マイクロ素子
【課題】環境温度の変化によって生じる熱膨張率差に起因する応力の変動や、マイクロミラー素子を固定している接着剤部分の強度劣化による応力の変動等が、マイクロミラーの傾斜角度へ影響することを軽減する。
【解決手段】固定フレーム1と、固定フレーム1に対して揺動可能な可動フレーム13と、可動フレーム13の揺動軸を規定するトーションバー11a及び11bと、固定フレーム1及びトーションバー11a,11bの少なくとも一方に設けられる応力緩和機構50とを含み、トーションバー11a及び11bの軸方向における応力緩和機構50の剛性は、トーションバー11a及び11bの軸方向の剛性より小さく、トーションバー11a及び11bを中心とする回転方向における応力緩和機構50の剛性は、トーションバー11a及び11bを中心とする回転方向における剛性よりも大きい。
【解決手段】固定フレーム1と、固定フレーム1に対して揺動可能な可動フレーム13と、可動フレーム13の揺動軸を規定するトーションバー11a及び11bと、固定フレーム1及びトーションバー11a,11bの少なくとも一方に設けられる応力緩和機構50とを含み、トーションバー11a及び11bの軸方向における応力緩和機構50の剛性は、トーションバー11a及び11bの軸方向の剛性より小さく、トーションバー11a及び11bを中心とする回転方向における応力緩和機構50の剛性は、トーションバー11a及び11bを中心とする回転方向における剛性よりも大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示は、マイクロ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な技術分野においてマイクロマシニング技術により形成される微小構造を有する素子の応用が図られている。これらは部品が非常に小型であるだけでなく、これによって作製される微小な可動部品に関しては機械的特性の劣化が少ない等の特徴を有している。本技術を用いたマイクロミラー素子は光通信分野における光スイッチ等への適用が進んでおり、その中の一つに波長選択スイッチがある。特許文献1〜3は、トーションバーでフレームに支持されたミラーを備えたマイクロミラー素子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−9067号公報
【特許文献2】特開2005−156684号公報
【特許文献3】特開2004−309643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような直線的なトーションバーは、引っ張り方向のストレスを受けた場合に、回転方向のバネ定数が変調されやすいという欠点を有している。トーションバーのバネ定数が当初の値から変調してしまうと、ミラーを傾斜動作させた際のミラーの傾斜角度の精度が低下することになる。
【0005】
本発明は、応力の変動等がミラーの傾斜角度へ影響することを軽減することができるマイクロ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマイクロ素子は、固定部と、前記固定部に対して揺動可能な揺動部と、前記揺動部の揺動軸を規定する軸部と、前記固定部及び前記揺動部の少なくとも一方に設けられる応力緩和部と、を含み、前記揺動軸の軸方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸の軸方向における前記軸部の剛性より小さく、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記軸部の剛性よりも大きいものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、応力の変動等がミラーの傾斜角度へ影響することを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】メッシュ型ネットワークの構造を示す模式図
【図2】波長選択スイッチのブロック図
【図3】波長選択スイッチの斜視図
【図4A】マイクロミラー素子においてマイクロミラーにおける光の反射の概念を説明するための模式図
【図4B】マイクロミラー素子においてマイクロミラーにおける光の反射の概念を説明するための模式図
【図5】従来のマイクロミラー素子の平面図
【図6】図5におけるY−Y部の断面図
【図7】パッケージングされたマイクロミラー素子の断面図
【図8】本実施の形態にかかるマイクロミラー素子の平面図
【図9】応力緩和機構の要部拡大図
【図10】応力緩和機構の要部斜視図
【図11】応力緩和部の拡大図
【図12】応力緩和部の変形例の拡大図
【図13】マイクロミラー素子の変形例の平面図
【図14】応力緩和機構の変形例の要部平面図
【図15】応力緩和機構の変形例の要部平面図
【図16】応力緩和機構の変形例の要部平面図
【図17】マイクロミラー素子の変形例の平面図
【図18】応力緩和機構の変形例の要部平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
マイクロ素子は、固定部と、前記固定部に対して揺動可能な揺動部と、前記揺動部の揺動軸を規定する軸部と、前記固定部及び前記揺動部の少なくとも一方に設けられる応力緩和部と、を含み、前記揺動軸の軸方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸の軸方向における前記軸部の剛性より小さく、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記軸部の剛性よりも大きいものである。
【0010】
マイクロ素子は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0011】
マイクロ素子において、前記揺動部の板厚方向における前記前記応力緩和部の厚みは、前記揺動部の板厚方向における前記軸部の厚みよりも大きい構成とすることができる。
【0012】
マイクロ素子において、前記軸部は、前記応力緩和部に直接的に連結されている構成とすることができる。
【0013】
マイクロ素子において、前記応力緩和部は、前記揺動軸を基準として線対称の構造を有する構成とすることができる。
【0014】
マイクロ素子において、前記応力緩和部は、前記揺動軸を基準として線対称となる第1の位置及び第2の位置で前記揺動部に連結されている構成とすることができる。
【0015】
マイクロ素子において、前記応力緩和部は、前記揺動部に対して隙間を空けて設けられている構成とすることができる。
【0016】
マイクロ素子において、前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部の少なくとも1つと熱膨張率が異なり、前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部を収容する収容部を含む構成とすることができる。
【0017】
マイクロ素子において、前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部の材料はシリコンであり、前記収容部の材料はセラミックスである構成とすることができる。
【0018】
(実施の形態)
〔1.マイクロミラー素子の基本構成〕
光通信においては、激増するインターネットトラフィックを収容すべく、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)通信を中核としたネットワークの光化が急ピッチで進んでいる。光ネットワークは、光信号を伝送するための光ファイバを、メッシュ状またはリング状に接続している。このような光ネットワークにおいて、各光ファイバのノードには光スイッチ(以下、波長選択スイッチ)が接続されている。
【0019】
図1は、メッシュ型ネットワークの一部を模式的に図示したものである。図1における矢印は、光信号の進む方向を示している。図1に示すように、波長選択スイッチ100は、光ファイバのノードに接続されている。波長選択スイッチ100は、入力された光信号の特定波長のものを任意の出力ポートに振り分ける機能を有する。また、図1に示すネットワークの端部には、合波部200及び分波部300が接続されている。合波部200は、複数の入力端子を備え、外部から入力される光信号を合成して、光ファイバへ出力する。分波部300は、波長選択スイッチ100から出力される光信号を複数の光信号に分解して、外部に出力する。波長選択スイッチ100における波長振り分け機能は、たとえば図2に示す波長毎のクロス・バースイッチとしての機能と等価である。
【0020】
図2は、クロス・バースイッチを備えた波長選択スイッチの模式図である。図2において、波長選択スイッチ101は、入力光伝送路(入力ファイバ)に対応する入力ポート数に応じた分波部102a及び102bと、複数の2×2スイッチ103と、出力光伝送路(出力ファイバ)に対応する出力ポート数に応じた合波部104a及び104bとを備えている。分波部102a及び102bは、入力ポートから入力されたWDM光を波長(チャンネル)毎に分波する。分波されたWDM光は、2×2スイッチ103に入力される。2×2スイッチ103は、設定に応じた波長単位の出力切り替え(クロス又はバー切り替え)を行ない、WDM光を合波部104a及び104bに出力する。合波部104a及び104bは、入力される複数の波長のWDM光を波長多重して、対応する出力ポートへ出力する。
【0021】
図2に示す波長選択スイッチ101の機能を詳細に説明すると、入力ポート106aに波長λ2,λ5及びλ6のWDM光が入力され、入力ポート106bに波長λ1,λ3,λ4及びλ7のWDM光が入力されている。2×2スイッチ103でのクロス又はバー切り替えによって、波長λ1,λ4及びλ6の光が出力ポート106cへ送られ、残りの波長λ2,λ3,λ5及びλ7の光が出力ポート106dへ送られる。複数の2×2スイッチ103から出力される個々の信号の強度は揃っていない状態であるが、波長選択スイッチ101に備わる利得等化(光アッテネータ)機能によって、信号光の強度が揃えられている。
【0022】
図3は、空間結合型の波長選択スイッチ100の具体例を示す斜視図である。図3における破線は、光線を示している。波長選択スイッチ100は、基板110、コリメータアレイ111、分光器112、集光レンズ113、マイクロミラー素子114を備えている。
【0023】
コリメータアレイ111は、入力光ファイバ111aから入射した光をコリメート光に変換し、分光器112側へ出力する。コリメータアレイ111は、分光器112から入射したコリメート光を出力光ファイバ111b〜111dのコアに集光する。
【0024】
分光器112は、入射光を波長によって異なる方向(角度)へ反射する。分光器112は、一般的には回折格子が用いられる。
【0025】
