説明

プリント配線板及びその製造方法

【課題】 大電流に対応できると共に、軽量化及び高放熱性を実現できるプリント配線板、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 電子部品などを実装するための回路パターン2(アルミニウムパターン11A、12A、銅パターン17A)が導体に形成されるプリント配線板10であって、導体としてのアルミニウム板11、12が、絶縁機能を含む接着剤であるプリプレグ13にて相互に接着されて積層され、このアルミニウム板の表面にアルミニウム表面処理が施されて、亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜6が形成され、この銅メッキ皮膜上に前処理及び化学銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜17、スルーホールメッキ20が形成され、この電気銅メッキ皮膜17、上記積層皮膜6及び上記アルミニウム板11、12に前記回路パターン2が形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムを導体としたプリント配線板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム板を使用したプリント配線板には、アルミニウム板上に、一般の片側または両側に導体層を有するプリント配線板を接着して積層したメタルベースプリント配線板や、アルミニウム板を両側の導体層の間に接着して積層した3層構造のメタルコアプリント配線板(特許文献1)が実用化されている。これらのプリント配線板は、放熱の目的でアルミニウム板を用いているが、導体としては銅が使用されている。また、最近では、アルミニウムと銅のクラッド材料を用いたメタルベースプリント配線板が提案されているが高価格である。
【0003】
【特許文献1】特開平9−18140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリント配線板の主導体材料は何十年も前から銅箔に限られてきた。最近、大電流・高放熱が要求されるプリント配線板の主導体として、200〜500μmの厚銅板が用いられたものがある。しかし、厚銅を主導体としたプリント配線板は高重量となり、特に軽量化が要求されるハイブリット自動車や燃料電池自動車等ではプリント配線板の軽量化が望まれている。また、放熱のために用いられたアルミニウム板は、高温環境下では、主導体である銅板との線膨張係数の違いから接着のための絶縁層で剥離が生じ、十分な信頼性が確保できないのが現状である。
【0005】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、大電流に対応できると共に、軽量化及び高放熱性を実現できるプリント配線板、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るプリント配線板は、電子部品などを実装するための回路パターンが導体に形成されるプリント配線板であって、導体または/及び放熱体としてのアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて相互に接着され積層されたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明に係るプリント配線板は、請求項1に記載の発明において、上記導体であるアルミニウム板の表面にアルミニウム表面処理が施されて、亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜が形成され、この銅メッキ皮膜上に前処理及び化学銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜が形成され、この電気銅メッキ皮膜、上記積層皮膜及び上記アルミニウム板に回路パターンが形成されたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明に係るプリント配線板は、請求項1または2に記載の発明において、上記導体である複数枚のアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され、これらのアルミニウム板にスルーホールが形成される場合、このスルーホール内表面にアルミニウム表面処理が施されて、このスルーホール内表面に亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜が形成され、上記銅メッキ皮膜及びスルーホール内の絶縁機能を含む接着剤側面上に、前処理及び化学銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜がスルーホールメッキとして形成されて、導体である複数枚の上記アルミニウム板が電気的に接続されたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明に係るプリント配線板は、請求項1または2に記載の発明において、上記導体である複数枚のアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され、これらのアルミニウム板にスルーホールが形成される場合、このスルーホール内表面にアルミニウム表面処理が施されて、このスルーホール内表面に亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜が形成され、このスルーホール内表面に導電性樹脂が充填されて、導体である複数枚の上記アルミニウム板が電気的に接続されたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載の発明に係るプリント配線板は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、導体としてのアルミニウム板に、放熱体としてのアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され積層されたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に記載の発明に係るプリント配線板は、請求項5に記載の発明において、導体としての複数枚のアルミニウム板間に、放熱体としてのアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着されて積層され、これらのアルミニウム板を貫通するスルーホールにより電気的接続穴及び絶縁穴が形成される場合、上記絶縁穴を形成する上記スルーホールの内表面の全域、または上記スルーホールの内表面のうち放熱体としてのアルミニウム板部分に絶縁樹脂が施され、この絶縁樹脂上にスルーホールメッキが形成されて、導体としての上記アルミニウム板が電気的に接続されたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項7に記載の発明に係るプリント配線板は、請求項5に記載の発明において、導体としての複数枚のアルミニウム板間に、放熱体としてのアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され積層され、これらのアルミニウム板を貫通するスルーホールにより電気的接続穴及び絶縁穴が形成される場合、上記絶縁穴を形成する上記スルーホールの内表面の全域、または上記スルーホールの内表面のうち放熱体としてのアルミニウム板部分に絶縁樹脂が施され、このスルーホール内に導電性樹脂が充填されて、導体としての上記アルミニウム板が電気的に接続されたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項8に記載の発明に係るプリント配線板は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、導体または放熱体としてのアルミニウム板を接着する接着剤に、無機系フィラーが含有されたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項9に記載の発明に係るプリント配線板は、請求項6または7に記載の発明において、上記絶縁穴を形成するためのスルーホールに施される絶縁樹脂に無機系フィラーが含有されたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項10に記載の発明に係るプリント配線板の製造方法は、アルミニウム板の表面にアルミニウム表面処理を施して亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜を形成し、この銅メッキ皮膜上に前処理及び化学銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜を形成し、主導体としての上記アルミニウム板と、副導体としての上記積層皮膜及び上記電気銅メッキ皮膜とに回路パターンを形成して、プリント配線板を製造するプリント配線板の製造方法であって、上記副導体と上記主導体とにそれぞれ適したエッチング液を用いて、これらの副導体と主導体とを別々に順次選択してエッチングし、上記回路パターンを形成することを特徴とするものである。
