プラズマ処理装置
【課題】複数の基板を載置した回転テーブルを回転させてプラズマ処理を行うにあたり、基板に対して面内均一性の高い処理を行うこと。
【解決手段】回転テーブル2の周方向に複数のプラズマ発生部80を備えた活性化ガスインジェクター220からウエハW上のシリコン酸化膜に対して処理ガスのプラズマを供給して改質処理を行う。この時、夫々のプラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)の長さ寸法Rを変えることができるように構成し、回転テーブル2の中心部側から外周部側におけるウエハWの改質の度合い(プラズマの量)を調整する。
【解決手段】回転テーブル2の周方向に複数のプラズマ発生部80を備えた活性化ガスインジェクター220からウエハW上のシリコン酸化膜に対して処理ガスのプラズマを供給して改質処理を行う。この時、夫々のプラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)の長さ寸法Rを変えることができるように構成し、回転テーブル2の中心部側から外周部側におけるウエハWの改質の度合い(プラズマの量)を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内にて基板に対してプラズマにより処理を行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの一つである、真空雰囲気下で反応ガスにより基板に薄膜を成膜するための装置として、複数の半導体ウエハ等の基板を載置台に載置して、反応ガス供給手段に対して基板を相対的に公転させながら成膜処理を行う成膜装置が知られている。特許文献1〜3には、この種のいわばミニバッチ方式の成膜装置が記載されており、このような成膜装置は、例えば反応ガス供給手段から基板に対して複数種類の反応ガスを供給すると共に、これらの複数種類の反応ガスが夫々供給される処理領域同士の間に例えば物理的な隔壁を設けたり、あるいは不活性ガスをエアカーテンとして吹き出したりすることにより、これら複数の反応ガス同士が互いに混じり合わないようにして成膜処理を行うように構成されている。そして、この成膜装置を用いて、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを交互に基板に供給して原子層あるいは分子層を積層していく例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などを行っている。
【0003】
一方、既述のALD(MLD)法により薄膜の成膜を行うと、成膜温度が低い場合には、例えば反応ガスに含まれている有機物や水分などの不純物が薄膜中に取り込まれてしまう場合がある。このような不純物を膜中から外部へと排出して緻密で不純物の少ない薄膜を形成するためには、ウエハに対して例えばプラズマなどを用いた改質処理を行う必要があるが、薄膜を積層した後にこの改質処理を行うと、工程が増えるためコストアップに繋がってしまう。そこで、真空容器内においてこのようなプラズマ処理を行う手法も考えられるが、その場合にはプラズマを発生させるプラズマ発生部を反応ガス供給手段と共に載置台に対して相対的に回転させることになるので、載置台の半径方向においてウエハがプラズマに接触する時間に差が生じて、例えば載置台の中央側と周縁側とにおいて改質の度合いの揃わなくなるおそれがある。その場合には、ウエハの面内において膜質や膜厚にばらつきが生じたり、あるいはウエハに部分的にダメージを与えてしまったりすることになる。また、プラズマ発生部に大きな電力が供給される場合には、当該プラズマ発生部がすぐに劣化してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図8(a)、図8(b)
【特許文献2】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献3】米国特許公報6,634,314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の基板を載置した回転テーブルを回転させてプラズマ処理を行うにあたり、基板に対して面内均一性の高い処理を行うことのできるプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラズマ処理装置は、
真空容器内にて基板に対してプラズマにより処理を行うプラズマ処理装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板を載置するための複数の基板載置領域が形成された回転テーブルと、
この回転テーブルを回転させる回転機構と、
前記基板載置領域にプラズマ発生用のガスを供給するガス供給部と、
前記基板載置領域の通過領域に対向する位置において前記回転テーブルの中央部側と外周側との間に棒状に伸びるように設けられ、前記ガスにエネルギーを供給してプラズマ化するための主プラズマ発生部と、
この主プラズマ発生部に対して前記真空容器の周方向に離間して設けられ、当該主プラズマ発生部によるプラズマの不足分を補償するための補助プラズマ発生部と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記プラズマ処理装置は、以下のように構成しても良い。前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部に対して周方向に離間して設けられ、基板に対して成膜を行うための反応ガス供給手段を備えている構成。反応ガス供給手段は、回転テーブルの周方向に互に離間して形成された複数の処理領域に互に異なる反応ガスを夫々供給するために設けられ、
前記複数の処理領域の間には、互に異なる反応ガスが混合することを防止するための分離ガスが供給される分離領域が設けられ、
基板の表面には互に異なる反応ガスが順番に供給されることにより成膜されること。
前記主プラズマ発生部及、前記補助プラズマ発生部及びガス供給部は、回転テーブルの回転方向上流側から流れてくるガスが前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部とその上方の天井部との間を流れるように、共通のカバー体により覆われていること。
前記カバー体における前記回転方向上流側には、長さ方向に伸びる側面部の下縁を当該上流側に伸び出すようにフランジ状に屈曲させて形成したガス流の規制部が設けられていること。
前記主プラズマ発生部と前記補助プラズマ発生部とは、プラズマを発生させるための電力の供給源である高周波電源を共用し、
前記補助プラズマ発生部は、前記回転テーブルの中央側部位において基板載置領域へのプラズマの拡散を抑制するために、拡散抑制部を下方側に備えていること。
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部のうち少なくとも1つのプラズマ発生部は、前記回転テーブルの外周側における前記真空容器の側壁から当該真空容器内に気密に挿入され、
前記回転テーブル上の基板の表面に対して前記少なくとも1つのプラズマ発生部を当該少なくとも1つのプラズマ発生部の長さ方向に傾斜させるために、前記少なくとも1つのプラズマ発生部の基端部側に傾き調整機構が設けられていること。
前記補助プラズマ発生部は、前記主プラズマ発生部による基板載置領域の外縁側のプラズマの不足分を補償するために設けられたものであること。
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、互に長さ方向に平行に伸び、容量結合型プラズマを発生するための平行電極であっても良いし、誘導結合型プラズマを発生させるためのアンテナのうち、棒状のアンテナ部分に相当するものであっても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、複数の基板を載置した回転テーブルを回転させてプラズマ処理を行うにあたり、基板の載置領域の通過領域の対向する位置において前記回転テーブルの中央部と外周側との間に棒状に伸びると共に前記真空容器の周方向に互に離間して設けられた複数のプラズマ発生部によりプラズマ発生用のガスをプラズマ化しているので、基板に対して面内均一性の高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面を示す図3のI−I’線縦断面図である。
【図2】前記成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置の内部の一部の概略構成を示す縦断面図である。
【図5】前記成膜装置の内部の一部の概略構成を示す縦断面図である。
【図6】本発明の活性化ガスインジェクターの一例を示す拡大斜視図である。
【図7】前記成膜装置に設けられた活性化ガスインジェクターを示す縦断面図である。
【図8】前記活性化ガスインジェクターを示す成膜装置の縦断面図である。
【図9】前記活性化ガスインジェクターの各寸法を示す縦断面図である。
【図10】前記活性化ガスインジェクターにおいて発生するプラズマの濃度を示す模式図である。
【図11】前記成膜装置において改質により生成する薄膜の様子を示す模式図である。
【図12】前記成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図13】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図14】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図15】前記成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図16】前記成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図17】本発明の改質装置を概略的に示す平面図である。
【図18】前記成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図19】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図20】前記他の例の成膜装置の断面図である。
【図21】前記他の例の成膜装置の模式図である。
【図22】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図23】前記他の例成膜装置の斜視図である。
【図24】前記他の例の成膜装置を示す側面図である。
【図25】前記他の例の成膜装置を示す正面図である。
【図26】前記他の例の成膜装置を示す概略図である。
【図27】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図28】前記成膜装置の他の例を示す断面図である。
【図29】前記成膜装置の他の例を示す断面図である。
【図30】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図31】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図32】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図33】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図34】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図35】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図36】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図37】本発明の実施例を説明するための平面図である。
【図38】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図39】本発明の実施例を説明するための平面図である。
【図40】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図41】本発明の実施例において得られた結果を説明するための模式図である。
【図42】本発明の実施例を説明するための平面図である。
【図43】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図44】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図45】本発明の実施例において得られた特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のプラズマ処理装置を適用した実施の形態である成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により容器本体12の上端面に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に押し付けられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0011】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる回転機構である駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0012】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。この凹部24は、直径がウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハWを凹部24に落とし込むと、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うことになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。凹部24は、ウエハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位である。
【0013】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と、2本の分離ガスノズル41、42と、活性化ガスインジェクター220と、が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)に活性化ガスインジェクター220、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらの活性化ガスインジェクター220及びノズル31、32、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、回転テーブル2の回転中心に向かってウエハWに対向して水平に伸びるように取り付けられている。各ノズル31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは、真空容器1の外周壁を貫通している。反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段をなし、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給手段をなしている。前記活性化ガスインジェクター220については、後で詳述する。
【0014】
第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32は、夫々図示しない流量調整バルブなどを介して、Si(シリコン)を含む第1の反応ガスであるジイソプロピルアミノシランガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスとO2(酸素)ガスとの混合ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に夫々接続されており、分離ガスノズル41、42はいずれも流量調整バルブなどを介して分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源(図示せず)に接続されている。尚、以下においては、便宜上第2の反応ガスをO3ガスとして説明する。
【0015】
第1の反応ガスノズル31、32には、ガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向に亘って例えば10mmの間隔をおいて等間隔に配列されている。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハWに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
【0016】
既述の図1〜図3では省略しているが、反応ガスノズル31、32は、図4に示すように、処理領域P1、P2における天井面45から離間してウエハWの近傍に夫々設けられており、ノズル31、32の長さ方向に沿ってこれらのノズル31、32を上方側から覆うと共に、下方側が開口するノズルカバー120を備えている。分離ガスの大部分は、ノズルカバー120の下端側から長さ方向に沿って回転テーブル2の周方向両側に伸びる整流部材121と天井面45との間を通流し、回転テーブル2と反応ガスノズル31(32)との間を通流するものはほとんどなく、そのため各処理領域P1、P2において反応ガスノズル31(32)からウエハWへ供給される反応ガス濃度の低下が抑えられ、ウエハW表面に対する成膜が効率良く行われる。
【0017】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2及び図3に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。
【0018】
前記分離ガスノズル41、42における前記周方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間への第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からSi含有ガスが侵入することを阻止する。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いても良い。
【0019】
一方天板11の下面には、図5に示すように、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するように、かつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は、凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。
【0020】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図5では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図5に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0021】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図5に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部分における既述の第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1及び図3に示すように、夫々第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように各々排気管63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段である。
【0022】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1及び図5に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWをプロセスレシピで決められた温度、例えば300℃に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するためにヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0023】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0024】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(Si含有ガス及びO3ガス)が混合することを防止している。
【0025】
更に真空容器1の側壁には図2、図3に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0026】
次に、既述の活性化ガスインジェクター220について詳述する。活性化ガスインジェクター220は、ウエハWが載置される基板載置領域における回転テーブル2の中心側の内縁と回転テーブル2の外周側の外縁との間に亘ってプラズマを発生させ、このプラズマにより例えば成膜サイクルを行う(回転テーブル2が回転する)度に、Si含有ガスとO3ガスとの反応によってウエハW上に成膜された反応生成物であるシリコン酸化膜(SiO2膜)を改質するためのものである。この活性化ガスインジェクター220は、図6(a)、(b)に示すように、プラズマ発生用の処理ガスを真空容器1内に供給するための例えば石英からなるガス供給部をなすガス導入ノズル34と、ガス導入ノズル34から導入される処理ガスをプラズマ化するために当該ガス導入ノズル34よりも回転テーブル2の回転方向下流側に配置され、互いに平行な1対の棒状のシース管35a、35bからなるプラズマ発生部80と、これらのガス導入ノズル34及びプラズマ発生部80を上方側から覆う絶縁体例えば石英からなるカバー体221と、を備えている。プラズマ発生部80は、複数組例えば6組設けられている。尚、図6(a)はカバー体221を取った状態、図6(b)はカバー体221を配置した外観を示している。
