説明

リポ酸誘導体

リポ酸誘導体、およびリポ酸誘導体を含有する医薬製剤は、リポ酸誘導体に感受性のある疾患細胞によって特徴付けられる疾患の治療および予防に、有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワールブルク効果に結び付けられる癌細胞の代謝およびシグナル伝達経路を変化させることによって腫瘍細胞を選択的に死滅させる、リポ酸誘導体またはその塩、並びにそのようなリポ酸誘導体で対象を治療する方法を対象とする。
【0002】
関連背景技術
全ての哺乳類細胞は、生存し成長するためにエネルギーを必要とする。細胞は、このエネルギーを、酸化的代謝により食物分子を代謝することによって得る。正常な細胞の大部分は、それらの食物を代謝するために単一代謝経路を利用する。この代謝経路の最初のステップは、2個のATP単位をもたらす、解糖として知られるプロセスにおいて、グルコース分子をピルビン酸に一部分解することである。解糖は、低酸素条件下でも引き起こすことができる。ピルビン酸は、トリカルボン酸(TCA)サイクルとして知られるプロセスによってミトコンドリアにおいてさらに分解されて、グルコース分子当たり36個のATP単位と水と二酸化炭素とを生成する。TCAサイクルは、酸素を必要とする。低酸素レベルの期間中、正常細胞は、様々なメカニズムによって順応し、酸素レベルが回復するにつれて正常な代謝に戻る。解糖とTCAサイクルとの間の極めて重要な結び付きは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(「PDH」)として知られる酵素である。PDHは、より大きなマルチサブユニット複合体(以下、「PDC」)の一部である。PDHは、PDC複合体のその他の酵素と一緒になって、解糖生成されたピルビン酸をTCAサイクルへと効果的に進めるアセチルCoAを生成する。
【0003】
ほとんどの癌は、エネルギー代謝にかなりの乱れを引き起こす。基本的な変化の1つは、ワールブルク効果の導入であり、解糖がATPの主な供給源となる。ATP欠損は、TCA ATP生成が少ないことによって生ずる。言い換えれば、癌細胞は、そうではない場合であっても低酸素であるように振る舞う。エネルギー代謝のこの変化は、悪性形質転換の最も強固で十分立証された相関関係の1つであり、腫瘍増殖および転移をもたらすその他の変化に結び付けられている。TCAサイクルから大きく切り離されている解糖の結果、利用可能なATPが低レベルであるので、癌細胞は、エネルギー欠損を作り上げる試みにおいて、そのグルコースの取込みおよびそのピルビン酸への変換を増大させる。ワールブルク生化学の過剰なピルビン酸およびその他の代謝副産物は、管理されなければならない。これら代謝産物のいくつかは、細胞毒性であることが知られており、例えばアセトアルデヒドである。癌のPDCは、その他の関連ある酵素と共に、過剰なピルビン酸および代謝産物の管理および/または解毒に重要な役割を演ずる。例えば、中性化合物アセトインを形成するための、2個のアセチル分子の接合である。このアセトインの生成は、腫瘍特異的な形のPDCによって触媒される。
【0004】
リポ酸は、これらの通常なら毒性の代謝産物を解毒する際に酵素を使用して、PDCおよび関連するリポアミドと共に補助因子として働くことが示唆されている。リポ酸が、健康な細胞および癌細胞によって作製されるか否か、または必須の栄養分であるか否かは、文献で議論されており、どちらも正しい可能性がある。リポ酸を生成するのに必要とされる遺伝子は、哺乳類細胞で特定されてきた。ミトコンドリアのポンプまたは取込みメカニズムが健康な細胞もしくは癌細胞に存在するか否か、またはこのメカニズムが多様な組織で異なるか否かは、知られていない。TCAサイクルは、依然として癌細胞で機能するが、腫瘍細胞TCAサイクルは、1次エネルギー源としてグルタミンに依存する変異サイクルである。代謝産物を解毒する腫瘍特異的PDCおよび関連酵素の阻害または不活化は、アポトーシスまたはネクローシスおよび細胞死を促進させる可能性がある。
【0005】
多様な腫瘍タイプおよびそれらの代謝産物の中で、高度に保存された変化を特徴付ける広範な研究にも関わらず、それらの変化は、癌の化学療法の標的として首尾よく利用され続けている。癌は、米国人の死因の第2位であり続けるので、疾患管理の新たな手法が緊急に求められている。リポ酸は、その酸化還元の潜在的な特性により、糖尿病、アルツハイマー病、および癌などのミトコンドリア機能を含む多様な疾患の治療に役立てることができると示唆されている。これらの報告は、所望の効果を発揮するために、SHからS−Sへの酸化還元シフトの利用可能性が維持されることを教示している。
【0006】
米国特許第6,331,559号および第6,951,887号は、腫瘍細胞および特定のその他のタイプの疾患細胞を選択的に標的とし死滅させる、新規な種類の治療薬を開示する。これらの特許はさらに、その発明による有効量のリポ酸誘導体を、医薬品として許容される担体と共に含む、医薬組成物を開示する。本発明者らは、ついに、前述の特許の範囲を超越したさらなるリポ酸誘導体を発見した。
【0007】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩を対象とする:
【0008】
【化1】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、ヘテロアリール、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択され;上述の通り定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;Rは、水素、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、および有機金属アリールからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;Rは、水素、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;xは、0〜16である。)。
【0009】
本発明はさらに、式(I)を有するリポ酸誘導体(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;RおよびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;Rは、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10であり;ただし、RおよびRの少なくとも1つは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、ヘテロアリール、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択されることを条件とし、このときRは、水素、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択され、そのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく、Rは、水素、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、そのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよい。)、またはその塩を対象とする。
【0010】
本発明の別の実施形態は、式(I)のリポ酸誘導体(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、RCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタール、および水素からなる群から選択され、ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素であることを条件とし;上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;Rは、独立して、水素、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;Rは、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。)、またはその塩を対象とする。
【0011】
本発明はさらに、式(I)を有するリポ酸誘導体(式中、RおよびRは、独立して、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィドおよびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく、RおよびRの少なくとも1つは置換されており;Rは、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。)、またはその塩を対象とする。
【0012】
本発明の別の実施形態は、式(I)を有するリポ酸誘導体(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;RおよびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;Rは、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10であり;ただし、RおよびRの少なくとも1つは、独立して、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィドおよびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され、前記RおよびRの少なくとも1つは置換されている。)、またはその塩を対象とする。
【0013】
本発明は、さらになお、式(II)を有するリポ酸誘導体、またはその塩を対象とする:
【0014】
【化2】