【0016】
請求項11に記載の発明に係るプリント配線板の製造方法は、請求項10に記載の発明において、上記回路パターンを形成するために副導体をエッチングするエッチング液として、主導体にエッチング作用を及ぼすことがない過酸化水素―硫酸系のエッチング液を用いることを特徴とするものである。
【0017】
請求項12に記載の発明に係るプリント配線板の製造方法は、請求項10または11に記載の発明において、上記回路パターンを形成するために主導体をエッチングするエッチング液として、副導体にエッチング作用を及ぼすことがない塩化第2鉄系、塩化第2銅系またはリン酸系のエッチング液を用いることを特徴とするものである。
【0018】
請求項13に記載の発明に係るプリント配線板の製造方法は、請求項10乃至13のいずれかに記載の発明において、上記副導体に、レジストパターンが形成された副導体用エッチングレジストを用いて回路パターンを形成した後、この副導体用エッチングレジストを除去し、この副導体用エッチングレジストのレジストパターンにおけるパターン幅よりも、主導体の厚さに対応して広く設定されたパターン幅を有するレジストパターンを備えた主導体用エッチングレジストを用いて、上記主導体にエッチングを施し、この主導体に回路パターンを形成することを特徴とするものである。
【0019】
請求項14に記載の発明に係るプリント配線板の製造方法は、請求項13に記載の発明において、上記副導体をエッチングし、主導体をエッチングして回路パターンを形成した後、副導体の回路パターンが主導体の回路パターンよりも幅方向に突出した部分を、副導体に適したエッチング液を用いてバックエッチ処理することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、導体としてアルミニウム板が用いられたことから、導体として銅が用いられる場合に比べ、プリント配線板の軽量化及び高放熱性を実現できる。
【0021】
また、導体または放熱体としてのアルミニウム板が接着剤にて相互に接着されて積層され、その際、接着剤に接着されるアルミニウム板の表面を鏡面状態に維持できる。高周波領域での電気信号は、主に、導体の中心部ではなく、その表面に伝播するので、鏡面状態のアルミニウム板の表面を高速で伝播できる。この結果、高周波領域の信号を良好に高速伝播できる。
【0022】
また、導体または放熱体として、同一材料のアルミニウム板が接着剤により接着されることから、接着剤を介して接着される両部材が、線膨張係数の相違から接着剤に対し剥離することを防止できるので、プリント配線板の信頼性を確保できる。
【0023】
更に、アルミニウム板が導体として構成されたことから、アルミニウム線を導体に直接ボンディングすることができる。同様に、アルミニウム板が導体として構成されたことから、この導体の表面をアルミニウムの酸化膜により保護でき、導体表面の劣化を防止できる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、アルミニウム板の表面に亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜が形成され、この銅メッキ皮膜上に前処理及び化学銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜が形成されたことから、アルミニウム板を主導体、上記積層皮膜及び電気銅メッキ皮膜を副導体とする導体構造のプリント配線板を実現することができる。
【0025】
また、主導体であるアルミニウム板上に副導体である積層皮膜及び電気銅メッキ皮膜が配置されたため、平面配線部の表面金属をアルミニウムまたは銅に選択できる。このため、平面配線部のハンダ付け実装部は表面に銅を露出させ、ボンディング実装部は表面にアルミニウムを露出させることで、実装方法の選択幅を拡大できる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、導体である複数枚のアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され、これらのアルミニウム板にスルーホールが形成される場合にも、このスルーホール内表面の接着剤上に電気銅メッキ皮膜を施すことができる。このため、この電気銅メッキ皮膜により構成されるスルーホールメッキによって、導体である複数枚のアルミニウム板を電気的に接続することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、アルミニウム表面処理を施したスルーホール内表面に導電性樹脂を充填することで、スルーホールメッキに代えて、上記導電性樹脂により、導体である複数枚のアルミニウム板を電気的に接続することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、導体としてのアルミニウム板が回路パターン形成のためにエッチングされてその表面積が減少し、その放熱特性が低下する場合にも、この導体としてのアルミニウム板に、放熱体としてのアルミニウム板が積層されることで、プリント配線板の放熱性能を向上させることができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、絶縁穴を形成するスルーホールの内表面の全域、またはスルーホールの内表面のうち放熱体としてのアルミニウム板部分に絶縁樹脂が施され、この絶縁樹脂上にスルーホールメッキが形成されたことから、導体としてのアルミニウム板がスルーホールメッキにより電気的に接続されると共に、放熱体としてのアルミニウム板を導体としてのアルミニウム板に対し絶縁状態に保持することができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、絶縁穴を形成するスルーホールの内表面の全域、またはスルーホールの内表面のうち放熱体としてのアルミニウム板部分に絶縁樹脂が施され、このスルーホール内に導電性樹脂が充填されたことから、導体としてのアルミニウム板がこの導電性樹脂により電気的に接続されると共に、放熱体としてのアルミニウム板を導体としてのアルミニウム板に対し絶縁状態に保持することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、導体または放熱体としてのアルミニウム板を接着する接着剤に無機系フィラーが含有されたことから、この無機系フィラーによってアルミニウム板間の熱伝導率が良好となり、プリント配線板の放熱特性を向上させることができる。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、絶縁穴を形成するためのスルーホールに施される絶縁樹脂に無機系フィラーが含有されたことから、この無機系フィラーによって、当該無機系フィラーを含有する絶縁樹脂と放熱体としてのアルミニウム板との間の熱伝導率が向上し、プリント配線板の放熱特性を向上させることができる。
【0033】
請求項10、11または12に記載の発明によれば、主導体としてのアルミニウム板と、副導体としての亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜、銅メッキ皮膜及び電気銅メッキ皮膜とにそれぞれ適したエッチング液を用いて、これらの副導体と主導体とを別々に順次選択してエッチングし、回路パターンを形成することから、これらの主導体及び副導体に高精度な回路パターンを形成することができる。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、主導体にエッチングを施して、この主導体に回路パターンを形成する際に、主導体用エッチングレジストのレジストパターンにおけるパターン幅が、副導体用エッチングレジストのレジストパターンにおけるパターン幅よりも、主導体の厚さに対応して広く設定されたことから、主導体(アルミニウム板)のエッチング時におけるサイドエッチ量を低減できる。この結果、主導体及び副導体からなり、回路パターンが形成された導体表面の機械的強度及び安定性を確保することができる。
【0035】
請求項14に記載の発明によれば、副導体をエッチングした後、主導体をエッチングして回路パターンを形成すると、主導体のサイドエッチのために、副導体の回路パターンが主導体の回路パターンよりも幅方向に突出するが、この突出した部分をバックエッチ処理することで、回路パターンを含む導体表面の機械的強度及び安定性を更に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0037】
