説明

プロキシミティ露光装置、プロキシミティ露光装置の基板支持方法、及び表示用パネル基板の製造方法

【課題】チャックの開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらを効果的に抑制する。
【解決手段】チャックに、少なくとも1つの開口と、開口を塞ぐ蓋14と、チャックに対する蓋14の取り付け高さを調整する高さ調整機構とを設ける。チャックの開口の周囲に非真空区画を形成し、非真空区画からチャックの裏面へ通じる空気通路を設け、非真空区画の周囲に真空区画を形成する。高さ調整機構により、チャックに対する蓋14の取り付け高さを調整して、蓋14の上面の高さをチャックの上面の高さより低くし、真空区画により基板を真空吸着して、基板をチャックに固定し、空気通路により非真空区画を大気開放して、基板が非真空区画に吸着されるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等の表示用パネル基板の製造において、プロキシミティ方式を用いて基板の露光を行うプロキシミティ露光装置、プロキシミティ露光装置の基板支持方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に係り、特に、大型の基板の露光を行うのに好適なプロキシミティ露光装置、プロキシミティ露光装置の基板支持方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用パネルとして用いられる液晶ディスプレイ装置のTFT(Thin Film Transistor)基板やカラーフィルタ基板、プラズマディスプレイパネル用基板、有機EL(Electroluminescence)表示パネル用基板等の製造は、露光装置を用いて、フォトリソグラフィー技術により基板上にパターンを形成して行われる。露光装置としては、レンズ又は鏡を用いてマスクのパターンを基板上に投影するプロジェクション方式と、マスクと基板との間に微小な間隙(プロキシミティギャップ)を設けてマスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ方式とがある。プロキシミティ方式は、プロジェクション方式に比べてパターン解像性能は劣るが、照射光学系の構成が簡単で、かつ処理能力が高く量産用に適している。
【0003】
プロキシミティ露光装置は、基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクホルダに保持されたマスクとチャックに支持された基板とを極めて接近させて露光を行う。チャックには、従来、表面が平らなものと、表面にピン形状の凸部を複数設けたものとがあった。後者は、ピン形状の凸部により複数の点で基板を支持し、ピン形状の凸部以外の部分と基板との空間を真空引きすることにより、基板を真空吸着して支持する。この様なチャックでは、大型の基板を均等に真空吸着するために、ピン形状の凸部以外の部分と基板との空間を複数の真空区画に分けて真空引きを行っていた。そのため、チャックの表面には、真空区間を形成するための土手(ライン)が設けられていた。
【0004】
ガラス基板等の様に光が透過する基板では、露光時に基板を透過した光が、チャックで反射し、再び基板を透過して基板の表面に達することにより、チャックの表面形状等が基板の表面に焼き付けられる現象が発生することがある。この現象は、「裏面転写」と呼ばれている。従来の表面が平らなチャックでは、基板の裏面の汚れがチャックに堆積し、この汚れにより裏面転写が発生していた。一方、表面にピン形状の凸部を設けたチャックでは、汚れの堆積による裏面転写の発生が少ない。
【0005】
プロキシミティ露光装置で露光精度を向上させるためには、露光時に、基板をより平坦に支持しなければならない。そのため、基板を支持するチャックには、高い平坦度が要求され、特に、基板が大型化する程、チャックの平坦度の要求が強くなる。特許文献1には、チャックを多数の点で支持し、チャックを支持する各点の高さを調整して、チャックのたわみを矯正し、チャックの平坦度を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には、チャックの周縁部よりも中央部側に開口を設け、チャックの周縁部よりも中央部側に近い高さ調整機構を開口から操作し、それ以外の高さ調整機構をチャックの外側から操作することにより、チャックが大型になっても、チャックの裏面を支持する各点の高さを容易に調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−235019号公報
【特許文献2】特開2009−282110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の様にチャックに開口を設ける場合、そのままでは開口の部分で露光むらが発生するため、開口を蓋で塞ぐ必要がある。しかしながら、蓋をチャックに取り付ける際、蓋の上面の高さをチャックの上面の高さと全く同じにすることは困難である。チャックに取り付けた蓋の上面がチャックの上面より僅かでも高いと、基板をチャックに搭載したとき、基板の蓋の上に搭載されている部分が盛り上がって他より高くなる。また、チャックに取り付けた蓋の上面がチャックの上面より低いと、チャックに搭載した基板を真空吸着するとき、蓋自体では真空吸着を行わなくても、基板と蓋との間の空気が蓋の周囲の真空吸着に引かれて圧力が下がり、基板の蓋の上に搭載されている部分が窪んで他より低くなる。そのため、従来は、チャックの開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらを完全に防止することができなかった。
【0008】
本発明の課題は、チャックの開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらを効果的に抑制することである。また、本発明の課題は、大型の表示用パネル基板を歩留まり良く製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプロキシミティ露光装置は、基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクと基板との間に微小なギャップを設けて、マスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置において、チャックが、少なくとも1つの開口と、開口を塞ぐ蓋と、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整する第1の高さ調整機構と、開口の周囲に形成された非真空区画と、非真空区画からチャックの裏面へ通じる空気通路と、非真空区画の周囲に形成された真空区画とを有し、第1の高さ調整機構が、蓋の上面の高さがチャックの上面の高さより低くなる様に調整され、真空区画が、基板を真空吸着してチャックに固定し、空気通路が、非真空区画を大気開放して、非真空区画の空気の圧力の低下を防止するものである。
