説明

上層反射防止膜形成用組成物、上層反射防止膜及びパターン形成方法

【課題】本発明は、焦点深度を広げることが可能な上層反射防止膜、該上層反射防止膜を形成するための上層反射防止膜形成用組成物および該上層反射防止膜を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体、
(B)ヒドロキシル基を有する3級アミン化合物及び
(C)水
とを含有することを特徴とする上層反射防止膜形成用組成物。
【化1】


〔一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは、直接結合、−CH−、−COO−A−、又は−CONH−A−を示し、Aは炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上層反射防止膜形成用組成物、上層反射防止膜および該上層反射防止膜を用いたパターン形成方法に関する。更に詳しくは、本発明は、各種の放射線に感応するレジスト、例えば、化学増幅型レジストを使用するリソグラフィプロセスによる微細加工に有用な上層反射防止膜形成用組成物、及びその上層反射防止膜形成用組成物から形成される上層反射防止膜および該上層反射防止膜を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI(高集積回路)の高密度化、高集積化に対する要求が益々高まっており、それに伴い配線パターンの微細化も急速に進行している。このような配線パターンの微細化に対応しうる手段の一つとして、リソグラフィープロセスに用いる放射線を短波長化する方法があり、近年では、g線(波長436nm)やi線( 波長365nm )等の紫外線に替えて、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)等の遠紫外線や、電子線、X線等が用いられるようになっている。
【0003】
一般的に、リソグラフィープロセスに用いる放射線の短波長化に伴い、化学増幅型レジストのフォーカスに対するマージン(「焦点深度」または「DOF」ともいう)が狭くなることが知られている。
【0004】
また、リソグラフィプロセスに通常用いられる放射線は、単一波長であるため、入射放射線とレジスト被膜の上下界面で反射した放射線とがレジスト被膜内で互いに干渉し、その結果、「定在波効果」あるいは「多重干渉効果」と呼ばれる現象、即ち露光量が一定であっても、レジスト被膜の厚さが変動すると、膜内における放射線相互の干渉によってレジスト被膜に対する実効的な露光量が変動してしまう現象が生じて、レジストパターンの形成に悪影響を及ぼす場合がある。このような定在波効果に関する問題を解決するため、レジスト被膜上に反射防止膜(上層反射防止膜)を形成してレジスト被膜表面での反射を抑え、膜内での多重干渉を低減する方法が提案されている(例えば、非特許文献1や特許文献1など)。
【0005】
しかしながら、焦点深度を広げることができる、上層反射防止膜については知られていない。
【0006】
【特許文献1】WO2006/059555号公報
【非特許文献2】J.Eectrochem.Soc.,Vol.137,No.12,p.3900(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、焦点深度を広げることが可能な上層反射防止膜、該上層反射防止膜を形成するための上層反射防止膜形成用組成物および該上層反射防止膜を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための手段は以下のとおりである。
1.(A)下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体、
(B)ヒドロキシル基を有する3級アミン化合物及び
(C)水
とを含有することを特徴とする上層反射防止膜形成用組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
〔一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは、直接結合、−CH−、−COO−A−、又は−CONH−A−を示し、Aは炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示す。〕
2.前記重合体(A)100質量部に対して、前記ヒドロキシル基を有する3級アミン化合物(B)の含有量が、0.1〜20質量部であることを特徴とする前記1に記載の上層反射防止膜形成用組成物。
3.前記重合体(A)が、更に、下記一般式(2)で表される構造単位、及び/又は下記一般式(3)で表される構造単位を有することを特徴とする前記1または2のいずれかに記載の上層反射防止膜形成用組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
〔一般式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜8の3価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。一般式(3)において、R水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基又は部分フッ素化アルキル基を示す。〕
4.更に、(D)アセチレン基を有する界面活性剤を含有する前記1乃至3に記載の上層反射防止膜形成用組成物。
5.前記1乃至4のいずれかに記載の上層反射防止膜形成用組成物を用いて得られることを特徴とする上層反射防止膜。
6.基板上にレジスト被膜を形成し、該レジスト被膜に放射線を照射し、次いで現像することにより、レジストパターンを形成するにあたり、予め前記レジスト被膜上に、前記5に記載の上層反射防止膜を形成したのち、所定のパターン形状に放射線を照射し、次いで現像して前記反射防止膜を除去する工程を経ることを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上層反射防止膜形成用組成物を用いれば、化学増幅型レジストの焦点深度を向上することができる。また、本発明の上層反射防止膜形成用組成物は、塗布性に優れており、十分な定在波防止効果(反射防止能)を備えている。そのため、化学増幅型レジストを使用するリソグラフィプロセスによる微細加工において、好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。また、本明細書における「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味する。
[1]上層反射防止膜形成用組成物
