説明

ロボットシステム

【課題】
大量で、かつ、物流量が大幅に変動する物品を取扱う搬送システムにおいて、物流量が変動しても、フレキシブルに、常に効率良く搬送できるシステムを構築することが目的である。
【解決手段】
上記目的を達成するため、荷物を搭載する台車と、台車が搬送待機状態であることを認識する第1のロボットと、搬送待機状態の台車を設定された場所まで搬送する第2のロボットを備え、第1のロボットと第2のロボットが連動して走行することにより、解決できる。作業者により出荷先別に物品を搭載した台車が搬送待機場所に配置されると、第1のロボットは距離センサの情報からその台車が搬送待機状態であることを認識する。第1のロボットに連動することで、第2のロボットはその台車を指定された出荷先まで搬送する。第1のロボットが主に周囲環境の状況把握を行うことを役割とし、第2のロボットが台車を連結して搬送することを役割とすることにより、安全性を確保しながら、フレキシブルで、かつ、高効率の輸送を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場および物流倉庫等において製品や部品等の荷物を搭載可能な台車をある地点から他の地点まで移動させる搬送用ロボットとその制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場或いは物流倉庫等では製品や部品等を搭載した台車をあるエリアから他のエリアまで搬送する際には、作業員が直接手で押して指定のエリアまで運ぶ場合やフォークリフトを操作して運ぶ有人作業と、エリア間にベルトコンベアを用いて搬送する方法やAGV(Automatic Guided Vehicle)・搬送用ロボット(特開平5−39195号公報)等による搬送といった無人作業とがある。
【0003】
複数のロボットが共同して物品を搬送する方法としては、特開2005−46926号公報、特開2007−111826号公報に記載されている方法がある。
【0004】
【特許文献1】特開平5−39195号公報
【特許文献2】特開2005−46926号公報
【特許文献3】特開2007−111826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手作業による搬送や、フォークリフトによる搬送等の有人作業は、人件費がかかってしまうと同時に常に一定の作業員の確保や繁忙期と閑散期での人員の調整が困難である。
【0006】
一方ベルトコンベアやAGVでは台車を搬送することによって無人化することが可能ではあるが、これらのシステムを導入する場合は固定された軌道を設置しなければならず工場や物流倉庫等のレイアウトの変更があった場合に軌道を変更するのはコストの面からも手間の面からも非常に困難である。
【0007】
公知例の搬送ロボットの場合、ただ台車を目的のエリア付近まで運ぶだけではなく指定の場所に台車をおくことも可能であり、且つ空の台車を見つけて台車を運んできたエリアに新たに荷を積む台車を供給することも可能である。だが、この搬送ロボットは子機を連れて来た親機は子機が作業終了するまでその場で待機しており何も行わない。台車も一台しか運べないため効率の向上という面では難しい。
【0008】
そのため、大量で、かつ、物流量が大幅に変動する物品を取扱う搬送システムにおいて、物流量が変動しても、フレキシブルに、常に効率良く搬送できるシステムを構築することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、ロボットシステムにおいて、荷物を搭載する台車と、該台車が搬送待機状態であることを認識する第1のロボットと、搬送待機状態の前記台車を設定された場所まで搬送する第2のロボットを備え、前記第1のロボットと前記第2のロボットが連動して走行することを特徴とする。
【0010】
また、荷物を搭載する台車と、荷物を搭載していない台車(以下、空台車という)を配置する空台車置場が空いていることを認識する第1のロボットと、前記空台車を空台車置場まで搬送する第2のロボットを備え、前記第1のロボットと前記第2のロボットが連動して走行することを特徴とする。
【0011】
さらに、荷物を搭載することが可能な台車と、該台車が搬送待機状態であることを認識し、自らの周囲の状況を把握し地図情報を作成する第1のロボットと、該ロボットを制御する制御手段と、前記台車を設定された場所まで搬送する第2のロボットを備え、前記第1のロボットが自ら作成した地図情報あるいは前記制御手段から送られた地図情報をもとに移動可能なエリアを認識し、該エリア内を前記第2のロボットと連動して自律移動することを特徴とする。
