説明

プラズマ放電処理装置及びプラズマ放電処理方法

【課題】 ガスの均一供給が可能な、簡単な構造で、小型で、高品質な薄膜を形成可能な大気圧プラズマ放電処理装置の提供。
【解決手段】 1対の対向する環状の電極と、円筒または円柱状の基材を、前記電極の環の内部を少なくとも通過させる移動手段と、前記電極に接続された高周波の電圧を発生する電源と、前記電極の対向領域に薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段と、を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラズマ放電処理装置及びプラズマ放電処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より1.333×10-6MPaから1.333×10-3MPa程度の圧力の環境において基材表面にプラズマCVDにより薄膜を製膜する方法が知られているが、この方法においては真空装置が必要となり連続性が損なわれることや、放電プラズマ密度が低いため処理効率が低く、生産性が低いという問題があり、その改良として、大気圧または大気圧近傍での放電プラズマによる処理が可能な技術が開示されている。
【0003】
例えば、円筒形の被処理体の1例である電子写真画像形成装置の感光体(以下電子写真画像形成装置の感光体を感光体と記す)を一方の電極とし樋状の固定電極を他方の電極とし、樋状の固定電極の上で該感光体を回転させながら固定電極との間にプラズマを発生させて感光体基材上に薄膜を形成する方法が知られている(例えば特許文献1及び2参照。)。また、円筒形の被処理体の1例である電子写真画像形成装置の感光体(以下電子写真画像形成装置の感光体を感光体と記す)を一方の電極とし円筒状の固定電極を他方の電極とし、円筒状の固定電極の中で該感光体を回転させながら固定電極との間にプラズマを発生させて感光体基材上に薄膜を形成する方法が知られている(例えば特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開2003−322979号公報
【特許文献2】特開2004−45849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び2に開示されたプラズマ放電処理装置では、樋状の固定電極とその中心軸に感光体とを設け、回転する感光体と樋状の固定電極の間にプラズマを発生するようにしたため、樋状の電極は少なくとも感光体1本分以上の長さを必要とすると共に、電極の長さ方向全長に亘って均一なプラズマを発生させる必要があり、このように長い固定電極全長に亘って放電を均一とするには装置が複雑となり、又装置が大型となってしまうという問題点が有り、更に感光体を回転しなければならず、感光体を回転させながら軸方向に平行にプラズマ処理を行うため回転の開始・終了部分と回転中の部分で薄膜の厚さが変化しやすく、均一とするためには装置が複雑になるという問題点を有していた。
【0005】
また、特許文献1及び2に開示された他のプラズマ放電処理装置では、回転する感光体と円筒状の固定電極の間にプラズマを発生させ成膜するようにしたため、大型の円筒状の固定電極を必要とし、感光体の精密な回転装置を必要とし、感光体と円筒状の固定電極の間隙全面にガスをに均一に供給するガス供給装置を必要とし、これらのために、装置が複雑且つ大型になるという問題点を有していた。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、ガスの均一供給が可能な、簡単な構造で、小型で、高品質な薄膜を形成可能な大気圧プラズマ放電処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は下記の発明により達成される。
【0008】
(1)1対の対向する環状の電極と、円筒または円柱状の基材を、前記電極の環の内部を少なくとも通過させる移動手段と、前記電極に接続された高周波の電圧を発生する電源と、前記電極の対向領域に薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段と、を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0009】
(2)1対の対向する環状の電極の一方に第1の周波数の電源を接続し、他方に第2の周波数の電源を接続することを特徴とする(1)に記載のプラズマ放電処理装置。
【0010】
(3)前記移動手段により前記電極の環の内部を前記基材が少なくとも通過中に前記電源をONとして前記ガス供給手段により供給された前記混合ガスを励起し、基材表面に薄膜を形成することを特徴とする(1)または(2)に記載のプラズマ放電処理装置。
【0011】
(4)1対の対向する環状の電極と、円筒または円柱状の基材を、前記電極の環の内部を少なくとも通過させる移動手段と、前記電極に接続された高周波の電圧を発生する電源及び前記移動手段に接続された高周波の電圧を発生する電源と、前記電極の対向領域に薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段と、を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0012】
(5)1対の対向する環状の電極の両者に第1の周波数の電源を接続し、前記移動手段に第2の周波数の電源を接続することを特徴とする(4)に記載のプラズマ放電処理装置。
【0013】
(6)前記移動手段により前記電極の環の内部を前記基材が少なくとも通過中に前記電源をONとして前記ガス供給手段により供給された前記混合ガスを励起し、基材表面に薄膜を形成することを特徴とする(4)または(5)に記載のプラズマ放電処理装置。
【0014】
(7)1対の対向する環状の電極と、円筒または円柱状の基材を、前記電極の環の内部を少なくとも通過させる移動手段と、前記電極に接続された高周波の電圧を発生する電源と、前記電極の対向領域に少なくとも薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段と、を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0015】
(8)1対の対向する環状の電極の両者に第1の周波数の電源を接続し、前記移動手段をアースに接続することを特徴とする(7)に記載のプラズマ放電処理装置。
【0016】
(9)前記移動手段により前記電極の環の内部を前記基材が少なくとも通過中に前記電源をONとして前記ガス供給手段により供給された前記混合ガスを励起し、基材表面に薄膜を形成することを特徴とする(7)または(8)に記載のプラズマ放電処理装置。
