プラズマ処理装置
【課題】マイクロ波プラズマ処理装置において、ALD法プラズマ処理の処理時間を短くする。
【解決手段】プラズマ処理装置10は、被処理基体を搭載するステージ14、処理容器12、第1のガス供給手段30、遮蔽部20、誘電体部材40、マイクロ波導入手段42、及び、第2のガス供給手段46を備えている。第1のガス供給手段30は、処理空間に層堆積用の第1のプロセスガスを供給する。遮蔽部20は、導電性を有し、一以上の連通孔20aが設けられている。誘電体部材40には、一以上の連通孔40cに接続する一以上の空洞40aが設けられている。マイクロ波導入手段42は、誘電体部材40にマイクロ波を導入する。第2の供給手段46は、誘電体部材40の空洞40a内にプラズマ処理用の第2のプロセスガスを供給する。
【解決手段】プラズマ処理装置10は、被処理基体を搭載するステージ14、処理容器12、第1のガス供給手段30、遮蔽部20、誘電体部材40、マイクロ波導入手段42、及び、第2のガス供給手段46を備えている。第1のガス供給手段30は、処理空間に層堆積用の第1のプロセスガスを供給する。遮蔽部20は、導電性を有し、一以上の連通孔20aが設けられている。誘電体部材40には、一以上の連通孔40cに接続する一以上の空洞40aが設けられている。マイクロ波導入手段42は、誘電体部材40にマイクロ波を導入する。第2の供給手段46は、誘電体部材40の空洞40a内にプラズマ処理用の第2のプロセスガスを供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理基体上に膜を形成する方法として、ラジカル反応を用いた原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法が知られている。ALD法では、第1のプロセス工程において原料ガスが被処理基体上に供給される。続く第1のパージ工程において、パージが行われる。このパージにより、被処理基体上に化学吸着している層(例えば、単一の原子層又は単一の分子層)が残され、被処理基体に物理吸着又は化学吸着している残部が除去される。続く第2のプロセス工程では、被処理基体上の層にプラズマ処理が施される。このプラズマ処理では、被処理基体上の層が、例えば窒化又は酸化される。続く第2のパージ工程において、再びパージが行われる。
【0003】
このようなALD法には、例えば、特許文献1の図2A等に記載されたプラズマ処理装置が用いられている。特許文献1の図2Aに記載されたプラズマ処理装置は、平行平板方式のプラズマ処理装置であり、第1のプロセス工程の処理と第2のプロセス工程のプラズマ生成が同一の空間内で行われる。また、特許文献2には、同じく平行平板方式のプラズマ処理装置において、導電性の遮蔽板により第1のプロセス工程における処理空間と第2のプロセス工程におけるプラズマ生成空間を分離することが記載されている。
【0004】
また、平行平板方式のプラズマ処理装置よりも周波数が高くラジカルの生成効率が高いプラズマ源として、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置によって、ALD法が行われることもある。このような技術は、例えば、特許文献1の図16等に記載されている。特許文献1の図16に記載されたプラズマ処理装置では、第1のプロセス工程の処理と第2のプロセス工程のプラズマ生成が同一の空間内で行われる。このプラズマ処理装置では、被処理基体にダメージを与えないように、誘電体窓の近傍の空間であるプラズマ生成空間と被処理基体との間に大きな距離が置かれている。
【0005】
また、特許文献3には、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置において、第1のプロセス工程における処理空間と第2のプロセス工程におけるプラズマ生成空間を導電性の部材により分離することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−538127号公報
【特許文献2】米国特許第6911391号公報
【特許文献3】特開2009−99583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置について研究を行っている。この研究において、本願発明者は、第1のプロセス工程の処理空間と第2のプロセス工程のプラズマ生成空間を導電性の部材により分離する構成を採用している。しかしながら、本願発明者は、特許文献3に記載された装置では、ラジカルが被処理基体上に到達するまでに、失活し、結果的に処理時間が長くなってしまうことを見出している。
【0008】
したがって、マイクロ波をプラズマ源に用い、且つ、ALD法に用いることができるプラズマ処理装置では、プラズマ処理の処理時間を短くすることが要請される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係るプラズマ処理装置は、ステージ、処理容器、第1の供給手段、遮蔽部、誘電体部材、マイクロ波導入手段、及び、第2の供給手段を備えている。ステージは、被処理基体を搭載する。処理容器は、ステージの上方に処理空間を画成する。第1の供給手段は、処理空間に層堆積用の第1のプロセスガスを供給する。遮蔽部は、導電性を有し、処理空間に面する第1の面、及び、当該第1の面と反対側の第2の面を有する。遮蔽部には、第1の面から第2の面まで延在する一以上の連通孔が設けられている。誘電体部材は、遮蔽部の第2の面に接するように設けられている。誘電体部材には、一以上の連通孔に接続する一以上の空洞が設けられている。マイクロ波導入手段は、誘電体部材にマイクロ波を導入する。第2の供給手段は、誘電体部材の空洞内にプラズマ処理用の第2のプロセスガスを供給する。
【0010】
このプラズマ処理装置では、遮蔽部の直上に設けられた誘電体部材の空洞内でプラズマが生成される。即ち、プラズマの生成空間と処理空間は遮蔽部によって分離される。したがって、被処理基体に対するダメージが低減され得る。また、空洞内に第2のプロセスガスが供給され、当該第2のプロセスガスが活性化される。これにより空洞内に発生したラジカルは、遮蔽部の連通孔を介して処理空間に供給される。空洞を画成する誘電体部材は遮蔽部に接しているので、空洞から処理空間までの距離は短い。したがって、空洞内で発生され処理空間に供給されるまでに失活するラジカルの量を低減することができる。その結果、プラズマ処理の処理時間が短縮され得る。
【0011】
一実施形態では、一以上の空洞は、誘電体部材に形成された柱状の空間であってもよい。また、一実施形態においては、一以上の空洞は、前記誘電体部材に形成された環状の溝であってもよい。これらの空洞は、比較的小さな空間であるので、当該空洞におけるプラズマの生成効率が高められ得る。
【0012】
一実施形態においては、誘電体部材には、複数の空洞のうち少なくとも二つの間を連通する連通路が形成されていてもよい。この実施形態によれば、連通路によって接続された二以上の空洞において、均一にプラズマを生成することができる。
【0013】
一実施形態においては、マイクロ波導入手段は、同軸導波管を含んでいてもよい。一実施形態においては、同軸導波管は、誘電体部材を通過して遮蔽部に結合されていてもよい。また、一実施形態においては、マイクロ波導入手段は、同軸導波管に結合された金属製のスロット板であって周方向及び径方向に複数のスロットが形成された当該スロット板を含み、誘電体部材は、スロット板と遮蔽部との間に設けられた誘電体窓を構成してもよい。
【0014】
一実施形態においては、一以上の連通孔の各々の断面積は、一以上の空洞の断面積よりも小さくてもよい。この実施形態によれば、空洞への第1のプロセスガスの流入を抑制し、空洞からプラズマが処理空間へ漏れ出すことをより確実に抑制することができる。
【0015】
一実施形態においては、一つの空洞に対して複数の連通孔が接続されていてもよい。この実施形態によれば、処理空間へのラジカルの供給量をより増加させることが可能である。その結果、プラズマ処理の処理時間が短縮され得る。
【0016】
また、一実施形態においては、被処理基体を載置するためのステージの載置面と第1の面との間の距離が5mm〜40mmであってもよい。第1の面とステージのとの間の距離をこのような距離に設定することにより、プラズマ処理の処理時間が更に短縮され得る。
【0017】
また、一実施形態においては、遮蔽部及び誘電体部材は、処理空間の側方に設けられていてもよい。この実施形態においては、第1の面とステージ上に搭載される被処理基体のエッジとの最短距離が5mm〜60mmであるように、ステージと第1の面との間の距離が設定されていてもよい。第1の面とステージとの間の距離をこのような距離に設定することにより、プラズマ処理の処理時間が更に短縮され得る。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、マイクロ波を用い、プラズマ処理による処理時間を短くすることが可能なプラズマ処理装置が提供される。このプラズマ処理装置は、ALD法に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面を示す図である。
【図3】一実施形態に係るプラズマ処理装置に適用し得る制御部を示す図である。
【図4】別の実施形態に係る誘電体部材を示す図である。
【図5】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図6】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図7】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図8】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図9】図8に示すプラズマ処理装置の遮蔽部を示す平面図である。
【図10】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図11】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1には、プラズマ処理装置の断面が示されている。図1に示すプラズマ処理装置10は、処理容器12及び、ステージ14を備えている。
【0022】
処理容器12は、処理空間Sを画成する。処理容器12は、ステンレスやアルミニウムといった金属により構成され得る。一実施形態においては、処理容器12は、第1の側壁16、第2の側壁18、天板部20、及び、底部22を含む。第1の側壁16は、軸線Xに沿って延びる略円筒形状を有している。本実施形態では、第1の側壁16の内側空間が、処理空間Sとなっている。第2の側壁18は、第1の側壁16に連続して下方に延在している。この第2の側壁18も、軸線Xに沿って延びる略円筒形状を有している。
【0023】
第2の側壁18の内側の空間には、ステージ14が設けられている。ステージ14の上面(載置面)には、被処理基体Wが載置される。ステージ14は、例えば、静電力によって被処理基体Wを吸着することができる。このステージ14の上方には、処理空間Sが存在している。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、ステージ14の下方に延在する支柱24を更に備え得る。支柱24は、ステージ14を支持することができる。
【0024】
第2の側壁18には、空間18aが形成されている。空間18aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。また、第2の側壁18には、処理空間Sと空間18aとを接続する孔18bが形成されている。更に、第2の側壁18には、空間18aから当該第2の側壁18の外面まで延びる孔18cが形成されている。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、孔18cに接続する排気装置26を更に備え得る。この排気装置26によって、処理空間Sの減圧・排気が行なわれる。
【0025】
また、第2の側壁18には、ステージ14の外周と当該第2の側壁18との間の空間から当該第2の側壁18の外面まで延在するガス経路18dが設けられている。このガス経路18dには、ガス供給系28が接続されている。ガス供給系28は、処理空間Sにパージガスを供給する。パージガスとしては、アルゴンといった不活性ガスが用いられる。ガス供給系28は、ガス源28a、弁28b、及び流量制御器28cを有している。ガス源28aは、パージガスのガス源である。弁28bは、ガス源28aに接続されており、ガス源28aからのパージガスの供給及び供給停止を切替える。流量制御器28cは、例えば、マスフローコントローラであり、処理空間Sへのパージガスの流量を制御する。
