説明

マルチパス判定装置及びプログラム

【課題】簡単な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができるようにする。
【解決手段】GPS情報取得部20によって、GPS衛星からの電波を受信する。GPS情報取得部20によって、GPS衛星の情報、及びGPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差を取得する。到来波相対方向推定部24によって、GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定する。到来波絶対方向算出部22によって、GPS衛星の情報に基づいて、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する。マルチパス判定部26によって、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを全体として比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチパス判定装置及びプログラムに係り、特に、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定するマルチパス判定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、MUSIC法などによって到来信号方向を推定する信号到来方向推定装置が知られている(特許文献1)。この装置では、各素子アンテナからの信号に対して複素重みを乗じることで、mアレーアンテナの指向性パターンを所望形状にし、所望波のみに基づいて高精度な測位を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−77376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、指向性の制御を行うためにアンテナでアレーを形成する必要があるため、装置構成が複雑となってしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、簡易な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができるマルチパス判定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために第1の発明に係るマルチパス判定装置は、GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段と、前記GPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段と、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段と、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段と、前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを全体として比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段とを含んで構成されている。
【0007】
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段、及び前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを全体として比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段として機能させるためのプログラムである。
【0008】
第1の発明及び第2の発明によれば、複数のアンテナを備えたGPS受信手段によって、GPS衛星からの電波を受信する。取得手段によって、GPS受信手段によって受信したGPS衛星の情報、及び複数のアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を、電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する。
【0009】
そして、相対方向推定手段によって、各GPS衛星について、取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する。また、絶対方向算出手段によって、各GPS衛星について、取得手段によって取得した該GPS衛星の情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する。
【0010】
そして、判定手段によって、相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを全体として比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する。
【0011】
このように、複数のアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を用いて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定し、GPS情報から算出される各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と比較することにより、簡易な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができる。
【0012】
第3の発明に係るマルチパス判定装置は、GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段と、前記GPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段と、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段と、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段と、自車両の絶対的な基準方向を推定する自車方向推定手段と、前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向、及び前記自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段とを含んで構成されている。
【0013】
第4の発明に係るプログラムは、コンピュータを、GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段、自車両の絶対的な基準方向を推定する自車方向推定手段、及び前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向、及び前記自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段として機能させるためのプログラムである。
【0014】
第3の発明及び第4の発明によれば、複数のアンテナを備えたGPS受信手段によってGPS衛星からの電波を受信する。取得手段によって、GPS受信手段によって受信したGPS衛星の情報、及び複数のアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を、電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する。
【0015】
そして、相対方向推定手段によって、各GPS衛星について、取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する。絶対方向算出手段によって、各GPS衛星について、取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する。自車方向推定手段によって、自車両の絶対的な基準方向を推定する。
【0016】
そして、判定手段によって、相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向、及び自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する。
【0017】
このように、複数のアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を用いて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定すると共に、推定される自車両の絶対的な基準方向から、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を推定し、GPS情報から算出される各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と比較することにより、簡易な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができる。
【0018】
第5の発明に係るマルチパス判定装置は、GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段と、前記GPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の位置情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段と、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段と、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段と、自車両の絶対的な基準方向を推定する自車方向推定手段と、前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向、及び前記自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段とを含んで構成されている。
【0019】
第6の発明に係るプログラムは、GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の位置情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段、自車両の絶対的な基準方向を推定する自車方向推定手段、及び前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向、及び前記自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段として機能させるためのプログラムである。
【0020】
第5の発明及び第6の発明によれば、複数のアンテナを備えたGPS受信手段によってGPS衛星からの電波を受信する。取得手段によって、GPS受信手段によって受信したGPS衛星の情報、及び複数のアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を、電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する。
【0021】
そして、相対方向推定手段によって、各GPS衛星について、取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する。絶対方向算出手段によって、各GPS衛星について、取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する。自車方向推定手段によって、自車両の絶対的な基準方向を推定する。
【0022】
そして、判定手段によって、相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向、及び自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する。
【0023】
このように、複数のアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を用いて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定し、推定される自車両の絶対的な基準方向と、GPS情報から算出される各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とから求められる各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と比較することにより、簡易な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができる。
【0024】
第3の発明及び第5の発明に係る取得手段は、GPS衛星の位置情報、GPS衛星からの受信信号の位相差、及びGPS衛星からの受信信号のドップラー周波数を、電波を受信したGPS衛星の全てについて取得し、自車方向推定手段は、取得手段によって取得されたドップラー周波数の各々に基づいて、各GPS衛星に対する自車両の相対速度を算出する相対速度算出手段を備え、相対速度算出手段によって算出された相対速度を用いて、自車両の絶対的な基準方向を推定することができる。
【0025】
また、上記の相対速度算出手段を備えた自車方向推定手段は、取得されたGPS衛星の情報から、各GPS衛星の速度を算出し、相対速度算出手段によって算出された各GPS衛星に対する相対速度と算出された各GPS衛星の速度とに基づいて、各GPS衛星方向の自車両の速度を算出する自車両速度算出手段と、算出された各GPS衛星方向の自車両の速度に基づいて、自車両の速度ベクトルを推定する速度ベクトル推定手段とを更に備え、速度ベクトル推定手段により推定された自車両の速度ベクトルに基づいて、自車両の絶対的な基準方向を推定することができる。
【0026】
