説明

マスクブランク及びその製造方法

【課題】パターン形成用薄膜中のその周囲よりも多く酸素を含有する60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥数を低減させ、高いレベルの欠陥品質を要求されるマスクブランクの製造方法を提供する。
【解決手段】透光性基板1上に金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜2をスパッタ成膜装置を用いてスパッタリング法で形成することによりマスクブランク10を製造する。ここで、透光性基板1が搬入されるスパッタ成膜装置の室内の気体を水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換し終えた後に、該室内の減圧を行い、次いでパターン形成用薄膜2のスパッタリング法による成膜を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造等に使用される転写用マスクを製造するための原版であるマスクブランク及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における超LSIデバイスの高密度化、高精度化により、マスクブランク用基板の平坦度や表面欠陥に対する要求は年々厳しくなる一方である。従来のマスクブランク用基板の表面粗さを低減するための精密研磨方法としては、例えば特開昭64−40267号公報に記載されているものがあり、この精密研磨方法は、酸化セリウムを主材とする研磨剤を用いてマスクブランク用基板の表面を研磨した後、コロイダルシリカを用いて仕上げ研磨するものである。
【0003】
そして、研磨を終えた基板に洗浄処理を行って、基板表面に付着残留する研磨剤などの異物を除去する。従来の基板洗浄方法としては、例えば下記特許文献1に開示されている方法が一般的である。すなわち、基板を低濃度フッ酸水溶液を用いて処理し、更にアルカリ液を用いて洗浄処理し、最後に水洗(リンス)を行う。
こうして、マスクブランク用基板は製造され、得られたガラス基板の上面に遮光膜または位相シフト膜などを形成してフォトマスクブランクが得られる。
【0004】
パターンの微細化の要求は益々高まる一方であり、マスクブランクにおいても、その表面欠陥に対する要求は極めて厳しくなってきている。つまり、基板表面に異物付着等による凸状欠陥が存在するガラス基板を使用して例えば位相シフトマスクブランク、位相シフトマスクを作製した場合、マスク面のパターン近傍に凸状欠陥が存在すると、露光光の透過光にはその凸状欠陥に起因した位相角の変化が起こる。この位相角の変化は転写されるパターンの位置精度やコントラストを悪化させる原因となる。特にArFエキシマレーザー光(波長193nm)のような短波長の光を露光光として用いる場合、マスク面上の微細な凹凸に対して位相角の変化が非常に敏感となるため、転写像への影響が大きくなり、微細な凹凸に由来する位相角の変化は無視できない問題である。
このようなわけで、パターンのよりいっそうの微細化を実現するためには、露光光の短波長化は不可欠であり、短波長の露光光用のマスクブランクの場合、表面欠陥に対する非常に高いレベルの条件を満たす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3879828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、マスクブランク用基板は、研磨剤を用いて表面研磨した後、洗浄処理することによって製造される。洗浄処理後のマスクブランク用基板は、欠陥検査装置で凸状欠陥や凹状欠陥の有無、大きさおよびその欠陥の位置が検査される。検査された各マスクブランク用基板について、検出された欠陥の分布状態によって、合格品として、後工程(パターン形成用薄膜の成膜工程)に送るか、不合格品として、前工程(パターン形成用薄膜の剥離工程、研磨工程等)に送るかが判定される。そして、このように製造されたマスクブランク用基板上に、遮光膜や位相シフト膜などのパターン形成用薄膜を形成することによりマスクブランクが製造される。また、パターン形成用薄膜が成膜された後のマスクブランク用基板についても、欠陥検査装置で凸状欠陥や凹状欠陥の有無、大きさおよびその欠陥の位置が検査される。検査された各マスクブランク用基板は、検出された欠陥の分布状態によって、合格品として、後工程(第2のパターン形成用薄膜の成膜工程やレジスト塗布工程等)に送るか、不合格品として、前工程(パターン形成用薄膜の剥離工程、研磨工程等)に送るかが判定される。
【0007】
近年の転写パターンの微細化が進んできており、それに伴って欠陥検査装置の検出精度も向上してきている。これにより、検出可能な欠陥の下限サイズが小さくなってきており、これまで検出不可能であった微小なサイズの欠陥も検出できるようになってきている。しかし、欠陥の検出下限サイズが150nm相当である欠陥検査装置の検出レベルでの欠陥検査では、合格品として後工程に送ることができるマスクブランク用基板に対し、それよりも小さいサイズの欠陥(150nm相当未満、例えば、100nm相当)が検出可能な欠陥検査装置で欠陥検査を行うと、主表面上に150nm相当未満のサイズの欠陥(主に凸状欠陥)が多数検出されて、不合格品になるマスクブランク用基板が発生する場合があることが判明した。また、検出された150nm相当未満の欠陥は、研磨剤に起因する異物ではないことも判明した。つまり、150nm相当未満の欠陥は、従来の研磨後のガラス基板に対する洗浄処理では、根本的には解決できるものではない。
【0008】
そこで本発明の目的は、高いレベルの欠陥品質要求を満足できるように微小凸状欠陥数を低減させた高品質のマスクブランク及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来、マスクブランク上の薄膜で問題となっていた凸状欠陥は、基板表面にもともと付着していた異物(研磨剤等)によるものを除けば、スパッタ室内の内壁等の付着物が剥離して発生するパーティクルや、ターゲットの異常放電で発生するパーティクルが、薄膜の成膜時に取り込まれてしまうことに起因するものがほとんどであった。
本発明者は、マスクブランク用基板においては良好な欠陥品質レベルに仕上がっているものの、この基板を用いて製造されたマスクブランクにおいて多数の150nm相当未満のサイズの凸状欠陥が発生したマスクブランクについて、その凸状欠陥を克明に調査した。その結果、このような凸状欠陥の多くは、その組成に酸素を含有しており、欠陥が存在しているパターン形成用薄膜の組成に酸素を含む場合においても、膜中のその周囲よりも多く酸素を含有していることが判明した。このような酸素を多く含有する凸状欠陥は、パターン形成用薄膜中の透光性基板との界面近傍、またはパターン形成用薄膜中のその下面に接する他の薄膜との界面近傍に存在する(或いは界面近傍から成長している)略球状(真球状だけでなく、平面視楕円状のものも含む)の微小欠陥であることも判明した。また、150nm相当未満のサイズの凹状欠陥の多くについても、その組成に酸素を含有しており、パターン形成用薄膜の組成に酸素を含む場合においては、膜中のその周囲よりも多く酸素を含有していることが判明した(本明細書においては、これらの酸素を多く含有する凸状欠陥および凹状欠陥等の欠陥を「高酸化物欠陥」と呼ぶことにする。なお、高酸化物欠陥は、その中心部に周囲よりも多く酸素を含有している部分を有するものであって、それに起因して膜中の他の部分とほぼ同じ酸素の含有度合の部分にまで広がっている凸状欠陥や凹状欠陥についても含まれるものとする。)。さらに、欠陥検査装置で検出された150nm相当未満の大きさの凸状および凹状の高酸化物欠陥について、SEM等による観察で実際の大きさを調べたところ、いずれも150nm未満の微小サイズであることも判明した。このような微小な高酸化物欠陥は、近年要請されるようになってきた高いレベルの表面欠陥フリー(欠陥が存在しないこと)の要請を確認するために開発された欠陥検査装置によってはじめて確認することができたものである。近年、転写用マスクの微細パターン化が進み、それに伴って欠陥検査装置の検査精度も向上してきており、従来よりもサイズの小さな凸状欠陥や凹状欠陥も許容されなくなってきている。
【0010】
本発明者は、上記マスクブランクにおいて発見された凸状欠陥や凹状欠陥の多くが上記高酸化物欠陥であり、しかもこの高酸化物欠陥は酸素を多く含有するという組成からすると、従来の基板表面に付着した例えば研磨剤残りによる異物欠陥(この場合の異物欠陥は、研磨剤由来の元素であるSi等の含有量がその周囲に比べて高くなるが、高酸化物欠陥ではその傾向がない。)や、スパッタ室内の内壁等の付着物が剥離して発生するパーティクルや、ターゲットの異常放電で発生するパーティクル(これらのパーティクルに起因する欠陥の場合、サイズは150nm以上がほとんどである。)が、薄膜の成膜時に取り込まれてしまうことに起因する欠陥とは発生原因がまったく異なるものであるとの認識のもとで、高酸化物欠陥の発生原因(メカニズム)について鋭意検討した結果、以下のように推測した。
【0011】
一般にマスクブランクは、ガラス基板等の透光性基板上に、スパッタ成膜装置を用いて、パターン形成用薄膜をスパッタリング法で形成して製造される。
スパッタリング法によるパターン形成用薄膜の形成は、スパッタ室内を真空引きして所定の真空度になった後、スパッタガスを導入し、スパッタ室内のガス圧が安定したときに、スパッタターゲットに電圧を印加することで、スパッタガスがプラズマ化し、それがターゲットに衝突することでターゲットからスパッタ粒子が飛び出し、透光性基板上にパターン形成用薄膜が堆積していくことで成膜される。透光性基板は、通常大気中に置かれているため、大気中にある透光性基板をスパッタ装置内に導入する室は、その透光性基板の導入時に一度空気が入り込む(大気圧状態になる)。このため、スパッタ装置内の透光性基板が置かれており、室内に大気圧とほぼ同圧の空気が存在するいずれかの室で、所定の真空度になるまで真空引き(真空減圧)する必要がある。この真空引きする室は、スパッタ成膜を行うスパッタ室である場合もあるし、スパッタ室と開閉ゲート(ゲートバルブ)を介して連結されている室であり、透光性基板を導入して真空引きするロードロック室である場合もある。さらに、透光性基板を搬送するための搬送装置(搬送ロボット等)が設置された搬送室(トランスファー室)を中心に、複数のスパッタ室やロードロック室がゲートバルブを介して連結しているマルチチャンバー型(クラスター型)スパッタ装置の場合においては、搬送室で真空引きする場合もある。
【0012】
これらのような透光性基板が置かれた室で大気の存在する状態から真空引きする際、その室内の内圧は急低下する。このとき、大気中の水分や二酸化炭素のような比較的凝固点の高い分子が凝固し、氷やドライアイスとして基板表面(或いはすでに前工程で成膜された膜の表面)に付着する。付着した氷やドライアイスは、低圧下で凝固したものであるため粒径も非常に小さく(150nm未満)、ほぼ球状(真球状、楕円球状等)になる。また、過冷却状態で結晶化するため低圧下では蒸発しにくい。このため、スパッタ室で真空引きした場合にはもちろん、前記のロードロック室や搬送室で真空引きした後の基板をスパッタ室まで真空中を搬送して設置した場合においても、基板表面に付着して残存したままになる。この状態で、スパッタ成膜を行うと、基板上に付着した氷やドライアイスなどがそのまま堆積するパターン形成用薄膜の材料に取り込まれ、周囲よりも酸素を多く含有する凸状欠陥(凸状の高酸化物欠陥)となった可能性が高いものと考えられる。このため、その高酸化欠陥の形状は、ほぼ球状(真球状、楕円球状等)のものが多くなっていると考えられる。また、この凸状欠陥のうち、氷やドライアイスが解けきれない状態で薄膜が形成されてしまったものは、透光性基板を再度大気圧下に戻したときに蒸発して空洞になってしまうか、もしくは酸化度が高いためにマスクプロセスの一部の工程にて溶解してしまって空洞化し、その空洞部分が崩れて、その側壁が周囲よりも酸素を多く含有する凹状欠陥(凹状の高酸化物欠陥)になった可能性が高いと考えられる。
