説明

ロール金型の保護方法及びロール金型を用いた光学シートの製造方法

【課題】ロール金型の外周面に形成された加工パターンを保護することができるロール金型の保護方法、及びこのようなロール金型を用いた光学シートの製造方法を提供する。
【解決手段】ロール金型3の周囲にシート基材9を配置し、ロール金型3を回転させシート基材9の搬送を開始し、ロール金型3に紫外線の照射を開始し、ロール金型3とシート基材9との間にモノマーを供給し紫外線によりモノマーを硬化させ、加工パターンに相補的な光学パターンをシート基材9上に形成することにより、光学シートを製造する方法において、ロール金型3の外周面には、加工パターンを保護する保護膜21が予め配置されており、保護膜21は、供給されたモノマーによって、シート基材9に接着されてロール金型3から除去され、保護膜21がロール金型3の外周面から除去された後に、光学パターンが連続して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール金型の保護方法及びロール金型を用いた成型方法に関し、特に、長尺シート基材の表面に活性エネルギ線硬化性樹脂パターンを形成するためのロール金型の保護方法及びこのような金型を用いた光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外周面に所定のプリズムパターンが形成されたロール金型を用いたプリズムシート製造装置が知られている。このようなプリズムシート製造装置は、ロール金型と対向して配置されたニップローラと、ロール金型とニップローラのニップ部に活性エネルギ線硬化型樹脂を塗布するための塗布装置を備えている。プリズムシート製造装置は、ニップローラとロール金型によって挟持搬送される基材の一方の面に、塗布装置によって活性エネルギ線硬化型樹脂を塗布し、この活性エネルギ線硬化型樹脂に活性エネルギ線を照射することによって樹脂を硬化させる。これにより活性エネルギ線硬化型樹脂には、ロール金型の外周面に形成されたプリズムパターンの形状が転写される。そして、プリズムパターンの形状が転写された活性エネルギ線硬化型樹脂に活性エネルギ線が照射されると、活性エネルギ線硬化型樹脂が硬化して、基材上にプリズムが形成されるようになっている。
【0003】
このようなプリズムシート製造装置の初回駆動時、金型交換後の駆動時、又は装置の運転を一時的に停止してから再度駆動するような立ち上げ時には、先ず、金型に活性エネルギ線硬化型樹脂を塗布せずに、基材が架け渡されたロール金型、ニップローラ、及び剥離ローラ、並びに基材を搬送するための搬送ローラを駆動して、基材を搬送方向下流側に向けて搬送する空運転を行う。次いで、活性エネルギ線を出射するためのUVランプ等を駆動する。そしてUVランプのような活性エネルギ線を出射する装置は、出射する光の光量が安定するまで、例えば3分程度の時間を要する。そしてUVランプが安定した後に、金型に活性エネルギ線硬化型樹脂を塗布して、基材上にプリズムを形成するようになっている。このようなプリズムシート製造装置としては、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−192540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなプリズムシート製造装置では、金型及び基材の一定の箇所に活性エネルギ線が照射されるのを防止するために、UVランプの光量が安定するまで空運転を行う必要があるので、プリズムシート製造装置の立ち上がり時には基材や金型表面に付着した埃や塵等の異物によって、ロール金型の外周面に形成されたプリズムパターンが破損してしまう恐れがあった。また、搬送起動時に、ロール金型の周速と基材の搬送速度がずれることにより、金型と基材の間の擦れに起因する金型欠陥が発生する恐れがあった。