【0017】
(10)1対の環状の電極の対向領域全周でプラズマを発生させ、前記電極の環の内部を中心軸方向に移動する基材に前記プラズマを晒し、前記基材の表面に薄膜を形成することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0018】
(11)前記基材は画像形成装置の感光体ドラムの基材であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0019】
(12)1対の対向する環状の電極の内部を該環状の電極の中心軸と平行方向に円筒または円柱状の基材を移動させながら、前記環状の電極と前記円筒または円柱状の基材との間に発生させたプラズマに前記円筒または円柱状の基材表面を晒すことにより、該基材表面を放電処理するプラズマ放電処理方法。
【発明の効果】
【0020】
(1)〜(3)に記載の、1対の環状電極にそれぞれ異なる周波数の高周波電圧を印加し環状電極部にプラズマを発生させ、1対の環状電極の環の内部に基材を通過させることにより、簡単な構造で、小型で、均一な薄膜を形成可能な大気圧プラズマ放電処理装置の提供が可能となる。
【0021】
(4)〜(6)に記載の、1対の環状電極と基材を保持する保持部材とにそれぞれ異なる周波数の高周波電圧を印加し環状電極部にプラズマを発生させ、1対の環状電極の環の内部に基材を通過させることにより、簡単な構造で、小型で、均一な薄膜を形成可能な大気圧プラズマ放電処理装置の提供が可能となる。
【0022】
(7)〜(10)に記載の、1対の環状電極に高周波電圧を印加し基材を保持する保持部材をアースして環状電極部にプラズマを発生させ、1対の環状電極の環の内部に基材を通過させることにより、簡単な構造で、小型で、均一な薄膜を形成可能な大気圧プラズマ放電処理装置の提供が可能となる。
【0023】
(11)に記載の、上述した基材を画像形成装置の感光体とすることにより、画像形成装置の感光体を製造可能な大気圧プラズマ放電処理装置の提供が可能となる。
【0024】
(12)に記載の、1対の環状電極と基材間にプラズマを発生させ、1対の環状電極の環の内部に基材を通過させることにより、効率的に、均一な薄膜を形成可能なプラズマ放電処理方法の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
各図面において同一の構成・機能を有する部材等については同一の番号を付してある。
【0026】
以下、円筒形の被処理体として、その1例である電子写真方式の画像形成装置の感光体(以下電子写真方式の画像形成装置の感光体を感光体と記す)を例に取り、感光体に薄膜を形成する大気圧プラズマ放電処理装置について説明する。
【0027】
また、上流側、下流側とは感光体の搬送方向の上流・下流を指している。
【0028】
なお、本発明の大気圧及び大気圧近傍とは20kPa〜110kPa、好ましくは93kPa〜104kPaを指し、大気圧プラズマ放電処理装置において、ガスの励起及び被薄膜形成体への薄膜の形成は大気圧及び大気圧近傍の環境下で行われる。
【0029】
以下、円筒または円柱状の基材の1例として画像形成装置の感光体ドラム基材に薄膜を形成する場合について説明する。以下、円筒または円柱状の基材を感光体基材Fと記す。
【0030】
図1は、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1の形態の1例を示す概念図である。
【0031】
図1において、放電空間の外で薄膜を形成するプラズマジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置10(以下単に大気圧プラズマ放電処理装置10と記す)は、
基材を環状の電極の環の内部に少なくとも通過させる移動手段である、保持・移動機能を兼ね備えた基材搬送部材11と、
基材搬送部材11に装着された感光体基材Fの外周面と所定の距離を離間する様に配設した1対の対向する環状の電極である環状電極12と、環状電極12を構成する第1の環状電極121と、第2の環状電極122と、
環状電極121と対向する第2の環状電極122との対向領域である環状の空間(以下該環状の空間を放電空間13と記す)に、前記電極の対向領域に薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段である、少なくとも薄膜形成ガスと放電ガスの混合ガスGを供給するガス供給手段(不図示)と、
第1の環状電極121に第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源21と、第2の環状電極122に第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源22と、
第1の環状電極121の図示下側と第2の環状電極122の図示上側とに、それぞれ廃ガスG’の排気手段(不図示)とを有している。
【0032】
以下、各構成要素について更に説明すると、
基材搬送部材11は、感光体基材Fを保持する図示しない(後述する)基材の保持部材により感光体基材Fを保持して矢印Yu・Yd方向、及び矢印Xl・Xr方向に移動する。
【0033】
第1の環状電極121と第2の環状電極122とは所定の間隙を隔てて対向し、その対向領域が放電空間13を形成している、また、第1の環状電極121及び第2の環状電極122の各内周面と基材搬送部材11に保持された感光体基材F外周面とは所定の間隙を隔てて対向し、その対向面が薄膜を形成する処理空間17を形成している。
【0034】
そして、第1の環状電極121には第1フィルタ23を介し、周波数ω1、電界強度V1、電流I1を出力可能な第1の高周波電源21が接続され、また、第2の環状電極122には第2フィルタ24を介し、周波数ω2、電界強度V2、電流I2を出力可能な第2の高周波電源22が接続され、両電源のONにより周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界が放電空間13に発生するようになっている。
【0035】
第1の環状電極121及び第2の環状電極122は同じ内外径を有し、その内径は感光体基材Fの外径より大きな直径を有している。d1は基材搬送部材11に装着された感光体基材Fの外周面と第1の環状電極121及び第2の環状電極122の内周面との間隙である。
【0036】
ここで、間隙d1は0.1〜5mm、好ましくは0.5〜2mmになるように、感光体基材の外径に応じて第1の環状電極121及び第2の環状電極122の内径を設定してある。
【0037】
