説明

レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜形成方法、及びパターン形成方法

【課題】リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、基板の段差埋め込み性に優れ、耐溶媒性を有し、基板のエッチング中によれの発生がないだけでなく、エッチング後のパターンラフネスが良好なレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成用組成物、及びこれを用いたレジスト下層膜形成方法、パターン形成方法。
【解決手段】少なくとも、フルオレン骨格を有するビスナフトール化合物の酸触媒縮合樹脂(A)、フルオレン骨格を有するビスナフトール化合物(B)、フラーレン化合物(C)及び有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト下層膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト法における下層膜材料、これを用いたレジスト下層膜形成方法、及びこれを用いた遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fレーザー光(157nm)、Krレーザー光(146nm)、Arレーザー光(126nm)、軟X線(EUV、13.5nm)、電子線(EB)、X線等の露光に好適なパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなレジスト機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとしてレジスト組成物を塗布した被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまう。このため微細化に伴いフォトレジスト膜厚は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常パターン形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法がないため、基板を加工中にレジスト膜もダメージを受け、基板加工中にレジスト膜が崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなる。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。
【0005】
また、露光波長の短波長化によりフォトレジスト組成物に使用する樹脂は、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められたため、i線、KrF、ArFへの変化に対し、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきているが、現実的には上記ドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が低くなる傾向がある。
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜、即ちレジスト上層膜とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つである2層レジスト法では、例えば、上層レジスト組成物にケイ素を含有する樹脂を使用し、下層膜として炭素含有量が高い有機樹脂、例えばノボラック樹脂を使用する方法である。ケイ素樹脂は、酸素プラズマによる反応性ドライエッチングに対してはよいエッチング耐性を示すが、フッ素系ガスプラズマを用いると容易にエッチング除去される。一方、ノボラック樹脂は酸素ガスプラズマによる反応性ドライエッチングでは容易にエッチング除去されるが、フッ素系ガスプラズマや塩素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては良好なエッチング耐性を示す。そこで、被加工基板上にノボラック樹脂膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有樹脂を用いたレジスト上層膜を形成する。続いて、ケイ素含有レジスト膜にエネルギー線の照射及び現像等の後処理によりパターン形成を行い、それをドライエッチングマスクとして酸素プラズマによる反応性ドライエッチングでレジストパターンが除去されている部分のノボラック樹脂をドライエッチング除去することでノボラック膜にパターンを転写し、このノボラック膜に転写されたパターンをドライエッチングマスクとして、被加工基板にフッ素系ガスプラズマや塩素系ガスプラズマによるエッチングを用いてパターン転写をすることができる。
【0008】
このようなドライエッチングによるパターン転写は、エッチングマスクのエッチング耐性が十分である場合、比較的良好な形状で転写パターンが得られるため、レジスト現像時の現像液による摩擦等を原因としたパターン倒れのような問題が起き難く、比較的高いアスペクト比のパターンを得ることができる。従って、例えばノボラック樹脂を用いたレジスト膜を中間膜の膜厚に相当する厚さにした場合には、アスペクト比の問題から現像時のパターン倒れ等により直接形成できなかったような微細パターンに対しても、上記の2層レジスト法によれば、被加工基板のドライエッチングマスクとして十分な厚さのノボラック樹脂パターンが得られるようになる。
【0009】
更に多層レジスト法として、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。例えば、被加工基板上にノボラック等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジストパターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることでケイ素含有レジスト中間膜に転写される。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンは形成することが難しいレジスト組成物や、基板を加工するためにはドライエッチング耐性が十分でないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜にパターンを転写することができれば、2層レジスト法と同様に、加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック膜のパターンを得ることができる。
【0010】
上述のような有機下層膜はすでに多数の技術が公知(例えば特許文献1等)となっているが、加工線幅の縮小に伴い、レジスト下層膜をマスクに被加工基板をエッチングするときにレジスト下層膜がよれたり曲がったりする現象が起きる事が問題になってきた(非特許文献1)。フルオロカーボン系のガスによる基板エッチング中に、レジスト下層膜の水素原子がフッ素原子で置換される現象が示されており、これにより下層膜の体積増加により膨潤したり、ガラス転移点が低下することによって微細なパターンのよれが生じるものと考えられている(非特許文献2)。また、この問題は水素原子含有率の低い有機材料をレジスト下層膜に用いることによってよれが防止できることが示されている。CVDで作成したアモルファスカーボン膜は、膜中の水素原子を極めて少なくすることが出来、よれ防止には非常に有効である。しかしながら、CVDは被加工基板上にある段差の埋め込み特性が悪く、またCVD装置の価格と装置フットプリント面積の占有により導入が困難な場合がある。コーティング、特にスピンコート法で製膜可能なレジスト下層膜材料でよれの問題を解決することが出来れば、プロセスと装置の簡略化のメリットは大きい。
【0011】
上述のような水素原子含有率が低く塗布成膜可能な成膜材料としては、極めて炭素比率の高いフラーレン誘導体を含む膜がよれ防止としてこれまで提案されている。例えば極めて初期的にはフラーレンそのもので膜を形成(特許文献2)する方法が提案されたが、その後、フラーレン誘導体を有機樹脂に分散させて硬化するもの(特許文献3、4)や、フラーレン誘導体を成膜硬化する方法(特許文献5)等が提案されている。
しかしながら、フラーレン自体の性質として、可視−近赤外光領域における吸収を有している。そのため、フラーレン及び/又はフラーレン誘導体を高濃度に含有する塗布膜では、露光プロセスの位置合わせに使用しているアライメントマークを見失い、アライメント精度が低下する場合がある。更に、これを防止するため、フラーレン及び/又はフラーレン誘導体と従来知られている当該波長領域における光吸収の少ない樹脂からなる組成物から形成される下層膜をエッチング加工した場合、パターンのよれを防止できても出来上がりのパターンの表面ラフネスが大きなものは配線の断線確率の上昇や寄生容量の劣化などの問題があるため実用的ではない。そのため、線幅が40nm以下の超微細配線を形成するためのレジスト下層膜形成用組成物は分子レベルでの材料制御が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−205685号公報
【特許文献2】特開平6−61138号公報
【特許文献3】特開2004−264710号公報
【特許文献4】特開2006−227391号公報
【特許文献5】WO2008/62888号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Proc.of Symp.Dry.Process, (2005) p11
【非特許文献2】Proc. Of SPIE Vol.6923、69232O、(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、基板の段差埋め込み性に優れ、耐溶媒性を有し、基板のエッチング中によれが発生することを防止できるだけでなく、露光時の位置合わせに影響を与えず、エッチング後のパターンラフネスが良好なレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成用組成物、及びこれを用いたレジスト下層膜形成方法、パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明によれば、少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物と下記一般式(2)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られる樹脂(A)、下記一般式(1)で示される化合物(B)、フラーレン化合物(C)及び有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト下層膜形成用組成物を提供する。
【化1】

