説明

プリプレグ、多層回路基板、プリント配線板及びプリント配線板の製造方法

【課題】プリプレグからなる絶縁体基材の表面にめっきを形成する場合において、絶縁体基材の表面粗度が低くても、高いめっき密着強度を維持する絶縁体基材を得ることができる、優れたファイン回路形成性とめっき密着性とを両立できるプリプレグを提供することを目的とする。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び平均繊維径500nm以下の有機短繊維(D)を含有するエポキシ樹脂組成物を基材に含浸し、半硬化させて得られることを特徴とするプリプレグを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板等の製造に用いられるプリプレグに関し、特に、めっき工程を用いたビルドアップ工法によるプリント配線板等の製造に好適に用いられるプリプレグに関する。また、このプリプレグを用いた多層回路基板、プリント配線板及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物を基材に含浸し、半硬化させて得られるプリプレグは、その優れた接着性、電気絶縁性、及び耐薬品性等から、プリント配線板材料として広く用いられている。このようなプリプレグを用いたプリント配線板の製造方法としては、プリプレグからなる絶縁体基材表面を酸化剤等の粗化液により粗化処理して、粗化処理された絶縁体基材表面にめっき工程を用いて導体層を形成したのち、回路パターンをエッチングして回路形成するアディティブ法を用いたビルドアップ工法が広く採用されている。上記粗化処理は、形成されるめっきとの密着性を高めるために表面を荒らす処理である。従来行われている粗化処理においては、粗化表面の凹凸の高低差、つまり、表面粗度を高めることにより、めっき密着強度を高めている。
【0003】
このように硬化物上にめっき密着強度を高めるために、硬化処理後であっても、粗化液に可溶な成分として、ブタジエン含有樹脂、有機粉体及び無機粉体のうちの2成分以上を含有したプリプレグが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−249764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年求められているような、回路の配線幅及び配線間隔の狭いファインピッチの回路を形成する場合、めっき密着強度を高めるために、プリプレグからなる絶縁体基材の表面を粗くすると、回路パターンをエッチングしても、荒れた表面の深い部分にエッチング液が絶縁体基材表面に届きにくく、回路の輪郭の周辺部の絶縁体基材表面にめっきが残留するので、正確な回路パターンを形成することが困難であった。さらに、このようにめっきの残留量がばらつくことにより、回路間の絶縁抵抗がばらつき、プリント配線板の歩留まりが低下していた。
【0005】
一方、正確な回路パターンを形成するためには、表面粗度の比較的低い絶縁体基材表面にめっき層を形成すればよいが、このような表面粗度が低い絶縁体基材表面にめっき層を形成する場合において、めっき密着強度を高めることは困難であった。
【0006】
従って、ファインピッチの回路を正確に形成することができるファイン回路形成性と、めっきの密着性とを両立させることは困難であった。
【0007】
本発明は、プリプレグからなる絶縁体基材の表面にめっきを形成する場合において、絶縁体基材の表面粗度が低くても、高いめっき密着強度を維持する絶縁体基材を得ることができる、優れたファイン回路形成性とめっき密着性とを両立できるプリプレグを提供することを目的とする。また、このプリプレグを用いた多層回路基板、プリント配線板及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び平均繊維径500nm以下の有機短繊維(D)を含有するエポキシ樹脂組成物を基材に含浸し、半硬化させて得られることを特徴とするプリプレグである。
【0009】
このようなプリプレグを硬化させ、その後、粗化処理して得られる絶縁体基材は、その表面粗度が良好なファイン回路形成性を実現できるほど低くても、優れためっき密着性を発揮できる。
【0010】
このことは、粗化処理して得られる絶縁体基材の表面に、上記のような微細な有機短繊維が存在することにより、微細な凹凸が形成され、その結果、凹凸の数が多い(凹凸の密度の高い)表面が形成され、表面粗度が低くても、絶縁体基材の表面積が大きくなるので、高いめっき密着強度を維持できると考えられる。また、有機短繊維が、一部樹脂中に埋まっている場合、埋まっていない部分にめっきがまとわりつくように形成され、めっき密着強度の向上に寄与させることができると考えられる。
