説明

プラズマ化学気相成長装置

プロセスチャンバと、プロセスチャンバへの前駆体ガス入口と、送出口と、プロセスチャンバ内に配置されたプラズマ源とを備える、材料を移動する基材上に蒸着するPECVD装置が提供される。プラズマ源は、1つ以上の負グロー領域と、1つ以上の陽光柱とを生成する。少なくとも1つの陽光柱は、基材に向かって配置される。プラズマ源、および前駆体ガス入り口は、互いにおよび基材に対して関連して配置され、それにより前駆体ガスは基材に隣接した陽光柱内に注入される。装置は、前駆体ガスを、負グロー領域から離れて陽光柱内に導くように提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2009年9月5日に出願された米国仮特許出願番号第61/275,930号の優先権を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、プラズマ化学気相成長(PECVD)装置およびプロセスに関するものである。
【背景技術】
【0003】
プラズマ化学気相成長法(PECVD)は、気体状態(気相)の前駆体を基材上の固体状態のコーティングへと薄膜を堆積するために使用されるプロセスである。化学反応は、堆積チャンバ内の前駆体がプラズマと反応するプロセスに含まれる。慣習的なCVDでは、通常、加熱が前駆体の分解反応のために適用された。基材上へのPECVD堆積は、常温、または従来の熱化学気相成長法と比較すると比較的低い温度で達成することができる。PECVDは、スパッタリングとは異なり、PECVDプロセスでは、プラズマ電極を形成する材料が顕著な量の堆積された膜を形成しない。
【0004】
求められている基材上のみでなく、プラズマ源の重要な電極表面を含む他の表面上にもコーティングされるため、PECVDは、より広く使用されてはいなかった。コーティングが非伝導性の場合、プラズマ源の動作特性は、動作に対して動的なものとなり、商業生産におけるコーティングの均一性を妨げる。例えば、SiOなどのような絶縁膜により、典型的には約4から8時間の連続動作後に、電極コーティングはアーク放電または完全な電源動作の中止を生じる可能性があり、これにより、分解およびクリーニングのために生産の中断が必要となる。
【0005】
PECVDでは、前駆体ガスの分解がプラズマの存在により生じる。プラズマ発生を駆動する電極が前駆体ガスに暴露されると、電極上に相当な割合の堆積が生じる。スパッタマグネトロンタイプのプラズマ源を使用する場合、これは特に問題であり、前駆体は強烈なレーストラック負グローに暴露される。マグネトロン電極上のコーティングの集積は、厳しいプロセス上の困難を引き起こす。電気回路インピーダンスは、プロセスの安定性、ならびに堆積速度および材料使用量を含むプロセスの効率に影響を与える集積により変化し、電極コーティングの程度にまで減少される。
【0006】
先行技術のPECVD装置では、有用なコーティングが基材上に堆積される場合がある一方で、源が急速にコーティングされ、プロセスのドリフトおよびアーク放電を生じる。半導体バッチ用途では、エッチングプロセスは、暴露された電極(複数可)をクリーニングするための設定された間隔の後に実行される。ロールツーロールウェブまたはインラインコーティングシステムなどのような連続プロセスでは、PECVDプロセスは、停止することなく何十時間も運転しなければならない。これらの用途では、エッチングクリーニングサイクルは、実用的でない。大量生産に適した時間スケールにわたる、連続的な性能のPECVDプロセスを維持する必要が存在する。
【0007】
プラズマ源が、かかる動作を行い、かつ1メートルを超える直線的な均一性を有する幅広い基材上に堆積する能力を有する必要もまた存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態において、マグネトロン上のコーティングの集積は最小化され、かつ長いPECVDコーティングの実行が可能になる。本発明の、大面積基材上のPECVD堆積の実施形態の構成は、特に有用であり、長く、連続的なPECVDプロセスが可能になる。
【0009】
