説明

ポジ型レジスト組成物およびパターン形成方法

【課題】液浸露光時にウォーターマークの発生を抑制しうるポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法の提供。
【解決手段】(A)下記一般式(a1−1)〜(a1−3)で表される繰り返し単位から選ばれる繰り返し単位(a1)、下記一般式(a2)で表される繰り返し単位(a2)、及び、下記一般式(a3−1)〜(a3−4)から選ばれる構造を有する繰り返し単位(a3)を含有し、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、(B)活性光線又は放射線の照射により、酸を発生する化合物、(C)フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有し、アルカリ現像液に不溶な樹脂、並びに(D)溶剤、を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程に使用されるポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。特に波長が300nm以下の遠紫外線光を光源とする液浸式投影露光装置で露光するために好適なポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の微細化に伴い露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とするNA0.84の露光機が開発されている。これらは一般によく知れている様に次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ/NA)
(焦点深度)=±k2・λ/NA2
ここでλは露光光源の波長、NAは投影レンズの開口数、k1及びk2はプロセスに関係する係数である。
【0003】
更なる波長の短波化による高解像力化のために157nmの波長を有するF2エキシマレーザーを光源とする露光機が検討されているが、短波長化のために露光装置に使用するレンズ素材とレジストに使用する素材が非常に限定されるため、装置や素材の製造コストや品質安定化が非常に困難であり、要求される期間内に十分な性能と安定性を有する露光装置及びレジストが間に合わない可能性が出てきている。
【0004】
光学顕微鏡において解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法が知られている。
この「液浸の効果」は、λ0を露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA0=sinθとすると、液浸した場合、前述の解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ0/n)/NA0
(焦点深度)=±k2・(λ0/n)/NA02
すなわち、液浸の効果は波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。
これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0005】
この効果を半導体素子の微細画像パターンの転写に応用した装置例が、特許文献1(特開昭57−153433号公報)、特許文献2(特開平7−220990号公報)等にて紹介されている。
最近の液浸露光技術進捗が非特許文献1(SPIE Proc 4688,11(2002))、非特許文献2(J. Vac. Sci. Tecnol. B 17(1999))、非特許文献3(SPIE Proc 3999,2(2000))、特許文献3(国際公開WO2004−077158号パンフレット)等で報告されている。
ArFエキシマレーザーを光源とする場合は、取り扱い安全性と193nmにおける透過率と屈折率の観点で純水(193nmにおける屈折率1.44)が液浸液として最も有望であると考えられている。F2エキシマレーザーを光源とする場合は、157nmにおける透過率と屈折率のバランスからフッ素を含有する溶液が検討されているが、環境安全性の観点や屈折率の点で十分な物は未だ見出されていない。液浸の効果の度合いとレジストの完成度から液浸露光技術はArF露光機に最も早く搭載されると考えられている。
【0006】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。ポジ型の化学増幅の画像形成方法を例に挙げ説明すると、露光で露光部の酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶の基をアルカリ可溶基に変化させ、アルカリ現像により露光部を除去する画像形成方法である。
この化学増幅機構を用いたArFエキシマレーザー(波長193nm)用レジストは,現状主流になりつつあるが、形成したラインパターンが倒れてしまい、デバイス製造時の欠陥となってしまうという問題があり改善が求められていた。
【0007】
化学増幅レジストを液浸露光に適用すると、露光時にレジスト層が浸漬液と接触することになるため、レジスト層が変質することや、レジスト層から浸漬液に悪影響を及ぼす成分が滲出することが指摘されている。特許文献4(国際公開WO2004−068242号パンフレット)では、ArF露光用のレジストを露光前後に水に浸すことによりレジスト性能が変化する例が記載されており、液浸露光における問題と指摘している。
また、液浸露光を行った際に、露光後のレジスト膜上に残存する水滴の作用によって、ウォーターマークと呼ばれる円形の欠陥が生じることがあり、改善が求められている。
【特許文献1】特開昭57−153433号公報
【特許文献2】特開平7−220990号公報
【特許文献3】国際公開第04−077158号パンフレット
【特許文献4】国際公開第04−068242号パンフレット
【非特許文献1】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2002年, 第4688巻,第11頁
【非特許文献2】J. Vac. Sci. Tecnol. B 17(1999)
【非特許文献3】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2000年, 第3999巻,第2頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の様な従来技術の問題点を鑑み、液浸露光時にウォーターマークの発生を抑制し膜減りも少ないポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1>(A)下記一般式(a1−1)〜(a1−3)で表される繰り返し単位から選ばれる繰り返し単位(a1)、下記一般式(a2)で表される繰り返し単位(a2)、及び、下記一般式(a3−1)〜(a3−4)から選ばれる構造を有する繰り返し単位(a3)を含有し、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、(B)活性光線又は放射線の照射により、酸を発生する化合物、(C)フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有し、アルカリ現像液に不溶な樹脂、並びに(D)溶剤、を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

