説明

プラズマ処理装置

【課題】 被処理基板の周縁部の温度上昇を抑制することによってプラズマ処理の面内均一性を向上させることができ、均一なプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】 内部を気密に閉塞可能とされた処理チャンバーと、処理チャンバー内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、処理チャンバー内から排気するための排気機構と、処理ガスのプラズマを生成するためのプラズマ生成機構と、処理チャンバー内に設けられ、被処理基板と、当該被処理基板の周囲を囲むように配設されるフォーカスリングとが同一の平面に載置されるよう構成された載置台と、載置台の温度を調節する温調機構と、載置台の上面に配設され、フォーカスリングの下部にまで延在する吸着用電極を有する静電チャックとを具備したプラズマ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造工程等においては、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板等の基板を、プラズマを用いて処理するプラズマ処理装置、例えば、プラズマエッチング装置、プラズマCVD装置等が使用されている。
【0003】
上記のプラズマ処理装置としては、例えば、処理チャンバー内に、基板が載置される載置台が設けられ、この載置台に基板を吸着するための静電チャックを配設したものが知られている。このように載置台に静電チャックを配設したプラズマ処理装置では、静電チャックをプラズマから保護するため、載置台の載置面の形状を凸状とし、この凸状の載置面の大きさを基板より僅かに小さくし、載置面に配設された静電チャックの吸着面がプラズマに晒されないように構成したものが知られている。
【0004】
また、半導体ウエハ等の基板の周囲にフォーカスリングを設けた構成のプラズマ処理装置では、半導体ウエハ吸着用の静電チャックの他に、フォーカスリング吸着用の静電チャックを設け、フォーカスリングを載置台に吸着することによって、載置台内を循環する温調媒体によりフォーカスリングの温調も行うようにすることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
なお、例えば直径300mmの半導体ウエハを処理するプラズマ処理装置では、凸状に形成された載置台の載置面の直径(静電チャックの吸着面の直径)を例えば296mm〜298mm程度とし、静電チャックの吸着面が全て半導体ウエハに覆われた状態とすることによって、処理中に静電チャックの吸着面がプラズマに晒されないようにしている。なお、この場合、静電チャックの吸着面内に埋設された静電チャック用電極の直径は、吸着面の直径よりさらに小さくなっている。
【0006】
また、薄板状のフォーカスリングを半導体ウエハと同一平面上に載置し、フォーカスリングのインピーダンスを半導体ウエハのインピーダンスに近づけるようにしたプラズマ処理装置も知れている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−303288号公報
【特許文献2】特開2004−235623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来からプラズマ処理装置においては、基板を載置する載置台の載置面及びこの載置面に配設された静電チャックの吸着面の直径を、プラズマ処理する半導体ウエハの直径より小さくすることによって、静電チャックの吸着面がプラズマに晒されないようにすることが行われている。
【0009】
しかしながら、上記構成のプラズマ処理装置では、半導体ウエハの周縁部が静電チャックに吸着されないので、半導体ウエハの周縁部の温度が他の部分に比べて高くなる傾向がある。このため、半導体ウエハの中央部と、周縁部との温度の差により、半導体ウエハの中央部と周縁部でプラズマ処理の状態が異なる場合がある。例えば、プラズマエッチングにより半導体ウエハ上に形成されたエッチング対象膜にホールを形成する場合は、ホールの抜け性が半導体ウエハの中央部と周縁部で異なったり、フォトレジストに対するエッチング対象膜の選択比が半導体ウエハの中央部と周縁部で異なる場合等がある。このため、プラズマ処理の面内均一性が悪化するという問題がある。なお、上述した特許文献2の技術は、インピーダンスに着目したものであり、温度については考慮されていない。
