説明

ワイパー取付ブラケットの配置構造

【課題】ワイパー取付ブラケットに、ワイパー装置を支持する十分な強度を得ることを可能にする。
【解決手段】ワイパー装置74を取付けるワイパー取付ブラケットの配置構造70であって、ワイパー取付ブラケット71(72,72)は、車体10に固定するための少なくとも2つの固定部81,81(101,102)と、固定部81,81(101,102)の間に配置されてワイパー装置74が取付けられるワイパー取付部83(103)とを備えるとともに、押出材にて形成され、ワイパー取付部83(103)に、押出材を貫通する貫通孔88(108)が設けられるとともに、ワイパー取付部83(103)に、貫通孔88(108)に貫通する筒部91、及びワイパー取付部83(103)の取付面表面に露出する座部92とを有するとともに、一方向からカシメ可能なカシメナット76が設けられ、ワイパー装置74の締結具75がカシメナット76に締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントウインドウ等に付着する雨滴を払拭するワイパー装置の支持部となるワイパー取付ブラケットの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイパー取付ブラケットの配置構造として、フロントウインドウ下部のカウルボックスに設けられるものが知られている。
この種のワイパー取付ブラケットの配置構造は、ワイパー装置を所定の強度で支持できるように設計がなされるものであった。このような、ワイパー取付ブラケットの配置構造として、軽合金の押出材で形成したものや、板金を折り曲げ形成したものが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1のワイパー取付ブラケットの配置構造は、軽金属の押出し成形によって構成されるとともに、押出し方向が車両幅方向となるように配置され、さらに、ワイパー装置のピボット軸方向への荷重入力時に、ワイパー取付ブラケット自体を変形させるための脆弱部が設けられたものである。
【0004】
特許文献2のワイパー取付ブラケットの配置構造は、ワイパー取付ブラケットがカウルボックスに設けられるとともに座屈変形可能な簡易屈曲部が設けられ、エンジンフードの後端部の衝撃エネルギーの吸収性が配慮されたものである。
【0005】
しかし、特許文献1のワイパー取付ブラケットの配置構造では、軽合金の押出材を使用しているものの、大型であり車体の重量増加を招く恐れがあり、他部品と干渉してレイアウト上の制約を課すという問題がある。さらに、特許文献1のワイパー取付ブラケットの配置構造では、車体に対して片持ち支持されているので、支持剛性も大きく望めないという課題があった。
【0006】
また、特許文献2のワイパー取付ブラケットでは、板金を折り曲げ形成しているので、強度が不足し、ワイパーの払拭機能を低下するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−284487公報
【特許文献2】特開平11−124010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ワイパー装置を支持する十分な強度を確保することができるワイパー取付ブラケットの配置構造を提供することを課題とする。
さらに、車体の軽量化に寄与することができるとともに、他部品との干渉を避けてレイアウト上の自由度を拡げることができるワイパー取付ブラケットの配置構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体のカウルボックスにワイパー取付ブラケットを配置し、このワイパー取付ブラケットにワイパー装置を取付けるワイパー取付ブラケットの配置構造であって、ワイパー取付ブラケットは、車体に固定するための少なくとも2つの固定部と、これらの固定部の間に配置されてワイパー装置が取付けられるワイパー取付部とを備えるとともに、押出成形により成形された押出材にて形成され、ワイパー取付部に、押出材を貫通する貫通孔が設けられるとともに、この貫通孔に貫通する筒部及びワイパー取付部の取付面表面に露出する座部とを有し、且つ一方向からカシメ可能なカシメナットが設けられ、ワイパー装置の締結具がカシメナットに締結されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、ワイパー取付部に、座部が埋没して座部の座面とワイパー取付部の表面とを略面一にする凹部が設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、2つの固定部が、ワイパー取付部の上下にそれぞれ設けられ、上方の固定部がミグ溶接により接合され、下方の固定部がスポット溶接により接合されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、車体に、左右のサスタワーに一端が連結されて、他端がカウルボックスの車幅方向略中央にタワーバー連結部材を介して連結される左右のタワーバーを有し、タワーバー連結部材の後方に、カウルボックスを補強する補強部材が設けられ、この補強部材にワイパー取付ブラケットを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体のカウルボックスにワイパー取付ブラケットを配置し、このワイパー取付ブラケットにワイパー装置を取付ける。
