説明

レーザ加工方法およびその装置

【解決手段】 液体を噴射する噴射孔12aを細長く形成して、被加工物2に向けてライン状に液体を噴射し、
一部のレーザ光Lを上記噴射孔から噴射される液体へと透過させ、残部のレーザ光Lを反射させる第1ミラー23と、該第1ミラーに対向する位置に設けられてレーザ光Lを第1ミラーに全反射させる第2ミラー24とを設け、
さらに、上記第1ミラーにおけるレーザ光の透過率を、レーザ光を入射させる側の一端を該第1ミラーにおける他端より低くなるように設定し、
レーザ光を第1ミラーと第2ミラーとの間に入射させるとともに複数回反射させ、上記第1ミラーを透過したレーザ光が上記噴射孔より噴射された液体の内部に導光されてライン状に被加工物に照射されるようにした。
【効果】 広範囲にレーザ光を照射することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工方法およびその装置に関し、詳しくは噴射孔より噴射した液体により被加工物の所要部分を覆い、さらに噴射した液体の内部にレーザ光を導光して被加工物に照射することで該被加工物を加工するレーザ加工方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の被加工物の表面にレーザ光を照射して、該被加工物の加工を行うレーザ加工方法が知られ、特に液体を被加工物に噴射して該液体により被加工物の所要部分を覆い、さらに噴射した液体の内部にレーザ光を導光して被加工物に照射することでアニーリングするレーザ加工方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−109943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のレーザ加工方法では、噴射された液体は断面が円形となっており、被加工物に対して一点に噴射されるため、この液体の内部を導光されたレーザ光による被加工物への照射範囲が狭いという問題があり、被加工物全体をアニーリングするには効率が悪いという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明はより広範囲にレーザ光を照射することが可能なレーザ加工方法およびその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1にかかるレーザ加工方法は、噴射孔から被加工物に対して液体を噴射し、この液体により被加工物の表面の所要部分を覆うとともに、噴射した液体内にレーザ光を導光して被加工物の表面にレーザ光を照射し、被加工物の加工を行うレーザ加工方法において、
上記噴射孔を細長く形成して、被加工物に向けてライン状に液体を噴射し、
一部のレーザ光を上記噴射孔から噴射される液体へと透過させ、残部のレーザ光を反射させる第1ミラーと、該第1ミラーに対向する位置に設けられてレーザ光を第1ミラーに反射させる第2ミラーとを設け、
さらに、上記第1ミラーにおけるレーザ光の透過率を、レーザ光を入射させる側の一端を該第1ミラーにおける他端より低くなるように設定し、
レーザ光を第1ミラーと第2ミラーとの間に入射させるとともに複数回反射させ、上記第1ミラーを透過したレーザ光が上記噴射孔より噴射された液体の内部に導光されてライン状に被加工物に照射されるようにしたことを特徴としている。
【0006】
また請求項3にかかるレーザ加工装置は、液体を噴射する噴射孔が形成された加工ヘッドと、レーザ光を照射するレーザ発振器と、上記レーザ光を上記噴射孔より噴射される液体に導光する導光手段とを備え、
上記加工ヘッドの噴射孔から被加工物に対して液体を噴射して、この液体により被加工物の表面の所要部分を覆い、さらに噴射された液体内に上記導光手段が上記レーザ光を導光して、該レーザ光により被加工物の表面を加工するレーザ加工装置において、
上記加工ヘッドの噴射孔を細長く形成して、被加工物に向けてライン状に液体が噴射されるようにし、
上記導光手段は、一部のレーザ光を上記噴射孔から噴射される液体へと透過させ、残部のレーザ光を反射させる第1ミラーと、該第1ミラーに対向する位置に設けられてレーザ光を第1ミラーに反射させる第2ミラーとを備え、
さらに上記第1ミラーにおけるレーザ光の透過率を、レーザ光を入射させる側の一端が該第1ミラーにおける他端より低くなるように設定し、