【0010】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、被処理基板の周縁部の温度上昇を抑制することによってプラズマ処理の面内均一性を向上させることができ、均一なプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラズマ処理装置の一態様は、内部を気密に閉塞可能とされた処理チャンバーと、前記処理チャンバー内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、前記処理チャンバー内から排気するための排気機構と、前記処理ガスのプラズマを生成するためのプラズマ生成機構と、前記処理チャンバー内に設けられ、被処理基板と、当該被処理基板の周囲を囲むように配設されるフォーカスリングとが同一の平面に載置されるよう構成された載置台と、前記載置台の温度を調節する温調機構と、前記載置台の上面に配設され、前記フォーカスリングの下部にまで延在する吸着用電極を有する静電チャックとを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被処理基板の周縁部の温度上昇を抑制することによってプラズマ処理の面内均一性を向上させることができ、均一なプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマエッチング装置の概略構成を模式的に示す図。
【図2】図1のプラズマエッチング装置の要部構成を示す図。
【図3】変形例に係るプラズマエッチング装置の要部構成を示す図。
【図4】半導体ウエハの温度分布を測定した結果を示すグラフ。
【図5】半導体ウエハの各部のフォトレジストのエッチングレート測定した結果を示すグラフ。
【図6】従来装置の要部構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示すものである。プラズマエッチング装置1は、電極板が上下平行に対向し、プラズマ形成用電源が接続された容量結合型平行平板エッチング装置として構成されている。
【0016】
プラズマエッチング装置1は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等からなり円筒形状に成形された処理チャンバー2を有しており、この処理チャンバー2は接地されている。処理チャンバー2内の底部には、セラミックスなどの絶縁性の材料から円筒状に形成された支持部材3を介して、略円柱状のサセプタ(載置台)5が設けられている。
【0017】
サセプタ5には、被処理基板としての半導体ウエハWと、この半導体ウエハWの周囲を囲む環状のフォーカスリング15とが載置される。このフォーカスリング15は、例えば、シリコン等から構成されており、エッチングの面内均一性を向上させる作用を有する。また、サセプタ5は、下部電極の役割を果たすものであり、サセプタ5には、ハイパスフィルター(HPF)6が接続されている。
【0018】
サセプタ5の内部には、冷媒室7が設けられており、この冷媒室7には、冷媒が冷媒導入管8を介して導入されて循環し冷媒排出管9から排出される。そして、冷媒室7を循環する冷媒の冷熱がサセプタ5を介して半導体ウエハWに対して伝熱され、これにより半導体ウエハWが所望の温度に制御される。
【0019】
サセプタ5は、その上側が平面状に成形され、その平面状の上側面に静電チャック11が設けられている。図2に示すように、静電チャック11は、絶縁層11aの間に導電層である吸着用電極11bを介在させて構成されている。静電チャック11は、サセプタ5の上側面全体を覆うように配設されており、吸着用電極11bは、半導体ウエハWの周縁部より外側に延在し、フォーカスリング15の下部にまで至るように配設されている。この静電チャック11の吸着用電極11bには、図1に示す直流電源13から例えば1.5kVの直流電圧が印加される。これによって、例えばクーロン力によって半導体ウエハW及びフォーカスリング15を静電吸着する。
【0020】
サセプタ5、静電チャック11には、半導体ウエハWの裏面に、伝熱媒体(例えばHeガス等)を供給するためのガス通路14が形成されており、この伝熱媒体を介してサセプタ5の冷熱が静電チャック11を介して半導体ウエハWに伝達され半導体ウエハWが所定の温度に維持されるようになっている。
【0021】
上記のとおり、本実施形態のプラズマエッチング装置1では、サセプタ5の上側が、凸状ではなく、平面状に成形され、静電チャック11の吸着用電極11bが、半導体ウエハWの周縁部より外側に延在し、フォーカスリング15の下部にまで至るように配設されている。したがって、半導体ウエハWが、その周縁部に至るまでその全体が静電チャック11に吸着された状態となる。これによって、半導体ウエハWの全体が、サセプタ5の冷熱によって温度調節され、半導体ウエハWの周縁部の温度が上昇することを抑制することができる。
【0022】
