説明

上層膜形成組成物及びフォトレジストパターン形成方法

【課題】スキャンスピードが高速(例えば、700mm/s)であっても水残りを抑制でき、さらに液浸液と上層膜との界面におけるバブルの発生をも抑制することのできる液浸上層膜を形成できる上層膜形成用組成物の提供。
【解決手段】液浸上層膜形成用組成物は、下記一般式(1−1)で表される繰り返し単位および(1−2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも一種、炭化水素基を有する繰り返し単位およびフッ素置換炭化水素基を有する繰り返し単位を含有する重合体(A)と溶剤(S)とを含む。


(一般式(1−1)及び(1−2)中、Rは水素原子等を示す。R及びRは互いに独立に単結合又は炭化水素基を示し、Rはフッ素原子置換炭化水素基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ微細化のために使用される液浸露光時に、フォトレジスト膜を保護するとともに、フォトレジスト膜の成分の溶出を抑えて投影露光装置のレンズを保護する上層膜を形成するのに有用な上層膜形成組成物、及びこの上層膜形成組成物を用いたフォトレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等を製造するに際しては、フォトマスクとしてのレチクルのパターンを投影光学系を介してフォトレジスト膜(以下、「フォトレジスト」と記す場合がある)が塗布されたウェハ上の各ショット領域に転写する、ステッパー型、またはステップアンドスキャン方式の投影露光装置が使用されている。投影露光装置に備えられている投影光学系の解像度は、使用する露光波長が短く、投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、集積回路の微細化に伴い投影露光装置で使用される放射線の波長である露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大してきている。
【0003】
また、露光を行う際には、解像度と同様に焦点深度も重要となる。解像度R及び焦点深度δは、それぞれ以下の数式で表される。同じ解像度Rを得るには、短い波長を有する放射線を用いた方が大きな焦点深度δを得ることができる。 R=k1・λ/NA (i) δ=k2・λ/NA (ii) (但し、λは露光波長、NAは投影光学系の開口数、k1及びk2はいずれもプロセス係数である)
【0004】
露光されるウェハ表面にはフォトレジスト膜が形成されており、このフォトレジスト膜にパターンが転写される。従来の投影露光装置では、ウェハが配置される空間は、空気または窒素で満たされている。このとき、ウェハと投影露光装置のレンズとの空間が屈折率nの媒体で満たされると、上記の解像度R、焦点深度δは以下の数式にて表される。 R=k1・(λ/n)/NA (iii) δ=k2・nλ/NA (iv)
【0005】
例えば、ArFプロセスで、前記媒体として水を使用する場合、波長193nmの光の水中での屈折率n=1.44を用いると、空気または窒素を媒体とする露光時と比較し、解像度Rは69.4%(R=k1・(λ/1.44)/NA)、焦点深度は144%(δ=k2・1.44λ/NA)となる。
【0006】
このように、露光するための放射線の波長を短波長化し、より微細なパターンを転写できる投影露光する方法を液浸露光といい、リソグラフィの微細化、特に数10nm単位のリソグラフィには、必須の技術と考えられ、その投影露光装置も知られている(特許文献1参照)。
【0007】
水を液浸露光時の媒体とする液浸露光方法においては、ウェハ上に塗布・形成されたフォトレジスト膜と投影露光装置のレンズは、それぞれ水と接触する。そのため、フォトレジスト膜に水が浸透し、フォトレジストの解像度が低下することがある。また、投影露光装置のレンズはフォトレジストを構成する成分が水へ溶出することによりレンズ表面を汚染することもある。
【0008】
このため、フォトレジスト膜と水等の媒体とを遮断する目的で、フォトレジスト膜上に上層膜(保護膜)を形成する方法がある。但し、この上層膜に対しては、(1)放射線の波長に対して十分な透過性を有すること、(2)フォトレジスト膜と殆どインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト膜上に形成可能であること、(3)液浸露光時に際して水等の媒体に溶出することなく安定な被膜を維持可能であること、(4)現像液であるアルカリ液等に容易に溶解すること等の特性を有することが要求される。なお、関連する従来技術文献としては、特許文献2及び3等が開示されている。
【0009】
また、液浸露光プロセスにおいて、スキャン式の液浸露光機を用いて露光する場合には、レンズの移動に追随して液浸液も移動しないと露光スピードが低下するため、生産性に影響を与えることが懸念される。液浸液が水である場合においては、液浸上層膜は疎水的(即ち、高い後退接触角を有していること)であることが望まれる。特許文献4には、高い撥水性を有する重合体を添加した液浸上層膜形成用組成物が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平11−176727号公報
【特許文献2】特開2005−264131号公報
【特許文献3】特開2006−64711号公報
【特許文献4】国際公開第08/047678号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、撥水性の高い上層膜に対してスキャン露光を行うと、バブルが発生し、そのバブルが現像後のレジストパターンに転写されることに起因するバブル欠陥が問題となる場合がある。これは、上層膜の後退接触角を高めた場合、前進接触角も高くなるために、液浸液と上層膜との界面で泡をかむことが主な原因と考えられる。従って、高速なスキャン露光に対応するためには、上記上層膜は、後退接触角を高めつつ(例えば75°以上)と、前進接触角を高めすぎない(例えば95°以下)ような更なる改良が求められている。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、後退接触角と前進接触角とが適度なバランスを有し、スキャンスピードが高速(例えば、700mm/s)であっても水残りを抑制でき、さらに液浸液と上層膜との界面におけるバブルの発生をも抑制することのできる液浸上層膜を形成できる上層膜形成用組成物を提供すること、および上記液浸上層膜形成用組成物の成分として有効な重合体を提供することを目的とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上層膜形成組成物は、露光光に対する十分な透過性を有し、フォトレジスト膜と殆どインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト膜上に形成され、液浸露光時に、水などの媒体に極めて溶出し難く安定な被膜を維持し、高解像度のレジストパターンを形成しつつ、十分に高い後退接触角を有し、かつ、十分に低い前進接触角を有する上層膜を形成することができるという効果を奏するものである。このような上層膜形成組成物によって、スキャンスピードが高速(例えば、700mm/s)であってもウォーターマーク欠陥や、バブル欠陥等の欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0015】
[1]上層膜形成組成物: 本発明の上層膜形成組成物は、酸解離性基を含有する重合体(X)と酸発生剤(Y)とを含むフォトレジスト組成物によって形成されるフォトレジスト膜の表面上に上層膜を形成するために用いられるものであって、炭化水素基を有する繰り返し単位を含有する重合体(A)を含有することを特徴とする液浸用上層膜組成物。
【0016】
上記上層膜形成組成物より形成される上層膜は、露光光に対する十分な透過性を有し、フォトレジスト膜と殆どインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト膜上に形成され、液浸露光時に、水などの媒体に極めて溶出し難く安定な被膜を維持し、高解像度のレジストパターンを形成しつつ、十分に高い後退接触角、かつ、十分に低い前進接触角を有するという利点がある。
【0017】
上記上層膜形成組成物は、フォトレジスト膜の表面上に上層膜を形成するために用いられるものであり、好ましくは、上記フォトレジスト膜は、酸解離性基を含有する重合体(X)と酸発生剤(Y)とを含むフォトレジスト組成物によって形成されるものである。
【0018】
更に、上記重合体(X)は、酸解離性基を含む繰り返し単位を含有し、この繰り返し単位が、重合体(X)の全繰り返し単位に対して、30〜60モル%含まれるものであることが好ましい。上記繰り返し単位が30モル%未満であると、レジストとしての解像度が劣化するおそれがある。一方、上記繰り返し単位が60モル%超であると、上層膜剥離後のレジスト膜厚が極度に減少するおそれがある。
【0019】
上記重合体(X)としては、例えば、下記繰り返し単位(M−1)、下記繰り返し単位(M−2)、及び下記繰り返し単位(M−3)を含有する樹脂、下記繰り返し単位(M−1)、下記繰り返し単位(M−2)、及び下記繰り返し単位(M−4)を含有する樹脂、下記繰り返し単位(M−1)、下記繰り返し単位(M−3)、及び下記繰り返し単位(M−5)を含有する樹脂などを挙げることができる。
【0020】
【化1】

【0021】
上記酸発生剤(Y)は、放射線照射(露光)により酸発生剤から酸が発生し、その発生した酸の作用によって、樹脂の酸性基(例えば、カルボキシル基)を保護していた酸解離性基が解離して、酸性基が露出するものである。
【0022】