<(A)重合体>
本発明の上層反射防止膜形成用組成物は、(A)下記一般式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位(1)」ともいう。)を含む重合体(以下、単に「重合体(A)」ともいう。)を含有する。
【0015】
【化3】

【0016】
〔一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは、直接結合、−CH−、−COO−A−、又は−CONH−A−を示し、Aは炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示す。〕
前記一般式(1)のAにおける炭素数1〜8の2価の炭化水素基としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,1−ジメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,1−ジメチル−1,4−ブチレン基、2,2−ジメチル−1,4−ブチレン基、1,2−ジメチル−1,4−ブチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等が挙げられる。これらのなかでも、メチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基等が好ましい。
【0017】
尚、前記一般式(1)におけるRが、−COO−A−、又は−CONH−A−で示される場合、カルボニル基が重合体主鎖の炭素原子に結合する。
【0018】
前記構造単位(1)を与える重合性不飽和化合物としては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。これらのなかでも、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が重合体のアルカリ現像液や水への溶解性に優れているため好ましい。
【0019】
尚、これらの構造単位(1)を与える重合性不飽和化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の重合体(A)は、前記構造単位(1)以外にも、下記一般式(2)で表される構造単位(以下、「構造単位(2)」ともいう。)及び/又は下記一般式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位(3)」ともいう。)を含有しているのが好ましい。
【0020】
【化4】

【0021】
〔一般式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜8の3価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。一般式(3)において、R水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基又は部分フッ素化アルキル基を示す。〕
前記一般式(2)におけるRの炭素数1〜8の3価の炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、2−エチルプロパン、n−ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等に由来する基や、これらの基の置換誘導体を挙げることができる。
前記一般式(2)におけるRの炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、パーフルオロ−n−オクチル基、パーフルオロ−3−メチルブチル基、パーフルオロ−5−メチルヘキシル基、パーフルオロ−7−メチルオクチル基等を挙げることができる。これらのなかでも、炭素数4〜8のものが好ましい。
また、前記構造単位(2)としては、下記一般式(2−1)で表される構造単位(以下、「構造単位(2−1)」ともいう。)、下記一般式(2−2)で表される構造単位(以下、「構造単位(2−2)」ともいう。)等が好ましい。
【0022】
【化5】

【0023】
〔一般式(2−1)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。〕

【0024】
〔一般式(2−2)において、R10は水素原子又はメチル基を示す。R11は炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。〕
前記一般式(2−1)及び(2−2)における、R及びR11の炭素数1〜のパーフルオロアルキル基については、それぞれ、前記一般式(2)におけるRの説明をそのまま適用することができる。
【0025】
前記構造単位(2−1)を与える重合性不飽和化合物としては、例えば、3−(パーフルオロ−n−ブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロ−n−オクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、3−(パーフルオロ−n−ブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロ−n−オクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0026】
尚、これらの構造単位(2−1)を与える重合性不飽和化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、前記構造単位(2−2)を与える重合性不飽和化合物としては、例えば、2−(パーフルオロ−n−ブチル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−n−オクチル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、2−(パーフルオロ−n−ブチル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−n−オクチル)−1−(ヒドロキシメチル)エチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
尚、これらの構造単位(2−2)を与える重合性不飽和化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記一般式(3)における、Rの炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、パーフルオロ−n−オクチル基、パーフルオロ−n−ノニル基、パーフルオロ−n−デシル基、パーフルオロ−n−ウンデシル基、パーフルオロ−n−ドデシル基、パーフルオロ−3−メチルブチル基、パーフルオロ−5−メチルヘキシル基、パーフルオロ−7−メチルオクチル基等を挙げることができる。
