説明

ワイヤーボンドの三次元位置決め方法及び装置

【課題】微小径ワイヤーボンドの接合状態の良否検査に先立ち、当該ワイヤーボンドの三次元的位置決めを迅速且つ精確に行うことができるワイヤーボンドの三次元位置決め方法及び装置を提供することを課題とする。
【解決手段】カメラ5とラインレーザー3、4を用いて、可動ステージ2上に載置されたワイヤーボンド1の三次元位置決めを行うための方法であって、 ラインレーザー3、4を、カメラ5の向きに対して角度を持たせて配置することにより、照射されたレーザーラインがワイヤーボンド照射部分において他の照射部分と一直線状にならないようにし、カメラ5で取り込んだレーザーラインが照射された状態のワイヤーボンド1の画像データにおいて、ワイヤーボンド1上におけるレーザーラインの位置と基準位置とのずれとラインレーザーの傾斜角度とから演算して求めた数値を基に、可動ステージ2を移動制御する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤーボンド上の三次元位置決め方法及び装置に関するものであり、より詳細には、ワイヤーボンドの検査装置において、検査に先立ち、ウェッジボンド、ボールボンド等のワイヤーボンド上の検査測定点となる特定位置の三次元位置決めを高速に行うための方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品製造の際の微小径ワイヤーボンドについて考えてみると、電子機器の高性能小型化に伴い、電子部品の小型化と高密度実装が進み、それに伴って信頼性の高い高度な接合技術が要求されている。この電子部品のような小物部品の接合には、主にハンダ付け(ろう接に属する)、超音波溶接ないし抵抗溶接(共に圧接に属する)、あるいは、接着が用いられている。
【0003】
従来、かかる微小な金属接合部位の良、不良を接合後に試験によって判断する方法としては、目視(特開平7−190992号公報等)、画像処理(特開2001−60605号公報等)、X線透過等による評価を行なう外観観察による方法(特開平9−80000号公報等)や、通電試験(特開2006−35237号公報等)、引張試験(特開平7−235576号公報等)、熱分布等による評価を行なう非外観観察による方法(特開2001−215187号公報等)等が知られている。
【0004】
しかし、これらの方法には、熟練が必要であるとか、自動化することはできるが、接合状態の良否を外観で評価することは困難とか、破壊検査のため、全数検査ができないとか、熱分布と接合状態の相関性についての問題や、実用的な二次元熱センサが高コストであるとかいった問題があったため、最近では、微小径ワイヤーボンドの良否を接合面積から判定する方法が提唱されている(例えば、特開2008−145344号公報)。
【0005】
その方法は、熱伝導量は接合部材間の接合密度や接合面積に比例することから、接合部位において、一方の接合部材から他方の接合部材へ移動する熱伝導量を測定し、その測定結果を分析することによって、微小径ワイヤーボンドにおける接合面積を演算し、その接合面積の如何により、当該接合状態の良否判定を行うものである。
【0006】
そして、この方法においては、レーザーで微小径ワイヤの接合部を微小スポット径にて加熱し、その加熱点より放射される微少量の赤外線を基にして温度の測定を行う操作が必要となるが、この操作に当たっては、レーザーの加熱点となり且つ測定点となるワイヤーボンド上の特定位置が、常に所望位置に位置決めされる必要がある。しかも、より精確な検査を行うためには、ワークを三次元的に位置決めする必要があるが、数多くのワイヤーボンドについて効率よく検査する必要上、その三次元的位置決めは、短時間のうちに次々と精確に行うことが要請される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−190992号公報
【特許文献2】特開2001−60605号公報
【特許文献3】特開平9−80000号公報
【特許文献4】特開2006−35237号公報
【特許文献5】特開平7−235576号公報