【0012】
また、出荷先別に荷物を搭載する台車と、該台車を搬送するロボットと、該ロボットを制御する制御手段と、前記荷物の搭載状態から前記台車が搬送待機状態にあることを前記制御手段に通信する通信手段を備え、前記ロボットは前記搬送待機状態の台車を、前記出荷先別に対応する搬送先に搬送することを特徴とする。
【0013】
また、荷物を搭載する台車と、該台車を第1エリアから第2エリアまで搬送するロボットと、該ロボットを制御する制御手段を備え、前記ロボットは、前記台車が搬送待機状態であることを認識する認識手段と、前記認識手段の結果に基づいて、前記荷物を搭載した前記台車を前記第1エリアから前記第2エリアに搬送し、前記荷物を搭載していない前記第2エリアの前記台車を第1エリアに搬送する手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出荷先別に荷物を搭載する台車をある地点から他の地点まで出荷先別に搬送することを人の手を介さずにすべて自動で行うことができる。また荷物を搭載する台車をある地点から他の地点に搬送し、前記荷物を搭載していない他の地点の前記台車をある地点に搬送することを人の手を介さず自動で行うことができる。
【0015】
また1台の親機に対して複数の子機が追従し状況に応じて組み合わせがフレキシブルに変わることで、比較的安価で高効率の輸送を実現できる。また、親機が自律移動で柔軟かつ効率よく輸送する効果があり、工場や物流倉庫等のレイアウト変更の際、運搬経路の変更にスムーズに対応が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図を参照して詳細に説明する。以下の実施形態は物流センタにおける(1)出荷カートの搬送(荷積みされた出荷カートを作業エリアから牽引し、出荷バースに出荷カートを供給する)を行う第1形態と、(2)空カートの搬送(何も入っていない空のカートを空カートエリアから牽引し、作業エリアに空カートを供給する)を行う第2形態とに分けて説明する。取り扱う製品または部品はカートに荷積みすることが可能な形状、或いは荷姿をしているものとする。
【0017】
本発明の一実施例として、図1、図2で示したロボットシステムの実施例を説明する。
【0018】
図1は、第1のロボット1(以下、親機1とよぶ)と第2のロボット2(以下、子機2とよぶ)、物流センタ5内の荷物を搬送する台車3(以下、カート3とよぶ)、及び、制御手段4(以下、上位システム4)から構成される。まず、上位システム4は、物流センタ内の全ての親機・子機の情報、エリアでの作業状況等を把握し、親機1、及び、子機2と通信を行い、親機1、子機2の制御を行う。親機1は上位システム4からの情報をロボット制御部13に入力する。また、長距離センサ11からの距離情報を基にして周囲の物体の配置状態(以下、環境情報とよぶ)を周囲環境検出部12で検出する。これを基に地図を作成するとともに、親機1自身の姿勢(位置、方向)を同定する。長距離センサ11は前方180°の範囲に対して、物体までの距離を所定の角度毎に計測することができるセンサであり、後述する近距離センサ21に比べて、より広い範囲の物体までの距離を計測するものである。これにより、広範囲の地図を作成することができる。なお、地図の情報は上位システム4にも出力し、最新の地図情報を常に上位システムが有することになる。
【0019】
これらの情報を基に、ロボット制御部13は親機1の走行指令を走行制御部14に出力する。走行制御部14では、走行指令を基に車輪15、16の駆動力、舵角を算出し、親機1の走行速度、走行方向を制御する。これにより、親機1は上位システム4から与えられた目的地まで走行する。また、親機1のロボット制御部13では、子機2に対して通信して、子機2の動作を制御する子機制御指令を与える。
【0020】
これに対して、子機2は親機1からの子機制御指令をロボット制御部23で入力する。子機2はカート3を把持する機能を有し、後述するフローにより、カート3を把持、あるいは、切り離しをすることができる。図1の場合には、子機2がカート3を把持した状態を示している。子機2には、ロボット制御部23の他に、近距離センサ21、周囲環境検出部22、走行制御部24、車輪25、及び、車輪26を備えている。先に説明したように、近距離センサ21は長距離センサ11に比べると、物体までの距離を短い範囲でしか検出できないが、安価であり、近距離の周囲状況を検出することができる。周囲環境検出部22はこの情報を処理し、先行する親機1までの距離、方向、あるいは、周囲の物体の状況など、つまり、環境情報をロボット制御部23に出力する。
【0021】