(一般式(1)中、R、R、R、Rは、同一又は異種の水素原子及び炭素数6〜22の炭化水素基のいずれかであり、炭化水素基は酸素又はヒドロキシル基を含んでも良い。R、Rは、ベンゼン環、及びナフタレン環のいずれかである。1≦m1+m2≦2、1≦m3+m4≦2であり、n1、n2はそれぞれ0又は1である。)

−CHO (2)
(一般式(2)中、Rは、水素原子、飽和若しくは不飽和の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基、及び炭素数6〜20の芳香族炭化水素基のいずれかであり、エーテル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、クロル基を含んでも良い。)
【0016】
このように、少なくとも、上記一般式(1)で示される化合物と上記一般式(2)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られる樹脂(A)、上記一般式(1)で示される化合物(B)、フラーレン化合物(C)及び有機溶剤を含有するレジスト下層膜形成用組成物であれば、エッチング後のよれ防止に効果的なフラーレン化合物(C)に加え、レジスト下層膜形成時に樹脂(A)と化合物(B)が酸化カップリング反応を起こし、脱水素しながら硬化するため、反応により水素原子を減らすことが可能となり、エッチング後のよれを防止することができる。また、十分に硬化されたレジスト下層膜を得ることができるため、次工程で形成された下層膜上に適用される塗布液に対して耐性を示すことができ、良好な性能を示すレジスト下層膜を形成することができる。
更に、化合物(B)が硬化剤として作用し、この硬化剤(B)が樹脂(A)中の繰り返し単位と同一又は類似の構造を有する化合物であるため、出来上がった膜内の組成の不均一性を無くし、パターンラフネスの小さなパターンを得ることが出来る。また、このような本発明のレジスト下層膜形成用組成物は塗布成膜が可能であり、また、モノマー成分である化合物(B)を含むため、埋め込み特性が良好である。
このように本発明の、樹脂(A)、化合物(B)及びフラーレン化合物(C)を含有するレジスト下層膜形成用組成物から形成されたレジスト下層膜は、エッチング後のよれが少ないだけでなく、出来上がったパターンのラフネスが小さいため、特に40nm以下の線幅の超微細なパターン形成用下層膜として有望である。
【0017】
また、前記一般式(1)で示される化合物が、n1=n2=1であることが好ましく、特に、下記一般式(3)で示される化合物であることが好ましい。
【0018】
【化2】