【0028】
また、炭素数1〜12の部分フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基における水素原子の一部が、フッ素原子に置換されたものが挙げられる。具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる。
【0029】
前記構造単位(3)を与える重合性不飽和化合物としては、例えば、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−n−ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−n−ペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−n−ヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−n−オクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−n−ノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−n−デシル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−3−メチルブチル基(メタ)アクリレート、パーフルオロ−5−メチルヘキシル基(メタ)アクリレート、パーフルオロ−7−メチルオクチル基(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
尚、これらの構造単位(3)を与える重合性不飽和化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の重合体(A)は、前記構造単位(1)、(2)及び(3)以外にも、「他の重合性不飽和化合物」に由来する構造単位(以下、「他の構造単位」という。)を含んでいてもよい。
【0031】
前記「他の重合性不飽和化合物」としては、例えば、(メタ)アクリル酸、α−メトキシアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、アトロパ酸、3−アセチルオキシ(メタ)アクリル酸、3−ベンゾイルオキシ(メタ)アクリル酸、3−シクロヘキシル(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸系化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物や、クロトン酸メチル、ケイ皮酸メチル等の不飽和モノカルボン酸エステル系化合物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ポリカルボン酸やその無水物系化合物;前記不飽和ポリカルボン酸のモノ−又はジ−メチルエステル、モノ−又はジ−エチルエステル、モノ−又はジ−n−プロピルエステル等のモノ−又はジ−エステル系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル等の不飽和アルコールのエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−(クロロメチル)アクリロニトリル、α−(トリフルオロメチル)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等のシアン化ビニル系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノビニル系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のハロゲン化オレフィン系化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ピペリレン、2,3−ジメチルブタジエン、メチルペンタジエン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンノルボルネン、ジビニルベンゼン、ジメチルビニルスチリルシラン等のジエン系化合物;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル等の不飽和エーテル系化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;2−クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル、クロロ酢酸アリル、p−(クロロメチル)スチレン等の前記以外のハロゲン含有不飽和化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−プロペニルアルコール、2−メチル−2−プロペニルアルコール等の水酸基含有不飽和化合物;(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等のアミド基含有不飽和化合物;コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ヘキサヒドロフタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、マレイン酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕や、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「アクリルアミド誘導体(4)」という。)等の前記以外のカルボキシル基含有不飽和化合物等を挙げることができる。
【0032】
【化6】

【0033】
〔一般式(4)において、R12は、水素原子又は1価の有機基を示し、R13は、2価の有機基を示す。〕
前記一般式(4)のR12における1価の有機基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、環状であってもよい。具体的には、炭素数1〜12の基が好ましく、その具体例としては、カルボキシル基;シアノ基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基;カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、2−カルボキシプロピル基、3−カルボキシプロピル基、2−カルボキシブチル基、3−カルボキシブチル基、4−カルボキシブチル基等の炭素数2〜12のカルボキシアルキル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル等の炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜12のアシルオキシ基;
