説明

モータ

【課題】ブラシホルダに対してブラシをヨークハウジング側から取付可能としつつ、ヨークハウジングの軸方向長さのコンパクト化を図ることができるモータを提供する。
【解決手段】ブラシホルダ18には、回転軸19を挿通可能な挿通孔25aを有するホルダベース部23と、ホルダベース部23から連続するブラシ保持部24とが備えられる。ブラシ保持部24は、ブラシ17を整流子16に向けてホルダベース部23のヨークハウジング13側から反ヨークハウジング13側であるギヤハウジング40側に向けて回転軸19に対して傾斜する方向に移動可能に案内し、整流子16寄りである径方向内側がヨークハウジング13の開口部13cよりも反ヨークハウジング13側に突出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子と摺接するブラシ付きのモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸と一体回転可能に固定される整流子がブラシと摺接され、このブラシを介して整流子に給電を行うモータが知られている。
このようなモータは、例えば特許文献1に開示されているように、有底筒状のヨークハウジングよりも軸方向外側に整流子が設けられており、この整流子と摺接するブラシがヨークハウジングの外部においてブラシホルダによって保持されている。また、このモータでは、モータの回転等を制御するECUが、ヨークハウジングから延出する回転軸の軸方向において、前記整流子及びブラシホルダと並んで配置されており、ヨークハウジングの軸方向長さが整流子及びブラシホルダをヨークハウジング内に収容する構成のモータと比較して短く形成できている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−523708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のモータでは、ブラシホルダにブラシを取り付ける際に、ブラシホルダにおけるブラシ取付位置がヨークハウジングの外側(ギヤハウジング側)に位置し、そのためギヤハウジング側から取り付け可能に構成されている。これに伴い、ヨークハウジングとブラシホルダとを取り付けた後に、ヨークハウジング側が下でブラシホルダ側が上となるように上下を入れ替え、つまりブラシホルダ及びヨークハウジングを裏返し、その後にブラシの取り付けを行うこととなり、作業が煩雑となっていた。
【0005】
一方、ヨークハウジング内にブラシホルダ全体を収容した構成のモータである場合、ブラシホルダにブラシをヨークハウジング側から取り付けることができるため、ブラシホルダを裏返すといった作業を行わなくてよい。しかしながら、このようなモータでは、ヨークハウジング内にブラシホルダ全体を収容しているため、ヨークハウジングの軸方向長さが比較的長くなってしまい、このような問題の改善が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ブラシホルダに対してブラシをヨークハウジング側から取付可能としつつ、ヨークハウジングの軸方向長さのコンパクト化を図ることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、整流子を有する電機子が回転自在に収容される有底筒状のヨークハウジングと、前記ヨークハウジングの開口部側に設けられるとともに、前記整流子に接触させて給電を行うためのブラシを保持するブラシ保持部を有するブラシホルダとを備えたモータであって、前記ブラシホルダは、前記電機子の回転軸を挿通可能な挿通孔を有するホルダベース部と、前記ホルダベース部から連続する前記ブラシ保持部とを備え、前記ブラシ保持部は、前記ヨークハウジング側から反ヨークハウジング側に向けて前記回転軸に対して傾斜する方向に前記ブラシを移動可能に案内し、前記整流子寄りの少なくとも一部が前記ヨークハウジングの開口部より反ヨークハウジング側に突出するよう構成されたことをその要旨とする。
【0008】
この発明では、ブラシホルダには、電機子の回転軸を挿通可能な挿通孔を有するホルダベース部と、ホルダベース部から連続するブラシ保持部とが備えられる。ブラシ保持部は、ホルダベース部のヨークハウジング側から反ヨークハウジング側に向けて回転軸に対して傾斜する方向に移動可能にブラシを案内し、整流子寄りの少なくとも一部がヨークハウジングの開口部から反ヨークハウジング側に突出するように構成される。これにより、ブラシホルダのブラシ保持部に対してブラシをヨークハウジング側から組み付けることができる。更に、ブラシ保持部の一部がヨークハウジングの開口部より反ヨークハウジング側に突出している分、ヨークハウジング内にブラシホルダ(ブラシ保持部)を収容する従来構成のモータと比較してヨークハウジングの軸方向長さを抑えることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータであって、前記ヨークハウジングは、前記ヨークハウジングの開口部から径方向外側に向けて延びるフランジ部を有し、前記ブラシ保持部は、その径方向外側に前記ブラシを挿入するための挿入開口部を備え、該挿入開口部は、前記回転軸方向で前記フランジ部に対応した位置に設けられたことを要旨とする。
