説明

ロバストなロケーション推定

位置の信頼できる推定を補足するために情報を収集する方法が提供される。方法は、第1の位置の信頼できる推定を導き出すのに十分な第1の情報を受信するステップと、第1の位置の付近の第2の位置の補足の推定が要求されうることを示す指示を受信するステップと、指示に応答して、第1の位置の付近の観測可能な少なくとも1つの地上無線ソースの識別を備える情報を検知することと、検知された情報を第1の位置に関連して格納するステップとを備える。方法は、第1の位置の信頼できる推定が、続いて少なくとも1つの無線ソースが観測可能である任意の前記第2の位置を推定するために使用されるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまなソースからのロケーション推定を組み合わせて、推定のロバスト性(頑強性)を向上させる方法に関する。本発明は特に、ロケーション推定の1つが、全地球測位システム(GPS)のような、衛星測位システムによって提供される場合に関する。
【背景技術】
【0002】
GPSは、ロケーションを決定するための優れた手段であり、その使用は、国内のポータブル製品にますます浸透している。理論上は、GPSの可用性は地球の表面上に遍在するが、既成市街地においては、上空の視界が悪いことも多く、そのためGPS信号が常に取得されうるとは限らない。さらに、高層ビルからの反射は、多重干渉を生じる可能性があり、たとえ位置を計算することが明らかに可能である場合であってもエラーを引き起こすおそれもある。市街地以外に、屋内または枝葉の下にいることでも、通常GPS信号の受信を妨げる。
【0003】
全体的な信頼性が高められうるように、別の測位システム・データでGPSデータを補足することが知られている。携帯(セルラー)電話通信基地局信号に基づく三角測量は、GPSシステムに付加的なロバスト性をもたらすために、精度がわずかに劣る一時測位システムとして採用されうる。このタイプのアシステッドGPSシステムは、主として、GPS受信機が移動体通信デバイスに組み入れられるシナリオ向けに開発された。モバイル・デバイスは、その通信インターフェイス(たとえば、GSMまたはGPRS)を使用して支援サーバにアクセスし、基地局信号の測定を送信する。支援サーバは、基地局ロケーションのデータベースを保持し、受信した測定を使用して、モバイル・デバイスの位置を三角測量するために、それらのロケーションを使用する。次いで、ロケーション推定はデバイスに送信される。三角測量およびデータベース保持は、計算処理およびメモリを集約的に使用するタスクであり、モバイル・デバイスによって容易に実行されうるものではない。
【0004】
以前、測位システムとして機能するロケーション・ビーコン・データベースを提供することが提案された。ビーコンがWiFi(WLAN)アクセス・ポイント(AP)である場合、そのようなデータベースは、それらのMACアドレス、APの計算された推定位置、およびおそらくはそれらの電力プロファイル、すなわちAPの周囲のさまざまなロケーションにおいてどのような信号強度が期待されうるかを含む。データベースは通常、既知のロケーションにおいて観察されたAPの識別およびAP信号強度の測定、ならびに場合によってはその他の信号データ(たとえば、ドップラー、エラー率)を収集する、いわゆる「ウォードライブ」を実行することによって読み込まれる。APの観察のロケーションは、GPSシステムによって決定されうる。
【0005】
検出されたAPの推定ロケーションを使用するためには、ロケーションを支援するために使用されうる前に、各APのロケーションが推定されるように十分なデータ・サンプルが最初に収集されている必要がある。したがって、AP信号の検出に関連するデータの小さい集合は、信頼を持って使用されてはならない。APのモデルを用いて、検出された信号の互いに素な集合を扱うことの難しさがある場合もあるが、これは、たとえばAPの可視性の2つの別個のパッチがある場合など、容易に生じる可能性がある。関心対象の地域を徹底的にトラバースする「ウォードライブ」を実行することが負担となるので、通例では、データベースを構築する責任が通常は一私人のアマチュアである投稿者の間で共有される。このような状況において、データ・サンプルには、最もよく訪れるルートおよびロケーションに偏る強い傾向がある。このいわゆる「幹線バイアス(arterial bias)」は、推定されたAPロケーションに系統的な不正確さをもたらす。さらに悪いことに、各寄稿者は、較正または制御を行うことなく、必要な信号測定を行うために異なるハードウェアを使用してきたことになり、結果としてデータに未知のばらつきをもたらす。
【0006】
データベースは、ユーザが位置修正を要求するときに使用される。従来技術によれば、修正を見つけ出すプロセスは通常、以下の、
(i) 観測可能なAPを、それらの信号強度およびその他の信号データとともにスキャンすること
(ii) データベースの中で、ロケーションに関する参照データ、および場合によってはそれらのAPの電力プロファイルを検索すること
(iii) 推定されたユーザ位置を導き出すこと
がある。
【0007】
この手法は、膨大量のデータ分析、および中央サーバへの接続、またはモバイル・デバイスのデータベースのローカル・コピーのいずれかを必要とする。
【0008】
米国特許第7,397,424号明細書では、データベースの読み込みおよびその使用が単一デバイスによって実行されるシステムを開示している。つまり、GPS受信機および無線スキャナを組み入れるデバイスは、GPS信号が使用可能であるときに「ウォードライブ」機能を実行し、収集された情報を使用してGPSが使用不可であるときにビーコン・ベースの測位を実行する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様によれば、位置の信頼できる推定を補足するために情報を収集する改良された方法が提供され、方法は、第1の位置の信頼できる推定を導き出すのに十分な第1の情報を受信するステップと、第1の位置の付近の第2の位置の補足の推定が要求されうることを示す指示を受信するステップと、指示に応答して、第1の位置の付近の観測可能な少なくとも1つの地上無線ソースの識別を備える情報を検知するステップと、検知された情報を第1の位置と関連して格納するステップであって、第1の位置の信頼できる推定は続いて、少なくとも1つの無線ソースが観測可能である任意の前記第2の位置を推定するために使用されてもよいステップとを備える。
【0010】