フェニル基、クメニル基等の炭素数6〜12のアリール基;ベンジル基、α−メチルベンジル基等の炭素数7〜12のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブチトキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシル基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシプロピル基、3−メトキシプロピル基、2−メトキシブチル基、3−メトキシブチル基、4−メトキシブチル基等の炭素数2〜12のアルコキシアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜12のシクロアルキル基や、これらの基の置換誘導体等を挙げることができる。
【0034】
これらのなかでも、水素原子、フッ素原子、メチル基等が好ましい。
【0035】
また、一般式(4)のR13における2価の有機基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、環状であってもよい。具体的には、炭素数1〜12の基が好ましく、その例としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,1−ジメチル−1,4−ブチレン基、2,2−ジメチル−1,4−ブチレン基、1,2−ジメチル−1,4−ブチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等を挙げることができる。
【0036】
これらの2価の有機基のうち、1,1−ジメチルエチレン基が好ましい。
【0037】
前記アクリルアミド誘導体(4)の具体例としては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−(α−カルボキシアクリルアミド)−2−メチルプロパンカルボン酸、2−〔α−(カルボキシメチル)アクリルアミド〕−2−メチルプロパンカルボン酸、2−〔α−(メトキシカルボニル)アクリルアミド〕−2−メチルプロパンカルボン酸、2−(α−シクロヘキシルアクリルアミド)−2−メチルプロパンカルボン酸、2−(α−フェニルアクリルアミド)−2−メチルプロパンカルボン酸、2−(α−ベンジルアクリルアミド)−2−メチルプロパンカルボン酸、2−(α−メトキシアクリルアミド)−2−メチルプロパンカルボン酸、2−〔α−(2−メトキシエチル)アクリルアミド〕−2−メチルプロパンカルボン酸、2−〔α−(アセチルオキシ)アクリルアミド〕−2−メチルプロパンカルボン酸、2−(α−シアノアクリルアミド)−2−メチルプロパンカルボン酸等を挙げることができる。
【0038】
これらの他の重合性不飽和化合物のなかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物、アクリルアミド誘導体(5)等が好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートや、アクリルアミド誘導体(5)として2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸が特に好ましい。
【0039】
尚、これらの他の構造単位を与える重合性不飽和化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
前記重合体(A)における、前記構造単位(1)の含有割合は、特に限定されないが、重合体(A)に含まれる全ての構造単位の合計を100モルとした場合に、5モル以上であることが好ましく、より好ましくは5〜40モル、更に好ましくは5〜30モルである。この含有量が5モル以上である場合、前記重合体(A)の水に対する溶解性を上げることが可能であり且つ得られる上層反射防止膜は塩基遮蔽効果にすぐれたものとなるため好ましい。
【0041】
また、前記構造単位(2)の含有割合は、特に限定されないが、重合体(A)に含まれる全ての構造単位の合計を100モルとした場合に、50モル以上であることが好ましく、より好ましくは50〜80モル、更に好ましくは60〜70モルである。この含有量が50モル以上である場合、十分な定在波防止効果(反射防止能)を備えることができるため好ましい。
【0042】
また、前記構造単位(3)の含有割合は、特に限定されないが、重合体(A)に含まれる全ての構造単位の合計を100モルとした場合に、60モル以上であることが好ましく、より好ましくは60〜90モル、更に好ましくは80〜90モルである。この含有量が60モル以上である場合、十分な定在波防止効果(反射防止能)を備えることができるため好ましい。
【0043】
本発明における重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは1,500〜500,000、更に好ましくは2,000〜100,000である。この重合体(A)のMwが1,000未満である場合、反射防止膜を形成する際の塗布性、成膜性等が低下する傾向がある。一方、1,000,000を超える場合、水やアルカリ現像液に対する溶解性、塗布性等が低下する傾向がある。
【0044】
また、前記重合体(A)を製造する際の重合方法は特に限定されず、例えば、各構造単位に対応する重合性不飽和単量体を用いて、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等の適宜の方法により、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合、溶液重合、沈澱重合等の種々の重合形態で実施することができる。
【0045】
尚、本発明の組成物には、重合体(A)が1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
<(B)ヒドロキシル基を有する3級アミン化合物>
また、本発明の上層反射防止膜形成組成物は、前記重合体(A)以外に、(B)ヒドロキシル基を有する3級アミン化合物(以下、「3級アミン化合物(B)」ともいう)を含有する。
【0046】