レーザ光を第1ミラーと第2ミラーとの間に入射させるとともに複数回反射させ、上記第1ミラーを透過したレーザ光が上記噴射孔より噴射された液体の内部に導光されてライン状に被加工物に照射されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記請求項1の発明および請求項3の発明によれば、噴射孔を細長くしてライン状に液体を噴射し、かつ対向して配置した上記第1ミラーと第2ミラーとの間でレーザ光を反射させ、一部のレーザ光を第1ミラーを透過させて上記液体に導光することから、レーザ光をライン状にして被加工物に照射することができ、広範囲にレーザ加工を行うことができる。
その際、上記第1ミラーにおけるレーザ光の透過率を、該第1ミラーにおける一端から他端にかけて徐々に低くなるように設定することで、第1ミラーの一端側で透過したレーザ光の出力と、他端側で透過したレーザ光の出力とを揃えることができ、均一にレーザ加工を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例にかかるレーザアニール装置の構成図
【図2】加工ヘッドについての断面図
【図3】加工ヘッドについての図2とは異なる方向から見た断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示実施例について説明すると、図1は本発明にかかるレーザアニール装置1を示し、液体を噴射するとともにこの液体にレーザ光Lを導光することで、被加工物2をアニーリングする装置となっている。
このレーザアニール装置1は、上記被加工物2を支持する加工テーブル3と、レーザ光Lを照射するレーザ発振器4と、液体を供給する液体供給手段5と、該液体供給手段5からの液体を被加工物2に向けて噴射する加工ヘッド6と、上記レーザ発振器4が照射したレーザ光Lを上記加工ヘッド6から噴射される液体に導光する導光手段7とを備え、これらは図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
上記被加工物2は,ガラスや樹脂製の絶縁性の基板2aと、該基板2aの表面に積層された非晶質半導体膜としてのアモルファスシリコン膜2bとから構成されている。
このアモルファスシリコン膜2bにレーザ光Lを照射して瞬時に加熱溶融させその後冷却するアニーリングを行うと、アモルファスシリコンが結晶化されて基板2a上に電子の移動度が高いポリシリコン膜を形成することが可能となっている。
しかしながら、上記アモルファスシリコン膜2bに対して単にレーザ光Lを照射しただけでは、加熱溶融の際に大気に触れた部分が酸化してしまうという問題があるため、本実施例では被加工物2の表面を液体によって覆った状態でレーザ光L照射し、レーザ光Lの照射部分が大気に触れないようにすることで、ポリシリコン膜の酸化を大幅に軽減するようになっている。
【0010】
上記加工テーブル3は従来公知であるので詳細な説明をしないが、加工テーブル3は図示しない移動手段によって上記被加工物2を図1の図示左右方向に移動させるようになっており、また上記加工ヘッド6は図示しない昇降手段によって垂直方向に移動可能となっている。
上記レーザ発振器4はYAGレーザ発振器であり、加工に応じてCW発振又はパルス発振が可能であり、またその出力やパルスの発振周期等の加工条件を適宜調整できるようになっている。
また、YAGレーザ光の基本波の波長(1064nm)が上記アモルファスシリコンへの吸収率が低いので、本実施例のレーザ発振器4には上記基本波を第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)に変換する、図示しない波長変換手段が設けられている。
上記液体供給手段5は、純水などの液体を加圧して送液するようになっており、液体供給手段5と加工ヘッド6との間には上記液体を流通させる配管8が配設されている。
【0011】
図2、図3はそれぞれ加工ヘッド6の断面図を示しており、図3は図1、図2に対して直交する方向の断面図となっている。そして加工ヘッド6は、内部に液体通路11aの形成されたハウジング11と、ハウジング11の下部に設けられた噴射ノズル12とを備えている。
上記ハウジング11は中央にレーザ光Lが通過する貫通孔が上下方向に形成されており、上記噴射ノズル12の上方にはレーザ光を透過させるガラス板13が液密に固定され、該ガラス板13の下方に上記液体通路11aが形成されている。