[A]第1の実施の形態(図1〜図7)
図1は、本発明に係るプリント配線板における第1の実施の形態を示す断面図である。この図1に示すプリント配線板10は、図示しない電子部品などを実装するための回路パターン2(後述のアルミニウムパターン11A、12A及び銅パターン17A)を有し、このアルミニウムパターン11A、12Aが主導体であるアルミニウム板11、12にそれぞれ形成され、銅パターン17Aが副導体4である亜鉛置換皮膜14(図2)、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17に形成されたものである。
【0038】
ここで、上記亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15及び銅メッキ皮膜16は、後述のアルミニウム表面処理にてアルミニウム板11、12の表面に形成された積層皮膜6である。この積層皮膜6及びスルーホール内の絶縁機能を含む接着剤側面上に、後述の前処理、化学銅メッキ(無電解銅メッキ)などを経て電気銅メッキ皮膜17が形成される。
【0039】
上記アルミニウム板11及び12は、導体及び放熱体として機能し、絶縁機能を有する接着剤としてのプリプレグ13により相互に接着されて積層される。これらのアルミニウム板11、12及びプリプレグ13を貫通するスルーホール5内のアルミニウム板11、12表面にも、上記亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15及び銅メッキ皮膜16が前述と同様にして順次形成される。さらに、スルーホール5内のアルミニウム板11、12表面及び絶縁機能を含む接着剤(プリプレグ13)の側面に電気銅メッキ17が形成され、この電気銅メッキ皮膜17によりスルーホールメッキ20が構成される。このスルーホールメッキ20により、プリプレグ13の両側のアルミニウム板11とアルミニウム板12とが電気的に接続される。
【0040】
上記アルミニウムパターン11A、12A、銅パターン17A及びスルーホールメッキ20はソルダーレジスト絶縁皮膜19により被覆されて保護されるが、このうちスルーホールメッキ20を除く平面配線部23には、ソルダーレジスト絶縁皮膜19が部分的に除去されたアルミニウム露出部21、銅露出部22が設けられる。アルミニウム露出部21は、アルミニウム線を直接ボンディングするためのボンディング実装部となり、銅露出部22は、電子部品等をハンダなどにより実装するためのハンダ付け実装部となる。尚、ソルダーレジスト絶縁皮膜19の部分的除去は、例えばソルダーレジスト絶縁皮膜19がネガ型の露光現像型の場合には、光を照射し現像することで実施される。
【0041】
ところで、アルミニウム材料には、純アルミニウム系、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系がある。どの種類を選ぶかは製品の必要とする特性と使用する目的に合わせ選択するのが一般的である。
【0042】
本実施形態では、低抵抗の導体であること、放熱性が優れること、積層板とした場合に接着樹脂との接着性に優れること、アルミニウムの表面処理が容易であること、回路パターン形成のエッチングにバラツキが少ないこと、などの特性を有するアルミニウムをアルミニウム板11及び12として選択する必要がある。
【0043】
アルミニウムは、高強度合金としてはJIS5052などのAl−Mg系が知られているが、熱伝導性、電気伝導性が求められる用途には不向きである。本実施形態では、アルミニウムはAl−Mg−Si系熱処理合金、例えば昭和アルミニウム株式会社製の特殊合金箔を使用する。このアルミニウム板11及び12を構成するアルミニウムは、図16に示すように、JIS5052と同等の引張り強度を有し、熱伝導性も最も優れる純アルミニウムに匹敵し、アルマイト処理も可能な材料である。
【0044】
また、一般のアルミニウム板(箔)の表面粗さRaは、圧延方向が0.5〜0.8μm、幅方向が0.1〜0.3μmである。本実施形態で使用されるアルミニウム板11及び12の表面粗さRaは、圧延後に研磨することにより、圧延方向および幅方向とも0.03〜0.05μmである。
【0045】
また、絶縁機能を有する接着剤には、ガラス基布材にエポキシ樹脂を含浸したガラスエポキシ樹脂プリプレグ、エポキシ樹脂接着シート、イミド変性エポキシ樹脂接着シートなどがある。本実施形態では、プリント配線板10の両側にアルミニウム板11、12がそれぞれ配置された場合、これらのアルミニウム板11、12への回路パターン2(アルミニウムパターン11A、12A)形成後のプリント配線板10の強度を確保するために、松下電工株式会社製のガラス布基材エポキシ樹脂多層プリント配線板R−1661JMタイプの厚さ0.18mmプリプレグ13を3枚使用する。また、当該絶縁機能を有する接着剤として、シリカまたはアルミナ等の無機系フィラーをエポキシ樹脂に混入して、アルミニウム板11と12間の熱伝導率を高め、放熱特性を高めてもよい。
【0046】
次に、アルミニウム導体プリント配線板の製造方法を、図7及び図2〜図6を用いて説明する。
【0047】
図2(A)に示すように、アルミニウム板11、12の材料となる厚さ0.5mmの特殊合金箔2枚と、厚さ0.18mmのプリプレグ13を3枚準備し、これら3枚のプリプレグ13を重ね合せ、その両側にアルミニウム板11、12をそれぞれ接触させ、熱プレスにより積層接着を行なって、アルミニウム導体積層板24を形成する(図7のS1)。
【0048】
次に、図2(B)に示すように、スルーホール接続が必要な部位に穴明け加工を行ない(S2)、その後、アルミニウムの表面処理を行なう(S3)。このアルミニウムの表面処理方法としては、一般的であるアルカリ脱脂、ソフトエッチング、酸浸漬、2重亜鉛置換の前処理を行なって、まず0.1μmの亜鉛置換皮膜14をアルミニウム板11、12上に形成する。その後、この亜鉛置換皮膜14上にニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16を順次積層メッキする。
【0049】
この金属皮膜15、16の形成方法としては、まず、電気ニッケルのスルファミン酸ストライク浴により、ピンホールの無い、厚さ0.15〜0.25μmの均一で薄いニッケルメッキ皮膜15を形成する。そして、このニッケルメッキ皮膜15の表面に、ピロリン酸銅浴より浴管理や公害対策が容易で、析出物の結晶が緻密で伸びが大きく、内部応力が小さく、均一な電着性のある硫酸銅浴による電気メッキにて、厚さ3〜5μmの銅メッキ皮膜16を形成する。
【0050】
次に、図3(A)に示すように、亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16が形成されたアルミニウム板11、12及びスルーホール内の絶縁機能を含む接着剤側面(プリプレグ13)上に電気銅メッキ皮膜17及びスルーホールメッキ20を施し(S4)、ドライフイルム18にドライフイルムレジストパターン18Aを形成し(S5)、選択エッチングを行なって銅パターン17Aを形成する(S6)。
【0051】
上記電気銅メッキ皮膜17及びスルーホールメッキ20は、銅メッキ皮膜16の酸化膜を除去する前処理、触媒活性化処理、化学銅メッキ(無電解銅メッキ)を順次実施した後に、硫酸銅浴による電気メッキにて、厚さ30〜35μmの銅の皮膜として形成される。
【0052】
この電気銅メッキ皮膜17の表面をバフ研磨し、80℃で10分間乾燥し、この電気銅メッキ皮膜17の表面にドライフィルム18、例えば東京応化工業株式会社製のドライフイルム オーディルAF250を厚さ50μm、温度105℃でラミネートする。そして、このドライフィルム18を、ネガフイルム(不図示)を介して、3KWの紫外線硬化炉において紫外線量90mJ/cmで露光し、30℃、1%の炭酸ソーダで現像し、ベーキングを150℃で30分間行なって、導体エッチング用のドライフイルムレジストパターン18Aをドライフィルム18に形成する。
【0053】
上記選択エッチングは、副導体4(亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17)と、主導体3(アルミニウム板11及び12)とを、それぞれに適する異なったエッチング液を使用して別々に順次選択して、銅パターン17A、アルミニウムパターン11A、12Aを形成するエッチングである。図7のステップS6では、ドライフイルムレジストパターン18Aを用いて、アルミニウム板11、12上の亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17を選択的にエッチングする。
【0054】
