説明

ワイパモータ

【課題】ピニオンギヤとセクタギヤとをヘリカルギヤで形成し、より小型化し得るワイパモータを提供する。
【解決手段】ピニオンギヤ44cとセクタギヤ45bとを、出力軸44の軸方向に傾斜する歯部44d,45cを有するヘリカルギヤとしたので、各ギヤ44c,45b同士の噛み合い率を向上させることができる。したがって、モータ部の回転力を出力軸44に効率よく伝達することができ、さらにはワイパモータの作動時における騒音発生を抑制することができる。また、各ギヤ44c,45b同士の噛み合い率が向上するので、高強度の特殊な材料を用いずにピニオンギヤ44cおよびセクタギヤ45bを小型化することができ、よってワイパモータをさらに小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパ部材を揺動駆動するワイパモータに関し、特に、電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のリヤガラスを払拭するリヤワイパ装置は、電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を備えたワイパモータを有している。そして、ワイパモータの出力軸にワイパ部材を取り付けてワイパモータを駆動することにより、ワイパ部材をリヤガラスの予め定められた反転位置の間で揺動駆動させることができる。
【0003】
このようなワイパモータは、有底状に形成されたギヤハウジングとギヤハウジングの開口部を閉塞するギヤカバーとを備え、さらにギヤハウジングに固定される電動モータを有している。ギヤハウジング内には、減速機構および運動変換機構が収容され、減速機構は、電動モータにより回転されるウォームと、ウォームに噛み合うウォームホイールとから形成されている。これにより、ウォームの回転を所定の速度にまで減速して高トルク化し、高トルク化された回転力がウォームホイールから出力される。
【0004】
一方、運動変換機構は、セクタギヤおよび連結部を備えた運動変換部材と、出力軸に一体回転可能に設けたピニオンギヤおよびセクタギヤの噛み合いを保持する連結板とから形成されている。運動変換部材の連結部は、ウォームホイールの回転中心軸から離れた位置にある連結軸に回転自在に連結され、連結板は、セクタギヤの軸心にある歯車軸および、ピニオンギヤとともに回転する出力軸の双方に回転自在に連結されている。これにより、電動モータを駆動すると、ウォームホイールが回転して運動変換部材が揺動運動し、これに伴いセクタギヤに噛み合うピニオンギヤ、つまり出力軸が揺動するようになっている。
【0005】
このような運動変換機構を備えたワイパモータとしては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載のワイパモータは、セクタギヤ部(セクタギヤ)を有する動力変換部材(運動変換部材)と、出力ギヤ(ピニオンギヤ)を有する出力軸とを備え、セクタギヤ部および出力ギヤは、出力軸の軸方向に出力軸と平行に延びる歯部を有している。つまり、セクタギヤ部および出力ギヤは、いずれも平歯車(スパーギヤ)により形成されてそれぞれ噛み合わされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−088776号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたワイパモータによれば、セクタギヤ部および出力ギヤはそれぞれスパーギヤであるため、例えば、傾斜した歯部を持つヘリカルギヤに比して噛み合い率の低さが問題となっていた。つまり、ギヤの厚み寸法を基準としたときに、スパーギヤの歯部の長さ寸法はヘリカルギヤの歯部の長さ寸法に比して短くなり、これが噛み合い率の低下を招き、ひいてはワイパモータの小型化の阻害要因となるばかりか騒音発生の原因となっていた。
【0008】
特許文献1に記載のワイパモータにおいて、仮に小型化を実現しようとする場合には、セクタギヤ部および出力ギヤを高強度で成形する必要が生じ、製造コストが上昇する等の問題が生じる。そのため、セクタギヤ部および出力ギヤにスパーギヤを用いたワイパモータにおいては、さらなる小型化には限界がある。
【0009】