【特許文献6】特開2001−215187号公報
【特許文献7】特開2008−145344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、最近提唱されているレーザー照射を伴うワイヤーボンドの接合状態の検査方法においては、各ワイヤーボンドにおける微小スポット径のレーザー照射点となり、且つ、測定点となる特定位置が、常に所望位置に三次元的に精確に位置決めされる必要があり、しかも、その位置決め操作は、迅速且つ精確に行われることが要請されるが、従来、この要請に十分応え得るワイヤーボンドの三次元位置決め方法及び装置は提唱されていない。
【0009】
本発明は、上記要請に応えるためになされたもので、特に微小径のワイヤーボンドの接合状態の良否検査等に先立ち、当該ワイヤーボンドの三次元的位置決めを極めて迅速且つ精確に行うことが可能であって、当該ワイヤーボンドの検査を迅速且つ精確に行うことを可能ならしめる、ワイヤーボンドの三次元位置決め方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、ワイヤーボンドの検査に先立ち、前記ワイヤーボンド上の検査測定点が適正位置にくるようにワークの三次元位置決めをするための方法であって、前記ワークを三次元的移動制御可能な可動ステージ上に載置する工程と、前記ワークのワイヤーボンド部分を、カメラの向きに対して角度を持たせて配置したラインレーザーでレーザー照射しつつ前記カメラで撮影する工程と、前記カメラで撮影した画像を画像処理してX、Y、Z座標を演算して検出する画像処理工程と、前記可動ステージを前記検出されたX、Y、Z座標に対応して三次元移動制御する工程とから成り、前記画像処理工程は、前記ワイヤーボンドの二次元的形状中心を演算してプリアライメントX、Y座標を求める工程と、前記ワイヤーボンド上のレーザーライン端部の基準位置からのずれ量を演算してZ座標に変換する工程とを含むことを特徴とするワイヤーボンドの三次元位置決め方法である。
【0011】
前記プリアライメントX、Y座標は、前記ワークのワイヤーの中心線とボンド部の最大幅を持つ位置との交点とされる。また、前記ワイヤーボンド上のレーザーライン端部の基準位置からのずれ量を演算してのZ座標への変換は、前記ワイヤーボンド上における前記レーザーラインの最端位置の基準位置からのずれ量と、前記ラインレーザーの傾斜角度とからZ軸方向への補正量を演算することにより行われる。
【0012】
一実施形態においては、前記ラインレーザーは、X軸方向に照射するラインレーザーとY軸方向に照射するラインレーザーをそれぞれ少なくとも1つ含む。
【0013】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、ワイヤーボンドの検査装置において、カメラと、X軸方向に照射するラインレーザーとY軸方向に照射するラインレーザーをそれぞれ少なくとも1つ含んでいて、前記カメラの向きに対して角度を持たせて配置されるラインレーザー群とを含むシステムを用いて、三次元的移動制御可能な可動ステージ上に載置されたワークのワイヤーボンド上の検査測定点となる特定位置の三次元位置決めを行うための方法であって、前記各ラインレーザーをONして、前記可動ステージ上の前記ワイヤーボンドにX軸方向及びY軸方向の2方向からラインレーザーを照射する工程と、前記ラインレーザーが照射された状態の前記ワイヤーボンドを前記カメラで撮影する工程と、前記カメラで撮影した画像を取り込んで画像処理する工程と、前記画像処理した結果に基づいて前記可動ステージを三次元移動させる工程とから成り、 前記画像処理工程は、取り込んだX軸方向ラインの画像から前記ワイヤーボンドの中心X座標を演算すると共に、Y軸方向ラインの画像から前記ワイヤーボンドの中心Y座標を演算してプリアライメントX、Y座標を求める工程と、前記ワイヤーボンド上における前記レーザーラインの最端位置の基準位置からのずれ量と前記ラインレーザーの傾斜角度とからZ軸方向の補正量を演算してZ座標に変換する工程を含むことを特徴とするワイヤーボンドの三次元位置決め方法である。
【0014】