式中、
Rは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。
R'は、酸の作用により分解して脱離する基を表す。
12、R13は、各々独立して水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基を表す。
14は、脂環基を表す。
nは0〜5の整数を表す。
【0010】
<2>樹脂(C)が、下記一般式(c1−1)〜(c1−3)で表されるフッ素原子を有する繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位を有し、酸に対して安定であり、且つアルカリ現像液に対して不溶である樹脂であることを特徴とする、上記<1>に記載のポジ型レジスト組成物。
【化2】

一般式(c1−1)〜(c1−3)に於いて、
Rc1は、水素原子又はアルキル基を表す。
Rc2は、フルオロアルキル基を表す。
Rc3は、水素原子又は1価の有機基を表す。
Rc4〜Rc7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルコキシ基を表す。ただし、Rc4〜Rc7の内の少なくとも1つは、フッ素原子を表す。Rc4とRc5又はRc6とRc7は、結合して環を形成してもよい。
Rc8は、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表す。
Rc9は、フッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基を表す。
Lc1、Lc2は各々独立して単結合又は2価の連結基を表す。
Qc1は、脂環構造を表す。
k1は、0〜3の整数を表す。
【0011】
<3>樹脂(C)が、下記一般式(c2−1)又は(c2−2)で表される珪素原子を有する繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位を有し、酸に対して安定であり、且つアルカリ現像液に対して不溶である樹脂であることを特徴とする、上記<1>に記載のポジ型レジスト組成物。
【化3】

一般式(c2−1)、(c2−2)に於いて、
Rc10〜Rc12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc13、Rc15は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
Rc14は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は1価の有機基を表す。
Lc3、Lc4は各々独立して単結合又は2価の連結基を表す。
Qc2は、脂環構造を表す。
k2は、0〜3の整数を表す。
<4>樹脂(C)が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれか及び脂環構造を有する樹脂(CA)、及び、側鎖にフッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位及び側鎖に無置換アルキル基を有する繰り返し単位を含有する樹脂(CB)の少なくともいずれかであることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0012】
<5>
樹脂(C)における(c2−1)で表される珪素原子を有する繰り返し単位として、一般式(cIII)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする上記<3>に記載のポジ型レジスト組成物。
【化4】

一般式(cIII)に於いて、
Rc16は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc17は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
【0013】
<6>
樹脂(C)における(c2−1)で表される珪素原子を有する繰り返し単位として、一般式(IV)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする上記<3>に記載のポジ型レジスト組成物。
【化5】

一般式(IV)に於いて、
Rc18は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc19は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
【0014】
<7>
樹脂(C)における(c2−1)で表される珪素原子を有する繰り返し単位として、一般式(V)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする上記<3>に記載のポジ型レジスト組成物。
【化6】

一般式(V)に於いて、
Rc20は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc21は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
【0015】
<8>
Rc13、Rc15、Rc17、Rc19、Rc21における珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基が、環状シロキサン構造を有することを特徴とする上記<3>〜<7>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0016】
<9>
Rc13、Rc15、Rc17、Rc19、Rc21における珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基が、下記一般式(VI)で表される基であることを特徴とする上記<3>〜<7>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【化7】

一般式(VI)に於いて、
Rc22は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。
Rc23は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。但し、2個のRc23は、互いに連結して環構造を形成してもよい。
nは、各々独立に、0〜5の整数を表す。
【0017】
<10>
Rc13、Rc15、Rc17、Rc19、Rc21における珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基が、珪素原子を1〜3個含有することを特徴とする上記<3>〜<9>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0018】
<11>
Rc13、Rc15、Rc17、Rc19、Rc21における珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基が、下記一般式(S1)で表される基であることを特徴とする上記<3>〜<10>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。式中、mは0〜20の整数を表す。
【化8】

