説明

ラミネート形電池

【課題】 積層数の多い積層電極体や巻回数の多い巻回電極体を備えており、信頼性が高く、また、外部端子の引き出し位置の自由度が高いラミネート形電池を提供する。
【解決手段】 シート状正極、シート状負極およびセパレータを有する電極体が、ラミネートフィルム外装体に収容された電池であって、電極の積層数が20以上の積層電極体または巻回数が10以上の巻回電極体を有し、シート状正極に係る複数の正極タブを積層した正極タブ積層体が複数に分かれていて、それぞれが別の正極外部端子に接続され、各正極外部端子同士がラミネートフィルム外装体の内部または外部で互いに電気的に接続されており、かつシート状負極に係る複数の負極タブを積層した負極タブ積層体が複数に分かれていて、それぞれが別の負極外部端子に接続され、各負極外部端子同士がラミネートフィルム外装体の内部または外部で互いに電気的に接続されているラミネート形電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層数の多い積層電極体や巻回数の多い巻回電極体を備えており、高い信頼性を有するラミネート形電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、電池の用途が拡大するにつれて、高容量化や、高エネルギー密度化、高出力化といった電池の特性向上を目的とした開発が盛んに行われている。特に、自動車用途などの高出力、高容量が要求される用途への電池の適用も求められるようになっており、従来はニッケル水素電池が用いられてきたが、最近では、より軽量化を図り得るリチウムイオン二次電池の適用も検討されている。
【0003】
ところで、電池の高容量化を図るには、電池内に導入する活物質量を増やすことが有効であり、また、電池の負荷特性向上を図るには、電極を薄くし、反応面積を増やすことが有効である。
【0004】
例えば一般的な円筒形の18650型電池を前記のような高容量、高出力が要求される用途に使用するには、数百個から数千個を用いる必要があり、それらの電池をシリーズやパラレルに組電池とすることも不可能ではないが、作業が非常に煩雑となり、信頼性の確保も困難となる。
【0005】
そこで、こうした問題を解決するには、1個の電池を大型化し、例えば組電池に用いる単電池の使用個数を減らすことが有効である。そして、現在では、1個で10Ahを超えるような大型の電池の開発も進みつつある。
【0006】
前記のような大型電池としては、例えば、集電体の表面に正極合剤層を有する正極と集電体の表面に負極合剤層を有する負極とをセパレータを介して積層した積層電極体を用いる電池の場合には、正極および負極の積層数を多くしたものが挙げられ(例えば、特許文献1)、また、集電体の表面に正極合剤層を有する正極と集電体の表面に負極合剤層を有する負極とをセパレータを介して重ね、渦巻き状に巻回した巻回電極体を用いる電池の場合には、巻回数を多くしたものが挙げられる。
【0007】
また、前記のような大型電池では、形状自由度が高く軽量であるといった利点から、金属ラミネートフィルムで構成されるラミネートフィルム外装体が使用される場合が多い。そして、前記のような電池の電極からの集電は、集電体の一部を正極合剤層や負極合剤層を形成せずに無地部とし、かかる箇所を集電タブとして外部端子と溶接(超音波溶接など)などによって接続して行うことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3683242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記のように電極の積層数の多い積層電極体を有する電池や、巻回数の多い巻回電極体を有する電池では、電極体の厚みが大きくなる。よって、外部端子と距離のある電極に係る集電タブは、外部端子との接続のために長い距離を引き回す必要があり、その際に集電タブに大きな張力がかかることになって破損が生じる虞がある。このようなことから、通常は、集電タブを電極端面に沿わせて引き回すなどして集電タブにかかる張力を低減する方策が取られているが、この場合、集電タブが非常に長くなるため、抵抗が増大してしまう。
【0010】
また、電極の積層数を増やした積層電極体を有する電池や、巻回数を増やした巻回電極体を有する電池では、多数の集電タブを積層して外部端子に溶接することから、集電タブと外部端子との溶接箇所の信頼性も低下する。
【0011】
例えば、電極の集電タブの一部を外部端子の片面に溶接し、残りを外部端子の他面に溶接する手法や、外部端子の幅を大きくして、電極の集電タブの一部を重ねて外部端子の所定箇所に溶接し、集電タブの残りを重ねて外部端子の別の箇所に溶接する手法によって、前記のような問題を回避することも考えられる。しかし、前者の手法では、多数の集電タブを一度に溶接することに変わりはなく、集電タブと外部端子との溶接信頼性が不十分となる虞がある。また、後者の手法では、集電タブと外部端子との溶接が複数回に分けて行われることから、後の溶接時に先に溶接した箇所に振動などが加わるなどして悪影響を及ぼす虞があり、外部端子の幅や長さが大きくなることで、電池内空間の利用の点で不利となり、外部端子を外装体から引き出す位置の自由度が損なわれる問題もある。
【0012】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、積層数の多い積層電極体や巻回数の多い巻回電極体を備えており、信頼性が高く、また、外部端子の引き出し位置の自由度が高いラミネート形電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成し得た本発明のラミネート形電池は、集電体の少なくとも片面に正極合剤層を有する複数のシート状正極と集電体の少なくとも片面に負極合剤層を有する複数のシート状負極とがセパレータを介して積層された積層電極体が、平面視で多角形のラミネートフィルム外装体に収容されており、前記ラミネートフィルム外装体の外周辺が熱シールされているラミネート形電池であって、前記積層電極体の有するシート状正極とシート状負極との合計数が20以上であり、各シート状正極の集電体の一部は、正極合剤層が形成されずに正極タブとされ、各シート状負極の集電体の一部は、負極合剤層が形成されずに負極タブとされ、前記複数のシート状正極の正極タブが、複数の組に分けられて積層されることにより、複数の正極タブ積層体が形成されており、前記複数のシート状負極の負極タブが、複数の組に分けられて積層されることにより、複数の負極タブ積層体が形成されており、各正極タブ積層体は、それぞれ別の正極外部端子に接続され、かつ各負極タブ積層体は、それぞれ別の負極外部端子に接続されており、各正極外部端子および各負極外部端子は、それぞれラミネートフィルム外装体の内部および外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のラミネート形電池の別の態様は、集電体の少なくとも片面に正極合剤層を有するシート状正極と集電体の少なくとも片面に負極合剤層を有するシート状負極とがセパレータを介して積層されて渦巻き状に巻回された、横断面が略長円形(長円形を含む。