間隙d1が小さいと不要な放電が起こったり、感光体基材Fと第1の環状電極121等が接触する可能性が高くなり、大きいと安定した放電が発生し難くなってしまう。
【0038】
また、前述したように、第1の高周波電源21は周波数ω1、電界強度V1、電流I1を出力可能で、第2の高周波電源22は周波数ω2、電界強度V2、電流I2を出力可能で、
窒素等の放電ガスに対して安定して放電が開始し、放電開始後も薄膜形成ガス等を安定して励起できるように、放電開始電界強度をVIとすると各電源の出力の関係はω1<ω2、及び、V1≧VI>V2またはV1>VI≧V2の関係を有し、第1の高周波電源の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電源の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2であり、対向電極間に1W/cm2〜50W/cm2好ましくは1.2W/cm2〜20W/cm2以上の電力を供給する。
【0039】
図2は、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の混合ガスの供給に係る断面図である。
【0040】
ガス供給手段14は、薄膜形成ガスと放電ガスを均一に混合してするガス混合部141と、薄膜形成ガスと放電ガスが混合された混合ガスGを放電空間13に 均一に放出するガス供給部143と、ガス混合部141の混合ガスGをガス供給部143に供給するガス供給経路142と、を有しており、
ガス供給部143は、環状の筒で外側にガス供給経路142と接続する開口を有し、内側に混合ガスGを放電空間13に均一に放出する複数のガス放出口144を有している。
【0041】
第1の環状電極121と第2の環状電極122により放電空間13で励起された混合ガスG0は感光体基材Fに薄膜を堆積・形成する処理空間17に放出され、感光体基材Fに晒されて薄膜を堆積・形成される。
【0042】
そして、廃ガスG’は廃ガスの排気手段(不図示)により大気圧プラズマ放電処理装置10外に排出される。
【0043】
ここで、ガス供給手段14から供給される薄膜形成ガスと放電ガスとの混合ガスGのガスの種類、ガスの量、及び、第1の高周波電源21と第2の高周波電源22とから印加される周波数、電圧波形、電圧値、電流等を選択することにより、例えば反射防止膜や防汚膜等の、薄膜の形成、及び、例えば薄膜の酸化処理等の、薄膜の表面処理等が可能となる。
【0044】
図3は、大気圧プラズマ放電処理装置10の動作を説明する説明図である。
【0045】
以下に、基材の移動手段により環状の電極の環の内部を基材が少なくとも通過中に電源をONとしてガス供給手段により供給された混合ガスを励起し、基材表面に薄膜を形成する動作について説明する。
図3(a)において、装着ポジション413で基材搬送部材11に感光体基材Fが装着される。
【0046】
感光体基材Fの上側先端F1が第1の環状電極121の下面1212より低い下限位置に位置している。
【0047】
図3(b)において、装着ポジション413から感光体基材Fを装着した状態でXr方向に移動し、基材搬送部材11と第1の環状電極121及び第2の環状電極122との中心が一致した位置、即ち薄膜形成ポジション412で停止する。この時1ピッチ上流の装着ポジション413には次の基材搬送部材11(一点鎖線)が位置し次の基材搬送部材11に感光体基材Fが装着される。
【0048】
図3(c)において、基材搬送部材11がYu方向に移動を開始し、感光体基材Fの上側先端F1が第1の環状電極121の下面位置1212と一致すると、高周波電源21と第2の高周波電源22とがONとなり、放電空間13に前述した周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界を発生させると共にガス供給手段(不図示)により混合ガスGが供給され始める。そして基材搬送部材11は感光体基材FをYu方向に一定速度で移動継続し、第1の環状電極121及び第2の環状電極122との対向領域である処理空間17で放電空間13で励起された混合ガスG0が感光体基材F表面に晒され所定の薄膜を堆積・形成する。
【0049】
図3(d)において、Yu方向の移動と薄膜の堆積・形成が継続し、感光体基材Fの下側先端F2が第2の環状電極122の上面位置1221と一致すると、第1の高周波電源21と第2の高周波電源22とがOFFとなり、高周波電界の発生が停止されると共にガス供給手段(不図示)による混合ガスGが供給停止される。
【0050】
なお、上述した薄膜の形成は、Yd方向に移動中に行っても良く、Yu方向及びYd方向の両方向の移動中に行っても良い。
【0051】
図3(e)において、薄膜の形成が完了後、基材搬送部材11はYd方向に移動を開始し、感光体基材Fを感光体基材Fの上側先端F1が第1の環状電極121の下面1221より低い下限位置まで移動させる。
【0052】
そして、各基材搬送部材11はXr方向に1ピッチ移動し、装着ポジション413に位置していた一点鎖線で示していた基材搬送部材11は薄膜形成ポジション412に移動し、薄膜形成ポジション412に位置していた基材搬送部材11は感光体基材Fを回収する回収ポジション414に移動して、薄膜が形成された感光体F’は基材搬送部材11から回収される。
【0053】
なお、混合ガスの励起中或いは薄膜形成中に発生したパーティクルと廃ガスは、図示しない廃ガスの排気手段により大気圧プラズマ放電処理装置10外に排出される。
【0054】
図4は、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第2の形態の1例を示す概略図である。
【0055】
図4において、放電空間内で薄膜を形成するダイレクト方式の第2の形態の大気圧プラズマ放電処理装置30(以下単に大気圧プラズマ放電処理装置30と記す)は、
円筒または円柱状の基材を、前記電極の環の内部を少なくとも通過させる移動手段である、未処理の感光体である感光体基材Fの保持・移動機能を兼ね備えた基材搬送部材11と、
1対の対向する環状の電極である、基材搬送部材11に装着された感光体基材Fの外周面と所定の距離を離間する様に配列した環状電極32とを構成する第1の環状電極321と、第2の環状電極322と、
環状の電極の対向領域に薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段である、第1の環状電極321及び第2の環状電極322と、感光体基材Fと、の対向領域である環状の空間(以下該環状の空間を放電処理空間33と記す)に、少なくとも薄膜形成ガスと放電ガスの混合ガスGを供給するガス供給手段(不図示)と、
