説明

ベルト式無段変速装置

【課題】エンジンユニットの重心位置を低く設定して車両の操縦安定性を向上できると共に、エンジンユニット上方のスペースを有効に利用できること。
【解決手段】シリンダアッセンブリ34がクランクケース33に対して前傾されたエンジン35を備えると共に車体フレームに揺動可能に支持されるエンジンユニット25に内蔵され、エンジン35で駆動される駆動プーリと、この駆動プーリによりベルトを介して回転される従動プーリとを有し、変速用電動モータ72の動力により、駆動プーリのベルト巻き掛け有効径を変化させることで、駆動プーリに対する従動プーリの回転数を変更するベルト式無段変速装置37において、変速用電動モータ72が、シリンダアッセンブリのシリンダ40の下方で且つクランクケース33の前方に配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速用アクチュエータの動力により駆動プーリのベルト巻き掛け有効径を変化させることで、変速比を無段階に変更するベルト式無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車や四輪自動車などに搭載されるベルト式無段変速装置には、変速用電動モータなどの変速用アクチュエータの動力により駆動プーリの可動半体を軸方向に移動させて、この駆動プーリのベルト巻き掛け有効径を変化させ、変速比を無段階に変更するものが知られている。
【0003】
このうち、特許文献1に記載のベルト式無段変速装置では、変速用電動モータが、エンジンユニット(ユニットスイングエンジン)におけるクランクケースの上部に設置されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−55304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のベルト式無段変速装置では、比較的重量の大きな変速用電動モータが、エンジンユニットのクランクケースの上部に設置されたので、エンジンユニットの重心位置が高くなり、自動二輪車の操縦安定性が低下してしまう。
【0006】
また、エンジンユニットのクランクケースの上部に変速用電動モータが突出するため、クランクケースの上部のスペースを有効利用をしにくい状況にあった。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、エンジンユニットの重心位置を低く設定して車両の操縦安定性を向上できると共に、エンジンユニット上方のスペースを有効に利用できるベルト式無段変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリンダアッセンブリがクランクケースに対して前傾されたエンジンを備えると共に車体フレームに揺動可能に支持されるエンジンユニットに内蔵され、前記エンジンで駆動される駆動プーリと、この駆動プーリによりベルトを介して回転される従動プーリとを有し、変速用アクチュエータの動力により、前記駆動プーリのベルト巻き掛け有効径を変化させることで、前記駆動プーリに対する前記従動プーリの回転数を変更するベルト式無段変速装置において、前記変速用アクチュエータが、前記シリンダアッセンブリの下方で且つ前記クランクケースの前方に配置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変速用アクチュエータが、エンジンユニットにおけるエンジンのシリンダアッセンブリの下方で、且つエンジンのクランクケースの前方に配置されたので、この変速用アクチュエータをクランクケースの上方に配置する場合に比べ、エンジンユニットの重心位置を低く設定でき、この結果、車両の操縦安定性を向上させることができる。また、エンジンユニットの上方に変速用アクチュエータが配置されないので、このエンジンユニット上方のスペースを有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るベルト式無段変速装置の一実施形態が適用されたエンジンユニットを備えるスクータ型自動二輪車を示す左側面図。
【図2】図1のスクータ型自動二輪車の車両フレームとエンジンユニットなどを示す左側面図。
【図3】図2の車両後部を拡大して示す部分拡大側面図。
【図4】図3における車体フレーム等の左側の部分を切断して示す部分切断側面図。
【図5】図3のエンジンユニットを示す左側面図。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図。
【図7】図6の一部を拡大して示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明に係るベルト式無段変速装置における一実施形態が適用されたスクータ型自動二輪車を示す左側面図である。図2は、図1のスクータ型自動二輪車の車体フレーム及びエンジンユニットなどを示す左側面図である。この一実施形態において、前後、左右、上下の表現は、車両乗車時の運転者を基準にしたものである。