ロボット制御部23は、親機1からの子機制御指令、周囲状況検出部22からの環境情報を基に、カート3の把持、切り離しの制御を行うとともに、走行制御部24に走行指令を出力する。走行制御部24では、子機2の走行速度、走行方向を制御し、車輪25、26を駆動する。この構成により、子機2は自動走行が可能となり、親機1と通信を行い、搬送すべきカートを認識する。例えば、フォークで持ち上げる、連結器具を用いてカートと接続する等の手段でカートの牽引が可能である。また、親機1が作成した地図の情報を用いることにより、子機2も自律的に移動することができる。これにより、よりフレキシブルにカートを把持したり配置したりすることができる。
【0022】
次に、図2を用いて、親機1、子機2の動作原理を説明する。図2において、カート3、31、34〜36、38、39は、空カート34、36と、出荷カート3、31、35と、作業カート38、39に分けられる。出荷カートは荷積みを終了し、出荷エリアに出荷可能な状態にあるものをいう。空カートは荷積みする前の状態にあるカートを意味する。また、作業カートは作業者により荷積み作業を行っている状態のカートをいう。さらに、カート置場92は空カートを、カート置場93は出荷カートを、カート置場97は作業カートを、それぞれ配置するための場所であり、予め、カートを配置する場所は決められている。
【0023】
親機1の前方に取り付けられた長距離センサ11は前方180°の範囲について、物体までの距離を計測する。図2の矢印が長距離センサ11で計測した距離を模式的に図示している。親機1と物流センタ5の内壁までの間に物体がない領域では、物流センタ5の内壁までの距離を計測し、カート31、カート34、及び、カート38がある方向については、それらと親機1との距離を計測する。これにより、カートの場所を検出することができる。また、カート置場92、93、及び、97には、物体、つまり、カートが存在しないことも長距離センサ11の計測結果から認識できる。以上のように、親機1が物流センタ5内を走行しながら、長距離センサ11により広範囲の距離を計測することにより、地図を作成し、カートの配置状況を把握している。従って、これらの情報は図1の上位システム4において物流センタ全体の地図として統合され、物流センタ全体のカートやロボットの動作状況を常時観測することができる。親機1は上位システム4と通信し、カートが搬送待機状態であることを認識する。
【0024】
また、図2において、子機2の前面に設置された近距離センサ21が周囲の物体との距離を計測する。図2では、子機2の前方にある親機1との距離、方向を計測するとともに、子機2の右方向にあるカート35間での距離、子機2の左方向にある物流センタ5の内壁までの距離を計測していることを示している。つまり、近傍の状況を確認しながら、親機1までの距離を計測し、親機1に追従するように、カート3を連結した子機2は制御する。このようにして、子機2と追従させた親機1は目的地まで自動走行し、子機2を切り離す。さらに、切り離された子機2は親機1と独立してカートを所定の場所に移動させ、配置する。親機1が作成した地図を用いることで、子機2は安価な近距離センサ21を利用して走行できるので、安価でフレキシブルなシステムを実現できる。
【0025】
次に、物流センタの具体的な実施例について説明する。図3に想定する物流センタのレイアウト図を示す。物流センタは大きく4つのエリアにわけられており、入荷した製品・部品等を在庫として保管しておく倉庫・在庫エリア110、出荷先別に製品・部品をピッキングしカートに荷積みを行う作業エリア111、荷積みされていない空の状態のカートを置いておく空カートエリア112、出荷バース114に着けられた輸送車にカートを載せるため出荷先ごとにカートを並べておく出荷エリア113がある。また作業エリア111、空カートエリア112、出荷エリア113に隣接して各エリアからカートを牽引した或いは各エリアへカートを供給した子機が親機と接続するために待機を行う子機待機エリア121がある。
【0026】
作業エリアは出荷先ごとにわけられており記号がふられている。出荷エリアも同様に出荷先ごとにわけられており同様の記号がふられ互いに1対1で対応している。
【0027】
空カートエリアも同様に複数列でひとつのブロックとし記号が振られている。
また作業エリア、出荷エリア、空カートエリアに隣接する子機待機エリアにはそれぞれの列ごとに記号がふられている。
【0028】
