説明

マスクを通した積層

本発明はドナー基板からレシーバ基板に材料のパターンを積層によって転写する方法である。転写された材料のパターンは、積層の際にドナーとレシーバとの間に挿入されたマスクの開口によって画定される。この技法は可撓性ポリマーレシーバ基板に適合しており、可撓性表示装置用の薄膜トランジスタを作製するのに有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを通した積層によってパターン付き材料を堆積する方法に関する。この方法は、薄膜トランジスタまたは他の電子デバイスの構成要素にとって特に有用である。この方法においては、堆積された材料の層が、マスクを通してドナー基板からデバイス上に積層される。このマスクの使用は、積層された層の堆積を堆積が望まれる区域に限定する。この技法は、薄膜電界効果トランジスタ中のゲート電極の上にゲート誘電体を堆積するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ベク(Baek)らの特許文献1は、エッチングマスクとしてフォトレジストパターンを用いる液晶表示装置用の製造方法を開示している。
【0003】
拓(Taku)および正治(Masaharu)の特許文献2は、異方性エッチングを用いて薄膜電界効果トランジスタ中の強誘電体材料をパターン形成する方法を開示している。
【0004】
隆俊(Takatoshi)および隆志(Takashi)の特許文献3は、薄膜トランジスタの製造方法を開示している。この方法はエッチングを含んでいる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,493,048号明細書
【特許文献2】特開2001−135734号公報
【特許文献3】特開2001−196589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
対照的に、本発明は、マスクを通してドナー基板上に堆積された材料の層をプレスしてレシーバ基板上にパターンを構築することを伴う積層方法を用いて材料のパターン付き層を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(a)ドナー基板の一方の側面上に材料を堆積させる工程と、
(b)マスクの開口がレシーバ基板に対して所望の位置になるように、ドナー基板とレシーバ基板との間に開口付きマスクを位置合わせする工程と、
(c)側面が、堆積された材料がマスクの開口を通してレシーバ基板上に転写されるように、マスクおよびレシーバ基板に向かう方向に堆積された材料を有する状態で配向されたドナー基板、マスク、およびレシーバ基板を積層する工程と、
(d)ドナー基板およびマスクを除去する工程と
を含んでなる方法を記載している。
【0008】
本発明は、
(a)ドナー基板の一方の側面上に剥離層を堆積させる工程と、
(b)剥離層上に材料を堆積させる工程と、
(c)マスクの開口がレシーバ基板に対して所望の位置になるように、ドナー基板とレシーバ基板との間に開口付きマスクを位置合わせする工程と、
(d)側面が、堆積された材料がマスクの開口を通してレシーバ基板上に転写されるように、マスクおよびレシーバ基板に向かう方向に堆積された材料を有する状態で配向されたドナー基板、マスク、およびレシーバ基板を積層する工程と、
(e)ドナー基板およびマスクを除去する工程と
を含んでなる方法も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、積層によってパターンの形で材料をドナー基板からレシーバ基板に転写する方法である。このパターンは、積層の際にドナー基板とレシーバ基板の間に開口付きマスクを載置することによって得られる。
【0010】
ドナー基板上への、溶液のスピンコーティング、溶液のドロップキャスティング、または蒸着および凝着などの様々な既知の方法によってドナー基板上に材料を被覆することができる。このドナー基板は、堆積された材料に対して比較的不活性であり、従来は、テフロン(Teflon)(登録商標)、マイラー(Mylar)(登録商標)、カプトン(Kapton)(登録商標)、や類似の材料などの材料のポリマーシートまたはポリマー被膜である。このドナー基板は、多層膜であってよく、そこで層をうまく処理して積層すべき材料を剥離し、かつ/またはシャドーマスクを通して共形被覆をもたらす。たとえば、エルバックス(Elvax)(登録商標)は、ウェブコーター中でマイラー(登録商標)上にロール・ツー・ロールに装置被覆(plant coat)することができ、ドナー基板として用いられる。次いで、積層すべき材料をエルバックス(登録商標)上に堆積させる。エルバックス(登録商標)は、エラストマー状であり、昇温時のエルバックス(登録商標)への接着性は弱いので、共形被覆とドナー基板からの剥離の容易さの両方をもたらす。
【0011】