ワイパー取付ブラケットは、車体に固定するための少なくとも2つの固定部と、これらの固定部の間に配置されてワイパー装置が取付けられるワイパー取付部とを備えるとともに、押出成形により成形された押出材にて形成されたので、2つの固定部の間にワイパー取付部を形成することができる。これにより、ワイパー取付ブラケットの固定強度が向上するとともに、ワイパー装置の取付け安定性を向上することができる。
また、ワイパー取付ブラケットに押出材を用いることで、肉厚の設定も容易になり、設計の自由度の向上を図ることができる。
ワイパー取付部に、押出材を貫通する貫通孔が設けられるとともに、この貫通孔に貫通する筒部及びワイパー取付部の取付面表面に露出する座部とを有し、且つ一方向からカシメ可能なカシメナットが設けられたので、例えば、ワイパー取付部のカシメナット部分も押出成形する場合に比べて駄肉を減らすことができ、ワイパー取付ブラケットを軽量化できる。
さらに、ワイパー取付部に、一方向からカシメ可能なカシメナットを用いることで、ワイパー取付ブラケットの製造工程も簡略化することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、ワイパー取付部に、座部が埋没して座部の座面とワイパー取付部の表面とを略面一にする凹部が設けられたので、ワイパー装置を取付けたときにワイパー装置が接触する面が座部の座面のみならず、ワイパー取付部の表面全体で接触する。これにより、ワイパー装置の取付け安定性のさらなる向上を図ることができる。この結果、ワイパー装置の払拭性能の向上を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、2つの固定部が、ワイパー取付部の上下にそれぞれ設けられ、上方の固定部がミグ溶接により接合された。これにより、上方の固定部の溶接範囲の拡大を図ることができる。さらに、ミグ溶接は上方の固定部の端部エリアに施されるものなので、ワイパー取付部のレイアウトの自由度が向上する。特に、ワイパー取付ブラケットの上方には他の部品(例えば、フロントメンバ等)がレイアウトされることがあり、上方の固定部をミグ溶接することで、他の部品との干渉を避けることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、車体に、左右のサスタワーに一端が連結されて、他端がカウルボックスの車幅方向略中央にタワーバー連結部材を介して連結される左右のタワーバーを有し、タワーバー連結部材の後方に、カウルボックスを補強する補強部材が設けられ、この補強部材にワイパー取付ブラケットを設けたので、さらなるワイパー装置の取付剛性を向上することができるとともに、ワイパー装置の安定性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るワイパー取付ブラケットの配置構造を採用した車体前部の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明に係るワイパー取付ブラケットの配置構造の斜視図である。
【図4】図3に示されたワイパー取付ブラケットの配置構造の第1のワイパー取付ブラケットの斜視図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図3に示されたワイパー取付ブラケットの配置構造の第1のワイパー取付ブラケットの溶接状態を示す斜視図である。
【図7】図3に示されたワイパー取付ブラケットの配置構造の第2のワイパー取付ブラケットの斜視図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】図3に示されたワイパー取付ブラケットの配置構造のワイパー取付ブラケットの比較検討図である。
【図10】本発明に係るワイパー取付ブラケットの配置構造の別実施例の第1のワイパー取付ブラケットの斜視図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0019】