(式中、Mは、−[C(R)(R)]−であり;RおよびRは、独立して、RC(O)−と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタール、および水素からなる群から選択され;上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;RおよびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;Rは、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;xは0〜16であり、zは0〜5であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。)。
【0015】
本発明の別の実施形態は、RおよびR基の1つまたは両方がアルキルアリール置換基、炭素鎖にヘテロ原子を有するアルキル置換基、置換アシル基、または置換アルキル基を含む、式(I)を有するものを含む。
【0016】
本発明の、さらに別の実施形態は、(a)治療上有効な量の、本発明の実施形態のいずれかの少なくとも1種のリポ酸誘導体と、(b)少なくとも1種の医薬品として許容される添加剤とを含む、医薬製剤を対象とする。好ましい実施形態では、少なくとも1種の医薬品として許容される添加剤は、溶媒、希釈剤、界面活性剤、可溶化剤、保存剤、緩衝液、およびこれらの組合せから選択され、かつ/または少なくとも1種のリポ酸誘導体は、約0.001mg/mから約10g/mをもたらす量で存在する。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態は、リポ酸誘導体に感受性のある疾患細胞によって特徴付けられる疾患を、治療しまたは予防する方法であって、治療上有効な量の、本発明の実施形態のいずれかによる少なくとも1種のリポ酸誘導体を、その必要がある患者に投与するステップを含む方法を対象とする。好ましい実施形態では、少なくとも1種のリポ酸誘導体は、少なくとも1種の医薬品として許容される添加剤をさらに含む医薬製剤中にある。
【0018】
詳細な説明
本発明は、腫瘍細胞を標的とし死滅させるのに有効な、リポ酸誘導体を対象とする。したがって、第1の実施形態では、本発明は、式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩を対象とする:
【0019】
【化3】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、ヘテロアリール、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
は、水素、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、および有機金属アリールからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、水素、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
xは、0〜16である。)。
【0020】
第2の実施形態では、本発明は、式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩を対象とする:
【0021】
【化4】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
およびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;
xは、0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10であり;
ただし、RおよびRの少なくとも1つは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、ヘテロアリール、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択され、Rは、水素、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく、Rは、水素、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよいことを条件とする。)。
【0022】
第1および第2の実施形態の、特に好ましいリポ酸誘導体には、下式が含まれる:
【0023】
【化5】


【0024】
第3の実施形態では、本発明は、式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩を対象とする:
【0025】
【化6】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、RCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタール、および水素からなる群から選択され、ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素であることを条件とし;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
は、独立して、水素、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;
xは、0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。)。
【0026】
第3の実施形態の、特に好ましいリポ酸誘導体には、下式が含まれる。
【0027】
【化7】


【0028】
第4の実施形態では、本発明は、式(I)のリポ酸誘導体、またはその塩を対象とする:
【0029】
【化8】


(式中、RおよびRは、独立して、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく、RおよびRの少なくとも1つは置換されており;
は、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;
xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。)。
【0030】
第5の実施形態では、本発明は、式(I)のリポ酸誘導体、またはその塩を対象とする:
【0031】
【化9】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
およびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;
xは、0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10であり;
ただし、RおよびRの少なくとも1つは、独立して、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィドおよびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され、前記RおよびRの少なくとも1つが置換されていることを条件とする。)。
【0032】
第4および第5の実施形態の、特に好ましいリポ酸誘導体は、下式を含む。
【0033】
【化10】

【0034】
本発明の第6の実施形態では、リポ酸誘導体は、式(II)を有する。
【0035】
【化11】


Mは、−[C(R)(R)]−であり、式中、RおよびRは、独立して、RC(O)−と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタール、および水素からなる群から選択され、上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよい。RおよびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;Rは、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択される。さらに、xは0〜16であり、zは好ましくは0〜5であり、より好ましくは0〜3であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。適切な−[C(R)(R)]−基には、限定するものではないが−CH、−CH(CH)、−C(CH、CH(C)、および−CH(ピリジン)が含まれる。
【0036】
第6の実施形態の、特に好ましいリポ酸誘導体には、下式が含まれる。
【0037】
【化12】


【0038】
本明細書で使用されるアシルは、RC(O)−基を指し、Rは、限定するものではないが水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであってもよく、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよい。本発明のある実施形態では、Rは、水素、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、または有機金属アリールであり、そのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;その他の実施形態では、Rは、水素、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよい。言い換えると、列挙されたR基の1つは、チオ−エステル結合を通して式(I)の炭素主鎖に結合されている。アシル基の例には、限定するものではないがアセチル、ベンゾイルおよびベンゾイル誘導体、4−フルオロベンゾイル、および1−メチルピロール−2−カルボキシルが含まれる。
【0039】
本明細書で使用されるアルキルは、C2n+1基を指し、ただし、nは1〜10であり、より好ましくは1〜6であり、最も好ましくは1〜4であり、即ち、チオ−エーテル結合を通して式(I)の炭素主鎖に結合されたアルキル基である。アルキル基は、脂肪族(直鎖または分岐鎖)または脂環式であってもよく;脂環式基は、複素環を形成するために、そのいずれの炭素上においても付加または置換基を有していてもよい。N、O、またはSなどの少なくとも1個のヘテロ原子は、所与のアルキル基中に、即ち炭素鎖中に存在してもよい。アルキル基は、そのいずれの炭素上においても置換されていても置換されていなくてもよい。好ましいアルキル基は、アリールまたはヘテロアリール基で置換されたアルキル基であり、即ちRまたはRは、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール基であり;アリールまたはヘテロアリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アルキル基の例には、限定するものではないがメチル、エチル、ブチル、デカニル、シクロプロピル、4−ピリジンメチル、2−アントラキノンメチル、N−フェニルアセトアミド、フェニルエチル、2−エタン酸、2−アセトアミド、4−(2−アセトアミドピリジニル)メチル、N−[(2−フルオロフェニル)メチル]アセトアミド、N−[(6−メトキシ−3−ピリジル)メチル]アセトアミド、5−(アセチルアミノ)ピリジン−2−カルボキサミド、5−(6,8−ジアザ−7−オキソ−3−チアビシクロ[3.3.0]オクト−2−イル)−N−(2−カルボニルアミノエチル)ペンタンアミド、および5−(6,8−ジアザ−7−オキソ−3−チアビシクロ[3.3.0]オクト−2−イル)ペンタカルボキシルが含まれる。
【0040】
本明細書で使用されるアルケニルは、C2m−1基を指し、ただし、mは2〜10であり、即ち、チオ−エーテル結合を通して式(I)の炭素主鎖に結合されたアルケニル基である。アルケニル基は、脂肪族(直鎖または分岐鎖)または脂環式であってもよく;脂環式基は、複素環を形成するために、そのいずれの炭素上においても付加または置換基を有していてもよい。N、O、またはSなどの少なくとも1個のヘテロ原子は、所与のアルケニル基中に、即ち炭素鎖中に存在してもよい。アルケニル基は、そのいずれの炭素上においても置換されていても置換されていなくてもよい。アルケニル基の例には、限定するものではないがプロペニル、2,3ジエチル−2−ブテニル、ヘプテニル、およびシクロペンテニルが含まれる。
【0041】
本明細書で使用されるアルキニルは、C2m−3を指し、ただし、mは2〜10であり、即ち、チオ−エーテル結合を通して式(I)の炭素主鎖に結合されたアルキニル基である。アルキニル基は、脂肪族(直鎖または分岐鎖)または脂環式であってもよく;脂環式基は、複素環を形成するために、そのいずれの炭素上においても付加または置換基を有していてもよい。N、O、またはSなどの少なくとも1個のヘテロ原子は、所与のアルキニル基中に、即ち炭素鎖中に存在してもよい。アルキニル基は、そのいずれの炭素上においても置換されていても置換されていなくてもよい。アルキニル基の例には、限定するものではないがアセチレニル、プロピニル、およびオクチニルが含まれる。
【0042】
本明細書で使用されるアリールは、チオ−エーテル結合を通して式(I)の炭素主鎖に結合された芳香族またはアリール基を指す。アリールは、好ましくは、6〜10個の炭素原子を有する不飽和環系である。アリールは、フェロセンなどの有機金属アリール基も含む。アリール基は、そのいずれの炭素上においても置換されていても置換されていなくてもよい。アリール基の例には、限定するものではないがベンジル(−CH)、メチルベンジルやアミノベンジルなどのベンジル誘導体、(1,2,3,4,5−ペンタフルオロフェニル)メチル、トリフェニルメチル、4−メチル安息香酸、フェロセンメチル、2−ナフチルメチル、4,4−ビフェニルメチル、およびスチルベン(または1−((1E)−2−フェニルビニル)−4−メチルベンゼン)が含まれる。
【0043】
本明細書で使用されるヘテロアリールは、芳香族複素環系(単環または二環)を指し、ただし、ヘテロアリール部分は、S、N、およびOからなる群から選択された1から4個のヘテロ原子を含有する5または6員環であり;ヘテロアリール基は、チオ−エーテル結合を通して式(I)の炭素主鎖に結合されている。ヘテロアリール基は、それらのいずれの原子上においても、特に炭素原子上においても置換されていても置換されていなくてもよい。ヘテロアリール基の例には、限定するものではないがベンゾチアゾール、キノリン、7−クロロキノリン、フラン、チオフェン、インドール、アザインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、N−メチルピロール、ピラゾール、N−メチルピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1H−テトラゾール、1−メチルテトラゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾフラン、ベンズイソキサゾール、ベンズイミダゾール、N−メチルベンズイミダゾール、アザベンズイミダゾール、インダゾール、キナゾリン、およびピロリジニルが含まれる。
【0044】
本明細書で使用されるアルキルスルフィドは、nが0〜9であるCH(CH−S−基を指す。言い換えれば、アルキル基は、ジスルフィド結合を通して式(I)の炭素主鎖に結合されている。アルキル基(即ち、CH(CH)は、それらのいずれの炭素上においても置換されていても置換されていなくてもよく、C2n+1アルキル基に関して既に述べたように同じ特徴を共有する。
【0045】
本明細書で使用されるイミドイルは、限定するものではないがRが水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであって、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよいRC(=NH)−基を指す。本発明のある実施形態では、Rは、水素、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールであり、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよい。言い換えると、列挙したR基の1つは、チオ−イミド結合を通して式(I)の炭素主鎖に結合されている。
【0046】
本明細書で使用されるヘミアセタールは、RCH(OH)−S−基を指し、ただし、Rは、限定するものではないがCF、CCl、またはCOOHなど、強力な電子求引性置換基を持つ化合物である。
【0047】
上述の基のいずれもが、置換されていなくても置換されていてもよい。例示的な置換基には、限定するものではないがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、オキソ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロプロピル、アミノ、アミド、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルチオ、−SOH、−SONH、−SONHアルキル、−SON(アルキル)、−COH、CONH、CONHアルキル、および−CON(アルキル)が含まれる。さらに、任意の数の置換基は、上述のいずれの基上においても作製してもよく;言い換えれば、一、二、三置換などのRまたはR基を有することが可能であり、置換基そのものを置換してもよい。さらに、RまたはR基のいずれもが、炭水化物、脂質、核酸、アミノ酸、またはこれらのいずれかのポリマー、または単鎖もしくは分岐鎖合成ポリマー(約350から約40000に及ぶ分子量を有する)のいずれかで一般に置換されることが適切である。
【0048】
上述のRおよびRのいずれの定義でも、それによってRおよびRが主鎖に結合されるチオ−エステルまたはチオ−エーテル結合を酸化して、スルホキシドまたはスルホンを生成することができ;言い換えれば、この結合中の−S−は、−S(O)−または−S(O)であってもよい。さらに、上述のRおよびRのいずれの定義でも、それによってRおよびRが主鎖に結合されるチオ−エステルまたはチオ−エーテル結合が、さらに、チオスルフィン酸またはチオスルホン酸に酸化することができるジスルフィドを含んでもよく;言い換えれば、結合中の−S−の代わりに、この結合は−S(O)−S−または−S(O)−S−であってもよい。
【0049】
リポ酸誘導体が式(I)のものか式(II)のものかに関わらず、本発明のリポ酸誘導体は、チオールの1つまたは両方がセレン分子で置換されたもの、硫黄類似体、またはチオールの1つまたは両方がスルフェート基もしくは関連ある基へと酸化されたものを含んでもよい。
【0050】
本発明の、追加の好ましいリポ酸誘導体は、RおよびRの1つまたは両方に関してアルキルアリール置換基が存在する式(I)の、ある化合物を含む。そのようなリポ酸誘導体には、下式が含まれる。
【0051】
【化13】