環状の電極に接続された高周波の電圧を発生する電源及び前記移動手段に接続された高周波の電圧を発生する電源である、第1の環状電極321及び第2の環状電極322に第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源22と、基材搬送部材11を介して感光体基材Fに第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源21と、
第1の環状電極321の図示下側と第2の環状電極322の図示上側とに、それぞれ廃ガスG’の排気手段(不図示)と、を有している。
【0056】
以下、各構成要素について更に説明すると、
基材搬送部材11、と、第1の環状電極321と第2の環状電極322と感光体基材Fとの各寸法関係、及び第1の高周波電源21、と、第2の高周波電源22とは、図1を参照して説明した第1の形態と同様のため説明を省略する。
【0057】
第1の環状電極321と第2の環状電極322とは所定の間隙を隔てて対向し、その対向領域が混合ガスGの通路となっている。両電極は同電位となっているので放電は起こらない。
【0058】
第1の環状電極321及び第2の環状電極322の内周面と、基材搬送部材11に装着された感光体基材F外周面とは所定の間隙を隔てて対向し、その対向領域がプラズマ放電により混合ガスを励起し薄膜を堆積・形成する放電処理空間33を形成している。
【0059】
そして、第1の環状電極321及び第2の環状電極322には第2フィルタ24を介し、周波数ω2、電界強度V2、電流I2を出力可能な第2の高周波電源22が接続され、
感光体基材Fには基材搬送部材11及び第1フィルタ23を介し、周波数ω1、電界強度V1、電流I1を出力可能な第1の高周波電源21が接続され、両電源のONにより周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界が放電処理空間33に発生する。
【0060】
図5は、本発明の第2の形態の大気圧プラズマ放電処理装置の、混合ガスの供給を説明する断面図である。
【0061】
大気圧プラズマ放電処理装置30の動作については、図1を参照して説明した第1の形態と略同様な構成を有しているので、異なる部分について説明を行う。
【0062】
ガス供給手段34は、薄膜形成ガスと放電ガスを均一に混合してするガス混合部141と、薄膜形成ガスと放電ガスが混合された混合ガスGを放電処理空間33に均一に放出するガス供給部343と、ガス混合部141の混合ガスGをガス供給部343に供給するガス供給経路342と、を有している。
【0063】
ガス供給部343は、第1の環状電極321と第2の環状電極322とが対向する環状の領域で外側にガス供給経路342と接続する開口を有し、内側に混合ガスGを放電処理空間33に均一に放出する複数のガス放出口344を有している。
【0064】
放出された混合ガスGは放電処理空間33で励起され、励起した混合ガスが感光体基材Fに晒されて感光体基材F表面に薄膜を堆積・形成される。
【0065】
そして、廃ガスG’は廃ガスの排気手段(不図示)により大気圧プラズマ放電処理装置30外に排出される。
【0066】
ここで、ガス供給手段34から供給される薄膜形成ガスと放電ガスとの混合ガスGのガスの種類、ガスの量、及び、第1の高周波電源21と第2の高周波電源22とから印加される周波数、電圧波形、電圧値、電流等を選択することにより、例えば反射防止膜や防汚膜等の、薄膜の形成、及び、例えば薄膜の酸化処理等の、薄膜の表面処理等が可能となる。
【0067】
また、1対の対向する環状の電極の両者に第1の周波数の電源を接続し、前記移動手段をアースに接続することである、図4及び5において、基材搬送部材11をアースしても良い。この場合は比較的放電開始電圧が低い放電ガスを使用する場合に好適に利用できる。
【0068】
大気圧プラズマ放電処理装置30の動作については、図3を参照して説明した第1の形態と略同様な動作を有しているので、異なる部分について説明を行う。
【0069】
図5において、基材搬送部材11がYu方向に移動を開始し、感光体基材Fの上側先端F1が第1の環状電極321の下面3212と一致すると、高周波電源21と第2の高周波電源22とがONとなり、放電処理空間33に前述した周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界を発生させると共にガス供給手段34により混合ガスGが供給され始める。そして基材搬送部材11は感光体基材FをYu方向に一定速度で移動継続し、放電処理空間33で励起された混合ガスが感光体基材F表面に晒され所定の薄膜を堆積・形成する。
【0070】
なお、以上図1〜5で説明した周波数ω1の第1の高周波電源21、周波数ω2の第2の高周波電源22は下記の電源が好適に使用できる。
第1の高周波電源としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。
【0071】
また、第2の高周波電源としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0072】
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0073】
高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2の環状電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0074】
また、図1〜3の、第1の環状電極121と第1の高周波電源21との間、及び図4、5の基材搬送部材11と第1の高周波電源21との間には第1フィルタ23が設置されており、第1フィルタ23により第1の高周波電源21から第1の環状電極121及び第1の高周波電源21から基材搬送部材11への電流を通過しやすくし、第2の高周波電源22からの電流をアースして第2の高周波電源22から第1の高周波電源21への電流が通過しにくくなるようになっている。
【0075】
また、第2の環状電極122と第2の高周波電源22との間、及び、第1の環状電極121及び第2の環状電極122と第2の高周波電源22との間には第2フィルタ24が設置されており、第2フィルタ24により第2の高周波電源22から、第2の環状電極122、及び第1の環状電極121と第2の環状電極122への電流を通過しやすくし、第1の高周波電源21からの電流をアースして第1の高周波電源21から第2の高周波電源22への電流が通過しにくくなるようになっている。
【0076】