【0010】
この発明では、有底筒状のヨークハウジングには、その開口部から径方向外側に向けて延びるフランジ部が備えられる。ブラシ保持部には径方向外側にブラシを挿入するための挿入開口部が備えられ、その挿入開口部は回転軸方向でフランジ部に対応した位置に設けられる。つまり、ヨークハウジング内にブラシホルダを収容する従来構成のモータのように、ヨークハウジングにおいてブラシホルダを収容している箇所の外形を大きくして段付形状とするような構成を採る必要がなく、ヨークハウジングの外径を小さく抑えることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータにおいて、前記ホルダベース部の反ヨークハウジング側には、前記整流子の周囲を覆うカバー部を設けたことを要旨とする。
【0012】
この発明では、ホルダベース部の反ヨークハウジング側には、整流子の周囲を覆うカバー部が設けられるため、ブラシと整流子との摺接によって発生するブラシ粉の飛散が抑制される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のモータにおいて、前記回転軸の回転を検出する回転検出手段を備え、前記回転検出手段は、前記回転軸と一体回転可能に設けられる被検出器と、前記カバー部を介して前記被検出器に対向する回転検出器とを有してなることをその要旨とする。
【0014】
この発明では、回転軸の回転を検出する回転検出手段が備えられ、回転検出手段には、回転軸と一体回転可能に設けられる被検出器と、カバー部を介して前記被検出器に対向する回転検出器とが備えられる。このように、カバー部を介して被検出器を回転検出器によって検出することで、回転軸の回転数や回転位置を検出することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータにおいて、前記回転軸の回転を減速させる減速機構を収容するギヤハウジングを有し、前記ホルダベース部は、前記ヨークハウジングと前記ギヤハウジングとの間に挟持されたことをその要旨とする。
【0016】
この発明では、回転軸の回転を減速させる減速機構を収容するギヤハウジングが備えられ、ホルダベース部はヨークハウジングとギヤハウジングとの間に挟持される。つまり、ヨークハウジングとギヤハウジングの外部にホルダベース部が位置し、ヨークハウジング内に占めるブラシホルダの割合が低減され、よりヨークハウジングの軸方向長さを短くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
従って、上記記載の発明によれば、ブラシホルダに対してブラシをヨークハウジング側から取付可能としつつ、ヨークハウジングの軸方向長さのコンパクト化を図ることができるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態におけるモータの概略構成図である。
【図2】モータの側面図である。
【図3】ブラシホルダの取付構造を説明するための断面図である。
【図4】ブラシホルダの斜視図である。
【図5】ブラシホルダの側面図である。
【図6】ギヤハウジングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を車両用パワーウインド装置の駆動源としてのモータに具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態のモータ10の概略構成を示す。モータ10は、例えば車両に搭載されたパワーウインド装置の駆動に用いられる直流モータであり、モータ本体11と、減速部12とを備えている。
【0020】
モータ本体11は、図1〜図3に示すようにヨークハウジング13、一対のマグネット14、アーマチャ(電機子)15、整流子16、一対のブラシ17及びブラシホルダ18を備えている。
【0021】
ヨークハウジング13は、有底扁平円筒状をなしており、その一対の扁平面13aをそれぞれ連結する湾曲面13bにおける内側面には一対のマグネット14が固着されている。マグネット14の内側には、アーマチャ15が収容されている。アーマチャ15は回転軸19を有し、その回転軸19の基端部(図1〜図3において上側)はヨークハウジング13の底部中央に保持された図示しない軸受により回転可能に支持されている。また、回転軸19の先端側であって、ヨークハウジング13の開口部13c側には整流子16が固定されている。
【0022】
