ワーク処理装置
【課題】異なる状態のワークそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことができるようにする。
【解決手段】滅菌処理装置S(ワーク処理装置)は、供給される処理ガスをプラズマ化してプルームPとして照射するプラズマ発生ユニットPUを含み、処理対象であるチャンバー510内のワークにプルームPの照射による滅菌処理を施与する滅菌処理ユニットSUと、滅菌処理ユニットSUの動作を制御する制御ユニットCUとを備えている。そして、制御ユニットCUは、前記ワークの状態に基づいて、第1運転モードまたは第2運転モードを選択し、プラズマ発生ユニットPUからそのワークに照射するプルームPのガスの温度及び照射時間を制御する。
【解決手段】滅菌処理装置S(ワーク処理装置)は、供給される処理ガスをプラズマ化してプルームPとして照射するプラズマ発生ユニットPUを含み、処理対象であるチャンバー510内のワークにプルームPの照射による滅菌処理を施与する滅菌処理ユニットSUと、滅菌処理ユニットSUの動作を制御する制御ユニットCUとを備えている。そして、制御ユニットCUは、前記ワークの状態に基づいて、第1運転モードまたは第2運転モードを選択し、プラズマ発生ユニットPUからそのワークに照射するプルームPのガスの温度及び照射時間を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器や基板等の被処理ワークに対してプラズマを照射しワーク表面の滅菌や改質等を図ることが可能なワーク処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体基板等の被処理ワークに対してプラズマを照射し、その表面の有機汚染物の除去、表面改質、エッチング、薄膜形成又は薄膜除去等を行うワーク処理装置が知られている。例えば特許文献1には、内側電極と外側電極とを有するプラズマ発生ノズルを用い、常圧下において両電極間に電界を印加することでグロー放電プラズマを発生させ、プラズマ化されたガスを固定的に配置された被処理ワークに放射するワーク処理装置が開示されている。また、プラズマを発生させるエネルギー源として、例えば2.45GHzのマイクロ波を用いた常圧プラズマ発生装置を利用したワーク処理装置も知られている。
【特許文献1】特開2003−197397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のワーク処理装置では、被処理ワークに対して単一の条件でのみプラズマ照射が行われるので、被処理ワークが水濡れ状態や加熱された状態等の種々の状態である場合に、その状態に応じて適切な条件でプラズマ照射を行うことが困難であるという問題点がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、異なる状態のワークそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことが可能なワーク処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係るワーク処理装置は、供給される所定のガスをプラズマ化して放出するプラズマ発生装置を含み、処理対象であるワークにプラズマ化されたガスの照射による所定の処理を施与する処理部と、処理部の動作を制御する制御手段とを備えている。そして、制御手段は、ワークの状態に基づいて、プラズマ発生装置からそのワークに照射するプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御する。
【0006】
この構成によれば、ワークの状態に基づいてそのワークに照射するプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御することができるので、ワークの状態に応じてプラズマ照射の条件を変更することができる。このため、異なる状態のワークそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことができる。
【0007】
上記構成において、ワークの状態を検出する検出手段をさらに備え、制御手段は、検出手段により検出されたワークの状態に基づいてプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御することが望ましい(請求項2)。この構成によれば、検出手段によりワークの状態を検出して自動的にプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間をそのワークの状態に応じた条件に設定することができる。これにより、ワークの状態を判別する作業を行う必要がないので、ワークの状態を判別するのに要する作業負担を軽減しながら、ワークの状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことができる。
【0008】
なお、上記構成において、ワークの状態を入力するための入力手段をさらに備え、制御手段は、入力手段から入力されたワークの状態に基づいてプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御するようにしても良い(請求項3)。
【0009】
上記いずれかの構成において、制御手段は、ワークが濡れている条件において、プラズマ発生装置によるプラズマ化されたガスの照射によってそのワークの乾燥を実行させることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、プラズマ化されたガスの照射によって濡れているワークを乾燥させることができるので、ワークが自然に乾燥するのを待つのに比べて短時間でワークを乾燥させることができる。これにより、ワークが濡れている場合のワークの処理時間を短縮することができる。また、濡れているワークを乾燥させることができるので、ワーク表面に対するプラズマの照射がワークの濡れにより遮られるのを回避することができる。これにより、ワークが濡れている場合でも、プラズマ照射による処理をワークに有効に施与することができる。また、この構成によれば、プラズマ化されたガスの照射により濡れているワークの乾燥とワークへの所定の処理の施与とを同時に行うことができるので、ワークにプラズマ照射による所定の処理を施与するのとは別にワークの乾燥を行う場合と異なり、ワークの処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0010】
この場合、制御手段は、ワークが濡れている条件において、プラズマ発生装置によりワークに照射されるプラズマ化されたガスの温度を上昇させる及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間を長くすることが望ましい(請求項5)。この構成によれば、温度の上昇したプラズマ化されたガスの照射及び/または長時間のプラズマ化されたガスの照射によって、濡れているワークを十分乾燥させることができる。
【0011】
さらに、この場合、処理部は、所定のガスを加熱する加熱機構を含み、制御手段は、加熱機構を動作させて所定のガスがプラズマ発生装置に供給される前に予め加熱させることが望ましい(請求項6)。この構成によれば、加熱機構により、濡れているワークに照射するプラズマ化されたガスの温度を容易に上昇させることができる。
【0012】
上記請求項4〜6のいずれかに係る構成において、制御手段は、ワークが乾燥している条件での運転モード及びワークが濡れている条件での運転モードのいずれかを選択して処理部を動作させることが可能であり、ワークが乾燥している条件での運転モードでは、ワークが濡れている条件での運転モードに比べて、プラズマ発生装置により照射されるプラズマ化されたガスの温度が低く設定されている及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されていることが望ましい(請求項7)。この構成によれば、ワークが乾燥しているか濡れているかの状態に応じて、適切な運転モードを選択して処理部を動作させることができる。そして、ワークが乾燥している条件での運転モードでは、ワークが濡れている条件での運転モードに比べて、プラズマ発生装置により照射されるプラズマ化されたガスの温度が低く設定されている及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されているので、ワークが元々乾燥していて乾燥処理が不要な条件では、プラズマ化されたガスの温度を上昇させたりプラズマ化されたガスの照射時間を長くすることに伴って発生する消費電力の増大を抑制することができる。
【0013】
上記請求項1〜3のいずれかに係る構成において、処理部は、濡れているワークに熱風を送風して乾燥させるドライヤー装置を含み、制御手段は、ワークが濡れている条件において、ドライヤー装置を動作させてそのワークを乾燥させることが望ましい(請求項8)。この構成によれば、ドライヤー装置からの熱風によって濡れているワークを乾燥させることができるので、ワークが自然に乾燥するのを待つのに比べて短時間でワークを乾燥させることができる。これにより、ワークが濡れている場合のワークの処理時間を短縮することができる。また、濡れているワークを乾燥させることができるので、ワーク表面に対するプラズマの照射がワークの濡れにより遮られるのを回避することができる。これにより、ワークが濡れている場合でも、プラズマ照射による処理をワークに有効に施与することができる。
【0014】
この場合、制御手段は、ドライヤー装置を動作させて濡れているワークを乾燥させた後、プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせることが望ましい(請求項9)。この構成によれば、ドライヤー装置からの熱風により加熱されたワークに対してプラズマ発生装置からのプラズマ化されたガスの照射を行うことによって、ワークを冷却させると同時にそのワークにプラズマ照射による所定の処理を施与することができる。これにより、加熱されたワークを冷却する工程を別途設ける必要がないので、ワークの冷却のためにワークの処理時間が長くなるのを抑制することができる。また、ワーク処理装置の一例としての滅菌処理装置にこの構成を適用する場合には、ドライヤー装置からの熱風に含まれる雑菌がワークに付着した後にプラズマ発生装置からのプラズマ照射によりワークの滅菌を行うことができるので、濡れているワークをドライヤー装置により乾燥させる場合でも、ワークを確実に滅菌することができる。
【0015】
上記請求項1〜3のいずれかに係る構成において、制御手段は、ワークが加熱されている条件において、プラズマ発生装置によるプラズマ化されたガスの照射によってそのワークの冷却を実行させることが望ましい(請求項10)。この構成によれば、プラズマ化されたガスを照射してワークを冷却させるので、ワークが自然に冷却されるのを待つのに比べて短時間でワークを冷却させることができる。これにより、ワークが加熱されている場合のワークの処理時間を短縮することができる。また、この構成によれば、プラズマ化されたガスの照射により加熱されたワークの冷却とワークへの所定の処理の施与とを同時に行うことができるので、ワークにプラズマ照射による所定の処理を施与するのとは別にワークの冷却を行う場合と異なり、ワークの処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0016】
この場合、制御手段は、ワークが加熱されている条件において、プラズマ照射装置によりワークに照射されるプラズマ化されたガスの温度を低下させる及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間を長くすることが望ましい(請求項11)。この構成によれば、温度の低下したプラズマ化されたガスの照射及び/または長時間のプラズマ化されたガスの照射によって、加熱されているワークを十分冷却することができる。
【0017】
上記請求項10または11に係る構成において、制御手段は、ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モード及びワークが加熱されている条件での運転モードのいずれかを選択して処理部を動作させることが可能であり、ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モードでは、ワークが加熱されている条件での運転モードに比べて、プラズマ発生装置により照射されるプラズマ化されたガスの温度が高く設定されている及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されていることが望ましい(請求項12)。この構成によれば、ワークが外界温度近傍の温度であるか加熱されているかの状態に応じて、適切な運転モードを選択して処理部を動作させることができる。そして、ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モードでは、ワークが加熱されている条件での運転モードに比べて、プラズマ発生装置により照射されるプラズマ化されたガスの温度が高く設定されている及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されているので、ワークが元々外界温度近傍の温度であって、冷却が不要な条件では、プラズマ化されたガスの温度を低下させたりプラズマ化されたガスの照射時間を長くすることに伴って発生する消費電力の増大を抑制することができる。
【0018】
上記請求項1〜3のいずれかに係る構成において、処理部は、加熱されたワークに送風してそのワークを冷却する冷却装置を含み、制御手段は、ワークが加熱されている条件において、冷却装置を動作させてそのワークを冷却することが望ましい(請求項13)。この構成によれば、冷却装置から送風して加熱されたワークを冷却することができるので、ワークが自然に冷却されるのを待つのに比べて短時間でワークを冷却させることができる。これにより、ワークが加熱されている場合のワークの処理時間を短縮することができる。
【0019】
この場合、制御手段は、冷却装置を動作させて加熱されたワークを冷却した後、プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせることが望ましい(請求項14)。この構成をワーク処理装置の一例としての滅菌処理装置に適用する場合には、冷却装置から送風される空気中の雑菌がワークに付着した後にプラズマ発生装置からのプラズマ照射によりワークの滅菌を行うことができるので、加熱されたワークを冷却装置からの送風により冷却する場合でも、ワークを確実に滅菌することができる。
【0020】
上記請求項10〜14のいずれかに係る構成において、ワークを高圧蒸気に曝して滅菌処理を行う高圧蒸気滅菌装置をさらに備えていることが望ましい(請求項15)。この構成によれば、プラズマ発生装置からのプラズマ照射によるワークの滅菌処理に加えて、高圧蒸気滅菌装置によりワークの高圧蒸気滅菌を行うことができるので、ワークの滅菌処理をより確実に行うことができる。
【0021】
この場合、制御手段は、高圧蒸気滅菌装置を動作させて高圧蒸気によるワークの滅菌処理を行わせた後、プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせることが望ましい(請求項16)。この構成によれば、高圧蒸気により加熱されたワークに対してプラズマ発生装置からプラズマ化されたガスを照射することができるので、高圧蒸気で加熱されたワークを容易に冷却することができる。また、この構成によれば、高圧蒸気による滅菌処理後、プラズマ滅菌処理を行いながらワークを冷却することができる。これにより、高圧蒸気滅菌処理後、ワークの滅菌状態を確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によるワーク処理装置では、異なる状態のワークそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明では、本発明に係るワーク処理装置の一例として、滅菌処理装置を例にとって説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る滅菌処理装置Sの全体構成を示す斜視図である。この滅菌処理装置Sは、筐体500と、扉部501と、操作部502と、制御ユニットCU(制御手段)と、滅菌処理ユニットSU(処理部)とを備えている。
【0025】
筐体500は、箱型構造を有しており、その前面側に円形の開口部500aが設けられている。この開口部500aを介して処理対象であるワークWを後述する滅菌処理ユニットSUのチャンバー510内に出し入れ可能となっている。なお、処理対象であるワークWとしては、メス等の医療機器が例示される。
【0026】
扉部501は、筐体500の前面側にヒンジ部501aを介して回動可能に取り付けられている。この扉部501によって筐体500の開口部500aが開閉可能となっている。操作部502は、筐体500の前面側の開口部500aに隣接した位置に設置されており、滅菌処理装置Sの各部の動作に関する設定や処理条件に関する設定、電源のON−OFF等の操作が行えるようになっている。この操作部502において所定の操作が行われると、それに応じた操作信号が操作部502から制御ユニットCUに入力されるようになっている。
【0027】
制御ユニットCU(制御手段)は、筐体500内に収容されており、滅菌処理装置Sにおける各種制御、特に滅菌処理ユニットSUの動作制御を行う。この動作制御は、制御ユニットCUが上記操作部502からの操作信号や後述するセンサー部530からの検出信号を受け取り、それに基づいて滅菌処理ユニットSUの各部へ制御信号を送信することによって行われる。なお、制御ユニットCUは、CPU(中央演算処理装置)を備えており、このCPUがそのような制御処理を担当している。
【0028】
滅菌処理ユニットSUも制御ユニットCUと同様、筐体500内に収容されている。この滅菌処理ユニットSUは、ワークWに対してプラズマ照射による滅菌処理を施与するためのものである。この第1実施形態では、ワークWが乾燥しているかまたは水等で濡れているかに応じて、上記制御ユニットCUが滅菌処理ユニットSUをそれぞれ異なる運転モードで動作させるようになっている。すなわち、制御ユニットCUは、ワークWが乾燥している条件ではプラズマ照射によるワークWの滅菌処理を行う第1運転モードで滅菌処理ユニットSUを動作させる一方、ワークWが濡れている条件ではワークWの乾燥とプラズマ照射による滅菌処理とを行う第2運転モードで滅菌処理ユニットSUを動作させる。
【0029】
図2は、滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。この滅菌処理ユニットSUは、チャンバー510と、加熱装置520と、センサー部530(検出手段)と、一対のプラズマ発生ユニットPU,PU(プラズマ発生装置)とを含んでいる。
【0030】
チャンバー510は、上記筐体500の開口部500aとほぼ同径の有底の円筒形状に構成されている。このチャンバー510は、ワークWに対して滅菌処理等を施与するための処理室としての機能を有している。チャンバー510の軸方向における一方の端部は側壁部510aによって遮蔽されており、他方の端部に位置する側面はその全面が開口されている。これによって、この他方の端部に筐体500の開口部500aと略等しい径を有する円形の開口部510bが形成されている。そして、開口部510bは、筐体500の開口部500aに嵌め合わされている。これにより、筐体500の開口部500a及びチャンバー510の開口部510bを介してチャンバー510内にワークWを導入することが可能となっている。
【0031】
加熱装置520は、プラズマ発生ユニットPUの後述するプラズマ発生ノズル31に供給される処理ガスを加熱するためのものである。プラズマ発生ノズル31には、処理ガスを供給するためのガス供給管521が加熱装置520を介して接続されており、処理ガスは加熱装置520を経由してプラズマ発生ノズル31に供給されるようになっている。そして、加熱装置520はヒーター等の加熱手段を内蔵しており、処理ガスをプラズマ発生ノズル31に供給する前に予め加熱することが可能とされている。なお、この加熱装置520は、制御ユニットCUからの制御信号により駆動状態と非駆動状態とに切替可能に構成されている。このため、加熱装置520では、処理ガスを加熱してプラズマ発生ノズル31に供給するかまたは処理ガスを加熱しないでそのままプラズマ発生ノズル31に供給するかを必要に応じて切り替えることができる。また、加熱装置520では、制御ユニットCUからの制御信号により処理ガスの加熱温度の調節も可能となっている。
【0032】
センサー部530(検出手段)は、チャンバー510内に取り付けられており、チャンバー510内に設置された処理対象であるワークWが乾燥しているか水等の液体により濡れているかを検出する機能を有している。このセンサー部530は、制御ユニットCUに電気的に接続されている。そして、センサー部530は、ワークWが乾燥しているか濡れているかを検出するとともに、そのワークWの状態に応じた所定の検出信号を制御ユニットCUへ送信するように構成されている。
【0033】
一対のプラズマ発生ユニットPU,PU(プラズマ発生装置)は、チャンバー510の軸方向に直交する方向においてチャンバー510を挟んで相対する位置に設けられている。また、一対のプラズマ発生ユニットPU,PUは、両方とも同じ構造に構成されており、チャンバー510の軸を中心として互いに対称形となる向きでそれぞれ配置されている。このプラズマ発生ユニットPUは、処理ガスをプラズマ化して放出し、そのプラズマ化されたガスをチャンバー510内に設置されたワークWに照射するように構成されている。
【0034】