以上の説明において、電源を2種用いてプラズマを発生させる方法について説明してきたが、これは例えば放電ガスに窒素等の放電開始電圧が高いガスを使用した場合に好適に用いられる。放電開始電圧が低いガスを使用する場合は第1の高周波電源を使用せず、第1の環状電極或いは基材搬送部材11をアースに接続しても良い。
【0077】
次に大気圧プラズマ放電処理装置10及び30で混合ガスGとして供給する薄膜材料等について、電子写真方式の感光体に使用する薄膜材料を例に取り説明する。
【0078】
薄膜形成を実施するにあたり、使用する反応ガスは、感光体基材面上に設けたい中間層の種類によって異なるが、基本的に、希ガスまたは窒素ガスと中間層を形成する成分の反応性ガスを混合した反応ガスである。中間層の膜厚としては、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0079】
上記希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
【0080】
本発明の電子写真感光体の中間層を形成する成分を有する有用な反応性ガスは、金属化合物または有機金属化合物のガスまたは気化器でガス化したものであり、これらの金属としては、例えば、Al、Co、Cr、Cu、Fe、In、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zr、V、Wを挙げることが出来る。これらのうち中間層としてより緻密な被膜を形成することが出来るものとしてAl、Si、Ti、Ni、Zr、In、Snを好ましく挙げることが出来、特に好ましくはTiである。Tiから得られる金属酸化物は高い抵抗を有する一方で、効果的に電子を移動出来るn型半導体の性質を有しており、良好なブロッキング性を有するだけでなく、電子の蓄積が起こらないので、繰り返し使用いても特性が劣化しない。従って物性的には高抵抗で電子輸送性を有する化合物が特に好適に用いられる。上記より好ましい金属に他の金属を混合させてもよく、更に緻密な中間層を得ることが出来るので好ましい。
【0081】
有機金属化合物は金属アルコキシド、アルキル化金属、β−ケトン金属錯体であることが好ましく、これらの基の混合した例えば、アルキルアルコキシ金属、アルキル金属β−ケトン錯体、アルコキシ金属β−ケトン錯体も好ましい。
【0082】
上記金属のうち、代表例としてAl、Si、Tiの金属について、金属化合物または有機金属化合物について例示すると、トリイソプロポキシアルミニウム、ジイソプロポキシアルミニウムアセトアセトナート、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリイソプロポキシシランアセトアセトナート、シラントリフルオロアセトナート、テトラ(トリフルオロエトキシ)チタン、トリエトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジクロロエチルジクロロシラン、テトラクロロシラン、トリイソプロポキシチタン、メチルトリプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、トリエトキシチタンアセトアセトナート、ジエトキシチタンジアセトアセトナート、トリクロロチタン等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。これらのうち、特に有機チタン化合物またはチタン金属化合物が好ましい。
【0083】
上記のごとき金属化合物または有機金属化合物を放電空間に導入するには、常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の気化手段により気化させて使用することが好ましい。常温で液体で、沸点が200℃以下である金属化合物または有機金属化合物の場合には、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解される為、感光体基材上への中間層の形成、中間層の組成などに対する影響は殆ど無視することが出来る。金属化合物または有機金属化合物を有機溶媒に溶解させて溶液とした後、加熱して、反応ガスに使用する希ガス、例えばアルゴンを有機金属化合物溶液にバブリングして気化させることが出来る。気化には市販のものを使用することが出来、例えば、リンテック社製気化器を挙げることが出来る。
【0084】
また、上記記載の反応ガス中に反応性ガスの補助ガスとして水素ガスを酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜10体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な著しく硬度の高い中間層を形成することが出来る。
【0085】
また、有機フッ素化合物を補助ガスとして用いることが出来る。有機フッ素化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましく用いられる。フッ化炭素ガスとしては、四フッ化炭素、六フッ化炭素、具体的には、四フッ化メタン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等が挙げられる。前記のフッ化炭化水素ガスとしては、二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン等を挙げることが出来る。
【0086】
更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることが出来るがこれらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。前記の化合物は単独でも混合して用いても良い。
【0087】
上記記載の金属化合物または有機金属化合物及び補助ガスを合わせた反応性ガスの反応ガス中の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0088】
上記の反応ガスをプラズマ状態にして形成された中間層は、金属酸化物を主成分として形成され、金属酸化物が主成分の50質量%以上含有していることであり、好ましくは60質量%、より好ましくは80質量%、特に好ましくは90質量%である。使用するガスによっては金属窒化物、金属炭化物や塩化ホウ素化合物も得られ、本発明において何れも好ましい中間層を得ることが出来る。特に本発明においては中間層の硬度、湿気の遮断等に優れていることから金属酸化物が好ましく、中間層中のほとんどが金属酸化物であることが望ましい。このことにより金属酸化物が高密度で緻密に中間層を形成することが出来る。
【0089】