【0013】
本発明者は、以上の解明事実、考察に基づいて更に鋭意研究した結果、本発明を完成したものである。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板上に、金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜を備えるマスクブランクにおいて、前記パターン形成用薄膜は、膜中のその周囲よりも多く酸素を含有する60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥の存在個数が10個以下であることを特徴とするマスクブランク。
【0014】
(構成2)
前記高酸化物欠陥は、前記パターン形成用薄膜中の前記透光性基板との界面近傍、または前記パターン形成用薄膜中のその下面に接する他の薄膜との界面近傍に存在する欠陥であることを特徴とする構成1に記載のマスクブランク。
(構成3)
前記高酸化物欠陥は、ほぼ球状の欠陥であることを特徴とする構成1又は2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記パターン形成用薄膜は、遷移金属とケイ素に、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する化合物を主成分とする材料からなることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【0015】
(構成5)
前記パターン形成用薄膜は、ハーフトーン型位相シフト膜であることを特徴とする構成4に記載のマスクブランク。
(構成6)
前記パターン形成用薄膜は、前記透光性基板側から、遷移金属とケイ素を含有する材料からなる遮光層と、遷移金属とケイ素に、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する化合物を主成分とする材料からなる表面反射防止層が順に積層されてなる遮光膜であり、該遮光膜の光学濃度が2.5以上であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【0016】
(構成7)
前記パターン形成用薄膜は、クロムまたはタンタルに、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する化合物を主成分とする材料からなることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成8)
透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、前記透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなる単層または複数層のパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、
透光性基板が設置された前記スパッタ装置のスパッタ室内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する工程、
前記スパッタ室内から置換した気体を排気して真空減圧する工程、
前記スパッタ室内で、透光性基板上に前記単層のパターン形成用薄膜または前記複数層のパターン形成用薄膜のうち少なくとも一層をスパッタリング法によって成膜する工程
をこの順に行うことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0017】
(構成9)
透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、前記透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなる単層または複数層のパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、
透光性基板が設置された前記スパッタ装置の減圧室内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する工程、
前記減圧室内から置換した気体を排気して真空減圧する工程、
前記減圧室から透光性基板を取り出して真空中を搬送し、真空減圧されたスパッタ室に設置する工程、
前記スパッタ室内で、透光性基板上に前記単層のパターン形成用薄膜または前記複数層のパターン形成用薄膜のうち少なくとも一層をスパッタリング法によって成膜する工程
をこの順に行うことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成10)
前記水分および二酸化炭素を含有しない気体は、希ガス、水素ガス、窒素ガス、フッ素ガスおよび塩素ガスのうちいずれかの気体あるいはこれらから選ばれる2以上の気体の混合気体であることを特徴とする構成8又は9に記載のマスクブランクの製造方法。
【0018】
(構成11)
透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、前記透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなる単層または複数層のパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、
加熱状態の透光性基板が設置された前記スパッタ装置のスパッタ室内の気体を排気して真空減圧する工程、
前記スパッタ室内で、透光性基板上に前記単層のパターン形成用薄膜または前記複数層のパターン形成用薄膜のうち少なくとも一層をスパッタリング法によって成膜する工程
をこの順に行うことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0019】
(構成12)
透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、前記透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなる単層または複数層のパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、
加熱状態の透光性基板が設置された前記スパッタ装置の減圧室内の気体を排気して真空減圧する工程、
前記減圧室から透光性基板を取り出して真空中を搬送し、真空減圧されたスパッタ室に設置する工程、
前記スパッタ室内で、透光性基板上に前記単層のパターン形成用薄膜または前記複数層のパターン形成用薄膜のうち少なくとも一層をスパッタリング法によって成膜する工程
をこの順に行うことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高酸化物欠陥の発生要因と考えられる、真空減圧時に基板表面等に付着する氷やドライアイスをスパッタ成膜前に蒸発させたり、あるいはこのような氷やドライアイスの発生自体を抑制することにより、微小な高酸化物欠陥の発生を低減させることができ、もって高いレベルの欠陥品質要求を満足できる高品質のマスクブランク及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るマスクブランクの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係るスパッタ装置の概略構成図である。
【図3】第2の実施の形態に係るスパッタ装置の一形態の概略構成図である。
【図4】第2の実施の形態に係るスパッタ装置の別の形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
本発明は、ガラス基板等の透光性基板上に、金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜を備えるマスクブランクにおいて、前記パターン形成用薄膜は、膜中のその周囲よりも多く酸素を含有する60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥の存在個数が10個以下であることを特徴とするマスクブランクである。
【0023】
本発明のマスクブランクは、図1に示すように、ガラス基板等の透光性基板1上に、金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜2を備えるマスクブランク10である。
上記パターン形成用薄膜2は、例えば位相シフト膜や遮光膜などであるが、詳しくは後述する。
【0024】
本発明に係るマスクブランクは、パターン形成用薄膜中の60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥の存在個数が10個以下である。
本発明が特に低減することを目的としている欠陥は、スパッタ装置内に透光性基板を導入後の真空引き時に発生する氷やドライアイスのような酸素を含有するパーティクルが核となる高酸化物欠陥であり、従来広く使用されている150nm感度の欠陥検査装置では検出できず、それよりも高感度の欠陥検査装置(140nm感度、100nm感度等の欠陥検査装置等)で検出される大きさ(150nm未満、140nm以下、100nm以下等)である。その上で、ArF露光光による露光転写に用いられる転写用マスクであり、DRAM hp80nm世代以降の転写用マスクを作製するためのマスクブランクに適用可能とするには、少なくとも60nm以上の高酸化物欠陥について、最大の存在個数を保証する必要がある。このような微細な大きさの高酸化物欠陥がパターン形成用薄膜に存在することが許容される最大の存在個数は、パターン形成用薄膜における転写パターン領域内(転写用マスクを作製するときに転写パターンが形成される領域、例えばマスクブランクの中心を基準に132mm角内の領域)で10個以下である。高酸化物欠陥の存在個数が10個までであれば、転写パターンの配置の位置調整や欠陥修正で対応することが可能な範囲である。
【0025】
また、DRAM hp65nm世代以降の転写用マスクを作製するためのマスクブランクに適用可能とするには、50nm以上の高酸化物欠陥の転写パターン領域内における存在個数を10個以下に保証することが望ましい。DRAM hp50nm世代以降の転写用マスクを作製するためのマスクブランクに適用可能とするには、40nm以上の高酸化物欠陥の転写パターン領域内における存在個数を10個以下に保証することが望ましい。DRAM hp40nm世代以降の転写用マスクを作製するためのマスクブランクに適用可能とするには、30nm以上の高酸化物欠陥の転写パターン領域内における存在個数を10個以下に保証することが望ましい。DRAM hp32nm世代以降の転写用マスクを作製するためのマスクブランクに適用可能とするには、25nm以上の高酸化物欠陥の転写パターン領域内における存在個数を10個以下に保証することが望ましい。DRAM hp25nm世代以降の転写用マスクを作製するためのマスクブランクに適用可能とするには、20nm以上の高酸化物欠陥の転写パターン領域内における存在個数を10個以下に保証することが望ましい。DRAM hp20nm世代以降の転写用マスクを作製するためのマスクブランクに適用可能とするには、15nm以上の高酸化物欠陥の転写パターン領域内における存在個数を10個以下に保証することが望ましい。
【0026】
なお、これらの各世代に対応可能なマスクブランクに対し、より高い精度が要求される場合においては、高酸化物欠陥の存在個数を8個以下とすることが好ましく、より好ましくは5個以下とするとよい。また、パターン形成用薄膜の高酸化物欠陥の存在個数を保証する領域については、マスクブランクの中心を基準に142mm角内としてもよく、この場合、転写用マスクのブラインドエリアについて遮光性能を確実に保証できる。さらに、本発明では、150nm未満の高酸化物欠陥について、その存在個数を保証しているが、その保証範囲を、例えば、150nm以下、200nm以下等に広げてもよい。
【0027】