また、ヨークハウジング13の開口部13cには、湾曲面13bから径方向外側(図1中、左右方向側)に延びる一対のフランジ部13dが形成されている。このフランジ部13dにはねじXが挿通可能な図示しないねじ挿通孔が形成されている。また、ヨークハウジング13の開口部13cにはブラシホルダ18が配設されるように、ヨークハウジング13と後述のギヤハウジング40とでそのブラシホルダ18が挟持されている。
【0023】
ブラシホルダ18は、ヨークハウジング13及びギヤハウジング40の間に介在される軸方向視で略長方形状のブラシホルダ本体部20と、このブラシホルダ本体部20の側縁部21(図3において右側)から突出形成されたコネクタ取付枠部22とで構成されている。
【0024】
ブラシホルダ本体部20は、ホルダベース部23と、ブラシ17を保持するブラシ保持部24とを備えている。
ホルダベース部23は、軸線L1方向と直交する方向に沿って延び、樹脂材料からなる本体部側ベース部23aと、このベース部23aの周縁部を覆う態様で本体部側ベース部23aと一体成形された本体部側シール部材23bとで構成されている。
【0025】
本体部側ベース部23aには、その中心においてギヤハウジング40側に凸となる有底円筒状のカバー部としての整流子収容部25が設けられており、この整流子収容部25の底部には回転軸19を挿通可能な挿通孔25aが形成されている。また、整流子収容部25内には、回転軸19の先端側に前記整流子16と、これよりも更に先端側にはセンサマグネット26が一体回転可能に取り付けられている。
【0026】
ブラシ保持部24は、ブラシホルダ本体部20の長手方向(図3中、左右方向)に沿って略四角筒状に形成され、その径方向内側である一端側は前記整流子収容部25の内周面25b側に開口されている。また、ブラシ保持部24は、整流子16側(径方向内側)にかけてヨークハウジング13側から反ヨークハウジング13側(ギヤハウジング40側)に向けて回転軸19の軸線L1に対して所定角度(例えば70°〜85°)傾斜するように形成されている。そして、ブラシ保持部24には、整流子16寄りである径方向内側がヨークハウジング13の開口部13c及び前記ホルダベース部23(本体部側ベース部23a)よりも突出するように突出部24bが形成されている。
【0027】
また、ブラシ保持部24の径方向外側には略四角形柱状のブラシ17が挿入可能な挿入開口部24aが形成されるとともに、この挿入開口部24aから略四角柱状のブラシ17が挿入されるようになっている。また、このブラシ17は径方向外側における端部17aが図示しないスプリングによって径方向内側(整流子16側)に付勢されている。そして、ブラシ保持部24の挿入開口部24aは前記ヨークハウジング13のフランジ部13dと軸線L1方向において対向し、フランジ部13dにて閉塞されるように構成されている。この時、ブラシ保持部24に挿設される各ブラシ17は、その端面に図示しないピッグテール(導線)によってブラシホルダ本体部20(ホルダベース部23)から下方に延びる2つのホルダ側ターミナル18aのそれぞれに接続されている。尚、前記ピッグテールはヨークハウジング13と干渉しないように設けられている。
【0028】
また、ブラシホルダ本体部20には、図4に示すように、周縁部における各長辺側の両端部分に略四角形状に凹む窪み部29,30が形成されている。この窪み部29,30は、体格に位置するもの同士が同形状をなし、一方側の窪み部29が他方側の窪み部30より大きく形成されている。窪み部29,30は、後述のギヤハウジング40に設けられる突出部47,48に対応して形成されている。
【0029】
ブラシホルダ本体部20を構成するコネクタ取付枠部22は、ブラシホルダ本体部20と一体成形された取付枠部側ベース部22aと、このベース部22a全体を覆うとともにベース部22aと一体成形された取付枠部側シール部材22bとで構成される。
【0030】
取付枠部側ベース部22aは、樹脂材料からなり、本体部側ベース部23aの長手方向一端側の側縁部21下面から回転軸19の軸線L1方向に延出形成されている。コネクタ取付枠部22を構成する取付枠部側ベース部22aは、図5に示すように、側縁部21の両端下面からそれぞれ軸線L1方向に延出する延出部31,32と、この延出部31,32の先端同士を繋ぐ接続部33とで構成され、本体部側ベース部23aの側縁部21とで四角形枠状に形成される。
【0031】
取付枠部側ベース部22aを覆う取付枠部側シール部材22bは、コネクタ取付枠部22の外周部34側におけるその下端側(突出方向側)の角部35に、湾曲形状となる湾曲部36が設けられる。
【0032】
尚、取付枠部側シール部材22b及び前記本体部側シール部材23bは一体成形されている。つまり、ブラシホルダ18を構成するブラシホルダ本体部20の本体部側ベース部23a及びコネクタ取付枠部22のベース部22aを一体成形した状態で、シール部材23b,22bを例えば二色成形により一体に成形されている。
【0033】