第3の発明及び第5の発明に係るマルチパス判定装置は、自車両の位置を算出する位置算出手段を更に含み、自車方向推定手段は、予め記憶された道路地図情報から、位置算出手段によって算出された自車両の位置が存在する道路の方向を取得し、取得した道路の方向に基づいて、自車両の絶対的な基準方向を推定することができる。これによって、簡易な処理により、自車両の絶対的な基準方向を推定することができる。
【0027】
上記の相対速度算出手段を備えた自車方向推定手段は、取得されたGPS衛星の情報から、各GPS衛星の速度を算出し、相対速度算出手段によって算出された各GPS衛星に対する相対速度と算出された各GPS衛星の速度とに基づいて、各GPS衛星方向の自車両の速度を算出する自車両速度算出手段と、自車両の車速を取得する車速取得手段と、少なくとも2つのGPS衛星について算出された各GPS衛星方向の自車両の速度と、取得された自車両の車速とに基づいて、自車両の速度ベクトルを推定する速度ベクトル推定手段とを更に備え、速度ベクトル推定手段により推定された自車両の速度ベクトルに基づいて、自車両の絶対的な基準方向を推定することができる。これによって、電波を受信したGPS衛星の数が少ない場合であっても、自車両の絶対的な基準方向を推定することができる。
【0028】
上記の相対速度算出手段を備えた自車方向推定手段は、取得されたGPS衛星の情報から、各GPS衛星の速度を算出し、相対速度算出手段によって算出された各GPS衛星に対する相対速度と算出された各GPS衛星の速度とに基づいて、各GPS衛星方向の自車両の速度を算出する自車両速度算出手段と、自車両の車速を取得する車速取得手段と、クロックバイアスの時間に伴う変化の割合を示すクロックバイアスドリフトを算出するクロックバイアスドリフト算出手段と、少なくとも1つのGPS衛星について算出されたGPS衛星方向の自車両の速度と、取得された自車両の車速と、算出されたクロックバイアスドリフトとに基づいて、自車両の速度ベクトルを推定する速度ベクトル推定手段とを更に備え、速度ベクトル推定手段により推定された自車両の速度ベクトルに基づいて、自車両の絶対的な基準方向を推定することができる。これによって、電波を受信したGPS衛星の数が少ない場合であっても、自車両の絶対的な基準方向を推定することができる。
【0029】
上記のマルチパス判定装置は、相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に、遮蔽物が存在するか否かに基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定する第2判定手段を更に含むことができる。これによって、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かをより精度よく判定することができる。
【0030】
また、上記の第2判定手段を含むマルチパス判定装置は、自車両の周囲を撮像する撮像手段と、撮像手段により撮像された画像から遮蔽物を検出する遮蔽物検出手段とを更に含み、第2判定手段は、遮蔽物検出手段の検出結果に基づいて、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に、遮蔽物が存在するか否かを判断することができる。
【0031】
上記の第2判定手段を含むマルチパス判定装置は、自車両の位置を算出する位置算出手段を更に含み、遮蔽物判定手段は、予め記憶された道路地図情報から、位置算出手段によって算出された自車両の位置の周辺に存在する遮蔽物の有無を取得し、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に、遮蔽物が存在するか否かを判断することができる。
【0032】
上記のマルチパス判定装置は、相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向が、予め定められた、遮蔽物が存在する可能性のある方向であるか否かに基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定する第2判定手段を更に含むことができる。これによって、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かをより精度よく判定することができる。
【0033】
また、上記の取得手段は、更に、GPS衛星から電波が送信されて自車両まで到達するまでのGPS電波伝搬時間又はGPS衛星までの擬似距離を、電波を受信したGPS衛星の全てについて、アンテナ毎に取得し、マルチパス判定装置は、各GPS衛星について、アンテナ間のGPS電波伝搬時間の差又は擬似距離の差と、該GPS衛星からの受信信号の位相差とを比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する第3判定手段を更に含むことができる。これによって、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かをより精度よく判定することができる。
【0034】
上記の取得手段は、更に、GPS衛星からの受信信号のドップラー周波数を、電波を受信したGPS衛星の全てについて、アンテナ毎に取得し、各GPS衛星におけるアンテナ間のドップラー周波数の差に基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する第4判定手段を更に含むことができる。これによって、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かをより精度よく判定することができる。
【0035】
上記のGPS受信手段は、3つ以上のアンテナを備え、相対方向推定手段は、各GPS衛星について、取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号のアンテナ間の各々の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の、仰角及び方位角で表わされる相対的な到来方向を各々推定し、絶対方向算出手段は、各GPS衛星について、取得手段によって取得した該GPS衛星の情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の、仰角及び方位角で表わされる絶対的な到来方向を各々算出することができる。これによって、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かをより精度よく判定することができる。
【0036】
上記の取得手段は、更に、GPS衛星から電波が送信されて自車両まで到達するまでのGPS電波伝搬時間又はGPS衛星までの擬似距離を、電波を受信したGPS衛星の全てについて取得し、マルチパス判定装置は、受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星以外の各GPS衛星の前記GPS電波伝搬時間又は前記擬似距離に基づいて、自車両の位置を算出する位置算出手段を更に含むことができる。これによって、自車両の位置を精度よく算出することができる。
【0037】
本発明に係るプログラムを、記憶媒体に格納して提供することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明のマルチパス判定装置及びプログラムによれば、複数のアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を用いて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定し、GPS情報から算出される各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向、または相対的な到来方向と比較することにより、簡易な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車載測定装置を示すブロック図である。
【図2】GPSアンテナ間の受信信号の位相差から、電波の到来方向を推定する様子を示すイメージ図である。
【図3】三角測量の原理に従って自車両の位置が推定される様子を示すイメージ図である。
【図4】(A)衛星位置から算出された電波の絶対的な到来方向を示す図、及び(B)推定された電波の相対的な到来方向を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおけるマルチパス判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る車載測定装置を示すブロック図である。
【図7】各GPS衛星の速度ベクトル及び各GPS衛星の方向に基づいて、自車方向の各GPS衛星の速度を算出する様子を示すイメージ図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおけるマルチパス判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおける自車方向推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る車載測定装置を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおける自車方向推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおける自車方向推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおける自車方向推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第6の実施の形態に係る車載測定装置を示すブロック図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおける第2マルチパス判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第7の実施の形態に係る車載測定装置を示すブロック図である。
【図17】本発明の第7の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおける第2マルチパス判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第8の実施の形態に係る車載測定装置を示すブロック図である。
【図19】直接波と反射波とを2つのGPSアンテナで受信する様子を示す図である。
【図20】本発明の第8の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおける第2マルチパス判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第8の実施の形態に係る車載測定装置のコンピュータにおける第3マルチパス判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、車両に搭載されて自車両の位置を測定する車載測定装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0041】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る車載測定装置10は、GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部12と、GPS受信部12によって受信されたGPS衛星からの受信信号に基づいて、自車両の位置を測定すると共に、受信信号がマルチパスであるか否かを判定するコンピュータ14とを備えている。
【0042】
GPS受信部12は、GPS衛星からの電波を受信する2本以上のGPSアンテナ12A、12Bを備えており、各GPSアンテナ12A、12Bによって、GPS衛星からの電波を各々受信する。また、GPS受信部12は、複数のGPS衛星からの電波を受信して、受信した全てのGPS衛星からの受信信号から、GPS衛星の情報として、GPS衛星の衛星番号、搬送波位相、コード擬似距離、ドップラーシフト周波数、信号強度、及び軌道情報を取得し、コンピュータ14に出力する。なお、受信信号については、GPSアンテナ12A、12Bの各々について出力される。また、GPSアンテナ12A、12B間の距離は既知である。
【0043】
コンピュータ14は、CPU、後述するマルチパス判定処理ルーチンを実現するためのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、及びHDD等の記憶装置で構成されている。
【0044】
コンピュータ14を以下で説明するマルチパス判定処理ルーチンに従って機能ブロックで表すと、図1に示すように、GPS受信部12から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差を取得するGPS情報取得部20と、算出された自車両の位置及び各GPS衛星の位置座標に基づいて、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を算出する到来波絶対方向算出部22と、取得した各GPS衛星のGPSアンテナ12A、12B間の位相差に基づいて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定する到来波相対方向推定部24と、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を全体として比較して、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定するマルチパス判定部26と、マルチパスと判定されたGPS衛星以外の受信信号のGPS擬似距離データに基づいて、自車両の位置を算出する自車位置算出部28とを備えている。
【0045】