【0027】
ガス導入ノズル34及び各々のプラズマ発生部80は、回転テーブル2上のウエハWと夫々平行になるように、また当該回転テーブル2の回転方向に対して直交するように、真空容器1の外周面に設けられた基端部80aから回転テーブル2の中心部側に向かって当該真空容器1内に夫々気密に挿入されている。また、これらのプラズマ発生部80は、夫々のプラズマ発生部80において回転テーブル2の半径方向で発生するプラズマの長さを変えるために、回転テーブル2の外周部側におけるウエハWの端部の上方位置から中心部側に伸びる先端部までの間の長さ寸法Rが各々のプラズマ発生部80毎に互いに異なっている。これらのプラズマ発生部80の長さ寸法(詳しくは後述の電極36a、36bの長さ寸法)Rについてその一例を挙げると、回転テーブル2の回転方向上流側から、夫々例えば50、150、245、317、194、97mmとなっている。これらのプラズマ発生部80(後述の補助プラズマ発生部82)の長さ寸法Rとしては、後述の実施例に示すように、例えばレシピや成膜する膜種に応じて種々変えても良い。
【0028】
回転テーブル2の回転方向上流側から4組目のプラズマ発生部80を主プラズマ発生部81と呼ぶと、この主プラズマ発生部81は、既述のように長さ寸法RがウエハWの直径(300mm)よりも長く設定されているので、ウエハWが載置される基板載置領域における回転テーブル2の中心側の内縁と回転テーブル2の外周側の外縁との間に亘ってプラズマを発生させるように構成されている。一方、この主プラズマ発生部81以外の5組のプラズマ発生部80を各々補助プラズマ発生部82と呼ぶと、既述のようにこれらの補助プラズマ発生部82の長さ寸法Rが主プラズマ発生部81よりも短く設定されているので、夫々の補助プラズマ発生部82の先端部(回転テーブル2の中心部側)と中心部領域Cとの間では、プラズマが存在しないか、あるいはプラズマが外周部側から僅かに拡散してくるようになっている。そのため、各々の補助プラズマ発生部82は、後述するように、主プラズマ発生部81による回転テーブル2の外周部側におけるプラズマの不足分を補償して、活性化ガスインジェクター220の下方領域において、回転テーブル2の中心部側と外周部側とにおける改質の程度が揃うように、当該中心部側よりも外周部側の方がプラズマの濃度が濃く(量が多く)なるように設定されている。
【0029】
各々のプラズマ発生部80は、互いに近接配置された1組のシース管35a、35bを備えている。これらシース管35a、35bは、例えば石英、アルミナ(酸化アルミニウム)、あるいはイットリア(酸化イットリウム、Y2O3)により構成されている。また、これらのシース管35a、35b内には、図7に示すように、例えばニッケル合金やチタンなどからなる電極36a、36bが各々貫挿されて平行電極をなしており、これらの電極36a、36bには、図3に示すように、例えば13.56MHz、例えば500W以下の高周波電力が真空容器1の外部の高周波電源224から整合器225を介して並列で供給されるように構成されている。これらのシース管35a、35bは、夫々の内部に貫挿された電極36a、36間の離間距離が10mm以下例えば4.0mmとなるように配置されている。尚、シース管35a、35bは、例えば石英の表面に例えば既述のイットリアなどがコーティングされたものでも良い。
【0030】
また、これらのプラズマ発生部80は、回転テーブル2上のウエハWとの間の離間距離が調整できるように、既述の基端部80aにより真空容器1の側壁に各々気密に取り付けられている。図2中37は、シース管35a、35bの基端側(真空容器1の内壁側)に接続された保護管であり、図6などでは描画を省略している。尚、図6以外では、シース管35a、35bを簡略化して示している。
【0031】
既述の図3に示すように、ガス導入ノズル34には、プラズマ発生用の処理ガスを供給するプラズマガス導入路251の一端側が接続されており、このプラズマガス導入路251の他端側は、2本に分岐して各々バルブ252及び流量調整部253を介してプラズマを発生させるためのプラズマ生成ガス(放電ガス)例えばAr(アルゴン)ガスが貯留されたプラズマ生成ガス源254と、プラズマの発生(連鎖)を抑制するために放電ガスよりも電子親和力の大きい局所放電抑制用ガス(添加ガス)例えばO2ガスが貯留された添加ガス源255と、に夫々接続されている。そして、既述のガス導入ノズル34に対してこれらの放電ガス及び添加ガスを処理ガスとして供給するように構成されている。図6(a)中341は、ガス導入ノズル34の長さ方向に沿って複数箇所に設けられたガス孔である。この処理ガスとしては、ArガスやO2ガス以外にも、例えばHe(ヘリウム)ガス、H2ガス及びOを含むガスのうちのいずれかを用いても良い。
【0032】
図6(b)中221は、既述のカバー体であり、ガス導入ノズル34及びシース管35a、35bが配置された領域を上方側及び側面(長辺方向及び短辺方向における両側面)側から覆うように配置されている。また、図6(b)中222は、活性化ガスインジェクター220の長さ方向に沿ってカバー体221の両側面の下端部から外側に向かってフランジ状に水平に伸び出す気流規制面であり、回転テーブル2の上流側から通流するO3ガスやN2ガスのカバー体221の内部領域への侵入を抑えるために、当該気流規制面222の下端面と回転テーブル2の上面との間の隙間が小さくなるように、また回転テーブル2の中心部側からガス流の速くなる回転テーブル2の外周側に向かうほど、その幅寸法uが広くなるように形成されている。回転テーブル2の外周側におけるカバー体221の側壁面には、導入口280が形成されており、既述の各プラズマ発生部80は、この導入口280内に基端側の保護管37が挿入された状態で真空容器1の側壁面に取り付けられている。カバー体221の長さ方向における両側面の上端部には、例えば天板11を利用してカバー体221を支持するために、互いに離間するように例えば2箇所に爪部300が形成されている。図8中223は、爪部300を用いてカバー体221を支持するために当該カバー体221と真空容器1の天板11との間に複数箇所に設けられた支持部材223であり、その位置については模式的に示している。
【0033】
図7に示すように、前記気流規制面222の下端面と回転テーブル2の上面との間の隙間寸法tは、例えば1mm程度に設定されている。また、気流規制面222の幅寸法uについて一例を挙げると、カバー体221の下方位置にウエハWが位置した時に、回転テーブル2の回転中心側のウエハWの外縁に対向する部位の幅寸法uは例えば80mm、真空容器1の内周壁側のウエハWの外縁に対向する部位の幅寸法uは例えば130mmとなっている。一方、カバー体221の上端面と、真空容器1の天板11の下面と、の間の寸法は前記隙間tよりも大きくなるように20mm以上例えば30mmに設定されている。そのため、回転テーブル2の回転方向上流側から流れてくるガス、つまり反応ガスと分離ガスとの混合ガスは、カバー体221と天板11との間を流れる。
【0034】
また、既述の電極36a(36b)、回転テーブル2上のウエハW及びカバー体221の間の位置関係について説明すると、この例では、図9に示すように、カバー体221の上面の厚み寸法h1、回転テーブル2の外周側におけるカバー体221の側壁面の幅寸法h2、カバー体221内の上面と電極36a(36b)との間の離間距離h3、電極36a(36b)と回転テーブル2上のウエハWとの間の離間距離h4は、夫々例えば4mm、8mm、9.5mm、7mmとなっている。また、保護管37と回転テーブル2上のウエハWとの間の距離は例えば2mmとなっている。
【0035】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶部101から制御部100内にインストールされる。
【0036】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にした後、圧力調整手段65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整すると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃に加熱する。また、反応ガスノズル31、32から夫々Si含有ガス及びO3ガスを吐出すると共に、ガス導入ノズル34からArガス及びO2ガスを100:2〜200:20程度の流量比となるように例えば夫々8slm、2slmで吐出し、夫々のシース管35a、35b間に13.56MHz、電力が400Wの高周波を並列に供給する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN2ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。
【0037】
この時、活性化ガスインジェクター220においては、ガス導入ノズル34から各ガス孔341を介して夫々のシース管35a、35bに向かって吐出されたArガス及びO2ガスは、シース管35a、35b間の領域に供給される高周波によって活性化されて、例えばArイオンやArラジカルなどのプラズマが生成する。このプラズマ(活性種)は、既述のように夫々のプラズマ発生部80において基端部側(回転テーブル2の外周部側)からの電極36a、36bの長さ寸法Rを調整していることから、図10に示すように、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方において量が多く(濃度が濃く)なるように発生して、活性化ガスインジェクター220の下方を回転テーブル2と共に移動(回転)するウエハWに向かって下降していく。この時、例えば回転テーブル2の回転によってプラズマが不安定化して局所的に発生しようとするが、処理ガスにO2ガスを混合しているので、Arガスのプラズマ化の連鎖が抑制され、プラズマの状態が安定化する。尚、既述のように夫々のプラズマ発生部80毎に発生するプラズマの長さ寸法が異なっているが、図10では、これらのプラズマ発生部80において発生するプラズマの量(密度)を纏めて概略的に示している。
【0038】
一方、回転テーブル2の回転により、ウエハWの表面には第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスが酸化されてシリコン酸化膜の分子層が1層あるいは複数層形成される。このシリコン酸化膜中には、例えばSi含有ガス中に含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。そして、このウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域に到達すると、前記プラズマによりシリコン酸化膜の改質処理が行われることになる。具体的には、例えばArイオンがウエハWの表面に衝突し、シリコン酸化膜から前記不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。従って、改質処理後のシリコン酸化膜は、緻密化によりウェットエッチングに対する耐性が向上することになる。
【0039】
この時、回転テーブル2が回転しているので、ウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域を通過する時の周速度は、当該回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方において速くなる。従って、回転テーブル2の外周部側では、中心部側よりもプラズマの供給される時間が短くなって改質処理の程度が例えば1/3程度にまで弱くなろうとするが、既述のように当該外周部において中心部側よりもプラズマの量が多くなるように各プラズマ発生部80を配置しているので、改質処理は、後述の実施例に示すように、回転テーブル2の中心部側から外周部側に亘って均一に行われることになる。そのため、シリコン酸化膜の膜厚(収縮量)及び膜質がウエハWの面内に亘って揃うことになる。こうして回転テーブル2の回転によりSi含有ガスの吸着、Si含有ガスの酸化及び改質処理が成膜サイクル毎に行われてシリコン酸化膜が順次積層されていくと、既述の元素の再配列が上下方向(N層目及び(N+1)層目)に積層された反応生成物間においても起こるので、図11に示すように、膜厚方向において膜厚及び膜質が面内及び面間に亘って均一な薄膜が形成されることになる。
【0040】
また、この真空容器1内には、活性化ガスインジェクター220と第2の反応ガスノズル32との間に分離領域Dを設けていないので、回転テーブル2の回転に引き連れられて、活性化ガスインジェクター220に向かって上流側からO3ガスやN2ガスが通流してくる。しかし、既述のように各プラズマ発生部80とガス導入ノズル34とを覆うようにカバー体221を設けているので、カバー体221の下方側(気流規制面222と回転テーブル2との間の隙間t)よりもカバー体221の上方側の領域が広くなっている。また、カバー体221の内部領域に対してガス導入ノズル34から処理ガスを供給しているので、当該内部領域が外部(真空容器1内)よりも僅かに陽圧になっている。従って、回転テーブル2の回転方向上流側から通流してくるガスは、カバー体221の下方側に入り込みにくくなっている。また、活性化ガスインジェクター220に向かって通流するガスは、回転テーブル2の回転によって上流側から引き連れられて来るので、回転テーブル2の半径方向内周側から外周側に向かうほど流速が速くなるが、回転テーブル2の内周側よりも外周側の気流規制面222の幅寸法uを大きく取っていることから、活性化ガスインジェクター220の長さ方向に亘ってカバー体221の内部へのガスの侵入が抑えられる。従って、活性化ガスインジェクター220に向かって上流側から流れてくるガスは、既述の図7に示すように、カバー体221の上方領域を介して下流側の排気口62に通流していく。そのため、これらのO3ガスやN2ガスは、高周波によって活性化などの影響をほとんど受けないので、例えばNOxなどの発生が抑えられ、真空容器1を構成する部材などの腐食が抑えられる。また、ウエハWもこれらのガスの影響をほとんど受けない。尚、改質処理によりシリコン酸化膜から排出された不純物は、その後ガス化してArガスやN2ガスなどと共に排気口62に向かって排気されていく。
【0041】
この時、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図12に示すようにSi含有ガスとO3ガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。
【0042】
また、この例では反応ガスノズル31、32及び活性化ガスインジェクター220が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばSi含有ガスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0043】
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウエハWを被処理基板とする場合例えば1rpm〜500rpm、プロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)、Si含有ガス及びO3ガスの流量は例えば夫々100sccm及び10000sccm、分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また1枚のウエハWに対する反応ガス供給のサイクル数、即ちウエハWが処理領域P1、P2の各々を通過する回数は目標膜厚に応じて変わるが、例えば1000回である。
【0044】
上述の実施の形態によれば、回転テーブル2を回転させてウエハW上にSi含有ガスを吸着させ、次いでウエハWの表面にO3ガスを供給してウエハWの表面に吸着したSi含有ガスを反応させてシリコン酸化膜を成膜するにあたって、シリコン酸化膜を成膜した後、回転テーブル2の周方向に複数のプラズマ発生部80を備えた活性化ガスインジェクター220からウエハW上のシリコン酸化膜に対して処理ガスのプラズマを供給して、成膜サイクル毎に改質処理を行っているので、緻密で不純物の少ない薄膜を得ることができる。この時、夫々のプラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)の長さ寸法Rを変えることができるので、例えばプロセスの種類などに応じて回転テーブル2の中心部側から外周部側におけるウエハWの改質の度合い(プラズマの量)を調整できる。
【0045】
従って、既述の例で説明したように、活性化ガスインジェクター220の下方領域を通過する速度に応じて回転テーブル2の中心部側の方が外周部側よりもプラズマの供給時間が長くなって改質処理が強くなる場合には、回転テーブル2の中心部側ではプラズマを発生させないかプラズマの発生(拡散)量が少ない補助プラズマ発生部82を主プラズマ発生部81と共に配置することによって、当該外周部におけるプラズマの量を中心部側よりも多くすることができるので、面内において膜厚及び膜質が揃うように改質処理を行うことができる。そのため、後述の実施例に示すように、強すぎる改質処理が行われることによって生じるウエハWへのダメージが形成されたり、あるいは改質処理の不十分な部位が生じたりすることを抑えることができる。即ち、回転テーブル2の中心部側から外周部側に向かって改質処理の度合いが弱くなる時には、回転テーブル2の外周部側において良好な改質処理を行うとすると、中心部側では改質処理が強くなりすぎてウエハWにダメージを与えてしまう場合があるし、中心部側において良好な改質処理を行おうとすると、外周部側では不十分な改質処理となってしまうおそれがある。そのため、このような場合には、回転テーブル2の中心部側から外周部側にかけて良好な改質処理を行おうとすると、処理条件などのパラメータの設定範囲が狭いということになる。一方、本発明では、回転テーブル2の半径方向において改質処理の度合いを揃えているので、ウエハWの面内に亘って良好な改質処理を行うことができる。そのため、本発明では、良好な改質処理を行うことのできるパラメータの設定範囲を広く確保できるので、自由度の高い成膜装置を得ることができる。
【0046】
また、改質処理を行うにあたって、複数組のプラズマ発生部80を配置することによって、シリコン酸化膜の改質に必要なエネルギーをこれら複数組のプラズマ発生部80に分散させている。そのため、1組のプラズマ発生部80によって改質処理を行う場合よりも、各々のプラズマ発生部80において発生するプラズマの量を少なくすることができるので、いわば穏和な状態のプラズマを広く形成することによって時間をかけて緩やかに改質処理を行うことになり、従ってウエハWに対するダメージを低減できる。これは別の見方をすると、例えば1組のプラズマ発生部80を用いて穏和なプラズマ条件に設定すると共に、回転テーブル2を低速で回転させて穏やかな条件で時間をかけて行う改質処理を短時間で処理するために、プラズマの供給される領域を広く取ることによって回転テーブル2を高速で回転させていると言える。そのため、プラズマによるダメージを抑えて良好な改質処理を行いながら、薄膜の成膜処理及び改質処理を速やかに行うことができる。
【0047】
また、複数のプラズマ発生部80を配置することによって、1組のプラズマ発生部80を用いた場合よりも各々のプラズマ発生部80に供給されるエネルギーが少なくなるので、各々のプラズマ発生部80において例えば発熱やプラズマによるスパッタリングによって生じる劣化を抑えることができる。そのため、例えばシース管35a、35bのスパッタリングによって生じる不純物(石英)のウエハWへの混入を抑えることができる。
【0048】
更に、真空容器1の内部において成膜サイクルを行う度に改質処理を行っており、いわば回転テーブル2の周方向においてウエハWが各処理領域P1、P2を通過する経路の途中において成膜処理に干渉しないように改質処理を行っているので、例えば薄膜の成膜が完了した後で改質処理を行うよりも短時間で改質処理を行うことができる。
【0049】
また、カバー体221により上流側から通流してくるガスの当該カバー体221の内部への侵入を抑えることができるので、これらのガスの影響を抑えて成膜サイクルの途中で改質処理を行うことができる。そのため、例えば第2の反応ガスノズル32と活性化ガスインジェクター220との間に専用の分離領域Dを設けなくても良いので、成膜装置のコストを抑えて改質処理を行うことができるし、またNOxなどの副生成ガスの発生を抑えて例えば装置を構成する部材の腐食を抑制できる。また、このカバー体221を絶縁体により構成しているので、カバー体221とプラズマ発生部80との間においてプラズマが形成されないため、当該カバー体221をプラズマ発生部80に近接配置することができ、そのため装置を小型化できる。
【0050】
更に、Arガスと共にO2ガスを供給してArガスのプラズマ化の連鎖を抑制することにより、活性化ガスインジェクター220の長さ方向において、また改質処理(成膜処理)を行う時間に亘って、プラズマの局所的な発生を抑えるようにしているので、改質処理をウエハWの面内及び面間において均一に行うことができる。また、電極36a、36bの離間距離を既述のように狭く設定していることから、ガスのイオン化に最適ではない高い圧力範囲(成膜処理の圧力範囲)であっても、低出力で改質処理に必要な程度にArガスを活性化(イオン化)することができる。
【0051】
既述の例においては、成膜処理を行う度に改質処理を行ったが、複数回例えば20回の成膜処理(サイクル)を行う度に改質処理を行っても良い。この場合において改質処理を行う時には、具体的にはSi含有ガス、O3ガス及びN2ガスの供給を停止して、ガス導入ノズル34から活性化ガスインジェクター220に処理ガスを供給すると共に、シース管35a、35bに高周波を供給する。そして、5枚のウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域を順番に通過するように回転テーブル2を例えば200回回転させる。こうして改質処理を行った後、再度各ガスの供給を再開して成膜処理を行い、改質処理と成膜処理とを順番に繰り返す。この例においても、既述の例と同様に緻密で不純物濃度の低い薄膜が得られる。この場合には、改質処理を行うときにはO3ガスやN2ガスの供給を停止しているので、既述の図6(a)に示すように、カバー体221を設けなくても良い。