【0052】
本発明の、さらにその他の好ましい実施形態は、RおよびRの1つまたは両方に対してヘテロ原子置換基を有するアルキル基が存在する以下のリポ酸誘導体を含む。
【0053】
【化14】


【0054】
本発明の、別の好ましい実施形態は、置換アシル基を含む以下のリポ酸誘導体を対象とする。
【0055】
【化15】

【0056】
本発明の、さらに別の好ましい実施形態は、以下の非対称に置換されたリポ酸誘導体を含む。
【0057】
【化16】


【0058】
本発明の他の実施形態は、(a)治療上有効な量の、既に述べた(上述の)実施形態のいずれかの少なくとも1種のリポ酸誘導体と、(b)少なくとも1種の医薬品として許容される添加剤とを含む、医薬製剤を対象とする。
【0059】
典型的には、少なくとも1種のリポ酸誘導体は、治療上有効な量で、本発明の医薬製剤中に存在する。本発明の医薬製剤は、単位用量または多回用量のリポ酸誘導体を含有してもよい。「治療上有効な量」は、その必要がある対象に投与したときに、リポ酸誘導体に感受性がある疾患細胞によって特徴付けられる疾患状態の治療(または予防)を行うのに十分な、リポ酸誘導体の量を意味するものとする。治療上有効になる、所与のリポ酸誘導体の量は、疾患状態およびその重症度や、その必要がある対象の特定などの因子に依存することになり、その量は、当業者によって普通に決定することができる。重要なのは、単位用量中のリポ酸誘導体の量が、正常細胞を実質的に無傷のまま残しながら、腫瘍細胞を阻害または死滅させるのに十分であるべきことである。少なくとも1種のリポ酸誘導体は、好ましくは、本発明の医薬製剤中に、用量当たり少なくとも1種のリポ酸誘導体を約0.001mg/mから約10g/m、より好ましくは約0.01mg/mから約5g/m、さらにより好ましくは約0.25mg/mから約3g/m、最も好ましくは約20mg/mから約500mg/mをもたらす量で存在する。
【0060】
本発明での使用に適した、医薬品として許容される添加剤には、限定するものではないが溶媒、希釈剤、界面活性剤、可溶化剤、保存剤、緩衝液、およびこれらの組合せ、並びに非経口投与形態での使用に特に適した任意のその他の添加剤が含まれる。これらの医薬品として許容される添加剤の、適切な量を決定することは、当業者の範囲に十分含まれる。本明細書で使用するのに特に適した溶媒には、ベンジルアルコール、ジメチルアミン、イソプロピルアルコール、およびこれらの組合せが含まれ;当業者なら、最初に少なくとも1種のリポ酸誘導体を適切な溶媒に溶解し、次いでその溶液を希釈剤で希釈することが望ましいと考えられることが、容易に理解されよう。
【0061】
例えば静脈内投与に適した医薬製剤が望まれる場合、適切な希釈剤が用いられる。任意の従来の水性または極性の非プロトン性溶媒が、本発明での使用に適している。適切な医薬品として許容される希釈剤には、限定するものではないが生理食塩液、砂糖水、エチルアルコールやメタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)などの極性非プロトン性溶媒、およびこれらの組合せが含まれる。好ましい医薬品として許容される希釈剤は、デキストロース溶液であり、より好ましくは、重量で約2.5%から約10%、より好ましくは約5%のデキストロースを含有するデキストロース溶液である。医薬品として許容される希釈剤は、典型的にはホモリシスを発生させない量で用いられ;当業者なら、本発明による医薬製剤での使用に適した希釈剤の量を、容易に決定することができる。
【0062】
本発明の医薬製剤は、従来の配合技法によって調製することができる。例えば、少なくとも1種のリポ酸誘導体の原液は、従来の技法により調製し、次いで医薬品として許容される希釈剤によって望み通りに希釈することができる。本発明のリポ酸誘導体の医薬製剤は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている2007年4月18日出願の、同時係属の米国仮出願第60/912,605号[代理人整理番号第03459.000100.PV]、および2008年4月xx日出願の、対応する同時係属の米国特許出願第xx/xxx,xxx号に記述されている詳細に従って、調製してもよい。
【0063】
本発明の医薬製剤は、滅菌非経口溶液などの液体製剤である。本発明の医薬製剤は、バイアルやアンプルなどの、任意の適切な容器に入れられてもよく、限定するものではないが静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、胸郭内、胸膜内、子宮内、または腫瘍内を含めたいくつかの経路の1つを介した投与に適している。
【0064】
本発明の他の実施形態は、上記にて列挙されたもの以外の投与タイプ、例えば、限定するものではないが経口、経鼻、局所、経皮、および経直腸に適した医薬製剤を対象とする。本発明の医薬製剤は、適切であると当業者に認識され得る任意の医薬品形態をとることができる。適切な医薬品形態には、固体、半固体、液体、または凍結乾燥製剤、例えば錠剤、粉末、カプセル、坐薬、懸濁液、リポソーム、およびエアロゾルなどが含まれる。
【0065】
本発明の他の実施形態は、治療上有効な量の、本発明による少なくとも1種のリポ酸誘導体を、その必要がある患者に投与するステップを含む、リポ酸誘導体に感受性のある疾患細胞によって特徴付けられた疾患を、治療する方法を対象とする。好ましくは、少なくとも1種のリポ酸誘導体は、本発明による医薬製剤に組み込まれる。本発明のさらに他の実施形態は、治療上有効な量の、本発明による少なくとも1種のリポ酸誘導体を、その必要がある患者に投与するステップを含む、リポ酸誘導体に感受性のある疾患細胞によって特徴付けられた疾患を予防する方法を対象とする。好ましくは、少なくとも1種のリポ酸誘導体は、本発明による医薬製剤に組み込まれる。
【0066】
治療および予防方法によれば、本発明のリポ酸誘導体およびリポ酸誘導体の医薬製剤は、変化したまたは全く異なる細胞PDC活性を伴う疾患、即ちリポ酸誘導体に感受性のある疾患細胞によって特徴付けられる疾患を、予防しまたは阻害するのに使用することができる。適切に変化しまたは混乱したエネルギー代謝、即ち変化したPDC活性を有する細胞は、特に標的とされ死滅されるが、周囲を取り囲む健康な組織は、リポ酸誘導体によって傷付けられないままである。当業者なら、変化したPDC活性を有する疾患を容易に特定することができる。あるいは、当業者なら、リポ酸誘導体に対する感受性に関して、問題の疾患を容易にスクリーニングすることができる。
【0067】
本発明の方法の好ましい実施形態では、治療されまたは予防される疾患に、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、白血病、およびこれらの混合タイプなどの癌が含まれる。本発明の医薬製剤は、原発性および転移性の両方の癌に有効であり、限定するものではないが肺、肝臓、子宮、頸部、膀胱、腎臓、結腸、乳房、前立腺、卵巣、および膵臓の癌に有効である。その他の実施形態では、本発明の医薬製剤は、アルツハイマー病などの変化したエネルギー代謝を伴う疾患、乾癬などの過増殖性疾患、および糖尿病性神経障害などのその他の疾患の治療で使用することができる。
【0068】
治療の適用例では、本発明によるリポ酸誘導体または医薬製剤を、典型的には単位用量形態で、患者に直接投与する。本発明の方法では、リポ酸誘導体、またはリポ酸誘導体を含む医薬製剤を、限定するものではないが静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、胸郭内、胸膜内、子宮内、または腫瘍内を含めたいくつかの経路の1つを介して投与してもよい。当業者なら、リポ酸誘導体を投与する態様は、治療される癌または症状のタイプに依存することが理解されよう。例えば、白血病の治療に好ましいリポ酸投与態様は、静脈内投与を含むと考えられる。同様に、当業者なら、特定の医薬品として許容される添加剤は、ある投与態様に適した医薬製剤から別の投与態様に適した医薬製剤に至るまで、様々に変わることも理解されよう。
【0069】
本明細書に記述される治療を適応させることによって、本発明の医薬製剤のリポ酸誘導体は、疾患誘発細胞が変化代謝パターンを示す、癌以外の疾患を治療するための方法で使用することもできる。例えば、ヒトおよびその他の動物の真核性病原体は、真核細胞が細菌細胞よりも動物細胞に非常に類似しているので、一般に細菌性病原体よりも治療することが非常に難しい。そのような真核性病原体には、マラリア引き起こすような原生動物、並びに真菌性および藻類病原体が含まれる。正常なヒトおよび動物細胞に対して本発明のリポ酸誘導体の毒性が著しく欠けているので、また、多くの真核性病原体は、それらのPDCがリポ酸誘導体に感受性を持つようになるライフサイクルステージを通過しそうであるので、本発明のリポ酸誘導体および医薬製剤は、細菌性PDCを死滅させるのに使用することができる。
【0070】
次に、本発明の特定の実施形態を、以下の実施例を参照しながら実証する。これらの実施例は、単に本発明を例示する目的で開示されていると理解すべきであり、また、本発明の範囲をどのようにも限定するものではないと解釈すべきである。
【0071】
6,8−ビスメルカプトオクタン酸(中間体)の合成
【0072】
【化17】