GPS情報取得部20は、GPS受信部12から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPSアンテナ12A、12Bの各々で受信した受信信号に基づいて、GPSアンテナ12A、12Bの位相差を算出する。また、GPS衛星の位置、及びGPS衛星が電波を送信した送信時刻が、受信信号から取得したGPS衛星の情報に基づいて推定されて取得される。例えば、GPSの位置は、時刻の関数になっており、関数を決める係数などが、「軌道情報」として取得され、軌道情報に基づいてGPSの位置が推定されて取得される。なお、受信した電波が低入力レベルや低SN信号などであるGPS衛星については、GPS衛星の情報やGPSアンテナ12A、12Bの位相差を取得しないことは言うまでもない。
【0046】
到来波絶対方向算出部22は、自車位置算出部28により算出された自車両の位置、及び各GPS衛星の位置座標に基づいて、各GPS衛星jの位置と自車両の位置との角度関係(水平面に対する仰角θ、水平面上の北方向に対する方位角φ)を、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向として推定する。
【0047】
到来波相対方向推定部24は、図2に示すように、各GPS衛星について算出されたGPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差と、GPSアンテナ12A、12B間の距離Lとに基づいて、アンテナ設置方向(基準方向)に対する、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定する。また、到来波相対方向推定部24は、上記到来波絶対方向算出部22によって推定される絶対的な到来方向の仰角分を補正して、水平面上の方位角として、相対的な到来方向を推定する。
【0048】
次に、本発明の原理について説明する。
【0049】
GPSを用いた測位では、図3に示すように、既知であるGPS衛星位置と、各衛星から受信した信号の伝播距離である擬似距離から、三角測量の原理で自車両の位置が推定される。
【0050】
擬似距離は伝播時間から算出されるものであるが、伝播時間には対流圏遅延と電離層遅延とクロックバイアスなどによる誤差が含まれており、擬似距離は以下の(1)式で表される。
【0051】
【数1】

【0052】
ただし、tは、誤差を含むGPS受信部の受信時刻であり、tは、正確なGPS時刻での受信時刻であり、tは、正確なGPS時刻でのGPS衛星jからの送信時刻である。また、Rは、GPS衛星jとの真距離であり、BはGPS衛星jの時計誤差による距離誤差であり、SはGPS受信部の時計誤差(クロックバイアス)による距離誤差である。また、Iは、電離層遅延によるGPS衛星jからの距離誤差であり、tは、対流圏遅延によるGPs衛星jからの距離誤差であり、ξは、マルチパスなどその他誤差である。
【0053】
また、GPS衛星位置も時間の関数であるため、伝播時間に誤差が含まれている場合、GPS衛星位置も誤差を含んで算出される。ここで、測位に一般的に用いられるのが、非特許文献(坂井丈泰、“GPSのための実用プログラミング”、東京電機大学出版局、2007.)に記載された、擬似距離を用いた最適推定である。
【0054】
この最適推定では、擬似距離残差が大きいGPS衛星からの信号を、マルチパスとして除去し、推定精度を向上させている。通常、マルチパスの判定には擬似距離のほかにも信号強度などが用いられ、可視衛星数が多い状況下では、比較的安定に位置や速度が推定される。
【0055】
しかしながら、都心部のような、直接波だけでなく反射波や回折波を含んだ信号が多く受信される場合には、擬似距離が大きな誤差を含んでいる可能性がある。擬似距離に大きい誤差がある場合、測位誤差が大きくなり、その場合、伝播時間の推定誤差も大きく、GPS衛星位置の算出でも誤差が生じる。このとき、GPS衛星位置にも誤差が含まれるため、擬似距離残差を用いたマルチパス判定では、十分な精度で判定することができない。また、マルチパスにおける信号の反射点がGPS受信機と近い場合、マルチパスによる経路差が生じにくく、擬似距離残差では、マルチパスの判断が難しい。
【0056】
そこで、本実施の形態では、推定された各GPS衛星からの電波の到来方向と、本来の到来方向とを比較して、合致しない場合にマルチパスと判定する。
【0057】
ここで、本来の到来波方向を推定する際、衛星方向は既知であるため、衛星の存在する方角は計算できるが、GPS受信機が搭載されたアンテナ設置方向を基準とした衛星方向を予測するためには、移動体の方位推定が必要になる。
【0058】
アンテナ間の距離が既知であるGPSアンテナが2つ以上ある場合、測位結果の差分とアンテナ間距離から方位を決定できる。また、一般的にGPSコンパスなどで用いられる方法において、アンテナ間の位相差から推定された到来波方向をそのまま衛星方向として、移動体の方位を決定できる。しかし、マルチパスが多い環境では、移動体の方位を、位相や測位位置だけから決定することは容易ではない。
【0059】
そこで、本実施の形態では、マルチパス判定部26において、移動体の方位を直接推定することなく、図4(A)、(B)に示すように、到来波絶対方向算出部22により全体の衛星位置関係から算出された絶対的な到来方向全体と、到来波相対方向推定部24により推定された相対的な到来波方向全体とを、全体として比較して、到来方向が合致しない衛星(図4のSN4参照)を推定することにより、マルチパスを判定する。
【0060】
自車位置算出部28は、以下のように、GPS情報取得部20によって取得された各GPS衛星のGPS擬似距離データと、マルチパス判定部26の判定結果とを用いて、以下に説明するように、自車両の位置を算出する。
【0061】
まず、GPS衛星までの真の距離rは、以下の(2)式で表され、GPSで観測される擬似距離ρは、以下の(3)式で表される。
【0062】
【数2】

【0063】
ただし、(X,Y,Z)がGPS衛星jの位置座標であり、(x,y,z)が自車両の位置座標である。sは、GPS受信部の時計誤差(クロックバイアス)による距離誤差である。
【0064】
上記(2)式、(3)式より、4つ以上のGPS衛星のGPS擬似距離データから得られる以下の(4)式の連立方程式を解くことによって、自車両の位置(x、y、z)が算出される。
【0065】
【数3】

【0066】
自車位置算出部28では、電波を受信した全てのGPS衛星について得られた擬似距離データのうち、受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星の擬似距離データを除外し、残りのGPS衛星の擬似距離データを用いて得られる上記(4)式の連立方程式を解くことによって、自車両の位置(x、y、z)を算出し、算出された自車両の位置を外部装置(例えば、ナビゲーションシステムや運転支援システム)に出力する。ただし、GPS情報取得部20で取得されたGPS擬似距離データと判定結果は、位置推定だけでなく、2次元測位などにも利用できるため、必ずしも4つ以上のGPS衛星についてのデータである必要は無い。用途によっては1つのGPS衛星についてのデータでもよく、利用先は位置推定に限らない。
【0067】
次に、第1の実施の形態に係る車載測定装置10の作用について説明する。
【0068】
GPS受信部12のGPSアンテナ12A、12Bによって、複数のGPS衛星から電波を受信しているときに、コンピュータ14において、図5に示すマルチパス判定処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0069】
まず、ステップ100において、GPS受信部12から複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、GPSアンテナ12A、12B間の複数のGPS衛星の受信信号の位相差を取得する。
【0070】
そして、ステップ102において、上記ステップ100で取得した各GPS衛星の情報に基づいて算出される各GPS衛星の位置座標と、後述するステップ110又はステップ112で前回算出された自車位置とに基づいて、各GPS衛星の方向を、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向として算出する。
【0071】
次のステップ104では、上記ステップ100で取得したGPSアンテナ12A、12B間の各GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、自車両の走行方向を基準とした、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定する。
【0072】
そして、ステップ106において、上記ステップ102で算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、上記ステップ104で推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向とを全体として比較して、到来方向が一致するか否かに基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力する。上記判定に用いる衛星数は最低3つ以上であればよい。
【0073】
次のステップ108では、上記ステップ106でマルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号があるか否かを判定する。上記ステップ106で、全体として比較したときに電波の到来方向が一致しないGPS衛星が存在した場合には、ステップ110において、受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星の擬似距離データを除き、上記ステップ100で取得された他のGPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0074】
一方、上記ステップ106で全体として比較したときに全てのGPS衛星について電波の到来方向が一致した場合には、上記ステップ108で、マルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号がなかったと判断され、ステップ112において、上記ステップ100で取得された各GPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0075】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車載測定装置によれば、複数のGPSアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を用いて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定する。既知である衛星位置を利用して算出される各GPS衛星からの電波の本来の絶対的な到来方向と、全体として比較することにより、簡易な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができる。
【0076】
また、マルチパスにより間違った方向からの信号の擬似距離データを用いた場合には測位精度が低下するため、マルチパスの判定結果を用いて、マルチパスである受信信号を除去することにより、大きな誤差を持つ信号を除去でき、測位精度を向上させることができる。
【0077】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
第2の実施の形態では、自車両の走行方向を推定し、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を推定し、電波の絶対的な到来方向同士を比較している点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0079】
図6に示すように、第2の実施の形態に係る車載測定装置210のコンピュータ214は、GPS受信部12から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差を取得するGPS情報取得部220と、到来波絶対方向算出部22と、到来波相対方向推定部24と、取得した各GPS衛星のドップラーシフト周波数を用いて、自車両の基準方向としての絶対的な走行方向(北方向に対する方位角)を推定する自車方向推定部222と、推定された自車両の絶対的な走行方向、及び推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に基づいて、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を推定する到来波絶対方向推定部224と、推定された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とをGPS衛星毎に比較して、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定するマルチパス判定部226と、自車位置算出部28とを備えている。
【0080】
GPS情報取得部220は、GPS受信部12から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPSアンテナ12A、12Bの位相差を算出する。なお、GPS衛星の情報に含まれるドップラーシフト周波数は、各GPS衛星から送信される信号の既知の周波数と、各GPS衛星から受信した受信信号の周波数とに基づいて、取得される。また、ドップラーシフト周波数は、GPS衛星と自車との相対速度による、搬送波周波数のドップラーシフト量を観測したものである。
【0081】
自車方向推定部222は、以下に説明するように、自車両の絶対的な走行方向を推定する。
【0082】
まず、ドップラーシフト周波数とGPS衛星に対する相対速度との関係を表わす以下の(5)式に従って、各GPS衛星からの受信信号のドップラーシフト周波数から、各GPS衛星に対する自車両の相対速度を算出する。
【0083】
【数4】

【0084】
ただし、vはGPS衛星jに対する相対速度であり、D1はGPS衛星jから得られるドップラーシフト周波数(ドップラーシフト量)である。また、Cは光速であり、Fは、GPS衛星から送信される信号の既知のL1周波数である。