【0010】
また、本発明のプロキシミティ露光装置の基板支持方法は、基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクと基板との間に微小なギャップを設けて、マスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置の基板支持方法であって、チャックに、少なくとも1つの開口と、開口を塞ぐ蓋と、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整する第1の高さ調整機構とを設け、チャックの開口の周囲に非真空区画を形成し、非真空区画からチャックの裏面へ通じる空気通路を設け、非真空区画の周囲に真空区画を形成し、第1の高さ調整機構により、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整して、蓋の上面の高さをチャックの上面の高さより低くし、真空区画により基板を真空吸着して、基板をチャックに固定し、空気通路により非真空区画を大気開放して、非真空区画の空気の圧力の低下を防止するものである。
【0011】
チャックに、少なくとも1つの開口と、開口を塞ぐ蓋と、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整する第1の高さ調整機構とを設け、第1の高さ調整機構により、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整して、蓋の上面の高さをチャックの上面の高さより低くするので、基板をチャックに搭載したとき、基板の蓋の上に搭載されている部分が盛り上がる恐れがない。そして、チャックの開口の周囲に非真空区画を形成し、非真空区画からチャックの裏面へ通じる空気通路を設け、非真空区画の周囲に真空区画を形成し、真空区画により基板を真空吸着して、基板をチャックに固定し、空気通路により非真空区画を大気開放して、非真空区画の空気の圧力の低下を防止するので、非真空区画の空気が周囲の真空区画に漏れても非真空区画の空気の圧力が下がることがなく、基板の蓋の上に搭載されている部分の窪みが極めて小さくなる。従って、チャックの開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらが効果的に抑制される。
【0012】
さらに、本発明のプロキシミティ露光装置は、チャックの裏面を複数箇所で支持するチャック支持台と、チャック支持台がチャックの裏面を支持する高さを調整する第2の高さ調整機構とを備え、第2の高さ調整機構が、チャックの上方から、蓋を取り外した開口を通して操作されたものである。
【0013】
また、本発明のプロキシミティ露光装置の基板支持方法は、チャックをチャック支持台に搭載して、チャックの裏面をチャック支持台により複数箇所で支持し、チャック支持台がチャックの裏面を支持する高さを調整する第2の高さ調整機構を設け、チャックの上方から、蓋を取り外した開口を通して、第2の高さ調整機構を操作するものである。
【0014】
チャックをチャック支持台に搭載して、チャックの裏面をチャック支持台により複数箇所で支持し、チャック支持台がチャックの裏面を支持する高さを調整する第2の高さ調整機構を設け、チャックの上方から、蓋を取り外した開口を通して、第2の高さ調整機構を操作するので、基板の大型化に伴いチャックが大型化しても、チャックの裏面を支持する各点の高さが容易に調整され、チャックの平坦度が向上する。そして、チャックの裏面を支持する高さを調整するために設けられた開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらが効果的に抑制される。
【0015】
あるいは、本発明のプロキシミティ露光装置は、チャックの開口から上昇して基板の受け取り又は受け渡しを行う突き上げピンを有し、蓋に取り付けられた突き上げピンユニットを備え、蓋が、突き上げピンが通る貫通孔を有するものである。
【0016】
また、本発明のプロキシミティ露光装置の基板支持方法は、チャックの開口から上昇して基板の受け取り又は受け渡しを行う突き上げピンを有する突き上げピンユニットを、蓋に取り付け、蓋に突き上げピンが通る貫通孔を設けるものである。
【0017】
チャックの開口から上昇して基板の受け取り又は受け渡しを行う突き上げピンを有する突き上げピンユニットを、蓋に取り付けるので、基板の大型化に伴いチャックが大型化しても、突き上げピンの取り付け高さの調整が蓋の取り付け高さの調整と同時に容易に行われる。そして、突き上げピンユニットを挿入するために設けられた開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらが効果的に抑制される。
【0018】
本発明の表示用パネル基板の製造方法は、上記のいずれかのプロキシミティ露光装置を用いて基板の露光を行い、あるいは、上記のいずれかのプロキシミティ露光装置の基板支持方法を用いて基板を支持して、基板の露光を行うものである。チャックの開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらが効果的に抑制されるので、不良品の発生が少なくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプロキシミティ露光装置及びプロキシミティ露光装置の基板支持方法によれば、チャックに、少なくとも1つの開口と、開口を塞ぐ蓋と、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整する第1の高さ調整機構とを設け、チャックの開口の周囲に非真空区画を形成し、非真空区画からチャックの裏面へ通じる空気通路を設け、非真空区画の周囲に真空区画を形成し、第1の高さ調整機構により、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整して、蓋の上面の高さをチャックの上面の高さより低くし、真空区画により基板を真空吸着して、基板をチャックに固定し、空気通路により非真空区画を大気開放して、非真空区画の空気の圧力の低下を防止することにより、チャックの開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらを効果的に抑制することができる。