前記3級アミン化合物(B)としては、例えば、トリエタノールアミン、3−(ピペリジン−1−イル)プロパン−1−2−ジオール、t−ブチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレート等が挙げられる。これら3級アミン化合物(B)としては、トリエタノールアミンが、レジストパターン形状が添加前と変わらず、DOFを広げることができるため特に好ましい。
【0047】
尚、これらの3級アミン化合物(B)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記3級アミン化合物(B)の含有量は、前記重合体(A)100質量部に対して、01〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは1〜10質量部である。この含有量が1〜10質量部である場合、レジストパターン形状が添加前と変わらず、DOFを広げることができるため特に好ましい。
【0049】
<(C)水>
また、本発明の上層反射防止膜形成用組成物は、前記重合体(A)及び含窒素化合物(B)以外に、水を含有する。
【0050】
前記水は特に限定されず、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水等を用いることができる。
【0051】
<(D)界面活性剤>
また、本発明の上層反射防止膜形成用組成物は、レジスト被膜上での反射防止膜組成物のぬれ広がりやすさを良くする観点から、アセチレン基を有する界面活性剤(以下、「界面活性剤(D)」ともいう。)を含有することが好ましい。
【0052】
前記界面活性剤(D)としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0053】
【化7】

【0054】
〔一般式(5)において、R14は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ独立に、0〜25の整数であり、(m+n)=0〜40を満たす。〕
前記一般式(5)において、R14の炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等を挙げることができる。これらのうち、メチル基、エチル基等が好ましい。
【0055】
また、一般式(5)におけるm及びnは、それぞれ、0〜25の整数であり、且つ(m+n)=0〜40を満たすものであり、特に、m及びnは、それぞれ、0〜20の整数であり、且つ(m+n)=0〜10を満たすものであることが好ましい。
【0056】
一般式(5)において、(m+n)=0である場合の、界面活性剤(D)の具体例としては、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール、8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、7−テトラデシン−6,9−ジオール、2,3,6,7−テトラメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジエチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール等が挙げられる。
【0057】
また、一般式(5)において、(m+n)=1〜40である場合の、界面活性剤(D)の具体例としては、前記(m+n)=0である場合の界面活性剤(D)で例示したジオール化合物のエチレンオキサイド付加誘導体を挙げることができる。
【0058】
更に、界面活性剤(D)としては、例えば、サーフィノール104、同104E、同420、同440、同465、同SE、同SE−F、同61、同82、同504、同2502、同DF58、同DF110D、同DF110L、同DF37、同DF75、同DF210、同CT111、同CT121、同CT131、同CT136、同GA、同TG、同TGE、同E104、同PD−001、同PD−002W、同PD−004、同EXP4001、同EXP4051、ダイノール604、オルフィンB、同P、同Y、同A、同STG、同SPC、同E1004、同E1010、同AK−02(以上、エアプロダクツ社製)等の商品名で市販されているものを使用することもできる。
【0059】
尚、これらの界面活性剤(D)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
前記界面活性剤(D)を含有する場合、この含有量は、前記重合体(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。この含有量が0.1〜20質量部である場合、反射防止膜組成物の塗布量をより低減し、反射防止膜の面内均一性を向上することが可能であるため好ましい。
【0061】
<他の添加剤>
本発明の上層反射防止膜形成用組成物には、本発明の所期の効果を損なわない限り、各種添加剤を配合することができる。
【0062】
前記添加剤としては、例えば、他の水溶性重合体やアルカリ可溶性重合体、酸発生剤、他の界面活性剤、等を挙げることができる。
【0063】
前記他の水溶性重合体やアルカリ可溶性重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリヒドロキシスチレン又はその誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体又はその加水分解物、ポリビニルヒドロキシベンゾエート、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0064】
これらの他の水溶性重合体或いはアルカリ可溶性重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、前記他の水溶性重合体及び/又はアルカリ可溶性重合体の配合量は、前記重合体(A)100質量部に対して、通常、200質量部以下であり、好ましくは100質量部以下である。
【0066】
前記酸発生剤は、レジストのパターン形状、解像度、現像性等を改善する作用を有する成分である。
【0067】
このような酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ハロアルキル基含有化合物、o−キノンジアジド化合物、ニトロベンジル化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホン化合物等を挙げることができる。これら酸発生剤としては、例えば、WO2006/059555号公報に記載の化合物等を挙げることができる。これらの酸発生剤のなかでも、特にオニウム塩が好ましい。前記酸発生剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
