説明

レジスト下層膜用組成物

【課題】反射防止膜としての機能を有するとともにパターン転写性能及びエッチング選択性が良好なレジスト下層膜を形成することができ、かつデュアルダマシン工程におけるビアへの埋め込み性が良好なレジスト下層膜用組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)又は(2)で表される構造単位を有する重合体を含有するレジスト下層膜用組成物を提供する。
【化1】


〔式(1)において、R1は2価の有機の基を示す。〕
【化2】


〔式(2)において、R2、R3及びAは相互に独立に2価の有機の基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジイン構造を有する重合体を含有し、各種の放射線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適なレジスト下層膜用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の1置換アセチレンを重合してジイン化合物を得ることはよく知られている。このようなジイン化合物は特異な構造を持ち反応性に富むので、種々の反応剤との反応による化学変性が検討されているだけでなく、耐熱性などの諸物性についても報告され、その特性に着目した材料や用途が開発されている。そして、反応性に富み多様な特性が期待できるジイン化合物を開発する面で、その誘導体を提供することは学術的及び応用的な観点から極めて意義深いものであり、既に、アルキル基や芳香環基など種々の置換基を有するジイン化合物が合成されている。しかし、これらのジイン化合物を半導体製造用レジスト下層膜用途に適用した例はこれまでに報告されていない。
【0003】
集積回路素子の製造方法においては、より高い集積度を得るために、多層レジストプロセスを用いる加工サイズの微細化が進んでいる。このプロセスにおいては、まず液状のレジスト下層膜用組成物を基板上に塗布したのち、液状のフォトレジスト組成物を更に塗布する。次に縮小投影露光装置(ステッパー)によってマスクパターンを転写し、適当な現像液で現像することによりフォトレジストパターンを得る。引き続きドライエッチングによりこのパターンをレジスト下層膜に転写する。最後にドライエッチングによりレジスト下層膜パターンを基板に転写することにより所望のパターン付き基板を得ることができる。レジスト下層膜を1種類用いる多層プロセスを2層レジストプロセスと呼び、2種類用いる場合には3層レジストプロセスと呼ぶことがある。
【0004】
一般にレジスト下層膜は、基板から反射した放射線を吸収する反射防止膜としての機能を有する。また、一般に基板直上のレジスト下層膜は炭素含有量の多い材料が用いられる。炭素含有量が多いと基板加工時のエッチング選択性が向上し、より正確なパターン転写が可能となる。このような下層膜として特に熱硬化ノボラックがよく知られている。また、アセナフチレン骨格を有する重合体を含有する組成物が反射防止膜として良好な特性を示すことが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−143937号公報
【特許文献2】特開2001−40293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、エッチングパターンのさらなる微細化に伴い、レジスト下層膜のオーバーエッチングが大きな問題となり、精密なパターン転写性能及びエッチング選択性の向上が求められている。また、近年注目を浴びているデュアルダマシン工程において、レジスト下層膜組成物のビアへの埋め込み性の改良も求められている。
【0007】
本発明は、反射防止膜としての機能を有するとともにパターン転写性能及びエッチング選択性が良好なレジスト下層膜を形成することができ、かつデュアルダマシン工程におけるビアへの埋め込み性が良好なレジスト下層膜用組成物を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このようなレジスト下層膜用組成物を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、ジイン誘導体が、レジスト下層膜用組成物における上記特性を発揮し得る化合物として極めて有用であり、従来のレジスト下層膜用組成物と比較して高いエッチング選択性及びビアへの埋め込み性を有することを見出して、本発明を成すに至った。即ち、本発明は以下のレジスト下層膜用組成物を提供するものである。
【0009】
[1] 下記式(1)又は(2)で表される構造単位を有する重合体を含有するレジスト下層膜用組成物。
【0010】
【化1】