図3は、プラズマ発生ユニットPUの全体構成を示す斜視図、図4は、図3とは視線方向を異ならせたプラズマ発生ユニットPUの斜視図、図5はプラズマ発生ユニットPUの一部透視側面図である。なお、図3〜図5において、X−X方向を前後方向、Y−Y方向を左右方向、Z−Z方向を上下方向というものとし、−X方向を前方向、+X方向を後方向、−Yを左方向、+Y方向を右方向、−Z方向を下方向、+Z方向を上方向として説明する。
【0035】
プラズマ発生ユニットPUは、マイクロ波を利用し常温常圧でのプラズマ発生が可能なユニットであって、大略的に、マイクロ波を伝搬させる導波管10、この導波管10の一端側(左側)に配置され所定波長のマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置20、導波管10に設けられたプラズマ発生部30、導波管10の他端側(右側)に配置されマイクロ波を反射させるスライディングショート40、導波管10に放出されたマイクロ波のうち反射マイクロ波がマイクロ波発生装置20に戻らないよう分離するサーキュレータ50、サーキュレータ50で分離された反射マイクロ波を吸収するダミーロード60及びインピーダンス整合を行うスタブチューナ70を備えて構成されている。
【0036】
導波管10は、例えば非磁性金属(アルミニウム等)からなり、断面矩形の長尺管状を呈し、マイクロ波発生装置20により発生されたマイクロ波をプラズマ発生部30へ向けて、その長手方向に伝搬させるものである。導波管10は、分割された複数の導波管ピースが互いのフランジ部同士で連結された連結体で構成されており、一端側から順に、マイクロ波発生装置20が搭載される第1導波管ピース11、スタブチューナ70が組み付けられる第2導波管ピース12及びプラズマ発生部30が設けられている第3導波管ピース13が連結されてなる。なお、第1導波管ピース11と第2導波管ピース12との間にはサーキュレータ50が介在され、第3導波管ピース13の他端側にはスライディングショート40が連結されている。
【0037】
また、第1導波管ピース11、第2導波管ピース12及び第3導波管ピース13は、それぞれ金属平板からなる上面板、下面板及び2枚の側面板を用いて角筒状に組み立てられ、その両端にフランジ板が取り付けられて構成されている。なお、このような平板の組み立てによらず、押し出し成形や板状部材の折り曲げ加工等により形成された矩形導波管ピース若しくは非分割型の導波管を用いるようにしても良い。また、断面矩形の導波管に限らず、例えば断面楕円の導波管を用いることも可能である。さらに、非磁性金属に限らず、導波作用を有する各種の部材で導波管を構成することができる。
【0038】
マイクロ波発生装置20は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等のマイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源にて発生されたマイクロ波の強度を所定の出力強度に調整するアンプとを具備する装置本体部21と、装置本体部21で発生されたマイクロ波を導波管10の内部へ放出するマイクロ波送信アンテナ22とを備えて構成されている。本実施形態に係るプラズマ発生ユニットPUでは、例えば1W〜3kWのマイクロ波エネルギーを出力できる連続可変型のマイクロ波発生装置20が好適に用いられる。
【0039】
図5に示すようにマイクロ波発生装置20は、装置本体部21からマイクロ波送信アンテナ22が突設された形態のものであり、第1導波管ピース11に載置される態様で固定されている。詳しくは、装置本体部21が第1導波管ピース11の上面板11Uに載置され、マイクロ波送信アンテナ22が上面板11Uに穿設された貫通孔111を通して第1導波管ピース11内部の導波空間110に突出する態様で固定されている。このように構成されることで、マイクロ波送信アンテナ22から放出された例えば2.45GHzのマイクロ波は、導波管10により、その一端側(左側)から他端側(右側)に向けて伝搬される。
【0040】
プラズマ発生部30は、第3導波管ピース13の下面板13B(矩形導波管の一つの側面;処理対象ワークとの対向面)に、左右方向へ一列に整列して突設された8個のプラズマ発生ノズル31を具備して構成されている。各プラズマ発生ノズル31は、図2に示すように、その先端側の所定領域がチャンバー510の円筒状外周壁に設けられた図略の貫通孔を介してチャンバー510内に突出するように設けられている。なお、8個のプラズマ発生ノズル31の配列間隔は、導波管10内を伝搬させるマイクロ波の波長λGに応じて定めることが望ましい。例えば、波長λGの1/2ピッチ、1/4ピッチでプラズマ発生ノズル31を配列することが望ましく、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合は、λG=230mmであるので、115mm(λG/2)ピッチ、或いは57.5mm(λG/4)ピッチでプラズマ発生ノズル31を配列すれば良い。
【0041】
図6は、プラズマ発生ノズル31を拡大して示す側面図、図7は、図5のA−A線側断面図である。プラズマ発生ノズル31は、中心導電体32、ノズル本体33、ノズルホルダ34、シール部材35及び管継手36を含んで構成されている。
【0042】
中心導電体32は、良導電性の金属から構成された棒状部材からなり、その上端部321の側が第3導波管ピース13の下面板13Bを貫通して導波空間130に所定長さだけ突出(この突出部分を受信アンテナ部320という)する一方で、下端部322がノズル本体33の下端縁331と略面一になるように、上下方向に配置されている。この中心導電体32には、受信アンテナ部320が導波管10内を伝搬するマイクロ波を受信することで、マイクロ波エネルギー(マイクロ波電力)が与えられるようになっている。当該中心導電体32は、長さ方向略中間部において、シール部材35により保持されている。
【0043】
ノズル本体33は、良導電性の金属から構成され、中心導電体32を収納する下部筒状空間332と、シール部材35を保持する上部筒状空間333とを有する筒状体である。また、ノズルホルダ34も良導電性の金属から構成され、ノズル本体33を保持する保持空間341を有する筒状体である。一方、シール部材35は、テフロン(登録商標)等の耐熱性樹脂材料やセラミック等からなる絶縁性部材からなり、前記中心導電体32を固定的に保持する保持孔351をその中心軸上に備える筒状体からなる。
【0044】
ノズル本体33は、上方から順に、ノズルホルダ34の保持空間341に嵌合される上側胴部33Uと、後述するガスシールリング37を保持するための環状凹部33Sと、環状に突設されたフランジ部33Fとを具備している。また、上側胴部33Uには、所定の処理ガスを前記下部筒状空間332へ供給させるための一対の連通孔334,334が穿孔されている。一対の連通孔334,334は、それぞれ上側胴部33Uの外周の相対する位置に設けられている。
【0045】
このノズル本体33は、中心導電体32の周囲に配置された外部導電体として機能するもので、中心導電体32は所定の環状空間H(絶縁間隔)が周囲に確保された状態で下部筒状空間332の中心軸上に挿通されている。ノズル本体33は、上側胴部33Uの外周部がノズルホルダ34の保持空間341の内周壁と接触し、またフランジ部33Fの上端面がノズルホルダ34の下端縁343と接触するようにノズルホルダ34に嵌合されている。なお、ノズル本体33は、例えばプランジャやセットビス等を用いて、ノズルホルダ34に対して着脱自在な固定構造で装着されることが望ましい。
【0046】
ノズルホルダ34は、第3導波管ピース13の下面板13Bに穿孔された貫通孔131に密嵌合される上側胴部34Uと、下面板13Bから下方向に延出する下側胴部34Bとを備えている。下側胴部34Bの外周には、処理ガスを前記環状空間Hに供給するための一対のガス供給孔344,344が穿孔されている。この一対のガス供給孔344,344は、それぞれ下側胴部34Bの外周の相対する位置に設けられている。そして、このガス供給孔344,344には、所定の処理ガスを供給するガス供給管521の終端部が接続するための上記管継手36がそれぞれ取り付けられている。かかるガス供給孔344と、ノズル本体33の連通孔334とは、ノズル本体33がノズルホルダ34へ定位置嵌合された場合に互いに連通状態となるように、各々位置設定されている。なお、ガス供給孔344と連通孔334との突き合わせ部からのガス漏洩を抑止するために、ノズル本体33とノズルホルダ34との間にはガスシールリング37が介在されている。
【0047】
シール部材35は、その下端縁352がノズル本体33の上部筒状空間333の底面部335と当接し、その上端縁353がノズルホルダ34の上端係止部345と当接する態様で、ノズル本体33の上部筒状空間333に保持されている。すなわち、上部筒状空間333に中心導電体32を支持した状態のシール部材35が嵌合されるとともに、そのシール部材35がノズルホルダ34の上端係止部345と上部筒状空間333の底面部335とで上下から挟持されるようにして組み付けられている。
【0048】
プラズマ発生ノズル31は上記のように構成されている結果、ノズル本体33、ノズルホルダ34及び第3導波管ピース13(導波管10)は導通状態(同電位)とされている一方で、中心導電体32は絶縁性のシール部材35で支持されていることから、これらの部材とは電気的に絶縁されている。従って、図8に示すように、導波管10がアース電位とされた状態で、中心導電体32の受信アンテナ部320でマイクロ波が受信され中心導電体32にマイクロ波電力が給電されると、その下端部322及びノズル本体33の下端縁331の近傍に電界集中部が形成されるようになる。
【0049】
かかる状態で、ガス供給管521から管継手36、ガス供給孔344及び連通孔334を介して酸素ガスや空気のような酸素系の処理ガスが環状空間Hへ供給されると、前記マイクロ波電力により処理ガスが励起されて中心導電体32の下端部322付近においてプラズマ(電離気体)が発生する。このプラズマは、電子温度が数万度であるものの、ガス温度は外界温度に近い反応性プラズマ(中性分子が示すガス温度に比較して、電子が示す電子温度が極めて高い状態のプラズマ)であって、常圧下で発生するプラズマである。
【0050】
このようにしてプラズマ化された処理ガスは、上記のように供給される処理ガスのガス流によりプルームPとしてノズル本体33の下端縁331から放射される。このプルームPにはラジカルが含まれ、処理ガスとして酸素系ガスを使用すると酸素ラジカルが生成されることとなり、滅菌作用を有するプルームPとすることができる。本実施形態に係るプラズマ発生ユニットPUでは、プラズマ発生ノズル31が複数個配列されていることから、左右方向に延びるライン状のプルームPを発生させることが可能となる。そして、このプルームPをチャンバー510内に設置されたワークWに照射することによってワークWの滅菌処理が行われる。
【0051】
また、この第1実施形態による滅菌処理装置Sでは、プルームPを照射することによって濡れているワークWの乾燥も行うように構成されている。すなわち、チャンバー510内に設置されたワークWが濡れている場合に実行される上記第2運転モードにおいて、プルームPの照射時に吹き付けられるガス流によって濡れているワークWが乾燥する。これにより、第1実施形態では、第2運転モードにおいてワークWの乾燥とプラズマ照射による滅菌処理とが同時に行えるようになっている。したがって、第2運転モードでは濡れているワークWの乾燥を行う必要があるが、ワークWが乾燥している場合に実行される上記第1運転モードと同じくワークWへのプルームPの照射のみが行われる。
【0052】
但し、第2運転モードでは、制御ユニットCUからの制御信号によってプルームPの照射時間が第1運転モードにおけるプルームPの照射時間よりも長くなるように滅菌処理ユニットSUが制御される。この制御は、プラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31への処理ガスの供給時間及びマイクロ波の供給時間を調節することによって行われる。第2運転モードでは、このような長時間のプルームPの照射により、濡れているワークWを十分に乾燥できるようになっている。
【0053】
スライディングショート40は、各々のプラズマ発生ノズル31に備えられている中心導電体32と、導波管10の内部を伝搬されるマイクロ波との結合状態を最適化するために備えられているもので、マイクロ波の反射位置を変化させて定在波パターンを調整可能とするべく第3導波管ピース13の右側端部に連結されている。従って、定在波を利用しない場合は、当該スライディングショート40に代えて、電波吸収作用を有するダミーロードが取り付けられる。
【0054】
図9は、スライディングショート40の内部構造を示す透視斜視図である。図9に示すように、スライディングショート40は、導波管10と同様な断面矩形の筐体構造を備えており、導波管10と同じ材料で構成された中空空間410を有する筐体部41と、前記中空空間410内に収納された円柱状の反射ブロック42と、反射ブロック42の基端部に一体的に取り付けられ前記中空空間410内を左右方向に摺動する矩形ブロック43と、この矩形ブロック43に組み付けられた移動機構44と、反射ブロック42にシャフト45を介して直結されている調整ノブ46とが備えられている。
【0055】
反射ブロック42は、マイクロ波の反射面となる先端面421が第3導波管ピース13の導波空間130に対向するよう左右方向に延在する円柱体である。この反射ブロック42は、矩形ブロック43と同様な角柱状を呈していても良い。前記移動機構44は、調整ノブ46の回転操作により矩形ブロック43及びこれと一体化された反射ブロック42を左右方向に推進若しくは後退させる機構であって、調整ノブ46を回転させることで反射ブロック42が中空空間410内において矩形ブロック43にてガイドされつつ左右方向に移動可能とされている。かかる反射ブロック42の移動による先端面421の位置調整によって、定在波パターンが最適化される。なお、調整ノブ46の回転操作を、ステッピングモータ等を用いて自動化することが望ましい。
【0056】
サーキュレータ50は、例えばフェライト柱を内蔵する導波管型の3ポートサーキュレータからなり、一旦はプラズマ発生部30へ向けて伝搬されたマイクロ波のうち、プラズマ発生部30で電力消費されずに戻って来る反射マイクロ波を、マイクロ波発生装置20に戻さずダミーロード60へ向かわせるものである。このようなサーキュレータ50を配置することで、マイクロ波発生装置20が反射マイクロ波によって過熱状態となることが防止される。
【0057】
図10は、サーキュレータ50の作用を説明するためのプラズマ発生ユニットPUの上面図である。図示するように、サーキュレータ50の第1ポート51には第1導波管ピース11が、第2ポート52には第2導波管ピース12が、さらに第3ポート53にはダミーロード60がそれぞれ接続されている。そして、マイクロ波発生装置20のマイクロ波送信アンテナ22から発生されたマイクロ波は、矢印aで示すように第1ポート51から第2ポート52を経由して第2導波管ピース12へ向かう。一方、第2導波管ピース12側から入射する反射マイクロ波は、矢印bで示すように、第2ポート52から第3ポートへ向かうよう偏向され、ダミーロード60へ入射される。
【0058】
ダミーロード60は、上述の反射マイクロ波を吸収して熱に変換する水冷型(空冷型でも良い)の電波吸収体である。このダミーロード60には、冷却水を内部に流通させるための冷却水流通口61が設けられており、反射マイクロ波を熱変換することにより発生した熱が前記冷却水に熱交換されるようになっている。
【0059】
スタブチューナ70は、導波管10とプラズマ発生ノズル31とのインピーダンス整合を図るためのもので、第2導波管ピース12の上面板12Uに所定間隔を置いて直列配置された3つのスタブチューナユニット70A〜70Cを備えている。図11は、スタブチューナ70の設置状況を示す透視側面図である。図示するように、3つのスタブチューナユニット70A〜70Cは同一構造を備えており、第2導波管ピース12の導波空間120に突出するスタブ71と、該スタブ71に直結された操作棒72と、スタブ71を上下方向に出没動作させるための移動機構73と、これら機構を保持する外套74とから構成されている。
【0060】
スタブチューナユニット70A〜70Cに各々備えられているスタブ71は、その導波空間120への突出長が各操作棒72により独立して調整可能とされている。これらスタブ71の突出長は、例えばマイクロ波電力パワーをモニターしつつ、中心導電体32による消費電力が最大となるポイント(反射マイクロ波が最小になるポイント)を探索することで決定される。なお、このようなインピーダンス整合は、必要に応じてスライディングショート40と連動させて実行される。このスタブチューナ70の操作も、ステッピングモータ等を用いて自動化することが望ましい。
【0061】
次に、第1実施形態に係る滅菌処理装置Sの電気的構成について説明する。図12は、滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。この制御系90は、上記制御ユニットCU(制御手段)に含まれるCPU(中央演算処理装置)等からなり、機能的にマイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92、ガス温度制御部93及び全体制御部94が備えられている。さらに、全体制御部94に対して上記操作部502から所定の操作信号が与えられるとともに、センサー部530から所定の検出信号が与えられるように構成されている。
【0062】
マイクロ波出力制御部91は、マイクロ波発生装置20から出力されるマイクロ波のON−OFF制御、出力強度制御を行うもので、所定のパルス信号を生成してマイクロ波発生装置20の装置本体部21によるマイクロ波発生の動作制御を行う。
【0063】
ガス流量制御部92は、プラズマ発生部30の各プラズマ発生ノズル31へ供給する処理ガスの流量制御を行うものである。具体的には、ガスボンベ等の処理ガス供給源921とプラズマ発生ノズル31との間を接続するガス供給管521に設けられた流量制御弁923の開閉制御乃至は開度調整を行う。
【0064】
ガス温度制御部93は、プラズマ発生部30の各プラズマ発生ノズル31へ供給する処理ガスの温度制御を行うものである。具体的には、ガス供給管521の流量調節弁923とプラズマ発生ノズル31との間に位置する部分に設置された加熱装置520の動作制御、すなわち、加熱装置520の駆動及び非駆動の切り替えや加熱装置520による処理ガスの加熱温度の調節等を行う。
【0065】
全体制御部94は、当該滅菌処理装置Sの全体的な動作制御を司るもので、操作部502から与えられる操作信号及びセンサー部530から与えられる検出信号に応じて、上記マイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92及びガス温度制御部93を、所定のシーケンスに基づいて動作制御する。すなわち、センサー部530から与えられる検出信号に応じた第1運転モードまたは第2運転モードを選択し、各運転モードに対応する予め与えられた制御プログラムに基づいて、所定流量の処理ガスを各プラズマ発生ノズル31へ所定時間供給させつつマイクロ波電力を与えてプルームPを発生させ、ワークWの表面にプルームPを放射させるものである。これにより、第1運転モードではワークWのプラズマ滅菌処理が、第2運転モードでは濡れているワークWの乾燥とワークWのプラズマ滅菌処理とがそれぞれ行われる。
【0066】
そして、この際の制御系90における具体的な制御プロセスとしては、まず、センサー部530がチャンバー510内に設置されたワークWが乾燥しているか濡れているかを検出し、ワークWが乾燥している場合と濡れている場合とでそれぞれ異なる検出信号を全体制御部94へ送信する。これにより、全体制御部94は、その検出信号に対応する滅菌処理ユニットSUの運転モードを選択する。すなわち、全体制御部94は、ワークWが乾燥していることを検出した検出信号を受け取った場合は第1運転モードを選択する一方、ワークWが濡れていることを検出した検出信号を受け取った場合は第2運転モードを選択する。
【0067】
第1運転モードが選択された場合は、全体制御部94がその第1運転モードに対応したマイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92及びガス温度制御部93の制御を実行する。これにより、ガス流量制御部92は、流量制御弁923を制御して所定流量の処理ガスを各プラズマ発生ノズル31へ所定時間供給させるとともに、マイクロ波出力制御部91は、プラズマ発生ユニットPUの各部を制御してプラズマ発生ノズル31にマイクロ波電力を与えてワークWにプルームPを照射させる。この際、ガス温度制御部93は加熱装置520を駆動させないように制御し、処理ガスは加熱装置520により加熱されることなくプラズマ発生ノズル31に供給される。したがって、プラズマ発生ノズル31からは外界温度に近いガス温度のプルームPがワークWに照射される。
【0068】
一方、第2運転モードが選択された場合も、上記第1運転モードと同様の制御プロセスでワークWへのプルームPの照射が実行される。但し、第2運転モードでは、ガス流量制御部92により処理ガスの供給時間が第1運転モードの場合よりも長くなるように流量制御弁923が制御されるとともに、マイクロ波出力制御部91によってその処理ガスの供給時間に応じた時間、マイクロ波電力がプラズマ発生ノズル31に与えられるようにプラズマ発生ユニットPUが制御される。これにより、第2運転モードが選択された場合は、第1運転モードが選択された場合に比べてワークWにプルームPが長時間照射される。
【0069】
さらに、第2運転モードが選択された場合には、ガス温度制御部93により加熱装置520が駆動される。これにより、加熱装置520により処理ガスが予め加熱されてからプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31に供給される。このため、第2運転モードにおいてプラズマ発生ノズル31から濡れているワークWに照射されるプルームPのガス温度が上昇し、それによってワークWの乾燥が速められる。