このレシーバは、デバイスの他の素子で既にパターン形成されていてもよい。本発明のこの方法は、従来、うまく処理して積層すべき材料の接着性を最大にすることもできる可撓性ポリマーレシーバ基板に用いられている。積層法は僅かに昇温させた温度、すなわち、80〜120℃でしばしば実行される。これらの温度は、過剰な温度に耐えることができない可撓性ポリマーレシーバ基板の使用と整合している。本発明のこの方法は、可撓性ポリマー基板への薄膜トランジスタの作製に特に有用である。可撓性表示装置の駆動装置、センサ等として用いられる薄膜トランジスタにおいて大面積のポリマーシートが作製できる低コストの技法が求められていた。積層法などの低コスト処理の使用は、真空チャンバ中に可撓性ポリマーレシーバ基板を導入する必要を回避する。さらに、積層は、溶剤との相溶性という問題を除去することによって有機電子機器の構成を簡単にする乾式付加法である。
【0012】
被覆されると、ドナー基板は、レシーバの方に向いた被覆材料を有する側に載置される。開口を有するマスクは、ドナー基板とレシーバ基板の間に位置合わせされる。この開口を、レシーバ基板上に予め存在するフィーチャの上に位置決めしてもよい。例えば、もし被覆材料がゲート誘電体材料である場合、マスクの開口を、レシーバ基板上に既に堆積済みのゲート電極構造の上に位置決めしてもよい。この開口は、ドナーからレシーバに転写される材料の被覆率を限定し、したがって、転写された材料中に形成されるパターンを画定する。このマスクは、テフロン、マイラー、カプトン、や類似の材料などの材料の、不活性且つ平坦なシートまたは被膜であるのが都合がよい。メタルマスクまたはセラミックマスクも使用することができる。
【0013】
ドナー、マスクおよびレシーバが位置決めされると、これらの素子は、積層工程において所望の温度で一体にプレスされる。この温度は、層のうちの1つを軟化させて接着可能にするように選択することができる。圧力下で、ドナー上に被覆された材料はマスクの開口を通してプレスされてレシーバ基板に接触する。マスクの開口によって画定された区域中の材料のみがレシーバに接触する。レシーバ基板またはドナー基板をうまく処理して、マスクを挟んでドナーとレシーバとの間の接触を最大にすることができる。すなわち、マスクの開口の区域によって画定されるパターンが形成される。適切な圧力条件および時間条件下で、マスクの開口の上の材料がレシーバに転写される。積層後、これらのドナー基板およびマスクを除去して、レシーバ上に転写された材料のパターンをマスクの開口によって画定されるパターン中に残す。
【0014】
この方法を、図1に概略的に示すが、ここでは、ドナー基板はマイラーである。エルバックスまたはPDMS(ポリジメチルシロキサン)のエラストマー状の剥離層も示す。誘電体を剥離層上に堆積させる。レシーバ基板は、この図示中ではゲート電極が接触した状態でパターン形成されている。このレシーバ基板は、ITOを有するガラス、ニッケルを有するマイラー、Cuを有するカプトン、またはSiO中のAuであってもよい。このマスクは、開口を含み、かつ開口がゲート電極と位置合わせするようにドナーとレシーバの間に位置決めされる。
【0015】
図2は、ドナーの積層方法を示す。積層プレス中のドナー、マスク、およびレシーバが示されている。これらの層がプレスされる(場合により加熱されてもよい)とき、エラストマーがマスクの開口の上で膨張して、転写される誘電体の共形被覆を生成する。
【0016】
図3は、積層法の際の層の断面積を示す。必要であれば、これらの層を冷却させることができる。
【0017】
図4は、積層法の後の層の取外しを図示している。これらの層を所望の温度にすると、マスクシートおよびドナーシートが除去される。マスクの開口に位置合わせしたドナーシートからの材料のみがレシーバ基板上に残る。図示において、パターン付き誘電体は、入力接続または出力接続のどちらか、あるいは電子デバイスの他の層に対する相互接続またはビアにアクセス可能な、ゲート電極接点を残す。界面の化学物質は、転写すべき誘電体層がエラストマー状の剥離層から容易に剥離され、かつ構築されるデバイスに結合するようなものである。また、材料は、誘電体がマスクに結合しないものを選択することができる。これによって、洗浄なしでマスクの多重使用が可能になる。
【0018】
この方法は、リソグラフィや真空蒸着などの時間を要し且つ高価な技法を必要としない。この方法はわずか数分のみを要し、この方法でパターン形成される区域の大きさは積層プレスの大きさによってのみ制限される。この方法は、作製するのに費用がかさみ、かつ、1回または2回の使用の後で壊れ易いスタンプを、実際に使用することなく、エラストマースタンプの化学における発展形態の利点を取り入れることができる。スタンプも、通常、小さな区域に限定される。
【0019】
マスクは、極めて多数の積層に用いることができる。この技法は、高価な蒸着技法を使用することなく、「乾式リフトオフ」法における進歩を利用することもできる。さらに、2層以上の層を一度にマスクを通して転写することができる。たとえば、半導体および誘電体を同時に転写することができる。この場合、誘電体は、半導体が空気への曝露によって劣化することを防ぐ働きをすることができる。