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、装置の立ち上げ時にロール金型の外周面に形成された加工パターンを保護することができるロール金型の保護方法、及びこのようなロール金型を用いた光学シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は外周面に加工パターンが形成されたロール金型の周囲に長尺シート基材を配置し、前記ロール金型を回転させ前記長尺シート基材の搬送を開始し、前記長尺シート基材を通して、前記ロール金型に活性エネルギ線の照射を開始し、前記ロール金型と前記長尺シート基材との間に活性エネルギ線硬化性樹脂を供給し前記活性エネルギ線により前記活性エネルギ線硬化性樹脂を硬化させ、前記加工パターンに相補的な光学パターンを前記長尺シート基材上に形成することにより、光学シートを製造する方法であって、前記ロール金型の前記外周面には、前記加工パターンを保護する保護膜が予め配置されており、前記保護膜は、前記ロール金型と前記長尺シート基材との間に供給された活性エネルギ線硬化性樹脂によって、前記長尺シート基材に接着されて前記ロール金型から除去され、前記保護膜が、前記ロール金型の外周面から除去された後に、前記光学パターンが連続して形成されること、を特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明によれば、ロール金型の外周面に保護膜を配置することによってロール金型の外周面に形成された加工パターンを保護することができる。そして、この保護膜は、保護膜と長尺シート基材の間に配置される活性エネルギ線硬化性組成物によって長尺シート基材の表面に接着される材料によって形成されているので、樹脂パターンを形成するための活性エネルギ線硬化性組成物を用いて保護膜を長尺シート基材に接着させることができ、これにより一連の成形工程中にインラインで保護膜をロール金型の外周面から除去することができる。
【0009】
また、本発明は、前記ロール金型の前記外周面に配置された前記保護膜上に、耐熱シートが配置されており、前記耐熱性シートは、前記活性エネルギ線硬化性組成物によって、前記長尺シート基材の表面に接着されて前記保護膜上から除去されることを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明によれば、耐熱性シートによって保護膜を熱から保護することができる。また耐熱性シートは、活性エネルギ線硬化性組成物によって長尺シート基材の表面に接着される材料によって形成されているので、樹脂パターンを形成するための活性エネルギ線硬化性組成物を用いて耐熱性シートを長尺シート基材に接着させることができ、これによりインラインで耐熱性シートを保護膜上から除去することができる。
【0011】
また、本発明は、前記耐熱性シートは、長尺に形成され、その長さが前記ロール金型の外周長よりも長くなっており、さらに前記ロール金型の回転方向上流側から下流側に向かって前記ロール金型に巻きつけられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、耐熱性シートは、長尺に形成され、その長さがロール金型の外周長よりも長くなっており、さらにロール金型の回転方向上流側から下流側に向かってロール金型に巻きつけられている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、ロール金型の外周長よりも長い長尺の耐熱性シートを、ロール金型の回転方向上流側から下流側に向かってロール金型に巻きつけて、耐熱性シートの金型回転方向下流側の端を、ロール金型に巻きつけられた耐熱性シートの外側に配置することができる。そしてこれにより、ロール金型の回転方向下流側の端を始点として耐熱性シートを除去することができるので、耐熱性シートを確実に除去することができる。
【0014】
また、本発明は、前記耐熱性シートにおける前記ロール金型の回転方向下流側の端は、先細り形状を有し、その先端部が当該耐熱性シートの外側面に接着されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成された本発明によれば、装置の駆動時にロール金型の外周面に形成された加工パターンを保護することができる。
【0016】
また、本発明は、前記保護膜の硬度が、前記ロール金型の外周面の硬度、および前記活性エネルギ線硬化性組成物の硬化後の硬度よりも低いことを特徴とする。
【0017】