本発明の原理によると、基材表面上に材料を堆積するためのプラズマ化学気相成長装置は、プロセスチャンバと、そのプロセスチャンバ内に配置された少なくとも1つのプラズマ源とを有する。プラズマ源は、負グロー領域、および陽光柱を生成する。少なくとも1つのプラズマ源は、陽光柱が基材表面に向けられるように、基材表面の近位に配置される。PECVD装置は、材料を基材上に堆積するために、陽光柱と相互作用するように前駆体ガスをプロセスチャンバ内に注入する、少なくとも1つの入口と、チャンバ内のガスのための送気出口を提供するための少なくとも1つの出口とをさらに備える。少なくとも1つの入口、少なくとも1つの出口、および少なくとも1つのプラズマ源は、少なくとも1つの入口流れからのプロセスチャンバ内に注入された実質的に全ての前駆体ガスが、基材表面に隣接する陽光柱内へ入るように、基材表面および相互と関連して位置付けられる。
【0010】
本発明の実施形態では、前駆体ガスを陽光柱内に流れ込むように導く、または向けるるために、装置はプロセスチャンバ内に提供される。本発明のある特定の実施形態では、前駆体ガスを陽光柱内へ導くために、装置はシールドを有する。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、入口マニホールドは、少なくとも1つ以上の入口を提供する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、前駆体ガスを基材の表面に隣接する陽光柱内へ導くために、装置は入口マニホールドに隣接して配置される。
【0013】
本発明の様々な実施形態では、基材は移動する基材である。ある特定の実施形態では、基材は可撓性の基材である。
【0014】
具体的な実施形態では、少なくとも1つのプラズマ源は、ロータリープラズマ、少なくとも1つのデュアルロータリーマグネトロンプラズマ源、平板マグネトロン、または少なくとも1つのデュアル平板マグネトロンプラズマ源を含む。
【0015】
実施形態は、少なくとも1つのプラズマ源に反応性ガスを提供する、少なくとも第2の入口を含む。
【0016】
基材の表面上への材料のプラズマ化学気相成長コーティングのためのプロセスは、少なくとも1つのプラズマがその中に配置されるプロセスチャンバの提供を含んで提供される。前記少なくとも1つのプラズマの各々は、プラズマに隣接し、基材表面に向かって発射される陽光柱内に含まれる負グロー領域を生成する。化学気相成長前駆体ガスは、実質的に前記陽光柱とのみ相互作用し、かつ基材の表面にプラズマ化学気相成長コーティングによって材料を堆積するようにプロセスチャンバ内に注入される。前記負グロー領域とのガスの相互作用は、これによりプラズマ源に汚染材料の堆積が無いように保つように抑制される。
【0017】
実施形態によると、方法は、陽光柱内に前駆体ガスを導くための装置をチャンバ内に提供することを含む。ある特定の実施形態は、デュアルマグネトロンプラズマ源を使用することを含む。プロセスは、可撓性かつ自立の基材に対して適用可能である。堆積は、特に材料が金属酸化物のような電気的に絶縁する材料である、材料によるマグネトロンの汚染がないため、連続100時間を越えて継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を読むことにより、よりよく理解されるであろう。ここで、同様の要素を識別するために同様の参照記号表示子が使用され、様々な要素の相対的な寸法および位置は例示のみであり、これらはいかなる方法でも制限することを意図しない。
【0019】
【図1】マグネトロンプラズマ源、ならびに一般化された形状および動作中に生成される放電内の領域の相対的寸法の断面概略図である。
【図2】発明の装置内での動作のためのPECVDマグネトロンプラズマ源の断面概略図である。
【図3】発明のPECVD装置としての動作のための、電気的に結合されたロータリーマグネトロンプラズマ源の断面概略図である。
【図4】動作中の発明のロールコーターPECVD実施形態の断面概略図である。
【図5A】別の発明のPECVD装置の斜視図および断面図である。
【図5B】別の発明のPECVD装置の斜視図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、揮発性前駆体の基材上へのプラズマ化学気相成長法(PECVD)において有用性を有する。本発明は、負グロー領域の近位のマグネトロンのターゲット上へのコーティングの成長を制限するように、負グロー領域が限られた量の前駆体に暴露されるために、選択的に前駆体ガスを陽光柱内および堆積する基材に隣接して注入することにより、電気的に絶縁するコーティングの堆積電極上への集積の先行技術の問題を大幅に克服する。
【0021】