【0011】
また、表面粗度の低い絶縁体基材表面にめっきを形成させるので、回路の輪郭の周辺部の絶縁体基材表面のめっきの残留量を低減させることができる。その結果、回路間の絶縁抵抗のばらつきを抑制できる。
【0012】
従って、このようなプリプレグは、優れたファイン回路形成性とめっき密着性とを両立できるものである。
【0013】
前記プリプレグにおいて、前記有機短繊維(D)が、アラミド樹脂短繊維、又はイミド樹脂短繊維であることが、絶縁体基材の表面粗度が低くても、より高いめっき密着強度を確保できる点で好ましい。
【0014】
また、前記有機短繊維(D)の平均繊維長が600μm以下であることが、絶縁体基材の表面粗度が低くても、より高いめっき密着強度を確保できる点で好ましい。
【0015】
また、前記有機短繊維(D)のアスペクト比が、20以上であることが、絶縁体基材の表面粗度が低くても、より高いめっき密着強度を確保できる点で好ましい。
【0016】
前記プリプレグにおいて、前記エポキシ樹脂組成物全量に対する、前記有機短繊維(D)の含有割合が、0.1〜5質量%であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂組成物を含むプリプレグであると、プリプレグからなる絶縁体基材の表面粗度が低くても、より高いめっき密着強度を確保できる。このことは、有機短繊維(D)の含有割合が上記範囲であると、凹凸の密度が好適な面が形成されることによると考えられる。
【0017】
本発明の多層回路基板は、前記プリプレグと内層回路基板とを積層成形して得られる多層回路基板である。このような多層回路基板を用いて得られるプリント配線板は、表面粗度の低い表面にめっきが形成されても、優れためっきの密着性を維持でき、さらに、回路間の絶縁抵抗のばらつきを抑制できる。その結果、得られたプリント配線板の歩留まりが向上する。
【0018】
本発明のプリント配線板は、前記プリプレグを絶縁層として用いたプリント配線板である。このようなプリント配線板は、表面粗度の低い表面にめっきが形成されても、優れためっきの密着性を維持でき、さらに、回路間の絶縁抵抗のばらつきを抑制できる。その結果、プリント配線板の歩留まりが向上する。
【0019】
本発明のプリント配線板の製造方法は、前記プリプレグが最外層に露出するように少なくとも1層の内層回路基板と複数層のプリプレグとを積層した後、加熱加圧することにより積層体を形成する積層工程、前記積層体の表面を粗化する粗化工程、前記粗化された表面に無電解めっきによりめっき層を形成するめっき工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法である。このような製造方法によれば、回路幅及び回路間隔が狭い、ファインピッチの外層回路を有するプリント基板を、高い歩留まりで製造できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、プリプレグからなる絶縁体基材の表面にめっきを形成する場合において、優れたファイン回路形成性とめっき密着性とを両立できるプリプレグ、このプリプレグを用いた多層回路基板、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び平均繊維径500nm以下の有機短繊維(D)を含有するエポキシ樹脂組成物を基材に含浸し、半硬化させて得られることを特徴とするプリプレグである。
【0022】
本発明に用いるエポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いる硬化剤(B)は、エポキシ樹脂(A)を硬化させるためのものである。硬化剤(B)としては、例えば、アミノ系硬化剤や、フェノール系硬化剤等が挙げられる。これらの中でもフェノール系硬化剤(B1)がプリプレグの硬化物の耐熱性が高くなる点から好ましく用いられる。
【0024】
フェノール系硬化剤(B1)の具体例としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、テトラブロモビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等が挙げられる。上記各種硬化剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明に用いる硬化促進剤(C)は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との硬化反応を促進させるためのものである。