【0070】
このように、第1実施形態では、制御ユニットCUの制御系90により、ワークWが乾燥している条件では第1運転モードが選択され、プラズマ発生ユニットPUから照射されるプルームPのガス温度が第2運転モードよりも低い温度(外界温度近傍の温度)に設定されるとともに、プルームPの照射時間が第2運転モードよりも短い時間に設定される一方、ワークWが濡れている条件では第2運転モードが選択され、プラズマ発生ユニットPUから照射されるプルームPのガス温度が第1運転モードよりも高い温度に設定されるとともに、プルームPの照射時間が第1運転モードよりも長い時間に設定される。
【0071】
なお、第2運転モードが選択された場合、最初にマイクロ波出力制御部91がプラズマ発生ユニットPUをプラズマ発生ノズル31にマイクロ波電力を与えないように制御することによって、処理ガスをプラズマ発生ノズル31でプラズマ化させることなく濡れているワークWに所定時間照射して乾燥させ、その後、処理ガスをプラズマ発生ユニットPUによりプラズマ化して乾燥したワークWに照射させるようにしても良い。この場合には、第2運転モードにおいて濡れているワークWを乾燥させる期間は処理ガスをプラズマ化させる必要がなく、その分プラズマ発生ユニットPUにおけるプラズマ化に要する消費電力が抑制される。なお、このようにプラズマ発生ユニットPUにおいて処理ガスをプラズマ化させないで濡れているワークWに照射する場合にも、ガス温度制御部93により加熱装置520を駆動させて処理ガスを予め加熱すれば、ワークWの乾燥を速めることができる。
【0072】
以上説明した第1実施形態の滅菌処理装置Sによれば、制御ユニットCUの制御系90は、ワークWが乾燥しているか濡れているかの状態に基づいて、プラズマ発生ユニットPUから照射するプルームPのガス温度及びプルームPの照射時間が異なる第1運転モードまたは第2運転モードを選択して滅菌処理ユニットSUの動作制御を行うので、異なる状態のワークWそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプルームPを照射することができる。
【0073】
また、制御ユニットCUの制御系90は、センサー部530がワークWが乾燥しているか濡れているかを検出した検出信号に基づいて第1運転モードまたは第2運転モードを実行するようになっているので、センサー部530によりワークWの状態を検出して自動的にそのワークWの状態に応じた第1運転モードまたは第2運転モードを選択し、プルームPのガス温度及び照射時間をそのワークWの状態に応じた条件に設定することができる。これにより、ワークWの状態を判別する作業を行う必要がないので、ワークWの状態の判別に要する作業負担を軽減しながら、ワークWの状態に応じた適切な条件でプルームPの照射を行うことができる。
【0074】
また、第2運転モードにおいて、濡れているワークWの乾燥をプラズマ発生ユニットPUによるプルームPの照射によって実行させているので、ワークWが自然に乾燥するのを待つのに比べて短時間でワークWを乾燥させることができる。これにより、ワークWが濡れている場合のワークWの処理時間を短縮することができる。
【0075】
また、第2運転モードにおいて、濡れているワークWを乾燥させることができるので、ワークWの表面に対するプラズマの照射がワークWの濡れにより遮られるのを回避することができる。これにより、ワークWが濡れている場合でも、プルームPの照射による滅菌処理をワークWに有効に施与することができる。
【0076】
また、第2運転モードにおいて、プルームPの照射により濡れているワークWの乾燥とワークWのプラズマ滅菌処理とを同時に行うことができるので、ワークWにプラズマ滅菌処理を施与するのとは別にワークWの乾燥を行う場合と異なり、ワークWの処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0077】
また、第2運転モードでは、濡れているワークWに照射されるプルームPのガス温度を上昇させるとともに、プルームPの照射時間を長くしているので、ガス温度の上昇したプルームPを長時間照射することによって、濡れているワークWを十分に乾燥させることができる。
【0078】
また、第1運転モードでは、第2運転モードに比べて、プラズマ発生ユニットPUにより照射されるプルームPのガス温度が低く設定されているとともに、プルームPの照射時間が短く設定されているので、ワークが元々乾燥していて乾燥処理が不要な条件では、プルームPのガス温度を上昇させたりプルームPの照射時間を長くすることに伴って発生する消費電力の増大を抑制することができる。
【0079】
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。この第2実施形態に係る滅菌処理装置Sでは、上記第1実施形態と異なり、第2運転モードにおいてドライヤー装置550を用いて濡れているワークWの乾燥を行うようになっている。
【0080】
具体的には、この第2実施形態に係る滅菌処理装置Sの滅菌処理ユニットSUは、チャンバー510の軸方向一方端側の側壁部510aに取り付けられたドライヤー装置550を備えている。ドライヤー装置550は熱風を送風する機能を有しており、チャンバー510の側壁部510aに設けられた吹込口510cを介して、ドライヤー装置550からの熱風がチャンバー510内に導入されるようになっている。そして、この熱風により、チャンバー510内に設置された濡れているワークWの乾燥が行われる。なお、この第2実施形態による滅菌処理装置Sでは、上記第1実施形態による滅菌処理装置Sと異なり、加熱装置520(図2参照)は備えておらず、プラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31には処理ガスが加熱されることなくそのまま供給されるようになっている。
【0081】
図14は、第2実施形態に係る滅菌処理装置Sの電気的構成を示した図である。この第2実施形態による制御系90は、ドライヤー装置制御部96を備えており、このドライヤー装置制御部96からドライヤー装置550に制御信号が送信されることによりドライヤー装置550の駆動及び非駆動の切替やドライヤー装置550から送風される熱風の温度調節等の各種制御が行われるようになっている。なお、この第2実施形態では、制御系90は上記第1実施形態による処理ガスの温度を調節するためのガス温度制御部93(図12参照)を備えていない。
【0082】
そして、この第2実施形態では、センサー部530によりワークWが濡れていることが検出された場合の検出信号に応答して全体制御部94が第2運転モードを選択すると、ドライヤー装置制御部96から送信される制御信号によりドライヤー装置550が駆動する。これにより、ドライヤー装置550からチャンバー510内に熱風が送風され、その結果、濡れているワークWが乾燥する。そして、この後、上記第1実施形態と同様にしてプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31からワークWへプルームPの照射が行われる。なお、センサー部530によりワークWが乾燥していることが検出された場合には、そのときのセンサー部530から送信される検出信号に応答して全体制御部94は第1運転モードを選択し、上記第1実施形態と同様にしてワークWへプルームPの照射が行われる。そして、このように第1運転モードが選択された場合はワークWの乾燥は不要であるので、ドライヤー装置制御部96によりドライヤー装置550が駆動しないように制御される。
【0083】
第2実施形態による滅菌処理装置Sの上記以外の構成は、上記第1実施形態による滅菌処理装置Sの構成と同様である。
【0084】
以上説明したように第2実施形態による滅菌処理装置Sでは、制御ユニットCUのドライヤー装置制御部96が、第2運転モードにおいてドライヤー装置550を動作させて濡れているワークWを乾燥させるので、ワークWが自然に乾燥するのを待つのに比べて短時間でワークWを乾燥させることができる。これにより、ワークWが濡れている場合のワークの処理時間を短縮することができる。
【0085】
また、制御ユニットCUの制御系90が、第2運転モードにおいてドライヤー装置550を動作させて濡れているワークWを乾燥させた後、プラズマ発生ユニットPUにワークWへのプルームPの照射を行わせるように制御するので、ドライヤー装置550からの熱風により加熱されたワークWに対してプラズマ発生ユニットPUからの外界温度に近いガス温度を有するプルームPを照射することによって、ワークWを冷却させると同時にそのワークWにプルームPの照射による滅菌処理を施与することができる。これにより、加熱されたワークWを冷却する工程を別途設ける必要がないので、ワークWの冷却のためにワークWの処理時間が長くなるのを抑制することができる。
【0086】
また、第2運転モードにおいて濡れているワークWをドライヤー装置550からの熱風によって乾燥させた後、そのワークWにプルームPの照射を行うことによって、ドライヤー装置550からの熱風に含まれる雑菌がワークWに付着した後にプルームPによるワークWの滅菌を行うことができるので、第2運転モードにおいて濡れているワークWをドライヤー装置550により乾燥させる場合でも、ワークWを確実に滅菌することができる。
【0087】
また、制御ユニットCUのドライヤー装置制御部96が、第2運転モードにおいてドライヤー装置550を動作させる一方、第1運転モードにおいてドライヤー装置550を動作させないように制御するので、ワークWの乾燥処理が不要な第1運転モードではドライヤー装置550の動作に要する消費電力を抑制することができる。
【0088】
第2実施形態による上記以外の効果は、上記第1実施形態による効果と同様である。
【0089】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。この第3実施形態に係る滅菌処理装置Sでは、上記第1及び第2実施形態と異なり、高圧蒸気滅菌装置600によりワークWの高圧蒸気滅菌処理が行われるとともに、高圧蒸気によって加熱されたワークWがプラズマ発生ユニットPUからのプルームPの照射によって冷却されるように構成されている。
【0090】
具体的には、この第3実施形態に係る滅菌処理装置Sの滅菌処理ユニットSUは、高圧蒸気滅菌装置600と、処理ガス冷却器610とを備えている。高圧蒸気滅菌装置600は、チャンバー510の側壁部510aに取り付けられている。この高圧蒸気滅菌装置600は、チャンバー510の側壁部510aに設けられた吹込口510cを介してチャンバー510内に高圧蒸気を送り込み、チャンバー510内に設置されたワークWを高圧蒸気に曝して滅菌処理を行う機能を有する。この高圧蒸気滅菌装置600は、制御ユニットCU(図1参照)からの制御信号により駆動状態と非駆動状態とに切替可能に構成されている。
【0091】
また、処理ガス冷却器610は、プラズマ発生ノズル31に供給される処理ガスを冷却するためのものである。プラズマ発生ノズル31には、ガス供給管521が処理ガス冷却器610を介して接続されており、処理ガスが処理ガス冷却器610を経由してプラズマ発生ノズル31に供給されるようになっている。これにより、処理ガスをプラズマ発生ノズル31に供給する前に予め冷却することが可能とされている。なお、処理ガス冷却器610は、制御ユニットCU(図1参照)からの制御信号により駆動状態と非駆動状態とに切替可能に構成されている。このため、処理ガス冷却器610では、処理ガスを冷却してプラズマ発生ノズル31に供給するかまたは処理ガスを冷却しないでそのままプラズマ発生ノズル31に供給するかを必要に応じて切り替えることができる。また、処理ガス冷却器610では、制御ユニットCU(図1参照)からの制御信号により処理ガスの冷却温度の調節も可能となっている。
【0092】
また、この第3実施形態では、センサー部530(検出手段)がワークWの温度を検出することによって、ワークWが加熱されている状態かまたは外界温度近傍の温度であるかを検出するように構成されている。そして、センサー部530は、ワークWが加熱されているか外界温度近傍の温度であるかを検出するとともに、そのワークWの状態に応じた検出信号を制御ユニットCU(図1参照)へ送信する。
【0093】
また、この第3実施形態においても、上記第1及び第2実施形態と同様、制御ユニットCU(図1参照)が第1運転モード及び第2運転モードのいずれかの運転モードを選択して滅菌処理ユニットSUを動作させるように構成されている。ただし、この第3実施形態では、上記第1及び第2実施形態と異なり、第1運転モードはワークWが外界温度近傍の温度である条件での運転モードであり、通常のプルームPの照射によるワークWの滅菌処理が行われる。また、第2運転モードはワークWが加熱されている条件での運転モードであり、ワークWの冷却とプルームPの照射による滅菌処理とが行われる。高圧蒸気滅菌処理後には、ワークWが加熱されているので、制御ユニットCUにより第2運転モードが選択されて滅菌処理ユニットSUが第2運転モードで動作する。
【0094】
そして、第2運転モードでは、プルームPの照射により加熱状態のワークWの冷却を行うように構成されている。すなわち、第2運転モードでは、上記処理ガス冷却器610により冷却された処理ガスがプラズマ発生ノズル31に供給され、それに伴って、プラズマ発生ノズル31から低いガス温度のプルームPが照射される。この低温のプルームPが照射されることによって加熱状態のワークWが冷却される。これにより、この第3実施形態では、第2運転モードにおいて、加熱状態のワークWの冷却とプラズマ滅菌処理とが同時に行えるようになっている。さらに、第2運転モードでは、第1運転モードに比べてプルームPが長時間照射される。これにより、加熱状態のワークWを十分に冷却できるようになっている。
【0095】
図16は、第3実施形態に係る滅菌処理装置Sの電気的構成を示した図である。この第3実施形態による制御系90は、高圧蒸気滅菌装置制御部97を備えており、この高圧蒸気滅菌装置制御部97から高圧蒸気滅菌装置600に制御信号が送信されることにより高圧蒸気滅菌装置600の駆動及び非駆動の切替や高圧蒸気滅菌装置600からチャンバー510内に送り込まれる高圧蒸気の温度調節等の各種制御が行われるようになっている。
【0096】
そして、全体制御部94は、操作部502から与えられる操作信号及びセンサー部530から与えられる検出信号に応じて、マイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92、ガス温度制御部93及び高圧蒸気滅菌装置制御部97を、所定のシーケンスに基づいて動作制御する。具体的には、全体制御部94は、操作部502から与えられる操作信号がプラズマ滅菌処理を指示するものである場合には、センサー部530からの検出信号に基づいて第1運転モードまたは第2運転モードを選択する。このとき、全体制御部94は、センサー部530からワークWが外界温度近傍の温度であることを検出した検出信号を受け取った場合は第1運転モードを選択する一方、ワークWが加熱されていることを検出した検出信号を受け取った場合は第2運転モードを選択する。
【0097】
第1運転モードが選択された場合は、全体制御部94により上記第1実施形態と同様の制御が実行される。この際、ガス温度制御部93は処理ガス冷却器610を駆動させないように制御し、処理ガスは処理ガス冷却器610により冷却されることなくプラズマ発生ノズル31に供給される。したがって、プラズマ発生ノズル31からは外界温度に近いガス温度のプルームPがワークWに照射され、ワークWにプラズマ滅菌処理が施与される。
【0098】
一方、第2運転モードが選択された場合は、ガス流量制御部92により処理ガスの供給時間が第1運転モードの場合よりも長くなるように流量制御弁923が制御されるとともに、マイクロ波出力制御部91によってその処理ガスの供給時間に応じた時間、マイクロ波電力がプラズマ発生ノズル31に与えられるようにプラズマ発生ユニットPUが制御される。これにより、第2運転モードが選択された場合は、第1運転モードが選択された場合に比べてワークWにプルームPが長時間照射され、加熱されているワークWの冷却とプラズマ滅菌処理とが同時に行われる。
【0099】
さらに、第2運転モードが選択された場合には、ガス温度制御部93により処理ガス冷却器610が駆動される。これにより、処理ガス冷却器610により処理ガスが予め冷却されてからプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31に供給される。このため、第2運転モードにおいてプラズマ発生ノズル31から加熱状態のワークWに照射されるプルームPのガス温度が低下し、それによってワークWの冷却が速められる。
【0100】
このように、第3実施形態では、制御ユニットCUの制御系90により、ワークWが加熱されている条件では第1運転モードが選択され、プラズマ発生ユニットPUから照射されるプルームPのガス温度が第2運転モードよりも高い温度(外界温度近傍の温度)に設定されるとともに、プルームPの照射時間が第2運転モードよりも短い時間に設定される一方、ワークWが加熱されている条件では第2運転モードが選択され、プラズマ発生ユニットPUから照射されるプルームPのガス温度が第1運転モードよりも低い温度に設定されるとともに、プルームPの照射時間が第1運転モードよりも長い時間に設定される。
【0101】
また、全体制御部94が操作部502から高圧蒸気滅菌処理を指示する操作信号が与えられた場合には、高圧蒸気滅菌装置制御部97からの制御信号によって高圧蒸気滅菌装置600が駆動される。これにより、高圧蒸気滅菌装置600から高圧蒸気がチャンバー510内に送り込まれてチャンバー510内が高圧蒸気で充満し、その高圧蒸気に曝されることによってワークWの高圧蒸気滅菌処理が行われる。そして、高圧蒸気滅菌処理が所定時間行われた後、チャンバー510内の蒸気が排気される。
【0102】
この高圧蒸気滅菌処理後、ワークWは加熱されているので、センサー部530によりワークWが加熱状態であることが検出される。そして、センサー部530から全体制御部94にワークWが加熱されていることを検出した検出信号が送信される。この検出信号に応答して全体制御部94は、第2運転モードを選択する。これにより、上記第2運転モードと同様にして加熱されているワークWの冷却とプラズマ滅菌処理とが同時に行われる。
【0103】
第3実施形態による滅菌処理装置Sの上記以外の構成は、上記第1実施形態による滅菌処理装置Sの構成と同様である。
【0104】
以上説明したように第3実施形態による滅菌処理装置Sでは、制御ユニットCUの制御系90がワークWが外界温度近傍の温度であるか加熱されているかの状態に基づいて、プラズマ発生ユニットPUから照射するプルームPのガス温度及びプルームPの照射時間が異なる第1運転モードまたは第2運転モードを選択して滅菌処理ユニットSUの動作制御を行うので、異なる状態のワークWそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプルームPを照射することができる。
【0105】
また、制御ユニットCUの制御系90は、センサー部530がワークWが外界温度近傍の温度であるか加熱されているかを検出した検出信号に基づいて第1運転モードまたは第2運転モードを実行するようになっているので、センサー部530によりワークWの状態を検出して自動的にそのワークWの状態に応じた第1運転モードまたは第2運転モードを選択し、プルームPのガス温度及び照射時間をそのワークWの状態に応じた条件に設定することができる。これにより、ワークWの状態を判別する作業を行う必要がないので、ワークWの状態の判別に要する作業負担を軽減しながら、ワークWの状態に応じた適切な条件でプルームPの照射を行うことができる。
【0106】
また、第2運転モードにおいて、加熱されているワークWの冷却をプラズマ発生ユニットPUによるプルームPの照射によって実行させるので、ワークWが自然に冷却されるのを待つのに比べて短時間でワークWを冷却させることができる。これにより、ワークWが加熱されている場合のワークWの処理時間を短縮することができる。
【0107】
また、第2運転モードにおいて、プルームPの照射により加熱されたワークWの冷却とワークWのプラズマ滅菌処理とを同時に行うことができるので、ワークWにプラズマ滅菌処理を施与するのとは別にワークWの冷却を行う場合と異なり、ワークWの処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0108】
また、第2運転モードでは、加熱されたワークWに照射されるプルームPのガス温度を低下させるとともに、プルームPの照射時間を長くしているので、ガス温度の低下したプルームPを長時間照射することによって、加熱状態のワークWを十分に冷却することができる。
【0109】
また、第1運転モードでは、第2運転モードに比べて、プラズマ発生ユニットPUにより照射されるプルームPのガス温度が高く設定されているとともに、プルームPの照射時間が短く設定されているので、ワークWが元々外界温度近傍の温度であり、冷却処理が不要な条件では、プルームPのガス温度を上昇させたりプルームPの照射時間を長くすることによって発生する消費電力の増大を抑制することができる。
【0110】
また、第3実施形態による滅菌処理装置Sは、ワークWを高圧蒸気に曝して滅菌処理を行う高圧蒸気滅菌装置600を備えているので、プラズマ発生ユニットPUからのプルームPの照射によるワークWの滅菌処理に加えて、高圧蒸気滅菌装置600によりワークWの高圧蒸気滅菌を行うことができる。このため、ワークWの滅菌処理をより確実に行うことができる。
【0111】
また、制御ユニットCUは、高圧蒸気滅菌装置600を動作させて高圧蒸気によるワークWの滅菌処理を行わせた後、プラズマ発生ユニットPUにワークWへのプルームPの照射を行わせるので、高圧蒸気による滅菌処理後、プルームPの照射によりプラズマ滅菌処理を行いながらワークWを冷却することができる。これにより、高圧蒸気滅菌処理後、外気に当ててワークWを冷却する場合と異なり、外気中の雑菌がワークWに付着することがない。このため、高圧蒸気滅菌処理後、ワークWの滅菌状態を確実に保持することができる。
