説明

リニアモータ位置検出システム

【課題】測長距離の制限を受けることがないと共にリニアモータの能力を十分に発揮させて制御時間の短縮を図ることができるリニアモータ位置検出システムを提供する。
【解決手段】リニアモータ5により移動されるテーブル4の直線運動をラック12とピニオンギア13により回転運動に変換するようにしたので、直線運動系での検出は有限目盛りであるのに対して回転運動系での検出は無限目盛りとなり、理論的には直線運動系の測長距離が無限であっても、直線運動系の測長距離を回転運動系の測長距離に容易に変換することができ、測長距離の変更に容易に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータの動作に応じて直線運動されるテーブルの位置を検出するリニアモータ位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転モータを展開した構成のリニアモータの位置を検出するには、従来、リニアエンコーダを取付けることが一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−63437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアモータの位置検出用としてリニアエンコーダを使用した場合は、リニアエンコーダの長さ(測長距離)は固定的であることから、測長距離の変更に容易に対応できないという問題があった。つまり、例えば5mの測長距離のリニアエンコーダをそれよりも長い測長距離で使用することは不可能であり、測長距離の長いリニアエンコーダに交換する必要がある。逆に、10mの測長距離のリニアエンコーダをそれよりも短い測長距離で使用した場合は、オーバースペックのリニアエンコーダを使用することになり、不合理である。
【0005】
また、直線運動系で必要とされる測定能力として例えば最大速度が10m/s、最大加速度が15Gである場合に、使用しているリニアエンコーダの最大速度が5m/s、最大加速度が30Gであった場合は、リニアエンコーダの測定能力のうち速度は能力不足であるのに対して、加速度はオーバースペックとなる。このため、所望する直線運動系に必要な測定能力とリニアエンコーダの測定能力とが適切に対応しないことになり、リニアモータの能力を十分に発揮させることができず、能力不足で十分に機能しないという問題がある。この場合、能力不足であるリニアエンコーダの最大速度に対応するように直線運動系の最大速度を設定しようとすると、直線運動系での最大速度を制限する必要を生じることになる。このように直線運動系での最大速度を制限した場合、目標位置までの制御時間に最も寄与する最大速度を制限することになり、目標位置までの制御時間が長くなってしまうという問題を生じることになる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、測長距離の制限を受けることがないと共にリニアモータの能力を十分に発揮させて目標位置までの制御時間の短縮を図ることができるリニアモータ位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、制御手段によりリニアモータが通電制御されると、テーブルが直線運動する。このとき、運動変換手段によりテーブルの直線運動が回転運動に変換されて検出手段に伝達されるので、テーブルの直線運動に伴って検出手段から回転位置または回転量を示す検出信号が出力される。従って、制御手段は、検出手段からの検出信号によりテーブルの位置を検出し、検出したテーブル検出位置が目標位置となるようにリニアモータを通電制御する。
【0008】
ここで、直線運動系での検出は有限目盛りであるのに対して回転運動系での検出は無限目盛りであることから、理論的には直線運動系の測長距離が無限であっても、直線運動系の測長距離を回転運動系の測長距離に容易に変換することができる。
【0009】
また、運動変換手段は、直線運動系で必要とされる最大速度を回転運動系に変換した最大回転速度が検出手段の最大回転速度を上回らないように直線運動を回転運動に変換するので、テーブルを目標位置に制御する時間に最も寄与する最大速度でもってリニアモータを通電制御することができ、目標位置までの制御時間の短縮を図ることができる。
【0010】
