説明

メンブレンタンク、およびメンブレンタンクのリークテスト方法

【課題】リークテストの検出精度を向上することができるメンブレンタンクを提供する。
【解決手段】内側がLNGの収容部とされたステンレス製のメンブレン20と、メンブレン20の外側に沿って配置された保冷層50と、保冷層50の外側に配置されたコンクリート製の躯体10を備え、メンブレン20の底部21には、収容部24側に突出し径方向に沿って延びる熱収縮吸収用のコルゲーション25が設けられているLNGタンク1において、メンブレン20の底部21における外周領域には、コルゲーション25と保冷層50との間に、ガスの流通を阻止する堰き止め部材が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メンブレンタンク、およびメンブレンタンクのリークテスト方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液化天然ガス(以下、LNGと略す)を貯蔵する地下式LNGタンクは、メンブレンと称される薄いステンレス板を溶接してなる容器が、地下に埋設されたコンクリート製の躯体の内側に設置され、前記躯体とメンブレンとの間に保冷層を備えて構成されている。保冷層は、メンブレンと躯体との間を断熱し、メンブレンの内側に収容したLNGの蒸発を防ぐものである。
【0003】
このようなメンブレンを有するLNGタンクでは、メンブレン内側の収容部にLNGを充填する前に、メンブレンに対してアンモニアガスを用いたリークテストを実施し、メンブレンに漏れがないことを確認している(例えば、特許文献1参照)。このリークテストは、メンブレンの底部および外周部の外側、すなわち保冷層との間にアンモニアガスを封入し、メンブレンの底部および外周部の内側の面、すなわちLNGを収容する側の面に、アンモニアに反応して変色する検出剤を塗布して行っている。例えば、メンブレンの溶接部からアンモニアガスが漏れている場合には、その溶接部の内側の面に塗布した検出剤が変色するので、メンブレンに漏れがあると判断することができる。
【0004】
このリークテストの精度を上げるためには、メンブレンの外側の全領域においてアンモニアガスの濃度を規定濃度以上にする必要がある。なぜならアンモニアガス濃度が規定濃度に達していない領域が存在すると、その領域ではアンモニアリークの検出精度が低くなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3457951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記メンブレンに貯蔵されるLNGは約マイナス162゜Cであり、常温のメンブレンにLNGを充填するとメンブレンが熱収縮を起こす。そこで、この熱収縮を吸収するために、メンブレンには、その底部、外周部、天井部に、内側に突出する円弧状断面の波状部(以下、コルゲーションと称す)が、周方向および径方向に多数形成されている。
【0007】
しかしながら、メンブレンの底部に径方向に沿って設けられたコルゲーションは、前記リークテストのときにアンモニアガスの短絡路となってしまい、底部の外側全域に所定濃度のアンモニアガスを封入するのを困難にさせていた。
詳述すると、メンブレンの底部下側にアンモニアガスを封入するために、その底部下側の所定位置(例えば底部中央)からアンモニアガスを供給したときに、アンモニアガスは空気よりも軽い気体であるため、メンブレンの底部外側の平坦な面(以下、平坦部という)に沿って留まり難く、平坦部に対して上側に凸のコルゲーションに集合し易い。そして、径方向に沿って設けられたコルゲーションに一度入ったアンモニアガスは、コルゲーションに沿って径方向外側へと流れていき、さらに外周部のコルゲーションに沿って上方へと流れていってしまう。そうなると、メンブレンの底部下側の平坦部ではアンモニアガスの濃度が低くなり、リークテストの測定精度が低下するという課題がある。
【0008】
なお、メンブレンの外周部の外側にアンモニアガスが充満した後に、メンブレンの底部下側の平坦部にもアンモニアガスが拡散するようになるが、それまで待っていたのでは、メンブレンの底部下側の平坦部におけるアンモニアガス濃度を規定濃度に上げるまでに、多量のアンモニアガスが必要となって不経済であるとともに、アンモニアガスの封入に長時間を要するため効率が悪いという課題がある。
【0009】