【0112】
(第4実施形態)
図17は、本発明の第4実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。この第4実施形態に係る滅菌処理装置Sでは、上記第3実施形態と異なり、第2運転モードにおいて冷却装置620を用いて加熱状態のワークWの冷却を行うようになっている。
【0113】
具体的には、この第4実施形態に係る滅菌処理装置Sの滅菌処理ユニットSUは、チャンバー510の側壁部510aに取り付けられた冷却装置620を備えている。冷却装置620は外気を取り込んで送風する機能を有しており、チャンバー510の側壁部510aに設けられた吹込口510cを介して、冷却装置620からチャンバー510内に外気が送風されるように構成されている。そして、この送風により、チャンバー510内の加熱されたワークWの冷却が行われる。なお、この第4実施形態による滅菌処理装置Sでは、上記第3実施形態による滅菌処理装置Sと異なり、処理ガス冷却器610(図15参照)は備えておらず、プラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31には処理ガスが冷却されることなくそのまま供給されるようになっている。
【0114】
図18は、第4実施形態に係る滅菌処理装置Sの電気的構成を示した図である。この第4実施形態による制御系90は、冷却装置制御部98を備えており、この冷却装置制御部98から冷却装置620に制御信号が送信されることにより冷却装置620の駆動及び非駆動の切替や冷却装置620から送風される風量の調節等の各種制御が行われるようになっている。なお、この第4実施形態では、制御系90は上記第3実施形態による処理ガスの温度を調節するためのガス温度制御部93(図16参照)を備えていない。
【0115】
そして、この第4実施形態では、センサー部530によりワークWが加熱されていることが検出された場合の検出信号に応答して全体制御部94が第2運転モードを選択すると、冷却装置制御部98から送信される制御信号により冷却装置620が駆動する。これにより、冷却装置620からチャンバー510内への送風が行われ、その結果、加熱状態のワークWが冷却される。そして、この後、上記第3実施形態と同様にしてプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31からワークWへプルームPの照射が行われる。なお、センサー部530によりワークWが外界温度近傍の温度であることが検出された場合には、そのときのセンサー部530から送信される検出信号に応答して全体制御部94は第1運転モードを選択し、上記第3実施形態と同様にしてワークWへプルームPの照射が行われる。そして、このように第1運転モードが選択された場合はワークWの冷却は不要であるので、冷却装置制御部98により冷却装置620が駆動しないように制御される。
【0116】
第4実施形態による滅菌処理装置Sの上記以外の構成は、上記第3実施形態による滅菌処理装置Sの構成と同様である。
【0117】
以上説明したように第4実施形態による滅菌処理装置Sでは、滅菌処理ユニットSUが加熱されたワークWに送風して冷却する冷却装置620を含むとともに、制御ユニットCUの冷却装置制御部98が、第2運転モードにおいて冷却装置620を動作させてワークWを冷却させるので、加熱されたワークWの冷却を容易に行うことができる。
【0118】
また、制御ユニットCUの冷却装置制御部98が、第2運転モードにおいて冷却装置620を動作させる一方、第1運転モードにおいて冷却装置620を動作させないように制御するので、ワークWの冷却が不要な第1運転モードでは冷却装置620の動作に要する消費電力を抑制することができる。
【0119】
また、第2運転モードにおいて加熱状態のワークWを冷却装置620からの送風によって冷却させた後、そのワークWにプルームPの照射を行うことによって、冷却装置620から送風される空気中の雑菌がワークWに付着した後にプルームPによるワークWの滅菌を行うことができるので、第2運転モードにおいて加熱状態のワークWを冷却装置620からの送風により冷却する場合でも、ワークWを確実に滅菌することができる。
【0120】
第4実施形態による上記以外の効果は、上記第3実施形態による効果と同様である。
【0121】
以上、本発明の第1〜第4実施形態に係る滅菌処理装置Sについて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば下記の実施形態を取ることができる。
【0122】
上記各実施形態では、ワーク処理装置の一例としての滅菌処理装置Sに本発明を適用した例について説明したが、滅菌処理装置以外の種々のワーク処理装置に本発明を適用することも可能である。例えば、半導体ウェハ等の半導体基板に対するエッチング処理装置や成膜装置、プラズマディスプレイパネル等のガラス基板やプリント基板の清浄化処理装置、タンパク質の分解装置等のワーク処理装置に本発明を適用することができる。このような滅菌処理装置以外のワーク処理装置においても処理対象であるワークWが濡れている場合には、その濡れによってワークWにプラズマ照射による所定の処理を施与するのが阻害されるという不都合が生じるが、上記第1及び第2実施形態の構成によってワークWが濡れている場合には乾燥させてプラズマ照射を行うことが可能となり、その結果、ワークWに有効にプラズマ照射による所定の処理を施与することが可能となる。上記のように滅菌処理装置以外の種々のワーク処理装置に本発明を適用する場合は、その目的に応じた処理ガスを用いる。因みに、処理ガスとしてアルゴンガスのような不活性ガスや窒素ガスを用いれば、各種基板の表面クリーニングや表面改質を行うことができる。また、フッ素を含有する化合物ガスを用いれば基板表面を撥水性表面に改質することができ、親水基を含む化合物ガスを用いることで基板表面を親水性表面に改質することができる。さらに、金属元素を含む化合物ガスを用いれば基板上に金属薄膜層を形成することができる。また、上記実施形態と同様の酸素系ガスを処理ガスとして用いることによって、基板上のレジスト除去を行うことも可能である。
【0123】
上記第1実施形態では第2運転モードにおいてプラズマ化されたガスの照射により濡れているワークWの乾燥を行うとともに、上記第2実施形態では第2運転モードにおいてドライヤー装置550からの熱風の送風により濡れているワークWの乾燥を行ったが、第2運転モードにおいてこれらを両方とも行うことによって濡れているワークWを乾燥させても良い。
【0124】
また、上記第1実施形態では、ワークWが濡れている条件での第2運転モードにおいて、プルームPのガス温度を第1運転モードの場合よりも高い温度に上昇させるとともに、プルームPの照射時間を第1運転モードの場合よりも長くなるように制御したが、本発明はこれに限らず、ワークWが濡れている条件での第2運転モードでは、プルームPのガス温度を第1運転モードの場合よりも高い温度に上昇させるかまたはプルームPの照射時間を第1運転モードの場合よりも長くするかのいずれかの制御のみを行うようにしても良い。
【0125】
上記第3実施形態では第2運転モードにおいてプラズマ化されたガスの照射により加熱状態のワークWの冷却を行うとともに、上記第4実施形態では第2運転モードにおいて冷却装置620からの送風により加熱状態のワークWの冷却を行ったが、第2運転モードにおいてこれらを両方とも行うことによって加熱状態のワークWを冷却させても良い。
【0126】
また、上記第3実施形態では、ワークWが加熱されている条件での第2運転モードにおいて、プルームPのガス温度を第1運転モードの場合よりも低い温度に低下させるとともに、プルームPの照射時間を第1運転モードの場合よりも長くなるように制御したが、本発明はこれに限らず、ワークWが加熱されている条件での第2運転モードでは、プルームPのガス温度を第1運転モードの場合よりも低い温度に低下させるかまたはプルームPの照射時間を第1運転モードの場合よりも長くするかのいずれかの制御のみを行うようにしても良い。
【0127】
上記第1及び第2実施形態では、センサー部530でワークWが乾燥しているかまたは濡れているかを検出し、そのセンサー部530からの検出信号に基づいて制御ユニットCUの全体制御部94により第1運転モードまたは第2運転モードのどちらかが自動的に選択されるようにしたが、これに限らず、作業者がワークWの状態を見て乾燥しているか濡れているかを判別して滅菌処理ユニットSUを第1運転モードまたは第2運転モードのどちらで動作させるかをマニュアルで設定するようにしても良い。この場合、作業者が判別したワークWの状態を滅菌処理装置Sの操作部502(入力手段)を操作して入力し、その入力されたワークの状態に基づいて制御ユニットCUの全体制御部94が第1運転モードまたは第2運転モードのいずれかを選択する。
【0128】
また、上記第3及び第4実施形態では、センサー部530でワークWが外界温度近傍の温度であるかまたは加熱されているかを検出し、そのセンサー部530からの検出信号に基づいて制御ユニットCUの全体制御部94により第1運転モードまたは第2運転モードのどちらかが自動的に選択されるようにしたが、これに限らず、作業者がワークWが外界温度近傍の温度であるか加熱されているかを判別して滅菌処理ユニットSUを第1運転モードまたは第2運転モードのどちらで動作させるかをマニュアルで設定するようにしても良い。この場合、作業者が判別したワークWが外界温度近傍の温度であるかまたは加熱されている状態であるかの情報を滅菌処理装置Sの操作部502(入力手段)を操作して入力し、その入力されたワークの状態に基づいて制御ユニットCUの全体制御部94が第1運転モードまたは第2運転モードのいずれかを選択する。
【0129】
上記各実施形態では、箱型の筐体500内に滅菌処理ユニットSUを設け、その滅菌処理ユニットSUのチャンバー510内にワークWを設置してプルームPの照射による滅菌処理を施与するという滅菌処理装置の一形態を示したが、上記以外の形態の滅菌処理装置にも本発明を適用することができる。
【0130】
例えば、図19に示すように、プラズマ発生ユニットPUによるプルームの照射領域を経由する所定のルートでワークWを搬送する搬送手段Cを設け、この搬送手段CによってワークWを搬送しながらプルーム(プラズマ)の照射を行う形態の滅菌処理装置にも本発明を適用することが可能である。具体的には、搬送手段Cは、図略の駆動手段により回転駆動される搬送ローラ80を含んで構成されており、この搬送ローラ80の回転駆動によって平板状のワークWが上記所定のルートで搬送されるようになっている。そして、プラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生部30の幅員、つまり8個のプラズマ発生ノズル31の左右方向の配列幅は、平板状ワークWの搬送方向と直交する幅方向のサイズtと略合致する幅員とされている。これにより、ワークWを搬送ローラ80で搬送しながら、ワークWの全表面(プラズマ発生ユニットPUの下面板13Bと対向する面)に対してプラズマ滅菌処理が行えるようになっている。また、ワークWの搬送ルート上には、ワークWが乾燥しているかまたは濡れているかを検出するセンサー部630(検出手段)と、ワークWに対して熱風を送風するドライヤー装置650とが設置されている。
【0131】
この滅菌処理装置では、ワークWを搬送手段Cで搬送しながらセンサー部630でワークWが乾燥しているか濡れているかを検出し、そのセンサー部630からの検出信号に基づいて図略の制御ユニットの全体制御部により第1運転モードまたは第2運転モードが選択される。ワークWが乾燥している場合は第1運転モードが選択され、この場合、ドライヤー装置650は駆動しないように制御されるとともに、ワークWが搬送手段Cによりプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生部30の下方に搬送され、プラズマ発生ノズル31からプルームが照射される。一方、ワークWが濡れている場合は第2運転モードが選択され、この場合、ドライヤー装置650が駆動され、ドライヤー装置650から濡れているワークWに熱風が送風されることによってワークWの乾燥が行われる。この際、ワークWは、搬送手段Cにより搬送されながら乾燥され、乾燥後のワークWがプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生部30の下方に達するとプラズマ発生ノズル31からプルームが照射される。
【0132】
なお、このような構成は滅菌処理装置に限らず、他の種々のワーク処理装置にも適用することが可能である。例えば、このような構成を用いて半導体ウェハ等の半導体基板に対するエッチング処理装置や成膜装置、プラズマディスプレイパネル等のガラス基板やプリント基板の清浄化処理装置、タンパク質の分解装置等のワーク処理装置を構成することができる。
【0133】
また、搬送手段Cとして搬送ローラ80の上面にワークWを載置して搬送する形態以外に例えば上下の搬送ローラ間にワークをニップさせて搬送させる形態、搬送ローラを用いず所定のバスケット等にワークを収納し前記バスケット等をラインコンベア等で搬送させる形態、或いはロボットハンド等でワークを把持してプラズマ発生部30へ搬送させる形態であっても良い。
【0134】
上記各実施形態では、複数のプラズマ発生ノズル31を一列に整列配置した例を示したが、ノズル配列はワークの形状やマイクロ波電力のパワー等に応じて適宜決定すれば良く、例えばワークの搬送方向に複数列のプラズマ発生ノズル31をマトリクス整列したり、千鳥配列したりしても良い。
【0135】
上記各実施形態では、マイクロ波発生源として2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロンを例示したが、マグネトロン以外の各種高周波電源も使用可能であり、また2.45GHzとは異なる波長のマイクロ波を用いるようにしても良い。
【0136】
導波管10内におけるマイクロ波電力を測定するために、パワーメータを導波管10の適所に設置することが望ましい。例えば、マイクロ波発生装置20のマイクロ波送信アンテナ22から放出されたマイクロ波電力に対する反射マイクロ波電力の比を知見するために、サーキュレータ50と第2導波管ピース12との間に、パワーメータを内蔵する導波管を介在させるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明に係るワーク処理装置は、医療機器等に対する滅菌処理装置、半導体ウェハ等の半導体基板に対するエッチング処理装置や成膜装置、プラズマディスプレイパネル等のガラス基板やプリント基板の清浄化処理装置、タンパク質の分解装置等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1実施形態に係る滅菌処理装置Sの全体構成を示す斜視図である。
【図2】滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。
【図3】プラズマ発生ユニットPUの全体構成を示す斜視図である。
【図4】図3とは視線方向を異ならせたプラズマ発生ユニットPUの斜視図である。
【図5】プラズマ発生ユニットPUの一部透視側面図である。
【図6】プラズマ発生ノズル31を拡大して示す側面図である。
【図7】図6のA−A線側断面図である。
【図8】プラズマ発生ノズル31におけるプラズマの発生状態を説明するための透視側面図である。
【図9】スライディングショート40の内部構造を示す透視斜視図である。
【図10】サーキュレータ50の作用を説明するためのプラズマ発生ユニットPUの上面図である。
【図11】スタブチューナ70の設置状況を示す透視側面図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。
【図18】本発明の第4実施形態に係る滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
【図19】本発明の実施形態の変形例に係る滅菌処理装置の全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0139】
502 操作部(入力手段)
520 加熱装置(加熱機構)
530、630 センサー部(検出手段)
550、650 ドライヤー装置
600 高圧蒸気滅菌装置
620 冷却装置
CU 制御ユニット(制御手段)
PU プラズマ発生ユニット(プラズマ発生装置)
S 滅菌処理装置(ワーク処理装置)
SU 滅菌処理ユニット(処理部)
W ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器や基板等の被処理ワークに対してプラズマを照射しワーク表面の滅菌や改質等を図ることが可能なワーク処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体基板等の被処理ワークに対してプラズマを照射し、その表面の有機汚染物の除去、表面改質、エッチング、薄膜形成又は薄膜除去等を行うワーク処理装置が知られている。例えば特許文献1には、内側電極と外側電極とを有するプラズマ発生ノズルを用い、常圧下において両電極間に電界を印加することでグロー放電プラズマを発生させ、プラズマ化されたガスを固定的に配置された被処理ワークに放射するワーク処理装置が開示されている。また、プラズマを発生させるエネルギー源として、例えば2.45GHzのマイクロ波を用いた常圧プラズマ発生装置を利用したワーク処理装置も知られている。
【特許文献1】特開2003−197397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のワーク処理装置では、被処理ワークに対して単一の条件でのみプラズマ照射が行われるので、被処理ワークが水濡れ状態や加熱された状態等の種々の状態である場合に、その状態に応じて適切な条件でプラズマ照射を行うことが困難であるという問題点がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、異なる状態のワークそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことが可能なワーク処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係るワーク処理装置は、供給される所定のガスをプラズマ化して放出するプラズマ発生装置を含み、処理対象であるワークにプラズマ化されたガスの照射による所定の処理を施与する処理部と、処理部の動作を制御する制御手段とを備えている。そして、制御手段は、ワークの状態に基づいて、プラズマ発生装置からそのワークに照射するプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御する。
【0006】
この構成によれば、ワークの状態に基づいてそのワークに照射するプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御することができるので、ワークの状態に応じてプラズマ照射の条件を変更することができる。このため、異なる状態のワークそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことができる。
【0007】
上記構成において、ワークの状態を検出する検出手段をさらに備え、制御手段は、検出手段により検出されたワークの状態に基づいてプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御することが望ましい(請求項2)。この構成によれば、検出手段によりワークの状態を検出して自動的にプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間をそのワークの状態に応じた条件に設定することができる。これにより、ワークの状態を判別する作業を行う必要がないので、ワークの状態を判別するのに要する作業負担を軽減しながら、ワークの状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことができる。
【0008】
なお、上記構成において、ワークの状態を入力するための入力手段をさらに備え、制御手段は、入力手段から入力されたワークの状態に基づいてプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御するようにしても良い(請求項3)。
【0009】
上記いずれかの構成において、制御手段は、ワークが濡れている条件において、プラズマ発生装置によるプラズマ化されたガスの照射によってそのワークの乾燥を実行させることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、プラズマ化されたガスの照射によって濡れているワークを乾燥させることができるので、ワークが自然に乾燥するのを待つのに比べて短時間でワークを乾燥させることができる。これにより、ワークが濡れている場合のワークの処理時間を短縮することができる。また、濡れているワークを乾燥させることができるので、ワーク表面に対するプラズマの照射がワークの濡れにより遮られるのを回避することができる。これにより、ワークが濡れている場合でも、プラズマ照射による処理をワークに有効に施与することができる。また、この構成によれば、プラズマ化されたガスの照射により濡れているワークの乾燥とワークへの所定の処理の施与とを同時に行うことができるので、ワークにプラズマ照射による所定の処理を施与するのとは別にワークの乾燥を行う場合と異なり、ワークの処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0010】
この場合、制御手段は、ワークが濡れている条件において、プラズマ発生装置によりワークに照射されるプラズマ化されたガスの温度を上昇させる及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間を長くすることが望ましい(請求項5)。この構成によれば、温度の上昇したプラズマ化されたガスの照射及び/または長時間のプラズマ化されたガスの照射によって、濡れているワークを十分乾燥させることができる。