さて、運動変換手段はロストモーション(バックラッシュ、たわみ等)を有していることから、リニアモータの等速運転時においては、テーブル実位置はテーブル検出位置に対してロストモーション量だけ進んで移動している。これは、等速運転時は、最初の加速時に発生した位置ずれ状態が加速減速の影響が無く維持されるからである。これに対して、リニアモータの減速運転時は、テーブル実位置はテーブル検出位置に対してロストモーション量だけ遅れて移動するようになる。これは、減速運転時は、検出手段が慣性により等速運転時の回転状態を維持しようとしてテーブルの速度の低下に追従できないからである。このため、減速運転時はテーブル実位置がテーブル検出位置に対してロストモーション量だけ遅れるようになるので、テーブル検出位置で示される目標位置は、ロストモーション範囲の中心位置であるテーブル中心値に対してロストモーション量の1/2だけ進んでいることになる。
【0011】
このような事情に対して、請求項2の発明によれば、状態オブザーバは、等速運転時は、テーブル実位置がテーブル検出位置に対してロストモーション量だけ進んで移動していることを示す差分情報を求め、この差分情報が示す減速運転開始直前のテーブル検出位置から目標位置までの残りの移動量を求める。この場合、テーブル検出位置で示される目標位置は、ロストモーション範囲の中心位置であるテーブル中心値に対してロストモーション量の1/2だけ進んでいるので、求めた残りの移動量にはロストモーション量の1/2の誤差を含んでいる。従って、状態オブザーバは、残りの移動量からロストモーション量の1/2減算することによりロストモーション範囲の中心位置となる目標位置までの移動量を求め、当該移動量に相当する検出信号を出力する。
【0012】
そして、制御手段は、減速運転時は、検出手段からの検出信号に代えて状態オブザーバからの検出信号によりテーブルの位置を検出し、検出したテーブル検出位置が目標位置となるようにリニアモータを通電制御する。これにより、テーブルはロストモーション範囲の中心位置に停止するようになるので、停止位置精度を高めることができる。また、等速運転中に補正するから、論理値=現実値となり、正確に補正することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、システム構成の変更によりブレーキ手段を後付する必要が生じた場合であっても、ブレーキ手段の取付位置が位置決め手段により初期位置に設定されることにより取付再現性を確保するようにしたので、システム毎の動作のバラツキを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態における直線運動システムを示す斜視図
【図2】直線運動システムを示す平面図
【図3】直線運動システムを一部破断して示す側面図
【図4】ピニオンギアの歯とラックの歯との接触状態を示す図
【図5】制御系を示す図
【図6】テーブル検出位置とテーブル実位置との関係を示す図
【図7】誤差を含んだ状態を示す図6相当図
【図8】補正後の値を示す図7相当図
【図9】本発明の第2実施形態を示す図1相当図
【図10】図3相当図
【図11】本発明の第3実施形態を示す図1相当図
【図12】図2相当図
【図13】図3相当図
【図14】本発明の第4実施形態を示す図1相当図
【図15】図2相当図
【図16】図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図8を参照して説明する。
図1は直線運動システムを示す斜視図、図2は直線運動システムの平面図、図3は直線運動システムの側面図である。長尺状のベース1には2本の案内レール2が長手方向に沿って設けられており、それらの案内レール2に摺動体3が装着され、その摺動体3にテーブル4が固定されている。ベース1にはリニアモータ5の固定子6が取付けられていると共に、テーブル4にはリニアモータ5の可動子7が取付けられており、リニアモータ5に対する通電制御により可動子7、ひいてはテーブル4が移動するようになっている。
【0016】
テーブル4には例えばロボットが搭載され、コントローラ8(制御手段に相当)により駆動される。コントローラ8は、記憶しているプログラムに従ってテーブル4を所定の目標位置に停止させた状態でロボットを制御することにより例えばワークの把持作業をロボットに実行させるようになっている。尚、ベース1の両端には端面部9が固定されており、その端面部9によりテーブル4の移動範囲が規制されている。また、端面部9の内面には緩衝用ゴム10が装着されており、テーブル4が万一衝突した際の衝撃が緩和されるようになっている。
