説明

プリント回路基板構造とその製造方法

【課題】半導体デバイスの発生する熱を効率よく伝導するプリント回路基板構造とその製造方法を提供する。
【解決手段】プリント回路基板は電子部品25の回路中での支持と電子部品とその関連装置から発生する熱を伝導して放熱する。該半導体デバイスを搭載するプリント配線基板は層状構造31を具え、該層状構造は導電層32と絶縁基板33とからなる。導電層は熱伝導性であり、ダイヤモンド状構造の炭素微粉末を分散混合した金属、又は金属もしくはダイヤモンド状構造の炭素微粉末を分散混合した金属表面にダイヤモンド状構造の炭素皮膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板構造及びその製造方法に関し、特に熱伝導材料であって一金属及び一ダイヤモンド状構造の炭素を含み、及びもう一つの熱伝導材料を該ダイヤモンド状構造の炭素と結合して印刷回路基板に用いる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の急速な発展に伴い、電子部品は小体積化・高密度化に向かって発展し、求められる機能も複雑化する中で、電力消費も大幅に増加し、高温の廃熱が生じる。部品に附属した冷却装置で廃熱を排除することはできるが、電子部品を支える印刷回路基板は部品から発生する高温が回路基板中の絶縁層に影響し劣化や捲れを引き起こし、最悪の場合は破損してしまう。よって様々な熱伝導材料で耐熱効率を高めることが試されている。
【0003】
公知技術ではプリント回路基板に使用する材料は多くはガラス繊維シート、亜麻繊維シート及び紙基材といった材料に、樹脂を配合して電子部品の絶縁支持板を形成し、板表面に電気メッキまたは積層銅箔圧着の方法で部品の導電材料として銅箔積層板を形成し、銅箔で覆った表面をエッチングしてプリント回路基板とする。電子デバイスの高密度化と使用環境に対応するため、プリント回路基板は早期の絶縁板材上に単層の銅箔を電気メッキして導電層とした単層板から、多層の銅箔を複数個の絶縁板と結合して構成する多層板へと発展してきた。
【0004】
図1に示す印刷回路基板の製造プロセスのおおまかなフローチャートは、公知技術の一実施例に基づく。図中、S11で基材は公知技術からガラス繊維シート、亜麻繊維シート及びセラミックシートなどの材料とすることができる。S12で前述の基材に樹脂を含浸し、該樹脂は公知技術では一般にエポキシ、フェノール、ポリエステルなど熱硬化性を具えた樹脂であり、前述の基材を成型できるようにして絶縁板の半製品とする。S13では半製品をカットプロセスで所要規格寸法に裁断し、S14では裁断が済んだ絶縁板半製品を焼成炉に送って加熱硬化する。焼成炉は公知技術では一般に水平式または直立式であり、半硬化状態まで絶縁板を加熱する。S15で絶縁板の表面に銅箔膜を多層圧着して導電層を形成する。S16で再度完全硬化状態まで加熱して、公知技術の銅箔積層板を形成する。S17で積層板の銅箔上表面をエッチングして、不要な部分を除去して回路を形成し、電子部品に必要な回路接続を提供する。上述のS11〜S17のプロセスでプリント回路基板を形成する。
【0005】
更に、プリント回路基板の構造とその熱伝導方式について、図2に示すように、公知技術の一実施例では、銅箔膜21から成る導電層を具え、絶縁板22から成る絶縁層を具え、複数個の孔状構造23、放熱フィン24及び複数個の電子部品25を具える。銅箔膜21は、公知技術から分かるように硫酸銅原料から析出し、この銅箔膜21の上表面211に複数個の電子部品25をマウントし、下表面212は絶縁板22が形成する絶縁層に結合するのに用い、この絶縁基板は公知技術から分かるように、一般にはガラス繊維、亜麻繊維シートなどの基材に、図1に示すような公知技術の各種樹脂12などの材料を含浸し、ベーキングして結合する。絶縁板22の表面221はヒートシンク24に接合でき、ヒートシンク24は公知技術でアルミ製である。また複数個の孔状構造23は公知技術によると一般に機械穿孔で銅箔膜21及び絶縁板22を貫通して成形され、銅箔膜21および絶縁板22に垂直である。この複数個の孔状構造23は円柱・中空状を呈し、中空のまま又はネジを挿入して台座に連結して固定することもできる。この複数個の孔状構造23に挿入したネジは、図2に略図を示すように同時に放熱機能も兼ね備える。このため、熱伝導反応は次のようになる。複数個の電子部品25が動作により温度上昇し、一部の廃熱は複数個の電子部品25上端の冷却装置へ吸収排除され、残りの廃熱も銅箔21から絶縁板22へ伝達され、更に絶縁板22のヒートシンク及び複数個の孔状構造23に挿入したネジから放熱して熱伝導の機能を達成している。
【0006】
