説明

プロスタサイクリン誘導体

本発明は、新規のプロスタサイクリン誘導体、その許容される酸付加塩、溶媒和物、水和物、および多形体に関する。本発明は、本発明の化合物を含む組成物も提供し、プロスタサイクリンにより有利に治療される病気および疾病、特に、全身および肺の動脈血管床の拡張薬または血小板凝集阻害剤により有利に治療されるこれら病気および疾病を治療する方法におけるかかる組成物の使用についても提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2006年12月21日出願の米国仮特許出願第60/876,595号の利益を主張するものである。これら出願の全教示内容は、参照することで本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、新規のプロスタサイクリン誘導体、およびその許容される酸付加塩、溶媒和物、水和物、および多形体に関する。本発明は、本発明の化合物を含む組成物も提供し、プロスタサイクリンにより有利に治療される病気および疾病、特に、全身および肺の動脈血管床の拡張薬または血小板凝集阻害剤により有利に治療されるこれら病気および疾病を治療する方法におけるかかる組成物の使用についても提供する。
【背景技術】
【0003】
イロプロストは、プロスタサイクリン(PGI2)の合成類似体であり、米国特許第4,692,464号に記載されている。イロプロストは、(E)−(3aS,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−5−4−[(E)−(3S,4RS)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテン−6−インイル]−Δ2(1H),Δ−ペンタレン吉草酸;および、5−[(E)−(IS,5S,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[(E)−(3S,4RS)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテン−6−イニル]−ビ−シクロ[3.3.0]オクタン−3−イリデン)ペンタン酸の化学名で知られている。
【0004】
イロプロストには、血小板凝集および血小板粘着を阻害するin vitro薬理作用があることが知られている。細動脈や小静脈を拡張させることでも知られており、セロトニンまたはヒスタミンなどのメディエータにより血管透過性を減少させることが示されている。イロプロストは、肺高血圧症の動物モデルにおいて肺動脈圧を低下させることも示されている。その血小板抗凝集および抗血栓作用とともに、肺血管収縮を阻害し、肺血管抵抗を減少させる能力は、肺動脈高血圧症の治療処置における使用を支持する要因である。米国では、イロプロストの吸入可能製剤を用いることによるかかる使用が承認されている。
【0005】
その効果にも関わらず、半減期が短いため、イロプロストは、1日6〜9回、2時間毎に1回以下で投与しなければならない。この高頻度の投与は、摂取し忘れや、摂取し忘れを補う際の過剰摂取などの服薬遵守の問題を招くことがある。さらに、患者は、睡眠中に十分な治療カバレージを受けることがない。イロプロストのより一般的な副作用としては、臨床検査の異常;背痛;横になった姿勢または座った姿勢から突然立ち上がった際の視朦、昏蒙、眩暈感、脱力、または立ちくらみ;悪寒;咳増加;咳嗽または吐血;下痢;開口困難;熱感;発熱;体全体の不快感または違和感;頭痛;関節痛;牙関緊急;食欲減退;筋肉痛;筋痙縮;特に首および背中の筋痙攣;吐気;顔面、首、腕、時には胸郭上部の赤み;水洟;震え;咽喉痛;発汗;睡眠障害;不眠症;寝苦しさ;異常な疲れまたは脱力感;および嘔吐が挙げられる。これらの副作用は、イロプロストの代謝産物、および/または、毎日必要とされる高頻度の服用の服薬遵守が低いことによる過剰摂取の1つ以上に起因する可能性がある。
【0006】
従って、イロプロストの有益な活性にも関わらず、上記の病気および疾病を治療するため新規の改良型化合物の継続的必要性がある。
(定義)
【0007】
「改善する」および「治療する」という用語は、区別なく使用され、両者とも、病気(例:本明細書に記載の病気または疾患)の進展または進行を減少する、抑制する、弱毒化する、軽減する、阻む、または安定化することを意味する。
【0008】
「病気」とは、細胞、組織、または器官の正常機能を損なうまたは妨げるあらゆる疾病または疾患のことを意味する。
【0009】
合成に用いられる化学物質の由来に応じて、天然同位体存在度におけるいくつかのばらつきが合成化合物で起こることが分かるであろう。従って、イロプロスト製剤は、少量の重水素化された同位体置換体を本質的に含有する。天然に豊富で安定な水素および炭素同位体の濃度は、このばらつきに関わらず、少濃度であり、本発明の化合物の安定同位体置換の程度に対して微々たるものである。例えば、Wada Eら,Seikagaku 1994,66:15;Ganes LZら,Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol 1998,119:725を参照されたい。本発明の化合物において、特定の位置が重水素を有すると指定される場合、その位置における重水素の存在度は、重水素の天然存在度である0.015%よりも実質的に大きいことは言うまでもない。重水素を有すると指定される位置は、通常、前記化合物において重水素と指定される各原子で少なくとも3000(45%重水素結合)の最小の同位体濃縮係数を有する。
【0010】
本明細書で使用する「同位体濃縮係数」という用語は、特定同位体の同位体存在度と天然存在度の間の比率を意味する。
【0011】
他の実施形態では、本発明の化合物は、指定された各重水素原子に対して少なくとも3500(指定された各重水素原子で52.5%の重水素結合)、少なくとも4000(60%重水素結合)、少なくとも4500(67.5%重水素結合)、少なくとも5000(75%重水素結合)、少なくとも5500(82.5%重水素結合)、少なくとも6000(90%重水素結合)、少なくとも6333.3(95%重水素結合)、少なくとも6466.7(97%重水素結合)、少なくとも6600(99%重水素結合)、または少なくとも6633.3(99.5%重水素結合)の同位体濃縮係数を有する。
【0012】
本発明の化合物において、特定の同位体と具体的に指定されない任意の原子は、その原子の任意の安定同位体を表すことを意味する。特に明記しない限り、位置が「H」または「水素」と具体的に指定される場合、その位置は、その天然存在度の同位体組成で水素を有すると理解される。
【0013】
他の実施形態では、本発明の化合物は、重水素が全くない形態を含む、結合した他の全ての同位体置換体を10%未満で含有し、6%未満で含有するのが好ましく、3%未満で含有するのがより好ましい。ある態様では、化合物は、重水素が全くない形態を含む、結合した他の全ての同位体置換体を「X」%未満で含有し;Xは、0以上10以下(例:1、0.5、0.001)の任意の数である。結合した他の全ての同位体置換体を10%を超えて含む組成物は、本明細書では「混合物」と呼び、以下に記載のパラメータを満たしていなければならない。同位体組成のこれらの制限、および、本明細書における同位体組成への全ての参照は、式Iまたは式IIの化合物の活性な遊離塩基形中に存在する重水素/水素の相対量のことのみを言い、プロドラッグまたは対イオンの加水分解性部分の同位体組成を含むものではない。
【0014】
「同位体置換体」という用語は、分子またはイオンの同位体組成においてのみ本発明の特定化合物とは異なる種のことを言う。
【0015】
本明細書で使用する「化合物」という用語は、その塩、溶媒和物、および水和物も含むものとする。本出願に記載されている本発明のある態様における「塩」、「溶媒和物」、または「水和物」の具体的な記載は、「化合物」という用語をこれら他の形態について記載することなく用いる場合に、本発明の他の態様においてこれら形態を意図的に省略するものと解釈されるべきではない。
【0016】
本発明の化合物の塩は、酸と、アミノ官能基などの化合物の塩基性基との間で形成されるか、あるいは、塩基と、カルボキシル官能基などの化合物の酸性基との間で形成される。別の好適な実施形態によれば、化合物は、医薬的に許容される酸付加塩である。
【0017】
本明細書で使用する「医薬的に許容される」という用語は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等がなくヒトや他の哺乳類の組織に接触させて用いるのに適切であり、なおかつ、妥当な便益/リスク比に相応した成分のことを言う。「医薬的に許容される塩」とは、受容体への投与時に、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを直接的または間接的に提供することができる任意の非毒性塩のことを意味する。「医薬的に許容される対イオン」とは、受容体への投与時に塩から放出された際に、毒性のない塩のイオン部分のことである。
【0018】
医薬的に許容される塩を形成するのに一般的に用いられる酸としては、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸のみならず、パラ−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、および酢酸などの有機酸、ならびに関連の無機酸および有機酸が挙げられる。従って、かかる医薬的に許容される塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ぎ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−l,4−ジオエート、ヘキシン−l,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。好ましい医薬的に許容される酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸で形成されたもの、特に、マレイン酸などの有機酸で形成されたものが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用する「水和物」という用語は、非共有結合性の分子間力によって結合した化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む化合物を意味する。
【0020】
本明細書で使用する「溶媒和物」という用語は、非共有結合性の分子間力によって結合した化学量論量または非化学量論量の溶媒(水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2−プロパノールなど)をさらに含む化合物を意味する。
【0021】
本発明の化合物は、オクテン−6−イニル側鎖の3位および4位で不斉炭素原子を含む。3位の立体化学はSであり、これは、活性に必要な立体化学である。このように、本発明の化合物は、個々の3S,4Sまたは3S,4Rのジアステレオマーとしても存在し、これら2つのジアステレオマーの混合物としても存在することができる。従って、本発明の化合物は、立体異性体の混合物だけでなく、他の立体異性体を実質的に含まない個々それぞれの立体異性体も含む。本明細書で使用する「他の立体異性体を実質的に含まない」という用語は、他の立体異性体を25%未満、好ましくは他の立体異性体を10%未満、より好ましくは他の立体異性体を5%未満、最も好ましくは他の立体異性体を2%未満、または他の立体異性体を「X」%未満(ここで、Xは0以上100以下の数)含むことを意味する。ジアステレオマーを得るまたは合成する方法は、当該技術分野では周知であり、最終化合物または出発材料あるいは中間体に実用可能なものとして適用することができる。他の実施形態は、化合物が単離化合物であるものである。本明細書で使用する「鏡像異性的に少なくともX%富化された」という用語は、化合物の少なくともX%が単一エナンチオマーの形態であり、Xが0以上100以下の数のものを意味する。
【0022】
本明細書で使用する「安定化合物」という用語は、製造するのに十分な安定性を有し、本明細書で詳述した目的に有用な十分な期間にわたって化合物の完全性を維持する化合物のことを言う(例:治療薬に反応する病気または疾病を治療するための治療薬、治療化合物の製造に使用する中間体、単離可能または保存可能な中間体化合物への製剤)。
【0023】
本明細書で使用する「より軽い同位体置換体」および「より軽い原子の同位体置換体」という用語は、特定化合物において重水素が占める位置に水素原子を含む点において本発明の特定化合物とは異なる種のことを言う。
【0024】
「D」とは、重水素のことを言う。
【0025】
「立体異性体」とは、エナンチオマーまたはジアステレオマーのことを言う。「Tert」、「」、および「t−」とは、3級(tertiary)のことを言う。
【0026】
本明細書を通して、該当する場合には、「各Y」への言及としては、独立して、全ての「Y」基(例:Y1a、Y1b、Y2a、およびY2b)を含み、「各Z」への言及としては、独立して、全ての「Z」基(例:Z1aおよびZ1b)を含む。
(治療化合物)
【0027】
本発明は、式Iの化合物:
【化1】