硬化促進剤(C)の具体例としては、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物や、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン化合物、グアニジン類、または、これらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもののほか、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム、テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)若しくはその誘導体等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明に用いる有機短繊維(D)は、平均繊維径500nm以下の有機短繊維であり、好ましくは、平均繊維径が300nm以下のものであることが好ましい。このような有機短繊維(D)を含有すると、表面粗度が低くても、高いめっき密着性を発揮できる表面を有する絶縁体基材を形成できる。前記繊維径が500nmを超える場合には、回路の輪郭の周辺部にめっきが残留しやすく、プリンタ配線板の歩留まりを低下させる可能性がある。
【0027】
このことから、粗化処理して得られる絶縁体基材の表面に、上記のような微細な有機短繊維が存在することにより、微細な凹凸が形成され、その結果、凹凸の数が多い(凹凸の密度の高い)表面が形成され、表面粗度が低くても、絶縁体基材の表面積が大きくなるので、高いめっき密着強度を維持できると考えられる。また、有機短繊維が、一部樹脂中に埋まっている場合、埋まっていない部分にめっきがまとわりつくように形成され、めっき密着強度の向上に寄与させることができると考えられる。
【0028】
従って、表面粗度の低い絶縁体基材表面に、めっき層を形成し、形成されためっき層をエッチングして回路を形成することになり、回路の輪郭の周辺部にめっきが残留しにくくなる。その結果、プリント配線板の歩留まりを向上させることができる。
【0029】
また、平均繊維径の下限は特に限定されないが10nm以上であることが好ましい。有機短繊維(D)の繊維径が、10nm未満である場合には、めっき密着性の向上への寄与が小さくなる傾向がある。
【0030】
前記有機短繊維(D)としては、上記平均繊維径の範囲内のナノファイバーであれば、特に限定されず、例えば、アラミド樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、及びポリエチレンオキサイド等からなるナノファイバーが挙げられる。この中でも、アラミド樹脂、イミド樹脂からなるナノファイバーが好ましい。
【0031】
また、有機短繊維(D)の平均繊維長は、600μm以下、さらには、1〜600μmであることが好ましい。有機短繊維(D)が短すぎる場合には、有機短繊維の樹脂に埋まっていない部分にめっきがまとわりつくことによる効果が得られにくい傾向があり、また、長すぎる場合には、有機短繊維の樹脂中への分散が困難になる傾向がある。
【0032】
また、有機短繊維(D)のアスペクト比が、20以上、さらには1000以上で、3000以下であることが好ましい。アスペクト比が小さすぎる場合には、有機短繊維の樹脂に埋まっていない部分にめっきがまとわりつくことによる効果が得られにくい傾向があり、また、大きすぎる場合には、有機短繊維の樹脂中への分散が困難になる傾向がある。
【0033】
有機短繊維(D)の含有割合としては、前記エポキシ樹脂組成物全量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましい。有機短繊維(D)の含有割合が、少なすぎると、有機短繊維の樹脂に埋まっていない部分にめっきがまとわりつくことによる効果が得られにくい傾向があり、多すぎると、有機短繊維の樹脂中への分散が困難になる傾向がある。
【0034】
前記エポキシ樹脂組成物は、上記各種成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、無機充填剤、レベリング剤、消泡剤、難燃剤、カップリング剤等をさらに含有してもよい。
【0035】
無機充填材の具体例としては、例えば、球状シリカや水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの中では、水酸化アルミニウムが、難燃性に優れている点から特に好ましく用いられる。
【0036】
前記エポキシ樹脂組成物は、上記の各種成分を配合し、これをミキサーやブレンダー等で均一に混合することによって、調製することができる。
【0037】
そして、得られたエポキシ樹脂組成物を溶媒に溶解または分散することによりエポキシ樹脂組成物ワニスが調製される。
【0038】
前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