α−リポ酸(5.15g、25.0mmol)を水(125mL)に懸濁し、重炭酸ナトリウム(2.1g、25.0mmol)を添加した。混合物を撹拌して、透明な溶液を生成した。得られた浅黄色の溶液を氷浴で冷却し、固体の水素化ホウ素ナトリウム(1.90g、50.0mmol)を、撹拌しながら、20分にわたり少量ずつ添加した。溶液を、さらに30分間、氷浴内で撹拌し、次いで室温で30分間撹拌した。濁った溶液を氷浴で冷却し、pHを、2Mの塩酸をゆっくり添加することによって1に調節した。過剰な水素化ホウ素ナトリウムが分解するにつれ、水素が激しく発生し、油状の液体が分離するのが見えた。混合物を、クロロホルムで抽出した(3×50mL)。合わせたクロロホルム抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を、減圧下の室温で蒸発させた。残りの油をさらに真空乾燥して、微量の溶媒を除去した。6,8−ビスメルカプトオクタン酸を、無色の油として単離した:5.2%(100%)。生成物を、−20℃の窒素中で保存した。1H-NMR (CDCl3): d 2.89 (m, 1 H, S-C-H). 2.67 (m, 2H, S-CH2), 2.34 (t, J = 7.1 Hz, 2H, CH2C(O)), 1.4-1.92 (m, 8H, (CH2)2), 1.33 (t, J = 8.0 Hz, 1 H, S-H), 1.30 (t, J = 7.6 Hz, 1 H, S-H).
【実施例1】
【0073】
化合物(A)、(E)、および(F)に関する概略的手順:
上述のように得られた6,8−ビスメルカプトオクタン酸(1当量)を、無水エタノールに溶解した。この溶液に、適切なアリール塩化物(2.2当量)を添加した。得られた溶液を、新たに調製したナトリウムエトキシド溶液(ナトリウム(4.4当量)を少量ずつ、窒素中で無水エタノールに添加して、新たに調製されたナトリウムエトキシドを形成した。)で処理した。反応混合物を、窒素中で4〜6時間還流した。次いで反応混合物を氷浴で冷却し、2N HClで慎重に、pH2〜3に酸性化した。酸性水相をクロロホルムで抽出し(×3)、合わせたクロロホルム抽出物を、水(×1)、飽和NaCl水溶液(×1)で洗浄し、乾燥した(MgSO)。クロロホルムの蒸発により、粗製生成物が得られた。生成物を、溶離剤としてクロロホルム:メタノール(9:1)を用い、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィにより精製した。
【0074】
ナトリウム塩として得られた化合物では、上述の酸性化ステップを省略した。反応混合物は、溶媒を蒸発させたらクロロホルムに溶解し、エーテルを添加してナトリウム塩を沈殿させ、それを濾過し、真空乾燥した。
【実施例2】
【0075】
S−アシル化化合物(C)、(D)、および(GG)に関する概略的手順
手順1:6,8−ビスメルカプトオクタン酸を、トリエチルアミンの存在下、3当量の適切なアシル塩化物でアシル化して、6,8−ビスアシルメルカプトオクタン酸アシル無水物を生成した。無水物を、ジオキサン/水で選択的に加水分解して、ベンゾイルチオエステル基の望ましくない加水分解を全く引き起こすことなく、6,8−ビスアシルメルカプトオクタン酸を生成した。生成物を、カラムクロマトグラフィによりシリカゲル上で精製した。
【0076】
手順1の一般的な例−6,8−ビスベンゾイルメルカプトオクタン酸の合成:6,8−ビスメルカプトオクタン酸(2.03g、10mmol)を、窒素中で乾燥塩化メチレン(50mL)に溶解し、トリエチルアミン(3.24g、32mmol)を添加した。塩化ベンゾイル(4.50g、32mmol)を塩化メチレン(20mL)に溶かしたものを、1滴ずつ、撹拌しながら20分にわたり添加した。トリエチルアミンとHClとの間で形成された塩を、この添加中に沈殿させた。溶液そのものは、無色のままであった。撹拌を、室温で9時間継続した。体積を、より多くの塩化メチレン(全固体が溶解した)で100mLに増大させ、溶液を分液漏斗に移した。これを10%クエン酸で抽出し(2×50mL、水相のpHを、抽出後にチェックして、酸性であることを確かめた。)、次いで飽和NaCl水溶液(50ml)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、塩化メチレンを蒸発させた。無色の油が得られた。上述の油(5.48g)をジオキサン(20mL)に溶解し、水(20mL)を添加した。これにより、材料は油の形成を引き起こした。混合物を、40〜45℃で53時間撹拌した。溶媒を、30℃の真空(2mm)で蒸発させた。残りの油をクロロホルム(50mL)に溶解し、クエン酸の5%水溶液(20mL)で抽出した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。淡い黄色の油を単離した(5.7g)。NMRスペクトルは、無水物の約3分の1しか加水分解しなかったことを示した。粗製材料を、ジオキサン(20mL)および水(10mL)に再溶解した。この混合物を、45℃で32時間撹拌した。溶媒を真空蒸発した。NMRは、無水物の加水分解が完了したことを示した。生成物を酢酸エチル(2mL)に懸濁し、ヘキサン−酢酸エチル−酢酸(100:50:1、v/v)で平衡させたシリカゲル60(150g)の25×4.5cmカラムに適用した。次いでカラムを、同じ溶媒混合物で溶離した。画分40mLを、約5mL/分で収集した。純粋な生成物は、画分16〜21に収集された:(1.95g、無色の油):1H-NMR (CDC13): d 8.0 (m, 4H, 芳香族H), 7.38-7.60 (m, 6H, 芳香族H), 3.89 (m, 1H, CH-S), 3.0-3.3 (m, 2H, CH2S), 2.34 (t, J = 7.1 Hz, 2H, CH2C(O)), 1.1-2.2 (m, 8H, CH2); 13C-NMR (CDC13): d 191.71, 191.46, 179.72, 136.98, 136.92, 133.29, 128.51, 127.25, 127.14, 43.60, 34.98, 34.59, 33.76, 26.43, 26.19, 24.29; TLC (ヘキサン-酢酸エチル-酢酸, 100:50:1, v/v), Rf = 0.30; IR (非希釈): 2937, 1710, 1704, 1662, 1667, 1655, 1448, 1207, 1175, 911, 773, 757, 733, 648, 688 cm-1.
【0077】
手順2:6,8−ビスメルカプトオクタン酸を、トリエチルアミン(1.2当量)の存在下、CDI(1.2当量)をDCMに溶かしたもので事前に活性化させた、1.2当量の適切なカルボン酸でアシル化した。生成物を、上述のシリカゲルのカラムクロマトグラフィで精製した。
【0078】
化合物(K)を、化合物(D)の合成中の副生成物として、クロマトグラフィ中に単離した。
【実施例3】
【0079】
チオアセタール化合物(M)、(N)、(O)、(P)、および(Q)に関する概略的手順
チオアセタール化合物(M)〜(Q)は、J.Am.Chem.Soc.1993,115,3458およびJ,Org.Chem.1975,40.231に記載されている一般的手順を適応させることによって合成した:
窒素雰囲気中で、6,8−ビスメルカプトオクタン酸(1当量)をDCMに溶かしたものに、適切なアルデヒドケトン(1当量)を添加した。混合物を、室温で1時間撹拌し、−25℃まで冷却した。BFエーテル化合物(1当量)を添加し、反応させて室温にまで温めた。溶媒の蒸発後、生成物を、結晶化によって、または溶離剤として酢酸エチル:ヘキサン(1:2)を用いたシリカゲルでのクロマトグラフィによって精製した。
【実施例4】
【0080】
ビス−アルキル化化合物(S)、(T)、(U)、(V)、(W)、(X)、(BB)、および(II)に関する概略的手順
窒素雰囲気中で、6,8−ビスメルカプトオクタン酸(1当量)をTHFに溶かしたものに、適切な臭化ベンジル、臭化フェネチル、またはアルキル臭化物(2当量)を添加した。新たに調製された、ナトリウムエトキシド(3当量)を無水エタノールに溶かしたものを、1滴ずつ、撹拌しながら10分にわたり添加した。次いで反応混合物を5.5時間還流し、室温まで冷却した。水で希釈した後、溶液を氷で冷却し、2N HClでpH=2まで酸性化した。生成物をクロロホルムで抽出し(×3)、合わせた有機抽出物を水(×1)、飽和NaCl水溶液(×1)で洗浄し、乾燥した(MgSO)。溶媒の蒸発により、粗製生成物が得られ、これをベンゼンおよびヘキサンから結晶化し、または1〜3%のメタノールをDCMに溶かした溶液を用い、シリカゲル上で、カラムクロマトグラフィによって精製した。