また、細線の矢印131はカートを牽引・供給する際の子機の動きを示したものである。太線の矢印132は親機と編隊走行を行う子機が主として移動する際の動きを示したものであるが、親機が自身で得た地図情報、或いは上位システムから得られた地図情報から空カートエリアの状況を把握し、編隊走行する子機を含めて目的地までより効率良く移動が可能と判断した場合は、矢印132の動きではなく、太線・破線の矢印133のように目的地までショートカットが可能である。
【0029】
図4、図5は出荷カートを搬送する第1形態における親機・子機の業務の流れを示したものである。図4は作業エリア111での作業を、図5は出荷エリア113での作業をそれぞれ説明するためのものである。これらの一連の作業を行うために、上位システム4・親機・子機の業務と各間でやり取りを行う際に送信される情報を示した流れ図が図6である。以下の300台の数字は図6の制御フローに示したものである。なお、図6において、「※」は符号321の「現在位置と地図情報を取得しながら移動」を指している。
【0030】
図4(a)において、親機101と複数台の子機201が編隊走行しているときは、親機101が現在位置と周辺地図情報を取得しながらそのデータを保持している(321)。保持したデータのうち、現在位置情報は一定の周期で上位システム4へ送信を行う(361)。また、図4(a)において、十字印はロボットの接続、切り離しの動作を指している。
【0031】
一方、作業エリアでカートに荷積みを行っている作業員から例えばハンディターミナルやPDAといった端末等によって荷積み終了(出荷カートの完成)情報が上位システム4に送られる。これにより上位システムが図4(a)の作業エリアδの出荷カート置場に搬送待ちの出荷カート35が存在すると認識する(381)。
【0032】
次に、上位システム4は、現在稼動中の親機から送信される位置情報、保有(編隊走行を行っている)子機数、保有子機の状態(カートを持っているか、他の指示を与えられていないか)の情報等から、出荷カート35を取りに行くのに最も適した親機を決定する(382)。そして決定した親機101に対して、取りに行く作業エリア(δ)情報、持っていく出荷エリア(δ)情報、搬送する出荷カート情報が親機101への作業指示情報として送信される(362)。
【0033】
上位システム4より作業指示情報を受信した親機は取りにいく作業エリアδへ移動を開始する(322)。
【0034】
作業エリアδ付近まで移動をした親機101は、自ら取得した地図情報或いは上位システム4から送られた地図情報により作業エリアδを認識し、出荷カート35が実際に搬送待ちの状態で置かれているか確認を行う。搬送待ちの出荷カートと空カートは作業エリアで置く場所が決められており、その位置にカートがあるかどうかでカートの搬送出/入の要否を判断する。搬送待ちを確認の後、子機201に作業指示情報として取りに行く作業エリア(δ)情報、持っていく出荷エリア(δ)情報、搬送する出荷カート情報(301)を送信し、作業を行う子機201へ編隊からの離脱指示を出す(323)。
【0035】
その後、上位システム4へは作業指示を行った子機201を除いた保有子機数、カート運搬中保有子機状態、作業指示を行った子機の情報(363)を送信後、図4(b)に示すように、親機101は次の作業指示を受信し目的地へ移動を開始する(324)。
【0036】
子機201は作業指示を受信(341)後、編隊から離脱し作業エリアδへ移動し出荷カート35と接続、子機待機エリアGへ移動し親機から接続指示が来るのを待つ(342)。
【0037】
上位システム4では、親機待ち(342)の子機201を接続する親機を382同様の情報から子機を迎えに行く親機を決定する(383)。そして決定した親機102に対して、迎えに行く作業エリア(δ)情報、子機がいる子機待機エリア(G)情報、持っていく出荷エリア(δ)情報、搬送する出荷カート情報、待機中の子機情報が親機102への作業指示情報として送信される(364)。
【0038】
上位システム4より作業指示情報を受信した親機102は取りにいく子機待機エリアGへ移動を開始する。その状態を図4(c)に示す。子機待機エリアG付近まで移動をした親機102は、自ら取得した地図情報或いは上位システム4から送られた地図情報により子機待機エリアGを認識し、子機201が実際に出荷カート35を接続した状態で待機しているか確認を行う。確認後、待機中の子機201に対して自分が接続すべき子機かを確認するため、子機201に対して情報送信要求(302)を行う(325)。
【0039】
情報送信要求(302)を受信した子機201は、最初に親機102から受信した作業指示情報(301)に自身の子機情報を追加し親機102に送信する(303)。
【0040】
子機201からの情報を受信した親機102は上位システム4より得た情報と照合を行い、一致すれば子機201に対して接続指示(304)を送信する(326)。