(一般式(3)中、R、R、R、R、R、Rは、前記と同様である。m1、m3はそれぞれ0又は1である。)
【0019】
上記本発明のレジスト下層膜形成用組成物の樹脂(A)を得るための一般式(1)で示される化合物や、硬化剤として用いる一般式(1)で示される化合物(B)がn1=n2=1である化合物、特に上記一般式(3)で示される化合物であれば、ビスナフトール構造がフラーレン化合物(C)とほぼ同等のフルオロカーボン系ガスによるエッチング耐性を有するため、被加工基板をエッチングする際のエッチング条件において、フラーレン化合物を導入したことによるエッチング加工時のパターンよれ防止の効果だけでなく、エッチング加工時におけるレジスト下層膜内の構造不均一性が起因すると予想されるエッチング加工後のパターンラフネス悪化を最小限に抑制し、よりパターンラフネスが小さい、良好なパターンが形成された基板を得ることが可能となる。
【0020】
また、前記一般式(2)で示される化合物が、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、及び2−ナフチルアルデヒドから選ばれる少なくとも1種のアルデヒド化合物であることが好ましい。
【0021】
前記一般式(2)としてホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、及び2−ナフチルアルデヒドから選ばれる少なくとも1種のアルデヒド化合物を用いると、前記一般式(1)で示される化合物の溶剤溶解性が良好となるため、特殊な溶剤を使用することなくレジスト下層膜形成用組成物を作ることが可能となる。
【0022】
また、本発明は、リソグラフィーで用いられるレジスト下層膜の形成方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜形成用組成物をスピンコートし、その後酸化性ガス濃度が0.1%以上21%以下の酸化性ガス雰囲気中で焼成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法を提供する。また、前記酸化性ガスが酸素であることが好ましい。
【0023】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、空気中で焼成することにより、樹脂(A)と化合物(B)が酸化的カップリング反応を起こし、脱水素しながら硬化する。この酸化的カップリング反応は、従来、遷移金属触媒を使用して重合物を製造する方法として知られているが(例えば、特開2008−065081など)、下層膜を形成する際にこの反応で硬化させることの出来る化合物は知られていなかった。
本発明のレジスト下層膜形成用組成物を基板上にスピンコートし、その後酸化性ガス濃度が0.1%以上21%以下の酸化性ガス雰囲気中で焼成すると、従来、酸化カップリング反応に使用されてきた遷移金属触媒を使用せずとも酸化的カップリング反応が発生し、塗布膜を硬化させることができる。
【0024】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記レジスト下層膜形成方法によりレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間膜をエッチングし、得られたレジスト中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0025】
このような3層レジスト法を用いたパターン形成方法であれば、基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0026】
また、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記レジスト下層膜形成方法によりレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0027】
このようにレジスト下層膜の上にレジスト中間層膜として無機ハードマスクを形成する際、本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いると、無機ハードマスク中間膜形成時の高温処理にも耐えうる高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成できる。
【0028】
また、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記レジスト下層膜形成方法によりレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0029】
このように、無機ハードマスク中間膜とレジスト上層膜の間に有機反射防止膜を形成することができる。
【0030】
また、前記無機ハードマスク中間膜は、CVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0031】
このように、無機ハードマスク中間膜をCVD法あるいはALD法により形成することにより、エッチング耐性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いれば、基板の段差埋め込み性に優れ、耐溶媒性を有し、40nm以下のパターンを形成する際にパターンのよれが防止されるだけでなく、ラフネスが小さい良好なパターンを得ることができるため、例えば、ケイ素含有2層レジスト法、あるいはケイ素含有中間層膜による3層レジスト法といった多層レジスト法用のレジスト下層膜として有望である。特にフラーレン化合物に対してエッチング特性を最適化した樹脂を使用することで、パターンラフネス悪化をより確実に最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】3層レジスト法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、従来、水素原子含有率が低く塗布成膜可能な成膜材料としては、極めて炭素比率の高いフラーレン誘導体を含む膜がよれ防止に効果的であるとしてこれまで提案されている。しかしながら、パターンのよれを防止できても出来上がりのパターンの表面ラフネスが大きなものは配線の断線確率の上昇や寄生容量の劣化などの問題があるため実用的ではなく、微細の、特に線幅が40nm以下の超微細配線を形成するためのレジスト下層膜形成用組成物の分子レベルでの材料制御が求められていた。
【0035】
本発明者らは、上記目的を達成するため以下の検討を行った。
従来、前述のようにフラーレン含有下層膜材料がいくつか提案されてきた。これらに関して、所謂、樹脂とフィラーの関係でフラーレンを樹脂の補強材料として作用させる場合と、フラーレンを主成分として下層膜を形成する場合の2つに大別することが出来る。
【0036】
フラーレンを主成分として下層膜形成用組成物を形成する場合、フラーレン同士の結合が形成されないと溶剤耐性を得ることが出来にくく、次の工程で下層膜上に使用される塗布材料により下層膜がダメージを受けてしまう懸念がある。この時、フラーレン化合物同士を硬化させるため、一般的に知られているジイソシアナート類、エポキシ類、ベンゾグアナミン類、メラミン類、グリコールウリル類等が硬化剤として使用される。しかしながらこのような化合物を使用すると、硬化後の膜内にフラーレン部分と硬化剤部分の分布が発生してしまう。特に、エッチングパターンの線幅が40nm以下の領域では、フラーレン化合物と硬化剤のエッチング性能の違いにより、エッチング後のパターンラフネスに悪影響を与える懸念がある。また、フラーレンだけでは可視光から近赤外領域における吸収があるため、実際の半導体製造プロセスにおいては、ウエハーの位置合わせや塗布膜厚の管理などに不具合があるため実質的に使用不可能である。
【0037】
一方、樹脂とフラーレンを含有するレジスト下層膜形成用組成物において使用される樹脂はエッチング耐性の高い樹脂の使用が好ましいとされる。一般にこのような樹脂成分を硬化させるための硬化剤として上記と同様にジイソシアナート類、エポキシ類、ベンゾグアナミン類、メラミン類、グリコールウリル類が使用されているが、この様な成分は一般的にエッチング耐性の高い樹脂成分に比べてエッチング耐性が劣る。そのため、出来上がった膜中に上記と同様にエッチング耐性の異なる部分が生じ、エッチング後のパターンラフネスに悪影響を与えると予想される。また、上記と同様に、フラーレン部分と硬化剤部分のエッチング耐性の違いもパターンラフネスの悪化に繋がると類推される。
【0038】
これに対して、本発明者らは、少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物と下記一般式(2)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られる樹脂(A)、下記一般式(1)で示される化合物(B)、フラーレン化合物(C)及び有機溶剤を含有するレジスト下層膜形成用組成物を用いれば、基板の段差埋め込み性に優れ、耐溶媒性を有し、基板のエッチング中によれが発生するのを抑制できるだけでなく、エッチング後のパターンラフネスが良好となるレジスト下層膜を得ることができることを見出した。
【化3】

(一般式(1)中、R、R、R、Rは、同一又は異種の水素原子及び炭素数6〜22の炭化水素基のいずれかであり、炭化水素基は酸素又はヒドロキシル基を含んでも良い。R、Rは、ベンゼン環、及びナフタレン環のいずれかである。1≦m1+m2≦2、1≦m3+m4≦2であり、n1、n2はそれぞれ0又は1である。)

