説明

ヘッドマウントディスプレイ装置及び移動支援データ提供装置

【課題】 マーチングバンドの陣形を形成する各演奏者を楽曲の進行に従って良好に誘導すること。
【解決手段】 マーチングバンドの隊列を組む各演奏者に、通信機能を搭載したヘッドマウントディスプレイを装着させる。そして、各演奏者の動きを統括する装置から、ある決められた陣形を作り出すのに必要な各演奏者の移動を支援する移動支援データを発信し、その移動支援データの内容を各演奏者のヘッドマウントディスプレイに表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーチングバンドの演奏者の移動を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、隊列を組んだ複数台の自動車による走行を自動制御する技術の開示がある。同文献に記載された隊列走行制御装置は、自動車に夫々搭載され、前方を走行する自動車との車間距離を一定に保つべく自装置が搭載された自動車の走行速度やステアリングを自動制御する。
【特許文献1】特開平09−81899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、複数の演奏者の隊列によって形成される陣形を楽曲の進行に従って順次変形させていく、「マーチングバンド」と呼ばれる演奏形態がある。一般に、マーチングバンドの各演奏者がその正しい陣形を保ちながら演奏を行えるようになるまでには多くの訓練を要するとされている。このような訓練の負担を軽減すべく、マーチングバンドの陣形を形づくる各演奏者が移動すべき位置や方向等を楽曲の進行に従ってリアルタイムに誘導し得るような仕組みの実現が望まれている。
【0004】
特許文献1に記載された装置を各演奏者に携帯させれば、自身と共に隊列を組む前方の演奏者との距離が常に一定になるような誘導を行うことは可能である。しかしながら、マーチングバンドにおいては、複雑な陣形の切り替えを行うため、各演奏者が全く異なる多様な動きをしなければならないケースも多い。このような特殊性を鑑みると、装置の装着物の動きが概ね同じであることを前提として構築されている特許文献1の技術を持って、マーチングバンドの各演奏者の良好な誘導を実現することは難しい。
【0005】
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、マーチングバンドの陣形を形成する各演奏者が移動すべき位置や方向などを楽曲の進行に従ってリアルタイムに誘導し得る仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な態様であるヘッドマウントディスプレイ装置は、前方の外景を表す実画像と所定のデータを基に生成される虚画像とを重畳して表示する重畳表示手段と、自装置の現在の位置座標と向きとを検出し、その検出の結果を示す検出値データを生成する検出手段と、前記生成された検出値データを外部の装置へ送信し、その検出値データを基に前記外部の装置にて生成された、自装置の装着者の移動を支援する移動支援データを受信する通信制御手段と、前記受信した移動支援データを基に生成した虚画像を前記重畳表示手段に投映する投映手段とを備える。
【0007】
この態様において、前記移動支援データは、前記重畳表示手段を介した外景の視野範囲と前記装着者の移動先の位置座標との関係を示すデータであってもよい。
また、前記投映手段は、前記受信した移動支援データが示す移動先に向けた移動開始までの残り時間長を示す虚画像を前記重畳表示手段に投映するようにしてもよい。
【0008】
本発明の別の好適な態様である移動支援データ提供装置は、ヘッドマウントディスプレイを装着させる装着者の移動領域を所定の座標系として表した移動領域座標系データを記憶する座標系データ記憶手段と、各ヘッドマウントディスプレイを識別する識別情報と、それらのヘッドマウントディスプレイを夫々装着させている各装着者の移動先となる位置座標の遷移を表した移動スケジュールデータとを各々対応付けて記憶したスケジュール記憶手段と、ヘッドマウントディスプレイの現在の位置座標とその向きとを検出して得られた検出値データを受信する受信手段と、前記受信した検出値データの発信元であるヘッドマウントディスプレイの識別情報と対応付けて前記スケジュール記憶手段に記憶された移動スケジュールデータを基に移動先の位置座標を特定する移動先特定手段と、前記受信した検出値データが示す位置座標と向きとを基に、ヘッドマウントディスプレイを装着させている装着者の視野範囲を演算し、演算した視野範囲と対応する領域座標系データを前記座標系データ記憶手段の移動領域座標系データから切り出す視野範囲切り出し手段と、前記切り出された領域座標系データと前記特定された移動先の位置座標との関係を示すデータを取得し、取得したデータを移動支援データとして送信する送信手段とを備える。