上記酸発生剤(Y)としては、例えば、トリフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニル・ジフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2’−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2’−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2’−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネートなどを挙げることができる。
【0023】
[1−1]重合体(A): 上記重合体(A)は、下記一般式(1−1)で表される繰り返し単位または(1−2)から選ばれる繰り返し単位のうち少なくとも一種(以下、「繰り返し単位(1)」ともいう。)を有し、かつ、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含有し、かつ、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含有するものである。このような構成により、重合体(A)が炭化水素基を有する繰り返し単位を含有するため、十分に高い後退接触角、かつ、十分に低い前進接触角を有するという利点がある。
【0024】
【化2】

(一般式(1−1)及び(1−2)において、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、R、Rは互いに独立に単結合又は炭素数1〜6の直鎖状或いは分岐状のアルカンジイル基、炭素数4〜12の脂環式のアルカンジイル基を示し、Rは少なくとも一つのフッ素を含有する炭素数1〜10の直鎖状或いは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の脂環式のアルキル基を示す。)
【0025】
【化3】

(一般式(2)中、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、Rは少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、または少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3〜20の脂環式の1価の炭化水素基を示す。)
【0026】
【化4】

(一般式(3)中、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、Rは炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、または炭素数3〜20の脂環式の1価の炭化水素基を示す。)
【0027】
一般式(1−1)のRは単結合又は炭素数1〜6の直鎖状或いは分岐状のアルカンジイル基、炭素数4〜12の脂環式のアルカンジイル基を表し、好ましいRとしては、メチレン基、エチレン
基、1,3−プロピレン基若しくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、又は、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルカンジイル基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基若しくは2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基などのアダマンチレン基等の2〜4環式炭素数4〜30の炭化水素環基などの架橋環式炭化水素環基等が挙げられる。
【0028】
特にRとして2価の脂環式炭化水素基を含むときは、ビストリフルオロメチル−ヒドロキシ−メチル基と該脂肪族環状炭化水素基との間にスペーサーとして炭素数1〜4のアルカンジイル基を挿入することが好ましい。また、Rとしては、2,5−ノルボルニレン基を含む炭化水素基、1,2−エチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0029】
一般式(1−1)を与える単量体中で好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−3−プロピル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ブチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−5−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸2−{[5−(1’,1’,1’−トリフルオロ−2’−トリフルオロメチル−2’−ヒドロキシ)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル}エステル、(メタ)アクリル酸3−{[8−(1’,1’,1’−トリフルオロ−2’−トリフルオロメチル−2’−ヒドロキシ)プロピル]テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル}エステル等が挙げられる。
【0030】
一般式(1−2)のRは単結合又は炭素数1〜6の直鎖状或いは分岐状のアルカンジイル基、炭素数4〜12の脂環式のアルカンジイル基を表し、好ましいRとしては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基若しくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、インサレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、又は、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルカンジイル基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基若しくは2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基などのアダマンチレン基等が挙げられる。
【0031】
一般式(1−2)のRは少なくとも一つのフッ素を含有する炭素数1〜10の直鎖状或いは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の脂環式のアルキル基を表し、例えば、トリフルオロメチル基等が好ましい。
【0032】
一般式(1−2)を与える単量体中で好ましいものとしては、(((トリフルオロメチル)スルホニル)アミノ)エチル−1−メタクリレート、2−(((トリフルオロメチル)スルホニル)アミノ)エチル−1−アクリレート、及び下記式で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化5】

【0034】
一般式(2)のRは少なくとも一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12の直鎖状或いは分岐状或いは脂環式構造を有するアルキル基を表し、好ましいRとしては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基若しくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、又は、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルカンジイル基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基若しくは2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の部分フッ素化或いはパーフルオロアルキル基等が挙げられる。
【0035】
一般式(2)を与える好ましい単量体としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0036】
一般式(3)中、Rは、炭素数1〜12の直鎖状或いは分岐状或いは脂環式構造を有するアルキル基を表し、好ましいRとしては、メチル基、エチル基、1,3−プロピル基若しくは1,2−プロピル基などのプロピル基、テトラメチル基、ペンタメチル基、ヘキサメチル基、ヘプタメチル基、オクタメチル基、ノナメチル基、デカメチル基、ウンデカメチル基、ドデカメチル基、トリデカメチル基、テトラデカメチル基、ペンタデカメチル基、ヘキサデカメチル基、ヘプタデカメチル基、オクタデカメチル基、ノナデカメチル基、1−メチル−1,3−プロピル基、2−メチル1,3−プロピル基、2−メチル−1,2−プロピル基、1−メチル−1,4−ブチル基、2−メチル−1,4−ブチル基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、又は、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチル基などのシクロブチル基、1,3−シクロペンチル基などのシクロペンチル基、1,4−シクロヘキシル基などのシクロヘキシル基、1,5−シクロオクチル基などのシクロオクチル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニル基若しくは2,5−ノルボルニル基などのノルボルニル基、1,5−アダマンチル基、2,6−アダマンチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基やシクロアルキル等が挙げられる。
【0037】
上記一般式(3)で表される繰り返し単位を得るために用いられる単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジシクロペンチル、等を好適に用いることができる。
【0038】
重合体(A)における繰り返し単位(1)の割合は、重合体(A)の全繰り返し単位に対して、1〜85モル%であることが好ましく、30〜85モル%であることが更に好ましい。繰り返し単位(1)の含有割合が上記範囲内であると、本発明の組成物から形成される液浸上層膜が十分に高い後退接触角を発現し、また、後述するレジストパターン形成方法において各種欠陥が発生するおそれがない点で好ましい。
