説明

プリント配線板用プリプレグ及び金属張り積層板

【課題】低い熱膨張率により実装部品との高い接続信頼性を有し、耐熱性に優れたプリント配線板用プリプレグを提供する。
【解決手段】(a)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(b)フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物、(c)ジシアンジアミド、(d)硬化促進剤及び(e)無機充填剤を必須成分とするワニスであって、(e)無機充填剤がワニス中の有機樹脂固形分に対して50〜150重量%である熱硬化性樹脂ワニスをガラス織布に含浸し、加熱、乾燥して、Bステージ化してなるプリント配線板用プリプレグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板をはじめとする電気絶縁材料に使用するプリント配線板用プリプレグ及びこれを用いた金属張り積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂積層板は、エポキシ樹脂組成物のワニス溶液をガラス織布に含浸し、乾燥してBステージ化したプリプレグを積層し、加熱加圧して製造されている。
【0003】
電子機器の小型化、高性能化に伴い、その中に搭載されるプリント配線板は高多層化、スルーホールの小型化及び穴間隔の減少等による高密度化が進行している。また、メモリー容量の増加に伴うチップの大型化や、封止材の薄肉化により実装部品の低熱膨張率化が進行している。実装部品との接続信頼性を確保するためには、基板材料への更なる低熱膨張率化や高弾性率化が要求されている。
この低熱膨張率化や高弾性率化に対する要求を満たすために、充填剤の添加による方法がある。
また、エポキシ樹脂の硬化剤として従来から用いられているジシアンジアミドは、エポキシ樹脂との相溶性が悪く、プリプレグとした場合にジシアンジアミドが析出する場合が多く、しかも、この硬化系によるプリント配線板は、軟化温度が低い等の理由により、ドリル加工時に内層回路銅に樹脂が付着するスミアが発生しやすく、気中での長期耐熱性にも劣る。
これらの問題を解決する樹脂系として、フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物で硬化させたエポキシ樹脂がある。この硬化系によるプリント配線板は、ジシアンジアミド硬化系に比べて、スミアの発生が半分以下となり気中での耐熱性も2倍以上に向上する。
しかし、フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物で硬化させたエポキシ樹脂は、接着性が低いこと、硬くもろいこと等の欠点を有しており、特に無機充填剤を添加した場合には、十分な信頼性を得ることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたもので、低い熱膨張率により実装部品との高い接続信頼性を有し、耐熱性に優れたプリント配線板用プリプレグ及びそれを使用した金属張り積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(b)フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物、(c)ジシアンジアミド、(d)硬化促進剤及び(e)無機充填剤を必須成分とするワニスであって、(e)無機充填剤がワニス中の有機樹脂固形分に対して50〜150重量%である熱硬化性樹脂ワニスをガラス織布に含浸し、加熱、乾燥して、Bステージ化してなるプリント配線板用プリプレグに関する。
また、本発明は上記(a)のエポキシ樹脂がフェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物のグリシジルエーテル化物であるプリント配線板用プリプレグに関する。
さらに、本発明は、上記のプリント配線板用プリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面若しくは両面に金属箔を配して、加熱加圧成形して得られる金属張り積層板に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプリンタ配線板用プリプレグを用いれば、低い熱膨張率より実装部品との高い接続信頼性を有し、耐熱性に優れたプリント配線板用金属張り積層板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明で使用する(a)のエポキシ樹脂の種類としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれは特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノールのジグリシジルエーテル化物、多官能アルコールのジグリシジルエーテル化物、これらの水素添加物等があり、何種類かを併用することもできる。また、硬化後の樹脂系のTgや耐熱性を向上するために、フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物のグリシジルエーテル化物を用いることがより好ましい。このような樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独若しくは併用して使用することができる。
【0008】
本発明で用いるエポキシ樹脂の硬化剤である(b)のフェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物は、分子量の制限はなく、このような樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等が挙げられ、これらは単独若しくは併用して使用することができる。硬化剤の配合量は、使用する硬化剤の水酸基当量に対しエポキシ当量が水酸基当量/エポキシ当量=0.8〜1.2となるように配合するのが好ましい。0.8未満及び1.2を超えると耐熱性に劣るようになる傾向がある。
【0009】
本発明で用いられるジシアンジアミドは、(a)エポキシ樹脂と(b)フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物100重量部に対し、0.01〜2重量部配合することが好ましい。0.01重量部未満だと効果に乏しく、2重量部を超えるとプリント配線板の耐熱性が悪くなる傾向がある。
【0010】
本発明で用いる(d)の硬化促進剤として、イミダゾール化合物、アミン類等があるが特に制限はない。イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール等が挙げられる。アミン類としては、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキサン塩等が挙げられる。また、この他に、3フッ化ホウ錯化合物である3フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯化合物、3フッ化ホウ素・トリエチルアミン錯化合物、3フッ化ホウ素・ピペリジン錯化合物、3フッ化ホウ素・n−ブチルエーテル錯化合物、3フッ化ホウ素・アミン錯化合物等が挙げられる。硬化促進剤は、(a)エポキシ樹脂と(b)フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物100重量部に対し、0.1〜10重量部配合することが好ましい。0.1重量部未満だと効果に乏しく、10重量部を超えるとプリプレグの保存安定性が悪くなる傾向がある。
【0011】
本発明で用いる(e)の無機充填剤は特に制限はなく、例えば炭酸カルシウム、アルミナ、マイカ、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、ガラス短繊維やホウ酸アルミニウムや炭酸珪素等の各種ウィスカが用いられる。また、これらを複種類併用してもよい。この無機充填剤は、ワニス中の有機樹固形分に対して50〜150重量%配合する。50重量%未満では、低熱膨張率化や高弾性率化に効果が得られず、150重量%を超えると塗工作業性が低下したり、成形性の悪化、耐熱性及びピール強度の低下等の原因となる。
【0012】
上記(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は必須成分であり、その他必要に応じて、溶剤、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線不透過剤等を加えてもよい。
【0013】
上記(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)を溶剤中で配合して得た熱硬化性樹脂ワニスをガラス織布に含浸させて、加熱、乾燥して、Bステージ化することによりプリント配線板用プリプレグを得ることができる。ここで使用するガラス織布の種類には特に指定はなく、厚さ0.02〜0.4mmまでのものを、目的のプリプレグ又は積層板の厚さに合わせて使用することができる。含浸量は樹脂分として示されるが、樹脂分とはプリプレグの全重量部に対する有機樹脂固形分と無機充填剤類の合計重量の割合のことであり、30〜90重量%であると好ましく、40〜80重量%であるとより好ましい。樹脂分は目的のプリプレグの性能、及び積層後の絶縁層の厚さに合わせて適宜決定される。プリプレグを製造する時の乾燥条件は、乾燥温度60〜200℃、乾燥時間1〜30分間の間で、目的のプリプレグ特性に合わせて自由に選択することができる。
溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどがあり、これらは何種類か混合して用いても良い。
【0014】
目的とする積層板の厚みに合わせて得られたプリント配線板用プリプレグをすくなくとも1枚以上重ねて、その片側又は両側に金属箔を配して、加熱加圧成形して積層板を製造する。金属箔としては主に銅箔やアルミ箔を用いるが、他の金属箔を用いてもよい。金属箔の厚みは通常3〜200μmである。
【0015】
積層板製造時の加熱温度は130〜250℃、より好ましくは160〜200℃で、圧力は0.5〜10MPa、より好ましくは1〜4MPaであり、プリプレグ特性や、プレス機の能力、目的の積層板の厚み等により適宜決定する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量205)
100重量部
ビスフェノールA型ノボラック樹脂(水酸基当量118) 52重量部
ジシアンジアミド 0.5重量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2重量部
シリカ 190重量部
上記化合物をエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解、分散し、不揮発分75重量%の樹脂ワニスを作成した。このワニスを100μmのガラス織布(IPC品番#2116タイプ)に含浸し、180℃の乾燥器中で6分間乾燥し、樹脂分60重量%のBステージ状態のプリプレグを得た。
【0017】
[実施例2]
o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量210)
100重量部
ビスフェノールA型ノボラック樹脂(水酸基当量118) 51重量部
ジシアンジアミド 0.5重量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2重量部
シリカ 190重量部
上記化合物を混合、分散して樹脂ワニスを作成し、実施例1と同様にして樹脂分60重量%のプリプレグを得た。
【0018】
比較例1
実施例1において、ビスフェノールA型ノボラック樹脂を添加せず、ジシアンジアミドを4重量部に、シリカの配合量を125重量部にし、その他は実施例1と同様にして樹脂分60重量%のプリプレグを得た。
【0019】
比較例2
実施例1において、ジシアンジアミドを添加せず、ビスフェノールA型ノボラック樹脂の配合量を58重量部に、その他は実施例1と同様にして樹脂分60重量%のプリプレグを得た。
【0020】
比較例3
実施例1におけるシリカの配合量を70重量部にした以外は、実施例1と同様な方法で、Bステージ状態の樹脂分60重量%のプリプレグを得た。
【0021】
金属箔張り積層板の製造方法
実施例1、2及び比較例1、2、3で得られたプリプレグ4枚を重ねて、その両側に厚み18μmの銅箔を配し、圧力3MPa、温度185℃で90分間加熱加圧して両面銅張積層板を得た。
【0022】
以上得られた両面銅張積層板のピール強度、熱膨張率、Tg及び基板はんだ耐熱性試験を行った。その結果を表1に示す。なお、熱膨張率とTgの測定は、デュポン社製TMAを用いて行った。また、基板はんだ耐熱性は、表1に記載した吸湿処理後に、288℃のはんだ槽に20秒間浸積した基材を観察した結果である。各記号は、○:変化無し、△:ミーズリング発生、×:ふくれ発生を意味し、3つの記号は、3つの試験片により評価した結果をそれぞれ示したものである。
【0023】
【表1】