これは、無線AP測位に必要なビーコン−識別データを収集するためのインテリジェントな方法を提供する。基本的に、ローカル無線ソースの測定(検知)は、均一の無差別なサンプリングに依存するのではなく、情報が有用となる可能性が高いインスタンスが適応して対象とされる。観測(またはそれらの密度)は、位置の導出が妨げられる可能性が高いときを予測することが可能である場合、インテリジェントに対象とされうる。これは、信号損失の特定の先行インジケータを使用して観測をトリガーすることによって達成されうる。したがって、位置の補足推定が必要とされうることを示す「指示」は、任意の特定の時間および場所において環境をサンプリングすることの見込みの有用性の予測子である。言い換えれば、指示は、特定の環境において増強されたロバスト性が望ましいとされるであろうという予測である。検知ワークロードにさらに重点を置くことにより、電力消費量および不必要または冗長な観測の数が軽減される。このことは、方法がポータブル/ハンドヘルド・デバイスにおいて実施される場合、実際面でよくあるように、バッテリの寿命の増大につながる。これはまた結果として、必要に応じて、無線AP測位のためのより小型の、さらに効率的なデータベースをもたらす。さらに、観測データベースの読み込みがインテリジェント・インジケータによってリアルタイムで影響を受けるので、結果として得られるデータベースは、個々のユーザの必要性および使用パターンに合わせて本質的にカスタマイズされることになる。関連する利点として、幹線バイアスの問題がユーザの利点に変えられ、観測の任意のバイアスは、その特定の個人によってしばしば訪れられる場所に偏るであろう。方法によれば、無線ビーコン測位は、位置の信頼できる推定を補足する。信頼できる推定を提供する手段は異なることもあるが、通常は無線ビーコン測位で可能な導出と同等かまたはそれ以上の精度となるであろう。地上無線ビーコンの検知が、正確に第1の位置において実行されることが必須ではないことに留意されたい。各観測が、その対応する受信された第1の情報に関連付けられて、概ね同一の位置に対応すると仮定されうることで十分である。方法の基礎をなす仮定は、検知された無線ビーコンの同じ集合が第1の位置、第2の位置、およびビーコン識別が検知されるポイントにおいて可視であるということである。ビーコン測位システムによって提供される補足位置推定は、この条件が満たされる限りにおいて正確である。
【0011】
第1の情報は、衛星測位信号データであってもよい。
【0012】
これは、信頼できる測位手段の1つの有益な例である。衛星測位は、衛星信号が使用可能である場合、極めて正確かつ自律的(ユーザ入力を必要としない)である。これはまた、地上無線ソースを介して測位を補足する、つまり、衛星測位は高密度の都市環境において信頼性が劣るが、そのような環境は通常、ビーコンとして使用されうる無線ソースの高密度を示す。衛星測位は、ポータブル・ナビゲーション・デバイスにおいて「リアルタイム」で実行されてもよく、衛星データは処理されて、それが受信された位置を導き出す。しかし、方法は、「収集して後に処理」(これ以降「収集および処理」)のシナリオにおいて同様に適用可能であり、この場合、衛星信号は格納されて、後になってから位置情報を抽出するために処理される。収集および処理の事例において、上記で説明される第1の情報は、中間周波数(IF)データ・サンプルのような、「生の」衛星信号データ・サンプルから成る。このデータおよび検知された無線識別(または複数の無線識別)は、第1の位置に関連付けられて格納される。続いて、データ・サンプルは処理されて、第1の位置の信頼できる推定を導き出し、次いでこの推定は、類似したビーコン識別の集合が検知された近隣の第2の位置を推定するために使用可能である。
【0013】
あるいは、第1の情報は、ユーザによって手動で入力されてもよい。
【0014】
ユーザ入力は、信頼できる位置情報のもう1つの有益なソースである。この入力は、たとえば、地理座標または(座標が導出されうる)アドレスを構成することができる。
【0015】
指示は、衛星測位信号を受信するためのポータブル・デバイスのアクティブ化または非アクティブ化と、検出された衛星測位信号の受信の減衰、損失、または回復のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
【0016】
ポータブル・ナビゲーション・デバイス(PND)をオンまたはオフに切り替えることは、それ自体、ユーザが関心対象または重要な場所にいることを示す指示でありうる。一次測位システムが衛星測位システムである場合、これらのイベントはまた多くの場合、たとえばガレージに駐車されているか、または建物内に入ることによる、衛星信号の損失に関連付けられている。位置の補足推定は、いずれの理由でも必要とされうる。同様に、受信される衛星信号の減衰またはその損失は、代替の位置推定が必要となることを指示する。そのような減衰は、信号、信号対雑音比、多重干渉のレベル、または任意の他の適切な方法から位置推定を計算できることに関して測定されてもよい。逆に、利用不可期間の後に再び衛星信号を受信することは、ユーザが当該の道程を繰り返すかまたは逆にたどることができ、そのため無線観測を必要とする場合もあるので、環境をサンプリングするための有益な場所を指示する。
【0017】
指示は、衛星測位信号を受信するためのポータブル・デバイスの移動特性を備えてもよい。
【0018】
移動および移動パターンは、補足測位情報の必要性の有用な予測子を提供する。移動情報は任意のソースから得られてもよく、たとえば衛星測位の場合、移動情報は位置推定の履歴として使用可能であるか、またはドップラー測定から導かれてもよい。あるいは、移動の指示は、加速度計または振動センサーのような独立したソースから提供されてもよい。
【0019】
指示は、ポータブル・デバイスの検出された低速度、ポータブル・デバイスの検出された減速または停止、およびポータブル・デバイスの検出された発進または加速のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
【0020】
発進または停止は、有用な中継地点ならびに道程の開始および終了を指示してよい。低速または減速は、衛星測位信号が劣化されることがある高密度の市街地に入ったことを指示してよい。逆に、加速は、後に再度入る可能性のある過密地域から出ることを指示してよい。いずれの場合にも、他の場合に補足測位推定をサポートするため、付近で無線ソースを検知することは慎重といえる。
【0021】
