説明

メソポーラス複合体およびその製造方法

【課 題】 平滑性の低い多孔質支持体上に、メソポーラス酸化物薄膜が均一に製膜されており、かつ前記多孔質支持体の内部に前記薄膜を構成する酸化物が実質的に存在しないメソポーラス複合体の提供。
【解決手段】(1)多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させ、(2)前記(1)で得た流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源からなるゲル薄膜を形成させることにより多層構造体とし、ついで(3)該多層構造体を焼成することにより流動パラフィンと界面活性剤とを除去して、多孔質支持体上にメソポーラス酸化物薄膜が積層されてなるメソポーラス複合体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラス酸化物薄膜を有するメソポーラス複合体およびその製造方法、水素分離用複合体およびその製造方法、ならびに該水素分離用複合体を用いる水素の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MCM−41(特許文献1参照)やFSM−16(非特許文献1参照)に代表される、均一なメソ孔(細孔径)を有するメソポーラスシリカが注目されている。メソポーラスシリカは界面活性剤のミセルを鋳型にして合成されるため、メソポーラスシリカの細孔径は界面活性剤の炭素鎖長に依存する。よって、メソポーラスシリカは、均一な細孔径を持ち、細孔の大きさを制御できるという長所がある。かかるメソポーラスシリカは、その細孔内に、ゼオライトの細孔(2nm以下)に入らないような嵩高い分子に対する触媒や種々の機能を有するゲスト種を導入できることから、光学材料、電子材料への応用も考えられている。
【0003】
このような規則的な構造を持つメソポーラスシリカをガスや溶液の分離に応用する場合、これらの材料を基板上に均一に保持する技術が必要である。基板上に均一なメソポーラス薄膜を製造する方法としては、スピンコート法(特許文献2、非特許文献2参照)、ディップコート法(非特許文献3参照)、基板の表面に膜を析出させる方法(非特許文献4参照)などがある。
【特許文献1】特開平5−503499号公報
【特許文献2】特開2005−104808号公報
【非特許文献1】J.S.Beck, J.C.Vartuli, W.J.Roth, M.E.Leonowicz, C.T.Kresge, K.D.Schmitt, C. T.W.Chu, D.H.Olson, E.W.Sheppard, et al.:“A new family of mesoporous molecular sieves prepared with liquid crystal templates”, J.Am.Chem.Soc.1992,114(27), pp.10834−10843.
【非特許文献2】Ogawa M.: “A simple sol−gel route for the preparation of silica−surfactant mesostructured materials”, Chem.Commun., 1996,pp.1149−1150.
【非特許文献3】Lu, Y.; Ganguli, R.; Drewien, C.; Anderson, M.; Brinker, C., Gong, W.; Guo, Y.; Soyez, H.; Dunn, B.; Huang, M.; Zink, J.:“Continuous Formation of Supported Cubic and Hexagonal Mesoporous Films by Sol−Gel Dip Coating”, Nature, 1997, 389,pp. 364−368.
【非特許文献4】Yang H; Kuperman A; Coombs N; MamicheAfara S; Ozin GA:“Synthesis of Oriented Mesoporous Silica Films on Mica”, Nature,1996, 379,pp.703−705.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、メソポーラスシリカは、主に、シリコンやガラスなどの材質からなる非多孔質基板上に形成される例が多い。メソポーラスシリカをガスや溶液の分離膜に用いるには、物質の透過性を有する多孔質基板を支持体として用いる必要がある。しかし、多孔質基板を支持体として採用する場合であって、多孔質基板の細孔が粗い場合には、多孔質基板表面に粗い細孔が存在するため、メソポーラスシリカ薄膜を多孔質基板上に製膜しようとすると、多孔質基板の細孔内にメソポーラス材料が入り込み、均一にメソポーラス材料を保持することが難しく、ガスや溶液の分離膜に有用な、多孔質基板上に均一に製膜され、かつ多孔質基板の内部にメソポーラス材料が実質的に存在しない薄膜を形成することができなかった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、平滑性の低い多孔質支持体上に、メソポーラス酸化物薄膜が均一に製膜されており、かつ前記多孔質支持体の内部に前記薄膜を構成する酸化物が実質的に存在しないメソポーラス複合体を提供することを目的とする。