【実施例5】
【0081】
化合物(B)の合成
化合物(B)を、Org.Lett.2007,6,3687から適応させた方法を使用して合成した:6,8−ビスメルカプトオクタン酸(1当量)およびフェロセンメタノール(2.1当量)をDCMに溶かしたものを、トリフルオロ酢酸(6.5当量)で、室温で1時間処理した。溶媒を除去し、粗製生成物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル 2:1)を使用することによって精製した。
【実施例6】
【0082】
(中間体)化合物(J)の合成
6,8−ビスメルカプトオクタン酸(1.04g、5.0mmol)を、窒素中で、トリフルオロ酢酸(10mL)に溶解した。この撹拌溶液に、トリフェニルメタノール(1.30g、5.0mmol)を少量ずつ添加した。溶液を15分間撹拌し、真空(10℃で2mm)を使用することによって蒸発させた。得られた残留物を、新たなトリフルオロ酢酸(7mL)に溶解し、10分間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留する全てのトリフルオロ酢酸を、乾燥ベンゼン(3×2mL)で共沸させることによって除去した。残留粘性シロップ(CHCl:CHOH:CHCOOH、100:10:1)のTCL分析では、Rf値が0.42、0.47、および0.54の3つスポットが明らかにされた。主なスポットは、Rf値が0.47であった。粗製材料をクロロホルム(1mL)に溶解し、CHCl:CHOH:CHCOOH、100:5:1の、シリカゲル(140g)で圧力充填されたカラム(36×3.2cm)に適用した。カラムに非常にうまく充填したことは重要であり、少なくとも100gのシリカを、少量のリポ酸出発材料のグラムごとに使用した。カラムを、最初に初期溶媒混合物(100mL)で溶離した。次いでカラムをCHCl:CHOH:CHCOOH(100:7:1)で溶離した。画分20mLを2mL/分で収集した。適度に純粋な生成物が画分10〜16で収集され、その結果、1.44gが得られた。この6−メルカプト−8−トリチルメルカプトオクタン酸を使用して、化合物(Y)、(Z)、および(AA)を合成した。
【実施例7】
【0083】
化合物(Y)および(Z)に関する概略的手順
化合物(Y)および(Z)の合成は、6−エチルメルカプト−8−トリチルメルカプトオクタン酸、化合物(Z)の合成に関する下記の概略的な手順によって具体化することができる:化合物(J)(1.09g、2.4mmol)を無水エタノール(40mL)に溶解し、臭化エチル(0.38g、3.0mmol)を添加した。撹拌溶液を窒素雰囲気中に置き、ナトリウムエトキシド(10mmol)を無水エタノール(10mL)に溶かした溶液を、5分にわたり添加した(この溶液は、ナトリウム金属(0.23g)とエタノールとを反応させることによって、新たに調製した。)。この溶液を、室温で20分間撹拌した。次いで穏やかに、6時間、加熱還流した(浴温度95℃)。白色固体が、この時間中に沈殿するのが見えた。混合物を室温まで冷却し、エタノールを真空蒸発させた(10℃で1mm)。残留物を水(40mL)に懸濁した。pHを、2Mの塩酸で約2(pH紙)に調節した。混合物を酢酸エチルで抽出した(3×25mL)。合わせた抽出物を飽和NaCl水溶液(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を蒸発させることにより、重さ1.14gの黄色の粘性油が得られた。粗製材料をクロロホルム(2mL)に溶かしたものを、CHCl−CHOH−CHCOOH、250:10:1で、シリカゲル(90g)が充填されたカラム(25×3.2cm)に適用した。この溶媒を用いた溶離によって、黄色のシロップ0.85g(74.5%)が得られた。
【実施例8】
【0084】
化合物(AA)の合成
化合物(J)(6−メルカプト−8−トリチル−ビスメルカプトオクタン酸)(1.36g、3.0mmol)を、無水エタノール(50mL)に溶解し、ブロモ酢酸(0.63g、4.5mmol)を添加した。無色の溶液を、ナトリウムエトキシド(12mmol)を無水エタノール(10mL)に溶かした溶液で処理した(この溶液は、ナトリウム金属(0.28g)とエタノールとを反応させることによって、新たに調製された。)。添加すると、白色の固体が形成された。混合物を、室温で30分間撹拌し、次いで穏やかに7時間還流した(浴温度95℃)。混合物を室温に冷却し、溶媒を真空中で、室温で蒸発させることにより、薄黄色の固体が得られた。固体を水(50mL)に溶解した。pHを、2Mの塩酸で約2に調節した。微かに黄色の沈殿物が形成された。混合物を酢酸エチルで抽出した(4×25mL)。合わせた抽出物を、飽和ブライン(20mL)で洗浄した。溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させることにより、薄黄色の粘性油(1.59g)が得られた。TLC(シリカゲル、100:10:1 CHCl−CHOH−CHCOOH)は、メジャースポットがRf=0.42であることを示した。粗製材料をクロロホルム(2mL)に溶解し、CHCl−CHOH−CHCOOH(100:5:1)で、シリカゲル(90g)が圧力充填されたカラム(24×3.2cm)に適用した。次いでカラムを、CHCl:CHOH:CHCOOH(100:10:1)で溶離した。画分(20mL)を2mL/分で収集した。生成物は、画分14〜20で収集され、それによって、無色の油1.32gが得られた(75% 残留酢酸の補正後)。
【実施例9】
【0085】
化合物(G)、(H)、および(L)に関する概略的手順
化合物(G)および(H)の合成は、6−エチルメルカプト−8−メルカプトオクタン酸(化合物(H))に関する以下の概略的な手順によって、具体化することができる:6−エチルメルカプト−8−トリチル−ビスメルカプトオクタン酸(0.85g、1.78mmol)を、トリフルオロ酢酸(10mL)に溶解した。濃い黄色の溶液が得られた。トリエチルシラン(0.42g、0.58mL、3.6mmol)を一度に添加した。白色固体が沈殿するのが見えた。混合物を、10分間、時々撹拌しながら、室温で放置した。固体を濾過によって除去し、トリフルオロ酢酸で洗浄した(2×2mL)。合わせた濾液を、室温で、真空中で蒸発乾固し、次いでベンゼン(2mL)と共沸させることにより、油(0.49g)が得られた。TLC(シリカゲル、CHCl−CHOH−CHCOOH(100:5:1))は、Rf=0.82(トリフェニルメタン)および0.35(生成物)という2つのスポットを示した。粗製材料を、CHCl−CHOH−CHCOOH(100:5:1)で、シリカゲル(40g)が充填されたカラム(22×2.3cm)に添加した。カラムをこの溶媒で溶離することにより、淡い黄褐色のシロップとして生成物が得られた:0.33g(78%)。生成物を、−20℃の、暗所で窒素またはアルゴン中で保存した。
【0086】
同様に、化合物(G)を化合物(Y)から合成した。化合物(L)は、化合物(H)および(G)で使用されるものと同様の3段階手順によって合成された。
【実施例10】
【0087】
化合物(I)の合成
化合物(AA)、(6−カルボキシメチレンメルカプト−8−トリチル−ビスメルカプトオクタン酸)を、トリフルオロ酢酸(12mL)に溶解した。トリエチルシラン(0.53g、0.73mL、4.6mmol)を一度に添加した。明るい黄色の溶液が無色になり、白色固体が沈殿した。混合物を、10分間、時々撹拌しながら室温で放置し、濾過した。固体をトリフルオロ酢酸で洗浄した(2×3mL)。合わせた濾液を、室温の真空中で蒸発乾固し、ベンゼン(2mL)と共沸させることにより、薄い褐色の油(0.74g)が得られた。粗製材料をクロロホルム(1mL)に溶解し、CHCl−CHOH−CHCOOH(100:5:1)で、シリカゲル(40g)が充填されたカラム(28×2.3cm)に添加した。カラムをCHCl−CHOH−CHCOOH(100:7:1)で溶離することにより、粘性の無色のシロップが得られた:0.54g(82%)。生成物は、暗所で、好ましくは窒素中で、−20℃で保存すべきである。TLC:Rf=0.35(100:7:1 CHCl−CHOH−CHCOOH)。