以下、同じ。)巻回電極体が、平面視で四角形のラミネートフィルム外装体に収容されており、前記ラミネートフィルム外装体の外周辺が熱シールされているラミネート形電池であって、前記巻回電極体の巻回数が10以上であり、前記シート状正極の集電体の幅方向の端部は、正極合剤層が形成されずに正極タブとされ、前記シート状負極の集電体の、前記正極タブとは反対側の幅方向の端部は、負極合剤層が形成されずに負極タブとされ、前記シート状正極の正極タブは、前記巻回電極体の略長円形の平坦部において、複数の組に分けられて積層されることにより、複数の正極タブ積層体が形成されており、前記シート状負極の負極タブは、前記巻回電極体の略長円形の平坦部において、複数の組に分けられて積層されることにより、複数の負極タブ積層体が形成されており、前記正極タブ積層体は、それぞれ別の正極外部端子に接続され、かつ前記負極タブ積層体は、それぞれ別の負極外部端子に接続されており、各正極外部端子および各負極外部端子同士は、それぞれラミネートフィルム外装体の内部および外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、積層数の多い積層電極体や巻回数の多い巻回電極体を備えており、信頼性が高く、また、外部端子の引き出し位置の自由度が高いラミネート形電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のラミネート形電池の一例を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明のラミネート形電池の他の例を模式的に示す平面図である。
【図3】図1および図2のA−A線における要部断面図の一例である。
【図4】図1および図2のA−A線における要部断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明のラミネート形電池の一例を模式的に示す平面図である。図1に示すラミネート形電池1では、電極体および電解液が、平面視で矩形のラミネートフィルム外装体2内に収容されている。そして、正極外部端子3および負極外部端子4が、ラミネートフィルム外装体2の同じ辺から引き出されている。ラミネートフィルム外装体2は、電池内側となる面に熱融着樹脂層を有する金属ラミネートフィルムにより構成されている。より具体的には、例えば2枚の金属ラミネートフィルムが重ねられてラミネートフィルム外装体2を構成し、電極体や電解液を内部に収容した状態でラミネートフィルム外装体2の外周辺が熱シールされることで、その内部が密閉されている。
【0018】
また、図2は、本発明のラミネート形電池の他の例を模式的に示す平面図である。図2に示すラミネート形電池1は、正極外部端子3および負極外部端子4が、それぞれラミネートフィルム外装体2の互いに対向する辺から外部に引き出されている他は、図1に示すラミネート形電池と同様の構成である。
【0019】
図3に、図1および図2のA−A線における要部断面図の一例を示す。図3は、複数のシート状正極5と複数のシート状負極6とがセパレータ7を介して積層された積層電極体を有するラミネート形電池の例である。なお、図3では、図面が複雑になることを避けるため、ラミネートフィルム外装体を構成する金属ラミネートフィルムの各層を区別しておらず、また、シート状正極の正極合剤層と集電体、およびシート状負極の負極合剤層と集電体も区別していない(後記の図4も同様である。)。
【0020】
図3に示すラミネート形電池1において、複数のシート状正極5は、集電体の片面または両面に正極合剤層が形成されており、かつ集電体の一部(図3中右端側)に正極合剤層が形成されずに正極タブとなり、各シート状正極5の正極タブが積層されて正極タブ積層体5a、5bを構成している。そして、正極タブ積層体5aが正極外部端子3aに、正極タブ積層体5bが正極外部端子3bに、それぞれ接続されている。また、図示していないが、ラミネート形電池1では、複数のシート状負極6は、集電体の片面または両面に負極合剤層が形成されており、かつ集電体の一部に負極合剤層が形成されずに負極タブとなり、各シート状負極6の負極タブが積層されて、複数の負極タブ積層体が構成されている。そして、各負極タブ積層体は、それぞれ別の負極外部端子に接続されている。
【0021】
本発明のラミネート形電池では、積層電極体を有する態様においては、かかる積層電極体におけるシート状正極とシート状負極との合計数が20以上であるが、このように積層数の多い積層電極体を有するラミネート形電池の場合、前記の通り、外部端子との接続時(溶接時)に正負極の集電タブの破損や、集電タブと外部端子との溶接による接続が不十分となることによる信頼性低下が起こり得る。
【0022】
そこで、本発明のラミネート形電池では、図3に示すように、複数のシート状正極の正極タブを積層した正極タブ積層体を複数に分け、各正極タブ積層体をそれぞれ別の正極外部端子に接続し、各正極外部端子を重ねるなどすることにより、各正極外部端子をラミネートフィルム外装体の内部および外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続しつつラミネートフィルム外装体の外部に引き出している。また、図示していないが、本発明のラミネート形電池では、複数のシート状負極についても、それらの負極タブを積層した負極タブ積層体を複数に分け、各負極タブ積層体をそれぞれ別の負極外部端子に接続し、各負極外部端子を重ねるなどすることにより、各負極外部端子をラミネートフィルム外装体の内部および外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続しつつラミネートフィルム外装体の外部に引き出している。
【0023】