【0041】
子機201は接続指示(304)を受信後、親機102に向けて移動を開始(343)し編隊に合流する(327)。
【0042】
図4(d)のように、子機合流後、親機102は上位システム4に対して保有子機数、カート運搬中保有子機状態の情報(365)を送信し、出荷エリアδへ移動を開始する(328)。
【0043】
次に、出荷エリアにおける親機、子機、出荷カートの動作を説明する。図5(a)で示すように、出荷エリアδ付近まで移動をした親機102は、自ら取得した地図情報或いは上位システム4から送られた地図情報により出荷エリアδを認識し、空スペースを見つける。空スペースを確認後、先程合流した子機201に対して作業指示情報として持っていく出荷エリア(δ)情報、搬送する出荷カート情報(305)を送信し、編隊からの離脱指示を出す(329)。
【0044】
その後、上位システム4へは作業指示を行った子機201を除いた保有子機数、カート運搬中保有子機状態、作業指示を行った子機の情報(366)を送信後、次の作業指示を受信し目的地へ移動を開始する(330)。その搬送状態を図5(b)に示す。
【0045】
子機201は作業指示を受信(344)後、編隊から離脱し出荷エリアδへ移動、出荷カート35を切り離し、子機待機エリア(ス)へ移動し親機から接続指示が来るのを待つ(345)。
【0046】
上位システム4では、親機待ち(345)の子機201を接続する親機を382同様の情報から子機を迎えに行く親機を決定する(384)。そして決定した親機103に対して、迎えに行く作業エリア(δ)情報、子機がいる子機待機エリア(ス)情報、子機が搬送した出荷カート情報、待機中の子機情報が親機への作業指示情報として送信される(367)。
【0047】
上位システム4より作業指示情報を受信した親機103は取りにいく子機待機エリア(ス)へ移動を開始する。子機待機エリア(ス)付近まで移動をした親機103は、自ら取得した地図情報或いは上位システムから送られた地図情報により子機待機エリア(ス)を認識し、子機201が実際にカートを切り離した状態で待機しているか確認を行う。確認後、待機中の子機201に対して自分が接続すべき子機かを確認するため、子機201に対して情報送信要求(306)を行う(331)。図5(c)がそのときの搬送状態である。
【0048】
情報送信要求(306)を受信した子機201は、先程親機から受信した作業指示情報(305)に自身の子機情報を追加し親機103に送信する(307)。
【0049】
子機からの情報を受信した親機103は上位システム4より得た情報と照合を行い、一致すれば子機201に対して接続指示(308)を送信する(332)。
【0050】
子機201は接続指示(308)を受信後、親機に向けて移動を開始(346)し編隊に合流する(333)。この搬送制御フローの処理により、図5(d)のような状態になる。
【0051】
子機合流後、親機103は上位システムに対して保有子機数、カート運搬中保有子機状態の情報(368)を送信後、次の作業指示を受信し目的地へ移動を開始する(334)。
【0052】
以上のようにして、複数の親機と子機が連携して、できるだけ近傍のロボットが出荷カートを運ぶようにすることができるので、高効率な搬送システムを構築できる。また、物流量が増減した場合には、ロボットの数量をそれに合わせて適切に配置することで、ロボットの稼働率を常に高くできるので、無駄のないシステムを実現できる利点がある。
【0053】
子機201が近距離センサの代わりに長距離センサを用いる場合には、親機・子機の連携だけでなく、子機が自律走行により搬送先までカートを搬送することも可能である。
【0054】
図7、図8は、空カートを搬送するための第2形態における親機・子機の業務の流れを示したものである。これらの作業を、上位システム・親機・子機の業務と各間でやり取りを行う際に送信される情報を示した流れ図を図7に示す。以下の500台の数字は図9の制御フローに示したものである。
【0055】
まず、図7(a)に示すように、親機104と複数台の子機203、204が編隊走行中は現在位置と周辺地図情報を取得しながらそのデータを親機が保持している(521)。そして保持したデータのうち現在位置情報は一定の周期で上位システム4へ送信を行う(561)。
【0056】
一方、作業エリアでカートに荷積みを行っている作業員から例えばハンディターミナルやPDAといった端末等によって荷積み開始(空カートに荷積み開始)情報が上位システム4に送られる。これにより上位システム4が図8(a)の作業エリアγの空カート置場94に空カートがなくなったと認識する(581)。