【0026】
第2の側壁18の下端には、底部22が設けられている。また、第1の側壁16の上端開口は、天板部20によって閉じられている。天板部20は、導電性を有し、処理空間Sを上方から画成している。この天板部20は、後述するプラズマ生成空間と処理空間Sとを分離する遮蔽部を構成している。
【0027】
天板部20には、第1のガス供給部30が設けられている。第1のガス供給部30は、原子層堆積用の第1のプロセスガスを処理空間Sに供給する。具体的に、第1のガス供給部30は、ガス経路30a及び複数の孔30bを含み得る。ガス経路30aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔30bは、ガス経路30aから処理空間Sまで延びている。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、ガス供給系32を更に備えることができ、当該ガス供給系32はガス経路30aに接続する。
【0028】
ガス供給系32は、ガス源32a、弁32b、及び、流量制御器32cを含み得る。ガス源32aは、第1のプロセスガスのガス源である。第1のプロセスガスとしては、例えば、シリコン原子を含むガス、例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)等のアミノシランを用いることができる。弁32bは、ガス源32aに接続されており、ガス源32aからのガスの供給及び供給停止を切替える。流量制御器32cは、例えば、マスフローコントローラであり、処理空間Sへの第1のプロセスガスの流量を制御する。
【0029】
天板部20の直上には、プラズマ生成空間にマイクロ波を導入する構造が設けられている。以下、図1と共に図2の(a)を参照する。図2は、図1のII−II線に沿って示す断面図である。
【0030】
図1及び図2の(a)に示すように、プラズマ処理装置10は、上板部34及び側板部36を更に備え得る。これら上板部34及び側板部36も導電性を有している。上板部34は、天板部20の上方において当該天板部20から離間して設けられており、軸線Xに交差する面に沿って延在している。側板部36は、軸線X方向に延在して、上板部34と天板部20とを接続している。
【0031】
これら天板部20、上板部34、及び側板部36は、空間S1、S2、及びS3を画成している。空間S2は、軸線X方向に交差するY方向において、空間S1と空間S3との間に設けられている。
【0032】
天板部20、上板部34、及び側板部36は、空間S1を内部空間とする矩形導波管を構成している。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、マイクロ波発生器38を更に備えることができ、このマイクロ波発生器38は、矩形導波管に接続されている。マイクロ波発生器38は、例えば、500MHzのマイクロ波を、矩形導波管に供給する。
【0033】
空間S2は、略円板形状の空間である。プラズマ処理装置10は、誘電体部材40を更に備えており、この誘電体部材40は、空間S2内に設けられる。空間S3には、Y方向に移動可能なプランジャ42が設けられている。また、空間S1には、バンプ44が設けられている。プランジャ42とバンプ44は、それらの間に誘電体部材40が介在するように、Y方向において対峙している。これらプランジャ42及びバンプ44は金属製であり、当該プランジャ42とバンプ44の間に定在波を発生させる。このように発生される定在波(マイクロ波)は、空間S2に収容された誘電体部材40に導入される。
【0034】
誘電体部材40は、略円板状の部材である。誘電体部材40は、例えば、石英といった誘電体材料から構成される。誘電体部材40には、複数の空洞40aが形成されている。一実施形態においては、空洞40aは、軸線X方向に延びる円柱形状を有し得る。これら空洞40aは、軸線Xを中心とする複数の同心円に沿って配列され得る。一実施形態では、図2の(a)に示すように、複数の空洞40aは、軸線Xを中心とする二つの同心円に沿って配列される。これら空洞40aは、例えば、10〜30mmの直径と、10〜30mmの深さ(軸線X方向の長さ)を有し得る。
【0035】
複数の空洞40aには、複数の孔46aがそれぞれ接続している。複数の孔46aは、誘電体部材40及び上板部34にわたって形成されている。これら複数の孔46aは、上板部34に形成された共通のガス経路46bに接続されている。複数の孔46a及びガス経路46bは、第2のガス供給部46を構成している。この第2のガス供給部46は、空洞40aに第2のプロセスガスを供給する。
【0036】
第2のプロセスガスは、プラズマ処理用のガスである。第2のプロセスガスは、第1のプロセスガスの供給により被処理基体W上に吸着された原子層を変質させるために用いられる。例えば、原子層を窒化させる場合には、第2のプロセスガスは、NH3ガス又は窒素ガスを含み得る。また、原子層を酸化させる場合には、第2のプロセスガスは、酸素ガスを含み得る。
【0037】
第2のガス供給部46は、ガス供給系48に接続されている。ガス供給系48は、ガス源48a、弁48b、及び、流量制御器48cを含み得る。ガス源48aは、第2のプロセスガスのガス源である。弁48bは、ガス源48aに接続されており、第2のプロセスガスの供給及び供給停止を切替える。流量制御器48cは、例えば、マスフローコントローラであり、第2のプロセスガスの供給量を切替える。
【0038】
一実施形態においては、第2のガス供給部46には、ガス供給系50が更に接続されていてもよい。ガス供給系50は、ガス源50a、弁50b、及び、流量制御器50cを含み得る。ガス源50aは、アルゴンといった不活性ガスのガス源である。弁50bは、ガス源50aに接続されており、不活性ガスの供給及び供給停止を切替える。流量制御器50cは、例えば、マスフローコントローラであり、不活性ガスの供給量を切替える。
【0039】
図1を参照すると、天板部20には、複数の連通孔20aが形成されている。複数の連通孔20aは、複数の空洞40aをそれぞれ、処理空間Sに接続する。これら連通孔20aは、天板部20の下面(第1の面)20bから上面(第2の面)20cまで延在している。上面20cは、下面20bに対向している。下面20bは、処理空間Sに面している。また、上面20c上には、誘電体部材40が当該上面20cに接するように、載置されている。
【0040】
以上の構成を有するプラズマ処理装置10では、誘電体部材40の空洞40aに第2のプロセスガスが供給される。また、誘電体部材40の空洞40aには、マイクロ波が供給され、当該空洞40aにおいてプラズマが生成される。これにより、空洞40a内では、第2のプロセスガスが活性化され、ラジカルが生成される。空洞40a、即ちプラズマ生成空間は、処理空間Sから天板部20によって分離されている。この天板部20は、導電性を有するので、空洞40aにおいて発生するプラズマの遮蔽部として機能する。プラズマ処理装置10では、かかる遮蔽部によってプラズマ生成空間と処理空間Sが分離されているので、処理空間Sの容量、特に、遮蔽部からステージ14までの距離を小さくすることができる。
【0041】
そして、空洞40aからは、連通孔20aを経由して処理空間S内にラジカルが供給される。プラズマ処理装置10では、空洞40aは、遮蔽部(天板部20)の直上に設けられているので、処理空間Sと空洞40aとの距離が短くなっている。したがって、空洞40aにおいて発生したラジカルの失活を抑制しつつ、当該ラジカルを処理空間Sに供給することができる。故に、このプラズマ処理装置10は、プラズマ処理の時間を短縮することが可能である。
【0042】
また、上述したように、遮蔽部からステージ14までの距離、即ち、処理空間Sの軸線X方向の長さを短くすることができる。例えば、処理空間Sの軸線X方向の長さは、5mm〜40mmに設定され得る。換言すると、被処理基体Wが載置するためのステージ14の載置面(上面)と下面(第1の面)20bとの間の軸線X方向の距離が5mm〜40mmであるように、遮蔽部を構成する天板部20とステージ14との間の軸線X方向の距離が設定され得る。このような処理空間Sの軸線X方向の長さの設定により、プラズマ処理の時間を更に短縮することが可能である。
【0043】
以下、プラズマ処理装置10を用いたプラズマ処理方法の一実施形態であるALD法について説明する。この実施形態に係る方法では、まず、被処理基体Wが、ステージ14上に載置される。
【0044】
次いで、第1のプロセス工程が実施される。第1のプロセス工程では、第1のプロセスガスが処理空間Sに供給される。この工程においては、弁32bが開かれ、流量制御器32cによって、第1のプロセスガスの流量が制御される。これにより、第1のプロセスガスに含まれる原料の原子又は分子からなる層が被処理基体Wに吸着される。また、第1のプロセス工程においては、不要なガスが排気装置26により排気される。この工程での処理空間Sの圧力は、例えば5Torr(666.5Pa)である。この工程の終了後、弁32bは閉じられる。
【0045】
次いで、第1のパージ・排気工程が実施される。第1のパージ・排気工程では、必要に応じて、処理空間Sにパージガスが供給され、また、処理空間Sの排気が行なわれる。この工程においては、弁28bが開かれ、流量制御器28cによってパージガスの供給量が制御される。また、排気装置26による排気が行なわれる。なお、パージガスは、ガス源50aから弁50bを介して流量制御器50cによる流量制御を経て、供給されてもよい。
【0046】
第1のパージ・排気工程では、第1のプロセス工程で形成された層の不要な部分が除去される。この工程により、第1のプロセス工程で形成された層のうち被処理基体Wに化学吸着している部分(例えば単一の分子層又は単一の原子層)は残存し、第1のプロセス工程で形成された層のうち被処理基体Wに物理吸着又は化学吸着している残部は除去される。また、この工程により、処理空間S内の雰囲気が不活性ガスにより置換される。上述したように、処理空間Sの容量は小さいので、この置換は比較的短い時間で完了し得る。
【0047】
次いで、第2のプロセス工程が実施される。第2のプロセス工程では、マイクロ波発生器38によりマイクロ波が発生され、更に、第2のプロセスガスが空洞40a内に供給される。第2のプロセスガスは、弁48bを開き、その流量を流量制御器48cにより制御しつつ、空洞40a内に供給される。また、この工程では、ガス供給系50から不活性ガスが供給されてもよい。なお、この工程での処理空間Sの圧力は、例えば5Torr(666.5Pa)である。
【0048】
第2のプロセス工程では、マイクロ波により空洞40a内にプラズマが発生する。これにより、空洞40a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、ラジカルが生成される。生成されたラジカルは、処理空間Sに供給され、被処理基体Wに堆積された層を窒化又は酸化させる。
【0049】
次いで、第2のパージ・排気工程が実施される。第2のパージ・排気工程では、必要に応じて、処理空間Sにパージガスが供給され、また、処理空間Sの排気が行なわれる。この工程においては、弁28bが開かれ、流量制御器28cによってパージガスの供給量が制御される。また、排気装置26による排気が行なわれる。なお、パージガスは、ガス源50aから弁50bを介して流量制御器50cによる流量制御を経て、供給されてもよい。この第2のパージ・排気工程により、処理空間S内の雰囲気が不活性ガスにより置換される。上述したように、処理空間Sの容量は小さいので、この置換は比較的短い時間で完了し得る。
【0050】
一実施形態に係るプラズマ処理方法では、第1のプロセス工程、第1のパージ・排気工程、第2のプロセス工程、及び、第2のパージ・排気工程が所定回数繰り返される。これにより、被処理基体上に酸化又は窒化された複数の原子層又は分子層が形成される。
【0051】
以上説明した一実施形態のプラズマ処理方法を実施するために、プラズマ処理装置10は、制御部を更に備えていてもよい。図3は、一実施形態に係るプラズマ処理装置に適用し得る制御部を示す図である。図3に示す制御部52は、例えば、中央処理装置(CPU)及びメモリを有するコンピュータであってもよい。この場合に、制御部52では、CPUがメモリに格納されたプログラムに従って各種制御信号を出力する。
【0052】
制御部52によって出力される各種制御信号は、例えば、排気装置26、弁28b、流量制御器28c、弁32b、流量制御器32c、弁48b、流量制御器48c、弁50b、及び、流量制御器50cに出力される。これにより、排気装置26、弁28b、流量制御器28c、弁32b、流量制御器32c、弁48b、流量制御器48c、弁50b、及び、流量制御器50cは、上述した第1のプロセス工程、第1のパージ・排気工程、第2のプロセス工程、及び、第2のパージ・排気工程での状態に移行するよう制御される。