コネクタ取付枠部22の内周部37には、図3に示すように、ECU38を備えたコネクタ部材39の先端部39aが着脱可能に装着され、先端部39aの外周部がシール部材22bに密着するようになっている。この時、図1及び図2に示すように、コネクタ部材39は、その挿入方向がモータ10の厚さ方向及び軸線L1方向と直交する方向、即ちモータ10の扁平方向となるように挿入される。このため、コネクタ部材39による厚さ方向の増大を抑え、モータ10の扁平構造を極力維持することができている。また、コネクタ部材39は、前述した先端部39aの他、図示しないねじ若しくはフック等でギヤハウジング40に安定して固定されている。尚、コネクタ部材39と接続される図示しない外部給電コネクタの接続方向は、扁平方向と直交する方向に設定されている。
【0034】
コネクタ部材39に設けられるECU38は、その先端に設けられる2つのECU側ターミナル38aがブラシホルダ18側に設けられたホルダ側ターミナル18aとコネクタ部材39の装着に伴って電気的に接続されるようになっている。そして、コネクタ部材39に車両側の図示しない外部給電コネクタが接続されることで、ECU側ターミナル38aからブラシ17に電力が適宜供給されるようになっている。尚、このECU38は、ホールICを備えており前記センサマグネット26と近接するように、そのホールIC部分を位置すべく配置されている。そして、ECU38に備えられたホールICにてカバー部としての整流子収容部25を介してセンサマグネット26の回転位置や回転数が検出されることで、回転軸19の回転位置や回転数が検出されるようになっている。
【0035】
モータ本体11に取り付けられる減速部12は、ギヤハウジング40、ウォーム軸41、ウォームホイール42及び図示しないクラッチを備えている。尚、本実施形態では、ウォーム軸41、ウォームホイール42が回転軸19の回転を減速するための減速機構を構成している。
【0036】
ギヤハウジング40は、図1及び図6に示すように、回転軸19の軸線L1方向に延びるウォーム収容部40aと、回転軸19の軸線L1方向と交差する方向(前記ヨークハウジング13の扁平面13aと平行、即ち扁平方向)に迫り出すホイール収容部40bとで構成されている。ウォーム収容部40aにはウォーム軸41及び図示しないクラッチ等が収容されるとともに、ホイール収容部40bにはウォーム軸41と噛合するウォームホイール42が収容されている。
【0037】
また、ギヤハウジング40は、ヨークハウジング13のヨークハウジング側開口部13cと対向する略長方形状の上端側開口部45を有している。尚、上端側開口部45の長手方向が前記扁平方向に沿うように設けられている。また、ギヤハウジング40は、前記コネクタ部材39の挿入箇所におけるコネクタ取付枠部22が位置する部位が上端側開口部45の長手方向一端からギヤハウジング40の側面側に連続する略正方形状の側面開口部46を有している。
【0038】
ギヤハウジング40の上端側開口部45側の四隅には上側に突出する突出部47,48が形成されており、ブラシホルダ本体部20に形成される窪み部29が突出部47と係合し、窪み部30が突出部48と係合するようになっている。また、計4つ形成される突出部47,48の内の2つの突出部47には、前記ねじXが挿通可能なねじ孔47aが形成されている。そして、このギヤハウジング40及びヨークハウジング13は、上端側開口部45と、ヨークハウジング側開口部13cとで、ブラシホルダ18(本体部側シール部材23b)を間に挟むようにして、フランジ部13dのねじ挿通孔を挿通させたねじXとギヤハウジング40に保持されたナットYとの螺合にて固定される。この時、ギヤハウジング40とヨークハウジング13とでブラシホルダ18(本体部側シール部材23b)が挟持されることで、ギヤハウジング40及びブラシホルダ18間、及びヨークハウジング13及びブラシホルダ18間がシールされる。
【0039】
ギヤハウジング40の内周部には、ブラシホルダ18に形成されたコネクタ取付枠部22と対応するように上端側開口部45側から3つの内側面に亘って連続するように形成される溝部50が設けられている。この溝部50は、下側に位置する角部50aが湾曲形状とされる。また、溝部50は、前記コネクタ取付枠部22を覆うシール部材22bよりもその大きさが若干小さくなるように形成(例えば厚さ方向におけるシール部材22aの寸法に対し95%以下)されており、溝部50にコネクタ取付枠部22を挿通する際に圧縮されるようになっている。
【0040】
ウォーム収容部40aに収容されるウォーム軸41(図1参照)は、ウォーム収容部40a内に設けられた図示しない軸受により回転可能に支持され、図示しないクラッチを介してモータ本体11から延びる回転軸19と駆動連結されている。尚、前記クラッチは、回転軸19からの駆動力をウォーム軸41に伝達し、逆にウォーム軸41からの駆動力が回転軸19に伝達しないようにウォーム軸41の回転をロックするように作動するものである。
【0041】