【0039】
繰り返し単位(2)の割合は、重合体(A)の全繰り返し単位に対して、5〜60モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることが更に好ましい。繰り返し単位(2)の含有割合が上記範囲内であると、本発明の組成物から形成される液浸上層膜が十分に高い後退接触角を発現し、また、後述するレジストパターン形成方法において各種欠陥が発生するおそれがない点で好ましい。
【0040】
繰り返し単位(3)の割合は、重合体(A)の全繰り返し単位に対して、10〜40モル%であることが好ましく、10〜30モル%であることが更に好ましい。繰り返し単位(3)の含有割合が上記範囲内であると、本発明の組成物から形成される液浸上層膜が発現する後退接触角と前進接触角のバランスが良好となる点で好ましい。
【0041】
[1−2]重合体(B): 上記重合体(B)は、上記一般式(1−1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(1−2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種(以下、「繰り返し単位(11)」ともいう。)と、下記一般式(4)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(41)」ともいう。)と、を含有する。
【0042】
【化6】

(一般式(4)において、Rは、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示し、R10は、単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基を示す。)
【0043】
一般式(4)のR10は単結合又は炭素数1〜6の直鎖状或いは分岐状のアルカンジイル基、又は、−C(O)XR−を表す。Rは炭素数1〜6の直鎖状或いは分岐状のアルカンジイル基を表し、Xは−O−または−NH−を表す。Rとして表される炭素数1〜6の直鎖状或いは分岐状のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基若しくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。一般式(4)で表される繰り返し単位を与える好ま
しい単量体としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、4−ビニル−1−ベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0044】
重合体(B)における繰り返し単位(11)の割合は、重合体(B)の全繰り返し単位に対して、80〜99モル%であることが好ましく、85〜99モル%であることが更に好ましい。繰り返し単位(11)の割合が上記範囲内であることにより、後述するレジストパターン形成方法において各種欠陥が発生するおそれがなく、また、下地となるレジスト層への影響が少なく、レジスト性能を低下させるおそれがない点で好ましい。
【0045】
重合体(B)における繰り返し単位(41)の割合は、重合体(B)の全繰り返し単位に対して、1〜20モル%であることが好ましく、1〜15モル%であることが更に好ましい。繰り返し単位(11)の割合が上記範囲内であることにより、後述するレジストパターン形成方法において各種欠陥が発生するおそれがなく、また、下地となるレジスト層への影響が少なく、レジスト性能を低下させるおそれがない点で好ましい。
【0046】
[1−3]重合体(C): 上記重合体(C)は、下記一般式(5−1)で表される繰り返し単位、下記一般式(5−2)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(5−3)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種(以下、「繰り返し単位(5)」ともいう。)と、上記一般式(4)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(42)」ともいう。)と、を含有する。一般式(4)で表される繰り返し単位は、既に上述した繰り返し単位と同様のものを例示することができる。
【0047】
【化7】

(一般式(5−1)〜(5−3)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、R12及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基、又は炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基を示す。)
【0048】
前記一般式(5−1)及び(5−2)における、R12及びR13の炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基;1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基等のプロピレン基;テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、2−プロピリデン基等を挙げることができる。
【0049】
また、前記R12及びR13の炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、単環式炭化水素環基、架橋環式炭化水素環基等が挙げられる。 前記単環式炭化水素環基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基等のアリーレン基、1,3−シクロブチレン基等のシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基等のシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等のシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基等のシクロオクチレン基等の炭素数4〜12のシクロアルカンジイル基等が挙げられる。 また、架橋環式炭化水素環基としては、例えば、1,4−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基等のノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等のアダマンチレン基等の炭素数4〜12の2〜4環式炭化水素環基等が挙げられる。
【0050】
前記繰り返し単位(5−1)を得るための単量体としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸3−メタクリロイルオキシプロピル、ヘキサヒドロフタル酸4−メタクリロイルオキシブチル等が挙げられる。 また、前記繰り返し単位(5−2)を得るための単量体としては、例えば、シクロヘキサカルボン酸2−メタクリロイルオキシ、プロピルカルボン酸3−メタクリロイルオキシ等が挙げられる。 更に、前記繰り返し単位(5−3)を得るための単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0051】
また、前記重合体(C)は、繰り返し単位(42)を更に含有するものである。重合体(C)が繰り返し単位(42)を含有することで、現像後のリンス洗浄プロセスにてフォトレジスト膜の主成分である樹脂がフォトレジスト膜上に再付着する問題(Blob欠陥)を抑制することができる。未露光のフォトレジスト膜/上層膜界面では現像時、上層膜成分が現像液に溶解しながら拡散する一方、フォトレジスト膜の成分は現像液に溶解せずに拡散する。従って、上記Blob欠陥の主な原因は現像液に溶解しなかった樹脂成分がフォトレジスト膜上に再付着してしまうことであると考えられる。重合体(C)が強酸性基を有する繰り返し単位(42)を含む場合、フォトレジスト膜中の樹脂成分のうち、上記界面付近に存在するものについて、現像液に対する溶解性を向上させられるため、リンス洗浄後の樹脂の再付着を抑制できると考えられる。
【0052】
重合体(C)における繰り返し単位(5)の割合は、重合体(C)の全繰り返し単位に対して、80〜99モル%であることが好ましく、85〜99モル%であることが更に好ましい。繰り返し単位(5)の割合が上記範囲内であると、後述のレジストパターン形成方法において、各種欠陥を発生するおそれがなく、また、下地となるレジスト層に対する影響が小さく、レジスト性能の低下を生じない点で好ましい。
【0053】
重合体(C)における繰り返し単位(42)の割合は、重合体(C)の全繰り返し単位に対して、1〜20モル%であることが好ましく、1〜15モル%であることが更に好ましい。繰り返し単位(42)の割合が上記範囲内であると、後述のレジストパターン形成方法において、各種欠陥を発生するおそれがなく、また、下地となるレジスト層に対する影響が小さく、レジスト性能の低下を生じない点で好ましい。
【0054】
また、前記重合体(A)は、前記重合体(B)(および重合体(C))よりも高撥水性を有するため、重合体(A)と重合体(B)(および重合体(C))をブレンドした場合、重合体(A)を重合体(B)の上に偏在化させることができ、その偏在化により機能を分担することができる。即ち、上層膜上部に偏在する高撥水性を有する重合体(A)は、重合体(B)とのブレンドに伴い後退接触角が低下せず液滴残りに伴うウォーターマーク欠陥を防止できる。また、重合体(B)(および重合体(C))は優れたアルカリ現像液溶解性を有しており、重合体(B)(および重合体(C))が重合体(A)の下部(レジスト膜と液浸上層膜界面)に偏在することでインターミキシング層の溶解性低下を抑制して、Blob欠陥を低減させることができる。そのため従来のウォーターマーク欠陥に加えBlob欠陥も防止することができる。