−CHO (2)
(一般式(2)中、Rは、水素原子、飽和若しくは不飽和の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基、及び炭素数6〜20の芳香族炭化水素基のいずれかであり、エーテル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、クロル基を含んでも良い。)
【0039】
即ち、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、水素原子含有率が低く極めて炭素比率の高いフラーレン化合物(C)に加え、さらに、上記樹脂(A)及び化合物(B)を含むものである。樹脂(A)及び硬化剤として用いる化合物(B)が酸化的カップリング反応を起こし、脱水素しながら硬化することで、レジスト下層膜成膜後の膜内の水素原子が少なくなる。一般に下層膜のエッチングのよれ防止に対する必要用件として、成膜後の膜内の水素原子が少ないものが好ましいと言われており(Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 46, No. 7A, 4286−4288(2007)等)、このように、酸化的カップリング反応から得られる下層膜は、反応により水素原子を減らすことが可能となり、エッチング後のよれが少なく良好な性質となる。また、次工程で適用される塗布液に対して耐性を示すことが出来る。更に、樹脂(A)の前駆体である化合物と同じ又は類似の構造を有する化合物(B)を硬化剤として使用することで、膜内における分子レベルでの成分の不均一性が前述した従来使用されていた硬化剤に比べて圧倒的に少なく、エッチング後のパターンラフネスを良化することが可能であることに想到した。
【0040】
以下、本発明について、さらに詳しく説明する。
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、上記一般式(1)で示される化合物と上記一般式(2)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られる樹脂(A)を含む。
ここで、一般式(1)に示される化合物としては、具体的には下記に例示される。
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
レジスト下層膜上にCVD等でケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素窒化酸化膜等の無機ハードマスク中間膜を形成する場合、特に窒化膜系の膜に於いては300℃を超える高温が必要であり、レジスト下層膜としても高耐熱性が要求される。
上記(1)で示される化合物は4級炭素のカルド構造を有し、これによって非常に高い耐熱性を有するため、レジスト下層膜として好適である。
【0045】
また、上記に例示した一般式(1)に示される化合物の中でも、n1=n2=1の化合物が好ましく、特に、下記一般式(3)で示される化合物であることが好ましい。
【化8】

(一般式(3)中、R、R、R、R、R、Rは、前記と同様である。m1、m3はそれぞれ0又は1である。)
【0046】
上記本発明のレジスト下層膜形成用組成物の樹脂(A)を得るための一般式(1)で示される化合物や、硬化剤として用いる一般式(1)で示される化合物(B)がn1=n2=1である化合物、特に上記一般式(3)式で示される化合物であれば、ビスナフトール構造がフラーレン化合物(C)とほぼ同等のフルオロカーボン系ガスによるエッチング耐性を有するため、基板エッチングする際のエッチング条件において、フラーレン化合物を導入したことによるエッチング加工時のパターンよれ防止の効果だけでなく、エッチング加工時における下層膜内の構造不均一性から来ると予想されるエッチング加工後のパターンラフネス悪化を最小限に抑制し、パターンラフネスの小さな基板を作ることが可能となる。
【0047】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は(A)として、上記一般式(1)で示される化合物と上記一般式(2)で示されるアルデヒド類との縮合反応によって得られる樹脂を用いる。ここで用いられる一般式(2)で示されるアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、1−ナフタアルデヒド、2−ナフタアルデヒド、フルフラール等を挙げることができる。特に好ましいのは、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、2−ナフチルアルデヒドである。
【0048】
これらのうち、特にホルムアルデヒドを好適に用いることができる。また、これらのアルデヒド類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記アルデヒド類の使用量は、上記一般式(1)式で示される化合物1モルに対して0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0049】
ホルムアルデヒドの供給形態としては、一般的に使用されるホルムアルデヒド水溶液の他に、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアルデヒドジメチルアセタール等のアセタール類など、重縮合反応中にホルムアルデヒドと同じ反応性を示すものであれば、どのような化合物であっても使用することができる。
【0050】
また、樹脂(A)は、一般式(1)で示される化合物と一般式(2)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られるが、ここで、酸触媒は、具体的には塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を挙げることができる。これらの酸触媒の使用量は、一般式(1)で示される化合物1モルに対して1×10−5〜5×10−1モルが好ましい。
【0051】
重縮合における反応溶媒として水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合溶媒等を用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0〜2,000質量部の範囲であることが好ましい。
【0052】
反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、通常10〜200℃の範囲である。
【0053】
重縮合の方法としては、一般式(1)で示される化合物、一般式(2)で示される化合物、酸触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下に一般式(1)で示される化合物、一般式(2)で示される化合物を滴下していく方法がある。重縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、酸触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去することができる。
【0054】
上記一般式(1)で示される化合物は単独で重合してもよいが、他の一般式(1)で示される化合物と組み合わせて2種類以上を用いることもできる。
【0055】
一般式(1)で示される化合物と一般式(2)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られる樹脂(A)のポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜30,000、特に1,500〜20,000であることが好ましい。分子量分布は1.2〜7の範囲内が好ましく用いられる。
【0056】
次に、樹脂(A)のヒドロキシ基のオルソ位に縮合芳香族、あるいは脂環族の置換基を導入することができる。
ここで導入可能な置換基は、具体的には下記に挙げることができる。
【化9】

【0057】
これらの中でナフタレン環やアントラセン環、ピレン環はエッチング耐性が向上する効果があり、好ましく用いられる。
【0058】
置換基の導入方法としては、上記置換基の結合位置がヒドロキシ基になっているアルコールを、重合後の樹脂中の一般式(1)で示される化合物構造のヒドロキシ基のオルソ位又はパラ位に酸触媒存在下で導入する方法が挙げられる。酸触媒は、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を用いることができる。これらの酸性触媒の使用量は、樹脂(A)を得るために用いる一般式(1)で示される化合物1モルに対して1×10−5〜5×10−1モルが好ましく、また、置換基の導入量は、一般式(1)で示される化合物のヒドロキシ基1モルに対して0〜0.8モルの範囲であることが好ましい。
【0059】
更に、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、一般式(1)で示される化合物(B)を、硬化剤として含む。
上記に説明したように、従来、樹脂成分を硬化させるための硬化剤として、ジイソシアナート類、エポキシ類、ベンゾグアナミン類、メラミン類、グリコールウリル類等が使用されてきたが、これらの成分は樹脂成分に比べてエッチング耐性が劣り、エッチング後のパターンラフネスに悪影響を与えるという問題があった。
本発明のレジスト下層膜形成用組成物のように、一般式(1)で示される化合物(B)を硬化剤とすることで、硬化剤(B)が樹脂(A)中の繰り返し単位と同じ又は類似の構造を有するため、膜内の組成の不均一性を改善することができ、パターンラフネスの悪化を抑制することができる。
【0060】
化合物(B)として、特に好ましいのは樹脂(A)を製造する際に使用される化合物(1)と同じ構造のものが好ましい。同じ構造のもの(樹脂(A)の前駆体と同じ構造のもの)を硬化剤として使用することで、膜内における化合物の分布を分子レベルでコントロールすることが出来、エッチング後のパターンラフネス悪化を抑制できる。
【0061】
本発明で使用できるフラーレン化合物(C)について以下に説明する。
「フラーレン」とは、炭素原子が球状又はラグビーボール状に配置して形成される閉殻状の炭素クラスターを意味する。その炭素数は通常60以上、120以下である。具体例としては、C60、C70、C76、C82、C84、C90等が挙げられる。以下に、フラーレンC60のフラーレン骨格を示す。なお、下記式中においては、単結合と2重結合とを区別せず、ともに実線または破線で示した。
【化10】