【0053】
以下、別の実施形態について説明する。図2の(b)に示すように、誘電体部材40には、二つの空洞40aを連通させる連通路40cが形成されていてもよい。連通路40cは、例えば、二つの空洞40aの間において誘電体部材40に形成された溝である。連通路40cは、連通させた二以上の空洞40aにおいてプラズマを均一に発生させることに寄与する。なお、図2の(b)に示すように、複数の連通路40cによって全ての空洞40aが連通されていてもよいが、連通される空洞40aの個数は、任意である。
【0054】
また、図2の(c)に示すように、連通路40cは、二つの同心円の間にわたって形成された環状の溝であってもよい。より具体的に説明すると、図2の(c)に示す実施形態では、複数の空洞40aはこれら二つの同心円に沿って配列されている。環状の連通路40cは、これら二つの同心円の間にわたって形成されており、その軸線X方向の深さは、複数の空洞40aの軸線X方向の深さよりも小さくなっている。かかる連通路40cによっても、複数の空洞40aを連通させることが可能である。
【0055】
次に図4を参照する。図4は、別の実施形態に係る誘電体部材を示す図である。図4の(a)に示すように、誘電体部材40に形成された空洞40aは、軸線Xを中心とする複数の同心円に沿って形成された環状の溝であってもよい。環状の溝は、例えば、10〜30mmの幅と、10〜30mmの深さを有し得る。また、図4の(b)に示すように、環状の溝として構成された複数の空洞40aは、連通路40cによって連通されていてもよい。
【0056】
また、図4の(c)に示すように、連通路40cは、同心の二つの環状の空洞40aの間にわたって設けられた環状の溝であってもよい。図4の(c)に示す実施形態においては、連通路40cの軸線X方向の深さは、空洞40aの軸線X方向の深さよりも小さくなっている。かかる連通路40cによっても、二つの環状の空洞40aを互いに連通させることが可能である。
【0057】
次に図5を参照する。図5は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。図5に示すプラズマ処理装置10Aは、一つの空洞40aに複数の連通孔20aが接続している点において、プラズマ処理装置10とは異なっている。また、プラズマ処理装置10Aでは、連通孔20aの断面積が空洞40aの断面積より小さくなっている。なお、「断面積」とは、軸線X方向に直交する面での空洞40aの面積又は連通孔20aの面積である。
【0058】
プラズマ処理装置10Aでは、各連通孔20aのコンダクタンスが小さくなっている。したがって、空洞40aへの第1のプロセスガスの流入が抑制され、空洞40aからプラズマが処理空間へ漏れ出すことをより確実に抑制することができる。一方、一つの空洞40aに複数の連通孔20aが接続しているので、処理空間へのラジカルの供給量を維持することが可能である。なお、処理空間Sと空洞40aとの間におけるコンダクタンスを低くために、空洞40aは、下方に向かうにつれて面積が小さくなるテーパー形状を有していてもよい。
【0059】
次に図6を参照する。図6は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図6に示すプラズマ処理装置100は、マイクロ波を導入する手段として同軸導波管154を備えている点においてプラズマ処理装置10とは異なっている。また、プラズマ処理装置100は、天板部20、上板部34、及び誘電体部材40に代えて、天板部120、上板部134、誘電体部材140を備えている。
【0060】
天板部120は、第1の側壁16の直上に設けられている。天板部120は、処理空間Sを上方から画成している、天板部120は、導電性を有しており、遮蔽部として機能する。天板部120には、第1のガス供給部130が形成されている。第1のガス供給部130は、ガス経路130a及び複数の孔130bを含み得る。ガス経路130aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔130bは、ガス経路130aから処理空間Sまで延びている。ガス経路130aには、ガス供給系32が接続されている。
【0061】
上板部134は、金属から構成されており、天板部120上に設けられている。上板部134と天板部120は、それらの間に略円板形状の空間を画成している。この空間は、軸線Xに沿っており、当該空間には誘電体部材140が収容されている。
【0062】
誘電体部材140には、空洞140aが形成されている。空洞140aは、一以上の環状の溝であってもよく、また、一以上の柱状の空間であってもよい。空洞140aは、連通孔120aを介して、処理空間Sに接続されている。連通孔120aは、天板部120の下面120bから上面120cまで延在している。誘電体部材140は、この上面120cに接するように、天板部120上に載置されている。
【0063】
また、空洞140aには、第2のガス供給部146が接続している。第2のガス供給部146は、上板部134及び誘電体部材140にわたって形成されており、第2のプロセスガスの供給経路を構成している。第2のガス供給部146には、ガス供給系48及び50が接続されている。
【0064】
同軸導波管154は、外側導体154a及び内側導体154bを含んでいる。外側導体154aは、軸線Xに沿って延在する筒状の導体である。外側導体154aの一端は、マイクロ波発生器138に接続されており、その他端は、上板部134に接続されている。内側導体154bは、軸線Xに沿って延在する導体であり、外側導体154aの内孔を通っている。内側導体154bの一端は、マイクロ波発生器138に接続されており、その他端は、上板部134及び誘電体部材140を突き抜けて、天板部120に接続している。
【0065】
プラズマ処理装置100では、マイクロ波発生器138によって発生されたマイクロ波が同軸導波管154を介して誘電体部材140に供給される。この誘電体部材140は、所謂遅波板として機能する。誘電体部材140に供給されたマイクロ波は、空洞140a内にプラズマを発生させる。これにより、空洞140a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、当該空洞140a内にラジカルが生成される。生成されたラジカルは、連通孔120aを経由して処理空間Sに供給される。かかるプラズマ処理装置100も、プラズマ処理装置10と同様に、ALD法に用いることが可能である。
【0066】
次に図7を参照する。図7は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図7に示すプラズマ処理装置200は、同軸導波管254、誘電体板256、及び、スロット板258を備えている点で、プラズマ処理装置10と異なっている。また、プラズマ処理装置200は、天板部20、上板部34、及び誘電体部材40に代えて、天板部220、上板部234、誘電体部材240を備えている。
【0067】
天板部220は、第1の側壁16の直上に設けられている。天板部220は、処理空間Sを上方から画成している、天板部220は、導電性を有しており、遮蔽部として機能する。天板部220には、第1のガス供給部230が形成されている。第1のガス供給部230は、ガス経路230a及び複数の孔230bを含み得る。ガス経路230aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔230bは、ガス経路230aから処理空間Sまで延びている。ガス経路230aには、ガス供給系32が接続されている。
【0068】
上板部234は、金属から構成されており、天板部220上に設けられている。上板部234と天板部220は、それらの間に略円板形状の空間を画成している。この空間は、軸線Xに沿っており、当該空間には誘電体部材240、誘電体板256、及びスロット板258が収容されている。
【0069】
スロット板258は、略円板上の導体である。スロット板258には、互いに交差又は直交する方向に延びる二つのスロットをそれぞれ含む複数のスロット対が形成されている。これらスロット対は、軸線X中心に径方向に所定の間隔で配置され、また、周方向に所定の間隔で配置されている。このスロット板258と上板部234との間には、誘電体板256が設けられている。スロット板258、上板部234、及び、誘電体板256は、ラジアルラインスロットアンテナを構成する。
【0070】
同軸導波管254は、外側導体254a及び内側導体254bを含んでいる。外側導体254aは、軸線Xに沿って延在する筒状の導体である。外側導体254aの一端は、モード変換器260に接続されている。モード変換器260は、導波管262及びチューナ264を介してマイクロ波発生器238に接続されている。また、外側導体254aの他端は、上板部234に接続されている。
【0071】
内側導体254bは、軸線Xに沿って延在する筒状の導体であり、外側導体254aの内孔を通っている。内側導体254bの一端は、モード変換器260に接続されており、その他端は、上板部134及び誘電体板256を突き抜けて、スロット板258に接続されている。
【0072】
スロット板258と天板部220の上面220cとの間には、誘電体部材240が設けられている。誘電体部材240は、所謂誘電体窓としての機能を有する。誘電体部材240には、空洞240aが形成されている。空洞240aは、一以上の環状の溝であってもよく、また、一以上の柱状の空間であってもよい。空洞240aは、連通孔220aを介して、処理空間Sに接続されている。連通孔220aは、天板部220の下面220bから上面220cまで延在している。誘電体部材240は、この上面220cに接するように、天板部220上に載置されている。
【0073】
また、空洞240aには、第2のガス供給部246が接続している。第2のガス供給部246は、誘電体部材240の内部に形成されている。第2のガス供給部246は、内側導体254bの内孔を介して、ガス供給系48及び50に接続されている。
【0074】
プラズマ処理装置200では、誘電体部材240に供給されたマイクロ波が、空洞240a内にプラズマを発生させる。これにより、空洞240a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、当該空洞240a内にラジカルが生成される。生成されたラジカルは、連通孔220aを経由して処理空間Sに供給される。かかるプラズマ処理装置200も、プラズマ処理装置10と同様に、ALD法に用いることが可能である。
【0075】
次に、図8を参照する。図8に示すプラズマ処理装置300は、処理容器312、及び、ステージ14を備えている。処理容器312は、処理空間Sを画成している。処理容器312は、金属製であり、側壁318、天板部320、及び、底部322を含んでいる。側壁318は、軸線Xに沿って延在する略筒形状を有している。側壁318の上端開口は、天板部320によって閉じられている。側壁318の下端には、底部322が設けられている。側壁318の内側空間には、ステージ14が設けられており、当該ステージ14は、その下方に設けられた支柱24によって支持されている。このステージ14の上方に処理空間Sが存在している。
【0076】
処理空間Sは、処理容器312の外部に設けられた排気装置26に接続されている。また、側壁318にはガス経路318dが形成されている。このガス経路318dには、ガス供給系28が接続されている。
【0077】
また、天板部320には、第1のガス供給部330が形成されている。第1のガス供給部は330、天板部320内に形成された空間330a、当該空間330aと処理空間Sを接続する孔330b、当該空間330aを処理容器312の外部に接続するガス経路330cを含んでいる。このガス経路330cには、ガス供給系32が接続されている。
【0078】
プラズマ処理装置300では、処理空間Sの側方、即ち、処理空間Sに対して軸線Xに交差する方向に、遮蔽部370、及び誘電体部材340が設けられている。以下、図8と共に図9を参照する。図9は、図8に示すプラズマ処理装置の遮蔽部を示す平面図である。
【0079】
遮蔽部370は、導電性を有し、板状をなしている。遮蔽部370は、第1の面370a及び第2の面370bを含んでいる。第1の面370aは、処理空間Sに面している。第1の面370aとステージ14との間の距離は、例えば、当該第1の面370aとステージ14上に載置される被処理基体Wのエッジとの最短距離(Y方向の距離)が5〜60mmとなるように設定され得る。かかる距離設定により、プラズマ処理の処理時間が更に短縮され得る。
【0080】