そして、調製された樹脂ワニスをプリプレグを形成するためのシート状基材(プリプレグ形成用基材)に含浸し、これを乾燥機中で150〜180℃、2〜10分間加熱乾燥させることによって、半硬化状態(B−ステージ)のプリプレグを作製することができる。
【0040】
プリプレグ形成用基材の具体例としては、例えば、ガラスクロス、ガラスペーパー、ガラスマット等のガラス繊維布のほか、クラフト紙、リンター紙、天然繊維布、有機繊維布等を用いることができる。
【0041】
このようなプリプレグ形成用基材の厚みとしては、15〜200μm、さらには、15〜100μmであることが適度な剛性を保ちながらプリント配線板の小型及び薄型化を図ることができる点から好ましい。
【0042】
プリプレグ中における樹脂組成物の含有割合としては、35〜80質量%であることが好ましい。
【0043】
このようにして得られたプリプレグは、めっきプロセスによる回路形成方法を用いて外層回路が形成される絶縁体基板として、或いは、内層回路が形成される内層材として好ましく用いられる。
【0044】
本発明のプリプレグを用いた多層回路基板の製造方法を説明する。
【0045】
はじめに、図1Aに示すように、内層回路2aが形成された内層回路基板2の両表面に本実施形態で得られたプリプレグ1を重ねて、加熱加圧成形することによって、多層回路基板3が製造される。このときの加熱加圧成形の条件としては、例えば、温度160〜180℃、型圧1.5〜4.0MPaで30〜120分間の条件が挙げられる。
【0046】
次に図1Bに示すように、多層回路基板3の表面3aを過マンガン酸カリウム等の酸化剤を用いて粗化処理する。この粗化処理は、多層回路基板3の表面3aに形成される無電解めっきとの密着性を高めるために行われる。
【0047】
粗化処理は、例えば、以下に示すような方法により行われる。
【0048】
多層回路基板3を、エチレングリコール水溶液を主成分とするシブレー社製「サーキュポジットMLB211」に浸漬してフェノキシ樹脂(D)を膨潤させる。次に、過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液であるメルテックス社製「エンプレートMLB497」に浸漬する。過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩は塩基性条件において、強い酸化剤として作用するために、上記浸漬により、フェノキシ樹脂(D)が溶解する。そして、更に、硫酸と過酸化水素とを主成分とする水溶液であるメルテックス社製「エンプレートMLB−791M」に浸漬することにより、中和することにより、溶解反応を停止させる。なお、上記それぞれの浸漬の際の溶液温度や浸漬時間、例えば、40〜90℃、1〜30分間の範囲で適宜設定される。
【0049】
次に、図1Cに示すように、粗化処理された多層回路基板3にスルーホール4を形成するための穴4aを形成する。穴あけは、ドリル加工やレーザー加工により行われる。
【0050】
そして、図1Dに示すように、穴あけされた多層回路基板3に、無電解めっき処理する。これにより穴4aの表面が導通化されてスルーホール4が形成される。また、同時に、多層回路基板3の表面に無電解めっき層5が形成される。
【0051】
無電解めっき層5の厚みとしては、0.2〜1μm、更には、0.2〜0.5μm程度であることが好ましい。無電解めっき層5の厚みがこのような範囲である場合には、歩留まりがとくに高くなる点から好ましい。
【0052】
次に、図2Aに示すように、無電解めっき層5上に電解めっき層6を形成する。電解めっき層6の厚みとしては、10〜30μm、更には、15〜25μm程度であることが好ましい。電解めっき層6の厚みがこのような範囲である場合には、特に、歩留まりが高くなる点から好ましい。
【0053】
そして、図2Bに示すように、電解めっき層6上の回路を形成する部分にレジスト7を形成する。そして、図2Cに示すように、エッチングすることによりレジスト7が形成されていない部分の電解めっき層6及び無電解めっき層5を除去する。最後に、図2Dに示すように、レジスト7をアルカリ溶液等により溶解させて除去することにより、外層回路8が形成された多層プリント配線板10が得られる。
【0054】
このようにして得られる多層プリント配線板は、例えば線幅が50μm以下、配線間隔が50μm以下のように高密度な回路を形成する場合であっても、量産時の歩留まりが高いものが得られる。
【0055】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
(実施例1〜6、比較例1)
はじめに本実施例で用いた原材料を以下にまとめて示す。
【0057】