【0052】
また、複数のプラズマ発生部80を設けるにあたって、既述の例ではこれらのプラズマ発生部80のうち1組を主プラズマ発生部81として設けて、他のプラズマ発生部80については当該主プラズマ発生部81よりも長さ寸法Rが短い補助プラズマ発生部82を配置したが、これらの長さ寸法Rについては後述の実施例に示すように種々変えても良く、例えば図13に示すように、6組のプラズマ発生部80の全てを同じ長さの主プラズマ発生部81として設けて、補助プラズマ発生部82を設けなくても良い。また、補助プラズマ発生部82としては、回転テーブル2の外周部側よりも中心部側において強く改質処理を行うようにプラズマの量を調整する場合には、例えば中心部領域Cから補助プラズマ発生部82の一端側を回転テーブル2に水平に外周部側に伸張させて、他端側をL字型に上方に向けて屈曲させて高周波電源224に接続しても良い。また、このような補助プラズマ発生部82を既述の回転テーブル2の外周部側から伸びる補助プラズマ発生部82と共に配置しても良いし、主プラズマ発生部81についても中心部領域Cから伸張させても良い。更に、回転テーブル2の中心部側と外周部側との間において回転テーブル2の周方向に直交するように各プラズマ発生部80を配置したが、例えば真空容器1の内壁から中心部領域Cに向けてプラズマ発生部80の一端側を伸張させると共に、当該一端側を例えば回転テーブル2の半径方向中央部において回転テーブル2の周方向に沿って例えば上流側に向けて円弧状に屈曲させ、当該中央部においてプラズマの発生量が多くなるようにしても良い。従って、「棒状の」プラズマ発生部80とは、直線状だけでなく、円弧状あるいは円状も含まれる。
【0053】
更に、既述の例では平行電極(電極36a、36b)を用いて容量結合型プラズマを発生させたが、コイル型の電極を用いて誘導結合型のプラズマを発生させても良い。この場合には、具体的には図14に示すように、真空容器1の側面から回転テーブル2の中心部側に向かって平行に棒状に伸びると共に、当該中心部側においてU字型に接続される電極(アンテナ)400を複数平行に配置して、これらの電極400の長さ寸法Rが互いに異なるようにしても良い。この例では、電極400を3組配置すると共に、これらの電極400の長さ寸法Rが回転テーブル2の回転方向上流側から下流側に向かって順次短くなる(例えば夫々310mm、220mm、170mm)ようにしている。図14中401は、これらの電極400の両端部に夫々接続された誘導結合型のプラズマを発生させるための共通の電源である。この例においても、回転テーブル2の半径方向においてプラズマの量を調整できるので、ウエハWの面内における改質の度合いを調整できる。この図14においても、これらの電極400及びガス導入ノズル34を覆うカバー体221が設けられているが、図示を省略している。
【0054】
更にまた、複数のプラズマ発生部80を設けるにあたって、これらのプラズマ発生部80を一つのカバー体221内に収納すると共に、ガス導入ノズル34を共通化して用いたが、各々のプラズマ発生部80毎に個別にガス導入ノズル34を配置しても良いし、例えば図15に示すように、更に各々のプラズマ発生部80及びガス導入ノズル34を覆うカバー体221を設けても良い。尚、この図15では、複数例えば2組のプラズマ発生部80を配置した例を示しており、1組については主プラズマ発生部81を配置し、他方のプラズマ発生部80としては補助プラズマ発生部82を配置している。
【0055】
また、既述の成膜装置を用いてALD法やMLD法などの成膜方法により成膜する例について説明したが、例えば成膜温度や反応ガスを変更することにより、CVD法により薄膜を成膜するようにしても良いし、この場合には図16に示すように、2種類の混合ガス例えばSiH4ガス及びO2ガスを反応ガスとして用いてSiO2からなる薄膜を成膜しても良い。
【0056】
更に、真空容器1内においてCVD法あるいはALD法などによる薄膜の成膜と共に改質処理を行ったが、例えば外部の装置において薄膜を成膜したウエハWに対して、既述の活性化ガスインジェクター220を用いて改質処理を行っても良い。この場合には、既述の成膜装置に代えて図17に模式的に示すプラズマ処理装置である改質装置が用いられる。この改質装置において薄膜の改質処理を行う場合には、真空容器1内の回転テーブル2上に、薄膜の形成されたウエハWを載置して回転テーブル2を回転させると共に、真空容器1内を真空排気する。そして、活性化ガスインジェクター220においてプラズマを発生させて薄膜の改質を行う。こうして回転テーブル2を例えば複数回回転させることにより、面内における膜厚及び膜質の均一な薄膜が得られる。尚、この図17では、改質装置の各部を模式的に示しており、例えば既述の搬送口15などについては記載を省略している。
【0057】
更に、既述の例では複数のプラズマ発生部80を配置するにあたって、これらのプラズマ発生部80のうち少なくとも1組について、回転テーブル2の中心部側から外周部側に亘ってプラズマを発生させる主プラズマ発生部81を設けたが、複数のプラズマ発生部80のうち複数例えば2組により主プラズマ発生部81を構成しても良い。具体的には、図18に示すように、複数のプラズマ発生部80のうち少なくとも1組を既述のように中心部領域Cから回転テーブル2の外周部側に向けて一端側を伸張させると共に、当該プラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)の他端側を例えばL字型に屈曲させて、整合器225を介して高周波電源224に接続する。また、この補助プラズマ発生部82と先端部が回転テーブル2の回転方向において重なりあうように、即ち回転テーブル2の中心部側から外周部側に亘ってプラズマが発生するように、この補助プラズマ発生部82よりも回転テーブル2の回転方向上流側あるいは下流側にずれた位置において、プラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)を真空容器1の外周側から回転テーブル2の中心部側に向けて伸張させる。こうしてこれら2組のプラズマ発生部80、80により主プラズマ発生部81が構成される。この場合においても、回転テーブル2の中心部側と外周部側とおける改質の度合いを調整することができるし、また1組のプラズマ発生部80により改質処理を行う場合よりもウエハWに対するダメージを低減できる。また、各々のプラズマ発生部80の劣化(ダメージ)についても低減できる。
【0058】
既述のシリコン酸化膜を成膜するための処理ガスとしては、第1の反応ガスとしてBTBAS[ビスターシャルブチルアミノシラン]、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、モノアミノシランなどを用いても良いし、TMA[トリメチルアルミニウム]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMAH[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]などを第1の反応ガスとして用いて、酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ストロンチウム膜、酸化チタン膜などを成膜しても良い。これらの原料ガスを酸化する酸化ガスである第2の反応ガスとしては、水蒸気などを採用しても良い。また、第2の反応ガスとしてO3ガスを用いないプロセス例えばTiN(窒化チタン)膜などにおいて当該TiN膜の改質を行う場合には、ガス導入ノズル34から供給するプラズマ発生用の処理ガスとしては、NH3ガスやN(窒素)を含むガスを用いても良い。
【0059】
既述の各々のプラズマ発生部80の配置の順番としては、長さ寸法Rが長くなるにつれて回転テーブル2の回転方向上流側から下流側に並べるようにしても良いし、あるいは長さ寸法Rが短くなるにつれて回転テーブル2の回転方向上流側から並べても良い。このプラズマ発生部80の数量としては、6組以外にも、2組以上であれば良い。更に、活性化ガスインジェクター220に処理ガスを供給するガス導入ノズル34としては、既述のようにカバー体221内の領域が当該カバー体221の外側の領域よりも陽圧になっているので、複数のプラズマ発生部80の下流側に配置しても良いし、あるいはカバー体221の天井面や回転テーブル2の外周部側の壁面にガス吐出孔を形成して、このガス吐出孔から処理ガスを供給しても良い。また、プラズマ発生部80としては、棒状の電極36a(400)を用いてプラズマを発生させたが、例えばレーザーなどの光エネルギーあるいは熱エネルギーなどによりプラズマを発生させる手段であっても良い。
【0060】
既述のプラズマ発生部80としては、回転テーブル2の中心側と外周側との間において、当該プラズマ発生部80の長さ方向に傾斜できるように構成しても良い。具体的には、各々のプラズマ発生部80は、図19及び図20に示すように、真空容器1の側壁部から当該真空容器1内に挿入されている。このプラズマ発生部80(保護管37)の挿入部における真空容器1の側壁には、第1のスリーブ550が貫通されており、この第1のスリーブ550内に保護管37が貫挿されている。第1のスリーブ550は、真空容器1の内部領域側の先端部の内周面が保護管37の外周面に沿うように形成されており、真空容器1の外部側における基端部の内周面が拡径している。そして、この第1のスリーブ550の拡径部と保護管37との間には、当該保護管37を周方向に亘って囲むように、例えば樹脂などからなるシール部材(O−リング)500が設けられている。これら第1のスリーブ550と保護管37との間の領域には、真空容器1の外側からシール部材500に対して進退自在に設けられたリング状の第2のスリーブ551が配置されている。この第2のスリーブ551によってシール部材500を真空容器1側に押圧することによって、保護管37がシール部材500を介して真空容器1に対して気密に保持されるようになっている。従って、保護管37(プラズマ発生部80)は、このシール部材500を基点として、真空容器1側の先端部が移動(昇降)自在に支持されていると言える。尚、図19ではこれらスリーブ550、551を省略している。
【0061】
プラズマ発生部80には、真空容器1の外側において、第2のスリーブ551から当該外側に向かって伸び出す保護管37の基端部を上下させる傾き調整機構501が設けられている。この傾き調整機構501は、保護管37の上下2箇所において、当該保護管37の長さ方向に沿うように各々設けられた本体部505、505を備えている。各々の本体部505は、基端側(真空容器1側)が既述の第1のスリーブ550または真空容器1の外壁面に固定されており、他端側には当該本体部505を上下方向に貫通するように、ネジ部502が螺合される螺合部503が形成されている。そして、本体部505の螺合部503にネジ部502を上側あるいは下側から螺合させることによって、真空容器1に対して保護管37の基端部を上昇または下降させた状態でプラズマ発生部80の姿勢を固定できるように構成されている。
【0062】
そして、傾き調整機構501によって保護管37の基端側を上下させると、シール部材500によって真空容器1の内部領域が気密に保たれたまま、図21に示すように、当該シール部材500による保護管37の支持部を支点として真空容器1内におけるプラズマ発生部80の先端部側が上下することになる。この例では、回転テーブル2上のウエハWの上面とプラズマ発生部80の下端との間の寸法Hは、回転テーブル2の外周側では9mmに設定され、回転テーブル2の中央側では8〜12mmの間で調整できるようになっている。尚、図21ではプラズマ発生部80を模式的に描画している。
【0063】
このようにプラズマ発生部80を長さ方向に傾斜させることによって、回転テーブル2の半径方向においてウエハWとプラズマ発生部80との間の寸法Hを調整できるので、後述の実施例に示すように、回転テーブル2の半径方向における改質の度合い(プラズマの量)を調整できる。即ち、既述の真空容器1内の圧力範囲(66.66Pa(0.5Torr)以上)では、真空度が低い(圧力が高い)ため、プラズマ中のイオンやラジカルなどの活性種が不活性化(死活)しやすい。従って、回転テーブル2上のウエハWに到達するプラズマの量(濃度)は、プラズマ発生部80とウエハWとの間の寸法Hが長くなる程少なくなる。そのため、プラズマ発生部80を傾斜させることにより、回転テーブル2の半径方向においてウエハWに到達する活性種の量を調整していると言える。
【0064】
そのため、例えば回転テーブル2の中心側において外周側よりも改質の度合いが大きくなる場合には、プラズマ発生部80の先端部を持ち上げて当該先端部と回転テーブル2上のウエハWとを離間させることによって、回転テーブル2の中心側と外周側とに亘って改質の度合いを揃えることができる。また、回転テーブル2の中心側において外周側よりも改質の度合いが小さくなる場合には、プラズマ発生部80の先端部を下降させて、当該プラズマ発生部80の先端部と回転テーブル2上のウエハWとを近接させる。この時、傾き調整機構501によりプラズマ発生部80の傾斜角度を調整すると共に複数のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを調整することによって、回転テーブル2の半径方向における改質の度合いを更に揃えることができる。
【0065】
この傾き調整機構501としては、全てのプラズマ発生部80に設けても良いし、これらプラズマ発生部80のうちの一つまたは複数に設けても良い。また、真空容器1の外側に傾き調整機構501を設けたが、真空容器1の内部領域において、当該真空容器1の内周面から中心部領域Cに向かって伸びる保護管37の下端部を昇降自在に支持するようにしても良い。尚、図19では真空容器1の一部を拡大して切り欠いて示しており、6つのプラズマ発生部80のうち一つのプラズマ発生部80を例に挙げて示している。
【0066】
また、既述の図7に示すように、互いに隣接するプラズマ発生部80、80において回転テーブル2の回転方向に沿って相対向する電極36a、36b同士の間の離間距離Aは、これら互いに隣接するプラズマ発生部80、80同士の間における放電を抑えるために長く取ることが好ましい。この離間距離Aは、例えばプラズマ発生部80に対して高周波電源224から供給する高周波電力値によって好ましい範囲の変動することもあるが、その一例を挙げると、例えばプラズマ発生部80を2つ設けると共に、これらプラズマ発生部80、80に供給する高周波電源224の電力値が800Wの場合には45mm以上具体的にはおよそ80mm以上である。
【0067】
更に、活性化ガスインジェクター220において回転テーブル2の半径方向における改質の度合いを調整するにあたって、既述の図6(a)では6本のプラズマ発生部80を設けると共に、プラズマ発生部80の長さ寸法Rをこれらプラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)毎に調整したが、図22に示すように、これらプラズマ発生部80の長さ寸法Rを互いに等しくすると共に、当該補助プラズマ発生部82から回転テーブル2上のウエハWへのプラズマの拡散を抑制するための拡散抑制板(拡散抑制部)510を各々の補助プラズマ発生部82毎に設けても良い。
【0068】
拡散抑制板510は、図23〜図25に示すように、補助プラズマ発生部82の長さ方向に沿って水平に伸びる例えば石英などの絶縁体からなる板状体であり、ウエハW側へのプラズマ(ラジカルやイオンなどの活性種)の拡散を抑制する役割を持っている。この拡散抑制板510は、各々の補助プラズマ発生部82の先端部側(回転テーブル2の中心部側)において、プラズマの発生する領域(電極36a、36b間の領域)を当該補助プラズマ発生部82の下方側から臨むように各々設けられている。そして、拡散抑制板510は、補助プラズマ発生部82の先端部よりも僅かに例えば5mm程度回転テーブル2の中心寄りの位置から、補助プラズマ発生部82の基端部に向かって各々伸び出している。各々の拡散抑制板510の回転テーブル2の中心側からの長さ寸法Gは、回転テーブル2の回転方向上流側から下流側に向かって夫々例えば220、120、120、220、270mmとなっている。従って、各々の補助プラズマ発生部82について、回転テーブル2の外周側におけるウエハWの端部の上方位置から拡散抑制板510の端部の上方位置までの長さである補助プラズマ発生部82の有効長をJ(図22参照)と呼ぶと、この有効長Jは、既述の図6における各々の補助プラズマ発生部82の寸法Rと同じ長さに各々設定されている。そのため、既述の例と同様に、各々の補助プラズマ発生部82は、主プラズマ発生部81による回転テーブル2の外周部側におけるプラズマの不足分を補償するために、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方においてプラズマの濃度が濃く(量が多く)なるように設定されていると言える。
【0069】
各々の拡散抑制板510は、図23にも示すように、プラズマ発生部80の長さ方向に沿って複数箇所例えば2箇所において、固定部511によってシース管35a、35bから吊り下げられている。各々の固定部511は、絶縁体例えば石英などにより構成されており、回転テーブル2の回転方向における拡散抑制板510の両端部の上面位置から各々上方側に伸び出すと共に、シース管35a、35bを上方側から覆うように水平に屈曲して互いに接続されている。この例では、回転テーブル2の回転方向における拡散抑制板510の幅寸法Bは、例えば70mm程度に設定されている。図25中Fは、各々のプラズマ発生部80における電極36a、36bの各々の中心線同士の間の離間距離であり、この離間距離Fは10mm以下例えば7mmとなっている。尚、図23〜図25では、カバー体221を省略している。
【0070】
この拡散抑制板510を設けることによって、各々の補助プラズマ発生部82において、回転テーブル2の中央側の領域では、回転テーブル2の周縁部よりもウエハWに供給されるプラズマの量が少なくなる。即ち、図26に模式的に示すように、電極36a、36b間において処理ガスのプラズマ(イオン及びラジカル)が発生すると、このプラズマは補助プラズマ発生部82の下方側を移動(公転)するウエハWに向かって下降しようとする。しかし、補助プラズマ発生部82と回転テーブル2上のウエハWとの間には拡散抑制板510が設けられているので、この拡散抑制板510によって回転テーブル2側へのプラズマの拡散が抑制されて、プラズマは拡散抑制板510の上面に沿って水平方向(回転テーブル2の回転方向上流側、下流側、回転テーブル2の中心側及び周縁側)に向かって拡散していく。既述のように、プラズマ中の活性種が不活性化しやすいので、拡散抑制板510により下方側への拡散の抑制されたプラズマは、水平方向に拡散するにつれて一部が不活性化(ガス化)する。そのため、この不活性化したプラズマ(ガス)がウエハWに接触したとしても、活性な(拡散抑制板510により拡散が抑制されていない)プラズマよりも改質の度合いが小さくなる。従って、拡散抑制板510の下方側では、拡散抑制板510の設けられていない基端部側よりも、プラズマによる改質の度合いが小さく抑えられることになる。ここで、後述の実施例に示すように、プラズマのうちラジカルはイオンよりも寿命が長い(不活性化しにくい)ので、拡散抑制板510を側方側から回り込んで活性なままウエハWに到達する場合もある。この場合であっても、拡散抑制板510を設けることによって、プラズマ中のイオンによる改質が抑制されることになる。
【0071】
この拡散抑制板510により、既述の図6に示した活性化ガスインジェクター220と同様の効果が得られる。また、各々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを互いに同じ長さにすることによって、各々のプラズマ発生部80に供給する高周波電力を揃えることができる。即ち、各々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rが互いに異なっている場合において、これらプラズマ発生部80に共通の高周波電源224から各々等しい電力を供給しようとしても、各々のプラズマ発生部80の静電容量値が異なっているため、長さ寸法Rの長いプラズマ発生部80には長さ寸法Rの短いプラズマ発生部80よりも多くの電力が供給されてしまう場合がある。そのため、ウエハWの載置領域の通過領域の内縁(回転テーブル2の中心側の端部)から前記通過領域の外縁(回転テーブル2の外周側)に亘って伸びるように設けられた1本のプラズマ発生部80を主プラズマ発生部81とすると、この主プラズマ発生部81よりも短く、主プラズマ発生部81に対する長さの寸法差が大きい補助プラズマ発生部82については、主プラズマ発生部81よりもプラズマが弱くなる(プラズマの密度が薄い)。従って、主プラズマ発生部81によるウエハWの載置領域の外方寄りの領域におけるプラズマの不足分を適切に補償しようとすると、高周波電源224の電力値の大きさなどの調整作業が難しくなる。そこで、補助プラズマ発生部82についても主プラズマ発生部81と同じ長さに設定し、拡散抑制板510の配置領域を調整して、見かけ上補助プラズマ発生部82の長さ寸法が短くなるように構成することが得策である。
【0072】
即ち、図22のように各々プラズマ発生部80の長さ寸法Rを互いに同じ長さに設定すると共に拡散抑制板510を用いることによって、各々の補助プラズマ発生部82の有効長Jを調整すれば、補助プラズマ発生部82毎に回転テーブル2の半径方向におけるプラズマの量を調整しながら、これらプラズマ発生部80に供給される高周波電力値を揃えることができる。そのため、回転テーブル2の半径方向におけるプラズマの量を各々のプラズマ発生部80毎に簡便に調整できる。更に、主プラズマ発生部81及び補助プラズマ発生部82として、共通の長さ寸法Rのプラズマ発生部80を用いることができるので、拡散抑制板510を取り替えるだけで長さ寸法Rを簡単に調整できるし、またコスト的に有利である。