図1、図2に示すように、上記液体通路11aには上記配管8を介して液体供給手段5より液体が供給されるようになっており、上記ハウジング11の側面には上記配管8の接続される接続ポート11bが形成され、さらにハウジング11の内部には該接続ポート11bと液体通路11aとを連通させる連通路11cが形成されている。
また図3に示すように、液体通路11aは図示左右方向に細長く形成されており、上記連通路11cは上記接続ポート11bから分岐するように形成されて、その開口部が液体通路11aの内部に所定の間隔で形成されている。
このような構成とすることで、上記細長い液体通路11aの内部には、上記接続ポート11bから各連通路11cに分岐した液体が流入し、これにより上記噴射ノズル12に対して均等に液体を供給することが可能となっている。
【0012】
上記噴射ノズル12は、上記ハウジング11の下面に取り付け部材14により固定されており、この噴射ノズル12に形成された噴射孔12aは、図2に示すように所定の幅を有し、かつ図3に示すように図示左右方向に長く形成されている。
このように噴射孔12aを細長く形成することで、この噴射孔12aからは液体がライン状に噴射されるようになっており、噴射孔12aより噴射された液体は薄板状の液柱Wを形成するようになっている。
また、上記噴射ノズル12における噴射孔12aの下方には、図2に示すように下方が広がるように傾斜面12bが形成されており、液柱Wの周囲にエアポケットを形成して液柱Wを安定して形成するようになっている。
【0013】
導光手段7は、図1に示すように上記レーザ発振器4より照射されたレーザ光Lを反射させる反射ミラー21と、レーザ光Lを平行な光とするシリンドリカルレンズ22と、上記加工ヘッド6に固定された第1ミラー23と、第1ミラー23の上方に対向する位置に設けた第2ミラー24と、上記第1ミラー23の下方に設けた集光レンズ25とから構成されている。
上記シリンドリカルレンズ22は、図3に示すように、レーザ光Lを上記第1ミラー23と第2ミラー24との間に入射させ、その際レーザ光Lの入射角度を第1ミラー23の反射面に対して傾斜させるようなっている。
【0014】
上記第1ミラー23は上記加工ヘッド6における上記上記ガラス板13の上方に図示しない保持部材によって固定されており、上記噴射ノズル12に形成された噴射孔12aと同様、図2に示すように所定の幅を有するとともに、図3に示すように図示左右方向に長く形成されている。
上記第1ミラー23は、一部のレーザ光Lを上記噴射ノズル12側へと透過させ、残部のレーザ光Lを第2ミラー24へと反射させるビームスプリッターを構成し、かつ該第1ミラー23の反射面におけるレーザ光Lの透過率が、該第1ミラー23における一端から他端にかけて徐々に低くなるように設定されている。
詳しくは、上記シリンドリカルレンズ22によって導光されたレーザ光Lが入射する図示右方の透過率を低く設定し、ここから反対側の図示左方の端部にかけて徐々に透過率が高くなるようになっている。
このように透過率が異なるコーティングを形成する方法としては、例えば上記第1ミラー23の反射面を複数に分割してマスキングを行い、それぞれの部分に透過率が異なるコーティング形成する方法や、透過率が高い位置と低い位置とで上記コーティングの積層回数を異ならせる方法が考えられる。
このほかにも、例えば上記第1ミラー23を複数の反射率が異なるミラーから構成し、透過率の高いミラーから順に徐々に低くなるように整列させるようにすることも可能である。
また、反射率をどの程度の段階で変化させるかについては、極力多段階とすることが望ましいが、例えば所定の位置で区画した低反射率と高反射率の2種類の反射率だけで構成することも可能である。
【0015】
また、上記第2ミラー24の反射面は上記第1ミラー23の反射面に対して所定の角度で傾斜している。
詳しくは、上記第1ミラー23における透過率が低い側の端部と上記第2ミラー24との間隔(図3における図示右方側の間隔)を、透過率が高い側の端部と第2ミラー24との間隔(図示左方側の間隔)よりも大きく設定している。
また第2ミラー24の反射面はレーザ光Lを全反射させるようになっており、上記第1ミラー23の反射面で反射したレーザ光Lを再び第1ミラー23に全反射させるようになっている。
【0016】
上記構成を有する導光手段7によれば、図3に示すように上記シリンドリカルレンズ22によって上記第1ミラー23の反射面に対して斜め方向からレーザ光Lを入射させると、レーザ光Lは第1ミラー23と第2ミラー24との間を、図3の図示右方から図示左方へと反射しながら伝播し、換言すると上記噴射孔12aの長手方向と同じ方向に伝播する。