なお、ここでいう、150nm感度の欠陥検査装置とは、透光性基板上に粒子径150nmのポリスチレンラテックス(PSL)粒子(PSL粒子は、その粒子同士が1mm以内で近接し合う確率は1%以下となるような特性を有している。)をばらまいた試験体に対する欠陥検査を行っても、そのPSL粒子を検出できる欠陥検査装置のことをいう。
【0028】
マスクブランクに対して、欠陥検査装置で検出された凸状欠陥や凹状欠陥が高酸化物欠陥であるかどうかを確認する方法としては、後述の実施例にも記載したように、例えば断面TEM観察やEDX分析による方法が挙げられる。
【0029】
本発明は、以上のようなパターン形成用薄膜中の高酸化物欠陥数を低減させたマスクブランクを得るのに好適なマスクブランクの製造方法についても提供する。
[第1の実施の形態]
本発明に係るマスクブランクの製造方法の第1の実施の形態は、透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、透光性基板が設置されたスパッタ装置のスパッタ室内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する工程、スパッタ室内から置換した気体を排気して真空減圧する工程、スパッタ室内で、透光性基板上に前記パターン形成用薄膜をスパッタリング法によって成膜する工程をこの順に行うものである。
【0030】
図2は、第1の実施の形態を適用するスパッタ装置の概略構成図である。
図2に示すスパッタ装置20は、スパッタ室(成膜室)21、搬送装置(搬送ロボット)22を備えており、このスパッタ装置20は、大気中にある透光性基板1をスパッタ室21に直接搬入する構成である。このような構成のスパッタ装置20の場合、まず、大気(クリーンルーム室内の空気)中に置かれている透光性基板1を搬送装置22によって、開閉ゲート(ゲートバルブ)23が開かれて室内が大気開放されているスパッタ室21内に搬入し、開閉ゲート23を閉じる。そして、スパッタ室21内の気体(クリーンルーム室内の空気とほぼ同じであり、水分や二酸化炭素を含んだ空気)を排気しつつ、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体(置換ガス)を導入して、スパッタ室21内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する。置換後、スパッタ室21内の気体を排気する真空減圧を行い、スパッタ室21内を所定の真空度にする。最後に、スパッタ室21内にスパッタガスを導入し、所定ガス圧になったところで放電を開始して、スパッタリング法によって、透光性基板1上にパターン形成用薄膜2を形成する。
なお、パターン形成用薄膜2が複数層からなるものであり、同じスパッタターゲットで形成可能であれば、1層目を形成後、透光性基板1をそのままスパッタ室21に置いたまま、大気開放せずにスパッタガスを入れ替えて2層目以降を形成しても、膜中の高酸化物欠陥は抑制できる。
【0031】
以上のように、透光性基板1の搬入・設置後に、スパッタ室21内から空気等の水分や二酸化炭素を含んだ気体を排出し、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換してから、スパッタ室21内を所定の真空度にするための真空減圧を行う。これにより、真空減圧時にスパッタ室21内の内圧が低下しても、スパッタ室21内は、常温で気体であるが凝固点の比較的高い水や二酸化炭素を含まない気体や、水をほとんど含まないドライエアに置換されているため、氷、ドライアイス等の凝固物質の発生を抑制することができ、透光性基板1の表面、あるいは透光性基板1上に既に別の薄膜が形成されている場合は、その別の薄膜の表面に凝固物質が付着することを従来よりも確実に抑制できる。よって、この真空減圧後にスパッタ法でパターン形成用薄膜2を成膜しても、凝固物質に起因して生じる高酸化物欠陥の発生を許容範囲内(60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥が転写パターン領域内で10個以下)に確実に抑制できる。
【0032】
なお、水分および二酸化炭素を含有しない気体としては、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)、水素ガス、窒素ガス、フッ素ガス、および塩素ガスのうちいずれかの気体あるいはこれらから選ばれる2以上の気体の混合気体が好ましい。
スパッタ室21内へ前記の置換ガスを導入する手段としては、置換ガスを供給する配管を、スパッタ室21内にスパッタガスを供給する配管やスパッタ室21内の内圧を大気圧に戻すときに使用する気体を供給する配管に分岐継ぎ手を介して接続した構成とすることや、直接スパッタ室21に接続する構成等が適用できる。
【0033】
[第2の実施の形態]
本発明に係るマスクブランクの製造方法の第2の実施の形態は、透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、透光性基板が設置されたスパッタ装置の減圧室内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する工程、減圧室内から置換した気体を排気して真空減圧する工程、減圧室から透光性基板を取り出して真空中を搬送し、真空減圧されたスパッタ室に設置する工程、スパッタ室内で、透光性基板上にパターン形成用薄膜をスパッタリング法によって成膜する工程をこの順に行うものである。
【0034】
図3は、第2の実施の形態を適用するスパッタ装置の一形態の概略構成図である。
図3に示すスパッタ装置30は、スパッタ室(成膜室)31、開閉ゲート33を介して連結する減圧室(ロードロック室)34を備え、さらに減圧室34内に搬送装置(搬送ロボット)32が設置されている。このスパッタ装置30は、大気中にある透光性基板1を搬送装置32で減圧室34内に搬入し、透光性基板1が設置された減圧室34内で真空減圧を行うものであり、スパッタ室31は、メンテナンスのような場合を除き、通常時は室内を大気開放とはしない構成となっている。
【0035】
このような構成のスパッタ装置30の場合は、まず、大気(クリーンルーム室内の空気)中に置かれている透光性基板1を搬送装置32またはスパッタ装置30の外に置かれている搬送装置(図示せず)によって、開閉ゲート(ゲートバルブ)35が開かれて室内が大気開放されている減圧室34内に搬入し、開閉ゲート35を閉じる。そして、減圧室34内の気体(クリーンルーム室内の空気とほぼ同じであり、水分や二酸化炭素を含んだ空気)を排気しつつ、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体(置換ガス)を導入して、減圧室34内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する。置換後、減圧室34内の気体を排気する真空減圧を行い、減圧室34内を所定の真空度にする。次に、これまで閉じていた開閉ゲート33を開き、搬送装置32で透光性基板1を減圧室34から取り出し、所定の真空度に真空減圧されているスパッタ室31内に搬入・設置し、開閉ゲート33を再度閉じる。最後に、スパッタ室31内にスパッタガスを導入し、所定ガス圧になったところで放電を開始して、スパッタリング法によって、透光性基板1上にパターン形成用薄膜2を形成する。
なお、パターン形成用薄膜2が複数層からなるものであり、同じスパッタターゲットで形成可能であれば、1層目を形成後、透光性基板1をそのままスパッタ室31に置いたまま、大気開放せずにスパッタガスを入れ替えて2層目以降を形成しても、膜中の高酸化物欠陥は抑制できる。
【0036】
以上のように、透光性基板1の搬入・設置後に、減圧室34内から空気等の水分や二酸化炭素を含んだ気体を排出し、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換してから、減圧室34内を所定の真空度にするための真空減圧を行う。これにより、真空減圧時に減圧室34内の内圧が低下しても、減圧室34内は、常温で気体であるが凝固点の比較的高い水や二酸化炭素を含まない気体や、水をほとんど含まないドライエアに置換されているため、氷、ドライアイス等の凝固物質の発生を抑制することができ、透光性基板1の表面、あるいは透光性基板1上に既に別の薄膜が形成されている場合は、その別の薄膜の表面に凝固物質が付着することを従来よりも確実に抑制できる。さらに、その透光性基板1を大気開放することなく、所定の真空度に真空減圧されているスパッタ室31まで搬送・設置することから、スパッタ室31に透光性基板1を設置するまでの間においても凝固物質の付着を抑制できる。よって、スパッタ室31でスパッタ法によりパターン形成用薄膜を成膜しても、氷、ドライアイス等の凝固物質に起因して生じる高酸化物欠陥の発生を許容範囲内(60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥が転写パターン領域内で10個以下)に確実に抑制できる。
【0037】
このスパッタ装置30における第2の実施の形態に係るマスクブランクの製造方法では、スパッタ室31内を通常時は大気開放しない構成であるので、クリーンルーム室内のパーティクルや汚染物質等がスパッタ室31内に入り込むことも抑制できる。
なお、置換ガスに関するその他の事項については、第1の実施の形態と同様である。
このスパッタ装置30においても、透光性基板1が減圧室34に置かれている段階で真空減圧するのではなく、第1の実施の形態と同様に、一度大気圧に戻されたスパッタ室31内に透光性基板1を搬入し、スパッタ室31内を前記の置換ガスに置換してから真空減圧するようにしても、氷、ドライアイス等の凝固物質の発生の抑制や、それに起因して生じるパターン形成用薄膜内の高酸化物欠陥の発生の抑制については、第1の実施の形態と同等の効果は得られる。
減圧室34内へ前記の置換ガスを導入する手段としては、置換ガスを供給する配管を、減圧室34内の内圧を大気圧に戻すときに使用する気体を供給する配管に分岐継ぎ手を介して接続した構成とすることや、直接減圧室34に接続する構成等が適用できる。また、スパッタ室31内へ前記の置換ガスを導入する手段としては、第1の実施の形態と同様である。
【0038】
図4は、第2の実施の形態を適用するスパッタ装置の別の形態の概略構成図である。
図4に示すスパッタ装置40は、マルチチャンバー型(クラスター型)スパッタ装置である。その構成としては、搬送装置(搬送ロボット)42が設置された搬送室(トランスファー室)47を中心に、基板搬入専用および基板搬出専用の各減圧室(ロードロック室)44A,44Bがそれぞれ開閉ゲート(ゲートバルブ)46A,46Bを介して連結されており、さらに、複数のスパッタ室41A,41Bがそれぞれ開閉ゲート(ゲートバルブ)43A,43Bを介して連結されてなる。また、減圧室44Aに透光性基板1を搬入し、減圧室44Bから透光性基板1を搬出するための搬送装置(搬送ロボット)48を備えている。
このスパッタ装置40は、大気中にある透光性基板1を搬送装置48で減圧室44A内に搬入し、透光性基板1が設置された減圧室44A内で真空減圧を行うものであり、スパッタ室41A,42Aや搬送室47は、メンテナンスのような場合を除き、通常時は室内を大気開放とはしない構成となっている。
【0039】
このような構成のスパッタ装置40の場合は、まず、大気(クリーンルーム室内の空気)中に置かれている透光性基板1を搬送装置48によって、開閉ゲート(ゲートバルブ)45Aが開かれて室内が大気開放されている減圧室44A内に搬入し、開閉ゲート45Aを閉じる。そして、減圧室44A内の気体(クリーンルーム室内の空気とほぼ同じであり、水分や二酸化炭素を含んだ空気)を排気しつつ、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体を導入して、減圧室44A内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する。置換後、減圧室44A内の気体を排気する真空減圧を行い、減圧室44A内を所定の真空度にする。
【0040】