【0055】
なお、本発明の上層膜形成組成物の重合体(A)及び重合体(B)及び重合体(C)(以下、これらをまとめて「重合体成分」ともいう。)には、分子量、ガラス転移点、溶媒への溶解性などを制御する目的で、他のラジカル重合性単量体に由来する繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位」と記す場合がある)、酸解離性基含有単量体に由来する構造単位を含有させることができる。
【0056】
上記他の繰り返し単位を得るために用いられる単量体としては、例えば、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド結合含有ラジカル重合性単量体;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有ラジカル重合性単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ニトリル基含有ラジカル重合性単量体、アミド結合含有ラジカル重合性単量体、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、これらの単量体は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記他の繰り返し単位の割合は、この他の繰り返し単位を含有する重合体(A)または重合体(B)または重合体(C)の全繰り返し単位に対して、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることが更に好ましい。上記割合が50モル%超であると、現像液であるアルカリ水溶液への溶解性が低くなりため、上層膜の除去が困難になり、現像後のレジストパターン上に残渣が発生するおそれがある。
【0058】
上記重合体成分は、その製造方法に特に制限はないが、例えば、適当な開始剤や連鎖移動剤の存在下、重合溶媒中で、対応する一以上のラジカル重合性単量体をラジカル重合することによって製造することができる。
【0059】
上記重合体成分を製造する際に用いられる重合溶媒としては、例えば、アルコール類、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類を挙げることができる。これらのうち、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、エステル類などが好ましい。
【0060】
上記重合体成分の重量平均分子量(以下、「Mw」と記す場合がある)は、それぞれ、2,000〜100,000であることが好ましく、2,500〜50,000であることが更に好ましく、3,000〜20,000であることが特に好ましい。重合体成分のMwが上記範囲内にあることで、上層膜としての耐水性及び機械的特性と、上記溶媒に対する溶解性の観点から好ましい。また、上記重合体成分のMwと数平均分子量(以下、「Mn」と記す場合がある)との比(Mw/Mn)は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることが更に好ましい。なお、本明細書において、「重量平均分子量」及び「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したポリスチレン換算による値である。
【0061】
なお、本発明の上層膜形成用組成物分は、ハロゲンイオン、金属等の不純物が少ないほど好ましく、不純物を少なくすることにより、上層膜としての塗布性とアルカリ現像液への均一な溶解性を更に改善することができる。このような組成物を得るための重合体成分の精製法としては、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法との組み合わせ等を挙げることができる。
【0062】
また、重合体成分は、放射線照射時に水等の媒体(液浸液)に対して安定な上層膜(保護膜)を形成することが可能であるとともに、レジストパターンを形成するための現像液に溶解し得る樹脂である。ここで、「液浸液に対して安定」とは、以下に示す「安定性評価試験」の結果測定される膜厚の変化率が、初期膜厚の3%以内であることを意味するものとする。
【0063】
[安定性評価試験]: (1):コータ/デベロッパ(1)(商品名:CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン社製)を用い、8インチシリコンウエハ上に、上層膜形成組成物をスピンコートし、90℃、60秒の条件で予備焼成(PB)を行うことにより、膜厚90nmの上層膜を形成する。この上層膜の膜厚(初期膜厚)を、光干渉式膜厚測定装置(商品名:ラムダエースVM−2010、大日本スクリーン製造社製)を用いて測定する。
【0064】
(2):次いで、その上層膜が形成されたウェハの表面に、前記コータ/デベロッパ(1)のリンスノズ
ルから超純水を60秒間吐出させた後、回転数4000rpmで15秒間振り切り、スピンドライする。このときの上層膜の膜厚を再度測定し、上層膜の膜厚変化(減少した膜厚)を算出する。初期膜厚に対する、減少した膜厚の比率が3%以内であれば「液浸液に対して安定」と評価する。
【0065】
また、レジストパターン形成後の現像液に溶解するとは、アルカリ性水溶液を用いた現像後のレジストパターン上に目視で残渣がなく上層膜が除去されていることをいう。即ち、本発明の上層膜形成組成物に含有される重合体成分は、水などの媒体に対して殆ど溶解することなく、かつ、放射線照射後のアルカリ性水溶液を用いる現像時に、上記アルカリ性水溶液に溶解するアルカリ可溶性の樹脂である。
【0066】
このような重合体成分を含有する上層膜形成組成物により形成される上層膜は、液浸露光時にフォトレジスト膜と水などの媒体とが直接接触することを防ぎ、その媒体の浸透によるフォトレジスト膜のリソグラフィ性能を劣化させることがなく、かつフォトレジスト膜から溶出する成分による投影露光装置のレンズの汚染を防止する作用がある。
【0067】
上記重合体(A)の含有割合は、重合体成分の合計を100質量%とした場合に、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上60質量%未満である事が更に好ましく、30質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。尚、上記含有割合は20質量%以上であることが好ましいが、上記含有割合が60質量%以上であると、BLOB欠陥が発生する恐がある。
【0068】
[1−3]溶剤(S): 本発明の上層膜形成組成物には、上記重合体成分を溶解することを目的として溶剤(S)を添加することが好ましい。この溶剤は、フォトレジスト膜上に塗布する際に、フォトレジスト膜とインターミキシングを発生する等の、リソグラフィ性能を劣化させることが殆どないものを好適に使用することができる。
【0069】
上記溶剤(S)としては、例えば、1価アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、エーテル類、環状エーテル類、高級炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類、水等をあげることができる。
【0070】
上記1価アルコール類としては、例えば、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール等の炭素数4〜10の1価アルコールを好適に挙げることができる。
【0071】
上記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等;多価アルコールのアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなど;多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類としては、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0072】
上記エーテル類としては、例えば、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、tert−ブチル−メチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、tert−ブチルプロピルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル、シクロペンチルプロピルエーテル、シクロペンチル−2−プロピルエーテル、シクロヘキシルプロピルエーテル、シクロヘキシル−2−プロピルエーテル、シクロペンチルブチルエーテル、シクロペンチル−tert−ブチルエーテル、シクロヘキシルブチルエーテル、シクロヘキシル−tert−ブチルエーテル等を挙げることができる。環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を挙げることができる。
【0073】
上記高級炭化水素類としては、デカン、ドデカン、ウンデカン等を挙げることができる。芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコール等を挙げることができる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチルを挙げることができる。
【0074】
これらのうち、1価アルコール類、エーテル類、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、高級炭化水素類が好ましい。特に好ましくは、上記炭素数4〜10のアルコール、及び/または炭素数4〜10のアルキル鎖を有するアルキルエーテルを含有するものである。
【0075】