そのため、本発明のラミネート形電池では、積層電極体に係る電極数を多くしつつ、1つの正極タブ積層体や1つの負極タブ積層体では、正極タブ、負極タブの積層数を減らし、かつ、1つの正極外部端子や1つの負極外部端子に接続する正極タブ数、負極タブ数を減らすことができる。よって、正極タブ積層体と正極外部端子との溶接強度、および負極タブ積層体と負極外部端子との溶接強度を高めて、これらの間の電気的接続を良好にすることができる。また、正極外部端子や負極外部端子を複数にすることで、シート状正極と正極外部端子との距離およびシート状負極と負極外部端子との距離を可及的に短くして、正極タブや負極タブの距離が長くなることによる電池製造時の破損や、抵抗の増大を抑制することができる。本発明のラミネート形電池では、これらの作用によって、高い信頼性を確保することができる。
【0024】
しかも、本発明のラミネート形電池では、正極外部端子および負極外部端子を複数枚使用し、それぞれをラミネートフィルム外装体の内部および外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続されているため、各正極外部端子の電気的接続方法および各負極外部端子の電気的接続方法の選択によって、ラミネートフィルム外装体から外部端子を引き出す位置を容易に変更し得ることから、外部端子の引き出し位置の自由度が高く、本発明のラミネート形電池の使用機器の設計上の自由度も高くなる。
【0025】
ラミネート形電池に係る各正極外部端子の電気的接続方法および各負極外部端子の電気的接続方法の好適例としては、例えば、図3に示すように、各正極外部端子同士および各負極外部端子同士を、それぞれラミネートフィルム外装体の内部で重ねる方法が挙げられる。各正極外部端子同士をラミネートフィルム外装体の内部で重ね、かつ各負極外部端子同士をラミネートフィルム外装体の内部で重ねた上で、これらをラミネートフィルム外装体から引き出すことで、例えば、平面視での面積を大きくすることなく(例えば、正極外部端子や負極外部端子の図1に示す横方向の長さを長くすることなく)、正極外部端子の総断面積や負極外部端子の総断面積を大きくできる。
【0026】
例えば、大電流放電が要求される電池では、正極外部端子や負極外部端子の断面積を大きくする必要があり、通常は平面視での幅を広げることで対応している。ところが、正極外部端子や負極外部端子の幅を広げると、正極外部端子と負極外部端子との接触による短絡が発生しやすくなる問題から、例えば、図1に示すようにラミネートフィルム外装体の同一辺から正極外部端子と負極外部端子とを引き出すことが難しくなり、外部端子の引き出し位置の自由度が損なわれてしまう。他方、1枚の正極外部端子や1枚の負極外部端子を厚くすることで断面積を大きくした場合、多数の電極に係る集電タブを積層したタブ積層体と、厚みの大きな外部端子とを溶接することになるため、溶接箇所の信頼性が低下する。
【0027】
しかしながら、本発明のラミネート形電池では、前記の通り、各正極外部端子同士の電気的接続方法および各負極外部端子同士の電気的接続方法の選択によって、例えば正極外部端子や負極外部端子の平面視での幅を広げることなしに、正極外部端子の総断面積や負極外部端子の総断面積を大きくでき、しかも、前記の通り、1枚の正極外部端子や1枚の負極外部端子に溶接される正極タブ積層体や負極タブ積層体の積層数を少なくできるため、溶接箇所の信頼性も高め得る。よって、本発明のラミネート形電池は、大電流放電が可能であり、かつ高い信頼性が損なわれることなく、ラミネートフィルム外装体から外部端子を引き出す位置の自由度が高くなる。
【0028】
なお、積層電極体を有する本発明のラミネート形電池において、正極タブ積層体および負極タブ積層体の数は、複数であればよく、少なくとも2以上であるが、通常は5以下であり、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。また、1つの正極タブ積層体における正極タブの積層数は、5〜60であることが好ましく、1つの負極タブ積層体における負極タブの積層数は、5〜60であることが好ましい。
【0029】
図4に、図1および図2のA−A線における要部断面図の他の例を示す。図4は、複数のシート状正極5と複数のシート状負極6とがセパレータ7を介して積層され、更に渦巻き状に巻回された巻回電極体(横断面が略長円形の巻回電極体)を有するラミネート形電池の例である。なお、図4では、各構成要素の理解を容易にするために、ラミネートフィルム外装体2と巻回電極体の最外周部(正極集電体51)との間、および巻回電極体の巻回中心部(負極集電体61、61)に隙間を入れている。
【0030】
図4に示すラミネート形電池1において、シート状正極5は、集電体の片面または両面に正極合剤層が形成されており、かつ集電体の幅方向の端部(図4中右端側)に正極合剤層が形成されずに正極タブとなり、この正極タブが、巻回電極体の略長円形の平坦部において複数の組に分けられて正極タブ積層体5a、5bを形成している。そして、正極タブ積層体5aが正極外部端子3aに、正極タブ積層体5bが正極外部端子3bに、それぞれ接続されている。また、図示していないが、ラミネート形電池1では、シート状負極6は、集電体の片面または両面に負極合剤層が形成されており、かつ集電体の、正極タブとは反対側の端部(図中左側の端部)に負極合剤層が形成されずに負極タブとなり、この負極タブが、巻回電極体の略長円形の平坦部において複数の組に分けられて複数の負極タブ積層体が形成されている。そして、各負極タブ積層体は、それぞれ別の負極外部端子に接続されている。なお、図4に示す電池に係る巻回電極体において、最外周部は、シート状正極(正極合剤層が形成されていない正極集電体51、51)であり、巻回中心部は、シート状負極(負極合剤層が形成されていない負極集電体61、61)である。
【0031】
本発明のラミネート形電池では、巻回電極体を有する態様においては、かかる巻回電極体における巻回数が10以上であり、この場合にも、積層数の多い積層電極体を有する電池の場合における前記の問題と同じ問題が起こり得る。そこで、巻回電極体を有する本発明の電池では、シート状正極の正極タブを積層した正極タブ積層体を複数に分け、各正極タブ積層体を、それぞれ別の正極外部端子に接続し、各正極外部端子をラミネートフィルム外装体の内部および外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続している。また、図示していないが、巻回電極体を有する本発明の電池では、シート状負極についても、それらの負極タブを積層した負極タブ積層体を複数に分け、各負極タブ積層体を、それぞれ別の負極外部端子に接続し、各負極外部端子をラミネートフィルム外装体の内部および外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続している。そのため、積層電極体を有する電池の場合と同様に、大電流放電を可能とし、かつ高い信頼性を確保しつつ、ラミネートフィルム外装体から外部端子を引き出す位置の自由度を高めることができる。