【0073】
また、この拡散抑制板510と共に既述の傾き調整機構501を設けても良い。その場合には、プラズマの有無をいわばデジタル的に調整できる拡散抑制板510に加えて、回転テーブル2の半径方向に沿ってプラズマの量を徐々にいわばアナログ的に調整できる傾き調整機構501を設けているので、回転テーブル2の半径方向におけるプラズマの量(改質の度合い)の調整幅をより一層大きく取ることができる。
【0074】
既述の図22〜図26では、プラズマ発生部80の下方側に拡散抑制板510を設けたが、図27に示すように、プラズマ発生部80の周囲(下面、両側面、上面及び先端側)を覆うように概略箱型の拡散抑制板510を設けても良い。また、真空容器1内に拡散抑制板510を設けるにあたって、真空容器1の天板11から吊り下げても良いし、真空容器1の内壁側に固定するようにしても良い。拡散抑制板510の材質としては、石英以外にも例えばアルミナ(Al2O3)などの絶縁体を用いても良い。
【0075】
また、既述のヒータユニット7の周囲に設けられたカバー部材71として、図28及び図29のように構成しても良い。即ち、カバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び当該外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。この外側部材71bは、既述の排気口61、62の上方側においてはこれら排気口61、62と回転テーブル2の上方領域とを連通させるために例えば円弧状に切りかかれて排気領域E1、E2をなし、屈曲部46の下方側においては上端面が当該屈曲部46に近接するように配置されている。また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、当該ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁から真空容器1の底面部14の中央に形成された突出部12aの上端部の間を周方向に亘って接続する例えば石英からなる覆い部材7aが設けられている。
【実施例】
【0076】
続いて、本発明の効果を確認するために行った実施例について以下に説明する。
(実施例1)
まず、既述の成膜装置において、1組のプラズマ発生部80を設けた場合と比較して、複数組この例では6組のプラズマ発生部80を設けることによって、回転テーブル2の半径方向において改質の度合いがどのように変わるか実験を行った。プラズマ発生部80を6組設ける場合には、全てのプラズマ発生部80の長さ寸法Rを同じ長さ(300mm)に設定した場合(6対として記載)と、夫々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを例えば回転テーブル2の上流側から50、150、245、317、194、97mmに夫々設定した場合とにおいて実験を行った。また、改質の度合いを評価するにあたり、活性化ガスインジェクター220を用いずに150nmのシリコン酸化膜を予めウエハW上に形成しておき、その後このウエハWに対して改質処理を行って処理の前後における膜厚差を計算して、収縮率(=(改質処理前の膜厚−改質処理後の膜厚)÷改質処理前の膜厚×100)を回転テーブル2の半径方向において複数箇所で求めた。改質処理は、以下の条件において行った。
(改質条件)
処理ガス:He(ヘリウム)ガス/O2ガス=2.7/0.3l/分
処理圧力:533Pa(4Torr)
高周波電力:400W
回転テーブル2の回転数:30rpm
処理時間:5分
【0077】
(実験結果)
図30に示すように、プラズマ発生部80が1組の場合には、回転テーブル2の中心部側において強く改質処理が行われており、外周部側に向かうにつれて改質処理が弱くなっていた。従って、1組のプラズマ発生部80を用いて回転テーブル2の外周部側において良好な改質処理を行おうとすると、既述のように中心部側では改質処理が強くなりすぎて、ウエハWがダメージを受けているおそれがあると考えられる。
一方、6組のプラズマ発生部80を用いた場合には、回転テーブル2の中心部側から外周部側に亘って改質処理が均一に行われていることが分かった。これは、既述のように6組のプラズマ発生部80によりシリコン酸化膜の改質に必要なエネルギーを分散しているためだと考えられる。また、プラズマ発生部80の長さ寸法Rを変更することにより、回転テーブル2の半径方向において改質の度合いを調整できることが分かった。
【0078】
(実施例2)
次に、実施例1と同じ条件においてシリコン酸化膜の改質処理を行って同様に評価したところ、図31に示すように、各プラズマ発生部80の長さ寸法Rを変更することによって、同様に回転テーブル2の半径方向において改質処理の度合いを調整できることが分かった。この例では、同じ長さ寸法Rのプラズマ発生部80を設ける場合よりも、夫々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを調整した方が良好な均一性となっていた。
【0079】
(実施例3)
続いて、夫々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを以下の表に示すように種々変えて同様の実験及び評価を行った。この実験において得られた結果についてもこの表に併せて示す。
(表)
【0080】
その結果、プラズマ発生部80の長さ寸法Rを夫々調整することにより、回転テーブル2の中心部側から外周部側にかけてのプラズマの量を調整することができ、その結果例えば膜厚のばらつきが小さくなるように改質できることが分かった。この表には、改質処理の前後において、回転テーブル2の半径方向で複数箇所において測定した膜厚差について纏めた結果を示している。また、プラズマ発生部80(電極)の長さ寸法Rは、回転テーブル2の上流側から下流側に並べた順番で記載している。尚、この表におけるばらつきとは、標準偏差の3倍を母平均で割った数値を示している。
【0081】
(実施例4)
次に、既述の実施例3のように各プラズマ発生部80の長さ寸法Rを種々変えた時において、膜厚の収縮率がウエハWの面内においてどのような分布となるか測定した。この結果を図32に示す。尚、この図32において、ウエハW上における各プラズマ発生部80の概略的な配置状態及び各々のプラズマ発生部80の長さ寸法についても記載している。
【0082】
この図32から、プラズマ発生部80の長さ寸法Rを調整することにより、膜厚の収縮率が面内において変わることが分かった。そのため、各々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを調整することにより、プラズマの量についても回転テーブル2の半径方向にて変化していると考えられる。また、各々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを50、150、245、317、194、97mmに設定した場合と、97、194、317、245、150、50mmに設定した場合とでは、即ちプラズマ発生部80の並びの順番を変更した時には、均一性がほとんど変化していないことが分かった。尚、プラズマ発生部80の長さ寸法Rを全て300mmとした場合と、6組のプラズマ発生部80について回転テーブル2の回転方向下流側から夫々50、150、245、317、194、97mmに設定した場合については、膜厚の収縮率の階調(色調)を変えて得られた結果について、図33に併せて示しておく。
【0083】
(実施例5)
次に、プラズマによりウエハWが受けるダメージについて評価を行った。この実験は、表面にリンのドープされた多結晶シリコン膜からなるアンテナ部を含むテストチップが多数形成された実験用のウエハWを用いて、このウエハWに対して以下の条件においてプラズマを供給し、その後各々のテストチップが受けたダメージ(プラズマ照射前のアンテナ部の面積÷プラズマ照射後の有効アンテナ面積)を評価した。尚、実験用のウエハWに形成されたダメージ層がシリコン酸化膜に覆われてしまわないように、成膜用のガスに代えてN2ガスを用いた。
(プラズマ供給条件)
処理ガス:Arガス/O2ガス=5/0.1slm
処理圧力:533Pa(4Torr)
高周波電力:400W(13.56Mz)
回転テーブル2の回転数:240rpm
処理時間:10分
成膜温度:350℃
成膜用のガス:N2ガス/O3ガス=200sccm/6slm
プラズマ発生部80の組数:6本(各長さ寸法R:50、150、245、317、194、97)、1本(300mm)
プラズマの暴露幅:約2cm(回転テーブル2が回転する度に1組のプラズマ発生部80毎に2cmのプラズマ領域を通り過ぎる)
【0084】
(実験結果)
その結果、図34に示すように、プラズマ発生部80が1組の場合には、回転テーブル2の外周部側から中心部側に向かう程、ダメージが大きくなっており、ウエハWに与えるプラズマのエネルギーを強くする程この傾向が増大していた。一方、6本のプラズマ発生部80を設けた場合には、回転テーブル2の半径方向においてダメージのばらつきはほとんど確認されなかった。また、プラズマのエネルギーを増やした場合においても、特に差異が現れなかった。
従って、既述のように、1組のプラズマ発生部80を用いた場合には、回転テーブル2の半径方向で改質の度合いにばらつきが生じて、面内に亘って均一な改質処理を行おうとすると、パラメータ(例えばプラズマのエネルギー)の選択範囲が限られてしまうが、複数例えば6組のプラズマ発生部80を配置すると、回転テーブル2の半径方向において改質のばらつきが小さくなり、パラメータの選択範囲が広くなることが分かった。尚、図34においては、既述のテストチップを模式的に格子状に示している。
【0085】
(実施例6)
既述のカバー体221によって当該カバー体221内へのガスの侵入がどの程度抑えられているか、以下の条件においてシミュレーションを行った。
(シミュレーション条件)
処理ガス:Arガス=20slm
処理圧力:533Pa(4Torr)
高周波電力:400W(13.56Mz)
回転テーブル2の回転数:30rpm
処理時間:10分
成膜温度:450℃
成膜用のガス:Si含有ガス/O3ガス=300sccm/10slm(200g/Nm3)
各々の分離領域Dに供給する分離ガス:N2=20slm
中心部領域Cの上方から供給する分離ガス:3slm
中心部領域Cの下方及びパージガス供給管73から供給する分離ガス:10slm
【0086】
(実験結果)
図35(a)、(b)に示すように、ガス導入ノズル34から供給されるArガスは、カバー体221内に均一に分散していることが分かった。また、同図(c)、(d)に示すように、回転テーブル2の上流側からカバー体221に向かって通流してくるN2ガスは、当該カバー体221内への侵入が防がれていることが分かった。従って、既述のように、カバー体221内では、ノズル32、34から吐出されるO3ガスと分離領域Dなどに供給されるN2ガスとの混合が防止され、NOxの生成が抑えられていると言える。
【0087】
(実施例7)
このカバー体221内において、処理ガス(Heガス)の分布や流速がどのようになっているかシミュレーションを処理圧力が533Pa(4Torr)、処理ガスの流量が3slmの条件において行ったところ、図36に示すように、処理ガスはこのカバー体221内において均一に分布しており、局所的な乱れが見られないことが分かった。
【0088】
(実施例8)
続いて、既述の傾き調整機構501を設けて、プラズマ発生部80の先端部の高さ位置を調整した場合に得られる薄膜の特性を評価した。この実験では、図37に示すように、既述の6本のプラズマ発生部80が設置される部位のうち回転テーブル2の上流側から1箇所目、3箇所目及び5箇所目にプラズマ発生部80を設けて、これら3本のプラズマ発生部80を用いて薄膜の改質を行った。そして、回転テーブル2の上流側から3箇所目のプラズマ発生部80の先端部の高さ位置(寸法H)を夫々8mm、10mm、11mm、12mmに設定すると共に、夫々の条件において得られる膜厚を測定した。
【0089】
この時、回転テーブル2の上流側から1箇所目及び5箇所目のプラズマ発生部80の先端部の寸法Hについては、夫々17.5mm及び16.5mmに設定した。これらのプラズマ発生部80の基端側(真空容器1の側壁側)のウエハWとの間の寸法は、いずれも9mmに設定した。尚、回転テーブル2の上流側から2箇所目、4箇所目及び6箇所目においてプラズマ発生部80を配置しない部位における真空容器1の側壁は、説明を省略するが気密に塞いでいる。また、成膜条件及び改質条件は以下の通りである。
【0090】
(成膜条件及び改質条件)
成膜温度(℃):450
処理圧力(Pa(Torr)):533.29(4)
回転テーブル2の回転数(rpm):20
高周波電力値(W):1200
【0091】
その結果、図38に示すように、プラズマ発生部80の先端部の高さ位置を調整することにより、回転テーブル2の半径方向における薄膜の膜厚を調整できることが分かった。また、この例では、寸法Hが11mmの場合に、回転テーブル2の半径方向において膜厚の最も均一な薄膜が得られた。尚、この図38において、膜厚が薄くなる程、改質が強く行われていると言える。
【0092】
(実施例9)
次に、図39のように回転テーブル2の上流側から1箇所目及び2箇所目にプラズマ発生部80、80を配置して、これら2本のプラズマ発生部80、80を用いて薄膜の改質を行った。この時のプラズマ発生部80、80において互いに近接する電極36同士の間の離間距離Fは、45mmに設定した。また、これらプラズマ発生部80、80の寸法Hについては、先端部では回転テーブル2の上流側から夫々14mm及び12mmに設定すると共に、基端側では夫々10.5mm及び10mmに設定した。実験条件は以下の通りであり、一度実験を行った後、プラズマ発生部80を取り外して再度取り付け直し、再び同じ内容の実験を行った。
【0093】
(実験条件)
成膜温度(℃):350
処理圧力(Pa(Torr)):533.29(4)
第1の反応ガス流量(sccm):600
第2の反応ガス(O3)流量:300g/Nm3(O2:6slm)
改質用のガス(O2)流量(slm):10
回転テーブル2の回転数(rpm):20
高周波電力値(W):800
【0094】
その結果、図40に示すように、成膜量(回転テーブル2の一回転あたりに成膜される成膜量)について、同じ実験条件にも拘わらずに互いに異なる結果となり、再現性が得られなかった。この理由は、別途行った実験を目視で確認したところ、図41に示すように、互いに隣接するプラズマ発生部80、80間において放電が起こり、ウエハW側に供給されるプラズマの量が不足しているためだということが分かった。図40の回転テーブル2の中心側から100mm程度の領域において膜厚の厚くなっている部分については、この目視による実験から、互いに隣接するプラズマ発生部80、80間で放電が起こっている領域に対応していた。従って、互いに隣接するプラズマ発生部80、80間の距離(離間距離A)を長く取ることが好ましいと言える。
【0095】
(実施例10)
この実験では、拡散抑制板510の有無によって得られる薄膜の膜質がどのようになるか確認した。プラズマ発生部80としては、図42(a)に示すように、回転テーブル2の上流側から1箇所目及び2箇所目に設けた。また、回転テーブル2の上流側から1箇所目に寸法Gが200mmの拡散抑制板510を設けた場合(図42(b))と、回転テーブル2の上流側から1箇所目及び2箇所目に寸法Gが200mm及び100mmの拡散抑制板510を夫々設けた場合(同図(c))とについて実験を行った。実験条件は以下の通りである。
【0096】
(実験条件)
成膜温度(℃):350(高周波を供給しない例では450)
処理圧力(Pa(Torr)):533.29(4)
第1の反応ガス流量(sccm):600
第2の反応ガス(O3)流量:300g/Nm3(O2:6slm)
改質用のガス(O2)流量(slm):10
回転テーブル2の回転数(rpm):20
高周波電力値(W):1200
【0097】
その結果、図43に示すように、プラズマ発生部80によって改質を行うことにより、高周波を供給しない場合(改質を行わない場合)と比較して、膜厚が薄くなって緻密な薄膜が得られていた。また、2本のプラズマ発生部80、80の両方に拡散抑制板510を設けた場合(図42(c))には、プラズマ発生部80の先端側(回転テーブルの中央側)では、基端側(回転テーブルの周縁側)よりも膜厚が厚くなっていた。そのため、図42(c)の構成では、プラズマ発生部80の先端側では基端側よりも改質効果が弱くなっており、拡散抑制板510によってウエハWへのプラズマの拡散が抑制されていることが分かった。
この時、回転テーブルの中央側の改質効果の弱くなる領域であっても、高周波を供給しないで実験を行った場合よりも膜厚が薄くなっている理由は、既述のようにプラズマ中のラジカルが拡散抑制板510の側方側を回り込んでウエハWに到達するか、あるいは回転テーブル2の周縁部側から中央部側にプラズマが拡散してきたためだと考えられる。
また、回転テーブル2の半径方向において拡散抑制板510よりも外周側では、拡散抑制板510を設けない場合に比べて、膜厚が薄くなって改質が強く行われていることが分かった。この理由は、拡散抑制板510を設けた領域のプラズマが回転テーブル2の外周側に回り込んでいるためではないかと考えられる。
【0098】
また、2本のプラズマ発生部80、80のうち回転テーブル2の上流側だけに拡散抑制板510を設けた場合(図42(b))には、回転テーブル2の半径方向において、拡散抑制板510を設けない場合(同図(a))とほぼ同程度の膜厚となっていた。この理由は、回転テーブル2の上流側から2箇所目のプラズマ発生部80には拡散抑制板510を設けなかったので、当該プラズマ発生部80によって改質が十分に行われてしまったためだと考えられる。
【0099】
この時の回転テーブル2の半径方向における膜厚分布及び膜厚については、図44に示す結果となった。従って、拡散抑制板510を設けることにより、回転テーブル2の半径方向における膜厚分布(改質の度合い)を調整できることが分かった。また、回転テーブル2の接線方向における膜厚は、図45に示すように、いずれの例においても均一になっていた。
【符号の説明】
【0100】
1 真空容器
2 回転テーブル
W ウエハ
31、32、34 ノズル
35a、35b シース管
36a、36b 電極
80 プラズマ発生部
81 主プラズマ発生部
82 補助プラズマ発生部
220 ガスインジェクター
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内にて基板に対してプラズマにより処理を行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの一つである、真空雰囲気下で反応ガスにより基板に薄膜を成膜するための装置として、複数の半導体ウエハ等の基板を載置台に載置して、反応ガス供給手段に対して基板を相対的に公転させながら成膜処理を行う成膜装置が知られている。特許文献1〜3には、この種のいわばミニバッチ方式の成膜装置が記載されており、このような成膜装置は、例えば反応ガス供給手段から基板に対して複数種類の反応ガスを供給すると共に、これらの複数種類の反応ガスが夫々供給される処理領域同士の間に例えば物理的な隔壁を設けたり、あるいは不活性ガスをエアカーテンとして吹き出したりすることにより、これら複数の反応ガス同士が互いに混じり合わないようにして成膜処理を行うように構成されている。そして、この成膜装置を用いて、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを交互に基板に供給して原子層あるいは分子層を積層していく例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などを行っている。
【0003】
一方、既述のALD(MLD)法により薄膜の成膜を行うと、成膜温度が低い場合には、例えば反応ガスに含まれている有機物や水分などの不純物が薄膜中に取り込まれてしまう場合がある。このような不純物を膜中から外部へと排出して緻密で不純物の少ない薄膜を形成するためには、ウエハに対して例えばプラズマなどを用いた改質処理を行う必要があるが、薄膜を積層した後にこの改質処理を行うと、工程が増えるためコストアップに繋がってしまう。そこで、真空容器内においてこのようなプラズマ処理を行う手法も考えられるが、その場合にはプラズマを発生させるプラズマ発生部を反応ガス供給手段と共に載置台に対して相対的に回転させることになるので、載置台の半径方向においてウエハがプラズマに接触する時間に差が生じて、例えば載置台の中央側と周縁側とにおいて改質の度合いの揃わなくなるおそれがある。その場合には、ウエハの面内において膜質や膜厚にばらつきが生じたり、あるいはウエハに部分的にダメージを与えてしまったりすることになる。また、プラズマ発生部に大きな電力が供給される場合には、当該プラズマ発生部がすぐに劣化してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図8(a)、図8(b)
【特許文献2】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献3】米国特許公報6,634,314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の基板を載置した回転テーブルを回転させてプラズマ処理を行うにあたり、基板に対して面内均一性の高い処理を行うことのできるプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラズマ処理装置は、
真空容器内にて基板に対してプラズマにより処理を行うプラズマ処理装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板を載置するための複数の基板載置領域が形成された回転テーブルと、