上記課題を解決するための請求項6に記載の発明は、ワイヤーボンドの検査装置において、カメラとラインレーザーを用いて可動ステージ上に載置されたワークのワイヤーボンド上の検査測定点となる特定位置の三次元位置決めを行うための装置であって、前記ワークを載置するための三次元的移動制御可能な可動ステージと、前記カメラの向きに対して角度を持たせて配置されて、前記可動ステージ上に載置されたワークのワイヤーボンドに対し、X軸方向に照射するラインレーザーとY軸方向に照射するラインレーザーをそれぞれ少なくとも1つ含むラインレーザー群と、前記ラインレーザー群によってX軸方向及びY軸方向にレーザー照射された状態の前記ワイヤーボンドを撮影する前記カメラと、前記カメラで撮影された画像を取り込む手段、前記X軸方向のレーザーラインの画像から前記ワイヤーボンドの中心X座標を演算する演算手段、前記Y軸方向のレーザーラインの画像から前記ワイヤーボンドの中心Y座標を演算する演算手段、前記ワイヤーボンド上における前記レーザーラインの最端位置の基準位置からのずれ量と前記各ラインレーザーの傾斜角度とからZ軸方向の補正量を演算してZ座標に変換する手段、及び、検出された前記X、Y、Z座標に対応させて前記可動ステージを三次元移動制御するための信号を送出する送信手段とを含む演算装置、とから成るワイヤーボンドの三次元位置決め装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のとおりであって、ラインレーザーを、カメラの向きに対して角度を持たせて配置することにより、照射されたレーザーラインがワイヤーボンド照射部分において他の照射部分と一直線状にならないようにし、カメラで取り込んだレーザーラインが照射された状態のワイヤーボンドの画像データにおいて、ワイヤーボンド上におけるレーザーラインの位置と基準位置とのずれとラインレーザーの傾斜角度とから演算して求めた数値を基に、可動ステージを移動制御するものであるため、例えば、ワイヤーボンドの接合状態の良否検査に先立ち、当該ワイヤーボンドの検査測定点の三次元的位置決めを極めて迅速且つ精確に行うことが可能であって、当該ワイヤーボンドの検査を迅速且つ精確に行うことを可能ならしめる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め装置の簡略正面図である。
【図2】本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め装置の簡略側面図である。
【図3】本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め装置の簡略平面図である。
【図4】本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め方法の原理を説明するための図である。
【図5】本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め方法の原理(Z座標の求め方)を説明するための図である。
【図6】本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め方法の原理(プリアライメント)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め方法は、ワイヤーボンドの検査装置に関連して用いられるものであって、ワイヤーボンドの検査に先立ち、三次元的移動制御可能な可動ステージ上に載置されたワークのワイヤーボンド上の測定点となる特定位置の三次元位置決めをカメラとラインレーザーを含むシステムを用いて実施するものである。
【0018】
より詳細には、この方法は、ワークを三次元的移動制御可能な可動ステージ上に載置する工程と、ワークのワイヤーボンド部分を、カメラの向きに対して角度を持たせて配置したラインレーザーでレーザー照射しつつカメラで撮影する工程と、撮影した画像を画像処理してX、Y、Z座標を演算して検出する画像処理工程と、可動ステージを検出されたX、Y、Z座標に対応して三次元移動制御する工程とから成る。そして、画像処理工程は、ワイヤーボンドの二次元的形状中心を演算してプリアライメントX、Y座標を求める工程と、ワイヤーボンド上のレーザーライン端部の基準位置からのずれ量を演算してZ座標に変換する工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
