説明

ペプチドデホルミラーゼ(PDF)阻害剤4

本発明は、式(I)の化合物に関する。これらの化合物は、新規タイプのペプチドデホルミラーゼ(PDF)阻害剤であり、とりわけ新規抗生物質として興味深い。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドデホルミラーゼ(PDF)の新規阻害剤に関する。これらの化合物は、特に抗生物質として非常に興味深い。
【背景技術】
【0002】
ペプチドデホルミラーゼは、鉄を含む細菌金属酵素である。それは、全細菌において検出でき、細菌代謝に極めて重要な役割を有する。タンパク質合成中、ペプチドデホルミラーゼは、細菌タンパク質のN末端からのホルミル基の除去を触媒する。この酵素無しでは、細菌は何ら機能的タンパク質を作れない。ペプチドデホルミラーゼは、ペプチドデホルミラーゼ阻害剤と呼ばれる新規クラスの抗生物質の作用点である。
【0003】
単純な方法で合成的に得られるペプチドデホルミラーゼの新規阻害剤の製造が、本発明の主題である。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、式(I)
【化1】

〔式中、
ラジカルRおよびRは、互いに独立して、水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;そして
は水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;
は水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;
nは1または2に等しく;
A−Bは一体となって式−CO−CR−または−C(OR)=CR−の基であり;
は水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;
は水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカル;
は水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;そして
【0005】
Xは式−CH−NOH−CHS、−NOH−CHS、−NOH−CHO、−CH−NOH−CHO、−CH−CHOH−CHO、−CHOH−CHO、−COOHまたは−CHCOOHの基であるか、または下記式:
【化2】