【0011】
さらに、この場合、処理部は、所定のガスを加熱する加熱機構を含み、制御手段は、加熱機構を動作させて所定のガスがプラズマ発生装置に供給される前に予め加熱させることが望ましい(請求項6)。この構成によれば、加熱機構により、濡れているワークに照射するプラズマ化されたガスの温度を容易に上昇させることができる。
【0012】
上記請求項4〜6のいずれかに係る構成において、制御手段は、ワークが乾燥している条件での運転モード及びワークが濡れている条件での運転モードのいずれかを選択して処理部を動作させることが可能であり、ワークが乾燥している条件での運転モードでは、ワークが濡れている条件での運転モードに比べて、プラズマ発生装置により照射されるプラズマ化されたガスの温度が低く設定されている及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されていることが望ましい(請求項7)。この構成によれば、ワークが乾燥しているか濡れているかの状態に応じて、適切な運転モードを選択して処理部を動作させることができる。そして、ワークが乾燥している条件での運転モードでは、ワークが濡れている条件での運転モードに比べて、プラズマ発生装置により照射されるプラズマ化されたガスの温度が低く設定されている及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されているので、ワークが元々乾燥していて乾燥処理が不要な条件では、プラズマ化されたガスの温度を上昇させたりプラズマ化されたガスの照射時間を長くすることに伴って発生する消費電力の増大を抑制することができる。
【0013】
上記請求項1〜3のいずれかに係る構成において、処理部は、濡れているワークに熱風を送風して乾燥させるドライヤー装置を含み、制御手段は、ワークが濡れている条件において、ドライヤー装置を動作させてそのワークを乾燥させることが望ましい(請求項8)。この構成によれば、ドライヤー装置からの熱風によって濡れているワークを乾燥させることができるので、ワークが自然に乾燥するのを待つのに比べて短時間でワークを乾燥させることができる。これにより、ワークが濡れている場合のワークの処理時間を短縮することができる。また、濡れているワークを乾燥させることができるので、ワーク表面に対するプラズマの照射がワークの濡れにより遮られるのを回避することができる。これにより、ワークが濡れている場合でも、プラズマ照射による処理をワークに有効に施与することができる。
【0014】
この場合、制御手段は、ドライヤー装置を動作させて濡れているワークを乾燥させた後、プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせることが望ましい(請求項9)。この構成によれば、ドライヤー装置からの熱風により加熱されたワークに対してプラズマ発生装置からのプラズマ化されたガスの照射を行うことによって、ワークを冷却させると同時にそのワークにプラズマ照射による所定の処理を施与することができる。これにより、加熱されたワークを冷却する工程を別途設ける必要がないので、ワークの冷却のためにワークの処理時間が長くなるのを抑制することができる。また、ワーク処理装置の一例としての滅菌処理装置にこの構成を適用する場合には、ドライヤー装置からの熱風に含まれる雑菌がワークに付着した後にプラズマ発生装置からのプラズマ照射によりワークの滅菌を行うことができるので、濡れているワークをドライヤー装置により乾燥させる場合でも、ワークを確実に滅菌することができる。
【0015】
上記請求項1〜3のいずれかに係る構成において、制御手段は、ワークが加熱されている条件において、プラズマ発生装置によるプラズマ化されたガスの照射によってそのワークの冷却を実行させることが望ましい(請求項10)。この構成によれば、プラズマ化されたガスを照射してワークを冷却させるので、ワークが自然に冷却されるのを待つのに比べて短時間でワークを冷却させることができる。これにより、ワークが加熱されている場合のワークの処理時間を短縮することができる。また、この構成によれば、プラズマ化されたガスの照射により加熱されたワークの冷却とワークへの所定の処理の施与とを同時に行うことができるので、ワークにプラズマ照射による所定の処理を施与するのとは別にワークの冷却を行う場合と異なり、ワークの処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0016】
この場合、制御手段は、ワークが加熱されている条件において、プラズマ照射装置によりワークに照射されるプラズマ化されたガスの温度を低下させる及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間を長くすることが望ましい(請求項11)。この構成によれば、温度の低下したプラズマ化されたガスの照射及び/または長時間のプラズマ化されたガスの照射によって、加熱されているワークを十分冷却することができる。
【0017】
上記請求項10または11に係る構成において、制御手段は、ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モード及びワークが加熱されている条件での運転モードのいずれかを選択して処理部を動作させることが可能であり、ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モードでは、ワークが加熱されている条件での運転モードに比べて、プラズマ発生装置により照射されるプラズマ化されたガスの温度が高く設定されている及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されていることが望ましい(請求項12)。この構成によれば、ワークが外界温度近傍の温度であるか加熱されているかの状態に応じて、適切な運転モードを選択して処理部を動作させることができる。そして、ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モードでは、ワークが加熱されている条件での運転モードに比べて、プラズマ発生装置により照射されるプラズマ化されたガスの温度が高く設定されている及び/またはプラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されているので、ワークが元々外界温度近傍の温度であって、冷却が不要な条件では、プラズマ化されたガスの温度を低下させたりプラズマ化されたガスの照射時間を長くすることに伴って発生する消費電力の増大を抑制することができる。
【0018】
上記請求項1〜3のいずれかに係る構成において、処理部は、加熱されたワークに送風してそのワークを冷却する冷却装置を含み、制御手段は、ワークが加熱されている条件において、冷却装置を動作させてそのワークを冷却することが望ましい(請求項13)。この構成によれば、冷却装置から送風して加熱されたワークを冷却することができるので、ワークが自然に冷却されるのを待つのに比べて短時間でワークを冷却させることができる。これにより、ワークが加熱されている場合のワークの処理時間を短縮することができる。
【0019】
この場合、制御手段は、冷却装置を動作させて加熱されたワークを冷却した後、プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせることが望ましい(請求項14)。この構成をワーク処理装置の一例としての滅菌処理装置に適用する場合には、冷却装置から送風される空気中の雑菌がワークに付着した後にプラズマ発生装置からのプラズマ照射によりワークの滅菌を行うことができるので、加熱されたワークを冷却装置からの送風により冷却する場合でも、ワークを確実に滅菌することができる。
【0020】
上記請求項10〜14のいずれかに係る構成において、ワークを高圧蒸気に曝して滅菌処理を行う高圧蒸気滅菌装置をさらに備えていることが望ましい(請求項15)。この構成によれば、プラズマ発生装置からのプラズマ照射によるワークの滅菌処理に加えて、高圧蒸気滅菌装置によりワークの高圧蒸気滅菌を行うことができるので、ワークの滅菌処理をより確実に行うことができる。
【0021】
この場合、制御手段は、高圧蒸気滅菌装置を動作させて高圧蒸気によるワークの滅菌処理を行わせた後、プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせることが望ましい(請求項16)。この構成によれば、高圧蒸気により加熱されたワークに対してプラズマ発生装置からプラズマ化されたガスを照射することができるので、高圧蒸気で加熱されたワークを容易に冷却することができる。また、この構成によれば、高圧蒸気による滅菌処理後、プラズマ滅菌処理を行いながらワークを冷却することができる。これにより、高圧蒸気滅菌処理後、ワークの滅菌状態を確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によるワーク処理装置では、異なる状態のワークそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプラズマ照射を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明では、本発明に係るワーク処理装置の一例として、滅菌処理装置を例にとって説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る滅菌処理装置Sの全体構成を示す斜視図である。この滅菌処理装置Sは、筐体500と、扉部501と、操作部502と、制御ユニットCU(制御手段)と、滅菌処理ユニットSU(処理部)とを備えている。
【0025】
筐体500は、箱型構造を有しており、その前面側に円形の開口部500aが設けられている。この開口部500aを介して処理対象であるワークWを後述する滅菌処理ユニットSUのチャンバー510内に出し入れ可能となっている。なお、処理対象であるワークWとしては、メス等の医療機器が例示される。
【0026】
扉部501は、筐体500の前面側にヒンジ部501aを介して回動可能に取り付けられている。この扉部501によって筐体500の開口部500aが開閉可能となっている。操作部502は、筐体500の前面側の開口部500aに隣接した位置に設置されており、滅菌処理装置Sの各部の動作に関する設定や処理条件に関する設定、電源のON−OFF等の操作が行えるようになっている。この操作部502において所定の操作が行われると、それに応じた操作信号が操作部502から制御ユニットCUに入力されるようになっている。
【0027】
制御ユニットCU(制御手段)は、筐体500内に収容されており、滅菌処理装置Sにおける各種制御、特に滅菌処理ユニットSUの動作制御を行う。この動作制御は、制御ユニットCUが上記操作部502からの操作信号や後述するセンサー部530からの検出信号を受け取り、それに基づいて滅菌処理ユニットSUの各部へ制御信号を送信することによって行われる。なお、制御ユニットCUは、CPU(中央演算処理装置)を備えており、このCPUがそのような制御処理を担当している。
【0028】
滅菌処理ユニットSUも制御ユニットCUと同様、筐体500内に収容されている。この滅菌処理ユニットSUは、ワークWに対してプラズマ照射による滅菌処理を施与するためのものである。この第1実施形態では、ワークWが乾燥しているかまたは水等で濡れているかに応じて、上記制御ユニットCUが滅菌処理ユニットSUをそれぞれ異なる運転モードで動作させるようになっている。すなわち、制御ユニットCUは、ワークWが乾燥している条件ではプラズマ照射によるワークWの滅菌処理を行う第1運転モードで滅菌処理ユニットSUを動作させる一方、ワークWが濡れている条件ではワークWの乾燥とプラズマ照射による滅菌処理とを行う第2運転モードで滅菌処理ユニットSUを動作させる。
【0029】
図2は、滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。この滅菌処理ユニットSUは、チャンバー510と、加熱装置520と、センサー部530(検出手段)と、一対のプラズマ発生ユニットPU,PU(プラズマ発生装置)とを含んでいる。
【0030】
チャンバー510は、上記筐体500の開口部500aとほぼ同径の有底の円筒形状に構成されている。このチャンバー510は、ワークWに対して滅菌処理等を施与するための処理室としての機能を有している。チャンバー510の軸方向における一方の端部は側壁部510aによって遮蔽されており、他方の端部に位置する側面はその全面が開口されている。これによって、この他方の端部に筐体500の開口部500aと略等しい径を有する円形の開口部510bが形成されている。そして、開口部510bは、筐体500の開口部500aに嵌め合わされている。これにより、筐体500の開口部500a及びチャンバー510の開口部510bを介してチャンバー510内にワークWを導入することが可能となっている。
【0031】
加熱装置520は、プラズマ発生ユニットPUの後述するプラズマ発生ノズル31に供給される処理ガスを加熱するためのものである。プラズマ発生ノズル31には、処理ガスを供給するためのガス供給管521が加熱装置520を介して接続されており、処理ガスは加熱装置520を経由してプラズマ発生ノズル31に供給されるようになっている。そして、加熱装置520はヒーター等の加熱手段を内蔵しており、処理ガスをプラズマ発生ノズル31に供給する前に予め加熱することが可能とされている。なお、この加熱装置520は、制御ユニットCUからの制御信号により駆動状態と非駆動状態とに切替可能に構成されている。このため、加熱装置520では、処理ガスを加熱してプラズマ発生ノズル31に供給するかまたは処理ガスを加熱しないでそのままプラズマ発生ノズル31に供給するかを必要に応じて切り替えることができる。また、加熱装置520では、制御ユニットCUからの制御信号により処理ガスの加熱温度の調節も可能となっている。
【0032】
センサー部530(検出手段)は、チャンバー510内に取り付けられており、チャンバー510内に設置された処理対象であるワークWが乾燥しているか水等の液体により濡れているかを検出する機能を有している。このセンサー部530は、制御ユニットCUに電気的に接続されている。そして、センサー部530は、ワークWが乾燥しているか濡れているかを検出するとともに、そのワークWの状態に応じた所定の検出信号を制御ユニットCUへ送信するように構成されている。
【0033】
一対のプラズマ発生ユニットPU,PU(プラズマ発生装置)は、チャンバー510の軸方向に直交する方向においてチャンバー510を挟んで相対する位置に設けられている。また、一対のプラズマ発生ユニットPU,PUは、両方とも同じ構造に構成されており、チャンバー510の軸を中心として互いに対称形となる向きでそれぞれ配置されている。このプラズマ発生ユニットPUは、処理ガスをプラズマ化して放出し、そのプラズマ化されたガスをチャンバー510内に設置されたワークWに照射するように構成されている。
【0034】
図3は、プラズマ発生ユニットPUの全体構成を示す斜視図、図4は、図3とは視線方向を異ならせたプラズマ発生ユニットPUの斜視図、図5はプラズマ発生ユニットPUの一部透視側面図である。なお、図3〜図5において、X−X方向を前後方向、Y−Y方向を左右方向、Z−Z方向を上下方向というものとし、−X方向を前方向、+X方向を後方向、−Yを左方向、+Y方向を右方向、−Z方向を下方向、+Z方向を上方向として説明する。
【0035】
プラズマ発生ユニットPUは、マイクロ波を利用し常温常圧でのプラズマ発生が可能なユニットであって、大略的に、マイクロ波を伝搬させる導波管10、この導波管10の一端側(左側)に配置され所定波長のマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置20、導波管10に設けられたプラズマ発生部30、導波管10の他端側(右側)に配置されマイクロ波を反射させるスライディングショート40、導波管10に放出されたマイクロ波のうち反射マイクロ波がマイクロ波発生装置20に戻らないよう分離するサーキュレータ50、サーキュレータ50で分離された反射マイクロ波を吸収するダミーロード60及びインピーダンス整合を行うスタブチューナ70を備えて構成されている。
【0036】
導波管10は、例えば非磁性金属(アルミニウム等)からなり、断面矩形の長尺管状を呈し、マイクロ波発生装置20により発生されたマイクロ波をプラズマ発生部30へ向けて、その長手方向に伝搬させるものである。導波管10は、分割された複数の導波管ピースが互いのフランジ部同士で連結された連結体で構成されており、一端側から順に、マイクロ波発生装置20が搭載される第1導波管ピース11、スタブチューナ70が組み付けられる第2導波管ピース12及びプラズマ発生部30が設けられている第3導波管ピース13が連結されてなる。なお、第1導波管ピース11と第2導波管ピース12との間にはサーキュレータ50が介在され、第3導波管ピース13の他端側にはスライディングショート40が連結されている。
【0037】
また、第1導波管ピース11、第2導波管ピース12及び第3導波管ピース13は、それぞれ金属平板からなる上面板、下面板及び2枚の側面板を用いて角筒状に組み立てられ、その両端にフランジ板が取り付けられて構成されている。なお、このような平板の組み立てによらず、押し出し成形や板状部材の折り曲げ加工等により形成された矩形導波管ピース若しくは非分割型の導波管を用いるようにしても良い。また、断面矩形の導波管に限らず、例えば断面楕円の導波管を用いることも可能である。さらに、非磁性金属に限らず、導波作用を有する各種の部材で導波管を構成することができる。
【0038】
マイクロ波発生装置20は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等のマイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源にて発生されたマイクロ波の強度を所定の出力強度に調整するアンプとを具備する装置本体部21と、装置本体部21で発生されたマイクロ波を導波管10の内部へ放出するマイクロ波送信アンテナ22とを備えて構成されている。本実施形態に係るプラズマ発生ユニットPUでは、例えば1W〜3kWのマイクロ波エネルギーを出力できる連続可変型のマイクロ波発生装置20が好適に用いられる。
【0039】
図5に示すようにマイクロ波発生装置20は、装置本体部21からマイクロ波送信アンテナ22が突設された形態のものであり、第1導波管ピース11に載置される態様で固定されている。詳しくは、装置本体部21が第1導波管ピース11の上面板11Uに載置され、マイクロ波送信アンテナ22が上面板11Uに穿設された貫通孔111を通して第1導波管ピース11内部の導波空間110に突出する態様で固定されている。このように構成されることで、マイクロ波送信アンテナ22から放出された例えば2.45GHzのマイクロ波は、導波管10により、その一端側(左側)から他端側(右側)に向けて伝搬される。
【0040】
プラズマ発生部30は、第3導波管ピース13の下面板13B(矩形導波管の一つの側面;処理対象ワークとの対向面)に、左右方向へ一列に整列して突設された8個のプラズマ発生ノズル31を具備して構成されている。各プラズマ発生ノズル31は、図2に示すように、その先端側の所定領域がチャンバー510の円筒状外周壁に設けられた図略の貫通孔を介してチャンバー510内に突出するように設けられている。なお、8個のプラズマ発生ノズル31の配列間隔は、導波管10内を伝搬させるマイクロ波の波長λGに応じて定めることが望ましい。例えば、波長λGの1/2ピッチ、1/4ピッチでプラズマ発生ノズル31を配列することが望ましく、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合は、λG=230mmであるので、115mm(λG/2)ピッチ、或いは57.5mm(λG/4)ピッチでプラズマ発生ノズル31を配列すれば良い。
【0041】
図6は、プラズマ発生ノズル31を拡大して示す側面図、図7は、図5のA−A線側断面図である。プラズマ発生ノズル31は、中心導電体32、ノズル本体33、ノズルホルダ34、シール部材35及び管継手36を含んで構成されている。
【0042】
中心導電体32は、良導電性の金属から構成された棒状部材からなり、その上端部321の側が第3導波管ピース13の下面板13Bを貫通して導波空間130に所定長さだけ突出(この突出部分を受信アンテナ部320という)する一方で、下端部322がノズル本体33の下端縁331と略面一になるように、上下方向に配置されている。この中心導電体32には、受信アンテナ部320が導波管10内を伝搬するマイクロ波を受信することで、マイクロ波エネルギー(マイクロ波電力)が与えられるようになっている。当該中心導電体32は、長さ方向略中間部において、シール部材35により保持されている。
【0043】
ノズル本体33は、良導電性の金属から構成され、中心導電体32を収納する下部筒状空間332と、シール部材35を保持する上部筒状空間333とを有する筒状体である。また、ノズルホルダ34も良導電性の金属から構成され、ノズル本体33を保持する保持空間341を有する筒状体である。一方、シール部材35は、テフロン(登録商標)等の耐熱性樹脂材料やセラミック等からなる絶縁性部材からなり、前記中心導電体32を固定的に保持する保持孔351をその中心軸上に備える筒状体からなる。
【0044】
ノズル本体33は、上方から順に、ノズルホルダ34の保持空間341に嵌合される上側胴部33Uと、後述するガスシールリング37を保持するための環状凹部33Sと、環状に突設されたフランジ部33Fとを具備している。また、上側胴部33Uには、所定の処理ガスを前記下部筒状空間332へ供給させるための一対の連通孔334,334が穿孔されている。一対の連通孔334,334は、それぞれ上側胴部33Uの外周の相対する位置に設けられている。