図1に示すように、車体10は、車体前後方向に向けて延出された左右のフロントサイドフレーム11,12と、左フロントサイドフレーム11の上方に設けられた左アッパメンバー13と、右フロントサイドフレーム12の上方に設けられた右アッパメンバー14と、左フロントサイドフレーム11および左アッパメンバー13に設けられた左ホイールハウス15と、右フロントサイドフレーム12および右アッパメンバー14に設けられた右ホイールハウス16とを備えている。
【0020】
また、車体10は、左右のフロントサイドフレーム11,12の基部側に設けられたダッシュボードロア21と、ダッシュボードロア21の上部に設けられたダッシュボードアッパ22と、ダッシュボードロア21およびダッシュボードアッパ22間のカウルボックス(上向き開口部)23内に設けられた箱状の補強部材25と、補強部材25の前方においてダッシュボードアッパ22に設けられたタワーバー連結部材26と、タワーバー連結部材26の左端部および左ホイールハウス15の左サスタワー27に連結された左タワーバー31と、タワーバー連結部材26の右端部および右ホイールハウス16の右サスタワー28に連結された右タワーバー32とを備えている。
【0021】
左右のホイールハウス15,16は、頂部に左右のサスタワー27,28がそれぞれ設けられている。
左ストラットタワー27に、左ダンパ34(すなわち、左ストラット)の上端部34aが設けられている。
そして、左ダンパ34の下端部34bにナックル(図示せず)などを介して左前輪37が支持されている。
【0022】
また、右ストラットタワー28に、右ダンパ35(すなわち、右ストラット)の上端部35aが設けられている。
そして、右ダンパ35の下端部35bにナックル(図示せず)などを介して右前輪38が支持されている。
【0023】
図2に示すように、ダッシュボードロア21の上部42にダッシュボードアッパ22を設けることで、ダッシュボードロア21の上部42およびダッシュボードアッパ22でカウルボックス23が形成されている。
【0024】
ダッシュボードロア21は、エンジンルーム44および車室45を仕切る鉛直壁部41と、鉛直壁部41の上辺に設けられた上部42とを有している。
【0025】
上部42は、鉛直壁部41の上辺から車体後方に向けて水平に折り曲げられた第1水平部51と、第1水平部51の後辺から車体後方に向けて上り勾配に折り曲げられた第1傾斜壁52と、第1傾斜壁52の後辺から車体後方に向けて水平に折り曲げられた第2水平部53と、第2水平部53の後辺から車体後方に向けて上り勾配に折り曲げられた第2傾斜壁54と、第2傾斜壁54の後辺から車体後方に向けて水平に折り曲げられた第3水平部55とを有している。
【0026】
第3水平部55にはウインドシールドロア57が設けられている。
ウインドシールドロア57は、フロント窓枠の下部を構成し、フロント窓ガラス(図示せず)の下辺を支える部材である。
【0027】
ダッシュボードアッパ22は、第1水平部51に支持される底部61と、底部61の後辺から車体後方に向けて上り勾配に折り曲げられた後傾斜壁部62と、底部61の前辺から略鉛直に折り曲げられた前壁部63と、前壁部63の上辺から車体前方に向けて折り曲げられた前フランジ64とを有する。
【0028】
ダッシュボードアッパ22の底部61の一部が上部42の第1水平部51に載置された状態で接合されている(設けられている)。
さらに、ダッシュボードアッパ22の後傾斜壁部62が上部42の第1傾斜壁52に接合されている(設けられている)。
【0029】
これにより、ダッシュボードアッパ22の上部42(具体的には、第1傾斜壁52、第2水平部53および第2傾斜壁54)およびダッシュボードアッパ22で上向きに開口した溝状のカウルボックス23が形成されている。
すなわち、カウルボックス23は、上方に開口された上向きの溝部である。
【0030】
図1〜図3に示したように、ワイパー取付ブラケットの配置構造70は、上方に開口されたカウルボックス23と、このカウルボックス23の車幅方向の端部壁面73に設けられ、ワイパー装置74の一方を支持する第1のワイパー取付ブラケット71と、ダンパ34,35を支持する左右のサスタワー27,28と、左右のサスタワー27,28に一端が連結されて、他端がカウルボックス23の車幅方向略中央にタワーバー連結部材26を介して連結される左右のタワーバー31,32と、タワーバー連結部材26の後方にてカウルボックス23を補強する補強部材25と、この補強部材25に設けられ、ワイパー装置74の他方を支持する第2のワイパー取付ブラケット72,72と、これらの第1のワイパー取付ブラケット71及び第2のワイパー取付ブラケット72,72に設けられる一方向からカシメ可能な複数のカシメナット76とから構成された構造である。
【0031】