【0032】
なお、巻回電極体を有する本発明のラミネート形電池において、正極タブ積層体および負極タブ積層体の数は、積層電極体を有する場合と同様に、複数であればよく、少なくとも2以上であるが、通常は5以下であり、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。また、1つの正極タブ積層体における正極タブの積層数は、5〜60であることが好ましく、1つの負極タブ積層体における負極タブの積層数は、5〜60であることが好ましい。
【0033】
なお、ラミネート形電池における複数の正極外部端子同士、および複数の負極外部端子同士を互いに電気的に接続するにあたっては、図3や図4に示すようにラミネートフィルム外装体の内部で重ねる方法(ただし、図3および図4では、外部でも重ねられている)が好ましいが、他にも、例えば、ラミネートフィルム外装体の外部でのみ重ねるなどして電気的に接続してもよい。また、複数の正極外部端子および複数の負極外部端子を、それぞれ重ねることなく平面視で横に並べるように配置し、ラミネートフィルム外装体の内部および外部の少なくとも一方で、リード体などを介して各正極外部端子および各負極外部端子を互いに電気的に接続してもよい。
【0034】
更に、ラミネート形電池における正極外部端子と負極外部端子とは、ラミネートフィルム外装体の外周辺のうち、それぞれ別の辺から外部に取り出されていてもよいが、重ねられた複数の正極外部端子と、重ねられた複数の負極外部端子とが、ラミネートフィルム外装体の同じ辺から外部に引き出されていてもよい。
【0035】
例えば、図3に示すような積層電極体を有する電池の場合には、図1に示すように、複数の正極外部端子が重ねられ、かつ複数の負極外部端子が重ねられており、これら重ねられた複数の正極外部端子と、重ねられた複数の負極外部端子とが、ラミネートフィルム外装体の同じ辺から外部に引き出されていることがより好ましく、この場合、ラミネートフィルム外装体の外周辺の熱シール部の体積を減らして、エネルギー密度をより高めるのに有利である。一方、図4に示すような巻回電極体を有する電池の場合には、電池の製造を容易にする観点からは、図2に示すように、重ねられた複数の正極外部端子と、重ねられた複数の負極外部端子とが、それぞれラミネートフィルム外装体の別の辺から外部に引き出されていることがより好ましく、四角形のラミネートフィルム外装体における重ねられた複数の正極外部端子が外部に引き出された辺と対向する辺から、重ねられた複数の負極外部端子が外部に引き出されていることが更に好ましい。
【0036】
ラミネート形電池を構成するシート状正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤からなる層(正極合剤層)を、集電体の片面または両面に形成したものが使用できる。
【0037】
正極活物質としては、例えば、本発明のラミネート形電池がリチウムイオン二次電池の場合、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質が使用される。このような正極活物質の具体例としては、例えば、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMnやその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などが挙げられる。前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoOやLiNi1−xCox−yAl(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiMn5/12Ni5/12Co1/6、LiNi3/5Mn1/5Co1/5など)などを例示することができる。
【0038】
正極の集電体としては、アルミニウム箔やアルミニウム合金箔が好適である。集電体の厚みは、電池の大きさや容量にもよるが、例えば、0.01〜0.02mmであることが好ましい。
【0039】
正極を作製するにあたっては、前記の正極活物質と、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、繊維状炭素などの導電助剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのバインダなどを含む正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤を用いて均一に分散させたペースト状やスラリー状の組成物を調製し(バインダは、溶剤に溶解していてもよい)、この組成物を正極集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により正極合剤層の厚みや密度を調整する方法が採用できる。ただし、本発明に係る正極の作製方法は前記の方法に限られず、他の方法を採用しても構わない。
【0040】
シート状正極における正極合剤層の厚みは、片面あたり、30〜100μmとすることが好ましい。また、正極合剤層における各構成成分の含有量は、正極活物質:90〜98質量%、導電助剤:1〜5質量%、バインダ:1〜5質量%とすることが好ましい。
【0041】
正極外部端子には、使用機器との接続の容易さなどの関係から、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のものを用いることが好ましい。正極外部端子の厚み(1枚あたりの厚み)は、50μm以上が好適である。すなわち、正極外部端子の厚みを50μm以上にすることによって、正極外部端子溶接時の切断の防止、並びに引っ張りおよび折り曲げによる断裂の防止を図ることができる。また、正極外部端子は、その総厚み(全正極外部端子の合計厚み)が600μm以下であることが好ましく、これにより、ラミネートフィルム外装体の熱シール部に厚み方向の隙間が生じるのを防止することができる。
【0042】