【実施例11】
【0088】
化合物(CC)、(DD)、(EE)、(FF)、および(HH)に関する概略的手順
化合物(CC)、(DD)、(EE)、(FF)、および(HH)を、上述の手順を使用することによって合成した。化合物(J)を、ブロモアセトアミドでアルキル化した。トリチル保護基を上述のように除去することにより、6−アセトアミド−8−メルカプト−6,8−ビスメルカプトオクタン酸が得られた。次いでこの中間体を、上述のように還流エタノール中で、ナトリウムエトキシドの存在下、適切なアルキル臭化物または臭化ベンジル(化合物(HH)に関して)でアルキル化した。
【実施例12】
【0089】
化合物MM(6−エチル−8−フェニル−6,8−ビスメルカプトオクタン酸)の合成
ヨウ化第1銅(12mg)および無水炭酸カリウム(0.33g、2.4mmol)を、磁気撹拌棒を備えた試験管(15×2cm)内に入れ、6−エチルメルカプト−8−メルカプトオクタン酸(化合物(H))(0.19g、0.8mmol)を2−メチル−2−ブタノール(2mL)に溶かしたものを添加した。試験管をセプタムキャップで閉じ、アルゴンでフラッシュした。エチレングリコール(100mg、90μL、1.6mmol)を、注射器を介して添加し、その後、ヨードベンゼン(164mg、90μL、0.8mmol)を添加した。試験管を再びアルゴンでフラッシュし、次いでパラフィルムで密封し、95℃で38時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、水(15mL)を添加した。懸濁液のpHを、2.0M塩酸で2に調節した。混合物をクロロホルムで抽出した(3×10mL)。合わせた抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発することにより、重さ0.25gの黄色の油が得られた。TLC(CHCl−CHOH−HOAc 100:10:1)は、Rf=0.45のメジャースポット、Rf=0.39のマイナースポット、およびいくつかのマイナースポットを示している。粗製生成物をクロロホルム(0.5mL)に溶かしたものを、CHCl−CHOH−HOAc(100:5:1)で、シリカゲル60(20g)が充填されたカラム(12×2.2cm)に適用した。カラムを、CHCl−CHOH−HOAc(100:10:1)で溶離した。画分4〜5mLを、0.5mL/分の流量で収集した。生成物は、画分7〜10に収集された:重さ140mgの無色の油。TLC Rf=0.45(シリカゲル;CHCl−CHOH−HOAc、100:10:1);1H-NMR (CDCl3): d 7.1-7.4 (m, 5H), 3.08 (td, 2H), 2.6-2.8 (m, 1H), 2.48 (q, 2H), 2.35 (t, 2H), 1.3-1.9 (m, 8H), 1.22 (t, 3H); MS (ESI (-)): 311(M-1).
【実施例13】
【0090】
ジスルフィド化合物(LL)の合成
6,8−ビスメルカプトオクタン酸(1.18g、5.67mmol)をDCM(15mL)に溶かしたものおよびアルドリチオール(5.0g、22.7mmol、4当量)を、触媒量の氷酢酸(32.5uL、2.5モル%)で処理した。反応を、一晩、N中で、室温で撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製生成物を、溶媒勾配をヘキサンからヘキサン中50%の酢酸エチルとして、シリカゲル(80g)上でカラムクロマトグラフィによって精製した。MS:425(M−1)。
【実施例14】
【0091】
ジスルフィド化合物(JJ)の合成
上記にて得られたビスピリジル−6,8−ジチオオクタン酸ジスルフィド(1当量)を、DCMに溶解し、ベンジルメルカプタン(2.5当量)を添加した。反応を、触媒量の酢酸(2.5モル%)を添加することによって開始した。室温で一晩撹拌した後、溶媒を蒸発させ、粗製生成物を、溶媒勾配がヘキサンからヘキサン中50%の酢酸エチルであるシリカゲル上でカラムクロマトグラフィによって精製して、生成物を溶離した。MS:451(M−1)。
【実施例15】
【0092】
化合物(KK)の合成
アルドリチオール(5.0g、22.6mmol)をメタノール(50ml)に溶かしたものを、酢酸(33uL、0.565mmol、触媒)で処理し、チオフェノール(2.309mL、22.6mmol、1当量)を添加した。混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製化合物を、溶離勾配がヘキサンからヘキサン中2%酢酸エチルとして、シリカゲル(50g)上でカラムクロマトグラフィにより精製した:薄黄色の油、2.413g(48.6%)。この化合物(500mg、2.279mmol)を、化合物(L)(237.39mg、1.14mmol、1当量)をメタノール(10mL)に溶かしたものと、酢酸(3.5μL、0.057mmol、触媒)を用いて反応させた。反応を、室温で24時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、化合物を、展開溶媒としてヘキサン中10%酢酸エチルを用いてシリカゲル上で分取薄層クロマトグラフィにより精製した:薄黄色の油、38mg(9%)、TLC(シリカゲル)、Rf=0.18;MS(ESI(−)):423(M−1)。
【実施例16】
【0093】
化合物(R)の合成
化合物(R)を、実施例9のモノS−アルキル化手順と実施例3のチオアセタール形成との組合せを使用して合成した。
【0094】
試験
3個のヒト腫瘍細胞をこの調査で使用し、これらの細胞は、ヒトH460 NSCLC、ヒトメラノーマA2058、およびヒト腺癌HT1080細胞系であった。細胞は、もともとアメリカンタイプセルカルチャー(ATCC)から得られ、30よりも少ない継代で実験に使用されてきた。全ての腫瘍細胞を、Roswell Park Memorial Institute(RPMI)1640 25mLが10%ウシ胎児血清(FBS)および2mM L−グルタミンと共に入っているT75組織培養フラスコ内で、加湿した5%CO雰囲気中で37℃で維持した。腫瘍細胞は、トリプシン化によって4〜5日ごとに、1:10の比で分け、これらを新しいフラスコ内の新鮮な培地に再懸濁させた。細胞を、70〜90%の集密度で実験用に収集した。
【0095】
この研究で全ての細胞系に使用される培地は、Roswell Park Memorial Institute(RPMI)1640に、10%のウシ胎児血清(FBS)、2mMのL−グルタミン、100IU/mLのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを加えたものであった。使用した試験化合物は、一般に、20mMよりも高い濃度で調製され、沈殿用に培地中1mMで試験された。1mMは、試験化合物の最も高い試験濃度である。
【0096】
試験化合物の抗腫瘍活性を、この腫瘍細胞を様々な濃度の試験化合物(またはビヒクル)に曝すことによって、または試験化合物もしくはビヒクルで処理せずに、評価した。この研究で評価がなされた試験化合物の濃度範囲は、0〜1mMであった。腫瘍細胞の治療所要時間は、48時間であった。被験物質での処理に続き、生存可能な腫瘍細胞の数を決定し、細胞増殖阻害50%(IC50)を引き起こす試験物質の濃度を導き出して、比較した。
【0097】
実験用の細胞播種:細胞を70〜90%の集密度に増殖させるため、培地を除去し、細胞単層を、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)5mLを添加することによって簡単に洗浄し、その後、吸引した。トリプシン−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(4mL)を各フラスコに添加し、そのフラスコを組織培養インキュベータ内に5分間置いた。血清含有培地(10mL)を添加して酵素反応を停止させ、細胞を、血清学的ピペットで繰り返し再懸濁させることによって、ばらばらにした。細胞含有培地(20μL)を、0.4%トリパンブルー溶液20μLに添加し、混合し、この細胞含有混合物10μLを、血球計数器のチャンバ内に入れた。生細胞の数は、100×の倍率で、血球計数器のチャンバの四隅の正方形区画内にある、生細胞(トリパンブルーを除外した細胞)の数をカウントすることによって決定した。必要とされる細胞の体積を、下式により決定した:
【0098】
【数1】