第1のワイパー取付ブラケット71には、ワイパー装置74の一方の締結具75,75が締結され、第2のワイパー取付ブラケット72,72にはワイパー装置74の他方の締結具75,75が締結される。
【0032】
図4〜図6に示されたように、第1のワイパー取付ブラケット71は、カウルボックス23(図3参照)の端部壁面73にミグ溶接される第1の固定部(上方の固定部)81,81と、カウルボックス23の端部壁面73にスポット溶接される第2の固定部(下方の固定部)82,82と、カシメナット76,76が取付けられるワイパー取付部83とが設けられる。
【0033】
言い換えれば、第1のワイパー取付ブラケット71は、略T型の押出材を切断して形成される部材であり、第1フランジ部84に第1の固定部81,81が形成され、第2フランジ部85に第2の固定部82,82が形成され、第3フランジ部86にワイパー取付部83が形成される。なお、第1の固定部81,81及び第2の固定部82,82は溶接部分でもある。
【0034】
第1のワイパー取付ブラケット71は、押出材で形成されるので、板厚調整が自在であり、車体10への溶接部位もプレス品(板金)に比べて面積を広く確保することができる。 従って、第1のワイパー取付ブラケット71の単品での剛性を向上することができるとともに、溶接強度の向上も図ることができる。
【0035】
ワイパー取付部83は、カシメナット76,76の筒部91,91が貫通する貫通孔88,88と、カシメナット76,76の座部(フランジ)92,92が収納される凹部89,89とが形成される。凹部89は、カシメナット76の座部92が埋没して座部92の座面とワイパー取付部83の表面とを略面一にする作用をなす。
【0036】
カシメナット76は、上述のように、筒部91と、座部92とから構成され、筒部91の座部92下方には貫通孔88(若しくは、後述する貫通孔108)にカシメられるカシメ代93が設けられ、このカシメ代93の下方にワイパー装置74の締結具(ボルト)75が嵌合するナット部94が形成される。
【0037】
カシメナット76は、専用工具で一方向(座部92の外方)からカシメ可能なナットである。一般的に、「ポップナット(商品名)」や「ブラインドナット(商品名)」等の名称で市販されているナットであり、これらのナットの片側締結方法は、従来工法である溶接ナット工法、バーリングタップ工法、ボルト・ナット工法などと比較すると、初心者でも簡単に迅速な組立作業が可能である。また、母材を傷めないため、製品組立の最終工程での取付けも可能であり、組立ラインの自動化にも優れた特性を有する。
【0038】
図3,図7,図8に示されたように、第2のワイパー取付ブラケット72は、カウルボックス23の前フランジ64にスポット溶接される第1の固定部(前方の固定部)101と、補強部材25の底111にスポット溶接される第2の固定部(後方の固定部)102と、カシメナット76が取付けられるワイパー取付部103とが設けられる。
【0039】
言い換えれば、第2のワイパー取付ブラケット72は、略矩形の本体部104から略矩形の上辺に沿って前延出部105が延出され、略矩形の本体部104から略矩形の下辺に沿って後延出部106が延出され、略矩形の本体部104内に筋交い部が設けられたものであり、本体部104にワイパー取付部103が形成され、前延出部105に第1の固定部101が形成され、後延出部106に第2の固定部102が形成されたものである。
【0040】
ワイパー取付部103は、第1のワイパー取付ブラケット71(図4参照)のワイパー取付部83と同様に、カシメナット76の筒部91が貫通する貫通孔108と、カシメナット76の座部92が収納される凹部109とが形成される。凹部109は、カシメナット76の座部92が埋没して座部92の座面とワイパー取付部103の表面とを略面一にする作用をなす。
【0041】
第2のワイパー取付ブラケット72は、押出材で形成されるので、板厚調整が自在であり、車体10への溶接部位もプレス品(板金)に比べて面積を広く確保することができる。 従って、第2のワイパー取付ブラケット72の単品での剛性を向上することができるとともに、溶接強度の向上も図ることができる。
【0042】
図9(a)に比較例の第1のワイパー取付ブラケット201が示される。比較例の第1のワイパー取付ブラケット201は、板金にて断面視L字に形成されたブラケットであり、ワイパー取付部204から固定部205が折り曲げ形成されている。固定部205は、カウルボックスの壁面端部206に2箇所のスポット溶接がされるだけなので、ワイパー取付部204が矢印a1の如く振れる恐れがあり、ワイパー装置(不図示)の十分な支持剛性を確保できないことがある。
【0043】