そこで、この発明は、リークテストの検出精度を向上することができるメンブレンタンク、およびメンブレンタンクのリークテスト方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るメンブレンタンクおよびメンブレンタンクのリークテスト方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、内側が貯蔵物の収容部とされたメンブレンと、前記メンブレンの外側に沿って配置された断熱層と、を備え、前記メンブレンの底部には、前記収容部側に突出し径方向に沿って延びる熱収縮吸収用のコルゲーションが設けられているメンブレンタンクにおいて、前記メンブレンの底部における外周領域には、前記コルゲーションと前記断熱層との間に、ガスの流通を阻止する堰き止め部材が設置されていることを特徴とするメンブレンタンクである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記堰き止め部材はグラスウールで形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記メンブレンはその底部に前記コルゲーションを多数備え、その総てのコルゲーションに前記堰き止め部材が配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、内側が貯蔵物の収容部とされ底部に径方向に沿って延びる熱収縮吸収用のコルゲーションが設けられたメンブレンと、その外側に配置された断熱層との間に検査ガスを封入し、この検査ガスが前記メンブレンの前記収容部側に漏洩するか否かを検出するメンブレンタンクのリークテスト方法において、前記メンブレンと前記断熱層との間に前記検査ガスを供給する前に、前記底部の外周領域における前記コルゲーションと前記断熱層との間に堰き止め部材を設置してガスを前記コルゲーションに沿って流れ難くし、その後、前記メンブレンと前記断熱層との間に前記検査ガスを供給し封入して、この検査ガスが前記メンブレンの前記収容部側に漏洩するか否かを検出することを特徴とするメンブレンタンクのリークテスト方法である。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記検査ガスと反応し変色する検出剤を前記メンブレンにおける前記収容部側の面に塗布し、前記検出剤が変色した場合にその変色した部分において前記メンブレンに漏れがあると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、メンブレンタンクのリークテストをするために、メンブレンの底部と断熱層との間に検査ガスを供給したときに、検査ガスがメンブレン底部の径方向に沿って設けられたコルゲーションに集合しても、メンブレン底部の外周領域にはコルゲーションと断熱層との間に堰き止め部材が設置されているので、検査ガスはコルゲーション内を堰き止め部材よりも径方向外側へ流れることができないか、あるいは、極めて流れ難くなる。その結果、検査ガスはメンブレン底部のコルゲーションが設けられていない平坦部に沿って拡散するようになり、メンブレン底部の下側の全領域に規定濃度の検査ガスを封入することができる。これにより、リークテストの検出精度が向上し、リークテストの信頼性が向上する。
なお、メンブレンの底部に前記コルゲーションが多数設けられている場合には、その総てのコルゲーションに前記堰き止め部材を設置するのが好ましいが、底部下側の全領域でアンモニアガス濃度を規定濃度にすることができる限りは、堰き止め部材が設置されるコルゲーションを間引きして設定してもよい。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、グラスウールは超低温にも耐えることができ且つ変形自在であるので、リークテスト後、メンブレンタンクの収容部に極低温の貯蔵物(例えばLNG)を収容したときに、メンブレンが熱収縮してコルゲーションが変形しても、堰き止め部材もコルゲーションの変形に追従して変形することができる。したがって、リークテスト終了後も堰き止め部材を取り除かずにコルゲーションと断熱層との間に残しておいても、何ら問題が生じない。また、堰き止め部材をコルゲーションと断熱層との間に残しておくと、常温下でのメンテナンス時に再びメンブレンタンクのリークテストを行う場合にも、前述同様に検査ガスがコルゲーションに沿って流れてしまうのを阻止することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、検査ガスを確実に、メンブレン底部のコルゲーションが設けられていない平坦部に沿って拡散させることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、メンブレンの底部と断熱層との間に検査ガスを供給したときに、検査ガスがメンブレン底部の径方向に沿って設けられたコルゲーションに集合しても、メンブレン底部の外周領域のコルゲーションと断熱層との間に堰き止め部材が設置されているので、検査ガスはコルゲーション内を堰き止め部材よりも径方向外側へ流れることができないか、あるいは、極めて流れ難くなる。その結果、検査ガスはメンブレン底部のコルゲーションが設けられていない平坦部に沿って拡散するようになり、メンブレン底部の下側の全領域に規定濃度の検査ガスを封入することができる。これにより、リークテストの検出精度が向上し、リークテストの信頼性が向上する。