第2の面370bは、第1の面370aとは反対側の面である。遮蔽部370には、第1の面370aから第2の面370bまで延びる連通孔370cが形成されている。一実施形態においては、遮蔽部370に複数の連通孔370cが形成されている。誘電体部材340は、この遮蔽部370の第2の面370bに接するように設けられている。
【0081】
誘電体部材340は、軸線Xに対して誘電体部材340より外側に設けられている。誘電体部材340には、空洞340aが設けられている。空洞340aは、連通孔370cを介して処理空間Sに連通している。この誘電体部材340及び遮蔽部370は、側壁318及び天板部320の内部に埋め込まれている。
【0082】
処理容器312には、誘電体部材340の空洞340aに接続する第2のガス供給部346が形成されている。第2のガス供給部346は、処理容器312に形成されたガス経路であり得る。第2のガス供給部346には、ガス供給系48及び50が接続されている。
【0083】
図8に示すように、処理容器312の外面には、導波管372が取り付けられている。この導波管372には、マイクロ波発生器338が接続している。マイクロ波発生器338によって発生されたマイクロ波は、導波管372及び誘電体部材340を介して、誘電体部材340の空洞340aに導入される。また、空洞340aには、第2のプロセスガスが供給される。これにより、空洞340aにおいては、第2のプロセスガスが活性化され、ラジアルが生成される。生成されたラジカルは、処理空間Sに供給される。
【0084】
プラズマ処理装置300においても、プラズマ生成空間である空洞340aと処理空間Sの間に遮蔽部が設けられている。また、プラズマ処理装置300でも、当該空洞340aと処理空間Sとの間の距離が短くなっている。したがって、失活する量を抑制しつつ、ラジカルを処理空間Sに供給することができる。故に、このプラズマ処理装置300も、プラズマ処理(第2のプロセス工程)の処理時間を短くすることができる。
【0085】
次に図10を参照する。図10は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す概略的に示す図である。図10に示すプラズマ処理装置400は、マイクロ波を導入する手段として導波管472を備えている。また、プラズマ処理装置400は、天板部20、及び誘電体部材40に代えて、天板部420、及び誘電体部材440を備えている。
【0086】
天板部420は、第1の側壁16の直上に設けられている。天板部420は、処理空間Sを上方から画成している、天板部420は、導電性を有しており、遮蔽部として機能する。天板部420には、第1のガス供給部430が形成されている。第1のガス供給部430は、ガス経路430a及び複数の孔430bを含み得る。ガス経路430aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔430bは、ガス経路430aから処理空間Sまで延びている。ガス経路430aには、ガス供給系32が接続されている。
【0087】
プラズマ処理装置400は、また、上板部434を更に備えている。上板部434は、金属から構成されており、天板部420上に設けられている。上板部434と天板部420は、それらの間に略円板形状の空間を画成している。この空間は、軸線Xに沿っており、当該空間には誘電体部材440が収容されている。
【0088】
誘電体部材440には、空洞440aが形成されている。空洞440aは、一以上の環状の溝であってもよく、また、一以上の柱状の空間であってもよい。空洞440aは、連通孔420aを介して、処理空間Sに接続されている。連通孔420aは、天板部420の下面420bから上面420cまで延在している。誘電体部材440は、この上面420cに接するように、天板部420上に載置されている。
【0089】
また、空洞440aには、第2のガス供給部446が接続している。第2のガス供給部446は、上板部434及び誘電体部材440にわたって形成されており、第2のプロセスガスの供給経路を構成している。第2のガス供給部446には、ガス供給系48及び50が接続されている。
【0090】
誘電体部材440上には、導波管472が設けられている。導波管472は、第1の導波部472a及び第2の導波部472bを含んでいる。第1の導波部472aは、軸線Xに交差する方向に延在する矩形導波管を構成している。この第1の導波部472aの一端には、マイクロ波発生器438が接続されている。また、第1の導波部472aの他端には第2の導波部472bが接続されている。
【0091】
第2の導波部472bは、誘電体部材440上に載置されている。この第2の導波部472bは、軸線Xを中心とする環状の閉曲線に沿って延在する導波管を構成している。第2の導波部472bの下壁部には、複数のスロット472cが形成されている。これらスロット472cは、周方向に配列されている。一実施形態においては、スロット472cは、軸線X方向において、空洞440aの上に設けられ得る。これにより、空洞440aにおけるプラズマの生成効率が高められる。
【0092】
プラズマ処理装置400では、マイクロ波発生器438によって発生されたマイクロ波が誘電体部材440に供給される。誘電体部材440に供給されたマイクロ波は、空洞440a内にプラズマを発生させる。これにより、空洞440a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、当該空洞440a内にラジカルが生成される。生成されたラジカルは、連通孔420aを経由して処理空間Sに供給される。かかるプラズマ処理装置400も、プラズマ処理装置10と同様に、ALD法に用いることが可能である。
【0093】
次に図11を参照する。図11は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す概略的に示す図である。図11に示すプラズマ処理装置500は、マイクロ波を導入する手段として導波管572を備えている。また、プラズマ処理装置500は、天板部20、及び誘電体部材40に代えて、天板部520、及び誘電体部材540を備えている。
【0094】
天板部520は、第1の側壁16の直上に設けられている。天板部520は、処理空間Sを上方から画成している、天板部520は、導電性を有しており、遮蔽部として機能する。天板部520には、第1のガス供給部530が形成されている。第5のガス供給部430は、ガス経路530a及び複数の孔530bを含み得る。ガス経路530aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔530bは、ガス経路530aから処理空間Sまで延びている。ガス経路530aには、ガス供給系32が接続されている。
【0095】
プラズマ処理装置500は、また、上板部534を更に備えている。上板部534は、金属から構成されており、天板部520上に設けられている。上板部534と天板部520は、それらの間に略円板形状の空間を画成している。この空間は、軸線Xに沿っており、当該空間には誘電体部材540が収容されている。
【0096】
誘電体部材540には、空洞540aが形成されている。空洞540aは、一以上の環状の溝であってもよく、また、一以上の柱状の空間であってもよい。空洞540aは、連通孔520aを介して、処理空間Sに接続されている。連通孔520aは、天板部520の下面520bから上面520cまで延在している。誘電体部材540は、この上面520cに接するように、天板部520上に載置されている。
【0097】
また、空洞540aには、第2のガス供給部546が接続している。第2のガス供給部546は、上板部534及び誘電体部材540にわたって形成されており、第2のプロセスガスの供給経路を構成している。第2のガス供給部546には、ガス供給系48及び50が接続されている。
【0098】
天板部520上には、導波管572が設けられている。導波管572は、第1の導波部572a及び第2の導波部572bを含んでいる。第1の導波部572aは、軸線Xに交差する方向に延在する矩形導波管を構成している。この第1の導波部572aの一端には、マイクロ波発生器538が接続されている。また、第1の導波部572aの他端には第2の導波部572bが接続されている。
【0099】
第2の導波部572bは、軸線Xを中心とする環状の閉曲線に沿って延在する導波管を構成している。第2の導波部572bは、誘電体部材540の外周面を囲むように設けられている。第2の導波部572bの内側壁部には、複数のスロット572cが形成されている。これらスロット572cは、周方向に配列されている。
【0100】
プラズマ処理装置500では、マイクロ波発生器538によって発生されたマイクロ波が誘電体部材540に供給される。誘電体部材540に供給されたマイクロ波は、空洞540a内にプラズマを発生させる。これにより、空洞540a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、当該空洞540a内にラジカルが生成される。生成されたラジカルは、連通孔520aを経由して処理空間Sに供給される。かかるプラズマ処理装置500も、プラズマ処理装置10と同様に、ALD法に用いることが可能である。
【0101】
以上、種々の実施形態について説明したが、本発明は、これら実施形態に限定されるものではなく、種々の変形態様を構成し得る。例えば、上述した種々の実施形態における各部の構成等は、本発明の思想を逸脱しない範囲で、組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
10…プラズマ処理装置、12…処理容器、14…ステージ、20…遮蔽部(天板部)、20a…連通孔、20b…下面(第1の面)、20c…上面(第2の面)、30…第1のガス供給部、40…誘電体部材、40a…空洞、40c…連通路、46…第2のガス供給部、S…処理空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理基体上に膜を形成する方法として、ラジカル反応を用いた原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法が知られている。ALD法では、第1のプロセス工程において原料ガスが被処理基体上に供給される。続く第1のパージ工程において、パージが行われる。このパージにより、被処理基体上に化学吸着している層(例えば、単一の原子層又は単一の分子層)が残され、被処理基体に物理吸着又は化学吸着している残部が除去される。続く第2のプロセス工程では、被処理基体上の層にプラズマ処理が施される。このプラズマ処理では、被処理基体上の層が、例えば窒化又は酸化される。続く第2のパージ工程において、再びパージが行われる。
【0003】
このようなALD法には、例えば、特許文献1の図2A等に記載されたプラズマ処理装置が用いられている。特許文献1の図2Aに記載されたプラズマ処理装置は、平行平板方式のプラズマ処理装置であり、第1のプロセス工程の処理と第2のプロセス工程のプラズマ生成が同一の空間内で行われる。また、特許文献2には、同じく平行平板方式のプラズマ処理装置において、導電性の遮蔽板により第1のプロセス工程における処理空間と第2のプロセス工程におけるプラズマ生成空間を分離することが記載されている。
【0004】
また、平行平板方式のプラズマ処理装置よりも周波数が高くラジカルの生成効率が高いプラズマ源として、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置によって、ALD法が行われることもある。このような技術は、例えば、特許文献1の図16等に記載されている。特許文献1の図16に記載されたプラズマ処理装置では、第1のプロセス工程の処理と第2のプロセス工程のプラズマ生成が同一の空間内で行われる。このプラズマ処理装置では、被処理基体にダメージを与えないように、誘電体窓の近傍の空間であるプラズマ生成空間と被処理基体との間に大きな距離が置かれている。
【0005】
また、特許文献3には、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置において、第1のプロセス工程における処理空間と第2のプロセス工程におけるプラズマ生成空間を導電性の部材により分離することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−538127号公報
【特許文献2】米国特許第6911391号公報
【特許文献3】特開2009−99583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置について研究を行っている。この研究において、本願発明者は、第1のプロセス工程の処理空間と第2のプロセス工程のプラズマ生成空間を導電性の部材により分離する構成を採用している。しかしながら、本願発明者は、特許文献3に記載された装置では、ラジカルが被処理基体上に到達するまでに、失活し、結果的に処理時間が長くなってしまうことを見出している。