本発明の目的は、ピニオンギヤとセクタギヤとをヘリカルギヤで形成し、より小型化し得るワイパモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のワイパモータは、電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を備え、前記出力軸に取り付けられるワイパ部材を予め定められた反転位置の間で揺動駆動するワイパモータであって、前記運動変換機構を収容する有底状のギヤハウジングと、前記ギヤハウジングの開口部を閉塞するギヤカバーと、前記ギヤハウジング内に延び、前記電動モータにより回転されるウォームと、前記ギヤハウジング内に回転自在に収容され、前記ウォームに噛み合うウォームホイールと、前記ウォームホイールの回転中心軸から離れた位置に設けられる連結軸と、前記ギヤハウジング内に回転自在に収容され、前記出力軸に一体回転可能に設けられるピニオンギヤと、前記連結軸に回転自在に連結される連結部と前記ピニオンギヤに噛み合うセクタギヤとを有する運動変換部材と、前記セクタギヤの軸心に設けられる歯車軸と前記出力軸とを揺動自在に連結し、前記ピニオンギヤと前記セクタギヤとの噛み合いを保持する連結板とを備え、前記ピニオンギヤと前記セクタギヤとを、前記出力軸の軸方向に傾斜する歯部を有するヘリカルギヤとすることを特徴とする。
【0011】
本発明のワイパモータは、前記歯車軸の軸方向両端の少なくともいずれか一方に、前記セクタギヤに作用するスラスト力を受止する受止部材を設けることを特徴とする。
【0012】
本発明のワイパモータは、前記受止部材は、前記ギヤハウジングおよび前記ギヤカバーの少なくともいずれか一方に摺接し、前記ギヤハウジングおよび前記ギヤカバーの少なくともいずれか一方には、前記受止部材を受ける受け面を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイパモータによれば、ピニオンギヤとセクタギヤとを、出力軸の軸方向に傾斜する歯部を有するヘリカルギヤとするので、各ギヤ同士の噛み合い率を向上させることができる。したがって、電動モータの回転力を出力軸に効率よく伝達することができ、さらにはワイパモータの作動時における騒音発生を抑制することができる。また、各ギヤ同士の噛み合い率が向上するので、高強度の特殊な材料を用いずにピニオンギヤおよびセクタギヤを小型化することができ、よってワイパモータをさらに小型化することができる。
【0014】
本発明のワイパモータによれば、歯車軸の軸方向両端の少なくともいずれか一方に、セクタギヤに作用するスラスト力を受止する受止部材を設けるので、ピニオンギヤとセクタギヤとが出力軸の軸方向にずれるのを防止して、ピニオンギヤとセクタギヤとの噛み合い率が低下することを抑制できる。
【0015】
本発明のワイパモータによれば、受止部材は、ギヤハウジングおよびギヤカバーの少なくともいずれか一方に摺接し、ギヤハウジングおよびギヤカバーの少なくともいずれか一方には、受止部材を受ける受け面を設けるので、ピニオンギヤとセクタギヤとが出力軸の軸方向にずれるのを防止した状態のもとで、円滑にワイパモータを駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係るワイパモータを示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】運動変換機構を出力軸の基端側から見た斜視図である。
【図4】運動変換機構を出力軸の先端側から見た斜視図である。
【図5】図1のワイパモータにおける運動変換機構の組み付け手順を説明する説明図である。
【図6】図2の破線円B部を拡大して示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態に係るワイパモータを示す正面図を、図2は図1のA−A線に沿う断面図を、図3は運動変換機構を出力軸の基端側から見た斜視図を、図4は運動変換機構を出力軸の先端側から見た斜視図をそれぞれ表している。
【0019】
図1に示すワイパモータ10は、自動車等の車両のリヤウィンドガラスを払拭するためのリヤワイパ装置(図示せず)の駆動源として用いられるもので、ワイパモータ10は、電動モータとしてのモータ部20とギヤユニット部30とを備えている。
【0020】