アルミニウム板11、12をエッチングすることなく、亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17を選択的にエッチングするために適するエッチング液としては、過酸化水素と硫酸との混合液である過酸化水素―硫酸系のエッチング液を使用する。このエッチング液の銅に対するエッチングスピードは、塩化第二鉄系の20μm/分と比較して5μm/分と遅いが、安定であり最適である。純水60w%、35%の過酸化水素16w%、62.5%の硫酸22.2w%、過酸化水素の安定化添加剤1w%の組成のエッチング液を作成する。ドライフイルムレジストパターン18Aが形成されたドライフイルム18をマスクにし、液温30℃の上記エッチング液を用い、8分間のスプレイエッチングによって銅パターン17Aを形成する。
【0055】
上述の亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17の選択エッチング後に、アルミニウム板11及び12を選択エッチングして、図3(B)に示すように、アルミニウムパターン11A、12Aを形成する(S7)。
【0056】
副導体4(亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17)をエッチングすることなく、主導体3(アルミニウム板11及び12)を選択的にエッチングするに適したエッチング液として、低濃度塩化第2鉄系、低濃度塩化第2銅系、またはリン酸系のエッチング液を使用する。上記低濃度は50%以下の濃度であり、この低濃度塩化第2鉄系または低濃度塩化第2銅系のエッチング液を用いることで、銅に対するエッチング速度を大幅に低下させて、アルミニウムを選択的にエッチングできる。
【0057】
図17は、アルミニウムをエッチングするためのエッチング液として40Be塩化第2鉄を用い、液量20リットル、初期の液温度39℃で、スプレイ型の実験装置を用い、寸法25cm×33cmで、アルミニウム板11及び12の板厚0.5mm、アルミニウム残存面積73%のアルミニウム導体積層板24をエッチングした結果である。この図17から、40Be塩化第2鉄を用いる場合には、濃度50%のものが好適であることがわかる。
【0058】
次に、図4及び図7に示すように、ドライフイルム18を剥離し(S8)、ソルダーレジスト絶縁皮膜19を形成する(S9)。
【0059】
ドライフイルム18は、例えば4%の水酸化ナトリウム(液温40℃)を2分間スプレイして剥離する。
【0060】
ソルダーレジスト絶縁皮膜19の形成は、例えばサンワ化学工業株式会社製の紫外線後硬化型一液性ソルダーレジストSPSR−700C−1緑色、粘度130ps(at25℃)を、目標45μmの膜厚で2回スプレイコーティングし、その後に80℃で60分間予備乾燥する。この予備乾燥したソルダーレジストを紫外線量700mJ/cmで露光し、30℃、1%の炭酸ソーダ液で現像し、超高圧水銀ランプ80W/cm×3本、2.5m/分で紫外線ベーキングを行なって、ソルダーレジスト絶縁皮膜19を形成する。
【0061】
膜厚45μmのソルダーレジストのコーティングを2回行なうことにより、予備乾燥前の平均膜厚が87μmであり、紫外線ベーキング後の膜厚は、導体表面28が平均51μm、樹脂表面29が平均73μm、エッジ面25が最小9μm、導体側面30が最小で15μmのソルダーレジスト絶縁皮膜19を形成する。
【0062】
ところで、図7のステップS6で銅パターン17Aを形成する際に用いたドライフィルム18を使用して、ステップS7のアルミニウムパターン11A及び12Aを形成すると、図6に詳細に示すように、主導体3であるアルミニウム導体(アルミニウム板11及び12)がサイドエッチによりテパー状になり、副導体4であるニッケルー銅導体(亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜)の両端が少し浮きアンダーカット状態になってしまう。このサイドエッチ量は図18(実施例1参照)に示すように、アルミニウム板11及び12の厚さの約75〜82%である。また、上記ニッケルー銅導体のアンダーカット量は、図18に示すように0.1〜0.3mm発生している。このアルミニウム板11及び12のサイドエッチによる上記ニッケルー銅導体のアンダーカットのために、プリント配線板10の導体表面に機械的な強度および安定性を得ることができない恐れがある。また、ソルダーレジスト絶縁皮膜19のコーティングにおいて、電気的絶縁性を保つための膜厚が、特にエッジ面25(図4)で確保できない恐れがある。
【0063】
そこで、図3(A)に示す亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17(つまり、副導体4;ニッケル-銅導体)を選択エッチングして銅パターン17Aを形成した後、この副導体用エッチングレジストであるドライフィルム18を剥離する(図7のS6‐1)。そして、再度ドライフィルムをラミネートし、図3(A)のドライフィルム18の加工方法で、図5(A)に示すように、ドライフィルムレジストパターン26Aを備えたドライフィルム26を形成する。(図7のS6‐2)。
【0064】
このとき、露光に使用されるネガフィルム(不図示)のパターン幅は、アルミニウム板11、12の板厚分広く設定されたものを用いて露光し現像する。従って、主導体用エッチングレジストであるドライフィルム26のドライフィルムレジストパターン26Aは、銅パターン17Aを形成するための前記ドライフィルム18のドライフィルムレジストパターン18Aにおけるパターン幅18B(図6)よりも、アルミニウム板11及び12の板厚tだけ両側に広く設定されたパターン幅26Bを有する。
【0065】
次に、図5(B)に示すように、図3(B)と同様な方法でアルミニウム板11及び12を選択エッチングして、アルミニウムパターン11A及び12Aを形成する(図7のS7)。このときのアルミニウム板11及び12のサイドエッチ量は、図18(実施例2、4参照)に示すように、アルミニウム板11及び12の板厚(アルミニウム導体厚さ)の約30〜34%に低減される。
【0066】
このアルミニウムパターン11A及び12Aの形成後、図5(B)及び(C)に示すように、亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17(つまりニッケル‐銅導体)に形成された銅パターン17Aが、アルミニウム板11及び12に形成されたアルミニウムパターン11A及び12Aよりも幅方向に突出したアンダーカット部分27をバックエッチ処理によって取り除く(図7のS7‐1)。このバックエッチ処理は、図3(A)のニッケル‐銅導体の選択エッチングと同様な方法で実施する。その後、図5(D)に示すように、ドライフィルム26を剥離し(図7のS8)、ソルダーレジスト絶縁皮膜19を形成して(図7のS9)プリント配線板10を完成する。
【0067】
上述のようなバックエッチ処理を行なうことにより、図18(実施例3、5、6参照)に示すように、副導体4であるニッケルー銅導体(亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17)のアンダーカット量を0.01mmとすることができ、回路パターン2が形成されるプリント配線板10の導体表面の機械的な強度および安定性を、実用上問題がないレベルに確保することができる。
【0068】
また、スプレイコーティングによるソルダーレジスト絶縁皮膜19の絶縁皮膜形成厚さは、上述のサイドエッチ対策加工(図5(A)及び(B))並びにバックエッチ処理(図5(C))を施さない場合には、図4に示す導体表面28が最大51μm、樹脂表面29が最大73μm、エッジ面25が最小11μm、導体側面30が最小で38μmであった。これに対し、アルミニウム導体(アルミニウム板11及び12)の上記サイドエッチ対策加工、及び上記バックエッチ処理を行なうことにより、予備乾燥前の平均膜厚は85μmであり、紫外線ベーキング後のソルダーレジスト絶縁皮膜19の膜厚は、導体表面28が平均46μm、樹脂表面29が平均68μm、エッジ面25が最小21μm、導体側面30が最小で38μmとなり、ソルダーレジスト絶縁皮膜19による絶縁性に優れたアルミニウム導体プリント配線板10が得られる。
【0069】
以上のように構成されたことから、上記実施の形態によれば、次の効果(1〜(11)を奏する。
【0070】
(1)導体としてアルミニウム板11及び12が用いられたことから、導体として銅が用いられる場合に比べ、プリント配線板10の軽量化及び高放熱性を実現できる。例えば、導体としてのアルミニウム板11及び12に、電流の通電による温度上昇が銅箔または銅板と同等な許容電流を通電するには、アルミニウム板11及び12の断面積を銅箔または銅板に比べ1.6倍にする必要がある。このように導体の断面積を1.6倍にしても、導体の重量は、銅箔または銅板を導体とした場合の0.48倍と半分以下となり、軽量化を図ることができる。
【0071】