【0045】
このノズル本体33は、中心導電体32の周囲に配置された外部導電体として機能するもので、中心導電体32は所定の環状空間H(絶縁間隔)が周囲に確保された状態で下部筒状空間332の中心軸上に挿通されている。ノズル本体33は、上側胴部33Uの外周部がノズルホルダ34の保持空間341の内周壁と接触し、またフランジ部33Fの上端面がノズルホルダ34の下端縁343と接触するようにノズルホルダ34に嵌合されている。なお、ノズル本体33は、例えばプランジャやセットビス等を用いて、ノズルホルダ34に対して着脱自在な固定構造で装着されることが望ましい。
【0046】
ノズルホルダ34は、第3導波管ピース13の下面板13Bに穿孔された貫通孔131に密嵌合される上側胴部34Uと、下面板13Bから下方向に延出する下側胴部34Bとを備えている。下側胴部34Bの外周には、処理ガスを前記環状空間Hに供給するための一対のガス供給孔344,344が穿孔されている。この一対のガス供給孔344,344は、それぞれ下側胴部34Bの外周の相対する位置に設けられている。そして、このガス供給孔344,344には、所定の処理ガスを供給するガス供給管521の終端部が接続するための上記管継手36がそれぞれ取り付けられている。かかるガス供給孔344と、ノズル本体33の連通孔334とは、ノズル本体33がノズルホルダ34へ定位置嵌合された場合に互いに連通状態となるように、各々位置設定されている。なお、ガス供給孔344と連通孔334との突き合わせ部からのガス漏洩を抑止するために、ノズル本体33とノズルホルダ34との間にはガスシールリング37が介在されている。
【0047】
シール部材35は、その下端縁352がノズル本体33の上部筒状空間333の底面部335と当接し、その上端縁353がノズルホルダ34の上端係止部345と当接する態様で、ノズル本体33の上部筒状空間333に保持されている。すなわち、上部筒状空間333に中心導電体32を支持した状態のシール部材35が嵌合されるとともに、そのシール部材35がノズルホルダ34の上端係止部345と上部筒状空間333の底面部335とで上下から挟持されるようにして組み付けられている。
【0048】
プラズマ発生ノズル31は上記のように構成されている結果、ノズル本体33、ノズルホルダ34及び第3導波管ピース13(導波管10)は導通状態(同電位)とされている一方で、中心導電体32は絶縁性のシール部材35で支持されていることから、これらの部材とは電気的に絶縁されている。従って、図8に示すように、導波管10がアース電位とされた状態で、中心導電体32の受信アンテナ部320でマイクロ波が受信され中心導電体32にマイクロ波電力が給電されると、その下端部322及びノズル本体33の下端縁331の近傍に電界集中部が形成されるようになる。
【0049】
かかる状態で、ガス供給管521から管継手36、ガス供給孔344及び連通孔334を介して酸素ガスや空気のような酸素系の処理ガスが環状空間Hへ供給されると、前記マイクロ波電力により処理ガスが励起されて中心導電体32の下端部322付近においてプラズマ(電離気体)が発生する。このプラズマは、電子温度が数万度であるものの、ガス温度は外界温度に近い反応性プラズマ(中性分子が示すガス温度に比較して、電子が示す電子温度が極めて高い状態のプラズマ)であって、常圧下で発生するプラズマである。
【0050】
このようにしてプラズマ化された処理ガスは、上記のように供給される処理ガスのガス流によりプルームPとしてノズル本体33の下端縁331から放射される。このプルームPにはラジカルが含まれ、処理ガスとして酸素系ガスを使用すると酸素ラジカルが生成されることとなり、滅菌作用を有するプルームPとすることができる。本実施形態に係るプラズマ発生ユニットPUでは、プラズマ発生ノズル31が複数個配列されていることから、左右方向に延びるライン状のプルームPを発生させることが可能となる。そして、このプルームPをチャンバー510内に設置されたワークWに照射することによってワークWの滅菌処理が行われる。
【0051】
また、この第1実施形態による滅菌処理装置Sでは、プルームPを照射することによって濡れているワークWの乾燥も行うように構成されている。すなわち、チャンバー510内に設置されたワークWが濡れている場合に実行される上記第2運転モードにおいて、プルームPの照射時に吹き付けられるガス流によって濡れているワークWが乾燥する。これにより、第1実施形態では、第2運転モードにおいてワークWの乾燥とプラズマ照射による滅菌処理とが同時に行えるようになっている。したがって、第2運転モードでは濡れているワークWの乾燥を行う必要があるが、ワークWが乾燥している場合に実行される上記第1運転モードと同じくワークWへのプルームPの照射のみが行われる。
【0052】
但し、第2運転モードでは、制御ユニットCUからの制御信号によってプルームPの照射時間が第1運転モードにおけるプルームPの照射時間よりも長くなるように滅菌処理ユニットSUが制御される。この制御は、プラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31への処理ガスの供給時間及びマイクロ波の供給時間を調節することによって行われる。第2運転モードでは、このような長時間のプルームPの照射により、濡れているワークWを十分に乾燥できるようになっている。
【0053】
スライディングショート40は、各々のプラズマ発生ノズル31に備えられている中心導電体32と、導波管10の内部を伝搬されるマイクロ波との結合状態を最適化するために備えられているもので、マイクロ波の反射位置を変化させて定在波パターンを調整可能とするべく第3導波管ピース13の右側端部に連結されている。従って、定在波を利用しない場合は、当該スライディングショート40に代えて、電波吸収作用を有するダミーロードが取り付けられる。
【0054】
図9は、スライディングショート40の内部構造を示す透視斜視図である。図9に示すように、スライディングショート40は、導波管10と同様な断面矩形の筐体構造を備えており、導波管10と同じ材料で構成された中空空間410を有する筐体部41と、前記中空空間410内に収納された円柱状の反射ブロック42と、反射ブロック42の基端部に一体的に取り付けられ前記中空空間410内を左右方向に摺動する矩形ブロック43と、この矩形ブロック43に組み付けられた移動機構44と、反射ブロック42にシャフト45を介して直結されている調整ノブ46とが備えられている。
【0055】
反射ブロック42は、マイクロ波の反射面となる先端面421が第3導波管ピース13の導波空間130に対向するよう左右方向に延在する円柱体である。この反射ブロック42は、矩形ブロック43と同様な角柱状を呈していても良い。前記移動機構44は、調整ノブ46の回転操作により矩形ブロック43及びこれと一体化された反射ブロック42を左右方向に推進若しくは後退させる機構であって、調整ノブ46を回転させることで反射ブロック42が中空空間410内において矩形ブロック43にてガイドされつつ左右方向に移動可能とされている。かかる反射ブロック42の移動による先端面421の位置調整によって、定在波パターンが最適化される。なお、調整ノブ46の回転操作を、ステッピングモータ等を用いて自動化することが望ましい。
【0056】
サーキュレータ50は、例えばフェライト柱を内蔵する導波管型の3ポートサーキュレータからなり、一旦はプラズマ発生部30へ向けて伝搬されたマイクロ波のうち、プラズマ発生部30で電力消費されずに戻って来る反射マイクロ波を、マイクロ波発生装置20に戻さずダミーロード60へ向かわせるものである。このようなサーキュレータ50を配置することで、マイクロ波発生装置20が反射マイクロ波によって過熱状態となることが防止される。
【0057】
図10は、サーキュレータ50の作用を説明するためのプラズマ発生ユニットPUの上面図である。図示するように、サーキュレータ50の第1ポート51には第1導波管ピース11が、第2ポート52には第2導波管ピース12が、さらに第3ポート53にはダミーロード60がそれぞれ接続されている。そして、マイクロ波発生装置20のマイクロ波送信アンテナ22から発生されたマイクロ波は、矢印aで示すように第1ポート51から第2ポート52を経由して第2導波管ピース12へ向かう。一方、第2導波管ピース12側から入射する反射マイクロ波は、矢印bで示すように、第2ポート52から第3ポートへ向かうよう偏向され、ダミーロード60へ入射される。
【0058】
ダミーロード60は、上述の反射マイクロ波を吸収して熱に変換する水冷型(空冷型でも良い)の電波吸収体である。このダミーロード60には、冷却水を内部に流通させるための冷却水流通口61が設けられており、反射マイクロ波を熱変換することにより発生した熱が前記冷却水に熱交換されるようになっている。
【0059】
スタブチューナ70は、導波管10とプラズマ発生ノズル31とのインピーダンス整合を図るためのもので、第2導波管ピース12の上面板12Uに所定間隔を置いて直列配置された3つのスタブチューナユニット70A〜70Cを備えている。図11は、スタブチューナ70の設置状況を示す透視側面図である。図示するように、3つのスタブチューナユニット70A〜70Cは同一構造を備えており、第2導波管ピース12の導波空間120に突出するスタブ71と、該スタブ71に直結された操作棒72と、スタブ71を上下方向に出没動作させるための移動機構73と、これら機構を保持する外套74とから構成されている。
【0060】
スタブチューナユニット70A〜70Cに各々備えられているスタブ71は、その導波空間120への突出長が各操作棒72により独立して調整可能とされている。これらスタブ71の突出長は、例えばマイクロ波電力パワーをモニターしつつ、中心導電体32による消費電力が最大となるポイント(反射マイクロ波が最小になるポイント)を探索することで決定される。なお、このようなインピーダンス整合は、必要に応じてスライディングショート40と連動させて実行される。このスタブチューナ70の操作も、ステッピングモータ等を用いて自動化することが望ましい。
【0061】
次に、第1実施形態に係る滅菌処理装置Sの電気的構成について説明する。図12は、滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。この制御系90は、上記制御ユニットCU(制御手段)に含まれるCPU(中央演算処理装置)等からなり、機能的にマイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92、ガス温度制御部93及び全体制御部94が備えられている。さらに、全体制御部94に対して上記操作部502から所定の操作信号が与えられるとともに、センサー部530から所定の検出信号が与えられるように構成されている。
【0062】
マイクロ波出力制御部91は、マイクロ波発生装置20から出力されるマイクロ波のON−OFF制御、出力強度制御を行うもので、所定のパルス信号を生成してマイクロ波発生装置20の装置本体部21によるマイクロ波発生の動作制御を行う。
【0063】
ガス流量制御部92は、プラズマ発生部30の各プラズマ発生ノズル31へ供給する処理ガスの流量制御を行うものである。具体的には、ガスボンベ等の処理ガス供給源921とプラズマ発生ノズル31との間を接続するガス供給管521に設けられた流量制御弁923の開閉制御乃至は開度調整を行う。
【0064】
ガス温度制御部93は、プラズマ発生部30の各プラズマ発生ノズル31へ供給する処理ガスの温度制御を行うものである。具体的には、ガス供給管521の流量調節弁923とプラズマ発生ノズル31との間に位置する部分に設置された加熱装置520の動作制御、すなわち、加熱装置520の駆動及び非駆動の切り替えや加熱装置520による処理ガスの加熱温度の調節等を行う。
【0065】
全体制御部94は、当該滅菌処理装置Sの全体的な動作制御を司るもので、操作部502から与えられる操作信号及びセンサー部530から与えられる検出信号に応じて、上記マイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92及びガス温度制御部93を、所定のシーケンスに基づいて動作制御する。すなわち、センサー部530から与えられる検出信号に応じた第1運転モードまたは第2運転モードを選択し、各運転モードに対応する予め与えられた制御プログラムに基づいて、所定流量の処理ガスを各プラズマ発生ノズル31へ所定時間供給させつつマイクロ波電力を与えてプルームPを発生させ、ワークWの表面にプルームPを放射させるものである。これにより、第1運転モードではワークWのプラズマ滅菌処理が、第2運転モードでは濡れているワークWの乾燥とワークWのプラズマ滅菌処理とがそれぞれ行われる。
【0066】
そして、この際の制御系90における具体的な制御プロセスとしては、まず、センサー部530がチャンバー510内に設置されたワークWが乾燥しているか濡れているかを検出し、ワークWが乾燥している場合と濡れている場合とでそれぞれ異なる検出信号を全体制御部94へ送信する。これにより、全体制御部94は、その検出信号に対応する滅菌処理ユニットSUの運転モードを選択する。すなわち、全体制御部94は、ワークWが乾燥していることを検出した検出信号を受け取った場合は第1運転モードを選択する一方、ワークWが濡れていることを検出した検出信号を受け取った場合は第2運転モードを選択する。
【0067】
第1運転モードが選択された場合は、全体制御部94がその第1運転モードに対応したマイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92及びガス温度制御部93の制御を実行する。これにより、ガス流量制御部92は、流量制御弁923を制御して所定流量の処理ガスを各プラズマ発生ノズル31へ所定時間供給させるとともに、マイクロ波出力制御部91は、プラズマ発生ユニットPUの各部を制御してプラズマ発生ノズル31にマイクロ波電力を与えてワークWにプルームPを照射させる。この際、ガス温度制御部93は加熱装置520を駆動させないように制御し、処理ガスは加熱装置520により加熱されることなくプラズマ発生ノズル31に供給される。したがって、プラズマ発生ノズル31からは外界温度に近いガス温度のプルームPがワークWに照射される。
【0068】
一方、第2運転モードが選択された場合も、上記第1運転モードと同様の制御プロセスでワークWへのプルームPの照射が実行される。但し、第2運転モードでは、ガス流量制御部92により処理ガスの供給時間が第1運転モードの場合よりも長くなるように流量制御弁923が制御されるとともに、マイクロ波出力制御部91によってその処理ガスの供給時間に応じた時間、マイクロ波電力がプラズマ発生ノズル31に与えられるようにプラズマ発生ユニットPUが制御される。これにより、第2運転モードが選択された場合は、第1運転モードが選択された場合に比べてワークWにプルームPが長時間照射される。
【0069】
さらに、第2運転モードが選択された場合には、ガス温度制御部93により加熱装置520が駆動される。これにより、加熱装置520により処理ガスが予め加熱されてからプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31に供給される。このため、第2運転モードにおいてプラズマ発生ノズル31から濡れているワークWに照射されるプルームPのガス温度が上昇し、それによってワークWの乾燥が速められる。
【0070】
このように、第1実施形態では、制御ユニットCUの制御系90により、ワークWが乾燥している条件では第1運転モードが選択され、プラズマ発生ユニットPUから照射されるプルームPのガス温度が第2運転モードよりも低い温度(外界温度近傍の温度)に設定されるとともに、プルームPの照射時間が第2運転モードよりも短い時間に設定される一方、ワークWが濡れている条件では第2運転モードが選択され、プラズマ発生ユニットPUから照射されるプルームPのガス温度が第1運転モードよりも高い温度に設定されるとともに、プルームPの照射時間が第1運転モードよりも長い時間に設定される。
【0071】
なお、第2運転モードが選択された場合、最初にマイクロ波出力制御部91がプラズマ発生ユニットPUをプラズマ発生ノズル31にマイクロ波電力を与えないように制御することによって、処理ガスをプラズマ発生ノズル31でプラズマ化させることなく濡れているワークWに所定時間照射して乾燥させ、その後、処理ガスをプラズマ発生ユニットPUによりプラズマ化して乾燥したワークWに照射させるようにしても良い。この場合には、第2運転モードにおいて濡れているワークWを乾燥させる期間は処理ガスをプラズマ化させる必要がなく、その分プラズマ発生ユニットPUにおけるプラズマ化に要する消費電力が抑制される。なお、このようにプラズマ発生ユニットPUにおいて処理ガスをプラズマ化させないで濡れているワークWに照射する場合にも、ガス温度制御部93により加熱装置520を駆動させて処理ガスを予め加熱すれば、ワークWの乾燥を速めることができる。
【0072】
以上説明した第1実施形態の滅菌処理装置Sによれば、制御ユニットCUの制御系90は、ワークWが乾燥しているか濡れているかの状態に基づいて、プラズマ発生ユニットPUから照射するプルームPのガス温度及びプルームPの照射時間が異なる第1運転モードまたは第2運転モードを選択して滅菌処理ユニットSUの動作制御を行うので、異なる状態のワークWそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプルームPを照射することができる。
【0073】
また、制御ユニットCUの制御系90は、センサー部530がワークWが乾燥しているか濡れているかを検出した検出信号に基づいて第1運転モードまたは第2運転モードを実行するようになっているので、センサー部530によりワークWの状態を検出して自動的にそのワークWの状態に応じた第1運転モードまたは第2運転モードを選択し、プルームPのガス温度及び照射時間をそのワークWの状態に応じた条件に設定することができる。これにより、ワークWの状態を判別する作業を行う必要がないので、ワークWの状態の判別に要する作業負担を軽減しながら、ワークWの状態に応じた適切な条件でプルームPの照射を行うことができる。
【0074】
また、第2運転モードにおいて、濡れているワークWの乾燥をプラズマ発生ユニットPUによるプルームPの照射によって実行させているので、ワークWが自然に乾燥するのを待つのに比べて短時間でワークWを乾燥させることができる。これにより、ワークWが濡れている場合のワークWの処理時間を短縮することができる。
【0075】
また、第2運転モードにおいて、濡れているワークWを乾燥させることができるので、ワークWの表面に対するプラズマの照射がワークWの濡れにより遮られるのを回避することができる。これにより、ワークWが濡れている場合でも、プルームPの照射による滅菌処理をワークWに有効に施与することができる。
【0076】
また、第2運転モードにおいて、プルームPの照射により濡れているワークWの乾燥とワークWのプラズマ滅菌処理とを同時に行うことができるので、ワークWにプラズマ滅菌処理を施与するのとは別にワークWの乾燥を行う場合と異なり、ワークWの処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0077】
また、第2運転モードでは、濡れているワークWに照射されるプルームPのガス温度を上昇させるとともに、プルームPの照射時間を長くしているので、ガス温度の上昇したプルームPを長時間照射することによって、濡れているワークWを十分に乾燥させることができる。
【0078】
また、第1運転モードでは、第2運転モードに比べて、プラズマ発生ユニットPUにより照射されるプルームPのガス温度が低く設定されているとともに、プルームPの照射時間が短く設定されているので、ワークが元々乾燥していて乾燥処理が不要な条件では、プルームPのガス温度を上昇させたりプルームPの照射時間を長くすることに伴って発生する消費電力の増大を抑制することができる。
【0079】
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。この第2実施形態に係る滅菌処理装置Sでは、上記第1実施形態と異なり、第2運転モードにおいてドライヤー装置550を用いて濡れているワークWの乾燥を行うようになっている。
【0080】
具体的には、この第2実施形態に係る滅菌処理装置Sの滅菌処理ユニットSUは、チャンバー510の軸方向一方端側の側壁部510aに取り付けられたドライヤー装置550を備えている。ドライヤー装置550は熱風を送風する機能を有しており、チャンバー510の側壁部510aに設けられた吹込口510cを介して、ドライヤー装置550からの熱風がチャンバー510内に導入されるようになっている。そして、この熱風により、チャンバー510内に設置された濡れているワークWの乾燥が行われる。なお、この第2実施形態による滅菌処理装置Sでは、上記第1実施形態による滅菌処理装置Sと異なり、加熱装置520(図2参照)は備えておらず、プラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31には処理ガスが加熱されることなくそのまま供給されるようになっている。
【0081】
図14は、第2実施形態に係る滅菌処理装置Sの電気的構成を示した図である。この第2実施形態による制御系90は、ドライヤー装置制御部96を備えており、このドライヤー装置制御部96からドライヤー装置550に制御信号が送信されることによりドライヤー装置550の駆動及び非駆動の切替やドライヤー装置550から送風される熱風の温度調節等の各種制御が行われるようになっている。なお、この第2実施形態では、制御系90は上記第1実施形態による処理ガスの温度を調節するためのガス温度制御部93(図12参照)を備えていない。
【0082】