エポキシ樹脂(A)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業株式会社製の1051−75M、エポキシ当量475g/eq
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業株式会社製の850S、エポキシ当量190g/eq
・クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業株式会社製のN−690−75M、エポキシ当量225g/eq
硬化剤(B)
・アミノトリアジンノボラック樹脂:大日本インキ化学工業株式会社製のLA−3018−50P、OH当量151g/eq
硬化促進剤(C)
・2エチル4メチルイミダゾール(2E4MZ−CN)
有機短繊維(D)
・イミド系ナノファイバー:群栄化学工業株式会社製の平均繊維径200nm、平均繊維長250μm、アスペクト比1250のイミド樹脂短繊維
・アラミドナノファイバー:ダイセル化学工業株式会社製のティアラKY−400D、繊維径200〜300nm、繊維長2〜500μm、アスペクト比2000のアラミド樹脂短繊維
・フェノール・ホルムアルデヒド樹脂ファイバー:日本カイノール株式会社製のカイノールKF−02BT、平均繊維径14μm、平均繊維長0.2mm、アスペクト比14
【0058】
<樹脂ワニスの調製>
樹脂ワニスは以下のようにして調製した。
【0059】
表1に示すような各配合組成(質量部)によりエポキシ樹脂成分、硬化剤成分及び硬化促進剤を配合し、ディスパーで1時間攪拌して均一化し、混合物を得た。そして、更に、表1に示すような配合組成(質量部)により有機短繊維を前記混合物に投入した。そして、さらにディスパーで1時間攪拌して、樹脂ワニスを得た。
【0060】
<プリプレグの作製>
調製した樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績(株)製「1035タイプクロス、30μm厚」)に室温にて含浸させた。そして、約130〜170℃で加熱することにより、ワニス中の溶媒を乾燥除去し、樹脂組成物を半硬化させてプリプレグ11を作製した。プリプレグはガラスクロス30質量%、樹脂組成物70質量%になるように調製した。
【0061】
<多層プリント回路基板の作製>
得られたプリプレグ11を用いて、以下のようにして多層プリント回路基板を作製した。
【0062】
図3Aに示すように、内層回路12aが形成された内層回路基板12の両表面にプリプレグ11を重ねて、加熱加圧成形することにより、多層回路基板13を製造した。このときの加熱加圧成形は、型温180℃、型圧30Kgf/cm(約2.9MPa)で60分間の条件で行った。
【0063】
次に、図3Bに示すように、得られた多層回路基板13の表面を粗化処理した。粗化処理は、以下に示すような方法により行った。シブレー社製「サーキュポジットMLB211」の液中に75℃で6分間浸漬し、次に、メルテックス社製「エンプレートMLB497」の液中に80℃で10分間浸漬し、さらに、メルテックス社製「エンプレートMLB−791M」に40℃で5分間浸漬した。
【0064】
そして、図3Cに示すように、粗化処理された多層回路基板13に、無電解銅めっき処理することにより、多層回路基板13の表面に厚み0.5μmの無電解銅めっき層14を形成した。
【0065】
次に、図3Dに示すように、無電解銅めっき層14上に電解銅めっき処理することにより厚み20μmの電解銅めっき層15を形成した。
【0066】
そして、図4Aに示すように、電解めっき層15上の回路を形成する部分をレジスト16で保護した。そして、図4Bに示すように、レジスト16で保護されていない部分の無電解めっき層14及び電解めっき層15をエッチングした。そして、図4Cに示すように、レジスト16をアルカリ溶液で溶解除去することにより、外層回路17が形成された多層プリント配線板20が得られた。なお、外層回路17の回路パターンの形状は、下記のそれぞれの評価方法に応じて異なるものを形成した。
【0067】
このようにして得られた多層プリント配線板20を用いて、下記の評価方法により評価した。
[表面粗度(算術平均粗さRa及び十点平均粗さRz)]
オリンパス社製レーザー顕微鏡「OLS3000」を用い、以下の条件によって各実施例、比較例における粗化処理後の樹脂絶縁層の表面を評価した。
・半導体レーザー:波長408nm
・測定ピッチ:0.1μm
・測定範囲:0.012mm(平面)
[櫛形回路絶縁抵抗値]
正極と負極が25μmの回路間間隔を維持するように形成した線幅25μmの櫛型回路パターンの正極と負極との間の抵抗値を超絶縁抵抗計にて櫛形回路絶縁抵抗値を測定した。
[ピール強度]
