説明

ルートシミュレーション装置、ルートシミュレーション方法及びルートシミュレーションプログラム

【課題】 災害発生時における任意の地点間の道路の安全性を適切に評価することができるルートシミュレーション装置、ルートシミュレーション方法及びルートシミュレーションプログラムを提供する。
【解決手段】 操作者が操作部28から所望の出発地、目的地を入力すると、始終点取得部12が出発地を移動の始点、目的地を移動の終点として認識し、移動ルート抽出部14が、上記始点、終点間を移動できる道路を、地図情報の中から抽出する。安全性評価部16は、上記抽出された道路の安全性を、記憶部26に記憶された道路の安全性に関するデータに基づいて評価する。比較部20は、全性評価部16の評価結果に基づき、移動ルート抽出部14が抽出した道路の安全性を比較し、結果を表示部30に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時等における任意の地点間の道路の安全性を評価するためのシミュレーションを行うルートシミュレーション装置、ルートシミュレーション方法及びルートシミュレーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害が発生した場合には、電車、バス等の公共交通機関の利用は難しい。従って、勤務地、学校等からの帰宅や他の地域への避難等を行う場合には、徒歩や自家用車による移動を余儀なくされる。このためには、地図が不可欠となるが、通常入手できる地図には、災害発生時に危険性が高くなるエリア及び避難場所等の災害時支援施設が表記されておらず、災害発生時に使用するのは必ずしも適切ではなかった。
【0003】
そこで、下記特許文献1には、避難を要する対象者の所在地を自動的に把握し、同時に危険の少ない避難経路を選択して避難場所へ案内する避難誘導システムが開示されている。
【特許文献1】特開2005−17027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術においては、避難を要する対象者の所在地を、当該対象者の所持する携帯電話機から取得する構成となっているが、災害発生時には、通信インフラが正常に機能できず、携帯電話機との通信がきわめて困難となって、避難場所への案内を有効に行えなくなる可能性が高いという問題があった。
【0005】
また、データベースに記憶される災害情報データは、諸官庁、自治体、企業、団体等が提供する災害関連サーバから取得する構成となっているが、上記同様に災害関連サーバとの通信が困難になり、災害情報データが取得できなくなる可能性が高いという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、災害発生時における任意の地点間の道路の安全性を適切に評価することができるルートシミュレーション装置、ルートシミュレーション方法及びルートシミュレーションプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、任意の地点間の道路の安全性を評価するためのシミュレーションを行うルートシミュレーション装置であって、道路の安全性に関するデータを記憶する安全データ記憶手段と、始点、終点の入力を受け付ける始終点取得手段と、前記始点、終点間を移動できる道路を抽出する移動ルート抽出手段と、前記抽出された道路の安全性を、前記安全データ記憶手段に記憶された安全性に関するデータに基づいて評価する安全性評価手段と、前記評価結果に基づき、前記抽出された道路の安全性を比較する比較手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記ルートシミュレーション装置は、道路が通過する区画毎に設定された危険度情報に基づき前記道路の安全性に関するデータを設定する安全データ設定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記安全データ設定手段は、道路の両側における前記危険度情報が異なる場合に、より高い危険度情報を採用するのが好適である。
【0010】
また、上記安全データ設定手段は、道路近傍に存在する施設に基づいて前記道路の安全性に関するデータを変更するのが好適である。
【0011】
また、上記移動ルート抽出手段は、所定幅員以下の道路を評価対象から除外するのが好適である。
【0012】
また、上記ルートシミュレーション装置は、安全性を評価した道路の航空写真を表示する表示手段をさらに備えるのが好適である。
【0013】