この場合、ラインレーザーを、カメラの向きに対して角度を持たせて配置することにより、ワイヤーボンドに向けて照射されたレーザーライン(以下の説明において、「ラインレーザー」は機器を表わし、「レーザーライン」は、ラインレーザーによって照射されて生成されるレーザーのラインを表わす。)が、ワイヤーボンド上の照射部分と他の照射部分とで一直線状にならないようにする。この点は、後述するように、特にZ座標を求める上で重要な要素となる。
【0020】
上記プリアライメントX、Y座標は、ワークのワイヤーの中心線とボンド部の最大幅を持つ位置との交点とされ、また、ワイヤーボンド上のレーザーライン端部の基準位置からのずれ量を演算してのZ座標への変換は、ワイヤーボンド上におけるレーザーラインの最端位置の基準位置からのずれ量と、ラインレーザーの傾斜角度とからZ軸方向への補正量を演算することにより行われる。
【0021】
本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め装置は上記三次元位置決め方法を実施するためのものであって、ワークを載置するための三次元的移動制御可能な可動ステージと、カメラの向きに対して角度を持たせて配置されて、可動ステージ上に載置されたワークのワイヤーボンドに対し、X軸方向に照射するラインレーザーとY軸方向に照射するラインレーザーをそれぞれ少なくとも1つ含むラインレーザー群と、ラインレーザー群によってX軸方向及びY軸方向にレーザー照射された状態のワイヤーボンドを撮影するカメラと、カメラで撮影された画像を画像処理して、可動ステージを三次元移動制御するためのX、Y、Z座標を求める演算装置とから成る。
【0022】
そして、その演算装置は、カメラで撮影された画像を取り込む手段、X軸方向のレーザーラインの画像からワイヤーボンドの中心X座標を演算する演算手段、Y軸方向のレーザーラインの画像からワイヤーボンドの中心Y座標を演算する演算手段、ワイヤーボンド上におけるレーザーラインの最端位置の基準位置からのずれ量と各ラインレーザーの傾斜角度とからZ軸方向の補正量を演算してZ座標に変換する手段、及び、検出されたX、Y、Z座標に対応させて前記可動ステージを三次元移動制御するための信号を送出する送信手段とを含んで構成される。
【0023】
以下、本装置につき、添付図面を参照しつつより詳細に説明する。本装置は、図1乃至3に示されるように、基本的には、ワークを載置するための、X、Y、Z軸方向に移動制御可能な可動ステージ2と、可動ステージ2上に載置されたワークのワイヤーボンド1に対し、X軸方向にレーザー照射するラインレーザー3及びY軸方向にレーザー照射するラインレーザー4とから成るラインレーザー群と、X軸方向及びY軸方向にレーザー照射されてレーザーラインが表出された状態のワイヤーボンド1を撮影するCCDカメラ5と、図示せぬ演算装置並びに可動ステージ2の移動手段とで構成される。
【0024】
より詳細には、カメラ5は、架台11の背板に設置されたブラケット13によって支持され、そのレンズが真下に向くように配備される。カメラ5の光路カバー14の下端は、ブラケット13の下部に設けられたサブベース15に形成された円孔16内に臨むようにされる。カメラ5は、ワイヤーボンド1の位置決め操作に先立ち、定位置にセットされる。
【0025】
ラインレーザー群は、X軸対応のラインレーザーとY軸対応のラインレーザーをそれぞれ少なくとも1本含んで構成されるが、ワイヤーボンド1の形状によっては、その測定点となる特定位置がレーザーラインが表出されない隠れた位置になってしまうことがある。従って、そのような場合に、他の方向から照射されて表出されたレーザーラインを使用できるようにするため、図示した例のように、X軸対応のラインレーザー3を2本とY軸対応のラインレーザー4を2本用意し、それぞれ90度置きに配置するようにすることが好ましい。各ラインレーザー2、4は、その光軸がカメラ5の向き(通例、垂直線方向)から所定角度θ傾くように設置される。