またはその医薬的に許容される塩を提供し、式中:
各Yは、水素または重水素から独立して選択され;
各Zは、水素、重水素、またはフッ素から独立して選択され;YまたはZの少なくとも1つは重水素である。
【0028】
一実施形態では、Y1aおよびY1bは同一である。より具体的な実施形態では、Y1aおよびY1bは同時に重水素である。
【0029】
別の実施形態では、Y2aおよびY2bは同一である。より具体的な実施形態では、Y2aおよびY2bは同時に重水素である。
【0030】
さらに別の実施形態では、Z1aおよびZ1bは、重水素またはフッ素から独立して選択される。より具体的には、Z1aおよびZ1bは同一である。さらにより具体的には、Z1aおよびZ1bは同時に重水素であるかまたは同時にフッ素である。とくに具体的な実施形態では、Z1aおよびZ1bは同時に重水素である。
【0031】
特定の一実施形態では、Y1a、Y1b、Y2a、およびY2bは同時に重水素である。
【0032】
別の実施形態では、化合物は、以下の表に記載されている化合物のいずれか1つから選択される:
表1.式Iの例示化合物
【表1】

【0033】
本発明はまた、式IIの化合物:
【化2】

またはその医薬的に許容される塩を提供し、式中:
各Yは、水素または重水素から独立して選択され;
各Zは、水素および重水素から独立して選択され;YまたはZの少なくとも1つは重水素である。
【0034】
式IIの一実施形態では、Y1aおよびY1bは同一である。より具体的な実施形態では、Y1aおよびY1bは同時に重水素である。
【0035】
式IIの別の実施形態では、Y2aおよびY2bは同一である。より具体的な実施形態では、Y2aおよびY2bは同時に重水素である。
【0036】
式IIのさらに別の実施形態では、Z1aおよびZ1bは同一である。さらにより具体的には、Z1aおよびZ1bは同時に重水素である。
【0037】
特定の一実施形態では、Y1a、Y1b、Y2a、およびY2bは同時に重水素である。
【0038】
別の実施形態では、化合物は、以下の表に記載されている化合物のいずれか1つから選択される:
表2.式IIの例示化合物
【表2】

【0039】
別の一連の実施形態では、上述の式Iまたは式IIの実施形態のいずれかにおいて重水素として指定されていない任意の原子は、その天然同位体存在度で存在する。
【0040】
さらに別の実施形態では、化合物は:
【化3】

化合物105、
【化4】

化合物114、
【化5】

化合物111、および
【化6】

化合物102から選択される。
【0041】
式Iおよび式IIの化合物の合成は、合成化学の分野における当業者により容易に行うことができる。関連手順および中間体は、例えば、Gais HJら、Chemistry 2006,12(21):5610−5617;Kramp GJら、J Am Chem Soc 2005,127(50):17910−17920;Kim,Mら、J Org Chem 2006,71(12):4642−4650;van Bergen,Mら、J Am Chem Soc 2002,124(16):4321−4328;Ueno Kら、Chem Pharm Bull 1984,32(9):3768−3769;Gais,HJら、Tet Lett 1988,29(15):1773−1774;米国特許第4,400,393号および同第5,200,530号に開示されている。
【0042】
かかる方法は、重水素化され、必要に応じて、他の同位体を含有する試薬、および/または、本明細書に記載の化合物を合成するための中間体を利用して、あるいは、同位体原子を化学構造に導入するため当該技術分野で周知の標準的な合成プロトコルを使用することで行うことができる。どのようにして本発明の化合物を調製できるのかを以下のスキームに示す。
【0043】
式Iの化合物を生成する便利な方法をスキーム1に従って例示する:
【0044】
スキーム1:
【化7】

【0045】
イロプロストの合成は、米国特許第5,200,530号およびその中で引用した参照文献に記載されている。「PG」は、シリルエーテル保護基などの保護基を表し、この例としては、ジメチルフェニルシリルまたはジメチルテキシルシリルが挙げられる(例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999)を参照されたい)。スキーム1は、イロプロストへの一般的経路を本発明の化合物を提供するためどのように適用できるかを示す。塩化オキサリルとDCM中のDMSOとで−60℃にてまず反応させ、次にトリエチルアミンを加えて0℃に温めることで、第一級アルコール10をアルデヒドに酸化させる。次いで、塩基として水素化ナトリウムを用いて、所望のアルデヒド11をTHF中のホスホン酸ジメチル12と反応させ、13を得る。水素化ホウ素ナトリウムおよび塩化セリウム七水和物を用いて、ケトンを−40℃のメタノール中でアルコール14に還元する。過剰のホウ化水素試薬をアセトンで急冷し、14を生成する。ケタールおよびシリルエーテル保護基を、それぞれ、酸およびフッ化テトラブチルアンモニウムで処理することで除去し、15を生成する。触媒としてトルエンスルホン酸を有するジヒドロピランと反応させることで、第二級アルコールをTHPエーテルとして保護し、16を生成する。次いで、塩基としての水素化ナトリウムを有するDMSO中で、適切に置換したトリフェニルペンタン酸のイリドとケトンを反応させる。その後、弱酸によりTHP保護基を除去し、式Iの化合物を生成する。
【0046】
適切に重水素化されたイロプロストは、日本特許出願第2001−309366号に記載されているものと同様にして調製することができる。12の出発材料は、以下のスキーム2aに示すように、なおかつ、Schulte,KEら、Chem Ber 1954 87p.964−970に記載されているように調製される。中間体12の調製は、以下のスキーム2bに記載されている。
【0047】
スキーム2a:
【化8】