【0085】
次に、取得した各GPS衛星の位置座標の時系列データから、ケプラーの方程式の微分を用いて、各GPS衛星の速度ベクトル(3次元速度VX、VY、VZ)を算出する。例えば、非特許文献(Pratap Misra and Per Enge原著 日本航海学会GPS研究会訳:“精説GPS基本概念・測位原理・信号と受信機”正陽文庫,2004.)に記載された方法を用いて、各GPS衛星の速度ベクトルを算出することができる。
【0086】
また、図7に示すように、算出された各GPS衛星の速度ベクトル(VX、VY、VZ)及び各GPS衛星の方向(θ、φ)に基づいて、自車方向の各GPS衛星の速度Vsを算出する
次に、各GPS衛星jに対する自車両の相対速度v及び自車方向の各GPS衛星jの速度Vsに基づいて、以下の(6)式に従って、各GPS衛星jの方向の自車両の速度Vvを算出する。
【0087】
【数5】

【0088】
ただし、vは、GPS衛星jに対する自車両の相対速度(衛星方向におけるGPS衛星との相対速度)であり、Vsは、自車方向のGPS衛星jの速度である。また、Vvは、GPS衛星jの方向の自車速であり、Cbのドットは、クロックバイアスドリフトである。
【0089】
上述したように、GPS衛星方向の自車速は、GPS衛星位置の三次元位置ではなく、GPS衛星との方位関係によってのみ算出される。GPS衛星は遥か遠方にあり、1日で地球をほぼ2周するため1分間の角度変化は0.5度である。通常、GPS衛星とGPS受信機との時計誤差は精々数秒であるため、GPS衛星との方位関係に大きな影響はない。また、同じくGPS衛星は遥か遠方にあるため、自車の位置決定に数100m程度の誤差が生じていたとしても、GPS衛星との方位関係に大きな影響はない。このため、擬似距離に誤差が乗りやすい状況であったとしても、GPS衛星方向の自車速は、擬似距離に比較して正確に算出され得る。
【0090】
そして、以下に説明するように、自車両の速度ベクトルの最適推定を行う。
【0091】
まず、自車の速度ベクトルを(Vx,Vy,Vz)とした時、GPS衛星方向の自車両の速度Vvとの関係は以下の(7)式、(8)式で表される。
【0092】
【数6】

【0093】
各GPS衛星jについて得られる上記(7)式、(8)式より、Vx,Vy,Vz及びCbのドットを推定値とした、以下の(9)式で表される連立方程式が得られる。
【0094】
【数7】

【0095】
4個のGPS衛星からなる各組み合わせについて、上記(9)式の連立方程式を解くことによって、自車両の速度ベクトル(Vx,Vy,Vz)を各々算出し、算出された自車両の速度ベクトル(Vx,Vy,Vz)の最小二乗解を求めることによって、自車両の速度ベクトルの最適値を推定する。
【0096】
そして、推定された自車両の速度ベクトルの向きに基づいて、自車両の絶対的な走行方向を推定する。
【0097】
なお、上記4つの未知数のうち、鉛直方向の速度ベクトルを「0」にすると、3個以上のGPS衛星でも、自車両の絶対的な走行方向を推定することができる。衛星数が多いほど正しい方向を推定できる可能性があるが、最低3つあればマルチパス判定に必要な方向の推定が可能になる。
【0098】
上記のように、自車方向推定部222は、ドップラーシフト周波数を用いて、各GPS衛星方向に対する自車両の速度を算出し、各GPS衛星方向に対する自車両の速度から、自車両の絶対的な走行方向を推定する。
【0099】
到来波絶対方向推定部224は、推定された自車両の絶対的な走行方向を用いて、推定された、自車両の走行方向に対する、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向に変換して、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向の推定値とする。
【0100】
マルチパス判定部226では、衛星位置から算出された絶対的な到来方向と、推定された絶対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較して、到来方向が合致しない衛星を推定することにより、マルチパスを判定する。
【0101】
次に、第2の実施の形態に係るマルチパス判定処理ルーチンについて、図8を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して説明を省略する。
【0102】
まず、ステップ250において、GPS受信部12から複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、GPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差を取得する。
【0103】
そして、ステップ102において、各GPS衛星の方向を、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向として算出し、次のステップ104では、自車両の走行方向を基準とした、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を算出する。
【0104】
そして、ステップ252において、上記ステップ250で取得したドップラーシフト周波数を用いて、自車両の絶対的な走行方向を推定する。
【0105】
次のステップ254では、上記ステップ104で推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、上記ステップ252で推定された自車両の絶対的な走行方向とに基づいて、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を推定する。そして、ステップ256において、上記ステップ102で算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、上記ステップ254で推定された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを、GPS衛星毎に比較して、到来方向が一致するか否かに基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力する。
【0106】
次のステップ108では、上記ステップ256でマルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号があるか否かを判定する。上記ステップ256で、GPS衛星毎に比較したときに電波の到来方向が一致しないGPS衛星が存在した場合には、ステップ110において、受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星の擬似距離データを除き、上記ステップ100で取得された他のGPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0107】
一方、上記ステップ256で全てのGPS衛星について電波の到来方向が一致した場合には、上記ステップ108で、マルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号がなかったと判断され、ステップ112において、上記ステップ100で取得された各GPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0108】
上記ステップ252は、図9に示す自車方向推定処理ルーチンによって実現される。まず、ステップ270において、上記ステップ250で取得した各GPS衛星におけるドップラーシフト周波数に基づいて、各GPS衛星に対する自車両の相対速度を各々算出する。
【0109】
次のステップ272では、上記ステップ250で取得したGPS衛星の情報に基づいて算出されるGPS衛星の位置座標に基づいて、各GPS衛星の速度ベクトルを各々算出し、ステップ274において、上記ステップ110又はステップ112で前回算出された自車位置を取得する。
【0110】
そして、ステップ276において、上記ステップ250で取得した各GPS衛星の情報に基づいて算出される各GPS衛星の位置座標と、上記ステップ274で取得された自車位置とに基づいて、各GPS衛星の方向を算出する。ステップ278では、上記ステップ272で算出された各GPS衛星の速度ベクトルと、上記ステップ276で算出された各GPS衛星の方向とに基づいて、各GPS衛星について、自車方向のGPS衛星の速度を各々算出する。
【0111】
次のステップ280では、上記ステップ270で算出された各GPS衛星に対する相対速度と、上記ステップ278で算出された自車方向の各GPS衛星の速度とに基づいて、各GPS衛星方向の自車速を算出する。
【0112】
そして、ステップ282において、上記ステップ280で算出された各GPS衛星方向の自車速を用いて、自車両の速度ベクトルの最適推定を行う。ステップ284では、上記ステップ282で推定された自車両の速度ベクトルの方向に基づいて、自車両の絶対的な走行方向を推定して、自車方向推定処理ルーチンを終了する。
【0113】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車載測定装置によれば、複数のGPSアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を用いて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定すると共に、推定される自車両の絶対的な基準方向から、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を推定する。既知である衛星位置を利用して算出される各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、GPS衛星毎に比較することにより、簡易な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができる。
【0114】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0115】
第3の実施の形態では、自車位置が存在する道路の方向に基づいて、自車両の絶対的な走行方向を推定している点が、第2の実施の形態と異なっている。
【0116】
図10に示すように、第3の実施の形態に係る車載測定装置310のコンピュータ314は、GPS情報取得部20と、到来波絶対方向算出部22と、到来波相対方向推定部24と、算出された自車両の位置と、ナビゲーションシステム(図示省略)に記憶されている道路地図データとに基づいて、自車両の絶対的な走行方向(方位角)を推定する自車方向推定部322と、到来波絶対方向推定部224と、マルチパス判定部226と、マルチパスと判定されたGPS衛星以外の受信信号のGPS擬似距離データに基づいて、自車両の位置を算出すると共に、ナビゲーションシステム(図示省略)に記憶されている道路地図データを用いて、マップマッチングを行い、算出された自車両の位置を補正する自車位置算出部328とを備えている。
【0117】
自車位置算出部328は、GPS情報取得部20によって取得された各GPS衛星の情報と、マルチパス判定部226の判定結果とを用いて、上記第1の実施の形態と同様に、自車両の位置を算出する。また、自車位置算出部328は、自車両に搭載されているナビゲーションシステムから、道路地図データを取得し、算出された自車両の位置が、道路上の位置であるか否かを判断し、算出された自車両の位置が、道路上にない場合には、算出された自車両の位置が、道路上の位置となるようにマップマッチングを行い、算出された自車両の位置を補正する。これによって、測位位置が大きくずれていても、マップマッチングによって道路上への表示を適切に行うことができる。なお、マップマッチングの手法としては、従来既知の手法を用いればよく、本実施の形態では、詳細な説明を省略する。
【0118】
自車方向推定部322は、自車両に搭載されているナビゲーションシステムから、道路の位置を含む情報が格納された道路地図データを取得し、自車位置算出部328によって算出された自車両の位置が存在する道路の方向を、自車両の絶対的な走行方向として推定する。なお、自車両の位置が存在する道路のどちらの向きを、走行方向とするかは、前回までに算出された自車両の位置の時系列変化に基づいて決定すればよい。
【0119】
第3の実施の形態に係る車載測定装置310の作用について説明する。
【0120】
第3の実施の形態に係るマルチパス判定処理ルーチンでは、GPS受信部12から複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、GPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差を取得する。そして、各GPS衛星の方向を、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向として算出し、次に、自車両の走行方向を基準とした、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を算出する。
【0121】
そして、後述する自車方向推定処理ルーチンを実行して、自車両の絶対的な走行方向を推定する。次に、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、推定された自車両の絶対的な走行方向とに基づいて、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を推定する。そして、算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、推定された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを、GPS衛星毎に比較して、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力する。
【0122】