【0012】
本実施形態のスクータ型自動二輪車10は2人乗り用の大型スクータである。このスクータ型自動二輪車10の車体前部11には、左右に突出するレッグシールド12とスクリーン13とハンドルバー14とを備える。このハンドルバー14は、図2に示す車体フレーム15のヘッドパイプ16に枢支されるステアリングシャフト17に回転一体に連結される。このステアリングシャフト17に、左右一対のフロントフォーク18を介して前輪19が懸架される。ステアリングシャフト17がヘッドパイプ16に左右に回動自在に枢支されることで、ハンドルバー14の操作によって前輪19が左右に回動される。
【0013】
図1に示すように、スクータ型自動二輪車10では、車体前部11よりも後方に2人乗り用のダブルシート20が配置される。そして、これらの車体前部11からダブルシート20に至る範囲に、ダブルシート20に着座した乗員(運転者、同乗者)が両足のそれぞれを載置可能な左右一対の板状のフットボード21が延設されると共に、これらのフットボード21間に、上方へ膨出するセンタートンネル22が形成されている。
【0014】
また、ダブルシート20の下方に車体の後部を覆う後部カバー23が設けられる。この後部カバー23の下方に、後輪24を駆動するユニットスイング式のエンジンユニット25が、図2に示す車体フレーム15に上下方向に揺動可能に搭載される。
【0015】
ここで、車体フレーム15は、前端部に前記ヘッドパイプ16を備え、このヘッドパイプ16の下部、上部から、それぞれ左右一対のダウンチューブ26、27が下方へ延出されている。前側のダウンチューブ26は、下部が後方へ屈曲して形成され、下端部に左右一対のロアチューブ29が接続される。更に、前側のダウンチューブ26における上下方向の略中央位置から、左右一対のメインチューブ28が後方へ延設される。このメインチューブ28に後側のダウンチューブ27の下端部が接続されると共に、ロアチューブ29の後部も接続される。更に、このロアチューブ29の後部に、後方へ延在されるシートレール30が接続されている。
【0016】
また、車幅方向に離間して設けられた左右一対のメインチューブ28、ロアチューブ29のそれぞれにはブリッジが架け渡され、このうち、メインチューブ28に支持用ブリッジ31が、ロアチューブ29に懸架用ブリッジ32がそれぞれ設置されている。また、メインチューブ28とシートレール30との交差位置に懸架用プレート38が固着されている。
【0017】
前記エンジンユニット25は、図3及び図5に示すように、クランク軸75を収容するクランクケース33と、このクランクケース33に対して前傾されたシリンダアセンブリ34とを有してエンジン35が構成され、このエンジン35に動力伝達装置36が一体化されて構成される。シリンダアセンブリ34は、シリンダ40、シリンダヘッド41及びヘッドカバー42が、クランクケース33の側から順次積み重ねされて構成される。また、動力伝達装置36は、エンジン35のクランクケース33における左側に併設されて後方へ延びるベルトケース70に、後述のベルト式無段変速装置37(図6)が内蔵されたものである。エンジン35におけるクランク軸75の回転力は、動力伝達装置36(ベルト式無段変速装置37)により変速されて後輪24へ伝達される。
【0018】
クランクケース33の上部に、軸受ボス部43が、上方へ向かって左右一対突設されている。車体フレーム15の懸架用プレート38には、図3及び図4に示すように、エンジン懸架ボルト44を用いてエンジン懸架ブラケット45が枢支される。そして、このエンジン懸架ブラケット45にピボット軸46を用いて、エンジンユニット25の軸受ボス部43が回転自在に連結されている。このように、エンジンユニット25の上部の軸受ボス部43に設けられたピボット軸46を中心として、エンジンユニット25が車体フレーム15に対して上下方向に揺動可能に支持(軸支)される。
【0019】
また、図3及び図4に示すように、エンジンユニット25におけるクランクケース33の前方下部は、リンク機構47を介してクッションユニット(リアショクアブソーバ)48により、車体フレーム15(ロアチューブ29)に緩衝懸架されている。
【0020】
つまり、車体フレーム15の左右一対のロアチューブ29に架け渡された取付用ブリッジ49に、クッションユニット48の前方端が揺動可能に連結される。また、前記リンク機構47は、クッションレバー50とクッションレバーロッド51を有して構成される。クッションレバー50は、車体フレーム15のロアチューブ29に掛け渡されたリーンフォースメント52に、枢支点としての枢支軸56を用いて回転自在に枢支されると共に、一端がクッションユニット48における作動ロッド53の先端に回転自在に連結される。クッションレバーロッド51は、エンジンユニット25のエンジン35におけるクランクケース33の前方下部に形成された連結ボス部54に、連結点としてのロッドシャフト68を用いて一端が回転自在に連結される。更に、このクッションレバーロッド51の他端は、クッションレバー50の他端に、連結点としてのリンクシャフト55を用いて回転自在に連結される。