【0057】
次に上位システム4は、現在稼動中の親機から送信される位置情報、保有(編隊走行を行っている)子機数、保有子機の状態(カートを持っているか、他の指示を与えられていないか)情報等から空カートエリアへ空カートを取りに行くのに最も適した親機を決定する(582)。そして決定した親機104に対して、取りに行く空カートエリア(IV)情報、持っていく作業エリア(γ)情報が親機104への作業指示情報として送信される(562)。
【0058】
上位システム4より作業指示情報を受信した親機104は取りにいく空カートエリアIVへ移動を開始する(522)。
【0059】
空カートエリアIV付近まで移動をした親機104は、自ら取得した地図情報或いは上位システム4から送られた地図情報により空カートエリアIVを認識し、搬送可能な空カートが置かれているか確認を行う。確認後、子機204に作業指示情報として取りに行く空カートエリア(IV)情報、持っていく作業エリア(γ)情報(501)を送信し、作業を行う子機204へ編隊からの離脱指示を出す(523)。
【0060】
その後、上位システム4へは作業指示を行った子機を除いた保有子機数、カート運搬中保有子機状態、作業指示を行った子機の情報(563)を送信後、次の作業指示を受信し目的地へ移動を開始する(524)。図7(b)にそのときの親機104の状態を示す。
【0061】
子機204は作業指示を受信(541)後、編隊から離脱し空カートエリアIVへ移動し、空カート42と接続する(542)。その後、子機204は子機待機エリア(す)へ移動し、親機から接続指示が来るのを待つ(542)。図7(b)及び図7(c)がその状態を表している。
【0062】
上位システム4では、親機待ち(542)の子機を接続する親機を582同様の情報から子機を迎えに行く親機を決定する(583)。そして、図7(b)のように、決定した親機105に対して、迎えに行く空カートエリア(IV)情報、子機がいる子機待機エリア(す)情報、持っていく作業エリア(γ)情報、待機中の子機情報が親機105への作業指示情報として送信される(564)。
【0063】
上位システム4より作業指示情報を受信した親機105は取りにいく子機待機エリア(す)へ移動を開始する。子機待機エリア(す)付近まで移動をした親機105は、自ら取得した地図情報或いは上位システム4から送られた地図情報により子機待機エリア(す)を認識し、子機204が実際にカートを接続した状態で待機しているか確認を行う。確認後、待機中の子機に対して自分が接続すべき子機かを確認するため、子機204に対して情報送信要求(502)を行う(525)。図7(c)に親機105の動作を示す。
【0064】
情報送信要求(502)を受信した子機204は、最初に親機105から受信した作業指示情報(501)に自身の子機情報を追加し親機105に送信する(503)。
【0065】
子機204からの情報を受信した親機105は上位システム4より得た情報と照合を行い、一致すれば子機に対して接続指示(504)を送信する(526)。
【0066】
図7(d)のように、子機204は接続指示(504)を受信後、親機105に向けて移動を開始(543)し編隊に合流する(527)。
【0067】
子機合流後、親機105は上位システム4に対して保有子機数、カート運搬中保有子機状態の情報(565)を送信し、作業エリアγへ移動を開始する(528)。
【0068】
次に、図8(a)に示す作業エリア(γ)付近まで移動をした親機105は、自ら取得した地図情報或いは上位システム4から送られた地図情報により作業エリア(γ)を認識し、空カートスペースを見つける。空カートスペースを確認後、先程合流した子機204に対して作業指示情報として持っていく作業エリア(γ)情報(505)を送信し、編隊からの離脱指示を出す(529)。
【0069】
その後、親機105は、上位システム4へ作業指示を行った子機を除いた保有子機数、カート運搬中保有子機状態、作業指示を行った子機の情報(566)を送信後、次の作業指示を受信し目的地へ移動を開始する(530)。図8(b)がそのときの親機105の配置である。
【0070】
子機204は作業指示を受信(544)後、編隊から離脱し、出荷エリア(γ)へ移動する。空カートスペースに空カート42を切り離した子機204は、子機待機エリア(F)へ移動し、親機から接続指示が来るのを待つ(545)。親機待ち状態の子機204を図8(c)に示す。
【0071】