請求項5に係る発明によれば、メンブレンに漏れがあるか否かを容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係るメンブレンタンクを一部破断して示す概略斜視図である。
【図2】前記メンブレンタンクにおけるメンブレンの底部の一部を示す平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図2のC部拡大図である。
【図6】堰き止め部材が設置されている部分を断面にして示す斜視図である。
【図7】堰き止め部材の外観斜視図である。
【図8】メンブレンタンクのリークテスト方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係るメンブレンタンクおよびメンブレンタンクのリークテスト方法の実施例を図1から図8の図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施例におけるメンブレンタンクは、LNG(貯蔵物)を貯蔵する地下式LNGタンクとしての態様である。
【0021】
図1に示すように、LNGタンク1は、地下に埋設されたコンクリート製の躯体10と、この躯体10の内側に配置されるメンブレン20と、躯体10とメンブレン20との間に設けられた保冷層(断熱層)50とを備えて構成されている。
躯体10は地上に開口する円筒状の穴を備え、この穴の中にメンブレン20と保冷層50が収容されている。
【0022】
メンブレン20は、円形の底部21と、底部21の外周縁から起立する円筒状の外周部22と、外周部22の上縁に連なるコーン形状の天井部23とを備え、その内部がLNGを収容する収容部24とされている。メンブレン20の大きさは、一例を挙げると、底部21の直径が約70m、外周部22の高さが約40m、天井部23の高さが約13mである。なお、メンブレン20の大きさはこれに限るものではない。
【0023】
メンブレン20は、超低温に耐え得るステンレス製の薄板(例えば厚さ2mm)を多数溶接して形成されている。また、メンブレン20には、収容部24にマイナス162゜CのLNGを貯蔵したときのメンブレンの熱収縮を吸収するためのコルゲーションが、多数設けられている。詳述すると、メンブレン20の底部21には、径方向に沿って放射状に延びるコルゲーション25と、底部21の中央を中心とする同心円状に配置されたコルゲーション26が多数設けられている。メンブレン20の外周部22には、高さ方向に直線状に延びるコルゲーション27と、周方向に沿って延びるコルゲーション28が多数設けられている。メンブレン20の天板部23には、径方向に沿って放射状に延びるコルゲーション29と、天井部23の中央を中心とする同心円状に配置されたコルゲーション30が多数設けられている。これらコルゲーション25〜30はいずれも、収容部24側に突出する略円弧状断面をなしている。
【0024】
保冷層50は、躯体10の内面とメンブレン20の底部21および外周部22との間に挟装されている。保冷層50は、躯体10とメンブレン20との間を断熱し、収容部24に貯蔵したLNGの蒸発を防ぐ機能を有しており、例えばポリウレタンで形成されている。
【0025】
次に、メンブレン20の底部21について図2から図7を参照して詳述する。
図2は底部21の一部分における平面図であり、図中符号31は底部21の中央である。図3に示すように、底部21は、外周部22に連なる部分が水平面に対して所定角度(例えば45度)傾斜したコーナー部32とされていて、コーナー部32より中央31側が水平姿勢の水平部33とされている。
【0026】
前述したように、底部21は多数のステンレス板34を溶接して一体化されており、ステンレス板34には、径方向に沿って放射状に延びるコルゲーション(以下、放射状コルゲーションと称す)25a、底部21の中央31を中心とする同心円状に配置されたコルゲーション(以下、弧状コルゲーションと称す)26aが設けられている。ただし、これらコルゲーション25a,26aが設けられていないステンレス板34も存在する。ステンレス板34を溶接して底部21を形成したときに、放射状コルゲーション25aが径方向に一直線上に並んで配置され、弧状コルゲーション26aが周方向に並んで配置されるように設定されている。そして、径方向一直線上に並んだ放射状コルゲーション25aによって前記コルゲーション25が構成され、周方向に並んだ弧状コルゲーション26aによって前記コルゲーション26が構成される。