【0008】
したがって、マイクロ波をプラズマ源に用い、且つ、ALD法に用いることができるプラズマ処理装置では、プラズマ処理の処理時間を短くすることが要請される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係るプラズマ処理装置は、ステージ、処理容器、第1の供給手段、遮蔽部、誘電体部材、マイクロ波導入手段、及び、第2の供給手段を備えている。ステージは、被処理基体を搭載する。処理容器は、ステージの上方に処理空間を画成する。第1の供給手段は、処理空間に層堆積用の第1のプロセスガスを供給する。遮蔽部は、導電性を有し、処理空間に面する第1の面、及び、当該第1の面と反対側の第2の面を有する。遮蔽部には、第1の面から第2の面まで延在する一以上の連通孔が設けられている。誘電体部材は、遮蔽部の第2の面に接するように設けられている。誘電体部材には、一以上の連通孔に接続する一以上の空洞が設けられている。マイクロ波導入手段は、誘電体部材にマイクロ波を導入する。第2の供給手段は、誘電体部材の空洞内にプラズマ処理用の第2のプロセスガスを供給する。
【0010】
このプラズマ処理装置では、遮蔽部の直上に設けられた誘電体部材の空洞内でプラズマが生成される。即ち、プラズマの生成空間と処理空間は遮蔽部によって分離される。したがって、被処理基体に対するダメージが低減され得る。また、空洞内に第2のプロセスガスが供給され、当該第2のプロセスガスが活性化される。これにより空洞内に発生したラジカルは、遮蔽部の連通孔を介して処理空間に供給される。空洞を画成する誘電体部材は遮蔽部に接しているので、空洞から処理空間までの距離は短い。したがって、空洞内で発生され処理空間に供給されるまでに失活するラジカルの量を低減することができる。その結果、プラズマ処理の処理時間が短縮され得る。
【0011】
一実施形態では、一以上の空洞は、誘電体部材に形成された柱状の空間であってもよい。また、一実施形態においては、一以上の空洞は、前記誘電体部材に形成された環状の溝であってもよい。これらの空洞は、比較的小さな空間であるので、当該空洞におけるプラズマの生成効率が高められ得る。
【0012】
一実施形態においては、誘電体部材には、複数の空洞のうち少なくとも二つの間を連通する連通路が形成されていてもよい。この実施形態によれば、連通路によって接続された二以上の空洞において、均一にプラズマを生成することができる。
【0013】
一実施形態においては、マイクロ波導入手段は、同軸導波管を含んでいてもよい。一実施形態においては、同軸導波管は、誘電体部材を通過して遮蔽部に結合されていてもよい。また、一実施形態においては、マイクロ波導入手段は、同軸導波管に結合された金属製のスロット板であって周方向及び径方向に複数のスロットが形成された当該スロット板を含み、誘電体部材は、スロット板と遮蔽部との間に設けられた誘電体窓を構成してもよい。
【0014】
一実施形態においては、一以上の連通孔の各々の断面積は、一以上の空洞の断面積よりも小さくてもよい。この実施形態によれば、空洞への第1のプロセスガスの流入を抑制し、空洞からプラズマが処理空間へ漏れ出すことをより確実に抑制することができる。
【0015】
一実施形態においては、一つの空洞に対して複数の連通孔が接続されていてもよい。この実施形態によれば、処理空間へのラジカルの供給量をより増加させることが可能である。その結果、プラズマ処理の処理時間が短縮され得る。
【0016】
また、一実施形態においては、被処理基体を載置するためのステージの載置面と第1の面との間の距離が5mm〜40mmであってもよい。第1の面とステージのとの間の距離をこのような距離に設定することにより、プラズマ処理の処理時間が更に短縮され得る。
【0017】
また、一実施形態においては、遮蔽部及び誘電体部材は、処理空間の側方に設けられていてもよい。この実施形態においては、第1の面とステージ上に搭載される被処理基体のエッジとの最短距離が5mm〜60mmであるように、ステージと第1の面との間の距離が設定されていてもよい。第1の面とステージとの間の距離をこのような距離に設定することにより、プラズマ処理の処理時間が更に短縮され得る。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、マイクロ波を用い、プラズマ処理による処理時間を短くすることが可能なプラズマ処理装置が提供される。このプラズマ処理装置は、ALD法に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面を示す図である。
【図3】一実施形態に係るプラズマ処理装置に適用し得る制御部を示す図である。
【図4】別の実施形態に係る誘電体部材を示す図である。
【図5】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図6】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図7】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図8】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図9】図8に示すプラズマ処理装置の遮蔽部を示す平面図である。
【図10】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図11】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1には、プラズマ処理装置の断面が示されている。図1に示すプラズマ処理装置10は、処理容器12及び、ステージ14を備えている。
【0022】
処理容器12は、処理空間Sを画成する。処理容器12は、ステンレスやアルミニウムといった金属により構成され得る。一実施形態においては、処理容器12は、第1の側壁16、第2の側壁18、天板部20、及び、底部22を含む。第1の側壁16は、軸線Xに沿って延びる略円筒形状を有している。本実施形態では、第1の側壁16の内側空間が、処理空間Sとなっている。第2の側壁18は、第1の側壁16に連続して下方に延在している。この第2の側壁18も、軸線Xに沿って延びる略円筒形状を有している。
【0023】
第2の側壁18の内側の空間には、ステージ14が設けられている。ステージ14の上面(載置面)には、被処理基体Wが載置される。ステージ14は、例えば、静電力によって被処理基体Wを吸着することができる。このステージ14の上方には、処理空間Sが存在している。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、ステージ14の下方に延在する支柱24を更に備え得る。支柱24は、ステージ14を支持することができる。
【0024】
第2の側壁18には、空間18aが形成されている。空間18aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。また、第2の側壁18には、処理空間Sと空間18aとを接続する孔18bが形成されている。更に、第2の側壁18には、空間18aから当該第2の側壁18の外面まで延びる孔18cが形成されている。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、孔18cに接続する排気装置26を更に備え得る。この排気装置26によって、処理空間Sの減圧・排気が行なわれる。
【0025】
また、第2の側壁18には、ステージ14の外周と当該第2の側壁18との間の空間から当該第2の側壁18の外面まで延在するガス経路18dが設けられている。このガス経路18dには、ガス供給系28が接続されている。ガス供給系28は、処理空間Sにパージガスを供給する。パージガスとしては、アルゴンといった不活性ガスが用いられる。ガス供給系28は、ガス源28a、弁28b、及び流量制御器28cを有している。ガス源28aは、パージガスのガス源である。弁28bは、ガス源28aに接続されており、ガス源28aからのパージガスの供給及び供給停止を切替える。流量制御器28cは、例えば、マスフローコントローラであり、処理空間Sへのパージガスの流量を制御する。
【0026】
第2の側壁18の下端には、底部22が設けられている。また、第1の側壁16の上端開口は、天板部20によって閉じられている。天板部20は、導電性を有し、処理空間Sを上方から画成している。この天板部20は、後述するプラズマ生成空間と処理空間Sとを分離する遮蔽部を構成している。
【0027】
天板部20には、第1のガス供給部30が設けられている。第1のガス供給部30は、原子層堆積用の第1のプロセスガスを処理空間Sに供給する。具体的に、第1のガス供給部30は、ガス経路30a及び複数の孔30bを含み得る。ガス経路30aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔30bは、ガス経路30aから処理空間Sまで延びている。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、ガス供給系32を更に備えることができ、当該ガス供給系32はガス経路30aに接続する。
【0028】
ガス供給系32は、ガス源32a、弁32b、及び、流量制御器32cを含み得る。ガス源32aは、第1のプロセスガスのガス源である。第1のプロセスガスとしては、例えば、シリコン原子を含むガス、例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)等のアミノシランを用いることができる。弁32bは、ガス源32aに接続されており、ガス源32aからのガスの供給及び供給停止を切替える。流量制御器32cは、例えば、マスフローコントローラであり、処理空間Sへの第1のプロセスガスの流量を制御する。
【0029】
天板部20の直上には、プラズマ生成空間にマイクロ波を導入する構造が設けられている。以下、図1と共に図2の(a)を参照する。図2は、図1のII−II線に沿って示す断面図である。
【0030】
図1及び図2の(a)に示すように、プラズマ処理装置10は、上板部34及び側板部36を更に備え得る。これら上板部34及び側板部36も導電性を有している。上板部34は、天板部20の上方において当該天板部20から離間して設けられており、軸線Xに交差する面に沿って延在している。側板部36は、軸線X方向に延在して、上板部34と天板部20とを接続している。
【0031】
これら天板部20、上板部34、及び側板部36は、空間S1、S2、及びS3を画成している。空間S2は、軸線X方向に交差するY方向において、空間S1と空間S3との間に設けられている。
【0032】
天板部20、上板部34、及び側板部36は、空間S1を内部空間とする矩形導波管を構成している。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、マイクロ波発生器38を更に備えることができ、このマイクロ波発生器38は、矩形導波管に接続されている。マイクロ波発生器38は、例えば、500MHzのマイクロ波を、矩形導波管に供給する。
【0033】
空間S2は、略円板形状の空間である。プラズマ処理装置10は、誘電体部材40を更に備えており、この誘電体部材40は、空間S2内に設けられる。空間S3には、Y方向に移動可能なプランジャ42が設けられている。また、空間S1には、バンプ44が設けられている。プランジャ42とバンプ44は、それらの間に誘電体部材40が介在するように、Y方向において対峙している。これらプランジャ42及びバンプ44は金属製であり、当該プランジャ42とバンプ44の間に定在波を発生させる。このように発生される定在波(マイクロ波)は、空間S2に収容された誘電体部材40に導入される。
【0034】
誘電体部材40は、略円板状の部材である。誘電体部材40は、例えば、石英といった誘電体材料から構成される。誘電体部材40には、複数の空洞40aが形成されている。一実施形態においては、空洞40aは、軸線X方向に延びる円柱形状を有し得る。これら空洞40aは、軸線Xを中心とする複数の同心円に沿って配列され得る。一実施形態では、図2の(a)に示すように、複数の空洞40aは、軸線Xを中心とする二つの同心円に沿って配列される。これら空洞40aは、例えば、10〜30mmの直径と、10〜30mmの深さ(軸線X方向の長さ)を有し得る。
【0035】