方法はさらに、指示に応答しての初期検知ステップの後に、さらなる検知ステップを抑止するステップをさらに備えてもよい。
【0022】
これは、データベースの冗長性を防ぎ、電力消費量をさらに低減する。特定の刺激に応答して一度環境がサンプリングされてしまうと、同じ測定を繰り返すことは無駄となることもある。たとえば、衛星測位信号が失われるか、または信号強度が低下した場合、環境の1つのサンプリングが指示されるが、繰り返される観測は、冗長であり、しかも観測が関連付けられている前回の正常な信頼できる位置推定と次第に無関係になる傾向がある。同様に、観測のトリガーがポータブル・デバイスの低速の移動または停止である場合、無線識別の同じ集合が複製される可能性があるので、追加のサンプリングは価値が劣ってしまう。
【0023】
指示は、アプリケーション・イベントを備えてもよい。
【0024】
写真を撮るなどのアプリケーション・イベントは、再度訪問されることもあり、信頼できる完全な位置推定が重要となる有意なロケーションを指示してよい。これらの状況において無線ビーコン・サンプリングをトリガーすることは、ユーザにとって重要な場所の完全な網羅を確実にする。さらになお詳細には、これは、写真が撮られるときに無線環境がサンプリングされ、この観測が第1の位置に関連して格納されることを意味する。この格納された情報は、たとえばその地域でさらに写真が撮影されるが、位置の信頼できる(たとえば、GPS)推定が使用可能ではなくなっている場合など、無線観測のみを使用する後の位置推定をサポートすることができる。
【0025】
検知された情報は、第1の位置における環境に関する追加情報を備えてもよい。
【0026】
観測は、ローカル・ビーコンの識別を単に記録することを超えて、受信された信号出力、着信の方向、またはSNRのような、信号パラメータを測定することにまで及んでもよい。
【0027】
本発明のもう1つの態様によれば、請求項1から10のいずれかに記載のすべてのステップを実行するように適応されたポータブル・ナビゲーション・デバイスが提供され、デバイスは、第1の位置の信頼できる推定を導き出すのに十分な第1の情報を受信するための受信側装置と、第1の位置の付近の第2の位置の補足の推定が要求されうることを示す指示を受信するための受信側装置と、第1の位置の付近の観測可能な少なくとも1つの地上無線ソースの識別を備える情報を検知するための検知装置と、検知された情報を第1の位置に関連して格納するためのメモリとを備える。
【0028】
本発明は、これ以降、添付の図面を参照して例示により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態によるデバイスを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による情報を収集する方法を示す流れ図である。
【図3】もう1つの実施形態による情報を収集する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
GPSとビーコン・ベースの測位を組み合わせる従来技術の方法は、個人が関心対象の地域を動き回り、すべての可視のWiFiアクセス・ポイントの観測を収集して、それらを測定されたGPS位置と相関させる専用の「ウォードライブ」の概念に依存していた。本発明の発明者は、この手法が、大規模な共有のデータベースを読み込むため、およびAPロケーションを明示的に推定するためには良好に機能するが、単一の独立したユーザには適切ではないことを認識していた。これに反して、GPSによる位置推定とWiFi(GPSが使用できない場合)を動的に切り替える必要があるポータブル・デバイスの場合は、インテリジェントなWiFi APデータの収集を対象とするほうがはるかに優れている。すなわち、WiFi観測は、後で役立つ可能性が高い場合にのみ行われる。このことは、冗長で不必要なAP観測をなくすことにより、電力およびメモリ消費量を節約し、さらに所与のユーザの使用パターンおよびアクティビティに合わせてデータベースをカスタマイズする。規則的に定期的なサンプリングを行う体制では、電力消費量を軽減する唯一の方法は、サンプルの度数を減らすことであるが、それは測位システムの全体的な精度およびロバスト性を低下させることになる。したがって、現在のシステムにおいて、適応してトリガーされた観測からの位置推定の品質は、まばらにサンプリングされた通常の観測からの位置推定の品質よりも高い。
【0031】
発明者はまた、データベースにAP観測を追加することが有用となりうるタイミングを指示する、通常のPNDに容易に使用可能な多数の関連するキューがあることを認識している。
【0032】
図1は、一実施形態によるロバストな位置推定のためのシステムを示す。説明を明確にするため、システムは、リアルタイムGPS測位に関連しているという仮定の下に説明されるが、これはシステムを収集および処理システムとして実施する可能性を除外するものではない。
【0033】
システムは、WiFiロケータ・デバイス10を含むが、これは既存のGPS受信機20およびナビゲーション・アプリケーション30を増強することが目的とされている。すなわち、標準的な構成において、GPS受信機20は、ナビゲーション・アプリケーション30に直接接続される。例において、これらの2つの間の通信は、NMEA(National Marine Electronics Association−NMEA0183)インターフェイスを介する。WiFiロケータ10は、それぞれのデバイスの既存のNMEAインターフェイスを介して、GPS受信機20から入力を受信し、増強された位置データをナビゲーション・アプリケーション10に出力するように設計されている。
【0034】
WiFiモデム40もまた、WiFiロケータ10に接続されている。モデム40は、デバイスの付近でWiFi(WLAN)アクセス・ポイントと通信することができる。特に、モデム40は、各々の識別(通常MACアドレスにより与えられる)を決定するために、APに(受動的または能動的に)問い合わせを行うことができる。個々の各MACアドレスは一意であるため、所与のどの瞬間にも可視のAPの集合は、WiFiロケータ・デバイスのロケーションを推論するために使用されてもよい。この推論の精度は、基本的に、各APの送信機レンジ、およびAPの集合の物理的配置に左右される。しかし、推論はまた、情報相互参照の可用性または位置へのAP識別の関連付けに依存する。この情報は、動的な対応でデバイスによって収集される。
【0035】