図2のプリント回路基板は、ヒートシンクを架設する方法で熱伝導を補助できるが、電子装置の軽薄短小化が進む中で、この方法では空間が不足しプリント回路基板そのものの材質の熱伝導の最適化を図り他の冷却装置を必要としないこと、ひいてはプリント回路基板に応用する熱伝導材料の提供が望まれる。
【0007】
また、ダイヤモンドは地球上の材料の中で硬度が最高、熱伝導が最速、光透過波長帯が広く耐蝕性であるといった特性があり、長い期間にわたって工業上の重要な材料であった。熱伝導率は常温で銅の5倍、高温時にはダイヤモンドの赤外線放射も増加し、放熱が速く、熱膨張率は小さい。このため、その冷却効率は高温時により顕著である。またダイヤモンドは熱伝導性が高いという特性は、一般にダイヤモンドの真偽を判定するのに広く用いられている。しかし、天然単結晶ダイヤモンドのコストは非常に高価なため、産業利用のために様々な人造ダイヤモンド製造技術が発展し製造コストを下げてきた。そこで、人造ダイヤモンドは公知技術で様々な製造工程が開発されており、炭水化合物を直接分解する方法が最もよく見られる。マイクロ波プラズマ化学気相成長法(MPCVD)、熱フィラメント化学気相成長法(HFCVD)といった方法で、多結晶ダイヤモンド膜を堆積でき、この多結晶ダイヤモンド膜は天然単結晶ダイヤモンドと同じ物理特性を具える。これによりダイヤモンドを広く各種産業に利用できるようになった。
【特許文献1】特開2006−5039号公報
【特許文献2】特開2004−104148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
公知の電子デバイスの廃熱排除は効率増進に問題があるため、電子デバイスの小体積化、密集化、高機能化への発展に対応して向上させるために、プリント回路基板構造に応用する一種の熱伝導材料とその製造方法を提供し、電子部品の動作で発生する廃熱を大幅に削減し、プリント回路基板本体の耐熱機能も向上させることを課題とする。プリント回路基板表面に各種冷却装置や冷却物質を接合して体積を縮小して限りある空間を無駄にすることがなく、高温によるプリント回路基板の絶縁層の材質劣化や電子部品マウントの能力低下を排除する。このほか、本発明が提供する熱伝導材料はプリント回路基板の使用だけに限定されず、他の関連熱伝導設備装置への応用も含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
プリント回路基板は電子部品の回路中での支持と電子部品とその関連装置から発生する熱の伝導に用い、層状構造を具える。層状構造は少なくとも一つの導電層と一つの絶縁層を具え、導電層は熱伝導性材料であり、且つ金属とダイヤモンド状構造の炭素を含む。このほか、絶縁層はダイヤモンド状構造の炭素を結合したもう一つの熱伝導材料である。ダイヤモンド状構造の炭素は高い熱伝導率特性を具えて熱伝導材料の熱伝導効率を向上させる。
【0010】
熱伝導材料の製造方法は化学気相成長法、物理気相成長法、電気メッキ、またはその他の材料製造方法とすることができ、且つダイヤモンド状構造の炭素で金属表面を覆っても、金属材料中に直接混入してもよい。
【発明の効果】
【0011】
プリント回路基板本体の放熱機能により、電子部品の動作で発生する廃熱を大幅に削減し、プリント回路基板本体の耐熱機能も向上する。公知技術のようにプリント回路基板表面に各種冷却装置や冷却物質を接合して、限りある空間を無駄にすることがなく、高温によるプリント回路基板の絶縁層の材質劣化や電子部品マウントの能力低下を排除できる。このほか、本発明が提供する熱伝導材料はプリント回路基板の使用だけに限定されず、他の関連熱伝導設備装置への応用もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図3に示すように、本発明の一実施例のプリント回路基板の構造では、プリント回路基板は層状構造31を具え、層状構造には少なくとも一つの導電層32及び一つの絶縁層33を具える。導電層32は、上表面321を備えて図2で延べた複数個の電子部品25を搭載できるようにし、導電層32の上表面321に対応して下表面322を備えて絶縁層33に接合する。ここで、本発明の導電層32とする熱伝導材料は一結合方法で金属とダイヤモンド状構造の炭素を結合して成り、絶縁層33とするもう一つの熱伝導材料はダイヤモンド状構造の炭素から成り、上述の熱伝導材料によってプリント回路基板構造を形成する。
【0013】