(2)導体または放熱体としてのアルミニウム板11及び12がプリプレグ13にて相互に接着されて積層され、その際、プリプレグ13に接着されるアルミニウム板11及び12の表面を鏡面状態(表面の凹凸が0.05μm以下)に維持できる。高周波領域での電気信号は、主に、導体の中心部ではなく、その表面から約1μmの深さまでの表面付近を伝播するので、鏡面状態のアルミニウム板11及び12の表面を高速で伝播できる。この結果、高周波領域の信号を良好に高速伝播できる。
【0072】
(3)導体または放熱体として、同一材料のアルミニウム板11及び12がプリプレグ13により接着されることから、プリプレグ13を介して接着される両部材が、線膨張係数の相違からプリプレグ13に対し剥離することを防止できるので、プリント配線板10の信頼性を確保できる。
【0073】
(4)アルミニウム板11及び12が導体として構成されたことから、アルミニウム線を導体としてのアルミニウム板11及び12に直接ボンディングすることができる。同様に、アルミニウム板11及び12が導体として構成されたことから、この導体の表面をアルミニウムの酸化膜により保護でき、導体表面の劣化を防止できる。
【0074】
(5)アルミニウム板11及び12の表面に亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15及び銅メッキ皮膜16の積層皮膜6が形成され、この銅メッキ皮膜16及びスルーホール内の絶縁機能を含む接着剤側面(プリプレグ13)上に、銅メッキ皮膜16の酸化膜除去処理、触媒活性化処理、無電解銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜17が形成されたことから、アルミニウム板11及び12を主導体3、上記積層皮膜6及び電気銅メッキ皮膜17を副導体4とする導体構造のプリント配線板10を実現することができる。
【0075】
(6)主導体3であるアルミニウム板11及び12上に副導体4である積層皮膜6及び電気銅メッキ皮膜17が配置されたため、平面配線部23の表面金属をアルミニウムまたは銅に選択できる。このため、平面配置部23のハンダ付け実装部は表面に銅を露出させた銅露出部22となり、ボンディング実装部は表面にアルミニウムを露出させたアルミニウム露出部21となることで、実装方法の選択幅を拡大できる。
【0076】
(7)導体であるアルミニウム板11及び12が、絶縁機能を含むプリプレグ13にて接着され、これらのアルミニウム板11及び12にスルーホール5が形成される場合にも、上記(5)のようにして電気銅メッキ皮膜17を形成することで、このスルーホール内表面のプリプレグ13上に電気銅メッキ皮膜17を施すことができる。このため、この電気銅メッキ皮膜17により構成されるスルーホールメッキ20によって、プリント配線板10の両側に存在する導体であるアルミニウム板11及び12を電気的に接続することができる。
【0077】
(8)導体及び放熱体としてのアルミニウム板11及び12を接着するプリプレグ13に無機系フィラーが含有された場合には、この無機系フィラーによってアルミニウム板11及び12間の熱伝導率が良好となり、プリント配線板10の放熱特性を向上させることができる。
【0078】
(9)主導体3(アルミニウム導体)としてのアルミニウム板11及び12と、副導体4(ニッケル-銅導体)としての亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17とにそれぞれ適したエッチング液を用いて、これらの副導体4と主導体3とを別々に順次選択してエッチングし、回路パターン2(アルミニウムパターン11A、12A、及び銅パターン17A)を形成することから、これらの主導体3及び副導体4に高精度な回路パターン2を形成することができる。
【0079】
(10)主導体3であるアルミニウム板11及び12にエッチングを施して、この主導体3にアルミニウムパターン11A、12Aを形成する際に、主導体用エッチングレジストであるドライフィルム26のドライフィルムレジストパターン26Aにおけるパターン幅26Bが、副導体用エッチングレジストであるドライフィルム18のドライフィルムレジストパターン18Aにおけるパターン幅18Bよりも、アルミニウム板11及び12の厚さtだけパターンの両側に広く設定されたことから、主導体3(アルミニウム板11及び12)のエッチング時におけるサイドエッチ量を低減できる。この結果、プリント配線板10において、回路パターン2(アルミニウムパターン11A、12A、及び銅パターン17A)が形成された導体表面の機械的強度及び安定性を確保することができる。
【0080】
(11)副導体4であるニッケル-銅導体(亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17)をエッチングした後、主導体3であるアルミニウム導体(アルミニウム板11及び12)をエッチングして回路パターン2(アルミニウムパターン11A、12A、及び銅パターン17A)を形成すると、主導体3のサイドエッチのために、副導体4の銅パターン17Aが主導体3のアルミニウムパターン11A、12Aよりも幅方向に突出するが、この突出したアンダーカット部分27をバックエッチ処理することで、プリント配線板10において、回路パターン2を含む導体表面の機械的強度及び安定性を更に確保することができる。
【0081】
[B]第2の実施の形態(図8)
図8は、本発明に係るプリント配線板における第2の実施の形態の製造工程の一部を示す断面図である。この第2の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0082】
この第2実施形態のプリント配線板では、図2(A)と同様な方法で、アルミニウム板11及び12を、プリプレグ13を用いて積層接着してアルミニウム導体積層板41を形成し、その後に、図2(B)と同様な方法でスルーホール接続が必要な部位に穴明け加工を行なう。この穴明け加工後のアルミニウムの表面処理において、亜鉛置換膜14及びニッケルメッキ皮膜15を図2(B)と同様な方法で形成する。その後の硫酸銅浴による電気メッキにて、厚さ3〜5μmの銅メッキ皮膜16に代えて、厚さ30〜35μmの銅メッキ皮膜42を形成し、次に、図7のステップS5〜S8の工程によりプリント配線板を製造する。このうち、ステップ6において、銅パターンは亜鉛置換膜14、ニッケルメッキ皮膜15及び銅メッキ皮膜42に形成される。
【0083】
次に、図8(B)に示すように、アルミニウム導体積層板41の銅メッキ皮膜42の表面の酸化膜をソフトエッチングにより除去し、スルーホール43内に導電性樹脂44、例えば太陽インキ製造株式会社製の導電ペーストEMC−100AF4808、粘度200psを100メッシュのテトロンスクリーンを用いて穴埋め印刷する。この導電性樹脂44を、熱風乾燥炉を用い150℃の熱風により30分間で硬化する。その後、S9の工程によりプリント配線板を製造する。本実施の形態においては、導電性樹脂44の充填により、アルミニウム板11及び12が電気的に接続されるものであり、電気銅メッキ皮膜により構成されるスルーホールメッキを行う必要がない。
【0084】
[C]第3の実施の形態(図9〜図12)
図9、図10及び図11は、本発明に係るプリント配線板の第3の実施の形態における各製造工程を示す断面図である。この第3の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0085】
このプリント配線板50(図11)は、3層構造のアルミニウム導体プリント配線板である。図9(A)に示すように、アルミニウム板11とアルミニウム板12との中間にアルミニウム板51が配置され、このアルミニウム板51もアルミニウム板11及び12と同様に、例えば前記の昭和アルミニウム株式会社製の特殊合金箔が用いられる。
【0086】
アルミニウム板11、51及び12を接着して積層させるには、絶縁機能を含む接着剤である接着シート52及び53を用いる。アルミニウム板11とアルミニウム板51との間に接着シート52である、例えば株式会社日本理化工業所の低弾性エポキシ樹脂シートNRA−E6.5の厚さ0.2mmが一枚使用され、アルミニウム板51とアルミニウム板12との間に接着シート53である、例えば高熱伝導イミド変性エポキシ樹脂シートNRA−X6.5の厚さ0.2mmが一枚使用される。
【0087】
そして、これらのアルミニウム板11、接着シート52、アルミニウム板51、接着シート53、アルミニウム板12を温度180℃、圧力25kg/cm、100分間の条件で熱プレスして積層接着し、3層構造のアルミニウム導体積層板54を作成する(図12のS21)。尚、接着シート52及び53も、プリプレグ13と同様に、無機フィラー系を混入して、放熱特性を向上させてもよい。
【0088】
次に、図9(B)に示すように、図2(B)と同様な方法でアルミニウム導体積層板54を穴明け加工し(S22)、その後にアルミニウム表面処理を行って、アルミニウム板11及び12の表面に、亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15及び銅メッキ皮膜16の積層皮膜6を形成する(S23)。