【0019】
<12>
樹脂(C)が25℃で固体であることを特徴とする上記<1>〜<11>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0020】
<13>
樹脂(C)のガラス転移温度が50〜200℃であることを特徴とする上記<1>〜<12>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0021】
<14>
樹脂(C)の重量平均分子量が1,000〜50,000であることを特徴とする上記<1>〜<12>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0022】
<15>
樹脂(C)を、ポジ型レジスト組成物中の全固形分量に対して0.1〜5質量%含有することを特徴とする上記<1>〜<14>のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【0023】
<16>
上記<1>〜<15>のいずれかに記載のレジスト組成物によりレジスト膜を形成し、露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、液浸露光時にウォーターマークの発生を抑制しうるポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法が提供される。更には、本発明のポジ型レジスト組成物は、液浸露光時の膜減りも低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0026】
(A)酸の作用により、アルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂
本発明のポジ型レジスト組成物に用いられる、酸の作用により、アルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂(樹脂(A)ともいう)は、
ラクトン環を有する(メタ)アクリレート単位(a1)、極性基を有する有機基を有する(メタ)アクリレート単位(a2)、及び、酸分解性基(酸解離性溶解抑制基)を有する(メタ)アクリレート単位(a3)を含む、3成分系以上の共重合体である。
ラクトン環をもつアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルから誘導された繰り返し単位(a1)を含むことで、基板との密着性を向上させ、かつ現像液との親和性を高めることができ、膜はがれを抑制できる。
極性基を有する有機基を含む繰り返し単位(a2)としては、具体的には極性基含有脂肪族又は脂環族炭化水素基をもつアクリル酸若しくはメタクリル酸エステルから誘導された構成単位であり、極性基としては、水酸基、シアノ基、アミノ基などを挙げることができるが、水酸基が好ましい。
酸分解性基含有アクリル酸若しくはメタクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位(a3)は、高解像性で、優れた耐エッチング性をもつレジストパターンを与える点で、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基等の脂環式基を有していることが好ましい。
繰り返し単位(a1)、(a2)及び(a3)の含有割合として、(a1)を20〜60モル%、好ましくは20〜50モル%、(a3)を30〜60モル%、好ましくは30〜50モル%、の範囲内にすると、解像性の優れたレジスト組成物が得られ、また構成単位(a2)を50モル%以下、好ましくは10〜40モル%の範囲内にすると、優れたレジストパターン形状を与えるため好ましい。
繰り返し単位(a1)、(a2)及び(a3)として、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン、例えばアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどから1個又は2個以上の水素原子を除いて形成される基、特にアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基などをもつものがあげられる。
【0027】
樹脂(A)は、具体的には下記一般式(a1−1)〜(a1−3)で表される繰り返し単位から選ばれる繰り返し単位(a1)、下記一般式(a2)で表される繰り返し単位(a2)、及び、下記一般式(a3−1)〜(a3−4)から選ばれる構造を有する繰り返し単位(a3)を含有し、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂である。
【0028】
【化9】

【0029】
式中、
Rは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。
R'は、酸の作用により分解して脱離する基を表す。
12、R13は、各々独立して水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基を表す。
14は、脂環基を表す。
nは0〜5の整数を表す。
【0030】
酸分解性基は、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基である。酸分解性基として好ましい基は、アルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
酸の作用により分解して脱離する基(酸で脱離する基)としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
脂環基は、詳しくは脂環式炭化水素基であり、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0031】
以下に、脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。
【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
【化12】

【0035】
本発明においては、上記脂環式部分の好ましいものとしては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、デカリン残基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基である。
【0036】
これらの脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基である。上記アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルキル基、アルコキシ基は、更なる置換基を有していてもよい。アルキル基、アルコキシ基の更なる置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0037】
樹脂(A)は、更に、下記(a4−1)〜(a4−3)のいずれかの構造を有する繰り返し単位(a4)を含むことが好ましい。
【0038】
【化13】

式中、Rは水素原子、フッ素原子またはアルキル基を表す。
【0039】
(A)成分の樹脂は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
【0040】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
これにより、(A)成分の樹脂に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移点)、
(3)アルカリ現像性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、
等の微調整が可能となる。
【0042】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0043】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0044】
(A)成分の樹脂において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0045】
本発明のポジ型レジスト組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から(A)成分の樹脂は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0046】
(A)成分の樹脂として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。より好ましくは、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン構造を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位5〜30モル%、更にその他の(メタ)アクリレート系繰り返し単位を0〜20モル%含む共重合ポリマーである。
【0047】
(A)成分の樹脂は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のポジ型レジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。
反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
(A)成分の樹脂の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000、最も好ましくは5,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
分散度(分子量分布)は通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0048】
樹脂(A)が繰り返し単位(a4)を含む場合、樹脂(A)中における繰り返し単位(a4)の含量は好ましくは0.5モル%〜20モル%であり、より好ましくは1モル%〜10モル%である。
繰り返し単位(a1)〜(a4)はそれぞれ複数種類含まれていても良い。
【0049】
本発明のポジ型レジスト組成物において、(A)成分の樹脂の組成物全体中の配合量は、全固形分中50〜99.99質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
また、本発明において、(A)成分の樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0050】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明の感光性組成物は活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物((B)成分あるいは化合物(B)とも呼ぶ)を含有する。
そのような光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0051】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0052】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0053】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0054】
(B)成分は、活性光線の照射によりフロロアルキル鎖(好ましくは炭素数2〜4)を有する酸、または、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸、を発生する化合物であることが好ましい。
また、(B)成分は、カチオン部にフッ素置換されていないアルキル残基(好ましくは炭素数1〜15)またはフッ素置換されていないシクロアルキル残基(好ましくは炭素数3〜15)を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物であることが好ましい。
【0055】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0056】
【化14】

【0057】
上記一般式(ZI)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-などが挙げられ、好ましくは炭素原子を含有する有機アニオンである。
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0058】
【化15】