以下に示され、かつ記述される実施形態の各々において、プロセスチャンバ、マグネトロンプラズマ源、前駆体ガス入口、およびポンプ出口は、前駆体ガスが負グロー領域を定義する小葉部と相互作用することが好ましくなく、実質的に除去されるように、注入されたCVD前駆体ガスを、基材に隣接するプラズマ源陽光柱内に選択的に導く流路(複数可)を提供するように構成される。本明細書に記述される様々な実施形態は、構成を代表するものであり、本発明が、示されかつ記述された特定の構成の範囲に制限されないことは当業者により理解されるであろう。
【0022】
明瞭化の目的のために、プロセスチャンバ、プラズマ源、および基材搬送装置の様々な構造的特徴は示されない。さらに、様々なシールドおよびチャネルの構造装置および構成は示されていない。同様に、特定の構造および構成は、本発明の範囲を制限するものとは考えられない。
【0023】
図1は、プラズマ源として動作する平板マグネトロン1を図示する。平板マグネトロン1は断面で示され、平板マグネトロンとして図示されるが、当業者には理解されるであろうように、本発明の原理は、説明に役立つように異なるタイプのマグネトロンカソードを含む他の既知のタイプのプラズマ源に適用される。本明細書に提供される記述がいずれかの特定のマグネトロン構成またはマグネトロン構造に限定されることは意図されていない。本発明において描写されかつ動作されるマグネトロンプラズマ源は、1メートルを越える、2メートルを越える、3メートルを越える、および4メートルを越える、断面の面に直角な線形寸法を有するためによく適合している。一方、有限長さの剛性の薄板、または細長いリボン上の薄板のいずれであっても、ほとんどの従来の基材は4メートル未満の幅を有するのに対し、4メートルを超える幅の薄板を意図することができる。発明の装置は、4メートルを超える幅の薄板にわたって制御された堆積を提供するように、線形の程度で、容易に構築することができる。
【0024】
マグネトロンプラズマ堆積は、3つの領域により記述される場合がある。すなわち、陰極暗部(CDS)、負グロー領域(NG)、および陽光柱(PC)である。平板マグネトロン1は、ターゲット2と呼ばれる露出した電極表面を有し、接地されたシールド3により包囲することができる。高電圧のマグネトロン1とシールド3との間は、暗部4である。暗部4は、プラズマをマグネトロン1の側面および背面の照明から妨げ、かつ望ましくないアーク放電からも妨げるために存在する。磁力線50は、ターゲット2に隣接する負グローNGを収容する。これらの記号表示は、以下の図面を通して使用される。これらの広域的な記号表示は、本発明が関係する分野の当業者が理解するように、共通の意味、および物理的な属性を有することを意図されている。
【0025】
従来のPECVDの配設では、プロセスチャンバに導入されたCVD前駆体ガスは、高い速度、すなわち音速で、チャンバ全体に分散する。前駆体ガスは、プラズマと相互作用して、近隣の表面上に材料を堆積する、凝縮性の構成物質を生成する。先行技術のPECVDシステムおよびプロセスでは、前駆体ガスは、陽光柱内には向けられない。マグネトロン負グローNGは、最も高密度のプラズマなので、前駆体ガスはNGおよびマグネトロンのターゲット上に堆積された材料と強く相互作用する。
【0026】
図2は、概して200で示される、基材Sの表面201上にコーティングを堆積するための、発明のPECVD装置を通した横方向の断面図である。PECVD装置200は、真空チャンバ(図示せず)の中に所在する。移動基材表面201は、剛性の基材、可撓性の基材、または部分的に可撓性の基材の表面であってもよく、基材Sは、積み重ねることができる薄板、または細長いリボン状の板材である。プラズマ源は、チャンバ内に配置されるデュアルマグネトロンカソード221、223を含んで提供される。描写されるように、各マグネトロン221、223は、図の紙面に垂直に延在する、最大5メートルの長さの平板マグネトロンである。各マグネトロン221、223は、小葉状の負グローNGおよび陽光柱PCを生成する。陽光柱PCは、各負グローNGから発し、2つの陽光柱は重なり合って1つのプラズマ領域として現れる。シールド245は、マグネトロン221の周りに配置され、シールド247は、マグネトロン223の周りに配置される。結露の無い不活性ガスまたは反応性ガス15は、コンジットまたはマニホールド269および269Aを介してマグネトロン221、223にそれぞれ供給される。例として、不活性ガスは、アルゴンまたはヘリウムであってもよい。反応性ガスは、酸素または窒素であってもよい。