なお、本実施形態では、吸着用電極11bがフォーカスリング15の下部にまで延在しているので、1つの吸着用電極11bによって半導体ウエハWとシリコン製のフォーカスリング15を静電気的に吸着することができる構造となっている。このように、サセプタ5の上面を、フォーカスリング15の載置部まで含めて平面状とし、1つの吸着用電極11bで半導体ウエハWとフォーカスリング15とを吸着する構造となっているので、別途フォーカスリング15を吸着するための吸着用電極を形成する工程を必要とすることなく、容易にフォーカスリング15の吸着構造を実現することができる。
【0023】
静電チャック11を構成する絶縁層11a及び吸着用電極11bは、サセプタ5を構成するアルミニウム等からなる基材に、溶射によって形成することができる。このように絶縁層11a等を溶射によって形成すると、絶縁層11aがプラズマによって削られ、その厚さが減少した場合に、溶射による補修を行うことができる。また、半導体ウエハWとフォーカスリング15を吸着するための吸着用電極を一度の溶射で形成できるので安価にフォーカスリング15の吸着構造を実現することができる。
【0024】
絶縁層11aを構成する材料としては、例えば、Al、Y等のセラミックスを用いることができる。Yは、プラズマに対する耐性が高く、プラズマによって削られ難いという特性を有している。また、半導体ウエハと同質のシリコンを用いた場合、半導体ウエハが異質の物質によって汚染されることを防止することができる。また、フォーカスリング15を構成する材料としてはシリコンや窒化シリコンを用いることができる。
【0025】
図2に示すように、静電チャック11上に半導体ウエハWを載置した際、半導体ウエハWの周縁部とフォーカスリング15の内周部との間には、半導体ウエハWの搬送精度等との関係から例えば0.5mm〜2mm程度の間隔Cが形成されるようになっている。そして、この間隔Cの部分からプラズマが入り込み、この部分の静電チャック11の絶縁層11aが特にプラズマによって削られる。そして、吸着用電極11bの上部の絶縁層11aの厚さが薄くなり、絶縁耐性が得られなくなると、静電チャック11をそれ以上使用することができなくなる。
【0026】
このため、図3に示すように、吸着用電極11bの、半導体ウエハWとフォーカスリング15との境界部分に位置する部分(間隔Cの下方に位置する部分)に、下方に向けて屈曲した形状とした屈曲部11cを設けることが好ましい。このように、吸着用電極11bに屈曲部11cを設けることによって、絶縁耐性が得られなくなるまでの使用時間を長くすることができ、静電チャック11の長寿命化を図ることができる。なお、吸着用電極11bの上部の絶縁層11aの厚さは、例えば数百ミクロン程度であり、この場合屈曲部11cにおいて数十ミクロンから百ミクロン程度吸着用電極11bを下方に屈曲させることが好ましい。
【0027】
図1に示すように、サセプタ5の上方には、このサセプタ5と平行に対向して上部電極21が設けられている。この上部電極21は、絶縁材22を介して、処理チャンバー2の上部に支持されている。上部電極21は、電極板24と、この電極板24を支持する導電性材料からなる電極支持体25とによって構成されている。電極板24は、例えば、導電体または半導体で構成され、多数の吐出孔23を有する。この電極板24は、サセプタ5との対向面を形成する。
【0028】
上部電極21における電極支持体25の中央にはガス導入口26が設けられ、このガス導入口26には、ガス供給管27が接続されている。さらにこのガス供給管27には、バルブ28、並びにマスフローコントローラ29を介して、処理ガス供給源30が接続されている。処理ガス供給源30から、プラズマエッチング処理のための処理ガスが供給される。
【0029】
処理チャンバー2の底部には排気管31が接続されており、この排気管31には排気装置35が接続されている。排気装置35はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、処理チャンバー2内を所定の減圧雰囲気、例えば1Pa以下の所定の圧力まで真空引き可能なように構成されている。また、処理チャンバー2の側壁にはゲートバルブ32が設けられており、このゲートバルブ32を開いた状態で半導体ウエハWが隣接するロードロック室(図示せず)との間で搬送されるようになっている。
【0030】
上部電極21には、第1の高周波電源40が接続されており、その給電線には整合器41が介挿されている。また、上部電極21にはローパスフィルター(LPF)42が接続されている。この第1の高周波電源40は、例えば、50〜150MHzの範囲の周波数の高周波電力を出力するよう構成されている。このように周波数の高い高周波電力を上部電極21に印加することにより、処理チャンバー2内に好ましい解離状態でかつ高密度のプラズマを形成することができる。
【0031】
