。
【0009】
本発明の別の観点から、トナーローラ製造方法を記載した。
【0010】
以下に、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】トナーローラの横断面図および縦断面図である。
【図2】現像ステーションにおけるトナーローラの使用状態を示す図である。
【図3】現像ステーションにおける電位の状態を示す図である。
【0012】
図1には、上側にトナーローラ10を横断面図で示し、下側に縦断面図で示した。トナーローラ10は、ローラ状の基体12と絶縁層14とを備えている。絶縁層14は、150μm〜1000μm、好適には400μm〜600μmの範囲の層厚を有している。基体12は、本形態では、軸受けジャーナル16を備えた内実ローラとして形成することができる。また基体12として中空ローラを用いてもよい。好適にはローラ状の基体12は、アルミニウムまたはアルミニウム合金(アルミニウム−鍛造用合金(Alminium-Knetlegierung)、アルミニウム−鋳造用合金およびアルミニウム−ダイカスト用合金を含む)、もしくは純粋なチタンまたはチタン合金から成っている。選択的に基体は、プラスチックから製作することができ、基体は、導電性の表面を備えている。基体12の導電性の表面は重要である。なぜならば導電性の表面に直流電圧が印加され、トナー粒子が電場の力に基づいて絶縁層14の外面に引き付けられるからである。基体12もしくは基体12の導電性の表面における導電性材料の固有抵抗は、10.0Ω・mm2/mより小さい。帯電防止効果を有する層が設けられており、これによって場合によっては生じる表面電荷が導出可能である(相対値(層材料の固有抵抗):106 Ohm cm < 層 <1014 Ohm cm、もしくは絶対値(層の絶対抵抗)<108 Ohm)。このような要求から層厚が規定される。ローラ表面に対する、基体に印加される直流電場の、結果として得られる減衰は、最大で80%でなければならない。層構造の容量は、小さな容量性抵抗を得るために、100pF(piko−Farad)〜1μF(Mikro−Farad)でなければならない。理想的には、層の比誘電率は7より大きい。層の電気的な値として、正弦振動では0Hz〜1Hzの周波数範囲が当てはまる。
【0013】
図2には、現像ステーション20におけるトナーローラ10の使用状態を示した。トナー粒子と強磁性のキャリヤ粒子とを含有する現像剤混合物22は、混合物取出部材24によって、着肉ローラ26に搬送される。着肉ローラ26は、マグネットステータとしてマグネットエレメント28を備えており、マグネットエレメント28は、磁性を有するキャリヤ粒子を引き付ける。着肉ローラ26のスリーブが回転すると、キャリヤ粒子は、スリーブに付着するトナー粒子と共に、さらに上方に搬送される。着肉ローラ26とトナーローラ10との接触部分30で、トナー粒子とキャリヤ粒子とは分離する。トナー粒子は、電場の力に基づいて、トナーローラ10の絶縁層14に保持されて、上方に搬送され、これに対して強磁性のキャリヤ粒子は、矢印P1の方向に、現像剤混合物22に向かって戻されるか、またはクリーニングローラ34に向かって搬送される。
【0014】
トナーローラの表面に付着するトナー粒子は、中間担体32、たとえば帯状の感光体の感光層の傍にガイドされ、中間担体32の感光層とトナーローラ10の表面との間の電荷潜像に基づいて形成される電場の力により、感光層に飛翔し、像を着色する。トナーローラ10と中間担体32との接触部分における、トナー粒子の飛翔動作により、使用されるトナーローラ10は、多くの場合ジャンプローラ(Jump−Walze)とも呼ばれる。転写されないトナー粒子は、マグネットエレメント35を有するマグネットステータを備えたクリーニングローラ34から、強磁性のキャリヤ粒子を用いて除去される。除去されるトナー粒子およびキャリヤ粒子は、矢印P2の方向に再び現像剤混合物22に供給される。
【0015】
図3には、現像ステーション20における電位の状態を例示した。着肉ローラ26は、直流電圧電位を掛けられ、これに対してトナーローラ10は、直流電圧と重畳することができる交流電圧を掛けられる。クリーニングローラ34は、着肉ローラ26の電位とは逆の電位を掛けられる。掛けられる電位は、トナー粒子が一方では現像剤混合物22から上方に中間キャリヤ32に向かって搬送され、他方ではトナーローラ10から再び離間することができるように選択されており、これによって中間担体32の感光層に飛翔することができる。
【0016】