また、前記上層膜形成用組成物は、その全固形分濃度が所望の値となるように調整された溶液を、孔径200nm程度のフィルターでろ過することにより調製することができる。尚、前記固形分濃度は特に限定されず適宜調整することができるが、上層膜形成用組成物を塗工する際の固形分濃度は、通常0.1〜20.0質量%である。なお、本明細書において「固形分」とは、上層膜形成用組成物から溶剤を除いた成分のことを指す。
【0076】
[1−4]添加剤: 本発明の上層膜形成組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させる目的で界面活性剤などを配合することもできる。
【0077】
上記界面活性剤としては、例えば、全て商品名で、BM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム社製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子社製)、SH−28PA、同−190、同−193、SZ−6032、SF−8428(以上、東レダウコーニングシリコーン社製)、エマルゲンA−60、104P、306P(以上、花王社製)などの市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。これらの界面活性剤の配合量は、重合体成分の合計量100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましい。
【0078】
本発明の上層膜形成組成物は、上記重合体成分を含み、上層膜形成組成物をフォトレジスト膜の表面上に塗工した後、50〜150℃で1〜360秒の条件で予備焼成を行って上層膜を形成した場合に、前記上層膜の、水に対する、後退接触角が75°以上、前進接触角が95°以下である上層膜が得られる(尚、ここでいう、「上層膜を形成した際における水との後退接触角/前進接触角」とは、重合体の4−メチル−2−ペンタノール溶液を8インチシリコンウエハ上にスピンコートし、ホットプレート上で90℃、60秒PBを行い、膜厚30nmの塗膜(上層膜)を形成し、その後、商品名「DSA−10」(KRUS社製)を使用して、速やかに、室温:23℃、湿度:45%、常圧の環境下で、測定した値を指す。さらに、後退接触角:前記上層膜上に配置した25μLの水滴を、10μL/minの速度で吸引して測定したものであり、前進接触角:前記上層膜上に配置した15μLの水滴を、10μL/minの速度で吐出して測定したものである。)。このように十分に高い後退接触角と十分に低い前進接触角を有することにより、高速度のスキャンスピードによるレジストパターン形成においても、フォトレジスト膜上に液滴が残り難いことによるウォーターマーク欠陥、液浸液と上層膜との界面でバブルが発生し難いことによるバブル欠陥等の欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
【0079】
[2]フォトレジストパターン形成方法: 次に、本発明のフォトレジストパターン形成方法の一実施形態について説明する。本発明のフォトレジストパターン形成方法は、基板上にフォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト膜を形成する工程(工程(1))と、上記フォトレジスト膜に、上述した上層膜形成組成物を塗布して上層膜を形成する工程(工程(2))と、この上層膜とレンズとの間に液浸媒体を配置し、上記液浸媒体と所定のパターンを有するマスクとを介して上記フォトレジスト膜及び上記上層膜に露光光を照射し、次いで現像することによってレジストパターンを得る工程(工程(3))と、を備えるものである。
【0080】
このような工程を備えることにより、本発明のフォトレジストパターン形成方法は、露光波長、特に248nm(KrF)及び193nm(ArF)に対する十分な透過性を有し、フォトレジスト膜と殆どインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト膜上に形成され、液浸露光時に、水などの媒体に極めて溶出し難く安定な被膜を維持し、高解像度のレジストパターンを形成可能でありつつ、十分に高い後退接触角を有する上層膜、即ち、通常のスキャンスピード(例えば、500mm/s)においてウォーターマーク欠陥やパターン不良欠陥の発生を効果的に抑制し、スキャンスピードが高速(例えば、700mm/s)であっても上記欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
【0081】
(工程(1)) 工程(1)は、基板上にフォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト膜を形成する工程である。上記基板としては、通常、シリコンウェハ、アルミニウムで被覆したシリコンウェハ等が用いられる。フォトレジスト膜の特性を最大限に引き出すため、予め、基板の表面に有機系ないし無機系の反射防止膜を形成しておくことも好ましい形態の一つである(例えば、特公平6−12452号公報等を参照)。
【0082】
フォトレジスト膜を形成する物質の種類は、特に制限されるものではなく、従来、フォトレジスト膜を形成するために用いられていた物質の中から、レジストの使用目的に応じて適宜選択して使用すればよい。但し、酸発生剤を含有する化学増幅型のレジスト材料、特に、ポジ型レジスト材料を用いることが好ましい。化学増幅型のポジ型レジスト材料としては、例えば、酸解離性基修飾アルカリ可溶性樹脂と、感放射線性酸発生剤とを必須成分として含有する感放射線性の樹脂組成物等を挙げることができる。このような樹脂組成物は、放射線照射(露光)に
より酸発生剤から酸が発生し、その発生した酸の作用によって、樹脂の酸性基(例えば、カルボキシル基)を保護していた酸解離性基が解離して、酸性基が露出する。なお、酸性基が露出することにより、レジストの露光部のアルカリ溶解性が高くなり、その露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のレジストパターンを形成することができる。
【0083】
上記樹脂としては、既に上述した重合体(X)と同様のものを好適に用いることができる。
【0084】
上記酸発生剤としては、既に上述した酸発生剤(Y)と同様のものを好適に用いることができる。
【0085】
フォトレジスト膜は、フォトレジスト膜を形成するための樹脂成分に溶剤を加えて、その全固形分濃度を0.2〜20質量%に調整した溶液を得、得られた溶液を、孔径30nm程度のフィルターでろ過することにより塗工液を調製し、この塗工液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の従来公知の塗布方法を用いて基板上に塗布することによって形成することができる。このフォトレジスト膜は、溶媒を揮発させるために予備焼成(以下「PB」と記す場合がある)を行ってもよい。なお、フォトレジスト膜の形成に際しては、塗工液は自ら調製してもよいし、市販のレジスト溶液を塗工液として使用してもよい。
【0086】
(工程(2)) 工程(2)は、フォトレジスト膜に、既に上述した上層膜形成組成物を塗布して上層膜を形成する工程である。この工程は、工程(1)で形成されたフォトレジスト膜の表面上に、上述した上層膜形成組成物を塗布し、好ましくは再度焼成することにより上層膜を形成する工程である。上層膜を形成することによって、液浸露光の際に液浸液がフォトレジスト膜と直接接触することが防止され、液浸液の浸透によってフォトレジスト膜のリソグラフィ性能が低下したり、フォトレジスト膜から溶出する成分により投影露光装置のレンズが汚染されたりする事態を効果的に防止することが可能となる。
【0087】
上層膜の厚さは、λ/4m(但し、λ:放射線の波長、m:保護膜の屈折率)の奇数倍にできる限り近づけることが好ましい。フォトレジスト膜の上側界面における反射抑制効果が大きくなるためである。
【0088】
(工程(3)) 工程(3)は、上記上層膜とレンズとの間に液浸媒体を配置し、この液浸媒体と所定のパターンを有するマスクとを介して上記フォトレジスト膜及び上記上層膜に露光光を照射し、次いで現像することによってレジストパターンを得る工程である。
【0089】
上記液浸媒体としては、通常、空気より屈折率の高い液体を使用する。具体的には、水を用いることが好ましく、純水を用いることが更に好ましい。なお、必要に応じて液浸液のpHを調整してもよい。この液浸媒体を介在させた状態で(即ち、露光装置のレンズとフォトレジスト膜との間に液浸媒体を満たした状態で)、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射し、フォトレジスト膜を露光させる。
【0090】
液浸露光の際に使用することができる放射線は、使用されるフォトレジスト膜や上層膜の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、可視光線;g線、i線等の紫外線;エキシマレーザ等の遠紫外線;シンクロトロン放射線等のX線;電子線等の荷電粒子線等の各種放射線を用いることができる。なかでも、ArFエキシマレーザ(波長193nm)またはKrFエキシマレーザ(波長248nm)を用いることが好ましい。また、放射線量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成、添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0091】
フォトレジスト膜の解像度、パターン形状、及び現像性等を向上させるために、露光後に焼成(PEB)を行うことが好ましい。その焼成温度は、使用される感放射線性樹脂組成物の種類等によって適宜調節されるが、通常、30〜200℃、好ましくは50〜150℃である。
【0092】