WiFiロケータ10は、プロセッサ50およびメモリ60を含む。プロセッサは、WiFiモデム40およびGPS受信機20の両方からデータを受信する。リアルタイムGPSの実施態様を使用するこの例において、GPS受信機20から受信されたデータは、地理座標のような位置情報から成る。データはまた、GPS受信機20の状態、および提供されている位置推定の予測エラーのような、追加情報を含んでいてもよい。GPS受信機によって提供される位置情報は、一次の信頼できる位置推定を備える。GPS位置は、その他の推定が(WiFi測位を使用して)推論されうる参照として使用される。
【0036】
プロセッサは、WiFiモデム40からWiFi APの観測を受信する。これらは、モデム40によって検出された付近の無線APのMACアドレスのリストから成る。モデム40は、能動スキャンまたは受動スキャンによってこのリストを生成することができる。能動スキャンにおいて、APには、モデム40によってクエリーによる問い合わせが行われる。受動スキャンにおいて、モデムは単に、ブロードキャストAP識別情報を記録する。スキャンは、WiFiロケータ10においてプロセッサ50によって明示的に開始される(要求される)。連続的な定期スキャンを実行するのではなく、スキャンがプロセッサ50により明示的にトリガーされるまで待機することで、WiFiモデム40は電力を節約する。トリガーされたスキャンは、個々のユーザに最も有用な状況に対応するようにインテリジェントに選択されるので、メモリ60の容量もまた、さらに効率的に使用される。すなわち、スキャンは、WiFi位置推定がその後必要とされる可能性があることを示す指示に応答して、プロセッサ50によって要求される。この指示は、後段においてさらに詳細に説明されるように、複数のソースから導かれてもよい。
【0037】
プロセッサ50は、受信された位置情報および観測をメモリ60に格納する。メモリは、わずかに1つの前の観測および位置だけを格納する単純バッファを備えてもよい。あるいは、メモリは、記録された位置および観測のより長い履歴を格納することができる。
【0038】
プロセッサ50は、GPS位置推定およびWiFi AP観測の格納済みの履歴を使用して、ナビゲーション・アプリケーション30に提供されるロケーション推定を増強する。組み合わされたGPSおよびWiFi情報に推定を基づかせることにより、WiFiロケータ10は、いずれかを単独で使用することにより使用可能となる位置情報よりもさらにロバストおよび/またはさらに高速な位置情報を提供することができる。たとえば、GPS受信機20が位置推定を提供することができないが、それにもかかわらずWiFiモデムが観測を提供する場合、プロセッサは現在の観測を格納済みの観測と比較することができる。APの類似する集合が可視であることを比較が示す場合、プロセッサ50は格納済みの位置情報(格納済みのAP観測に対応する)をロケーション推定としてナビゲーション・アプリケーション30に提供する。
【0039】
オプションで、メモリの内容は、共有サービス70にアップロードされてもよい。そうすることで、その他のデバイスまたはユーザが、デバイスによって収集された位置および観測の集合を利用できるようになる。これは、複数のデバイスが同一のユーザによって所有されている場合、各デバイスによって格納された情報がそのユーザに同等に関連しており、各デバイスによって、あたかもそのデバイスにより収集されたかのように使用されうるので、特に有益である。情報がユーザ間で共有される場合、データの個々の関連は縮小されることもあるが、たとえば個人で収集したデータがデータベースで使用可能になる前に新しいロケーションを始めて訪れるときなど、別のユーザの共有データは全くないよりは、有していたほうがより望ましい場合がある。複数のロケーションを認識するデバイスを所有するユーザにとってのもう1つの可能性は、すべてのデバイスを単一のWiFiロケータにリンクすることであろう。すなわち、複数のナビゲーション・アプリケーション30が、共通のWiFiロケータ10によって使用可能にされてもよい。
【0040】
図2は、本発明の第1の実施形態による方法を示す流れ図である。すでに述べたように、これはリアルタイムGPSの実施態様に関して説明される。ステップ100において、信頼できる(つまり、GPS)信号データAが取得される。信号データは、GPS衛星から受信された信号を備え、位置が計算されるようにするのに十分である。衛星信号データは、ロケーションAにおいて受信される。
【0041】
ステップ110において、ロケーションAの付近で2次位置推定が必要とされる可能性があることを示す指示が受信される。この要求は、たとえば、GPS信号が使用可能ではないと予想される、および/またはこのロケーションがユーザにとって特に重要性があるなど、さまざまな理由から生じることがある。
【0042】
指示は、多数のソースから同様に推論されうる。観測の値の1つの有用なインジケータは、衛星位置測定自体の品質または可能性である。したがって、1つの例において、指示は、まもなく位置修正を計算することが不可能になることを指示する、減衰するGPS受信の直接測定であってもよい。たとえば、GPS修正を介する位置測定がもはや可能ではない場合、ユーザは、良好な信号環境から不十分な信号環境へと移動した(たとえば、入口を通って屋内に入るなど)ものと仮定される。検知されたAP識別のサンプル観測は、入口の付近の環境に関する情報をもたらす。同様に、観測は、GPS修正の品質が不十分である場合に有用であってもよい。この場合、ユーザは限界条件にあり、環境がさらに悪化する可能性が高く、したがって、収集されたすべての情報がこの段階において有用となりうる。一方、観測はまた、使用不可の期間の後にGPS修正が可能になったときにトリガーされてもよい。これは、ユーザが自分の行路を逆戻りする場合、または次の機会に確かに道程をたどる場合に、格納する有用な境界事例であってもよい。そのイベントの環境に関する以前の知識は、見込みのある修正測定の予測を支援するであろう。
【0043】
別の場合において、指示は、PND自体のアクティブ化または非アクティブ化から推論されてもよい。PND(またはそのロケーション機能)の電源遮断手順の1つの段階は、その後の再アクティブ化の際に環境ひいては見込みのあるロケーションを認識するために、信号環境をサンプリングすることができる。同様の理由から、サンプリングは、デバイスまたはロケーション機能をオンに切り替えるときにトリガーされてもよい。
【0044】