【0026】
可動ステージ2の移動手段としては、通例、モーター駆動される市販の自動直動ステージを、X、Y、Z軸方向へ組み合わせたものが用いられる。
【0027】
次に、上記構成のワイヤーボンドの三次元位置決め装置を用いて実施される、本発明に係るワイヤーボンドの三次元位置決め方法について、工程順に説明する。
【0028】
ラインレーザーON工程
この工程は、X軸方向及びY軸方向の2方向のラインレーザー3、4をONして、可動ステージ2上のワイヤーボンド1に、X軸方向及びY軸方向の2方向からレーザー照射してワイヤーボンド1上にレーザーラインLを表出する工程である。
【0029】
画像取り込み工程及びラインレーザーOFF工程
この工程は、X軸方向及びY軸方向の2方向からレーザ照射した状態のワイヤーボンド1をカメラ5で撮影し、その画像を演算装置に取り込むと共に、X軸方向及びY軸方向のラインレーザー3、4をOFFする工程である。
【0030】
図5(A)、(B)、(C)は、カメラ2で撮影されて取り込まれた画像のモニター表示例を示すもので、モニターにはX座標軸xとY座標軸yとのクロスラインが表示されていて、そのX座標軸xとY座標軸yの交点、即ち、原点が基準位置(X、Y、Z)Sに設定される。最終的には、ワイヤーボンド1の検査測定点が、この基準位置Sに合わせられることになる。なお、実際にはレーザーラインLはX軸方向とY軸方向とに表れるが、図5においては、説明の便宜上Y軸方向のレーザーラインLのみを表示してある。
【0031】
ここで、ラインレーザー3、4を垂直状態にしてワイヤーボンド1にレーザーラインを照射した場合は、レーザーラインLはワイヤーボンド1を横切って一直線状に表れることになるが、本装置におけるラインレーザー3、4は、垂直線に対して角度θ傾斜するように配置されている。従って、照射されたレーザーラインLは、ワイヤーボンド1の光源から近い部分と光源から離れた部分とで表れる位置(及びライン幅)が異なり、一直線状にはならない。
【0032】
図5はあくまで原理を示すもので、そこでは、説明の便宜上ワークを断面円形の線材として示してある。そのためレーザーラインLは、最も光源に近いワイヤーボンド1の上面頂部から周側面にかけて、ワイヤーボンド1の上面頂部を中心にした放物線状の曲線を描き、可動ステージ2の上面における照射部分は直線となる。しかし、ワイヤーボンド1の上面は必ずしも一様な曲面ではないため、実際にはレーザーラインLは、図5に示すようにきれいには表われない(図6(B)参照)。
【0033】
演算工程1(プリアライメント)
この工程は、アライメントの第1段階として、ワイヤーボンド1の輪郭中心となるX、Y座標(形状中心座標)を求める演算処理を行う工程である。この工程においては、X軸方向及びY軸方向の2方向からレーザ照射した状態のワイヤーボンド1の画像を画像処理して、ワイヤの中心線とボンド部の最大幅を持つ位置との交点が求められ、その交点の座標がプリアライメントX、Y座標とされる(図6(A)参照)。このプリアライメントX、Y座標は、ワイヤーボンド1上のレーザーラインLの屈曲部から屈曲部までの距離、換言すれば、ワイヤーボンド1の幅(長さ)を求めることにより容易に求めることができる(図5(A)参照)。
【0034】
プリアライメントX、Y座標の微調整工程
この工程においては、上記のようにして求めたプリアライメントX、Y座標の基準位置Sの座標からのずれ量を検出し、そのずれ量に対応する可動ステージ2のX、Y軸方向への移動量を演算し、その移動量データ信号を可動ステージ2の駆動手段に送出する(図6(B)参照)。かくして可動ステージ2は、そのデータに基づき、適正位置に向けて二次元的に微調整される。
【0035】
演算工程2(Z座標の決定)