【0017】
ところで、テーブル4の現在位置を検出する構成として従来のリニアエンコーダを用いた場合には、測長距離が固定的であることから、測長距離の変更に容易に対応することができないという問題があった。
そこで、本実施形態では、テーブル4の位置を検出するための手段として、ラックとピニオンギアからなる運動変換手段を用いてテーブル4の直線運動を回転運動に変換し、その回転位置を回転エンコーダで検出することによりテーブル4の位置を検出するようにした。具体的には、テーブル4は案内レール2から側方に突出しており、その突出部位の裏面に回転エンコーダ11(検出手段に相当)が固定されている。ベース1の側面にはラック12(運動変換手段に相当)が装着されており、回転エンコーダ11の回転軸に固定されたピニオンギア13(運動変換手段に相当)がラック12に噛合っている。この場合、直線運動系での検出は有限目盛りであるのに対して回転運動系での検出は無限目盛りであることから、理論的には直線運動系の測長距離が無限であっても、直線運動系の測長距離を回転運動系の測長距離に容易に変換することができる。これにより、測長距離が長い場合であっても本実施形態と同一の構成でもって容易に実施することができる。
【0018】
一方、例えば直線運動系で必要とされる測定能力として最大速度が10m/s、最大加速度が15Gである場合に、直線運動系での最大速度を回転運動系に変換した場合の最大回転速度が使用している回転エンコーダ11の最大回転速度を上回らないように直線運動を回転運動に変換するように、つまりピニオンギア13の直径が所望する性能となるように構成されている。ここで、リニアモータ5によりテーブル4を目標位置に制御する場合に制御時間を短縮するには最大速度が最も寄与することから、回転エンコーダ11が対応可能な最大速度でもってテーブル4を移動することにより、制御時間の短縮を図ることができる。
【0019】
尚、回転エンコーダ11としては、光学式、或いは磁気式があり、それぞれ絶対的な回転位置を示す位置信号を出力するアブソリュートタイプ、或いは基準位置からの相対的な回転量を示す位置信号を出力するインクリメンタルタイプがあるが、いずれのタイプを用いてもよい。
コントローラ8は、テーブル4を目標位置に停止する場合は、回転エンコーダ11からの位置信号によりテーブル4の現在位置を検出し、テーブル検出位置が目標位置となるようにリニアモータ5を制御する。
【0020】
一方、直線運動システムの設置環境、或いは直線運動システムに要求されるスペックによってはテーブル4に停止力を作用させる必要があり、そのような構成ではブレーキ14(ブレーキ手段に相当)を直線運動システムに装着する。この場合、システム構成の変更に容易に対応できるようにブレーキ14を後付可能とすることが望ましいものの、ブレーキ14を後付した場合は、回転エンコーダ11のピニオンギア13と噛合ったラック12に対してブレーキ14のピニオンギア15を噛合わせることになるから、それらの各部品の噛合い位置がばらついた場合は、直線運動システムの動作時の再現性を保証することが困難となる。
【0021】
そこで、本実施形態では、図3に示すようにノックピン16(位置決め手段に相当)によりテーブル4に対して回転エンコーダ11及びブレーキ14の取付位置を高精度に位置決めした状態で、図2に示すようにラック12と各ピニオンギア13,15に設けられたアイマーク17(位置決め手段に相当)同士が対向する初期位置となるように位置合わせする。これらのアイマーク17は部品の取付けの初期位置を示すもので、ラック12に対する回転エンコーダ11の取付け位置、及びラック12に対するブレーキ14の取付け位置が初期位置に設定されることにより、高精度を維持した取付再現性を確保することができる。
【0022】
ところで、上述のような高精度を維持した取付再現性を実現した結果、コントローラ8の制御によりテーブル4の位置を高精度で制御できるものの、ラック12とピニオンギア13との歯の噛合いには、互いの歯が接触する際のロストモーション(ガタ)があることから、そのロストモーションにより停止したテーブル4の実位置(以下「テーブル実位置」という)とテーブル4の検出位置(以下「テーブル検出位置」という)とは完全に一致せず、ロストモーションがテーブル4の停止精度に影響を与えている。