【0020】
さらに、本発明のプロキシミティ露光装置及びプロキシミティ露光装置の基板支持方法によれば、チャックをチャック支持台に搭載して、チャックの裏面をチャック支持台により複数箇所で支持し、チャック支持台がチャックの裏面を支持する高さを調整する第2の高さ調整機構を設け、チャックの上方から、蓋を取り外した開口を通して、第2の高さ調整機構を操作することにより、基板の大型化に伴いチャックが大型化しても、チャックの裏面を支持する各点の高さを容易に調整して、チャックの平坦度を向上させることができる。そして、チャックの裏面を支持する高さを調整するために設けられた開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらを効果的に抑制することができる。
【0021】
あるいは、本発明のプロキシミティ露光装置及びプロキシミティ露光装置の基板支持方法によれば、チャックの開口から上昇して基板の受け取り又は受け渡しを行う突き上げピンを有する突き上げピンユニットを、蓋に取り付け、蓋に突き上げピンが通る貫通孔を設けることにより、基板の大型化に伴いチャックが大型化しても、突き上げピンの取り付け高さの調整を、蓋の取り付け高さの調整と同時に容易に行うことができる。そして、突き上げピンユニットを挿入するために設けられた開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらを効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明の表示用パネル基板の製造方法によれば、チャックの開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらを効果的に抑制し、不良品の発生を少なくすることができるので、大型の表示用パネル基板を歩留まり良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2(a)は本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置のチャックの上面図、図2(b)はチャック及びチャック支持台の側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置のチャックの真空区画を示す図である。
【図4】図4(a)はチャック支持台の上面図、図4(b)はチャック支持台の側面図である。
【図5】チャック支持台に設けられた高さ調整機構の一部断面側面図である。
【図6】チャック部材10aの開口部の上面図である。
【図7】図6のA−A部の一部断面側面図である。
【図8】図6のB−B部の一部断面側面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態によるプロキシミティ露光装置の概略構成を示す図である。
【図10】本発明の他の実施の形態によるプロキシミティ露光装置のチャックの上面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態によるプロキシミティ露光装置のチャックの真空区画を示す図である。
【図12】チャックの中央部付近に設けられた開口部の上面図である。
【図13】図12のC−C部の一部断面側面図である。
【図14】図12のD−D部の一部断面側面図である。
【図15】図15(a)は突き上げピンの上面図、図15(b)は図15(a)のE−E部の一部断面側面図である。
【図16】図16(a)はチャックの周辺部付近に設けられた貫通孔の上面図、図16(b)は図16(a)のF−F部の一部断面側面図である。
【図17】突き上げピンユニットの動作を説明する図である。
【図18】液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図19】液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置の概略構成を示す図である。本実施の形態のプロキシミティ露光装置は、ベース3、Xガイド4、Xステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、チャック支持台9、チャック10、マスクホルダ20、Xステージ駆動回路71、Yステージ駆動回路72、θステージ駆動回路73、及び主制御装置80を含んで構成されている。プロキシミティ露光装置は、これらの他に、基板1をチャック10へ搬入し、また基板1をチャック10から搬出する基板搬送ロボット、露光光を照射する照射光学系、装置内の温度管理を行う温度制御ユニット等を備えている。
【0025】
なお、以下に説明する実施の形態におけるXY方向は例示であって、X方向とY方向とを入れ替えてもよい。
【0026】
図1において、チャック10は、基板1のロード及びアンロードを行うロード/アンロード位置にある。ロード/アンロード位置において、図示しない基板搬送ロボットにより、基板1がチャック10へ搬入され、また基板1がチャック10から搬出される。チャック10への基板1のロード及びチャック10からの基板1のアンロードは、チャック10に設けた複数の突き上げピンを用いて行われる。突き上げピンは、チャック10の内部に収納されており、チャック10の内部から上昇して、基板1をチャック10にロードする際、基板搬送ロボットから基板1を受け取り、基板1をチャック10からアンロードする際、基板搬送ロボットへ基板1を受け渡す。
【0027】
基板1の露光を行う露光位置の上空には、マスク2を保持するマスクホルダ20が設置されている。マスクホルダ20は、マスク2の周辺部を真空吸着して保持する。マスクホルダ20に保持されたマスク2の上空には、図示しない照射光学系が配置されている。露光時、照射光学系からの露光光がマスク2を透過して基板1へ照射されることにより、マスク2のパターンが基板1の表面に転写され、基板1上にパターンが形成される。
【0028】
チャック10は、チャック支持台9を介してθステージ8に搭載されており、θステージ8の下にはYステージ7及びXステージ5が設けられている。Xステージ5は、ベース3に設けられたXガイド4に搭載され、Xガイド4に沿ってX方向(図1の図面横方向)へ移動する。Yステージ7は、Xステージ5に設けられたYガイド6に搭載され、Yガイド6に沿ってY方向(図1の図面奥行き方向)へ移動する。θステージ8は、Yステージ7に搭載され、θ方向へ回転する。チャック支持台9は、θステージ8に搭載され、チャック10を支持する。Xステージ駆動回路71、Yステージ駆動回路72、θステージ駆動回路73は、主制御装置80の制御により、Xステージ5、Yステージ7、θステージ8をそれぞれ駆動する。