次に、これまで閉じていた開閉ゲート43A,46Aを開き、搬送装置42で透光性基板1を減圧室44Aから取り出し、所定の真空度に真空減圧されている搬送室47を経由して、所定の真空度に真空減圧されているスパッタ室41A内に搬入・設置し、開閉ゲート43A,46Aを再度閉じる。その後、スパッタ室41A内にスパッタガスを導入し、所定ガス圧になったところで放電を開始して、スパッタリング法によって、透光性基板1上にパターン形成用薄膜2を形成する。
パターン形成用薄膜2が複数層からなるものであり、同じスパッタターゲットで成膜可能な場合は、1層目を形成後、透光性基板1をそのままスパッタ室41Aに置いたまま、大気開放せずにスパッタガスを入れ替えて2層目以降を形成する。
【0041】
また、パターン形成用薄膜2が複数層であり、2層目以降を異なるスパッタターゲットで成膜する必要がある場合には、スパッタ室41Bでスパッタ成膜する。この場合、スパッタ室41Aの室内を所定の真空度に真空減圧した後、開閉ゲート43A,43Bを開き、搬送装置42で透光性基板1をスパッタ室41Aから取り出し、搬送室47を経由し、所定の真空度に真空減圧されているスパッタ室41Bに搬入・設置し、開閉ゲート43A,43Bを再度閉じる。その後、スパッタ室41B内にスパッタガスを導入し、所定ガス圧になったところで放電を開始して、スパッタリング法によって、パターン形成用薄膜の2層目以降を形成する。
【0042】
そして、スパッタ装置40で成膜すべきパターン形成用薄膜2の層を全て成膜し終えたら、所定の真空度に真空減圧されている減圧室44Bの開閉ゲート46Bと、その時点で透光性基板1が設置されているスパッタ室41A(41B)の開閉ゲート43A(43B)を開き、搬送装置42によって、透光性基板1をスパッタ室41A(41B)から取り出し、搬送室47を経由し、減圧室44Bに搬入・設置し、開閉ゲート43A(43B),46Bを再度閉じる。最後に、減圧室44B内を大気開放し、開閉ゲート45Bを開き、搬送装置48により、透光性基板1を減圧室44Bから取り出す。
【0043】
以上のように、透光性基板1の搬入・設置後に、減圧室44A内から空気等の水分や二酸化炭素を含んだ気体を排出し、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換してから、減圧室44A内を所定の真空度にするための真空減圧を行う。これにより、真空減圧時に減圧室44A内の内圧が低下しても、減圧室44A内は、常温で気体であるが凝固点の比較的高い水や二酸化炭素を含まない気体や、水をほとんど含まないドライエアに置換されているため、氷、ドライアイス等の凝固物質の発生を抑制することができ、透光性基板1の表面、あるいは透光性基板1上に既に別の薄膜が形成されている場合は、その別の薄膜の表面に凝固物質が付着することを従来よりも確実に抑制できる。さらに、その透光性基板1を大気開放することなく、所定の真空度に真空減圧されている搬送室47を経由し(真空中を搬送し)、所定の真空度に真空減圧されているスパッタ室41A(41B)まで搬送・設置することから、スパッタ室41A(41B)に透光性基板1を設置するまでの間においても凝固物質の付着を抑制できる。よって、スパッタ室41A(41B)でスパッタ法によりパターン形成用薄膜を成膜しても、氷、ドライアイス等の凝固物質に起因して生じる高酸化物欠陥の発生を許容範囲内(60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥が転写パターン領域内で10個以下)に確実に抑制できる。
【0044】
このスパッタ装置40における第2の実施の形態に係るマスクブランクの製造方法では、スパッタ室41A,41B内や、透光性基板1の搬送経路である搬送室47内を通常時は大気開放しない構成であるので、クリーンルーム室内のパーティクルや汚染物質等がスパッタ室41A,41B内および搬送室47内に入り込むことも抑制できる。
なお、置換ガスに関するその他の事項については、第1の実施の形態と同様である。
このスパッタ装置40において、透光性基板1が減圧室44Aに置かれている段階で真空減圧するのではなく、搬送室47を減圧室として兼用する形態、すなわち、一度大気圧に戻された搬送室47にある段階で、搬送室47内を前記の置換ガスに置換してから真空減圧してもよい。この場合、氷、ドライアイス等の凝固物質の発生の抑制や、それに起因して生じるパターン形成用薄膜内の高酸化物欠陥の発生の抑制については、第1の実施の形態と同等の効果は得られる。
【0045】
また、このスパッタ装置40においても、透光性基板1が減圧室44Aに置かれている段階で真空減圧するのではなく、第1の実施の形態と同様に、一度大気圧に戻されたスパッタ室41A(41B)に置かれた段階で、スパッタ室41A(41B)内を前記の置換ガスに置換してから真空減圧しても、氷、ドライアイス等の凝固物質の発生の抑制や、それに起因して生じるパターン形成用薄膜内の高酸化物欠陥の発生の抑制については、第1の実施の形態1と同等の効果は得られる。
減圧室44A内や搬送室47内へ前記の置換ガスを導入する手段としては、置換ガスを供給する配管を、減圧室44A内や搬送室47内の内圧を大気圧に戻すときに使用する気体を供給する配管に分岐継ぎ手を介して接続した構成とすることや、直接減圧室44Aや搬送室47内に接続する構成等が適用できる。スパッタ室41A,41B内へ前記の置換ガスを導入する手段としては、第1の実施の形態の場合と同様である。
【0046】
以上の第1の実施の形態や第2の実施の形態で示された構成において、透光性基板が設置され、大気開放状態である室内を真空減圧するスパッタ室、減圧室、搬送室で、真空減圧前に室内の気体を置換するガスを列挙したが、パターン形成用薄膜に生じる高酸化物欠陥の発生個数をより削減する(例えば5個以下とする)には、真空減圧する室内の水や二酸化炭素をより確実に排除することが望まれる。この点を考慮した場合、置換する気体としては、水分および二酸化炭素を含有しない気体のみとすることが望ましい。
さらに、使用ガス自体のコスト的な観点を考慮すると、水素ガス、窒素ガスが望ましく、ガス管理の容易性を考慮すると、窒素ガスが最適である。
【0047】
[第3の実施の形態]
本発明に係るマスクブランクの製造方法の第3の実施の形態は、透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、加熱状態の透光性基板が設置されたスパッタ装置のスパッタ室内の気体を排気して真空減圧する工程、スパッタ室内で、透光性基板上にパターン形成用薄膜をスパッタリング法によって成膜する工程をこの順に行うものである。
【0048】
ここでも前述の図2に示すスパッタ装置20を用いて説明すると、この第3の実施の形態を適用するスパッタ装置の一態様では、スパッタ室21内に透光性基板1を加熱するための加熱装置が設けられたスパッタ装置の構成となっている。この場合のスパッタ装置20は、大気中にある透光性基板1を搬送装置22でスパッタ室21内に搬入・設置し、開閉ゲート23を閉じ、加熱装置を作動させて透光性基板1のパターン形成用薄膜2を成膜する側の最表面(透光性基板1の上に別の薄膜が存在しない場合では、透光性基板1のパターン形成用薄膜2を成膜する側の基板主表面であり、透光性基板1の上に別の薄膜が既に存在する場合では、その別の薄膜の透光性基板1側とは反対側の表面、以下同様。)が所定温度以上になるまで加熱する。ここでの所定温度とは、スパッタ室21内の真空減圧を行って所定の真空度に達するまでの間に生じる室内の気体中の水分や二酸化炭素が凝固した氷やドライアイスのような凝固物質が、透光性基板の最表面に付着したときに蒸発するような温度である。そして、スパッタ室21内の気体を排気する真空減圧を行い、所定の真空度にする。最後に、スパッタ室21内にスパッタガスを導入し、所定ガス圧になったところで放電を開始して、スパッタリング法により、透光性基板1上にパターン形成用薄膜2を形成する。
【0049】
以上のように、スパッタ室21内の真空減圧を行う際、透光性基板1の最表面を、氷やドライアイスのような凝固物質が蒸発するような温度にしていることから、スパッタ室21内が所定の真空度に達して真空減圧を終了した後に、透光性基板1の最表面への凝固物質の付着を従来よりも確実に抑制できる。よって、この真空減圧後にスパッタ法でパターン形成用薄膜2を成膜しても、凝固物質に起因して生じる高酸化物欠陥の発生を許容範囲内(60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥が転写パターン領域内で10個以下)に確実に抑制できる。
【0050】
透光性基板1の最表面を所定温度にするための加熱装置としては、セラミックヒーターに代表される電熱線ヒーター、ヒートポンプ等を用いた熱媒循環型ヒーター等を用いた加熱処理が挙げられる。これらの構成の場合は、透光性基板1を設置する成膜台の内部に配置することができる。その他にも、透光性基板1の最表面に対し、例えばフラッシュランプ、紫外光、電磁波等を照射する方法を適用してもよい。
開閉ゲート23を閉じるタイミングについては、遅くともスパッタ室21内の真空減圧の開始前には行う必要がある。クリーンルームからのパーティクルのスパッタ室21内への流入を低減するには、透光性基板1を搬入・設置後、すぐに開閉ゲート23を閉じることが望ましい。
【0051】
加熱装置を作動させるタイミングは、スパッタ室21内でスパッタ成膜の放電を始めるまでに透光性基板1の最表面に高酸化物欠陥の発生要因となる凝固物質を蒸発させ、少なくとも所定量以下(転写パターン領域内で10個以下)にすることができるのであれば、どの段階であってもよい。望ましくは、スパッタ室21内に凝固物質が蒸発した気体を確実に排除できるように、真空引きが行われるスパッタ室21内を所定の真空度に減圧する工程が完了する前までには、加熱装置を作動させたほうがよい。スパッタ室21内の真空引き中により確実に透光性基板1の最表面が所定温度以上になるようにするには、真空引きを始める前には、加熱装置を作動させると好適である。
【0052】
なお、上記第3の実施の形態を適用するスパッタ装置の一態様では、スパッタ室21内に加熱装置を設けて、透光性基板1をスパッタ室21内で加熱する構成であるが、スパッタ室21の外にある加熱装置で最表面が所定温度以上になるように透光性基板1を予め加熱してから、搬送装置22でスパッタ室21内に搬入・設置する構成であってもよい。
【0053】
[第4の実施の形態]
本発明に係るマスクブランクの製造方法の第4の実施の形態は、透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、加熱状態の透光性基板が設置されたスパッタ装置の減圧室内の気体を排気して真空減圧する工程、減圧室から透光性基板を取り出して真空中を搬送し、真空減圧されたスパッタ室に設置する工程、スパッタ室内で、透光性基板上に前記パターン形成用薄膜をスパッタリング法によって成膜する工程をこの順に行うものである。
【0054】
ここでも前述の図3に示すスパッタ装置30を用いて説明すると、この第4の実施の形態を適用するスパッタ装置の一態様では、減圧室(ロードロック室)34内に透光性基板1を加熱するための加熱装置が設けられたスパッタ装置の構成となっている。この場合のスパッタ装置30は、大気中にある透光性基板1を搬送装置32で減圧室34内に搬入・設置し、開閉ゲート35を閉じ、加熱装置を作動させて透光性基板1のパターン形成用薄膜2を成膜する側の最表面が第3の実施の形態と同様の所定温度以上になるまで加熱する。そして、減圧室34内の気体を排気する真空減圧を行い、所定の真空度にする。その後の工程は、前記第2の実施の形態を適用するスパッタ装置30の場合と同様である。
【0055】
以上のように、減圧室34内の真空減圧を行う際、透光性基板1の最表面を、氷やドライアイスのような凝固物質が蒸発するような温度にしていることから、減圧室34内が所定の真空度に達して真空減圧を終了した後に、透光性基板1の最表面への凝固物質の付着を従来よりも確実に抑制できる。さらに、その透光性基板1を大気開放することなく、所定の真空度に真空減圧されているスパッタ室31まで搬送・設置することから、スパッタ室31に透光性基板1を設置するまでの間においても凝固物質の付着を抑制できる。よって、スパッタ室31でスパッタ法によりパターン形成用薄膜2を成膜しても、氷、ドライアイス等の凝固物質に起因して生じる高酸化物欠陥の発生を許容範囲内(60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥が転写パターン領域内で10個以下)に確実に抑制できる。