〔式(1)において、R1は2価の有機の基を示す。〕
【0011】
【化2】

〔式(2)において、R2、R3及びAは相互に独立に2価の有機の基を示す。〕
【0012】
[2] 前記式(1)におけるR1が2価の芳香族基である構造単位を有する重合体を含有する上記[1]に記載のレジスト下層膜用組成物。
【0013】
[3] 前記式(2)におけるR2及びR3が相互に独立に2価の芳香族基である構造単位を有する重合体を含有する上記[1]に記載のレジスト下層膜用組成物。
【0014】
[4] 前記重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したポリスチレン換算重量平均分子量が500〜10,000である上記[1]〜[3]の何れかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【0015】
[5] 更に溶剤を含有する上記[1]〜[4]の何れかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【0016】
[6] 更に酸発生剤を含有する上記[1]〜[5]の何れかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【0017】
[7] 更に架橋剤を含有する上記[1]〜[6]の何れかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明のレジスト下層膜用組成物は、上記式(1)又は(2)で表される構造単位を有する重合体を含有するため、反射防止膜としての機能を有するとともにパターン転写性能及びエッチング選択性が良好なレジスト下層膜を形成することができ、かつデュアルダマシン工程におけるビアへの埋め込み性が良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のレジスト下層膜用組成物を具体例を基に詳細に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0020】
本発明のレジスト下層膜用組成物は、下記式(1)で表される構造単位(以下、構造単位(1)という場合がある)又は下記式(2)で表される構造単位(以下、構造単位(2)という場合がある)を有する重合体を含有するものである。
【0021】
【化3】

〔式(1)において、R1は2価の有機の基を示す。〕
【0022】
【化4】

〔式(2)において、R2、R3及びAは相互に独立に2価の有機の基を示す。〕
【0023】
−構造単位(1)−
構造単位(1)において、R1で示される2価の有機の基としては、炭素数1〜20の基が好ましい。好ましい例としては、2価の芳香族基;2価の飽和脂肪族基;及び2価の不飽和脂肪族基を挙げることができる。これらの基は置換基により置換されていても良い。好ましい置換基としては、ハロゲン原子;ヒドロキシル基;メルカプト基;カルボキシル基;エステル基;ニトロ基;スルホン酸基;エチニル基等を挙げることができる。これらの置換基の1個以上又は1種以上により置換されている2価の基も好ましい。
【0024】
前記2価の芳香族基としては、フェニレン基、トリレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、アミノフェニレン基、ピリジレン基、エチニルフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等を挙げることができる。
【0025】
前記2価の飽和脂肪族基としては、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基等を挙げることができる。
【0026】
前記2価の不飽和脂肪族基としては、炭素数2〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基が好ましく、具体的には、ビニリデン基、アリレン基、1−ブテンジイル基、2−ブテンジイル基等を挙げることができる。
【0027】
この中でも2価の芳香族基が好ましく、フェニレン基及びトリレン基が特に好ましい。構造単位(1)のより具体的な好ましい例としては、下記式(3)で表される構造単位を挙げることができる。
【0028】
【化5】

〔式(3)において、Rはメチル基を示し;nは0又は1の整数を示す〕
【0029】
−構造単位(2)−
構造単位(2)において、R2及びR3で示される2価の有機の基としては、上述した構造単位(1)におけるR1と同じものが挙げられ、R1と同様に、この中でも2価の芳香族基が好ましく、フェニレン基及びトリレン基が特に好ましい。
【0030】
構造単位(2)におけるAで示される2価の有機の基としては、炭素数1〜20の基が好ましい。好ましい例としては、2価の飽和脂肪族基;2価の不飽和脂肪族基;及びカルボニル基を含む2価の基を挙げることができる。これらの基は置換基により置換されていても良い。好ましい置換基としては、ハロゲン原子;ヒドロキシル基;メルカプト基;カルボキシル基;エステル基;ニトロ基;スルホン酸基;エチニル基等を挙げることができる。これらの置換基の1個以上又は1種以上により置換されている2価の基も好ましい。
【0031】
前記2価の飽和脂肪族基としては、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基等を挙げることができる。
【0032】
前記2価の不飽和脂肪族基としては、炭素数2〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基が好ましく、具体的には、ビニリデン基、アリレン基、1−ブテンジイル基、2−ブテンジイル基等を挙げることができる。
【0033】
前記カルボニル基を含む2価の基としては、エステル結合を含む基、アミド結合を含む基などが好ましい。具体的にはイミノカルボニル基、カルボニルイミノ基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基の他、芳香環にこれらの基が2つ結合した2価の基等を挙げることができる。
【0034】
この中でもカルボニル基を含む基が好ましく、イミノカルボニル基(−NH(C=O)−)、カルボニルイミノ基(−(C=O)−NH−)、オキシカルボニル基(−O−(C=O)−)、カルボニルオキシ基(−(C=O)−O−)、芳香環にこれらの基が2つ結合した2価の基(例えば、−NH(C=O)−Ar−(C=O)−NH−、但し、Arは芳香環を示す)が特に好ましい。構造単位(2)のより具体的な好ましい例としては、下記式(4)〜(6)で表される構造単位を挙げることができる。
【0035】
【化6】