【0048】
スキーム2b:
【化9】

【0049】
式IIの化合物は、スキーム3に従って合成することができる。
【0050】
スキーム3:
【化10】

【化11】

【化12】

【0051】
本明細書の式(例:式Iまたは式II)の化合物を合成する他の手法は、本明細書で引用した参照文献から容易に適用することができる。これら手順および最適化の変更形態は、通常の医師の技術の範囲内である。
【0052】
前述の具体的な手法および化合物は、限定的なものではない。本明細書のスキームにおける化学構造は、同一の変数名(すなわち、Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Z1a、またはZ1b)によって識別されるか否か、本明細書の式の化合物における対応位置の化学基定義(部分、原子等)により整合的に定義される変数のことを示す。別の化合物構造の合成に用いるある化合物構造における化学基の適合性は、当業者の知識の範囲内である。
【0053】
式Iおよび式IIの化合物およびこれら合成前駆体の別の合成方法は、本明細書のスキームに明示的に示していない経路内のものを含み、当業者である化学者の通常の技術の範囲内である。適用可能な化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基方法論(保護および脱保護)は、当該技術分野で周知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);L.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、およびその後の版に記載されているものが挙げられる。
【0054】
本発明により想定された置換基および変数の組合せは、安定化合物の形成をもたらすもののみである。
【0055】
本発明はさらに、本発明の化合物とそのより軽い同位体置換体との混合物を提供する。これらの混合物は、例えば、同位体を所与の位置に組み込むことが非効率であること;重水素のプロトンが作為的または不作為に交換されること(例:バルク溶媒と、ヘテロ原子に結合した重水素との交換);または、純化合物を作為的に混合物にすることの単なる結果として生じ得る。
【0056】
一実施形態では、かかる混合物は、少なくとも約50%の重原子同位体化合物(すなわち、約50%未満のより軽い同位体置換体)を含む。少なくとも80%の重原子同位体化合物を含む混合物がより好ましい。90%の重原子同位体化合物を含む混合物が最も好ましい。一態様では、混合物は、少なくとも約「X」%の重原子同位体化合物(すなわち、約X%未満のより軽い同位体置換体)を含み、ここで、Xは、0以上100以下の数である。
(組成物)
【0057】
本発明はまた、有効量の、式Iまたは式IIの化合物、またはその医薬的に許容される塩と;許容される担体とを含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、発熱物質を含まないものである。別の実施形態では、本発明の組成物は、医薬用途(「医薬組成物」)用に調合され、ここで、担体は医薬的に許容される担体である。担体(単数または複数)は、製剤の他の成分と相溶性があるという意味において「許容される」ものでなければならず、医薬的に許容される担体の場合、薬剤に通常使用される量でその受容体に無害なものでなければならない。
【0058】
本発明の医薬組成物に用いることができる医薬的に許容される担体、アジュバント、および賦形剤としては、限定的ではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、およびラノリンが挙げられる。
【0059】
必要に応じて、医薬組成物における本発明の化合物の溶解度およびバイオアベイラビリティは、当該技術分野で周知の方法により高めることができる。1つの方法としては、製剤に脂質賦形剤を用いることが挙げられる。「Oral Lipid−Based Formulations:Enhancing the Bioavailability of Poorly Water−Soluble Drugs(Drugs and the Pharmaceutical Sciences)」、David J.Hauss,ed.Informa Healthcare,2007;および「Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery:Basic Principles and Biological Examples」、Kishor M.Wasan,ed.Wiley−Interscience,2006を参照されたい。
【0060】
バイオアベイラビリティを高める別の公知の方法としては、LUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などのポロクサマー、または、エチレンオキシドと酸化プロピレンのブロック共重合体と任意に調合された本発明の化合物を非晶形で用いることである。米国特許第7,014,866号;米国特許第20060094744号明細書、および米国特許第20060079502号明細書を参照されたい。
【0061】
本発明の医薬組成物としては、経口、直腸、鼻腔、局所(口腔および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)投与に適するものが挙げられる。ある実施形態では、本明細書の式の化合物は、(例えば、経皮貼付剤またはイオン導入技術を用いて)経皮投与される。他の製剤は、単位投与剤形(例えば、錠剤および徐放カプセル剤)や、リポソームで簡便に提供することができ、薬剤技術分野で周知のあらゆる方法で調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA(17th ed.1985)を参照されたい。
【0062】
かかる調製方法としては、1つ以上の副成分を構成する担体などの、投与される成分分子と会合させる工程が挙げられる。一般に、組成物は、有効成分を液体担体、リポソームまたは微細な固体担体、もしくは両方と均一および密接に会合させることで調製され、必要に応じて、生成物を成形する。
【0063】
ある好適な実施形態では、化合物は経口投与される。経口投与に適当な本発明の組成物は、各々が所定量の有効成分を含むカプセル剤、サシェ剤、または錠剤などの個別単位として;散剤または顆粒剤として;水性液体または非水液体中の溶液または懸濁液として;あるいは、水中油乳濁液または油中水乳濁液として、またはリポソーム中に包まれたもの、さらにはボーラス剤等として提供することができる。軟質ゼラチンカプセル剤は、かかる懸濁液を含めるのに有用な場合があり、これは、化合物の吸収率を有利に増加させ得る。
【0064】
経口用途用の錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も一般に添加される。カプセル形態の経口投与に有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液を経口投与する場合、有効成分は乳化剤および懸濁剤と組合せられる。所望の場合、特定の甘味料および/または香料および/または着色剤を添加してもよい。
【0065】
経口投与に適当な組成物としては、芳香化基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に成分を含むトローチ剤;不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア中に有効成分を含む香錠が挙げられる。
【0066】
非経口投与に適当な組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および、製剤を目的の受容体の血液と等張させる溶質を含んでいてもよい水性および非水性の無菌注射液;懸濁剤および増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単回投与用または複数投与用入れ物、例えば、密封アンプルおよびバイアルで提供してもよく、無菌液体担体、例えば、注射用水を使用直前に添加することのみを必要とするフリーズドライ(冷凍乾燥)状態で保存してもよい。即時注射液および懸濁液は、無菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製できる。
【0067】
かかる注射液は、滅菌注射用水性または油性懸濁剤の形態であってもよい。この懸濁液は、当該技術分野で公知の技術に従い、適切な分散剤または湿潤剤(例えば、ツイーン80など)および懸濁剤を用いて調合することができる。滅菌注射用製剤はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であってもよい。使用できる許容可能な賦形剤や溶媒の中には、マンニトール、水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的では、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激固定油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特に、そのポリオキシエチル化形態ではオリーブ油またはヒマシ油などの天然の医薬的に許容される油であるので、注射用製剤において有用である。これらの油状溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有してもよい。
【0068】
本発明の医薬組成物は、直腸内投与用に坐剤形態で投与してもよい。これらの組成物は、本発明の化合物と、室温で固体であるが直腸温度では液体であるため、直腸内で溶解して有効成分を放出する適当な非刺激性賦形剤とを混合することにより調製することができる。かかる物質としては、限定的ではないが、ココアバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0069】
本発明の医薬組成物は、鼻エアロゾルまたは鼻吸入により投与してもよい。かかる組成物は、医薬製剤分野で公知の技術により調製され、なおかつ、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当該技術分野で公知の他の可溶化剤または分散剤を用いて、塩水中の溶液として調製することができる。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されているRabinowitz JD and Zaffaroni AC、米国特許第6,803,031号を参照されたい。