このように構成された本発明によれば、保護膜の硬度を、ロール金型の外周面の硬度よりも低くすることができ、これにより外周面を保護することができる。さらに本発明によれば、保護膜の硬度を、活性エネルギ線硬化性樹脂の硬化後の硬度よりも低くすることができ、保護膜の長尺シート基材への接着性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明は、加工パターンが形成されたロール金型の外周面と、長尺シート基材の間に活性エネルギ線硬化性組成物を配置して、この活性エネルギ線硬化性組成物に活性エネルギ線を照射して、前記長尺シート基材の表面に活性エネルギ線硬化性樹脂パターンを形成するためのロール金型の保護方法であって、前記ロール金型の外周面と、前記長尺シート基材の間に活性エネルギ線硬化性組成物を配置する前に、前記ロール金型の外周面を保護するための保護膜を、該ロール金型の外周面に配置する保護膜配置工程を備え、前記保護膜は、前記活性エネルギ線硬化性組成物によって、前記長尺シート基材の表面に接着される材料によって形成されていること、を特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記保護膜配置工程は、前記保護膜上に耐熱性シートを配置する耐熱性シート配置工程を含み、前記耐熱性シートは、前記活性エネルギ線硬化性組成物によって、前記長尺シート基材の表面に接着される材料によって形成されていることを特徴とする。
【0020】
このように構成された本発明によれば、ロール金型の外周面に保護膜を配置することによって、空運転時にロール金型の外周面に形成された加工パターンと基材が接触するのを防止することができ、これにより加工パターンを保護することができる。そして、この保護膜は、活性エネルギ線硬化性組成物によって長尺シート基材の表面に接着される材料によって形成されているので、樹脂パターンを形成するための活性エネルギ線硬化性組成物を用いて保護膜を長尺シート基材に接着させることができ、これによりインライン、すなわち従来の立ち上げ方法で保護膜をロール金型の外周面から除去することができる。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明のロール金型の保護方法及びロール金型を用いた光学シートの製造方法によれば、ロール金型の外周面に形成された加工パターンを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置の側面図である。
【図2】本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置が備えるロール金型の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置によって製造されるプリズムシートの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置を駆動する前のロール金型を模式的に示す端面図である。
【図5】本発明の実施形態による耐熱性シートの先端近傍を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明のロール金型の保護方法及び本発明の光学シートの製造方法について説明する。なお、以下に本発明の実施形態によるプリズムシートの製造方法について詳述するが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロール金型を用いて光学シートを製造する方法に好適に用いることができる。図1は、本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置の側面図であり、図2は、このプリズムシート製造装置が備えるロール金型の斜視図であり、図3は、このプリズムシート製造装置によって製造されるプリズムシートの斜視図である。
【0024】
まず、図1に示すように、プリズムシート製造装置1は、ロール金型3と、ロール金型3に近接して配置されたニップローラ5、及び剥離ローラ7を備える。また、プリズムシート製造装置1は、これらロール金型3、ニップローラ5、及び剥離ローラ7によって搬送されるシート基材9上に、活性エネルギ線硬化性組成物としてのモノマーを配置するためのモノマー塗布装置11と、活性エネルギ線としての紫外線を出射するUVランプ13a,13bを備える。
【0025】
このプリズムシート製造装置1は、シート基材9が、矢印A方向に回転駆動される円筒柱状のロール金型3の外周面に巻回されながら矢印B方向に搬送されるように構成されている。
【0026】
図2に示すようにロール金型3の外周面には、製造するプリズムシートのプリズムと相補的な形状のプリズムパターン3aが形成されている。このようなロール金型3としては、プリズムパターン3aが形成されている外周面のレンズ単位転写部が、アルミニウム、黄銅、鋼等の金属で形成されている。プリズムパターン3aは、切削加工や、Ni電鋳法で作成されている。
【0027】