また、ウォーム軸41は、ウォームホイール42(図1参照)と噛合されている。ウォームホイール42は、ウォーム軸41と直交するように配置された出力軸51と駆動連結されている。出力軸51は、ウインドガラスを開閉させる周知のワイヤ式レギュレータに駆動連結されることになる。そして、出力軸51が回転することによりレギュレータが作動し、ウインドガラスが開閉するようになっている。
【0042】
上記のように構成されたモータ10では、ブラシ保持部24が整流子16側(径方向内側)に向けてヨークハウジング13側から反ヨークハウジング13側(ギヤハウジング40側)に向けて軸線L1に対して傾斜するように形成されているため、ヨークハウジング13側からブラシ17を取り付けることができるようになっている。また、ブラシ保持部24は、整流子16寄りである径方向内側がヨークハウジング13の開口部13cよりも反ヨークハウジング13側に突出するように構成されている。このため、少なくともその突出分だけ、ヨークハウジング内にブラシホルダ(ブラシ保持部)を収容する従来構成のモータと比較してヨークハウジング13の軸方向長さを抑えることができるようになっている。
【0043】
また、ヨークハウジング13のフランジ部13dとブラシ保持部24の挿入開口部24aとが軸方向に対向し、このフランジ部13dによって挿入開口部24aの大半が閉塞されるようになっている。このため、ヨークハウジング内にブラシホルダを収容する従来構成のモータとのように、ヨークハウジングにおいてブラシホルダを収容している箇所の外形を大きくして段付形状とするような構成を採る必要がなく、ヨークハウジングの外径を小さく抑えることができるようになっている。
【0044】
また、整流子16の径方向外側と下部を覆うカバー部としての整流子収容部25がホルダベース部23に設けられているため、整流子16とブラシ17との摺接によって発生するブラシ粉の飛散を抑制できるようになっている。
【0045】
また、ブラシ保持部24は、その長手方向がフランジ部13dの延出方向と略同一となるように取り付けられているため、モータとしての径方向への大きさの増大が抑制されている。
【0046】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)ブラシホルダ18には、回転軸19を挿通可能な挿通孔25aを有するホルダベース部23と、ホルダベース部23から連続するブラシ保持部24とが備えられる。ブラシ保持部24は、ブラシ17を整流子16に向けてホルダベース部23のヨークハウジング13側から反ヨークハウジング13側であるギヤハウジング40側に向けて回転軸19に対して傾斜する方向に移動可能に案内し、整流子16寄りである径方向内側がヨークハウジング13の開口部13cよりも反ヨークハウジング13側に突出するように構成される。これにより、ブラシホルダ18のブラシ保持部24に対してブラシ17をヨークハウジング13側から組み付けることができる。更に、ブラシ保持部24の一部がホルダベース部23から反ヨークハウジング13側に突出している分、ヨークハウジング内にブラシホルダ(ブラシ保持部)を収容する従来構成のモータと比較してヨークハウジング13の軸方向長さを抑えることができる。
【0047】
(2)有底筒状のヨークハウジング13には、その開口部13cから径方向外側に向けて延びるフランジ部13dが備えられる。ブラシ保持部24にはヨークハウジング13側にブラシ17を挿入するための挿入開口部24aが備えられ、その挿入開口部24aは回転軸方向でフランジ部13dに対応した位置に設けられる。このような構成とすることで、ヨークハウジング内にブラシホルダを収容する従来構成のモータのように、ヨークハウジングにおいてブラシホルダを収容している箇所の外形を大きくして段付形状とするような構成を採る必要がなく、ヨークハウジング13の外径を小さく抑えることができる。
【0048】
(3)ホルダベース部23の反ヨークハウジング13側には、整流子16の周囲を覆うカバー部としての整流子収容部25が設けられるため、ブラシ17と整流子16との摺接によって発生するブラシ粉の飛散が抑制される。
【0049】
(4)回転軸19と一体回転可能に設けられる被検出器としてのセンサマグネット26と、整流子収容部25を介してセンサマグネット26に対向する回転検出器としてのホールICを備えたECU38とで回転19軸の回転を検出する回転検出手段が構成される。このように、整流子収容部25を介してセンサマグネット26をホールICを備えたECU38によって検出することで、回転軸19の回転数や回転位置を検出することが可能となる。
【0050】
(5)回転軸19の回転を減速する減速機構がウォーム軸41及びウォームホイール42とで構成され、これらを収容するギヤハウジング40が備えられる。そして、ホルダベース部23はヨークハウジング13とギヤハウジング40との間に挟持される。つまり、ヨークハウジング13とギヤハウジング40の外部にホルダベース部23が位置し、ヨークハウジング13内に占めるブラシホルダ18の割合が低減され、よりヨークハウジング13の軸方向長さを短くすることが可能となる。