〔式(4)において、Rはメチル基を示し;nは0又は1の整数を示す〕
【0036】
【化7】

〔式(5)において、Rはメチル基を示し;nは0又は1の整数を示す〕
【0037】
【化8】

〔式(6)において、Rはメチル基を示し;nは0又は1の整数を示す〕
【0038】
−重合体−
構造単位(1)を含む重合体(以下、重合体(1)という場合がある)は、構造単位(1)に対応するジイン類をモノマーとして、場合により他の共重合可能な化合物とともに、例えば金属触媒を用いたカップリング反応により得ることができる。構造単位(2)を含む重合体(以下、重合体(2)という場合がある)は、構造単位(2)に対応するジイン類をモノマーとして、場合により、他の共重合可能な化合物とともに、例えば、エステル結合やアミド結合を形成する縮重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等により、塊状重合、溶液重合などの適宜の重合形態で重合することにより製造することができる。重合体(1)としては、上記式(3)で表される構造単位を繰り返し単位の1つとして含む重合体が好ましく、特にポリ(ジエチニルベンゼン)が好ましい。重合体(2)としては、上記式(4)〜(6)の少なくとも1種を繰り返し単位の1つとする重合体が好ましい。
【0039】
重合体(1)における他の共重合可能な化合物としては、エチニルスチレン、プロパギル酸、6−ヘキシン酸、2−プロピンー1−オール、1−ブチンー3−オール、3−ブチン−3−オール、1−ペンチン−3−オール、4−ペンチン−1−オール、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリン、フェニルアセチレン等を挙げることができる。重合体(2)における他の共重合可能な化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、アセナフチレンカルボン酸、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0040】
重合体(1)及び(2)における他の共重合可能な化合物に由来する構造単位の含有率は、全構造単位に対して、好ましくは80モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、特に好ましくは40モル%以下である。この含有率が大きすぎるとジイン構造の効果が十分に得られない場合がある。
【0041】
重合体(1)及び(2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、500〜10,000、好ましくは1,000〜5,000である。分子量が小さすぎると面内製膜性が著しく劣化する傾向にあり、大きすぎると膜の面内均一性が損なわれる傾向にある。
【0042】
重合体(1)及び(2)は、加熱又は露光により、分子鎖間で架橋反応を生起する特性を有し、特に、後述するレジスト下層膜用組成物に有用である。重合体(1)及び(2)は、各々単独で、又は複数種類組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明のレジスト下層膜用組成物は、重合体(1)及び/又は重合体(2)を含むものであるが、この組成物は、通常、重合体(1)及び/又は重合体(2)を溶解する溶剤を含む液状の組成物である。
【0044】
−溶剤−
本発明のレジスト下層膜用組成物に使用される溶剤としては、重合体(1)及び(2)を溶解しうるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;
トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のトリエチレングリコールジアルキルエーテル類;
【0045】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0046】
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸i−ブチル等の乳酸エステル類;
ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸i−プロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸i−ブチル、ギ酸n−アミル、ギ酸i−アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、酪酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
【0047】
ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;
γ−ブチロラクトン等のラクトン類
等を挙げることができ、これらを適宜選択して使用することができる。
【0048】
これらの溶剤のうち、好ましくは、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン等である。前記溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0049】
溶剤の使用量は、得られる組成物の固形分濃度が、通常、0.01〜70質量%、好ましくは0.05〜60質量%、更に好ましくは0.1〜50質量%となる範囲である。
【0050】
−添加剤−
本発明のレジスト下層膜用組成物には、本発明における所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、酸発生剤、架橋剤、バインダー樹脂、放射線吸収剤、界面活性剤等の各種の添加剤を配合することができ、特に、酸発生剤及び/又は架橋剤を配合することが好ましい。
【0051】
前記酸発生剤は、露光あるいは加熱により酸を発生する成分である。
露光により酸を発生する酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という。)としては、例えば、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシフェニル・フェニル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、
【0052】
シクロヘキシル・メチル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0053】
1−(4−ヒドロキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
1−〔4−(1−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0054】
1−(4−i−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−t−ブトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロピラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
1−(4−ベンジルオキシ)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート
等のオニウム塩系光酸発生剤類;