なお、複数の正極外部端子同士は、図1から図4に示すように、それらの一部が接着層8を介して熱融着されていることが好ましい。よって、正極外部端子には、例えば、ラミネートフィルム外装体の熱シール部に位置することが予定されている箇所に、予め接着層を設けてもよい。なお、接着層としては、ラミネートフィルム外装体を構成する金属ラミネートフィルムが、電池内側となる面に有している熱融着樹脂層の構成樹脂(熱融着樹脂)と同種の樹脂を有するものが好ましい。
【0043】
シート状正極と正極外部端子の接続は、シート状正極の集電体により構成される正極タブ(正極タブ積層体)と正極外部端子とを直接接続することで行ってもよいが、例えば、アルミニウム製のリード体を介してシート状正極の正極タブ(正極タブ積層体)と正極外部端子とを接続することで行うこともできる。アルミニウム製のリード体の厚みは、正極外部端子と同様に、50〜300μmであることが好ましい。このようなリード体は、特に正極集電体であるアルミニウム箔が薄く、正極外部端子と直接接続するには強度が不足するような場合に用いることが好ましい。
【0044】
シート状正極における正極タブ(正極タブ積層体)または正極タブに接続したアルミニウム製のリード体と、正極外部端子との接続方法としては、例えば、抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、カシメ、導電性接着剤による方法など、各種の方法を採用することができるが、超音波溶接が特に適している。
【0045】
ラミネート形電池を構成するシート状負極には、例えば、本発明のラミネート形電池がリチウムイオン二次電池の場合、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質を含有するものが使用される。このような負極活物質としては、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物(LiTi12など)、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(正極に係る導電助剤として例示した炭素材料など)やバインダ[PVDF、スチレンブタジエンゴム(SBR)のようなゴム系バインダとカルボキシメチルセルロース(CMC)との混合バインダなど]などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたもの、または、前記の各種合金やリチウム金属の箔を集電体表面に積層したものなどが、シート状負極として用いられる。
【0046】
例えば、負極合剤層を有するシート状負極とする場合、前記の負極活物質と前記のバインダと、必要に応じて黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電助剤などを含む負極合剤を、NMPなどの溶剤を用いて均一に分散させたペースト状やスラリー状の組成物を調製し(バインダは、溶剤に溶解していてもよい)、この組成物を負極集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により負極合剤層の厚みや密度を調整する方法が採用できる。ただし、本発明に係るシート状負極の作製方法は前記の方法に限られず、他の方法を採用しても構わない。
【0047】
負極の集電体としては、銅箔が好適である。集電体の厚みは、電池の大きさや容量にもよるが、例えば、0.05〜0.02mmであることが好ましい。
【0048】
シート状負極における負極合剤層の厚みは、片面あたり、30〜100μmとすることが好ましい。また、負極合剤層における各構成成分の含有量は、負極活物質:90〜98質量%、バインダ:1〜5質量%とすることが好ましい。また、負極に導電助剤を用いる場合には、負極合剤層中の導電助剤の含有量は、1〜5質量%とすることが好ましい。
【0049】
負極外部端子には、ニッケル、ニッケルメッキをした銅、ニッケル−銅クラッドなどの金属の板や箔、リボンなどが好ましい。また、負極外部端子の厚み(1枚あたりの厚み)は、正極外部端子と同様に50μm以上であることが好ましい。すなわち、負極外部端子の厚みを50μm以上にすることによって、負極外部端子溶接時の切断の防止、並びに引っ張りおよび折り曲げによる断裂の防止を図ることができる。また、ラミネートフィルム外装体の熱シール部に厚み方向の隙間が生じるのを防止するために、負極外部端子の総厚み(全負極外部端子の合計厚み)が600μm以下であることが好ましい。
【0050】
なお、複数の負極外部端子同士は、正極外部端子の場合と同様に、図1および図2に示すように、それらの一部が接着層9を介して熱融着されていることが好ましい。よって、負極外部端子には、例えば、ラミネートフィルム外装体の熱シール部に位置することが予定されている箇所に、予め接着層を設けてもよい。なお、接着層としては、正極外部端子に係る接着層と同様に、ラミネートフィルム外装体を構成する金属ラミネートフィルムが、電池内側となる面に有している熱融着樹脂層の構成樹脂(熱融着樹脂)と同種の樹脂を有するものが好ましい。
【0051】
シート状負極と負極外部端子の接続は、シート状負極の集電体により構成される負極タブ(負極タブ積層体)と負極外部端子とを直接接続することで行ってもよいが、例えば、銅製のリード体を介してシート状負極の負極タブ(負極タブ積層体)と負極外部端子とを接続することで行うこともできる。銅製のリード体の厚みは、負極外部端子と同様に、50〜300μmであることが好ましい。このようなリード体は、特に負極集電体である銅箔が薄く、負極外部端子と直接接続するには強度が不足するような場合に用いることが好ましい。
【0052】
シート状負極における負極タブ(負極タブ積層体)または負極タブに接続した銅製のリード体との接続方法としては、例えば、抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、カシメ、導電性接着剤による方法など、各種の方法を採用することができるが、超音波溶接が特に適している。
【0053】
ラミネート形電池に係るセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの融合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどで構成された多孔質フィルムや不織布が挙げられる。セパレータの厚みは10〜50μmであることが好ましく、空孔率は30〜70%であることが好ましい。また、多孔質フィルムと不織布とを重ねるなど、複数枚のセパレータを用いることにより、短絡を防止する効果を高め、電池の信頼性をより向上させることができる。
【0054】