図1に戻り、ロール金型3のシート基材9搬送方向上流側には、モノマー塗布装置11が配置され、ロール金型3とニップローラ5のニップ部に、シート基材9の一方の面にモノマーを製品有効幅で塗布するように構成されている。尚、本明細書において製品有効幅とは、レンズシートを製品として使用する範囲である。
【0028】
ニップローラ5は、ロール金型3に対向して配置されており、硬化前のモノマーの厚さを均すようになっている。一方の面にモノマーが塗布されたシート基材9は、かかる面をロール金型3に向けるようにして、ロール金型3とニップローラ5の間に挟持搬送される。ニップローラ5としては、金属製ロール、ゴム製ロール等が使用される。また、シート基材9の表面におけるモノマーの厚さを均一にさせるため、ニップローラ5は真円度、表面粗さ等について高い精度で加工されたロールであるのが好ましい。
【0029】
剥離ローラ7は、UVランプ13a,13bよりも基材シート9搬送方向下流側の位置で、ロール金型3と対向して配置されている。そして、剥離ローラ7を支点として基材シート9をロール金型3の回転方向とは逆方向に引っ張ることで、基材シート9がロール金型3から剥離される。
【0030】
モノマー塗布装置11は、ニップローラ5とロール金型3のニップ部にモノマーを滴下するようになっており、これによりロール金型3の外周面にモノマーが塗布される。モノマー塗布装置11は、ニップ部の上方に配置されている。このようなモノマー塗布装置11から滴下されるモノマーとしては、取扱性や硬化性等の点で、多価アクリレートおよび/または多価メタクリレート、モノアクリレートおよび/またはモノメタアクリレート、および活性エネルギ線による光重合開始剤、を主成分とするものが好ましい。代表的な多価(メタ)アクリレートとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上の混合物として使用される。また、モノ(メタ)アクリレートとしては、モノアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、後者の場合には、金属型を使用するときに水酸基の影響であると思われる金属型との離型困難性を低減するために、少量で使用するのがよい。また、金属型を使用する場合には、(メタ)アクリル酸およびその金属塩についても、高い極性を有していることから、少量で使用するのがよい。
【0031】
UVランプ13a,13bは、ロール金型3とニップローラ5のニップ部よりも基材シート9搬送方向下流側の位置に設けられている。UVランプ13a,13bから出射された紫外線は、シート基材9を透過して、その一方の面に塗布されたモノマーに照射され、シート基材9上でモノマーを硬化させる。
【0032】
そしてモノマーが硬化すると、図3に示すようなプリズムシートが製造される。プリズムシートは、シート基材9の一方の面に、ロール金型3の加工パターン3aと相補的な形状のプリズム15を備える。このシート基材9は、可視光、および紫外線、電子線等の活性エネルギ線を透過する、例えば、硝子、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂等の材料をフィルム、またはシート状に加工したものである。
【0033】
図4は、プリズムシート製造装置を駆動させる前のロール金型を模式的に示す端面図である。図4に示すように、プリズムシート製造装置1を駆動させてプリズムシートの製造を開始する前、即ちロール金型3の外周面にシート基材9を配置する前に、ロール金型3の外周面には、ロール金型3の外周面を保護するための保護膜21が配置される。この保護膜21は、ロール金型3の外周面全面に均一に配置されており、プリズムシート製造装置1の空運転時に、ロール金型3の外周面に形成されたプリズムパターン3aとシート基材9が接触するのを防止するようになっている。なお、保護膜21は、ロール金型3を製造した直後に形成されてもよく、プリズムシートの製造が終了し、ロール金型3をプリズムシート製造装置1から取り外して洗浄した後にロール金型3の外周面に形成されてもよい。後述の場合は、保護膜21は、プリズムシートの製造後に形成されることになるが、次回のプリズムシートの製造に先立って保護膜21が形成されるために、この場合もプリズムシートの製造を開始する前に保護膜21を形成することに含むこととする。
【0034】