モータ部20は、鋼板等の磁性材料をプレス加工(深絞り加工)することにより、有底筒状に形成されたモータケース21を備えており、その内部には、断面が略円弧形状に形成された一対の永久磁石22が対向して固定されている。各永久磁石22の内側には、コイル23が所定の巻き方で巻装されたアーマチュア24が回転自在に設けられ、アーマチュア24の回転中心には回転軸としてのアーマチュア軸25が貫通して固定されている。
【0021】
アーマチュア軸25の軸方向に沿う略中間部分には、筒状のコンミテータ(整流子)26が固定され、コンミテータ26にはコイル23の端部が電気的に接続されている。コンミテータ26の外周部分には、一対のブラシ27が摺接するようになっており、これにより車載コントローラ(図示せず)から各ブラシ27に駆動電流を供給することで、コンミテータ26を介してコイル23に駆動電流が流れ、アーマチュア24に回転力(電磁力)が発生し、ひいてはアーマチュア軸25が所定の回転方向/回転速度で回転する。
【0022】
アーマチュア軸25は、モータケース21から突出してギヤユニット部30のギヤハウジング31内に延びており、アーマチュア軸25の突出端側(図中左端側)の外周面には、螺旋状の歯部28aを有するウォーム28が一体に形成されている。ここで、ウォーム28は、例えば、転造加工等により形成されている。ウォーム28は、モータ部20への駆動電流の供給により、アーマチュア軸25と一体回転する。
【0023】
図1および図2に示すように、ギヤユニット部30は、有底状に形成されたギヤハウジング31と、ギヤハウジング31内に回転自在に収容されたギヤ機構40と、ギヤハウジング31の開口部を閉塞するギヤカバー32とから形成されている。ここで、ギヤ機構40は、減速機構41と運動変換機構42とから形成されている。
【0024】
減速機構41は、アーマチュア軸25に形成されたウォーム28と、ギヤハウジング31内に回転自在に収容されたウォームホイール43とから形成されている。ウォームホイール43は、溶融したプラスチック等の樹脂材料を射出成形することにより形成され、ギヤハウジング31の底部面積の略半分を占める大径のスパーギヤとなっている。ウォームホイール43の径方向外側には歯部43aが形成され、歯部43aはウォーム28の歯部28aに噛み合わされている。これにより、アーマチュア軸25の回転が所定の速度にまで減速され、高トルク化された回転力がウォームホイール43から出力される。
【0025】
ウォームホイール43は、ギヤハウジング31の深底収容部31a内に収容され、ウォームホイール43の回転中心軸43bは、ギヤハウジング31の深底収容部31aの底部を貫通するとともに、ギヤハウジング31に回転自在に支持されている。
【0026】
ウォームホイール43には、ギヤカバー32側に所定高さで突出する突出部43cが一体に形成され、突出部43cはウォームホイール43の径方向外側に向けて延びている。突出部43cの径方向内側には、回転中心軸43bを支持する支持孔43dが形成され、突出部43cの径方向外側、つまり回転中心軸43bから径方向外側に所定量離れた位置には、連結軸としての有底の連結孔43eが形成されている。
【0027】
運動変換機構42は、出力軸44のピニオンギヤ44c,運動変換部材45,連結板46,摺動案内部材47,摺動案内キャップ48を備えている。運動変換機構42は、モータ部20(アーマチュア軸25)の回転運動を、減速機構41を介して揺動運動に変換し、出力軸44(ワイパ部材)に伝達するものである。
【0028】
図2に示すように、出力軸44は鋼鉄製の丸棒からなり、基端側がギヤハウジング31内に配置され、先端側がギヤハウジング31外に延出されている。出力軸44は、ギヤハウジング31に一体に設けられたボス部31bに回転自在に支持されている。出力軸44とボス部31bとの間には、ゴム製等の樹脂材料によるシール部材49が装着され、シール部材49は雨水や埃等がギヤハウジング31内に進入するのを阻止している。
【0029】
出力軸44の先端側には、ワイパ部材を形成するワイパアーム(図示せず)の基端側が相対回転不能に固定されるセレーション部44aおよび、ワイパアームの基端側を出力軸44に固定するための固定ねじ(図示せず)がねじ結合される雄ねじ部44bが一体に設けられている。
【0030】