集光レンズ113は、分光器112により波長毎に分離された光をマイクロミラー素子114に集光する。集光レンズ113は、マイクロミラー素子114で反射した光を分光器112に集光する。
【0026】
マイクロミラー素子114は、入力光ファイバ111aからの入射光を出力光ファイバ111b,111c,111dのいずれかへ反射して、ポート切り替えを行なうスイッチング素子として機能する。マイクロミラー素子114は、複数のマイクロミラーを備えている。マイクロミラー素子114の具体的な構成については後述する。
【0027】
図4A及び図4Bは、波長選択スイッチ100の側面図を示す。図4Aは、マイクロミラー素子114に備わるマイクロミラー140が、その反射面が基板110の主平面に対して直交する姿勢となっている状態を示す。図4Bは、マイクロミラー140が図4Aに示す姿勢から矢印Zに示す方向へ僅かに傾いた状態を示す。
【0028】
図4Aに示す状態では、入力光ファイバ111a、コリメータアレイ112、集光レンズ113を介してマイクロミラー140に入射する光は、出力光ファイバ111d側へ導かれるようにマイクロミラー140の反射面で反射している。マイクロミラー140を反射した光は、集光レンズ113及びコリメータアレイ112を介して出力光ファイバ111dへ導かれる。
【0029】
一方、図4Bに示す状態では、マイクロミラー140は僅かに傾斜した姿勢となっているため、集光レンズ113側から入射する光は、出力光ファイバ111c側へ導かれるようにマイクロミラー140の反射面で反射している。マイクロミラー140を反射した光は、集光レンズ113及びコリメータアレイ112を介して出力光ファイバ111cへ導かれる。図示は省略するが、マイクロミラー140を図4Bに示す姿勢からさらに矢印Zに示す方向へ傾斜させることで、入射する光を出力光ファイバ111bへ導かれるように反射することができる。
【0030】
このように、マイクロミラー140は、傾斜角に応じて出力ポートが定まるようになっている。個々のマイクロミラー140の傾斜角度を個別に制御することによって、各波長域毎に出力ポートを切り替えることができる。さらに、マイクロミラー140の傾斜角の調整を行う際、傾斜角を微調整することによって出力光ファイバ111b,111c,111dのコアへの光結合量を調整することができる。これによって、出力先の切り替え機能とともに、図2を参照して説明した利得等価機能105(光アッテネータ機能)を実現できる。
【0031】
〔2.マイクロミラー素子の構成〕
マイクロミラー素子は、数十個程度のマイクロミラーの配列を備えている。マイクロミラーの可動機構としては、固定部と、固定部に対して角度変位を可能とする揺動部と、当該固定部および揺動部を連結し尚且つ揺動部の角度変位を可能とするために弾性変形可能な連結部と、揺動部を角度変位させるための駆動力を生じる櫛歯部とを備えている。
【0032】
図5は、従来のマイクロミラー素子の一例を示す。図5は、一例として4個のマイクロミラーを図示している。マイクロミラー素子は、固定フレーム1、第1の櫛歯部2、導電フレーム3、第1のトーションバー11a、第2のトーションバー11b、第2の櫛歯部12、可動フレーム13、マイクロミラー14、第3のトーションバー15、第3の櫛歯部16、第4の櫛歯部17、導電フレーム18及び19を備えている。導電フレーム3は、固定フレーム1に固定もしくは一体化されている。第1の櫛歯部2は、導電フレーム3に備わる。第1の櫛歯部2は、複数の櫛形の電極2aを備えている。第1のトーションバー11aは、弾性変形可能な材料で形成され、一方の端部が固定フレーム1に固定され、他方の端部が導電フレーム18に固定されている。第2のトーションバー11bは、弾性変形可能な材料で形成され、一方の端部が固定フレーム1に固定され、他方の端部が可動フレーム13に固定されている。導電フレーム18は、可動フレーム13に固定されている。すなわち、可動フレーム13は、固定フレーム1に、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bによって変位可能に支持されている。具体的には、可動フレーム13は、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bを軸に矢印Aに示す方向またはその反対方向へ回動可能に、固定フレーム1に支持されている。第2の櫛歯部12は、導電フレーム11に備わる。第2の櫛歯部12は、複数の櫛形の電極12aを備えている。第1の櫛歯部2の電極2aと第2の櫛歯部12の電極12aとは、僅かな隙間を挟んで交互に配置している。可動フレーム13は、開口部を有する略ロの字状に形成され、その開口部内にマイクロミラー14、第3のトーションバー15、第3の櫛歯部16、第4の櫛歯部17、導電フレーム19を備えている。第3のトーションバー15は、弾性変形可能な材料で形成され、可動フレーム13の開口部内の互いに対向する2つの内面間に懸架されている。導電フレーム19は、第3のトーションバー15の長手方向の略中央に固定されている。第3の櫛歯部16は、可動フレーム13の開口部内の互いに対向する2つの内面にそれぞれ備わる。第3の櫛歯部16は、複数の櫛形の電極16aを備えている。第4の櫛歯部17は、導電フレーム19における第3の櫛歯部16に対向する部位に備わる。第4の櫛歯部17は、複数の櫛形の電極17aを備えている。マイクロミラー14は、導電フレーム19に固定されている。マイクロミラー14は、第3のトーションバー15を挟んで、第4の櫛歯部17に対向する位置に配されている。すなわち、マイクロミラー14、第3のトーションバー15、および第4の櫛歯部17は一体化しており、第3のトーションバー15を軸に矢印Bに示す方向またはその反対方向へ回動可能である。以下、可動フレーム13、マイクロミラー14、第3のトーションバー15、および第4の櫛歯部17を含む部材を「第1の揺動部」と定義し、マイクロミラー14、第3のトーションバー15、および第4の櫛歯部17を含む部材を「第2の揺動部」と定義する。
【0033】
上記のようにマイクロミラー素子において、導電フレーム3を介して第1の櫛歯部2に電圧を印加して、第1の櫛歯部2と第2の櫛歯部12との間に電位差を与えることよって、第1の櫛歯部2と第2の櫛歯部12との間に静電引力が生じる。この静電引力は、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bを回転軸として第1の揺動部を矢印Aに示す方向またはその反対方向へ回転動作させるトルクを生じさせる。これによって、第1の揺動部に含まれるマイクロミラー14を傾斜姿勢に移行可能な機構を実現することができる。
【0034】
また、第2のトーションバー11b及び可動フレーム13を介して第3の櫛歯部16に電圧を印加して、第3の櫛歯部16と第4の櫛歯部17との間に電位差を与えることによって、第3の櫛歯部16と第4の櫛歯部17との間に静電引力が生じる。この静電引力は、第3のトーションバー15を回転軸として第2の揺動部を矢印Bに示す方向またはその反対方向へ回転動作させるトルクを生じさせる。これによって、第2の揺動部に含まれるマイクロミラー14を傾斜姿勢に移行可能な機構を実現することができる。
【0035】
上記のようにマイクロミラー14の回転方向をC軸周り方向とD軸周り方向の2方向とすることにより、光信号の出力先を切り替える際に不要な光信号が出力光ファイバへ入射することを防ぐことができる。すなわち、マイクロミラー14の回転方向が一つ(D軸周りの方向)だけの場合、例えば光信号の出力先を出力光ファイバ111bから出力光ファイバ111dへ切り替える際に、瞬間的に出力光ファイバ111cへ光信号が入射してしまう。これに対してマイクロミラー14をC軸周り方向とD軸周り方向とに回転可能とすることにより、例えば光信号の出力先を出力光ファイバ111bから出力光ファイバ111dへ切り替える際、マイクロミラー14をD軸周り方向へ回転させている途中で一時的にC軸周り方向へ回転させることにより、出力光ファイバ111cへ光信号が入射することを防ぐことができる。このように、マイクロミラー14の回転方向を、光信号の出力先を切り替えるための回転方向と、光信号のファイバへの結合のオン/オフを切り替えるための回転方向の2方向としたことにより、不要な光信号が出力されることを防ぐことができる。
【0036】
図6は、図5におけるY−Y部の断面図である。図6は、SOI(Silicon On Insulator)基板を使って作製されたマイクロミラー素子の第2の揺動部の駆動メカニズムを示している。図6に示すように、第1の揺動部は、Si層21、SiO2層22、Si層23の三層構造となっている。可動フレーム13の一部と、ミラー基板14bと、第3のトーションバー15と、第3の櫛歯部16とが、上層のSi層21で形成されている。また、可動フレーム13の一部と、第4の櫛歯部17とが、下層のSi層23で形成されている。上層Si層21と下層Si層23との間には、両者を電気的に絶縁するためのSiO2層22が備わる。第3のトーションバー15は、弾性変形するために他の部位よりも薄く形成されており、これによって第2の揺動部は第3のトーションバー15を回転軸として回転可能となっている。第3の櫛歯部16の櫛形電極16aと第4の櫛歯部17の櫛形電極17aは、相互の櫛形電極の隙間に相手側の櫛形電極が入り込むことが可能である。マイクロミラー14は、鏡面を有する金属膜14aと、金属膜14aが成膜されたミラー基板14bとを備えている。金属膜14aの鏡面において、光信号を反射可能である。
【0037】
第3のトーションバー15は、図5に示すように直線的な形状を有する。しかしながら、このような直線的なトーションバーは、引っ張り方向のストレスを受けた場合に回転方向のバネ定数が変調されやすい。トーションバーに対する引っ張り方向のストレスは、例えばマイクロミラー素子の環境温度の変化に伴い、トーションバーを固定している固定フレーム1等の各種部材が伸縮することに起因する場合がある。
【0038】
図7は、セラミックパッケージに実装されたマイクロミラー素子の断面図である。図7において、第1のトーションバー11a、第2のトーションバー11b、固定フレーム1、可動フレーム13、保持基板32(Si)は、セラミック製のパッケージ31内に配されている。固定フレーム1は、接着剤33によって保持基板32に固定されている。保持基板32は、接着剤34によってパッケージ31に固定されている。パッケージ31は、例えばサファイヤガラスなどの透明材料で形成された窓材35によって封止されている。入力光ファイバからの光は、矢印Eに示すように窓材35を通過して可動フレーム13内に構成されたマイクロミラー14に入射する。
【0039】
図7に示すように、マイクロミラー14がセラミックのパッケージ31内に実装された状態においては、材料毎の熱膨張率の差異に起因して温度環境が変化した際に、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bには応力ストレスが作用する。その結果、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bのバネ定数が、当初の値から僅かにずれてしまい、マイクロミラー14を含む可動フレーム13を傾斜させた際の傾斜角度が正規の角度から僅かに変動することになる。