保護膜21は、モノマー塗布装置11から滴下されるモノマーによって、シート基材9の表面に接着される材料によって形成されている。保護膜21としては、所定の溶剤及び樹脂を含有する材料を、スプレーし、若しくは滴下し、又はロール金型3をこのような材料にディップする等の方法により、ロール金型3の表面に被膜を形成して、それを硬化させたものを用いることが好ましい。また、金型3の外周面を保護する観点から、保護膜21の硬度は、金型の外周面の硬度よりも低いことが好ましい。さらに、シート基材9への接着性を向上するために、モノマー塗布装置11から滴下されるモノマーの硬化後の硬度よりも、保護膜21の硬度を低くすることが好ましい。そして保護膜21を形成するための材料としては、硬化時にロール金型3の外周面に付着し、さらにモノマー硬化時にロール金型3の外周面から剥離可能なものを用いることができ、例えば、塩化ビニール/酢酸ビニール共重合体を含む、半導体ウェハーや機械部品の保護膜を形成するためのものを用いることができる。また、第一工業製薬株式会社製のポリウレタン水分散体のスーパーフレックスで代表される水溶性ポリマー、カラギーナンおよびグァーガム等の天然多糖類を用いても構わない。
【0035】
より具体的には、保護膜21を形成するときには、塩化ビニール/酢酸ビニール共重合体樹脂を含むトライレイナー社製のシリテクト-IIや、ファインケミカルジャパン社製のクリーンコートS又はメタルコートのような機械部品保護膜スプレーや、住鉱潤滑剤株式会社製のメタルラップスプレーを用いることができる。
【0036】
また、別の態様として、保護膜21としては、アルミ箔、樹脂フィルム等のフィルムを用いることができる。これらのフィルムを用いることによっても、ロール金型3のプリズムパターンとシート基材9が接触するのを防止することができる。
【0037】
また、保護膜21の外面には、プリズムシート製造装置1を立ち上げてプリズムシートの製造を開始する前に、耐熱性シート23が配置される。耐熱性シート23は、保護膜21上に積層されるように配置されており、ロール金型3の外周全周にわたって設けられた保護膜21が露出しないようになっている。そして耐熱性シート23は、例えばロール金型3の幅と同一幅を有している。そして、耐熱性シート23の長さは、少なくともロール金型3の外周長よりも長くなっており、ロール金型3の外周を約1.5周巻けるような長さであるのが好ましい。また、耐熱性シート23は、ロール金型3の回転方向上流側から回転方向下流側に向かって巻かれており、その後端23aが保護膜21と接触するように配置され、その先端23bが、耐熱性シート23の一部とオーバラップして耐熱性シート23の外側面に接触するように配置されている。なお、保護膜21が耐熱性を有する場合には、耐熱シート23を設ける必要はない。
【0038】
また、図5は、この耐熱性シートの先端近傍を示す上面図である。図5に示すように、耐熱性シート23の先端23bは、先細り形状を有している。そしてこの先細り形状の先端23bの先端部は、上述のモノマー塗布装置11から滴下されるモノマーや、他の接着剤によって、耐熱性シート23の外側面に接着されている。そして耐熱性シート23の先端23bは、モノマーによる耐熱性シート23とシート基材9の間の接着力よりも小さい接着力で、耐熱性シート23の外側面に接着される。
【0039】
このような耐熱性シート23は、UVランプ13a,13bから出射される紫外線や熱線から保護膜21を保護する。この耐熱性シート23は、モノマーによって、シート基材9の表面に接着される材料によって形成されるのが好ましく、例えば、アルミ箔等の金属箔を用いることができる。
【0040】
このようなプリズムシート製造装置1を用いたプリズムシートの製造方法について詳述する。
【0041】
先ず、プリズムシート製造装置1を駆動する前、すなわちモノマー塗布装置11、UVランプ13a,13bの駆動、及びシート基材9の搬送を開始する前に、ロール金型3の外周面に保護膜21を配置する。これにより、シート基材9と、ロール金型3のプリズムパターンが接触するのを防止して、プリズムパターン3aを保護することができる。
【0042】
次いで、保護膜21上に耐熱性シート23を配置する。保護膜21として上述のスプレーを用いた被膜方式を採用する場合には、保護膜21が硬化してから耐熱性シート23を配置するのが好ましい。そして耐熱性シート23を配置するとき、先ず、耐熱性シート23の後端23aを保護膜21に接触させ、ロール金型3の回転方向下流側に向かって耐熱性シート23をロール金型3に巻きつける。そして、耐熱性シート23の先端23bを、耐熱性シート23の外表面に接着して、耐熱性シート23を保護膜21上に固定する。