【0059】
式中、Rc1は有機基を表す。
Rc1における有機基として炭素数1−30のものが上げられ好ましくは置換していてもよいアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。Rd1は水素原子、アルキル基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5は有機基を表す。Rc3、Rc4、Rc5の有機基として好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1−4のパーフロロアルキル基である。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。
Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
Rc1、Rc3〜Rc5の有機基として最も好ましくは1位がフッ素原子またはフロロアアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。また、Rc3とRc4が結合して環を形成することにより光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0060】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。
201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0061】
尚、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0062】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0063】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖、分岐又は環状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状アルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0064】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、最も好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0065】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10の環状アルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
201〜R203としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0066】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0067】
【化16】

【0068】
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、水素原子又はアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
【0069】
1c〜R5cとしてのアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)、炭素数3〜8個の環状アルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖、分岐、環状アルキル基、又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1cからR5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0070】
x及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
x及びRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
【0071】
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0072】
一般式(ZII)、(ZIII)中、R204〜R207は、各々独立に、置換基を有しててもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10の環状アルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0073】
併用してもよい活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0074】
【化17】

【0075】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
208は、アルキル基又は換若しくは未置換のアリール基を表す。
209及びR210は各々独立にアルキル基又はアリール基、電子吸引性基を表す。R209として好ましくはアリール基である。
210として好ましくは電子吸引性基であり、より好ましくはシアノ基、フロロアルキル基である。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0076】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内でより好ましくは、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物である。
【0077】
また、酸発生剤として、下記一般式(b−1)または(b−2)で表される化合物も好ましい。
【0078】
【化18】

【0079】
式中、
Rb1〜Rb3は各々独立してアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、Rb1〜Rb3のうち少なくとも1つはアリール基を表す。
Xbは炭素数2〜6のフッ化アルキレン基を表す。
Yb、Zbは各々独立してアルキル基を表す。
【0080】
Rb1〜Rb3のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基があげられ、シクロアルキル基としては炭素数3〜10が好ましく、より好ましくは炭素数4〜6である。
Xbの炭素数2〜6のフッ化アルキレン基としては、パーフルオロアルキレン基が特に好ましい。
また、Yb、Zbのアルキル基としては、フッ化アルキル基が好ましく、また炭素数1〜6のものが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のものである。
【0081】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0082】
【化19】

【0083】
【化20】

【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
【化23】

【0087】
酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。 酸発生剤の組成物中の含量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0088】
(C)フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有し、アルカリ現像液に不溶な樹脂
本発明のレジスト組成物はフッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有し、アルカリ現像液に不溶な樹脂を含有する。
ここで、「アルカリ現像液に不溶」とは、レジスト膜の、23℃における、2.38wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液に対する溶解量が、現像開始から30秒間の積算で、20nm以下であることを言う。さらに、アルカリ可溶性基、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基を含まないことが好ましい。
【0089】
本発明のレジスト組成物が樹脂(C)を含有することで、感光性膜表層に樹脂(C)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、感光性膜とした際の水に対する感光性膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性を向上させることができる。樹脂(C)としては、表面の後退接触角が添加することにより向上する樹脂であれば何でもよいが、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂であることが好ましい。感光性膜の後退接触角は60°〜90°が好ましく、更に好ましくは70°以上である。
樹脂(C)の添加量は、感光性膜の後退接触角が前記範囲になるよう適宜調整して使用できるが、感光性組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
樹脂(C)は前述のように界面に偏在するものであるが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
【0090】
樹脂(C)は、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれか及び脂環構造を有する樹脂(CA)、及び、側鎖にフッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位及び側鎖に無置換アルキル基を有する繰り返し単位を含有する樹脂(CB)の少なくともいずれかであることが好ましい。ここで、主鎖とは、モノマー単位の連結により構成された鎖の部分を言う。側鎖とは、主鎖構造以外の構造部分を言う。
樹脂(C)は、25℃で固体であることが好ましい。
樹脂(C)のガラス転移温度は50〜200℃であることが好ましい。
【0091】
樹脂(C)は、疎水性樹脂(HR)であることが好ましい。疎水性樹脂(HR)はトップコートとしても好適に使用できるものである。
樹脂(HR)におけるフッ素原子または珪素原子は、樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0092】
「疎水性樹脂」とは、感光性膜に添加することにより、感光性膜表面の水に対する接触角の向上に寄与する樹脂を言う。
疎水性樹脂は、表面の後退接触角が添加することにより向上する樹脂であれば何でもよいが、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂であることが好ましい。感光性膜は、液浸露光適用時には、前進接触角は、70°〜120°に調整される事が好ましく、75°〜100°に調整される事が更に好ましい。又、後退接触角は、60°〜100°に調整される事が好ましく、70°〜90°に調整される事が更に好ましい。
疎水性樹脂(HR)の添加量は、感光性膜の後退接触角が前記範囲になるよう適宜調整して使用できるが、感光性組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
より少ない添加量で、後退接触角を向上させることに寄与する方が好ましため、樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃〜200℃の範囲にあることが好ましい。
又、常温(25℃)において、固体であることが好ましい。
ここで定義する前進接触角及び後退接触角は、拡張収縮法により測定した前進及び後退接触角であり、具体的にはシリコンウエハー上に調製したポジ型レジスト組成物の上にシリンジで36μLの水滴を作成した後、6μL/秒の速度にて吐出又は吸引し、吐出・吸引中の接触角が安定した値を示す。
疎水性樹脂は、界面に遍在するものが多いが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
また、「アルカリ現像液に可溶」とは、疎水樹脂膜の、23℃における、2.38wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液に対する溶解量が、現像開始から30秒間の積算で、50nm以上であることを言う。アルカリ現像液に可溶であるためには、現像工程において、感光性樹脂膜が、アルカリ可溶性基を有している事が必要である。
アルカリ可溶性基は、樹脂が予め有していても良いし、露光〜現像工程の間に、酸の作用により生成しても良いし、アルカリ現像液と反応しアルカリ可溶性基を生成しても良い。
【0093】
樹脂(HR)は、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環または多環のシクロアルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、さらに他の置換基を有していてもよい。
【0094】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基の一般式を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0095】
【化24】