【0040】
また、接着剤33及び34で固定フレーム1等の部材を固定する方法においては、長期信頼性に関しての懸念点がある。すなわち、接着剤が硬化する際の接着剤自信の収縮によって、接着箇所には最初から応力ストレスが蓄積された状態になっている。これらの応力ストレスが固定フレーム1を介して第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bにも作用しており、初期の状態でバネ定数が応力ストレスに起因した変調を伴った状態となっている。このようなマイクロミラー素子を長期間にわたって使用している間に接着剤33及び34の劣化が進み、接着箇所の応力ストレスが緩和されることによって第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bのバネ定数の変調が緩和される。その結果、マイクロミラー14を傾斜させた際の傾斜角度が、当初の状態から僅かに変化してしまう。その結果として、マイクロミラー素子における光アッテネータ機能の精度が低下し、出力光ファイバに送られる光信号のレベル等にバラツキが発生する。
【0041】
〔3.応力緩和機構の構成〕
本実施の形態にかかるマイクロミラー素子は、引っ張り方向のストレスに対して変調を受けやすい直線的なトーションバーを適用するにあたって、引っ張り方向のストレスに対しては変位可能であって、トーションバーの回転軸方向に対しての変位が困難である特徴を持つ応力緩和機構を備えたことを構成上の特徴としている。
【0042】
トーションバーの回転方向に対するバネ定数をkr、トーションバーの引っ張り方向に対するバネ定数をktと定義する。また、応力緩和機構に関する回転方向のバネ定数をkr’、引っ張り方向のバネ定数をkt’と定義する。まず、回転方向のバネ定数については、
kr≪kr’
の関係を有するように設定する。また、引っ張り方向のバネ定数については、
kt≫kt’
の関係を有するように設定する。
【0043】
トーションバーに対して引っ張り方向のストレスが作用する時、応力緩和機構部分の引っ張り方向のバネ定数が小さいために前記ストレスが吸収されて、トーションバーに対しては殆ど影響を及ぼさない。なお、トーションバーに対するストレスを軽減する際に応力緩和機構がストレスに応じて変形することになるが、この変形に伴って応力緩和機構の回転方向のバネ定数が変調されることになる。しかし、回転方向のバネ定数はトーションバーのバネ定数よりも大幅に大きいことから、回転トルクに対する角度の変位量は殆どゼロであり、応力緩和機構の変形に起因する角度の変調は無視できる。つまり、マイクロミラーの傾斜角度に対しては殆ど影響を及ぼさない。
【0044】
以下、応力緩和機構50の具体構成について説明する。
【0045】
図8は、応力緩和機構50を備えたマイクロミラー素子の断面図である。図9は、図8における応力緩和機構50の要部断面図である。図10は、応力緩和機構50の要部斜視図である。応力緩和機構50は、例えば図8〜図10に示すように第2のトーションバー11bの長手方向に対して垂直な方向の平面を有する応力緩和部51を備えている。応力緩和部51は、薄肉に形成され、弾性変形可能である。応力緩和部51は、平面方向の略中央において第2のトーションバー11bと結合している。すなわち、応力緩和部51は、第2のトーションバー11bを基準として線対称に設けられている。応力緩和部51は、平面方向の両端が支持部52に一体的に支持されている。支持部52は、応力緩和部51の両端と可動フレーム13とを結合する部分であり、応力緩和部51よりも厚肉に形成されて変形しにくい部分である。応力緩和部51と支持部52と可動フレーム13とにより囲まれた部分は、中空構造となっている(空間53)。空間53は、応力緩和部51が変形を伴って応力を緩和する際に、応力緩和部51が可動フレーム13に干渉するのを防ぐために設けられている。
【0046】
上記のようなマイクロミラー素子において、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bに引っ張り方向(矢印F方向)の応力ストレスが作用した際、応力緩和部51が矢印F方向へ変形する。応力緩和部51が変形することによって、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bへ加わる応力ストレスを緩和することができる。
【0047】
また、応力緩和部51を第2のトーションバー11bを基準として線対称に配置することによって、応力緩和部51が矢印F方向に変形した際に、第2のトーションバー11bが剪断方向(矢印G方向)の応力ストレスを伴わずに済むことから、引っ張り方向のストレスに対して安定した特性を維持することが可能となる。
【0048】
ここで、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bは、厚みが数μm程度という薄い構造体であることから、弾性変形可能なバネの特性を持つ。これによって、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bを回転軸として、可動フレーム13がC軸(図5参照)周りに回転可能な構造となっている。
【0049】
応力緩和機構50における応力緩和部51のパターン幅T1(図9参照)は、可動フレーム13のパターン幅T2(図9参照)が通常10数μmかそれ以上の幅を持つのに対して数μm程度であり、これによって弾性変形可能な特性を有している。応力緩和部51は、第2のトーションバー11bに対して垂直な方向の平面を有し、第2のトーションバー11bからの引っ張り応力に対して容易に変形できる構造となっている。
【0050】
本実施の形態では、可動フレーム13の全幅W(図9参照)を約240μmとし、応力緩和部51のパターン幅T1を5μmとし、応力緩和部51の平面方向の幅T3を90μmとし、応力緩和部51を第2のトーションバー11bを基準として線対称に2カ所配置している。これにより、第2のトーションバー11bに加わる応力を、応力緩和部51を備えていない構成に比べて約1/10に低減できる。
【0051】
環境温度の変化によって生じる熱膨張率差に起因する応力の変動や、マイクロミラー素子を固定している接着剤の強度劣化による応力の変動が、マイクロミラー素子の固定フレーム1を変形せしめた時、応力緩和機構50が矢印F方向へ変位して応力を逃がすために、トーションバーの引っ張り方向に対する応力ストレスを軽減させることができる。したがって、トーションバーの回転方向のバネ定数は、応力ストレスによる変調が非常に小さく、マイクロミラーを傾斜させた時の傾斜角度は当初の角度に対してほとんどずれることがない。
【0052】
第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bと応力緩和機構50は、共に変位可能な部品であるが、互いに変位可能な方向が異なっているため、自身の変位可能な方向に対して他方の剛性を高くしている。例えば、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bは、その軸周り方向へ変位可能であるため、軸周り方向の剛性はトーションバー11a及び11bよりも応力緩和機構50の方を高くしている。また、トーションバー11a及び11bは、引っ張り方向(軸方向)への変位が困難な構造であり、応力緩和機構50は引っ張り方向(軸方向)への変位が可能な構造であるため、引っ張り方向(軸方向)への剛性は、応力緩和機構50よりもトーションバー11a及び11bの方を高くしている。なお、上記のように第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bと応力緩和機構50との間に剛性の違いを設けるためには、バネ定数を変えることが好ましい。バネ定数を変えるためには、例えば高い剛性を必要とする部分の肉厚を厚くし、低い剛性を必要とする部分の肉厚を薄くする構成が考えられる。また、バネ定数を変えるために、高い剛性を必要とする部分を高硬度材料で形成し、低い剛性を必要とする部分を低硬度材料で形成する構成が考えられる。
【0053】
このような応力緩和機構50に必要な特徴は、バネ定数を用いることによって以下のように示すことができる。第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bの回転方向(図5の矢印Aに示す方向)のバネ定数をkrとし、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bの引っ張り方向(図8の矢印F方向)のバネ定数をktとし、応力緩和部51の回転方向のバネ定数をkr’とし、応力緩和部51の引っ張り方向のバネ定数をkt’と定義したとき、回転方向のバネ定数は、
kr≪kr’
の関係を有する。また、引っ張り方向のバネ定数は、
kt≫kt’
の関係を有する。
【0054】
図11は、応力緩和機構50の他の構成例を示す。前述のように、トーションバーと応力緩和機構は、応力に対して変形可能とするために、形状としては薄いもしくは細い構造体である。トーションバーと応力緩和機構とを連続的に連結してしまうと、連結部が微小な接点しかなく、連結部が破断しやすくなってしまう。このため、図11に示すように、応力ストレスやトルクに対して変形しない強固さを有する連結部54を、トーションバーと応力緩和機構との間に介在することが好ましい。第2のトーションバー11bと応力緩和部51との結合部分に連結部54を備えたことにより、第2のトーションバー11bと応力緩和部51との結合強度を高めることができるので、第2のトーションバー11bまたは応力緩和部51が繰り返し変位したとしても連結部の破断を起こりにくくすることができる。
【0055】
図12は、応力緩和機構50と固定フレーム1とを2本のトーションバー11c及び11dで結合した例を示す。前述のような単一でかつストレート形状のトーションバーは、櫛歯部分で発生する静電引力に対して可動フレーム13を回転方向に変位させると同時に、僅かながら櫛歯の方向への平行移動の変位を伴う。平行移動の変位をより小さくするための方策として、図12に示すように2本のトーションバー11c及び11dをV字に配置する方法が有効である。図12に示すV字状のトーションバー11c及び11dにおいても、先に述べた回転方向と引っ張り方向のバネ定数に関する特徴は成立している。
【0056】