【0043】
尚、本実施形態では、プリズムシート製造装置1の立ち上げ前に保護膜21及び耐熱性シート23を設けることとしているが、製造したロール金型3を運搬移送するときに、予めロール金型3の外周に少なくとも保護膜21を配置するようにしてもよい。これにより、運搬移送時の比較的多塵環境においてもロール金型3を適切に保護することができる。
【0044】
次いで、シート基材9を、ニップローラ5、ロール金型3、及び剥離ローラ7に架け渡す。そして基材シート9をロール金型3に架け渡すとき、基材シート9は、積層された保護膜21及び耐熱性シート23の上に架け渡され、ロール金型3のプリズムパターン3aと接触しないようになっている。
【0045】
次いで、シート基材9の搬送方向上流側及び下流側に設けられた搬送ローラ(図示せず)を駆動することによって、シート基材9の搬送を開始する。これにより、シート基材9は、搬送方向上流側から、ニップローラ5の外周、ロール金型3の外周、及び剥離ローラ7の外周を通って、搬送方向下流側に搬送される。そしてロール金型3の外周面に配置された保護膜21とその上に配置された耐熱性シート23は、ロール金型3と共に回転する。これにより、空運転時にロール金型3のプリズムパターン3aとシート基材9が接触して、ロール金型3のプリズムパターン3aが破損するのを防止することができる。また、搬送起動時に、ロール金型の周速と基材の搬送速度が、瞬時にずれることにより、金型と基材が擦れることに起因する金型欠陥の発生を防止することができる。
【0046】
次いで、UVランプ13a,13bを駆動する。このとき、保護膜21は、耐熱性シート23によってUVランプ13a,13bが発する熱から保護されるので、保護膜21が軟化して、保護膜21とシート基材9が接着するのを防止することができる。そして、数分間してUVランプ13a,13bの光量が安定した後、モノマー塗布装置11を駆動して、ニップローラ5とロール金型3のニップ部にモノマーを滴下する。そしてニップローラ5とロール金型3のニップ部では、シート基材9と耐熱性シート23が接触するようになっているため、モノマー塗布装置11から滴下されたモノマーは、シート基材9と耐熱性シート23の間に入り込む。そして上述のように、耐熱性シート23は、モノマーによって、シート基材9の表面に接着されるような材料によって形成されているので、シート基材9と耐熱性シート23の間に入り込んだモノマーはUVランプ13a,13bからシート基材9を透過して照射される紫外線により硬化され、耐熱性シート23はシート基材9と接着される。そして、耐熱性シート23の先端23bは先細り形状を有しているので、耐熱性シート23は、先端23bから安定的に剥離し始めて、シート基材9と共に、シート基材9の搬送方向下流側に搬送される。そして、耐熱性シート23の先端が保護膜21から剥がれると、ニップローラ5とロール金型3のニップ部では、シート基材9と保護膜21が接触している状態となり、これらの間にモノマーが入り込む。
【0047】
そして、シート基材9と保護膜21の間に入り込んだモノマーが、UVランプ13a,13bからシート基材9を透過して照射される紫外線により硬化されると、保護膜21はシート基材9と接着される。そして、保護膜21とシート基材9の間の接着力が、保護膜21とロール金型3の外周面の間の接着力を上回るため、その箇所において保護膜21がロール金型3の表面から剥離し始める。そして剥離した箇所がロール金型3と剥離ローラ7のニップ部に到達すると、保護膜21は、剥離した箇所を先頭にして、ロール金型3の表面から剥がれ、シート基材9と共に、シート基材9の搬送方法下流側に向けて搬送される。これにより、ロール金型3の外周面のプリズムパターンが露出する。
【0048】
次いで、モノマー塗布装置11から滴下されたモノマーは、シート基材9のプリズム形成面とロール金型3のプリズムパターンの間に入り込む。そして、シート基材9を透過してモノマーにUVランプ13a,13bからの紫外線が照射され、モノマーはプリズムパターン3aと相補的な形状で硬化し、シート基材9上に光学パターンとしてプリズムが形成される。
【0049】