【0023】
本実施形態では、このように停止時にテーブル実位置とテーブル検出位置とが一致しないという事情を解消するために、回転エンコーダ11からの位置信号に代わる位置信号を出力する状態オブザーバ18をプログラムで構成し、コントローラ8は、減速運転時は状態オブザーバ18からの位置信号を信じてリニアモータ5を制御するようにした。
図5は、状態オブザーバ18を用いた制御系を示している。コントローラ8は、リニアモータ5を制御する際に利用する位置信号を回転エンコーダ11からの位置信号と状態オブザーバ18からの位置信号とに切替可能に構成されている。コントローラ8は、プログラムにより目標位置が与えられたときは、加速運転、等速運転、減速運転を順に実行することによりテーブル4を目標位置に移動する。ここで、加速運転時及び等速運転時は、回転エンコーダ11からの位置信号により制御対象であるリニアモータ5をフィードバック制御する。それに対して、減速運転時は、回転エンコーダ11からの位置信号に代えて状態オブザーバ18からの位置信号によりリニアモータ5をフィードバック制御する。以下、状態オブザーバ18の機能について説明する。
【0024】
図6は、テーブル検出位置とテーブル実位置との関係を示している。制御開始時にテーブル4はロストモーション範囲の中央(以下「テーブル中心値」という)に位置しているものとする。これは、リニアモータ5の停止状態では、回転エンコーダ11側のピニオンギア13はロストモーション範囲内でフリーな状態にあることから、テーブル4はロストモーション範囲の中心であるテーブル中心値に位置していると見なすことができるからである。
【0025】
コントローラ8がテーブル4を目標位置に移動するためにリニアモータ5を加速すると、テーブル4がテーブル中心値からロストモーション量Xの1/2(=X/2)だけ進んだところで回転エンコーダ11に設けられたピニオンギア13の歯がラック12の歯に当接し、図4に示すように進行方向側に押し付けられた状態で回転するようになる。このようにピニオンギア13の歯がラック12の歯に対して進行方向側に押し付けられた状態は、等速運転時も加減速の影響が無くなることから継続される。このため、テーブル実位置は、図6に示すようにテーブル検出位置が一定のままX/2だけ進むことになる。つまり、等速運転時は、最初の加速時に発生した位置ずれ状態が加速減速の影響が無く維持される結果、テーブル検出位置はテーブル実位置からはX/2遅れている状態を維持している。この状態維持時に状態オブザーバ18は制御対象となるリニアモータ5の同定を行う。
【0026】
さて、減速運転開始となると、減速運転時となっても慣性により回転エンコーダ11が等速運転時の回転状態を維持しようとしてテーブル4の速度の低下に追従できなくなるので、図4に示すようにピニオンギア13の歯がラック12の歯に対して進行方向と反対側に押し付けられるようになる。このため、減速運転時はテーブル実位置がテーブル検出位置に対してロストモーション量Xだけ遅れるようになるので(図6中に破線で示す)、プログラムで与えられる目標位置は、ロストモーション範囲の中心位置であるテーブル中心値に対してロストモーション量の1/2だけ進むことになる。
【0027】
そこで、状態オブザーバ18は、等速運転から減速運転開始となったときは、減速終了直前のテーブル検出位置とテーブル実位置との対応関係を示す差分情報(図6中に太線で示す一次関数)を求めると共に、その差分情報が示す減速運転開始直前のテーブル検出位置からプログラムで与えられた目標位置までの残りの移動量Yを求める。この場合、移動量Yには誤差となるX/2が含まれていることから、Y−X/2より真の目標位置までの移動量を求める。そして、状態オブザーバ18は、減速開始となったときは移動量Y−X/2に対応する位置信号を出力する。この場合、位置信号は、コントローラ8が等速運動に続けて減速運転を滑らかに実行できるように減速運転開始にコントローラ8からリニアモータ5に出力される制御信号に同期して出力されるようになっている。
【0028】
コントローラ8は、減速を開始したときは、等速運転で用いていた回転エンコーダ11からの位置信号に代えて状態オブザーバ18からの位置信号を入力するように切替え、入力した位置信号に基づいてテーブル検出位置が目標位置となるようにリニアモータ5をフィードバック制御する。これにより、テーブル4は、ロストモーション範囲の中心となるテーブル中心値に位置するようになる。