PNDの検出された移動パターンはまた、貴重な情報源を提供することもできる。移動は、GPSまたはその他の手段(たとえば、加速度計)による位置修正の測定の結果として検出されてもよい。1つの例示の手法において、観測は、デバイスが移動を停止したと見なされる場合にサンプリングされてもよい。これは、近隣の困難な(たとえば、屋内)環境に移動する可能性を予期して、環境のスポットサンプルを収集することである。デバイスが静止している間、環境が変化した場合、さらなるサンプルが(連続的、または頻繁にではなく)単にさらに長い間隔をおいて取られてもよい。サンプル観測はまた、たとえば歩く速度など、デバイスがゆっくりと移動している場合に取られてもよい。この場合は、同様に、ユーザが困難な(屋内)環境に移動する可能性があるか、もしくは駐車場またはガレージに入れようと操作していることを予期することが妥当である。サンプリングの度数は、高速で移動している場合に減少されてもよいが、これらの条件下において、GPS可視性は良好である可能性が高く、環境に関するさらなる情報は必要ない。静止位置からの発進(加速)は、逆の理由から、有用なインジケータであり、ユーザは、GPSの受信がほとんどまたは全くなく、環境から出現しただけの場合もある。これらのインジケータの各々の共通因子は、その後まもなくまたは将来の道程で、「境界」の事例、つまりGPS受信が信頼できなくなるかもしれないような状況にフラグを立てることである。
【0045】
その他のインジケータは、現在のロケーションが、ユーザにとって特に重要なものであることを意味する。特定のアプリケーションのアクティビティは、ロケーションに依存するものであり、また関心対象のイベントが発生したことを指示することもできる。写真を撮ることは、その好例であり、ユーザがすぐ身の回りのことに関心を持っていることを示す。同等に、特定のユーザ要求が、トリガーであってもよい。ユーザは、道程の中継地点、お気に入りのレストラン、またはその他の目標物にマークをつけるために手動で観測を要求することができる。そのような手動のサンプリングにより、環境を、関心対象の任意のユーザイベントに関連付けられるようにすることができる。
【0046】
ステップ120において、指示に応答して、付近のWiFiビーコン(AP)の観測が取得される。この観測が、衛星信号データを受信した正確な時間またはロケーションにおいて実行されることは必須ではないが、受信および観測は、観測されるWiFi識別が衛星信号の受信の実際のロケーション(ロケーションA)から観測可能なWiFi識別と同じであるというかなり高い確信があるように、互いに十分に近接している必要がある。実際に、これは、WiFiビーコンの観測と衛星信号の受信が同期化されていない場合、衛星信号の受信は意味のある対応を確立することがまだ可能であるほどに十分に頻繁に発生していることを意味する。これは、ユーザデバイスの期待されるダイナミクスに依存してもよい。用途が車両測位である場合、GPS信号の受信は、関与するより高い速度で機能するために、歩行者の用途の場合と比較して、比較的頻繁である必要があってもよい。もちろん、慎重な設計であっても、方法の特性は、指示が受信されるロケーションにおいてGPS修正が不可能な場合があるようになっている。確かに、GPS信号の受信100とトリガー指示の受信110との間に遅延があった場合、そのようになる可能性は非常に高い。それにもかかわらず、一部の参照情報が全くないよりはよいと証明できるという前提で、観測を記録して、それを(一時的に)最も近接のGPS修正に関連付けることが有用である。
【0047】
観測の結果は、AP識別の集合である。ステップ130において、識別の集合は、対応するGPS修正の位置(ロケーションA)に関連付けられて、メモリ60に格納される。メモリに累積されたデータは、無線AP可視性に基づく後続の位置推定をサポートするために使用されうるデータベースを備える。すなわち、GPS信号が使用可能ではない場合、PNDが再度無線環境を検知して、今回は観測されたAPを累積されたデータベース内のエントリと比較することができる。新しい観測とデータベース内に格納された観測との間の類似性(可視APの集合間の共通性に関する)は、ユーザが以前訪れたロケーションにいるか、またはその付近にいることを示す。
【0048】
収集および処理の場合において、明示的な位置修正は、観測がデータベースに入力される(格納される)時点で使用可能ではないかもしれないことに留意されたい。この場合、AP識別の集合は、(「unknown1」のような)ラベルを用いて位置に関連付けられてもよい。次いで、IF信号データ・サンプルは、明示的な地理座標を抽出するために後で処理されるとき、それらの座標が対応する格納済みの観測に関連付けられうるように、同じラベルに関連付けられて格納されてもよい。
【0049】
第2の実施形態による方法において、上記で説明される方法のステップは順序付けられる。これは図3に示されており、観測が、観測の前ではなく後に取得された信頼できる位置推定に関連付けられている事例を表す。したがって、図3において、第1のステップ110は、無線環境を検知して観測をデータベースに格納せよという指示の受信である。ステップ120において、指示に応答して検知が実行される。その後、ステップ100において、位置の信頼できる(参照)推定の関連する第1の情報が取得される。上記の第1の例示的な実施形態の場合のように、最後のステップ130は、信頼できる位置情報に関連付けられている観測結果を格納することからなる。ステップのこのシーケンスは、たとえば第1のGPS修正が達成される前など、道程の開始時点の状況に適切である。
【0050】
当業者には明らかであるように、方法のステップの順序付けにはその他の変形が可能である。この関連で1つの制約は、無線AP識別を検知するステップ120が、検知せよという指示の受信に応答して(ひいてはその後で)実行されることである。もう1つの明白な実際的な制約は、観測(識別)が検知されるまで、観測(識別)の格納が行われることができないということである。
【0051】