【0096】
一般式(F2)〜(F4)中、
57〜R68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61、R62〜R64およびR65〜R68の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。R57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0097】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CF32OH、−C(C252OH、−C(CF3)(CH3)OH、−CH(CF3)OH等が挙げられ、−C(CF32OHが好ましい。
【0098】
樹脂(C)は、下記一般式(c1−1)〜(c1−3)で表されるフッ素原子を有する繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位を有し、酸に対して安定であり、且つアルカリ現像液に対して不溶である樹脂であることが好ましい。
「酸に対して安定」とは、酸の作用により分解しアルカリ現像液に可溶化する繰り返し単位を含まず、光酸発生剤より発生した酸の存在下でも、化合物が分解しないことを言う。酸分解性基としては、樹脂(A)であげた酸分解性基と同様のものを挙げることができる。
【0099】
【化25】

【0100】
一般式(c1−1)〜(c1−3)に於いて、
Rc1は、水素原子又はアルキル基を表す。
Rc2は、フルオロアルキル基を表す。
Rc3は、水素原子又は1価の有機基を表す。
Rc4〜Rc7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルコキシ基を表す。ただし、Rc4〜Rc7の内の少なくとも1つは、フッ素原子を表す。Rc4とRc5又はRc6とRc7は、結合して環を形成してもよい。
Rc8は、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表す。
Rc9は、フッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基を表す。
Lc1、Lc2は各々独立して単結合又は2価の連結基を表す。
Qc1は、脂環構造を表す。
k1は、0〜3の整数を表す。
【0101】
以下、フッ素原子を有する繰り返し単位の具体例を示す。式中、X1は、水素原子、−CH3、−F、又は、−CF3を表す。X2は、−F、又は、−CF3を表す。
【0102】
【化26】

【0103】
樹脂(HR)は、珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、または環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、または環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0104】
【化27】

【0105】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、直鎖もしくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)またはシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニル基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、またはウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを挙げられる。
nは1〜5の整数を表す。
【0106】
樹脂(C)は、下記一般式(c2−1)又は(c2−2)で表される珪素原子を有する繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位を有し、酸に対して安定であり、且つアルカリ現像液に対して不溶である樹脂であることも好ましい。
【0107】
【化28】

【0108】
一般式(c2−1)、(c2−2)に於いて、
Rc10〜Rc12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc13、Rc15は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
Rc14は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は1価の有機基を表す。
Lc3、Lc4は各々独立して単結合又は2価の連結基を表す。
Qc2は、脂環構造を表す。
k2は、0〜3の整数を表す。
【0109】
式(c2−1)で表される珪素原子を有する繰り返し単位は、一般式(cIII)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0110】
【化29】

【0111】
一般式(cIII)に於いて、
Rc16は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc17は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
【0112】
式(c2−1)で表される珪素原子を有する繰り返し単位は、一般式(IV)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0113】
【化30】

【0114】
一般式(IV)に於いて、
Rc18は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc19は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
【0115】
式(c2−1)で表される珪素原子を有する繰り返し単位は、一般式(V)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【化31】

一般式(V)に於いて、
Rc20は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc21は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
【0116】
Rc13、Rc15、Rc17、Rc19、Rc21における珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基が、環状シロキサン構造を有することも好ましい。
【0117】
また、Rc13、Rc15、Rc17、Rc19、Rc21における珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基が、下記一般式(VI)で表される基であることも好ましい。
【0118】
【化32】