【0070】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が局所塗布により容易に近づける領域または器官に関与する場合に特に有用である。皮膚への局所塗布では、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解させた有効成分を含有する適当な軟膏で調合しなければならない。本発明の化合物の局所投与用の担体としては、限定的ではないが、鉱油、液化石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が挙げられる。あるいは、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解させた活性化合物を含有する適当なローションまたはクリームと調合することができる。適当な担体としては、限定的ではないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられる。本発明の医薬組成物は、直腸坐剤製剤または適当な浣腸製剤により、腸管低部に局所塗布することもできる。局所経皮貼り剤およびイオン導入投与も、本発明に含まれる。
【0071】
好適な剤形としては、吸入用微粒子製剤が挙げられ、例えば、I−neb(商標)AAD(登録商標)システムまたはProdose(登録商標)AAD(登録商標)システムで用いられるイロプロスト製剤のもののみならず、PCT特許出願公開明細書第2006014930号に記載されているイロプロストのもの;米国特許出願公開第20050101673号に記載されている経口製剤などである。
【0072】
対象治療の適用は、対象部位に投与するように局所であってもよい。注射や、カテーテル、トロカール、投射物、プルロニックゲル、ステント、薬物徐放性ポリマー、または内部アクセスをもたらす他のデバイスを用いて対象部位に対象組成物をもたらす種々の技術を用いることができる。
【0073】
従って、さらに別の実施形態によれば、本発明の化合物は、プロテーゼ、人工弁、代用血管、ステント、またはカテーテルなどの移植医療機器を被覆するための組成物に組み込むことができる。適当な被覆および被覆された移植機器の一般的調製は、当該技術分野で周知であり、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に例示されている。被覆は通常、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびその混合物などの生体適合性ポリマー材料である。被覆は、必要に応じて、フルオロシリコーン、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはその組合せの適当な上塗りによりさらに被覆し、組成物に徐放特性を付与することができる。侵襲機器に対する被覆は、本明細書で使用される用語としての医薬的に許容される担体、アジュバント、または賦形剤の定義内に含まれるものである。
【0074】
別の実施形態によれば、本発明は、前記機器を上述の被覆組成物に接触させる工程を含む移植医療機器の被覆方法を提供する。当業者であれば、哺乳類への移植前に機器の被覆を行うことはすぐに分かるであろう。
【0075】
別の実施形態によれば、本発明は、前記薬物放出機器を本発明の化合物または組成物に接触させる工程を含む、移植型の薬物放出機器の含浸方法を提供する。移植型の薬物放出機器としては、限定的ではないが、生分解性のポリマーカプセル剤または薬剤(bullets)、非分解性、拡散性のポリマーカプセル剤、および生分解性のポリマーカシェ剤が挙げられる。
【0076】
別の実施形態によれば、本発明は、治療効果がある化合物または本発明の前記化合物を含む組成物を被覆した移植医療機器を提供する。
【0077】
別の実施形態によれば、本発明は、前記機器から放出され、かつ、治療効果がある化合物または本発明の前記化合物を含む組成物に含浸したまたはを含む移植型の薬物放出機器を提供する。
【0078】
患者から除去することで器官または組織に接触可能である場合、かかる器官または組織を本発明の組成物を含む培地中に浴してもよく、本発明の組成物を器官の上に塗布してもよく、あるいは、本発明の組成物を任意の他の簡便な方法で塗布してもよい。
【0079】
別の実施形態では、本発明の組成物は、第2の治療薬をさらに含む。第2の治療薬としては、全身または肺の動脈血管床の血管拡張薬または血小板凝集阻害剤を投与した際に、有利な特性を有することが知られている、あるいは、有利な特性を示す任意の化合物または治療薬が挙げられる。かかる薬剤としては、イロプロストと組合せて有用であると示されるものが挙げられ、PCT特許出願公開明細書第1988001867号;同第2005030187号:同第2006014930号:同第2005009446号:同第2004019952号;同第2000002450号;同第1992013537号;同第1997006806号:同第1998037894号:米国特許出願公開第20020128314号;同第20030139372;同第20030162824号;同第20030216474号;同第20040033223号;同第20040052760号;同第20040058940号;同第20040266880号;同第20050009847号;同第20050070596号;同第20050080140号;同第20050101673号;同第20050106151号;同第20050119330号;同第20050239719号;同第20050239842号;同第20050239867号;同第20060183684号;および同第20060160213号に詳細が記載されている。
【0080】
一実施形態では、第2の治療薬は、肺動脈高血圧症、全身性硬化症に伴うレイノー現象、造影剤仲介腎症、または肺癌から選択される病気または疾病の治療または予防に有用な薬剤である。
【0081】
さらにより具体的には、本発明の化合物とともに製剤化された第2の治療薬は、肺動脈高血圧症の治療に有用な薬剤である。
【0082】
一実施形態では、第2の治療薬は、ホスホジエステラーゼV阻害剤またはエンドセリン−1拮抗薬から選択される。別の実施形態では、ホスホジエステラーゼV阻害剤はシルデナフィルである。さらに別の実施形態では、エンドセリン−1拮抗薬はボセンタンである。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、本発明の化合物と、互いに会合している第2の治療薬との別々の剤形を提供する。本明細書で使用する「互いに会合している」という用語は、別々の剤形を一緒に販売し、投与すること(連続的または同時に互いに24時間未満内)を意図することが容易に明らかとなるように、別々の剤形が一緒に包装されている、あるいは、互いに取り付けられていることを意味する。
【0084】
本発明の医薬組成物では、本発明の化合物は、有効量で存在する。本明細書で使用する、「有効量」という用語は、適切な投与計画で投与する場合、治療している疾患の重篤度、期間、または進行を軽減または改善する、治療している疾患の促進を予防する、治療している疾患を退行させる、あるいは、別の治療の予防または治療効果(単数または複数)を高めるまたは向上させるのに十分な量のことを言う。
【0085】
動物とヒトに対する用量の相互関係(体表面1平方メートル当たりのミリグラムに基づく)は、Freireichら、(1966)Cancer Chemother Rep 50:219に記載されている。体表面積は、患者の身長および体重からおおよそ決定することができる。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,N.Y.,1970,537を参照されたい。本発明の化合物の効果的な単回投与量は、約1mg/kg体重〜約500mg/kg重量であり、より好ましくは1mg/kg〜約250mg/kgであり、より好ましくは1mg/kg〜約75mg/kgである。単回用量を1日に1〜9回にわたり投与することができる。有効量は、当業者により認識されるように、治療する病気、病気の重篤度、投与経路、患者の性別、年齢、および一般的健康状態、賦形剤の使用、他の治療処置に伴う、例えば、他の薬剤の使用との併用の可能性、および治療医の判断に応じて変化させてもよい。
【0086】
第2の治療薬を含む医薬組成物において、第2の治療薬の有効量は、その薬剤のみを用いる単剤療法レジメンで通常使用される投与量の約20%〜100%の間である。有効量は、標準の単剤治療量の約70%〜100%の間であるのが好ましい。これら第2の治療薬の標準の単剤治療量は、当該技術分野で周知である。例えば、Wellsら、eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)を参照されたい。これら参照文献の各々は、参照により本明細書に完全に引用したものとする。
【0087】
上記で参照した第2の治療薬のいくつかは、本発明の化合物と相乗的に作用すると考えられる。このような場合、第2の治療薬および/または本発明の化合物の有効薬量を単剤療法で必要な量から減らすことができる。これは、第2の治療薬または本発明の化合物いずれかの毒性の副作用の軽減、効果の相乗的な改善、投与または使用し易さの改善、および/または、化合物の調製または製剤の総費用の削減という利点を有する。
(治療方法)
【0088】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物または組成物の有効量を対象に投与する工程を含む、イロプロストにより有利に治療される病気に苦しんでいるまたは罹患しやすい前記対象の治療方法を提供する。かかる疾病および病気は、当該技術分野では周知であり、塞栓関連および他の皮膚病、肺高血圧症、強皮症など線維症関連の病気、大脳マラリア、静脈循環機能の低下、骨疾患(例えば、骨髄浮腫、骨壊死、および骨関節炎)、合胞体ウイルス感染、掻痒症、またはアトピー性の症状、炎症性疾患、CNS疾患のみならず、米国特許出願第20050080140号;同第20030139372号;同第20030216474号;同第20040266880号;同第20050009847号;同第20050101673号;国際特許出願公開第1988001867号;同第1992013537号;同第2000002450号;同第2004019952号;および同第2006014930号に開示されている他のものが挙げられる。
【0089】
好適な実施形態では、本発明の方法は、肺動脈高血圧症、全身性硬化症に伴うレイノー現象、造影剤仲介腎症、または肺癌から選択される病気または疾病に苦しんでいるまたは罹患しやすい対象を治療するのに使用される。本明細書に記載の方法としては、対象が特定の治療を必要とすると識別されるものが挙げられる。かかる治療を必要とする対象の識別は、対象または医療専門家の判断であってよく、主観的(例:意見)または客観的(例:試験または診断法により測定可能)であってもよい。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、細胞を本明細書の式のいずれかの1つ以上の化合物に接触させることを含む、細胞におけるプロスタサイクリン受容体の活性を調節する方法を提供する。
【0091】
別の実施形態では、上記の治療方法は、患者に1つ以上の第2の治療薬を同時投与する工程をさらに含む。第2の治療薬の選択は、イロプロストとの同時投与に有用であると知られているあらゆる第2の治療薬から行ってよい。かかる薬剤としては、特に、本発明の医薬的組合せに使用する上述のいずれかのものが挙げられる。