図4に示すように、図3のプリント回路基板の導電層32の射出成形で第一製造工程を形成する。この方法は原料供給装置41、原料射出装置42及び金型43を具える。原料が原料射出装置42から金型43に形成した導電層32形状のキャビティ44に注入されて成型される。原料を図3に示す導電層32に形成し、且つ導電層32が上表面321と対応した下表面322を具えるようにする。原料は、金属とダイヤモンド状構造の炭素微粉末を均一に混合分散した溶融材料からなる。金属は、銅またはアルミまたは他の熱伝導率が高い金属またはその結合材質とする。ダイヤモンド状構造の炭素の融点は前述のいずれの金属の融点よりも高いこととし、これによりいずれかと結合して一つの原料とすることができる。
【0014】
図5に示すように、本発明の一実施例の層状構造31の結合方法は、圧着を行える工具装置51、図3に示す絶縁層33を製造する可動側型板52、固定側型板53を具える。図では図4に示す金型43の片側を取り外し、キャビティ44で図3に示す導電層32形状に成型した下表面322を露出し、固定側型板53を図4に示す金型43に接合し、圧着工具装置51で高圧をかけて可動側型板52中の既に成型した図3に述べた絶縁層33を図中の矢印方向に加圧して導電層32に圧着結合して、図3に示す層状構造31を完成する。
【0015】
図3に示すプリント回路基板構造の導電層32を構成する熱伝導材料は、ダイヤモンド状構造の炭素を含み、化学気相成長法または物理気相成長法を利用して金属表面に形成して第一製造工程とする。図6に示すように、マイクロ波プラズマ化学気相成長法は本発明の一実施例の放熱構造の製造方法である。この実施例では、反応プロセスは、反応させたい混合気体を気体送入口61から気体反応室66へ進入させる。同時にマイクロ波発生システム62でマイクロ波を発生させ、これにより混合気体に活性反応性イオンを発生させて反応を行い、支持台64上の金属材料65の表面に堆積させてダイヤモンド膜を形成する。金属材料65は、図4に示す方法で成型した導電層32とすることができ、導電層は銅、アルミ、または他の熱伝導率の高い金属またはその結合材質とすることができる。余剰の気体は排気口63から排出される。この反応プロセスによって表面をダイヤモンドで覆った熱伝導材料が得られる。
【0016】
このほか、本発明の一実施例で図3に示すプリント回路基板構造の絶縁層の製造方法は、ダイヤモンド状構造の炭素を結合したもう一つの熱伝導材料である。製造方法を以下に説明する。図7に示すように、第二製造工程である絶縁層の製造方法は、まず絶縁層33を形成するS71で基材となる原料を必要とする構成に従って混合し、原料は公知技術のようにケイ砂、石灰石、ホウ酸などの原料でガラス基材を構成するかまたは粘土、ケイ石、長石などでセラミック基材を構成する原料とするか、又は、図3に示す絶縁層33基材の構成に用いることができるその他の原料を含む。S72で、混合後の原料を高温の溶融炉に送り溶融し、これと同時にダイヤモンドをダイヤモンド状構造の炭素材料として高温の溶融炉に入れ前述の既に溶融した基材と混合する。S73で、溶融したスラリーを特殊合金で製造した図5に示すような可動側型板52と、周囲を形成し同様に特殊合金で製造した図4に示すような固定側型板53に注入し、成型し温度を下げて固化する。
或いは上述の製造ステップS71〜S73によって得られた熱伝導材料からなる節絶縁層上に、図6に示す工程によりダイヤモンドで覆ったもう一つの熱伝導材料で構成する絶縁層33を得る。
【0017】
最後に、図5に示す結合方法で、図4に示す第一製造工程で得られた熱伝導材料で形成した導電層32と図7に示す第二製造工程で得られたもう一つの熱伝導材料で形成した絶縁層33を、相互に結合して図3に示す層状構造31で構成するプリント回路基板を得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】公知の一般的なプリント回路基板製造のおおまかなフロー図である。
【図2】公知のプリント回路基板構造の断面図及びその熱伝導の略図である。
【図3】本発明の一実施例のプリント回路基板構造の略図である。
【図4】本発明の一実施例のプリント回路基板構造の導電層射出成型方法で形成する第一製造工程の略図である。
【図5】本発明の一実施例の層状構造の結合方法の略図である。
【図6】本発明の一実施例のマイクロ波プラズマ化学気相成長法の略図である。
【図7】本発明の一実施例の絶縁層の製造方法で形成する第二製造工程概要フロー図である。
【符号の説明】
【0019】
1 プリント回路基板製造過程の大まかなフロー図
S11〜S17 プリント回路基板製造ステップの説明
2 プリント回路基板を例とした構造断面及びその熱伝導略図
21 銅箔膜
211 上表面
212 下表面
22 絶縁板
23 複数個の孔状構造
24 ヒートシンク
25 複数個の電子部品
3 本発明の一実施例のプリント回路基板構造の略図
31 層状構造
32 導電層
321 上表面
322 下表面
33 絶縁層
4 本発明の一実施例のプリント回路基板構造の導電層射出成型方式で形成する第一製造工程の略図