【0062】
本発明のフラーレン化合物(C)は、このようなC60、C70、C76、C82、C84、C90あるいはこれらの誘導体等をあげることが出来る。これらのフラーレン類は市販のものを使用することが出来る。本発明のフラーレン化合物(C)としては、C60および/またはC70あるいはこれらの誘導体を好ましく使用することが出来る。
【0063】
本発明のフラーレン化合物(C)として、フラーレン骨格に置換基が導入されたものを使用することが出来る。このフラーレン化合物(C)としては、既知の化合物でよく、例えば、以下に示される化合物を例示できる。尚、下記一般式中、
【化11】

は、フラーレン骨格を示し、前述したようにC60、C70、C76、C82、C84、C90等が挙げられる。
【0064】
【化12】

(F.Diederich, L.Isaacs, and D.Philip,Chem.Soc.Rev.,1994,243.
Z.Li, K.H.Boouhardir, and P.B.Shevlin, Tetrahedron Lett.,37,4651(1996)等参照)
【0065】
【化13】

(A.Hirsch, T.Groser, A.Skiebe, and A.Soi,Chem.Ber.,126,1061(1993)
M.Sawamura, H.Iikura, and E.Nakamura, J.Am.Chem.Soc.,118,12850(1996)等参照)
【0066】
【化14】

(M.Prato, M.Maggini, C.Giacometti, G.Scorrano, G.Sandona, and G.Farnia, Tetrahedron,52,5221(1996)
X.Zhang, M.Willems, and C.S.Foote,Tetrahedron Lett.,34,8187(1993)等参照)
【0067】
【化15】

(K.−D.Kampe, N.Egger, and M.Vogel, Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,32,1174(1993)等参照)
【0068】
【化16】

(A.Skiebe, A.Hirsch, H.Klos, and B.Gotschy, Chem Phys. Lett.,220,138(1994)
A.Hirsch, Q.Li, and F.Wudl, Angew.Chem. Int.Ed.Engl.,30,1309(1991)等参照)
【0069】
【化17】

(G.Schick, K.D.Kampe, and A.Hirsch, J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1995,2023等参照)
【0070】
上記一般式中、R11〜R22としては、特に制限されるものではなく、上記一般式中それぞれ独立に、同一又は異種の、炭素数1〜15の飽和または不飽和の鎖状または環状の炭化水素基であり、チオエーテル基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基を含んでも良く、この炭化水素基の水素原子が窒素含有基や酸素含有基で置換されていてもよい。r1〜r7は、各置換基の付加数を示す。
【0071】
上記のような反応だけでなく、フラーレン類の修飾反応は数多く知られており、総説として、季刊化学総説43“炭素第三の同素体、フラーレンの化学”、日本化学会編、学会出版センター(1999)で開示されており、上記に示すフラーレン化合物以外も本発明のフラーレン化合物(C)として用いることができる。
【0072】
また、本発明のレジスト下層膜形成用組成物では、フラーレン上に導入される置換基部分の重量とフラーレン骨格を形成する重量が特定の関係にあると、本発明の樹脂(A)と化合物(B)の混合物に対して分散性が良好である。
【0073】
即ち、下記フラーレン化合物において、
【化18】