また、本発明は、水素の選択的透過性に優れた水素分離用複合体を提供することを目的とし、さらに、本発明は、該水素分離用複合体を用いて、水素を含有する混合ガスから効率的に水素を分離することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の目的を達成するため鋭意検討した結果、予め多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させた流動パラフィン含浸多孔質支持体を調製し、ついで界面活性剤を含む溶液とシリカ源を含む溶液との混合液を、該流動パラフィン含浸多孔質支持体上に均一に塗布した後、焼成することによって、均一なメソ細孔を持ち、かつ規則的な周期構造を持つメソポーラスシリカ薄膜を多孔質支持体上に形成することができ、かつ多孔質支持体内部に前記薄膜を構成するシリカが実質的に存在しないメソポーラスシリカ複合体を取得できることを見出すと共に、このようにして得られたメソポーラスシリカ複合体が、気体や溶液の選択的分離性能に優れた複合体の調製に容易に応用できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
《1》 メソポーラス酸化物薄膜が多孔質支持体上に積層されてなるメソポーラス複合体であって、前記多孔質支持体の内部に前記薄膜を構成する酸化物が実質的に存在しないことを特徴とするメソポーラス複合体、
《2》 メソポーラス酸化物薄膜がメソポーラスシリカ薄膜である前記《1》に記載のメソポーラス複合体、
《3》 多孔質支持体の材質が、アルミナ、コージェライト、ジルコニア、チタニア、バイコールガラスまたは焼結金属である前記《1》または《2》に記載のメソポーラス複合体、
《4》 メソポーラス酸化物薄膜の膜厚が、500nm以下である前記《1》〜《3》のいずれかに記載のメソポーラス複合体、
《5》 メソポーラス酸化物薄膜の細孔径が2〜10nmであり、かつ該薄膜の細孔容積が0.5〜1.4cc/gである前記《1》〜《4》のいずれかに記載のメソポーラス複合体、
《6》 (1)多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させ、(2)前記(1)で得た流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源からなるゲル薄膜を形成させることにより多層構造体とし、ついで(3)該多層構造体を焼成することにより流動パラフィンと界面活性剤とを除去することを特徴とする多孔質支持体上にメソポーラス酸化物薄膜が積層されてなるメソポーラス複合体の製造方法、
《7》 酸化物源がシリカ源であり、該シリカ源が、コロイダルシリカ、ケイ酸ソーダ、テトラアルキルアンモニウムシリケートまたはシリコンアルコキシドである前記《6》に記載の製造方法、
《8》 界面活性剤が、カチオン界面活性剤である前記《6》または《7》に記載の製造方法、
《9》 ゲル薄膜形成を、流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源を含む混合溶液を塗布したのち、乾燥することにより行う前記《6》〜《8》のいずれかに記載の製造方法、
《10》 塗布を、スピンコーティング法により行う前記《9》に記載の製造方法、
《11》 焼成を、300〜700℃で行う前記《6》〜《10》のいずれかに記載の製造方法、
《12》 前記《1》〜《5》のいずれかに記載のメソポーラス複合体のメソポーラス酸化物薄膜の空隙部に、金属ナノワイヤー、金属微粒子、金属酸化物微粒子およびセラミックス微粒子から選択される少なくとも1種が充填されていることを特徴とする水素分離用複合体、
《13》 (1)多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させ、(2)前記(1)で得た流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源からなるゲル薄膜を形成させることにより多層構造体とし、ついで(3)該多層構造体を焼成することにより流動パラフィンと界面活性剤とを除去して、多孔質支持体上にメソポーラス酸化物薄膜が積層されてなるメソポーラス複合体を調製し、ついで(4)該メソポーラス複合体のメソポーラス酸化物薄膜の空隙部に、金属ナノワイヤー、金属微粒子、金属酸化物微粒子およびセラミックス微粒子から選択される少なくとも1種を充填することを特徴とする水素分離用複合体の製造方法、および
《14》 水素を含有する混合ガスを、前記《12》に記載の水素分離用複合体または前記《13》に記載の方法で得られた水素分離用複合体に接触させて、水素を選択的に透過させることを特徴とする水素の分離方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のメソポーラス複合体は、平滑性の低い多孔質支持体上に、メソポーラス酸化物薄膜が均一に製膜されており、かつ前記多孔質支持体の内部に前記薄膜を構成する酸化物が実質的に存在しない。そのため、気体や溶液の選択的分離性能に優れた複合体の調製に容易に応用できる。また、本発明により、このようなメソポーラス複合体を工業的有利に製造することができる。