この回転テーブルを回転させる回転機構と、
前記基板載置領域にプラズマ発生用のガスを供給するガス供給部と、
前記基板載置領域の通過領域に対向する位置において前記回転テーブルの中央部側と外周側との間に棒状に伸びるように設けられ、前記ガスにエネルギーを供給してプラズマ化するための主プラズマ発生部と、
この主プラズマ発生部に対して前記真空容器の周方向に離間して設けられ、当該主プラズマ発生部によるプラズマの不足分を補償するための補助プラズマ発生部と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記プラズマ処理装置は、以下のように構成しても良い。前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部に対して周方向に離間して設けられ、基板に対して成膜を行うための反応ガス供給手段を備えている構成。反応ガス供給手段は、回転テーブルの周方向に互に離間して形成された複数の処理領域に互に異なる反応ガスを夫々供給するために設けられ、
前記複数の処理領域の間には、互に異なる反応ガスが混合することを防止するための分離ガスが供給される分離領域が設けられ、
基板の表面には互に異なる反応ガスが順番に供給されることにより成膜されること。
前記主プラズマ発生部及、前記補助プラズマ発生部及びガス供給部は、回転テーブルの回転方向上流側から流れてくるガスが前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部とその上方の天井部との間を流れるように、共通のカバー体により覆われていること。
前記カバー体における前記回転方向上流側には、長さ方向に伸びる側面部の下縁を当該上流側に伸び出すようにフランジ状に屈曲させて形成したガス流の規制部が設けられていること。
前記主プラズマ発生部と前記補助プラズマ発生部とは、プラズマを発生させるための電力の供給源である高周波電源を共用し、
前記補助プラズマ発生部は、前記回転テーブルの中央側部位において基板載置領域へのプラズマの拡散を抑制するために、拡散抑制部を下方側に備えていること。
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部のうち少なくとも1つのプラズマ発生部は、前記回転テーブルの外周側における前記真空容器の側壁から当該真空容器内に気密に挿入され、
前記回転テーブル上の基板の表面に対して前記少なくとも1つのプラズマ発生部を当該少なくとも1つのプラズマ発生部の長さ方向に傾斜させるために、前記少なくとも1つのプラズマ発生部の基端部側に傾き調整機構が設けられていること。
前記補助プラズマ発生部は、前記主プラズマ発生部による基板載置領域の外縁側のプラズマの不足分を補償するために設けられたものであること。
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、互に長さ方向に平行に伸び、容量結合型プラズマを発生するための平行電極であっても良いし、誘導結合型プラズマを発生させるためのアンテナのうち、棒状のアンテナ部分に相当するものであっても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、複数の基板を載置した回転テーブルを回転させてプラズマ処理を行うにあたり、基板の載置領域の通過領域の対向する位置において前記回転テーブルの中央部と外周側との間に棒状に伸びると共に前記真空容器の周方向に互に離間して設けられた複数のプラズマ発生部によりプラズマ発生用のガスをプラズマ化しているので、基板に対して面内均一性の高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面を示す図3のI−I’線縦断面図である。
【図2】前記成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置の内部の一部の概略構成を示す縦断面図である。
【図5】前記成膜装置の内部の一部の概略構成を示す縦断面図である。
【図6】本発明の活性化ガスインジェクターの一例を示す拡大斜視図である。
【図7】前記成膜装置に設けられた活性化ガスインジェクターを示す縦断面図である。
【図8】前記活性化ガスインジェクターを示す成膜装置の縦断面図である。
【図9】前記活性化ガスインジェクターの各寸法を示す縦断面図である。
【図10】前記活性化ガスインジェクターにおいて発生するプラズマの濃度を示す模式図である。
【図11】前記成膜装置において改質により生成する薄膜の様子を示す模式図である。
【図12】前記成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図13】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図14】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図15】前記成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図16】前記成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図17】本発明の改質装置を概略的に示す平面図である。
【図18】前記成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図19】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図20】前記他の例の成膜装置の断面図である。
【図21】前記他の例の成膜装置の模式図である。
【図22】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図23】前記他の例成膜装置の斜視図である。
【図24】前記他の例の成膜装置を示す側面図である。
【図25】前記他の例の成膜装置を示す正面図である。
【図26】前記他の例の成膜装置を示す概略図である。
【図27】前記成膜装置の他の例を示す斜視図である。
【図28】前記成膜装置の他の例を示す断面図である。
【図29】前記成膜装置の他の例を示す断面図である。
【図30】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図31】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図32】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図33】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図34】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図35】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図36】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図37】本発明の実施例を説明するための平面図である。
【図38】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図39】本発明の実施例を説明するための平面図である。
【図40】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図41】本発明の実施例において得られた結果を説明するための模式図である。
【図42】本発明の実施例を説明するための平面図である。
【図43】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図44】本発明の実施例において得られた特性図である。
【図45】本発明の実施例において得られた特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のプラズマ処理装置を適用した実施の形態である成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により容器本体12の上端面に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に押し付けられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0011】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる回転機構である駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0012】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。この凹部24は、直径がウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハWを凹部24に落とし込むと、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うことになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。凹部24は、ウエハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位である。
【0013】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と、2本の分離ガスノズル41、42と、活性化ガスインジェクター220と、が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)に活性化ガスインジェクター220、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらの活性化ガスインジェクター220及びノズル31、32、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、回転テーブル2の回転中心に向かってウエハWに対向して水平に伸びるように取り付けられている。各ノズル31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは、真空容器1の外周壁を貫通している。反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段をなし、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給手段をなしている。前記活性化ガスインジェクター220については、後で詳述する。
【0014】
第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32は、夫々図示しない流量調整バルブなどを介して、Si(シリコン)を含む第1の反応ガスであるジイソプロピルアミノシランガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスとO2(酸素)ガスとの混合ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に夫々接続されており、分離ガスノズル41、42はいずれも流量調整バルブなどを介して分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源(図示せず)に接続されている。尚、以下においては、便宜上第2の反応ガスをO3ガスとして説明する。
【0015】
第1の反応ガスノズル31、32には、ガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向に亘って例えば10mmの間隔をおいて等間隔に配列されている。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハWに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
【0016】
既述の図1〜図3では省略しているが、反応ガスノズル31、32は、図4に示すように、処理領域P1、P2における天井面45から離間してウエハWの近傍に夫々設けられており、ノズル31、32の長さ方向に沿ってこれらのノズル31、32を上方側から覆うと共に、下方側が開口するノズルカバー120を備えている。分離ガスの大部分は、ノズルカバー120の下端側から長さ方向に沿って回転テーブル2の周方向両側に伸びる整流部材121と天井面45との間を通流し、回転テーブル2と反応ガスノズル31(32)との間を通流するものはほとんどなく、そのため各処理領域P1、P2において反応ガスノズル31(32)からウエハWへ供給される反応ガス濃度の低下が抑えられ、ウエハW表面に対する成膜が効率良く行われる。
【0017】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2及び図3に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。
【0018】
前記分離ガスノズル41、42における前記周方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間への第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からSi含有ガスが侵入することを阻止する。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いても良い。
【0019】
一方天板11の下面には、図5に示すように、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するように、かつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は、凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。
【0020】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図5では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図5に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0021】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図5に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部分における既述の第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1及び図3に示すように、夫々第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように各々排気管63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段である。
【0022】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1及び図5に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWをプロセスレシピで決められた温度、例えば300℃に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するためにヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0023】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0024】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(Si含有ガス及びO3ガス)が混合することを防止している。
【0025】
更に真空容器1の側壁には図2、図3に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0026】
次に、既述の活性化ガスインジェクター220について詳述する。活性化ガスインジェクター220は、ウエハWが載置される基板載置領域における回転テーブル2の中心側の内縁と回転テーブル2の外周側の外縁との間に亘ってプラズマを発生させ、このプラズマにより例えば成膜サイクルを行う(回転テーブル2が回転する)度に、Si含有ガスとO3ガスとの反応によってウエハW上に成膜された反応生成物であるシリコン酸化膜(SiO2膜)を改質するためのものである。この活性化ガスインジェクター220は、図6(a)、(b)に示すように、プラズマ発生用の処理ガスを真空容器1内に供給するための例えば石英からなるガス供給部をなすガス導入ノズル34と、ガス導入ノズル34から導入される処理ガスをプラズマ化するために当該ガス導入ノズル34よりも回転テーブル2の回転方向下流側に配置され、互いに平行な1対の棒状のシース管35a、35bからなるプラズマ発生部80と、これらのガス導入ノズル34及びプラズマ発生部80を上方側から覆う絶縁体例えば石英からなるカバー体221と、を備えている。プラズマ発生部80は、複数組例えば6組設けられている。尚、図6(a)はカバー体221を取った状態、図6(b)はカバー体221を配置した外観を示している。
【0027】
ガス導入ノズル34及び各々のプラズマ発生部80は、回転テーブル2上のウエハWと夫々平行になるように、また当該回転テーブル2の回転方向に対して直交するように、真空容器1の外周面に設けられた基端部80aから回転テーブル2の中心部側に向かって当該真空容器1内に夫々気密に挿入されている。また、これらのプラズマ発生部80は、夫々のプラズマ発生部80において回転テーブル2の半径方向で発生するプラズマの長さを変えるために、回転テーブル2の外周部側におけるウエハWの端部の上方位置から中心部側に伸びる先端部までの間の長さ寸法Rが各々のプラズマ発生部80毎に互いに異なっている。これらのプラズマ発生部80の長さ寸法(詳しくは後述の電極36a、36bの長さ寸法)Rについてその一例を挙げると、回転テーブル2の回転方向上流側から、夫々例えば50、150、245、317、194、97mmとなっている。これらのプラズマ発生部80(後述の補助プラズマ発生部82)の長さ寸法Rとしては、後述の実施例に示すように、例えばレシピや成膜する膜種に応じて種々変えても良い。
【0028】
回転テーブル2の回転方向上流側から4組目のプラズマ発生部80を主プラズマ発生部81と呼ぶと、この主プラズマ発生部81は、既述のように長さ寸法RがウエハWの直径(300mm)よりも長く設定されているので、ウエハWが載置される基板載置領域における回転テーブル2の中心側の内縁と回転テーブル2の外周側の外縁との間に亘ってプラズマを発生させるように構成されている。一方、この主プラズマ発生部81以外の5組のプラズマ発生部80を各々補助プラズマ発生部82と呼ぶと、既述のようにこれらの補助プラズマ発生部82の長さ寸法Rが主プラズマ発生部81よりも短く設定されているので、夫々の補助プラズマ発生部82の先端部(回転テーブル2の中心部側)と中心部領域Cとの間では、プラズマが存在しないか、あるいはプラズマが外周部側から僅かに拡散してくるようになっている。そのため、各々の補助プラズマ発生部82は、後述するように、主プラズマ発生部81による回転テーブル2の外周部側におけるプラズマの不足分を補償して、活性化ガスインジェクター220の下方領域において、回転テーブル2の中心部側と外周部側とにおける改質の程度が揃うように、当該中心部側よりも外周部側の方がプラズマの濃度が濃く(量が多く)なるように設定されている。
【0029】
各々のプラズマ発生部80は、互いに近接配置された1組のシース管35a、35bを備えている。これらシース管35a、35bは、例えば石英、アルミナ(酸化アルミニウム)、あるいはイットリア(酸化イットリウム、Y2O3)により構成されている。また、これらのシース管35a、35b内には、図7に示すように、例えばニッケル合金やチタンなどからなる電極36a、36bが各々貫挿されて平行電極をなしており、これらの電極36a、36bには、図3に示すように、例えば13.56MHz、例えば500W以下の高周波電力が真空容器1の外部の高周波電源224から整合器225を介して並列で供給されるように構成されている。これらのシース管35a、35bは、夫々の内部に貫挿された電極36a、36間の離間距離が10mm以下例えば4.0mmとなるように配置されている。尚、シース管35a、35bは、例えば石英の表面に例えば既述のイットリアなどがコーティングされたものでも良い。
【0030】
また、これらのプラズマ発生部80は、回転テーブル2上のウエハWとの間の離間距離が調整できるように、既述の基端部80aにより真空容器1の側壁に各々気密に取り付けられている。図2中37は、シース管35a、35bの基端側(真空容器1の内壁側)に接続された保護管であり、図6などでは描画を省略している。尚、図6以外では、シース管35a、35bを簡略化して示している。
【0031】
既述の図3に示すように、ガス導入ノズル34には、プラズマ発生用の処理ガスを供給するプラズマガス導入路251の一端側が接続されており、このプラズマガス導入路251の他端側は、2本に分岐して各々バルブ252及び流量調整部253を介してプラズマを発生させるためのプラズマ生成ガス(放電ガス)例えばAr(アルゴン)ガスが貯留されたプラズマ生成ガス源254と、プラズマの発生(連鎖)を抑制するために放電ガスよりも電子親和力の大きい局所放電抑制用ガス(添加ガス)例えばO2ガスが貯留された添加ガス源255と、に夫々接続されている。そして、既述のガス導入ノズル34に対してこれらの放電ガス及び添加ガスを処理ガスとして供給するように構成されている。図6(a)中341は、ガス導入ノズル34の長さ方向に沿って複数箇所に設けられたガス孔である。この処理ガスとしては、ArガスやO2ガス以外にも、例えばHe(ヘリウム)ガス、H2ガス及びOを含むガスのうちのいずれかを用いても良い。