前記酸発生剤の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、通常、20質量部以下、好ましくは10質量部以下である。この酸発生剤の配合量が20質量部を超える場合、現像性が低下する傾向がある。
【0069】
前記他の界面活性剤としては、20℃の水に対する溶解度が0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上である界面活性剤を挙げることができる。このような他の界面活性剤としては、溶解度が前記条件を満たす限り、特に限定されるものではなく、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤或いは両性界面活性剤のいずれでもよい。
【0070】
具体的には、例えば、商品名で、サーフロンS−111、同S−112、同S−113、同S−121、同S−131、同S−132、同S−141、同S−145、同S−381、同S−383、同S−393、同KH−40、同SA−100(以上、セイミケミカル(株)製);フタージェント100、同100C、同110、同140A、同150、同150CH、同222F、同250、同251、同300、同310、同400SW、同501、同A−K、同FTX−218(以上、(株)ネオス製);エフトップEF−101、同EF−102、同EF−103、同EF−104、同EF−105、同EF−112、同EF−121、同EF−122A、同EF−122B、同EF−122C、同EF−123A、同EF−123B、同EF−125M、同EF−132、同EF−135M、同EF−201、同EF−204、同EF−351、同EF−352、同EF−601、同EF−801、同EF−802(以上、(株)ジェムコ製)、フロラードFC−4430(住友スリーエム(株))等を挙げることができる。
【0071】
これらの他の界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
尚、他の界面活性剤の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、0.001〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.002〜30質量部である。
【0073】
また、前記以外の添加剤として、吸光剤、保存安定剤、消泡剤、接着助剤、防腐剤、染
顔料等を挙げることができる。
[2]上層反射防止膜形成用組成物の調製方法
本発明の上層反射防止膜形成用組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、前記重合体(A)と、前記含窒素化合物(B)と、前記水(C)と、必要に応じて前記界面活性剤(D)や前記他の添加剤と、を混合することにより得ることができる。
【0074】
また、本発明の上層反射防止膜形成用組成物において、重合体(A)の固形分濃度は特に限定されないが、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
【0075】
尚、前記上層反射防止膜形成用組成物の調製においては、前記水(C)以外の溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の1価アルコール類のほか、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸エチル、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等を使用することができる。
【0076】
これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
前記溶媒の使用量は、前記水(C)100質量%に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
[3]上層反射防止膜
本発明の上層反射防止膜は、前述の上層反射防止膜形成用組成物を用いて得られる。具体には、例えば、レジスト被膜等の表面に塗布することにより、上層反射防止膜形成用組成物の塗膜を形成し、この塗膜を加熱処理(通常10〜300℃)することにより、硬化させ、上層反射防止膜を形成することができる。
【0078】
上層反射防止膜形成用組成物を塗布する方法としては、回転塗布法、流延塗布法、ロール塗布法等を利用することができる。
【0079】
また、上層反射防止膜の厚さは、Λ/4m(Λは放射線の波長、mは上層反射防止膜の屈折率)の奇数倍に近いほど、フォトレジスト膜の上側界面における反射抑制効果が大きくなる。このため、上層反射防止膜の厚さをこの値に近づけることが好ましい。
[4]レジストパターンの形成方法
本発明のレジストパターンの形成方法は、基板上にレジスト被膜を形成し、該レジスト被膜に放射線を照射(以下、「露光」という。)し、次いで現像することにより、レジストパターンを形成するにあたり、予め前記レジスト被膜上に、本発明の前記反射防止膜を形成したのち、所定のパターン形状に露光し、次いで現像して前記反射防止膜を除去する工程を経ることを特徴とする。
【0080】
本発明のレジストパターンの形成方法に使用されるレジストとしては、例えば、キノンジアジド化合物を含有するノボラック系レジストの如きポジ型レジストや、ポジ型またはネガ型の化学増幅型レジスト等を挙げることができる。
このようなレジストからレジスト被膜を形成する際には、レジストを、必要に応じて、適当な溶剤に、例えば5〜50重量%の固形分濃度で溶解したのち、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過してレジスト溶液を調製し、このレジスト溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布方法により、例えばシリコンウエハー、アルミニウムで被覆したウエハー等の基板上に塗布し、通常、プレベークして、溶剤を揮発させることによりレジスト被膜を形成する。この場合、市販のレジスト溶液を用いるときは、そのままレジストパターンの形成に使用することができる。
前記レジスト溶液の調製に使用される溶剤としては、例えば前記上層反射防止膜形成用組成物の調製について例示した溶剤と同様のものを挙げることができる。
次いで、上層反射防止膜形成用組成物溶液をレジスト被膜上に塗布し、通常、再度ベークすることにより、上層反射防止膜を形成する。この場合、反射防止膜の厚さがλ/4m(λは放射線の波長、mは反射防止膜の屈折率)の奇数倍に近いほど、レジスト被膜の上側界面における反射抑制効果が大きくなる。