【0029】
Xステージ5のX方向への移動及びYステージ7のY方向への移動により、チャック10は、ロード/アンロード位置と露光位置との間を移動される。ロード/アンロード位置において、Xステージ5のX方向への移動、Yステージ7のY方向への移動、及びθステージ8のθ方向への回転により、チャック10に搭載された基板1のプリアライメントが行われる。露光位置において、Xステージ5のX方向への移動及びYステージ7のY方向への移動により、チャック10に搭載された基板1のXY方向へのステップ移動が行われる。そして、Xステージ5のX方向への移動、Yステージ7のY方向への移動、及びθステージ8のθ方向への回転により、基板1の位置決めが行われる。また、図示しないZ−チルト機構によりマスクホルダ20をZ方向(図1の図面上下方向)へ移動してチルトすることにより、マスク2と基板1とのギャップ合わせが行われる。
【0030】
なお、本実施の形態では、マスクホルダ20をZ方向へ移動してチルトすることにより、マスク2と基板1とのギャップ合わせを行っているが、チャック支持台9にZ−チルト機構を設けて、チャック10をZ方向へ移動してチルトすることにより、マスク2と基板1とのギャップ合わせを行ってもよい。
【0031】
図2(a)は本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置のチャックの上面図、図2(b)はチャック及びチャック支持台の側面図である。本実施の形態では、チャック10が、3つのチャック部材10a,10b,10cにより構成されている。しかしながら、本発明はこれに限らず、チャック10を1つ又は4つ以上のチャック部材で構成してもよい。チャック10を複数のチャック部材で構成すると、チャック10全体の寸法が大きくても、チャック10の加工及び運搬を、チャック部材毎に容易に行うことができる。
【0032】
図2(a)において、各チャック部材10a,10b,10cの表面には、図示しない凸部と、土手12とが設けられている。凸部は、直径数mmのピン形状であり、各チャック部材10a,10b,10cの表面に所定の間隔で複数設けられている。チャック10に基板が搭載されたとき、凸部は、基板を複数の点で支持する。このとき、チャック10の表面の凸部以外の部分と基板との間には、空間が形成される。土手12は、所定の幅の連続した壁であり、チャック10の表面の凸部以外の部分と基板との間の空間に、真空区画を形成する。
【0033】
なお、土手12は、裏面転写が発生したときに人間の目で認識され難い様に、直線ではなく不規則な線で構成されているが、図2(a)では、見易くするため、土手12の縁を直線で示している。また、各チャック部材10a,10b,10cの表面には、凸部と土手12の他に、真空区画の真空引きを行う吸着孔、及び突き上げピンが通る貫通孔が設けられているが、図2(a)ではそれらが省略されている。
【0034】
図3は、本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置のチャックの真空区画を示す図である。図3において、チャック部材10a,10b,10c上の破線で囲まれ網掛けが施された領域10f〜10zが、土手12により形成された真空区画である。なお、本実施の形態では、チャック部材10aに長方形又は正方形の合計13個の真空区画10f〜10rが設けられ、チャック部材10b,10cに長方形の合計4個の真空区画10s〜10v,10w〜10zがそれぞれ設けられているが、真空区画の形状及び数は、これに限定されるものではない。
【0035】
図2(b)において、チャック支持台9は、各チャック部材10a,10b,10cの裏面を複数箇所で支持する。チャック支持台9には、後述する様に、チャック支持台9が各チャック部材10a,10b,10cの裏面を支持する高さを調整する複数の高さ調整機構が設けられている。また、チャック部材10aの裏面の中央部付近にも、後述する様に、チャック支持台9がチャック部材10aの裏面を支持する高さを調整する複数の高さ調整機構が設けられている。
【0036】
図2(a)において、チャック部材10aの中央部付近には、複数の円形の開口が設けられており、開口には蓋14が取り付けられている。本実施の形態では、各チャック部材10a,10b,10cをチャック支持台9に搭載した後、チャック支持台9に設けられた高さ調整機構をチャック10の外側から操作し、あるいはチャック部材10aの裏面の中央部付近に設けられた高さ調整機構を開口から操作して、チャック支持台9が各チャック部材10a,10b,10cの裏面を支持する高さを調整する。チャック10全体の寸法が大きく、チャック10の外側からチャック部材10aの裏面の中央部付近に設けられた高さ調整機構に工具が届かなくても、チャック部材10aの裏面の中央部付近に設けられた高さ調整機構を開口から容易に操作することができるので、チャック10の平坦度を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、チャック部材10aの中央部付近に12個の開口が設けられているが、開口の位置及び数は、これに限定されるものではない。
【0038】
図4(a)はチャック支持台の上面図、図4(b)はチャック支持台の側面図である。チャック支持台9は、フレーム30、調整ねじ31を含む高さ調整機構、及び受け部35を含んで構成されている。フレーム30は、図1のθステージ8に搭載されている。フレーム30は、放射状又は縦横に伸びる所定の厚さの複数のスポークを有し、各スポークの中間及び先端には、所定の厚さのリムが取り付けられて、格子状の枠を形成している。フレーム30の上面には、調整ねじ31を含む高さ調整機構と、チャック部材10aの裏面の中央部付近に設けられた高さ調整機構が接触する受け部35とが取り付けられている。
【0039】
なお、本実施の形態では、調整ねじ31を含む高さ調整機構が82箇所に取り付けられ、受け部35が12箇所に取り付けられているが、調整ねじ31を含む高さ調整機構及び受け部35の数及びそれらの配置は、チャック部材の大きさ及び形状に応じて適宜決定される。
【0040】
図2(b)において、各チャック部材10a,10b,10cの裏面には、調整ねじ31が接触する複数の支持部15が設けられている。調整ねじ31は、各チャック部材10a,10b,10cの裏面に設けられた支持部15に接触し、各チャック部材10a,10b,10cの裏面を複数の点で支持する。
【0041】