【0009】
この態様において、前記スケジュール記憶手段の移動スケジュールデータは、前記各移動先への移動速度を表わし、前記送信手段は、前記特定された移動先への移動速度を前記移動スケジュールデータを基に特定し、特定した移動速度を移動支援データとして送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、マーチングバンドの陣形を形成する各演奏者を楽曲の進行に従って良好に誘導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の実施の形態)
本願発明の実施形態について説明する。
本実施形態は、以下の2つの特徴を有する。
1つ目の特徴は、マーチングバンドの隊列を組む各演奏者に、通信機能を搭載したヘッドマウントディスプレイを装着させるようにした点である。2つ目の特徴は、各演奏者の動きを統括する装置から、ある決められた陣形を作り出すのに必要な各演奏者の移動を支援するデータ(以下、「移動支援データ」と呼ぶ)を発信し、その移動支援データの内容を各演奏者のヘッドマウントディスプレイの表示画像を通じて各々に了解させるようにした点である。
なお、以降の説明において、「移動領域」の語は、演奏者の移動によってマーチングバンドの各陣形が順次作り出されることになっている領域の意味で用いる。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる隊列移動支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。図に示すように、本システムは、超音波発信装置10、ヘッドマウントディスプレイ20、及び移動支援データ提供装置30を備えて構成される。
超音波発信装置10は、移動領域の周辺に複数台設置されており、各々に固有の周波数の超音波信号を移動領域内に向けて夫々発信する。
【0013】
ヘッドマウントディスプレイ20は、移動領域内を移動する各演奏者に夫々装着されるものであり、そのハードウェア構成は図2のようになっている。図2に示すヘッドマウントディスプレイ20は、重畳表示部21、現在位置検出部22、傾斜角検出部23、方角検出部24、通信制御部25、及び投映部26を備える。
【0014】
重畳表示部21は、透過型スクリーン27を含む光学系であり、前方から透過型スクリーン27へ入射する光を透過させることで得た外景の実画像と投映部26によって投映される虚画像とを透過型スクリーン27裏側の表示面に重畳表示させる。
現在位置検出部22は、各超音波発信装置10が発信した超音波信号を受信し、それら各超音波信号の到達時間差を基に、ヘッドマウントディスプレイ20を装着した演奏者の所在位置の位置座標を検出し、その検出結果を示す現在位置検出値データを生成する。
【0015】
傾斜角検出部23は、傾斜センサであり、重畳表示部21の向きを水平線を基準(0度)とする傾斜角として検出し、その検出結果を示す傾斜角検出値データを生成する。
方角検出部24は、ジャイロセンサであり、重畳表示部21の向きを東西南北に係る絶対方角として検出し、その検出結果を示す方角検出値データを生成する。
【0016】
通信制御部25は、現在位置検出部22が生成した現在位置検出値データ、傾斜角検出部23が生成した傾斜角検出値データ、及び方角検出部24が生成した方角検出値データを変調して得た無線信号を発信する。また、この通信制御部25は、移動支援データ提供装置30から受信した無線信号を復調して得た移動支援データを投映部26へ供給する。
投映部26は、通信制御部25から移動支援データが供給されると、その移動支援データを基に生成した虚画像を重畳表示部21の透過型スクリーン27裏側の表示面に向けて投映する。
【0017】