【0021】
従って、エンジンユニット25及び後輪24のピボット軸46を中心とした上下方向の揺動時に、リンク機構47のクッションレバーロッド51を介して、リンク機構47のクッションレバー50が枢支軸56を中心に回転し、このクッションレバー50の回転がクッションユニット48の伸縮により吸収されて、エンジンユニット25及び後輪24の揺動が緩衝される。
【0022】
図2及び図3に示すように、車体フレーム15のメインチューブ28には、ヘルメットなどの物品を収納可能な収納ボックス57が取り付けられている。そして、この収納ボックス57の上方に、図1に示すダブルシート20が配置される。このダブルシート20は、シートレール30により支持されると共に、先端が支持用ブラケット31(図2)に設置された図示しないヒンジにより開閉自在に支持される。従って、ダブルシート20の閉時に、このダブルシート20の底板が収納ボックス57の上部開口を閉塞する。
【0023】
収納ボックス57の下方に前述のエンジンユニット25が配置されるが、このエンジンユニット25の前方であって、車体フレーム15のメインチューブ28とロアチューブ29との間に、燃料を貯留する燃料タンク58が配置される。この燃料タンク58は、図1に示すセンタートンネル22内に収容されている。
【0024】
図3〜図5に示すように、エンジンユニット25の上方で且つ収納ボックス57の前方に、エアクリーナ59、吸気ダクト60、混合気供給装置61及び吸気管62を有するエンジン吸気系63が配設される。このうちエアクリーナ59は、エンジンユニット25に取り付けられ、外気を導入してこの外気中の塵埃などを除去し、清浄な空気にする。
【0025】
また、混合気供給装置61は、吸気ダクト60を用いてエアクリーナ59に接続されると共に、吸気管62を介してシリンダアセンブリ34のシリンダヘッド41の吸気ポートに接続される。混合気供給装置61は例えばスロットルボディであり、フューエルインジェクタ64を備える。このフューエルインジェクタ64は、燃料ホース65を用いて燃料タンク58に接続される。混合気供給装置61は、エアクリーナ46から導入された清浄な空気中にフューエルインジェクタ64から燃料を噴霧して混合気とし、この混合気を吸気管62を経てシリンダヘッド41の吸気ポートへ供給する。
【0026】
図4及び図5に示すように、エンジンユニット25におけるシリンダアセンブリ34の下方には、このシリンダアセンブリ34のシリンダヘッド41の排気ポートに排気管66が接続される。この排気管66は後方へ延出されて図示しないマフラーに接続される。これらの排気管66及びマフラーを用いてエンジン排気系67が構成される。このエンジン排気系67と前記エンジン吸気系63は、エンジンユニット25と共に、ピボット軸46を中心として上下方向に揺動可能に設けられる。
【0027】
さて、エンジンユニット25における動力伝達装置36は、図6及び図7に示すように、エンジン35のクランクケース33の左側面に一体的に設けられたベルトケース70が後方へ延び、このベルトケース70の車幅方向左側に形成された開口をケースカバー71が閉塞し、これらのベルトケース70及びケースカバー71にベルト式無段変速装置37が内蔵されて構成される。このベルト式無段変速装置37は、本実施形態では、変速用アクチュエータとしての変速用電動モータ72の動力により駆動プーリ73のベルト巻き掛け有効径を変化させ、これにより、駆動プーリ73に対する従動プーリ74の回転数を無段階に変更、つまり変速比を無段階に変更するものである。
【0028】
つまり、エンジン35のクランク軸75は車両幅方向に延在してクランクケース33に軸支され、その左端がベルトケース70前部の内部に突入して、ベルト式無段変速装置37の駆動軸となる。このクランク軸75の自由端に駆動プーリ73が軸装され、この駆動プーリ73がエンジン35により駆動される。
【0029】
一方、ベルトケース70の後部には従動軸76が軸支され、この従動軸76に従動プーリ74と遠心クラッチ77が軸装される。駆動プーリ73と従動プーリ74との間にVベルト78が巻き掛けられ、従動プーリ74がVベルト78を介して駆動プーリ73により回転される。
【0030】
図7に拡大して示すように、駆動プーリ73は、クランク軸75に回転一体に設けられた固定半体79と、この固定半体79に対向して位置し、クランク軸75に回転一体且つ軸方向に移動可能に設けられた可動半体80とを備えてなる。固定半体79と可動半体80の内側面間に、Vベルト78の両側面が挟持されて摩擦係合する。
【0031】
また、可動半体80に対しスライダギアベアリング81を介してスライダギア82が、相対回転自在で且つ軸方向に一体移動可能に設けられる。このスライダギア82のスリーブ部82Bの内周面に雌ねじ83が形成されている。