図5は、チャック支持台に設けられた高さ調整機構の一部断面側面図である。高さ調整機構は、フレーム30に設けられたねじ穴と、調整ねじ31、ばね座金32、平座金33、及び止めナット34とを含んで構成されている。各チャック部材10a,10b,10cの裏面に設けられた支持部15は、ねじ受け16、カバー17、及びボルト18から成る。
【0042】
調整ねじ31の頭は、球面の一部を形成しており、その頂点がねじ受け16に接触している。調整ねじ31の頭とカバー17との間には、ばね座金32が入れられ、カバー17は、ボルト18によりねじ受け16に固定されている。ばね座金32を調整ねじ31の頭とカバー17との間に入れることにより、各チャック部材10a,10b,10cの横方向へのずれが防止される。
【0043】
調整ねじ31のねじ部31aは、フレーム30に設けられたねじ穴にねじ込まれている。調整ねじ31のねじ部31aには、平座金33及び止めナット34が取り付けられており、止めナット34により調整ねじ31がフレーム30に固定されている。止めナット34を緩め、調整ねじ31のねじ込み量を調整して、再び止めナット34を締めることにより、調整ねじ31が各チャック部材10a,10b,10cの裏面を支持する点の高さが調整される。
【0044】
図6は、チャック部材10aの開口部の上面図である。図6において、チャック部材10a及び蓋14の表面には、複数の凸部11が所定の間隔で設けられている。また、チャック部材10aの開口の周囲には、土手12が設けられており、土手12の外側に、真空区画が形成されている。土手12の外側に形成された真空区画には、真空区画を真空引きするための吸着孔13が設けられており、吸着孔13は、図示しない真空設備に接続されている。土手12の内側の開口の周囲は、非真空区画と成っている。蓋14の中央には、後述するねじ穴兼空気通路14aが設けられている。また、蓋14の周辺部には、後述する止めねじ47,48 ,49をねじ込むねじ穴が複数箇所に設けられている。
【0045】
図7は、図6のA−A部の一部断面側面図である。また、図8は、図6のB−B部の一部断面側面図である。図7において、チャック部材10aの裏面の開口周辺には、蓋14を支持する支持部材40が取り付けられている。支持部材40は、ボルト45によりチャック部材10aの裏面に固定されている。支持部材40には、空気通路40aが設けられており、チャック部材10aの表面の開口の周囲に形成された非真空区画は、ねじ穴兼空気通路14a及び空気通路40aを介して、チャック部材10aの裏面へ通じている。蓋14を取り外す際は、図示しないねじをねじ穴兼空気通路14aにねじ込み、ねじを引っ張って蓋14をチャック部材10aの開口から持ち上げる。
【0046】
チャック部材10aの裏面の中央部付近に設けられた高さ調整機構は、支持部材40に設けられたねじ穴と、調整ねじ41、ばね座金42、及び止めナット44とを含んで構成されている。フレーム30の上面に設けられた受け部35は、ねじ受け36、カバー37、及びボルト38から成る。
【0047】
調整ねじ41の頭は、球面の一部を形成しており、その頂点がねじ受け36に接触している。調整ねじ41の頭とカバー37との間には、ばね座金42が入れられ、カバー37は、ボルト38によりねじ受け36に固定されている。ばね座金42を調整ねじ41の頭とカバー37との間に入れることにより、チャック部材10aの横方向へのずれが防止される。
【0048】
調整ねじ41のねじ部41aは、支持部材40に設けられたねじ穴にねじ込まれている。調整ねじ41のねじ部41aの上端には、調整ねじ41を上方から回すための、図示しない溝が設けられている。調整ねじ41のねじ部41aには、止めナット44が取り付けられており、止めナット44により調整ねじ41が支持部材40に固定されている。止めナット44を緩め、調整ねじ41のねじ込み量を調整して、再び止めナット44を締めることにより、チャック支持台9がチャック部材10aの裏面を支持する高さが調整される。基板の大型化に伴いチャック10が大型化しても、チャック10の裏面を支持する各点の高さが容易に調整され、チャック10の平坦度が向上する。チャック部材10aの開口に蓋14を取り付けない状態で、開口からこれらの操作を行った後、開口に蓋14を取り付ける。
【0049】
図8において、止めねじ48は、蓋14の周辺部に設けたねじ穴にねじ込まれて、止めねじ49により固定されている。止めねじ48は、蓋14の底面から突き出て、支持部材40に接触している。本実施の形態では、止めねじ49を外し、止めねじ48のねじ込み量を調整して、再び止めねじ49を締めることにより、チャック部材10aに対する蓋14の取り付け高さを調整する。蓋14の底面から突き出した止めねじ48を用いて、蓋14の取り付け高さを容易に調整することができる。
【0050】
このとき、蓋14の取り付け高さは、蓋14の上面の高さがチャック部材10aの上面の高さより0.05〜0.2mm低くなる様に調整する。蓋14の上面の高さをチャック部材10aの上面の高さより意図的に低くするので、基板をチャック10に搭載したとき、基板の蓋14の上に搭載されている部分が盛り上がる恐れがない。蓋14の取り付け高さを調整した後、図7において、ボルト46により蓋14を支持部材40に固定し、ボルト46を止めねじ47で固定する。
【0051】
図7において、基板をチャック10に搭載した後、チャック部材10aの土手12の外側に形成された真空区画は、吸着孔13により真空引きが行われて、基板を真空吸着する。このとき、ねじ穴兼空気通路14a及び空気通路40aにより、開口の周囲に形成された非真空区画が大気開放され、非真空区画の空気の圧力の低下が防止されるので、非真空区画の空気が周囲の真空区画に漏れても非真空区画の空気の圧力が下がることがなく、基板の蓋14の上に搭載されている部分の窪みが極めて小さくなる。従って、チャック部材10aの開口を塞ぐ蓋14の高低により発生する露光むらが効果的に抑制される。
【0052】
図1〜図8に示した実施の形態によれば、チャック10をチャック支持台9に搭載して、チャック10の裏面をチャック支持台9により複数箇所で支持し、チャック支持台9がチャック10の裏面を支持する高さを調整する高さ調整機構を設け、チャック10の上方から、蓋14を取り外した開口を通して、高さ調整機構を操作することにより、基板1の大型化に伴いチャック10が大型化しても、チャック10の裏面を支持する各点の高さを容易に調整して、チャック10の平坦度を向上させることができる。そして、チャック10の裏面を支持する高さを調整するために設けられた開口を塞ぐ蓋14の高低により発生する露光むらを効果的に抑制することができる。
【0053】