【0119】
一般式(VI)に於いて、
Rc22は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。
Rc23は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。但し、2個のRc23は、互いに連結して環構造を形成してもよい。
nは、各々独立に、0〜5の整数を表す。
【0120】
Rc13、Rc15、Rc17、Rc19、Rc21における珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基は、珪素原子を1〜3個含有することが好ましい。
【0121】
Rc13、Rc15、Rc17、Rc19、Rc21における珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基が、下記一般式(S1)で表される基であることも好ましい。式中、mは0〜20の整数を表す。
【0122】
【化33】

【0123】
以下に、珪素原子を有する繰り返し単位の具体例を示す。式中、X1は、水素原子、−CH3、−F、又は、−CF3を表す。
【0124】
【化34】

【0125】
更に、樹脂(HR)は、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0126】
【化35】

【0127】
一般式(III)に於いて、
4は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基を有する基を表す。
6は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0128】
一般式(III)に於ける、R4のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
6の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基が好ましい。
【0129】
樹脂(HR)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、樹脂(HR)の分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(HR)中10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
【0130】
樹脂(HR)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
【0131】
樹脂(HR)は、酸分解性樹脂(A)同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のないレジストが得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2の範囲である。
【0132】
樹脂(HR)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0133】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0134】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0135】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)または水を含む溶媒が好ましい。
【0136】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、さらに好ましくは300〜1000質量部である。
【0137】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0138】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。
乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0139】
尚、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
【0140】
以下に樹脂(C)の具体例を示す。また、下記表に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0141】
【化36】

【0142】
【化37】

【0143】
【化38】

【0144】
【化39】

【0145】
【表1】

【0146】
本発明のレジスト組成物によるレジスト膜と液浸液との間には、レジスト膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト上層部への塗布適性、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液難溶性である。トップコートは、レジストと混合せず、さらにレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、193nm透明性という観点からは、芳香族を豊富に含有しないポリマーが好ましく、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。前述の疎水性樹脂(HR)はトップコートとしても好適なものである。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染するという観点からは、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
【0147】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジスト膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程がレジスト膜の現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性が好ましいが、レジスト膜との非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がない方が、解像力が向上する。ArFエキシマレーザー(波長:193nm)において、液浸液として水を用いる場合には、ArF液浸露光用トップコートは、液浸液の屈折率に近いことが好ましい。屈折率を液浸液に近くするという観点からは、トップコート中にフッ素原子を有することが好ましい。また、透明性・屈折率の観点から薄膜の方が好ましい。
【0148】
トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらに液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、レジスト組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。さらに、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【0149】
(D)溶剤
本発明のレジスト組成物は、上記の成分を所定の溶剤に溶解して用いる。
溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、炭素数4〜10の環状ラクトン、炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0150】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0151】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0152】
炭素数4〜10の環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0153】
炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0154】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0155】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
【0156】
本発明においては、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
さらに、乳酸エチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることがより好ましい。
【0157】
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50重量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
【0158】
塩基性化合物
本発明のポジ型レジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0159】
【化40】