着肉ローラ26とトナーローラ10との間、ならびにトナーローラ10とクリーニングローラ34との間の接触部分では、比較的狭いギャップ(典型的には1.0mm)に起因して、このギャップを通って搬送される固い強磁性のキャリヤ粒子に基づいて、ローラ表面の高い機械負荷が生じる。したがってトナーローラ10上の絶縁層14は、耐磨耗性を有する必要があり、これによって磨耗は小さく、トナーローラ10の長い耐用期間が得られる。さらに絶縁層14は、印加される高電圧に基づいて、個々のローラの間に短絡が生じないように形成する必要がある。したがってトナーローラ10では絶縁層が必要であり、これに対して着肉ローラ26およびクリーニングローラ34には、導電性の層を設けることができる。トナーローラ10に印加される交流電圧のプラスの半波では、クリーニングローラ34に対する電位差は、約2kVssであり、マイナスの半波では、3kVss以下である。したがって高品質の運転は、十分な高電圧耐性がトナーローラ10の絶縁層14によって所与されている場合にしか実現されない。一方では高い耐摩耗性の要求、他方では高い高電圧耐性の要求によって、絶縁層14にとって適切な材料を見出すのは困難である。絶縁層14の厚さは、典型的には150μm〜1000μmである。薄過ぎる層では、高電圧によるフラッシュオーバーが生じ得る。さらに薄い層では、耐摩耗性に関して問題が生じる。厚過ぎる絶縁層では、電気絶縁効果が大き過ぎる。
【0017】
以下に、絶縁層14の実施例を説明する。
【0018】
実施例1
絶縁層は、プラスチックの他に充填剤から成っている。充填剤に、導電性の添加物、特に導電カーボンブラックが供給される。充填剤としてニッケル−プラスチック、たとえばSiO、炭素、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび/または酸化クロムが考えられる。絶縁層に含まれる充填剤の含量は、0〜15質量パーセント、好適には3.6〜15質量パーセントである。絶縁層に含まれる導電性の添加物の含量は、0.1〜0.5質量パーセント、好適には0.2〜0.28質量パーセントである。
【0019】
実施例2
実施例1と同様、ただしプラスチックとしてPTFE(テフロン(R))が設けられる。
【0020】
実施例3
実施例1と同様、ただしプラスチックとしてPVDF(たとえばカイナー(R)、PA(ポリアミド)、PE、PVC、ポリオレフィンまたはポリウレタン(PU)が用いられる。
【0021】
実施例4
絶縁層は、純粋な、つまり添加物の加えられていないポリウレタン(PU)から成っている。
【0022】
これらの実施例により得られる絶縁層は、以下の特性を有している。
a)絶縁層は、強磁性のキャリヤ粒子および鉄粉に対する擦過に強く、耐磨耗性を有しており、
b)絶縁層は、電気絶縁性を有しており、
c)絶縁層は、少なくとも2kVssまでの高電圧耐性を有しており、
d)絶縁層の固有接触抵抗は、少なくとも107Ωcmであり、
e)表面特性は、周辺環境の影響、たとえば空気の湿度、温度による影響をほとんど受けず、
f)表面粗さは、平均粗さRzとして2μmよりも小さく、
g)表面の非円形度は7μmよりも小さく、
h)表面は、好適には非付着性を有している。
【0023】
提案した絶縁層は、十分な高電圧耐性を有している。これによって外側表面が剥離して破損することはなく、これによってトナーローラひいては現像ステーションの長い耐用期間が得られる。記載の絶縁層は、十分な耐摩耗性を有している。絶縁層にプラスチックを用いたことによって、表面は、良好に封止されるので、表面は、湿気を吸収しない。湿気の吸収は、多孔の形成された表面では生じ得る。特定のプラスチックでは、後処理、たとえば研磨が省略される。
【0024】
以下に、トナーローラを製造するための異なる幾つかの製造方法を説明する。
【0025】
製造方法1
前述の実施例に従って、粒子状または粉末状のプラスチックを、粒子状または粉末状の充填剤と混合して、分散液または懸濁液を形成する。基体は、分散液に浸漬され、基体に分散液の薄い層が被覆される。層が乾燥したあとで、層を、切削加工で処理(たとえば研磨による)し、これによって、要求される幾何学寸法、要求される粗さおよび表面構造が得られる。
【0026】
製造方法2
プラスチックと充填剤とから成る混合物からシートを製作する。シートを、2つの端部で相互に溶接して、基体に取り付ける。そのあとで後処理を行い、幾何学寸法が得られる。
【0027】
製造方法3
プラスチックと充填剤とから成る混合物から収縮チューブを製作し、基体に取り付ける。次いで後処理を行う。
【0028】
製造方法4
プラスチックと充填剤とから成る混合物を用いて、基体を、粉末被覆方法(たとえば焼結被覆(Wirbelsintern)、プラスチック粉末成形、射出成形、静電被覆)で被覆する。次いで後処理を行う。
【0029】
前述の製造方法では、プラスチックと充填剤とから成る混合物の代わりに、純粋なポリウレタンを用いてもよい。
【0030】
基体の材料として、複合材料、たとえばガラス複合材料(たとえばガラス繊維強化プラスチック)または炭素繊維複合材料(たとえば炭素繊維強化プラスチック)も適している。そのような複合材料では、プラスチックの含量は、50%を下回る。同様に材料として、セラミックまたはガラスが、たとえば管の状態で用いられる。これらの材料は、その表面で、導電層を有している。基体に導電性の炭素繊維、たとえば巻成された炭素繊維管を用いると、炭素繊維管が十分な導電性を有している場合、特別に取り付けられる導電層を省略することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 トナーローラ、 12 基体、 14 絶縁層、 16 軸受けジャーナル、 20 現像ステーション、 22 現像剤混合物、 24 混合物取出部材、 26 着肉ローラ、 28 マグネットエレメント、 30 接触部分、 P1,P2 方向矢印、 32 中間担体、 34 クリーニングローラ、 35 マグネットエレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタまたはコピー機の現像ステーションに用いるためのトナーローラであって、