線幅10mmの回路を形成し、その回路のピール強度を引張試験機を用いて測定した。測定は5本の回路のピール強度を測定し、その平均値を算出した。
以上の評価項目の評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1からわかるように、平均繊維径500nm以下の有機短繊維(D)を含有する実施例1〜6のプリプレグは、有機短繊維(D)を含有しない比較例1のプリプレグと比較して、櫛形回路絶縁抵抗値が著しく高かった。また、実施例1〜6のプリプレグは、平均繊維径500nmを超える有機短繊維を含有する比較例2のプリプレグと比較すると、低粗度にもかかわらず、ピール強度が高かった。これらのことから、実施例1〜6のプリプレグを用いた場合、プリプレグを硬化させ、その後、粗化処理して得られる絶縁体基材は、その表面粗度が良好なファイン回路形成性を実現できるほど低くても、優れためっき密着性を発揮できる。さらに、エッチングにより形成された回路の周囲にめっきが残ることが少なく、その結果、めっきの残留量のばらつきが抑制され、回路間の絶縁抵抗のばらつきが低下したと考えられる。また、回路間の絶縁抵抗のばらつきが低下したことにより、プリント配線板の歩留まりが低下すると考えられる。
【0070】
また、実施例1〜4と実施例5とを比較することにより、有機短繊維(D)の含有割合が、0.1質量%以上であることが、ピール強度を高める点で好ましいことがわかる。さらに、実施例1〜4と実施例6とを比較することにより、有機短繊維(D)の含有割合が、5質量%以下であることが、櫛形回路絶縁抵抗値を高める点で好ましいことがわかる。従って、有機短繊維(D)の含有割合が、0.1〜5質量%であることが好ましいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る実施形態の多層プリント配線板の製造方法の前半の工程を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係る実施形態の多層プリント配線板の製造方法の後半の工程を示す断面模式図である。
【図3】実施例の多層プリント配線板の製造方法の前半の工程を示す断面模式図である。
【図4】実施例の多層プリント配線板の製造方法の後半の工程を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0072】
1,11 プリプレグ
2,12 内層回路基板 2a,12a 内層回路
3,13 多層回路基板 3a 表面
4 スルーホール 4a 穴
5,14 無電解めっき層 6,15 電解めっき層
7,16 レジスト 8,17 外層回路
10,20 多層プリント配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び平均繊維径500nm以下の有機短繊維(D)を含有するエポキシ樹脂組成物を基材に含浸し、半硬化させて得られることを特徴とするプリプレグ。
【請求項2】
前記有機短繊維(D)が、アラミド樹脂短繊維、又はイミド樹脂短繊維であることを特徴とするプリプレグ。
【請求項3】
前記有機短繊維(D)の平均繊維長が、600μm以下である請求項1又は請求項2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記有機短繊維(D)のアスペクト比が、20以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂組成物全量に対する、前記有機短繊維(D)の含有割合が、0.1〜5質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリプレグと内層回路基板とを積層成形して得られる多層回路基板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリプレグを絶縁層として用いたプリント配線板。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリプレグが最外層に露出するように少なくとも1層の内層回路基板と複数層のプリプレグとを積層した後、加熱加圧することにより積層体を形成する積層工程、前記積層体の表面を粗化する粗化工程、前記粗化された表面に無電解めっきによりめっき層を形成するめっき工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−7406(P2009−7406A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167685(P2007−167685)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】