本発明の水素分離用複合体は、水素選択的透過性に優れている。また、本発明により、このような水素分離用複合体を工業的有利に製造でき、さらには、該水素分離用複合体を用いることにより、水素を含有する混合ガスから効率的に水素を分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のメソポーラス複合体は、メソポーラス酸化物薄膜が多孔質支持体上に積層されてなるメソポーラス複合体であって、前記多孔質支持体の内部に前記薄膜を構成する酸化物が実質的に存在しないことを特徴とする。
このようなメソポーラス複合体は、(1)多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させる工程、(2)前記工程(1)で得た流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源からなるゲル薄膜を形成させることにより多層構造体とする工程、および(3)該多層構造体を焼成することにより流動パラフィンと界面活性剤とを除去する工程を経て製造できる。
【0010】
(多孔質支持体)
前記多孔質支持体には、例えば、アルミナ、コージェライト、ジルコニア、チタニア、バイコールガラス、焼結金属などの素材を用いることができ、本発明の目的を阻害しない限り、種々の多孔質体を用いることができる。また、多孔質支持体の材質は、メソポーラス酸化物薄膜の構成材料と同じ種類のものであってもよく、例えば、メソポーラス酸化物薄膜がメソポーラスシリカ薄膜である場合には、シリカであってもよい。
前記多孔質支持体の形状は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、通常は、板状もしくはチューブ状である。
前記多孔質支持体の孔径は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、通常、0.05〜1μmであり、好ましくは0.06〜0.6μmである。
【0011】
[工程(1)]
本工程では、前記多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させる。かかる含浸手段は、前記多孔質支持体の孔内を流動パラフィンで塞げれば特に限定されず、公知の含浸手段、すなわち、浸漬、塗布およびスプレーのいずれの含浸手段であってもよい。前記多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させることによって、前記多孔質支持体の細孔を流動パラフィンで封孔することができ、流動パラフィン含浸多孔質支持体を調製することができる。この流動パラフィン含浸多孔質支持体は、次工程(2)において、下記の界面活性剤および酸化物源を含む混合液が前記多孔質支持体の孔内に侵入しないため、多孔質支持体表面に均一なメソポーラス酸化物薄膜を形成することができる。
【0012】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で得た流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源からなるゲル薄膜を形成させることにより、ゲル薄膜と前記支持体とから構成される多層構造体とする。前記ゲル薄膜の形成は、例えば、流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源を含む混合溶液(以下、前駆体溶液ともいう)を塗布したのち、乾燥することによって行われる。塗布方法は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、通常、スピンコーティング法やディップコーティング法が好ましい。とくに、多孔質支持体上に均一な厚さでメソポーラス酸化物薄膜の前駆体溶液を保持させることができるという観点から、スピンコーティング法がより好ましい。
前記スピンコーティング法は、多孔質支持体を一定速度で回転させ、多孔質支持体上に、界面活性剤および酸化物源を含む混合液を滴下し、均一塗布し、ついで乾燥することによって、ゲル薄膜を得る方法である。なお、スピンコーティング時における回転速度は2000〜5000rpmが好ましい。
また、前記ディップコーティング法は、界面活性剤および酸化物源を含む混合液内に、多孔質支持体を浸し、ついで一定速度で引き上げ、乾燥することにより、ゲル薄膜を得る方法である。
【0013】
前記前駆体溶液は、例えば、界面活性剤を含む溶液と酸化物源を含む溶液とを混合撹拌することにより、または酸化物源を含む溶液に界面活性剤を含む溶液を加えることにより調製することができる。また、この調製の際に、例えばpH調整剤などの各種添加剤を適宜に用いることができる。
【0014】
前記界面活性剤は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