(Rは置換基、rは置換基Rの付加数を表す。)
フラーレン骨格の式量をWfとし、置換基Rの式量をWrとし、本発明のレジスト下層膜形成用組成物中における分散性が良好なフラーレン化合物は
0.5×Wf≦Wr×r≦Wf×3
である。
ここで、r=1では、例えフラーレン化合物が溶液中に溶解したように見えても、時間経過とともに凝集する可能性があるため、rとしては、r≧2が好ましい。フラーレン化合物はその性質上、rが単一のものを製造することは困難であるため、実際にはrは分布を持った混合物を得ることになるが、本発明の場合は組成物中での分散性能からr=1の化合物を含まない混合物がより好ましい。
【0074】
このように分散性の良いフラーレン化合物であると、局所的に凝集したフラーレン化合物の影響でエッチングが均等に進行しない恐れがなく、エッチング後のパターンラフネスをより良好にすることができる。また、塗布装置に接続中に分離する恐れがないため、好ましい。
【0075】
また、フラーレン化合物(C)の配合量Wcは、樹脂(A)の質量Waと化合物(B)の質量Wbに対して、
0.2×(Wa+Wb)≦Wc≦5×(Wa+Wb)
が好ましい。フラーレン化合物の配合量Wcが、樹脂(A)と化合物(B)の質量に対して、0.2部以上であると、フラーレン化合物が有する耐エッチング性能を十分に発揮することができ、5部以下であると、露光時にアライメントを見失うことが無いだけでなく、塗布膜の均一性の劣化や塗布膜でのクラックなどが生ずる恐れがないために好ましい。
【0076】
本発明では、フラーレン化合物(C)を組成物中に均一に分散させることが好ましい。フラーレン化合物(C)を分散させる方法としては、フラーレン化合物(C)と溶剤を混合した後、超音波を照射後20nm以下のフィルターでろ過して、又は溶剤の沸点でかき混ぜた後同様にろ過して、凝集物を除去する方法などを例示できる。得られた溶液に樹脂(A)と化合物(B)を混合して、更に超音波を照射して分子レベルでの均一化を施すことも可能である。
【0077】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物において使用可能な有機溶剤としては、樹脂(A)、化合物(B)、及びフラーレン化合物(C)を溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0091)〜(0092)段落に記載されている有機溶剤を用いることができる。
【0078】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物においてスピンコーティングにおける塗布性を向上させるために界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤は、特開2008−111103号公報中の(0165)〜(0166)記載のものを用いることができる。
【0079】
このような本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、ケイ素含有2層レジスト法、あるいはケイ素含有中間層膜による3層レジスト法といった多層レジスト法用レジスト下層膜を形成するために用いられる。
【0080】
たとえば、3層レジスト法の場合、本発明の樹脂(A)、化合物(B)およびフラーレン化合物(C)を含むレジスト下層膜形成用組成物を基板上にコーティングし、200℃以上、好ましくは250℃を超える温度でベーク(焼成)して、レジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にレジスト中間層膜を介してフォトレジスト組成物のレジスト上層膜を形成し、このフォトレジスト層の所用領域に放射線等を照射し、現像液で現像してレジストパターンを形成し、ドライエッチング装置で得られたフォトレジストパターンをマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、得られたレジスト中間層膜パターンをマスクにしてレジスト下層膜及び基板を加工することができる。
【0081】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、フォトレジストと同様にスピンコート法などで被加工基板上にコーティングすることができる。スピンコート法等を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。また、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、モノマー成分である化合物(B)を含んでいるため、更に良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークを行うことが好ましい。ベークは200℃を超え、600℃以下の範囲内で行い、10〜1200秒、好ましくは10〜300秒の範囲内で行うことが好ましい。ベーク温度は、より好ましくは300℃以上500℃以下である。デバイスダメージやウェハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウェハープロセスでの加熱できる温度の上限は600℃以下、好ましくは500℃以下が好ましい。
【0082】
また、本発明は、少なくとも、基板上に上記レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートし、その後酸化性ガス(例えば、酸素)濃度が0.1%以上21%以下の酸化性ガス雰囲気中で焼成するレジスト下層膜形成方法を提供するものである。
【0083】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物中の樹脂(A)と化合物(B)は、酸化性ガス(例えば、酸素等)を含んだ酸化性ガス雰囲気中で焼成することにより酸化的カップリング反応を経由して硬化し、次工程で適用される塗布液に対して耐性を示すことが出来る。また、酸化的カップリング反応から得られる下層膜は、反応により水素原子を減らすことが可能となり、エッチング後のよれが少なく良好な性質となる。
通常は空気中で焼成することが出来るが、場合によっては雰囲気中の酸素濃度を低減させてもよい。この時希釈ガスとして使用できるガスとしてはN、Ar、He等の不活性ガスを使用することが出来る。雰囲気中の酸素濃度が低すぎると、酸化的カップリング反応の進行が遅くなり、過大な焼成時間を必要とするため不経済である。従って、0.1%以上の酸素、より好ましくは1%以上の酸素があれば実用的な速度で下層膜材料を硬化させることが可能である。また、酸化性ガス濃度が0.1%以上21%以下であれば、従来、酸化カップリング反応に使用されてきた遷移金属触媒を使用せずとも酸化的カップリング反応が発生し、塗布膜を硬化させることができる。
【0084】
なお、このレジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nm、特に50〜15,000nmとすることが好ましい。
【0085】
また、本発明のパターン形成方法は、少なくとも、基板上に上記のレジスト下層膜形成方法によりレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間膜をエッチングし、得られたレジスト中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成するものである。
【0086】
このように、3層プロセスの場合は、基板上に本発明によりレジスト下層膜を形成した後、その上にケイ素を含有するレジスト中間層膜を形成することができる。
【0087】
ここで、レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。このように、無機ハードマスク中間膜をCVD法あるいはALD法により形成することにより、エッチング耐性を高くすることができる。窒化膜の形成方法としては、特開2002−334869号公報、WO2004/066377に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は5〜200nm、好ましくは10〜100nmであり、中でも反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300〜500℃となるために、レジスト下層膜として300〜500℃の温度に耐える必要がある。本発明で用いるレジスト下層膜形成用組成物は、高い耐熱性を有しており300℃〜500℃の高温に耐えることができるため、CVD法あるいはALD法で形成された無機ハードマスクと、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜の組み合わせが可能である。
【0088】
このようなレジスト中間層膜の上に、直接レジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成しても良いが、レジスト中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成しても良い。レジスト中間層膜としてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARC膜の2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光に於いても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0089】
3層プロセスのケイ素含有レジスト中間層膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層膜も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜として効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、レジスト中間層膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるレジスト中間層膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素−ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。この場合、CVD法よりもスピンコート法によるケイ素含有レジスト中間層膜の形成の方が簡便でコスト的なメリットがある。
【0090】
3層レジスト膜におけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。上記フォトレジスト組成物により単層レジスト上層膜を形成する場合、上記レジスト下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法が好ましく用いられる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60〜180℃で10〜300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nm、特に50〜400nmが好ましい。
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0091】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層レジスト法におけるレジスト中間層膜、特に無機ハードマスクのエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行う。次いでレジスト中間層膜パターン、特に無機ハードマスクパターンをマスクにして酸素ガス又は水素ガスを用いてレジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0092】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜を有するものであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層レジスト法のケイ素含有中間層は基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有中間層の剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0093】
本発明のレジスト下層膜は、これら被加工基板のエッチング耐性に優れる特徴がある。
なお、被加工基板としては、被加工層が基板上に成膜される。基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられる。被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nm厚さに形成し得る。
【0094】
3層レジスト法の一例について図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。
【0095】
3層レジスト法の場合、図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上に本発明のレジスト下層膜3を形成した後、レジスト中間層膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0096】
次いで、図1(B)に示したように、レジスト上層膜の所用部分6を露光し、PEB及び現像を行ってレジストパターン5aを形成する(図1(C))。この得られたレジストパターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてレジスト中間層膜4をエッチング加工してレジスト中間層膜パターン4aを形成する(図1(D))。レジストパターン5aを除去後、この得られたレジスト中間層膜パターン4aをマスクとしてレジスト下層膜3を酸素プラズマエッチングし、レジスト下層膜パターン3aを形成する(図1(E))。更にレジスト中間層膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工するものである(図1(F))。
【0097】
無機ハードマスク中間膜を用いる場合、レジスト中間層膜4が無機ハードマスク中間膜であり、BARCを敷く場合はレジスト中間層膜4とレジスト上層膜5との間にBARC層を設ける。BARCのエッチングはレジスト中間層膜4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変えるなどしてレジスト中間層膜4のエッチングを行うことができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0099】
化合物(B)−1〜(B)−3、樹脂(A)−1〜(A)−3の合成
以下のように化合物(B)−1〜(B)−3、樹脂(A)−1〜(A)−3を合成した。
なお、ポリマーの分子量の測定法は具体的に下記の方法により行った。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0100】
(化合物合成例1)化合物(B)−1
1Lのフラスコにフルオレノン90g、2、7−ジヒドロキシナフタレン160g、β−メルカプトプロピオン酸4g、トルエン500gを混合し、98%硫酸10gを滴下し、80℃で10時間攪拌する事によって反応を行った。得られた反応液にトルエン100g、水30g加えて、10%水溶液のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドをPHが7になるまで加えた後、水洗分液を5回繰り返した後、水層を除去し、以下に示す化合物(B)−1を得た。H−NMR分析により構造特定を行った。
【0101】
(化合物合成例2)化合物(B)−2
2、7−ジヒドロキシナフタレン160gを1、6−ジヒドロキシナフタレン160gに代えて同様の反応を行い、以下に示す化合物(B)−2を得た。
【0102】
(化合物合成例3)化合物(B)−3
2、7−ジヒドロキシナフタレン160gを2−ナフトール144gに代えて同様の反応を行い、以下に示す化合物(B)−3を得た。
【0103】
【化19】