上位システム4では、親機待ち(545)の子機204を接続する親機を582同様の情報から子機204を迎えに行く親機を決定する(584)。そして、決定した親機106に対して、迎えに行く作業エリア(γ)情報、子機204がいる子機待機エリア(F)情報、待機中の子機情報が親機106への作業指示情報として送信される(567)。
【0072】
上位システム4より作業指示情報を受信した図8(b)の親機106は、取りにいく子機待機エリア(F)へ移動を開始する。子機待機エリア(F)付近まで移動をした親機106は、自ら取得した地図情報或いは上位システム4から送られた地図情報により子機待機エリア(F)を認識する。子機204が実際にカートを切り離した状態で待機していることを図8(c)の親機106が確認した後、待機中の子機204に対して自分が接続すべき子機かを確認するため、子機204に対して情報送信要求(506)を行う(531)。
【0073】
情報送信要求(506)を受信した子機204は、先程親機106から受信した作業指示情報(505)に自身の子機情報を追加し親機106に送信する(507)。
【0074】
子機204からの情報を受信した親機106は上位システム4より得た情報と照合を行い、一致すれば子機204に対して接続指示(508)を送信する(532)。
【0075】
子機204は接続指示(508)を受信後、親機106に向けて移動を開始(546)し、図8(d)のように編隊に合流する(533)。
【0076】
子機合流後、親機106は、上位システム4に対して保有子機数、カート運搬中保有子機状態の情報(568)を送信後、次の作業指示を受信し目的地へ移動を開始する(534)。
【0077】
本実施例の場合、親機、子機を連携して制御することにより、空カートを効率良く搬送することができる。1台の親機に対して、複数台の子機が連携して移動することは、走行の信頼性を向上することができる利点がある。
【0078】
以上が、本発明の実施例であるが、物流センタの搬送だけではなく、生産システムにおける部品搬送・製品搬送や、大型販売店における搬送などにも適用できる。実施例では、ロボットの形態は車輪を用いた構成を示したが、クローラ型のロボットなど、各種の移動形態で適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の親機1とカート3を搬送する子機2が連携して運用を行う実施例1のシステム構成図を示す。
【図2】本発明の物流センタ内のカートの配置を親機及び子機の距離センサにより検出している状態を示した見取り図を示す。
【図3】本発明を適用したときの実施例を示す物流センタのレイアウト図を示す。
【図4(a)】本発明の出荷カートを搬送するときの作業エリア111における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図4(b)】本発明の出荷カートを搬送するときの作業エリア111における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図4(c)】本発明の出荷カートを搬送するときの作業エリア111における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図4(d)】本発明の出荷カートを搬送するときの作業エリア111における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図5(a)】本発明の出荷カートを搬送するときの出荷エリア113における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図5(b)】本発明の出荷カートを搬送するときの出荷エリア113における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図5(c)】本発明の出荷カートを搬送するときの出荷エリア113における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図5(d)】本発明の出荷カートを搬送するときの出荷エリア113における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図6】本発明の出荷カートを搬送する制御フローを示した状態図を示す。