ラミネート形電池に係る電解液としては、本発明のラミネート形電池がリチウムイオン二次電池の場合、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(BL)などの高誘電率溶媒や、直鎖状の、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)などの低粘度溶媒などの有機溶媒に、LiPF、LiBFなどの溶質を溶解した溶液(非水電解液)が挙げられる。なお、電解液溶媒には、前記の高誘電率溶媒と、低粘度溶媒との混合溶媒を使用することがより好ましい。前記の溶液に、PVDFやゴム系の材料、脂環エポキシやオキセタン系の三次元架橋構造を有する材料などを混合して固化し、ポリマー電解液としてもよい。
【0055】
ラミネート形電池のラミネートフィルム外装体は、金属ラミネートフィルムで構成されたものであり、例えば、外装樹脂層/金属層/熱溶着性樹脂層からなる3層構造の金属ラミネートフィルムが挙げられる。金属ラミネートフィルムにおける外装樹脂層としては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム(PETフィルムなど)などが、金属層としてはアルミニウムフィルム、ステンレス鋼フィルムなどが、熱溶着性樹脂層としては変性ポリオレフィンフィルム(変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムなど)などが挙げられる。
【0056】
金属ラミネートフィルムにおいては、外装樹脂層の厚みが20〜100μmであることが好ましく、金属層の厚みが10〜150μmであることが好ましく、熱融着性樹脂層の厚みが20〜100μmであることが好ましい。
【0057】
なお、ラミネートフィルム外装体は、平面視で多角形であれば、その形状については特に制限は無く、必要に応じて、平面視で、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの各種形状を取り得るが、平面視で四角形(矩形または正方形)が一般的である。ただし、巻回電極体を有する電池の場合には、平面視で四角形のラミネートフィルム外装体を使用する。
【0058】
本発明のラミネート形電池は、自動車用途などの高出力、高容量の電池が要求される用途を始めとして、各種電子機器の電源用途など、従来から知られているラミネート形電池(特にラミネート形のリチウムイオン二次電池)が使用されている各種用途と同様の用途に用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0060】
実施例1
<正極の作製>
LiCoO:96質量部、アセチレンブラック:2質量部、およびPVDF:2質量部を混合し、更にNMPを加えて正極合剤含有ペーストを調製した。得られた正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥後、プレス処理を施して正極合剤層を形成し、シート状正極を得た。得られたシート状正極の正極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり60μmであった。その後、得られたシート状正極を、正極合剤層の形成部分が幅105mm、長さ200mmとなり、更に正極タブとなる正極集電体の露出部も含む形状に裁断した。
【0061】
<負極の作製>
黒鉛:98質量%に、SBR:1.5質量%およびCMC:0.5質量%を加えて混合し、更に水を加えて負極合剤含有ペーストを調製した。得られた負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥後、プレス処理を施して負極合剤層を形成し、シート状負極を得た。得られたシート状負極の負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり60μmであった。その後、得られたシート状負極を、負極合剤層の形成部分が幅110mm、長さ205mmとなり、更に負極タブとなる負極集電体の露出部も含む形状に裁断した。
【0062】
<電池の組み立て>
前記のシート状正極50枚と、前記のシート状負極51枚とを、セパレータ(厚みが25μmのポリオレフィン微孔性フィルム)を介して積層し、積層電極体とした。なお、積層電極体の両端は、いずれも負極となるように積層した。次に、前記の積層電極体に係る各シート状正極のうち、上側25枚分の正極タブを重ねた正極タブ積層体を正極外部端子に超音波溶接し、下側25枚分の正極タブを重ねた正極タブ積層体を、別の正極外部端子に超音波溶接した。また、前記の積層電極体に係る各シート状負極のうち、上側25枚分の負極タブを重ねた負極タブ積層体を負極外部端子に超音波溶接し、下側26枚分の負極タブを重ねた負極タブ積層体を別の負極外部端子に超音波溶接した。
【0063】
なお、正極外部端子には、長さ30mm、幅20mm、厚み0.2mmのアルミニウム板を2枚用い、負極外部端子には、長さ30mm、幅20mm、厚み0.2mmの銅板を2枚用いた。また、正極外部端子および負極外部端子には、ラミネートフィルム外装体の熱シール部に位置することが予定される箇所の両面に、ラミネートフィルム外装体の熱溶着性樹脂層を構成する樹脂と同じ変性ポリオレフィンにより構成された接着層を配した。
【0064】
ポリエステルフィルム/アルミニウムフィルム/変性ポリオレフィンフィルムからなる厚み150μmの三層構造の金属ラミネートフィルム(矩形で、サイズ130mm×230mm)を2枚用意した。そして、一方の金属ラミネートフィルムにおける変性ポリオレフィンフィルム層上に前記の積層電極体を、複数の正極外部端子を重ねたものの一部および複数の負極外部端子を重ねたものの一部が、図1に示すように金属ラミネートフィルムの同一辺から突出するように置き、その上にもう一方の金属ラミネートフィルムを重ねて、3辺を熱シールしてラミネートフィルム外装体とし、70℃で15時間真空乾燥した。その後、ラミネートフィルム外装体の封止していない一辺から非水電解液を注入し、減圧状態で前記の一辺を熱シールして、ラミネート形リチウムイオン二次電池とした。なお、非水電解液には、ECとDECを体積比で1対3に混合した溶媒にLiPFを濃度1.0mol/lで溶解した溶液を用いた。また、ラミネートフィルム外装体の熱シールの幅は、10mmとした。
【0065】
前記のラミネート形リチウムイオン二次電池について、24時間エージングし、その後、0.1Cの電流値で1時間充電し、続いて総充電時間を4時間とする定電流−定電圧充電(定電流充電:0.5C、定電圧充電:4.2V)を実施することで化成処理を行った。