露光後またはPEB後に現像を行い、必要に応じて洗浄すれば、所望のフォトレジストパターンを形成することができる。上層膜は、本発明の一実施形態である上層膜形成組成物によって形成されている。従って、この上層膜は、別途の剥離工程によって除去する必要はなく、現像中または現像後の洗浄中に容易に除去することができる。なお、現像に際しては、通常、アルカリ性の現像液を使用する。
【0093】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノナン等のアルカリ性化合物を少なくとも一種溶解したアルカリ性水溶液を使用することが好ましい。なかでも、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類の水溶液を好適に用いることができる。
【0094】
現像液には、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類をはじめとする水溶性有機溶媒や、界面活性剤を適量添加することもできる。なお、上記のアルカリ性水溶液を用いて現像した場合は、通常、現像後に水洗する。なお、現像、または必要に応じた水洗後に適宜乾燥すれば、目的とするフォトレジストパターンを形成することができる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0096】
上述した重合体(A)及び重合体(B)及び重合体(C)として、放射線照射時の水に安定な膜を形成でき、レジストパターン形成後の現像液に溶解する重合体(A−1)及び(B−1)及び(C−1)を以下に示す方法により合成した。また、上記重合体(A−1)と比較するため、重合体(A’)も合成した。
【0097】
[分子量(Mw、Mn)測定方法]: 重合体(A−1)、(A’)、(A−2)、(B−1)及び(C−1)のMw及びMnは、東ソー社製の高速GPC装置(型式「HLC−8120」)に東ソー社製のGPCカラム(商品名「G2000HXL」;2本、「G3000HXL」;1本、「G4000HXL」;1本)を用い、流量1.0ml/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
【0098】
(合成例1) 開始剤(2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル))1.06gをメチルエチルケトン1.06gに溶解させた単量体溶液を準備した。一般式(1−1)で表される繰り返し単位を得るために用いられる単量体としてメタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル8.16g、と一般式(2)で表される繰り返し単位を得るするために用いられる単量体としてメタクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)エステル7.77g、と一般式(3)で表される繰り返し単位を得るために用いられる単量体としてメタクリル酸ジシクロペンチル(下記式(M−3)で表される化合物)4.07g、とメチルエチルケトン18.94gを、温度計及び滴下漏斗を備えた100mlの三つ口フラスコに投入し、30分間窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた開始剤溶液を5分間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応を行った。30℃以下に冷却して、共重合液を得た。
【0099】
得られた上記共重合液を30gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール30gとn−ヘキサン150gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液50.3gを回収した。回収した上層液は、4−メチル−2−ペンタノールに置換して樹脂溶液とした。なお、上記4−メチル−2−ペンタノールに置換した後の試料(樹脂溶液)の固形分濃度は、上記樹脂溶液0.3gをアルミ皿に計量し、ホットプレート上で140℃×1時間加熱した後、上記樹脂溶液の加熱前の質量と残渣(加熱後)の質量により算出した。この固形分濃度は、上層膜形成組成物溶液の調製と収率計算に利用した。 得られた樹脂溶液に含有されている共重合体の、Mwは9,760、Mw/Mnは1.5であり、収率は80%であった。タクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル、メタクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)エステル、メタクリル酸ジシクロペンチルに由来する各繰り返し単位の含有率が30:50:20(モル%)の共重合体(脂溶性樹脂)であった。この共重合体を重合体(A−1)とする。
【0100】
(合成例2)前述の一般式(1−1)で表される繰り返し単位を得るするために用いられる単量体としてメタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル37.3gをメチルエチルケトン4.5gに予め溶解させた単量体溶液(1)を準備した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの三口フラスコに前述の一般式(2)で表される繰り返し単位を得るために用いられる単量体としてメタクリル酸(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)エステル69.6gと2,2−アゾビス(2−メチルイソプロピオン酸メチル)4.5gとメチルエチルケトン95.5gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージ後、フラスコ内をマグネティックスターラーで撹拌しながら75℃になるように加熱した。滴下漏斗を使用し、予め準備しておいた単量体溶液(1)を5分かけて滴下し6時間熟成させた後、30℃以下になるまで冷却することにより共重合液を得た。
【0101】
得られた共重合液を150gに濃縮し分液漏斗に移し、メタノール150g、及びn−ヘキサン750gを分液漏斗に投入して分離精製を行い、下層液を回収した。回収した下層液の溶剤を、4−メチル−2−ペンタノールに置換した。4−メチル−2−ペンタノールに置換した後の試料の固形分濃度は、その試料(樹脂溶液)0.3gをアルミ皿に載せ、140℃に加熱したホットプレート上で1時間加熱した後の残渣の質量から算出した。なお、算出した固形分濃度は、その後の樹脂の調製と収率計算に利用した。得られた樹脂溶液に含有されている共重合体のMwは7500、及びMw/Mnは1.50であり、収率は50%であった。メタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル、メタクリル酸(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)エステルに由来する各繰り返し単位の含有率が60:40(モル%)の共重合体(脂溶性樹脂)であった。この共重合体を重合体(A’)とする。
【0102】
合成例1と同様の方法を用いて、重合体(A−2)を表1に示した組成にて合成した。
【0103】
【表1】

【0104】
(合成例3) 前述の一般式(1−1)で表される繰り返し単位を得るするために用いられる単量体メタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル46.95g(85モル%)、と開始剤(2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル))6.91gをイソプロパノール100gに溶解させた単量体溶液を準備した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコにイソプロパノール50gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱し、滴下漏斗を用い、予め
準備しておいた単量体溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応を続け、前述の一般式(4)で表される繰り返し単位を得るために用いられる単量体ビニルスルホン酸3.05g(15モル%)のイソプロパノール溶液10gを30分かけて滴下して、更に1時間反応を続けた。30℃以下になるまで冷却することにより共重合液を得た。
【0105】
上記共重合液を150gになるまで濃縮し、その濃縮液にメタノール50gとn−ヘキサン600gを分液漏斗に投入し、分離精製を実施した。分離後下層を回収した。下層液をイソプロパノールで希釈して100gとして、再度分液漏斗に移し、メタノール50gとn−ヘキサン600gを分液漏斗に投入して、再度分離精製を実施し、分離後下層を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、全量を250gに調整し、水250gと分液精製を実施し、上層を回収、再度4−メチル−2−ペンタノールに置換した。溶剤置換後の試料の固形分濃度は、その樹脂溶液0.3gをアルミ皿にのせ、140℃に加熱したホットプレート上で1時間加熱した後の残渣の質量から算出し、その後の保護膜形成用組成物溶液の調製と収率計算に利用した。得られた共重合体のMw、Mw/Mn(分子量の分散度)、収率(質量%)、はそれぞれ、9,760、1.51、65%であり、メタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル、ビニルスルホン酸に由来する各繰り返し単位の含有率が95:5(モル%)の共重合体(脂溶性樹脂)であった。この重合体を重合体(B−1)とする。
【0106】