【0032】
図6(b)中221は、既述のカバー体であり、ガス導入ノズル34及びシース管35a、35bが配置された領域を上方側及び側面(長辺方向及び短辺方向における両側面)側から覆うように配置されている。また、図6(b)中222は、活性化ガスインジェクター220の長さ方向に沿ってカバー体221の両側面の下端部から外側に向かってフランジ状に水平に伸び出す気流規制面であり、回転テーブル2の上流側から通流するO3ガスやN2ガスのカバー体221の内部領域への侵入を抑えるために、当該気流規制面222の下端面と回転テーブル2の上面との間の隙間が小さくなるように、また回転テーブル2の中心部側からガス流の速くなる回転テーブル2の外周側に向かうほど、その幅寸法uが広くなるように形成されている。回転テーブル2の外周側におけるカバー体221の側壁面には、導入口280が形成されており、既述の各プラズマ発生部80は、この導入口280内に基端側の保護管37が挿入された状態で真空容器1の側壁面に取り付けられている。カバー体221の長さ方向における両側面の上端部には、例えば天板11を利用してカバー体221を支持するために、互いに離間するように例えば2箇所に爪部300が形成されている。図8中223は、爪部300を用いてカバー体221を支持するために当該カバー体221と真空容器1の天板11との間に複数箇所に設けられた支持部材223であり、その位置については模式的に示している。
【0033】
図7に示すように、前記気流規制面222の下端面と回転テーブル2の上面との間の隙間寸法tは、例えば1mm程度に設定されている。また、気流規制面222の幅寸法uについて一例を挙げると、カバー体221の下方位置にウエハWが位置した時に、回転テーブル2の回転中心側のウエハWの外縁に対向する部位の幅寸法uは例えば80mm、真空容器1の内周壁側のウエハWの外縁に対向する部位の幅寸法uは例えば130mmとなっている。一方、カバー体221の上端面と、真空容器1の天板11の下面と、の間の寸法は前記隙間tよりも大きくなるように20mm以上例えば30mmに設定されている。そのため、回転テーブル2の回転方向上流側から流れてくるガス、つまり反応ガスと分離ガスとの混合ガスは、カバー体221と天板11との間を流れる。
【0034】
また、既述の電極36a(36b)、回転テーブル2上のウエハW及びカバー体221の間の位置関係について説明すると、この例では、図9に示すように、カバー体221の上面の厚み寸法h1、回転テーブル2の外周側におけるカバー体221の側壁面の幅寸法h2、カバー体221内の上面と電極36a(36b)との間の離間距離h3、電極36a(36b)と回転テーブル2上のウエハWとの間の離間距離h4は、夫々例えば4mm、8mm、9.5mm、7mmとなっている。また、保護管37と回転テーブル2上のウエハWとの間の距離は例えば2mmとなっている。
【0035】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶部101から制御部100内にインストールされる。
【0036】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にした後、圧力調整手段65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整すると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃に加熱する。また、反応ガスノズル31、32から夫々Si含有ガス及びO3ガスを吐出すると共に、ガス導入ノズル34からArガス及びO2ガスを100:2〜200:20程度の流量比となるように例えば夫々8slm、2slmで吐出し、夫々のシース管35a、35b間に13.56MHz、電力が400Wの高周波を並列に供給する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN2ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。
【0037】
この時、活性化ガスインジェクター220においては、ガス導入ノズル34から各ガス孔341を介して夫々のシース管35a、35bに向かって吐出されたArガス及びO2ガスは、シース管35a、35b間の領域に供給される高周波によって活性化されて、例えばArイオンやArラジカルなどのプラズマが生成する。このプラズマ(活性種)は、既述のように夫々のプラズマ発生部80において基端部側(回転テーブル2の外周部側)からの電極36a、36bの長さ寸法Rを調整していることから、図10に示すように、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方において量が多く(濃度が濃く)なるように発生して、活性化ガスインジェクター220の下方を回転テーブル2と共に移動(回転)するウエハWに向かって下降していく。この時、例えば回転テーブル2の回転によってプラズマが不安定化して局所的に発生しようとするが、処理ガスにO2ガスを混合しているので、Arガスのプラズマ化の連鎖が抑制され、プラズマの状態が安定化する。尚、既述のように夫々のプラズマ発生部80毎に発生するプラズマの長さ寸法が異なっているが、図10では、これらのプラズマ発生部80において発生するプラズマの量(密度)を纏めて概略的に示している。
【0038】
一方、回転テーブル2の回転により、ウエハWの表面には第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスが酸化されてシリコン酸化膜の分子層が1層あるいは複数層形成される。このシリコン酸化膜中には、例えばSi含有ガス中に含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。そして、このウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域に到達すると、前記プラズマによりシリコン酸化膜の改質処理が行われることになる。具体的には、例えばArイオンがウエハWの表面に衝突し、シリコン酸化膜から前記不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。従って、改質処理後のシリコン酸化膜は、緻密化によりウェットエッチングに対する耐性が向上することになる。
【0039】
この時、回転テーブル2が回転しているので、ウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域を通過する時の周速度は、当該回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方において速くなる。従って、回転テーブル2の外周部側では、中心部側よりもプラズマの供給される時間が短くなって改質処理の程度が例えば1/3程度にまで弱くなろうとするが、既述のように当該外周部において中心部側よりもプラズマの量が多くなるように各プラズマ発生部80を配置しているので、改質処理は、後述の実施例に示すように、回転テーブル2の中心部側から外周部側に亘って均一に行われることになる。そのため、シリコン酸化膜の膜厚(収縮量)及び膜質がウエハWの面内に亘って揃うことになる。こうして回転テーブル2の回転によりSi含有ガスの吸着、Si含有ガスの酸化及び改質処理が成膜サイクル毎に行われてシリコン酸化膜が順次積層されていくと、既述の元素の再配列が上下方向(N層目及び(N+1)層目)に積層された反応生成物間においても起こるので、図11に示すように、膜厚方向において膜厚及び膜質が面内及び面間に亘って均一な薄膜が形成されることになる。
【0040】
また、この真空容器1内には、活性化ガスインジェクター220と第2の反応ガスノズル32との間に分離領域Dを設けていないので、回転テーブル2の回転に引き連れられて、活性化ガスインジェクター220に向かって上流側からO3ガスやN2ガスが通流してくる。しかし、既述のように各プラズマ発生部80とガス導入ノズル34とを覆うようにカバー体221を設けているので、カバー体221の下方側(気流規制面222と回転テーブル2との間の隙間t)よりもカバー体221の上方側の領域が広くなっている。また、カバー体221の内部領域に対してガス導入ノズル34から処理ガスを供給しているので、当該内部領域が外部(真空容器1内)よりも僅かに陽圧になっている。従って、回転テーブル2の回転方向上流側から通流してくるガスは、カバー体221の下方側に入り込みにくくなっている。また、活性化ガスインジェクター220に向かって通流するガスは、回転テーブル2の回転によって上流側から引き連れられて来るので、回転テーブル2の半径方向内周側から外周側に向かうほど流速が速くなるが、回転テーブル2の内周側よりも外周側の気流規制面222の幅寸法uを大きく取っていることから、活性化ガスインジェクター220の長さ方向に亘ってカバー体221の内部へのガスの侵入が抑えられる。従って、活性化ガスインジェクター220に向かって上流側から流れてくるガスは、既述の図7に示すように、カバー体221の上方領域を介して下流側の排気口62に通流していく。そのため、これらのO3ガスやN2ガスは、高周波によって活性化などの影響をほとんど受けないので、例えばNOxなどの発生が抑えられ、真空容器1を構成する部材などの腐食が抑えられる。また、ウエハWもこれらのガスの影響をほとんど受けない。尚、改質処理によりシリコン酸化膜から排出された不純物は、その後ガス化してArガスやN2ガスなどと共に排気口62に向かって排気されていく。
【0041】
この時、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図12に示すようにSi含有ガスとO3ガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。
【0042】
また、この例では反応ガスノズル31、32及び活性化ガスインジェクター220が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばSi含有ガスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0043】
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウエハWを被処理基板とする場合例えば1rpm〜500rpm、プロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)、Si含有ガス及びO3ガスの流量は例えば夫々100sccm及び10000sccm、分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また1枚のウエハWに対する反応ガス供給のサイクル数、即ちウエハWが処理領域P1、P2の各々を通過する回数は目標膜厚に応じて変わるが、例えば1000回である。
【0044】
上述の実施の形態によれば、回転テーブル2を回転させてウエハW上にSi含有ガスを吸着させ、次いでウエハWの表面にO3ガスを供給してウエハWの表面に吸着したSi含有ガスを反応させてシリコン酸化膜を成膜するにあたって、シリコン酸化膜を成膜した後、回転テーブル2の周方向に複数のプラズマ発生部80を備えた活性化ガスインジェクター220からウエハW上のシリコン酸化膜に対して処理ガスのプラズマを供給して、成膜サイクル毎に改質処理を行っているので、緻密で不純物の少ない薄膜を得ることができる。この時、夫々のプラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)の長さ寸法Rを変えることができるので、例えばプロセスの種類などに応じて回転テーブル2の中心部側から外周部側におけるウエハWの改質の度合い(プラズマの量)を調整できる。
【0045】
従って、既述の例で説明したように、活性化ガスインジェクター220の下方領域を通過する速度に応じて回転テーブル2の中心部側の方が外周部側よりもプラズマの供給時間が長くなって改質処理が強くなる場合には、回転テーブル2の中心部側ではプラズマを発生させないかプラズマの発生(拡散)量が少ない補助プラズマ発生部82を主プラズマ発生部81と共に配置することによって、当該外周部におけるプラズマの量を中心部側よりも多くすることができるので、面内において膜厚及び膜質が揃うように改質処理を行うことができる。そのため、後述の実施例に示すように、強すぎる改質処理が行われることによって生じるウエハWへのダメージが形成されたり、あるいは改質処理の不十分な部位が生じたりすることを抑えることができる。即ち、回転テーブル2の中心部側から外周部側に向かって改質処理の度合いが弱くなる時には、回転テーブル2の外周部側において良好な改質処理を行うとすると、中心部側では改質処理が強くなりすぎてウエハWにダメージを与えてしまう場合があるし、中心部側において良好な改質処理を行おうとすると、外周部側では不十分な改質処理となってしまうおそれがある。そのため、このような場合には、回転テーブル2の中心部側から外周部側にかけて良好な改質処理を行おうとすると、処理条件などのパラメータの設定範囲が狭いということになる。一方、本発明では、回転テーブル2の半径方向において改質処理の度合いを揃えているので、ウエハWの面内に亘って良好な改質処理を行うことができる。そのため、本発明では、良好な改質処理を行うことのできるパラメータの設定範囲を広く確保できるので、自由度の高い成膜装置を得ることができる。
【0046】
また、改質処理を行うにあたって、複数組のプラズマ発生部80を配置することによって、シリコン酸化膜の改質に必要なエネルギーをこれら複数組のプラズマ発生部80に分散させている。そのため、1組のプラズマ発生部80によって改質処理を行う場合よりも、各々のプラズマ発生部80において発生するプラズマの量を少なくすることができるので、いわば穏和な状態のプラズマを広く形成することによって時間をかけて緩やかに改質処理を行うことになり、従ってウエハWに対するダメージを低減できる。これは別の見方をすると、例えば1組のプラズマ発生部80を用いて穏和なプラズマ条件に設定すると共に、回転テーブル2を低速で回転させて穏やかな条件で時間をかけて行う改質処理を短時間で処理するために、プラズマの供給される領域を広く取ることによって回転テーブル2を高速で回転させていると言える。そのため、プラズマによるダメージを抑えて良好な改質処理を行いながら、薄膜の成膜処理及び改質処理を速やかに行うことができる。
【0047】
また、複数のプラズマ発生部80を配置することによって、1組のプラズマ発生部80を用いた場合よりも各々のプラズマ発生部80に供給されるエネルギーが少なくなるので、各々のプラズマ発生部80において例えば発熱やプラズマによるスパッタリングによって生じる劣化を抑えることができる。そのため、例えばシース管35a、35bのスパッタリングによって生じる不純物(石英)のウエハWへの混入を抑えることができる。
【0048】
更に、真空容器1の内部において成膜サイクルを行う度に改質処理を行っており、いわば回転テーブル2の周方向においてウエハWが各処理領域P1、P2を通過する経路の途中において成膜処理に干渉しないように改質処理を行っているので、例えば薄膜の成膜が完了した後で改質処理を行うよりも短時間で改質処理を行うことができる。
【0049】
また、カバー体221により上流側から通流してくるガスの当該カバー体221の内部への侵入を抑えることができるので、これらのガスの影響を抑えて成膜サイクルの途中で改質処理を行うことができる。そのため、例えば第2の反応ガスノズル32と活性化ガスインジェクター220との間に専用の分離領域Dを設けなくても良いので、成膜装置のコストを抑えて改質処理を行うことができるし、またNOxなどの副生成ガスの発生を抑えて例えば装置を構成する部材の腐食を抑制できる。また、このカバー体221を絶縁体により構成しているので、カバー体221とプラズマ発生部80との間においてプラズマが形成されないため、当該カバー体221をプラズマ発生部80に近接配置することができ、そのため装置を小型化できる。
【0050】
更に、Arガスと共にO2ガスを供給してArガスのプラズマ化の連鎖を抑制することにより、活性化ガスインジェクター220の長さ方向において、また改質処理(成膜処理)を行う時間に亘って、プラズマの局所的な発生を抑えるようにしているので、改質処理をウエハWの面内及び面間において均一に行うことができる。また、電極36a、36bの離間距離を既述のように狭く設定していることから、ガスのイオン化に最適ではない高い圧力範囲(成膜処理の圧力範囲)であっても、低出力で改質処理に必要な程度にArガスを活性化(イオン化)することができる。
【0051】
既述の例においては、成膜処理を行う度に改質処理を行ったが、複数回例えば20回の成膜処理(サイクル)を行う度に改質処理を行っても良い。この場合において改質処理を行う時には、具体的にはSi含有ガス、O3ガス及びN2ガスの供給を停止して、ガス導入ノズル34から活性化ガスインジェクター220に処理ガスを供給すると共に、シース管35a、35bに高周波を供給する。そして、5枚のウエハWが活性化ガスインジェクター220の下方領域を順番に通過するように回転テーブル2を例えば200回回転させる。こうして改質処理を行った後、再度各ガスの供給を再開して成膜処理を行い、改質処理と成膜処理とを順番に繰り返す。この例においても、既述の例と同様に緻密で不純物濃度の低い薄膜が得られる。この場合には、改質処理を行うときにはO3ガスやN2ガスの供給を停止しているので、既述の図6(a)に示すように、カバー体221を設けなくても良い。
【0052】
また、複数のプラズマ発生部80を設けるにあたって、既述の例ではこれらのプラズマ発生部80のうち1組を主プラズマ発生部81として設けて、他のプラズマ発生部80については当該主プラズマ発生部81よりも長さ寸法Rが短い補助プラズマ発生部82を配置したが、これらの長さ寸法Rについては後述の実施例に示すように種々変えても良く、例えば図13に示すように、6組のプラズマ発生部80の全てを同じ長さの主プラズマ発生部81として設けて、補助プラズマ発生部82を設けなくても良い。また、補助プラズマ発生部82としては、回転テーブル2の外周部側よりも中心部側において強く改質処理を行うようにプラズマの量を調整する場合には、例えば中心部領域Cから補助プラズマ発生部82の一端側を回転テーブル2に水平に外周部側に伸張させて、他端側をL字型に上方に向けて屈曲させて高周波電源224に接続しても良い。また、このような補助プラズマ発生部82を既述の回転テーブル2の外周部側から伸びる補助プラズマ発生部82と共に配置しても良いし、主プラズマ発生部81についても中心部領域Cから伸張させても良い。更に、回転テーブル2の中心部側と外周部側との間において回転テーブル2の周方向に直交するように各プラズマ発生部80を配置したが、例えば真空容器1の内壁から中心部領域Cに向けてプラズマ発生部80の一端側を伸張させると共に、当該一端側を例えば回転テーブル2の半径方向中央部において回転テーブル2の周方向に沿って例えば上流側に向けて円弧状に屈曲させ、当該中央部においてプラズマの発生量が多くなるようにしても良い。従って、「棒状の」プラズマ発生部80とは、直線状だけでなく、円弧状あるいは円状も含まれる。
【0053】
更に、既述の例では平行電極(電極36a、36b)を用いて容量結合型プラズマを発生させたが、コイル型の電極を用いて誘導結合型のプラズマを発生させても良い。この場合には、具体的には図14に示すように、真空容器1の側面から回転テーブル2の中心部側に向かって平行に棒状に伸びると共に、当該中心部側においてU字型に接続される電極(アンテナ)400を複数平行に配置して、これらの電極400の長さ寸法Rが互いに異なるようにしても良い。この例では、電極400を3組配置すると共に、これらの電極400の長さ寸法Rが回転テーブル2の回転方向上流側から下流側に向かって順次短くなる(例えば夫々310mm、220mm、170mm)ようにしている。図14中401は、これらの電極400の両端部に夫々接続された誘導結合型のプラズマを発生させるための共通の電源である。この例においても、回転テーブル2の半径方向においてプラズマの量を調整できるので、ウエハWの面内における改質の度合いを調整できる。この図14においても、これらの電極400及びガス導入ノズル34を覆うカバー体221が設けられているが、図示を省略している。
【0054】
更にまた、複数のプラズマ発生部80を設けるにあたって、これらのプラズマ発生部80を一つのカバー体221内に収納すると共に、ガス導入ノズル34を共通化して用いたが、各々のプラズマ発生部80毎に個別にガス導入ノズル34を配置しても良いし、例えば図15に示すように、更に各々のプラズマ発生部80及びガス導入ノズル34を覆うカバー体221を設けても良い。尚、この図15では、複数例えば2組のプラズマ発生部80を配置した例を示しており、1組については主プラズマ発生部81を配置し、他方のプラズマ発生部80としては補助プラズマ発生部82を配置している。
【0055】
また、既述の成膜装置を用いてALD法やMLD法などの成膜方法により成膜する例について説明したが、例えば成膜温度や反応ガスを変更することにより、CVD法により薄膜を成膜するようにしても良いし、この場合には図16に示すように、2種類の混合ガス例えばSiH4ガス及びO2ガスを反応ガスとして用いてSiO2からなる薄膜を成膜しても良い。
【0056】
更に、真空容器1内においてCVD法あるいはALD法などによる薄膜の成膜と共に改質処理を行ったが、例えば外部の装置において薄膜を成膜したウエハWに対して、既述の活性化ガスインジェクター220を用いて改質処理を行っても良い。この場合には、既述の成膜装置に代えて図17に模式的に示すプラズマ処理装置である改質装置が用いられる。この改質装置において薄膜の改質処理を行う場合には、真空容器1内の回転テーブル2上に、薄膜の形成されたウエハWを載置して回転テーブル2を回転させると共に、真空容器1内を真空排気する。そして、活性化ガスインジェクター220においてプラズマを発生させて薄膜の改質を行う。こうして回転テーブル2を例えば複数回回転させることにより、面内における膜厚及び膜質の均一な薄膜が得られる。尚、この図17では、改質装置の各部を模式的に示しており、例えば既述の搬送口15などについては記載を省略している。