また、径方向に沿って放射状に延びるコルゲーション25の設置数は、中央31に近いほど本数が少なく、外周部22に近いほど本数が多くなっている。
なお、以下の説明では、底部21においてコルゲーション25,26が形成されていない平坦な部分を平坦部36と称す。
【0027】
図4に示すように、放射状コルゲーション25aは、保冷層50から離間する側(すなわち、収容部24側)に略円弧状に突出した断面形状をなし、底部21が熱収縮したときに放射状コルゲーション25aが左右に開くことで、底部21の熱収縮を吸収する。弧状コルゲーション26aも放射状コルゲーション25aと同一断面形状をなしている。また、外周部22のコルゲーション27,28および天井部23のコルゲーション29,30も放射状コルゲーション25aと同一断面形状をなしている。
【0028】
図1におけるCに示すように、底部21の水平部33におけるコーナー部32に接近した位置には、コルゲーション25と保冷層50との間に、堰き止め部材40が設置されている。この実施例において、堰き止め部材40は、底部21の総てのコルゲーション25において底部21の中央31から等距離の位置に設置されている。
図5、図6に示すように、堰き止め部材40の長さはコルゲーション25の長さに比べると非常に短く、例えば40mm程度である。堰き止め部材40はグラスウールをアルミ箔で包んで構成されており、図6、図7に示すように、常温時のコルゲーション25と保冷層50との間に形成される隙間35の形状と相似形の断面形状をなし、隙間35よりも若干大きく形成されていて、常温時にコルゲーション25と保冷層50との間に設置したときに若干圧縮されてほぼ隙間なくコルゲーション25および保冷層50に密接するように構成されている。この堰き止め部材40は、LNGタンク1を地下に埋設設置する際に取り付けられる。
なお、メンブレン20は保冷層50の上に載置されているだけで、密着固定されているわけではない。
【0029】
次に、LNGタンク1の設置完了後に行うLNGタンク1のリークテスト方法を説明する。このリークテストは、メンブレン20にガス漏れが無いことを確認するために行われるものであり、メンブレン20の収容部24にLNGを充填する前に実施する。
図8は、リークテスト装置90の概略図であり、この図ではメンブレン20を模式的に示している。
この実施例におけるリークテストでは、検査ガスとしてアンモニアガスを用い、このアンモニアガスをメンブレン20と保冷層50との間に所定濃度で封入し、メンブレン20の収容部24側の表面に検出剤を塗布して行う。
【0030】
リークテスト装置90は、LNGタンク1の地下設置と同時に予め設置しておく。リークテスト装置90は、地上に設置したアンモニア供給装置91と、アンモニア供給装置91からLNGタンク1のメンブレン20と保冷層50との間にアンモニアガスを供給する検査ガス供給管92と、リークテスト後にメンブレン20と保冷層50との間に封入されたアンモニアガスを回収するアンモニア回収管93とを備えている。
【0031】
検査ガス供給管92は、地下に埋設されて躯体10の外側に配設された基管92aと、基管92aに接続されメンブレン20の底部21の中央31の真下に延びる底部供給管92bと、基管92aに接続されメンブレン20の外周部22の下部に延びる外周部供給管92cとを備える。なお、図8には外周部供給管92cが1つだけ記載されているが、外周部供給管92cは外周部22の周方向に所定角度おきに複数設けられている。底部供給管92bおよび外周部供給管92cはいずれもメンブレン20と保冷層50との間に接続されており、底部供給管92bおよび外周部供給管92cからメンブレン20と保冷層50との間にアンモニアガスを供給することができるようになっている。
アンモニア回収管93は、一端が外周部22の上部においてメンブレン20と保冷層50との間に接続され、他端が図示しないガス回収装置に接続されている。
【0032】
次に、リークテストの手順を説明する。
まず、アンモニアガスをアンモニア供給装置91から検査ガス供給管92を介してメンブレン20と保冷層50との間に供給する。
底部供給管92bから供給されるアンモニアガスは、メンブレン20の底部21の中央31の下側において水平部33と保冷層50との間に放出される。底部供給管92bから放出されたアンモニアガスは、水平部と保冷層50との間の僅かな隙間を通って、中央31から外周部22に向かって放射状に広がっていく。
ここで、アンモニアガスが水平部33の面方向に沿って広がるのが理想であるが、アンモニアガスは空気よりも軽いため、収容部24側に突出するコルゲーション25,26内に集まり易く、コルゲーション25,26が形成されていない平坦部36には留まり難い。そして、水平部33において径方向に沿って設けられたコルゲーション25に流入したアンモニアガスは、外周部22に接近するように流れていく。