前述のように、GPS測位は、AP位置データベースが構築されうる一種の信頼できる推定の一例に過ぎない。しかし、位置情報の任意の使用可能なソースは、有効な信頼できる推定であってもよい。確かに、それ以上の信頼できる情報が使用可能ではない場合、WiFi AP観察のみに基づいて推定された位置(すなわち、以前格納済みの観測を活用する位置推定)が使用されてもよい。これは結果として、実際、「信頼できる」参照位置が以前の推定から計算されるという、推定の「連鎖」をもたらすが、連鎖が長くなれば、それに応じて必ず精度の低下をまねくことになる。しかし、それにより、観測データが作成されて、それ以外の場合には決定することが不可能な位置に関連付けられるようにすることができる。これは、データベースの適応範囲を増大させる。多くの場合、これは受け入れることができ、ロケーションを完全に推定できないことよりも確かに好ましいとされる。たとえば、ユーザは、ドライブの道程の後にその目的地に到着して、建物内部に入るとする。PNDは、GPS修正を失うと同時に、無線アクセス・ポイントXを検知する。その後、ユーザはさらに建物の奥深くに入って行き、そこではPNDがAP−Xに加えてAP−Yを観測する。デバイスは、AP−Xが最初に見出された場所としてそのロケーションを推定することができ、前回の正常なGPS修正(駐車場からの)を使用してこの推定を導き出す。X+Yの観測は、この推定に関連付けられて格納される。さらにその後、AP−Xは見失われるが、AP−Yは引き続き可視である。AP−Yに関連付けられている真の位置修正(つまり、GPS位置)はなかったが、デバイスは格納済みの以前のロケーション推定(AP−YおよびAP−Xがいずれも可視であったときに導かれた)を2次推定の基準として使用することができる。推定の精度は、1次推定(つまり、駐車場のGPS修正に直接関連付けられている推定)の場合に比べて劣ることもあるが、それでもユーザを同じ所在地住所にとどめている。したがって、全体的な空間適用範囲が増大する。
【0052】
信頼できる位置情報の1つの有利な代替的ソースは、手動による入力ロケーションを信頼できる位置データとして使用することである。そのような手動による入力は、さまざまな形態をとることができる。たとえば、ユーザは、住所または郵便番号を入力することもでき、次いでそれが地理情報システム(GIS)と共に使用されて、位置座標を導き出すことができる。ユーザはまた、自分の位置を地図上にグラフィカルに指示することもでき、その最も簡単な形態で、これは、位置が前回使用可能な位置修正から変化していないことをPNDに確認することを伴ってもよい。GPSが使用可能ではない多くの状況において、ユーザの負担を最小にするためにユーザ入力を要求することは通常敬遠されているが、たとえば駐車場に駐車したとき、または道程を開始する前に建物内に停止しているときなど、郵便番号を入力したり、地図をクリックすることはほとんど不都合を生じない。ロケーションの手動による入力が発生する場合、ロケーションはGPS適用範囲の外部である可能性が非常に高く、また明らかにユーザの関心対象であるため、その入力自体が無線AP情報を検知せよという指示として見なされうる。したがって、観測は、現時点において手動による入力ロケーションに関連付けられて格納されるべきである。
【0053】
オプションで、観測をトリガーすること(およびサンプルのデータベースへのその入力)の後に、さらなる観測を抑止することが続いてもよい。この追加のステップは、同じ刺激(すなわち、トリガー指示)に応答して環境の繰り返されるサンプリングが検知される場合、冗長性が再び取り込まれうることを認識する。たとえば、1つの観測が行われてしまうと、デバイスが静止していることが知られている場合、別のWiFi観測を行うことにはあまり価値がない。
【0054】
上記で説明される方法は、以下の例示のシナリオにおいて利益をもたらすために使用されうる。
【0055】
ユーザは、自宅で自分のパーソナル・ナビゲーション・デバイス(PND)のスイッチを入れる。システムは、(アクティブ化に応答して)付近の無線APの観測を行って環境をサンプリングし、GPS受信機を始動する。ユーザは、新しい目的地に向かって車を走らせる(システムはGPSでナビゲートする)。ユーザは、無事到着して、駐車する。システムは、ユーザがPNDをオフにする前に、(停止したことに応答して)環境を再度サンプリングする。さらなるサンプリングは、電源オフコマンドによってトリガーされてもよいか、またはこの特別なサンプリングは、別個の観測がつい先頃にすでに行われているので抑止されてもよい。
【0056】
約束をすませると雨が降っている。ユーザは、自分のPNDをオンにして、帰宅のルートを探す。GPS信号は使用可能ではない。PNDは、さらなるAP観測から環境を認識し、前回オフにしたときとまだ同じ状態であるので、駐車した場所にユーザを配置する。ユーザは、この先カフェに立ち寄る道程を計画して、自動車のところに行き、出発する。GPSは信号を取得し、ユーザがカフェへの道程を全うするのを補助する。ユーザは中に入り、そこでシステムは(GPS信号が減衰すると観測がトリガーされて)別のAPの新しいWiFi信号を傍受する。GPS信号は失われているが、ユーザの位置は引き続きPNDに表示され、システムはそれ以降、検出したばかりのWiFi信号を使用している。コーヒーを飲みながら、ユーザは帰宅のルートを分析し、次いで家に向かって車を走らせ、無事に高速道路にのるとPNDをオフにする。
【0057】
翌日、ユーザは、次の約束の地に向かう準備が整い、再び自宅のガレージで車に乗る。ユーザは自分のPNDのスイッチをオンにする。システムは、GPS修正がまだ使用可能ではないので位置を決定するために環境をサンプリングし、(高速道路上の以前終了した場所ではなく)自宅のロケーションを認識し、ナビゲーション・システムに座標を提供して、即座に1日のルートを計画する準備が整う。
【0058】
この例示のシナリオは、本発明の方法の利点を示す。ユーザは、少量ではあるが、既知の位置に非常に関連性がある量のAP観測に関連するデータを収集した。次いでこれは、状況が必要とする場合には、GPS測位システムを増強するために使用されてもよい。格納済みの情報はユーザの活動に関連するので、情報品質は、一般的に調査されたデータベースの場合と比べて高い。さらに、すべての情報は、最新の(つまり、現行の)ものであり、即座に使用可能である。観測は、最も貴重であるか、または最も必要とされる可能性が高いときに収集される。さらに、そのようなインテリジェントなサンプリングはまた、不必要な観測の数をなくすか、または少なくとも減らすことができ、電力消費量を低減して、電池寿命の延長を助ける。
【0059】