出力軸44の基端側には、焼結材料等により形成されたピニオンギヤ44cが一体回転可能に設けられ、ピニオンギヤ44cは、小径のヘリカルギヤ(斜歯歯車)により形成されている。ピニオンギヤ44cの径方向外側には、図1の網掛部分および図3,図4に示すように、出力軸44の軸方向に傾斜する歯部44dが形成されている。これにより、歯部44dの軸方向に沿う長さ寸法を充分なものとして噛み合い率の向上を図っている。
【0031】
ピニオンギヤ44cの中心部分には、椀状に形成された樹脂キャップ50が装着され、樹脂キャップ50はギヤカバー32の内側面を摺接するようになっている。樹脂キャップ50は、ピニオンギヤ44cに作用するスラスト力を受止するとともに、ピニオンギヤ44cのギヤカバー32に対する相対回転を円滑にする役割を果たすものである。
【0032】
運動変換部材45は、鉄板等の金属材料により平板状に形成され、連結部45aおよびセクタギヤ45bを備えている。
【0033】
連結部45aはウォームホイール43側に配置され、連結部45aには、ウォームホイール43の連結孔43eに回転自在に差し込まれる連結ピン51が固定されている。つまり、連結部45aは連結ピン51を介して連結孔43eに回転自在に連結されている。ここで、連結ピン51と連結孔43eとの間には、相対回転を円滑にするために、所定量の摺動グリス(図示せず)が塗布されている。
【0034】
セクタギヤ45bは略扇形のヘリカルギヤ(斜歯歯車)であり、ピニオンギヤ44cの歯部44dと噛み合わされて、セクタギヤ45bの軸心には歯車軸52が固定されている。セクタギヤ45bの径方向外側には、図1の網掛部分および図3,図4に示すように、出力軸44の軸方向に傾斜する歯部45cが形成されている。これにより、歯部45cの軸方向に沿う長さ寸法を充分なものとして噛み合い率の向上を図っている。
【0035】
運動変換部材45におけるギヤハウジング31の深底収容部31a側には、鋼板等をプレス成形することにより所定形状に形成された連結板46が設けられている。連結板46の長手方向両側には、第1ピン孔46aおよび第2ピン孔46bが形成されており、第1ピン孔46aには出力軸44が揺動自在に装着され、第2ピン孔46bには運動変換部材45の歯車軸52が揺動自在に装着されている。このように、連結板46は、出力軸44と歯車軸52とを揺動自在に連結するようになっている。
【0036】
ここで、第1ピン孔46aと第2ピン孔46bとの間の距離は、セクタギヤ45bにおける歯部45cのピッチ円半径寸法と、ピニオンギヤ44cにおける歯部44dのピッチ円半径寸法との和に設定され、したがって、連結板46は、各ギヤ44c,45bの噛み合い部G(図2参照)の噛み合い状態をがたつくこと無く保持するようになっている。
【0037】
摺動案内部材47は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成され、運動変換部材45のギヤカバー32側に装着、つまり、運動変換部材45とギヤカバー32との間に設けられている。摺動案内部材47は、ギヤカバー32の内側面を摺接し、運動変換部材45のギヤカバー32に対する摺動(相対移動)を円滑にするものである。
【0038】
摺動案内部材47は、図1および図3に示すように、運動変換部材45の形状に沿って略同様の形状に形成され、運動変換部材45のギヤカバー32側の略全面を覆っている。摺動案内部材47には、運動変換部材45の連結部45aに固定された連結ピン51に装着される第1キャップ部47aと、運動変換部材45のセクタギヤ45bに固定された歯車軸52に装着される第2キャップ部47bとを備えている。これにより、摺動案内部材47を運動変換部材45に精度良く装着することができる。
【0039】
第1キャップ部47aは、連結部45aに作用するスラスト力を受止する受止部材として機能し、連結ピン51とギヤカバー32との間に配置されてギヤカバー32の内側を摺接する。また、第2キャップ部47bは、セクタギヤ45bに作用するスラスト力を受止する受止部材として機能し、歯車軸52とギヤカバー32との間に配置されてギヤカバー32の内側に設けられる受け面32aを摺接する。
【0040】