この工程は、要するに、ワイヤーボンド1の三次元的形状中心を求める処理を行う工程である。この工程では、プリアライメントX、Y座標の微調整処理がなされ、X、Y座標が基準位置Sにあるワイヤーボンド1に照射されているレーザーラインLの最端位置(この点はボンド部の頂点であり、そこが検査測定点(特定位置)となる。)の、基準位置Sからのずれ量と、ラインレーザー3、4の傾斜角度θとから、Z軸方向のずれ量を演算してZ座標に変換する処理がなされる。
【0036】
この処理について図5を参照しつつ説明すると、ワイヤーボンド1が右斜め上方(y軸方向)からレーザー照射される場合において、ワイヤーボンド1の検査測定点が基準位置Sよりもカメラに近い場合は、ラインレーザーLの頂点は基準位置Sの右側に表れ(図5(A))、逆にワイヤーボンド1の検査測定点が基準位置Sよりもカメラから離れている場合は、ラインレーザーLの頂点は基準位置Sの左側に表れる(図5(C))。そして、ワイヤーボンド1の検査測定点が基準位置Sにあるときには、ワイヤーボンド1上におけるラインレーザーLの頂点が、基準位置Sに重なる(図5(B))。
【0037】
そして、Z座標は、ワイヤーボンド1上におけるレーザーラインLの頂点位置と基準位置Sとのずれと、ラインレーザー3、4の傾斜角度θとから演算したZ軸方向のずれ量をZ座標に変換することにより得られる。
【0038】
即ち、図4から明らかなように、ワイヤーボンド1の最端位置が基準位置SよりもΔZカメラに近い、換言すれば、Z軸方向にずれているときは、レーザーラインLは基準位置Sの右側に表れるが(図5(A)参照)、この状態からレーザーラインLの頂点が基準位置Sに合致するようにするためには、ワイヤーボンド1をΔZtanθ(Z軸方向のずれ量)だけ移動させればよいことになる。また、ワイヤーボンド1が基準位置よりもΔZカメラから遠い位置にあるときには、レーザーラインLは基準位置Sの左側に表れ(図5(C)参照)、この状態からレーザーラインLの頂点が基準位置Sに合致するようにするためには、ワイヤーボンド1をΔZtanθ(Z軸方向のずれ量)だけ移動させればよいことになる。かくして演算して得られたZ軸方向のずれ量(補正量)が、Z座標に変換される。
【0039】
可動ステージ移動工程
この工程は、上記のようにして検出されたX、Y、Z座標へ可動ステージ2を移動させるために、移動制御信号を可動ステージ2の移動手段である自動直動ステージに送信し、可動ステージ2をX、Y、Z軸方向に3軸駆動して適正位置に位置決めする工程である。なお、上記プリアライメントX、Y座標の微調整のための二次元移動駆動もこの工程において同時になされる。
【0040】
ワークは、このようにしてそのワイヤーボンド1部が検査適正位置に位置決めされた後、ワイヤーボンド検査装置の検査部へ搬送されて、検査に供される。
【0041】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 ワイヤーボンド(ワイヤー)
2 可動ステージ
3 ラインレーザー(X軸方向)
4 ラインレーザー(Y軸方向)
5 カメラ
11 架台
13 ブラケット
14 光路カバー
15 サブベース
16 円孔






















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーボンドの検査に先立ち、前記ワイヤーボンド上の検査測定点が適正位置にくるようにワークの三次元位置決めをするための方法であって、
前記ワークを三次元的移動制御可能な可動ステージ上に載置する工程と、前記ワークのワイヤーボンド部分を、カメラの向きに対して角度を持たせて配置したラインレーザーでレーザー照射しつつ前記カメラで撮影する工程と、前記カメラで撮影した画像を画像処理してX、Y、Z座標を演算して検出する画像処理工程と、前記可動ステージを前記検出されたX、Y、Z座標に対応して三次元移動制御する工程とから成り、
前記画像処理工程は、前記ワイヤーボンドの二次元的形状中心を演算してプリアライメントX、Y座標を求める工程と、前記ワイヤーボンド上のレーザーライン端部の基準位置からのずれ量を演算してZ座標に変換する工程とを含むことを特徴とするワイヤーボンドの三次元位置決め方法。
【請求項2】