【0033】
しかしながら、このLNGタンク1では、水平部33におけるコーナー部32の直ぐ近くにおいて、コルゲーション25と保冷層50との間に堰き止め部材40が予め設置されているので、コルゲーション25に沿って流れるアンモニアガスはこの堰き止め部材40によって堰き止められる。その結果、堰き止め部材40に堰き止められたアンモニアガスは、コルゲーション25内から平坦部36にオーバーフローするようになり、水平部33の下側の全領域にアンモニアガスを行き渡らせることができる。したがって、水平部33の下側の全領域を短時間で規定濃度のアンモニアガス濃度にすることができる。
【0034】
そして、水平部33の下側の全領域にアンモニアガスが行き渡った後に、水平部33の平坦部36に沿って流れるアンモニアガスがコーナー部32の平坦部36へと流れていき、さらに外周部22におけるメンブレン20と保冷層50との間に流れていく。
【0035】
ここで、堰き止め部材40が存在しない場合には、水平部33のコルゲーション25に沿って径方向外側へと流れたアンモニアガスが、そのまま、コーナー部32のコルゲーション25に流入し、さらに外周部22のコルゲーション27に流入して、上方へと流れていってしまうため、水平部33の平坦部36の下側にアンモニアガスを留めることができない。したがって、堰き止め部材40が存在しない場合には、水平部33の下側の全領域を規定濃度のアンモニアガス濃度にすることが極めて困難となる。この実施例のLNGタンク1によれば、この問題を解決することができる。
【0036】
一方、外周部供給管92cから供給されるアンモニアガスは、外周部22の下部においてメンブレン20と保冷層50との間に放出される。外周部供給管92cから放出されたアンモニアガスは、外周部22におけるメンブレン20と保冷層50との間の僅かな隙間を通って上方へと流れていく。
【0037】
そして、底部21および外周部22においてメンブレン20と保冷層50との間に供給されたアンモニアガスの濃度が規定濃度に達したことが確認されたときに、アンモニア供給装置91からのアンモニアガスの供給を停止し、アンモニアガスの封入を完了する。なお、アンモニアガスの濃度検出は、メンブレン20の底部21および外周部22の所定位置に予め貫通形成しておいたセンサ取付孔(図示略)に、アンモニアガス濃度センサ(図示略)を取り付けて検出することができる。このセンサ取付孔は、リークテスト終了後、プラグ等で閉塞する。
【0038】
このようにして、メンブレン20と保冷層50との間にアンモニアガスを封入した後、アンモニアガスと反応し変色する検出剤を、メンブレン20における収容部24側の面に塗布し、前記検出剤が変色するか否かを目視により観察する。検出剤が変色した場合には、その変色した部分においてメンブレン20に漏れがあると判定する。
【0039】
以上説明するように、このLNGタンク1によれば、リークテストの際にメンブレン20の底部21と断熱層50との間にアンモニアガスを供給したときに、アンモニアガスはコルゲーション25,26が設けられていない平坦部36に沿って拡散するようになり、水平部33の下側の全領域に規定濃度のアンモニアガスを封入することができる。これにより、リークテストの検出精度が向上し、リークテストの信頼性が向上する。
【0040】
また、堰き止め部材40を構成するグラスウールは、超低温にも耐えることができ且つ変形自在であるので、リークテスト後、メンブレンタンク20の収容部24にLNGを収容したときに、LNGがマイナス162゜Cの低温のためメンブレン20が熱収縮してコルゲーション25が変形しても、堰き止め部材40もコルゲーション25の変形に追従して変形することができる。したがって、リークテスト終了後、堰き止め部材40を取り除かずにコルゲーション25と断熱層50との間に残しておいても、何ら問題が生じない。
また、堰き止め部材40をコルゲーション25と断熱層50との間に残しておくと、例えばメンテナンス時に常温下でLNGタンク1のリークテストを行う場合に、堰き止め部材40を再び利用することができる。
【0041】
また、実施例のリークテスト方法によれば、メンブレン20の底部21と断熱層50との間にアンモニアガスを供給する前に、底部21の外周領域における水平部33の径方向に沿って延びるコルゲーション25と断熱層50との間に堰き止め部材40を設置してアンモニアガスをコルゲーション25に沿って流れ難くし、その後、水平部33と断熱層50との間にアンモニアガスを供給しているので、水平部33の下側の全領域に規定濃度の検査ガスを封入することができる。これにより、リークテストの検出精度が向上し、リークテストの信頼性が向上する。