【0066】
実施例2
実施例1と同様にして正極集電体の両面に正極合剤層を形成し、幅が200mmで、その幅方向の片端に正極タブとなる正極集電体の露出部を有し、かつ長尺方向の両端にも正極集電体の露出部を有する長尺(長さ6m)のシート状正極を作製した。また、実施例2と同様にして負極集電体の両面に負極合剤層を形成し、幅が205mmで、その幅方向の片端に負極タブとなる負極集電体の露出部を有し、かつ長尺方向の両端にも負極集電体の露出部を有する長尺(長さ6.1m)のシート状負極を作製した。
【0067】
前記のシート状正極と前記のシート状負極とを、セパレータ(厚みが25μmのポリオレフィン微孔性フィルム)介し、かつシート状正極に係る正極タブとシート状負極に係る負極タブとが、それぞれ電極体の別の端面側となるように重ね合わせて渦巻き状に巻回し(巻回数25回)、押し潰して横断面が略長円形の巻回電極体とした。次に、巻回電極体に係るシート状正極の正極タブのうち、横断面における長軸を挟んで一方の正極タブ25枚を短軸方向に重ねた正極タブ積層体を正極外部端子に超音波溶接し、他方の正極タブ25枚分を短軸方向に重ねた正極タブ積層体を、別の正極外部端子に超音波溶接した。また、巻回電極体に係るシート状負極の負極タブのうち、横断面における長軸を挟んで一方の負極タブ25枚分を短軸方向に重ねた負極タブ積層体を負極外部端子に超音波溶接し、他方の負極タブ26枚分を短軸方向に重ねた負極タブ積層体を別の負極外部端子に超音波溶接した。
【0068】
なお、正極外部端子および負極外部端子には、実施例1と同じものを用い、ラミネートフィルム外装体の熱シール部に位置することが予定される箇所の両面に、ラミネートフィルム外装体の熱溶着性樹脂層を構成する樹脂と同じ変性ポリオレフィンにより構成された接着層を配した。
【0069】
前記の巻回電極体を積層電極体に代えて用い、正負極の外部端子の引き出し位置を図2に示すようにした以外は、実施例1と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0070】
実施例3
正極外部端子および負極外部端子におけるラミネートフィルム外装体の熱シール部に位置することが予定される箇所の両面に、ラミネートフィルム外装体の熱溶着性樹脂層を構成する樹脂と同じ変性ポリオレフィンにより構成された接着層を配しなかった以外は、実施例1と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0071】
比較例1
全シート状正極50枚の正極タブを重ねて1つの正極タブ積層体とし、これを1つの正極外部端子に超音波溶接し、また、全シート状負極51枚の負極タブを重ねて1つの負極タブ積層体とし、これを1つの負極外部端子に超音波溶接した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0072】
比較例2
巻回電極体に係るシート状正極の正極タブのうち、横断面における長軸を挟んで一方の正極タブ25枚を短軸方向に重ねた正極タブ積層体と、他方の正極タブ25枚分を短軸方向に重ねた正極タブ積層体とを、1つの正極外部端子のそれぞれ別の面に配して超音波溶接し、また、巻回電極体に係るシート状負極の負極タブのうち、横断面における長軸を挟んで一方の負極タブ25枚分を短軸方向に重ねた負極タブ積層体と、他方の負極タブ26枚分を短軸方向に重ねた負極タブ積層体とを、1つの負極外部端子のそれぞれ別の面に配して超音波溶接した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0073】
比較例3
正極外部端子の長さを40mmに変更し、巻回電極体に係るシート状正極の正極タブのうち、横断面における長軸を挟んで一方の正極タブ25枚を短軸方向に重ねた正極タブ積層体と、他方の正極タブ25枚分を短軸方向に重ねた正極タブ積層体とを、それぞれ1つの正極外部端子の別の位置に超音波溶接し、また、負極外部端子の長さを40mmに変更し、巻回電極体に係るシート状負極の負極タブのうち、横断面における長軸を挟んで一方の負極タブ25枚分を短軸方向に重ねた負極タブ積層体と、他方の負極タブ26枚分を短軸方向に重ねた負極タブ積層体とを、それぞれ1つの負極外部端子の別の位置に超音波溶接し、ラミネートフィルム外装体を構成する金属ラミネートフィルムのサイズを130mm×240mmに変更した以外は、実施例2と同様にしてラミネート形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0074】
実施例1〜3および比較例1〜3のラミネート形リチウムイオン二次電池について、正極タブ積層体の正極外部端子への溶接時、および負極タブ積層体の負極外部端子への溶接時の状況(溶接信頼性)を評価した。また、実施例1〜3および比較例1〜3のラミネート形リチウムイオン二次電池について、下記の各評価を行った。積層電極体を有する実施例1、3および比較例1の電池の評価結果を表1に、巻回電極体を有する実施例2および比較例2、3の電池の評価結果を表2に、それぞれ示す。
【0075】
<内部抵抗>
各電池の内部抵抗を、交流インピーダンス測定(1kHz)により求めた。
【0076】
<振動試験後の内部抵抗>
各電池について、JIS C 8712の4.2.2の規定に準拠した振動試験を行い、その後に各電池の内部抵抗を、交流インピーダンス測定(1kHz)により求めた。
【0077】
<貯蔵後の内部抵抗>
各電池について、60℃、相対湿度90%の環境下で20日貯蔵した後の内部抵抗を、交流インピーダンス測定(1kHz)により求めた。
【0078】
【表1】

【0079】
表1から明らかなように、正極タブ積層体および負極タブ積層体を複数に分け、それぞれ別の外部端子に溶接した実施例1、3の電池では、正極タブ積層体および負極タブ積層体と、正負極の外部端子とが良好に溶接できており、各条件下での内部抵抗も小さく、高い信頼性を有している。これに対し、全ての正極タブおよび負極タブを、それぞれ1つの積層体とし、これら正極タブ積層体および負極タブ積層体を、それぞれ1つの外部端子に溶接した比較例1の電池では、タブの積層数が非常に多いことから、十分な溶接強度を確保するために、より厳しい条件で溶接する必要があり、全てのタブが良好に溶接できる条件とした結果、タブの溶接点近傍に割れやひびが生じて内部抵抗が高くなり、信頼性が乏しい。また、その比較例1の電池における溶接信頼性の影響は、電池に振動試験を行うと一層顕著となり、その後の内部抵抗が大きく増大しており、集電が十分に行われていないことが分かる。