【0056】
透光性基板1の最表面を所定温度にするための加熱装置としては、前記第3の実施の形態を適用するスパッタ装置の一形態の場合と同様である。
加熱装置を作動させるタイミングは、減圧室34内での所定の真空度になるまでの真空減圧(真空引き)が終わるまでに、透光性基板1の最表面に高酸化物欠陥の発生要因となる凝固物質を蒸発させ、少なくとも所定量以下(転写パターン領域内で10個以下)にすることができるのであれば、どの段階であってもよい。減圧室34内の真空引き中により確実に透光性基板1の最表面が所定温度以上になるようにするには、真空引きを始める前には、加熱装置を作動させると好適である。
【0057】
なお、上記第4の実施の形態を適用するスパッタ装置の一態様では、減圧室34内に加熱装置を設けて、透光性基板1を減圧室34内で加熱する構成であるが、スパッタ室の外にある加熱装置で最表面が所定温度以上になるように透光性基板1を予め加熱してから、搬送装置32で減圧室34内に搬入・設置する構成であってもよい。
このスパッタ装置30における第4の実施の形態に係るマスクブランクの製造方法では、スパッタ室31内を通常時は大気開放しない構成であるので、クリーンルーム室内のパーティクルや汚染物質等がスパッタ室31内に入り込むことも抑制できる。
【0058】
なお、このスパッタ装置30においても、透光性基板1が減圧室34に置かれている段階で真空減圧するのではなく、第3の実施の形態と同様に、最表面が所定温度以上になるように加熱されている透光性基板1がスパッタ室31に置かれた段階で真空減圧しても、氷、ドライアイス等の凝固物質の発生の抑制や、それに起因して生じるパターン形成用薄膜内の高酸化物欠陥の発生の抑制については、第3の実施の形態と同等の効果は得られる。
【0059】
第4の実施の形態を適用するスパッタ装置の別の態様について、前述の図4に示すマルチチャンバー型スパッタ装置40を用いて説明する。
この第4の実施の形態を適用するスパッタ装置40においても、同じく第4の実施の形態を適用するスパッタ装置30の場合と同様、減圧室(ロードロック室)44A内に透光性基板1を加熱するための加熱装置が設けられたスパッタ装置の構成となっている。この場合のスパッタ装置40は、大気中にある透光性基板1を搬送装置48で減圧室44A内に搬入・設置し、開閉ゲート45Aを閉じ、加熱装置を作動させて透光性基板1のパターン形成用薄膜2を成膜する側の最表面が第3の実施の形態と同様の所定温度以上になるまで加熱する。そして、減圧室44A内の気体を排気する真空減圧を行い、所定の真空度にする。その後の工程は、前記第2の実施の形態を適用するスパッタ装置40の場合と同様である。
【0060】
以上のように、減圧室44A内の真空減圧を行う際、透光性基板1の最表面を、氷やドライアイスのような凝固物質が蒸発するような温度にしていることから、減圧室44A内が所定の真空度に達して真空減圧を終了した後に、透光性基板1の最表面への凝固物質の付着を従来よりも確実に抑制できる。さらに、その透光性基板1を大気開放することなく、所定の真空度に真空減圧されている搬送室47を経由し(真空中を搬送し)、所定の真空度に真空減圧されているスパッタ室41A(41B)まで搬送・設置することから、スパッタ室41A(41B)に透光性基板1を設置するまでの間においても凝固物質の付着を抑制できる。よって、スパッタ室41A(41B)でスパッタ法によりパターン形成用薄膜2を成膜しても、氷、ドライアイス等の凝固物質に起因して生じる高酸化物欠陥の発生を許容範囲内(60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥が転写パターン領域内で10個以下)に確実に抑制できる。
【0061】
透光性基板1の最表面を所定温度にするための加熱装置としては、前記第4の実施の形態を適用するスパッタ装置30の場合と同様である。
加熱装置を作動させるタイミングは、減圧室44A内での所定の真空度になるまでの真空減圧(真空引き)が終わるまでに、透光性基板1の最表面に高酸化物欠陥の発生要因となる凝固物質を蒸発させ、少なくとも所定量以下(転写パターン領域内で10個以下)にすることができるのであれば、どの段階であってもよい。減圧室44A内の真空引き中により確実に透光性基板1の最表面が所定温度以上になるようにするには、真空引きを始める前には、加熱装置を作動させると好適である。
【0062】
なお、上記第4の実施の形態を適用するスパッタ装置40では、減圧室44A内に加熱装置を設けて、透光性基板1を減圧室44A内で加熱する構成であるが、スパッタ室の外にある加熱装置で最表面が所定温度以上になるように透光性基板1を予め加熱してから、搬送装置48で減圧室44A内に搬入・設置する構成であってもよい。
このスパッタ装置40における第4の実施の形態に係るマスクブランクの製造方法では、スパッタ室41A,41B内や、透光性基板1の搬送経路である搬送室47内を通常時は大気開放しない構成であるので、クリーンルーム室内のパーティクルや汚染物質等がスパッタ室41A,41B内および搬送室47内に入り込むことも抑制できる。
【0063】
なお、このスパッタ装置40においても、透光性基板1が減圧室44Aに置かれている段階で真空減圧するのではなく、第3の実施の形態と同様に、最表面が所定温度以上になるように加熱されている透光性基板1がスパッタ室41A(41B)に置かれた段階や搬送室47にある段階で真空減圧しても、氷、ドライアイス等の凝固物質の発生の抑制や、それに起因して生じるパターン形成用薄膜内の高酸化物欠陥の発生の抑制については、第3の実施の形態と同等の効果は得られる。
【0064】
本発明は、微細パターンの形成に有利である、とくにArFエキシマレーザー露光光等の波長200nm以下の短波長の露光光を露光光源とする露光装置に用いられる転写用マスクを製造するためのマスクブランクの製造に好適である。
本発明によるマスクブランクは、前述のように、透光性基板上に、金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜を備えるマスクブランクである。
【0065】
前記パターン形成用薄膜としては、たとえば遷移金属とケイ素に、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する化合物を主成分とする材料からなるハーフトーン型位相シフト膜が挙げられる。
例えば、前記パターン形成用薄膜が遷移金属シリサイド(特にモリブデンシリサイド)の化合物を含む材料からなる位相シフト膜である位相シフトマスクブランクが挙げられる。
【0066】
本発明により得られる上記位相シフトマスクブランクは、微小凸状欠陥の発生率を大幅に低減させることができ、とくに膜中の60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥の存在個数が10個以下と非常に少ないため、これを用いて位相シフトマスクとしたときに、位相欠陥の発生を抑えることができる。
【0067】
かかる位相シフトマスクブランクとしては、例えば、透光性基板上に、ハーフトーン型位相シフト膜とその上の遮光膜を有する形態のものが挙げられる。
上記位相シフト膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜20%)を透過させるものであって、所定の位相差(例えば180度)を有するものであり、この位相シフト膜をパターニングした光半透過部と、位相シフト膜が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0068】
ハーフトーン型位相シフト膜の透過率や位相シフト量は、膜中の組成が変わることでも変化してしまう。特に膜中の酸素含有量が増えると、膜の屈折率n、消衰係数kがともに低下してしまう。特にハーフトーン型位相シフト膜の場合においては、高酸化物欠陥部分では、局所的に透過率が上昇し、位相シフト量が低下してしまうため、大きな問題となる欠陥である。よって、ハーフトーン型位相シフト膜の高酸化物欠陥を10個以下に低減できることは、非常に重要である。
【0069】
この位相シフト膜は、好ましくは遷移金属シリサイドの化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属シリサイドと、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、クロム、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム等が適用可能である。位相シフト膜には、さらに炭素やホウ素を含有させてもよい。また、位相シフト膜は、単層でも複数層であっても構わない。また、主にエンハンサマスクを作製するために使用されるマスクブランクの透光性基板上に形成されるパターン形成用薄膜であり、ハーフトーン型位相シフト膜と同様に露光光を所定の透過率で透過させるが、薄膜を透過した光と光透過部と透過した光との間で位相シフト効果が生じないような特性を有する光半透過膜がある。この光半透過膜についても、高酸化物欠陥部分では局所的な透過率の上昇や位相シフト量が変わるため、大きな問題となる。よって、光半透過膜の高酸化物欠陥を10個以下に低減できることも、非常に重要である。
【0070】
また、本発明において、前記パターン形成用薄膜は、遷移金属シリサイド(特にモリブデンシリサイド)の化合物を含む材料からなる遮光膜であってもよい。例えば、前記パターン形成用薄膜が、透光性基板側から、遷移金属とケイ素を含有する材料からなる遮光層と、遷移金属とケイ素に、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する化合物を主成分とする材料からなる表面反射防止層が順に積層されてなる遮光膜であるバイナリマスクブランクが好ましく挙げられる。該遮光膜の光学濃度は2.5以上であることが望ましい。
【0071】
本発明により得られる上記バイナリマスクブランクは、微小凸状欠陥の発生率を大幅に低減させることができ、とくに膜中の60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥の存在個数が10個以下と非常に少ないため、これを用いてDRAM hp80nm世代の微細な転写パターンのバイナリ型転写用マスクを作製する場合であっても、転写パターンの配置や欠陥修正によって、高精度に作製することが十分に可能となる。また、特に高酸化物欠陥部分は、局所的に透過率が上昇してしまうため、その部分で遮光膜に求められる光学濃度(2.5以上)を満たさなくなるので、高酸化物欠陥を10個以下に低減できることは重要である。
【0072】
かかるバイナリ型マスクブランクは、透光性基板上に遮光膜を有する形態のものであり、この遮光膜は、遷移金属シリサイド化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属シリサイドと、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、クロム、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム等が適用可能である。
特に、遮光膜をモリブデンシリサイドの化合物で形成する場合であって、遮光層(MoSi,MoSiN,MoSiCN等)と表面反射防止層(MoSiN,MoSiO,MoSiON,MoSiCN,MoSiCO,MoSiOCN等)の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層(MoSiN,MoSiO,MoSiON,MoSiCN,MoSiCO,MoSiOCN等)を加えた3層構造とすることが好適である。