前記プリアライメントX、Y座標は、前記ワークのワイヤーの中心線とボンド部の最大幅を持つ位置との交点とされる、請求項1に記載のワイヤーボンドの三次元位置決め方法。
【請求項3】
前記ワイヤーボンド上のレーザーライン端部の基準位置からのずれ量を演算してのZ座標への変換は、前記ワイヤーボンド上における前記レーザーラインの最端位置の基準位置からのずれ量と、前記ラインレーザーの傾斜角度とからZ軸方向への補正量を演算することにより行われる、請求項1又は2に記載のワイヤーボンドの三次元位置決め方法。
【請求項4】
前記ラインレーザーは、X軸方向に照射するラインレーザーとY軸方向に照射するラインレーザーをそれぞれ少なくとも1つ含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のワイヤーボンドの三次元位置決め方法。
【請求項5】
ワイヤーボンドの検査装置において、カメラと、X軸方向に照射するラインレーザーとY軸方向に照射するラインレーザーをそれぞれ少なくとも1つ含んでいて、前記カメラの向きに対して角度を持たせて配置されるラインレーザー群とを含むシステムを用いて、三次元的移動制御可能な可動ステージ上に載置されたワークのワイヤーボンド上の検査測定点となる特定位置の三次元位置決めを行うための方法であって、
前記各ラインレーザーをONして、前記可動ステージ上の前記ワイヤーボンドにX軸方向及びY軸方向の2方向からラインレーザーを照射する工程と、前記ラインレーザーが照射された状態の前記ワイヤーボンドを前記カメラで撮影する工程と、前記カメラで撮影した画像を取り込んで画像処理する工程と、前記画像処理した結果に基づいて前記可動ステージを三次元移動させる工程とから成り、
前記画像処理工程は、取り込んだX軸方向ラインの画像から前記ワイヤーボンドの中心X座標を演算すると共に、Y軸方向ラインの画像から前記ワイヤーボンドの中心Y座標を演算してプリアライメントX、Y座標を求める工程と、前記ワイヤーボンド上における前記レーザーラインの最端位置の基準位置からのずれ量と前記ラインレーザーの傾斜角度とからZ軸方向の補正量を演算してZ座標に変換する工程を含むことを特徴とするワイヤーボンドの三次元位置決め方法。
【請求項6】
ワイヤーボンドの検査装置において、カメラとラインレーザーを用いて可動ステージ上に載置されたワークのワイヤーボンド上の検査測定点となる特定位置の三次元位置決めを行うための装置であって、
前記ワークを載置するための三次元的移動制御可能な可動ステージと、
前記カメラの向きに対して角度を持たせて配置されて、前記可動ステージ上に載置されたワークのワイヤーボンドに対し、X軸方向に照射するラインレーザーとY軸方向に照射するラインレーザーをそれぞれ少なくとも1つ含むラインレーザー群と、
前記ラインレーザー群によってX軸方向及びY軸方向にレーザー照射された状態の前記ワイヤーボンドを撮影する前記カメラと、
前記カメラで撮影された画像を取り込む手段、前記X軸方向のレーザーラインの画像から前記ワイヤーボンドの中心X座標を演算する演算手段、前記Y軸方向のレーザーラインの画像から前記ワイヤーボンドの中心Y座標を演算する演算手段、前記ワイヤーボンド上における前記レーザーラインの最端位置の基準位置からのずれ量と前記各ラインレーザーの傾斜角度とからZ軸方向の補正量を演算してZ座標に変換する手段、及び、検出された前記X、Y、Z座標に対応させて前記可動ステージを三次元移動制御するための信号を送出する送信手段とを含む演算装置、
とから成るワイヤーボンドの三次元位置決め装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−173202(P2012−173202A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37133(P2011−37133)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(506272297)常陽機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】