説明

ボーリング方法及びボーリング装置

【課題】できるだけコアチューブに対してその軸線方向から推進力を加えることができるようにして、コアの採取状態を良好にすること。
【解決手段】コアチューブ2の先端に付いたビット2aに対して回転力と下方への推進力を伝達することによってコアチューブ2内に地質調査用のコアを採取するホーリング方法において、コアチューブ2に連結するロッド2bをその軸線方向に昇降自在に且つその軸線とは直交する方向に移動不能に支持した上で、ロッド2bの側面からロッド2bに対して回転力を与えると共に、下方への推進力となる荷重をロッド2bに対してその軸線方向に与えることを特徴とするボーリング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に急峻な傾斜地や狭隘な場所で実施される地質調査のためのボーリング方法およびボーリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した急峻な傾斜地等では、斜面崩壊や地すべり等の自然災害がおき易く、地質調査用のコアを採取する必要性が大きい。ところが、このような場所にはその地形ゆえにコアを採取するボーリング装置を搬入し難い。そこで、可搬性に配慮したボーリング装置が開発されている。
【0003】
このような従来のボーリング装置としては、先端にビットが付いたコアチューブの真上にコアチューブを回転させる回転装置(電動モータ)を備えると共に、回転装置の側方にコアチューブを昇降させる昇降装置(ラック・ピニオン)を備えるものが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−92205号公報
【特許文献2】登録実用新案第3101398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した従来のボーリング装置は、ピニオンを噛み合わせるラックが昇降軸となり、これに昇降時の推進力が加わるものである。そして、この昇降軸は、コアチューブの軸線とは平行の関係にある。つまり、昇降軸とコアチューブの軸線とが同一直線上にないので、穿孔深度が増加してビットやコアチューブに作用する推進力やそれに伴って生じる反力が大きくなると、ピニオンが噛み合うラックの傾斜・変形が起き、それにより穿孔軸の位置ずれやコアチューブに異常振動が発生し、コアの品質が悪化することになった。特に回転装置の電動モータがラックの上に向かって地上から遠く離れると、異常振動がより大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その解決しようとする課題はできるだけコアチューブに対してその軸線方向から推進力を加えることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、コアチューブの先端に付いたビットに対して回転力と下方への推進力を伝達することによってコアチューブ内に地質調査用のコアを採取するホーリング方法において、コアチューブに連結するロッドをその軸線方向に昇降自在に且つその軸線とは直交する方向に移動不能に支持した上で、ロッドの側面からロッドに対して回転力を与えると共に、下方への推進力となる荷重をロッドに対してその軸線方向に与えることを特徴とする。
【0008】
下方への推進力となる荷重をロッドの真上から打撃して加えることも可能であるが、より容易に行うには、次のようにすることが望ましい。即ち、請求項2記載の発明のように、下方への推進力となる荷重がロッドに対して回転可能に支持された重りによって与えられることである。
【0009】
ロッドに対して回転力を与える高さ位置は、問わないが、ロッドに対して回転力を安定して与えるには次のようにすることが望ましい。即ち、請求項3記載の発明のように、ロッドに対して回転力を与える高さ位置が一定であることである。
【0010】