次に、マルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号がある場合には、受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星の擬似距離データを除き、取得された他のGPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出すると共に、マップマッチングを行って、自車位置を補正して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。マルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号がなかった場合には、取得された各GPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出すると共に、マップマッチングを行って、自車位置を補正して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0123】
第3の実施の形態に係る自車方向推定処理ルーチンについて図11を用いて説明する。まず、ステップ350において、上記のように前回算出された自車両の位置を取得し、ステップ352において、ナビゲーションシステムから道路地図データを読み込んで、上記ステップ350で取得した自車両の位置が存在する道路の方向を取得する。
【0124】
そして、ステップ354では、上記ステップ352で取得した道路の方向に基づいて、自車両の絶対的な走行方向を推定して、自車方向推定処理ルーチンを終了する。
【0125】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る車載測定装置によれば、複数のGPSアンテナの各々によって受信したGPS衛星からの受信信号の位相差を用いて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定すると共に、推定される自車両の絶対的な基準方向から、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を推定する。既知である衛星位置を利用して算出される各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、GPS衛星毎に比較することにより、簡易な構成で、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができる。
【0126】
また、自車両位置が存在する道路の方向から、自車両の絶対的な走行方向を推定することにより、衛星数不足などによってGPS衛星からの情報だけでは方位を決定できない場合においても、自車両の方位を推定することができるため、ロバストな到来波の絶対方向の推定ができ、マルチパスの判定精度も向上する。
【0127】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第4の実施の形態に係る車載測定装置の構成は、第2の実施の形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0128】
第4の実施の形態では、車速パルスの値を利用して、自車両の絶対的な走行方向を推定している点が、第2の実施の形態と主に異なっている。
【0129】
第4の実施の形態に係る車載測定装置では、自車方向推定部222によって、以下のように自車両の絶対的な走行方向を推定する。
【0130】
まず、ナビゲーションシステムやスピードメータの表示に用いられる、車速センサからの車速パルスを取得し、車速パルスの値から自車速を取得する。
【0131】
また、第2の実施の形態と同様に、各GPS衛星からの受信信号のドップラーシフト周波数から、各GPS衛星に対する自車両の相対速度を算出する。そして、各GPS衛星jに対する自車両の相対速度v、及び第2の実施の形態と同様に算出された自車方向の各GPS衛星jの速度Vsに基づいて、各GPS衛星jの方向の自車両の速度Vvを算出する。
【0132】
次に、電波を受信したGPS衛星数が2である場合に、Vx,Vy,Vz及びCbのドットを推定値とした、以下の(10)式で表される連立方程式が得られる。
【0133】
【数8】

【0134】
また、取得した自車速Vにより、以下の(11)式が得られる。
【0135】
【数9】

【0136】
ここで、Vz=0と近似すると共に、上記(11)式を用いて、上記(10)式の連立方程式を解くことにより、Vx,Vyを求め、Vx,Vyの比により、自車両の絶対的な走行方向を推定する。
【0137】
次に、第4の実施の形態に係る車載測定装置の作用について説明する。なお、第2の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して説明を省略する。
【0138】
コンピュータ214によって、第2の実施の形態と同様に、マルチパス判定処理ルーチンが実行される。また、図12に示すように、自車方向推定処理ルーチンが実行される。
【0139】
まず、ステップ400において、車速センサから車速パルスの値を取得し、自車速を取得する。そして、ステップ270において、上記のマルチパス判定処理ルーチンで取得した各GPS衛星におけるドップラーシフト周波数に基づいて、各GPS衛星に対する自車両の相対速度を各々算出する。
【0140】
次のステップ272では、各GPS衛星の速度ベクトルを各々算出し、ステップ274において、上記のマルチパス判定処理ルーチンで前回算出された自車位置を取得する。
【0141】
そして、ステップ276において、上記のマルチパス判定処理ルーチンで取得した各GPS衛星の情報に基づいて算出される各GPS衛星の位置座標と、上記ステップ274で取得された自車位置とに基づいて、各GPS衛星の方向を算出し、ステップ278では、上記ステップ272で算出された各GPS衛星の速度ベクトルと、上記ステップ276で算出された各GPS衛星の方向とに基づいて、各GPS衛星について、自車方向のGPS衛星の速度を各々算出する。
【0142】
次のステップ280では、上記ステップ270で算出された各GPS衛星に対する相対速度と、上記ステップ278で算出された自車方向の各GPS衛星の速度とに基づいて、各GPS衛星方向の自車速を算出する。
【0143】
そして、ステップ402において、上記ステップ280で算出された各GPS衛星方向の自車速と、上記ステップ400で得られた自車速とを用いて、自車両の速度ベクトルを推定し、推定された自車両の速度ベクトルの方向に基づいて、自車両の絶対的な走行方向を推定して、自車方向推定処理ルーチンを終了する。
【0144】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る車載測定装置によれば、自車両の車速パルスの値を用いて、自車両の絶対的な走行方向を推定することにより、衛星数不足などによってGPS衛星からの情報だけでは、自車両の方位を決定できない場合においても、自車両の方位を推定することができるため、ロバストな到来波の絶対方向の推定ができ、マルチパス判定精度も向上する。
【0145】
なお、上記の実施の形態では、電波を受信したGPS衛星の数が2である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、電波を受信したGPS衛星の数が3以上であってもよい。この場合には、2つのGPS衛星の各ペアを用いて、自車両の絶対的な走行方向を各々推定し、これらの推定結果を組み合わせて、自車両の絶対的な走行方向を推定するようにすればよい。
【0146】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第5の実施の形態に係る車載測定装置の構成は、第2の実施の形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0147】
第5の実施の形態では、車速パルスの値、及びクロックバイアスのドリフトを利用して、自車両の絶対的な走行方向を推定している点が、第2の実施の形態と主に異なっている。
【0148】
第5の実施の形態に係る車載測定装置では、自車位置算出部28によって、電波を受信した全てのGPS衛星について得られた擬似距離データのうち、受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星の擬似距離データを除外し、残りのGPS衛星の擬似距離データを用いて得られる上記(4)式の連立方程式を解くことによって、自車両の位置(x、y、z)及びクロックバイアスによる距離誤差sを算出すると共に、距離誤差sからクロックバイアスを算出して、メモリに記憶する。
【0149】
自車方向推定部222は、以下のように自車両の絶対的な走行方向を推定する。なお、電波を受信したGPS衛星数が1である場合について説明する。
【0150】
まず、メモリから、上記のように過去に算出されたクロックバイアスの時系列データを取得し、クロックバイアスの時系列データから、クロックバイアスドリフト(時間と共に変化するクロックバイアスのドリフト成分)を予測する。
【0151】
また、車速センサからの車速パルスを取得し、車速パルスの値から自車速を取得する。
【0152】
また、第2の実施の形態と同様に、GPS衛星からの受信信号のドップラーシフト周波数から、GPS衛星に対する自車両の相対速度を算出する。
【0153】
また、GPS衛星jに対する自車両の相対速度v、及び第2の実施の形態と同様に算出された自車方向のGPS衛星jの速度Vsに基づいて、GPS衛星jの方向の自車両の速度Vvを算出する。
【0154】
Vx,Vy,Vz及びCbのドットを推定値とした、以下の(12)式で表される方程式が得られる。
【0155】
【数10】

【0156】
ここで、Vz=0と近似すると共に、取得した自車速vを用いて得られる上記(11)式、及び算出されたクロックバイアスドリフトCbのドットを用いて、上記(12)式の方程式を解くことにより、Vx,Vyを求め、Vx,Vyの比により、自車両の絶対的な走行方向を推定する。
【0157】
次に、第5の実施の形態に係る車載測定装置の作用について説明する。なお、第2の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して説明を省略する。
【0158】
コンピュータ214によって、第2の実施の形態と同様に、マルチパス判定処理ルーチンが実行される。また、図13に示すように、自車方向推定処理ルーチンが実行される。なお、以下では、電波を受信したGPS衛星数が1である場合を例に説明する。
【0159】
まず、ステップ500において、前回までの位置算出で得られたクロックバイアスの時系列データをメモリから取得し、ステップ502において、上記ステップ500で取得したクロックバイアスの時系列データから、クロックバイアスドリフトを算出する。
【0160】
そして、ステップ400において、車速センサから車速パルスの値を取得し、自車速を取得する。そして、ステップ270において、上記のマルチパス判定処理ルーチンで取得したGPS衛星におけるドップラーシフト周波数に基づいて、GPS衛星に対する自車両の相対速度を算出する。
【0161】
次のステップ272では、GPS衛星の速度ベクトルを算出し、ステップ274において、上記のマルチパス判定処理ルーチンで前回算出された自車位置を取得する。
【0162】
そして、ステップ276において、上記のマルチパス判定処理ルーチンで取得したGPS衛星の情報に基づいて算出されるGPS衛星の位置座標と、上記ステップ274で取得された自車位置とに基づいて、GPS衛星の方向を算出し、ステップ278では、上記ステップ272で算出されたGPS衛星の速度ベクトルと、上記ステップ276で算出されたGPS衛星の方向とに基づいて、GPS衛星について、自車方向のGPS衛星の速度を算出する。
【0163】
次のステップ280では、上記ステップ270で算出されたGPS衛星に対する相対速度と、上記ステップ278で算出された自車方向のGPS衛星の速度とに基づいて、GPS衛星方向の自車速を算出する。
【0164】
そして、ステップ504において、上記ステップ280で算出されたGPS衛星方向の自車速と、上記ステップ400で得られた自車速と、上記ステップ502で算出されたクロックバイアスドリフトの値とを用いて、自車両の速度ベクトルを推定し、推定された自車両の速度ベクトルの方向に基づいて、自車両の絶対的な走行方向を推定して、自車方向推定処理ルーチンを終了する。
【0165】
このように、位置算出の際に得られるクロックドリフトから算出されるクロックバイアスドリフトと、自車両の車速パルスの値とを用いて、自車両の絶対的な走行方向を推定することにより、衛星数不足などによってGPS衛星の情報だけでは自車両の方位を決定できない場合においても、自車両の方位を推定することができるため、ロバストな到来波の絶対方向の推定ができ、マルチパス判定精度も向上する。
【0166】
なお、上記の実施の形態では、自車両の走行方向を推定する際に、クロックバイアスドリフトを算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではい。クロックバイアスドリフトの値は基本的に短時間の間では一定値と考えられ、大きな変動がないため、数分程度であれば過去に算出されたクロックバイアスドリフトの値を用いてもよい。
【0167】
また、上記の実施の形態では、電波を受信したGPS衛星の数が1である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、電波を受信したGPS衛星の数が2以上であってもよい。この場合には、電波を受信したGPS衛星の各々の情報を用いて、自車両の絶対的な走行方向を各々推定し、これらの推定結果を組み合わせて、自車両の絶対的な走行方向を推定するようにすればよい。
【0168】