前記イオン性界面活性剤としては、例えば、カチオン界面活性剤などが挙げられ、より具体的には例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリドといった臭化物や塩化物が挙げられる。このほかにも、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ジメチルジドデシルアンモニウム塩、セチルトリメチルホスホニウム塩、オクタデシルトリメチルホスホニウム塩などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、エチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−エチレンオキサイド(EO)コポリマーで、P123{(EO)20(PO)70(EO)20}やP127{(EO)106(PO)70(EO)106}などであるが、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの長さ(重合度)を変えることが出来るのは言うまでもない。また、エチレンオキサイドのポリマーで分子の末端が長鎖のアルキル基であるBrij700も界面活性剤として用いられる。
【0015】
前記酸化物源としては、例えば金属酸化物源や非金属酸化物源が挙げられ、より具体的には、例えば、シリカ源、アルミナ源、チタニア源、ジルコニア源などの酸化物源が挙げられるが、これらの中でも好ましくはシリカ源である。
前記シリカ源としては、例えば、コロイダルシリカ、ケイ酸ソーダ、テトラアルキルアンモニウムシリケート(例えばテトラメチルアンモニウムシリケートなど)、シリコンアルコキシドなどが挙げられ、ここで、シリコンアルコキシドとしては、例えばトリメトキシシランやトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシランなどが挙げられる。本発明では、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
前記前駆体溶液の溶媒としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられる。前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられる。また、前記溶媒は、水、メタノール、エタノールまたはプロパノールであるのが好ましい。
【0017】
前記pH調整剤としては、例えば、酸やアルカリなどが挙げられ、より具体的には、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなどが挙げられる。なお、pH調整剤として酸を用いる場合には、前記混合液は通常pH1〜3の範囲に調整され、また、pH調整剤としてアルカリを用いる場合には、通常pH10〜13の範囲に調整される。
【0018】
前記前駆体溶液中の各組成の配合割合については、メソポーラス酸化物薄膜の種類などにより適宜に設定されるので特に限定されないが、例えば、メソポーラス酸化物薄膜としてメソポーラスシリカ「MCM−48」の薄膜を得ようとする場合には、塩酸とシリカ源との割合(モル比:塩酸/シリカ源)は0.4〜0.5が好ましく、界面活性剤とシリカ源との割合(モル比:界面活性剤/シリカ源)は0.5〜0.6が好ましい。また、メソポーラス酸化物薄膜としてメソポーラスシリカ「SBA−15」の薄膜を得ようとする場合には、塩酸とシリカ源との割合(モル比:塩酸/シリカ源)は0.0002〜0.017が好ましく、界面活性剤とシリカ源との割合(モル比:界面活性剤/シリカ源)は0.0003〜0.017が好ましい。
また、メソポーラス酸化物薄膜としてメソポーラスシリカ「MCM−41」の薄膜を得ようとする場合には、塩酸とシリカ源との割合(モル比:塩酸/シリカ源)は0.4〜0.6が好ましく、界面活性剤とシリカ源との割合(モル比:界面活性剤/シリカ源)は0.04〜1.0が好ましい。また、メソポーラス酸化物薄膜としてメソポーラスシリカ「SBA−16」の薄膜を得ようとする場合には、塩酸とシリカ源との割合(モル比:塩酸/シリカ源)は1〜4が好ましく、界面活性剤とシリカ源との割合(モル比:界面活性剤/シリカ源)は0.0004〜0.006が好ましい。
【0019】
本工程では、前記塗布により得られた塗布物を乾燥させるが、この乾燥により、多孔質支持体上に、界面活性剤および酸化物源を含む混合溶液からゲル膜を形成することができる。乾燥温度は、本発明の目的を阻害しなければ特に限定されないが、多孔質支持体上にゲル薄膜がより均一に生成するという観点から、室温〜30℃が好ましい。
【0020】
[工程(3)]
本工程では、前記工程(2)で得られた多層構造体を焼成することにより流動パラフィンと界面活性剤とを除去する。本工程により、前記メソポーラス複合体が得られる。前記焼成温度は、通常、流動パラフィンおよび界面活性剤のいずれの沸点よりも高い温度であり、界面活性剤の種類などによって適宜に設定されるが、あえて好ましい焼成温度をあげると、300℃〜700℃であり、より好ましくは300℃〜600℃であり、最も好ましくは500℃±100℃の範囲内の温度である。焼成時の昇温速度は、1℃/分が好ましい。また、焼成温度が例えば500℃±100℃の範囲内である場合には、焼成時の保持時間が1〜48時間であるのが好ましい。
本工程により、多孔質支持体上にメソポーラス酸化物薄膜が均一に積層されてなり、かつ該多孔質支持体の内部に前記薄膜を構成する酸化物が実質的に存在していないメソポーラス複合体が得られる。
【0021】