図13は、マイクロミラー14の占有領域を高めるために可動フレーム13の一部が取り除かれて、マイクロミラー14の領域に置き換えられたマイクロミラー素子を示す。図13に示すマイクロミラー素子は、マイクロミラー14の周囲を可動フレームで囲む構成ではなく、マイクロミラー14の片側のみに可動フレーム13aを配置したマイクロミラー素子である。図13に示す可動フレーム13aは、少なくとも図5等に示す可動フレーム13に比べて剛性が低いため、外的な応力ストレスに対して変形を伴いやすい。しかし、応力緩和機構50を備えることによって、固定フレーム1側の変形等の外部からの応力ストレスが応力緩和機構50において吸収され、可動フレーム13には伝わりにくいため、図13に示すような可動フレーム13aをマイクロミラー素子に適用することが可能となる。図13に示す可動フレーム13aを適用することによって、マイクロミラー14の反射面の面積を拡大することができるので、より効率的に光信号を出力光ファイバ側へ反射することができる。
【0057】
図14は、応力緩和機構50の変形例を示す。図14に示す応力緩和機構50は、応力緩和部55a及び55b、連結部56a及び56b、連結部57を備えている。応力緩和部55a及び55bは、前述の応力緩和部51と同様、薄肉に形成され、第2のトーションバー11bの引っ張り方向(矢印F方向)へ変位可能である。応力緩和部55aは、その平面方向の略中央において第2のトーションバー11bと結合している。応力緩和部55bは、その平面方向の略中央において連結部57と結合している。応力緩和部55aと応力緩和部55bとは、空間58を挟んで平行対向している。応力緩和部55a及び応力緩和部55bは、その平面方向両端において連結部56a及び56bと結合している。連結部56aと連結部56bとは、空間58を挟んで平行対向している。連結部56a及び56bは、応力緩和部55a及び55bの肉厚よりも厚く形成され、応力緩和部55a及び55bよりも高い剛性を確保している。連結部57は、第2のトーションバー11bと略同軸位置に配され、その軸方向の一方の端部が応力緩和部55bに結合し、他方の端部が可動フレーム13に結合している。連結部57は、ストレスがかかっても変形しにくい材料で形成されている。図14に示すマイクロミラー素子は、第2のトーションバー11bを基準として線対称な形状となっている。このような構成とすることにより、第2のトーションバー11bの引っ張り方向に応力ストレスがかかったとしても、応力緩和部55a及び55bで応力を吸収することができる。
【0058】
図15は、応力緩和機構50の変形例を示す。図15に示す応力緩和機構50は、複数の応力緩和部59a、複数の連結部59bを備えている。応力緩和部59aは、前述の応力緩和部51と同様、薄肉に形成され、第2のトーションバー11bの引っ張り方向(矢印F方向)へ変位可能である。応力緩和部59aは、第2のトーションバー11bを基準として線対称に配されている。複数の応力緩和部59aは、それぞれ連結部59bによって結合されている。複数の応力緩和部59aは、互いに平行となるように形成されている。複数の連結部59bのうち図示上端の連結部59bは、可動フレーム13に結合している。このような構成とすることにより、第2のトーションバー11bの引っ張り方向に応力ストレスがかかったとしても、複数の応力緩和部59aで応力を吸収することができる。
【0059】
図16は、応力緩和機構50を固定フレーム1に備えた変形例を示す。図16に示す応力緩和機構50は、応力緩和部61を備えている。応力緩和部61は、固定フレーム1に形成された凹部1a内に懸架されている。応力緩和部61は、その平面方向の中央に第2のトーションバー11bが結合している。応力緩和部61は、弾性変形可能な厚さ及び材料で形成され、第2のトーションバー11bの引っ張り方向(矢印F方向)に変位可能である。応力緩和部61が凹部1aにおける可動フレーム13に近い位置に配されていることにより、応力緩和部61の下方には空間が形成される。これにより、応力緩和部61が矢印F方向に変位したとしても、応力緩和部61が固定フレーム1に干渉するのを防ぐことができ、応力緩和部61をスムーズに変位させることができる。
【0060】
図17は、応力緩和機構50を可動フレーム13における第1のトーションバー11a側に設けたマイクロミラー素子である。図17に示す応力緩和機構50は、応力緩和部62を備えている。応力緩和部62は、可動フレーム13における第1のトーションバー11a側の端部に結合している。応力緩和部62の平面方向の中央には、導電フレーム18が結合している。導電フレーム18は、第1のトーションバー11aに結合している。第1のトーションバー11aは、固定フレーム1に結合している。応力緩和部62と可動フレーム13との間には、応力緩和部62が変位した際に可動フレーム13との干渉を防ぐための空間63を有する。このような構成とすることにより、第1のトーションバー11あの引っ張り方向に応力ストレスがかかったとしても、応力緩和部62で応力を吸収することができる。
【0061】
図18は、応力緩和機構50の変形例を示し、第2のトーションバー11bを中心として非対称の形状を有する応力緩和機構50を示している。図8等に示す応力緩和機構50は、第2のトーションバー11bを基準とした線対称な形状としたが、必ずしも線対称な形状とする必要はない。例えば、図18に示すように、略Z字を成すように応力緩和部64a〜64c及び複数の連結部65a〜65cを結合した応力緩和機構50であってもよい。応力緩和部64aは、一方の端部が第2のトーションバー11bに結合し、他方の端部が連結部65aに結合している。応力緩和部64bは、一方の端部が連結部65aに結合し、他方の端部が連結部65bに結合している。応力緩和部64cは、一方の端部が連結部65cに結合し、他方の端部が連結部65bに結合している。応力緩和部64bは、応力緩和部64a及び64cの長さの約2倍の長さを有する。応力緩和部64bは、その平面方向の中心と第2のトーションバー11bの位置とがほぼ一致する。したがって、図18に示す応力緩和機構50は、形状としては非対称となっているが、第2のトーションバー11bを中心として左右それぞれに同等の応力緩和の能力を有する。
【0062】
なお、前述したように可動フレーム13、トーションバー11a及び11b、応力緩和機構50は、同じ材料(Si)で形成されているため、それぞれの部材のパターン幅や厚さを適切な値に調整してマイクロミラー素子を作製することによって、各部材の機械的強度を調整することができる。材質が同じの場合、剛体の強度は寸法の3乗にほぼ比例する。仮に、図9に示すように、応力緩和部51の厚さT1を5μmから2倍の10μmにした場合、応力緩和部51の機械的強度は約8倍に増加することになる。また、可動フレーム13に作用する応力としては、引っ張り方向(矢印F方向)のストレスと、第2のトーションバー11bを回転軸とする回転トルクとがほとんどである。応力緩和機構50を備えることによって、可動フレーム13にかかる引っ張り方向のストレスが軽減されるため、可動フレーム13に大きな力が作用することは極めて少ない。したがって、可動フレーム13のパターン幅T2は、応力緩和部51の厚さT1が5μmの場合には約2倍の10μm程度とすることにより、十分な強度が得られる。
【0063】
本実施の形態では、応力緩和部51の寸法を、幅T3=90μm、厚さT1=5μm、高さt=200μmとした。また、第2のトーションバー11bの寸法を、長さg=100μm、厚さh=5μm、幅i=20μmとした。このときの応力緩和機構50のバネ定数s1と、第2のトーションバネ11bのバネ定数s2は、
s1=t×T13×E/(2×T33)
s2=h×i×E/g
(Eはヤング率)
により求めることができる。上記数式に本実施の形態の値を代入すると、バネ定数の比s1:s2は、約1:58となる。したがって、固定フレーム1からの応力は、ほとんどが応力緩和機構50で吸収されることになり、第2のトーションバー11bに作用する応力は大幅に軽減される。
【0064】
〔4.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態にかかる応力緩和機構を備えることによって、環境温度の変化によって生じる熱膨張率差に起因する応力の変動や、マイクロミラー素子を固定している接着剤部分の強度劣化による応力の変動等が、マイクロミラーの傾斜角度へ影響することを軽減することができる。
【0065】
本実施の形態における固定フレーム1は、本発明の固定部の一例である。本実施の形態における可動フレーム13,13a、およびそれに支持された部材(マイクロミラー14等)は、本発明の揺動部の一例である。本実施の形態における第1のトーションバー11a、第2のトーションバー11bは、本発明の軸部の一例である。本実施の形態における応力緩和機構50、応力緩和部51,55a,55b,59a,61,62,64a,64b,64cは、本発明の応力緩和部の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、マイクロミラーを備えたマイクロミラー素子のようなマイクロ素子に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 固定フレーム
11a 第1のトーションバー
11b 第2のトーションバー
13,13a 可動フレーム
50 応力緩和機構
51,55a,55b,59a,64b,64c 応力緩和部
【技術分野】
【0001】
本願の開示は、マイクロ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な技術分野においてマイクロマシニング技術により形成される微小構造を有する素子の応用が図られている。これらは部品が非常に小型であるだけでなく、これによって作製される微小な可動部品に関しては機械的特性の劣化が少ない等の特徴を有している。本技術を用いたマイクロミラー素子は光通信分野における光スイッチ等への適用が進んでおり、その中の一つに波長選択スイッチがある。特許文献1〜3は、トーションバーでフレームに支持されたミラーを備えたマイクロミラー素子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−9067号公報
【特許文献2】特開2005−156684号公報
【特許文献3】特開2004−309643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような直線的なトーションバーは、引っ張り方向のストレスを受けた場合に、回転方向のバネ定数が変調されやすいという欠点を有している。トーションバーのバネ定数が当初の値から変調してしまうと、ミラーを傾斜動作させた際のミラーの傾斜角度の精度が低下することになる。
【0005】