【0057】
更に、既述の例では複数のプラズマ発生部80を配置するにあたって、これらのプラズマ発生部80のうち少なくとも1組について、回転テーブル2の中心部側から外周部側に亘ってプラズマを発生させる主プラズマ発生部81を設けたが、複数のプラズマ発生部80のうち複数例えば2組により主プラズマ発生部81を構成しても良い。具体的には、図18に示すように、複数のプラズマ発生部80のうち少なくとも1組を既述のように中心部領域Cから回転テーブル2の外周部側に向けて一端側を伸張させると共に、当該プラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)の他端側を例えばL字型に屈曲させて、整合器225を介して高周波電源224に接続する。また、この補助プラズマ発生部82と先端部が回転テーブル2の回転方向において重なりあうように、即ち回転テーブル2の中心部側から外周部側に亘ってプラズマが発生するように、この補助プラズマ発生部82よりも回転テーブル2の回転方向上流側あるいは下流側にずれた位置において、プラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)を真空容器1の外周側から回転テーブル2の中心部側に向けて伸張させる。こうしてこれら2組のプラズマ発生部80、80により主プラズマ発生部81が構成される。この場合においても、回転テーブル2の中心部側と外周部側とおける改質の度合いを調整することができるし、また1組のプラズマ発生部80により改質処理を行う場合よりもウエハWに対するダメージを低減できる。また、各々のプラズマ発生部80の劣化(ダメージ)についても低減できる。
【0058】
既述のシリコン酸化膜を成膜するための処理ガスとしては、第1の反応ガスとしてBTBAS[ビスターシャルブチルアミノシラン]、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、モノアミノシランなどを用いても良いし、TMA[トリメチルアルミニウム]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMAH[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]などを第1の反応ガスとして用いて、酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ストロンチウム膜、酸化チタン膜などを成膜しても良い。これらの原料ガスを酸化する酸化ガスである第2の反応ガスとしては、水蒸気などを採用しても良い。また、第2の反応ガスとしてO3ガスを用いないプロセス例えばTiN(窒化チタン)膜などにおいて当該TiN膜の改質を行う場合には、ガス導入ノズル34から供給するプラズマ発生用の処理ガスとしては、NH3ガスやN(窒素)を含むガスを用いても良い。
【0059】
既述の各々のプラズマ発生部80の配置の順番としては、長さ寸法Rが長くなるにつれて回転テーブル2の回転方向上流側から下流側に並べるようにしても良いし、あるいは長さ寸法Rが短くなるにつれて回転テーブル2の回転方向上流側から並べても良い。このプラズマ発生部80の数量としては、6組以外にも、2組以上であれば良い。更に、活性化ガスインジェクター220に処理ガスを供給するガス導入ノズル34としては、既述のようにカバー体221内の領域が当該カバー体221の外側の領域よりも陽圧になっているので、複数のプラズマ発生部80の下流側に配置しても良いし、あるいはカバー体221の天井面や回転テーブル2の外周部側の壁面にガス吐出孔を形成して、このガス吐出孔から処理ガスを供給しても良い。また、プラズマ発生部80としては、棒状の電極36a(400)を用いてプラズマを発生させたが、例えばレーザーなどの光エネルギーあるいは熱エネルギーなどによりプラズマを発生させる手段であっても良い。
【0060】
既述のプラズマ発生部80としては、回転テーブル2の中心側と外周側との間において、当該プラズマ発生部80の長さ方向に傾斜できるように構成しても良い。具体的には、各々のプラズマ発生部80は、図19及び図20に示すように、真空容器1の側壁部から当該真空容器1内に挿入されている。このプラズマ発生部80(保護管37)の挿入部における真空容器1の側壁には、第1のスリーブ550が貫通されており、この第1のスリーブ550内に保護管37が貫挿されている。第1のスリーブ550は、真空容器1の内部領域側の先端部の内周面が保護管37の外周面に沿うように形成されており、真空容器1の外部側における基端部の内周面が拡径している。そして、この第1のスリーブ550の拡径部と保護管37との間には、当該保護管37を周方向に亘って囲むように、例えば樹脂などからなるシール部材(O−リング)500が設けられている。これら第1のスリーブ550と保護管37との間の領域には、真空容器1の外側からシール部材500に対して進退自在に設けられたリング状の第2のスリーブ551が配置されている。この第2のスリーブ551によってシール部材500を真空容器1側に押圧することによって、保護管37がシール部材500を介して真空容器1に対して気密に保持されるようになっている。従って、保護管37(プラズマ発生部80)は、このシール部材500を基点として、真空容器1側の先端部が移動(昇降)自在に支持されていると言える。尚、図19ではこれらスリーブ550、551を省略している。
【0061】
プラズマ発生部80には、真空容器1の外側において、第2のスリーブ551から当該外側に向かって伸び出す保護管37の基端部を上下させる傾き調整機構501が設けられている。この傾き調整機構501は、保護管37の上下2箇所において、当該保護管37の長さ方向に沿うように各々設けられた本体部505、505を備えている。各々の本体部505は、基端側(真空容器1側)が既述の第1のスリーブ550または真空容器1の外壁面に固定されており、他端側には当該本体部505を上下方向に貫通するように、ネジ部502が螺合される螺合部503が形成されている。そして、本体部505の螺合部503にネジ部502を上側あるいは下側から螺合させることによって、真空容器1に対して保護管37の基端部を上昇または下降させた状態でプラズマ発生部80の姿勢を固定できるように構成されている。
【0062】
そして、傾き調整機構501によって保護管37の基端側を上下させると、シール部材500によって真空容器1の内部領域が気密に保たれたまま、図21に示すように、当該シール部材500による保護管37の支持部を支点として真空容器1内におけるプラズマ発生部80の先端部側が上下することになる。この例では、回転テーブル2上のウエハWの上面とプラズマ発生部80の下端との間の寸法Hは、回転テーブル2の外周側では9mmに設定され、回転テーブル2の中央側では8〜12mmの間で調整できるようになっている。尚、図21ではプラズマ発生部80を模式的に描画している。
【0063】
このようにプラズマ発生部80を長さ方向に傾斜させることによって、回転テーブル2の半径方向においてウエハWとプラズマ発生部80との間の寸法Hを調整できるので、後述の実施例に示すように、回転テーブル2の半径方向における改質の度合い(プラズマの量)を調整できる。即ち、既述の真空容器1内の圧力範囲(66.66Pa(0.5Torr)以上)では、真空度が低い(圧力が高い)ため、プラズマ中のイオンやラジカルなどの活性種が不活性化(死活)しやすい。従って、回転テーブル2上のウエハWに到達するプラズマの量(濃度)は、プラズマ発生部80とウエハWとの間の寸法Hが長くなる程少なくなる。そのため、プラズマ発生部80を傾斜させることにより、回転テーブル2の半径方向においてウエハWに到達する活性種の量を調整していると言える。
【0064】
そのため、例えば回転テーブル2の中心側において外周側よりも改質の度合いが大きくなる場合には、プラズマ発生部80の先端部を持ち上げて当該先端部と回転テーブル2上のウエハWとを離間させることによって、回転テーブル2の中心側と外周側とに亘って改質の度合いを揃えることができる。また、回転テーブル2の中心側において外周側よりも改質の度合いが小さくなる場合には、プラズマ発生部80の先端部を下降させて、当該プラズマ発生部80の先端部と回転テーブル2上のウエハWとを近接させる。この時、傾き調整機構501によりプラズマ発生部80の傾斜角度を調整すると共に複数のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを調整することによって、回転テーブル2の半径方向における改質の度合いを更に揃えることができる。
【0065】
この傾き調整機構501としては、全てのプラズマ発生部80に設けても良いし、これらプラズマ発生部80のうちの一つまたは複数に設けても良い。また、真空容器1の外側に傾き調整機構501を設けたが、真空容器1の内部領域において、当該真空容器1の内周面から中心部領域Cに向かって伸びる保護管37の下端部を昇降自在に支持するようにしても良い。尚、図19では真空容器1の一部を拡大して切り欠いて示しており、6つのプラズマ発生部80のうち一つのプラズマ発生部80を例に挙げて示している。
【0066】
また、既述の図7に示すように、互いに隣接するプラズマ発生部80、80において回転テーブル2の回転方向に沿って相対向する電極36a、36b同士の間の離間距離Aは、これら互いに隣接するプラズマ発生部80、80同士の間における放電を抑えるために長く取ることが好ましい。この離間距離Aは、例えばプラズマ発生部80に対して高周波電源224から供給する高周波電力値によって好ましい範囲の変動することもあるが、その一例を挙げると、例えばプラズマ発生部80を2つ設けると共に、これらプラズマ発生部80、80に供給する高周波電源224の電力値が800Wの場合には45mm以上具体的にはおよそ80mm以上である。
【0067】
更に、活性化ガスインジェクター220において回転テーブル2の半径方向における改質の度合いを調整するにあたって、既述の図6(a)では6本のプラズマ発生部80を設けると共に、プラズマ発生部80の長さ寸法Rをこれらプラズマ発生部80(補助プラズマ発生部82)毎に調整したが、図22に示すように、これらプラズマ発生部80の長さ寸法Rを互いに等しくすると共に、当該補助プラズマ発生部82から回転テーブル2上のウエハWへのプラズマの拡散を抑制するための拡散抑制板(拡散抑制部)510を各々の補助プラズマ発生部82毎に設けても良い。
【0068】
拡散抑制板510は、図23〜図25に示すように、補助プラズマ発生部82の長さ方向に沿って水平に伸びる例えば石英などの絶縁体からなる板状体であり、ウエハW側へのプラズマ(ラジカルやイオンなどの活性種)の拡散を抑制する役割を持っている。この拡散抑制板510は、各々の補助プラズマ発生部82の先端部側(回転テーブル2の中心部側)において、プラズマの発生する領域(電極36a、36b間の領域)を当該補助プラズマ発生部82の下方側から臨むように各々設けられている。そして、拡散抑制板510は、補助プラズマ発生部82の先端部よりも僅かに例えば5mm程度回転テーブル2の中心寄りの位置から、補助プラズマ発生部82の基端部に向かって各々伸び出している。各々の拡散抑制板510の回転テーブル2の中心側からの長さ寸法Gは、回転テーブル2の回転方向上流側から下流側に向かって夫々例えば220、120、120、220、270mmとなっている。従って、各々の補助プラズマ発生部82について、回転テーブル2の外周側におけるウエハWの端部の上方位置から拡散抑制板510の端部の上方位置までの長さである補助プラズマ発生部82の有効長をJ(図22参照)と呼ぶと、この有効長Jは、既述の図6における各々の補助プラズマ発生部82の寸法Rと同じ長さに各々設定されている。そのため、既述の例と同様に、各々の補助プラズマ発生部82は、主プラズマ発生部81による回転テーブル2の外周部側におけるプラズマの不足分を補償するために、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方においてプラズマの濃度が濃く(量が多く)なるように設定されていると言える。
【0069】
各々の拡散抑制板510は、図23にも示すように、プラズマ発生部80の長さ方向に沿って複数箇所例えば2箇所において、固定部511によってシース管35a、35bから吊り下げられている。各々の固定部511は、絶縁体例えば石英などにより構成されており、回転テーブル2の回転方向における拡散抑制板510の両端部の上面位置から各々上方側に伸び出すと共に、シース管35a、35bを上方側から覆うように水平に屈曲して互いに接続されている。この例では、回転テーブル2の回転方向における拡散抑制板510の幅寸法Bは、例えば70mm程度に設定されている。図25中Fは、各々のプラズマ発生部80における電極36a、36bの各々の中心線同士の間の離間距離であり、この離間距離Fは10mm以下例えば7mmとなっている。尚、図23〜図25では、カバー体221を省略している。
【0070】
この拡散抑制板510を設けることによって、各々の補助プラズマ発生部82において、回転テーブル2の中央側の領域では、回転テーブル2の周縁部よりもウエハWに供給されるプラズマの量が少なくなる。即ち、図26に模式的に示すように、電極36a、36b間において処理ガスのプラズマ(イオン及びラジカル)が発生すると、このプラズマは補助プラズマ発生部82の下方側を移動(公転)するウエハWに向かって下降しようとする。しかし、補助プラズマ発生部82と回転テーブル2上のウエハWとの間には拡散抑制板510が設けられているので、この拡散抑制板510によって回転テーブル2側へのプラズマの拡散が抑制されて、プラズマは拡散抑制板510の上面に沿って水平方向(回転テーブル2の回転方向上流側、下流側、回転テーブル2の中心側及び周縁側)に向かって拡散していく。既述のように、プラズマ中の活性種が不活性化しやすいので、拡散抑制板510により下方側への拡散の抑制されたプラズマは、水平方向に拡散するにつれて一部が不活性化(ガス化)する。そのため、この不活性化したプラズマ(ガス)がウエハWに接触したとしても、活性な(拡散抑制板510により拡散が抑制されていない)プラズマよりも改質の度合いが小さくなる。従って、拡散抑制板510の下方側では、拡散抑制板510の設けられていない基端部側よりも、プラズマによる改質の度合いが小さく抑えられることになる。ここで、後述の実施例に示すように、プラズマのうちラジカルはイオンよりも寿命が長い(不活性化しにくい)ので、拡散抑制板510を側方側から回り込んで活性なままウエハWに到達する場合もある。この場合であっても、拡散抑制板510を設けることによって、プラズマ中のイオンによる改質が抑制されることになる。
【0071】
この拡散抑制板510により、既述の図6に示した活性化ガスインジェクター220と同様の効果が得られる。また、各々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを互いに同じ長さにすることによって、各々のプラズマ発生部80に供給する高周波電力を揃えることができる。即ち、各々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rが互いに異なっている場合において、これらプラズマ発生部80に共通の高周波電源224から各々等しい電力を供給しようとしても、各々のプラズマ発生部80の静電容量値が異なっているため、長さ寸法Rの長いプラズマ発生部80には長さ寸法Rの短いプラズマ発生部80よりも多くの電力が供給されてしまう場合がある。そのため、ウエハWの載置領域の通過領域の内縁(回転テーブル2の中心側の端部)から前記通過領域の外縁(回転テーブル2の外周側)に亘って伸びるように設けられた1本のプラズマ発生部80を主プラズマ発生部81とすると、この主プラズマ発生部81よりも短く、主プラズマ発生部81に対する長さの寸法差が大きい補助プラズマ発生部82については、主プラズマ発生部81よりもプラズマが弱くなる(プラズマの密度が薄い)。従って、主プラズマ発生部81によるウエハWの載置領域の外方寄りの領域におけるプラズマの不足分を適切に補償しようとすると、高周波電源224の電力値の大きさなどの調整作業が難しくなる。そこで、補助プラズマ発生部82についても主プラズマ発生部81と同じ長さに設定し、拡散抑制板510の配置領域を調整して、見かけ上補助プラズマ発生部82の長さ寸法が短くなるように構成することが得策である。
【0072】
即ち、図22のように各々プラズマ発生部80の長さ寸法Rを互いに同じ長さに設定すると共に拡散抑制板510を用いることによって、各々の補助プラズマ発生部82の有効長Jを調整すれば、補助プラズマ発生部82毎に回転テーブル2の半径方向におけるプラズマの量を調整しながら、これらプラズマ発生部80に供給される高周波電力値を揃えることができる。そのため、回転テーブル2の半径方向におけるプラズマの量を各々のプラズマ発生部80毎に簡便に調整できる。更に、主プラズマ発生部81及び補助プラズマ発生部82として、共通の長さ寸法Rのプラズマ発生部80を用いることができるので、拡散抑制板510を取り替えるだけで長さ寸法Rを簡単に調整できるし、またコスト的に有利である。
【0073】
また、この拡散抑制板510と共に既述の傾き調整機構501を設けても良い。その場合には、プラズマの有無をいわばデジタル的に調整できる拡散抑制板510に加えて、回転テーブル2の半径方向に沿ってプラズマの量を徐々にいわばアナログ的に調整できる傾き調整機構501を設けているので、回転テーブル2の半径方向におけるプラズマの量(改質の度合い)の調整幅をより一層大きく取ることができる。
【0074】
既述の図22〜図26では、プラズマ発生部80の下方側に拡散抑制板510を設けたが、図27に示すように、プラズマ発生部80の周囲(下面、両側面、上面及び先端側)を覆うように概略箱型の拡散抑制板510を設けても良い。また、真空容器1内に拡散抑制板510を設けるにあたって、真空容器1の天板11から吊り下げても良いし、真空容器1の内壁側に固定するようにしても良い。拡散抑制板510の材質としては、石英以外にも例えばアルミナ(Al2O3)などの絶縁体を用いても良い。
【0075】
また、既述のヒータユニット7の周囲に設けられたカバー部材71として、図28及び図29のように構成しても良い。即ち、カバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び当該外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。この外側部材71bは、既述の排気口61、62の上方側においてはこれら排気口61、62と回転テーブル2の上方領域とを連通させるために例えば円弧状に切りかかれて排気領域E1、E2をなし、屈曲部46の下方側においては上端面が当該屈曲部46に近接するように配置されている。また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、当該ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁から真空容器1の底面部14の中央に形成された突出部12aの上端部の間を周方向に亘って接続する例えば石英からなる覆い部材7aが設けられている。
【実施例】
【0076】
続いて、本発明の効果を確認するために行った実施例について以下に説明する。
(実施例1)
まず、既述の成膜装置において、1組のプラズマ発生部80を設けた場合と比較して、複数組この例では6組のプラズマ発生部80を設けることによって、回転テーブル2の半径方向において改質の度合いがどのように変わるか実験を行った。プラズマ発生部80を6組設ける場合には、全てのプラズマ発生部80の長さ寸法Rを同じ長さ(300mm)に設定した場合(6対として記載)と、夫々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを例えば回転テーブル2の上流側から50、150、245、317、194、97mmに夫々設定した場合とにおいて実験を行った。また、改質の度合いを評価するにあたり、活性化ガスインジェクター220を用いずに150nmのシリコン酸化膜を予めウエハW上に形成しておき、その後このウエハWに対して改質処理を行って処理の前後における膜厚差を計算して、収縮率(=(改質処理前の膜厚−改質処理後の膜厚)÷改質処理前の膜厚×100)を回転テーブル2の半径方向において複数箇所で求めた。改質処理は、以下の条件において行った。
(改質条件)
処理ガス:He(ヘリウム)ガス/O2ガス=2.7/0.3l/分
処理圧力:533Pa(4Torr)
高周波電力:400W
回転テーブル2の回転数:30rpm
処理時間:5分
【0077】
(実験結果)
図30に示すように、プラズマ発生部80が1組の場合には、回転テーブル2の中心部側において強く改質処理が行われており、外周部側に向かうにつれて改質処理が弱くなっていた。従って、1組のプラズマ発生部80を用いて回転テーブル2の外周部側において良好な改質処理を行おうとすると、既述のように中心部側では改質処理が強くなりすぎて、ウエハWがダメージを受けているおそれがあると考えられる。
一方、6組のプラズマ発生部80を用いた場合には、回転テーブル2の中心部側から外周部側に亘って改質処理が均一に行われていることが分かった。これは、既述のように6組のプラズマ発生部80によりシリコン酸化膜の改質に必要なエネルギーを分散しているためだと考えられる。また、プラズマ発生部80の長さ寸法Rを変更することにより、回転テーブル2の半径方向において改質の度合いを調整できることが分かった。
【0078】
(実施例2)