図9は、本発明の他の実施の形態によるプロキシミティ露光装置の概略構成を示す図である。本実施の形態のプロキシミティ露光装置は、ベース3、Xガイド4、Xステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、チャック支持台9、チャック10、突き上げピンユニット、マスクホルダ20、Xステージ駆動回路71、Yステージ駆動回路72、θステージ駆動回路73、及び主制御装置80を含んで構成されている。ベース3、Xガイド4、Xステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、チャック支持台9、マスクホルダ20、Xステージ駆動回路71、Yステージ駆動回路72、θステージ駆動回路73、及び主制御装置80の構成及び動作は、図1に示した実施の形態と同様である。
【0054】
図10は、本発明の他の実施の形態によるプロキシミティ露光装置のチャックの上面図である。チャック10の表面には、図示しない凸部と、土手12とが設けられている。凸部は、直径数mmのピン形状であり、チャック10の表面に所定の間隔で複数設けられている。チャック10に基板が搭載されたとき、凸部は、基板を複数の点で支持する。このとき、チャック10の表面の凸部以外の部分と基板との間には、空間が形成される。土手12は、所定の幅の連続した壁であり、チャック10の表面の凸部以外の部分と基板との間の空間に、真空区画を形成する。
【0055】
なお、土手12は、裏面転写が発生したときに人間の目で認識され難い様に、直線ではなく不規則な線で構成されているが、図10では、見易くするため、土手12の縁を直線で示している。また、チャック10の表面には、凸部と土手12の他に、真空区画の真空引きを行う吸着孔が設けられているが、図10ではそれらが省略されている。
【0056】
図11は、本発明の他の実施の形態によるプロキシミティ露光装置のチャックの真空区画を示す図である。図11において、チャック10上の破線で囲まれ網掛けが施された領域10f〜10t、10w、及び10xが、土手12により形成された真空区画である。なお、本実施の形態では、チャック10に長方形又は正方形の合計17個の真空区画10f〜10t、10w、及び10xが設けられているが、真空区画の形状及び数は、これに限定されるものではない。
【0057】
図10において、チャック10の中央部付近には、後述する突き上げピンユニットが挿入される複数の開口が設けられており、開口には蓋53がはめられている。蓋53には貫通孔が設けられており、貫通孔には蓋53の下方から突き上げピン52が挿入されている。また、開口の外側のチャック10の周辺部付近には、複数の貫通孔が設けられており、貫通孔にはチャック10の下方から突き上げピン52が挿入されている。
【0058】
なお、本実施の形態では、チャック10の中央部付近に16個の開口が設けられているが、開口の位置及び数はこれに限定されるものではない。また、本実施の形態では、チャック10の周辺部付近に42個の貫通孔が設けられているが、貫通孔の位置及び数はこれに限定されるものではない。
【0059】
図12は、チャックの中央部付近に設けられた開口部の上面図である。図12において、チャック10及び蓋53の表面には、複数の凸部11が所定の間隔で設けられている。また、チャック10の開口の周囲には、土手12が設けられており、土手12の外側に、真空区画が形成されている。土手12の外側に形成された真空区画には、真空区画を真空引きするための吸着孔13が設けられており、吸着孔13は、図示しない真空設備に接続されている。土手12の内側の開口の周囲は、非真空区画と成っている。突き上げピン52の中央には、後述する空気通路52aが設けられている。また、蓋53の周辺部には、止めねじ56aをねじ込むねじ穴と、ボルト57を通す段差付き穴とが、複数箇所に設けられている。
【0060】
図13は図12のC−C部の一部断面側面図、図14は図12のD−D部の一部断面側面図である。図13及び図14において、チャック10の中央部付近に設けられた開口に挿入される突き上げピンユニットは、モータ51、突き上げピン52、フランジ54a、ボルト55a,57、及び止めねじ56aを含んで構成されている。モータ51は、パルスモータと、パルスモータに接続されたボールねじと、ロッドとを含んで構成され、パルスモータでボールねじを駆動することにより、ロッド収納部51a内に収納されたロッドが、上昇及び下降する。モータ51のロッドの先端には、突き上げピン52が取り付けられている。
【0061】
図13において、モータ51のロッド収納部51aの上面には、フランジ54aが取り付けられ、フランジ54aは、ボルト55aにより蓋53の裏面に固定されている。フランジ54aには、後述する空気通路52dが設けられている。一方、チャック10の裏面の開口周辺には、蓋53を支持するリング状の支持プレート58が取り付けられている。支持プレート58は、ボルト59によりチャック10の裏面に固定されている。蓋53は、蓋53の周辺部の段差付き穴に通したボルト57により、支持プレート58に固定されている。図14において、止めねじ56aは、蓋53の周辺部のねじ穴にねじ込まれ、蓋53の底面から突き出て、支持プレート58の上面に接触している。
【0062】
本実施の形態では、突き上げピンユニットをチャック10に取り付ける際、まず、チャック10の上方から、突き上げピンユニットを開口に挿入する。次に、蓋53を開口に挿入し、止めねじ56aのねじ込み量を調整して、蓋53の取り付け高さを調整する。基板の大型化に伴いチャック10が大型化しても、突き上げピン52の取り付け高さの調整を、蓋53の取り付け高さの調整と同時に容易に行うことができる。
【0063】
このとき、蓋53の取り付け高さは、蓋53の上面の高さがチャック10の上面の高さより0.05〜0.2mm低くなる様に調整する。蓋53の上面の高さをチャック10の上面の高さより意図的に低くするので、基板をチャック10に搭載したとき、基板の蓋53の上に搭載されている部分が盛り上がる恐れがない。蓋53の取り付け高さを調整した後、図13において、ボルト57により蓋53を支持プレート58に固定する。
【0064】
図15(a)は突き上げピンの上面図、図15(b)は図15(a)のE−E部の一部断面側面図である。図15(a)に示す様に、突き上げピン52の中央には、空気通路52aが設けられている。図15(b)に示す様に、突き上げピン52の内部には、モータ51のロッド51bが挿入される穴が設けられており、その穴の脇に空気通路52aからつながる空気通路52b,52cが形成されている。チャック10の表面の開口の周囲に形成された非真空区画は、突き上げピン52に設けられた空気通路52a,52b,52c及びフランジ54aに設けられた空気通路52dを介して、チャック10の裏面へ通じている。