そして、この第2実施形態では、センサー部530によりワークWが濡れていることが検出された場合の検出信号に応答して全体制御部94が第2運転モードを選択すると、ドライヤー装置制御部96から送信される制御信号によりドライヤー装置550が駆動する。これにより、ドライヤー装置550からチャンバー510内に熱風が送風され、その結果、濡れているワークWが乾燥する。そして、この後、上記第1実施形態と同様にしてプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31からワークWへプルームPの照射が行われる。なお、センサー部530によりワークWが乾燥していることが検出された場合には、そのときのセンサー部530から送信される検出信号に応答して全体制御部94は第1運転モードを選択し、上記第1実施形態と同様にしてワークWへプルームPの照射が行われる。そして、このように第1運転モードが選択された場合はワークWの乾燥は不要であるので、ドライヤー装置制御部96によりドライヤー装置550が駆動しないように制御される。
【0083】
第2実施形態による滅菌処理装置Sの上記以外の構成は、上記第1実施形態による滅菌処理装置Sの構成と同様である。
【0084】
以上説明したように第2実施形態による滅菌処理装置Sでは、制御ユニットCUのドライヤー装置制御部96が、第2運転モードにおいてドライヤー装置550を動作させて濡れているワークWを乾燥させるので、ワークWが自然に乾燥するのを待つのに比べて短時間でワークWを乾燥させることができる。これにより、ワークWが濡れている場合のワークの処理時間を短縮することができる。
【0085】
また、制御ユニットCUの制御系90が、第2運転モードにおいてドライヤー装置550を動作させて濡れているワークWを乾燥させた後、プラズマ発生ユニットPUにワークWへのプルームPの照射を行わせるように制御するので、ドライヤー装置550からの熱風により加熱されたワークWに対してプラズマ発生ユニットPUからの外界温度に近いガス温度を有するプルームPを照射することによって、ワークWを冷却させると同時にそのワークWにプルームPの照射による滅菌処理を施与することができる。これにより、加熱されたワークWを冷却する工程を別途設ける必要がないので、ワークWの冷却のためにワークWの処理時間が長くなるのを抑制することができる。
【0086】
また、第2運転モードにおいて濡れているワークWをドライヤー装置550からの熱風によって乾燥させた後、そのワークWにプルームPの照射を行うことによって、ドライヤー装置550からの熱風に含まれる雑菌がワークWに付着した後にプルームPによるワークWの滅菌を行うことができるので、第2運転モードにおいて濡れているワークWをドライヤー装置550により乾燥させる場合でも、ワークWを確実に滅菌することができる。
【0087】
また、制御ユニットCUのドライヤー装置制御部96が、第2運転モードにおいてドライヤー装置550を動作させる一方、第1運転モードにおいてドライヤー装置550を動作させないように制御するので、ワークWの乾燥処理が不要な第1運転モードではドライヤー装置550の動作に要する消費電力を抑制することができる。
【0088】
第2実施形態による上記以外の効果は、上記第1実施形態による効果と同様である。
【0089】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。この第3実施形態に係る滅菌処理装置Sでは、上記第1及び第2実施形態と異なり、高圧蒸気滅菌装置600によりワークWの高圧蒸気滅菌処理が行われるとともに、高圧蒸気によって加熱されたワークWがプラズマ発生ユニットPUからのプルームPの照射によって冷却されるように構成されている。
【0090】
具体的には、この第3実施形態に係る滅菌処理装置Sの滅菌処理ユニットSUは、高圧蒸気滅菌装置600と、処理ガス冷却器610とを備えている。高圧蒸気滅菌装置600は、チャンバー510の側壁部510aに取り付けられている。この高圧蒸気滅菌装置600は、チャンバー510の側壁部510aに設けられた吹込口510cを介してチャンバー510内に高圧蒸気を送り込み、チャンバー510内に設置されたワークWを高圧蒸気に曝して滅菌処理を行う機能を有する。この高圧蒸気滅菌装置600は、制御ユニットCU(図1参照)からの制御信号により駆動状態と非駆動状態とに切替可能に構成されている。
【0091】
また、処理ガス冷却器610は、プラズマ発生ノズル31に供給される処理ガスを冷却するためのものである。プラズマ発生ノズル31には、ガス供給管521が処理ガス冷却器610を介して接続されており、処理ガスが処理ガス冷却器610を経由してプラズマ発生ノズル31に供給されるようになっている。これにより、処理ガスをプラズマ発生ノズル31に供給する前に予め冷却することが可能とされている。なお、処理ガス冷却器610は、制御ユニットCU(図1参照)からの制御信号により駆動状態と非駆動状態とに切替可能に構成されている。このため、処理ガス冷却器610では、処理ガスを冷却してプラズマ発生ノズル31に供給するかまたは処理ガスを冷却しないでそのままプラズマ発生ノズル31に供給するかを必要に応じて切り替えることができる。また、処理ガス冷却器610では、制御ユニットCU(図1参照)からの制御信号により処理ガスの冷却温度の調節も可能となっている。
【0092】
また、この第3実施形態では、センサー部530(検出手段)がワークWの温度を検出することによって、ワークWが加熱されている状態かまたは外界温度近傍の温度であるかを検出するように構成されている。そして、センサー部530は、ワークWが加熱されているか外界温度近傍の温度であるかを検出するとともに、そのワークWの状態に応じた検出信号を制御ユニットCU(図1参照)へ送信する。
【0093】
また、この第3実施形態においても、上記第1及び第2実施形態と同様、制御ユニットCU(図1参照)が第1運転モード及び第2運転モードのいずれかの運転モードを選択して滅菌処理ユニットSUを動作させるように構成されている。ただし、この第3実施形態では、上記第1及び第2実施形態と異なり、第1運転モードはワークWが外界温度近傍の温度である条件での運転モードであり、通常のプルームPの照射によるワークWの滅菌処理が行われる。また、第2運転モードはワークWが加熱されている条件での運転モードであり、ワークWの冷却とプルームPの照射による滅菌処理とが行われる。高圧蒸気滅菌処理後には、ワークWが加熱されているので、制御ユニットCUにより第2運転モードが選択されて滅菌処理ユニットSUが第2運転モードで動作する。
【0094】
そして、第2運転モードでは、プルームPの照射により加熱状態のワークWの冷却を行うように構成されている。すなわち、第2運転モードでは、上記処理ガス冷却器610により冷却された処理ガスがプラズマ発生ノズル31に供給され、それに伴って、プラズマ発生ノズル31から低いガス温度のプルームPが照射される。この低温のプルームPが照射されることによって加熱状態のワークWが冷却される。これにより、この第3実施形態では、第2運転モードにおいて、加熱状態のワークWの冷却とプラズマ滅菌処理とが同時に行えるようになっている。さらに、第2運転モードでは、第1運転モードに比べてプルームPが長時間照射される。これにより、加熱状態のワークWを十分に冷却できるようになっている。
【0095】
図16は、第3実施形態に係る滅菌処理装置Sの電気的構成を示した図である。この第3実施形態による制御系90は、高圧蒸気滅菌装置制御部97を備えており、この高圧蒸気滅菌装置制御部97から高圧蒸気滅菌装置600に制御信号が送信されることにより高圧蒸気滅菌装置600の駆動及び非駆動の切替や高圧蒸気滅菌装置600からチャンバー510内に送り込まれる高圧蒸気の温度調節等の各種制御が行われるようになっている。
【0096】
そして、全体制御部94は、操作部502から与えられる操作信号及びセンサー部530から与えられる検出信号に応じて、マイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92、ガス温度制御部93及び高圧蒸気滅菌装置制御部97を、所定のシーケンスに基づいて動作制御する。具体的には、全体制御部94は、操作部502から与えられる操作信号がプラズマ滅菌処理を指示するものである場合には、センサー部530からの検出信号に基づいて第1運転モードまたは第2運転モードを選択する。このとき、全体制御部94は、センサー部530からワークWが外界温度近傍の温度であることを検出した検出信号を受け取った場合は第1運転モードを選択する一方、ワークWが加熱されていることを検出した検出信号を受け取った場合は第2運転モードを選択する。
【0097】
第1運転モードが選択された場合は、全体制御部94により上記第1実施形態と同様の制御が実行される。この際、ガス温度制御部93は処理ガス冷却器610を駆動させないように制御し、処理ガスは処理ガス冷却器610により冷却されることなくプラズマ発生ノズル31に供給される。したがって、プラズマ発生ノズル31からは外界温度に近いガス温度のプルームPがワークWに照射され、ワークWにプラズマ滅菌処理が施与される。
【0098】
一方、第2運転モードが選択された場合は、ガス流量制御部92により処理ガスの供給時間が第1運転モードの場合よりも長くなるように流量制御弁923が制御されるとともに、マイクロ波出力制御部91によってその処理ガスの供給時間に応じた時間、マイクロ波電力がプラズマ発生ノズル31に与えられるようにプラズマ発生ユニットPUが制御される。これにより、第2運転モードが選択された場合は、第1運転モードが選択された場合に比べてワークWにプルームPが長時間照射され、加熱されているワークWの冷却とプラズマ滅菌処理とが同時に行われる。
【0099】
さらに、第2運転モードが選択された場合には、ガス温度制御部93により処理ガス冷却器610が駆動される。これにより、処理ガス冷却器610により処理ガスが予め冷却されてからプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31に供給される。このため、第2運転モードにおいてプラズマ発生ノズル31から加熱状態のワークWに照射されるプルームPのガス温度が低下し、それによってワークWの冷却が速められる。
【0100】
このように、第3実施形態では、制御ユニットCUの制御系90により、ワークWが加熱されている条件では第1運転モードが選択され、プラズマ発生ユニットPUから照射されるプルームPのガス温度が第2運転モードよりも高い温度(外界温度近傍の温度)に設定されるとともに、プルームPの照射時間が第2運転モードよりも短い時間に設定される一方、ワークWが加熱されている条件では第2運転モードが選択され、プラズマ発生ユニットPUから照射されるプルームPのガス温度が第1運転モードよりも低い温度に設定されるとともに、プルームPの照射時間が第1運転モードよりも長い時間に設定される。
【0101】
また、全体制御部94が操作部502から高圧蒸気滅菌処理を指示する操作信号が与えられた場合には、高圧蒸気滅菌装置制御部97からの制御信号によって高圧蒸気滅菌装置600が駆動される。これにより、高圧蒸気滅菌装置600から高圧蒸気がチャンバー510内に送り込まれてチャンバー510内が高圧蒸気で充満し、その高圧蒸気に曝されることによってワークWの高圧蒸気滅菌処理が行われる。そして、高圧蒸気滅菌処理が所定時間行われた後、チャンバー510内の蒸気が排気される。
【0102】
この高圧蒸気滅菌処理後、ワークWは加熱されているので、センサー部530によりワークWが加熱状態であることが検出される。そして、センサー部530から全体制御部94にワークWが加熱されていることを検出した検出信号が送信される。この検出信号に応答して全体制御部94は、第2運転モードを選択する。これにより、上記第2運転モードと同様にして加熱されているワークWの冷却とプラズマ滅菌処理とが同時に行われる。
【0103】
第3実施形態による滅菌処理装置Sの上記以外の構成は、上記第1実施形態による滅菌処理装置Sの構成と同様である。
【0104】
以上説明したように第3実施形態による滅菌処理装置Sでは、制御ユニットCUの制御系90がワークWが外界温度近傍の温度であるか加熱されているかの状態に基づいて、プラズマ発生ユニットPUから照射するプルームPのガス温度及びプルームPの照射時間が異なる第1運転モードまたは第2運転モードを選択して滅菌処理ユニットSUの動作制御を行うので、異なる状態のワークWそれぞれに対してその状態に応じた適切な条件でプルームPを照射することができる。
【0105】
また、制御ユニットCUの制御系90は、センサー部530がワークWが外界温度近傍の温度であるか加熱されているかを検出した検出信号に基づいて第1運転モードまたは第2運転モードを実行するようになっているので、センサー部530によりワークWの状態を検出して自動的にそのワークWの状態に応じた第1運転モードまたは第2運転モードを選択し、プルームPのガス温度及び照射時間をそのワークWの状態に応じた条件に設定することができる。これにより、ワークWの状態を判別する作業を行う必要がないので、ワークWの状態の判別に要する作業負担を軽減しながら、ワークWの状態に応じた適切な条件でプルームPの照射を行うことができる。
【0106】
また、第2運転モードにおいて、加熱されているワークWの冷却をプラズマ発生ユニットPUによるプルームPの照射によって実行させるので、ワークWが自然に冷却されるのを待つのに比べて短時間でワークWを冷却させることができる。これにより、ワークWが加熱されている場合のワークWの処理時間を短縮することができる。
【0107】
また、第2運転モードにおいて、プルームPの照射により加熱されたワークWの冷却とワークWのプラズマ滅菌処理とを同時に行うことができるので、ワークWにプラズマ滅菌処理を施与するのとは別にワークWの冷却を行う場合と異なり、ワークWの処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0108】
また、第2運転モードでは、加熱されたワークWに照射されるプルームPのガス温度を低下させるとともに、プルームPの照射時間を長くしているので、ガス温度の低下したプルームPを長時間照射することによって、加熱状態のワークWを十分に冷却することができる。
【0109】
また、第1運転モードでは、第2運転モードに比べて、プラズマ発生ユニットPUにより照射されるプルームPのガス温度が高く設定されているとともに、プルームPの照射時間が短く設定されているので、ワークWが元々外界温度近傍の温度であり、冷却処理が不要な条件では、プルームPのガス温度を上昇させたりプルームPの照射時間を長くすることによって発生する消費電力の増大を抑制することができる。
【0110】
また、第3実施形態による滅菌処理装置Sは、ワークWを高圧蒸気に曝して滅菌処理を行う高圧蒸気滅菌装置600を備えているので、プラズマ発生ユニットPUからのプルームPの照射によるワークWの滅菌処理に加えて、高圧蒸気滅菌装置600によりワークWの高圧蒸気滅菌を行うことができる。このため、ワークWの滅菌処理をより確実に行うことができる。
【0111】
また、制御ユニットCUは、高圧蒸気滅菌装置600を動作させて高圧蒸気によるワークWの滅菌処理を行わせた後、プラズマ発生ユニットPUにワークWへのプルームPの照射を行わせるので、高圧蒸気による滅菌処理後、プルームPの照射によりプラズマ滅菌処理を行いながらワークWを冷却することができる。これにより、高圧蒸気滅菌処理後、外気に当ててワークWを冷却する場合と異なり、外気中の雑菌がワークWに付着することがない。このため、高圧蒸気滅菌処理後、ワークWの滅菌状態を確実に保持することができる。
【0112】
(第4実施形態)
図17は、本発明の第4実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。この第4実施形態に係る滅菌処理装置Sでは、上記第3実施形態と異なり、第2運転モードにおいて冷却装置620を用いて加熱状態のワークWの冷却を行うようになっている。
【0113】
具体的には、この第4実施形態に係る滅菌処理装置Sの滅菌処理ユニットSUは、チャンバー510の側壁部510aに取り付けられた冷却装置620を備えている。冷却装置620は外気を取り込んで送風する機能を有しており、チャンバー510の側壁部510aに設けられた吹込口510cを介して、冷却装置620からチャンバー510内に外気が送風されるように構成されている。そして、この送風により、チャンバー510内の加熱されたワークWの冷却が行われる。なお、この第4実施形態による滅菌処理装置Sでは、上記第3実施形態による滅菌処理装置Sと異なり、処理ガス冷却器610(図15参照)は備えておらず、プラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31には処理ガスが冷却されることなくそのまま供給されるようになっている。
【0114】
図18は、第4実施形態に係る滅菌処理装置Sの電気的構成を示した図である。この第4実施形態による制御系90は、冷却装置制御部98を備えており、この冷却装置制御部98から冷却装置620に制御信号が送信されることにより冷却装置620の駆動及び非駆動の切替や冷却装置620から送風される風量の調節等の各種制御が行われるようになっている。なお、この第4実施形態では、制御系90は上記第3実施形態による処理ガスの温度を調節するためのガス温度制御部93(図16参照)を備えていない。
【0115】
そして、この第4実施形態では、センサー部530によりワークWが加熱されていることが検出された場合の検出信号に応答して全体制御部94が第2運転モードを選択すると、冷却装置制御部98から送信される制御信号により冷却装置620が駆動する。これにより、冷却装置620からチャンバー510内への送風が行われ、その結果、加熱状態のワークWが冷却される。そして、この後、上記第3実施形態と同様にしてプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生ノズル31からワークWへプルームPの照射が行われる。なお、センサー部530によりワークWが外界温度近傍の温度であることが検出された場合には、そのときのセンサー部530から送信される検出信号に応答して全体制御部94は第1運転モードを選択し、上記第3実施形態と同様にしてワークWへプルームPの照射が行われる。そして、このように第1運転モードが選択された場合はワークWの冷却は不要であるので、冷却装置制御部98により冷却装置620が駆動しないように制御される。
【0116】
第4実施形態による滅菌処理装置Sの上記以外の構成は、上記第3実施形態による滅菌処理装置Sの構成と同様である。
【0117】
以上説明したように第4実施形態による滅菌処理装置Sでは、滅菌処理ユニットSUが加熱されたワークWに送風して冷却する冷却装置620を含むとともに、制御ユニットCUの冷却装置制御部98が、第2運転モードにおいて冷却装置620を動作させてワークWを冷却させるので、加熱されたワークWの冷却を容易に行うことができる。
【0118】
また、制御ユニットCUの冷却装置制御部98が、第2運転モードにおいて冷却装置620を動作させる一方、第1運転モードにおいて冷却装置620を動作させないように制御するので、ワークWの冷却が不要な第1運転モードでは冷却装置620の動作に要する消費電力を抑制することができる。
【0119】
また、第2運転モードにおいて加熱状態のワークWを冷却装置620からの送風によって冷却させた後、そのワークWにプルームPの照射を行うことによって、冷却装置620から送風される空気中の雑菌がワークWに付着した後にプルームPによるワークWの滅菌を行うことができるので、第2運転モードにおいて加熱状態のワークWを冷却装置620からの送風により冷却する場合でも、ワークWを確実に滅菌することができる。
【0120】
第4実施形態による上記以外の効果は、上記第3実施形態による効果と同様である。
【0121】
以上、本発明の第1〜第4実施形態に係る滅菌処理装置Sについて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば下記の実施形態を取ることができる。
【0122】
上記各実施形態では、ワーク処理装置の一例としての滅菌処理装置Sに本発明を適用した例について説明したが、滅菌処理装置以外の種々のワーク処理装置に本発明を適用することも可能である。例えば、半導体ウェハ等の半導体基板に対するエッチング処理装置や成膜装置、プラズマディスプレイパネル等のガラス基板やプリント基板の清浄化処理装置、タンパク質の分解装置等のワーク処理装置に本発明を適用することができる。このような滅菌処理装置以外のワーク処理装置においても処理対象であるワークWが濡れている場合には、その濡れによってワークWにプラズマ照射による所定の処理を施与するのが阻害されるという不都合が生じるが、上記第1及び第2実施形態の構成によってワークWが濡れている場合には乾燥させてプラズマ照射を行うことが可能となり、その結果、ワークWに有効にプラズマ照射による所定の処理を施与することが可能となる。上記のように滅菌処理装置以外の種々のワーク処理装置に本発明を適用する場合は、その目的に応じた処理ガスを用いる。因みに、処理ガスとしてアルゴンガスのような不活性ガスや窒素ガスを用いれば、各種基板の表面クリーニングや表面改質を行うことができる。また、フッ素を含有する化合物ガスを用いれば基板表面を撥水性表面に改質することができ、親水基を含む化合物ガスを用いることで基板表面を親水性表面に改質することができる。さらに、金属元素を含む化合物ガスを用いれば基板上に金属薄膜層を形成することができる。また、上記実施形態と同様の酸素系ガスを処理ガスとして用いることによって、基板上のレジスト除去を行うことも可能である。
【0123】
上記第1実施形態では第2運転モードにおいてプラズマ化されたガスの照射により濡れているワークWの乾燥を行うとともに、上記第2実施形態では第2運転モードにおいてドライヤー装置550からの熱風の送風により濡れているワークWの乾燥を行ったが、第2運転モードにおいてこれらを両方とも行うことによって濡れているワークWを乾燥させても良い。
【0124】