摺動案内部材47には、さらに一対の把持爪47cと引っかけ爪47dとが一体に形成されている。各把持爪47cは、出力軸44の軸方向と直交する方向から運動変換部材45を把持するようになっている。一方、引っかけ爪47dは、図4に示すように、連結板46に引っかけられて摺動案内部材47と連結板46との間に運動変換部材45を保持するようになっている。これにより、ワイパモータ10の組み付け工程途中において、摺動案内部材47が運動変換部材45から脱落するのを防止できる。
【0041】
摺動案内キャップ48は、図2および図4に示すように、プラスチック等の樹脂材料により椀状に形成され、運動変換部材45の摺動案内部材47側とは反対側に設けられている。摺動案内キャップ48は歯車軸52に装着され、ギヤハウジング31の底面に設けられる受け面31cに接触している。これにより、摺動案内キャップ48は、運動変換部材45のギヤハウジング31に対する摺動(相対移動)を円滑にしている。摺動案内キャップ48は、セクタギヤ45bに作用するスラスト力を受止する受止部材として機能し、歯車軸52とギヤハウジング31との間に配置されてギヤハウジング31の内側を摺接するようになっている。
【0042】
このように、摺動案内キャップ48および第2キャップ部47bは、いずれもセクタギヤ45bに作用するスラスト力を受止するようになっており、これにより、セクタギヤ45bのピニオンギヤ44cに対する軸方向へのずれを防止して各ギヤ45b,44cの噛み合い率の低下を抑制している。
【0043】
次に、ワイパモータ10を形成する運動変換機構42の組み付け手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0044】
図5は図1のワイパモータにおける運動変換機構の組み付け手順を説明する説明図を表している。なお、図5においては、説明を分かり易くするために、モータケース21,ギヤハウジング31およびギヤカバー32等を省略している。
【0045】
図5に示すように、まず、アーマチュア軸25やウォームホイール43等を、モータケース21およびギヤハウジング31(図1参照)のそれぞれに組み付けたワイパモータサブ組立体SA1を準備する。また、出力軸44にピニオンギヤ44cや連結板46を装着した出力軸組立体SA2を準備する。さらに、連結ピン51および歯車軸52を固定した運動変換部材45,摺動案内部材47および摺動案内キャップ48を準備する。
【0046】
次いで、図中矢印(1)に示すように、摺動案内部材47を臨ませて、運動変換部材45に装着する。このとき、摺動案内部材47の第1キャップ部47aを連結ピン51に、第2キャップ部47bを歯車軸52にそれぞれ対応させる。そして、各把持爪47cを、運動変換部材45を把持するよう装着し、さらに、引っかけ爪47dを、運動変換部材45に引っかける。これにより、摺動案内部材47の運動変換部材45への装着が完了する。
【0047】
その後、図中矢印(2)に示すように、運動変換部材45を臨ませて、歯車軸52を連結板46の第2ピン孔46bに装着する。このとき、連結板46の位置を適宜調整する等して、ピニオンギヤ44cの歯部44dとセクタギヤ45bの歯部45cとを噛み合わせ易いようにしておく。次いで、図中矢印(3)に示すように、第2ピン孔46bの図中下方から突出した歯車軸52に、摺動案内キャップ48を装着する。
【0048】
その後、図中矢印(4)に示すように、出力軸44の雄ねじ部44b側を、ギヤハウジング31の開口部側から臨ませて、ギヤハウジング31のボス部31bに出力軸44を挿入するとともに、ウォームホイール43の連結孔43eに連結ピン51を装着する。このとき、ウォームホイール43および連結板46の位置を適宜調整する等して、出力軸44および連結ピン51をそれぞれ装着し易いようにしておく。これにより、運動変換機構42のギヤハウジング31への組み付けが完了する。
【0049】
次に、以上のように形成したワイパモータ10の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0050】
図6は図2の破線円B部を拡大して示す動作説明図を表している。
【0051】
運転者等によりワイパスイッチ(図示せず)を操作すると、図1に示すモータ部20に駆動電流が供給され、ウォーム28の回転がウォームホイール43に伝達される。すると、ウォームホイール43の回転に伴って、図6の矢印R1に示すように運動変換部材45が揺動運動する。さらに、運動変換部材45の揺動運動に伴って、セクタギヤ45bの歯車軸52が矢印M方向に移動する。このとき、歯車軸52の軸方向両端には、摺動案内部材47の第2キャップ部47bと摺動案内キャップ48とが装着されているため、歯車軸52はギヤハウジング31とギヤカバー32との間で円滑に移動することができる。