(式中、カウントされた細胞の数/mL=血球計数器での細胞の平均数×2希釈計数×10)。
【0099】
この研究のため標的とされた細胞の数は、培地100μL中、ウェル当たり4×10個であった。細胞の実際の数をカウントし、96ウェルプレートのウェルに播いた。次いで細胞を約24時間インキュベートした後、それらの細胞を、試験化合物およびビヒクルの抗腫瘍活性の試験に使用した。細胞単層は、実験当日、いくつかの細胞系ではコンフルエントまたはサブコンフルエントであった。
【0100】
試験化合物およびビヒクルでの処理:試験当日、特定濃度の試験化合物(またはビヒクル)5μLを、ウェルに添加した。被験物質(またはビヒクル)に48時間曝した後、ウェル内で生細胞の数を決定し(次のセクション参照)、未処理の場合に対する細胞%を計算した。
【0101】
細胞力価ブルーアッセイ(the CellTiter Blue Assay)による生細胞の数の決定:この研究では、生細胞の数を、細胞力価ブルーアッセイを使用して決定した。具体的には、Promega,Inc.(Madison、WI)からの取扱説明書に従って試薬を室温にし、細胞力価ブルー試薬を、12チャンネルのエッペンドルフ型ピペットでウェル当たり20μL添加した。次いで細胞を、37℃で1〜4時間、細胞培養インキュベータ内でインキュベートした。生細胞の量に比例する蛍光強度を、FLUOstarオプティマ蛍光プレートリーダ(BMG technologies、ドイツ)を使用して、530/590nmで読み取った。
【0102】
IC50値の計算:蛍光読取りからのデータを、EXCELスプレッドシート状にコピーし、以下の方程式を使用して、未処理の細胞に対する細胞増殖を計算した:
未処理に対する細胞数パーセント=(Nでの平均ルミネセンス/未処理の平均蛍光)×100%
(ただし、N=化合物またはビヒクルの濃度)。
【0103】
計算された値を、SigmaPlot、v9にインポートした。「試験化合物の濃度の関数としての、平均相対細胞増殖」という4パラメータロジスティック曲線を作成した。IC50値を、この曲線から決定した。Rスクエア値は、曲線に対するデータの適合度の指標を提供した。試験化合物のIC50値を、以下の表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
本発明を、その具体的な実施形態を参照しつつ述べてきたが、本明細書に開示された本発明の概念から逸脱することなく、多くの変更、修正、および変形を加えることができることが明らかである。したがって、添付される特許請求の範囲の精神、および広い範囲に含まれる、そのような変更、修正、および変形の全てを包含するものとする。本明細書に引用される全ての特許出願、特許、およびその他の文献は、その全体が参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩:
【化18】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、ヘテロアリール、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
は、水素、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、および有機金属アリールからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、水素、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
xは、0〜16である。)。
【請求項2】
下式
【化19】