(合成例4) 前述の一般式(5−1)で表される繰り返し単位を得るために用いられる単量体[ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル]46.95g(85モル%)、及び開始剤[2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)]6.91gをイソプロパノール100gに溶解させた単量体溶液を準備した。 一方、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコにイソプロパノール50gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱した。 そして、滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応を行い、前述の一般式(4)で表される繰り返し単位を得るために用いられる単量体[ビニルスルホン酸]3.05g(15モル%)のイソプロパノール溶液10gを30分かけて滴下した。その後、更に1時間反応を行った後、30℃以下に冷却して、共重合液を得た。
【0107】
得られた前記共重合液を150gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール50gとn−ヘキサン600gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。この下層液をイソプロパノールで希釈して100gとし、再度、分液漏斗に移した。その後、メタノール50gとn−ヘキサン600gを前記分液漏斗に投入して、分離精製を実施し、分離後、下層液を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、全量を250gに調整した。調整後、水250gを加えて分離精製を実施し、分離後、上層液を回収した。回収した上層液は、4−メチル−2−ペンタノールに置換して樹脂溶液とした。溶剤置換後の試料の固形分濃度は、その樹脂溶液0.3gをアルミ皿にのせ、140℃に加熱したホットプレート上で1時間加熱した後の残渣の質量から算出し、その後の保護膜形成用組成物溶液の調製と収率計算に利用した。得られた樹脂溶液に含有されている共重合体の、Mwは11060、Mw/Mnは1.55であり、収率は75%であった。また、この共重合体に含有される、ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチルに由来する繰り返し単位、及びビニルスルホン酸に由来する繰り返し単位の含有率は、95:5(モル%)であった。この共重合体を重合体(C−1)とする。
【0108】
感放射線性樹脂組成物(D)の調製フォトレジスト膜を形成するための感放射線性樹脂組成物を以下の方法により調製した。感放射線性樹脂組成物用重合体(D−1)及び(D−2)の合成例
【0109】
(合成例5)下記化合物(M−1)53.93g(50モル%)、化合物(M−2)35.38g(40モル%)、化合物(M−5)10.69g(10モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した500mlの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(74g、収率74%)。この重合体はMwが6900、Mw/Mn=1.70、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、化合物(M−2)、化合物(M−3)に由来する各繰り返し単位の含有率が53.0:37.2:9.8(モル%)の共重合体であった。この重合体をアクリル系重合体(A−1)とする。尚、この重合体中の各単量体由来の低分子量成分の含有量は、この重合体100質量%に対して、0.03質量%であった。これを重合体(D−1)とする。
【0110】
【化8】

【0111】
(合成例6)上記化合物(M−1)47.54g(46モル%)、化合物(M−2)12.53g(15モル%)、化合物(M−3)39.93g(39モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)4.08gを投入した単量体溶液を準備した。一方、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを用意し、30分窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内の内容物を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(73g、収率73%)。この重合体はMwが5700、Mw/Mnが1.7、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、化合物(M−2)、化合物(M−3)に由来する各繰り返し単位の含有率が51.4:14.6:34.0(モル%)の共重合体であった。これを重合体(D−2)とする。
【0112】
【化9】

【0113】
酸発生剤(E)E−1:トリフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネートE−2:1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート酸拡散制御剤(F)F−1:R−(+)−(tert−ブトキシカルボニル)−2−ピペリジンメタノール溶剤(G)G−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートG−2:シクロヘキサノン
【0114】
本実施例で用いた感放射線性樹脂組成物(D)を表1に示した組成にて調製した。
【0115】
【表2】

【0116】
[上層膜形成組成物の調製] 次に、上記重合体(A−1)、(A−2)、(A‘)、(B−1)、及び(C−1)、並びに以下に示す溶剤(H)を表2に示した組成にて混合し、その固形分濃度が1.4質量%となるように調整した。その後、孔径200nmのフィルターでろ過して上層膜形成組成物を調製した。
【0117】
[溶剤(S)]: (S−1):4−メチル−2−ペンタノール (S−2):ジイソアミルエーテル
【0118】
(実施例1) 重合体(A)として上記重合体(A−1)30部、重合体(B)として上記重合体(B−1)70部、溶剤(炭素数4〜10のアルコール)として4−メチル−2−ペンタノール(表3中「溶剤(S−1)」と示す)5634部、溶剤(炭素数4〜10のアルキル鎖を有するアルキルエーテル)としてジイソアミルエーテル(表3中「溶剤(S−2)」と示す)1409部を混合し、2時間撹拌した後、孔径200nmのフィルターでろ過することにより、固形分濃度1.4質量%の上層膜形成組成物(実施例1)を調製した。この上層膜形成組成物について以下に示す各種評価を行った。
【0119】
[評価方法]:(1)上層膜除去性の評価方法(除去性): 8インチシリコンウエハ上に、商品名「CLEAN TRACK ACT8」(東京エレクトロン社製)を使用して、上層膜形成組成物をスピンコートし、90℃、60秒ベークを行って、膜厚90nmの塗膜(上層膜)を形成した。なお、塗膜の厚み(膜厚)は、商品名「ラムダエースVM90」(大日本スクリーン社製)を使用して測定した。商品名「CLEAN TRACK ACT8」を使用して60秒間パドル現像(現像液:2.38%TMAH水溶液)を行い、振り切りによりスピンドライした後、ウェハ表面を観察した。ウェハ表面に残渣がなく現像されていれば「○」、ウェハ表面に残渣が観察されれば「×」と評価した。評価結果を表4に示す。なお、表4中、「除去性」は本評価を示す。
【0120】
(2)後退接触角の測定方法: まず、8インチシリコンウエハ上に、上層膜形成組成物をスピンコートし、ホットプレート上で90℃、60秒PBを行い、膜厚30nmの塗膜を形成した。その後、商品名「DSA−10」(KRUS社製)を使用して、速やかに、室温:23℃、湿度:45%、常圧の環境下で、次の手順により後退接触角を測定した。
【0121】
商品名「DSA−10」(KRUS社製)のウェハステージ位置を調整し、この調整したステージ上に上記ウェハをセットする。次に、針に水を注入し、上記セットしたウェハ上に水滴を形成可能な初期位置に上記針の位置を微調整する。その後、この針から水を排出させて上記ウェハ上に25μLの水滴を形成し、一旦、この水滴から針を引き抜き、再び上記初期位置に針を引き下げて水滴内に配置する。続いて、10μL/minの速度で90秒間、針によって水滴を吸引すると同時に接触角を毎秒1回測定する(合計90回)。このうち、接触角の測定値が安定した時点から20秒間の接触角についての平均値を算出して後退接触角(°)とした。評価結果を表4に示す。なお、表4中、「後退接触角」は本評価を示す。
【0122】
(3)前進接触角の測定方法: まず、8インチシリコンウエハ上に、感放射線性樹脂組成物(α)をスピンコートし、ホットプレート上で90℃、60秒PBを行い、膜厚120nmの塗膜(フォトレジスト膜)を形成した。その後、商品名「DSA−10」(KRUS社製)を使用して、速やかに、室温:23℃、湿度:45%、常圧の環境下で、次の手順により前進接触角を測定した。
【0123】
商品名「DSA−10」(KRUS社製)のウェハステージ位置を調整し、この調整したステージ上に上記ウェハをセットする。次に、針に水を注入し、上記セットしたウェハ上に水滴を形成可能な初期位置に上記針の位置を微調整する。その後、この針から水を排出させて上記ウェハ上に15μLの水滴を形成し、一旦、この水滴から針を引き抜き、再び上記初期位置に針を引き下げて水滴内に配置する。続いて、10μL/minの速度で90秒間、針によって水滴を吐出すると同時に接触角を毎秒1回測定する(合計90回)。このうち、接触角の測定値が安定した時点から20秒間の接触角についての平均値を算出して前進接触角(°)とした。評価結果を表4に示す。なお、表4中、「前進接触角」は本評価を示す。
【0124】