【0104】
(樹脂合成例1)樹脂(A)−1
1Lのフラスコに化合物(B)−3を112.5g、37%ホルマリン水溶液7g、パラトルエンスルホン酸5g、ジオキサン200gを加え、撹拌しながら100℃で24時間撹拌させた。反応後メチルイソブチルケトン500mlに溶解し、十分な水洗により触媒と金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃、2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き以下に示す樹脂(A)−1を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
樹脂(A)−1 Mw5,500、Mw/Mn4.90
【0105】
(樹脂合成例2)樹脂(A)−2
1Lのフラスコに化合物(B)−3を112.5g、37%ホルマリン水溶液3.5g、2−ナフチルアルデヒド6g、パラトルエンスルホン酸5g、ジオキサン200gを加え、撹拌しながら100℃で24時間撹拌させた。反応後メチルイソブチルケトン500mlに溶解し、十分な水洗により触媒と金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃、2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き樹脂(A)−2を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
樹脂(A)−2 Mw5,900、Mw/Mn5.3
【0106】
(樹脂合成例3)樹脂(A)−3
300mlのフラスコに樹脂(A)−1の50g、9−ヒドロキシメチルアントラセン6g、メタンスルホン酸5g、トルエン200gを加え、撹拌しながら120℃に加熱し、反応により生成する水分を除去しながら2時間撹拌した。反応後メチルイソブチルケトン500mlに溶解し、十分な水洗により触媒と金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃、2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き下記に示す樹脂(A)−3を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
樹脂(A)−3 Mw6,900、Mw/Mn4.80
【0107】
【化20】

(上記式中、a、b、c、dは、それぞれモル比を示し、a:b=1:1、c:d=3:1である。)
【0108】
レジスト下層膜形成用組成物の調製
上記樹脂(A)−1〜(A)−3、上記化合物(B)−1〜(B)−3、下記に示す比(A)−1、比(B)−1、フラーレン化合物(C)−1〜(C)−5、界面活性剤FC−430(住友スリーエム社製0.1部)、及び有機溶剤(PGMEA)を、下記表1、表2の割合で混合し均一になるまでかき混ぜた後、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過し、レジスト下層膜形成用組成物(UDL1〜25、比UDL1〜5)を調整した。
【0109】
尚、フラーレン化合物(C)−1〜(C)−5としては、以下の構造(フラーレン骨格はC60)のものを用いた。
【化21】

【0110】
比(A)−1、比(B)−1としては、以下のものを用いた。
【化22】

【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
溶媒耐性測定(実施例1〜28、比較例1〜3)
上記で調整したレジスト下層膜形成用組成物をシリコン基板上に塗布し、表3及び表4に記載の条件で焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶液をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。
【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

実施例1〜28の本発明のレジスト下層膜形成用組成物においては、溶媒耐性(耐溶媒性)が得られた。一方、比較例2は硬化不十分で溶剤処理により膜成分が溶解した。比較例3は樹脂成分が含まれていないため、仕上がりの膜厚が不足した。尚、実施例27、28は成膜時の酸素濃度が低いため、溶剤耐性が得られるまで長時間必要とした。
【0116】
CF/CHF系ガスでのエッチング試験(実施例29〜53、比較例4〜6)
レジスト下層膜形成用組成物(UDL−1〜25、比UDL−1、4、5)をシリコン基板上に塗布し、表5に記載の条件で焼成しレジスト下層膜を形成した後、下記条件でCF/CHF系ガスでのエッチング試験を行った。