反応性ガスは、純粋な形態で、またはPECVD反応性を触媒する反応性ガスと混合され、かつ/または、酸素および窒素含有、およびフッ素含有反応性ガスの場合、結果として得られる、それぞれ酸窒化物または酸フッ化物などのような、コーティングの中に組み込まれて使用されることが理解される。反応性ガスが、採用されるPECVD条件の下で非反応性であると定義される不活性ガスにより希釈されることも、さらに理解される。マグネトロン221、223は、陽光柱PCが基材表面201に隣接して薄板を形成するように配置される。CVD前駆体ガス251、および251Aは、プロセスチャンバ200aの中に入口249および249aにおいて注入される。真空送出口261も、コーティング副産物および過剰な反応性ガスを排気するために提供される。入口249および249´は、マニホールドの全長にわたって均一な気体流れを提供するように構築される入口マニホールドにより提供される。前駆体ガス251および251Aは、組成的には同じまたは異なり、所望する場合は、様々な量の不活性緩衝ガスを含む。
【0027】
マグネトロン221、223は、AC電源319の対向する側に接続される。電源319は、20kHz〜6000kHzの例示的な周波数範囲の交流電源である。より高い周波数、またはより低い周波数の電源も使用することができる。
【0028】
PECVD装置200は、前駆体入口249および249Aからの前駆体ガス流路290が選択的に基材表面201に隣接する陽光柱PC内を通り、基材表面201上に材料を堆積するように、基材表面201に最も近くに配置される陽光柱PCにより構成される。マグネトロン221、223ならびに入口249および249Aは、前駆体ガス251が基材表面201に隣接する陽光柱PC内に確実に注入されるように、相互に関連し、かつ基材表面201に関連して配置される。プラズマ陽光柱PCに接触すると、前駆体ガス251は分解され、分子成分の形態を凝縮する。これらの成分は、近隣の表面に付着し、PECVDコーティングを形成する。前駆体入口19を基材sの近位で、ロータリーマグネトロン30、31、負グローNGから遠位に位置付けることにより、凝縮性分子は、ロータリーマグネトロン電極表面ではなく、基材上に選択的に堆積する。装置またはシールド245、247を提供し、装置またはシールド245、247およびマグネトロン221、223に対して前駆体ガス入口249、249Aおよび送出口261を選択的に位置付けることにより、負グロー領域NGとの前駆体ガス相互作用が、実質的に除去できない場合には著しく減少するように、前駆体流路290が画定され、これにより、PECVD装置200が100時間を越える長期間の連続動作で、著しい劣化無しに酸化物堆積のために動作できるようにする。マグネトロン221および223の上へのコーティングの堆積を避けるために、入口249、249A、269、269Aおよび出口261の代替の位置が提供されることが理解される。これらの位置の図示は、図2の紙面の平面に垂直なPC内の長孔状のまたは間欠的に孔が空けられたマニホールドを含む。
【0029】
図3は、概して300で示される、別の発明のPECVD装置を通した横方向の断面図である。図3に関して使用される同様の参照番号は、本発明の前掲の図および記述に関してそれに帰する意味を有する。装置300は、PECVDコーティングを塗布するために平板状の基材Sがそれを通して移送される真空室(図示せず)を含む。基材は、チャンバ内を、当該技術で周知であり、概して5で示される従動ローラーを含む移送システムを介して通過する。
【0030】
この実施形態では、デュアルロータリーマグネトロン30、31がプラズマ源として使用される。各ロータリーマグネトロン30、31は、図の紙面の平面に垂直にある長さで、図2の221、223と類似の様態で延在する。示されるように、ロータリーマグネトロン30、31は負グロー領域NGおよび重ね合わさった陽光柱PCを生成する。交流AC電源319が、ロータリーマグネトロン30、31のために提供される。ロータリーマグネトロン30、31は重ね合わさった陽光柱PCが基材表面301と相互作用するように配置される。
【0031】