上記で強調されているように、本発明は、以前読み込まれた、または共有されたデータベースに依存しないことによって特徴付けられる。しかし、それにもかかわらず、格納済みのデータを他のユーザのためにそのような共有データベースにアップロードすることが可能である。データはまた、そのような共有サービスからダウンロードされて、個々のPND自体によって行われた観測を増強することができる。しかし、ユーザ自身のデバイスによって収集された観測のほうが、ユーザの通常のナビゲーションの必要性と習慣的な移動にさらに関連する傾向が強いので、一般的な共有データよりもむしろ個々に収集されたデータを使用することが有利であってもよい。基本的に、自身で取得したデータは、所与のユーザに専用にされる。データが共有サービスにアップロードされるとき、プライバシー保護のため、およびデータが後に(見知らぬ人によってサブミットされた)他のデータよりも優先される(サブミットするユーザによって再使用されるとき)ようにするため、データはそのユーザに対応するものとラベル表示されてもよい。
【0060】
先行の例はすべて、本発明のリアルタイムGPSアプリケーションに焦点を当てている。しかし、すでに述べたように、構想は収集および処理のシナリオに同等に関連する。完璧を期すため、これ以降、それを収集および処理のシナリオに備えるための、図1のデバイスへの変更が説明される。収集および処理の体制において、図1のWiFiロケータ10はインテリジェント・ロガーになる。このデバイスは、GPS衛星放送の信号サンプルを受信して格納するように動作可能である。これはまた、トリガーされたスキャン要求に応答して、付近のWiFiノードの観測をサンプリングして格納する。次いで、ログに入れられたデータは、処理のために別のデバイス(パーソナル・コンピュータを含むが、これに限定されることはない)に提供されてもよい。GPS受信機20は、GPS無線周波数(RF)フロントエンドを備える。これは、生の衛星信号のデジタル表現を収集するために必要なフィルタリング、中間周波数(IF)へのダウンミキシング、およびサンプリング(アナログからデジタルへの変換)の機能を実行する。この簡略化されたGPS受信機は、必ずしもNMEAインターフェイスを使用して通信することはない。確かに、これはWiFiロケータ10に組み入れられる可能性がより高い。WiFiモデム40は、付近のアクセス・ポイントを検知/問い合わせして、従来どおり少なくともそれらの識別を決定する。観測およびIFデータ・サンプルは、後の処理のために、メモリ60に格納される。IFデータおよび観測は、相互に直接関連付けられてもよく、あるいは単にタイムスタンプと共に格納されて、対応が後に決定されるようにしてもよい。適切な時点において、格納済みの情報は、処理を完了する責任を負うデバイス(図1のナビゲーション・アプリケーション30)に伝送される。代替として、オフライン処理がロガー/ロケータ10において実行されてもよいが、たとえば時間の経過に伴うデバイスの電力消費量を正常化するため、ロギングが停止したときに限り処理するなど、都合のよい時点で実行されてもよい。いずれの場合にも、実行される処理は、リアルタイムの実施形態のコンテキストにおいて上記で説明されるものと同じである。1つのさらなる利点は、収集および処理システムが、因果推論を行うことに限定されないことである。すなわち、観測および信号データまたはロケーション推定の基準を形成する位置情報は、関心対象のイベント/観測の前および後のいずれでも、任意の時点から生じることができる。
【0061】
上記で説明される実施形態の特定の実施態様において数多くの変形が可能である。たとえば、観測は、ローカル無線APの識別を単に記録するのではなく、さらに詳細に環境をサンプリングすることを伴ってもよい。信号強度、着信の方向、および時間遅延のような、その他のパラメータは、すべて測定されてもよい。移動に関連する情報もまた有用であってもよく、たとえば、速度および時間または距離および方向の情報は、推測航法に組み込まれてもよい。これは、(正常な)位置推定が、将来(または過去)に予定されるようにすることができる。現在のコンテキストにおいて、これは、WiFi観測が行われた(観測がGPS信号データ収集と同期されていない場合)位置をさらに正確に推定するために使用されてもよく、トリガーされた観測のポイントに時間的に最も近接するポイントで収集された単一データは、観測の時点における位置を正確に推定するために移動データを使用して、必要に応じて、前方または後方に予定されうる開始ポイントを提供することができる。
【0062】
当然のことであるが、本発明の範囲は、無線LAN(WiFi)APのみに限定されることはない。その他の地上無線送信機は、同じ機能を果たす。たとえば、アナログおよびデジタル放送無線およびテレビジョン送信は、セルラー(携帯)電話通信基地局からの信号が観測されうるように、観測されてもよい。各々の場合において、送信機の識別は、異なる時間および場所における観測の間の接続を推論するために使用されてもよい。ビーコンが固定の送信機であることは絶対条件ではない(ただし、固定である場合、処理および推論はさらに簡単になる可能性がある)。たとえば、ブルートゥース無線デバイスは、観測される無線ソースであってもよい。多くのブルートゥース・デバイスはポータブルであるが、推論はより限定された範囲について引き続き可能であろう。たとえば、ブルートゥース・モバイル・デバイスの1つの集合は、家庭環境において常に観測されてもよく、第2の別個の集合は、職場環境において常に観測されてもよい。さらに長い測定の履歴格納およびさらに高度なアルゴリズムにより、どのソースが最も信頼できるかまたは特定のインジケータであるかの確信をますます高めて推定することが可能になる。
【0063】
前述のように、本発明の実施形態は、無線ソースの異なる観測の間の類似性または「重複」を計算して、関連性を確立し、ロケーションを推定するための参照位置を推定する方法に依存する。これらの方法の中でも、参照位置を推定するさらに高度な手法は、無線ソースの複数の観測が組み合わされて位置推定に到達するものであり、これはより正確となる傾向にある。一部の指示的な例は以下のとおりである。
【0064】
(i) すべての現在観測された信号が以前記録されているすべての格納済みの位置から平均位置を求める。すなわち、現在のロケーションを推定するために、現在の観測と同一の複数の観測をメモリから取り出し、次いで、単純空間平均によりそれらの複数の観測に関連付けられている位置情報を組み合わせて、現在のロケーションを推定する。
【0065】
(ii) ローカル・データベース内(つまり、メモリ内)にも格納されている現在観測された(無線ソースの)最も強い検知された信号を選択し、次いで、データベースがこの検知された信号の最強のインスタンスが観測されたことを報告する場合は必ずロケーションを推定する。これは、観測および位置推定の単一ペアに基づいて予測するが、このペアは、相対的な信号強度に基づいてインテリジェントに選択される。基盤となる2つの前提があり、第1は、最も強い観測された信号は最も近接するソースに対応すること、第2は、その信号の最も強い記録されたインスタンスは、ソースの位置に最も正確に対応することである。