【0051】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ブラシ保持部24の挿入開口部24aをヨークハウジング13のフランジ部13dと軸方向において対向するように構成したが、対向しない構成であってもよい。
【0052】
・上記実施形態では、整流子16とブラシ17との摺接によって発生するブラシ粉の拡散をカバー部としての整流子収容部25によって抑制する構成としたが、整流子収容部25を省略した構成を採用してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、ホールIC内蔵のECU38とセンサマグネット26にて回転軸19の回転を検出する回転検出手段を構成したが、これに限らず、例えばホールICとECU38とを別体として、ホールICとセンサマグネット26とで回転検出手段を構成してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、センサマグネット26を整流子16とともに整流子収容部25内に収容する構成としたが、センサマグネット26の位置はこれに限らない。
・上記実施形態では、減速機構を構成するウォーム軸41及びウォームホイール42を設ける構成としたが、モータ10の回転軸19を出力軸として減速機構を省略した構成であってもよい。
【0055】
・上記実施形態では、パワーウインド装置用のパワーウインドモータとしたが、これに限らず、ワイパモータやその他のモータであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…モータ、13…ヨークハウジング、13c…開口部、13d…フランジ部、15…電機子としてのアーマチャ、16…整流子、17…ブラシ、18…ブラシホルダ,19…回転軸、23…ホルダベース部、24…ブラシ保持部、24a…挿入開口部、25…カバー部としての整流子収容部、25a…挿通孔、26…被検出器としてのセンサマグネット、38…回転検出器としてのホールICを備えたECU、40…ギヤハウジング、41…減速機構を構成するウォーム軸、42…減速機構を構成するウォームホイール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子を有する電機子が回転自在に収容される有底筒状のヨークハウジングと、
前記ヨークハウジングの開口部側に設けられるとともに、前記整流子に接触させて給電を行うためのブラシを保持するブラシ保持部を有するブラシホルダと
を備えたモータであって、
前記ブラシホルダは、前記電機子の回転軸を挿通可能な挿通孔を有するホルダベース部と、前記ホルダベース部から連続する前記ブラシ保持部とを備え、
前記ブラシ保持部は、前記ヨークハウジング側から反ヨークハウジング側に向けて前記回転軸に対して傾斜する方向に前記ブラシを移動可能に案内し、前記整流子寄りの少なくとも一部が前記ヨークハウジングの開口部より反ヨークハウジング側に突出するよう構成されたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記ヨークハウジングは、前記ヨークハウジングの開口部から径方向外側に向けて延びるフランジ部を有し、
前記ブラシ保持部は、その径方向外側に前記ブラシを挿入するための挿入開口部を備え、該挿入開口部は、前記回転軸方向で前記フランジ部に対応した位置に設けられたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記ホルダベース部の反ヨークハウジング側には、前記整流子の周囲を覆うカバー部を設けたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータにおいて、
前記回転軸の回転を検出する回転検出手段を備え、
前記回転検出手段は、前記回転軸と一体回転可能に設けられる被検出器と、前記カバー部を介して前記被検出器に対向する回転検出器とを有してなることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータにおいて、
前記回転軸の回転を減速させる減速機構を収容するギヤハウジングを有し、
前記ホルダベース部は、前記ヨークハウジングと前記ギヤハウジングとの間に挟持されたことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−4490(P2011−4490A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144329(P2009−144329)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】