図3は、演奏者に装着されたヘッドマウントディスプレイ20の外観図である。図に示すように、装着されたヘッドマウントディスプレイ20は、その装着者である演奏者の両眼を透過型スクリーン27によって被覆する。後の動作説明の項で詳述するように、演奏者は、この透過型スクリーン27裏側の表示面に重畳表示される実画像と虚画像とを頼りに自身の移動先となる位置を了解しつつ、目的の移動先への移動と楽器の演奏とを並行して行う。
【0018】
移動支援データ提供装置30は、各演奏者の動きを統括する役割を担うべく稼動されており、そのハードウェア構成は、図4のようになっている。図に示すように、この装置は、各種制御を行うCPU31、CPU31にワークエリアを提供するRAM32、IPL(Initial Program Loader)を記憶したROM33、時刻情報を生成するタイマ34、各ヘッドマウントディスプレイ20との間で無線信号のやり取りを行う無線通信制御ユニット35、ハードディスク36などを備える。
そして、ハードディスク36は、移動支援データ提供プログラム36a、座標系データベース36b、及びスケジュールデータベース36cを記憶する。
【0019】
移動支援データ提供プログラム36aは、本実施形態に特徴的な機能をCPU31に付与する固有のプログラムである。
座標系データベース36bは、移動領域座標系データを記憶する。このデータベースに記憶される移動領域座標系データは、移動領域を2次元座標系として表したデータである。
【0020】
スケジュールデータベース36cは、各々が演奏者と対応する複数のレコードの集合体である。このデータベースを構成する1つのレコードは、「演奏者」と「スケジュール」の2つのフィールドを有する。「演奏者」のフィールドには、各演奏者に装着させるヘッドマウントディスプレイ20の識別情報を記憶する。「スケジュール」のフィールドには、スケジュールデータを記憶する。スケジュールデータは、演奏者が順次移動することになっている移動先とそれら移動先への移動速度とを表わす移動指示イベントを時間軸と対応付けて記録したものである。このスケジュールデータに記録される各移動指示イベントは、移動先をX軸方向とY軸方向の座標値の対として表わし、移動速度を、「速く」、「普通」、「遅く」の3段階の速度値として表す。
【0021】
ここで、演奏者が形作る陣形の遷移とスケジュールデータの関係について、図5及び6を参照しつつ説明する。図5は、3人の演奏者によって形作られる陣形の遷移の一例を示す図であり、図6は、その陣形の遷移を実現するスケジュールデータの内容を示す図である。
【0022】
図5を参照すると、3人の演奏者a乃至cによって形作られた移動領域手前寄りの一直線状の陣形L0が、移動領域の中央付近の三角形状の陣形L1へと変形した後、移動領域奥寄りの一直線状の陣形L2へと更に変形していることが分かる。このような陣形の遷移を実現するためには、演奏者aを、位置座標(Xa0,Ya0)→位置座標(Xa1,Ya1)→位置座標(Xa2,Ya2)と移動させる必要がある。同様に、演奏者bは、位置座標(Xb0,Yb0)→位置座標(Xb1,Yb1)→位置座標(Xb2,Yb2)と、演奏者cは、位置座標(Xc0,Yc0)→位置座標(Xc1,Yc1)→位置座標(Xc2,Yc2)と移動させる必要がある。
【0023】
一方、図6に示す演奏者aのスケジュールデータを参照すると、演奏開始後10秒経過時から20秒経過時までの時間と対応付けた移動指示イベントが、「Xa1,Ya1 遅く」となっており、40秒経過時から50秒経過時までの時間と対応付けた移動指示イベントが「Xa2,Ya2 早く」となっていることが分かる。これは、演奏者aが、演奏開始10秒経過時から20秒経過時にかけて最も遅い速度で位置座標(Xa1,Ya1)へと移動し、その後、40秒経過時から50秒経過時にかけて最も早い速度で位置座標(Xa2,Ya2)へと移動すべきことを示している。
演奏者b及び演奏者cのスケジュールデータについても同様に、10秒経過時から20秒経過時までと40秒経過時から50秒経過時までの夫々の時間と対応付けて移動指示イベントが記録されている。ここで、演奏者cの各移動指示イベントが示す移動速度は演奏者aと同じであるのに対し、演奏者bの各移動指示イベントが示す移動速度は異なるものになっている。これは、両者が移動すべき距離の相違を考慮したものである。
【0024】
次に、本実施形態の動作を説明する。
図7及び図8は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。図に示す一連の処理は、演奏開始時の陣形を形作る位置に各演奏者を移動させた状態で、移動支援データ提供装置30の移動支援データ提供プログラム36aが起動されると開始される。