フェノール:ビスフェノールA型ノボラック樹脂
ジシアン:ジシアンジアミド
【0024】
表1から、本発明のプリンタ配線板用プリプレグを用いた金属張り積層板は、Tgが高く、銅箔との高い接着性を持ち、また熱膨張率も十分に低いものであった。これに対して、ジシアン硬化系を用いた比較例1では、Tgが低く、耐熱性が劣る結果となった。また、フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物で硬化した比較例2は、耐熱性は有するものの銅箔との接着性が劣る結果となった。更に、無機充填剤の配合量が有機樹脂固形分に対して50重量部未満の比較例3は、熱膨張率が高く、耐熱性にも劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(b)フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物、(c)ジシアンジアミド、(d)硬化促進剤及び(e)無機充填剤を必須成分とするワニスであって、(e)無機充填剤がワニス中の有機樹脂固形分に対して50〜150重量%である熱硬化性樹脂ワニスをガラス織布に含浸し、加熱、乾燥して、Bステージ化してなるプリント配線板用プリプレグ。
【請求項2】
(a)のエポキシ樹脂がフェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物のグリシジルエーテル化物である請求項1に記載のプリント配線板用プリプレグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリント配線板用プリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面若しくは両面に金属箔を配して、加熱加圧成形して得られる金属張り積層板。

【公開番号】特開2011−219770(P2011−219770A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161664(P2011−161664)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2001−253141(P2001−253141)の分割
【原出願日】平成13年8月23日(2001.8.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】