第1ミラー23の反射面と第2ミラー24の反射面とは傾斜していることから、レーザ光Lにおける第1、第2ミラー23、24の反射面への入射角が徐々に小さくなってゆき、その結果、図示左方の位置となるにつれてレーザ光の反射する反射位置が相互に接近することとなる。
最終的には、レーザ光Lの入射角度は第2ミラー24の反射面に対して垂直となり、これによりレーザ光Lが第2ミラー24で反射すると、それまで形成されたレーザ光Lの光路に重畳されるようになっている。
【0017】
一方、上記レーザ光Lが第1ミラー23で反射する際、該第1ミラー23はビームスプリッターであることから、一部のレーザ光Lが噴射ノズル12側に透過し、残部のレーザ光Lが第2ミラー24へと反射するようになっている。
第1ミラー23を透過したレーザ光は、上記集光レンズ25によって集光され、上記ガラス板13を透過した後に、上記噴射ノズル12の噴射孔12aより噴射される液体の内部に導光されるようになっている。
そしてレーザ光Lは、第1、第2ミラー23、24との間で図示左右方向、すなわち上記噴射孔12aの長手方向に伝播することから、レーザ光Lは上記液体の内部を導光されることで、被加工物2に対してライン状に照射されるようになっている。
【0018】
ここで、第1ミラー23における図示右方で反射するレーザ光L、すなわち第1、第2ミラー23、24での反射回数が少ないレーザ光Lは、第1ミラー23の透過や反射による出力の低下が少ないため、高い出力を保っており、第1ミラー23を透過するレーザ光Lの出力も高いものとなっている。
逆に、第1ミラー23における図示左方で反射するレーザ光L、すなわち第1、第2ミラー23、24での反射回数が多いレーザ光Lは、第1ミラー23の透過や反射による出力の低下が大きいため、出力が低くなっており、第1ミラー23を透過するレーザ光Lの出力は低くなってしまう。
これに対し、本実施例では上記第1ミラー23におけるレーザ光Lの透過率が、レーザ光Lが入射する側の端部が低く、反対側の端部にかけて徐々に高くなるようにしており、第1ミラーの図示右方側で透過したレーザ光の出力と、図示左方側で透過したレーザ光の出力とを揃えるようになっている。
具体的に説明すると、第1ミラー23の図示右方側は透過率が低いため、ほとんどのレーザ光Lが第2ミラーへと反射し、第1ミラー23を透過するレーザ光Lの割合を少なくして、透過したレーザ光Lの出力を抑えるようになっている。
一方、第1ミラー23の図示左方側となるにつれて透過率が高くなるため、徐々に第1ミラー23を透過するレーザ光Lの割合が高くなり、透過するレーザ光Lの出力を高くすることができる。
その結果、第1ミラー23の図示右方側で透過したレーザ光Lの出力と、図示左方側で透過したレーザ光Lの出力との出力差を少なくすることができ、上記液柱Wに導光されるライン状のレーザ光Lの一端と他端とで出力を揃えることが可能となっている。
【0019】
しかも本実施例では、第1ミラー23と第2ミラー24とが傾斜していることから、レーザ光Lが第1、第2ミラー23、24で反射を繰り返すことで、図示左方側でレーザ光Lの反射位置が相互に接近するようになっている。
その結果、上記被加工物2に照射されるレーザ光Lの照射範囲同士が重なり合うこととなり、これにより第1ミラー23の透過や反射で低下したレーザ光Lの出力を補うことが可能となっている。
さらには、第1、第2ミラー23、24で反射を繰り返したレーザ光Lは、最終的に第2ミラー24の反射面に対して垂直に入射して、元の光路に重畳されるようになっている。
その結果、出力が低下している図示左方側において、重畳されたレーザ光Lの一部が上記第1ミラー23を透過するため、この重畳されたレーザ光Lの分、レーザ光Lの出力を補うことが可能となっている。
【0020】
以下、このような構成を有するレーザアニール装置1を用いたレーザ加工方法について説明する。
本実施例では、噴射ノズル12の噴射孔12aの寸法を、図2における幅を0.1mm、図3における幅を300mmとし、また噴射する液体の水圧を5〜30MPaとし、レーザ発振器4のレーザ強度を50〜200mJ/パルス、パルス幅を10〜100nsとした。
この状態からレーザアニール装置1を始動させると、制御手段の制御により液体供給手段5が液体を加工ヘッド6に向けて送液し、加工ヘッド6内の液体通路11a内に液体が充満すると、液体は上記噴射ノズル12の噴射孔12aから噴射される。