【0055】
フェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−ナフチルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類;
1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等のジアゾケトン化合物系光酸発生剤類;
4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等のスルホン化合物系光酸発生剤類;
ベンゾイントシレート、ピロガロールのトリス(トリフルオロメタンスルホネート)、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸化合物系光酸発生剤類等を挙げることができる。
【0056】
これらの光酸発生剤のうち、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート等が好ましい。前記光酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0057】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」という。)としては、例えば、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等を挙げることができる。これらの熱酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、酸発生剤として、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用することもできる。
【0058】
酸発生剤の配合量は、レジスト下層膜用組成物の固形分100質量部当たり、通常、5,000質量部以下、好ましくは0.1〜1,000質量部、更に好ましくは0.1〜100質量部である。本発明のレジスト下層膜用組成物は、光酸発生剤及び/又は熱酸発生剤を含有することにより、常温を含む比較的低温で各重合体の分子鎖間に有効に架橋反応を生起させることが可能となる。
【0059】
また、前記架橋剤は、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止し、さらには該レジスト下層膜のクラックを防止する作用を有する成分である。このような架橋剤としては、多核フェノール類や、種々の市販の硬化剤を使用することができる。
【0060】
前記多核フェノール類としては、例えば、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4’’−メチリデントリスフェノール、4,4’−
〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等を挙げることができる。これらの多核フェノール類のうち、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール、ノボラック等を挙げることができる。前記多核フェノール類は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0061】
また、前記硬化剤としては、例えば、2,3−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、3,4−トリレンジイソシアナート、3,5−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート等のジイソシアナート類や、以下商品名で、エピコート812、同815、同826、同828、同834、同836、同871、同1001、同1004、同1007、同1009、同1031(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、アラルダイト6600、同6700、同6800、同502、同6071、同6084、同6097、同6099(以上、チバガイギー社製)、DER331、同332、同333、同661、同644、同667(以上、ダウケミカル社製)等のエポキシ化合物;サイメル300、同301、同303、同350、同370、同771、同325、同327、同703、同712、同701、同272、同202、マイコート506、同508(以上、三井サイアナミッド(株)製)等のメラミン系硬化剤;サイメル1123、同1123−10、同1128、マイコート102、同105、同106、同130(以上、三井サイアナミッド(株)製)等のベンゾグアナミン系硬化剤;サイメル1170、同1172(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックN―2702(三和ケミカル(株)製)等のグリコールウリル系硬化剤等を挙げることができる。これらの硬化剤のうち、メラミン系硬化剤、グリコールウリル系硬化剤等が好ましい。前記硬化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、架橋剤として、多核フェノール類と硬化剤とを併用することもできる。
【0062】
架橋剤の配合量は、レジスト下層膜用組成物の固形分100質量部当たり、通常、5,000質量部以下、好ましくは1,000質量部以下である。
【0063】
また、前記バインダー樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−ヘプテン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、ポリ−1−ドデセン、ポリ−1−テトラデセン、ポリ−1−ヘキサデセン、ポリ−1−オクダデセン、ポリビニルシクロアルカン等のα−オレフイン系重合体類;ポリ−1,4−ペンタジエン、ポリ−1,4−ヘキサジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン系重合体類;
α,β−不飽和アルデヒド系重合体類;ポリ(メチルビニルケトン)、ポリ(芳香族ビニルケトン)、ポリ(環状ビニルケトン)等のα,β−不飽和ケトン系重合体類;(メタ)アクリル酸、α−クロルアクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物等のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の重合体類;ポリ(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸の共重合体等のα,β−不飽和カルボン酸無水物の重合体類;メチレンマロン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和多塩基性カルボン酸エステルの重合体類;
【0064】
ソルビン酸エステル、ムコン酸エステル等のジオレフィンカルボン酸エステルの重合体類;(メタ)アクリル酸チオエステル、α−クロルアクリル酸チオエステル等のα,β−不飽和カルボン酸チオエステルの重合体類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル又はその誘導体の重合体類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体の重合体類;スチリル金属化合物の重合体類;ビニルオキシ金属化合物の重合体類;