【0073】
また、本発明は、前記パターン形成用薄膜がクロムやタンタルに、さらに酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を願乳する化合物を主成分とする材料からなる遮光膜(パターン形成用薄膜)であるバイナリ型マスクブランクであってもよい。
本発明により得られる上記遮光膜がクロム系あるいはタンタル系のバイナリ型マスクブランクにおいても、微小凸状欠陥の発生率を大幅に低減させることができ、とくに膜中の60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥の存在個数が10個以下と非常に少ないため、これを用いてDRAM hp80nm世代の微細な転写パターンのバイナリ型転写用マスクを作製する場合であっても、転写パターンの配置や欠陥修正によって、高精度に作製することが十分に可能となる。また、特に高酸化物欠陥部分は、局所的に透過率が上昇してしまうため、その部分で遮光膜に求められる光学濃度(2.5以上)を満たさなくなるので、高酸化物欠陥を10個以下に低減できることは重要である。
【0074】
上記のクロム系遮光膜において、クロムのほかに含有させる材料としては、前記酸素や窒素のほかには、炭素、ホウ素、フッ素、ヘリウムなどが挙げられる。また、このクロム系遮光膜は、単層でも複数層(例えば、遮光層と表面反射防止層の2積層構造や、裏面反射防止層と遮光層と表面反射防止層の3積層構造等)としてもよい。遮光膜を遮光層と反射防止層との積層とする場合、反射防止層はクロム系としても、あるいは遷移金属シリサイド系(例えばSiO,SiON,MSiO,MSiON(Mはモリブデン等の遷移金属)としてもよい。
【0075】
上記のタンタル系遮光膜においては、金属元素はタンタルのみでもよいが、これにジルコニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、ニオブ等の金属元素を加えた合金としてもよい。さらに、金属以外の元素としては、前記酸素や窒素のほかには、炭素、ホウ素、フッ素などが挙げられる。タンタル系遮光膜は、単層(例えば、TaN単層、TaBN単層等)でも複数層(例えば、遮光層と表面反射防止層の2積層構造や、裏面反射防止層と遮光層と表面反射防止層の3積層構造等)でもよい。複数層のタンタル系遮光膜としては、遮光層をTaNかTaBNで、表面反射防止層をTaOかTaBOで形成した2層積層構造とすると好ましい。また、このほか、表面反射防止層をクロム系材料や遷移金属シリサイド系材料で形成してもよい。
【0076】
前記ハーフトーン位相シフトマスクブランクから作製されるハーフトーン型位相シフトマスク(転写用マスク)の場合において、露光装置によるウェハ上のレジスト膜への転写パターンの露光時に、ハーフトーン型位相シフトマスクの転写パターン領域の外周に露光光が漏れ出てしまうこと(漏れ光)で、ウェハ上のレジスト膜の重なり露光部分で感光しないように転写パターン領域の外周に所定の遮光性能を有する遮光帯を形成することが多い。このため、ハーフトーン位相シフトマスクブランクには、遮光帯を形成するための遮光膜をハーフトーン型位相シフト膜の上に積層した構成もある。この遮光膜は、転写パターン領域内においては、ハーフトーン型位相シフト膜に転写パターンを形成するドライエッチング時にエッチングマスク(ハードマスク)として用いられる。この遮光膜においても、転写パターン領域内に微細パターンが高い精度で形成される必要がある。よって、この遮光膜に関しても、転写パターン領域内の高酸化物欠陥を10個以下に低減することは必要である。そして、この遮光膜をスパッタリング法で成膜する場合においても、前記の各実施の形態に係るスパッタ装置で成膜することが望ましい。なお、この遮光膜の材料としては、前記のバイナリ型マスクブランクの遮光膜で用いられる各種材料が適用可能であるが、位相シフト膜が遷移金属シリサイド系材料である場合には、遮光膜にはクロム系材料が好適である。
【0077】
前記のハーフトーン型位相シフトマスクブランクや、バイナリ型マスクブランクにおいて、DRAM hp45nm世代以降の微細パターンを位相シフト膜や遮光膜に形成する場合、レジスト膜の薄膜化が求められる。この要求に対応するため、遮光膜の上に遮光膜よりも膜厚の薄く、遮光膜との間でエッチング選択性が得られる材料からなるエッチングマスク膜(ハードマスク膜)を形成することがある。このエッチングマスク膜においても、転写パターン領域内に微細パターンが形成されることになる。よって、このエッチングマスク膜に関しても、転写パターン領域内の高酸化物欠陥を10個以下に低減することは必要である。そして、このエッチングマスク膜をスパッタリング法で成膜する場合においても、前記の各実施の形態に係るスパッタ装置で成膜することが望ましい。
【0078】
前記のハーフトーン型位相シフトマスクブランクの場合において、遮光膜の材料に位相シフト膜との間でエッチング選択性が得られにくい材料を用いる場合、位相シフト膜と遮光膜との間に、遮光膜に対してエッチング選択性が得られる材料からなるエッチングストッパー膜を介在させる場合がある。また、バイナリ型マスクブランクにおいて、遮光膜の材料が透光性基板との間でエッチング選択性が得られにくい材料が用いられる場合、透光性基板と遮光膜との間にエッチングストッパー膜を介在させる場合がある。これらのエッチングストッパー膜において、高酸化物欠陥部分は、他の正常な部分と比べて遮光膜をエッチングするときのエッチングガスに対するエッチングレートが低下してしまう場合が多い。また、高酸化物欠陥部分は遮光性能も低下するため、遮光膜とエッチングストッパー膜との積層構造で所定の光学濃度を満たす構成としている場合、光学濃度が不足する部分が生じる恐れがある。よって、このエッチングストッパー膜に関しても、転写パターン領域内の高酸化物欠陥を10個以下に低減することは必要である。そして、このエッチングマスク膜をスパッタリング法で成膜する場合においても、前記の各実施の形態に係るスパッタ装置で成膜することが望ましい。
また、透光性基板の主表面に微細な凹凸パターンを形成したインプリントモールドを作製するために用いられるマスクブランクのパターン形成用薄膜(基板掘り込み時のエッチングマスクとして使用される)や、透光性基板の主表面に凹凸パターンを掘り込むことで位相シフトパターン(転写パターン)が形成されるクロムレス位相シフトマスクを作製するために用いられるマスクブランクのパターン形成用薄膜(基板掘り込み時のエッチングマスクとして使用される)についても、高酸化物欠陥部分では透光性基板をエッチングするエッチャントに対するエッチング耐性が低下するなど、大きな問題となる。よって、このようなパターン形成用薄膜の高酸化物欠陥を10個以下に低減できることも、非常に重要である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
使用する基板は、石英ガラス基板(6インチ角、厚さが6.35mm)である。
この石英ガラス基板の端面を面取加工、及び研削加工、更に酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理を終えたガラス基板を両面研磨装置のキャリアにセットし、研磨液にコロイダルシリカ砥粒を含むアルカリ水溶液を用い、所定の研磨条件で精密研磨を行った。精密研磨終了後、所定の洗浄処理を行った。
【0080】
以上のようにして、マスクブランク用ガラス基板を複数枚製造した。
この得られたガラス基板の主表面をレーザー干渉コンフォーカル光学系による欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行い、これらの欠陥が検出されないガラス基板を10枚選定した。
【0081】
次に、選定された上記ガラス基板上に、図4に示すマルチチャンバー型スパッタ成膜装置(スパッタ装置)を用い、スパッタリング法によって、ハーフトーン型位相シフト膜(パターン形成用薄膜)の成膜を行った。
上記スパッタ装置は、前述の図4に示すような減圧室(ロードロック室)44A,44B、搬送室(トランスファー室)47、およびスパッタ室41A,41Bを備えており、まず、開閉ゲート45Aを開き、搬送ロボット(搬送装置)48によって上記ガラス基板1を減圧室44A内に搬入し、開閉ゲート45Aを閉じる。次に、減圧室44A内の気体(クリーンルーム内の空気)を排気しつつ、窒素ガスを供給し、減圧室44A内の気体を窒素ガス(水分および二酸化炭素を含有しない気体)に置換する。そして、置換し終えた後、減圧室44A内の真空減圧を開始した。減圧室44A内の真空減圧が完了した時点で、開閉ゲート43A,46Aを開き、ガラス基板1を減圧室44Aから同等の真空度の搬送室47を通過してスパッタ室41A内に搬入、成膜台に設置し、開閉ゲート43A,46Aを閉じる。ここで、ハーフトーン型位相シフト膜のスパッタリング成膜を開始した。
【0082】
スパッタターゲットにモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(原子%比 Mo:Si=12:88)を用い、スパッタ室41A内にスパッタガスを導入し、アルゴン(Ar)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.3Pa,ガス流量比 Ar:N:He=8:72:100)とし、DC電源の電力を3.0kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚69nmのモリブデン、シリコン、及び窒素を主たる構成要素とする単層で構成されたArFエキシマレーザー(波長193nm)露光用ハーフトーン型位相シフト膜を形成した。なお、この位相シフト膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)において、透過率は4.52%、位相差が182.5度となっていた。
【0083】
以上のようにして、ガラス基板上に上記位相シフト膜を形成したハーフトーン型の位相シフトマスクブランクを10枚作製した。この得られた10枚の位相シフトマスクブランクの主表面(膜表面)を上記と同じ60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、60nm以上150nm未満の欠陥個数が1個(凸状欠陥)と、そのほかに150nm以上の欠陥が検出されたマスクブランクが1枚発見された。そして、その他の9枚の基板は、60nm以上150nm未満の欠陥は1つも検出されず、150nm以上の欠陥のみ検出されたマスクブランクであった。
【0084】
60nm以上150nm未満の欠陥が存在するマスクブランクに対し、全ての欠陥について、欠陥個所の膜上方からのSEM観察、断面TEM観察、EDX(Energy DispersiveX-ray spectroscopy)分析を行った。SEM観察の結果では、60nm以上150nm未満の凸状欠陥は、SEMでの測長サイズも直径が約120nmの平面視ほぼ円形状であった。一方、他の150nm以上の欠陥については、いずれも平面視円形状とは言い難い形状であった。続いて断面TEM観察の結果では、60nm以上150nm未満の凸状欠陥は、断面TEM画像でガラス基板面近傍に白色度の高い(すなわち透過率の高い)直径50nm程度のほぼ球状の核が存在し、そこから同心円状に凸状欠陥が広がっている断面形状であることが判明した。一方、他の150nm以上の欠陥については、いずれも断面TEM画像で白色度の高い部分はなかった、ほぼ球状の核が存在する150nm以上の大きさの凸状欠陥は存在したが、核部分の白色度合はその周囲と大差がない程度(透過率の相違はあまりない)であった。
【0085】