ボーリング装置のうちロッドに回転力を与えるロッド回転装置は、次のものがある。即ち、請求項4記載の発明のように、ビット付きのコアチューブに連結されたロッドに回転力を与えるボーリング装置用ロッド回転装置において、ロッドを回転させるターンテーブルと、ターンテーブルを回転させるテーブル回転機構と、ターンテーブル及びテーブル回転機構を固定すると共に地面に設置する設置架台とを備え、ターンテーブルは、ロッドを昇降自在に案内するためのガイド孔が水平状態を基準として上下方向に貫通して設けられているものである。
【0011】
ガイド孔の形状は問わない。ただし、ターンテーブルの回転力をロッドに伝達し易くし、且つ、ターンテーブルにロッドを装着しやすくするには、次のようにすることが望ましい。即ち、請求項5記載の発明のように、ガイド孔は、断面多角形のロッドが昇降自在に嵌り込む多角形であることである。
【0012】
設置架台は、地盤の特定の傾斜角度にのみ対応するものであっても良いが、汎用性を高めるには次のようにすることが望ましい。即ち、請求項6記載の発明のように、設置架台は、ターンテーブル及びテーブル回転機構を固定すると共に足場となる設置台と、地面に設置する固定台と、設置台を固定台に対して開閉可能に連結する軸とを備え、傾斜する地面に固定台を設置した場合に軸を支点にして設置台を水平に開脚可能に設けてあることである。
【0013】
設置台は、ターンテーブル及びテーブル回転機構を固定する部分と足場となる部分とが一体のものであっても良いが、掘削角度に汎用性を持たせるには次のようにすることが望ましい。即ち、請求項7記載の発明のように、設置台は、ターンテーブル及びテーブル回転機構を固定する設置台本体と、足場となる作業足場とを備え、傾斜する地面に固定台を設置した場合に軸を支点にして作業足場を水平に開脚可能に及び設置台本体を任意角度に開脚可能に設けてあることである。
【0014】
ボーリング装置のうちロッドに対して下方への推進力を与えるロッド推進装置は、ロッドの軸線方向の上側からロッドを打撃するものであっても良いが、ロッド推進装置の設置・撤去作業をし易くするには、次のようにすることが望ましい。即ち、請求項8記載の発明のように、ビット付きのコアチューブに連結されたロッドに下方への推進力を与えるボーリング装置用ロッド回転装置において、ロッドに対して着脱可能な重り設置台と、ロッドに挿通可能なリング状の重りと、重りとロッドの間に収容されるベアリングを備え、重り載置台の上にベアリング及び重りを設置した状態でロッドを回転させると、重り設置台とロッドが一緒に回転すると共に重りに対するロッドの回転力の伝達をベアリングが阻止することである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、コアチューブに連結するロッドをその軸線方向に昇降自在に且つその軸線とは直交する方向に移動不能に支持することによって、下方への推進力となる荷重をロッドに対してその軸線方向に与えることが可能となり、又、下方への推進力に影響を受けることなく、側面からロッドに対して回転力を与えることも可能となった。従って、穿孔深度が深くなっても、下方への推進力は理想的な状態でロッドに与えることができ、高品質のコアを採取することができる。
【0016】
請求項2の発明は、下方への推進力となる荷重がロッドに対して回転可能に支持された重りによって与えられるので、単純な手法ではあるが、重りの調整によって所望の推進力が得られるものである。また、ロッドの回転力が重りに殆ど伝わらないので、軽い力でロッドを回すことができる。
【0017】
請求項3の発明は、ロッドに対して回転力を与える高さ位置が一定であるので、ロッドに与えられる回転力は安定しており、理想的な掘削状況である。
【0018】
請求項4の発明は、地面に設置した設置架台にターンテーブル及びテーブル回転機構が固定されているので、ターンテーブル及びテーブル回転機構の高さ位置が安定している。その結果、穿孔深度が深くなっても、ロッドを回転させる状態は安定しており、ひいては、ターンテーブルに設けられたガイド孔に挿入されたロッドの推進方向が安定する。また、ガイド孔にロッドを挿入するだけで、ロッドをターンテーブルに装着することができる。