このようにプリズムシート製造装置1によれば、保護膜21を設けることによってロール金型3の外周面に形成されたプリズムパターン3aを保護することができる。さらにプリズムシート製造装置1によれば、保護膜21及び保護膜21を熱から保護するための耐熱性シート23を、インラインでモノマーを連続滴下することにより自動的に除去することができるので、プリズムパターン3aをプリズムの形成の直前まで保護することができる。これにより、シート基材9および金型の保管中などに金型の外周面に付着した塵や埃によって、プリズムパターンが破損することを防止することができる。
【0050】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、上記プリズムシート製造装置の構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 プリズムシート製造装置
3 ロール金型
3a プリズムパターン
9 シート基材
13a,13b UVランプ
15 プリズム
21 保護膜
23 耐熱性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に加工パターンが形成されたロール金型の周囲に長尺シート基材を配置し、
前記ロール金型を回転させ前記長尺シート基材の搬送を開始し、
前記長尺シート基材を通して、前記ロール金型に活性エネルギ線の照射を開始し、
前記ロール金型と前記長尺シート基材との間に活性エネルギ線硬化性樹脂を供給し前記活性エネルギ線により前記活性エネルギ線硬化性樹脂を硬化させ、前記加工パターンに相補的な光学パターンを前記長尺シート基材上に形成することにより、光学シートを製造する方法であって、
前記ロール金型の前記外周面には、前記加工パターンを保護する保護膜が予め配置されており、
前記保護膜は、前記ロール金型と前記長尺シート基材との間に供給された活性エネルギ線硬化性樹脂によって、前記長尺シート基材に接着されて前記ロール金型から除去され、
前記保護膜が、前記ロール金型の外周面から除去された後に、前記光学パターンが連続して形成されることを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項2】
前記ロール金型の前記外周面に配置された前記保護膜上に、耐熱シートが配置されており、前記耐熱性シートは、前記活性エネルギ線硬化性組成物によって、前記長尺シート基材の表面に接着されて前記保護膜上から除去されることを特徴とする請求項1に記載の光学シートの製造方法。
【請求項3】
前記耐熱性シートは、長尺に形成され、その長さが前記ロール金型の外周長よりも長くなっており、さらに前記ロール金型の回転方向上流側から下流側に向かって前記ロール金型に巻きつけられている請求項2に記載のロール金型を用いた光学シートの製造方法。
【請求項4】
前記耐熱性シートにおける前記ロール金型の回転方向下流側の端は、先細り形状を有し、その先端部が当該耐熱性シートの外側面に接着されている請求項3に記載のロール金型を用いた光学シートの製造方法。
【請求項5】
前記保護膜の硬度が、前記ロール金型の外周面の硬度、および前記活性エネルギ線硬化性組成物の硬化後の硬度よりも低い請求項1乃至4に記載の光学シートの製造方法。
【請求項6】
加工パターンが形成されたロール金型の外周面と、長尺シート基材の間に活性エネルギ線硬化性組成物を配置して、この活性エネルギ線硬化性組成物に活性エネルギ線を照射して、前記長尺シート基材の表面に活性エネルギ線硬化性樹脂パターンを形成するためのロール金型の保護方法であって、
前記ロール金型の外周面と、前記長尺シート基材の間に活性エネルギ線硬化性組成物を配置する前に、前記ロール金型の外周面を保護するための保護膜を、該ロール金型の外周面に配置する保護膜配置工程を備え、
前記保護膜は、前記活性エネルギ線硬化性組成物によって、前記長尺シート基材の表面に接着される材料によって形成されていること、
を特徴とするロール金型の保護方法。
【請求項7】
前記保護膜配置工程は、前記保護膜上に耐熱性シートを配置する耐熱性シート配置工程を含み、
前記耐熱性シートは、前記活性エネルギ線硬化性組成物によって、前記長尺シート基材の表面に接着される材料によって形成されている請求項6に記載のロール金型の保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−188659(P2010−188659A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36892(P2009−36892)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】