【0160】
一般式(A)〜(E)中、
200 、R201及びR202 は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ま
しくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
203 、R204、R205及びR206 は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
これら一般式(A)〜(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0161】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0162】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタンー1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0163】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
アミン化合物は、1級、2級、3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アミン化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0164】
アンモニウム塩化合物は、1級、2級、3級、4級のアンモニウム塩化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3) CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。 アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、フォスフェート等が挙げられるが、中でもハロゲン原子、スルホネートが好ましい。ハロゲン原子としてはクロライド、ブロマイド、アイオダイドが特に好ましく、スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、炭素数1〜20のアルキルスルホネート、アリールスルホネートが挙げられる。アルキルスルホネートのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えばフッ素、塩素、臭素、アルコキシ基、アシル基、アリール基等が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的にはメタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。アリールスルホネートのアリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基として、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。他の置換基としては炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
【0165】
フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物とは、アミン化合物又はアンモニウム塩化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、置換基を有していてもよい。フェノキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。置換基の置換位は、2〜6位のいずれであってもよい。置換基の数は、1〜5の範囲で何れであってもよい。
フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3) CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0166】
スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、スルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物に於ける、スルホン酸エステル基としては、アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキル基スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルのいずれであっても良く、アルキルスルホン酸エステルの場合にアルキル基は炭素数1〜20、シクロアルキルスルホン酸エステルの場合にシクロアルキル基は炭素数3〜20、アリールスルホン酸エステルの場合にアリール基は炭素数6〜12が好ましい。アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルは置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基が好ましい。
スルホン酸エステル基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3) CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0167】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0168】
塩基性化合物の使用量は、ポジ型レジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0169】
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0170】
(F)界面活性剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、更に界面活性剤を含有することが好ましく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素原子、シリコン原子、及びフッ素原子とシリコン原子の両方を含む界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0171】
本発明のポジ型レジスト組成物が上記界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0172】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0173】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C37基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0174】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0175】
これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また、いくつかの組み合わせで添加することもできる。
【0176】
界面活性剤の使用量は、ポジ型レジスト組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0177】
(G)アルカリ可溶性樹脂
本発明のポジ型レジスト組成物は、更に、酸分解性基を含有していない、(G)水に不溶でアルカリ現像液に可溶な樹脂を含有することができ、これにより感度が向上する。
本発明においては、分子量1000〜20000程度のノボラック樹脂類、分子量3000〜50000程度のポリヒドロキシスチレン誘導体をこのようなアルカリ可溶性樹脂として用いることができるが、これらは250nm以下の光に対して吸収が大きいため、一部水素添加して用いるか、又は全樹脂量の30重量%以下の量で使用することが好ましい。
また、カルボキシル基をアルカリ可溶性基として含有する樹脂も用いることができる。
カルボキシル基を含有する樹脂中にはドライエッチング耐性向上のために単環、又は多環の脂環炭化水素基を有していることが好ましい。具体的には酸分解性を示さない脂環式炭化水素構造を有するメタクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合体あるいは末端にカルボキシル基を有する脂環炭化水素基の(メタ)アクリル酸エステルの樹脂などを挙げることができる。
【0178】
(H)カルボン酸オニウム塩
本発明におけるポジ型レジスト組成物は、(H)カルボン酸オニウム塩を含有しても良い。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、(H)カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明の(H)カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環または多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。さらに好ましくはこれらのアルキル基の一部または全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0179】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0180】
これらの(H)カルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0181】
(H)カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、組成物の全固形分に対し、0.1〜20質量%が適当であり、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0182】
その他の添加剤
本発明のポジ型レジスト組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0183】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0184】
〔レジスト組成物の物性〕
本発明のポジ型レジスト組成物は、解像力向上の観点から、膜厚30〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚30〜200nmで使用されることが好ましい。ポジ型レジスト組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
ポジ型レジスト組成物中の全固形分濃度は、一般的には1〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%、さらに好ましくは1.0〜7.0質量%である。
【0185】
〔パターン形成方法〕
本発明のポジ型レジスト組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターは0.1ミクロン以下、より好ましくは0.05ミクロン以下、更に好ましくは0.03ミクロン以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0186】
例えば、ポジ型レジスト組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、感光性膜を形成する。
当該感光性膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0187】
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下の波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、電子ビーム等であり、更に好ましくは1nm〜200nmの波長の光、特にArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)、電子ビームが好ましい。
【0188】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。レジスト組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
さらに、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
リンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理または、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0189】
活性光線又は放射線の照射時にレジスト膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸媒体)を満たして露光(液浸露光)を行ってもよい。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。また、液浸露光を行なう際に液浸媒体と感光性膜が直接触れ合わないようにするために感光性膜の上にさらにオーバーコート層を設けても良い。これにより感光性膜から液浸媒体への組成物の溶出が抑えられ、現像欠陥が低減する。
【0190】
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0191】
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上のレジスト層を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。その添加剤としては水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0192】
水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(D2O)を用いてもよい。
【実施例】
【0193】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0194】
合成例・樹脂(C)の作成
メタクリル酸ヘプタフルオロブチル、2−トリフルオロメチルアクリル酸t−ブチルを50/50の割合(モル比)で仕込み、シクロヘキサノンに溶解し、固形分濃度22%の溶液450gを調製した。この溶液に和光純薬工業(株)製重合開始剤V−601を5mol%を加え、これを窒素雰囲気下、2時間かけて80℃に加熱したシクロヘキサノン50mLに滴下した。滴下終了後、反応液を2時間撹拌し、反応液(HR−1)を得た。反応終了後、反応液(HR−1)を室温まで冷却し、10倍量のメタノールに晶析、析出した白色粉体を濾取し、目的物である樹脂(HR−1)を回収した。
1H−NMRから求めたポリマー組成比は50/50(モル比)であった。また、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は8800、分散度は2.1であった。
同様にして、他の各樹脂(C)を作成した。
【0195】
樹脂(A)の合成例
2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート0.4molと、α−(γ−ブチロラクトン)メタクリレート0.4molと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート0.2molとをシクロベンタノン600mlに溶解し、これにAIBN0.1molを加えて溶解させた。得られた溶液を、65−70℃で、3時間加熱した。得られた反応液を、よく攪拌したイソプロパノール3L中に注ぎ、析出した固形物を濾過により分離した。得られた固形物を、THF600mlに溶解し、よく攪拌したメタノール3L中に注ぎ、析出した固形分を濾過により分離し、乾燥させて、下記樹脂1を得た。
同様にして、樹脂2〜10を合成した。以下に、構造、組成比、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を示す。
【0196】
【化41】