【0032】
更に、クランクケース33にはスクリューシャフト84が、固定ブラケット85を用いて固定されている。このスクリューシャフト84の外周面に形成された雄ねじ86がスライダギア82の雌ねじ83に螺合して、推力発生機構87としての台形三条ねじ機構が構成される。
【0033】
一方、クランクケース33には、スライダギア82を回転駆動する変速用電動モータ72が設置される。この変速用電動モータ72のモータ軸のピニオンギア88とスライダギア82のギア部82Aとの間に2つの減速中間ギア(アクチュエータカウンタギア89、アクチュエータアイドラギア90)が軸支されて、全てのギアが噛み合っている。
【0034】
変速用電動モータ72の回転力は、アクチュエータカウンタギア89及びアクチュエータアイドラギア90により減速されてスライダギア82へ伝達され、このスライダギア82を所定の角度だけ回転させる。これにより、推力発生機構87における、スクリューシャフト84の雄ねじ86とスライダギア82の雌ねじ83との間に軸方向に沿う推力が発生し、スライダギア82が駆動プーリ73の可動半体80と共に、図7中に示すロー側規制位置L0とハイ側規制位置H0との間を軸方向に移動する。ロー側規制位置L0では、駆動プーリ73のVベルト巻き掛け有効径が最小径D1となり、ハイ側規制位置H0ではVベルト巻き掛け有効径が最大径D2となる。
【0035】
スライダギア82は、ロー側規制位置L0からハイ側規制位置H0へ移動するまでに例えば約3/4回転する。スライダギア82と可動半体80は、ロー側規制位置L0に移動したときには、スライダギア82に突設されたロー側ストッパ当接突起91が、固定ブラケット85に形成されたロー側ストッパ92に当接して回動が停止する。また、スライダギア82と可動半体80は、ハイ側規制位置H0に移動したときには、スライダギア82の外側部に突設されたハイ側ストッパ当接ピン93が、ベルトケース70に形成されたハイ側ストッパ94に当接して回動が停止する。
【0036】
図6に示す従動プーリ74では、駆動プーリ73のVベルト巻き掛け有効径が最小径D1であるときにVベルト巻き掛け有効径が最大径d1となり、駆動プーリ73のVベルト巻き掛け有効径が最大径D2であるときにVベルト巻き掛け有効径が最小径d2となる。駆動プーリ73の回転はVベルト78により従動プーリ74に伝達される。
【0037】
スクータ型自動二輪車10の発進時には、変速用電動モータ72がスライダギア82及び可動半体80をロー側規制位置L0近傍に移動させて、駆動プーリ73のVベルト巻き掛け有効径を最小径D1近傍とし、車両が加速するにつれて、変速用電動モータ72がスライダギア82及び可動半体80をハイ側規制位置H0側へ移動させて、駆動プーリ73のVベルト巻き掛け有効径を最大径D2に近づける。これにより、スクータ型自動二輪車10の車速が無段階に変速される。
【0038】
ところで、上述のようなベルト式無段変速装置37では、図4及び図5に示すように、変速用電動モータ72は、シリンダアッセンブリ34のシリンダ40の下方で、且つクランクケース33の前方に配置され、更にリンク機構47におけるクッションレバーロッド51の上方に配置される。また、この変速用電動モータ72は、リンク機構47のクッションレバー50が車体フレーム15のリーンフォースメント52に枢支される枢支軸56の近傍に配置される。
【0039】
更に、変速用電動モータ72は、側面視で、クッションレバー50とクッションレバーロッド51との連結点であるリンクシャフト55近傍に配置され、且つ、クランクケース33の連結ボス部54とクッションレバーロッド51との連結点であるロッドシャフト68近傍に配置される。また、変速用電動モータ72は、図6に示すように、エンジン35のシリンダ軸線に略一致する車体フレーム15の車幅方向中心線Oを通る位置に配置される。
【0040】
従って、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(5)を奏する。
(1)ベルト式無段変速装置37の変速用電動モータ72は、エンジンユニット25のエンジン35におけるシリンダアッセンブリ34のシリンダ40の下方で、且つエンジン35のクランクケース33の前方に配置されている。このため、この変速用電動モータ72をクランクケース33の上方に配置する場合に比べ、変速用電動モータ72がクランク軸75よりも下方に配置されるので、エンジンユニット25の重心位置を低く設定でき、この結果、スクータ型自動二輪車10の操縦安定性を向上させることができる。
【0041】
(2)変速用電動モータ72は、エンジンユニット25のエンジン35におけるシリンダアッセンブリ34のシリンダ40の下方で、且つエンジン35のクランクケース33の前方に配置されている。このため、エンジンユニット25の上方に変速用電動モータ35が配置されず、この結果、このエンジンユニット25の上方のスペースを、収納ボックス57等の容積拡張のために有効に利用できる。