【0092】
特に、本発明の併用療法としては、15−ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ阻害剤との併用による勃起障害の治療;ベタインとの併用による抗血栓剤として;各々がホスホジエステラーゼV阻害剤との併用によるアンギナ、高血圧症、肺高血圧症、鬱血性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺性心、右室不全、アテローム性動脈硬化症、心臓血管の開存率が低下した病態、末梢血管疾患、脳卒中、気管支炎、アレルギー性喘息、慢性喘息、アレルギー性鼻炎、緑内障、過敏性腸症候群、腫瘍、腎不全、肝硬変、および男性または女性の性機能障害の治療;COX−1またはCOX−2阻害剤との併用による炎症性心臓血管疾患の治療;15−ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ阻害剤との併用による髪厚の増加または維持;カンナビジオール誘導体との併用による多発性硬化症の治療;α1−アンチトリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害剤との併用による細菌感染の治療;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤との併用による肺増殖性血管障害の治療;サリドマイドまたはホスホジエステラーゼIV阻害剤との併用による肺高血圧症の治療;血圧降下剤との併用による高血圧症、糖尿病の合併症、および代謝症候群の治療;または、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、またはカルシウムチャンネル遮断薬との併用による肺動脈高血圧症の治療が挙げられる。
【0093】
本発明に有用な他の併用療法は、イロプロストを使用する併用療法であり、米国特許出願第20020128314号;同第20040033223号;同第20040058940号;同第20030162824号;同第20040052760号;同第20050070596号;同第20050106151号;同第20050119330号;同第20050239719号;同第20050239842号;同第20050239867号;同第20060160213号;同第20060183684号;国際特許出願公開第1997006806号:同第1998037894号:同第2005009446号:および同第号2005030187号に記載されている。
【0094】
特定の実施形態では、本発明は、肺動脈高血圧症に苦しむ患者の治療方法を提供し、式Iまたは式IIの化合物と、ホスホジエステラーゼV阻害剤またはエンドセリン−1拮抗薬から選択される第2の治療薬とを患者に同時投与する工程を含む。より具体的な実施形態では、ホスホジエステラーゼV阻害剤はシルデナフィルである。別のより具体的な実施形態では、エンドセリン−1拮抗薬はボセンタンである。
【0095】
本明細書で使用する「同時投与する」という用語は、単一剤形(例えば、本発明の化合物と、上述の第2の治療薬とを含む本発明の組成物)の一部として、あるいは、別個の複数剤形として、第2の治療薬を本発明の化合物とともに投与することを意味する。あるいは、本発明の化合物の投与前、投与に続けて、または投与後に、追加の薬剤を投与してもよい。かかる併用療法による治療では、本発明の化合物と第2の治療薬(単数または複数)の両方を従来の方法で投与する。本発明の化合物と第2の治療薬との両方を含む本発明の組成物を対象に投与することは、治療期間中に別時で、同一治療薬、任意の他の第2の治療薬、または本発明の任意の化合物を前記対象に個別投与することを妨げるものではない。
【0096】
これら第2の治療薬の有効量は、当業者に公知であり、投与ガイダンスは、本明細書に引用した特許および特許出願公開のみならず、Wellsら、eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)、および他の医療テキストに見ることができる。しかしながら、第2の治療薬の最適な有効量の範囲を判断するのは当業者の十分な範囲内である。
【0097】
本発明の一実施形態では、第2の治療薬を対象に投与する場合、本発明の化合物の有効量は、第2の治療薬を投与しない場合におけるその有効量未満である。別の実施形態では、第2の治療薬の有効量は、本発明の化合物を投与しない場合におけるその有効量未満である。これにより、高用量のいずれの薬剤に伴う望ましくない副作用を最小限にすることができる。他の潜在的利点(限定的ではないが、投与計画の向上、および/または、薬剤費の削減を含む)は、当業者に明らかになるであろう。
【0098】
さらに別の態様では、本発明は、対象の上述の病気、疾患、または症状を治療または予防するため、単一組成物または別々の剤形として、薬剤の製造において式Iの化合物のみを使用、または、1つ以上の上述の第2の治療薬とともに式Iの化合物を使用することを提供する。本発明の別の態様は、対象の本明細書に記載の病気、疾患、または症状を治療または予防に使用する本明細書の式の化合物である。
(診断方法およびキット)
【0099】
本発明の化合物および組成物は、血漿などの溶液または生体試料中のイロプロスト濃度の判定方法、イロプロストの代謝検査方法、および他の分析研究における試薬としても有用である。
【0100】
一実施形態によれば、本発明は、溶液または生体試料中のイロプロスト濃度の判定方法を提供する。判定方法は:
a)既知濃度の式Iまたは式IIの化合物を生体試料の溶液に加える工程と;
b)溶液または生体試料を、イロプロストと式Iまたは式IIの化合物とを区別する測定器にかける工程と;
c)式Iまたは式IIの化合物の検出量を、生体試料または溶液に加えた式Iまたは式IIの化合物の既知濃度と相関させるため測定器を較正する工程と;
d)生体試料中のイロプロスト量を前記被較正測定器で測定する工程と;
e)検出量と式Iまたは式IIの化合物で得られた濃度間の相関関係を用いて、溶液試料中のイロプロスト濃度を判定する工程と、
を含む。
【0101】
イロプロストを対応する式Iまたは式IIの化合物から区別することができる測定器としては、同位体存在度においてのみ互いに異なる2つの化合物を区別することができる任意の測定器が挙げられる。測定器の一例としては、質量分析計、NMRスペクトロメータ、またはIRスペクトロメータが挙げられる。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、式Iまたは式IIの化合物を代謝酵素源と一定時間接触させる工程と、一定時間後に式Iまたは式IIの化合物の量を式Iまたは式IIの化合物の代謝産物と比較する工程と、を含む、式Iまたは式IIの化合物の代謝的安定性の評価方法を提供する。
【0103】
関連実施形態では、本発明は、式Iまたは式IIの化合物の投与後の患者における式Iまたは式IIの化合物の代謝的安定性の評価方法を提供する。本方法は、式Iまたは式IIの化合物を対象に投与してから一定時間後に、患者から血清、尿、または便の試料を得る工程と;式Iまたは式IIの化合物の量を、血清、尿、または便の試料内の式Iまたは式IIの化合物の代謝産物と比較する工程と、を含む。
【0104】
本発明は、肺動脈高血圧症、全身性硬化症に伴うレイノー現象、造影剤仲介腎症、または肺癌を治療するのに用いるキットも提供する。これらのキットは:a)式Iまたは式IIの化合物またはその塩;またはそのプロドラッグまたはそのプロドラッグの塩;あるいは、その水和物、溶媒和物、または多形体を含む、入れ物に入った医薬組成物と;b)前記病気を治療するための医薬組成物の使用方法を記載した説明書と、を含む。
【0105】
入れ物は、前記医薬組成物を保持できる任意の容器あるいは他の密閉されたまたは密閉可能な装置であってよい。例としては、ボトル、アンプル、分割型ボトル、またはマルチチャンバ式ホルダボトル(各区分またはチャンバは単回投与の前記組成物を含む)、分割型ホイルパケット(各区分は単回投与の前記組成物を含む)、または単回投与の前記組成物を分注するディスペンサが挙げられる。入れ物は、医薬的に許容される材料、例えば、紙または段ボール箱、ガラスまたはプラスチックボトルあるいは瓶(jar)、ジッパー付バッグ(例えば、異なる入れ物に配置するための「詰め替え」用錠剤を保持)、または治療スケジュールに従ってパックから押し出す個別用量を備えたブリスターパックからなる当該技術分野で周知の任意の従来の形状または型であってよい。用いる入れ物は、関連する正確な剤形に左右される。例えば、従来の段ボール箱は、液体懸濁液を保持するのには一般に使用されないであろう。単一剤形を販売するため単一包装に複数の入れ物を一緒に使用することも可能である。例えば、錠剤は、ボトルに収容し、次いで、ボックス内に収容してもよい。入れ物はブリスターパックであるのが好ましい。
【0106】
キットは、医師、薬剤師、または対象用の情報および/または説明書を収容するタイプの記憶補助をさらに含んでもよい。かかる記憶補助としては、特定された錠剤またはカプセル剤を服用すべきかの投与計画日数に対応する投与量を含有する各チャンバまたは区分上に印字された数字、各チャンバまたは区分上に印字された週の曜日、または同一形式の情報を含むカードが挙げられる。単回投与用ディスペンサでは、記憶補助としては、さらに、分注された日用量の数を示す機械的計数器や、液晶読み出し信号、および/または、例えば、日用量を最後に摂取した日付を読み出し、および/または、次に用量をいつ摂取するのかを気付かせる可聴リマインダ信号を連結させたバッテリー駆動のマイクロチップメモリが挙げられる。かかるキットに有用な他の記憶補助は、カード上に印字されたカレンダのみならず、容易に明らかとなる他の変形例がある。
【0107】
本発明のキットは、単回投与の医薬組成物を投与するまたは測り分ける機器をさらに含んでいてもよい。かかる機器としては、前記組成物が吸入可能組成物である場合は吸入器;前記組成物が注射用組成物である場合は注射器および針;前記組成物が口腔液体組成物である場合は容量マーキング付または無しの注射器、匙、ポンプ、または容器;あるいは、キット内に存在する組成物の投与製剤に適切な任意の他の計測機器または送達機器が挙げられる。
【0108】
ある実施形態では、本発明のキットは、別の容器の入れ物に、本発明の化合物と同時投与するのに用いる上記で列挙したものなどの第2の治療薬を含む医薬組成物を含んでもよい。
(合成例)
【0109】
本発明の化合物を調製するための重要な中間体をもたらす合成例を以下に示す。
【0110】
実施例1.(3α’S,4’R,5’R,6α’R)−5’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5,5−ジメチルヘキサヒドロ−1’H−スピロ[[1,3]ジオキサン−2,2’−ペンタレン]−4’−カルバルデヒド、化合物11の合成
【化13】