【0080】
なお、実施例1の電池では、2枚の正極外部端子間、および2枚の負極外部端子間に接着層を配しているのに対し、実施例3の電池では、接着層を配していない。これらの電池では、作製後の内部抵抗に違いはないが、過酷な条件下で貯蔵した後には、実施例1の電池の方が内部抵抗の増大が小さく、ラミネートフィルム外装体の封止信頼性が向上していることが認められる。このように、複数の外部端子間に接着層を配することで、接着層によるコストの増大や、製造工程の増加があるものの、電池の信頼性を更に高めることができる。
【0081】
【表2】

【0082】
表2から明らかなように、巻回電極体を用いた実施例2の電池でも、積層電極体を用いた実施例1、3の電池と同様に、正極タブ積層体および負極タブ積層体と、正負極の外部端子とが良好に溶接できており、各条件下での内部抵抗も小さく、高い信頼性を有している。これに対し、全ての正極タブおよび負極タブを、それぞれ1つの外部端子に溶接した比較例2の電池では、積層電極体を用いた比較例1の電池と同様に、全てのタブが良好に溶接できる条件とした結果、タブの溶接点近傍に割れやひびが生じて内部抵抗が高くなり、信頼性が乏しい。
【0083】
また、長い正極外部端子を使用し、2つに分けた正極タブ積層体を、それぞれ1つの正極外部端子の別の箇所に溶接し、かつ長い負極外部端子を使用し、2つに分けた負極タブ積層体を、それぞれ1つの負極外部端子の別の箇所に溶接した比較例3の電池でも、正極タブ積層体および負極タブ積層体と、正負極の外部端子とを、それぞれ2度にわたって溶接した結果、2回目の溶接の際に、最初に溶接したタブの溶接点近傍に割れやひびが生じ、信頼性が低下した。また、正負極の外部端子を長くし、より多くの溶接箇所を取る必要があったために電池の体積が増大し、更に、外部端子の配置の自由度が低下した。また、集電部分の抵抗も、正負極のタブ、外部端子ともに長くなることで増大した。
【符号の説明】
【0084】
1 ラミネート形電池
2 ラミネートフィルム外装体
3a,3b 正極外部端子
4a 負極外部端子
5 シート状正極
5a,5b 正極タブ積層体
6 シート状負極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の少なくとも片面に正極合剤層を有する複数のシート状正極と集電体の少なくとも片面に負極合剤層を有する複数のシート状負極とがセパレータを介して積層された積層電極体が、平面視で多角形のラミネートフィルム外装体に収容されており、前記ラミネートフィルム外装体の外周辺が熱シールされているラミネート形電池であって、
前記積層電極体の有するシート状正極とシート状負極との合計数が20以上であり、
各シート状正極の集電体の一部は、正極合剤層が形成されずに正極タブとされ、
各シート状負極の集電体の一部は、負極合剤層が形成されずに負極タブとされ、
前記複数のシート状正極の正極タブが、複数の組に分けられて積層されることにより、複数の正極タブ積層体が形成されており、
前記複数のシート状負極の負極タブが、複数の組に分けられて積層されることにより、複数の負極タブ積層体が形成されており、
各正極タブ積層体は、それぞれ別の正極外部端子に接続され、かつ各負極タブ積層体は、それぞれ別の負極外部端子に接続されており、
各正極外部端子および各負極外部端子は、それぞれラミネートフィルム外装体の内部または外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続されていることを特徴とするラミネート形電池。
【請求項2】
各正極タブ積層体と接続されたそれぞれの正極外部端子がラミネートフィルム外装体の内部で重ねられ、かつ各負極タブ積層体と接続されたそれぞれの負極外部端子がラミネートフィルム外装体の内部で重ねられており、前記重ねられた複数の正極外部端子および前記重ねられた複数の負極外部端子が、ラミネートフィルム外装体の同じ辺から外部に引き出されている請求項1に記載のラミネート形電池。
【請求項3】
集電体の少なくとも片面に正極合剤層を有するシート状正極と集電体の少なくとも片面に負極合剤層を有するシート状負極とがセパレータを介して積層されて渦巻き状に巻回された、横断面が略長円形の巻回電極体が、平面視で四角形のラミネートフィルム外装体に収容されており、前記ラミネートフィルム外装体の外周辺が熱シールされているラミネート形電池であって、
前記巻回電極体の巻回数が10以上であり、
前記シート状正極の集電体の幅方向の端部は、正極合剤層が形成されずに正極タブとされ、
前記シート状負極の集電体の、前記正極タブとは反対側の幅方向の端部は、負極合剤層が形成されずに負極タブとされ、
前記シート状正極の正極タブは、前記巻回電極体の略長円形の平坦部において、複数の組に分けられて積層されることにより、複数の正極タブ積層体が形成されており、
前記シート状負極の負極タブは、前記巻回電極体の略長円形の平坦部において、複数の組に分けられて積層されることにより、複数の負極タブ積層体が形成されており、
前記正極タブ積層体は、それぞれ別の正極外部端子に接続され、かつ前記負極タブ積層体は、それぞれ別の負極外部端子に接続されており、
各正極外部端子および各負極外部端子同士は、それぞれラミネートフィルム外装体の内部または外部の少なくとも一方で互いに電気的に接続されていることを特徴とするラミネート形電池。
【請求項4】
各正極タブ積層体と接続されたそれぞれの正極外部端子がラミネートフィルム外装体の内部で重ねられ、かつ各負極タブ積層体と接続されたそれぞれの負極外部端子がラミネートフィルム外装体の内部で重ねられており、前記重ねられた複数の正極外部端子および前記重ねられた複数の負極外部端子が、ラミネートフィルム外装体の対向する辺からそれぞれ外部に引き出されている請求項3に記載のラミネート形電池。
【請求項5】
複数の正極外部端子同士、および複数の負極外部端子同士が、ラミネートフィルム外装体の熱シール部において、ラミネートフィルム外装体の有する熱融着樹脂と同じ樹脂を含有する接着層を介して熱融着されている請求項1〜4のいずれかに記載のラミネート電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−212506(P2012−212506A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156735(P2009−156735)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】