【実施例】
【0020】
実施例1
本実施例は、誘電体がどのようにしてマスクを通した積層によってパターン形成されるかを説明している。基板はスライドガラスである。誘電体は、溶剤溶液からエルバックス被覆を有するマイラー上に被覆された420nmのポリビニルピリジン棒である。透過型電子顕微鏡(TEM)格子をマスクとして用いて積層時に誘電体をパターン形成した。使用したTEM200Cu格子は、一辺58ミクロンの角孔と直径25ミクロンの線を有した。積層は、10キロポンドの力、85℃の温度下で、カーバー(Carver)3889プレス積層機上で実施した。図5は、本発明のこの方法を用いてITO被覆ガラス上に転写されたポリビニルピリジンのパターンの光学顕微鏡像を示す。図6は、テンコール(Tencor)P−15プロフィロメータを用いて測定された図5に示す構造のプロファイルを示す。
【0021】
実施例2
本実施例は、導体がどのようにしてマスクを通した積層によってパターン形成されるかを説明している。基板はスライドガラスである。この導体は、420nmの厚さの誘電体ポリビニルピリジンで被覆された7nmのNiである。誘電体は、マイラードナー基板上に堆積される。ニッケルはこの誘電体上に堆積される。上記の実施例1におけるように、TEM格子をマスクとして用いて積層時に誘電体をパターン形成する。積層は、10キロポンドの力、85℃の温度下で、プレート積層機上で実施した。積層時、誘電体と導体の両方が転写される。誘電体はガラス上に直接転写される。Niは、露出表面上の誘電体の上にある。その結果、スライドガラス上にパターン形成され、誘電体層によって分離された導体が得られる。図7は、本発明のこの方法によって堆積されたニッケルの領域の画像を示す。図8は、テンコールP15プロフィロメータを用いて測定された図7に示す構造のプロファイルである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ドナーシートと構築されるデバイスの間に載置されるマスクを通した積層の例を示す図であり、パターン付き誘電体層が構築されるデバイスに付与される。
【図2】積層体中のマスクを通してプレスされるドナーを示す図である。
【図3】誘電体が構築されるデバイス上にマスクを横切ってプレスされることを可能にするエラストマー層の存在を示す図である。
【図4】マスクおよびドナー層の除去を示す図である。
【図5】TEM200の格子をマスクとして用いた420nmのpvp(ポリビニルピロリドン)誘電体の、ITOガラスへのマスク積層の写真を示す図である。
【図6】パターン付き誘電体が、58μm角の角孔および25μmのワイアを有するマスクがどのようにして直接再生されるのかを示す図a)の断面スキャンを示す図である。
【図7】pvpで被覆されたNiマイラーおよびTEMの単一スロット格子を用いてガラス上にマスク積層された導電性Niパターンを示す図である。
【図8】図7に示すようなNiコンタクト端部の断面プロファイルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ドナー基板の一方の側面上に材料を堆積させる工程と、
(b)マスクの開口がレシーバ基板に対して所望の位置になるように、ドナー基板とレシーバ基板との間に開口付きマスクを位置合わせする工程と、
(c)側面が、堆積された材料がマスクの開口を通してレシーバ基板上に転写されるように、マスクおよびレシーバ基板に向う方向に堆積された材料を有する状態で配向されたドナー基板、マスク、およびレシーバ基板を積層する工程と、
(d)ドナー基板およびマスクを除去する工程と
を含んでなる方法。
【請求項2】
(a)ドナー基板の一方の側面上に剥離層または共形層を堆積する工程と、
(b)剥離層上に材料を堆積する工程と、
(c)マスクの開口がレシーバ基板に対して所望の位置になるように、ドナー基板とレシーバ基板との間に開口付きマスクを位置合わせする工程と、
(d)側面が、堆積された材料がマスクの開口を通してレシーバ基板上に転写されるように、マスクおよびレシーバ基板に向う方向に堆積された材料を有する状態で配向されたドナー基板、マスク、およびレシーバ基板を積層する工程と、
(e)ドナー基板およびマスクを除去する工程と
を含んでなる方法。
【請求項3】
ドナー基板がポリマーシートまたはポリマー被膜である請求項1または2に記載の方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公表番号】特表2007−508683(P2007−508683A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528324(P2006−528324)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031980
【国際公開番号】WO2005/030491
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】