本工程で形成されたメソポーラス酸化物薄膜は、均一なメソ細孔を持ち、かつ規則的な周期構造を有する。さらには、該メソポーラス酸化物薄膜中の細孔径は、通常2〜10nmであり、かつ細孔容積は0.5〜1.4cc/gである。ここで、細孔径とは、細孔の垂直断面の最大寸法をいう。また、細孔容積とはメソポーラス酸化物薄膜の細孔からなる空隙部の容積であり、通常のガス吸着測定装置により測定できる。
また、本工程で形成されたメソポーラス酸化物薄膜の膜厚は、通常、500nm以下である。
【0022】
工程(3)を経て得られた前記メソポーラス複合体は、水素の選択的分離性能に優れた水素分離用複合体の製造に用いることができ、該水素分離用複合体は、水素の分離に用いることができる。例えば、前記メソポーラス複合体のメソポーラス酸化物薄膜の空隙部に、金属ナノワイヤー、金属微粒子、金属酸化物微粒子およびセラミックス微粒子から選択される少なくとも1種を充填することによって、充填後のメソポーラス酸化物薄膜を水素分離膜として用いることができる。すなわち、このようにして得られる、多孔質支持体上に水素分離膜が積層されているメソポーラス複合体は、水素分離用複合体として用いることができる。
【0023】
メソポーラス酸化物薄膜の空隙中に充填する金属ナノワイヤーや金属微粒子の金属としては、例えば、ニッケル、鉄、銀、銅、パラジウム、バナジウム、白金、金、タンタル、ニオブまたはこれらの合金などが挙げられるが、その有効粒子径が母材となる膜の有効細孔径以下の粒子が含まれることが必須である。
また、メソポーラス酸化物薄膜の空隙中に充填する金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化銀、酸化銅、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、窒化珪素等の酸化金属微粒子であれば特に制限されないが、その有効粒子径は母材となる膜の有効細孔径以下であることが必須である。
さらに、セラミックス微粒子としては、例えば、前記金属酸化物、前記金属の窒化物、前記金属の炭化物の単一または混合物などが挙げられる。
【0024】
前記金属微粒子、金属酸化物微粒子およびセラミックス微粒子の中では、パラジウム微粒子が好ましく、該パラジウム微粒子を充填する場合には、塩化パラジウム酸、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセテート、テトラアンミンパラジウム塩化物など用いて常法に従うことにより、パラジウム微粒子をメソポーラス酸化物薄膜の空隙中に充填することができる。
【0025】
かくして得られた水素分離用複合体は、高温における水素の選択的分離能に優れており、また、熱的、機械的に安定であり、しかも製造に煩雑な操作を要求することがない。またさらに、前記金属微粒子の使用量が少量でよい。
【0026】
前記水素分離用複合体は、水素分離に適用できる。すなわち、該複合体に、水素を含有する混合ガス(以下、水素混合ガスともいう)を接触させて、水素を選択的に透過させることにより、水素混合ガスから水素を分離することができる。
【0027】
前記水素混合ガスとしては、水素を含有しているガスであれば特に限定されず、例えば、水素と、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、フッ素、塩素、臭素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、アンモニア、二酸化イオウ、硫化水素、塩化水素、水(水蒸気)、メタノール、エタノール、パラフィン系炭化水素またはオレフィン系炭化水素などとの混合ガスが挙げられる。なお、前記パラフィン系炭化水素は、飽和鎖式炭化水素、アルカンまたはメタン系炭化水素とも呼ばれ、このようなパラフィン系炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。
【0028】
本発明の水素の分離方法の具体的な態様としては、前記水素分離用複合体の片側(メソポーラス酸化物薄膜側)に前記水素混合ガスを置き、その反対側(多孔質支持体表面側)の水素分圧を水素混合ガス側の水素分圧以下にすれば、水素分離用複合体中を水素が選択的に透過し、水素混合ガス中にある水素を多孔質支持体表面側に透過させることができる。この水素分離用複合体は通常200℃〜700℃、好ましくは300℃〜600℃の温度で利用できる。温度が200℃より低すぎると、例えば前記金属微粒子に、パラジウム微粒子を用いた場合には、メソポーラスシリカ薄膜中のパラジウム微粒子の脆化が生じる恐れがあり、温度が700℃より高すぎるとパラジウム微粒子の劣化が生じる恐れがある。
【0029】
なお、本発明のメソポーラス複合体は、上記のように水素分離用複合体の調製に適用できる以外に、種々の気体や溶液の選択的分離性能に優れた複合体の調製に利用できる。例えば、前記メソポーラス複合体をCOの分離に用いる場合には、前記メソポーラス複合体のメソポーラス酸化物薄膜と、シランカップリング剤(例えばアミノ基含有シランカップリング剤)とを常法に従い化学結合させることにより、CO分離用複合体とすることができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
工程(1)