複数の空洞40aには、複数の孔46aがそれぞれ接続している。複数の孔46aは、誘電体部材40及び上板部34にわたって形成されている。これら複数の孔46aは、上板部34に形成された共通のガス経路46bに接続されている。複数の孔46a及びガス経路46bは、第2のガス供給部46を構成している。この第2のガス供給部46は、空洞40aに第2のプロセスガスを供給する。
【0036】
第2のプロセスガスは、プラズマ処理用のガスである。第2のプロセスガスは、第1のプロセスガスの供給により被処理基体W上に吸着された原子層を変質させるために用いられる。例えば、原子層を窒化させる場合には、第2のプロセスガスは、NH3ガス又は窒素ガスを含み得る。また、原子層を酸化させる場合には、第2のプロセスガスは、酸素ガスを含み得る。
【0037】
第2のガス供給部46は、ガス供給系48に接続されている。ガス供給系48は、ガス源48a、弁48b、及び、流量制御器48cを含み得る。ガス源48aは、第2のプロセスガスのガス源である。弁48bは、ガス源48aに接続されており、第2のプロセスガスの供給及び供給停止を切替える。流量制御器48cは、例えば、マスフローコントローラであり、第2のプロセスガスの供給量を切替える。
【0038】
一実施形態においては、第2のガス供給部46には、ガス供給系50が更に接続されていてもよい。ガス供給系50は、ガス源50a、弁50b、及び、流量制御器50cを含み得る。ガス源50aは、アルゴンといった不活性ガスのガス源である。弁50bは、ガス源50aに接続されており、不活性ガスの供給及び供給停止を切替える。流量制御器50cは、例えば、マスフローコントローラであり、不活性ガスの供給量を切替える。
【0039】
図1を参照すると、天板部20には、複数の連通孔20aが形成されている。複数の連通孔20aは、複数の空洞40aをそれぞれ、処理空間Sに接続する。これら連通孔20aは、天板部20の下面(第1の面)20bから上面(第2の面)20cまで延在している。上面20cは、下面20bに対向している。下面20bは、処理空間Sに面している。また、上面20c上には、誘電体部材40が当該上面20cに接するように、載置されている。
【0040】
以上の構成を有するプラズマ処理装置10では、誘電体部材40の空洞40aに第2のプロセスガスが供給される。また、誘電体部材40の空洞40aには、マイクロ波が供給され、当該空洞40aにおいてプラズマが生成される。これにより、空洞40a内では、第2のプロセスガスが活性化され、ラジカルが生成される。空洞40a、即ちプラズマ生成空間は、処理空間Sから天板部20によって分離されている。この天板部20は、導電性を有するので、空洞40aにおいて発生するプラズマの遮蔽部として機能する。プラズマ処理装置10では、かかる遮蔽部によってプラズマ生成空間と処理空間Sが分離されているので、処理空間Sの容量、特に、遮蔽部からステージ14までの距離を小さくすることができる。
【0041】
そして、空洞40aからは、連通孔20aを経由して処理空間S内にラジカルが供給される。プラズマ処理装置10では、空洞40aは、遮蔽部(天板部20)の直上に設けられているので、処理空間Sと空洞40aとの距離が短くなっている。したがって、空洞40aにおいて発生したラジカルの失活を抑制しつつ、当該ラジカルを処理空間Sに供給することができる。故に、このプラズマ処理装置10は、プラズマ処理の時間を短縮することが可能である。
【0042】
また、上述したように、遮蔽部からステージ14までの距離、即ち、処理空間Sの軸線X方向の長さを短くすることができる。例えば、処理空間Sの軸線X方向の長さは、5mm〜40mmに設定され得る。換言すると、被処理基体Wが載置するためのステージ14の載置面(上面)と下面(第1の面)20bとの間の軸線X方向の距離が5mm〜40mmであるように、遮蔽部を構成する天板部20とステージ14との間の軸線X方向の距離が設定され得る。このような処理空間Sの軸線X方向の長さの設定により、プラズマ処理の時間を更に短縮することが可能である。
【0043】
以下、プラズマ処理装置10を用いたプラズマ処理方法の一実施形態であるALD法について説明する。この実施形態に係る方法では、まず、被処理基体Wが、ステージ14上に載置される。
【0044】
次いで、第1のプロセス工程が実施される。第1のプロセス工程では、第1のプロセスガスが処理空間Sに供給される。この工程においては、弁32bが開かれ、流量制御器32cによって、第1のプロセスガスの流量が制御される。これにより、第1のプロセスガスに含まれる原料の原子又は分子からなる層が被処理基体Wに吸着される。また、第1のプロセス工程においては、不要なガスが排気装置26により排気される。この工程での処理空間Sの圧力は、例えば5Torr(666.5Pa)である。この工程の終了後、弁32bは閉じられる。
【0045】
次いで、第1のパージ・排気工程が実施される。第1のパージ・排気工程では、必要に応じて、処理空間Sにパージガスが供給され、また、処理空間Sの排気が行なわれる。この工程においては、弁28bが開かれ、流量制御器28cによってパージガスの供給量が制御される。また、排気装置26による排気が行なわれる。なお、パージガスは、ガス源50aから弁50bを介して流量制御器50cによる流量制御を経て、供給されてもよい。
【0046】
第1のパージ・排気工程では、第1のプロセス工程で形成された層の不要な部分が除去される。この工程により、第1のプロセス工程で形成された層のうち被処理基体Wに化学吸着している部分(例えば単一の分子層又は単一の原子層)は残存し、第1のプロセス工程で形成された層のうち被処理基体Wに物理吸着又は化学吸着している残部は除去される。また、この工程により、処理空間S内の雰囲気が不活性ガスにより置換される。上述したように、処理空間Sの容量は小さいので、この置換は比較的短い時間で完了し得る。
【0047】
次いで、第2のプロセス工程が実施される。第2のプロセス工程では、マイクロ波発生器38によりマイクロ波が発生され、更に、第2のプロセスガスが空洞40a内に供給される。第2のプロセスガスは、弁48bを開き、その流量を流量制御器48cにより制御しつつ、空洞40a内に供給される。また、この工程では、ガス供給系50から不活性ガスが供給されてもよい。なお、この工程での処理空間Sの圧力は、例えば5Torr(666.5Pa)である。
【0048】
第2のプロセス工程では、マイクロ波により空洞40a内にプラズマが発生する。これにより、空洞40a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、ラジカルが生成される。生成されたラジカルは、処理空間Sに供給され、被処理基体Wに堆積された層を窒化又は酸化させる。
【0049】
次いで、第2のパージ・排気工程が実施される。第2のパージ・排気工程では、必要に応じて、処理空間Sにパージガスが供給され、また、処理空間Sの排気が行なわれる。この工程においては、弁28bが開かれ、流量制御器28cによってパージガスの供給量が制御される。また、排気装置26による排気が行なわれる。なお、パージガスは、ガス源50aから弁50bを介して流量制御器50cによる流量制御を経て、供給されてもよい。この第2のパージ・排気工程により、処理空間S内の雰囲気が不活性ガスにより置換される。上述したように、処理空間Sの容量は小さいので、この置換は比較的短い時間で完了し得る。
【0050】
一実施形態に係るプラズマ処理方法では、第1のプロセス工程、第1のパージ・排気工程、第2のプロセス工程、及び、第2のパージ・排気工程が所定回数繰り返される。これにより、被処理基体上に酸化又は窒化された複数の原子層又は分子層が形成される。
【0051】
以上説明した一実施形態のプラズマ処理方法を実施するために、プラズマ処理装置10は、制御部を更に備えていてもよい。図3は、一実施形態に係るプラズマ処理装置に適用し得る制御部を示す図である。図3に示す制御部52は、例えば、中央処理装置(CPU)及びメモリを有するコンピュータであってもよい。この場合に、制御部52では、CPUがメモリに格納されたプログラムに従って各種制御信号を出力する。
【0052】
制御部52によって出力される各種制御信号は、例えば、排気装置26、弁28b、流量制御器28c、弁32b、流量制御器32c、弁48b、流量制御器48c、弁50b、及び、流量制御器50cに出力される。これにより、排気装置26、弁28b、流量制御器28c、弁32b、流量制御器32c、弁48b、流量制御器48c、弁50b、及び、流量制御器50cは、上述した第1のプロセス工程、第1のパージ・排気工程、第2のプロセス工程、及び、第2のパージ・排気工程での状態に移行するよう制御される。
【0053】
以下、別の実施形態について説明する。図2の(b)に示すように、誘電体部材40には、二つの空洞40aを連通させる連通路40cが形成されていてもよい。連通路40cは、例えば、二つの空洞40aの間において誘電体部材40に形成された溝である。連通路40cは、連通させた二以上の空洞40aにおいてプラズマを均一に発生させることに寄与する。なお、図2の(b)に示すように、複数の連通路40cによって全ての空洞40aが連通されていてもよいが、連通される空洞40aの個数は、任意である。
【0054】
また、図2の(c)に示すように、連通路40cは、二つの同心円の間にわたって形成された環状の溝であってもよい。より具体的に説明すると、図2の(c)に示す実施形態では、複数の空洞40aはこれら二つの同心円に沿って配列されている。環状の連通路40cは、これら二つの同心円の間にわたって形成されており、その軸線X方向の深さは、複数の空洞40aの軸線X方向の深さよりも小さくなっている。かかる連通路40cによっても、複数の空洞40aを連通させることが可能である。
【0055】
次に図4を参照する。図4は、別の実施形態に係る誘電体部材を示す図である。図4の(a)に示すように、誘電体部材40に形成された空洞40aは、軸線Xを中心とする複数の同心円に沿って形成された環状の溝であってもよい。環状の溝は、例えば、10〜30mmの幅と、10〜30mmの深さを有し得る。また、図4の(b)に示すように、環状の溝として構成された複数の空洞40aは、連通路40cによって連通されていてもよい。
【0056】
また、図4の(c)に示すように、連通路40cは、同心の二つの環状の空洞40aの間にわたって設けられた環状の溝であってもよい。図4の(c)に示す実施形態においては、連通路40cの軸線X方向の深さは、空洞40aの軸線X方向の深さよりも小さくなっている。かかる連通路40cによっても、二つの環状の空洞40aを互いに連通させることが可能である。
【0057】
次に図5を参照する。図5は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。図5に示すプラズマ処理装置10Aは、一つの空洞40aに複数の連通孔20aが接続している点において、プラズマ処理装置10とは異なっている。また、プラズマ処理装置10Aでは、連通孔20aの断面積が空洞40aの断面積より小さくなっている。なお、「断面積」とは、軸線X方向に直交する面での空洞40aの面積又は連通孔20aの面積である。
【0058】
プラズマ処理装置10Aでは、各連通孔20aのコンダクタンスが小さくなっている。したがって、空洞40aへの第1のプロセスガスの流入が抑制され、空洞40aからプラズマが処理空間へ漏れ出すことをより確実に抑制することができる。一方、一つの空洞40aに複数の連通孔20aが接続しているので、処理空間へのラジカルの供給量を維持することが可能である。なお、処理空間Sと空洞40aとの間におけるコンダクタンスを低くために、空洞40aは、下方に向かうにつれて面積が小さくなるテーパー形状を有していてもよい。
【0059】
次に図6を参照する。図6は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図6に示すプラズマ処理装置100は、マイクロ波を導入する手段として同軸導波管154を備えている点においてプラズマ処理装置10とは異なっている。また、プラズマ処理装置100は、天板部20、上板部34、及び誘電体部材40に代えて、天板部120、上板部134、誘電体部材140を備えている。
【0060】
天板部120は、第1の側壁16の直上に設けられている。天板部120は、処理空間Sを上方から画成している、天板部120は、導電性を有しており、遮蔽部として機能する。天板部120には、第1のガス供給部130が形成されている。第1のガス供給部130は、ガス経路130a及び複数の孔130bを含み得る。ガス経路130aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔130bは、ガス経路130aから処理空間Sまで延びている。ガス経路130aには、ガス供給系32が接続されている。
【0061】