上層反射防止膜形成用組成物溶液をレジスト被膜上に塗布する際には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布方法を採用することができる。
なお、本発明においては、レジスト溶液塗布後のプレベークおよび上層反射防止膜形成用組成物溶液塗布後のベークのいずれかの処理は、工程簡略化のため省略してもよい。 その後、所定のパターン形状となるように部分的に露光する。この際に用いられる放射線としては、使用されるレジストあるいはレジストと塩基遮断性反射防止膜との組合せに応じて、例えば可視光線;g線、i線等の紫外線;ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー等の遠紫外線;シンクロトロン放射線等のX線;電子線等の荷電粒子線の如き各種放射線を選択使用する。この場合、レジストの解像度、パターン形状、現像性等を向上させるために、露光後ベークを行なうことが好ましい。露光後ベークの温度は、使用されるレジストに応じて適宜調節されるが、通常、50〜200℃程度である。その後、レジスト被膜を現像して、所望のレジストパターンを形成する。現像に使用される現像液は、使用されるレジストに応じて適宜選択することができるが、アルカリ現像液が好ましい。また、アルカリ現像液により現像した場合は、通常、現像後に洗浄する。
本発明のレジストパターンの形成方法においては、現像液にアルカリ現像液を使用することにより、上層反射防止膜の剥離工程を別途設ける必要がなく、現像中に、また現像後に洗浄する場合は洗浄中にも、反射防止膜がレジスト被膜と同時に容易に除去されるものであり、この点が本発明の重要な特徴の1つである。
前記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物を溶解した水溶液を挙げることができる。
また、これらのアルカリ現像液には、水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。前記アルカリ現像液を用いて現像した場合は、通常、現像後水洗する。
以上、本発明の反射防止膜形成用組成物を構成する各成分とこれらの成分相互の関係、並びに本発明の積層体およびレジストパターンの形成方法について詳細に説明したが、本発明は、その要旨を越えない限り、前記以外にも種々の変法を採用することができるものである。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。また、この実施例の記載における「部」及び「%」の記載は、特記しない限り質量基準である。
[1]重合体(A)及び重合体(B)の合成
以下、重合体(A)〔重合体(A−1)及び(A−2)〕、並びに重合体(B)〔重合体(B−1)〕の合成例について説明する。尚、各合成例で得られた各重合体の物性評価は、次の要領で行った。
(1)Mw
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、G4000HXL:1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。
(2)共重合割合
H−NMR及び13C−NMRによる吸収スペクトルの各単量体の側鎖基に由来するピークの面積比により、各単量体の共重合割合を決定した。
【0082】
合成例1〔重合体(A−1)の合成〕
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、t−ブタノール170部を仕込み、15分間窒素ガスをバブリングした後、2−アクリアミド−2−メチルプロパンスルホン酸10部、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート70部、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート20部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部を添加して、内温を60℃に昇温した。1時間後、内温を70℃に昇温して、更に5時間反応させた後、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
【0083】
この共重合体は、Mwが9.0×10であり、2−アクリアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート/2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレートの共重合割合(モル%)が、10/70/20(%)であった。この共重合体を重合体(A−1)とする。
【0084】
合成例2〔重合体(A−2)の合成〕
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、メタノール300部、イソプロピルアルコール50部を仕込み、15分間窒素ガスをバブリングした後、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸20部、3−(パーフルオロ−n−ブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート(ダイキンファインケミカル研究所製、商品名「R−1433」)80部、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド〕ハイドレート0.5部を添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を60℃に昇温して、更に8時間反応させた後、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
【0085】
この共重合体は、Mwが4.5×10であり、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/3−(パーフルオロ−n−ブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレートの共重合割合(モル%)が、20/80であった。この共重合体を重合体(A−2)とする。
[2]上層反射防止膜形成用組成物の調製
<実施例1〜3および比較例1〜2>
表1に示すように、重合体[(A−1)、(A−2)]、ヒドロシル基を有する3級アミン(B−1)、その他アミン(BR−1)および界面活性剤(D−1)を配合し、固形分濃度が1.7質量%となるように水(C)で希釈して、実施例1〜3及び比較例1〜2の各上層反射防止膜形成用組成物を調製した。
【0086】
【表1】

【0087】
尚、実施例1〜3および比較例1〜2で用いたヒドロシル基を有する3級アミン(B−1)、その他アミン(BR−1)および界面活性剤(D−1)の詳細は以下のとおりである。