多孔質支持体として、細孔径60nm中間層と細孔径560nmの基材層を持つディスク状の多孔質アルミナ基板(直径:18.5mm、高さ3mm)を用いた。多孔質アルミナ基板を100mlビーカーに入れ、さらに0.1mol/lの希硝酸水溶液50mlを加え、12時間浸漬処理した。その後、多孔質基板を蒸留水で洗浄水のpHが7になるまで良く洗浄し、洗浄後、乾燥機中60℃で乾燥した。さらに、アセトン50ml中に12時間浸漬したのち、60℃で乾燥した。
多孔質アルミナ基板の細孔内への下記メソポーラスシリカ薄膜MCM−48前駆体溶液の浸透を防ぐために、半径10cm、深さ2cmのシャーレ上に、前処理した多孔質アルミナ基板を置き、流動パラフィン7mlを加え、上面に流動パラフィンが付着しないようにして、該多孔質アルミナ基板の細孔内に流動パラフィンを含浸させ、この処理をメソポーラスシリカ薄膜作製の前処理とした。
【0032】
工程(2)
(メソポーラスシリカ薄膜MCM−48の調製方法)
50mlのビーカーに10mlの蒸留水と0.83mlの36%濃塩酸をpHメーターで観察しながら加え、pH=1.25の塩酸水溶液を調製した。塩酸水溶液1.8gを50mlビーカーに入れ、エタノール3.50gおよびテトラエトキシシラン(アルドリッチ(Aldrich)社製)4.16gを静かに添加し、室温で30分攪拌を行った。この混合溶液に、臭化トリエチルステアリルアンモニウム(ナカライ社製)0.72gを加え溶解させ、1時間攪拌を行い、さらに、エタノール3.50gを加え2時間攪拌し、メソポーラスシリカ薄膜の前駆体溶液を調製した。
【0033】
スピンコーターの回転台の中心に両面テープで、前処理した多孔質アルミナ基板を接着、固定した。その後、前記で調製した前駆体溶液をマイクロピペットでゆっくり滴下し、4000rpmで180秒間基板を回転させ、前駆体溶液のスピンコーティングを行い、ついで12時間乾燥することにより、ゲル薄膜を多孔質アルミナ基板上に設けた。
【0034】
工程(3)
メソポーラスシリカ薄膜が設けられた多孔質アルミナ基板を磁性皿に置き、マッフル炉中で1K/分で500℃まで加熱し、500℃で10時間焼成を行うことで、流動パラフィンと界面活性剤とを焼成除去して、多孔質アルミナ基板上にメソポーラスシリカ薄膜を積層したメソポーラスシリカ複合体を得た。なお、本条件で調製したメソポーラスシリカ薄膜の厚さは150〜300nmであり、細孔径は2nmであり、細孔容積は1.0cc/gであった。
【0035】
[比較例1]
また、比較例1として、充填工程を省略したこと、すなわち、流動パラフィン7mlを用いなかったこと以外、実施例1と同様にして多孔質アルミナ支持体上にシリカ膜を積層してなる複合体を得た。
【0036】
[試験例1]
流動パラフィンを多孔質基板内に含浸させた後、スピンコーティング法によって製膜を行った実施例のメソポーラスシリカ複合体のメソポーラスシリカ薄膜試料(a)、および流動パラフィンを多孔質基板内に含浸させないで製膜を行った比較例の複合体のシリカ膜試料(b)のX線回折測定を行なった。測定結果を図1に示す。
多孔質基板内に流動パラフィンを含浸させた実施例のメソポーラスシリカ薄膜試料(a)のピーク強度は、図1中の(a)のとおり、回折ピークが明確に現われ、メソポーラスシリカ薄膜の細孔規則性が高いことを示している。一方、多孔質基板内に流動パラフィンを含浸させなかった比較例のシリカ膜試料(b)のピーク強度は、図1中の(b)のとおり、回折ピークは現われず、多孔質基板表面にメソポーラス薄膜が生成していないことが明らかとなった。
【0037】
[応用例1]
実施例1で作製したメソポーラスシリカ複合体およびトルエンを50mlのナス型フラスコに入れた後、アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)を入れ、アルゴンガスの雰囲気下で150℃、24時間加熱還流を行った。その後、メソポーラスシリカ複合体を取り出し、トルエンで洗浄し、未反応のAPSを除去し、24時間乾燥させた。このようにしてAPS処理を行ったメソポーラスシリカ複合体(APS)、APS処理を行わなかったメソポーラスシリカ複合体(非APS)、および多孔質アルミナ基板のみについて、下記実験条件にて、図2および図3の通り、二酸化炭素/窒素の混合ガスの分離実験を行った。その結果を表1に示す。なお、二酸化炭素/窒素の混合ガスの分離実験の実験操作のフローチャートを図2に示し、二酸化炭素/窒素の混合ガスの分離実験の実験装置を模式的に図3に示す。図2に示すように、前記メソポーラスシリカ複合体(APS)、メソポーラスシリカ複合体(非APS)および多孔質アルミナ基板のみを、それぞれセルに取り付け、24時間、100℃の条件で真空排気し、ついでブランクテストを行い、その後、CO/Nテストガスを流通させ、図3に示すように、CO/N混合ガスを複合体に接触させて、複合体を透過したガス(透過ガス)をサンプリングして、下記実験条件にてガスクロマトグラフィー(GC)測定を行った。
【0038】
(実験条件)
ガス分析:ガスクロマトグラフィー;GC(TCD)
カラム:Porapak−Q 2m,Molecular Sieve 5A 2m
キャリアガス:He
テストガス:CO/N=20/80
ガス流量:100ml/min
入口ガス圧力:50kPa
【0039】
【表1】

【0040】
表1より、APS処理を行ったメソポーラスシリカ複合体(CO分離用複合体)は、多孔質アルミナ基板のみ、APS処理を行わなかったメソポーラスシリカ複合体よりも高い選択的CO透過性を持つことが確認され、COの分離に有用であることがわかった。