前記実施例では、底部21の下側にアンモニアガスを供給する際に底部21の中央31から供給しているが、アンモニアガスの供給位置は中央31から離れた位置であっても構わない。
【0042】
また、前記実施例では、底部21の水平部33におけるコーナー部32に接近した位置に堰き止め部材40を配置したが、堰き止め部材40はコーナー部32におけるコルゲーション25と保冷層50との間に設置することも可能である。水平部33におけるコーナー部32に接近した部位およびコーナー部32は、底部21の外周領域を構成する。
【0043】
さらに、底部21の外周領域に堰き止め部材40を配置するのに加えて、この堰き止め部材40と底部21の中心31との中間部におけるコルゲーション25と保冷層50との間に、堰き止め部材40と同様の別の堰き止め部材を設置して、底部21の下側におけるアンモニアガスの封入領域を区画してもよい。その場合には、区画された各封入領域にそれぞれアンモニアガスを供給する。また、そうすることができるように、リークテスト装置90の底部供給管92bを設置する。
【0044】
また、前記実施例では、底部21の径方向に沿って延びるコルゲーション25の総てに堰き止め部材40を設置したが、必ずしも総てのコルゲーション25に堰き止め部材40を設置しなくても構わない。底部21の下側の全領域でアンモニアガス濃度を規定濃度にすることができる限りは、堰き止め部材40が設置されないコルゲーション25があってもよい。すなわち、堰き止め部材40が設置されるコルゲーション25を間引きして設定してもよい。
【0045】
また、前記実施例では、総ての堰き止め部材40を底部21の中心31から同一距離に配置しているが、隣り合う堰き止め部材40の底部21の中心31からの距離を互いにずらして、千鳥に配置してもよい。
【0046】
LNGタンク1は地下式に限らず、地上式や船内に設置されるものであってもよい。また、貯蔵物はLNGに限定されるものではなく、すなわち、メンブレンタンクはLNGタンクに限定されない。
【符号の説明】
【0047】
1 LNGタンク(メンブレンタンク)
20 メンブレン
21 底部
24 収容部
25 コルゲーション
40 堰き止め部材
50 保冷層(断熱層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側が貯蔵物の収容部とされたメンブレンと、前記メンブレンの外側に沿って配置された断熱層と、を備え、前記メンブレンの底部には、前記収容部側に突出し径方向に沿って延びる熱収縮吸収用のコルゲーションが設けられているメンブレンタンクにおいて、
前記メンブレンの底部における外周領域には、前記コルゲーションと前記断熱層との間に、ガスの流通を阻止する堰き止め部材が設置されていることを特徴とするメンブレンタンク。
【請求項2】
前記堰き止め部材はグラスウールで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のメンブレンタンク。
【請求項3】
前記メンブレンはその底部に前記コルゲーションを多数備え、その総てのコルゲーションに前記堰き止め部材が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメンブレンタンク。
【請求項4】
内側が貯蔵物の収容部とされ底部に径方向に沿って延びる熱収縮吸収用のコルゲーションが設けられたメンブレンと、その外側に配置された断熱層との間に検査ガスを封入し、この検査ガスが前記メンブレンの前記収容部側に漏洩するか否かを検出するメンブレンタンクのリークテスト方法において、
前記メンブレンと前記断熱層との間に前記検査ガスを供給する前に、前記底部の外周領域における前記コルゲーションと前記断熱層との間に堰き止め部材を設置してガスを前記コルゲーションに沿って流れ難くし、その後、前記メンブレンと前記断熱層との間に前記検査ガスを供給し封入して、この検査ガスが前記メンブレンの前記収容部側に漏洩するか否かを検出することを特徴とするメンブレンタンクのリークテスト方法。
【請求項5】
前記検査ガスと反応し変色する検出剤を前記メンブレンにおける前記収容部側の面に塗布し、前記検出剤が変色した場合にその変色した部分において前記メンブレンに漏れがあると判定することを特徴とする請求項4に記載のメンブレンタンクのリークテスト方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−158388(P2011−158388A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21387(P2010−21387)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】