次に、実施例1と同じ条件においてシリコン酸化膜の改質処理を行って同様に評価したところ、図31に示すように、各プラズマ発生部80の長さ寸法Rを変更することによって、同様に回転テーブル2の半径方向において改質処理の度合いを調整できることが分かった。この例では、同じ長さ寸法Rのプラズマ発生部80を設ける場合よりも、夫々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを調整した方が良好な均一性となっていた。
【0079】
(実施例3)
続いて、夫々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを以下の表に示すように種々変えて同様の実験及び評価を行った。この実験において得られた結果についてもこの表に併せて示す。
(表)
【0080】
その結果、プラズマ発生部80の長さ寸法Rを夫々調整することにより、回転テーブル2の中心部側から外周部側にかけてのプラズマの量を調整することができ、その結果例えば膜厚のばらつきが小さくなるように改質できることが分かった。この表には、改質処理の前後において、回転テーブル2の半径方向で複数箇所において測定した膜厚差について纏めた結果を示している。また、プラズマ発生部80(電極)の長さ寸法Rは、回転テーブル2の上流側から下流側に並べた順番で記載している。尚、この表におけるばらつきとは、標準偏差の3倍を母平均で割った数値を示している。
【0081】
(実施例4)
次に、既述の実施例3のように各プラズマ発生部80の長さ寸法Rを種々変えた時において、膜厚の収縮率がウエハWの面内においてどのような分布となるか測定した。この結果を図32に示す。尚、この図32において、ウエハW上における各プラズマ発生部80の概略的な配置状態及び各々のプラズマ発生部80の長さ寸法についても記載している。
【0082】
この図32から、プラズマ発生部80の長さ寸法Rを調整することにより、膜厚の収縮率が面内において変わることが分かった。そのため、各々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを調整することにより、プラズマの量についても回転テーブル2の半径方向にて変化していると考えられる。また、各々のプラズマ発生部80の長さ寸法Rを50、150、245、317、194、97mmに設定した場合と、97、194、317、245、150、50mmに設定した場合とでは、即ちプラズマ発生部80の並びの順番を変更した時には、均一性がほとんど変化していないことが分かった。尚、プラズマ発生部80の長さ寸法Rを全て300mmとした場合と、6組のプラズマ発生部80について回転テーブル2の回転方向下流側から夫々50、150、245、317、194、97mmに設定した場合については、膜厚の収縮率の階調(色調)を変えて得られた結果について、図33に併せて示しておく。
【0083】
(実施例5)
次に、プラズマによりウエハWが受けるダメージについて評価を行った。この実験は、表面にリンのドープされた多結晶シリコン膜からなるアンテナ部を含むテストチップが多数形成された実験用のウエハWを用いて、このウエハWに対して以下の条件においてプラズマを供給し、その後各々のテストチップが受けたダメージ(プラズマ照射前のアンテナ部の面積÷プラズマ照射後の有効アンテナ面積)を評価した。尚、実験用のウエハWに形成されたダメージ層がシリコン酸化膜に覆われてしまわないように、成膜用のガスに代えてN2ガスを用いた。
(プラズマ供給条件)
処理ガス:Arガス/O2ガス=5/0.1slm
処理圧力:533Pa(4Torr)
高周波電力:400W(13.56Mz)
回転テーブル2の回転数:240rpm
処理時間:10分
成膜温度:350℃
成膜用のガス:N2ガス/O3ガス=200sccm/6slm
プラズマ発生部80の組数:6本(各長さ寸法R:50、150、245、317、194、97)、1本(300mm)
プラズマの暴露幅:約2cm(回転テーブル2が回転する度に1組のプラズマ発生部80毎に2cmのプラズマ領域を通り過ぎる)
【0084】
(実験結果)
その結果、図34に示すように、プラズマ発生部80が1組の場合には、回転テーブル2の外周部側から中心部側に向かう程、ダメージが大きくなっており、ウエハWに与えるプラズマのエネルギーを強くする程この傾向が増大していた。一方、6本のプラズマ発生部80を設けた場合には、回転テーブル2の半径方向においてダメージのばらつきはほとんど確認されなかった。また、プラズマのエネルギーを増やした場合においても、特に差異が現れなかった。
従って、既述のように、1組のプラズマ発生部80を用いた場合には、回転テーブル2の半径方向で改質の度合いにばらつきが生じて、面内に亘って均一な改質処理を行おうとすると、パラメータ(例えばプラズマのエネルギー)の選択範囲が限られてしまうが、複数例えば6組のプラズマ発生部80を配置すると、回転テーブル2の半径方向において改質のばらつきが小さくなり、パラメータの選択範囲が広くなることが分かった。尚、図34においては、既述のテストチップを模式的に格子状に示している。
【0085】
(実施例6)
既述のカバー体221によって当該カバー体221内へのガスの侵入がどの程度抑えられているか、以下の条件においてシミュレーションを行った。
(シミュレーション条件)
処理ガス:Arガス=20slm
処理圧力:533Pa(4Torr)
高周波電力:400W(13.56Mz)
回転テーブル2の回転数:30rpm
処理時間:10分
成膜温度:450℃
成膜用のガス:Si含有ガス/O3ガス=300sccm/10slm(200g/Nm3)
各々の分離領域Dに供給する分離ガス:N2=20slm
中心部領域Cの上方から供給する分離ガス:3slm
中心部領域Cの下方及びパージガス供給管73から供給する分離ガス:10slm
【0086】
(実験結果)
図35(a)、(b)に示すように、ガス導入ノズル34から供給されるArガスは、カバー体221内に均一に分散していることが分かった。また、同図(c)、(d)に示すように、回転テーブル2の上流側からカバー体221に向かって通流してくるN2ガスは、当該カバー体221内への侵入が防がれていることが分かった。従って、既述のように、カバー体221内では、ノズル32、34から吐出されるO3ガスと分離領域Dなどに供給されるN2ガスとの混合が防止され、NOxの生成が抑えられていると言える。
【0087】
(実施例7)
このカバー体221内において、処理ガス(Heガス)の分布や流速がどのようになっているかシミュレーションを処理圧力が533Pa(4Torr)、処理ガスの流量が3slmの条件において行ったところ、図36に示すように、処理ガスはこのカバー体221内において均一に分布しており、局所的な乱れが見られないことが分かった。
【0088】
(実施例8)
続いて、既述の傾き調整機構501を設けて、プラズマ発生部80の先端部の高さ位置を調整した場合に得られる薄膜の特性を評価した。この実験では、図37に示すように、既述の6本のプラズマ発生部80が設置される部位のうち回転テーブル2の上流側から1箇所目、3箇所目及び5箇所目にプラズマ発生部80を設けて、これら3本のプラズマ発生部80を用いて薄膜の改質を行った。そして、回転テーブル2の上流側から3箇所目のプラズマ発生部80の先端部の高さ位置(寸法H)を夫々8mm、10mm、11mm、12mmに設定すると共に、夫々の条件において得られる膜厚を測定した。
【0089】
この時、回転テーブル2の上流側から1箇所目及び5箇所目のプラズマ発生部80の先端部の寸法Hについては、夫々17.5mm及び16.5mmに設定した。これらのプラズマ発生部80の基端側(真空容器1の側壁側)のウエハWとの間の寸法は、いずれも9mmに設定した。尚、回転テーブル2の上流側から2箇所目、4箇所目及び6箇所目においてプラズマ発生部80を配置しない部位における真空容器1の側壁は、説明を省略するが気密に塞いでいる。また、成膜条件及び改質条件は以下の通りである。
【0090】
(成膜条件及び改質条件)
成膜温度(℃):450
処理圧力(Pa(Torr)):533.29(4)
回転テーブル2の回転数(rpm):20
高周波電力値(W):1200
【0091】
その結果、図38に示すように、プラズマ発生部80の先端部の高さ位置を調整することにより、回転テーブル2の半径方向における薄膜の膜厚を調整できることが分かった。また、この例では、寸法Hが11mmの場合に、回転テーブル2の半径方向において膜厚の最も均一な薄膜が得られた。尚、この図38において、膜厚が薄くなる程、改質が強く行われていると言える。
【0092】
(実施例9)
次に、図39のように回転テーブル2の上流側から1箇所目及び2箇所目にプラズマ発生部80、80を配置して、これら2本のプラズマ発生部80、80を用いて薄膜の改質を行った。この時のプラズマ発生部80、80において互いに近接する電極36同士の間の離間距離Fは、45mmに設定した。また、これらプラズマ発生部80、80の寸法Hについては、先端部では回転テーブル2の上流側から夫々14mm及び12mmに設定すると共に、基端側では夫々10.5mm及び10mmに設定した。実験条件は以下の通りであり、一度実験を行った後、プラズマ発生部80を取り外して再度取り付け直し、再び同じ内容の実験を行った。
【0093】
(実験条件)
成膜温度(℃):350
処理圧力(Pa(Torr)):533.29(4)
第1の反応ガス流量(sccm):600
第2の反応ガス(O3)流量:300g/Nm3(O2:6slm)
改質用のガス(O2)流量(slm):10
回転テーブル2の回転数(rpm):20
高周波電力値(W):800
【0094】
その結果、図40に示すように、成膜量(回転テーブル2の一回転あたりに成膜される成膜量)について、同じ実験条件にも拘わらずに互いに異なる結果となり、再現性が得られなかった。この理由は、別途行った実験を目視で確認したところ、図41に示すように、互いに隣接するプラズマ発生部80、80間において放電が起こり、ウエハW側に供給されるプラズマの量が不足しているためだということが分かった。図40の回転テーブル2の中心側から100mm程度の領域において膜厚の厚くなっている部分については、この目視による実験から、互いに隣接するプラズマ発生部80、80間で放電が起こっている領域に対応していた。従って、互いに隣接するプラズマ発生部80、80間の距離(離間距離A)を長く取ることが好ましいと言える。
【0095】
(実施例10)
この実験では、拡散抑制板510の有無によって得られる薄膜の膜質がどのようになるか確認した。プラズマ発生部80としては、図42(a)に示すように、回転テーブル2の上流側から1箇所目及び2箇所目に設けた。また、回転テーブル2の上流側から1箇所目に寸法Gが200mmの拡散抑制板510を設けた場合(図42(b))と、回転テーブル2の上流側から1箇所目及び2箇所目に寸法Gが200mm及び100mmの拡散抑制板510を夫々設けた場合(同図(c))とについて実験を行った。実験条件は以下の通りである。
【0096】
(実験条件)
成膜温度(℃):350(高周波を供給しない例では450)
処理圧力(Pa(Torr)):533.29(4)
第1の反応ガス流量(sccm):600
第2の反応ガス(O3)流量:300g/Nm3(O2:6slm)
改質用のガス(O2)流量(slm):10
回転テーブル2の回転数(rpm):20
高周波電力値(W):1200
【0097】
その結果、図43に示すように、プラズマ発生部80によって改質を行うことにより、高周波を供給しない場合(改質を行わない場合)と比較して、膜厚が薄くなって緻密な薄膜が得られていた。また、2本のプラズマ発生部80、80の両方に拡散抑制板510を設けた場合(図42(c))には、プラズマ発生部80の先端側(回転テーブルの中央側)では、基端側(回転テーブルの周縁側)よりも膜厚が厚くなっていた。そのため、図42(c)の構成では、プラズマ発生部80の先端側では基端側よりも改質効果が弱くなっており、拡散抑制板510によってウエハWへのプラズマの拡散が抑制されていることが分かった。
この時、回転テーブルの中央側の改質効果の弱くなる領域であっても、高周波を供給しないで実験を行った場合よりも膜厚が薄くなっている理由は、既述のようにプラズマ中のラジカルが拡散抑制板510の側方側を回り込んでウエハWに到達するか、あるいは回転テーブル2の周縁部側から中央部側にプラズマが拡散してきたためだと考えられる。
また、回転テーブル2の半径方向において拡散抑制板510よりも外周側では、拡散抑制板510を設けない場合に比べて、膜厚が薄くなって改質が強く行われていることが分かった。この理由は、拡散抑制板510を設けた領域のプラズマが回転テーブル2の外周側に回り込んでいるためではないかと考えられる。
【0098】
また、2本のプラズマ発生部80、80のうち回転テーブル2の上流側だけに拡散抑制板510を設けた場合(図42(b))には、回転テーブル2の半径方向において、拡散抑制板510を設けない場合(同図(a))とほぼ同程度の膜厚となっていた。この理由は、回転テーブル2の上流側から2箇所目のプラズマ発生部80には拡散抑制板510を設けなかったので、当該プラズマ発生部80によって改質が十分に行われてしまったためだと考えられる。
【0099】
この時の回転テーブル2の半径方向における膜厚分布及び膜厚については、図44に示す結果となった。従って、拡散抑制板510を設けることにより、回転テーブル2の半径方向における膜厚分布(改質の度合い)を調整できることが分かった。また、回転テーブル2の接線方向における膜厚は、図45に示すように、いずれの例においても均一になっていた。
【符号の説明】
【0100】
1 真空容器
2 回転テーブル
W ウエハ
31、32、34 ノズル
35a、35b シース管
36a、36b 電極
80 プラズマ発生部
81 主プラズマ発生部
82 補助プラズマ発生部
220 ガスインジェクター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて基板に対してプラズマにより処理を行うプラズマ処理装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板を載置するための複数の基板載置領域が形成された回転テーブルと、
この回転テーブルを回転させる回転機構と、
前記基板載置領域にプラズマ発生用のガスを供給するガス供給部と、
前記基板載置領域の通過領域に対向する位置において前記回転テーブルの中央部側と外周側との間に棒状に伸びるように設けられ、前記ガスにエネルギーを供給してプラズマ化するための主プラズマ発生部と、
この主プラズマ発生部に対して前記真空容器の周方向に離間して設けられ、当該主プラズマ発生部によるプラズマの不足分を補償するための補助プラズマ発生部と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部に対して周方向に離間して設けられ、基板に対して成膜を行うための反応ガス供給手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記反応ガス供給手段は、回転テーブルの周方向に互に離間して形成された複数の処理領域に互に異なる反応ガスを夫々供給するために設けられ、
前記複数の処理領域の間には、互に異なる反応ガスが混合することを防止するための分離ガスが供給される分離領域が設けられ、
基板の表面には互に異なる反応ガスが順番に供給されることにより成膜されることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記主プラズマ発生部、前記補助プラズマ発生部及びガス供給部は、回転テーブルの回転方向上流側から流れてくるガスが前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部とその上方の天井部との間を流れるように、共通のカバー体により覆われていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記カバー体における前記回転方向上流側には、長さ方向に伸びる側面部の下縁を当該上流側に伸び出すようにフランジ状に屈曲させて形成したガス流の規制部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記補助プラズマ発生部は、前記主プラズマ発生部による基板載置領域の外縁側のプラズマの不足分を補償するために設けられたものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記主プラズマ発生部と前記補助プラズマ発生部とは、プラズマを発生させるための電力の供給源である高周波電源を共用し、
前記補助プラズマ発生部は、前記回転テーブルの中央側部位において基板載置領域へのプラズマの拡散を抑制するために、拡散抑制部を下方側に備えていることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部のうち少なくとも1つのプラズマ発生部は、前記回転テーブルの外周側における前記真空容器の側壁から当該真空容器内に気密に挿入され、
前記回転テーブル上の基板の表面に対して前記少なくとも1つのプラズマ発生部を当該少なくとも一つのプラズマ発生部の長さ方向に傾斜させるために、前記少なくとも一つのプラズマ発生部の基端部側に傾き調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、互に長さ方向に平行に伸び、容量結合型プラズマを発生するための平行電極であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、誘導結合型プラズマを発生させるためのアンテナのうち、棒状のアンテナ部分に相当することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項1】
真空容器内にて基板に対してプラズマにより処理を行うプラズマ処理装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板を載置するための複数の基板載置領域が形成された回転テーブルと、
この回転テーブルを回転させる回転機構と、
前記基板載置領域にプラズマ発生用のガスを供給するガス供給部と、
前記基板載置領域の通過領域に対向する位置において前記回転テーブルの中央部側と外周側との間に棒状に伸びるように設けられ、前記ガスにエネルギーを供給してプラズマ化するための主プラズマ発生部と、
この主プラズマ発生部に対して前記真空容器の周方向に離間して設けられ、当該主プラズマ発生部によるプラズマの不足分を補償するための補助プラズマ発生部と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部に対して周方向に離間して設けられ、基板に対して成膜を行うための反応ガス供給手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記反応ガス供給手段は、回転テーブルの周方向に互に離間して形成された複数の処理領域に互に異なる反応ガスを夫々供給するために設けられ、
前記複数の処理領域の間には、互に異なる反応ガスが混合することを防止するための分離ガスが供給される分離領域が設けられ、
基板の表面には互に異なる反応ガスが順番に供給されることにより成膜されることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記主プラズマ発生部、前記補助プラズマ発生部及びガス供給部は、回転テーブルの回転方向上流側から流れてくるガスが前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部とその上方の天井部との間を流れるように、共通のカバー体により覆われていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記カバー体における前記回転方向上流側には、長さ方向に伸びる側面部の下縁を当該上流側に伸び出すようにフランジ状に屈曲させて形成したガス流の規制部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記補助プラズマ発生部は、前記主プラズマ発生部による基板載置領域の外縁側のプラズマの不足分を補償するために設けられたものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記主プラズマ発生部と前記補助プラズマ発生部とは、プラズマを発生させるための電力の供給源である高周波電源を共用し、
前記補助プラズマ発生部は、前記回転テーブルの中央側部位において基板載置領域へのプラズマの拡散を抑制するために、拡散抑制部を下方側に備えていることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部のうち少なくとも1つのプラズマ発生部は、前記回転テーブルの外周側における前記真空容器の側壁から当該真空容器内に気密に挿入され、
前記回転テーブル上の基板の表面に対して前記少なくとも1つのプラズマ発生部を当該少なくとも一つのプラズマ発生部の長さ方向に傾斜させるために、前記少なくとも一つのプラズマ発生部の基端部側に傾き調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、互に長さ方向に平行に伸び、容量結合型プラズマを発生するための平行電極であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、誘導結合型プラズマを発生させるためのアンテナのうち、棒状のアンテナ部分に相当することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【公開番号】特開2011−151343(P2011−151343A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138669(P2010−138669)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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