41 原料供給装置
42 原料射出装置
43 金型
32 導電層
321 上表面
322 下表面
44 キャビティ
5 本発明の一実施例の層状構造結合方法の略図
51 圧着工具装置
52 可動側型板
53 固定側型板
31 層状構造
32 導電層
322 下表面
33 絶縁層
43 金型
44 キャビティ
6 本発明の一実施例のマイクロ波プラズマ化学気相成長法の略図
61 気体送入口
62 マイクロ波発生システム
63 排気口
64 支持台
65 金属材料
66 気体反応室
7 本発明の一実施例の絶縁層製造方法で形成する第二製造工程の概要フロー図
S71〜S73 絶縁層製造フローの説明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスを搭載するプリント回路基板であって、
該基板は層状構造を具え、該層状構造は少なくとも一つの導電層及び一つの絶縁層を接合してなると共に、且つ該導電層は、ダイヤモンド状構造の炭素微粉末を分散混合した金属、又は金属若しくはダイヤモンド状構造の炭素微粉末を分散混合した金属にダイヤモンド状構造の炭素皮膜を形成してなる、
ことを特徴とするプリント回路基板構造。
【請求項2】
該絶縁層は、ダイヤモンド状構造の炭素を微粉末を分散混合した熱伝導材料からなることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板構造。
【請求項3】
該導電層は、該ダイヤモンド状構造の炭素を該金属表面に薄膜形成してなることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板構造。
【請求項4】
該導電層は、ダイヤモンド状構造の炭素微粉末を分散混合した金属からなることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板構造。
【請求項5】
該金属は、銅材質であることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板構造。
【請求項6】
該金属は、アルミ材質であることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板構造。
【請求項7】
該金属は、高熱伝導率の金属材質であることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板構造。
【請求項8】
該ダイヤモンド状構造の炭素は、ダイヤモンドであることを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板構造。
【請求項9】
半導体デバイスを搭載するプリント回路基板の製造方法であって、
第一工程において、ダイヤモンド状構造の炭素微粉末を分散混合した金属、又は金属若しくはダイヤモンド状構造の炭素微粉末を分散混合した金属にダイヤモンド状構造の炭素皮膜を形成して導電層を形成し、
第二工程において、別途形成した絶縁層と該導電層とを結合して、
導電層と絶縁層とからなる層状構造を構成することを特徴とするプリント回路基板構造の製造方法。
【請求項10】
第二工程において形成する該絶縁層は、ダイヤモンド状構造の炭素を混合した熱伝導材料であることを特徴とする請求項9記載のプリント回路基板構造の製造方法。
【請求項11】
該導電層形成工程において、該ダイヤモンド状構造の炭素薄膜を該金属表面に形成することを特徴とする請求項9記載の印刷回路基板構造の製造方法。
【請求項12】
該導電層形成工程において、該ダイヤモンド状構造の炭素微粉末を溶融金属内に分散混合することを特徴とする請求項9記載の印刷回路基板構造の製造方法。
【請求項13】
上記金属が銅材質であることを特徴とする請求項9記載の印刷回路基板構造の製造方法。
【請求項14】
上記金属がアルミ材質であることを特徴とする請求項9記載の印刷回路基板構造の製造方法。
【請求項15】
上記金属が高熱伝導率の金属材質であることを特徴とする請求項9記載の印刷回路基板構造の製造方法。
【請求項16】
該ダイヤモンド状構造の炭素がダイヤモンドであることを特徴とする請求項9記載の印刷回路基板構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−245575(P2006−245575A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51276(P2006−51276)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(500035904)神基科技股▲ふん▼有限公司 (44)
【Fターム(参考)】