上板部134は、金属から構成されており、天板部120上に設けられている。上板部134と天板部120は、それらの間に略円板形状の空間を画成している。この空間は、軸線Xに沿っており、当該空間には誘電体部材140が収容されている。
【0062】
誘電体部材140には、空洞140aが形成されている。空洞140aは、一以上の環状の溝であってもよく、また、一以上の柱状の空間であってもよい。空洞140aは、連通孔120aを介して、処理空間Sに接続されている。連通孔120aは、天板部120の下面120bから上面120cまで延在している。誘電体部材140は、この上面120cに接するように、天板部120上に載置されている。
【0063】
また、空洞140aには、第2のガス供給部146が接続している。第2のガス供給部146は、上板部134及び誘電体部材140にわたって形成されており、第2のプロセスガスの供給経路を構成している。第2のガス供給部146には、ガス供給系48及び50が接続されている。
【0064】
同軸導波管154は、外側導体154a及び内側導体154bを含んでいる。外側導体154aは、軸線Xに沿って延在する筒状の導体である。外側導体154aの一端は、マイクロ波発生器138に接続されており、その他端は、上板部134に接続されている。内側導体154bは、軸線Xに沿って延在する導体であり、外側導体154aの内孔を通っている。内側導体154bの一端は、マイクロ波発生器138に接続されており、その他端は、上板部134及び誘電体部材140を突き抜けて、天板部120に接続している。
【0065】
プラズマ処理装置100では、マイクロ波発生器138によって発生されたマイクロ波が同軸導波管154を介して誘電体部材140に供給される。この誘電体部材140は、所謂遅波板として機能する。誘電体部材140に供給されたマイクロ波は、空洞140a内にプラズマを発生させる。これにより、空洞140a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、当該空洞140a内にラジカルが生成される。生成されたラジカルは、連通孔120aを経由して処理空間Sに供給される。かかるプラズマ処理装置100も、プラズマ処理装置10と同様に、ALD法に用いることが可能である。
【0066】
次に図7を参照する。図7は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図7に示すプラズマ処理装置200は、同軸導波管254、誘電体板256、及び、スロット板258を備えている点で、プラズマ処理装置10と異なっている。また、プラズマ処理装置200は、天板部20、上板部34、及び誘電体部材40に代えて、天板部220、上板部234、誘電体部材240を備えている。
【0067】
天板部220は、第1の側壁16の直上に設けられている。天板部220は、処理空間Sを上方から画成している、天板部220は、導電性を有しており、遮蔽部として機能する。天板部220には、第1のガス供給部230が形成されている。第1のガス供給部230は、ガス経路230a及び複数の孔230bを含み得る。ガス経路230aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔230bは、ガス経路230aから処理空間Sまで延びている。ガス経路230aには、ガス供給系32が接続されている。
【0068】
上板部234は、金属から構成されており、天板部220上に設けられている。上板部234と天板部220は、それらの間に略円板形状の空間を画成している。この空間は、軸線Xに沿っており、当該空間には誘電体部材240、誘電体板256、及びスロット板258が収容されている。
【0069】
スロット板258は、略円板上の導体である。スロット板258には、互いに交差又は直交する方向に延びる二つのスロットをそれぞれ含む複数のスロット対が形成されている。これらスロット対は、軸線X中心に径方向に所定の間隔で配置され、また、周方向に所定の間隔で配置されている。このスロット板258と上板部234との間には、誘電体板256が設けられている。スロット板258、上板部234、及び、誘電体板256は、ラジアルラインスロットアンテナを構成する。
【0070】
同軸導波管254は、外側導体254a及び内側導体254bを含んでいる。外側導体254aは、軸線Xに沿って延在する筒状の導体である。外側導体254aの一端は、モード変換器260に接続されている。モード変換器260は、導波管262及びチューナ264を介してマイクロ波発生器238に接続されている。また、外側導体254aの他端は、上板部234に接続されている。
【0071】
内側導体254bは、軸線Xに沿って延在する筒状の導体であり、外側導体254aの内孔を通っている。内側導体254bの一端は、モード変換器260に接続されており、その他端は、上板部134及び誘電体板256を突き抜けて、スロット板258に接続されている。
【0072】
スロット板258と天板部220の上面220cとの間には、誘電体部材240が設けられている。誘電体部材240は、所謂誘電体窓としての機能を有する。誘電体部材240には、空洞240aが形成されている。空洞240aは、一以上の環状の溝であってもよく、また、一以上の柱状の空間であってもよい。空洞240aは、連通孔220aを介して、処理空間Sに接続されている。連通孔220aは、天板部220の下面220bから上面220cまで延在している。誘電体部材240は、この上面220cに接するように、天板部220上に載置されている。
【0073】
また、空洞240aには、第2のガス供給部246が接続している。第2のガス供給部246は、誘電体部材240の内部に形成されている。第2のガス供給部246は、内側導体254bの内孔を介して、ガス供給系48及び50に接続されている。
【0074】
プラズマ処理装置200では、誘電体部材240に供給されたマイクロ波が、空洞240a内にプラズマを発生させる。これにより、空洞240a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、当該空洞240a内にラジカルが生成される。生成されたラジカルは、連通孔220aを経由して処理空間Sに供給される。かかるプラズマ処理装置200も、プラズマ処理装置10と同様に、ALD法に用いることが可能である。
【0075】
次に、図8を参照する。図8に示すプラズマ処理装置300は、処理容器312、及び、ステージ14を備えている。処理容器312は、処理空間Sを画成している。処理容器312は、金属製であり、側壁318、天板部320、及び、底部322を含んでいる。側壁318は、軸線Xに沿って延在する略筒形状を有している。側壁318の上端開口は、天板部320によって閉じられている。側壁318の下端には、底部322が設けられている。側壁318の内側空間には、ステージ14が設けられており、当該ステージ14は、その下方に設けられた支柱24によって支持されている。このステージ14の上方に処理空間Sが存在している。
【0076】
処理空間Sは、処理容器312の外部に設けられた排気装置26に接続されている。また、側壁318にはガス経路318dが形成されている。このガス経路318dには、ガス供給系28が接続されている。
【0077】
また、天板部320には、第1のガス供給部330が形成されている。第1のガス供給部は330、天板部320内に形成された空間330a、当該空間330aと処理空間Sを接続する孔330b、当該空間330aを処理容器312の外部に接続するガス経路330cを含んでいる。このガス経路330cには、ガス供給系32が接続されている。
【0078】
プラズマ処理装置300では、処理空間Sの側方、即ち、処理空間Sに対して軸線Xに交差する方向に、遮蔽部370、及び誘電体部材340が設けられている。以下、図8と共に図9を参照する。図9は、図8に示すプラズマ処理装置の遮蔽部を示す平面図である。
【0079】
遮蔽部370は、導電性を有し、板状をなしている。遮蔽部370は、第1の面370a及び第2の面370bを含んでいる。第1の面370aは、処理空間Sに面している。第1の面370aとステージ14との間の距離は、例えば、当該第1の面370aとステージ14上に載置される被処理基体Wのエッジとの最短距離(Y方向の距離)が5〜60mmとなるように設定され得る。かかる距離設定により、プラズマ処理の処理時間が更に短縮され得る。
【0080】
第2の面370bは、第1の面370aとは反対側の面である。遮蔽部370には、第1の面370aから第2の面370bまで延びる連通孔370cが形成されている。一実施形態においては、遮蔽部370に複数の連通孔370cが形成されている。誘電体部材340は、この遮蔽部370の第2の面370bに接するように設けられている。
【0081】
誘電体部材340は、軸線Xに対して誘電体部材340より外側に設けられている。誘電体部材340には、空洞340aが設けられている。空洞340aは、連通孔370cを介して処理空間Sに連通している。この誘電体部材340及び遮蔽部370は、側壁318及び天板部320の内部に埋め込まれている。
【0082】
処理容器312には、誘電体部材340の空洞340aに接続する第2のガス供給部346が形成されている。第2のガス供給部346は、処理容器312に形成されたガス経路であり得る。第2のガス供給部346には、ガス供給系48及び50が接続されている。
【0083】
図8に示すように、処理容器312の外面には、導波管372が取り付けられている。この導波管372には、マイクロ波発生器338が接続している。マイクロ波発生器338によって発生されたマイクロ波は、導波管372及び誘電体部材340を介して、誘電体部材340の空洞340aに導入される。また、空洞340aには、第2のプロセスガスが供給される。これにより、空洞340aにおいては、第2のプロセスガスが活性化され、ラジアルが生成される。生成されたラジカルは、処理空間Sに供給される。
【0084】
プラズマ処理装置300においても、プラズマ生成空間である空洞340aと処理空間Sの間に遮蔽部が設けられている。また、プラズマ処理装置300でも、当該空洞340aと処理空間Sとの間の距離が短くなっている。したがって、失活する量を抑制しつつ、ラジカルを処理空間Sに供給することができる。故に、このプラズマ処理装置300も、プラズマ処理(第2のプロセス工程)の処理時間を短くすることができる。
【0085】
次に図10を参照する。図10は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す概略的に示す図である。図10に示すプラズマ処理装置400は、マイクロ波を導入する手段として導波管472を備えている。また、プラズマ処理装置400は、天板部20、及び誘電体部材40に代えて、天板部420、及び誘電体部材440を備えている。
【0086】
天板部420は、第1の側壁16の直上に設けられている。天板部420は、処理空間Sを上方から画成している、天板部420は、導電性を有しており、遮蔽部として機能する。天板部420には、第1のガス供給部430が形成されている。第1のガス供給部430は、ガス経路430a及び複数の孔430bを含み得る。ガス経路430aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔430bは、ガス経路430aから処理空間Sまで延びている。ガス経路430aには、ガス供給系32が接続されている。
【0087】
プラズマ処理装置400は、また、上板部434を更に備えている。上板部434は、金属から構成されており、天板部420上に設けられている。上板部434と天板部420は、それらの間に略円板形状の空間を画成している。この空間は、軸線Xに沿っており、当該空間には誘電体部材440が収容されている。
【0088】
誘電体部材440には、空洞440aが形成されている。空洞440aは、一以上の環状の溝であってもよく、また、一以上の柱状の空間であってもよい。空洞440aは、連通孔420aを介して、処理空間Sに接続されている。連通孔420aは、天板部420の下面420bから上面420cまで延在している。誘電体部材440は、この上面420cに接するように、天板部420上に載置されている。
【0089】
また、空洞440aには、第2のガス供給部446が接続している。第2のガス供給部446は、上板部434及び誘電体部材440にわたって形成されており、第2のプロセスガスの供給経路を構成している。第2のガス供給部446には、ガス供給系48及び50が接続されている。
【0090】
誘電体部材440上には、導波管472が設けられている。導波管472は、第1の導波部472a及び第2の導波部472bを含んでいる。第1の導波部472aは、軸線Xに交差する方向に延在する矩形導波管を構成している。この第1の導波部472aの一端には、マイクロ波発生器438が接続されている。また、第1の導波部472aの他端には第2の導波部472bが接続されている。