また、上記第1実施形態では、ワークWが濡れている条件での第2運転モードにおいて、プルームPのガス温度を第1運転モードの場合よりも高い温度に上昇させるとともに、プルームPの照射時間を第1運転モードの場合よりも長くなるように制御したが、本発明はこれに限らず、ワークWが濡れている条件での第2運転モードでは、プルームPのガス温度を第1運転モードの場合よりも高い温度に上昇させるかまたはプルームPの照射時間を第1運転モードの場合よりも長くするかのいずれかの制御のみを行うようにしても良い。
【0125】
上記第3実施形態では第2運転モードにおいてプラズマ化されたガスの照射により加熱状態のワークWの冷却を行うとともに、上記第4実施形態では第2運転モードにおいて冷却装置620からの送風により加熱状態のワークWの冷却を行ったが、第2運転モードにおいてこれらを両方とも行うことによって加熱状態のワークWを冷却させても良い。
【0126】
また、上記第3実施形態では、ワークWが加熱されている条件での第2運転モードにおいて、プルームPのガス温度を第1運転モードの場合よりも低い温度に低下させるとともに、プルームPの照射時間を第1運転モードの場合よりも長くなるように制御したが、本発明はこれに限らず、ワークWが加熱されている条件での第2運転モードでは、プルームPのガス温度を第1運転モードの場合よりも低い温度に低下させるかまたはプルームPの照射時間を第1運転モードの場合よりも長くするかのいずれかの制御のみを行うようにしても良い。
【0127】
上記第1及び第2実施形態では、センサー部530でワークWが乾燥しているかまたは濡れているかを検出し、そのセンサー部530からの検出信号に基づいて制御ユニットCUの全体制御部94により第1運転モードまたは第2運転モードのどちらかが自動的に選択されるようにしたが、これに限らず、作業者がワークWの状態を見て乾燥しているか濡れているかを判別して滅菌処理ユニットSUを第1運転モードまたは第2運転モードのどちらで動作させるかをマニュアルで設定するようにしても良い。この場合、作業者が判別したワークWの状態を滅菌処理装置Sの操作部502(入力手段)を操作して入力し、その入力されたワークの状態に基づいて制御ユニットCUの全体制御部94が第1運転モードまたは第2運転モードのいずれかを選択する。
【0128】
また、上記第3及び第4実施形態では、センサー部530でワークWが外界温度近傍の温度であるかまたは加熱されているかを検出し、そのセンサー部530からの検出信号に基づいて制御ユニットCUの全体制御部94により第1運転モードまたは第2運転モードのどちらかが自動的に選択されるようにしたが、これに限らず、作業者がワークWが外界温度近傍の温度であるか加熱されているかを判別して滅菌処理ユニットSUを第1運転モードまたは第2運転モードのどちらで動作させるかをマニュアルで設定するようにしても良い。この場合、作業者が判別したワークWが外界温度近傍の温度であるかまたは加熱されている状態であるかの情報を滅菌処理装置Sの操作部502(入力手段)を操作して入力し、その入力されたワークの状態に基づいて制御ユニットCUの全体制御部94が第1運転モードまたは第2運転モードのいずれかを選択する。
【0129】
上記各実施形態では、箱型の筐体500内に滅菌処理ユニットSUを設け、その滅菌処理ユニットSUのチャンバー510内にワークWを設置してプルームPの照射による滅菌処理を施与するという滅菌処理装置の一形態を示したが、上記以外の形態の滅菌処理装置にも本発明を適用することができる。
【0130】
例えば、図19に示すように、プラズマ発生ユニットPUによるプルームの照射領域を経由する所定のルートでワークWを搬送する搬送手段Cを設け、この搬送手段CによってワークWを搬送しながらプルーム(プラズマ)の照射を行う形態の滅菌処理装置にも本発明を適用することが可能である。具体的には、搬送手段Cは、図略の駆動手段により回転駆動される搬送ローラ80を含んで構成されており、この搬送ローラ80の回転駆動によって平板状のワークWが上記所定のルートで搬送されるようになっている。そして、プラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生部30の幅員、つまり8個のプラズマ発生ノズル31の左右方向の配列幅は、平板状ワークWの搬送方向と直交する幅方向のサイズtと略合致する幅員とされている。これにより、ワークWを搬送ローラ80で搬送しながら、ワークWの全表面(プラズマ発生ユニットPUの下面板13Bと対向する面)に対してプラズマ滅菌処理が行えるようになっている。また、ワークWの搬送ルート上には、ワークWが乾燥しているかまたは濡れているかを検出するセンサー部630(検出手段)と、ワークWに対して熱風を送風するドライヤー装置650とが設置されている。
【0131】
この滅菌処理装置では、ワークWを搬送手段Cで搬送しながらセンサー部630でワークWが乾燥しているか濡れているかを検出し、そのセンサー部630からの検出信号に基づいて図略の制御ユニットの全体制御部により第1運転モードまたは第2運転モードが選択される。ワークWが乾燥している場合は第1運転モードが選択され、この場合、ドライヤー装置650は駆動しないように制御されるとともに、ワークWが搬送手段Cによりプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生部30の下方に搬送され、プラズマ発生ノズル31からプルームが照射される。一方、ワークWが濡れている場合は第2運転モードが選択され、この場合、ドライヤー装置650が駆動され、ドライヤー装置650から濡れているワークWに熱風が送風されることによってワークWの乾燥が行われる。この際、ワークWは、搬送手段Cにより搬送されながら乾燥され、乾燥後のワークWがプラズマ発生ユニットPUのプラズマ発生部30の下方に達するとプラズマ発生ノズル31からプルームが照射される。
【0132】
なお、このような構成は滅菌処理装置に限らず、他の種々のワーク処理装置にも適用することが可能である。例えば、このような構成を用いて半導体ウェハ等の半導体基板に対するエッチング処理装置や成膜装置、プラズマディスプレイパネル等のガラス基板やプリント基板の清浄化処理装置、タンパク質の分解装置等のワーク処理装置を構成することができる。
【0133】
また、搬送手段Cとして搬送ローラ80の上面にワークWを載置して搬送する形態以外に例えば上下の搬送ローラ間にワークをニップさせて搬送させる形態、搬送ローラを用いず所定のバスケット等にワークを収納し前記バスケット等をラインコンベア等で搬送させる形態、或いはロボットハンド等でワークを把持してプラズマ発生部30へ搬送させる形態であっても良い。
【0134】
上記各実施形態では、複数のプラズマ発生ノズル31を一列に整列配置した例を示したが、ノズル配列はワークの形状やマイクロ波電力のパワー等に応じて適宜決定すれば良く、例えばワークの搬送方向に複数列のプラズマ発生ノズル31をマトリクス整列したり、千鳥配列したりしても良い。
【0135】
上記各実施形態では、マイクロ波発生源として2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロンを例示したが、マグネトロン以外の各種高周波電源も使用可能であり、また2.45GHzとは異なる波長のマイクロ波を用いるようにしても良い。
【0136】
導波管10内におけるマイクロ波電力を測定するために、パワーメータを導波管10の適所に設置することが望ましい。例えば、マイクロ波発生装置20のマイクロ波送信アンテナ22から放出されたマイクロ波電力に対する反射マイクロ波電力の比を知見するために、サーキュレータ50と第2導波管ピース12との間に、パワーメータを内蔵する導波管を介在させるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明に係るワーク処理装置は、医療機器等に対する滅菌処理装置、半導体ウェハ等の半導体基板に対するエッチング処理装置や成膜装置、プラズマディスプレイパネル等のガラス基板やプリント基板の清浄化処理装置、タンパク質の分解装置等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1実施形態に係る滅菌処理装置Sの全体構成を示す斜視図である。
【図2】滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。
【図3】プラズマ発生ユニットPUの全体構成を示す斜視図である。
【図4】図3とは視線方向を異ならせたプラズマ発生ユニットPUの斜視図である。
【図5】プラズマ発生ユニットPUの一部透視側面図である。
【図6】プラズマ発生ノズル31を拡大して示す側面図である。
【図7】図6のA−A線側断面図である。
【図8】プラズマ発生ノズル31におけるプラズマの発生状態を説明するための透視側面図である。
【図9】スライディングショート40の内部構造を示す透視斜視図である。
【図10】サーキュレータ50の作用を説明するためのプラズマ発生ユニットPUの上面図である。
【図11】スタブチューナ70の設置状況を示す透視側面図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係る滅菌処理装置Sに用いられる滅菌処理ユニットSUの構成を概略的に示した斜視図である。
【図18】本発明の第4実施形態に係る滅菌処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
【図19】本発明の実施形態の変形例に係る滅菌処理装置の全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0139】
502 操作部(入力手段)
520 加熱装置(加熱機構)
530、630 センサー部(検出手段)
550、650 ドライヤー装置
600 高圧蒸気滅菌装置
620 冷却装置
CU 制御ユニット(制御手段)
PU プラズマ発生ユニット(プラズマ発生装置)
S 滅菌処理装置(ワーク処理装置)
SU 滅菌処理ユニット(処理部)
W ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される所定のガスをプラズマ化して放出するプラズマ発生装置を含み、処理対象であるワークにプラズマ化されたガスの照射による所定の処理を施与する処理部と、
前記処理部の動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、ワークの状態に基づいて、前記プラズマ発生装置からそのワークに照射するプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御する、ワーク処理装置。
【請求項2】
ワークの状態を検出する検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記検出手段により検出されたワークの状態に基づいて前記プラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御する、請求項1に記載のワーク処理装置。
【請求項3】
ワークの状態を入力するための入力手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記入力手段から入力されたワークの状態に基づいて前記プラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御する、請求項1に記載のワーク処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、ワークが濡れている条件において、前記プラズマ発生装置によるプラズマ化されたガスの照射によってそのワークの乾燥を実行させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、ワークが濡れている条件において、前記プラズマ発生装置によりワークに照射される前記プラズマ化されたガスの温度を上昇させる及び/または前記プラズマ化されたガスの照射時間を長くする、請求項4に記載のワーク処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記所定のガスを加熱する加熱機構を含み、
前記制御手段は、前記加熱機構を動作させて前記所定のガスが前記プラズマ発生装置に供給される前に予め加熱させる、請求項5に記載のワーク処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、ワークが乾燥している条件での運転モード及びワークが濡れている条件での運転モードのいずれかを選択して前記処理部を動作させることが可能であり、
前記ワークが乾燥している条件での運転モードでは、前記ワークが濡れている条件での運転モードに比べて、前記プラズマ発生装置により照射される前記プラズマ化されたガスの温度が低く設定されている及び/または前記プラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、濡れているワークに熱風を送風して乾燥させるドライヤー装置を含み、
前記制御手段は、ワークが濡れている条件において、前記ドライヤー装置を動作させてそのワークを乾燥させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記ドライヤー装置を動作させて濡れているワークを乾燥させた後、前記プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせる、請求項8に記載のワーク処理装置。
【請求項10】
前記制御手段は、ワークが加熱されている条件において、前記プラズマ発生装置によるプラズマ化されたガスの照射によってそのワークの冷却を実行させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項11】
前記制御手段は、ワークが加熱されている条件において、前記プラズマ照射装置によりワークに照射される前記プラズマ化されたガスの温度を低下させる及び/または前記プラズマ化されたガスの照射時間を長くする、請求項10に記載のワーク処理装置。
【請求項12】
前記制御手段は、ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モード及びワークが加熱されている条件での運転モードのいずれかを選択して前記処理部を動作させることが可能であり、
前記ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モードでは、前記ワークが加熱されている条件での運転モードに比べて、前記プラズマ発生装置により照射される前記プラズマ化されたガスの温度が高く設定されている及び/または前記プラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されている、請求項10または11に記載のワーク処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、加熱されたワークに送風してそのワークを冷却する冷却装置を含み、
前記制御手段は、ワークが加熱されている条件において、前記冷却装置を動作させてそのワークを冷却する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記冷却装置を動作させて加熱されたワークを冷却した後、前記プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせる、請求項13に記載のワーク処理装置。
【請求項15】
ワークを高圧蒸気に曝して滅菌処理を行う高圧蒸気滅菌装置をさらに備えた、請求項10〜14のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記高圧蒸気滅菌装置を動作させて高圧蒸気によるワークの滅菌処理を行わせた後、前記プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせる、請求項15に記載のワーク処理装置。
【請求項1】
供給される所定のガスをプラズマ化して放出するプラズマ発生装置を含み、処理対象であるワークにプラズマ化されたガスの照射による所定の処理を施与する処理部と、
前記処理部の動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、ワークの状態に基づいて、前記プラズマ発生装置からそのワークに照射するプラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御する、ワーク処理装置。
【請求項2】
ワークの状態を検出する検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記検出手段により検出されたワークの状態に基づいて前記プラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御する、請求項1に記載のワーク処理装置。
【請求項3】
ワークの状態を入力するための入力手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記入力手段から入力されたワークの状態に基づいて前記プラズマ化されたガスの温度及び/または照射時間を制御する、請求項1に記載のワーク処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、ワークが濡れている条件において、前記プラズマ発生装置によるプラズマ化されたガスの照射によってそのワークの乾燥を実行させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、ワークが濡れている条件において、前記プラズマ発生装置によりワークに照射される前記プラズマ化されたガスの温度を上昇させる及び/または前記プラズマ化されたガスの照射時間を長くする、請求項4に記載のワーク処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記所定のガスを加熱する加熱機構を含み、
前記制御手段は、前記加熱機構を動作させて前記所定のガスが前記プラズマ発生装置に供給される前に予め加熱させる、請求項5に記載のワーク処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、ワークが乾燥している条件での運転モード及びワークが濡れている条件での運転モードのいずれかを選択して前記処理部を動作させることが可能であり、
前記ワークが乾燥している条件での運転モードでは、前記ワークが濡れている条件での運転モードに比べて、前記プラズマ発生装置により照射される前記プラズマ化されたガスの温度が低く設定されている及び/または前記プラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、濡れているワークに熱風を送風して乾燥させるドライヤー装置を含み、
前記制御手段は、ワークが濡れている条件において、前記ドライヤー装置を動作させてそのワークを乾燥させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記ドライヤー装置を動作させて濡れているワークを乾燥させた後、前記プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせる、請求項8に記載のワーク処理装置。
【請求項10】
前記制御手段は、ワークが加熱されている条件において、前記プラズマ発生装置によるプラズマ化されたガスの照射によってそのワークの冷却を実行させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項11】
前記制御手段は、ワークが加熱されている条件において、前記プラズマ照射装置によりワークに照射される前記プラズマ化されたガスの温度を低下させる及び/または前記プラズマ化されたガスの照射時間を長くする、請求項10に記載のワーク処理装置。
【請求項12】
前記制御手段は、ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モード及びワークが加熱されている条件での運転モードのいずれかを選択して前記処理部を動作させることが可能であり、
前記ワークが外界温度近傍の温度である条件での運転モードでは、前記ワークが加熱されている条件での運転モードに比べて、前記プラズマ発生装置により照射される前記プラズマ化されたガスの温度が高く設定されている及び/または前記プラズマ化されたガスの照射時間が短く設定されている、請求項10または11に記載のワーク処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、加熱されたワークに送風してそのワークを冷却する冷却装置を含み、
前記制御手段は、ワークが加熱されている条件において、前記冷却装置を動作させてそのワークを冷却する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記冷却装置を動作させて加熱されたワークを冷却した後、前記プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせる、請求項13に記載のワーク処理装置。
【請求項15】
ワークを高圧蒸気に曝して滅菌処理を行う高圧蒸気滅菌装置をさらに備えた、請求項10〜14のいずれか1項に記載のワーク処理装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記高圧蒸気滅菌装置を動作させて高圧蒸気によるワークの滅菌処理を行わせた後、前記プラズマ発生装置にワークへのプラズマ化されたガスの照射を行わせる、請求項15に記載のワーク処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−227068(P2007−227068A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45069(P2006−45069)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]