また、本発明は、任意の地点間の道路の安全性を評価するためのシミュレーションを行うルートシミュレーション方法であって、道路の安全性に関するデータを記憶するステップと、始点、終点の入力を受け付けるステップと、前記始点、終点間を移動できる道路を抽出するステップと、前記抽出された道路の安全性を、前記安全性に関するデータに基づいて評価するステップと、前記評価結果に基づき、前記抽出された道路の安全性を比較するステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、任意の地点間の道路の安全性を評価するためのシミュレーションを行うルートシミュレーションプログラムであって、道路の安全性に関するデータを記憶し、始点、終点の入力を受け付け、前記始点、終点間を移動できる道路を抽出し、前記抽出された道路の安全性を、前記安全性に関するデータに基づいて評価し、前記評価結果に基づき、前記抽出された道路の安全性を比較する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、任意の地点間の道路の安全性を、予め記憶された安全性に関するデータに基づいて評価するので、災害発生時における道路の安全性を適切に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0017】
図1には、本発明にかかるルートシミュレーション装置の一実施形態を表す構成のブロック図が示される。図1において、ルートシミュレーション装置10は、始終点取得部12、移動ルート抽出部14、安全性評価部16、安全データ設定部18、比較部20、表示制御部22、通信部24、記憶部26、操作部28及び表示部30を含んで構成されている。また、ルートシミュレーション装置10は、インターネット等のネットワーク32を介してパーソナルコンピュータ等の端末34と接続されているのが好適である。
【0018】
始終点取得部12は、操作者が後述する操作部28から入力した所望の出発地を移動の始点とし、所望の目的地を移動の終点として認識する処理を行う。なお、通信インフラが正常に機能しているときであれば、上記出発地及び目的地は、操作者が端末34から入力したデータを、ネットワーク32及び通信部24を介して始終点取得部12が受け取るように構成してもよい。
【0019】
移動ルート抽出部14は、始終点取得部12が認識した始点、終点間を移動できる道路を、当該始点、終点を含む地図情報の中から抽出する。この地図情報は、後述する記憶部26に予め記憶しておく。なお、通信インフラが正常に機能しているときであれば、通信部24により他のサーバから取得するように構成してもよい。
【0020】
安全性評価部16は、移動ルート抽出部14によって抽出された道路の安全性を、予め設定されている道路の安全性に関するデータに基づいて評価する。
【0021】
安全データ設定部18は、上記道路の安全性に関するデータを設定する。このデータの設定は、例えば、地方自治体等が都道府県市町村の行政区画として決められている町丁目または500mや1km四方などに区画されたメッシュ毎に設定した災害発生時の危険度情報に基づき、各区画の危険度を当該区画を通過する道路の危険度として設定することにより行う。設定された道路の危険度は、道路の安全性に関するデータとして記憶部26に記憶される。なお、道路の危険度の設定方法の詳細は後述する。
【0022】
比較部20は、安全性評価部16の評価結果に基づき、移動ルート抽出部14が抽出した道路の安全性を比較する。この結果、任意の始点、終点間を移動できる道路が複数ある場合、これらを安全性の高い順(危険性の低い順)に並べ、表示部30に表示することができる。なお、通信インフラが正常に機能しているときであれば、通信部24からネットワーク32を介して各端末34に送信してもよい。
【0023】
表示制御部22は、表示部30に表示される内容を制御する。
【0024】
通信部24は、公知の方法によりネットワーク32を介した通信を行い、データをやり取りする。
【0025】
記憶部26は、例えばCPUの作業用のRAM、不揮発性メモリとしてのフラッシュメモリ、磁気記憶媒体等で構成されており、上述した地図情報、道路の安全性に関するデータ等の各種データ及びプログラムが記憶される。
【0026】
操作部28は、例えばキーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等のデータ入力手段により構成される。
【0027】
表示部30は、例えば液晶ディスプレイ、CRT等により構成され、文字データ、数値データ、地図情報等を表示する。
【0028】
なお、上述したルートシミュレーション装置10は、CPUを中心として構成されたコンピュータであってよく、この場合、磁気記憶装置その他の媒体に格納されたプログラムをCPUが実行することでルートシミュレーション装置10の各機能が実現される。
【0029】