前駆体ガス分配マニホールド11は、金属薄板コンジット34の内側に設置される。マニホールド10および11は、各々マグネトロン30および31の長さにほぼ対応する長さを有する。マニホールド11から流れる前駆体ガス251は、コンジット34シールド13により基材Sに隣接するPCの中に導かれる。コンジットシールド13は、PCに隣接して開口19において終了する。シールド33は、基材Sに近く、前駆体ガス17の流れをPCから離すように制限する。反応性ガスまたは不活性ガスマニホールド10は、ロータリーマグネトロン30および31に隣接して設置される。反応性ガス流または不活性ガス流15は、前駆体ガスとマグネトロン30、31との間を流れるように導かれる。シールド13は、反応性ガスまたは不活性ガス15の流れを導くために役立つ。マニホールド11および10は、基材S上の均一なPECVD堆積を促進するために、マニホールドの幅にわたって理論的に均一な流れを提供するように設計される。
【0032】
PCの中への前駆体ガス251および反応性ガスまたは不活性ガス15の流れは、真空送気の構成により強化される。示されるようにガスマニホールドの反対側に真空送気を構成することにより、ガス15および251は、真空ポンプに達する前にPCの中へ、およびPCを通って吸引される。これは、前駆体ガス251、および反応性ガスまたは不活性ガス15の利用の効率を高める。真空送気361は、プロセスエリアの全長にわたり理論的に均一な速度でガスを吸引して出すように構成される。ロータリーマグネトロン30および31の各々は、図2に関して詳細に示されるように、固定式の平板マグネトロン231または232によって独立的に置き替えられることが理解される。
【0033】
PECVD装置300は、材料を基材表面301上に堆積するために、陽光柱PCと相互作用するように、前駆体ガス251が基材表面301に隣接する陽光柱PC内に注入されるように構成される。流路390は、陽光柱PCとの最初の接触後、あらゆる未反応CVD前駆体ガス251が小葉状の負グロー領域NGと反応するのを阻止するように選択される。シールド13を提供し、かつ前駆体ガス入口19および送出口361をロータリーマグネトロン30、31に対して選択的に位置付けることにより、負グロー領域NGとの前駆体ガス相互作用は、実質的に除去され、これにより、PECVD装置300は、少なくとも24時間、および40時間、60時間、80時間、そして200時間さえも越えて、長い期間の連続動作を、CVDの電気的に絶縁する堆積によるマグネトロンターゲットの著しい劣化無しに、動作することができるようになる。
【0034】
ロールコーター、またはウェブコーターは、ロールの形態の可撓性材料の薄板(「ウェブ」)のコーティングを可能にする、特殊なバッチタイプのシステムである。このタイプのシステムは、一般的にポリマー、紙、および鋼の薄板材料を被覆するために使用される。これらのタイプのシステムでは、被覆される材料は、ロールから広げられ、堆積ゾーンを貫通し、そして再度ロール状に巻かれる。ロール状の形態で効率的に収容された薄板材料の長い長さのために、ロール全体を被覆するための堆積プロセスは、長い時間を要する可能性がある。
【0035】
「ウェブコーティング」プロセスでは、可撓性の基材薄板は、1つのロールから供給され、第2のロールにより回収される。ロールは、真空中、またはウェブが複数の異なるように送気された密封を貫通した外側のいずれかに置かれてもよい。
【0036】
図4は、ロールコーターまたはウェブコータータイプのPECVDシステム装置400の堆積部分を示す。図4に関して使用される同様の参照番号は、本発明の前掲の図および記述に関してそれに帰する意味を有する。可撓性のウェブ基材Sは、アイドラーロール6上からドラム7へ、およびドラム7からアイドラーロール6上へ移送される。ウェブ基材Sは、ドラム7の周りに支持され、所望される場合はドラム7により冷却または加熱される。ウェブの移送および温度制御は、当該技術において周知であり、417に総体的に描写される。PECVD装置400は、ターゲット21がウェブ基材Sおよびドラム7と向き合うように位置付けられた、平板マグネトロン8を含む。電源14は、マグネトロンターゲット21上にプラズマを開始し維持する。電源14は、DC、パルスDC、AC,またはRFタイプの電源であってもよい。動作中、マグネトロン8プラズマは、負グローNCおよび陽光柱PC構成要素を有する。PECVD装置は、金属薄板ハウジング12内に前駆体マニホールド11をさらに含む。前駆体ガス251は、ハウジング12から、基材SおよびPCに隣接して、開口部19において出るように向けられる。シールド13は、前駆体ガス251がPCに遭遇する前に、前駆体ガス251がマグネトロンターゲット表面21を「目視」するのを遮る。