エッチング条件
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,300W
CHFガス流量 30ml/min
CFガス流量 30ml/min
Arガス流量 100ml/min
時間 60sec

東京エレクトロン製エッチング装置TE−8500を用いてエッチング前後の膜減りを求めた。結果を表5に示す。
【0117】
【表5】

【0118】
パターンエッチング試験(実施例54〜78、比較例7〜9)
レジスト下層膜形成用組成物(UDL−1〜25、比UDL−1、4、5)を、膜厚200nmのSiO膜が形成された300mmSiウェハー基板上に塗布して、上記表5の各ベーク温度で60秒間ベークし、膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。尚、レジスト下層膜のベーク雰囲気は大気中で行った。
その上にレジスト中間層膜材料SOG−1を塗布して200℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間層膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用SLレジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0119】
レジスト中間層膜材料(SOG−1)としては、以下のポリマーのプロピレングリコールエチルエーテル2%溶液を調製した。
【化23】

【0120】
レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)としては、ArF単層レジストポリマー1で示される樹脂、酸発生剤PAG1、塩基化合物TMMEAをFC−430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表6の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【表6】

用いたArF単層レジストポリマー1、PAG1、TMMEAを以下に示す。
【0121】
【化24】

【化25】

【0122】
液浸保護膜材料(TC−1)としては、保護膜ポリマーを有機溶剤中に表7の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【表7】

【0123】
用いた保護膜ポリマーを以下に示す。
保護膜ポリマー
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化26】

【0124】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、43nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0125】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによるレジストパターンをマスクにしてレジスト中間層膜をエッチング加工し、得られたレジスト中間層膜パターンをマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにしてSiO膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。

レジストパターンのレジスト中間層膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 75sccm
ガス流量 15sccm
時間 15sec

レジスト中間層膜パターンのレジスト下層膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
ガス流量 45sccm
時間 120sec

レジスト下層膜パターンのSiO膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20sccm
ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
60sccm
時間 90sec

【0126】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)にて観察し、形状を比較し、結果を表8に示す。
【表8】

尚、実施例78の組成物(UDL−25)を室温で1ヶ月放置したところ、フラーレン化合物の沈殿が発生した。比較例7の組成物(比UDL−1)は、フラーレン化合物を含んでいないため、よれが生じた。一方、全ての実施例において、よれは発生しなかった。また、比較例8はフラーレンを含んでいるものの、一般式(1)で示される化合物(B)を含んでいないため、表面ラフネスが大きかった。
【0127】
段差基板埋め込み特性(実施例79〜103
Si基板上に厚み500nmで直径が160nmの密集ホールパターンが形成されているSiO段差基板上に、平坦な基板上で200nmの膜厚になるよう調整されたUDL−1〜25を塗布し、300℃で60秒間ベークした(実施例79〜103)。
基板を割断し、ホールの底まで膜が埋め込まれているかどうかをSEMで観察した。いずれの実施例においても、ホールの底まで埋め込まれており、埋め込み特性は良好であった。
【0128】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜は、表3、4に示されるように十分な温度と適当な酸素雰囲気化でベークすることによって溶媒に不溶の膜が形成され、溶媒処理による減膜が大幅に抑えられる。また、表8に示すように、フラーレン化合物を加えることによりパターンよれ耐性が向上する。表5に示すように、CF/CHFガスエッチングの速度は組成物がフラーレン化合物を含んでいてもいなくてもほぼ同等の速度が得られるため、出来上がりのパターンラフネスが良好であることが判った。
【0129】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0130】
1…基板、 2…被加工層、 2a…基板に形成されるパターン、 3…レジスト下層膜、 3a…レジスト下層膜パターン、 4…レジスト中間層膜、 4a…レジスト中間層膜パターン、 5…レジスト上層膜、 5a…レジストパターン、 6…露光部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物と下記一般式(2)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られる樹脂(A)、下記一般式(1)で示される化合物(B)、フラーレン化合物(C)及び有機溶剤を含有することを特徴とするレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R、R、R、Rは、同一又は異種の水素原子及び炭素数6〜22の炭化水素基のいずれかであり、炭化水素基は酸素又はヒドロキシル基を含んでも良い。R、Rは、ベンゼン環、及びナフタレン環のいずれかである。1≦m1+m2≦2、1≦m3+m4≦2であり、n1、n2はそれぞれ0又は1である。)

−CHO (2)
(一般式(2)中、Rは、水素原子、飽和若しくは不飽和の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基、及び炭素数6〜20の芳香族炭化水素基のいずれかであり、エーテル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、クロル基を含んでも良い。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示される化合物が、n1=n2=1の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化2】

(一般式(3)中、R、R、R、R、R、Rは、前記と同様である。m1、m3は、それぞれ0又は1である。)
【請求項4】
前記一般式(2)で示される化合物が、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、及び2−ナフチルアルデヒドから選ばれる少なくとも1種のアルデヒド化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
リソグラフィーで用いられるレジスト下層膜の形成方法であって、少なくとも、基板上に請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物をスピンコートし、その後酸化性ガス濃度が0.1%以上21%以下の酸化性ガス雰囲気中で焼成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項6】
前記酸化性ガスが酸素であることを特徴とする請求項5に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項7】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項5又は請求項6に記載のレジスト下層膜形成方法によりレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間膜をエッチングし、得られたレジスト中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項5又は請求項6に記載のレジスト下層膜形成方法によりレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項5又は請求項6に記載のレジスト下層膜形成方法によりレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
前記無機ハードマスク中間膜は、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のパターン形成方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−150023(P2011−150023A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9412(P2010−9412)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】