【0029】
ところで、上述のようにテーブル検出位置とテーブル実位置との対応関係を示す差分情報に基づいて目標位置までの残りの移動距離Y−X/2を求めるには、差分情報である一次関数の精度が極めて重要となる。しかしながら、ラック12の加工精度が低い場合はラック12の1歯毎にピッチ誤差を生じ、図4に示すようにテーブル4の進行に伴ってラック12の1歯毎のピッチ誤差が累積することになる。このため、テーブル検出位置とテーブル実位置との対応関係が一次関数とはならず、図7に示すように回転エンコーダ11からの取り込み値が誤差(図7では誤差を誇張している)を含むようになる。このため、ラック12に加工精度のバラツキがある場合は、状態オブザーバ18が求めた差分情報も誤差を含むことになるから、差分情報に基づいて求める目標位置までの残りの移動量、ひいては減速開始後に出力する位置信号の精度も低下してしまい、テーブル4をテーブル中心値となる目標位置に精度良く停止することができない虞がある。
【0030】
そこで、図7に示すように取り込んだ回転エンコーダ11からの位置信号に対し、真値となる別の極めて精度の高い計測器との値を元に、回転エンコーダ11の位置に応じて補正値を状態オブザーバ18に与えるようにした。このような補正値を状態オブザーバ18に与えることにより、状態オブザーバ18が求める差分情報が一次関数の真値となり、図8に示すように差分情報とテーブル中心値とが精度良く並行となるので、差分情報に基づいて演算する目標位置までの残りの移動量、ひいては状態オブザーバ18から出力する位置信号の精度を高めることができ、テーブル4をテーブル中心値となる目標位置に精度良く停止することができる。この補正は、必要に応じ(例えばラック・ピニオンの磨耗に応じ)て実施することでよりよい精度の維持が可能となる。また、次数を増やした関数とすることでより高精度とすることができる。
【0031】
このような実施形態によれば、リニアモータ5により移動されるテーブル4の直線運動をラック12とピニオンギア13により回転運動に変換するようにしたので、直線運動系での検出は有限目盛りであるのに対して回転運動系での検出は無限目盛りとなり、理論的には直線運動系の測長距離が無限であっても、直線運動系の測長距離を回転運動系の測長距離に容易に変換することができ、測長距離の変更に容易に対応することができる。
【0032】
また、ラック12とピニオンギア13とから構成された運動変換手段は、直線運動系で必要とされる最大速度を回転運動系に変換した最大回転速度が回転エンコーダ11の最大回転速度を上回らないように直線運動を回転運動に変換するので、テーブル4を目標位置に制御する時間に最も寄与する最大速度でもってリニアモータ5を通電制御することができ、目標位置までの制御時間の短縮を図ることができる。
【0033】
また、減速開始後から状態オブザーバ18により目標位置までの位置信号を出力し、コントローラ8が状態オブザーバ18からの位置信号に基づいてリニアモータ5をフィードバック制御することによりテーブル4をテーブル中心値となる目標位置に停止するようにしたので、テーブル停止位置の精度を高めることができる。
さらに、システムにブレーキ14を後付けする場合は、ノックピン16、アイマーク17により取付再現性を確保するようにしたので、システム毎の動作のバラツキを防止することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について図9及び図10を参照して説明するに、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。この第2実施形態は、回転エンコーダ11とブレーキ14とを同軸上に配置したことを特徴とする。
図9は直線運動システムの平面図、図10は直線運動システムの側面図である。テーブル4の端部にはL字状の支持部材21が肩当部22(位置決め手段に相当)により精度良く位置決めされた状態で取付けられており、テーブル4と支持部材21とが平行に精度良く対向している。テーブル4には回転エンコーダ11がノックピン16による位置決め状態で精度良く取付けられ、支持部材21にはブレーキ14がノックピン16による位置決め状態で精度良く取付けられている。このような肩当部22によるテーブル4に対する支持部材21の取付け、ノックピン16によるテーブル4に対する回転エンコーダ11の取付け、ノックピン16による支持部材21に対するブレーキ14の取付けにより、回転エンコーダ11とブレーキ14とが同軸上に精度良く配置されている。回転エンコーダ11及びブレーキ14の軸にはピニオンギア13,15がそれぞれ装着されており、それらのピニオンギア13,15がテーブル4に取付けられたラック12と噛合っている。この場合、図9に示すように各ピニオンギア13,15及びラック12に設けられたアイマーク17によりラック12に対する回転エンコーダ11の取付け位置、及びラック12に対するブレーキ14の取付け位置が初期位置に設定されているので、高精度を維持した取付再現性を確保することができる。