ポリイミン類;ポリフェニレンオキシド、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリオキシラン、ポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロピラン等のポリエーテル類;ポリスルフィド類;ポリスルホンアミド類;ポリペプチド類;ナイロン66、ナイロン1〜ナイロン12等のポリアミド類;脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂環族ポリエステル、ポリ炭酸エステル等のポリエステル類;ポリ尿素類;ポリスルホン類;ポリアジン類;ポリアミン類;ポリ芳香族ケトン類;ポリイミド類;ポリベンゾイミダゾール類;ポリベンゾオキサゾール類;ポリベンゾチアゾール類;ポリアミノトリアゾール類;ポリオキサジアゾール類;ポリピラゾール類;ポリテトラゾール類;ポリキノキサリン類;ポリトリアジン類;ポリベンゾオキサジノン類;ポリキノリン類;ポリアントラゾリン類
等を挙げることができる。
【0065】
また、前記熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となり、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止する作用を有する成分であり、バインダー樹脂として好ましく使用することができる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性アクリル系樹脂類、フェノール樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、アミノ系樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類、エポキシ樹脂類、アルキド樹脂類等を挙げることができる。これらの熱硬化性樹脂のうち、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類等が好ましい。
【0066】
前記バインダー樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
バインダー樹脂の配合量は、各レジスト下層膜用組成物の重合体100質量部当たり、通常、20質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0067】
また、前記放射線吸収剤としては、例えば、油溶性染料、分散染料、塩基性染料、メチン系染料、ピラゾール系染料、イミダゾール系染料、ヒドロキシアゾ系染料等の染料類;ビクシン誘導体、ノルビクシン、スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤類;ヒドロキシアゾ系染料、チヌビン234(商品名、チバガイギー社製)、チヌビン1130(商品名、チバガイギー社製)等の紫外線吸収剤類;アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体等の芳香族化合物等を挙げることができる。これらの放射線吸収剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。放射線吸収剤の配合量は、レジスト下層膜用組成物の固形分100質量部当たり、通常、100質量部以下、好ましくは50質量部以下である。
【0068】
また、前記界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤や、以下商品名で、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業(株)製)、エフトップEF101、同EF204、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、同F172、同F173(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC135、同FC93(以上、住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(以上、旭硝子(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。界面活性剤の配合量は、レジスト下層膜用組成物の固形分100質量部当たり、通常、15質量部以下、好ましくは10質量部以下である。更に、前記以外の添加剤としては、例えば、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等を挙げることができる。
【0069】
−レジスト下層膜を用いたレジストパターンの形成方法−
本発明の各レジスト下層膜用組成物(以下、単に「組成物」という。)を用いたレジストパターンの形成方法は、通常、例えば、1)基板上に組成物を塗布し、得られた塗膜を硬化させてレジスト下層膜を形成する工程、2)該レジスト下層膜上にレジスト組成物溶液を塗布し、得られた塗膜をプレベークしてレジスト被膜を形成する工程、3)該レジスト被膜をフォトマスクを介して選択的に露光する工程、4)露光したレジスト被膜を現像する工程、及び5)レジスト下層膜をエッチングする工程を含んでいる。
【0070】
1)工程において、基板としては、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆したウエハー等を使用することができる。組成物の塗布は、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。その後、露光及び/又は加熱することにより塗膜を硬化させる。露光される放射線は、使用される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。組成物が光酸発生剤を含有し、かつ露光する場合には、常温でも塗膜を有効に硬化させることが可能である。また加熱温度は、通常、90〜350℃程度、好ましくは200〜300℃程度であるが、組成物が熱酸発生剤を含有する場合は、例えば、90〜150℃程度でも塗膜を有効に硬化させることが可能である。1)工程で形成されるレジスト下層膜の膜厚は、通常、0.1〜5μmである。
【0071】
次いで、2)工程において、レジスト下層膜上に、得られるレジスト被膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物溶液を塗布したのちプレベークして、塗膜中の溶剤を揮発させることにより、レジスト被膜を形成する。この際のプレベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。
【0072】
前記レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等を挙げることができる。
【0073】
レジスト被膜をレジスト下層膜上に形成させる際に使用されるレジスト組成物溶液は、固形分濃度が、通常、5〜50質量%程度であり、一般に、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過して、レジスト被膜の形成に供される。なお、この工程では、市販のレジスト組成物溶液をそのまま使用することもできる。