また、上記の第2の実施の形態〜第5の実施の形態では、推定された自車両の絶対的な走行方向と推定された電波の相対的な到来方向とから、電波の絶対的な到来方向を推定して、絶対的な到来方向同士を比較することにより、マルチパスを判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。推定された自車両の絶対的な走行方向と算出された電波の絶対的な到来方向とから、電波の相対的な到来方向を算出して、相対的な到来方向同士を比較することにより、マルチパスを判定するようにしてもよい。
【0169】
また、第2の実施の形態〜第5の実施の形態における自車両の走行方向の推定方法を組み合わせて、自車両の絶対的な走行方向を推定するようにしてもよい。また、受信信号の位相差や測位差異から自車両の絶対的な走行方向を推定する方法を更に組み合わせてもよい。
【0170】
次に、第6の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0171】
第6の実施の形態では、3本のGPSアンテナを備えている点と、推定された電波の相対的な到来方向に遮蔽物が存在するか否かに基づいて、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定して、複数種類のマルチパス判定手法を用いている点とが、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0172】
図14に示すように、第6の実施の形態に係る車載測定装置610のGPS受信部612は、GPS衛星からの電波を受信する3本のGPSアンテナ612A、612B、612Cを備えており、各GPSアンテナ612A、612B、612Cによって、GPS衛星からの電波を各々受信する。なお、GPSアンテナ612A、612B、612C間の各々の距離は既知である。
【0173】
コンピュータ614は、GPS受信部612から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPSアンテナ612A、612B、612C間の各々の受信信号の位相差を算出して取得するGPS情報取得部620と、到来波絶対方向算出部22と、取得した各GPS衛星のGPSアンテナ612A、612B、612C間の各々の位相差に基づいて、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向(水平面に対する仰角及び水平面上の方位角)を推定する到来波相対方向推定部624と、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を全体として比較して、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定するマルチパス判定部626と、自車位置算出部28と、ナビゲーションシステムから得られる道路地図データに基づいて、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に、遮蔽物が存在するか否かを判断して、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定する第2マルチパス判定部640とを備えている。
【0174】
GPS情報取得部620は、GPS受信部612から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPSアンテナ612A、612B、613Bの各々の受信信号に基づいて、GPSアンテナ612A、612B、612C間の各々の受信信号の位相差を算出する。
【0175】
到来波相対方向推定部624は、各GPS衛星について算出されたGPSアンテナ612A、612B、612C間の各々の受信信号の位相差と、GPSアンテナ612A、612B、612C間の各々の距離Lとに基づいて、自車両の走行方向に対する、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向(水平面に対する仰角及び水平面上の方位角)を推定する。
【0176】
マルチパス判定部626は、到来波相対方向推定部624によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向(水平面に対する仰角及び水平面上の方位角)と、到来波絶対方向算出部22によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向(水平面に対する仰角及び北方向に対する方位角)とを、全体として比較して、到来方向として仰角及び方位角の双方が合致しない衛星を推定することにより、マルチパスを判定する。
【0177】
第2マルチパス判定部640は、ナビゲーションシステムから、道路沿いの建物情報を含む道路地図データを取得し、道路地図データから、自車位置算出部28により算出された自車位置の周辺(自車位置が存在する道路の道路沿い)の建物情報(建物の位置や高さを含む情報)を取得する。第2マルチパス判定部640は、取得した建物情報に基づいて、到来波相対方向推定部624によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向(水平面に対する仰角及び水平面上の方位角)に、遮蔽物となる建物が存在するか否かを判断し、電波の相対的な到来方向に遮蔽物が存在するGPS衛星を推定することにより、マルチパスを判定する。
【0178】
自車位置算出部28は、電波を受信した全てのGPS衛星について得られた擬似距離データのうち、マルチパス判定部626又は第2マルチパス判定部640によって受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星の擬似距離データを除外し、残りのGPS衛星の擬似距離データを用いて得られる上記(4)式の連立方程式を解くことによって、自車両の位置(x、y、z)を算出する。
【0179】
次に、第6の実施の形態に係る車載測定装置610の作用について説明する。
【0180】
GPS受信部612によって、複数のGPS衛星から電波を受信しているときに、コンピュータ614において、以下のように、マルチパス判定処理ルーチンが実行される。
【0181】
まず、GPS受信部612から複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、複数のGPS衛星のGPSアンテナ612A、612B、612C間の各々の受信信号の位相差を算出して取得する。
【0182】
そして、取得した各GPS衛星の情報に含まれる各GPS衛星の位置座標と、算出された自車位置とに基づいて、各GPS衛星の方向を、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向として算出する。次に、取得したGPSアンテナ612A、612B、612C間の各々についての各GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、自車両の走行方向を基準とした、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向(水平面に対する仰角及び水平面上の方位角)を推定する。
【0183】
そして、算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向とを全体として比較して、到来方向における仰角及び方位角が一致するか否かに基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力する。
【0184】
次に、上記の判定処理又は後述する第2マルチパス判定処理ルーチンでマルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号がある場合には、受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星の擬似距離データを除き、取得された他のGPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。一方、マルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号がなかった場合には、取得された各GPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0185】
また、コンピュータ614において、上記のマルチパス判定処理ルーチンと並行に、図15に示す第2マルチパス判定処理ルーチンが実行される。
【0186】
まず、ステップ650において、上記のマルチパス判定処理ルーチンによって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向(仰角及び方位角)を取得する。そして、ステップ652において、ナビゲーションシステムから道路地図データを取得し、道路地図データから、上記のマルチパス判定処理ルーチンで直近に算出された自車両の位置について、周辺の建物情報を取得する。
【0187】
次のステップ654において、上記ステップ652で取得した周辺の建物情報に基づいて、各GPS衛星について、上記ステップ650で取得した電波の相対的な到来方向(仰角及び方位角)に、遮蔽物となる建物が存在するかを判断して、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力し、第2マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0188】
以上説明したように、第6の実施の形態に係る車載測定装置によれば、推定される電波の到来方向を比較してマルチパスを判定すると共に、推定された電波の到来方向に遮蔽物が存在するか否かを判断して、マルチパスを判定し、判定結果を組み合わせることにより、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かをより精度よく判定することができる。
【0189】
次に、第7の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第6の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0190】
第7の実施の形態では、周辺を撮像した画像を用いて、推定された電波の相対的な到来方向に遮蔽物が存在するか否かを判断している点が、第6の実施の形態と主に異なっている。
【0191】
図16に示すように、第7の実施の形態に係る車載測定装置710は、自車両の周辺(特に側方)を撮像するように設置された撮像装置712を備え、撮像装置712は、コンピュータ714に接続されている。
【0192】
車載測定装置710のコンピュータ714は、GPS情報取得部620と、到来波絶対方向算出部22と、到来波相対方向推定部624と、マルチパス判定部626と、自車位置算出部28と、撮像装置712により撮像された周辺画像から遮蔽物を検出する遮蔽物検出部738と、遮蔽物検出部738の検出結果に基づいて、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に、遮蔽物が存在するか否かを判断することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定する第2マルチパス判定部740とを備えている。
【0193】
遮蔽物検出部738は、撮像装置712により撮像された周辺画像に対して、画像認識処理を行って、建物等の遮蔽物を検出すると共に、周辺に存在する遮蔽物の位置及び高さを検出する。
【0194】
第2マルチパス判定部740は、遮蔽物検出部738による検出結果を取得する。第2マルチパス判定部740は、取得した検出結果が表わす周辺に存在する遮蔽物の位置及び高さに基づいて、到来波相対方向推定部624によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向(仰角及び方位角)に、遮蔽物となる建物が存在するか否かを判断し、電波の相対的な到来方向に遮蔽物が存在するGPS衛星を推定することにより、マルチパスを判定する。
【0195】
次に、第7の実施の形態に係る車載測定装置710の作用について説明する。
【0196】
GPS受信部612によって、複数のGPS衛星から電波を受信しているときに、コンピュータ714において、上記第6の実施の形態と同様に、マルチパス判定処理ルーチンが実行される。
【0197】
また、撮像装置712によって、自車両の周辺の画像が連続して撮像されているときに、コンピュータ714において、上記のマルチパス判定処理ルーチンと並行に、図17に示す第2マルチパス判定処理ルーチンが実行される。なお、第6の実施の形態と同様の処理については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0198】
まず、ステップ750において、撮像装置712から周辺画像を取得し、ステップ752において、上記ステップ750で取得した周辺画像から、遮蔽物となる建物を検出し、建物が存在する位置及び建物の高さを検出する。
【0199】
そして、ステップ650において、上記のマルチパス判定処理ルーチンによって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向(仰角及び方位角)を取得する。そして、ステップ756において、上記ステップ752で検出した周辺に存在する建物の位置及び高さに基づいて、各GPS衛星について、上記ステップ650で取得した電波の相対的な到来方向(仰角及び方位角)に、遮蔽物となる建物が存在するかを判断して、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力し、第2マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0200】
このように、推定される到来方向を比較してマルチパスを判定すると共に、電波の到来方向に遮蔽物が存在するか否かを判断して、マルチパスを判定することにより、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かをより精度よく判定することができる。
【0201】