【0019】
請求項5の発明は、ガイド孔の形状を断面多角形のロッドが昇降自在に嵌り込む多角形にしてあるので、ロッドをガイド孔に挿入するだけで、ロッドにはターンテーブルの回転力が伝達するし、ロッドの装着作業も容易である。
【0020】
請求項6の発明は、固定台を傾斜地に設置した上で、軸を支点にして設置台を水平に開脚可能に設けてあるので、地盤の角度に対応させて開脚角度を変更することができ、汎用性の高いものである。
【0021】
請求項7の発明は、ターンテーブル等を固定する設置台本体と、足場となる作業足場とによって設置台を構成し、軸を支点にして設置台本体と作業足場とを別々に開脚可能に設けてあるので、作業足場を水平に保持したまま、設置台本体を任意角度に保持できるので、作業足場上での作業性の良さを保ちつつ、所望の掘削角度で掘削してコアを採取することができる。
【0022】
請求項8の発明は、ロッドに対して着脱可能な重り設置台と、ロッドに挿通可能なリング状の重りと、重りとロッドの間に収容するベアリングを備えるものなので、推進装置の設置・撤去作業が容易になる。また、ベアリングによってロッドの回転力が重りに伝わらないので、ロッドを回転させる力に重りの重量が殆ど加味されないことになり、軽い力でロッドを回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ボーリング装置の全体像を示す斜視図である。
【図2】ロッドの接合状態を示す断面図である。
【図3】ロッド回転装置の設置架台を示す平面図である。
【図4】設置架台の分解斜視図である。
【図5】ロッド回転装置の一部を示す斜視図である。
【図6】ターンテーブルとロッドとの位置決め状態を示す分解斜視図である。
【図7】ターンテーブルとロッドとの位置決め状態を示す平面図である。
【図8】(イ)(ロ)図は、テーブル回転機構を示す説明図である。
【図9】(イ)(ロ)図は、図8とは別例のテーブル回転機構を示す説明図である。
【図10】ターンテーブルの設置状態を示す説明図である。
【図11】ロッド推進装置を示す分解斜視図である。
【図12】ロッド推進装置の縦断面図である。
【図13】鉛直方向への掘削状態を示すボーリング装置の使用状態図である。
【図14】鉛直方向に対して傾斜した方向への掘削状態を示すボーリング装置の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ボーリング装置1は図1に示すように、先端にビット2aが付いたコアチューブ2の内部に地質調査用のコアを採取するために、コアチューブ2に対して同一軸線上に連結されたロッド2bに回転力と下方への推進力を与えるものである。そして、ボーリング装置1は、ビット2a、コアチューブ2、ロッド2bの他に、ロッド2bに回転力を与えるロッド回転装置3と、ロッド2bに下方への推進力を与えるロッド推進装置4を別々に備えるものである。以下、ロッド2b、ロッド回転装置3、ロッド推進装置4の順に、これらの詳細について説明する。
【0025】
まず、ロッド2bについて説明する。ロッド2bは図1又は図2に示すように断面正多角形、より詳しくは正方形のパイプである。また、上下のロッド2bを接合する部分においては、双方のロッド2bの端部同士が断面正方形の凹部21と凸部22によって嵌り合うと共に接合ピン23で接合されている。具体的には、下側となるロッド2bの上端部は凹部21であって、押し出し形材通りの断面形状である。一方、上側となるロッド2bの下端部は凸部22であって、押し出し形材であるそれ以外の部分に嵌り込む一回り小さな断面形状である。また、凹部21と凸部22が内外に重なり合う部分には、肉厚方向に一直線に貫通する抜穴24がそれぞれ形成されている。そして、上側となるロッド2bの凸部22においては、対向する各抜穴24に接合ピン23が収容されている。接合ピン23の内側部分は抜穴24よりも大径であり、接合ピン23が外側に抜け外れないようになっている。また、双方の接合ピン23の間には圧縮コイルばね25が介在している。圧縮コイルばね25及び双方の接合ピン23の内側部分を収容する筒状のケース26がロッド2bの内部に架設してある。また、圧縮コイルばね25の復元力によって、平時、接合ピン23の先部がロッド2bの外側に突出している。一方、接合ピン23の先部を押し込むことによって、上側のロッド2bの凸部22と下側のロッド2bの凹部21とを嵌め合わせたり、外したりすることができる。