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理により中間層を形成することにより、中間層内に炭素を少量含有し、このことが膜の強度にも関係し、硬度を上げる効果を有すると考えられる。中間層内の炭素含有量は0.2〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%がより好ましい。炭素含有量が5質量%を超えるとむしろ硬度が低下し、また0.2未満でも膜の脆さが増してくる。他の方法、例えば真空蒸着のような方法で作製した中間層には炭素がほとんど含有されておらず、脆弱な膜しか形成されない。
【0090】
有機光導電層とは電子写真感光体の構成には必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質または有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て包含する。
【0091】
使用する電子写真感光体の有機光導電層に用いられる有機光導電性化合物としては、例えば、特開2000−305291に記載されている化合物を挙げることが出来、何れも本発明において有用である。
【0092】
電子写真感光体の感光体基材の上に中間層を介して形成された有機光導電層には、電荷発生機能を有する有機光導電性化合物と電荷輸送機能を有する有機光導電性化合物を1層の中に混合物の層とする場合と、性質の異なる有機光導電層を別々に電荷発生層と電荷輸送層に分けた積層とする場合とがある。本発明においては、何れの場合にも有機光導電層を、電荷発生層と電荷輸送層を分けずに単に有機光導電層という言葉で表現している。
【0093】
有機光導電層の電荷発生層は電荷発生剤をバインダー樹脂とともに有機溶媒に溶解または分散させて電荷発生層塗布液を調製し、円筒型の感光体基材の場合には、浸漬塗布法により塗工する。
【0094】
また必要に応じて有機光導電層を塗工する前に、中間層の上に下引層をもうけてもよい。
【0095】
図6は、電極の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0096】
図6は上述した、第1の環状電極121及び321と第2の環状電極122及び322の概念を示したもので、導電性の金属質母材41に対し、誘電体42が被覆されたものである。
【0097】
そして、金属質母材41に接続されたケーブル(不図示)により高周波電源(不図示)に接続されている。
【0098】
なお、上記電極の内、高周波電界を発生する対となった電極の内少なくとも一方に誘電体42が被覆されている。
【0099】
導電性の金属質母材41としては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0100】
また、金属質母材41の表面に被覆した誘電体42は、誘電体としてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。
【0101】
誘電体42は片肉で1mm程度被覆されていればよく、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0102】
誘電体を被覆する電極においては、金属質母材と誘電体との間に線熱膨張係数の差が少ない組み合わせのものが好ましく、例えば金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜が特に好ましく、他に、金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。
【0103】
このような組み合わせにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0104】
図7は、基材搬送部材の断面図である。
【0105】
図7(a)は側面から見た断面図で、図7(b)はQ−Rから見た断面図である。
【0106】
基材搬送部材11は基材搬送部材11全体の位置出しを行う基材基部111と、基材基部111が位置決めされた時に基材搬送部材11に装着された感光体基材Fが環状電極12或いは環状電極32の軸方向中央に位置するような位置に、基材基部111からYu方向に突出した感光体基材Fを保持する感光体保持部112とを有している。
【0107】
感光体保持部112の内部には感光体Fの直径方向の位置出しを行うエアチャック113と、感光体Fの軸方向の位置出しを行う感光体保持部112の外周に突き出た凸部114とを有している。
【0108】
エアチャック113は、感光体保持部112の円周方向に等配に3箇所設けられたチャック1131と、空圧により拡張しチャック1131を直径方向に付勢するゴム袋1132とを有している。チャック1131はゴム等よりなる弾性袋1132の拡張により直径方向に一様に付勢され、装着された感光体Fの中心軸を感光体保持部112の中心軸、即ち第1の環状電極121及び321と第2の環状電極122及び322の中心軸とに合わせるように位置出しする。
【0109】
感光体Fの軸方向の位置出しは感光体Fの下面F2が凸部114の上面に当接することにより行われる。
【0110】
また、弾性袋1132は基材基部111の下面に開口し、開口部が圧縮空気を送気する送気口1111を構成し、その周囲に圧縮空気充填時に圧縮空気の漏れを防止するパッキング1112が配設されている。
【0111】
図8は、基材搬送手段の1例を説明する概念図である。
【0112】
図8及び図7において、基材搬送手段40は基材搬送部材11をXr方向に移動する水平移動部41と、Yu/Yd方向に移動する垂直移動部42と、基材搬送部材11に装着された感光体基材Fが環状電極12或いは環状電極32の中央に位置するように基材搬送部材11の位置出しを行う位置決め部43とを有している。
【0113】
そして、水平移動部41は基材搬送部材11を水平方向に移動させるベルトコンベア411と、薄膜の形成を行う薄膜形成ポジション412と、その前工程であり基材搬送部材11に感光体基材Fを装着する装着ポジション413と、後工程であり基材搬送部材11から薄膜形成済みの感光体F’を回収する回収ポジション414とを有している。
【0114】
各ポジション間は同一の距離(1ピッチ)で、ベルトコンベア411は1ピッチずつ間歇移動を行い、装着ポジション413には基材搬送部材11のXr方向の位置決めを行うストッパ415を有している。また、ベルトコンベア411は紙面上下方向に2分割されており、中央基材基部111の下面の両端部を支持し、ベルトコンベア411の中央部に位置している垂直移動部42等の動作の妨げとならない様になっている。
【0115】