また上記噴射孔12aは細長く形成されていることから、噴射された液体は薄板状の液柱Wを形成し、被加工物2の表面にはライン状に衝突し、その後被加工物2に達した液体はレーザ光の照射される部分を覆うようになっている。
一方、制御手段の制御によりレーザ発振器4がレーザ光Lを照射し、レーザ光Lは導光手段7を構成するシリンドリカルレンズ22を透過した後、平行な光となって第1ミラー23の反射面に対して斜めに入射する。
そして、レーザ光Lは上記第1ミラー23と第2ミラー24との間で反射を繰り返し、その際一部のレーザ光Lが第1ミラー23を透過して、上記集光レンズ25によって集光された後に、上記噴射ノズル12より噴射された液柱Wの内部に導光される。
レーザ光Lはこの液柱Wを形成する液体と周囲の大気との境界で反射しながら被加工物2まで導光され、被加工物2に対してライン状となって照射されることとなる。
【0021】
そして、上記加工テーブル3は被加工物2を100mm/sで移動させ、これによりライン状に照射されたレーザ光Lの長手方向に対して被加工物2が直交する方向に相対移動することとなり、被加工物2の表面を面状にアニーリングすることができる。
このとき、液柱Wの内部を導光されたレーザ光Lは、アモルファスシリコン膜2bを急激に加熱して結晶化させてポリシリコン膜を形成するが、その際レーザ光Lによって加熱された部分を略同時に液柱Wの液体によって急激に冷却することができる。
このようにポリシリコン膜を液体により急激に冷却することで、真空中で行うアニーリングに比較して結晶粒を大きくすることができ、電子の移動度の高いポリシリコン膜を得ることができる。
またレーザ光Lの照射される部分を液柱Wの液体によって覆うことにより、当該部分が大気に触れない状態を維持することができ、ポリシリコン膜の酸化を大幅に軽減することができる。
【0022】
上記実施例によれば、導光手段7として一部のレーザ光Lを上記噴射孔12aから噴射される液体へと透過させ、残部のレーザ光Lを反射させる第1ミラー23と、該第1ミラー23に対向する位置に設けられてレーザ光Lを第1ミラー23に全反射させる第2ミラー24とを設けることにより、上記噴射ノズル12の噴射孔12aより噴射される液柱Wを介してライン状のレーザ光Lを被加工物2に照射することができる。
その際、上記第1ミラー23におけるレーザ光Lの透過率を、該第1ミラー23における一端から他端にかけて徐々に高くなるように設定し、レーザ光Lを透過率の高い側から入射させることで、第1ミラー23を透過したライン状のレーザ光Lにおける一端から他端までの出力を均一化することができ、上記アニーリングを一定の品質で行うことができる。
また、上記第1ミラー23の反射面と第2ミラー24の反射面との角度を、上記レーザ光Lが入射する第1ミラー23における透過率が低い側の端部と第2ミラー24との間隔が、透過率が高い側の端部と第2ミラー24との間隔よりも広くなるような角度に設定している。
これにより、上記第1ミラー23における透過率が高い側の位置で、出力が低下したレーザ光Lの反射位置と反射位置とを接近させることができ、上記ライン状のレーザ光Lにおける一端から他端までの出力を均一化することができる。
さらに、上記第1ミラー23と第2ミラー24との間で複数回反射したレーザ光Lを、上記第2ミラー24の反射面で垂直に反射させて、該レーザ光Lを元の光路に重畳させるようになっている。
これにより、反射によりレーザ光Lの出力が低下してしまう第1ミラー23の透過率が高い側で、元の光路に重畳されたレーザ光Lが第1ミラー23を透過するため、当該位置でのレーザ光Lの出力を補うことが可能となっている。
そして上記実施例におけるレーザアニール装置1によれば、ライン上のレーザ光Lを形成するために、反射鏡を回転させてレーザ光Lを各位置に反射させるガルバノミラーや、このガルバノミラーで反射されたレーザ光Lを被加工物2へ集光するfθレンズ等が不要であり、機構が簡易ととなると共にその制御も容易となっている。
【0023】
なお、上記実施例では噴射ノズル12より薄板状の液柱Wを噴射して、この液柱W内にレーザ光Lを導光させるようになっているが、上記噴射ノズル12と被加工物2とを接近させて、上記液柱Wを形成せずに上記噴射ノズル12と被加工物2との間で上記液体によって被加工物2を覆う膜を形成するようにしてもよい。