第2のガスマニホールド10は、結露の無い反応性ガスまたは不活性ガス15を、前駆体ガス入口19と平板マグネトロンターゲット21との間に向ける。前駆体ガス251の残余および反応性ガスまたは不活性ガス15の両方は、基材Sとマグネトロン8との間を流れ、その後真空ポンプ(図示せず)へ流れる。ポンプへの流れは、矢印20により描写される。PECVDプロセスでは、前駆体ガスは、PCと接触すると相互作用し、基材S上にコーティング4が作成される。基材Sは、前駆体ガスとプラズマの相互作用に最も近位の表面なので、基材Sは、コーティングの大部分を受ける。マグネトロンターゲット21の表面は、前駆体ガス入口19から比較的遠位であり、CVD堆積コーティングの最小限の量のみを受ける。十分に量が少なければ、ターゲット21上のコーティングの集積は、ターゲット21上のNGスパッタ作用により取り除かれ、これによりターゲット21は清浄なままとなる。これにより、PECVD装置400は、少なくとも24時間、および40時間、60時間、80時間、100時間、そして200時間さえも越えて、長い期間の連続動作を、CVDの電気的に絶縁するコーティングの堆積によるマグネトロンターゲットの著しい劣化無しに動作することができるようになる。
【0037】
ここで、図5Aおよび図5を参照すると、本発明のさらに別の実施形態が示される。ここで、PECVDコーティング装置500は、コーティングを移動する基材Sの上に堆積する。図4に関して使用される同様の参照番号は、本発明の前掲の図および記述に関してそれに帰する意味を有する。基材Sは、ガラス、もしくは金属などのような剛性の移動する基材であっても、またはポリマーなどのような可撓性の基材であってもよい。基材Sは、ベルト281上で、マグネトロン208および210から成るプラズマ源によって生成される陽光柱PCを通って、搬送または移送される。
【0038】
この実施形態では、マグネトロン208および210は、基材Sを横切って相互に向き合って位置付けられる。マグネトロン208および210は、図5Aでは斜視図で示され、図5Bでは断面図で示される。各マグネトロン208、210は、好ましくは暗部シールド209、209Aをそれぞれ含む。
【0039】
マグネトロン208および210は、より大きい磁石がレーストラックの外側にあるアンバランスな磁場構成をともなう、各々独立した平板のマグネトロンである。これは、古くからタイプIIと呼ばれたアンバランスマグネトロンである(Window and Saavides, J. Vac. Sci. Technol., A 4 (1986))。マグネトロン208および210は、AC電源319の対向する側に接続される。電源319は、20kHz〜6000kHzの例示的な周波数範囲の交流電源である。より高い、またはより低い周波数の電源も使用することができる。各マグネトロン208および210は、負グロー領域NGを生成し、かつ統合された陽光柱PCを形成する。
【0040】
プロセスの動作時間をより長くするために、PECVD装置500のために、前駆体ガス251の流れを向かわせ、かつそれにより各マグネトロン208および210を望ましくない堆積から保護するように、遮蔽213が提供される。遮蔽の配設は、好ましくは、前駆体ガス251が選択的に負グロー領域NGと相互作用して材料をマグネトロン208および210の上に堆積しないように、マグネトロン208および210を包囲または分離するシールド213を有する。シールド213は、マグネトロン208および210から発せられた陽光柱PCが細長いまたはスリット様の開口部219を貫通して、基材Sに向かうように位置付けられた細長い開口部219を含む。シールド213は、基材Sから離間されるように堆積される。
【0041】
前駆体ガス251のための分配マニホールド211は、前駆体ガス240が基材SにわたるPCの長さに沿ってPCの中に注入されるように、位置付けられる。真空ポンプ(図示せず)は、961において示されるように、PECVDプロセス残余を堆積エリアから除去するために提供される。シールド213および真空ポンプ構成は、好ましくは、PECVDプロセスの使用効率を向上させるために、排気装置961に達する前に、PCを通るプロセスガスの流れを促進するように設計される。
【0042】
シールド213の異なる構成が提供されてもよいことは、当業者には明らかであろう。単一のシールドボックス213が示されているが、各々のプラズマ源208および210は、代替的に分離したシールド部分の中に包囲されることも、当業者には明らかであろう。全ての示された実施形態および記述された実施形態において、様々なシールドは、アルミニウムまたは類似のプラズマチャンバ構築材料から成っていてもよい。