ローラ状の基体(12)を備えており、該基体(12)は、導電性の表面を有しており、該表面に、絶縁層(14)が配置されているものにおいて、
該絶縁層(14)は、プラスチックを含有し、かつ150μm〜1000μmの範囲の層厚を有していることを特徴とする、トナーローラ。
【請求項2】
絶縁層(14)は、プラスチックの他に充填剤を含有している、請求項1記載のトナーローラ。
【請求項3】
充填剤は、導電性の添加物、特に導電カーボンブラックまたはナノ粒子を含有している、請求項2記載のトナーローラ。
【請求項4】
充填剤は、SiO、炭素、酸化セラミック、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび/または酸化クロムを含有している、請求項3記載のトナーローラ。
【請求項5】
絶縁層(14)に含まれる充填剤の含量は、0〜15質量パーセントである、請求項2から4までのいずれか1項記載のトナーローラ。
【請求項6】
絶縁層(14)に含まれる導電性の添加物の含量は、0.1質量パーセント〜0.5質量パーセント、好適には0.2質量パーセント〜0.28質量パーセントの範囲にある、請求項1から5までのいずれか1項記載のトナーローラ。
【請求項7】
絶縁層(14)用のプラスチックとして、PTFEが設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のトナーローラ。
【請求項8】
絶縁層は、純粋なポリウレタンから成っている、請求項1記載のトナーローラ。
【請求項9】
絶縁層(14)は、収縮チューブとして、基体に取り付けられる、請求項1から8までのいずれか1項記載のトナーローラ。
【請求項10】
絶縁層(14)は、端部で溶接されるシートによって形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のトナーローラ。
【請求項11】
ローラ状の基体は、アルミニウム、または、アルミニウム鍛造用合金、アルミニウム鋳造用合金およびアルミニウムダイカスト用合金を含むアルミニウム合金から形成されているか、もしくは、純粋なチタンまたはチタン合金から形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のトナーローラ。
【請求項12】
基体(12)は、プラスチック、ガラス、セラミック、もしくは、複合材料、好適にはガラス複合材料または炭素繊維複合材料を含有しており、基体(12)は、導電性の表面を備えている、請求項1から10までのいずれか1項記載のトナーローラ。
【請求項13】
プリンタまたはコピー機の現像ステーションに用いるためのトナーローラを製造する方法であって、
導電性の表面を有する、ローラ状の基体(12)に、絶縁層(14)を設け、
該絶縁層(14)は、プラスチックを含有し、かつ150μm〜1000μmの範囲の層厚を有することを特徴とする、トナーローラを製造する方法。
【請求項14】
絶縁層(14)を、収縮チューブとして、基体に取り付ける、請求項13記載の方法。
【請求項15】
絶縁層(14)を、端部で溶接されるシートによって形成する、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
絶縁層(14)を、後続の乾燥プロセスを有する含浸プロセスで形成する、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
絶縁層(14)を、粉末被覆法または射出成形法によって製作する、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−509431(P2011−509431A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541787(P2010−541787)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050200
【国際公開番号】WO2009/087208
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(397018925)オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (68)
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensallee 2, D−85586 Poing, Germany
【Fターム(参考)】