【0035】
このような実施形態によれば、第1実施形態と同じ作用効果を得ながら、第1実施形態ではテーブル4の移動方向に位置していたブレーキ14を回転エンコーダ11と同軸上に設けるようにしたので、全体の小型化を図ることができると共に、テーブル4の移動範囲の拡大を図ることができる。
【0036】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について図11ないし図13を参照して説明する。この第3実施形態は、運動変換手段をナットとボールネジから構成したことを特徴とする。
図11は直線運動システムの斜視図、図12は直線運動システムの平面図、図13は直線運動システムの側面図である。テーブル4には固定具31(図13のみに図示)によりナット32が固定されており、そのナット32の移動に伴ってボールネジ33が回転するようになっている。ボールネジ33の端部の一方には回転エンコーダ11が装着され、他方にはブレーキ14が装着されており、ボールネジ33の回転が回転エンコーダ11及びブレーキ14に伝達されるように構成されている。この場合、図12に示すようにアイマーク17によりボールネジ33に対する回転エンコーダ11の取付け位置、及びボールネジ33に対するブレーキ14の取付け位置が初期位置に設定されていると共に、アイマーク17によりリニアモータ5に対するテーブル4の取付け位置も初期位置に設定されているので、全てのアイマーク17を合わせた状態で取付けることにより高い取付再現性を確保することができる。尚、テーブルには窓部33が形成されており、その窓部33を通じてリニアモータ5の固定子6に設けられたアイマーク17を視認可能となっている。
【0037】
また、このようなナット32とボールネジ33とから構成される運動変換手段にはロストモーションが存在するものの、第1実施形態と同様に状態オブザーバ18を用い、減速運転時に状態オブザーバ18から出力される位置信号に基づいてリニアモータ5をフィードバック制御することによりテーブル4をテーブル中心値となる目標位置に停止することができる。
【0038】
このような実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏しながら、テーブル4の移動範囲、つまりリニアモータ5の測長距離はボールネジ33の長さに限定されるので、第一実施形態で説明した端面部9のような特別な手段を用いることなくテーブル4の移動範囲を限定することができる。
【0039】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態について図14ないし図16を参照して説明する。この第4実施形態は、運動変換手段をタイミングベルトとプーリーとから構成したことを特徴とする。
図14は直線運動システムの斜視図、図15は直線運動システムの平面図、図16は直線運動システムの側面図である。テーブル4に固定具41(図16のみに図示)によりタイミングベルト42が固定されていると共に、そのタイミングベルトが2つのプーリー43,44で支持されており、タイミングベルト42の移動に伴ってプーリー43,44が回転するようになっている。一方のプーリー43には回転エンコーダ11が装着され、他方のプーリー44にはブレーキ14が装着されている。この場合、ブレーキ14に対応したプーリー44は常時設置されるもので、ブレーキ14の必要時にブレーキ14のアイマーク17とプーリーのアイマーク17とを合わせた状態でブレーキ14をプーリーに取付けることにより高精度を維持した取付再現性を確保することができる。
【0040】