【0043】
本発明は、以下の非限定的な実施例に関してさらに詳述される。実施例は、本発明の動作の例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲の範囲をいかなる方法でも制限することは意図されない。
【0044】
本明細書で言及した特許書類および出版物は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。これらの書類および出版物は、あたかも各々の個々の書類または出版物が具体的に、かつ個別に参照により組み込まれているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
本発明は、いくつかの実施形態に関して記載されてきた。実施形態に対して、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることが、当業者には明らかであろう。本発明は、示され実施形態および記述された実施形態によって制限されることは意図されない。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲のみによる範囲に制限されることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
200、300、400、500・・・PECVD装置
201、301・・・基材表面
6・・・アイドラーロール
7・・・ドラム
8、30、31、208、210、221、223・・・マグネトロン
11、211、269、269A・・・マニホールド
13、33、213、245、247・・・シールド14、319・・・電源
19・・・前駆体入口
34・・・金属薄板コンジット
200a・・・プロセスチャンバ
249、249a、249´、249A、269、269A・・・入口
251、251A・・・前駆体ガス
261・・・出口
290・・・前駆体流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料をプロセスチャンバ内の基材の表面上にコーティングするためのプラズマ化学気相成長法の装置であって、
前記プロセスチャンバ内に配置されたプラズマ源であって、1つ以上の負グロー領域および1つ以上の陽光柱を生成し、少なくとも1つの陽光柱は前記基材表面の近位にある、プラズマ源と、
前記基材表面上に材料を堆積するように前記陽光柱と相互作用するための、化学気相成長法の前駆体ガスを前記プロセスチャンバ内に注入するための少なくとも1つの入口と、
ガスのための送気出口を前記プロセスチャンバに提供する、少なくとも1つの出口と、
前記プロセスチャンバに注入された実質的にすべての前記前駆体ガスが、前記プラズマ源に優先して、材料を前記基材表面の上にコーティングする条件の下で、前記基材表面に隣接する前記陽光柱内に流れ込むように、前記基材の表面および相互に関連して位置付けられた、前記少なくとも1つの入口および前記プラズマ源と、を備える装置。
【請求項2】
前記前駆体ガスが前記陽光柱の中に流れ込むように導くマニホールドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記前駆体ガスを前記陽光柱内に導き、かつ前記負グロー領域から離れるように導くシールドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記マニホールドは、前記プラズマ源の長さに沿って複数の入口を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記前駆体ガスを基材表面に隣接する前記陽光柱内に導く前記マニホールドに隣接して配置された開口をさらに備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記基材を移送するためのシステムをさらに備える、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項7】
前記基材は可撓性である、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項8】
前記プラズマ源は、単一のロータリーマグネトロンである、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項9】