【0026】
次に、ロッド回転装置3について説明する。ロッド回転装置3は図1に示すように、ロッド2bを回転させるターンテーブル5と、ターンテーブル5を回転させるテーブル回転機構6と、地面に設置する設置架台7と、設置架台7の設置台72とターンテーブル5との間に固定される軸受B(ボールベアリング)を備えている。この軸受Bによってターンテーブル5が設置架台7の上で回転可能に支持される。
【0027】
設置架台7は地面に設置するほか、ターンテーブル5及びテーブル回転機構6を取り付けると共に足場となるもので、図1、図3又は図4に示すように、傾斜している地面に設置する固定台71と、ターンテーブル5及びテーブル回転機構6を取り付けると共に足場となる設置台72とを備えている。
【0028】
固定台71は、平面視してコ字状の平板であって、平板の内側の開口部71aがロッド2bの通過領域となる。一方、設置台72は、固定台71とほぼ同形状の作業足場73と、ターンテーブル5等を取り付ける設置台本体74とを備えている。テーブル状の設置台本体74の外側に作業足場73が隣接して設けられている。作業足場73は、金網等のメッシュ材の外周に補強用の外枠を溶接等で接合した軽量構造である。また、作業足場73は、平面視コ字状であるので、内側に開口部73aが形成されている。この開口部73aの中に、矩形の平板からなる設置台本体74が収容可能になっている。
【0029】
また、固定台71と設置台72(作業足場73と設置台本体74)は、軸75によって連結されている。そして、その軸75を支点にして作業足場73と設置台本体74と固定台71とが相対的に開閉可能に設けられている。具体的には、コ字状の固定台71のうち対向片の両側先端部及び設置台72の一端部には、軸75を通す筒状の挿通部76がそれぞれ設けられている。また、作業足場73の挿通部76は、同じくコ字状の対向片の両側先端部のうち幅方向内側に設けられており、一方、固定台71の挿通部76は、コ字状の対向片の両側先端部のうち幅方向外側に設けられている。また、固定台71はコ字状の対向片とその挿通部76を繋ぐ部分が斜め上向きに傾斜しており、これによって、作業足場73と固定台71とが上下に重なり合った際に、固定台71の挿通部76と作業足場73の挿通部76とが同一直線になるようにしてある。また、図示しないが、これら挿通部76に通した軸75にはラチェット機構のラチェットホイールが設けてあり、固定台71と作業足場73と設置台本体74にはラチェット機構のラチェットがそれぞれ設けてある。このラチェット機構により、固定台71に対する作業足場73及び設置台本体74の開閉角度が所望の角度で保持できるようになっている。このとき、図13に示すように軸75の取付箇所とは反対側において作業足場73及び設置台本体74を下から支える油圧ジャッキ等の支持脚77が別体で設けられている。支持脚77の両端部を嵌める嵌合穴77aが固定台71の上面、並びに作業足場73及び設置台本体74の各裏面に形成されている。なお、アンカー78を埋設するための抜穴78aが固定台71に形成されている。
【0030】