本発明は、応力の変動等がミラーの傾斜角度へ影響することを軽減することができるマイクロ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマイクロ素子は、固定部と、前記固定部に対して揺動可能な揺動部と、前記揺動部の揺動軸を規定する軸部と、前記固定部及び前記揺動部の少なくとも一方に設けられる応力緩和部と、を含み、前記揺動軸の軸方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸の軸方向における前記軸部の剛性より小さく、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記軸部の剛性よりも大きいものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、応力の変動等がミラーの傾斜角度へ影響することを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】メッシュ型ネットワークの構造を示す模式図
【図2】波長選択スイッチのブロック図
【図3】波長選択スイッチの斜視図
【図4A】マイクロミラー素子においてマイクロミラーにおける光の反射の概念を説明するための模式図
【図4B】マイクロミラー素子においてマイクロミラーにおける光の反射の概念を説明するための模式図
【図5】従来のマイクロミラー素子の平面図
【図6】図5におけるY−Y部の断面図
【図7】パッケージングされたマイクロミラー素子の断面図
【図8】本実施の形態にかかるマイクロミラー素子の平面図
【図9】応力緩和機構の要部拡大図
【図10】応力緩和機構の要部斜視図
【図11】応力緩和部の拡大図
【図12】応力緩和部の変形例の拡大図
【図13】マイクロミラー素子の変形例の平面図
【図14】応力緩和機構の変形例の要部平面図
【図15】応力緩和機構の変形例の要部平面図
【図16】応力緩和機構の変形例の要部平面図
【図17】マイクロミラー素子の変形例の平面図
【図18】応力緩和機構の変形例の要部平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
マイクロ素子は、固定部と、前記固定部に対して揺動可能な揺動部と、前記揺動部の揺動軸を規定する軸部と、前記固定部及び前記揺動部の少なくとも一方に設けられる応力緩和部と、を含み、前記揺動軸の軸方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸の軸方向における前記軸部の剛性より小さく、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記軸部の剛性よりも大きいものである。
【0010】
マイクロ素子は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0011】
マイクロ素子において、前記揺動部の板厚方向における前記前記応力緩和部の厚みは、前記揺動部の板厚方向における前記軸部の厚みよりも大きい構成とすることができる。
【0012】
マイクロ素子において、前記軸部は、前記応力緩和部に直接的に連結されている構成とすることができる。
【0013】
マイクロ素子において、前記応力緩和部は、前記揺動軸を基準として線対称の構造を有する構成とすることができる。
【0014】
マイクロ素子において、前記応力緩和部は、前記揺動軸を基準として線対称となる第1の位置及び第2の位置で前記揺動部に連結されている構成とすることができる。
【0015】
マイクロ素子において、前記応力緩和部は、前記揺動部に対して隙間を空けて設けられている構成とすることができる。
【0016】
マイクロ素子において、前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部の少なくとも1つと熱膨張率が異なり、前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部を収容する収容部を含む構成とすることができる。
【0017】
マイクロ素子において、前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部の材料はシリコンであり、前記収容部の材料はセラミックスである構成とすることができる。
【0018】
(実施の形態)
〔1.マイクロミラー素子の基本構成〕
光通信においては、激増するインターネットトラフィックを収容すべく、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)通信を中核としたネットワークの光化が急ピッチで進んでいる。光ネットワークは、光信号を伝送するための光ファイバを、メッシュ状またはリング状に接続している。このような光ネットワークにおいて、各光ファイバのノードには光スイッチ(以下、波長選択スイッチ)が接続されている。
【0019】
図1は、メッシュ型ネットワークの一部を模式的に図示したものである。図1における矢印は、光信号の進む方向を示している。図1に示すように、波長選択スイッチ100は、光ファイバのノードに接続されている。波長選択スイッチ100は、入力された光信号の特定波長のものを任意の出力ポートに振り分ける機能を有する。また、図1に示すネットワークの端部には、合波部200及び分波部300が接続されている。合波部200は、複数の入力端子を備え、外部から入力される光信号を合成して、光ファイバへ出力する。分波部300は、波長選択スイッチ100から出力される光信号を複数の光信号に分解して、外部に出力する。波長選択スイッチ100における波長振り分け機能は、たとえば図2に示す波長毎のクロス・バースイッチとしての機能と等価である。
【0020】
図2は、クロス・バースイッチを備えた波長選択スイッチの模式図である。図2において、波長選択スイッチ101は、入力光伝送路(入力ファイバ)に対応する入力ポート数に応じた分波部102a及び102bと、複数の2×2スイッチ103と、出力光伝送路(出力ファイバ)に対応する出力ポート数に応じた合波部104a及び104bとを備えている。分波部102a及び102bは、入力ポートから入力されたWDM光を波長(チャンネル)毎に分波する。分波されたWDM光は、2×2スイッチ103に入力される。2×2スイッチ103は、設定に応じた波長単位の出力切り替え(クロス又はバー切り替え)を行ない、WDM光を合波部104a及び104bに出力する。合波部104a及び104bは、入力される複数の波長のWDM光を波長多重して、対応する出力ポートへ出力する。
【0021】
図2に示す波長選択スイッチ101の機能を詳細に説明すると、入力ポート106aに波長λ2,λ5及びλ6のWDM光が入力され、入力ポート106bに波長λ1,λ3,λ4及びλ7のWDM光が入力されている。2×2スイッチ103でのクロス又はバー切り替えによって、波長λ1,λ4及びλ6の光が出力ポート106cへ送られ、残りの波長λ2,λ3,λ5及びλ7の光が出力ポート106dへ送られる。複数の2×2スイッチ103から出力される個々の信号の強度は揃っていない状態であるが、波長選択スイッチ101に備わる利得等化(光アッテネータ)機能によって、信号光の強度が揃えられている。
【0022】
図3は、空間結合型の波長選択スイッチ100の具体例を示す斜視図である。図3における破線は、光線を示している。波長選択スイッチ100は、基板110、コリメータアレイ111、分光器112、集光レンズ113、マイクロミラー素子114を備えている。
【0023】
コリメータアレイ111は、入力光ファイバ111aから入射した光をコリメート光に変換し、分光器112側へ出力する。コリメータアレイ111は、分光器112から入射したコリメート光を出力光ファイバ111b〜111dのコアに集光する。
【0024】
分光器112は、入射光を波長によって異なる方向(角度)へ反射する。分光器112は、一般的には回折格子が用いられる。
【0025】
集光レンズ113は、分光器112により波長毎に分離された光をマイクロミラー素子114に集光する。集光レンズ113は、マイクロミラー素子114で反射した光を分光器112に集光する。
【0026】
マイクロミラー素子114は、入力光ファイバ111aからの入射光を出力光ファイバ111b,111c,111dのいずれかへ反射して、ポート切り替えを行なうスイッチング素子として機能する。マイクロミラー素子114は、複数のマイクロミラーを備えている。マイクロミラー素子114の具体的な構成については後述する。
【0027】
図4A及び図4Bは、波長選択スイッチ100の側面図を示す。図4Aは、マイクロミラー素子114に備わるマイクロミラー140が、その反射面が基板110の主平面に対して直交する姿勢となっている状態を示す。図4Bは、マイクロミラー140が図4Aに示す姿勢から矢印Zに示す方向へ僅かに傾いた状態を示す。
【0028】
図4Aに示す状態では、入力光ファイバ111a、コリメータアレイ112、集光レンズ113を介してマイクロミラー140に入射する光は、出力光ファイバ111d側へ導かれるようにマイクロミラー140の反射面で反射している。マイクロミラー140を反射した光は、集光レンズ113及びコリメータアレイ112を介して出力光ファイバ111dへ導かれる。
【0029】
一方、図4Bに示す状態では、マイクロミラー140は僅かに傾斜した姿勢となっているため、集光レンズ113側から入射する光は、出力光ファイバ111c側へ導かれるようにマイクロミラー140の反射面で反射している。マイクロミラー140を反射した光は、集光レンズ113及びコリメータアレイ112を介して出力光ファイバ111cへ導かれる。図示は省略するが、マイクロミラー140を図4Bに示す姿勢からさらに矢印Zに示す方向へ傾斜させることで、入射する光を出力光ファイバ111bへ導かれるように反射することができる。
【0030】
このように、マイクロミラー140は、傾斜角に応じて出力ポートが定まるようになっている。個々のマイクロミラー140の傾斜角度を個別に制御することによって、各波長域毎に出力ポートを切り替えることができる。さらに、マイクロミラー140の傾斜角の調整を行う際、傾斜角を微調整することによって出力光ファイバ111b,111c,111dのコアへの光結合量を調整することができる。これによって、出力先の切り替え機能とともに、図2を参照して説明した利得等価機能105(光アッテネータ機能)を実現できる。
【0031】
〔2.マイクロミラー素子の構成〕
マイクロミラー素子は、数十個程度のマイクロミラーの配列を備えている。マイクロミラーの可動機構としては、固定部と、固定部に対して角度変位を可能とする揺動部と、当該固定部および揺動部を連結し尚且つ揺動部の角度変位を可能とするために弾性変形可能な連結部と、揺動部を角度変位させるための駆動力を生じる櫛歯部とを備えている。
【0032】