前記プラズマ源は、デュアルロータリーマグネトロンである、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項10】
前記プラズマ源は、単一の平板マグネトロンである、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項11】
前記プラズマ源は、デュアル平板マグネトロンである、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項12】
不活性ガスまたは反応性ガスを前記プラズマ源に提供する第2の入口をさらに備える、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項13】
前記基材表面に対して実質的に垂直に前記陽光柱が前記基材上に作用するように、前記プラズマ源が配置される、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項14】
前記基材表面に対して実質的に平行に前記陽光柱が前記基材上に作用するように、前記プラズマ源が配置される、請求項1〜5に記載の装置。
【請求項15】
前記プラズマ源は、デュアルマグネトロンであり、前記前駆体ガスが前記陽光柱内に流れ込むように導くための少なくとも1つのシールドまたはマニホールドと、
前記基材を移送するシステムと、をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
基材の基材表面上への材料のプラズマ化学気相成長コーティングのためのプロセスであって、
プロセスチャンバを提供することと、
前記プロセスチャンバ内にプラズマ源を配置することであって、前記プラズマ源が、1つ以上の負グロー領域および前記基材表面に向かって発射される1つ以上の陽光柱を生成する、プラズマ源を配置することと、
化学気相成長前駆体ガスを、実質的に少なくとも1つの陽光柱とのみ相互作用するように、前記プロセスチャンバ内に注入することと、
前記基材の前記基材表面上にプラズマ化学気相成長コーティングにより前記材料を堆積し、かつ前記ガスの前記負グロー領域との相互作用を抑制することと、を含むプロセス。
【請求項17】
前記化学気相成長前駆体ガスは、前記基材表面に隣接して注入される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記化学気相成長前駆体ガスは、前記基材表面に隣接し、かつ前記陽光柱の境界となる反対側から注入される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
前記材料は、堆積される材料は金属酸化物である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項20】
前記基材を前記堆積の間に移動させることをさらに備える、請求項16に記載のプロセス。
【請求項21】
前記基材が、可撓性の巻かれた基材のための移送システムにより移動される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記基材が、自立の平板状の基材のための移送システムにより移動される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項23】
前記材料を堆積することが、100時間以上の間連続的である、請求項16〜22に記載のプロセス。
【請求項24】
実質的に、添付の図を参照して、および/または添付の図に図示されたように、本明細書に記載されたような、請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2013−503974(P2013−503974A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528117(P2012−528117)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/047994
【国際公開番号】WO2011/029096
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(508371024)ジェネラル・プラズマ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】