【0052】
セクタギヤ45bの揺動運動は、歯部45cを介してピニオンギヤ44cの歯部44dに伝達される。これにより、ピニオンギヤ44cが揺動運動して出力軸44も矢印R2に示すように揺動運動し、出力軸44の先端部分(セレーション部44a)に取り付けられたワイパ部材がリヤウィンドガラス上の予め定められた反転位置の間で揺動運動する。このとき、ピニオンギヤ44cには樹脂キャップ50が装着されているので、出力軸44はギヤカバー32に対して略抵抗無く円滑に揺動することができる。
【0053】
セクタギヤ45bの歯部45cおよびピニオンギヤ44cの歯部44dは、出力軸44の軸方向に沿って傾斜する歯部としたので、ピニオンギヤ44cおよびセクタギヤ45bには、噛み合い部Gを軸方向にずらす力、つまりスラスト力Fが作用する。本実施の形態に係るワイパモータ10においては、ピニオンギヤ44cは連結板46とギヤカバー32との間に略隙間無く保持され、さらにセクタギヤ45bは摺動案内部材47の第2キャップ部47bと摺動案内キャップ48との間に略隙間無く保持されている。したがって、ピニオンギヤ44cとセクタギヤ45bとの噛み合い部Gが、軸方向にずれて噛み合い率が低下することを抑制できる。
【0054】
ここで、ワイパモータ10の作動時には、スラスト力Fは図示する方向に作用するため、例えば、摺動案内部材47の第2キャップ部47bを省略することもできる。つまり、歯車軸52とギヤハウジング31との間の摺動案内キャップ48のみとすることもできる。さらに、セクタギヤ45bの歯部45cおよびピニオンギヤ44cの歯部44dの傾斜方向を逆向きとすることで、摺動案内キャップ48を省略し、歯車軸52とギヤカバー32との間の第2キャップ部47bのみとすることもできる。
【0055】
以上詳述したように本実施の形態に係るワイパモータ10によれば、ピニオンギヤ44cとセクタギヤ45bとを、出力軸44の軸方向に傾斜する歯部44d,45cを有するヘリカルギヤとしたので、各ギヤ44c,45b同士の噛み合い率を向上させることができる。したがって、モータ部20の回転力を出力軸44に効率よく伝達することができ、さらにはワイパモータ10の作動時における騒音発生を抑制することができる。また、各ギヤ44c,45b同士の噛み合い率が向上するので、高強度の特殊な材料を用いずにピニオンギヤ44cおよびセクタギヤ45bを小型化することができ、よってワイパモータ10をさらに小型化することができる。
【0056】
また、本実施の形態に係るワイパモータ10によれば、歯車軸52の軸方向両端に、セクタギヤ45bに作用するスラスト力Fを受止する第2キャップ部47bおよび摺動案内キャップ48を設けたので、ピニオンギヤ44cとセクタギヤ45bとが出力軸44の軸方向にずれるのを防止して、ピニオンギヤ44cとセクタギヤ45bとの噛み合い率が低下することを抑制できる。したがって、各ギヤ44c,45bの偏摩耗等を抑制して、ワイパモータ10の長寿命化を図ることができる。
【0057】
さらに、本実施の形態に係るワイパモータ10によれば、摺動案内キャップ48および第2キャップ部47bを、歯車軸52とギヤハウジング31との間および歯車軸52とギヤカバー32との間に設け、ギヤハウジング31およびギヤカバー32にそれぞれ摺接するようにしたので、ピニオンギヤ44cとセクタギヤ45bとが出力軸44の軸方向にずれるのを防止した状態のもとで、円滑にワイパモータ10を駆動させることができる。したがって、ワイパモータ10の作動時における騒音発生等をさらに抑制して、ワイパモータ10の静粛性をより向上させることができる。
【0058】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、ワイパモータ10を、自動車等の車両のリヤワイパ装置の駆動源に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、自動車等の車両のフロントウィンドガラスを払拭するフロントワイパ装置の駆動源に適用することもできる。