図5は、従来のマイクロミラー素子の一例を示す。図5は、一例として4個のマイクロミラーを図示している。マイクロミラー素子は、固定フレーム1、第1の櫛歯部2、導電フレーム3、第1のトーションバー11a、第2のトーションバー11b、第2の櫛歯部12、可動フレーム13、マイクロミラー14、第3のトーションバー15、第3の櫛歯部16、第4の櫛歯部17、導電フレーム18及び19を備えている。導電フレーム3は、固定フレーム1に固定もしくは一体化されている。第1の櫛歯部2は、導電フレーム3に備わる。第1の櫛歯部2は、複数の櫛形の電極2aを備えている。第1のトーションバー11aは、弾性変形可能な材料で形成され、一方の端部が固定フレーム1に固定され、他方の端部が導電フレーム18に固定されている。第2のトーションバー11bは、弾性変形可能な材料で形成され、一方の端部が固定フレーム1に固定され、他方の端部が可動フレーム13に固定されている。導電フレーム18は、可動フレーム13に固定されている。すなわち、可動フレーム13は、固定フレーム1に、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bによって変位可能に支持されている。具体的には、可動フレーム13は、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bを軸に矢印Aに示す方向またはその反対方向へ回動可能に、固定フレーム1に支持されている。第2の櫛歯部12は、導電フレーム11に備わる。第2の櫛歯部12は、複数の櫛形の電極12aを備えている。第1の櫛歯部2の電極2aと第2の櫛歯部12の電極12aとは、僅かな隙間を挟んで交互に配置している。可動フレーム13は、開口部を有する略ロの字状に形成され、その開口部内にマイクロミラー14、第3のトーションバー15、第3の櫛歯部16、第4の櫛歯部17、導電フレーム19を備えている。第3のトーションバー15は、弾性変形可能な材料で形成され、可動フレーム13の開口部内の互いに対向する2つの内面間に懸架されている。導電フレーム19は、第3のトーションバー15の長手方向の略中央に固定されている。第3の櫛歯部16は、可動フレーム13の開口部内の互いに対向する2つの内面にそれぞれ備わる。第3の櫛歯部16は、複数の櫛形の電極16aを備えている。第4の櫛歯部17は、導電フレーム19における第3の櫛歯部16に対向する部位に備わる。第4の櫛歯部17は、複数の櫛形の電極17aを備えている。マイクロミラー14は、導電フレーム19に固定されている。マイクロミラー14は、第3のトーションバー15を挟んで、第4の櫛歯部17に対向する位置に配されている。すなわち、マイクロミラー14、第3のトーションバー15、および第4の櫛歯部17は一体化しており、第3のトーションバー15を軸に矢印Bに示す方向またはその反対方向へ回動可能である。以下、可動フレーム13、マイクロミラー14、第3のトーションバー15、および第4の櫛歯部17を含む部材を「第1の揺動部」と定義し、マイクロミラー14、第3のトーションバー15、および第4の櫛歯部17を含む部材を「第2の揺動部」と定義する。
【0033】
上記のようにマイクロミラー素子において、導電フレーム3を介して第1の櫛歯部2に電圧を印加して、第1の櫛歯部2と第2の櫛歯部12との間に電位差を与えることよって、第1の櫛歯部2と第2の櫛歯部12との間に静電引力が生じる。この静電引力は、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bを回転軸として第1の揺動部を矢印Aに示す方向またはその反対方向へ回転動作させるトルクを生じさせる。これによって、第1の揺動部に含まれるマイクロミラー14を傾斜姿勢に移行可能な機構を実現することができる。
【0034】
また、第2のトーションバー11b及び可動フレーム13を介して第3の櫛歯部16に電圧を印加して、第3の櫛歯部16と第4の櫛歯部17との間に電位差を与えることによって、第3の櫛歯部16と第4の櫛歯部17との間に静電引力が生じる。この静電引力は、第3のトーションバー15を回転軸として第2の揺動部を矢印Bに示す方向またはその反対方向へ回転動作させるトルクを生じさせる。これによって、第2の揺動部に含まれるマイクロミラー14を傾斜姿勢に移行可能な機構を実現することができる。
【0035】
上記のようにマイクロミラー14の回転方向をC軸周り方向とD軸周り方向の2方向とすることにより、光信号の出力先を切り替える際に不要な光信号が出力光ファイバへ入射することを防ぐことができる。すなわち、マイクロミラー14の回転方向が一つ(D軸周りの方向)だけの場合、例えば光信号の出力先を出力光ファイバ111bから出力光ファイバ111dへ切り替える際に、瞬間的に出力光ファイバ111cへ光信号が入射してしまう。これに対してマイクロミラー14をC軸周り方向とD軸周り方向とに回転可能とすることにより、例えば光信号の出力先を出力光ファイバ111bから出力光ファイバ111dへ切り替える際、マイクロミラー14をD軸周り方向へ回転させている途中で一時的にC軸周り方向へ回転させることにより、出力光ファイバ111cへ光信号が入射することを防ぐことができる。このように、マイクロミラー14の回転方向を、光信号の出力先を切り替えるための回転方向と、光信号のファイバへの結合のオン/オフを切り替えるための回転方向の2方向としたことにより、不要な光信号が出力されることを防ぐことができる。
【0036】
図6は、図5におけるY−Y部の断面図である。図6は、SOI(Silicon On Insulator)基板を使って作製されたマイクロミラー素子の第2の揺動部の駆動メカニズムを示している。図6に示すように、第1の揺動部は、Si層21、SiO2層22、Si層23の三層構造となっている。可動フレーム13の一部と、ミラー基板14bと、第3のトーションバー15と、第3の櫛歯部16とが、上層のSi層21で形成されている。また、可動フレーム13の一部と、第4の櫛歯部17とが、下層のSi層23で形成されている。上層Si層21と下層Si層23との間には、両者を電気的に絶縁するためのSiO2層22が備わる。第3のトーションバー15は、弾性変形するために他の部位よりも薄く形成されており、これによって第2の揺動部は第3のトーションバー15を回転軸として回転可能となっている。第3の櫛歯部16の櫛形電極16aと第4の櫛歯部17の櫛形電極17aは、相互の櫛形電極の隙間に相手側の櫛形電極が入り込むことが可能である。マイクロミラー14は、鏡面を有する金属膜14aと、金属膜14aが成膜されたミラー基板14bとを備えている。金属膜14aの鏡面において、光信号を反射可能である。
【0037】
第3のトーションバー15は、図5に示すように直線的な形状を有する。しかしながら、このような直線的なトーションバーは、引っ張り方向のストレスを受けた場合に回転方向のバネ定数が変調されやすい。トーションバーに対する引っ張り方向のストレスは、例えばマイクロミラー素子の環境温度の変化に伴い、トーションバーを固定している固定フレーム1等の各種部材が伸縮することに起因する場合がある。
【0038】
図7は、セラミックパッケージに実装されたマイクロミラー素子の断面図である。図7において、第1のトーションバー11a、第2のトーションバー11b、固定フレーム1、可動フレーム13、保持基板32(Si)は、セラミック製のパッケージ31内に配されている。固定フレーム1は、接着剤33によって保持基板32に固定されている。保持基板32は、接着剤34によってパッケージ31に固定されている。パッケージ31は、例えばサファイヤガラスなどの透明材料で形成された窓材35によって封止されている。入力光ファイバからの光は、矢印Eに示すように窓材35を通過して可動フレーム13内に構成されたマイクロミラー14に入射する。
【0039】
図7に示すように、マイクロミラー14がセラミックのパッケージ31内に実装された状態においては、材料毎の熱膨張率の差異に起因して温度環境が変化した際に、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bには応力ストレスが作用する。その結果、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bのバネ定数が、当初の値から僅かにずれてしまい、マイクロミラー14を含む可動フレーム13を傾斜させた際の傾斜角度が正規の角度から僅かに変動することになる。
【0040】
また、接着剤33及び34で固定フレーム1等の部材を固定する方法においては、長期信頼性に関しての懸念点がある。すなわち、接着剤が硬化する際の接着剤自信の収縮によって、接着箇所には最初から応力ストレスが蓄積された状態になっている。これらの応力ストレスが固定フレーム1を介して第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bにも作用しており、初期の状態でバネ定数が応力ストレスに起因した変調を伴った状態となっている。このようなマイクロミラー素子を長期間にわたって使用している間に接着剤33及び34の劣化が進み、接着箇所の応力ストレスが緩和されることによって第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bのバネ定数の変調が緩和される。その結果、マイクロミラー14を傾斜させた際の傾斜角度が、当初の状態から僅かに変化してしまう。その結果として、マイクロミラー素子における光アッテネータ機能の精度が低下し、出力光ファイバに送られる光信号のレベル等にバラツキが発生する。
【0041】
〔3.応力緩和機構の構成〕
本実施の形態にかかるマイクロミラー素子は、引っ張り方向のストレスに対して変調を受けやすい直線的なトーションバーを適用するにあたって、引っ張り方向のストレスに対しては変位可能であって、トーションバーの回転軸方向に対しての変位が困難である特徴を持つ応力緩和機構を備えたことを構成上の特徴としている。
【0042】
トーションバーの回転方向に対するバネ定数をkr、トーションバーの引っ張り方向に対するバネ定数をktと定義する。また、応力緩和機構に関する回転方向のバネ定数をkr’、引っ張り方向のバネ定数をkt’と定義する。まず、回転方向のバネ定数については、
kr≪kr’
の関係を有するように設定する。また、引っ張り方向のバネ定数については、
kt≫kt’
の関係を有するように設定する。
【0043】
トーションバーに対して引っ張り方向のストレスが作用する時、応力緩和機構部分の引っ張り方向のバネ定数が小さいために前記ストレスが吸収されて、トーションバーに対しては殆ど影響を及ぼさない。なお、トーションバーに対するストレスを軽減する際に応力緩和機構がストレスに応じて変形することになるが、この変形に伴って応力緩和機構の回転方向のバネ定数が変調されることになる。しかし、回転方向のバネ定数はトーションバーのバネ定数よりも大幅に大きいことから、回転トルクに対する角度の変位量は殆どゼロであり、応力緩和機構の変形に起因する角度の変調は無視できる。つまり、マイクロミラーの傾斜角度に対しては殆ど影響を及ぼさない。
【0044】
以下、応力緩和機構50の具体構成について説明する。
【0045】