工程1.(2,2−ジメチルトリメチレンジオキシ)−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、化合物4の合成
【化14】


トルエン(300mL)中のシス−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジオン、3(25g、181.06mmol)の溶液に、2,2−ジメチル−1−プロパンジオール(18.9g、181.06mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物(触媒量)を加え、溶液を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにかけ、モノ保護されたケトン4(17.8g、44%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.94(s、6H)、1.80(dd、2H)、2.13〜2.70(m、6H)、2.80〜2.90(m、2H)、3.52(s、2H)、3.65(s、2H)。MS(ESI)m/z:225
【0111】
工程2.(2,2−ジメチルトリメチレンジオキシ)−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン−2−カルボン酸メチルエステル、化合物5の合成
【化15】

炭酸ジメチル(80mL)中の水素化ナトリウム(2.33g、53.5mmol)の懸濁液に、炭酸ジメチル(20mL)に溶解したモノ保護されたケトン4(10g、44.6mmol)を加え、溶液を50℃で一晩攪拌した。混合物を冷却し、過剰な水素化ナトリウムをメタノールで急冷し、混合物を酢酸で中和した。生成物をジクロロメタン(3×50mL)で抽出し、真空下で濃縮し、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、生成物5(7.0g、56%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.93(s、6H)、1.50〜1.90(m、3H)、2.04〜2.10(m、1H)、2.20〜2.60(m、4H)、3.30(d、1H)、3.44〜3.59(m、4H)、3.77(s、3H)、10.35(bs、1H)。MS(ESI)m/z:283[M+H]
【0112】
工程3.7,7−(2,2−ジメチルトリメチレンジオキシ)−3−α−ヒドロキシ−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン−2−β−カルボン酸メチルエステル、化合物6の合成
【化16】

メタノール(80mL)中のメチルエステル5(7g、24.8mmol)の−40℃の溶液に、NaBH(1.87g、49.6mmol)を加え、溶液を同一温度で2時間攪拌した。反応混合物にアセトン(2mL)を加え、溶液を飽和シュウ酸(5mL)で中和した。溶媒を蒸発させ、残渣をジクロロメタン(2×25mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させ、生成物6(5g、71%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.96(s、6H)、1.52〜1.72(m、1H)、1.90〜2.04(m、1H)、2.09〜2.30(m、4H)、2.43〜2.90(m、3H)、3.40〜3.56(m、4H)、3.72(s、3H)、4.20〜4.30(m、1H)。MS(ESI)m/z:285[M+H]
【0113】
工程4.7,7−(2,2−ジメチルトリメチレンジオキシ)−3−α−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン−2−β−カルボン酸メチルエステル、化合物7の合成
【化17】

DMF(40mL)中のヒドロキシル化合物6(3g、10.6mmol)の溶液に、イミダゾール(1.72g、25.32mmol)およびtert−ブチルジメチルクロロシラン(1.91g、12.66mmol)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物に水(10mL)を加え、溶液をエーテル(2×25mL)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、カラムクロマトグラフィーをかけ、生成物7(3g、71%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.02(s、3H)、0.05(s、3H)、0.85(s、9H)、0.93(s、6H)、1.60〜1.74(m、1H)、1.90〜2.04(m、2H)、2.09〜2.18(m、3H)、2.44〜2.50(m、1H)、2.56〜2.62(m、2H)、3.40〜3.60(m、4H)、3.76(s、3H)、4.20〜4.30(m、1H)。MS(ESI)m/z:399[M+H]
【0114】
工程5.7,7−(2,2−ジメチルトリメチレンジオキシ)−3−α−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン−2−β−カルボン酸、化合物8の合成
【化18】

エステル7(3g、7.52mmol)の溶液に、メタノール(40mL)および5% NaOH(8.2mL)を加え、溶液を1.5時間還流させた。溶液を真空下で濃縮し、水(20mL)で希釈し、ジエチルエーテル(25mL)で抽出した。混合物を氷浴中で冷却し、2N HSOで酸性化(pH=3)し、ジエチルエーテル(2×25mL)で抽出した。エーテル層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、酸8(2.0g、69%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.02(s、3H)、0.05(s、3H)、0.81(s、9H)、0.95(s、6H)、1.60〜1.76(m、1H)、1.90〜2.03(m、2H)、2.09〜2.18(m、3H)、2.44〜2.50(m、1H)、2.56〜2.62(m、2H)、3.40〜3.60(m、4H)、4.20〜4.30(m、1H)。MS(ESI)m/z:385[M+H]
【0115】
工程6.7,7−(2,2−ジメチルトリメチレンジオキシ)−3−α−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン−2−β−カルボン酸D−(−)−α−フェニルグリシノールアミド、化合物9bの合成
【化19】

アセトン(30mL)中の酸8(4g、10.4mmol)の溶液に、NEt(1.3mL、9.32mmol)を加え、溶液を0℃で5分間攪拌した。アセトン(15mL)に溶解したクロロぎ酸イソブチル(1.2mL、8.73mmol)を反応混合物に加え、溶液を同一温度で20分間攪拌した。アセトン(15mL)およびアセトニトリル(15mL)に溶解したD−(−)−α−フェニルグリシノール(1.17g、8.56mmol)を反応混合物に滴下し、溶液を室温で24時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をジクロロメタン(25mL)に溶解させ、ブライン(2×10mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=3:1)を用いてジアステレオマーを分離し、必要なジアステレオマー9b(1.82g、34%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:0.06(s、6H)、0.83(s、9H)、0.95(s、6H)、1.42〜1.90(m、1H)、1.90〜2.03(m、2H)、2.09〜2.18(m、3H)、2.44〜2.50(m、1H)、2.56〜2.62(m、2H)、3.40〜3.60(m、4H)、3.88〜3.96(m、2H)、4.14〜4.23(m、1H)、5.05〜5.17(m、1H)、6.50(d、1H)、7.26〜7.34(m、5H)。MS(ESI)m/z:504[M+H]。[α]=−27.39(CHCl中で0.54)
【0116】
実施例2.3−メチル−2−オキソヘプタ−5−イニルリン酸ジメチルエステル、化合物12(Z1a=Z1b=H)の合成
【化20】