【0041】
[応用例2]
実施例1で作製したメソポーラスシリカ複合体のメソポーラス酸化物薄膜部分に、塩化パラジウム酸水溶液を滴下し、該薄膜の細孔内に塩化パラジウム酸を導入した。その後、10−8Torrの真空中で水を除去し、酸素ガス20cc/分の気流下、500℃で焼成後、水素および窒素の混合ガス(水素:窒素=20:80)20cc/分の気流下、800℃で熱的還元処理を行った。その後、窒素ガス20cc/分の気流下で室温まで冷却して、パラジウム微粒子を充填した。このようにして得られたパラジウム充填メソポーラスシリカ複合体(PPS)を、応用例1と同様にして、水素/窒素の混合ガスの分離実験を行った。その結果、PPSは、良好な選択的水素透過性を持つことが確認され、水素の分離に有用であることがわかった。
【0042】
以上の結果より、本発明のメソポーラス複合体は、気体や溶液の選択的分離性能に優れた複合体の調製に応用可能であることがわかる。
【0043】
[実施例2]
工程(1)
多孔質支持体として、細孔径60nm中間層と細孔径560nmの基材層を持つディスク状の多孔質アルミナ基板(直径:18.5mm、高さ3mm)を用いた。多孔質アルミナ基板を100mlビーカーに入れ、さらに0.1mol/lの希硝酸水溶液50mlを加え、12時間浸漬処理した。その後、蒸留水で洗浄水のpHが7になるまで良く洗浄し、洗浄後、乾燥機中60℃で乾燥した。さらに、アセトン50ml中に12時間浸漬したのち、60℃で乾燥した。
多孔質アルミナ基板の細孔内への下記メソポーラスシリカMCM−48薄膜前駆体溶液の浸透を防ぐために、半径10cm、深さ2cmのシャーレ上に、前処理した多孔質アルミナ基板を置き、流動パラフィン7mlを加え、上面に流動パラフィンが付着しないようにして、該多孔質アルミナ基板の細孔内に流動パラフィンを含浸させ、この処理をメソポーラスシリカ薄膜作製の前処理とした。
【0044】
工程(2)
(メソポーラスシリカMCM−48薄膜の調製方法)
50mlのビーカーに10mlの蒸留水と0.83mlの36%濃塩酸(和光純薬社製)をpHメーターで観察しながら加え、pH=1.25の塩酸水溶液を調製した。塩酸水溶液をビーカーに入れ、エタノール(和光純薬社製)およびテトラエトキシシラン(アルドリッチ(Aldrich)社製)を静かに添加し、室温で30分攪拌を行った。この混合溶液に、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(ナカライ社製)を加え溶解させ、1時間攪拌を行い、さらに、エタノールを加え2時間攪拌し、メソポーラスシリカ薄膜の前駆体溶液を調製した。なお、前駆体溶液の各成分の配合量は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド:テトラエトキシシラン:塩酸水溶液(pH=1.25):エタノール=0.17:1:0.43:1.68(重量比)である。
【0045】
スピンコーターの回転台の中心に両面テープで、前処理した多孔質アルミナ基板を接着、固定した。その後、前記で調製した前駆体溶液をマイクロピペットでゆっくり滴下し、4000rpmで180秒間基板を回転させ、前駆体溶液のスピンコーティングを行い、ついで室温で2時間乾燥することにより、ゲル薄膜を多孔質アルミナ基板上に設けた。
【0046】
工程(3)
ゲル薄膜が設けられた多孔質アルミナ基板を磁性皿に置き、マッフル炉中で1K/分で500℃まで加熱し、500℃で20時間焼成を行うことで、流動パラフィンと界面活性剤とを焼成除去して、多孔質アルミナ基板上にメソポーラスシリカ薄膜を積層したメソポーラスシリカ複合体を得た。
【0047】
[比較例2]
また、比較例2として、充填工程を省略したこと、すなわち、流動パラフィン7mlを用いなかったこと以外、実施例2と同様にして多孔質アルミナ支持体上にシリカ膜を積層してなる複合体を得た。
【0048】
[試験例2]
実施例2で得られたメソポーラスシリカ複合体のメソポーラスシリカ膜および多孔質アルミナ基板の断面、ならびに比較例2で得られた複合体のシリカ膜および多孔質アルミナ基板の断面をそれぞれ走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。実施例2の観察結果を図4に示し、比較例2の観察結果を図5に示す。
【0049】
観察結果から、実施例のメソポーラスシリカ薄膜が多孔質アルミナ基板上に積層されていることが分かり、さらには、多孔質アルミナ基板の内部にメソポーラスシリカ薄膜を構成するシリカが実質的に存在していないことが分かる。また、比較例のものは、シリカ膜を構成するシリカが実質的に基板内部に不均一に存在していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のメソポーラス複合体は、気体や溶液の選択的分離性能に優れた複合体の調製に応用できる。また、本発明により、このようなメソポーラス複合体を工業的有利に製造できる。