なお、上記の第6の実施の形態及び第7の実施の形態では、道路地図データや周辺画像に基づいて電波の到来方向に遮蔽物があるか否かを判断して、マルチパスを判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、推定された電波の到来方向のみに基づいて、マルチパスを判定してもよい。推定されたGPS衛星からの電波の相対的な到来方向が、予め定められた、遮蔽物が存在する可能性が高い方向であるか否かによって、そのGPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定してもよい。例えば、GPS衛星からの電波の相対的な到来方向が、走行方向と直交する方向である場合や、道路沿いの方向である場合、到来方向の仰角が低い場合には、マルチパスである可能性が高いと判定するようにしてもよい。
【0202】
次に、第8の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0203】
第8の実施の形態では、複数種類のマルチパス判定手法を用いて、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定している点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0204】
図18に示すように、第8の実施の形態に係る車載測定装置810のGPS受信部12は、複数のGPS衛星からの電波を受信して、受信した全てのGPS衛星からの受信信号から、GPS衛星の情報として、GPS衛星の衛星番号、搬送波位相、コード擬似距離、ドップラーシフト周波数、信号強度、及び軌道情報を取得し、コンピュータ814に出力する。なお、GPS衛星の情報は、アンテナ12A、12Bの各々について取得され、コンピュータ814に出力される。
【0205】
コンピュータ814は、GPS受信部12から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報をアンテナ毎に取得すると共に、GPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差を取得するGPS情報取得部820と、到来波絶対方向算出部22と、到来波相対方向推定部24と、マルチパス判定部26と、自車位置算出部28と、GPS情報取得部220によって取得された各GPS衛星のGPS擬似距離データ及び受信信号の位相差に基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定する第2マルチパス判定部824と、GPS情報取得部220によって取得された各GPS衛星のドップラーシフト周波数に基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定する第3マルチパス判定部826とを備えている。なお、第2マルチパス判定部824は、第3判定手段の一例であり、第3マルチパス判定部826は、第4判定手段の一例である。
【0206】
GPS情報取得部820は、GPS受信部12から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を、GPSアンテナ12A、12B毎に取得すると共に、GPSアンテナ12A、12Bの位相差を算出する。また、GPS衛星の位置、及びGPS衛星が電波を送信した送信時刻は、受信信号から取得したGPS衛星の情報に基づいて推定されて取得される。
【0207】
第2マルチパス判定部824は、GPS衛星の各々について、GPSアンテナ12A、12B間の当該GPS衛星のGPS擬似距離データの差分と、GPSアンテナ12A、12B間の当該GPS衛星の受信信号の位相差とを比較し、これらの差が閾値以上であれば、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであると判定し、これらの差が閾値未満であれば、GPS衛星からの受信信号がマルチパスではないと判定する。
【0208】
例えば、図19に示すように、GPSアンテナ12A、12B間で受信した電波の経路が大きく異なる場合には、GPSアンテナ12A、12B間で得られるGPS擬似距離データの差分が大きくなる一方、この差分が、受信信号の位相差の最大値(2π)を越えることにより、受信信号の位相差が小さくなる。従って、上記のGPS擬似距離データの差分と、受信信号の位相差との差が大きくなり、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであると判定される。なお、上記判定で用いる閾値については、実験的又は統計的に、一方のGPSアンテナでのみマルチパスの受信信号を受信する場合における、アンテナ間のGPS擬似距離データの差分と、アンテナ間の受信信号の位相差との差を予め求めておき、求められた差に基づいて、閾値を設定しておけばよい。
【0209】
第3マルチパス判定部826は、GPS衛星の各々について、GPSアンテナ12A、12B間のドップラーシフト周波数の差分が、閾値以上であれば、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであると判定し、この差分が閾値未満であれば、GPS衛星からの受信信号がマルチパスではないと判定する。通常、自車両に発生し得る車両運動(ヨーレート)に相当する範囲で、GPSアンテナ12A、12B間のドップラーシフト周波数の差分が生じるが、例えば、上記図19のように、GPSアンテナ12A、12B間で受信した電波の経路が大きく異なる場合には、GPSアンテナ12A、12B間で得られるドップラーシフト周波数の差分が大きくなり、GPS衛星からの受信信号がマルチパスであると判定される。
【0210】
なお、上記判定で用いる閾値については、実験的又は統計的に、一方のGPSアンテナでのみマルチパスの受信信号を受信する場合における、アンテナ間のドップラーシフト周波数の差分を予め求めておき、求められた差分に基づいて、閾値を設定しておけばよい。
【0211】
次に、第8の実施の形態に係る車載測定装置810の作用について説明する。
【0212】
GPS受信部12によって、複数のGPS衛星から電波を受信しているときに、コンピュータ814において、以下のように、マルチパス判定処理ルーチンが実行される。
【0213】
まず、GPS受信部12から複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、複数のGPS衛星のGPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差を取得する。
【0214】
そして、取得した各GPS衛星の情報に基づいて算出される各GPS衛星の位置座標と、算出された自車位置とに基づいて、各GPS衛星の方向を、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向として算出する。次に、取得したGPSアンテナ12A、12B間の各GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、アンテナ設置方向を基準とした、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を推定する。
【0215】
そして、算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向とを全体として比較して、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力する。
【0216】
次に、上記の判定、後述する第2マルチパス判定処理ルーチン、又は後述する第3マルチパス判定処理ルーチンで、マルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号がある場合には、受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星の擬似距離データを除き、取得された他のGPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。一方、マルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号がなかった場合には、取得された各GPS衛星の擬似距離データに基づいて、自車位置を算出して外部装置に出力し、マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0217】
また、コンピュータ814において、上記のマルチパス判定処理ルーチンと並行に、図20に示す第2マルチパス判定処理ルーチンが実行される。
【0218】
まず、ステップ850において、GPS受信部12からの出力に基づいて、各GPS衛星について、GPSアンテナ12A、12B毎のGPS擬似距離データを算出すると共に、GPSアンテナ12A、12B間のGPS擬似距離データの差分を算出して取得する。
【0219】
そして、ステップ852において、各GPS衛星について、上記ステップ850で取得したGPSアンテナ12A、12B間のGPS擬似距離データの差分と、上記のマルチパス判定処理ルーチンで取得したGPSアンテナ12A、12B間の受信信号の位相差との差を算出する。
【0220】
次のステップ854では、各GPS衛星について、上記ステップ852で算出された差が、閾値以上であるか否かを判定することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力して、第2マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0221】
また、コンピュータ814において、上記のマルチパス判定処理ルーチン及び第2マルチパス判定処理ルーチンと並行に、図21に示す第3マルチパス判定処理ルーチンが実行される。
【0222】
まず、ステップ860において、GPS受信部12からの出力に基づいて、各GPS衛星について、GPSアンテナ12A、12B毎のドップラーシフト周波数を取得すると共に、GPSアンテナ12A、12B間のドップラーシフト周波数の差分を算出して取得する。
【0223】
そして、ステップ862において、各GPS衛星について、上記ステップ860で算出されたドップラーシフト周波数の差分が、閾値以上であるか否かを判定することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定し、判定結果を外部装置に出力して、第3マルチパス判定処理ルーチンを終了する。
【0224】
以上説明したように、第8の実施の形態に係る車載測定装置によれば、複数種類のマルチパスの判定手法を組み合わせることにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを精度よく判定することができる。
【0225】
また、上記の実施の形態では、アンテナ間の擬似距離の差を用いてマルチパスを判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、アンテナ間のGPS電波伝搬時間の差と、受信信号の位相差との差分を用いて、受信信号がマルチパスであるか否かを判定するようにしてもよい。この場合には、GPS衛星が電波を送信した時刻及び自車両で電波を受信した時刻に基づいて、GPS電波伝搬時間を算出するようにすればよい。
【0226】
また、上記の第6の実施の形態〜第8の実施の形態では、到来方向を全体として比較してマルチパスを判定するマルチパス判定手法と、他のマルチパス判定手法とを組み合わせた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、上記第2の実施の形態〜第5の実施の形態におけるマルチパス判定手法に、第6の実施の形態〜第8の実施の形態の第2マルチパス判定部又は第3マルチパス判定部の判定手法を組み合わせてもよい。
【0227】
また、第6の実施の形態における第2マルチパス判定部640による判定手法、第7の実施の形態における第2マルチパス判定部740による判定手法、第8の実施の形態における第2マルチパス判定部824による判定手法、及び第3マルチパス判定部826による判定手法の任意の組み合わせを、第1の実施の形態〜第5の実施の形態におけるマルチパス判定手法に組み合わせて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定するようにしてもよい。
【0228】
また、何れかの1つの判定手法によりマルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号を、最終的にマルチパスと判定した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、全ての判定手法によりマルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号を、最終的にマルチパスと判定するようにしてもよく、また、少なくとも2つの判定手法によりマルチパスであると判定されたGPS衛星からの受信信号を、最終的にマルチパスと判定するようにしてもよい。
【0229】
また、上記の第1の実施の形態〜第8の実施の形態において、従来既知の擬似距離残差などを用いたマルチパスの判定手法も組み合わせて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定するようにしてもよい。この場合には、その手順や組み合わせは任意でよい。
【0230】
また、擬似距離データではなく、GPS電波伝搬時間を用いて、自車両の位置を算出するようにしてもよい。
【0231】
また、GPS衛星の方向を算出する際に用いる自車両の位置として、擬似距離データを用いた位置算出の値を用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。GPS衛星の方向を求める際には、おおざっぱな自車両の位置が分かればよいため、地図データなどから求められる自車両の位置を用いてもよい。
【0232】