図2には、上記安全データ設定部18が行う道路の危険度の設定方法の説明図が示される。図2において、道路36が通過するエリア38は各区画40毎に分割され、それぞれの区画40毎に、災害発生時の危険度情報が設定されている。この危険度情報は、例えば東京都その他の地方自治体が災害時のシミュレーションを実施し、決定したデータであって、例えば危険度を総合的に評価した数値等で表される(例えば、東京都が策定した総合危険度等)。図2の例では、危険度が5段階で表され、1が最も危険度が低く、5が最も危険度が高いことを意味している。この危険度情報は、予め記憶部26に記憶してもよいし、通信インフラが正常に機能していれば、各地方自治体の運用するサーバからネットワーク32及び通信部24を介して取得するように構成してもよい。
【0030】
図2の例において、道路36は、エリア38中を、a点からb点、c点、d点を通過し、f点まで到達する。安全データ設定部18は、道路36の両側の区画40の危険度を取得し、両側の危険度が一致する場合は、その危険度を道路の危険度とする。例えばa点からb点及びb点からc点までの区間では、道路の両側の危険度が1であるので、a点からc点までの区間の道路の危険度を1に設定する。また、d点からf点までの区間の道路の危険度は3に設定する。
【0031】
次に、道路36の両側の区画40の危険度が異なる場合は、より高い方の危険度を道路の危険度として採用する。例えば、c点からd点の区間では、図の上側の区画40の危険度が3であり、図の下側の区画40の危険度が2となっているが、この区間の道路の危険度は3に設定する。これにより、道路の危険度のシミュレーションを実行する場合に、より高い危険度が提示されることになり、操作者により高い注意を喚起することができる。
【0032】
なお、安全データ設定部18は、道路近傍に存在する施設に基づいて上記道路の安全性に関するデータを変更するように構成してもよい。例えば、道路近傍に避難場所、コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、役所、給水拠点、災害拠点病院等が存在するときは、道路の危険度を表す数値を区画40の危険度より所定程度低く設定する。また、例えば東京都が指定している帰宅支援道路及び緊急輸送道路等の災害時の輸送を特別に担うものとして指定されている道路は、最も低い危険度を設定する。
【0033】
以上のようにして設定した道路の危険度は、安全データ設定部18が記憶部26に記憶させる。この場合の記憶部26が本発明の安全データ記憶手段に相当する。
【0034】
図3には、本実施形態にかかるルートシミュレーション装置10の動作例のフローが示される。図3において、操作者が操作部28から所望の出発地、目的地を入力すると、始終点取得部12が出発地を移動の始点、目的地を移動の終点として認識する(S1)。
【0035】
次に、移動ルート抽出部14が、上記始点、終点間を移動できる道路(移動ルート)を、当該始点、終点を含む地図情報の中から抽出する(S2)。この移動ルートは、上記始点、終点間を移動できれば1つとは限らず、複数であってもよい。ただし、幅員が小さい道路は、災害時の避難経路として適切ではない場合が多いので、所定幅員以下の道路を評価対象から除外するように構成してもよい。
【0036】
安全性評価部16は、上記移動ルート抽出部14によって抽出された道路の安全性を、記憶部26に記憶された道路の安全性に関するデータに基づいて評価する(S3)。この評価は、例えば、図2の説明において述べた道路の危険度を表す数値を、上記始点、終点間で積算あるいは合算することにより行うことができる。
【0037】
次に、比較部20は、安全性評価部16の評価結果である危険度の積算値または合算値に基づき、移動ルート抽出部14が抽出した道路の安全性を比較する(S4)。表示制御部22は、この評価結果に基づき、危険度の積算値または合算値が少ない順すなわち安全性が高い順が分かるように各道路を表示部30に表示する(S5)。また、始点・終点間の距離や所要時間を合わせて表示したり、安全性や距離、所要時間の各々をキーとしてソートし表示するようにしてもよい。これにより、操作者が指定した所望の始点、終点間を移動する場合に、どのルートが相対的にどの程度安全かを把握するためのシミュレーションを行うことができる。
【0038】
なお、表示部30には、上記シミュレーション結果を表示する際に、最も安全なルートを他の道路の色と変えて表示するのが好適である。
【0039】
また、表示部30には、上記安全性を評価した道路を含む航空写真を表示するウィンドウを設けるのが好適である。これにより、災害時の避難ルートの把握をより容易に行うことができる。
【0040】