垂直移動部42は感光体基材FをYu方向に押し上げる空圧シリンダ、等よりなる押し上げ部421と、基材搬送部材11内部の前述したエアチャック113を付勢する弾性袋1132に圧縮空気を送りエアチャック113のON/OFFを行うポンプ等よりなるエアチャック駆動部422とを有している。
【0116】
位置決め部43は、基材搬送部材11が垂直移動部42により押し上げられる時、基材基部111が嵌入し、基材搬送部材11に装着された感光体基材Fが環状電極12或いは環状電極32の中央に位置するように、基材搬送部材11の位置出しを行なう移動方向の直角方向に分割可能な位置決めガイド431を有している。
【0117】
以下に図7及び図8を参照して基材搬送手段の動作について説明する。
【0118】
装着ポジション413で基材搬送部材11の感光体保持部112に感光体基材Fが装着される。
【0119】
基材搬送部材11は感光体基材Fを保持しながらベルトコンベア411により薄膜形成ポジション412に移動する。
【0120】
この時位置決めガイド431は感光体保持部112が薄膜形成ポジション412に移動可能とするため移動方向の直角方向に開いている。
【0121】
基材基部111がストッパ415に当接して薄膜形成ポジション412に着くとベルトコンベア411は停止し、開いていた位置決めガイド431は閉じて一体となる。
【0122】
押し上げ部421が作動して基材搬送部材11を押し上げ始めると、押し上げ部421の上面4211と基材基部111下面のパッキング1112が密着し、エアチャック駆動部422が作動して圧縮空気を送気口1111を介して弾性袋1132に送り込む。
【0123】
基材搬送部材11の上昇により基材基部111は位置決めガイド431に嵌入し、基材搬送部材11に装着された感光体基材Fの中心軸が環状電極12或いは環状電極32の中心軸と一致するように位置出しを行なわれる。
【0124】
そして、感光体基材F上面が環状電極12或いは環状電極32下面に到達すると図1、図4を参照して説明した様に、環状電極12或いは環状電極32に高周波電圧が印加され、また、ガス供給手段14から混合ガスGが供給され、混合ガスが励起され、Yu方向に移動する感光体基材F表面に薄膜が堆積・形成される。
【0125】
そして、感光体基材F下面が環状電極12或いは環状電極32上面に到達すると高周波電圧の印加及び混合ガスの供給が停止される。
【0126】
高周波電圧の印加及び混合ガスの供給が停止後、押し上げ部421が下降して基材搬送部材11を下降させる。
【0127】
下降後、基材搬送部材11は薄膜形成済みの感光体を保持しながらベルトコンベア411により回収ポジション414に移動される。
【0128】
回収ポジション414に着くとベルトコンベア411は停止し、薄膜形成済みの感光体F’が回収される。
【0129】
なお、薄膜形成ポジション412では感光体基材Fの上昇中に1層の薄膜を形成する場合について説明したが、下降中に再び同じ層を形成する様にしても良く、更に、下降中に異なる混合ガス及び異なる高周波電圧を印加して異なる層を形成する様にしても良い。
【0130】
また、同じ条件の薄膜形成ポジションを複数設けて所定の膜厚になるまで次々に同じ薄膜を積み重ねる様にてしても良く、更に異なる条件の薄膜形成ポジションを複数設けて所定の層構成とするように次々に異なる薄膜を形成する様にしても良い。
【0131】
また、感光体保持部112を長くして複数の感光体基材Fを装着しYu・Yd方向の移動を大きくすれば複数の感光体を処理することも可能となる。
【0132】
図9は、基材搬送手段の他の1例を説明する概念図である。
【0133】
50は上面がV字型にへこんだ凹部51を有し、凹部51に複数の感光体基材Fを載置する基材載置台で、図示右端に図1、図4を参照して説明した環状電極12或いは環状電極32が配設されている。
【0134】
60は感光体基材Fの直径方向の位置決めをし、位置決めした状態で感光体基材FをXl/Xr方向に移動させる、位置決め移動手段である。
【0135】
位置決め移動手段60には、図7を参照して説明したエアチャック113を複数内装し複数の感光体基材Fを保持する基材保持部材62を有する基材支持部材61が手段で固定してある。
【0136】
基材保持部材62が複数の感光体基材Fを保持した時、各感光体基材Fは各エアチャック113によりそれぞれ同じ中心軸位置となる様に位置決めされる。
【0137】
位置決め移動手段60は通常図示した様に基材保持部材62の先端63が環状電極12或いは環状電極32より離間した位置に位置している。この時エアチャック113はOFFの状態になっている。
【0138】
位置決め移動手段60の基材載置台50に向けての移動により、基材保持部材62が基材載置台50上に載置された複数の感光体基材Fに嵌入される。
【0139】
嵌入後各エアチャック113は各感光体基材Fの中心が第1及び第2の環状電極12、32の中心と同じ位置に来る様に位置決めを行う。
【0140】
位置決め後、位置決め移動手段60は位置決めされた複数の感光体基材Fを環状電極12或いは環状電極32から引き抜く方向に移動を開始する。
【0141】
移動の開始により環状電極12或いは環状電極32に高周波電圧が印加され、また、ガス供給手段(不図示)から混合ガスが供給され、混合ガスが励起され、移動する複数の各感光体基材F表面に薄膜が堆積・形成される。
【0142】
以上。被処理体が円筒状の場合について説明してきたが、環状電極の形状を被処理体の外形に応じて変えることにより筒状で有れば多角形の筒でも良い。更に、外周をハンドリングすることにより同様に円柱、多角形の柱にも対応可能である。
【0143】
図10は、ガス供給部143、ガス供給部343の他の構造の概念図である。
【0144】
図10(a)は枝分かれ方式の説明図、図10(b)は邪魔板方式の説明図である。
【0145】
図10(a)においてガス供給部143はガス供給経路142に接続された混合ガスGの供給経路1421を有し、供給経路1421は枝分かれして第2の供給経路1422となり、第2の供給経路1422は更に枝分かれして第3の供給経路1423となり、第3の供給経路1423は更に枝分かれして第4の供給経路1424となり、第4の供給経路1424の先端部が混合ガスGを放出するガス放出口144となっている。
【0146】
このような枝分かれ構造により混合ガスの成分が均一化されると共に各ガス放出口144からの放出流量が均一化される。
【0147】
円周方向に均一な放出流量を得るためには以上説明した様な枝分かれ構造を有していることが好ましいが、順次枝分かれせず供給経路1421が直接第4の供給経路1424に接続されている様な構成(不図示)にしても良い。