また、マルチパスの判定結果を用いて、自車両の位置を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、信号の反射点予測などによって周辺構造物の配置を推定する場合に、マルチパスの判定結果を用いて反射点を予測するようにしてもよい。また、自車両の速度を算出して、外部装置に出力してもよい。この場合には、マルチパスの判定結果を用いて、自車両の速度を算出することができる。
【符号の説明】
【0233】
10、210、310、610、710、810 車載測定装置
12A、12B、612A、612B、612C GPSアンテナ
12、612 GPS受信部
14、214、314、614、714、814 コンピュータ
20、220、620、820 GPS情報取得部
22 到来波絶対方向算出部
24、624 到来波相対方向推定部
26、226、626 マルチパス判定部
28、328 自車位置算出部
222 自車方向推定部
224 到来波絶対方向推定部
322 自車方向推定部
640、740、824 第2マルチパス判定部
712 撮像装置
738 遮蔽物検出部
826 第3マルチパス判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段と、
前記GPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段と、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段と、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段と、
前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを全体として比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段と、
を含むマルチパス判定装置。
【請求項2】
GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段と、
前記GPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段と、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段と、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段と、
自車両の絶対的な基準方向を推定する自車方向推定手段と、
前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向、及び前記自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段と、
を含むマルチパス判定装置。
【請求項3】
GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段と、
前記GPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の位置情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段と、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段と、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段と、
自車両の絶対的な基準方向を推定する自車方向推定手段と、
前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向、及び前記自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段と、
を含むマルチパス判定装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記GPS衛星の位置情報、前記GPS衛星からの受信信号の位相差、及び前記GPS衛星からの受信信号のドップラー周波数を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得し、
前記自車方向推定手段は、前記取得手段によって取得された前記ドップラー周波数の各々に基づいて、各GPS衛星に対する自車両の相対速度を算出する相対速度算出手段を備え、前記相対速度算出手段によって算出された前記相対速度を用いて、自車両の絶対的な基準方向を推定する請求項2又は3記載のマルチパス判定装置。
【請求項5】
前記自車方向推定手段は、前記取得されたGPS衛星の情報から、各GPS衛星の速度を算出し、前記相対速度算出手段によって算出された各GPS衛星に対する前記相対速度と前記算出された各GPS衛星の速度とに基づいて、各GPS衛星方向の自車両の速度を算出する自車両速度算出手段と、算出された各GPS衛星方向の自車両の速度に基づいて、自車両の速度ベクトルを推定する速度ベクトル推定手段とを更に備え、前記速度ベクトル推定手段により推定された自車両の速度ベクトルに基づいて、自車両の絶対的な基準方向を推定する請求項4記載のマルチパス判定装置。
【請求項6】
自車両の位置を算出する位置算出手段を更に含み、
前記自車方向推定手段は、予め記憶された道路地図情報から、前記位置算出手段によって算出された自車両の位置が存在する道路の方向を取得し、取得した道路の方向に基づいて、自車両の絶対的な基準方向を推定する請求項2又は3項記載のマルチパス判定装置。
【請求項7】
前記自車方向推定手段は、前記取得されたGPS衛星の情報から、各GPS衛星の速度を算出し、前記相対速度算出手段によって算出された各GPS衛星に対する前記相対速度と前記算出された各GPS衛星の速度とに基づいて、各GPS衛星方向の自車両の速度を算出する自車両速度算出手段と、自車両の車速を取得する車速取得手段と、少なくとも2つのGPS衛星について算出された各GPS衛星方向の自車両の速度と、前記取得された自車両の車速とに基づいて、自車両の速度ベクトルを推定する速度ベクトル推定手段とを更に備え、前記速度ベクトル推定手段により推定された自車両の速度ベクトルに基づいて、自車両の絶対的な基準方向を推定する請求項4記載のマルチパス判定装置。
【請求項8】
前記自車方向推定手段は、前記取得されたGPS衛星の情報から、各GPS衛星の速度を算出し、前記相対速度算出手段によって算出された各GPS衛星に対する前記相対速度と前記算出された各GPS衛星の速度とに基づいて、各GPS衛星方向の自車両の速度を算出する自車両速度算出手段と、自車両の車速を取得する車速取得手段と、クロックバイアスの時間に伴う変化の割合を示すクロックバイアスドリフトを算出するクロックバイアスドリフト算出手段と、少なくとも1つのGPS衛星について算出されたGPS衛星方向の自車両の速度と、前記取得された自車両の車速と、前記算出されたクロックバイアスドリフトとに基づいて、自車両の速度ベクトルを推定する速度ベクトル推定手段とを更に備え、前記速度ベクトル推定手段により推定された自車両の速度ベクトルに基づいて、自車両の絶対的な基準方向を推定する請求項4記載のマルチパス判定装置。
【請求項9】
前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に、遮蔽物が存在するか否かに基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定する第2判定手段を更に含む請求項1〜請求項8の何れか1項記載のマルチパス判定装置。
【請求項10】
自車両の周囲を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像から遮蔽物を検出する遮蔽物検出手段とを更に含み、
前記第2判定手段は、前記遮蔽物検出手段の検出結果に基づいて、前記推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に、遮蔽物が存在するか否かを判断する請求項9記載のマルチパス判定装置。
【請求項11】
自車両の位置を算出する位置算出手段を更に含み、
前記遮蔽物判定手段は、予め記憶された道路地図情報から、前記位置算出手段によって算出された自車両の位置の周辺に存在する遮蔽物の有無を取得し、前記推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向に、遮蔽物が存在するか否かを判断する請求項9項記載のマルチパス判定装置。
【請求項12】
前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向が、予め定められた、遮蔽物が存在する可能性のある方向であるか否かに基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを判定する第2判定手段を更に含む請求項1〜請求項8の何れか1項記載のマルチパス判定装置。
【請求項13】
前記取得手段は、更に、前記GPS衛星から電波が送信されて自車両まで到達するまでのGPS電波伝搬時間又は前記GPS衛星までの擬似距離を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて、前記アンテナ毎に取得し、
各GPS衛星について、前記アンテナ間の前記GPS電波伝搬時間の差又は前記擬似距離の差と、該GPS衛星からの受信信号の位相差とを比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する第3判定手段を更に含む請求項1〜請求項12の何れか1項記載のマルチパス判定装置。
【請求項14】
前記取得手段は、更に、前記GPS衛星からの受信信号のドップラー周波数を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて、前記アンテナ毎に取得し、
各GPS衛星における前記アンテナ間のドップラー周波数の差に基づいて、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する第4判定手段を更に含む請求項1〜請求項13の何れか1項記載のマルチパス判定装置。
【請求項15】
前記GPS受信手段は、3つ以上のアンテナを備え、
前記相対方向推定手段は、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の前記アンテナ間の各々の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の、仰角及び方位角で表わされる相対的な到来方向を各々推定し、
前記絶対方向算出手段は、各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の、仰角及び方位角で表わされる絶対的な到来方向を各々算出する請求項1〜請求項14の何れか1項記載のマルチパス判定装置。
【請求項16】
前記取得手段は、更に、前記GPS衛星から電波が送信されて自車両まで到達するまでのGPS電波伝搬時間又は前記GPS衛星までの擬似距離を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得し、
受信信号がマルチパスであると判定されたGPS衛星以外の各GPS衛星の前記GPS電波伝搬時間又は前記擬似距離に基づいて、自車両の位置を算出する位置算出手段を更に含む請求項1〜請求項15の何れか1項記載のマルチパス判定装置。
【請求項17】
コンピュータを、
GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段、及び
前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを全体として比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項18】
コンピュータを、
GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段、
自車両の絶対的な基準方向を推定する自車方向推定手段、及び
前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向、及び前記自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項19】
GPS衛星からの電波を受信する複数のアンテナを備えたGPS受信手段によって受信した前記GPS衛星の位置情報、及び前記複数のアンテナの各々によって受信した前記GPS衛星からの受信信号の位相差を、前記電波を受信したGPS衛星の全てについて取得する取得手段、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星からの受信信号の位相差に基づいて、該GPS衛星からの電波の相対的な到来方向を各々推定する相対方向推定手段、
各GPS衛星について、前記取得手段によって取得した該GPS衛星の位置情報に基づいて、該GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向を各々算出する絶対方向算出手段、
自車両の絶対的な基準方向を推定する自車方向推定手段、及び
前記相対方向推定手段によって推定された各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向と、前記絶対方向算出手段によって算出された各GPS衛星からの電波の絶対的な到来方向、及び前記自車方向推定手段によって推定された自車両の絶対的な基準方向から求められる、各GPS衛星からの電波の相対的な到来方向とを、各GPS衛星について比較することにより、各GPS衛星からの受信信号がマルチパスであるか否かを各々判定する判定手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−256301(P2010−256301A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109804(P2009−109804)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】