からなる群から選択される、請求項1に記載のリポ酸誘導体。
【請求項3】
式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩:
【化20】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
およびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;
xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10であり;
ただし、RおよびRの少なくとも1つは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、ヘテロアリール、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択されることを条件とし、このときRは、水素、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、有機金属アリール、およびアルキル−有機金属アリールからなる群から選択され、そのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく、Rは、水素、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、そのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよい。)。
【請求項4】
式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩:
【化21】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、RCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタール、および水素からなる群から選択され、ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素であることを条件とし;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
は、独立して、水素、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、これらのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;
xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。)。
【請求項5】
下式
【化22】




からなる群から選択される、請求項4に記載のリポ酸誘導体。
【請求項6】
式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩:
【化23】


(式中、RおよびRは、独立して、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィドおよびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく、RおよびRの少なくとも1つは置換されており;
は、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;
xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。)。
【請求項7】
下式
【化24】


である、請求項6に記載のリポ酸誘導体。
【請求項8】
式(I)を有するリポ酸誘導体、またはその塩:
【化25】


(式中、RおよびRは、独立して、RC(O)と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、およびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
およびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、そのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、CCl、CF、およびCOOHからなる群から選択され;
xは0〜16であり、nは0〜10であり、mは2〜10であり;
ただし、RおよびRの少なくとも1つは、独立して、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィドおよびRCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタールからなる群から選択され、前記RおよびRの少なくとも1つは置換されている。)。
【請求項9】
式(II)を有するリポ酸誘導体、またはその塩:
【化26】


(式中、Mは、−[C(R)(R)]−であり;
およびRは、独立して、RC(O)−と定義されるアシル、C2n+1と定義されるアルキル、C2m−1と定義されるアルケニル、C2m−3と定義されるアルキニル、アリール、ヘテロアリール、CH(CH−S−と定義されるアルキルスルフィド、RC(=NH)−と定義されるイミドイル、RCH(OH)−S−と定義されるヘミアセタール、および水素からなる群から選択され;
上記にて定義されたRおよびRは、置換されていなくても置換されていてもよく;
およびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、そのいずれもが置換されていても置換されていなくてもよく;
は、CCl、CF、またはCOOHからなる群から選択され;
xは0〜16であり、zは0〜5であり、nは0〜10であり、mは2〜10である。)。
【請求項10】
下式
【化27】



からなる群から選択される、請求項9に記載のリポ酸誘導体。
【請求項11】
下式
【化28】







からなる群から選択される、リポ酸誘導体。
【請求項12】
(a)治療上有効な量の、請求項1、3、4、6、8、9、および11のいずれか一項に記載の少なくとも1種のリポ酸誘導体と、(b)少なくとも1種の、医薬品として許容される添加剤とを含む、医薬製剤。
【請求項13】
前記少なくとも1種の、医薬品として許容される添加剤が、溶媒、希釈剤、界面活性剤、可溶化財、保存剤、緩衝液、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記少なくとも1種のリポ酸誘導体が、約0.001mg/mから約10g/mをもたらす量で存在する、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項15】
治療上有効な量の、請求項1、3、4、6、8、9、および11のいずれか一項に記載の少なくとも1種のリポ酸誘導体を、その必要がある患者に投与するステップを含む、リポ酸誘導体に感受性のある疾患細胞によって特徴付けられる疾患を治療する方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種のリポ酸誘導体が、少なくとも1種の医薬品として許容される添加剤をさらに含む医薬製剤中にある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
治療上有効な量の、請求項1、3、4、6、8、9、および11のいずれか一項に記載の少なくとも1種のリポ酸誘導体を、その必要がある患者に投与するステップを含む、リポ酸誘導体に感受性のある疾患細胞によって特徴付けられる疾患を予防する方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種のリポ酸誘導体が、少なくとも1種の医薬品として許容される添加剤をさらに含む医薬製剤中にある、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2010−526770(P2010−526770A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504248(P2010−504248)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/060655
【国際公開番号】WO2008/131117
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509287577)コーナーストーン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】