図9(b)に比較例の第2のワイパー取付ブラケット202が示される。比較例の第2のワイパー取付ブラケット202は、板金にて断面視L字に形成されたブラケットであり、第1のワイパー取付ブラケット201同様に、ワイパー取付部214から固定部215が折り曲げ形成されている。同様に、固定部215は、カウルボックスの前壁面216に2箇所のスポット溶接がされるだけであり、溶接部分が限られるので、ワイパー取付部214が矢印a2の如く振れる恐れがあり、ワイパー装置(不図示)の十分な支持剛性を確保できないことがある。
【0044】
図9(c)に実施例の第1のワイパー取付ブラケット71が示される。実施例の第1のワイパー取付ブラケット71は、ワイパー取付部83が、第1の固定部(上方の固定部)81,81と、第2の固定部(下方の固定部)82,82との間に形成されている。従って、ワイパー取付ブラケット71の固定強度が向上するとともに、ワイパー装置74(図3参照)の取付け安定性を向上することができる。
【0045】
図9(d)に実施例の第2のワイパー取付ブラケット72が示される。実施例の第2のワイパー取付ブラケット72は、第1のワイパー取付ブラケット71と同様に、第1の固定部(前方の固定部)101と、第2の固定部(後方の固定部)102との間に形成されている。従って、ワイパー取付ブラケット72の固定強度が向上するとともに、ワイパー装置74(図3参照)の取付け安定性を向上することができる。
【0046】
図10及び図11に示されたように、別実施例の第1のワイパー取付ブラケット121が示される。別実施例の第1のワイパー取付ブラケット121は、カウルボックスの端部壁面123にミグ溶接される第1の固定部(上方の固定部)131と、カウルボックスの端部壁面123にスポット溶接される第2の固定部(下方の固定部)132と、ワイパー装置が取付けられるワイパー取付部133とが設けられる。
【0047】
ワイパー取付部133には、機械加工でワイパー装置の締結具を取付ける取付部134,134が形成される。
【0048】
別実施例の第1のワイパー取付ブラケット121を押出材で形成する場合には、取付部134,134間に不要な駄肉部位が発生する。このため、車体の重量増加を招くことがある。また、取付部134,134を形成するために、切削加工が必要なため生産性も悪化する。
【0049】
図3,図4,図7に示されたように、ワイパー取付ブラケットの配置構造70では、車体10のカウルボックス23にワイパー取付ブラケット71(72,72)を配置し、ワイパー取付ブラケット71(72,72)にワイパー装置74を取付ける。
【0050】
ワイパー取付ブラケット71(72)は、車体10に固定するための少なくとも2つの固定部81,81(101,102)と、これらの固定部81,81(101,102)の間に配置されてワイパー装置74が取付けられるワイパー取付部83(103)とを備えるとともに、押出成形により成形された押出材にて形成されたので、2つの固定部81,81(101,102)の間にワイパー取付部83(103)を形成することができる。これにより、ワイパー取付ブラケット71(72)の固定強度が向上するとともに、ワイパー装置74の取付け安定性を向上することができる。
【0051】
また、ワイパー取付ブラケット71(72)に押出材を用いることで、肉厚の設定も容易になり、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0052】
ワイパー取付部83(103)に、押出材を貫通する貫通孔88(108)が設けられるとともに、この貫通孔88(108)に貫通する筒部91及びワイパー取付部83(103)の取付面表面に露出する座部92とを有し、且つ一方向からカシメ可能なカシメナット76が設けられたので、図10に示された別実施例の第1のワイパー取付ブラケット121のように、ワイパー取付部83のカシメナット76部分も押出成形する場合に比べて駄肉を減らすことができ、ワイパー取付ブラケット71(72)を軽量化できる。
【0053】
さらに、ワイパー取付部83(103)に、一方向からカシメ可能なカシメナット76を用いることで、ワイパー取付ブラケット71(72)の製造工程も簡略化することができる。
【0054】
図5及び図8に示されたように、ワイパー取付ブラケット71(72)は、ワイパー取付部83(103)に、座部92が埋没して座部92の座面とワイパー取付部83(103)の表面とを略面一にする凹部89(109)が設けられたので、ワイパー装置74を取付けたときにワイパー装置74が接触する面が座部92の座面のみならず、ワイパー取付部83(103)の表面全体で接触する。これにより、ワイパー装置74の取付け安定性のさらなる向上を図ることができる。この結果、ワイパー装置74の払拭性能の向上を図ることができる。
【0055】