(式中、Uは結合、CH、NH、OまたはSであり、VはO、S、NHまたはCHであり、WはO、S、NHまたはCHであり、そしてYはOHまたはNHであり、Eは結合、CH、NH、OまたはSであり、そして基D、GおよびMは、互いに独立して、NまたはCHである)
から選択され、
ここで、RまたはRが式−Q(=O)−R(ここで、Qが硫黄原子、炭素原子またはS=O基であり、そしてRが水素原子、ハロゲン原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルである)の基である式(I)の化合物は除外され;
ここで、上記の全ラジカルは所望により置換されていてよい。〕
の化合物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物または薬学的に許容されるその製剤に関する。
【0006】
用語アルキルは、特に1個から20個の炭素原子、好ましくは1個から12個の炭素原子、最も好ましくは1個から6個の炭素原子を有する、飽和、直鎖または分枝鎖炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、2,2−ジメチルブチルまたはn−オクチル基を意味する。
【0007】
用語アルケニルおよびアルキニルは、特に2個から20個の炭素原子、好ましくは2個から12個の炭素原子、最も好ましくは2個から6個の炭素原子を有する、少なくとも部分的に不飽和、直鎖または分枝鎖炭化水素基、例えばエテニル、アリル、アセチレニル、プロパルギル、イソプレニルまたはヘキシ−2−エニル基を意味する。アルケニル基は、好ましくは1個または2個(最も好ましくは1個)の二重結合を有し、そしてアルキニル基は1個または2個(最も好ましくは1個)の三重結合を有する。
【0008】
加えて、用語アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、例えば1個以上の水素原子が、2,2,2−トリクロロエチルまたはトリフルオロメチル基のように、ハロゲン原子(好ましくはFまたはCl)、−COOH、−OH、−SH、−NH、−NO、=O、=S、=NHで置換されている基を意味する。
【0009】
用語ヘテロアルキルは、1個以上(好ましくは1個、2個または3個)の炭素原子が酸素、窒素、リン、ホウ素、セレン、シリコンまたは硫黄原子(好ましくは酸素、硫黄または窒素)で置換されている、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を意味する。用語ヘテロアルキルは、さらに、カルボン酸または、アシル、アシルアルキル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、カルボキシアルキルアミドまたはアルコキシカルボニルオキシのようなカルボン酸由来の基を意味する。
【0010】
ヘテロアルキル基の例は、式R−O−Y−、R−S−Y−、R−N(R)−Y−、R−CO−Y−、R−O−CO−Y−、R−CO−O−Y−、R−CO−N(R)−Y−、R−N(R)−CO−Y−、R−O−CO−N(R)−Y−、R−N(R)−CO−O−Y−、R−N(R)−CO−N(R)−Y−、R−O−CO−O−Y−、R−N(R)−C(=NR)−N(R)−Y−、R−CS−Y−、R−O−CS−Y−、R−CS−O−Y−、R−CS−N(R)−Y−、R−N(R)−CS−Y−、R−O−CS−N(R)−Y−、R−N(R)−CS−O−Y−、R−N(R)−CS−N(R)−Y−、R−O−CS−O−Y−、R−S−CO−Y−、R−CO−S−Y−、R−S−CO−N(R)−Y−、R−N(R)−CO−S−Y−、R−S−CO−O−Y−、R−O−CO−S−Y−、R−S−CO−S−Y−、R−S−CS−Y−、R−CS−S−Y−、R−S−CS−N(R)−Y−、R−N(R)−CS−S−Y−、R−S−CS−O−Y−、R−O−CS−S−Y−(式中、Rは水素原子、C−C−アルキル−、C−C−アルケニル−またはC−C−アルキニル基であり;Rは水素原子、C−C−アルキル−、C−C−アルケニル−またはC−C−アルキニル基であり;Rは水素原子、C−C−アルキル−、C−C−アルケニル−またはC−C−アルキニル基であり;Rは水素原子、C−C−アルキル−、C−C−アルケニル−またはC−C−アルキニル基であり、そしてYは直接結合、C−C−アルキレン、C−C−アルケニレンまたはC−C−アルキニレン基であり、ここで、少なくとも1個の炭素原子と1個以上の水素原子を含む各ヘテロアルキル基は、フッ素または塩素原子で置換され得る)である。ヘテロアルキル基の具体例は、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、tert−ブチルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、イソ−プロピルエチルアミノ、メチル−アミノメチル、エチルアミノメチル、ジ−イソ−プロピルアミノエチル、エノールエーテル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、アセチル、プロピオニル、ブチリルオキシ、アセチルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシ−カルボニル、N−エチル−N−メチルカルバモイルまたはN−メチルカルバモイルである。ヘテロアルキル基のさらなる例は、ニトリル、イソニトリル、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネートおよびアルキルニトリル基である。
【0011】