【0025】
移動支援データ提供プログラム36aが起動されると、移動支援データ提供装置30のCPU31は、ハードディスク36の座標系データベース36bに記憶された移動領域座標系データをRAM32に展開する(S100)。
続いて、CPU31は、演奏開始を指示する演奏開始指示データを無線通信制御ユニット35から無線信号として発信する(S110)。
【0026】
ヘッドマウントディスプレイ20の通信制御部25が移動支援データ提供装置30から発信された無線信号を復調して演奏開始指示データを取得すると、投映部26は、その開始通知データが示す演奏開始時までの残り時間長を表す虚画像を透過型スクリーン27裏側の表示面へ順次投映する(S120)。これにより、透過型スクリーン27裏側の表示面には、透過型スクリーン27を透過した外景の実画像に、「3秒前」、「2秒前」、「1秒前」、「演奏開始!」の文字列を示す虚画像が1秒毎に順次重畳して表示されることになる。各演奏者は、自身が装着したヘッドマウントディスプレイ20の透過型スクリーン27の虚画像を参照し、「演奏開始!」の文字列が表示されると、一斉に演奏を開始する。
【0027】
演奏が開始されると、各ヘッドマウントディスプレイ20の通信制御部25は、現在位置検出部22、傾斜角検出部23、方角検出部24が生成する各種検出値データを所定の時間長毎に無線信号として発信する(S130)。
一方、演奏開始指示データを発信した移動支援データ提供装置30のCPU31は、タイマ34による支援の下、演奏開始からの経過時間の計時を直ちに開始する(S140)。
【0028】
その後、CPU31は、無線通信制御ユニット35に対して無線信号の受信の有無を問い合わせる(S150)。
この問合せの結果、無線通信制御ユニット35がヘッドマウントディスプレイ20から無線信号を受信しているときは、その無線信号を復調することによって各種検出値データを取得する(S160)。
【0029】
続いて、CPU31は、ステップ160で取得した各種検出値データを基に無線信号の発信元であるヘッドマウントディスプレイ20の視野範囲を演算し、演算により得た視野範囲と対応する一部領域の領域座標系データをステップ100でRAM32に展開しておいた移動領域座標系データから切り出す(S170)。ここで、視野範囲とは、演奏者が自らのヘッドマウントディスプレイ20の実画像として視認し得る外景の範囲を意味する。
【0030】
図9は、移動領域座標系データ上の視野範囲の一例を示す図である。図の例は、位置座標(Xb1,Yb1)にいる演奏者bの視野範囲を示すものとなっている。図に示すように、視野範囲の外延は2つの弧q及びrとそれらの両端を夫々結ぶ2つの直線s及びtよって区画される。この図において、ヘッドマウントディスプレイ20の現在位置から見て手前側に記された弧qは実画像のフレームの下端と対応し、奥側に記された弧rはその上端と対応する。そして、左側に記された直線sは実画像のフレームの左端と、右側に記された直線tは右端と夫々対応する。
【0031】
図7において、CPU31は、無線信号の発信元であるヘッドマウントディスプレイ20の識別情報を「演奏者」のフィールドに記憶しているレコードをハードディスク36のスケジュールデータベース36cから特定する(S180)。
更に、CPU31は、ステップ180で特定したレコードの「スケジュール」のフィールドに記憶されたスケジュールデータに、現在の経過時間と対応付けられた移動指示イベントの記録があるか否か判断する(S190)。
【0032】
ステップ190において、移動指示イベントの記録がないと判断したCPU31は、ステップ150に戻り、以降の処理を繰返す。一方、移動指示イベントの記録があると判断したCPU31は、その移動指示イベントが示す移動先の座標位置と移動速度とを特定する(S200)。
CPU31は、ステップ200で特定した移動先の位置座標及び移動速度とステップ170で切り出した領域座標系データが示す視野範囲の4隅の位置座標とを含む移動支援データを生成する(S210)。
【0033】
CPU31は、ステップ210で生成した移動支援データを無線通信制御ユニット35から無線信号として発信する(S220)。