なお、以上に述べた実施形態においては、災害発生時を例として説明したが、これに限られるものではない。例えば、交通事故発生率が高い地域や犯罪多発地域に関する情報を取得し、この情報を災害発生時における上記実施例と同様に処理して道路の危険度に反映させ、平時の安全ルートシミュレーションを行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかるルートシミュレーション装置の一実施形態を表す構成のブロック図である。
【図2】図1に示された安全データ設定部が行う道路の危険度の設定方法の説明図である。
【図3】本発明にかかるルートシミュレーション装置の動作例のフロー図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ルートシミュレーション装置、12 始終点取得部、14 移動ルート抽出部、16 安全性評価部、18 安全データ設定部、20 比較部、22 表示制御部、24 通信部、26 記憶部、28 操作部、30 表示部、32 ネットワーク、34 端末、36 道路、38 エリア、40 区画。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の地点間の道路の安全性を評価するためのシミュレーションを行うルートシミュレーション装置であって、
道路の安全性に関するデータを記憶する安全データ記憶手段と、
始点、終点の入力を受け付ける始終点取得手段と、
前記始点、終点間を移動できる道路を抽出する移動ルート抽出手段と、
前記抽出された道路の安全性を、前記安全データ記憶手段に記憶された安全性に関するデータに基づいて評価する安全性評価手段と、
前記評価結果に基づき、前記抽出された道路の安全性を比較する比較手段と、
を備えることを特徴とするルートシミュレーション装置。
【請求項2】
請求項1記載のルートシミュレーション装置は、道路が通過する区画毎に設定された危険度情報に基づき前記道路の安全性に関するデータを設定する安全データ設定手段をさらに備えることを特徴とするルートシミュレーション装置。
【請求項3】
請求項2記載のルートシミュレーション装置において、前記安全データ設定手段は、道路の両側における前記危険度情報が異なる場合に、より高い危険度情報を採用することを特徴とするルートシミュレーション装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載のルートシミュレーション装置において、前記安全データ設定手段は、道路近傍に存在する施設に基づいて前記道路の安全性に関するデータを変更することを特徴とするルートシミュレーション装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項記載のルートシミュレーション装置において、前記移動ルート抽出手段は、所定幅員以下の道路を評価対象から除外することを特徴とするルートシミュレーション装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項記載のルートシミュレーション装置は、安全性を評価した道路の航空写真を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とするルートシミュレーション装置。
【請求項7】
任意の地点間の道路の安全性を評価するためのシミュレーションを行うルートシミュレーション方法であって、
道路の安全性に関するデータを記憶するステップと、
始点、終点の入力を受け付けるステップと、
前記始点、終点間を移動できる道路を抽出するステップと、
前記抽出された道路の安全性を、前記安全性に関するデータに基づいて評価するステップと、
前記評価結果に基づき、前記抽出された道路の安全性を比較するステップと、
を備えることを特徴とするルートシミュレーション方法。
【請求項8】
任意の地点間の道路の安全性を評価するためのシミュレーションを行うルートシミュレーションプログラムであって、
道路の安全性に関するデータを記憶し、
始点、終点の入力を受け付け、
前記始点、終点間を移動できる道路を抽出し、
前記抽出された道路の安全性を、前記安全性に関するデータに基づいて評価し、
前記評価結果に基づき、前記抽出された道路の安全性を比較する処理をコンピュータに実行させることを特徴とするルートシミュレーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−40907(P2007−40907A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227287(P2005−227287)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】