さらに、EDX分析の結果では、60nm以上150nm未満の凸状欠陥の白色度の高い核部分の組成比は、Si:25.1原子%,Mo:4.3原子%,N:52.5原子%,O:18.1原子%であり、その凸状欠陥の周囲(正常部分)の位相シフト膜の組成比は、Si:35.7原子%,Mo:4.2原子%,N:60原子%であった。凸状欠陥部分は、酸素の含有比率が高くなっており、その部分は露光光に対する透過率は高く、位相シフト量も小さくなってしまっている。一方、他の150nm以上の欠陥については、いずれもこのような高い含有比率で酸素は検出されていない。この位相シフト膜をスパッタ成膜するときのスパッタガスには酸素は含有していないにも関わらず、この凸状欠陥の核部分では、20原子%弱もの酸素が含有した高酸化物欠陥となってしまっている。これは、氷やドライアイスのような高い酸素濃度の凝固物がガラス基板の主表面に付着したものに起因するものである可能性が高いことを表している。また、この高酸化物欠陥以外の150nm以上の大きさの凸状欠陥については、いずれも問題となるような透過率の低下ではない。
【0086】
次に、同様の手順で、60nm以上150nm未満の凸状欠陥を1個有するハーフトーン型位相シフト膜を有するガラス基板を準備した。そして、そのガラス基板をスパッタ装置40の搬送ロボット48で減圧室44Aに搬入・設置し、同様に減圧室44Aを窒素ガスに置換した後、真空減圧を行った。真空減圧終了後、搬送ロボット42でガラス基板を減圧室44Aから搬送室47を経由してスパッタ室41Bに搬入・設置し、遮光膜のスパッタリング成膜を開始した。
【0087】
スパッタターゲットにモリブデン(Cr)ターゲットを用い、スパッタ室41B内にスパッタガスを導入し、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:10:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚14nmのCrOCN層を成膜した。続いて、同じスパッタ室41B内で、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa,ガス流量比 Ar:N=25:5)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚4nmのCrN層を成膜した。最後に、同じスパッタ室41B内で、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:5:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚30nmのCrOCN層を成膜し、合計膜厚48nmの3層積層構造のクロム系遮光膜を形成した。この遮光膜は、位相シフト膜との積層構造で光学濃度3.1となるように調整されている。
【0088】
以上のようにして、ガラス基板上に位相シフト膜と遮光膜の積層構造のパターン形成用薄膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造した。このマスクブランクに対して、60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行ったところ、先の位相シフト膜の欠陥検査時に検出された高酸化物欠陥部分以外には、60nm以上150nm未満の欠陥は検出されなかった。
【0089】
このハーフトーン型位相シフトマスクブランクを用い、遮光膜上にレジスト膜をスピン塗布で形成し、従来のマスク作製プロセスによって、転写パターン領域内の位相シフト膜に位相シフトパターン(転写パターン)を有し、転写パターン領域の外周に遮光帯を有するハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。さらに、この位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、ウェハ上のレジスト膜に対して、転写パターンの露光転写を行った。さらに、ウェハ上のレジスト膜の現像処理等を行い、レジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしたドライエッチングを行って、ウェハ上の薄膜に回路パターンを形成した。回路パターンの欠陥検査を行ったところ、回路パターンに配線短絡や断線はなく、設計パターン(転写パターン)を高い精度で転写できていることを確認できた。
【0090】
(比較例)
実施例1と同様にして、マスクブランク用ガラス基板を複数枚製造した。
この得られたガラス基板の主表面を前記と同じ欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行い、これらの欠陥が検出されないガラス基板を10枚選定した。
【0091】
次に、選定した上記ガラス基板上に、図4に示すマルチチャンバー型スパッタ成膜装置を用い、スパッタリング法によって、ハーフトーン位相シフト膜(パターン形成用薄膜)の成膜を行った。位相シフト膜の成膜完了までの手順としては、実施例1とほぼ同様としたが、この比較例では、減圧室44Aにガラス基板1を搬入・設置後、減圧室44A内の気体(クリーンルーム内の空気)を窒素ガスに置換する工程は行わずに、室内の気体を真空引きして所定の真空度にする真空減圧を行った。
【0092】
以上のようにして、ガラス基板上に上記位相シフト膜を形成したハーフトーン型の位相シフトマスクブランクを10枚作製した。この得られた10枚の位相シフトマスクブランクの主表面(膜表面)を上記と同じ60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、10枚のマスクブランクの全てで、60nm以上150nm未満の欠陥個数が11個以上検出された。多いものでは30個以上検出された。
【0093】
60nm以上150nm未満の欠陥個数が検出された10枚のマスクブランクに対し、60nm以上150nm未満の大きさの全ての欠陥について、欠陥個所の膜上方からのSEM観察、断面TEM観察、EDX(Energy DispersiveX-ray spectroscopy)分析を行った。これらの検証の結果、60nm以上150nm未満の大きさの全ての欠陥は、実施例1のマスクブランクで検出された高酸化物欠陥とほぼ同様の形状であり、酸化度の高い核を有するものであることが判明した。
【0094】
このハーフトーン型位相シフトマスクブランクを用い、減圧室44A内の気体(クリーンルーム内の空気)を窒素ガスに置換する工程は行わないこと以外は実施例1と同様の手順でクロム系材料からなる遮光膜をスパッタ法により形成し、ガラス基板上に位相シフト膜と遮光膜の積層構造のパターン形成用薄膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造した。
【0095】
次に、製造したハーフトーン型位相シフトマスクブランクから、実施例1と同様の手順で、転写パターン領域内の位相シフト膜に位相シフトパターン(転写パターン)を有し、転写パターン領域の外周に遮光帯を有するハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。しかし、転写パターン領域内の位相シフト膜に高酸化物欠陥個所が11箇所以上もあることから、全ての高酸化物欠陥を回避して転写パターンを形成することは困難であった。また、位相シフト膜であるので、従来の欠陥修正方法の適用も困難であり、この比較例のハーフトーン型位相シフトマスクブランクからでは、ハーフトーン型位相シフトマスクを作製することはできなかった。
【0096】
(実施例2)
実施例1と同様にして、マスクブランク用ガラス基板を複数枚製造した。そして、この得られたガラス基板の主表面をレーザー干渉コンフォーカル光学系による欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行い、これらの欠陥が検出されないガラス基板を10枚選定した。
【0097】
次に、選定した上記ガラス基板上に、図4に示すマルチチャンバー型スパッタ成膜装置を用い、スパッタリング法によって、ハーフトーン型位相シフト膜(パターン形成用薄膜)の成膜を行った。位相シフト膜の成膜完了までの手順としては、実施例1とほぼ同様とであるが、減圧室44Aにはセラミックヒーター(加熱装置)を備える載置台が設置されている点、搬送装置48でガラス基板1を、減圧室44A内の載置台の上に搬入・設置する点、減圧室44A内の気体(クリーンルーム内の空気)を窒素ガスに置換する工程は行わず、セラミックヒーターによってガラス基板1を加熱しながら、減圧室44内の気体(クリーンルーム内の空気)を真空引きして所定の真空度にする真空減圧を行う点が実施例1とは大きく異なる。このとき、セラミックヒーターでガラス基板1の主表面が50〜70℃になるように加熱した。
【0098】
以上のようにして、ガラス基板上に上記位相シフト膜を形成したハーフトーン型の位相シフトマスクブランクを10枚作製した。この得られた10枚の位相シフトマスクブランクの主表面(膜表面)を上記と同じ60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、60nm以上150nm未満の欠陥個数が1個(凸状欠陥)検出されたマスクブランクが1枚発見された。そして、その他の9枚の基板は、60nm以上150nm未満の欠陥は1つも検出されず、150nm以上の欠陥のみ検出されたマスクブランクであった。
【0099】
60nm以上150nm未満の欠陥個数が検出された1枚のマスクブランクに対し、60nm以上150nm未満の大きさの全ての欠陥について、欠陥個所の膜上方からのSEM観察、断面TEM観察、EDX(Energy DispersiveX-ray spectroscopy)分析を行った。これらの検証の結果、60nm以上150nm未満の大きさの全ての欠陥は、実施例1のマスクブランクで検出された高酸化物欠陥とほぼ同様の形状であり、酸化度の高い核を有するものであることが判明した。150nm以上の欠陥についても、実施例1と同様に検証したが、実施例1の150nm以上の欠陥と概ね同様の結果であった。
【0100】
次に、同様の手順で、60nm以上150nm未満の凸状欠陥を1個有するハーフトーン型位相シフト膜を有するガラス基板を準備した。そして、スパッタ装置40のスパッタ室41Bで、実施例1と同様の遮光膜を位相シフト膜上に形成した。なお、ガラス基板を減圧室44Aに導入してから、減圧室44A内を真空引きによる真空減圧により所定の真空度にする際においては、前記のハーフトーン位相シフト膜の成膜の時と同様、減圧室44A内の気体(クリーンルーム内の空気)を窒素ガスに置換する工程は行わず、セラミックヒーターによってガラス基板1を加熱しながら、減圧室44内の気体(クリーンルーム内の空気)を真空引きして所定の真空度にする真空減圧を行った。
【0101】
以上のようにして、ガラス基板上に位相シフト膜と遮光膜の積層構造のパターン形成用薄膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造した。このマスクブランクに対して、60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行ったところ、先の位相シフト膜の欠陥検査時に検出された高酸化物欠陥部分以外には、60nm以上150nm未満の欠陥は検出されなかった。
【0102】
このハーフトーン型位相シフトマスクブランクを用い、遮光膜上にレジスト膜をスピン塗布で形成し、従来のマスク作製プロセスによって、転写パターン領域内の位相シフト膜に位相シフトパターン(転写パターン)を有し、転写パターン領域の外周に遮光帯を有するハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。さらに、この位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、ウェハ上のレジスト膜に対して、転写パターンの露光転写を行った。さらに、ウェハ上のレジスト膜の現像処理等を行い、レジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしたドライエッチングを行って、ウェハ上の薄膜に回路パターンを形成した。回路パターンの欠陥検査を行ったところ、回路パターンに配線短絡や断線はなく、設計パターン(転写パターン)を高い精度で転写できていることを確認できた。
【0103】
(実施例3)