【0091】
第2の導波部472bは、誘電体部材440上に載置されている。この第2の導波部472bは、軸線Xを中心とする環状の閉曲線に沿って延在する導波管を構成している。第2の導波部472bの下壁部には、複数のスロット472cが形成されている。これらスロット472cは、周方向に配列されている。一実施形態においては、スロット472cは、軸線X方向において、空洞440aの上に設けられ得る。これにより、空洞440aにおけるプラズマの生成効率が高められる。
【0092】
プラズマ処理装置400では、マイクロ波発生器438によって発生されたマイクロ波が誘電体部材440に供給される。誘電体部材440に供給されたマイクロ波は、空洞440a内にプラズマを発生させる。これにより、空洞440a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、当該空洞440a内にラジカルが生成される。生成されたラジカルは、連通孔420aを経由して処理空間Sに供給される。かかるプラズマ処理装置400も、プラズマ処理装置10と同様に、ALD法に用いることが可能である。
【0093】
次に図11を参照する。図11は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す概略的に示す図である。図11に示すプラズマ処理装置500は、マイクロ波を導入する手段として導波管572を備えている。また、プラズマ処理装置500は、天板部20、及び誘電体部材40に代えて、天板部520、及び誘電体部材540を備えている。
【0094】
天板部520は、第1の側壁16の直上に設けられている。天板部520は、処理空間Sを上方から画成している、天板部520は、導電性を有しており、遮蔽部として機能する。天板部520には、第1のガス供給部530が形成されている。第5のガス供給部430は、ガス経路530a及び複数の孔530bを含み得る。ガス経路530aは、軸線Xを中心とした環状の閉曲線に沿って延在し得る。複数の孔530bは、ガス経路530aから処理空間Sまで延びている。ガス経路530aには、ガス供給系32が接続されている。
【0095】
プラズマ処理装置500は、また、上板部534を更に備えている。上板部534は、金属から構成されており、天板部520上に設けられている。上板部534と天板部520は、それらの間に略円板形状の空間を画成している。この空間は、軸線Xに沿っており、当該空間には誘電体部材540が収容されている。
【0096】
誘電体部材540には、空洞540aが形成されている。空洞540aは、一以上の環状の溝であってもよく、また、一以上の柱状の空間であってもよい。空洞540aは、連通孔520aを介して、処理空間Sに接続されている。連通孔520aは、天板部520の下面520bから上面520cまで延在している。誘電体部材540は、この上面520cに接するように、天板部520上に載置されている。
【0097】
また、空洞540aには、第2のガス供給部546が接続している。第2のガス供給部546は、上板部534及び誘電体部材540にわたって形成されており、第2のプロセスガスの供給経路を構成している。第2のガス供給部546には、ガス供給系48及び50が接続されている。
【0098】
天板部520上には、導波管572が設けられている。導波管572は、第1の導波部572a及び第2の導波部572bを含んでいる。第1の導波部572aは、軸線Xに交差する方向に延在する矩形導波管を構成している。この第1の導波部572aの一端には、マイクロ波発生器538が接続されている。また、第1の導波部572aの他端には第2の導波部572bが接続されている。
【0099】
第2の導波部572bは、軸線Xを中心とする環状の閉曲線に沿って延在する導波管を構成している。第2の導波部572bは、誘電体部材540の外周面を囲むように設けられている。第2の導波部572bの内側壁部には、複数のスロット572cが形成されている。これらスロット572cは、周方向に配列されている。
【0100】
プラズマ処理装置500では、マイクロ波発生器538によって発生されたマイクロ波が誘電体部材540に供給される。誘電体部材540に供給されたマイクロ波は、空洞540a内にプラズマを発生させる。これにより、空洞540a内に供給された第2のプロセスガスが活性化され、当該空洞540a内にラジカルが生成される。生成されたラジカルは、連通孔520aを経由して処理空間Sに供給される。かかるプラズマ処理装置500も、プラズマ処理装置10と同様に、ALD法に用いることが可能である。
【0101】
以上、種々の実施形態について説明したが、本発明は、これら実施形態に限定されるものではなく、種々の変形態様を構成し得る。例えば、上述した種々の実施形態における各部の構成等は、本発明の思想を逸脱しない範囲で、組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
10…プラズマ処理装置、12…処理容器、14…ステージ、20…遮蔽部(天板部)、20a…連通孔、20b…下面(第1の面)、20c…上面(第2の面)、30…第1のガス供給部、40…誘電体部材、40a…空洞、40c…連通路、46…第2のガス供給部、S…処理空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
前記ステージの上方に処理空間を画成する処理容器と、
前記処理空間に層堆積用の第1のプロセスガスを供給する第1の供給手段と、
前記処理空間に面する第1の面、及び、該第1の面と反対側の第2の面を有し、導電性を有する遮蔽部であり、前記第1の面から前記第2の面まで延在する一以上の連通孔が設けられた該遮蔽部と、
前記遮蔽部の前記第2の面に接するように設けられた誘電体部材であり、前記一以上の連通孔に接続する一以上の空洞が設けられた該誘電体部材と、
前記誘電体部材にマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、
前記誘電体部材の前記空洞内にプラズマ処理用の第2のプロセスガスを供給する第2の供給手段と、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記一以上の空洞は、前記誘電体部材に形成された柱状の空間である、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記一以上の空洞は、前記誘電体部材に形成された環状の溝である、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記誘電体部材には、複数の前記空洞のうち少なくとも二つの間を連通する連通路が形成されている、請求項1〜3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記マイクロ波導入手段は、同軸導波管を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記同軸導波管は、前記誘電体部材を通過して前記遮蔽部に結合されている、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記マイクロ波導入手段は、前記同軸導波管に結合された金属製のスロット板であって、周方向及び径方向に複数のスロットが形成された該スロット板を含み、
前記誘電体部材は、前記スロット板と前記遮蔽部との間に設けられた誘電体窓を構成する、
請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記一以上の連通孔の各々の断面積は、前記一以上の空洞の断面積よりも小さい、請求項1〜7の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
一つの前記空洞に対して複数の前記連通孔が接続されている、請求項1〜8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
被処理基体を載置するための前記ステージの載置面と前記第1の面との間の距離が5mm〜40mmである、請求項1〜9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記遮蔽部及び前記誘電体部材は、前記処理空間の側方に設けられている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1の面と前記ステージ上に搭載される被処理基体のエッジとの最短距離が5mm〜60mmであるように、前記ステージと前記第1の面との間の距離が設定されている、請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【請求項1】
ステージと、
前記ステージの上方に処理空間を画成する処理容器と、
前記処理空間に層堆積用の第1のプロセスガスを供給する第1の供給手段と、
前記処理空間に面する第1の面、及び、該第1の面と反対側の第2の面を有し、導電性を有する遮蔽部であり、前記第1の面から前記第2の面まで延在する一以上の連通孔が設けられた該遮蔽部と、
前記遮蔽部の前記第2の面に接するように設けられた誘電体部材であり、前記一以上の連通孔に接続する一以上の空洞が設けられた該誘電体部材と、
前記誘電体部材にマイクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、
前記誘電体部材の前記空洞内にプラズマ処理用の第2のプロセスガスを供給する第2の供給手段と、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記一以上の空洞は、前記誘電体部材に形成された柱状の空間である、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記一以上の空洞は、前記誘電体部材に形成された環状の溝である、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記誘電体部材には、複数の前記空洞のうち少なくとも二つの間を連通する連通路が形成されている、請求項1〜3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記マイクロ波導入手段は、同軸導波管を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記同軸導波管は、前記誘電体部材を通過して前記遮蔽部に結合されている、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記マイクロ波導入手段は、前記同軸導波管に結合された金属製のスロット板であって、周方向及び径方向に複数のスロットが形成された該スロット板を含み、
前記誘電体部材は、前記スロット板と前記遮蔽部との間に設けられた誘電体窓を構成する、
請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記一以上の連通孔の各々の断面積は、前記一以上の空洞の断面積よりも小さい、請求項1〜7の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
一つの前記空洞に対して複数の前記連通孔が接続されている、請求項1〜8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
被処理基体を載置するための前記ステージの載置面と前記第1の面との間の距離が5mm〜40mmである、請求項1〜9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記遮蔽部及び前記誘電体部材は、前記処理空間の側方に設けられている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1の面と前記ステージ上に搭載される被処理基体のエッジとの最短距離が5mm〜60mmであるように、前記ステージと前記第1の面との間の距離が設定されている、請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−244045(P2012−244045A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114657(P2011−114657)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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