【0089】
図10(A)は、表裏面のアルミニウム板11及び12を導体層、中間のアルミニウム板51を放熱体層としたアルミニウム導体積層板54の断面図である。表面及び裏面のアルミニウム板11及び12と中間のアルミニウム板51とを電気的に接続する電気的接続穴55以外の、上記アルミニウム板11及び12と上記アルミニウム板51とを電気的に絶縁する絶縁穴56に対し、絶縁樹脂57を絶縁穴56内に充填し研磨する(S24)。この穴埋め用の絶縁樹脂57は、エポキシ樹脂剤または、放熱性を高めるための無機フィラー系入りエポキシ樹脂剤である。本実施形態では、穴埋め用の絶縁樹脂57は、例えば太陽インク製造株式会社製の熱硬化型一液性永久穴埋めインキTHP−100DX1白色、粘度800psを使用する。この絶縁樹脂57は、熱硬化による収縮が小さく、銅メッキ皮膜16に対する密着性にも優れる特徴がある。
【0090】
絶縁樹脂57による穴埋め工程は、まず、3層構造のアルミニウム導体積層板54の銅メッキ皮膜16の表面の酸化膜をソフトエッチングにより除去し、100メッシュのテトロンスクリーンを用い印刷法で、絶縁樹脂57(穴埋めインキ)を絶縁穴56内に充填する。仮硬化として熱風乾燥炉を用い、100℃の熱風を20分間吹き付け、その後に130℃の熱風を45分間吹き付ける条件で絶縁樹脂57を硬化する。その後、#320のバフ研磨機を使用し、絶縁穴56からはみ出した凸状の余剰の絶縁樹脂57を除去し、更に熱風乾燥炉を用いて、150℃の熱風を60分間吹き付けて絶縁樹脂57を硬化する。
【0091】
このようにして絶縁穴56内に充填された絶縁樹脂57に対し、表裏面のアルミニウム板11及び12を電気的に接続するための穴明け加工を行なって(S25)、絶縁穴56をスルーホールとして形成する。尚、電気的接続穴55もスルーホールとして形成されている。
【0092】
次に、図10(B)に示すように、図3(A)と同様な方法で、電気銅メッキ皮膜17及びスルーホールメッキ20を形成し(S26)、ドライフィルムレジストパターン18Aを形成し(S27)、副導体4であるニッケル‐銅導体(亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17)を選択エッチングして銅パターン17Aを形成する(S28)。ここで、上記スルーホールメッキ20は、絶縁穴56の絶縁樹脂57の全域に形成されて、主導体3としてのアルミニウム板11及び12を接続する。その後、図11(A)に示すように、図3(B)と同様な方法で、アルミニウム板11及び12を選択エッチングしてアルミニウムパターン11A及び12Aを形成する(S29)。次に、図11(B)に示すように、図4と同様な方法で、ドライフィルム18を剥離して(S30)、ソルダーレジスト絶縁皮膜19を形成する(S31)。
【0093】
但し、実際には、銅パターン17Aの形成後に、図5に示したと同様な方法でサイドエッチ対策及びバックエッチ処理を実施する。つまり、副導体4であるニッケル‐銅導体(亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17)への銅パターン17Aの形成(S28)後、この銅パターン17Aを形成したドライフィルム18を剥離し(S28‐1)、再度ドライフィルムをラミネートして、アルミニウムパターン11A及び12Aを形成するために、ドライフィルム26にドライフィルムレジストパターン26Aを形成する(S28‐2)。そして、このドライフィルム26を用いてアルミニウム板11、12にアルミニウムパターン11A、12Aをそれぞれ形成する。その後、上記ニッケル‐銅導体のアンダーカット部分27をバックエッチ処理にて除去し(S29‐1)、ドライフィルム26を剥離し(S30)、ソルダーレジスト絶縁皮膜19を形成して(S31)、プリント配線板50を完成する。
【0094】
以上のように構成されたことから、この第3の実施の形態によれば、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(11)と同様な効果を奏する他、次の効果(12)〜(14)を奏する。
【0095】
(12)導体としてのアルミニウム板11及び12が回路パターン2(アルミニウムパターン11A、12A)形成のためにエッチングされてその表面積が減少し、その放熱特性が低下する場合にも、この導体としてのアルミニウム板11及び12に、放熱体としてのアルミニウム板51が積層されることで、プリント配線板50の放熱性能を向上させることができる。
【0096】
(13)絶縁穴56を形成するスルーホールの内表面の全域に絶縁樹脂57が施され、この絶縁樹脂57上にスルーホールメッキ20が形成されたことから、導体としてのアルミニウム板11及び12がスルーホールメッキ20により電気的に接続されると共に、放熱体としてのアルミニウム板51を導体としてのアルミニウム板11及び12に対し絶縁状態に保持することができる。
【0097】
(14)絶縁穴56を形成するためのスルーホールに施される絶縁樹脂57に無機系フィラーが含有された場合には、この無機系フィラーによって、当該無機系フィラーを含有する絶縁樹脂57と放熱体としてのアルミニウム板51との間の熱伝導率が向上し、プリント配線板50の放熱特性を向上させることができる。
【0098】
[D]第4の実施の形態(図13〜図15)
図13〜図14は、本発明に係るプリント配線板の第4の実施の形態における製造工程の一部を示す断面図である。この第4の実施の形態において、前記第1及び第3の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0099】
この第4実施形態のプリント配線板も、3層構造のアルミニウム導体プリント配線板である。
【0100】
図13(A)に示すように、アルミニウム板11、51及び12が接着シート52及び53を用いて接着されて積層され、図9(A)と同様なアルミニウム導体積層板61が構成されるが、このアルミニウム導体積層板61では、上記積層接着の前に、まず中間の放熱体層となるアルミニウム板51に穴明け加工して穴62を形成する(図15のS41)。次に、図10(A)と同様な方法で、穴62に絶縁樹脂57を充填して穴埋めおよび研磨加工を行なう(S42)。その後に、図9(A)と同様な方法で、アルミニウム板11、51及び12を積層接着し(S43)、3層構造のアルミニウム導体積層板61を作製する。
【0101】
次に、このようにして作製されたアルミニウム導体積層板61に、図13(B)に示すように、絶縁樹脂57を貫通し且つアルミニウム板11及び12を貫通する穴明け加工を実施して、絶縁穴63をスルーホールとして形成すると共に、アルミニウム板11、51及び12を貫通して電気的接続穴55をスルーホールとして形成する(S44)。上記絶縁穴63には、この絶縁穴63の内表面のうちアルミニウム板51部分に絶縁樹脂57が施されることになる。上記穴明け後に、図2(B)と同様な方法で、アルミニウム導体積層板61にアルミニウム表面処理を行い、亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16を形成する(S45)。
【0102】
次に、図14に示すように、図3(A)と同様な方法で電気銅メッキ皮膜17、スルーホールメッキ20を形成し(S46)、ドライフイルム18にドライフイルムレジストパターン18Aを形成し(S47)、ニッケル-銅導体(亜鉛置換皮膜14、ニッケルメッキ皮膜15、銅メッキ皮膜16及び電気銅メッキ皮膜17)を選択エッチングして銅パターン17Aを形成する(S48)。
【0103】
以後の工程は、図11(A)及び(B)、並びに図5に示すように、図12のステップS28−1〜S31と同様な方法を実施して、プリント配線板を製造する。
【0104】
以上のように構成されたことから、上記第4の実施の形態においても、前記第1及び第3の実施の形態の効果(1)〜(14)と同様な効果を奏する。
【0105】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0106】
例えば、上記第3及び第4の実施の形態では、図10(B)及び図14に示すように、電気銅メッキ皮膜17及びスルーホールメッキ20を形成するものを述べたが、図10(A)の絶縁樹脂57を備えた絶縁穴56と電気的接続穴55に、図8に示す導電性樹脂44を充填して、導体としてのアルミニウム板11とアルミニウム板12とを電気的に接続してもよい。また、図13(B)の絶縁穴63と電気的接続穴55に、同じく上記導電性樹脂44を充填して、導体としてのアルミニウム板11とアルミニウム板12とを電気的に接続してもよい。これらの場合にも、中間の放熱体層としてのアルミニウム板51は、導体層としてのアルミニウム板11及び12に対し絶縁状態に確保されている。また、これらの場合、アルミニウム表面処理において、前記第2の実施の形態と同様に、ニッケルメッキ皮膜15上に、膜厚が30〜35μmの銅メッキ皮膜42を形成するのが好ましい。