図10(b)においてガス供給部143はガス供給部143内部に複数の邪魔板1499を有し、混合ガスGが異なる同心円上に交互に並んだ複数層の邪魔板1499の間を次々に通過することにより混合ガスの成分が均一化されるとともに、各ガス放出口144からの放出流量が均一化される。
【0148】
図5で説明したガス供給部343を上述した枝分かれ構造或いは邪魔板方式としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1の形態の1例を示す概念図である。
【図2】本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の混合ガスの供給に係る断面図である。
【図3】大気圧プラズマ放電処理装置10の動作を説明する説明図である。
【図4】本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第2の形態の1例を示す概略図である。
【図5】本発明の第2の形態の大気圧プラズマ放電処理装置の、混合ガスの供給を説明する断面図である。
【図6】電極の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図7】基材搬送部材の断面図である。
【図8】基材搬送手段の1例を説明する概念図である。
【図9】基材搬送手段の他の1例を説明する概念図である。
【図10】ガス供給部143、ガス供給部343の他の構造の概念図である。
【符号の説明】
【0150】
10、30 大気圧プラズマ放電処理装置
11 基材搬送手段
12、32 環状電極
13 放電空間
14、34 ガス供給手段
17 処理空間
21 第1の高周波電源
22 第2の高周波電源
40 基材搬送手段
60 基材保持手段
111 基材基部
112 感光体保持部
113 エアチャック
121、321 第1の環状電極
122、322 第2の環状電極
F 感光体基材
G 混合ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の対向する環状の電極と、円筒または円柱状の基材を、前記電極の環の内部を少なくとも通過させる移動手段と、前記電極に接続された高周波の電圧を発生する電源と、前記電極の対向領域に薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段と、を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【請求項2】
1対の対向する環状の電極の一方に第1の周波数の電源を接続し、他方に第2の周波数の電源を接続することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項3】
前記移動手段により前記電極の環の内部を前記基材が少なくとも通過中に前記電源をONとして前記ガス供給手段により供給された前記混合ガスを励起し、基材表面に薄膜を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項4】
1対の対向する環状の電極と、円筒または円柱状の基材を、前記電極の環の内部を少なくとも通過させる移動手段と、前記電極に接続された高周波の電圧を発生する電源及び前記移動手段に接続された高周波の電圧を発生する電源と、前記電極の対向領域に薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段と、を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【請求項5】
1対の対向する環状の電極の両者に第1の周波数の電源を接続し、前記移動手段に第2の周波数の電源を接続することを特徴とする請求項4に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項6】
前記移動手段により前記電極の環の内部を前記基材が少なくとも通過中に前記電源をONとして前記ガス供給手段により供給された前記混合ガスを励起し、基材表面に薄膜を形成することを特徴とする請求項4または5に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項7】
1対の対向する環状の電極と、円筒または円柱状の基材を、前記電極の環の内部を少なくとも通過させる移動手段と、前記電極に接続された高周波の電圧を発生する電源と、前記電極の対向領域に少なくとも薄膜を形成する薄膜材料ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段と、を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【請求項8】
1対の対向する環状の電極の両者に第1の周波数の電源を接続し、前記移動手段をアースに接続することを特徴とする請求項7に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項9】
前記移動手段により前記電極の環の内部を前記基材が少なくとも通過中に前記電源をONとして前記ガス供給手段により供給された前記混合ガスを励起し、基材表面に薄膜を形成することを特徴とする請求項7または8に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項10】
1対の環状の電極の対向領域全周でプラズマを発生させ、前記電極の環の内部を中心軸方向に移動する基材に前記プラズマを晒し、前記基材の表面に薄膜を形成することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【請求項11】
前記基材は画像形成装置の感光体ドラムの基材であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【請求項12】
1対の対向する環状の電極の内部を該環状の電極の中心軸と平行方向に円筒または円柱状の基材を移動させながら、前記環状の電極と前記円筒または円柱状の基材との間に発生させたプラズマに前記円筒または円柱状の基材表面を晒すことにより、該基材表面を放電処理するプラズマ放電処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−257502(P2006−257502A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77332(P2005−77332)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】