【0074】
次いで、3)工程において、露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、好ましくは遠紫外線であり、特に、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)、Kr2エキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)等が好ましい。
【0075】
次いで、4)工程において、露光後のレジスト被膜を現像し、洗浄し、乾燥することにより、所定のレジストパターンを形成させる。この工程では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、露光したのち現像前に、ポストベークを行うことができる。
【0076】
この工程で用いられる現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択されるが、ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物の場合の現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチル・エタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液を挙げることができる。また、これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0077】
次いで、5)工程において、得られたレジストパターンをマスクとし、例えば酸素プラズマ等のガスプラズマを用いて、レジスト下層膜の乾式エッチングを行うことにより、所定の基板加工用のレジストパターンが得られる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて、本発明を実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。以下において、「部」及び「%」は特記しない限り質量基準である。
【0079】
分子量の測定:
以下の実施例1及び調製例1において、得られた樹脂及び重合体のMwは、東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量:1.0ml/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0080】
レジスト下層膜用組成物の性能評価は、下記の要領で行った。
光学特性:
直径8インチのシリコンウエハー上に、レジスト下層膜用組成物をスピンコートしたのち、300℃のホットプレート上で120秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成し、このレジスト下層膜について、KLA−TENCOR社製分光エリプソメータUV−1280Eを用いて、波長633nmにおける屈折率(n値)と吸光度(k値)を測定した。
【0081】
ArF用ポジ型レジストパターンの形成:
直径8インチのシリコンウエハー上に、レジスト下層膜用組成物をスピンコートしたのち、180℃及び300℃のホットプレート上でそれぞれ60秒間加熱して、膜厚0.3μmの下層膜を形成した。その後、このレジスト下層膜上に3層レジストプロセス用中間層組成物溶液(商品名NFC SOG041、JSR(株)製)をスピンコートし、200℃及び300℃のホットプレート上でそれぞれ60秒間加熱して、膜厚0.11μmの中間層被膜を形成した。その後、この上に、後述する参考例1で得たArF用レジスト組成物溶液をスピンコートし、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚0.5μmのレジスト被膜を形成した。その後、ISI社製ArFエキシマレーザー露光装置(レンズ開口数0.60、露光波長193nm)を用い、マスクパターンを介して、最適露光時間だけ露光した。その後、130℃のホットプレート上で90秒間ポストベークしたのち、2.38重量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、25℃で1分間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型レジストパターンを形成した。
【0082】
定在波防止効果:
前記した要領で、レジスト下層膜の形成、並びにレジスト被膜の形成、露光及び現像を行って、レジスト被膜への定在波の影響の有無を走査型電子顕微鏡により観察して評価した。
インターミキシング防止効果:
前記した要領でレジスト下層膜を形成し、また得られたレジスト下層膜をシクロヘキサノンに室温で1分間浸漬して、浸漬前後の膜厚変化を、分光エリプソメータUV1280E(KLA−TENCOR社製)を用いて測定したとき、膜厚変化が認められない場合を「有り」、膜厚変化が認められる場合を「無し」として評価した。
ビア埋め込み性:
シリコンウエハー上に径0.14μm、深さ1.0μmのビア穴をもつSiO2基板に対して前記した要領で、レジスト下層膜を形成したのち、ビアがレジスト下層膜によって完全に埋没しているかどうかを断面SEM観察により評価した。
エッチング耐性:
前記した要領でレジスト下層膜を形成した基板をSHINKO社製エッチング装置を用いて一般的な酸化膜エッチング条件で規定の時間だけエッチングした。エッチング前後の膜厚差から1分当たりのエッチング量を算出した。エッチング量が少ないほどエッチング耐性があると言える。
【0083】
実施例1(ポリジエチニルベンゼンの合成)
メタジエチニルベンゼン6.25g及びフェニルアセチレン10.13gをピリジン200mlに溶解した溶液に、溶液を攪拌しつつ室温で、塩化銅(I)6.3gを加えた。その後反応溶液を1時間攪拌した後、生成物を大量の水/イソプロピルアルコールの1対1溶液中で再沈した。生成物を水洗した後、トルエンに溶解させた。この溶液を3%シュウ酸で2回、水で2回洗浄した後、溶液を減圧濃縮、固化してMw=1,000の固形物8.6gを得た。この固形物をシクロヘキサノン溶液としてレジスト下層膜用組成物とした。
【0084】
調製例1(ArF用レジスト組成物溶液の調製)
還流管を装着したセパラブルフラスコに、窒素気流下で、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン29部、8−メチル−8−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5
7,10]ドデカ−3−エン10部、無水マレイン酸18部、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアクリレート4部、t−ドデシルメルカプタン1部、アゾビスイソブチロニトリル4部及び1,2−ジエトキシエタン60部を仕込み、攪拌しつつ70℃で6時間重合した。その後、反応溶液を大量のn−ヘキサン/i−プロピルアルコール(重量比=1/1)混合溶媒中に注いで、樹脂を凝固させ、凝固した樹脂を該混合溶媒で数回洗浄したのち、真空乾燥して、下記式(a)、式(b)又は式(c)で表される構造単位の含有率がそれぞれ64モル%、18モル%及び18モル%であり、Mwが27,000の樹脂を収率60%で得た。
【0085】
【化9】