下部電極としてのサセプタ5には、第2の高周波電源50が接続されており、その給電線には整合器51が介挿されている。この第2の高周波電源50は、第1の高周波電源40より低い周波数の高周波電力を出力するものであり、このような低い周波数の高周波電力を印加することにより、被処理基板である半導体ウエハWに対してダメージを与えることなく適切なイオン作用を与えることができる。第2の高周波電源50の周波数としては、20MHz以下の程度のものが用いられる(本実施形態では13.56MHz)。
【0032】
上記構成のプラズマエッチング装置1は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。この制御部60には、CPUを備えプラズマエッチング装置1の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース部62と、記憶部63とが設けられている。
【0033】
ユーザインターフェース部62は、工程管理者がプラズマエッチング装置1を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0034】
記憶部63には、プラズマエッチング装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース部62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマエッチング装置1での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0035】
図1に示すプラズマエッチング装置1によって、半導体ウエハWのプラズマエッチングを行う場合、まず、半導体ウエハWは、ゲートバルブ32が開放された後、図示しないロードロック室から処理チャンバー2内へと搬入され、静電チャック11上に載置される。そして、直流電源13から直流電圧が印加されることによって、半導体ウエハWが静電チャック11上に静電吸着される。次いで、ゲートバルブ32が閉じられ、排気装置35によって、処理チャンバー2内が所定の真空度まで真空引きされる。
【0036】
その後、バルブ28が開かれ、処理ガス供給源30から所定の処理ガスが、マスフローコントローラ29によってその流量を調整されつつ、処理ガス供給管27、ガス導入口26を通って上部電極21の中空部へと導入され、さらに電極板24の吐出孔23を通って、図1の矢印で示すように、半導体ウエハWに対して均一に吐出される。
【0037】
そして、処理チャンバー2内の圧力が、所定の圧力に維持される。その後、第1の高周波電源40から所定の周波数の高周波電力が上部電極21に印加される。これにより、上部電極21と下部電極としてのサセプタ5との間に高周波電界が生じ、処理ガスが解離してプラズマ化する。
【0038】
他方、第2の高周波電源50から、上記の第1の高周波電源40より低い周波数の高周波電力が下部電極であるサセプタ5に印加される。これにより、プラズマ中のイオンがサセプタ5側へ引き込まれ、イオンアシストによりエッチングの異方性が高められる。
【0039】
このプラズマエッチングの際に、本実施形態のプラズマエッチング装置1では、半導体ウエハWが周縁部まで静電チャック11に吸着され、半導体ウエハWの周縁部の温度が上昇することを抑制することができるので、従来に比べてプラズマエッチング処理の面内均一性を向上させることができ、均一なプラズマエッチング処理を行うことができる。
【0040】
そして、所定のプラズマエッチング処理が終了すると、高周波電力の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが処理チャンバー2内から搬出される。
【0041】
図4のグラフは、直径300mm(半径150mm)の半導体ウエハに、60秒間プラズマを作用させてエッチングを行った際の半導体ウエハ各部の温度を測定した結果を示している。図4の縦軸は温度、横軸はウエハ中心からの距離を示しており、点線(マーク◆)は従来の装置の場合、実線(マーク△)、一点鎖線(マーク×)、二点鎖線(マーク□)は、本実施形態の場合を示している。また、実線(マーク△)は、Alの溶射皮膜のESCと厚さ1.4mmのシリコンフォーカスリングを用いた場合、一点鎖線(マーク×)は、Yの溶射皮膜のESCと厚さ1.4mmのシリコンフォーカスリングを用いた場合、二点鎖線(マーク□)は、Yの溶射皮膜のESCと厚さ2.0mmのシリコンフォーカスリングを用いた場合である。
【0042】
点線(マーク◆)の従来の装置の場合とは、図6に示すように、載置台(サセプタ)105が、中央部が上方に突出した凸状に形成され、絶縁層111aと導電層である吸着用電極111bとからなる静電チャック111の径が、半導体ウエハWの径より小さい径とされ、フォーカスリング115が載置台(サセプタ)105の周囲に形成された段部に配設された構成の場合である。