用語シクロアルキルは、1個以上の環(好ましくは1個または2個)を有し、特に3個から14個の環炭素原子、好ましくは3個から10個(とりわけ3個、4個、5個、6個または7個)の環炭素原子を有する飽和または一部不飽和(例えばシクロアルケニル)環状基を意味する。用語シクロアルキルは、さらに、1個以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子または−COOH、−OH、=O、−SH、=S、−NH、=NHまたは−NO基で置換された基を意味し、それは、例えば、シクロヘキサノン、2−シクロヘキセノンまたはシクロペンタノンのような環状ケトンである。シクロアルキル基のさらなる具体例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、スピロ[4,5]デカニル、ノルボルニル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、デカリニル、クバニル、ビシクロ[4.3.0]ノニル、テトラリン、シクロペンチルシクロヘキシル、フルオロシクロヘキシルまたはシクロヘキシ−2−エニル基である。
【0012】
用語ヘテロシクロアルキルは、1個以上(好ましくは1個、2個または3個)の環炭素原子が酸素、窒素、シリコン、セレン、リンまたは硫黄原子(好ましくは酸素、硫黄または窒素)で置換されている、上記で定義のシクロアルキル基を意味する。ヘテロシクロアルキル基は、好ましくは3個から10個(とりわけ3個、4個、5個、6個または7個)の環原子を有する1個または2個の環を有する。用語ヘテロシクロアルキルは、さらに、1個以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子または−COOH、−OH、=O、−SH、=S、−NH、=NHまたは−NO基で置換されている基を意味する。例は、ピペリジル、モルホリニル、ウロトロピニル、ピロリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロ−フリル、オキサシクロプロピル、アザシクロプロピルまたは2−ピラゾリニル基、ならびにラクタム、ラクトン、環状イミドおよび環状無水物である。
【0013】
用語アルキルシクロアルキルは、上記定義に従い、シクロアルキルと、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基の両方を含む基、例えばアルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキルおよびアルキニルシクロアルキル基を意味する。アルキルシクロアルキル基は、好ましくは3個から10個(とりわけ3個、4個、5個、6個または7個)の環炭素原子を有する1個または2個の環を有するシクロアルキル基と、1個または2個から6個の炭素原子を有する1個または2個のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を含む。
【0014】
用語ヘテロアルキルシクロアルキルは、1個以上(好ましくは1個、2個または3個)の環炭素原子および/または炭素原子が酸素、窒素、シリコン、セレン、リンまたは硫黄原子(好ましくは酸素、硫黄または窒素)で置換されている、上記定義のアルキルシクロアルキル基を意味する。ヘテロアルキルシクロアルキル基は、好ましくは、3個から10個(とりわけ3個、4個、5個、6個または7個)個の環原子を有する1個または2個の環と、1個または2個から6個の炭素原子を有する1個または2個のアルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロアルキル基を有する。このような基の例は、アルキルヘテロシクロアルキル、アルキルヘテロシクロアルケニル、アルケニルヘテロシクロアルキル、アルキニルヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルヘテロシクロアルキルおよびヘテロアルキルヘテロシクロアルケニルであり、ここで、環状基は飽和であるか、またはモノ、ジまたはトリ不飽和である。
【0015】
用語アリールまたはArは、特に6個から14個の環炭素原子、好ましくは6個から10個(とりわけ6個)の環炭素原子を有する1個以上の環を有する、芳香族基を意味する。用語アリール(またはAr)は、さらに、1個以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子または−COOH、−OH、−SH、−NH、または−NO基で置換されている基も意味する。例は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、2−フルオロフェニル、アニリニル、3−ニトロフェニルまたは4−ヒドロキシフェニル基である。
【0016】
用語ヘテロアリールは、特に5個から14個の環原子、好ましくは5個から10個(とりわけ5個または6個)の環原子、および1個以上(好ましくは1個、2個、3個または4個)の酸素、窒素、リンまたは硫黄環原子(好ましくはO、SまたはN)を有する、1個以上の環を含む、芳香族基を意味する。用語ヘテロアリールは、さらに、1個以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子または−COOH、−OH、−SH、−NHまたは−NO基で置換されている基も意味する。例は、4−ピリジル、2−イミダゾリル、3−フェニルピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、インダゾリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ピリダジニル、キノリニル、プリニル、カルバゾリル、アクリジニル、ピリミジル、2,3'−ビフリル、3−ピラゾリルおよびイソキノリニル基である。
【0017】