【0086】
【化10】

【0087】
【化11】

【0088】
得られた樹脂80部、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート1.5部及びトリ−n−オクチルアミン0.04部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート533部に溶解して、ArF用レジスト組成物溶液を調製した。
【0089】
実施例2(レジスト下層膜用組成物の評価)
実施例1で得た重合体のシクロヘキサノン溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、レジスト下層膜用組成物を調製した。次いで、この組成物について性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0090】
比較例1
市販のノボラック樹脂の乳酸エチル溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、レジスト下層膜用組成物を調製した。次いで、この組成物について性能評価を行った。パターン形状評価はArF用ポジ型レジストパターンを形成して行った。評価結果を表1に示す
【0091】
比較例2
レジスト下層膜用組成物を用いないで、ArF用ポジ型レジストパターンを形成して、性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のレジスト下層膜用組成物は、反射防止効果が高く、かつレジスト被膜とインターミキシングを生じにくいため、ポジ型及びネガ型の各種のレジスト組成物と協働して、解像度、パターン形状等に優れたレジストパターンをもたらすことができる。更にデュアルダマシン工程におけるビアへの埋め込み性が良好である。したがって、本発明の各レジスト下層膜用組成物は、特に、高集積度の集積回路の製造に寄与するところが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は(2)で表される構造単位を有する重合体を含有するレジスト下層膜用組成物。
【化1】

〔式(1)において、R1は2価の有機の基を示す。〕
【化2】

〔式(2)において、R2、R3及びAは相互に独立に2価の有機の基を示す。〕
【請求項2】
前記式(1)におけるR1が2価の芳香族基である構造単位を有する重合体を含有する請求項1に記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項3】
前記式(2)におけるR2及びR3が相互に独立に2価の芳香族基である構造単位を有する重合体を含有する請求項1に記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項4】
前記重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したポリスチレン換算重量平均分子量が500〜10,000である請求項1〜3の何れかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項5】
更に溶剤を含有する請求項1〜4の何れかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項6】
更に酸発生剤を含有する請求項1〜5の何れかに記載のレジスト下層膜用組成物。
【請求項7】
更に架橋剤を含有する請求項1〜6の何れかに記載のレジスト下層膜用組成物。

【公開番号】特開2006−285046(P2006−285046A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106764(P2005−106764)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】