また、このような構成では、タイミングベルト42とプーリー43,44との間のガタ、或いはタイミングベルト42が弾性変形することによりロストモーションが存在するものの、第1実施形態と同様に状態オブザーバ18を用いることによりロストモーションの影響を排除してテーブル4を高精度でテーブル中心値となる目標位置に停止することができる。
【0041】
このような実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を奏しながら、テーブル4の移動範囲、つまりリニアモータ5の測長距離はタイミングベルトの長さの半分以下に限定されるので、特別な手段を用いることなくテーブル4の移動範囲を限定することができる。
【0042】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
直線運動を回転運動に変換する手段としては、ラック12とピニオンギア13、ナットとボールネジ、タイミングベルト42とプーリー43,44以外の手段を用いるようにしてもよい。
テーブル4にラック12を取付け、静止側に回転エンコーダ11を取付けるようにしてもよい。
回転エンコーダ11の同軸上にブレーキを設ける構成としては、回転エンコーダ11の背面にブレーキ14を装着し、回転エンコーダ11の軸にブレーキ14の軸を連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
図面中、4はテーブル、5はリニアモータ、8はコントローラ(制御手段)、11は回転エンコーダ(検出手段)、12はラック(運動変換手段)、13はピニオンギア(運動変換手段)、14はブレーキ(ブレーキ手段)、16はノックピン(位置決め手段)、17はアイマーク(位置決め手段)、18は状態オブザーバ、22は肩当部(位置決め手段)、32はナット(運動変換手段)、33はボールネジ(運動変換手段)、42はタイミングベルト(運動変換手段)、43,44はプーリー(運動変換手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータと、
前記リニアモータの動作に応じて直線運動するテーブルと、
前記テーブルの直線運動を回転運動に変換する運動変換手段と、
前記運動変換手段により変換された回転運動により回転するように設けられ、回転位置または回転量を示す検出信号を出力する検出手段と、
前記検出手段からの検出信号によりテーブルの位置を検出し、検出したテーブル検出位置が目標位置となるように前記リニアモータを通電制御する制御手段とを備え、
前記運動変換手段は、直線運動系で必要とされる最大速度を回転運動系に変換した最大回転速度が前記検出手段の最大回転速度を上回らないように直線運動を回転運動に変換することを特徴とするリニアモータ位置検出システム。
【請求項2】
前記リニアモータの等速運転時は、テーブルの実際の位置であるテーブル実位置が前記テーブル検出位置に対して直線運動におけるロストモーション量だけ進んで移動していることを示す差分情報を求めると共に、前記リニアモータの減速運転開始時は、前記差分情報が示す減速運転開始直前のテーブル実位置から前記テーブル検出位置で示される目標位置までの残りの移動量を求め、当該移動量に対してロストモーション量の1/2を減算することによりロストモーション範囲の中心位置となる目標位置までの移動量を求め、当該移動量に相当する検出信号を出力する状態オブザーバを備え、
前記制御手段は、減速運転時は、前記検出手段からの検出信号に代えて前記状態オブザーバからの検出信号によりテーブルの位置を検出し、検出したテーブル検出位置が目標位置となるように前記リニアモータを通電制御することを特徴とする請求項1記載のリニアモータ位置検出システム。
【請求項3】
システムに後付可能であって、前記制御手段からの指令に応じて前記リニアモータに停止力を作用させるブレーキ手段と、
システムに対する前記ブレーキ手段の後付位置をノックピンや肩当部による機構的な位置決め、またはアイマークを用いた目視による位置決めにより初期位置に設定可能な位置決め手段とを備えたことを特徴とする請求項1または2記載のリニアモータ位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−64631(P2011−64631A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217251(P2009−217251)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】