ターンテーブル5は図1又は図10に示すように、円盤状であって、その中心部には、ロッド2bを昇降可能に案内するガイド孔51が形成されている。水平状態を基準にしてガイド孔51は上下に貫通しており、このガイド孔51に通じる連通孔52が軸受B及び設置台本体74にも上下に貫通する状態で形成されている。また、ガイド孔51は、多角形であって、ここでは角柱のロッド2bの外径形状よりも僅かに大きな正方形に形成されている。ターンテーブル5の上面には図6又は図7に示すように、ガイド孔51を中心として放射状に凹溝53が形成されている。凹溝53には位置決めプレート54が収容される。位置決めプレート54には、ガイド孔51を中心にして放射状に延長する長孔55が上下に貫通する状態で形成されており、一方、凹溝53には長孔55の下側にネジ穴56が形成されている。ボルト57を長孔55からネジ穴56に捩じ込むことにより、位置決めプレート54が凹溝53内で固定される。全ての位置決めプレート54の内側端面をロッド2bの外周面に当てることにより、ロッド2bは、ガイド孔51の中で外周方向にがたつくことなく正確に位置決めされ、ターンテーブル5と一緒に回転することになる。
【0031】
テーブル回転機構6は図1、図3又は図13に示すように、テーブル用モータ61の動力をターンテーブル5に伝達するものである。設置台72(設置台本体74)の上に着脱可能な支柱63が直立している。そして、この支柱63には、テーブル用モータ61を固定するためのブラケット64が側方(ロッド2b側)に延長する状態で取り付けられている。
【0032】
また、テーブル回転機構6は、ギヤの噛み合いを用いるもので、テーブル用モータ61の駆動軸61aに固定された駆動歯車62が被動歯車のターンテーブル5に噛み合うものである。その上、駆動歯車62と被動歯車とは図8に示すように、低速用、高速用に噛み合わせが変更可能なものである。駆動歯車62には、小径の低速ギヤ62aと大径の高速ギヤ62bが用いられ、これらが上下に間隔をあけて駆動軸61aに固定されている。一方、被動歯車のターンテーブル5には、大径の低速テーブル5aと小径の高速テーブル5cが用いられ、これらがスペーサ5bを介して上下に間隔をあけて設置台72に固定されている。また、被動歯車に対して駆動歯車62が上下動可能に設けられており、この上下動のストロークdを利用して噛み合わせを変更する。このため図5又は図8に示すように、ブラケット64は、支柱63に取り付けるブラケット胴部65と、テーブル用モータ61に取り付けるブラケット腕部66とに分かれている。そして、ブラケット胴部65にブラケット腕部66がストロークdを利用して段階的に上下動可能に支持される。ブラケット胴部65は、ブラケット腕部66寄りの部分が二枚の支持板65aとなっており、これら支持板65aが前後に間隔をあけて平行に設けられている。これら支持板65aの間に板状のブラケット腕部66がスライド可能に収容される。ブラケット腕部66には複数の抜穴66aがあけてあり、各抜穴66aにストッパーピン67が挿通してある。これらストッパーピン67はブラケット腕部66の前後方向に突出しており、これらストッパーピン67を挿通する位置決めスリット68が各支持板65aにそれぞれ形成されている。位置決めスリット68はコ字状である。コ字状の縦部68aは、前述のストロークdの分だけ上下に延びている。縦部68aにストッパーピン67を配置することによって、駆動歯車62が上下動可能となる。一方、コ字状の一対の横部68bは、縦部68aの上下端部からテーブル用モータ61に向かってそれぞれ延びている。横部68bの先端側にストッパーピン67を配置することによって、テーブル用モータ61の高さ位置、ひいては駆動歯車62の高さ位置が決定し、その結果、駆動歯車62に噛み合うターンテーブル5が低速テーブル5aと高速テーブル5cのうちいずれであるかが決定する。図8(イ)は、低速用の設定、図8(ロ)は高速用の設定を示している。また、ストッパーピン67の両端部にナットを捩じ込むことによって、駆動歯車62と被動歯車であるターンテーブル5との噛み合わせを確実なものとする。しかも、駆動歯車62及び被動歯車には傘歯車を用いており、これらの円錐状の外周面が重なり合う状態で噛み合わせてある。
【0033】
なお、低速ギヤ62aと高速ギヤ62b、並びに低速テーブル5aと高速テーブル5cの配置は、図9に示すように、図8に示す例と比べて上下逆にしても良い。図9(イ)は、高速用の設定、図9(ロ)は低速用の設定を示している。
【0034】