図8は、応力緩和機構50を備えたマイクロミラー素子の断面図である。図9は、図8における応力緩和機構50の要部断面図である。図10は、応力緩和機構50の要部斜視図である。応力緩和機構50は、例えば図8〜図10に示すように第2のトーションバー11bの長手方向に対して垂直な方向の平面を有する応力緩和部51を備えている。応力緩和部51は、薄肉に形成され、弾性変形可能である。応力緩和部51は、平面方向の略中央において第2のトーションバー11bと結合している。すなわち、応力緩和部51は、第2のトーションバー11bを基準として線対称に設けられている。応力緩和部51は、平面方向の両端が支持部52に一体的に支持されている。支持部52は、応力緩和部51の両端と可動フレーム13とを結合する部分であり、応力緩和部51よりも厚肉に形成されて変形しにくい部分である。応力緩和部51と支持部52と可動フレーム13とにより囲まれた部分は、中空構造となっている(空間53)。空間53は、応力緩和部51が変形を伴って応力を緩和する際に、応力緩和部51が可動フレーム13に干渉するのを防ぐために設けられている。
【0046】
上記のようなマイクロミラー素子において、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bに引っ張り方向(矢印F方向)の応力ストレスが作用した際、応力緩和部51が矢印F方向へ変形する。応力緩和部51が変形することによって、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bへ加わる応力ストレスを緩和することができる。
【0047】
また、応力緩和部51を第2のトーションバー11bを基準として線対称に配置することによって、応力緩和部51が矢印F方向に変形した際に、第2のトーションバー11bが剪断方向(矢印G方向)の応力ストレスを伴わずに済むことから、引っ張り方向のストレスに対して安定した特性を維持することが可能となる。
【0048】
ここで、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bは、厚みが数μm程度という薄い構造体であることから、弾性変形可能なバネの特性を持つ。これによって、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bを回転軸として、可動フレーム13がC軸(図5参照)周りに回転可能な構造となっている。
【0049】
応力緩和機構50における応力緩和部51のパターン幅T1(図9参照)は、可動フレーム13のパターン幅T2(図9参照)が通常10数μmかそれ以上の幅を持つのに対して数μm程度であり、これによって弾性変形可能な特性を有している。応力緩和部51は、第2のトーションバー11bに対して垂直な方向の平面を有し、第2のトーションバー11bからの引っ張り応力に対して容易に変形できる構造となっている。
【0050】
本実施の形態では、可動フレーム13の全幅W(図9参照)を約240μmとし、応力緩和部51のパターン幅T1を5μmとし、応力緩和部51の平面方向の幅T3を90μmとし、応力緩和部51を第2のトーションバー11bを基準として線対称に2カ所配置している。これにより、第2のトーションバー11bに加わる応力を、応力緩和部51を備えていない構成に比べて約1/10に低減できる。
【0051】
環境温度の変化によって生じる熱膨張率差に起因する応力の変動や、マイクロミラー素子を固定している接着剤の強度劣化による応力の変動が、マイクロミラー素子の固定フレーム1を変形せしめた時、応力緩和機構50が矢印F方向へ変位して応力を逃がすために、トーションバーの引っ張り方向に対する応力ストレスを軽減させることができる。したがって、トーションバーの回転方向のバネ定数は、応力ストレスによる変調が非常に小さく、マイクロミラーを傾斜させた時の傾斜角度は当初の角度に対してほとんどずれることがない。
【0052】
第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bと応力緩和機構50は、共に変位可能な部品であるが、互いに変位可能な方向が異なっているため、自身の変位可能な方向に対して他方の剛性を高くしている。例えば、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bは、その軸周り方向へ変位可能であるため、軸周り方向の剛性はトーションバー11a及び11bよりも応力緩和機構50の方を高くしている。また、トーションバー11a及び11bは、引っ張り方向(軸方向)への変位が困難な構造であり、応力緩和機構50は引っ張り方向(軸方向)への変位が可能な構造であるため、引っ張り方向(軸方向)への剛性は、応力緩和機構50よりもトーションバー11a及び11bの方を高くしている。なお、上記のように第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bと応力緩和機構50との間に剛性の違いを設けるためには、バネ定数を変えることが好ましい。バネ定数を変えるためには、例えば高い剛性を必要とする部分の肉厚を厚くし、低い剛性を必要とする部分の肉厚を薄くする構成が考えられる。また、バネ定数を変えるために、高い剛性を必要とする部分を高硬度材料で形成し、低い剛性を必要とする部分を低硬度材料で形成する構成が考えられる。
【0053】
このような応力緩和機構50に必要な特徴は、バネ定数を用いることによって以下のように示すことができる。第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bの回転方向(図5の矢印Aに示す方向)のバネ定数をkrとし、第1のトーションバー11a及び第2のトーションバー11bの引っ張り方向(図8の矢印F方向)のバネ定数をktとし、応力緩和部51の回転方向のバネ定数をkr’とし、応力緩和部51の引っ張り方向のバネ定数をkt’と定義したとき、回転方向のバネ定数は、
kr≪kr’
の関係を有する。また、引っ張り方向のバネ定数は、
kt≫kt’
の関係を有する。
【0054】
図11は、応力緩和機構50の他の構成例を示す。前述のように、トーションバーと応力緩和機構は、応力に対して変形可能とするために、形状としては薄いもしくは細い構造体である。トーションバーと応力緩和機構とを連続的に連結してしまうと、連結部が微小な接点しかなく、連結部が破断しやすくなってしまう。このため、図11に示すように、応力ストレスやトルクに対して変形しない強固さを有する連結部54を、トーションバーと応力緩和機構との間に介在することが好ましい。第2のトーションバー11bと応力緩和部51との結合部分に連結部54を備えたことにより、第2のトーションバー11bと応力緩和部51との結合強度を高めることができるので、第2のトーションバー11bまたは応力緩和部51が繰り返し変位したとしても連結部の破断を起こりにくくすることができる。
【0055】
図12は、応力緩和機構50と固定フレーム1とを2本のトーションバー11c及び11dで結合した例を示す。前述のような単一でかつストレート形状のトーションバーは、櫛歯部分で発生する静電引力に対して可動フレーム13を回転方向に変位させると同時に、僅かながら櫛歯の方向への平行移動の変位を伴う。平行移動の変位をより小さくするための方策として、図12に示すように2本のトーションバー11c及び11dをV字に配置する方法が有効である。図12に示すV字状のトーションバー11c及び11dにおいても、先に述べた回転方向と引っ張り方向のバネ定数に関する特徴は成立している。
【0056】
図13は、マイクロミラー14の占有領域を高めるために可動フレーム13の一部が取り除かれて、マイクロミラー14の領域に置き換えられたマイクロミラー素子を示す。図13に示すマイクロミラー素子は、マイクロミラー14の周囲を可動フレームで囲む構成ではなく、マイクロミラー14の片側のみに可動フレーム13aを配置したマイクロミラー素子である。図13に示す可動フレーム13aは、少なくとも図5等に示す可動フレーム13に比べて剛性が低いため、外的な応力ストレスに対して変形を伴いやすい。しかし、応力緩和機構50を備えることによって、固定フレーム1側の変形等の外部からの応力ストレスが応力緩和機構50において吸収され、可動フレーム13には伝わりにくいため、図13に示すような可動フレーム13aをマイクロミラー素子に適用することが可能となる。図13に示す可動フレーム13aを適用することによって、マイクロミラー14の反射面の面積を拡大することができるので、より効率的に光信号を出力光ファイバ側へ反射することができる。
【0057】
図14は、応力緩和機構50の変形例を示す。図14に示す応力緩和機構50は、応力緩和部55a及び55b、連結部56a及び56b、連結部57を備えている。応力緩和部55a及び55bは、前述の応力緩和部51と同様、薄肉に形成され、第2のトーションバー11bの引っ張り方向(矢印F方向)へ変位可能である。応力緩和部55aは、その平面方向の略中央において第2のトーションバー11bと結合している。応力緩和部55bは、その平面方向の略中央において連結部57と結合している。応力緩和部55aと応力緩和部55bとは、空間58を挟んで平行対向している。応力緩和部55a及び応力緩和部55bは、その平面方向両端において連結部56a及び56bと結合している。連結部56aと連結部56bとは、空間58を挟んで平行対向している。連結部56a及び56bは、応力緩和部55a及び55bの肉厚よりも厚く形成され、応力緩和部55a及び55bよりも高い剛性を確保している。連結部57は、第2のトーションバー11bと略同軸位置に配され、その軸方向の一方の端部が応力緩和部55bに結合し、他方の端部が可動フレーム13に結合している。連結部57は、ストレスがかかっても変形しにくい材料で形成されている。図14に示すマイクロミラー素子は、第2のトーションバー11bを基準として線対称な形状となっている。このような構成とすることにより、第2のトーションバー11bの引っ張り方向に応力ストレスがかかったとしても、応力緩和部55a及び55bで応力を吸収することができる。
【0058】
図15は、応力緩和機構50の変形例を示す。図15に示す応力緩和機構50は、複数の応力緩和部59a、複数の連結部59bを備えている。応力緩和部59aは、前述の応力緩和部51と同様、薄肉に形成され、第2のトーションバー11bの引っ張り方向(矢印F方向)へ変位可能である。応力緩和部59aは、第2のトーションバー11bを基準として線対称に配されている。複数の応力緩和部59aは、それぞれ連結部59bによって結合されている。複数の応力緩和部59aは、互いに平行となるように形成されている。複数の連結部59bのうち図示上端の連結部59bは、可動フレーム13に結合している。このような構成とすることにより、第2のトーションバー11bの引っ張り方向に応力ストレスがかかったとしても、複数の応力緩和部59aで応力を吸収することができる。
【0059】