【0066】
(iii) ローカル・データベース(メモリ)は、同一または類似する環境(つまり、検知されたソースの集合)が観測された最も新しいサンプルに対応するロケーションを見出すように検索されうる。この手法は、より最近の情報が、古い観測よりもさらに関連性があるという仮定の下に機能する。
【0067】
検知されたソースの2つの集合の「類似性」は、差集合または対称差のサイズと比較した、集合の論理積のサイズ(厳密には、基数)の分析を伴うことができる。すなわち、現在の観測と共通して多数のソースを有し、ほとんど余分または欠落したソースがない一致が探し求められる。集合理論を使用して類似性を定義する方法には多種多様なものがあることが、当業者には容易に理解されるであろう。
【0068】
オプションで、(列車上のWiFiノードのように)移動している信号ソースは、検出されて考慮されてもよい。たとえば、移動する特徴に関連付けられている可能性のある検知された信号は、多数の異なる「ロケーション」におけるそれらの出現を検出することにより、一部の検知された信号への高レベルのドップラー効果を検出することにより、または移動するプラットフォームに設置されているという基地局の通知を有することにより識別されてもよい。そのような信号は、静止のロケーションを見出すために無視されてもよいか、またはユーザが信号ソースと共に移動しているという前提を考慮するために使用されてもよい。
【0069】
本発明はGPS衛星測位を参照して説明されてきたが、本発明はGalileoおよびGLONASSのような、その他の全地球的航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)に同等に適用可能である。
【0070】
さまざまなその他の変更は、当業者には明かとなろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置の信頼できる推定を補足するために情報を収集する方法であって、
第1の位置の信頼できる推定を導き出すのに十分な第1の情報を受信するステップと、
前記第1の位置の付近の第2の位置の補足の推定が要求されうることを示す指示を受信するステップと、
前記指示に応答して、前記第1の位置の付近の観測可能な少なくとも1つの地上無線ソースの識別を備える情報を検知するステップと、
前記検知された情報を第1の位置と関連して格納するステップであって、前記第1の位置の信頼できる推定は続いて、前記少なくとも1つの無線ソースが観測可能である任意の前記第2の位置を推定するために使用されてもよいステップとを備える方法。
【請求項2】
前記第1の情報は、衛星測位信号データを備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記衛星測位信号データは、中間周波数信号のデータ・サンプルを備える請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の情報は、ユーザによって手動で入力される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記指示は、
衛星測位信号を受信するためのポータブル・デバイスのアクティブ化または非アクティブ化と、
衛星測位信号の検出された受信の減衰、損失、または回復のうちの少なくとも1つを備える請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記指示は、衛星測位信号を受信するためのポータブル・デバイスの移動特性を備える請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記指示は、
前記ポータブル・デバイスの検出された低速と、
前記ポータブル・デバイスの検出された減速または停止と、
前記ポータブル・デバイスの検出された発進または加速のうちの少なくとも1つを備える請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記指示に応答した前記初期検知ステップの後に、さらなる検知ステップを抑止するステップをさらに備える請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記指示はアプリケーション・イベントを備える請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記検知された情報は、前記第1の位置における前記環境に関する追加情報を備える請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるとき、請求項1から10のいずれかに記載のすべてのステップを実行するように適合されたコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータ可読媒体上で具現される請求項11に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載のすべてのステップを実行するように適合されたポータブル・ナビゲーション・デバイスであって、
第1の位置の信頼できる推定を導き出すのに十分な第1の情報を受信するための受信側装置と、
前記第1の位置の付近の第2の位置の補足推定が要求されうることを示す指示を受信するための受信側装置と、
前記第1の位置の付近の観測可能な少なくとも1つの地上無線ソースの識別を備える情報を検知するための検知装置と、
前記検知された情報を前記第1の位置に関連して格納するためのメモリとを備えるデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−530079(P2011−530079A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521644(P2011−521644)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050977
【国際公開番号】WO2010/015854
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(510112671)ユー‐ブロックス、アクチエンゲゼルシャフト (15)
【氏名又は名称原語表記】U−BLOX A.G.
【Fターム(参考)】