また、支柱63は図1、図3又は図13に示すように、上下動のストロークdよりも遥かに高く直立している。これは、一般的な構造ではあるが、地盤のコアを採取後に、ロッド2bごとコアチューブ2を引き抜くためである。このために、支柱63の側面にはラック63aが上下方向に沿って形成されている。ラック63aに噛み合うピニオン63bは、ブラケット64のブラケット胴部65にピニオン軸63cで回転可能に支持されている。また、このピニオン軸63cを回すピニオン用モータ63dもブラケット胴部65に固定されている。その上、ブラケット胴部65の支柱63寄りの部分は、支柱63に沿って移動するスライダとなっている。スライダは、支柱63を取り囲む状態で取り付けられており、ラック・ピニオン機構によって支柱63に沿って昇降可能に設けられている。図示しないが、支柱63の上端部はそれより下側に対して水平に屈曲するようになっている。支柱63を直立させた状態のまま支柱63の上端部にブラケット64を移動させ、その後に支柱63の上端部を屈曲させると、テーブル用モータ61の駆動軸61aがロッド2bの方に向かって水平に延長することになる。そして、駆動軸61aには巻取りロールを取り付け、巻取りロールにはワイヤの一端部を固定し、ワイヤの他端部をロッド2bに固定する。この状態で、テーブル用モータ61を駆動させると、ワイヤが巻き取られて、ロッド2bが引き上げられる。
【0035】
次にロッド推進装置4について述べる。ロッド推進装置4は図1、図11又は図12に示すように、ロッド2bに対して着脱可能な重り設置台41と、重り設置台41に載せる重り42と、重り42とロッド2bの間に収容するベアリング43を備えている。
【0036】
重り設置台41は、重り42とベアリング43を載置するもので、ここではピンである。このピンをロッド2bの前後面に対向して形成された一対の対向孔41aに挿通することによって、ピンの両端部がロッド2bの外側に突出する状態となる。また、ピンは丸棒状であることから、その上に載せる重り42の底面との接触面積が小さく、ピンと重り42とはいわゆる線接触の状態となる。
【0037】
重り42は、リング状であって、その内側には貫通孔42aが形成されている。貫通孔42aは円形となっている。但し、貫通孔42aはロッド2bの断面よりも充分に大きく、それ故、重り42はロッド2bに通しやすい。
【0038】
ベアリング43は、筒状であって、外周面が貫通孔42aの形状に対応して円形に、内周面がロッド2bの形状に対応して正方形に形成されている。重り42とロッド2bの間にベアリング43を収容することによって、ロッド2bの回転力が重り42に伝達しないようにしている。その上、ピンからなる重り設置台41と重り42とは、前述したようにいわゆる線接触の状態となっているので、ロッド2bの回転によって重り設置台41が一緒に回転した場合に、重り42は殆ど回転しないことになる。このようにベアリング43は、重り42に対するロッド2bの回転力の伝達を阻止している。ベアリング43は、具体的には、ころがり軸受である。また、ベアリング43の内周面には、ロッド2bの各面に対応する位置に、突起43aが突出している。この突起43aは、ベアリング43の内側にロッド2bを収容すると、ベアリング43の内部に向かって僅かに押し込まれ、突出長が短くなりながら、ロッド2bに接触する。この突出長さが短くなる作用によって、ベアリング43とロッド2bとを強固に一体化し、ベアリング43がロッド2bの回転時にがたつかないように振れ止めをする。
【0039】
上述した各装置は、分解時の各資機材の単体重量が人力運搬可能な重量範囲内に収まっている。
【0040】
上述したボーリング装置1を使用する方法を以下に述べる。まず、図13に示すように、鉛直方向に掘削する場合について述べる。
(1)傾斜している地盤上にロッド回転装置3を設置する。具体的には、固定台71と設置台72とが上下に重ねられ、全体として折り畳まれた状態でロッド回転装置3の設置架台7が運ばれてくる。なお、このとき支柱63、ターンテーブル5及びテーブル回転機構6は設置架台7から取り外されている。そして、傾斜している地面に設置架台7を置き、作業足場73を180度開いて、固定台71の上からアンカー78を埋設することによって固定台71を地盤に強固に固定する。