図16は、応力緩和機構50を固定フレーム1に備えた変形例を示す。図16に示す応力緩和機構50は、応力緩和部61を備えている。応力緩和部61は、固定フレーム1に形成された凹部1a内に懸架されている。応力緩和部61は、その平面方向の中央に第2のトーションバー11bが結合している。応力緩和部61は、弾性変形可能な厚さ及び材料で形成され、第2のトーションバー11bの引っ張り方向(矢印F方向)に変位可能である。応力緩和部61が凹部1aにおける可動フレーム13に近い位置に配されていることにより、応力緩和部61の下方には空間が形成される。これにより、応力緩和部61が矢印F方向に変位したとしても、応力緩和部61が固定フレーム1に干渉するのを防ぐことができ、応力緩和部61をスムーズに変位させることができる。
【0060】
図17は、応力緩和機構50を可動フレーム13における第1のトーションバー11a側に設けたマイクロミラー素子である。図17に示す応力緩和機構50は、応力緩和部62を備えている。応力緩和部62は、可動フレーム13における第1のトーションバー11a側の端部に結合している。応力緩和部62の平面方向の中央には、導電フレーム18が結合している。導電フレーム18は、第1のトーションバー11aに結合している。第1のトーションバー11aは、固定フレーム1に結合している。応力緩和部62と可動フレーム13との間には、応力緩和部62が変位した際に可動フレーム13との干渉を防ぐための空間63を有する。このような構成とすることにより、第1のトーションバー11あの引っ張り方向に応力ストレスがかかったとしても、応力緩和部62で応力を吸収することができる。
【0061】
図18は、応力緩和機構50の変形例を示し、第2のトーションバー11bを中心として非対称の形状を有する応力緩和機構50を示している。図8等に示す応力緩和機構50は、第2のトーションバー11bを基準とした線対称な形状としたが、必ずしも線対称な形状とする必要はない。例えば、図18に示すように、略Z字を成すように応力緩和部64a〜64c及び複数の連結部65a〜65cを結合した応力緩和機構50であってもよい。応力緩和部64aは、一方の端部が第2のトーションバー11bに結合し、他方の端部が連結部65aに結合している。応力緩和部64bは、一方の端部が連結部65aに結合し、他方の端部が連結部65bに結合している。応力緩和部64cは、一方の端部が連結部65cに結合し、他方の端部が連結部65bに結合している。応力緩和部64bは、応力緩和部64a及び64cの長さの約2倍の長さを有する。応力緩和部64bは、その平面方向の中心と第2のトーションバー11bの位置とがほぼ一致する。したがって、図18に示す応力緩和機構50は、形状としては非対称となっているが、第2のトーションバー11bを中心として左右それぞれに同等の応力緩和の能力を有する。
【0062】
なお、前述したように可動フレーム13、トーションバー11a及び11b、応力緩和機構50は、同じ材料(Si)で形成されているため、それぞれの部材のパターン幅や厚さを適切な値に調整してマイクロミラー素子を作製することによって、各部材の機械的強度を調整することができる。材質が同じの場合、剛体の強度は寸法の3乗にほぼ比例する。仮に、図9に示すように、応力緩和部51の厚さT1を5μmから2倍の10μmにした場合、応力緩和部51の機械的強度は約8倍に増加することになる。また、可動フレーム13に作用する応力としては、引っ張り方向(矢印F方向)のストレスと、第2のトーションバー11bを回転軸とする回転トルクとがほとんどである。応力緩和機構50を備えることによって、可動フレーム13にかかる引っ張り方向のストレスが軽減されるため、可動フレーム13に大きな力が作用することは極めて少ない。したがって、可動フレーム13のパターン幅T2は、応力緩和部51の厚さT1が5μmの場合には約2倍の10μm程度とすることにより、十分な強度が得られる。
【0063】
本実施の形態では、応力緩和部51の寸法を、幅T3=90μm、厚さT1=5μm、高さt=200μmとした。また、第2のトーションバー11bの寸法を、長さg=100μm、厚さh=5μm、幅i=20μmとした。このときの応力緩和機構50のバネ定数s1と、第2のトーションバネ11bのバネ定数s2は、
s1=t×T13×E/(2×T33)
s2=h×i×E/g
(Eはヤング率)
により求めることができる。上記数式に本実施の形態の値を代入すると、バネ定数の比s1:s2は、約1:58となる。したがって、固定フレーム1からの応力は、ほとんどが応力緩和機構50で吸収されることになり、第2のトーションバー11bに作用する応力は大幅に軽減される。
【0064】
〔4.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態にかかる応力緩和機構を備えることによって、環境温度の変化によって生じる熱膨張率差に起因する応力の変動や、マイクロミラー素子を固定している接着剤部分の強度劣化による応力の変動等が、マイクロミラーの傾斜角度へ影響することを軽減することができる。
【0065】
本実施の形態における固定フレーム1は、本発明の固定部の一例である。本実施の形態における可動フレーム13,13a、およびそれに支持された部材(マイクロミラー14等)は、本発明の揺動部の一例である。本実施の形態における第1のトーションバー11a、第2のトーションバー11bは、本発明の軸部の一例である。本実施の形態における応力緩和機構50、応力緩和部51,55a,55b,59a,61,62,64a,64b,64cは、本発明の応力緩和部の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、マイクロミラーを備えたマイクロミラー素子のようなマイクロ素子に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 固定フレーム
11a 第1のトーションバー
11b 第2のトーションバー
13,13a 可動フレーム
50 応力緩和機構
51,55a,55b,59a,64b,64c 応力緩和部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
前記固定部に対して揺動可能な揺動部と、
前記揺動部の揺動軸を規定する軸部と、
前記固定部及び前記揺動部の少なくとも一方に設けられる応力緩和部と、を含み、
前記揺動軸の軸方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸の軸方向における前記軸部の剛性より小さく、
前記揺動軸を中心とする回転方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記軸部の剛性よりも大きい、マイクロ素子。
【請求項2】
前記揺動部の板厚方向における前記前記応力緩和部の厚みは、前記揺動部の板厚方向における前記軸部の厚みよりも大きい、請求項1に記載のマイクロ素子。
【請求項3】
前記軸部は、前記応力緩和部に直接的に連結されている、請求項1又は2に記載のマイクロ素子。
【請求項4】
前記応力緩和部は、前記揺動軸を基準として線対称の構造を有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロ素子。
【請求項5】
前記応力緩和部は、前記揺動軸を基準として線対称となる第1の位置及び第2の位置で前記揺動部に連結されている、請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロ素子。
【請求項6】
前記応力緩和部は、前記揺動部に対して隙間を空けて設けられている、請求項5に記載のマイクロ素子。
【請求項7】
前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部の少なくとも1つと熱膨張率が異なり、前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部を収容する収容部を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載のマイクロ素子。
【請求項8】
前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部の材料はシリコンであり、
前記収容部の材料はセラミックスである、請求項7記載のマイクロ素子。
【請求項1】
固定部と、
前記固定部に対して揺動可能な揺動部と、
前記揺動部の揺動軸を規定する軸部と、
前記固定部及び前記揺動部の少なくとも一方に設けられる応力緩和部と、を含み、
前記揺動軸の軸方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸の軸方向における前記軸部の剛性より小さく、
前記揺動軸を中心とする回転方向における前記応力緩和部の剛性は、前記揺動軸を中心とする回転方向における前記軸部の剛性よりも大きい、マイクロ素子。
【請求項2】
前記揺動部の板厚方向における前記前記応力緩和部の厚みは、前記揺動部の板厚方向における前記軸部の厚みよりも大きい、請求項1に記載のマイクロ素子。
【請求項3】
前記軸部は、前記応力緩和部に直接的に連結されている、請求項1又は2に記載のマイクロ素子。
【請求項4】
前記応力緩和部は、前記揺動軸を基準として線対称の構造を有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロ素子。
【請求項5】
前記応力緩和部は、前記揺動軸を基準として線対称となる第1の位置及び第2の位置で前記揺動部に連結されている、請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロ素子。
【請求項6】
前記応力緩和部は、前記揺動部に対して隙間を空けて設けられている、請求項5に記載のマイクロ素子。
【請求項7】
前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部の少なくとも1つと熱膨張率が異なり、前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部を収容する収容部を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載のマイクロ素子。
【請求項8】
前記固定部、前記揺動部、前記軸部、及び前記応力緩和部の材料はシリコンであり、
前記収容部の材料はセラミックスである、請求項7記載のマイクロ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−27973(P2011−27973A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173117(P2009−173117)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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