【0065】
図12において、基板をチャック10に搭載した後、チャック10の土手12の外側に形成された真空区画は、吸着孔13により真空引きが行われて、基板を真空吸着する。このとき、突き上げピン52に設けられた空気通路52a,52b,52c及びフランジ54aに設けられた空気通路52dにより、開口の周囲に形成された非真空区画が大気開放され、非真空区画の空気の圧力の低下が防止されるので、非真空区画の空気が周囲の真空区画に漏れても非真空区画の空気の圧力が下がることがなく、基板の蓋53の上に搭載されている部分の窪みが極めて小さくなる。従って、チャック10の開口を塞ぐ蓋53の高低により発生する露光むらが効果的に抑制される。
【0066】
図16(a)はチャックの周辺部付近に設けられた貫通孔の上面図、図16(b)は図16(a)のF−F部の断面図である。チャックの周辺部付近に設けられた貫通孔に挿入される突き上げピンの突き上げピンユニットは、モータ51、突き上げピン52、フランジ54b、ボルト55b、及び止めねじ56bを含んで構成されている。
【0067】
図16(b)において、モータ51のロッド収納部51aの上面には、フランジ54bが取り付けられ、フランジ54bは、ボルト55bによりチャック10の裏面に固定されている。フランジ54bには、止めねじ56bをねじ込むねじ穴が、複数箇所に設けられており、止めねじ56bは、フランジ54bのねじ穴にねじ込まれ、フランジ54bの上面から突き出て、チャック10の裏面に接触している。チャック10の外側から、チャック10の下へ手を伸ばし、あるいは治具を用いて、ボルト55bを緩め、止めねじ56bのねじ込み量を調整することにより、突き上げピンユニットの取り付け高さが調整される。
【0068】
図17は、突き上げピンユニットの動作を説明する図である。以下の説明において、チャック10に基板1を搭載するときの突き上げピン52のZ方向の位置を基板搭載位置、基板搬送ロボットから基板1を受け取るときの突き上げピン52のZ方向の位置を基板受け取り位置、基板搬送ロボット30へ基板1を受け渡すときの突き上げピン52のZ方向の位置を基板受け渡し位置とする。基板搭載位置にあるとき、突き上げピン52は、突き上げピンユニットの蓋53に設けた貫通孔又はチャック10に設けた貫通孔に完全に収納され、突き上げピン52の先端は、チャック10の表面から突き出ない。なお、本実施の形態では、基板受け取り位置と基板受け渡し位置とを同じ位置としているが、両者をZ方向に異なる位置としてもよい。
【0069】
基板1をチャック10にロードする際、まず、各突き上げピンユニットのモータ51は、突き上げピン52を、基板搭載位置から基板受け取り位置へ上昇させる(図17(a))。基板搬送ロボットは、基板1を搭載したハンドリングアーム60を、チャック10の上空へ移動する(図17(a))。次に、基板搬送ロボットは、ハンドリングアーム60を下降させて、基板1を突き上げピン52に載せ(図17(b))、ハンドリングアーム60をさらに下降させて、ハンドリングアーム60を基板1から離す(図17(c))。これにより、各突き上げピン52は、基板搬送ロボットから基板1を受け取る。次に、基板搬送ロボットは、ハンドリングアーム60をチャック10の上空から退避させる(図17(d))。続いて、各突き上げピンユニットのモータ51は、突き上げピン52を基板受け取り位置から基板搭載位置へ下降させ、基板1をチャック10に搭載する(図17(e))。
【0070】
基板1をチャック10からアンロードする際、上記と逆に、まず、各突き上げピンユニットのモータ51は、突き上げピン52を、基板搭載位置から基板受け渡し位置へ上昇させる(図17(d))。基板搬送ロボットは、ハンドリングアーム60を、基板1とチャック10の間の空間へ挿入する(図17(c))。次に、基板搬送ロボットは、ハンドリングアーム60を上昇させて、基板1をハンドリングアーム60に載せ(図17(b))、ハンドリングアーム60をさらに上昇させて、基板1を突き上げピン52から持ち上げる(図17(a))。これにより、各突き上げピン52は、基板搬送ロボットへ基板1を受け渡す。その後、基板搬送ロボットは、基板1を搭載したハンドリングアーム60を、チャック10の上空から退避させる。
【0071】
図9〜図17に示した実施の形態によれば、チャック10の開口から上昇して基板1の受け取り又は受け渡しを行う突き上げピン52を有する突き上げピンユニットを、蓋53に取り付け、蓋53に突き上げピン52が通る貫通孔を設けることにより、基板1の大型化に伴いチャック10が大型化しても、突き上げピン52の取り付け高さの調整を、蓋53の取り付け高さの調整と同時に容易に行うことができる。そして、突き上げピンユニットを挿入するために設けられた開口を塞ぐ蓋53の高低により発生する露光むらを効果的に抑制することができる。
【0072】
本発明のプロキシミティ露光装置を用いて基板の露光を行い、あるいは、本発明のプロキシミティ露光装置の基板支持方法を用いて基板を支持して、基板の露光を行うことにより、チャックの開口を塞ぐ蓋の高低により発生する露光むらを効果的に抑制し、不良品の発生を少なくすることができるので、大型の表示用パネル基板を歩留まり良く製造することができる。
【0073】
例えば、図18は、液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。薄膜形成工程(ステップ101)では、スパッタ法やプラズマ化学気相成長(CVD)法等により、基板上に液晶駆動用の透明電極となる導電体膜や絶縁体膜等の薄膜を形成する。レジスト塗布工程(ステップ102)では、ロール塗布法等により感光樹脂材料(フォトレジスト)を塗布して、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜上にフォトレジスト膜を形成する。露光工程(ステップ103)では、プロキシミティ露光装置や投影露光装置等を用いて、マスクのパターンをフォトレジスト膜に転写する。現像工程(ステップ104)では、シャワー現像法等により現像液をフォトレジスト膜上に供給して、フォトレジスト膜の不要部分を除去する。エッチング工程(ステップ105)では、ウエットエッチングにより、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜の内、フォトレジスト膜でマスクされていない部分を除去する。剥離工程(ステップ106)では、エッチング工程(ステップ105)でのマスクの役目を終えたフォトレジスト膜を、剥離液によって剥離する。これらの各工程の前又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。これらの工程を数回繰り返して、基板上にTFTアレイが形成される。