【0043】
図4に示されるように、従来の装置の場合、半導体ウエハWの周縁部の温度が大きく上昇しているのに対して、本実施形態では、半導体ウエハWの周縁部の温度の上昇を抑制できていることがわかる。
【0044】
図5(a)、(b)のグラフは、従来の装置と、本実施形態のプラズマエッチング装置(Alの溶射皮膜のESCと厚さ1.4mmのシリコンフォーカスリングを使用)でプラズマエッチングを行った際の、半導体ウエハの各部におけるフォトレジストのエッチングレートを測定した結果を示している。これらのグラフにおいて、縦軸はエッチングレート、横軸はウエハ中心からの距離を示している。また、点線はX軸に沿った位置におけるエッチングレート、実線はこれと直交するY軸に沿った位置におけるエッチングレートを示している。
【0045】
図5(a)に示すように、従来の装置の場合、半導体ウエハWの周縁部においてフォトレジストのエッチングレートが急激に上昇している。これに対して、図5(b)に示すように、本実施形態の場合、半導体ウエハWの周縁部においてフォトレジストのエッチングレートが上昇することを抑制することができた。これによって、フォトレジストと、例えばエッチング対象のシリコン酸化膜等との選択比が、半導体ウエハWの周縁部において低下してしまうことを抑制することができる。なお、図5(a)に示す従来の装置の場合、面内の平均エッチングレートは、57.4nm/min(面内の均一性±10%)であり、図5(b)に示す実施形態の場合、面内の平均エッチングレートは、57.8nm/min(面内の均一性±6.1%)であり従来の装置の場合に比べて面内の均一性を向上させることができた。よって、半導体ウエハWの周縁部の温度上昇を抑制することでフォトレジストの選択比の面内均一性を向上させることができる。
【0046】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。例えば、プラズマエッチング装置は、図1に示した平行平板型の上下部高周波印加型に限らず、下部電極にのみ1又は2周波の高周波電力を印加するタイプのプラズマエッチング装置等に適用することができる。また、プラズマエッチング装置に限らず、例えば成膜装置等、プラズマを使用する処理装置であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1……プラズマエッチング装置、2……処理チャンバー、5……サセプタ、11……静電チャック、11a……絶縁層、11b……吸着用電極、15……フォーカスリング、W……半導体ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を気密に閉塞可能とされた処理チャンバーと、
前記処理チャンバー内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、
前記処理チャンバー内から排気するための排気機構と、
前記処理ガスのプラズマを生成するためのプラズマ生成機構と、
前記処理チャンバー内に設けられ、被処理基板と、当該被処理基板の周囲を囲むように配設されるフォーカスリングとが同一の平面に載置されるよう構成された載置台と、
前記載置台の温度を調節する温調機構と、
前記載置台の上面に配設され、前記フォーカスリングの下部にまで延在する吸着用電極を有する静電チャックと
を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記静電チャックの前記吸着用電極は、前記被処理基板と前記フォーカスリングとの境界部分が下方に向けて屈曲された形状とされている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラズマ処理装置であって、
前記静電チャックは、絶縁層の間に前記吸着用電極を介在させた構造を有し、前記絶縁層及び前記吸着用電極は、溶射によって形成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記プラズマ生成機構は、前記載置台と、当該載置台と対向するよう配設された上部電極との間に高周波電力を供給して前記処理ガスのプラズマを生成する
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記静電チャックの絶縁層がY又はAlからなる溶射皮膜である
ことを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−104579(P2012−104579A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250461(P2010−250461)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】