用語アラルキルは、上記定義に従い、アリールと、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび/またはシクロアルキル基の両方を含む基、例えばアリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アリールシクロアルキル、アリールシクロアルケニル、アルキルアリールシクロアルキルおよびアルキルアリールシクロアルケニル基を意味する。アラルキルの具体例は、トルエン、キシレン、メシチレン、スチレン、ベンジルクロライド、o−フルオロトルエン、1H−インデン、テトラリン、ジヒドロナフタレン、インダノン、フェニルシクロペンチル、クメン、シクロヘキシルフェニル、フルオレンおよびインダンである。アラルキル基は、好ましくは6個から10個の環炭素原子を有する1個または2個の芳香環と、1個または2個から6個の炭素原子を有する1個または2個のアルキル、アルケニルおよび/またはアルキニル基および/または5個または6個の環炭素原子を有するシクロアルキル基を含む。
【0018】
用語ヘテロアラルキルは、1個以上(好ましくは1個、2個、3個または4個)の環炭素原子および/または炭素原子が酸素、窒素、シリコン、セレン、リン、ホウ素または硫黄原子(好ましくは酸素、硫黄または窒素)で置換されている上記定義のアラルキル基を意味し、すなわち、それは、上記定義に従い、アリールまたはヘテロアリールと、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび/またはヘテロアルキルおよび/またはシクロアルキルおよび/またはヘテロシクロアルキル基の両方を含む基を意味する。ヘテロアラルキル基は、好ましくは5個または6個から10個の環炭素原子を有する1個または2個の芳香環と、1個または2個から6個の炭素原子を有する1個または2個のアルキル、アルケニルおよび/またはアルキニル基および/または5個または6個の環炭素原子を有するシクロアルキル基を含み、これらの炭素原子の1個、2個、3個または4個が酸素、硫黄または窒素原子により置換されている。
【0019】
例は、アリールヘテロアルキル、アリールヘテロシクロアルキル、アリールヘテロシクロアルケニル、アリールアルキルヘテロシクロアルキル、アリールアルケニルヘテロシクロアルキル、アリールアルキニルヘテロシクロアルキル、アリールアルキルヘテロシクロアルケニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロアリールヘテロアルキル、ヘテロアリールシクロアルキル、ヘテロアリールシクロアルケニル、ヘテロアリールヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールヘテロシクロアルケニル、ヘテロアリールアルキルシクロアルキル、ヘテロアリールアルキルヘテロシクロアルケニル、ヘテロアリールヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロアリールヘテロアルキルシクロアルケニルおよびヘテロアリールヘテロアルキルヘテロシクロアルキル基であり、ここで、環状基は飽和であるか、またはモノ、ジまたはトリ不飽和である。具体例は、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾイル、2−または3−エチルインドリル、4−メチルピリジノ、2−、3−または4−メトキシフェニル、4−エトキシフェニル、2−、3−または4−カルボキシフェニルアルキル基である。
【0020】
用語シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルシクロ−アルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルは、さらに、1個以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子またはOH、=O、SH、=S、NH、=NHまたはNO基で置換されている基を意味する。
【0021】
用語“所望により置換されている”は、1個以上の水素原子が、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子または−COOH、−OH、=O、−SH、=S、−NH、=NHまたは−NO基で置換されている基を意味する。この用語は、さらに、非置換C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cヘテロアルキル、C−C10シクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−C10アリール、C−Cヘテロアリール、C−C12アラルキルまたはC−C11ヘテロアラルキル基で置換されている基を意味する。
【0022】
式(I)の化合物は、それらの置換に依存して、1個以上のキラル中心を有し得る。本発明は、故に、全ての純粋エナンチオマーおよび全ての純粋ジアステレオ異性体の両方、および全ての比率でのそれらの混合物を含む。加えて、本発明はまた一般式(I)の化合物の全てのcis/trans異性体、ならびにそれらの混合物を含む。加えて、本発明は、式(I)の化合物の全ての互変異性形態を含む。
【0023】
WがNHであり、そしてVがO、SまたはNHである式(I)の化合物が好ましい。
基D、GおよびMの1個、2個、または2個が窒素原子である式(I)の化合物がさらに好ましい。
【0024】
Xが式−CH−CO−NHOH、−CO−NHOH、−CH−NOH−CHS、−NOH−CHS、−CH−NOH−CHO、−NOH−CHO、−CH−CO−CHOH、−CO−CHOH、−CH−CHOH−CHO、−CHOH−CHOまたは下記式:
【化3】