【0117】
工程1.2−メチルヘキサ−4−イン酸、化合物12cの合成
【化21】

THF(100mL)中のジイソプロピルアミン(32.75mL、233.09mmol)の−50℃の溶液に、ヘキサン(94mL)中の1.6M n−BuLiを加え、溶液を5分間攪拌した。反応混合物を−20℃に温め、混合物をHMPA(15.7mL)およびプロピオン酸(6.75mL、90.23mmol)の混合物を滴下して処理した。反応混合物を室温で30分間攪拌した。その後、内容物を0℃に冷却し、THF(20mL)中の1−ブロモ−2−ブチン12b(10g、75.19mmol)を反応混合物に加え、室温で2時間攪拌した。内容物を10% HCl(20mL)に注ぎ入れ、溶液をエーテル(3×25mL)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、生成物12c(12g)を得た。粗生成物を次の工程で直接用いた。H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.15(d、3H)、1.77(t、3H)、2.35(m、2H)、2.66(m、1H)
【0118】
工程2.2−メチルヘキサ−4−イン酸メチル、化合物12dの合成
【化22】

アセトン(100mL)中の粗酸12c(12g、95.1mmol)の溶液に、MeI(8.9mL、142.68mmol)およびKCO(26.3g、190.24mmol)を加え、溶液を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発させ、内容物を水(25mL)に溶解した。溶液をエーテル(3×25mL)で抽出し、有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。粗生成物を真空蒸留し、純生成物12d(4.4g、33%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.25(d、3H)、1.77(t、3H)、2.34(m、2H)、2.66(m、1H)、3.69(s、3H)
【0119】
工程3.3−メチル−2−オキソヘプタ−5−イニルリン酸ジメチルエステル、化合物12の合成
【化23】

THF(20mL)中のメチルホスホン酸ジメチル(4.5mL、42.80mmol)の溶液に、ヘキサン(24mL)中の1.6M n−BuLiを滴下し、溶液を−78℃で30分間攪拌した。THF(10mL)に溶解したエステル12d(3.0g、21.40mmol)を反応混合物に滴下し、混合物を−78℃で3時間攪拌し、周囲温度で1時間攪拌した。反応混合物を酢酸(1mL)で急冷し、飽和ブライン(30mL)を加え、エーテル(3×10mL)で抽出した。エーテル層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、粗生成物を得た。粗生成物を真空蒸留し、純生成物12(2g、40%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.18(d、3H)、1.76(t、3H)、2.36(m、2H)、2.64(m、1H)、3.26(d、2H)、3.77(s、3H)、3.81(s、3H)
【0120】
実施例3.4,4−d2−3−メチル−2−オキソヘプタ−5−イニルリン酸ジメチルエステル、化合物12(Z1a=Z1b=D)の合成
【化24】

【0121】
工程1.1,1−d2−ブタ−2−イン−1−オール、化合物12aの合成
【化25】

エーテル(60mL)中の重水素化リチウムアルミニウム(1.28g、30.57mmol)の懸濁液に、エーテル(20mL)中の2−ブチン酸メチル(5g、51mmol)を0℃で滴下した。反応混合物を室温で1時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム(1mL)で急冷した。エーテル層を濾過し、NaSOで乾燥させ、蒸発させた。残渣を真空蒸留し、アルコール12a(2g、55%)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.85(s、3H)
【0122】
工程2.1,1−d2−1−ブロモ−ブタ−2−イン、化合物12bの合成
【化26】

エーテル(10mL)中の1,1−d2−ブタ−2−イン−1−オール12a(1.2g、16.64mmol)の0℃の攪拌溶液に、ピリジン(4mL、49.92mmol)および三臭化リン(0.89mL、11.15mmol)を滴下し、溶液を2時間加温還流した。反応混合物を0℃に冷却し、内容物を飽和NaBr溶液(10mL)で処理し、エーテル(2×10mL)で抽出した。エーテル層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、生成物12b(0.6g、30%)を得た。H NMR(400MHz):1.88(s、3H)
【0123】
工程3.3,3−d2−2−メチルヘキサ−4−イン酸、化合物12cの合成
【化27】

THF(10mL)中のジイソプロピルアミン(1.93mL、13.77mmol)の50℃の溶液に、ヘキサン(7.4mL)中の1.2M n−BuLiを加え、溶液を5分間攪拌した。反応混合物を−20℃に温め、HMPA(0.77mL)およびプロピオン酸(0.39mL、5.32mmol)の混合物を滴下して混合物を処理した。反応混合物を室温で30分間攪拌した。その後、内容物を0℃に冷却し、1,1−d2−1−ブロモ−ブタ−2−イン12b(0.60g、4.44mmol)を反応混合物に加え、室温で2時間攪拌した。内容物を10% HCl(5mL)に注ぎ入れ、溶液をエーテル(2×10mL)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、生成物12c(1.0g)をえた。粗生成物を次の工程で直接用いた。H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.15(d、3H)、1.83(s、3H)、2.64(q、1H)
【0124】
工程4.3,3−d−2−メチルヘキサ−4−イン酸メチル、化合物12dの合成
【化28】

アセトン(15mL)中の粗酸12c(1.0g、11.53mmol)の溶液に、MeI(1.07mL、17.30mmol)およびKCO(3.18g、23.06mmol)を加え、溶液を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発させ、内容物を水(10mL)に溶解した。溶液をエーテル(2×10mL)で抽出し、有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。真空蒸留により粗生成物を精製し、粗生成物12d(0.6g)を得た。粗生成物を次の工程で直接用いた。H NMR(300MHz、CDCl)δ:1.15(d、3H)、1.84(s、3H)、2.65(q、1H)、3.69(s、3H)
【0125】
工程5.4,4−d2−3−メチル−2−オキソヘプタ−5−イニルリン酸ジメチルエステル、化合物12の合成
【化29】