ヘッドマウントディスプレイ20の通信制御部25が移動支援データ提供装置30から発信された無線信号を復調して移動支援データを取得すると、投映部26は、その移動支援データから、移動先の位置座標、移動速度、及び視野範囲の4隅の位置座標を夫々抽出する(S230)。
続いて、投映部26は、透過型スクリーン27裏側の表示面に、その表示面の4隅がステップ230で抽出した4隅の位置座標と対応するような座標系をあてはめる(S240)。
【0034】
投映部26は、ステップ240にて透過型スクリーン27裏側の表示面にあてはめた座標系に従い、ステップ230で抽出した移動先の位置座標が指し示す表示面上の表示位置を特定する(S250)。
投映部26は、ステップ250で特定した表示位置に向けて、移動先の位置を表す虚画像を投映する(S260)。
続いて、投映部26は、ステップ250で特定した表示位置の近傍に、移動先に向けた移動速度を表す虚画像を投映する(S270)。
図10は、透過型スクリーン27の表示態様の一例を示す図である。図に示す例では、視野範囲の外景の実画像に、移動先の位置を「◎」のマークとして表す虚画像が重畳され、更にそのマークの右上近傍には、移動速度を示す「遅く」という文字列を表す虚画像が重畳されている。
投映部26は、移動先に向けた移動開始時までの残り時間長の投映タイミングが到来したか否か判断する(S280)。投映タイミングの特定は、移動支援データ提供装置30の指示の下に行うようにしてもよいし、予めヘッドマウントディスプレイ20に組み込んでおいた所定のシーケンスデータに従って行うようにしてもよい。
【0035】
投映タイミングが到来していないと判断されると、所定の時間長の経過後にステップ130へ戻り、以降の処理が繰返される。
一方、投映タイミングが到来したと判断されると、投映部26は、移動開始までの残り時間長を示す虚画像を透過型スクリーン27裏側の表示面上の任意の位置に順次投映する(S290)。
これにより、透過型スクリーン27裏側の表示面には、透過型スクリーン27を透過した外景の実画像に、「3秒前」、「2秒前」、「1秒前」、「移動開始!」の文字列を示す虚画像が1秒毎に順次重畳して表示されることになる。各演奏者は、自身が装着したヘッドマウントディスプレイ20の透過型スクリーン27の虚画像を参照し、「移動開始!」の文字列が表示されると、「◎」のマークの虚画像が指し示す移動先に向かって移動を開始する。
演奏者が移動先に向かって移動している間も、ヘッドマウントディスプレイ20は自身の検出値データを移動支援データ提供装置30へ所定時間長毎に送信し続けるため、その透過型スクリーン27の虚画像は演奏者の現在位置を反映したものへ順次更新されていくことになる。
【0036】
以上説明した本実施形態では、マーチングバンドの隊列を組む各演奏者にヘッドマウントディスプレイ20を装着させる。そして、移動支援データ提供装置30から移動支援データを無線信号として発信し、その移動支援データが示す移動先の位置をヘッドマウントディスプレイ20の透過型スクリーン27に虚画像として表示させるようになっている。従って、各演奏者は、この透過型スクリーン27の表示内容に従って移動しさえすれば、他の演奏者らと共に正確な陣形を作り出すことができる。
【0037】
(他の実施形態)
本実施形態は、種々の変形実施が可能である。
上記実施形態において、方角検出部24は、ジャイロセンサにより構成されていたが、これを、地磁気センサによって構成してもよい。
上記実施形態では、ヘッドマウントディスプレイ20を装着している演奏者の移動先を指し示すデータから得た虚画像を透過型スクリーン27裏面の表示部に投映していたが、例えば、他の演奏者と共に形成することになる陣形自体の俯瞰視図や、その俯瞰視図上の各演奏者の位置などといったような、演奏者の移動を支援する他のデータの虚画像を併せて投映させてもよい。
図11は、透過型スクリーン27に虚画像として投映される俯瞰視図の一例を示す図である。図に示す俯瞰視図の虚画像は、16人の演奏者によって2重の円を形作る陣形となっている。そして、「×」のマークは、ヘッドマウントディスプレイ20を装着している演奏者本人の現在の位置を、「○」のマークはその移動先の位置を夫々表わしている。また、「●」のマークは、他の演奏者の移動先を表わしている。かかる変形例によれば、演奏者は、自身らがこれから形作る陣形をイメージとして了解した上で、目的の移動先へと移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】隊列移動支援システムのハードウェア構成図である。