また、本発明により、水素の分離に有用な水素分離用複合体を提供でき、さらには、効率的に水素を分離することができる水素の分離方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】多孔質アルミナ内に流動パラフィンを浸漬させた基板と浸漬させていない基板を支持体として用いて、スピンコーティングにより作製したメソポーラス薄膜のX線回折図を示すグラフである。(a)は、実施例で得られたメソポーラスシリカ複合体のX線解析図であり、(b)は、比較例で得られた複合体のX線解析図である。
【図2】二酸化炭素/窒素の混合ガスの分離実験の実験操作のフローチャートを示す。
【図3】二酸化炭素/窒素の混合ガスの分離実験で用いる実験装置を示す模式図である。
【図4】試験例2において、実施例2のメソポーラスシリカ複合体のメソポーラスシリカ薄膜および多孔質アルミナ基板の断面形状をSEMで観察した結果を示す写真である。
【図5】試験例2において、比較例2の複合体のシリカ膜および多孔質アルミナ基板の断面形状をSEMで観察した結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0052】
1 複合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラス酸化物薄膜が多孔質支持体上に積層されてなるメソポーラス複合体であって、前記多孔質支持体の内部に前記薄膜を構成する酸化物が実質的に存在しないことを特徴とするメソポーラス複合体。
【請求項2】
メソポーラス酸化物薄膜がメソポーラスシリカ薄膜である請求項1に記載のメソポーラス複合体。
【請求項3】
多孔質支持体の材質が、アルミナ、コージェライト、ジルコニア、チタニア、バイコールガラスまたは焼結金属である請求項1または2に記載のメソポーラス複合体。
【請求項4】
メソポーラス酸化物薄膜の膜厚が、500nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のメソポーラス複合体。
【請求項5】
メソポーラス酸化物薄膜の細孔径が2〜10nmであり、かつ該薄膜の細孔容積が0.5〜1.4cc/gである請求項1〜4のいずれかに記載のメソポーラス複合体。
【請求項6】
(1)多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させ、(2)前記(1)で得た流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源からなるゲル薄膜を形成させることにより多層構造体とし、ついで(3)該多層構造体を焼成することにより流動パラフィンと界面活性剤とを除去することを特徴とする多孔質支持体上にメソポーラス酸化物薄膜が積層されてなるメソポーラス複合体の製造方法。
【請求項7】
酸化物源がシリカ源であり、該シリカ源が、コロイダルシリカ、ケイ酸ソーダ、テトラアルキルアンモニウムシリケートまたはシリコンアルコキシドである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
界面活性剤が、カチオン界面活性剤である請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
ゲル薄膜形成を、流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源を含む混合溶液を塗布したのち、乾燥することにより行う請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
塗布を、スピンコーティング法により行う請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
焼成を、300〜700℃で行う請求項6〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載のメソポーラス複合体のメソポーラス酸化物薄膜の空隙部に、金属ナノワイヤー、金属微粒子、金属酸化物微粒子およびセラミックス微粒子から選択される少なくとも1種が充填されていることを特徴とする水素分離用複合体。
【請求項13】
(1)多孔質支持体に流動パラフィンを含浸させ、(2)前記(1)で得た流動パラフィン含浸多孔質支持体の表面に、界面活性剤および酸化物源からなるゲル薄膜を形成させることにより多層構造体とし、ついで(3)該多層構造体を焼成することにより流動パラフィンと界面活性剤とを除去して、多孔質支持体上にメソポーラス酸化物薄膜が積層されてなるメソポーラス複合体を調製し、ついで(4)該メソポーラス複合体のメソポーラス酸化物薄膜の空隙部に、金属ナノワイヤー、金属微粒子、金属酸化物微粒子およびセラミックス微粒子から選択される少なくとも1種を充填することを特徴とする水素分離用複合体の製造方法。
【請求項14】
水素を含有する混合ガスを、請求項12に記載の水素分離用複合体または請求項13に記載の方法で得られた水素分離用複合体に接触させて、水素を選択的に透過させることを特徴とする水素の分離方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−45691(P2007−45691A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234733(P2005−234733)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【Fターム(参考)】