【0042】
(3)変速用電動モータ72は、シリンダアッセンブリ34のシリンダ40の下方で、且つクランクケース33の前方で、更にリンク機構47のクッションレバーロッド51の上方に配置されている。このシリンダ40、クランクケース33及びクッションレバーロッド51に囲まれた空間は、スタータモータ95を配置するには狭小であるが、変速用電動モータ72を配置することが可能であるので、この空間を有効に利用できる。
【0043】
(4)クッションレバーロッド51は、エンジンユニット25の揺動時に、クッションレバー50との連結点であるリンクシャフト55周りに回動し、且つクランクケース33の連結ボス部54との連結点であるロッドシャフト68周りに回動する。このため、変速用電動モータ72を、クッションレバーロッド51のそれぞれの連結点であるリンクシャフト55及びロッドシャフト68近傍に配置することで、エンジンユニット25の揺動時に、変速用電動モータ72とクッションレバーロッド51との相対変位を極力小さくすることができる。
【0044】
(5)変速用電動モータ72が、車体フレーム15の車幅方向中心線Oを通る位置に配置されているので、エンジンユニット25の車幅方向の重量バランスが良好になり、スクータ型自動二輪車10の操縦安定性を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形してもよい。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせてもよく、またはこれらの全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0046】
15 車体フレーム
25 エンジンユニット
33 クランクケース
34 シリンダアッセンブリ
35 エンジン
37 ベルト式無段変速装置
40 シリンダ
46 ピボット軸
47 リンク機構
48 クッションユニット
50 クッションレバー
51 クッションレバーロッド
56 枢支軸(枢支点)
72 変速用電動モータ(変速用アクチュエータ)
73 駆動プーリ
74 従動プーリ
78 Vベルト
O 車幅方向中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダアッセンブリがクランクケースに対して前傾されたエンジンを備えると共に車体フレームに揺動可能に支持されるエンジンユニットに内蔵され、
前記エンジンで駆動される駆動プーリと、この駆動プーリによりベルトを介して回転される従動プーリとを有し、変速用アクチュエータの動力により、前記駆動プーリのベルト巻き掛け有効径を変化させることで、前記駆動プーリに対する前記従動プーリの回転数を変更するベルト式無段変速装置において、
前記変速用アクチュエータが、前記シリンダアッセンブリの下方で且つ前記クランクケースの前方に配置されたことを特徴とするベルト式無段変速装置。
【請求項2】
前記エンジンユニットは、エンジンにおけるクランクケースの上部が車体フレームに揺動可能に軸支され、前記クランクケースの前方下部が、リンク機構を介してクッションユニットにより前記車体フレームに緩衝懸架され、
前記リンク機構は、前記車体フレームに枢支されると共に一端が前記クッションユニットに連結されるクッションレバーと、一端が前記クランクケースの前方下部に連結されると共に他端が前記クッションレバーの他端に連結されるクッションレバーロッドとを備えてなり、
変速用アクチュエータが、前記クッションレバーロッドよりも上方に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速装置。
【請求項3】
前記変速用アクチュエータが側面視で、クッションレバーとクッションレバーロッドとの連結点近傍に配置されたことを特徴とする請求項2に記載のベルト式無段変速装置。
【請求項4】
前記変速用アクチュエータが側面視で、クランクケースとクッションレバーロッドとの連結点近傍に配置されたことを特徴とする請求項2に記載のベルト式無段変速装置。
【請求項5】
前記変速用アクチュエータが、車体フレームの幅方向中心線を通る位置に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速装置。
【請求項6】
前記変速用アクチュエータが、変速用電動モータであることを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102854(P2012−102854A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254445(P2010−254445)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】