【0107】
また、前記第1の実施の形態では、導体としてのアルミニウム板11及び12がプリプレグ13を用いて接着されたものを述べたが、アルミニウム板11とアルミニウム板12とのうちの一方を導体とし、他方を放熱体として構成したプリント配線板であってもよい。このプリント配線板の場合には、アルミニウム板のみが導体となり、この導体としてのアルミニウム板にアルミニウム線を直接ボンディングすることができる。
【実施例1】
【0108】
以下、本発明を実施例に基づき、図18を参照して更に詳説する。
【0109】
(実施例1〜実施例3)
アルミニウム導体積層板の材料は、アルミニウム板として、昭和アルミニウム株式会社製の特殊合金箔 寸法510mm×340mm、厚さ0.5mmを2枚使用し、絶縁積層接着材として、松下電工株式会社製のガラス布基材エポキシ樹脂多層プリント配線板R−1661JMタイプの厚さ0.18mmのプリプレグを3枚使用し、図18の積層接着プレスの条件でアルミニウム導体積層板を作成した。このアルミニウム導体積層板の試験結果を図18に示す。
【0110】
積層接着後、ハンダ耐熱 (260℃、10分) 試験後の接着強度、および150℃での96時間加熱後の接着強度は、図18に示すように、1.22〜1.35kgf/cmであり、加熱による大きな低下が無く、耐熱性が確保でき、プリント配線板として十分な結果であった。
【0111】
実施例1では、このアルミニウム導体積層板を使用して、アルミニウム導体プリント配線板を製造した。加工工程は、スルーホール接続が必要な部位への穴明け加工、アルミニウム表面処理、硫酸銅浴による電気銅メッキ及びスルーホールメッキ、ドライフイルムレジストパターン形成、ニッケルー銅導体(亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜、銅メッキ皮膜及び電気銅メッキ皮膜)の過酸化水素―硫酸系による選択的エッチング、アルミニウム導体(アルミニウム板)の50%40Be塩化第二鉄による選択的エッチング、ソルダーレジスト絶縁皮膜の形成を実施した。この方法で作成した、アルミニウム導体プリント配線板の回路パターン幅およびホットオイル試験結果を図18に示す。
【0112】
完成品の導体の寸法特性は、図18に示すように、ニッケルー銅導体のアンダーカット量が0.30mm、アルミニウム導体のサイドエッチ量が0.41mmであった。また、ホットオイル試験では、403サイクル断線せず、一般のプリント配線板と同等であった。
【0113】
実施例2では、ニッケルー銅導体(亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜、銅メッキ皮膜及び電気銅メッキ皮膜)の選択的エッチング加工までは、実施例1と同様な方法であるが、その後にドライフイルムを剥離し、再度ドライフィルムをラミネートして、このドライフィルムに、パターン幅を両側にアルミニウム導体厚さ分広くしたドライフイルムレジストパターンを形成した。以後の工程は、実施例1と同じである。この方法で作成したアルミニウム導体プリント配線板の回路パターン幅およびホットオイル試験結果を図18に示す。
【0114】
完成品の導体の寸法特性は、図18に示すように、ニッケルー銅導体のアンダーカット量が0.11mm、アルミニウム導体のサイドエッチ量が0.16mmであり、実施例1より大きく改善できた。また、ホットオイル試験結果は、実施例1と同等であった。
【0115】
実施例3では、アルミニウムの50%40Be塩化第二鉄による選択的エッチング加工までは、実施例2と同様な方法である。その後にニッケルー銅導体をバックエッチ処理して、アンダーカット部分を取り除く加工を行なった。この方法で作成した、アルミニウム導体プリント配線板の回路パターン幅およびホットオイル試験結果を図18に示す。
【0116】
完成品の導体の寸法特性は、図18に示すように、ニッケルー銅導体のアンダーカット量が0.01mmで、アンダーカットが殆どない状態であった。また、アルミニウム導体のサイドエッチ量は0.17mmであり、実施例2と同等であった。また、ホットオイル試験結果は、実施例1及び実施例2と同等であった。
【0117】
(実施例4〜実施例6)
アルミニウム導体積層板の材料は、アルミニウム板として、昭和アルミニウム株式会社製の特殊合金箔 寸法510mm×340mm、厚さ0.5mmを3枚使用する。実施例4、実施例5では、絶縁積層接着材として、株式会社日本理化工業所の低弾性エポキシ樹脂シートNRA−E6.5の厚さ0.2mmを各アルミニウム板間にそれぞれ1枚計2枚使用し、図18の条件で積層板を作成した。実施例6では、高熱伝導イミド変性エポキシ樹脂シートNRA−X6.5の厚さ0.2mmを各アルミニウム板間にそれぞれ1枚計2枚使用し、図18の条件で積層板を作成した。これらのアルミニウム導体積層板の試験結果を図18に示す。
【0118】
実施例4〜6とも、積層接着後、ハンダ耐熱(260℃、10分)試験後の接着強度、および150℃で96時間加熱後の接着強度は図18に示すように、2.22〜3.21kgf/cmであり、加熱による大きな低下が無く、耐熱性が確保でき、プリント配線板として十分な結果であった。
【0119】
実施例4では、実施例2と同様な方法で、アルミニウム導体プリント配線板を作成した。このアルミニウム導体プリント配線板の回路パターン幅およびホットオイル試験結果を図18に示す。
【0120】
この完成品の導体の寸法特性は、図18に示すように、実施例2と同等であった。ホットオイル試験結果は、430サイクルまで断線せず、一般のプリント配線板と同等であった。
【0121】
実施例5および実施例6では、実施例3と同様な方法で、アルミニウム導体プリント配線板を作成した。
【0122】
この完成品の導体の寸法特性は、図18に示すように、実施例3と同等であった。ホットオイル試験結果は、図18に示すように、実施例4と同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本アルミニウム導体プリント配線板は、軽量で大電流に対応でき、高熱伝導による放熱性を有する。また、同一の消費電力において、温度上昇が一般プリント配線板の1/10以下の特性を有する。そのため、下記の分野への適用が可能となる。
【0124】
車載用のDC−DCコンバータやACインバータなどパワー制御を一体型としたパワーエレクトロニクス用基板、EPS(電動式パワーステアリング)用制御基板、ECU、ワイパー、パワーウインドウ、電動式ミラー、パワーシート用制御基板、車内の配線用のハーネス基板、パワーモジュール用基板などに適用できる。更に、産業機器用として、フォークリフト用制御基板、電動工具や電動自転車のモータ駆動用基板などにも本プリント配線板を適用できる。
【0125】
また、近年では電球や蛍光灯に代わり、高寿命(7000時間)、高輝度性及びメンテナンス性に優れるLED照明が増加している。道路の信号機についても上述のLED照明が使用される傾向にある。更に、文字や画像の表示装置、自動車のテールランプ、ストップランプ、フロントコンソールイルミネーション、ヘッドライトへの上記LED照明の採用が検討されている。
【0126】
ここで、白熱電球の発光効率は15lm/W、ハロゲン電球の発光効率は20lm/Wである。これに対し、LEDの発光効率は20〜30lm/Wである。しかし、LEDの消費電力の約1/4が発光に使用され、残りの3/4は熱として消費されている。そのため、この発生した熱を放散し、LEDのジャンクションを温度下げることが要求される。また、LEDの単価が高価なため、大電流高出力化し、使用する個数を減らす方向が検討されている。これらの観点から、上述のLED照明にも本プリント配線板を好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係るプリント配線板における第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1のプリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図3】図1のプリント配線板の製造工程の一部(図2の続き)を示す断面図である。
【図4】図1のプリント配線板の製造工程の一部(図3の続き)を示す断面図である。
【図5】図1のプリント配線板の製造工程において図3(B)の回路パターン形成工程を詳説するための断面図である。
【図6】図5の回路パターン形成工程を比較するための断面図である。
【図7】図2〜図5に示すプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係るプリント配線板における第2の実施の形態の製造工程の一部を示す断面図である。
【図9】本発明に係るプリント配線板における第3の実施の形態の製造工程の一部を示す断面図である。