【図7(a)】本発明の空カートを搬送するときの空カートエリア112における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図7(b)】本発明の空カートを搬送するときの空カートエリア112における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図7(c)】本発明の空カートを搬送するときの空カートエリア112における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図7(d)】本発明の空カートを搬送するときの空カートエリア112における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図8(a)】本発明の空カートを搬送するときの作業エリア111における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図8(b)】本発明の空カートを搬送するときの作業エリア111における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図8(c)】本発明の空カートを搬送するときの作業エリア111における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図8(d)】本発明の空カートを搬送するときの作業エリア111における親機、子機の動作を示した関係図を示す。
【図9】本発明の空カートを搬送する制御フローを示した状態図を示す。
【符号の説明】
【0080】
1、101〜106:親機(第1のロボット)
2、201〜206:子機(第2のロボット)
3:カート 31、35、40:出荷カート
34、36、41、42:空カート
38、39:作業中のカート
4:上位コントローラ 5:物流センタ
11:長距離センサ 21:近距離センサ
12、22:周囲環境検出部13、23:ロボット制御部
14、24:走行制御部 15、16、25、26:車輪
110:倉庫・在庫エリア 111:作業エリア
112:空カートエリア 113:出荷エリア
114:出荷バース 121:子機待機エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を搭載する台車と、該台車が搬送待機状態であることを認識する第1のロボットと、搬送待機状態の前記台車を設定された場所まで搬送する第2のロボットを備え、前記第1のロボットと前記第2のロボットが連動して走行することを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
荷物を搭載する台車と、荷物を搭載していない台車(以下、空台車という)を配置する空台車置場が空いていることを認識する第1のロボットと、前記空台車を空台車置場まで搬送する第2のロボットを備え、前記第1のロボットと前記第2のロボットが連動して走行することを特徴とするロボットシステム。
【請求項3】
荷物を搭載することが可能な台車と、該台車が搬送待機状態であることを認識し、自らの周囲の状況を把握し地図情報を作成する第1のロボットと、該ロボットを制御する制御手段と、前記台車を設定された場所まで搬送する第2のロボットを備え、前記第1のロボットが自ら作成した地図情報あるいは前記制御手段から送られた地図情報をもとに移動可能なエリアを認識し、該エリア内を前記第2のロボットと連動して自律移動することを特徴とするロボットシステム。
【請求項4】
出荷先別に荷物を搭載する台車と、該台車を搬送するロボットと、該ロボットを制御する制御手段と、前記荷物の搭載状態から前記台車が搬送待機状態にあることを前記制御手段に通信する通信手段を備え、前記ロボットは前記搬送待機状態の台車を、前記出荷先別に対応する搬送先に搬送することを特徴とするロボットシステム。
【請求項5】
荷物を搭載する台車と、該台車を第1エリアから第2エリアまで搬送するロボットと、該ロボットを制御する制御手段を備え、前記ロボットは、前記台車が搬送待機状態であることを認識する認識手段と、前記認識手段の結果に基づいて、前記荷物を搭載した前記台車を前記第1エリアから前記第2エリアに搬送し、前記荷物を搭載していない前記第2エリアの前記台車を第1エリアに搬送する手段を有することを特徴とするロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図7(d)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【図8(d)】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−55444(P2010−55444A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220781(P2008−220781)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】