図6に示されたように、ワイパー取付ブラケットの配置構造70では、2つの固定部81,82が、ワイパー取付部83の上下にそれぞれ設けられ、上方の固定部81がミグ溶接により接合された。
【0056】
これにより、上方の固定部81の溶接範囲の拡大を図ることができる。さらに、ミグ溶接は上方の固定部81の端部エリアに施されるものなので、ワイパー取付部83のレイアウトの自由度が向上する。特に、ワイパー取付ブラケット71の上方には他の部品(例えば、フロントメンバ等)がレイアウトされることがあり、上方の固定部81をミグ溶接することで、他の部品との干渉を避けることができる。
【0057】
図1及び図2に示されたように、ワイパー取付ブラケットの配置構造70では、車体10に、左右のサスタワー27,28に一端が連結されて、他端がカウルボックス23の車幅方向略中央にタワーバー連結部材26を介して連結される左右のタワーバー31,32を有し、タワーバー連結部材26の後方に、カウルボックス23を補強する補強部材25が設けられ、この補強部材25に第2のワイパー取付ブラケット82,82を設けたので、さらなるワイパー装置74の取付剛性を向上することができるとともに、ワイパー装置74の安定性の向上を図ることができる。
【0058】
尚、本発明に係るワイパー取付ブラケットの配置構造は、図3に示すように、第1のワイパー取付ブラケット71及び第2のワイパー取付ブラケット72,72を構成要素としたが、これに限るものではなく、他の構成要素に第1のワイパー取付ブラケット71のみを含む構造、若しくは、他の構成要素に第2のワイパー取付ブラケット72のみを含む構造としても成立するものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るワイパー取付ブラケットは、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0060】
10…車体、23…カウルボックス、25…補強部材、26…タワーバー連結部材、27,28…サスタワー、31,32…タワーバー、70…ワイパー取付ブラケットの配置構造、71,72…ワイパー取付ブラケット、75…締結具、76…カシメナット、81,82,101,102…固定部、83,103…ワイパー取付部、88,108…貫通孔、89,109…凹部、91…筒部、92…座部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のカウルボックスにワイパー取付ブラケットを配置し、このワイパー取付ブラケットにワイパー装置を取付けるワイパー取付ブラケットの配置構造であって、
前記ワイパー取付ブラケットは、車体に固定するための少なくとも2つの固定部と、これらの固定部の間に配置されてワイパー装置が取付けられるワイパー取付部とを備えるとともに、押出成形により成形された押出材にて形成され、
前記ワイパー取付部に、前記押出材を貫通する貫通孔が設けられるとともに、この貫通孔に貫通する筒部及びワイパー取付部の取付面表面に露出する座部とを有し、且つ一方向からカシメ可能なカシメナットが設けられ、
前記ワイパー装置の締結具が前記カシメナットに締結されることを特徴とするワイパー取付ブラケットの配置構造。
【請求項2】
前記ワイパー取付部に、前記座部が埋没して座部の座面と前記ワイパー取付部の表面とを略面一にする凹部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のワイパー取付ブラケットの配置構造。
【請求項3】
前記2つの固定部は、前記ワイパー取付部の上下にそれぞれ設けられ、上方の固定部がミグ溶接により接合され、下方の固定部がスポット溶接により接合されることを特徴とする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のワイパー取付ブラケットの配置構造。
【請求項4】
前記車体に、左右のサスタワーに一端が連結されて、他端が前記カウルボックスの車幅方向略中央にタワーバー連結部材を介して連結される左右のタワーバーを有し、
前記タワーバー連結部材の後方に、前記カウルボックスを補強する補強部材が設けられ、この補強部材に前記ワイパー取付ブラケットを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のワイパー取付ブラケットの配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−274747(P2010−274747A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128193(P2009−128193)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】