【0197】
【化42】

【0198】
<レジスト調整>
下記表2に示す成分を溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度7質量%の溶液を調整し、これを0.1μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過してポジ型レジスト溶液を調整した。調製したポジ型レジスト組成物を下記の方法で評価し、結果を下記表に示した。
尚、表における各成分について、複数使用した場合の比は質量比である。
【0199】
<露光評価:ウオーターマーク>
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に調製したポジ型レジスト組成物を塗布し、110℃で、60秒間ベークを行い、150nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(NA0.85,スキャンスピード500mm/s)を用い、パターン露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後110℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。その後、KLA2360(KLA社製)で、ウエハー状における欠陥分布を検出し、SEMVision(AMAT社製)を用いて、欠陥の形状を観察した。
図1に示すような直径1μm〜5μm程度の円形の欠陥を、ウオーターマーク欠陥として、300mmウエハーにおける個数をカウントした。
【0200】
<露光評価:膜減りマージン>
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に調製したポジ型レジスト組成物を塗布し、110℃で、60秒間ベークを行い、150nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(NA0.85)を用い、パターン露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後110℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。このとき、75nmL/S(ラインアンドスペース)パターンを1:1に解像する露光量(Eo)および、過剰露光量により、膜が溶解し始めることによって、パターンの頭部形状の矩形性が損なわれ出す露光量(ELoss)を求め、下記式より、膜減りマージン(オーバー露光マージン)を算出した。
膜減りマージン(%) = (ELoss- Eo ) / Eo x 100
【0201】
【表2】

【0202】
【表3】

【0203】
表における記号は次の通りである。
【0204】
酸発生剤は先に例示したものに対応する。
N−1:N,N−ジブチルアニリン
N−2:N,N−ジヘキシルアニリン
N−3:2,6−ジイソプロピルアニリン
N−4:トリ−n−オクチルアミン
N−5:N,N−ジヒドロキシエチルアニリン
N−6:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
N−7:トリエタノールアミン
【0205】
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
W−4:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−5:PF656(OMNOVA社製、フッ素系)
W−6:PF6320(OMNOVA社製、フッ素系)
【0206】
SL−1: シクロヘキサノン
SL−2: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SL−3: 乳酸エチル
SL−4: プロピレングリコールモノメチルエーテル
SL−5: γ−ブチロラクトン
SL−6: プロピレンカーボネート
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】ウオーターマーク欠陥の例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(a1−1)〜(a1−3)で表される繰り返し単位から選ばれる繰り返し単位(a1)、下記一般式(a2)で表される繰り返し単位(a2)、及び、下記一般式(a3−1)〜(a3−4)から選ばれる構造を有する繰り返し単位(a3)を含有し、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、
(B)活性光線又は放射線の照射により、酸を発生する化合物、
(C)フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有し、アルカリ現像液に不溶な樹脂、並びに
(D)溶剤、
を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【化1】

式中、
Rは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。
R'は、酸の作用により分解して脱離する基を表す。
12、R13は、各々独立して水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基を表す。
14は、脂環基を表す。
nは0〜5の整数を表す。
【請求項2】
樹脂(C)が、下記一般式(c1−1)〜(c1−3)で表されるフッ素原子を有する繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位を有し、酸に対して安定であり、且つアルカリ現像液に対して不溶である樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化2】

一般式(c1−1)〜(c1−3)に於いて、
Rc1は、水素原子又はアルキル基を表す。
Rc2は、フルオロアルキル基を表す。
Rc3は、水素原子又は1価の有機基を表す。
Rc4〜Rc7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルコキシ基を表す。ただし、Rc4〜Rc7の内の少なくとも1つは、フッ素原子を表す。Rc4とRc5又はRc6とRc7は、結合して環を形成してもよい。
Rc8は、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表す。
Rc9は、フッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基を表す。
Lc1、Lc2は各々独立して単結合又は2価の連結基を表す。
Qc1は、脂環構造を表す。
k1は、0〜3の整数を表す。
【請求項3】
樹脂(C)が、下記一般式(c2−1)又は(c2−2)で表される珪素原子を有する繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位を有し、酸に対して安定であり、且つアルカリ現像液に対して不溶である樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化3】

一般式(c2−1)、(c2−2)に於いて、
Rc10〜Rc12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
Rc13、Rc15は、珪素原子を少なくとも1つ有する1価の有機基を表す。
Rc14は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は1価の有機基を表す。
Lc3、Lc4は各々独立して単結合又は2価の連結基を表す。
Qc2は、脂環構造を表す。
k2は、0〜3の整数を表す。
【請求項4】
樹脂(C)が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれか及び脂環構造を有する樹脂(CA)、及び、側鎖にフッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する繰り返し単位及び側鎖に無置換アルキル基を有する繰り返し単位を含有する樹脂(CB)の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト組成物によりレジスト膜を形成し、露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−268921(P2008−268921A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71482(P2008−71482)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】