【0059】
また、上記実施の形態においては、焼結材料等により形成されたピニオンギヤ44cと鉄板等の金属材料により形成された運動変換部材45とを示したが、本発明はこれに限らず、ピニオンギヤ44cと運動変換部材45とは、プラスチック等の樹脂材料により形成したものとすることができる。
【0060】
さらに、本発明は、アーマチュア軸25がモータ部20とギヤユニット部30との間で分割される形状のものや、モータケース21に永久磁石が4個以上固定されるものとすることができる。
【0061】
また、上記実施の形態においては、ワイパモータ10を、自動車等の車両に搭載されるワイパ装置の駆動源としたものを示したが、本発明はこれに限らず、鉄道車両や航空機,船舶等に搭載されるワイパ装置の駆動源としても用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 ワイパモータ
20 モータ部(電動モータ)
21 モータケース
22 永久磁石
23 コイル
24 アーマチュア
25 アーマチュア軸
26 コンミテータ
27 ブラシ
28 ウォーム
28a 歯部
30 ギヤユニット部
31 ギヤハウジング
31a 深底収容部
31b ボス部
31c 受け面
32 ギヤカバー
32a 受け面
40 ギヤ機構
41 減速機構
42 運動変換機構
43 ウォームホイール
43a 歯部
43b 回転中心軸
43c 突出部
43d 支持孔
43e 連結孔(連結軸)
44 出力軸
44a セレーション部
44b 雄ねじ部
44c ピニオンギヤ(ヘリカルギヤ)
44d 歯部
45 運動変換部材
45a 連結部
45b セクタギヤ(ヘリカルギヤ)
45c 歯部
46 連結板
46a 第1ピン孔
46b 第2ピン孔
47 摺動案内部材
47a 第1キャップ部
47b 第2キャップ部(受止部材)
47c 把持爪
47d 爪
48 摺動案内キャップ(受止部材)
49 シール部材
50 樹脂キャップ
51 連結ピン
52 歯車軸
F スラスト力
G 噛み合い部
SA1 ワイパモータサブ組立体
SA2 出力軸組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの回転運動を揺動運動に変換して出力軸に伝達する運動変換機構を備え、前記出力軸に取り付けられるワイパ部材を予め定められた反転位置の間で揺動駆動するワイパモータであって、
前記運動変換機構を収容する有底状のギヤハウジングと、
前記ギヤハウジングの開口部を閉塞するギヤカバーと、
前記ギヤハウジング内に延び、前記電動モータにより回転されるウォームと、
前記ギヤハウジング内に回転自在に収容され、前記ウォームに噛み合うウォームホイールと、
前記ウォームホイールの回転中心軸から離れた位置に設けられる連結軸と、
前記ギヤハウジング内に回転自在に収容され、前記出力軸に一体回転可能に設けられるピニオンギヤと、
前記連結軸に回転自在に連結される連結部と前記ピニオンギヤに噛み合うセクタギヤとを有する運動変換部材と、
前記セクタギヤの軸心に設けられる歯車軸と前記出力軸とを揺動自在に連結し、前記ピニオンギヤと前記セクタギヤとの噛み合いを保持する連結板とを備え、
前記ピニオンギヤと前記セクタギヤとを、前記出力軸の軸方向に傾斜する歯部を有するヘリカルギヤとすることを特徴とするワイパモータ。
【請求項2】
請求項1記載のワイパモータにおいて、前記歯車軸の軸方向両端の少なくともいずれか一方に、前記セクタギヤに作用するスラスト力を受止する受止部材を設けることを特徴とするワイパモータ。
【請求項3】
請求項2記載のワイパモータにおいて、前記受止部材は、前記ギヤハウジングおよび前記ギヤカバーの少なくともいずれか一方に摺接し、前記ギヤハウジングおよび前記ギヤカバーの少なくともいずれか一方には、前記受止部材を受ける受け面を設けることを特徴とするワイパモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84252(P2011−84252A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240482(P2009−240482)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】