【図10】図9のプリント配線板の製造工程の続きを示す断面図である。
【図11】図10のプリント配線板の製造工程の続きを示す断面図である。
【図12】図9〜図12に示すプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係るプリント配線板における第4の実施の形態の製造工程の一部を示す断面図である。
【図14】図13のプリント配線板の製造工程の続きを示す断面図である。
【図15】図13及び図14に示すプリント配線板の製造方法を示すフローチャートの一部である。
【図16】アルミニウムの種類とその特性を示す図表である。
【図17】アルミニウム板の選択エッチングの状況を示す図表である。
【図18】実施例1〜6において製造されたプリント配線板の特性等を示す図表である。
【符号の説明】
【0128】
2 回路パターン
3 主導体
4 副導体
5 スルーホール
6 積層皮膜
10 プリント配線板
11、12 アルミニウム板(導体)
11A、12A アルミニウムパターン
13 プリプレグ(接着剤)
14 亜鉛置換皮膜
15 ニッケルメッキ皮膜
16 銅メッキ皮膜
17 電気銅メッキ皮膜
17A 銅パターン
26 ドライフィルム
26A ドライフィルムレジストパターン
26B パターン幅
27 アンダーカット部分
44 導電性樹脂
51 アルミニウム板(放熱体)
55 電気的接続穴
56 絶縁穴
57 絶縁樹脂
63 絶縁穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品などを実装するための回路パターンが導体に形成されるプリント配線板であって、
導体または/及び放熱体としてのアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて相互に接着され積層されたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
上記導体であるアルミニウム板の表面にアルミニウム表面処理が施されて、亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜が形成され、
この銅メッキ皮膜上に前処理及び化学銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜が形成され、
この電気銅メッキ皮膜、上記積層皮膜及び上記アルミニウム板に回路パターンが形成されたことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
上記導体である複数枚のアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され、これらのアルミニウム板にスルーホールが形成される場合、
このスルーホール内表面にアルミニウム表面処理が施されて、このスルーホール内表面に亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜が形成され、
上記銅メッキ皮膜及びスルーホール内の絶縁機能を含む接着剤側面上に、前処理及び化学銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜がスルーホールメッキとして形成されて、導体である複数枚の上記アルミニウム板が電気的に接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
上記導体である複数枚のアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され、これらのアルミニウム板にスルーホールが形成される場合、
このスルーホール内表面にアルミニウム表面処理が施されて、このスルーホール内表面に亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜が形成され、
このスルーホール内表面に導電性樹脂が充填されて、導体である複数枚の上記アルミニウム板が電気的に接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項5】
導体としてのアルミニウム板に、放熱体としてのアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され積層されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項6】
導体としての複数枚のアルミニウム板間に、放熱体としてのアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着されて積層され、これらのアルミニウム板を貫通するスルーホールにより電気的接続穴及び絶縁穴が形成される場合、
上記絶縁穴を形成する上記スルーホールの内表面の全域、または上記スルーホールの内表面のうち放熱体としてのアルミニウム板部分に絶縁樹脂が施され、
この絶縁樹脂上にスルーホールメッキが形成されて、導体としての上記アルミニウム板が電気的に接続されたことを特徴とする請求項5に記載のプリント配線板。
【請求項7】
導体としての複数枚のアルミニウム板間に、放熱体としてのアルミニウム板が、絶縁機能を含む接着剤にて接着され積層され、これらのアルミニウム板を貫通するスルーホールにより電気的接続穴及び絶縁穴が形成される場合、
上記絶縁穴を形成する上記スルーホールの内表面の全域、または上記スルーホールの内表面のうち放熱体としてのアルミニウム板部分に絶縁樹脂が施され、
このスルーホール内に導電性樹脂が充填されて、導体としての上記アルミニウム板が電気的に接続されたことを特徴とする請求項5に記載のプリント配線板。
【請求項8】
導体または放熱体としてのアルミニウム板を接着する接着剤に、無機系フィラーが含有されたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項9】
上記絶縁穴を形成するためのスルーホールに施される絶縁樹脂に無機系フィラーが含有されたことを特徴とする請求項6または7に記載のプリント配線板。
【請求項10】
アルミニウム板の表面にアルミニウム表面処理を施して亜鉛置換皮膜、ニッケルメッキ皮膜及び銅メッキ皮膜の積層皮膜を形成し、
この銅メッキ皮膜上に前処理及び化学銅メッキを経て電気銅メッキ皮膜を形成し、
主導体としての上記アルミニウム板と、副導体としての上記積層皮膜及び上記電気銅メッキ皮膜とに回路パターンを形成して、プリント配線板を製造するプリント配線板の製造方法であって、
上記副導体と上記主導体とにそれぞれ適したエッチング液を用いて、これらの副導体と主導体とを別々に順次選択してエッチングし、上記回路パターンを形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
上記回路パターンを形成するために副導体をエッチングするエッチング液として、主導体にエッチング作用を及ぼすことがない過酸化水素―硫酸系のエッチング液を用いることを特徴とする請求項10に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
上記回路パターンを形成するために主導体をエッチングするエッチング液として、副導体にエッチング作用を及ぼすことがない塩化第2鉄系、塩化第2銅系またはリン酸系のエッチング液を用いることを特徴とする請求項10または11に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
上記副導体に、レジストパターンが形成された副導体用エッチングレジストを用いて回路パターンを形成した後、この副導体用エッチングレジストを除去し、
この副導体用エッチングレジストのレジストパターンにおけるパターン幅よりも、主導体の厚さに対応して広く設定されたパターン幅を有するレジストパターンを備えた主導体用エッチングレジストを用いて、上記主導体にエッチングを施し、この主導体に回路パターンを形成することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項14】
上記副導体をエッチングし、主導体をエッチングして回路パターンを形成した後、副導体の回路パターンが主導体の回路パターンよりも幅方向に突出した部分を、副導体に適したエッチング液を用いてバックエッチ処理することを特徴とする請求項13に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−27618(P2007−27618A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211114(P2005−211114)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(592150860)富士ネームプレート株式会社 (3)
【出願人】(505276236)
【Fターム(参考)】