実施例1と同様にして、マスクブランク用ガラス基板を複数枚製造した。そして、この得られたガラス基板の主表面をレーザー干渉コンフォーカル光学系による欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行い、これらの欠陥が検出されないガラス基板を10枚選定した。
【0104】
次に、選定した上記ガラス基板上に、図4に示すマルチチャンバー型スパッタ成膜装置を用い、スパッタリング法によって、ハーフトーン位相シフト膜(パターン形成用薄膜)の成膜を行った。位相シフト膜の成膜完了までの手順としては、実施例1とほぼ同様とであるが、減圧室44Aの外に配置されているセラミックヒーター(加熱装置)を備える載置台にガラス基板1を設置し、ガラス基板1の主表面が90℃になるまで加熱後、搬送装置48で減圧室44A内に搬送・設置した点、減圧室44A内の気体(クリーンルーム内の空気)を窒素ガスに置換する工程は行わず、ガラス基板1が冷えない内に減圧室44A内の気体(クリーンルーム内の空気)を真空引きして所定の真空度にする真空減圧を行う点が実施例1とは大きく異なる。
【0105】
以上のようにして、ガラス基板上に上記位相シフト膜を形成したハーフトーン型の位相シフトマスクブランクを10枚作製した。この得られた10枚の位相シフトマスクブランクの主表面(膜表面)を上記と同じ60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、60nm以上150nm未満の欠陥個数が1個(凸状欠陥)検出されたマスクブランクが2枚発見された。そして、その他の8枚の基板は、60nm以上150nm未満の欠陥は1つも検出されず、150nm以上の欠陥のみ検出されたマスクブランクであった。
【0106】
60nm以上150nm未満の欠陥個数が検出された2枚のマスクブランクに対し、60nm以上150nm未満の大きさの全ての欠陥について、欠陥個所の膜上方からのSEM観察、断面TEM観察、EDX(Energy DispersiveX-ray spectroscopy)分析を行った。これらの検証の結果、60nm以上150nm未満の大きさの全ての欠陥は、実施例1のマスクブランクで検出された高酸化物欠陥とほぼ同様の形状であり、酸化度の高い核を有するものであることが判明した。150nm以上の欠陥についても、実施例1と同様に検証したが、実施例1の150nm以上の欠陥と概ね同様の結果であった。
【0107】
次に、同様の手順で、60nm以上150nm未満の凸状欠陥を1個有するハーフトーン型位相シフト膜を有するガラス基板を準備した。そして、スパッタ装置40のスパッタ室41Bで、実施例1と同様の遮光膜を位相シフト膜上に形成した。なお、ガラス基板を減圧室44Aに導入してから、減圧室44A内を真空引きによる真空減圧により所定の真空度にする際においては、前記のハーフトーン位相シフト膜の成膜の時と同様、減圧室44Aの外に配置されているセラミックヒーター(加熱装置)を備える載置台でガラス基板1を加熱してから減圧室44A内に搬送・設置し、減圧室44A内の気体(クリーンルーム内の空気)を窒素ガスに置換する工程は行わず、減圧室44A内の気体を真空引きして所定の真空度にする真空減圧を行った。
【0108】
以上のようにして、ガラス基板上に位相シフト膜と遮光膜の積層構造のパターン形成用薄膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造した。このマスクブランクに対して、60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行ったところ、先の位相シフト膜の欠陥検査時に検出された高酸化物欠陥部分以外には、60nm以上150nm未満の欠陥は検出されなかった。
【0109】
このハーフトーン型位相シフトマスクブランクを用い、遮光膜上にレジスト膜をスピン塗布で形成し、従来のマスク作製プロセスによって、転写パターン領域内の位相シフト膜に位相シフトパターン(転写パターン)を有し、転写パターン領域の外周に遮光帯を有するハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。さらに、この位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、ウェハ上のレジスト膜に対して、転写パターンの露光転写を行った。さらに、ウェハ上のレジスト膜の現像処理等を行い、レジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしたドライエッチングを行って、ウェハ上の薄膜に回路パターンを形成した。回路パターンの欠陥検査を行ったところ、回路パターンに配線短絡や断線はなく、設計パターン(転写パターン)を高い精度で転写できていることを確認できた。
【0110】
以上のように、本発明によれば、パターン形成用薄膜中のその周囲よりも多く酸素を含有する60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥数を大幅に低減させることができ、たとえば非常に高いレベルの欠陥品質を要求される位相シフトマスク用マスクブランクが好適に得られる。
【符号の説明】
【0111】
1 透光性基板
2 パターン形成用薄膜
10 マスクブランク
20,30,40 スパッタ装置
21,31,41A,41B スパッタ室
22,32,42,48 搬送装置
23,33,35 開閉ゲート
43A,43B,45A,45B,46A,46B 開閉ゲート
34,44A,44B 減圧室
47 搬送室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなるパターン形成用薄膜を備えるマスクブランクにおいて、
前記パターン形成用薄膜は、膜中のその周囲よりも多く酸素を含有する60nm以上150nm未満の大きさの高酸化物欠陥の存在個数が10個以下であることを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記高酸化物欠陥は、前記パターン形成用薄膜中の前記透光性基板との界面近傍、または前記パターン形成用薄膜中のその下面に接する他の薄膜との界面近傍に存在する欠陥であることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記高酸化物欠陥は、ほぼ球状の欠陥であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記パターン形成用薄膜は、遷移金属とケイ素に、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する化合物を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記パターン形成用薄膜は、ハーフトーン型位相シフト膜であることを特徴とする請求項4に記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記パターン形成用薄膜は、前記透光性基板側から、遷移金属とケイ素を含有する材料からなる遮光層と、遷移金属とケイ素に、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する化合物を主成分とする材料からなる表面反射防止層が順に積層されてなる遮光膜であり、該遮光膜の光学濃度が2.5以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記パターン形成用薄膜は、クロムまたはタンタルに、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する化合物を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項8】
透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、前記透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなる単層または複数層のパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、
透光性基板が設置された前記スパッタ装置のスパッタ室内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する工程、
前記スパッタ室内から置換した気体を排気して真空減圧する工程、
前記スパッタ室内で、透光性基板上に前記単層のパターン形成用薄膜または前記複数層のパターン形成用薄膜のうち少なくとも一層をスパッタリング法によって成膜する工程
をこの順に行うことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、前記透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなる単層または複数層のパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、
透光性基板が設置された前記スパッタ装置の減圧室内の気体を、水分および二酸化炭素を含有しない気体、ドライエアまたはこれらの混合気体に置換する工程、
前記減圧室内から置換した気体を排気して真空減圧する工程、
前記減圧室から透光性基板を取り出して真空中を搬送し、真空減圧されたスパッタ室に設置する工程、
前記スパッタ室内で、透光性基板上に前記単層のパターン形成用薄膜または前記複数層のパターン形成用薄膜のうち少なくとも一層をスパッタリング法によって成膜する工程
をこの順に行うことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項10】
前記水分および二酸化炭素を含有しない気体は、希ガス、水素ガス、窒素ガス、フッ素ガスおよび塩素ガスのうちいずれかの気体あるいはこれらから選ばれる2以上の気体の混合気体であることを特徴とする請求項8又は9に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項11】
透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、前記透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなる単層または複数層のパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、
加熱状態の透光性基板が設置された前記スパッタ装置のスパッタ室内の気体を排気して真空減圧する工程、
前記スパッタ室内で、透光性基板上に前記単層のパターン形成用薄膜または前記複数層のパターン形成用薄膜のうち少なくとも一層をスパッタリング法によって成膜する工程
をこの順に行うことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項12】
透光性基板をスパッタ装置内に搬入し、前記透光性基板上にスパッタリング法によって金属及びケイ素のうち少なくともいずれかを含有する材料からなる単層または複数層のパターン形成用薄膜を形成するマスクブランクの製造方法において、
加熱状態の透光性基板が設置された前記スパッタ装置の減圧室内の気体を排気して真空減圧する工程、
前記減圧室から透光性基板を取り出して真空中を搬送し、真空減圧されたスパッタ室に設置する工程、
前記スパッタ室内で、透光性基板上に前記単層のパターン形成用薄膜または前記複数層のパターン形成用薄膜のうち少なくとも一層をスパッタリング法によって成膜する工程
をこの順に行うことを特徴とするマスクブランクの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−112982(P2011−112982A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271107(P2009−271107)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】