ヒドロシル基を有する3級アミン(B−1):トリエタノールアミン。
その他アミン(BR−1):トリメチルアンモニウムハイドロオキサイド。
界面活性剤(D−1):アセチレン基を有する界面活性剤(商品名「サーフィノール465」、エアプロダクツ社製)。
[3]性能評価
下記に示す方法にて、実施例1〜3および比較例1〜2の各上層反射防止膜形成用組成物の性能を評価した。その結果を表2に示す。
(1)反射防止能(定在波防止効果)
直径200mmのシリコンウエハー上に、レジスト(商品名「AR1588J」、JSR社製)を回転塗布した後、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚が100nm〜150nmの範囲で10nmずつ異なるようにレジスト被膜を形成した。次いで、レジスト被膜上に、実施例及び比較例の各上層反射防止膜形成用組成物を用いて、膜厚が32nmとなるように反射防止膜を形成した。その後、縮小投影露光機(型名「S306C」、ニコン社製)を用いて、露光量を変えて露光を行った後、90℃のホットプレート上で90秒間露光後ベークを行い、更に2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0088】
その後、得られたレジストパターンを光学顕微鏡で観察し、100nm幅のスペース部に膜残りが発生しなくなる最小露光量を求め、その値をそれぞれの膜厚における感度とした。そして、求めた感度の最大値をEmax、最小値をEminとし、下式のS値(膜厚変化に伴う感度の変動、即ち寸法変動)を定在波効果の指標とし、Sが10より小さい場合を「○」とし、Sが10以上の場合を「×」とした。
【0089】
S=(Emax−Emin)×100/Emax
(2)塗布性
直径300mmのシリコンウエハー上に、レジスト(商品名「AR1588J」、JSR社製)を回転塗布した後、90℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、厚さ450nmのレジスト被膜を形成した。次いで、レジスト被膜上に、実施例及び比較例の各上層反射防止膜形成用組成物を、cc塗布し、1500rpmの回転数でスピンコートを行った。そして、ウエハー全面に上層反射防止膜が形成された場合を「○」とし、形成されなかった場合を「×」として、塗布性を評価した。ベストのフォーカス
(3)焦点範囲(DOF)
直径200mmのシリコンウエハー上に、レジスト(商品名「AR1588J」、JSR社製)を回転塗布した後、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚が270nmのレジスト被膜を形成した。次いで、レジスト被膜上に、実施例及び比較例の各上層反射防止膜形成用組成物を用いて、膜厚が32nmとなるように反射防止膜を形成した。その後、縮小投影露光機(型名「S306C」、ニコン社製)を用いて、露光量および焦点を変えて露光を行った後、90℃のホットプレート上で90秒間露光後ベークを行い、更に2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で現像を行い、レジストパターンを形成した。その後、得られたレジストパターンを光学顕微鏡で観察し、ホール直径120nmでピッチ240nmのコンタクトホールパターンを形成したとき、ホールパターンの線幅が108nm以上132nm以下となる焦点範囲(DOF)が一番大きい露光量での焦点範囲を、焦点範囲(DOF)として評価した。
【0090】
【表2】

【0091】
[4]実施例の効果
表2によれば、本実施例1〜3の各上層反射防止膜形成用組成物は、焦点範囲(DOF)が大きくなることが確認された。また、本願実施例1〜3の各上層反射防止膜形成用組成物は、塗布性に優れており、且つ十分な定在波防止効果を備えているため、有用な反射防止膜を形成できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体、
(B)ヒドロキシル基を有する3級アミン化合物及び
(C)水
とを含有することを特徴とする上層反射防止膜形成用組成物。
【化1】

〔一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは、直接結合、−CH−、−COO−A−、又は−CONH−A−を示し、Aは炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示す。〕
【請求項2】
前記重合体(A)100質量部に対して、前記ヒドロキシル基を有する3級アミン化合物(B)の含有量が、0.1〜20質量部であることを特徴とする請求項1に記載の上層反射防止膜形成用組成物。
【請求項3】
前記重合体(A)が、更に、下記一般式(2)で表される構造単位、及び/又は下記一般式(3)で表される構造単位を有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の上層反射防止膜形成用組成物。
【化2】

〔一般式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜8の3価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。一般式(3)において、R水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基又は部分フッ素化アルキル基を示す。〕
【請求項4】
更に、(D)アセチレン基を有する界面活性剤を含有する請求項1乃至3に記載の上層反射防止膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の上層反射防止膜形成用組成物を用いて得られることを特徴とする上層反射防止膜。
【請求項6】
基板上にレジスト被膜を形成し、該レジスト被膜に放射線を照射し、次いで現像することにより、レジストパターンを形成するにあたり、予め前記レジスト被膜上に、請求項5に記載の上層反射防止膜を形成したのち、所定のパターン形状に放射線を照射し、次いで現像して前記反射防止膜を除去する工程を経ることを特徴とするレジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2010−128136(P2010−128136A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302124(P2008−302124)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】