【図2】ヘッドマウントディスプレイのハードウェア構成図である。
【図3】ヘッドマウントディスプレイの外観図である。
【図4】移動支援データ提供装置のハードウェア構成図である。
【図5】陣形の遷移を示す図である。
【図6】スケジュールデータを示す図である。
【図7】実施形態の動作を示すフローチャートである(前半部分)。
【図8】実施形態の動作を示すフローチャートである(後半部分)。
【図9】視野範囲を移動領域座標系データ上に示した図である。
【図10】透過型スクリーンの表示内容を示す図である。
【図11】透過型スクリーンの表示内容を示す図である(変形例)。
【符号の説明】
【0039】
10…超音波発信装置、20…ヘッドマウントディスプレイ、21…重畳表示部、22…現在位置検出部、23…傾斜角検出部、24…方角検出部、25…通信制御部、26…投映部、27…透過型スクリーン、30…移動支援データ提供装置、31…CPU、32…RAM、33…ROM、34…タイマ、35…無線通信制御ユニット、36…ハードディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方の外景を表す実画像と所定のデータを基に生成される虚画像とを重畳して表示する重畳表示手段と、
自装置の現在の位置座標と向きとを検出し、その検出の結果を示す検出値データを生成する検出手段と、
前記生成された検出値データを外部の装置へ送信し、その検出値データを基に前記外部の装置にて生成された、自装置の装着者の移動を支援する移動支援データを受信する通信制御手段と、
前記受信した移動支援データを基に生成した虚画像を前記重畳表示手段に投映する投映手段と
を備えたヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記移動支援データは、
前記重畳表示手段を介した外景の視野範囲と前記装着者の移動先の位置座標との関係を示すデータである
ヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記投映手段は、
前記受信した移動支援データが示す移動先に向けた移動開始までの残り時間長を示す虚画像を前記重畳表示手段に投映する
ヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項4】
ヘッドマウントディスプレイを装着させる装着者の移動領域を所定の座標系として表した移動領域座標系データを記憶する座標系データ記憶手段と、
各ヘッドマウントディスプレイを識別する識別情報と、それらのヘッドマウントディスプレイを夫々装着させている各装着者の移動先となる位置座標の遷移を表した移動スケジュールデータとを各々対応付けて記憶したスケジュール記憶手段と、
ヘッドマウントディスプレイの現在の位置座標とその向きとを検出して得られた検出値データを受信する受信手段と、
前記受信した検出値データの発信元であるヘッドマウントディスプレイの識別情報と対応付けて前記スケジュール記憶手段に記憶された移動スケジュールデータを基に移動先の位置座標を特定する移動先特定手段と、
前記受信した検出値データが示す位置座標と向きとを基に、ヘッドマウントディスプレイを装着させている装着者の視野範囲を演算し、演算した視野範囲と対応する領域座標系データを前記座標系データ記憶手段の移動領域座標系データから切り出す視野範囲切り出し手段と、
前記切り出された領域座標系データと前記特定された移動先の位置座標との関係を示すデータを取得し、取得したデータを移動支援データとして送信する送信手段と
を備えた移動支援データ提供装置。
【請求項5】
請求項4に記載の移動支援データ提供装置において、
前記スケジュール記憶手段の移動スケジュールデータは、前記各移動先への移動速度を表わし、
前記送信手段は、
前記特定された移動先への移動速度を前記移動スケジュールデータを基に特定し、特定した移動速度を移動支援データとして送信する
移動支援データ提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−308455(P2006−308455A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132206(P2005−132206)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】