(2)作業足場73を閉じる方向に所定角度戻すと共に設置台本体74を所定角度に開いて、作業足場73と設置台本体74の双方を水平に保持し、その上で作業者が作業し易いようにする。このとき、軸75とは反対側において設置台72を下から支えるために、油圧ジャッキ等の支持脚77を固定台71と設置台72との上下間に挟む。
(3)支柱63、ターンテーブル5及びテーブル回転機構6を設置台本体74に固定すると共に、テーブル回転機構6を調整し、ターンテーブル5を低速で回転させるための設定をする。
(4)ロッド2bをロッド回転装置3に装着する。具体的にはロッド2bをターンテーブル5のガイド孔51に通す。これによって、ロッド2bは、その軸線方向に昇降自在に且つその軸線とは直交する方向に移動不能に支持される。
(5)ロッド2bにロッド推進装置4を装着する。具体的には、ターンテーブル5の下側において重り設置台41とベアリング43を用いてロッド2bに重り42を固定する。なお、ロッド2bの下端にはコアチューブ2、ビット2aを順次連結する。
(6)テーブル回転機構6のテーブル用モータ61を回転させる。この回転力がターンテーブル5を介してロッド2bの側面に順次伝わる。また、重り42の荷重による下方への推進力がロッド2bの軸線方向に直接伝わり、次第にロッド2bがガイド孔51に沿って下降していく。必要に応じてテーブル回転機構6を調整し、ターンテーブル5を高速で回転させるための設定をする。
(7)テーブル用モータ61の回転を継続し、所望の深さまで掘削する。このとき、必要に応じて、ロッド2bを接合し、重り42が地盤につかえる場合には、重り42を上側に取り付け直す。
(8)掘削の終了後は、前述したように、ロッド2bを引き上げる。以上の手順により、鉛直方向のコアを採取することができる。
【0041】
最期に、図14に示すように、鉛直方向に対して少し斜めに(最大傾斜角度約20度)掘削する場合について述べる。この場合は、上述した(1)〜(8)の手順のうち、(2)のみが幾分異なる。(2)の手順では、設置架台7を開脚して、作業足場73を水平に保持すると共に、設置台本体74を掘削角度に合わせて傾斜させて保持する。図では、設置台本体74の傾斜具合はその揺動端側が作業足場73よりも低くなる状態である。なお、このような状態でも、設置台本体74に起立する支柱63が、作業足場73に干渉しないように、作業足場73の開口部73aが形成されている。(2)以外は、鉛直方向に掘削する場合と同様に行う。
【0042】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、テーブル回転機構6は歯車同士の噛み合いによるものに限らず、チェーンやベルトを用いるものであってもよい。また、重り設置台41は、丸棒状のピンに限らず、その上に載せる重り42を回転可能に支持できる程度の摩擦抵抗の小さなものであればよい。
【符号の説明】
【0043】
1ボーリング装置 2コアチューブ
2aビット 2bロッド
3ロッド回転装置 4ロッド推進装置
5ターンテーブル 5a低速テーブル
5bスペーサ 5c高速テーブル
6テーブル回転機構 7設置架台
21凹部 22凸部
23接合ピン 24抜穴
25圧縮コイルばね 26ケース
41重り設置台 41a対向孔
42重り 42a貫通孔
43ベアリング 43a突起
51ガイド孔 52連通孔
53凹溝 54位置決めプレート
55長孔 56ネジ穴
61テーブル用モータ 61a駆動軸
62駆動歯車 62a低速ギヤ
62b高速ギヤ
63支柱 63aラック
63bピニオン 63cピニオン軸
63dピニオン用モータ
64ブラケット
65ブラケット胴部 65a支持板
66ブラケット腕部 66a抜穴
67ストッパーピン 68位置決めスリット
68a縦部 68b横部
71固定台 71a開口部
72設置台
73作業足場 73a開口部
74設置台本体 75軸
76挿通部