【0074】
また、図19は、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離等の処理により、基板上にブラックマトリクスを形成する。着色パターン形成工程(ステップ202)では、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法等により、基板上に着色パターンを形成する。この工程を、R、G、Bの着色パターンについて繰り返す。保護膜形成工程(ステップ203)では、着色パターンの上に保護膜を形成し、透明電極膜形成工程(ステップ204)では、保護膜の上に透明電極膜を形成する。これらの各工程の前、途中又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。
【0075】
図18に示したTFT基板の製造工程では、露光工程(ステップ103)において、図19に示したカラーフィルタ基板の製造工程では、ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)及び着色パターン形成工程(ステップ202)の露光処理において、本発明のプロキシミティ露光装置又は本発明のプロキシミティ露光装置の基板支持方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 基板
2 マスク
3 ベース
4 Xガイド
5 Xステージ
6 Yガイド
7 Yステージ
8 θステージ
9 チャック支持台
10 チャック
10a,10b,10c チャック部材
11 凸部
12 土手
13 吸着孔
14 蓋
14a ねじ穴兼空気通路
15 支持部
16,36 ねじ受け
17,37 カバー
18,38 ボルト
20 マスクホルダ
30 フレーム
31,41 調整ねじ
32,42 ばね座金
33 平座金
34,44 止めナット
35 受け部
40 支持部材
40a 空気通路
45,46 ボルト
47 ,48,49 止めねじ
51 モータ
52 突き上げピン
52a,52b,52c,52d 空気通路
53 蓋
54a,54b フランジ
55a,55b,57,59 ボルト
56a,56b 止めねじ
58 支持プレート
60 ハンドリングアーム
71 Xステージ駆動回路
72 Yステージ駆動回路
73 θステージ駆動回路
80 主制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクと基板との間に微小なギャップを設けて、マスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置において、
前記チャックは、少なくとも1つの開口と、該開口を塞ぐ蓋と、前記チャックに対する該蓋の取り付け高さを調整する第1の高さ調整機構と、該開口の周囲に形成された非真空区画と、該非真空区画から前記チャックの裏面へ通じる空気通路と、該非真空区画の周囲に形成された真空区画とを有し、
前記第1の高さ調整機構は、前記蓋の上面の高さが前記チャックの上面の高さより低くなる様に調整され、
前記真空区画は、基板を真空吸着して前記チャックに固定し、
前記空気通路は、前記非真空区画を大気開放して、前記非真空区画の空気の圧力の低下を防止することを特徴とするプロキシミティ露光装置。
【請求項2】
前記チャックの裏面を複数箇所で支持するチャック支持台と、
前記チャック支持台が前記チャックの裏面を支持する高さを調整する第2の高さ調整機構とを備え、
前記第2の高さ調整機構は、前記チャックの上方から、前記蓋を取り外した前記開口を通して操作されたことを特徴とする請求項1に記載のプロキシミティ露光装置。
【請求項3】
前記チャックの前記開口から上昇して基板の受け取り又は受け渡しを行う突き上げピンを有し、前記蓋に取り付けられた突き上げピンユニットを備え、
前記蓋は、前記突き上げピンが通る貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載のプロキシミティ露光装置。
【請求項4】
基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、マスクと基板との間に微小なギャップを設けて、マスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置の基板支持方法であって、
チャックに、少なくとも1つの開口と、開口を塞ぐ蓋と、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整する第1の高さ調整機構とを設け、
チャックの開口の周囲に非真空区画を形成し、
非真空区画からチャックの裏面へ通じる空気通路を設け、
非真空区画の周囲に真空区画を形成し、
第1の高さ調整機構により、チャックに対する蓋の取り付け高さを調整して、蓋の上面の高さをチャックの上面の高さより低くし、
真空区画により基板を真空吸着して、基板をチャックに固定し、
空気通路により非真空区画を大気開放して、非真空区画の空気の圧力の低下を防止することを特徴とするプロキシミティ露光装置の基板支持方法。
【請求項5】
チャックをチャック支持台に搭載して、チャックの裏面をチャック支持台により複数箇所で支持し、
チャック支持台がチャックの裏面を支持する高さを調整する第2の高さ調整機構を設け、
チャックの上方から、蓋を取り外した開口を通して、第2の高さ調整機構を操作することを特徴とする請求項4に記載のプロキシミティ露光装置の基板支持方法。
【請求項6】
チャックの開口から上昇して基板の受け取り又は受け渡しを行う突き上げピンを有する突き上げピンユニットを、蓋に取り付け、
蓋に突き上げピンが通る貫通孔を設けることを特徴とする請求項4に記載のプロキシミティ露光装置の基板支持方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のプロキシミティ露光装置を用いて基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載のプロキシミティ露光装置の基板支持方法を用いて基板を支持して、基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−210928(P2011−210928A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76850(P2010−76850)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】