の一つを有する、式(I)の化合物が特に好ましい。
【0025】
Xは最も好ましくは式−CO−NHOHの基である。
はより好ましくは水素原子である。
はより好ましくはC3−7−アルキル−またはC3−7−ヘテロアルキル基;とりわけn−ブチルまたはn−ペンチル基である。
【0026】
はより好ましくは水素原子である。
は、再び好ましくは水素原子または所望により置換されているヘテロアリールラジカル;とりわけ水素原子、ピリジル、ベンゾフラニルまたはp−アミノ−ベンズアミジニルラジカルである。
【0027】
は、より好ましくは水素原子、所望により置換されているC1−20−アルキル基、分枝鎖C1−20−アルキル基、アリールまたはヘテロアリール基である。Rは、特に好ましくは所望により置換されているC2−6−アルキル基または分枝鎖C2−6−アルキル基またはo−、m−またはp−置換されているまたはo−およびm−二置換されているフェニル基である。Rは、特に好ましくはプロピル、イソプロピル、フェニル、o−ニトロフェニル、p−ヒドロキシフェニル、m−ヒドロキシフェニル、m,p−ジヒドロキシフェニル、m−アミジノフェニルまたは3'−インドリル基である。
【0028】
より好ましくは、ラジカルRおよびRは水素原子である。
より好ましくは、nは1である。
【0029】
式(I)の化合物の薬理学的に許容される塩の例は、生理学的に許容される鉱酸、例えば塩酸、硫酸およびリン酸の塩;または有機酸、例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、乳酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸およびサリチル酸の塩である。式(I)の化合物は溶媒和、特に水和されていてよい。水和は、例えば製造工程中、または、最初は無水の式(I)の化合物の吸湿性の性質の結果として、起こり得る。
【0030】
本発明の医薬組成物は、活性成分として少なくとも1個の式(I)の化合物および所望により担体および/またはアジュバントを含む。
【0031】
同様に本発明の主題であるプロドラッグ(例えばR. B. Silverman, Medizinische Chemie, VCH Weinheim, 1995, chapter 8, pp 361ff)は、式(I)の化合物および、生理学的条件下で開裂される少なくとも1個の薬理学的に許容される保護基、例えばヒドロキシ、アルコキシ、アラルキルオキシ、アシルまたはアシルオキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ、アセチルまたはアセチルオキシ基を含む。
【0032】
式(I)の化合物、それらの薬理学的に許容される塩または溶媒和物および水和物、ならびに製剤および医薬組成物の治療的使用も同様に本発明の主題である。
【0033】
式(I)の化合物は、本発明に従い、とりわけメタロプロテイナーゼ(特にPDF)の阻害剤として、非常に興味深い。疾患、とりわけPDFにより伝達される疾患の予防および/または処置用薬剤の製造におけるこれらの活性成分の使用も、また本発明の主題である。一般に、式(I)の化合物は、既知の、許容される方法を使用して、単独で、または何らかの他の治療剤と組み合わせて、投与される。投与は、例えば下記の方法の一つにより行い得る:例えば糖衣錠、コーティング錠、ピル、半固体、軟または硬カプセル、溶液、エマルジョンまたは懸濁液として経口で;例えば注射可能溶液として非経腸的に;坐薬として経腸的に;例えば粉末製剤またはスプレーとして吸入により、経皮的にまたは鼻腔内に。このような錠剤、ピル、半固体、コーティング錠、糖衣錠および硬ゼラチンカプセルの製造のために、治療に使用できる生成物を、薬剤用の薬理学的に不活性な、無機または有機担体、例えばラクトース、スクロース、グルコース、ゼラチン、麦芽、シリカゲル、デンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩、脱脂粉乳などと混合し得る。軟カプセルを製造するために、植物油、石油、動物もしくは合成油、蝋、脂肪、ポリオールのような薬剤用の担体を使用し得る。液体溶液およびシロップの製造のために、水、アルコール、水性塩溶液、水性デキストロース、ポリオール、グリセロール、植物油、石油、動物もしくは合成油のような薬剤用担体を使用し得る。坐薬のために、植物油、石油、動物もしくは合成油、蝋、脂肪およびポリオールのような薬剤用の担体を使用し得る。エアロゾル製剤について、酸素、窒素および二酸化炭素のような、この目的に適する圧縮ガスを使用できる。薬学的に許容される薬剤はまた防腐剤および安定化剤、乳化剤、甘味剤、芳香剤、浸透圧調整用塩、緩衝剤、コーティング剤および抗酸化剤も含み得る。
【0034】
式(I)の化合物は、式X−[CR]−NH(II)、R−CO−R(III)およびR−CH−CO−COOEt(IV)(ここで、ラジカルは上記で定義の通りである)の化合物の反応により製造できる。
【実施例】
【0035】
一般法:
50μlのエタノール:ジクロロメタン(1:1)中のアミン(II)の0.2M溶液を96ウェルプレートに分配した。50μlのエタノール:ジクロロメタン(1:1)中のアルデヒド(R=H)またはケトン(III)の0.2M溶液を添加した。プレートを、20分、室温で振盪した。その後、50μlのエタノール:ジクロロメタン(1:1)中のケト酸(IV)の0.2M溶液を分配した。プレートを、一晩室温で振盪し、その後溶媒を蒸発させた。
【0036】
以下の化合物を、適当な出発物質を使用して一般法に従い製造し、マススペクトルにより同定した。全化合物を、PDF阻害剤としての活性について試験し(アッセイについて、D. Chen et al. Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Jan. 2004, pp. 250-261参照)、1nmolから50μmolの範囲のIC50値を有した。
【0037】
【表1】