また、上記実施例は被加工物2の表面をアニーリングするレーザアニール装置1に関するものであるが、本発明は当該レーザアニール装置1に限らず、被加工物の表面にレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工方法ならびに装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 レーザアニール装置 2 被加工物
4 レーザ発振器 5 液体供給手段
6 加工ヘッド 7 導光手段
12 噴射ノズル 12a 噴射孔
23 第1ミラー 24 第2ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射孔から被加工物に対して液体を噴射し、この液体により被加工物の表面の所要部分を覆うとともに、噴射した液体内にレーザ光を導光して被加工物の表面にレーザ光を照射し、被加工物の加工を行うレーザ加工方法において、
上記噴射孔を細長く形成して、被加工物に向けてライン状に液体を噴射し、
一部のレーザ光を上記噴射孔から噴射される液体へと透過させ、残部のレーザ光を反射させる第1ミラーと、該第1ミラーに対向する位置に設けられてレーザ光を第1ミラーに反射させる第2ミラーとを設け、
さらに、上記第1ミラーにおけるレーザ光の透過率を、レーザ光を入射させる側の一端を該第1ミラーにおける他端より低くなるように設定し、
レーザ光を第1ミラーと第2ミラーとの間に入射させるとともに複数回反射させ、上記第1ミラーを透過したレーザ光が上記噴射孔より噴射された液体の内部に導光されてライン状に被加工物に照射されるようにしたことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
上記第1ミラーにおける透過率が低い側の端部と上記第2ミラーとの間隔を、透過率が高い側の端部と第2ミラーとの間隔よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
液体を噴射する噴射孔が形成された加工ヘッドと、レーザ光を照射するレーザ発振器と、上記レーザ光を上記噴射孔より噴射される液体に導光する導光手段とを備え、
上記加工ヘッドの噴射孔から被加工物に対して液体を噴射して、この液体により被加工物の表面の所要部分を覆い、さらに噴射された液体内に上記導光手段が上記レーザ光を導光して、該レーザ光により被加工物の表面を加工するレーザ加工装置において、
上記加工ヘッドの噴射孔を細長く形成して、被加工物に向けてライン状に液体が噴射されるようにし、
上記導光手段は、一部のレーザ光を上記噴射孔から噴射される液体へと透過させ、残部のレーザ光を反射させる第1ミラーと、該第1ミラーに対向する位置に設けられてレーザ光を第1ミラーに反射させる第2ミラーとを備え、
さらに上記第1ミラーにおけるレーザ光の透過率を、レーザ光を入射させる側の一端が該第1ミラーにおける他端より低くなるように設定し、
レーザ光を第1ミラーと第2ミラーとの間に入射させるとともに複数回反射させ、上記第1ミラーを透過したレーザ光が上記噴射孔より噴射された液体の内部に導光されてライン状に被加工物に照射されることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
上記第1ミラーにおける透過率が低い側の端部と上記第2ミラーとの間隔を、透過率が高い側の端部と第2ミラーとの間隔よりも大きくしたことを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
上記第1ミラーは、その反射面に複数の透過率が異なるコーティングを設けて、透過率が第1ミラーにおける上記一端から他端にかけて徐々に高くなるようにしたことを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
上記第1ミラーは、反射率が異なる複数のミラーを、透過率が第1ミラーにおける一端から他端にかけて徐々に高くなるように整列させたことを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載のレーザ加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−38342(P2013−38342A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175271(P2011−175271)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】