77支持脚 77a嵌合穴
78アンカー 78a抜穴
B軸受 dストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアチューブ(2)の先端に付いたビット(2a)に対して回転力と下方への推進力を伝達することによってコアチューブ(2)内に地質調査用のコアを採取するホーリング方法において、
コアチューブ(2)に連結するロッド(2b)をその軸線方向に昇降自在に且つその軸線とは直交する方向に移動不能に支持した上で、ロッド(2b)の側面からロッド(2b)に対して回転力を与えると共に、下方への推進力となる荷重をロッド(2b)に対してその軸線方向に与えることを特徴とするボーリング方法。
【請求項2】
下方への推進力となる荷重がロッド(2b)に対して回転可能に支持された重り(42)によって与えられることを特徴とする請求項1記載のボーリング方法。
【請求項3】
ロッド(2b)に対して回転力を与える高さ位置が一定であることを特徴とする請求項1又は2記載のボーリング方法。
【請求項4】
ビット(2a)付きのコアチューブ(2)に連結されたロッド(2b)に回転力を与えるボーリング装置用ロッド回転装置(3)において、
ロッド(2b)を回転させるターンテーブル(5)と、ターンテーブル(5)を回転させるテーブル回転機構(6)と、ターンテーブル(5)及びテーブル回転機構(6)を固定すると共に地面に設置する設置架台(7)とを備え、
ターンテーブル(5)は、ロッド(2b)を昇降自在に案内するためのガイド孔(51)が水平状態を基準として上下方向に貫通して設けられていることを特徴とするボーリング装置用ロッド回転装置。
【請求項5】
ガイド孔(51)は、断面多角形のロッド(2b)が昇降自在に嵌り込む多角形であることを特徴とする請求項4記載のボーリング装置用ロッド回転装置。
【請求項6】
設置架台(7)は、ターンテーブル(5)及びテーブル回転機構(6)を固定すると共に足場となる設置台(72)と、地面に設置する固定台(71)と、設置台(72)を固定台(71)に対して開閉可能に連結する軸(75)とを備え、傾斜する地面に固定台(71)を設置した場合に軸(75)を支点にして設置台(72)を水平に開脚可能に設けてあることを特徴とする請求項4又は5記載のボーリング装置用ロッド回転装置。
【請求項7】
設置台(72)は、ターンテーブル(5)及びテーブル回転機構(6)を固定する設置台本体(74)と、足場となる作業足場(73)とを備え、傾斜する地面に固定台(71)を設置した場合に軸(75)を支点にして作業足場(72)を水平に開脚可能に及び設置台本体(74)を任意角度に開脚可能に設けてあることを特徴とする請求項6記載のボーリング装置用ロッド回転装置。
【請求項8】
ビット(2a)付きのコアチューブ(2)に連結されたロッド(2b)に下方への推進力を与えるボーリング装置用ロッド回転装置において、
ロッド(2b)に対して着脱可能な重り設置台(41)と、ロッド(2b)に挿通可能なリング状の重り(42)と、重り(42)とロッド(2b)の間に収容されるベアリング(43)を備え、
重り載置台(41)の上にベアリング(43)及び重り(42)を設置した状態でロッド(2b)を回転させると、重り設置台(41)とロッド(2b)が一緒に回転すると共に重り(42)に対するロッド(2b)の回転力の伝達をベアリング(43)が阻止することを特徴とするボーリング装置用ロッド推進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−190657(P2011−190657A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59742(P2010−59742)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(399089677)ハイテック株式会社 (3)
【出願人】(593093858)西日本高速道路エンジニアリング関西株式会社 (11)
【Fターム(参考)】