THF(10mL)中のメチルホスホン酸ジメチル(0.66mL、8.56mmol)の溶液に、ヘキサン(6.42mL)中の1.2M n−BuLiを滴下し、溶液を−78℃で30分間攪拌した。THF(5mL)に溶解したエステル12d(0.60g、4.28mmol)を反応混合物に滴下し、混合物を−78℃で3時間攪拌し、周囲温度で一晩攪拌した。反応混合物を酢酸(0.5mL)で急冷し、飽和ブライン(10mL)を加え、エーテル(2×5mL)で抽出した。エーテル層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、粗生成物12(0.40g)を得た。
(代謝的安定性の評価)
【0126】
あるin vitroの肝臓代謝研究は、以下の参照文献:Obach,RS,Drug Metab Disp,1999,27:1350;Houston,JBら、Drug Metab Rev,1997,29:891;Houston,JB,Biochem Pharmacol,1994,47:1469;Iwatsubo,Tら、Pharmacol Ther,1997,73:147;およびLave,Tら、Pharm Res,1997,14:152に前述されており、それぞれを参照によりその全体を本明細書に組み込んだものとする。
【0127】
ミクロソームアッセイ:式Iまたは式IIの化合物の代謝的安定性について、プールした肝臓のミクロソームインキュベーションを用いて試験する。次に、フルスキャンLC−MS分析を行い、主要な代謝産物を検出する。プールしたヒト肝ミクロソームに曝された試験化合物の試料をHPLC−MS(またはMS/MS)検出を用いて分析する。代謝的安定性の判定では、多反応モニタリング(MRM)を用いて試験化合物の消失を測定する。代謝産物検出では、Q1フルスキャンをサーベイスキャンとして用い、主要な代謝産物を検出する。
【0128】
実験手順:市販供給元(例えば、XenoTech,LLC(Lenexa,KS))からヒト肝ミクロソームを入手する。インキュベーション混合物は以下のように調製する:
反応混合組成物
肝臓ミクロソーム 0.5〜2.0mg/mL
NADPH 1mM
リン酸カリウム、pH7.4 100mM
塩化マグネシウム 10mM
試験化合物 0.1〜1μM。
【0129】
肝臓ミクロソームによる試験化合物のインキュベーション:補助因子のない反応混合物を調製する。反応混合物(補助因子のない)の一定分量を、振動している水浴中で37℃にて3分間インキュベートする。反応混合物の別の一定分量を陰性対照として調製する。反応混合物と、陰性対照の両方に試験化合物を最終濃度1μMで加える。単純有機溶媒(試験化合物ではない)を加えることで、反応混合物の一定分量を空白対照として調製する。補助因子(陰性対照にではない)を加えることで反応を開始し、その後、振動している水浴中で37℃にてインキュベートする。一定分量(200μL)を複数時点(例:0、15、30、60、および120分)で三通りに吸引し、氷冷した50/50のアセトニトリル/dHO 800μLと混合し、反応を終了させる。陽性対照、テストステロン、プロプラノロールのみならず、イロプロストは、それぞれ別々の反応で、試験化合物と同時に実行させる。
【0130】
全ての試料をLC−MS(またはMS/MS)を用いて分析する。LC−MRM−MS/MS法は、代謝的安定性に用いられる。ブランクマトリックスおよび試験化合物インキュベーション試料についてもQ1フルスキャンLC−MS法を行う。Q1スキャンは、サーベイスキャンとして機能し、可能性のある代謝産物を表す任意の試料固有のピークを識別する。これら潜在的な代謝産物の質量は、Q1スキャンから判断することができる。
【0131】
SUPERSOMES(商標)アッセイ:種々のヒトチトクロームP450特異的SUPERSOMES(商標)をGentest(Woburn、MA、USA)から購入する。リン酸カリウム緩衝剤(pH 7.4)100mM中にSUPERSOMES(商標)25pmolと、NADPH 2.0mMと、MgCl 3.0mMと、式Iまたは式IIの化合物1μMとを含有する反応混合物1.0mLを37℃で三通りにインキュベートした。陽性対照は、式Iの化合物の代わりにイロプロスト1μMを含有する。対照昆虫細胞サイトゾルを用いた陰性対照(ヒト代謝酵素を欠いた昆虫細胞ミクロソーム)は、GenTest(Woburn、MA、USA)から購入する。一定分量(50μL)を各試料から取り除き、種々の時点(例:0、2、5、7、12、20、および30分)でマルチウェルプレートのウェルに載置し、内部標準としてハロペリドール3μMをもつ氷冷アセトニトリル50μLを各一定分量に加え、反応を止める。
【0132】
取り除いた一定分量を含有するプレートを−20℃の冷凍庫に15分間置き、冷却させる。冷却後、脱イオン水100μLをプレート中の全ウェルに加える。次に、遠心分離機で10分間3000rpmにてプレートを回転させる。上清部分(100μL)を取り出し、新しいプレートに載置し、質量分析を用いて分析する。
【0133】
さらに説明することなく、当業者は、前述の説明および例示実施例を用いて、本発明の化合物を作り、利用し、請求項に記載の方法を実行することができると考えられる。上述の議論および実施例は、特定の好適な実施形態の詳細な説明を単に述べたにすぎないこと理解すべきである。当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱せずにさまざまな変更物および同等物の作成が可能であることが明らかであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化30】

またはその医薬的に許容される塩であって、式中:
各Yは、水素または重水素から独立して選択され;
各Zは、水素、重水素、またはフッ素から独立して選択され;YまたはZの少なくとも1つは重水素である化合物。
【請求項2】
1aおよびY1bが同一である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1aおよびY1bが同時に重水素である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
2aおよびY2bが同一である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
2aおよびY2bが同時に重水素である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
1aおよびZ1bが同一である請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
1aおよびZ1bが同時に重水素である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
以下の表:
【表3】

に記載されている化合物のいずれか1つから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式IIの化合物:
【化31】

またはその医薬的に許容される塩であって、式中:
各Yは、水素または重水素から独立して選択され;
各Zは、水素および重水素から独立して選択され;Yの少なくとも1つは重水素である化合物。
【請求項10】
3aおよびY3bが同時に重水素である請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
1aおよびY1bが同一である請求項9または請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
1aおよびY1bが同時に重水素である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
2aおよびY2bが同一である請求項9〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
2aおよびY2bが同時に重水素である請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
1aおよびZ1bが同一である請求項9〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
1aおよびZ1bが同時に重水素である請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、以下の表:
【表4】

に記載されている化合物のいずれか1つから選択される請求項9に記載の化合物。
【請求項18】
重水素として指定されていない任意の原子が、その天然同位体存在度で存在する請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
【化32】

化合物105、
【化33】

化合物114、
【化34】

化合物111、および
【化35】

化合物102から選択される化合物。
【請求項20】
有効量の請求項1または請求項9に記載の化合物と、医薬的に許容される担体とを含む発熱物質を含有しない組成物。
【請求項21】
前記組成物が吸入用微粒子製剤である請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が経口製剤である請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
第2の治療薬をさらに含む請求項20〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記第2の治療薬が、肺動脈高血圧症、全身性硬化症に伴うレイノー現象、造影剤仲介腎症、および肺癌から選択される病気または疾病の治療または予防に有用な薬剤である請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
本発明の化合物とともに製剤化された前記第2の治療薬が、肺動脈高血圧症の治療に有用な薬剤である請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記第2の治療薬が、ホスホジエステラーゼV阻害剤またはエンドセリン−1拮抗薬から選択される請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記第2の治療薬がシルデナフィルである請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記第2の治療薬がボセンタンである請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
細胞を請求項1または請求項9の化合物と接触させることを含む、前記細胞におけるプロスタサイクリン受容体活性の調節方法。
【請求項30】
肺動脈高血圧症、全身性硬化症に伴うレイノー現象、造影剤仲介腎症、および肺癌から選択される病気または疾病に苦しんでいるまたは罹患しやすい患者の治療方法であって、請求項20の組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む治療方法。
【請求項31】
前記病気が肺動脈高血圧症である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ホスホジエステラーゼV阻害剤およびエンドセリン−1拮抗薬から選択される第2の治療薬をそれを必要とする患者に投与する工程をさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の治療薬がシルデナフィルである請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の治療薬がボセンタンである請求項32に記載の方法。
【請求項35】
請求項20の組成物と第2の治療薬とをそれを必要とする患者に同時投与する工程を含む、病気または疾病に苦しんでいるまたは罹患しやすい患者の治療方法であって、前記病気または疾病が:
a.勃起障害であり、前記第2の治療薬が15−ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ阻害剤であり;
b.血栓症の疾患であり、前記第2の治療薬がベタインであり;
c.アンギナ、高血圧症、肺高血圧症、鬱血性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺性心、右室不全、アテローム性動脈硬化症、心臓血管の開存率が低下した病態、末梢血管疾患、脳卒中、気管支炎、アレルギー性喘息、慢性喘息、アレルギー性鼻炎、緑内障、過敏性腸症候群、腫瘍、腎不全、男性の性機能障害および女性の性機能障害による肝臓の肝硬変から選択され、前記第2の治療薬がホスホジエステラーゼV阻害剤であり;
d.炎症性心臓血管疾患であり、前記第2の治療薬がCOX−1またはCOX−2阻害剤であり;
e.不十分な髪厚であり、前記第2の治療薬が15−ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ阻害剤であり;
f.多発性硬化症であり、前記第2の治療薬がカンナビジオール誘導体であり;
g.細菌感染であり、前記第2の治療薬がα1−アンチトリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害剤であり;
h.肺増殖性血管障害であり、前記第2の治療薬がHMG−CoAレダクターゼ阻害剤であり;
i.肺高血圧症であり、前記第2の治療薬がサリドマイドまたはホスホジエステラーゼIV阻害剤であり;
j.高血圧症、糖尿病による合併症、および代謝症候群から選択され、前記第2の治療薬が血圧降下剤であり;または
k.肺動脈高血圧症症であり、前記第2の治療薬がエンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、およびカルシウムチャンネル遮断薬から選択される治療方法。


【公表番号】特表2010−513533(P2010−513533A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542961(P2009−542961)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026264
【国際公開番号】WO2008/079383
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(509049012)コンサート ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】