【表2】


【表3】

【0038】
【表4】

【表5】

【表6】

【0039】
【表7】

【表8】

【表9】

【0040】
【表10】

【表11】

【表12】

【0041】
【表13】

【表14】

【表15】

【0042】
【表16】

【表17】

【表18】

【0043】
【表19】

【表20】

【表21】

【0044】
【表22】

【表23】

【表24】

【0045】
【表25】

【表26】

【表27】

【0046】
【表28】

【表29】

【表30】

n.d.=検出せず

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、
ラジカルRおよびRは、互いに独立して、水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;そして
は水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;
は水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;
nは1または2に等しく;
A−Bは一体となって式−CO−CR−または−C(OR)=CR−の基であり;
は水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;
は水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;
は水素原子、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルであり;
Xは式−CH−NOH−CHS、−NOH−CHS、−NOH−CHO、−CH−NOH−CHO、−CH−CHOH−CHO、−CHOH−CHO、−COOHまたは−CHCOOHの基であるか、または下記式:
【化2】

(式中、Uは結合、CH、NH、OまたはSであり、VはO、S、NHまたはCHであり、WはO、S、NHまたはCHであり、そしてYはOHまたはNHであり、Eは結合、CH、NH、Oであるか、またはSおよび基D、GおよびMは、互いに独立して、NまたはCHである)
から選択され、
ここで、RまたはRが式−Q(=O)−R(ここで、Qが硫黄原子、炭素原子またはS=O基であり、そしてRが水素原子、ハロゲン原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはヘテロアラルキルラジカルである)の基である、式(I)の化合物は除外される。〕
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物または薬学的に許容される製剤。
【請求項2】
Xが式−CO−NHOHの基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が水素原子である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
がC3−7−アルキルまたはC3−7−ヘテロアルキル基である、請求項1、2または3記載の化合物。
【請求項5】
がn−ブチルまたはn−ペンチル基である、請求項1、2または3記載の化合物。
【請求項6】
が水素原子である、請求項1、2、3、4または5記載の化合物。
【請求項7】
がプロピル、イソプロピル、フェニル、o−ニトロフェニル、p−ヒドロキシフェニル、m−ヒドロキシフェニル、m,p−ジヒドロキシフェニル、m−アミジノフェニルまたは3'−インドリル基である、請求項1、2または3記載の化合物。
【請求項8】
ラジカルRおよびRが水素原子である、請求項1、2、3、4、5、6または7記載の化合物。
【請求項9】
nが1に等しい、請求項1、2、3、4、5、5、7または8記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の化合物および所望により担体および/またはアジュバントを含む、医薬組成物。
【請求項11】
メタロプロテイナーゼの阻害のための、請求項1から10のいずれかに記載の化合物または医薬組成物の使用。
【請求項12】
ペプチドデホルミラーゼ(PDF)の阻害のための、請求項1から10のいずれかに記載の化合物または医薬組成物の使用。
【請求項13】
メタロプロテイナーゼ活性により伝達される疾患の処置および/または予防のための、請求項1から10のいずれかに記載の化合物または医薬組成物の使用。
【請求項14】
ペプチドデホルミラーゼ(PDF)活性により伝達される疾患の処置および/または予防のための、請求項1から10のいずれかに記載の化合物または医薬組成物の使用。
【請求項15】
抗生物質としての、請求項1から10のいずれかに記載の化合物または医薬組成物の使用。

【公表番号】特表2008−545765(P2008−545765A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515123(P2008−515123)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005369
【国際公開番号】WO2006/131303
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】