(4)インターミキシングの評価方法(インターミキシング): フォトレジスト膜とのインターミキシングが防止されることを評価するため本評価を行った。まず、商品名「CLEAN TRACK ACT8」を使用して予めHMDS処理(100℃、60秒)を行った8インチシリコンウエハ上に、感放射線性樹脂組成物(α)をスピンコートした。ホットプレート上で90℃、60秒PBを行い、膜厚120nmの塗膜(フォトレジスト膜)を形成した。形成した塗膜上に、上層膜形成組成物をスピンコートし、PB(90℃、60秒)を行うことにより膜厚30nmの塗膜を形成した。商品名「CLEAN TRACK ACT8」のリンスノズルから、ウェハ上に超純水を60秒間吐出させ、4000rpmで15秒間振り切りのスピンドライを行った。次いで、商品名「CLEAN TRACK ACT8」を使用し、LDノズルにてパドル現像(現像液:2.38%TMAH水溶液)を60秒間行って、上層膜を除去した。なお、上記の現像によって上層膜は除去されるが、フォトレジスト膜は未露光であるためにそのまま残存する。現像の前後に、商品名「ラムダエースVM90」(大日本スクリーン社製)を使用してフォトレジスト膜の膜厚測定を行い、膜厚の変化率が5%以内である場合は、フォトレジスト膜と上層膜間でのインターミキシングがないと判断して「○」、膜厚の変化率が5%を超えた場合は「×」と評価した。評価結果を表4に示す。なお、表4中、「インターミキシング」は本評価を示す。
【0125】
(5)溶出量の測定(溶出量): 図2、図3に示すように、予め「CLEAN TRACK ACT8」(東京エレクトロン社製)を用いて、処理条件100℃、60秒でHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理層4を行った8インチシリコンウエハ3を用意した。この8インチシリコンウエハ3のHMDS処理層側の面に、中央部が直径11.3cmの円形状にくり抜かれたシリコンゴムシート(クレハエラストマー社製、厚み;1.0mm、形状;1辺30cmの正方形)5を載せた。このとき、8インチシリコンウエハ3の中心部にシリコンゴムシート5のくり抜かれた中央部(くり抜き部6)が位置するようにした。次いで、シリコンゴムシート5のくり抜き部6に、10mLホールピペットを用いて10mlの超純水7を満たした。
【0126】
一方、予め、下層反射防止膜8、レジスト被膜11及び上層膜9を形成した、上記8インチシリコンウエハ3とは別の8インチシリコンウエハ10を用意し、この8インチシリコンウエハ10を、上記上層膜9が上記シリコンゴムシート5側に位置するように、即ち、上層膜9と上記超純水7とを接触しつつ、超純水7が漏れないように載せた。
【0127】
なお、上記別の8インチシリコンウエハ10上の下層反射防止膜8、レジスト被膜11及び上層膜9は、次のように形成した。まず、下層反射防止膜用組成物(「ARC29A」、ブルワー・サイエンス社製)を上記「CLEAN TRACK ACT8」を用いて膜厚77nmの下層反射防止膜を形成するように塗布した。次いで、上記感放射線性樹脂組成物(α)を、上記「CLEAN TRACK ACT8」を用いて上記下層反射防止膜上にスピンコートし、条件115℃、60秒でベークすることにより膜厚205nmのレジスト被膜11を形成した。その後、レジスト被膜11上に、上記上層膜形成組成物を塗布して上層膜9を形成した。
【0128】
上記上層膜9が上記シリコンゴムシート5側に位置するように載せた後、その状態のまま10秒間保った。その後、上記別の8インチシリコンウエハ10を取り除き、上層膜9と接触していた超純水7をガラス注射器にて回収した。この超純水7を分析用サンプルとした。なお、シリコンゴムシート5のくり抜き部6に満たした超純水7の回収率は95%以上であった。
【0129】
続いて、得られた分析用サンプル(超純水)中の光酸発生剤のアニオン部のピーク強度を、LC−MS(液体クロマトグラフ質量分析計)(LC部:AGILENT社製 「SERIES1100」、MS部:Perseptive Biosystems,Inc.社製 「Mariner」)を用いて下記の測定条件により測定した。その際、感放射線性樹脂組成物(α)に用いた光酸発生剤について、1ppb、10ppb、及び100ppb水溶液の各ピーク強度を、分析用サンプルの測定条件と同様の条件で測定して検量線を作成した。この検量線を用いて、水に対する光酸発生剤の(アニオン部の)溶出量を算出した。
【0130】
また、同様にして、酸拡散制御剤について、1ppb、10ppb、及び100ppb水溶液の各ピーク強度を分析用サンプルの測定条件と同様の条件で測定して検量線を作成した。この検量線を用いて、水に対する酸拡散制御剤の溶出量を算出した。溶出量の評価は、上記算出された光酸発生剤のアニオン部の溶出量と上記酸拡散制御剤の溶出量の和が、5.0×10−12mol/cm以上であった場合は「×」、5.0×10−12mol/cm以下であった場合は「○」とした。評価結果を表4に示す。なお、表4中、「溶出」は本評価を示す。
【0131】
(測定条件) 使用カラム;「CAPCELL PAK MG」、資生堂社製、1本、 流量;0.2ml/分、 流出溶剤:水/メタノール(3/7)に0.1質量%のギ酸を添加したもの、 測定温度;35℃
【0132】
(6)ブロッブ欠陥の評価方法: 予め「CLEAN TRACK ACT8」(東京エレクトロン社製)を用いて、処理条件100℃、60秒でHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を行った8インチシリコンウエハを用意した。この8インチシリコンウエハ上に、上記感放射線性樹脂組成物(α)をスピンコートし、ホットプレート上で90℃、60秒PBを行い、膜厚120nmの塗膜を形成した。この塗膜上に、上記上層膜形成組成物をスピンコートし、PB(90℃、60秒)を行って膜厚30nmの塗膜を形成した。その後、パターンが形成されていない擦りガラスを介して露光を行った。この8インチシリコンウエハをブロッブ欠陥(Blob欠陥)の評価に用いた。
【0133】
まず、上記8インチシリコンウエハの上層膜上に「CLEAN TRACK ACT8」のリンスノズルから超純水を60秒間吐出させ、4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライを行った。次に、上記「CLEAN TRACK ACT8」のLDノズルによってパドル現像を60秒間行い、上記上層膜を除去した。なお、このパドル現像では現像液として2.38%TMAH水溶液を使用した。現像後、上層膜の溶け残りの程度を、「KLA2351」(KLAテンコール社製)で測定して、ブロッブ欠陥の測定とした。ブロッブ欠陥の評価は、検出された現像剥離欠陥(ブロッブ欠陥)が200個以下の場合は「○」、200個を超えた場合は「×」とした。評価結果を表4に示す。なお、表4中、「BloB欠陥」は本評価を示す。
【0134】
(7)パターンニング評価: 高解像度のレジストパターンが形成されることを評価するため本評価を行った。まず、8インチシリコンウエハ上に、商品名「CLEAN TRACK ACT8」を使用して、下層反射防止膜用組成物(商品名「ARC29A」、ブルワー・サイエンス社製)をスピンコートし、PB(205℃、60秒)を行うことにより膜厚77nmの塗膜(下層反射防止膜)を形成した。形成した下層反射防止膜上に、感放射線性樹脂組成物(α)をスピンコートし、PB(90℃、60秒)を行うことにより膜厚120nmの塗膜(フォトレジスト膜)を形成した。
【0135】
形成したフォトレジスト膜上に、上層膜形成組成物をスピンコートし、PB(90℃、60秒)を行うことにより膜厚30nmの塗膜(上層膜)を形成した。次いで、ArF投影露光装置(型番「S306C」、ニコン社製)を使用し、NA:0.78、シグマ:0.85、2/3Annの光学条件にて露光を行い、商品名「CLEAN TRACK ACT8」のリンスノズルから、ウェハ上に超純水を60秒間吐出させ、4000rpmで15秒間振り切りのスピンドライを行った。その後、商品名「CLEAN TRACK ACT8」のホットプレートを使用してPEB(115℃、60秒)を行った後、LDノズルにてパドル現像(現像液:2.38%TMAH水溶液)を30秒間行った。超純水にてリンスした後、4000rpmで15秒間振り切ることによってスピンドライした。
【0136】
形成されたレジストパターンについて、線幅90nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とした。なお、測定には走査型電子顕微鏡(商品名「S−9380」、日立計測器社製)を使用した。また、線幅90nmライン・アンド・スペースパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(型番「S−4200」、日立計測器社製)にて観察した。図1は、ライン・アンド・スペースパターンの形状を模式的に示す断面図である。基板1上に形成されたパターン2の膜の中間での線幅Lbと、膜の上部での線幅Laを測定し、0.9≦(La−Lb)/Lb≦1.1であった場合を「○」、(La−Lb)/Lb<0.9、または(La−Lb)/Lb>1.1であった場合を「×」と評価した。評価結果を表4に示す。なお、表4中、「パターンニング」は本評価を示す。
【0137】
(8)欠陥性能(ウォーターマーク欠陥及びバブル欠陥): 基板として、表面に膜厚77nmの下層反射防止膜(「ARC29A」、ブルワー・サイエンス社製)を形成した12インチシリコンウエハを用いた。なお、この下層反射防止膜の形成には、「CLEAN TRACK ACT12」(東京エレクトロン社製)を用いた。
【0138】
前記基板上に、感放射線性樹脂組成物(α)を前記CLEAN TRACK ACT12にて、スピンコートした後にPB(90℃、60秒)膜厚120nmのフォトレジスト膜を得た。その後、フォトレジスト膜上に上層膜形成組成物溶液をスピンコートした後、PB(90℃、60秒)により膜厚30nmの塗膜(上層膜)を得た。次に、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(「ASML AT1250i」、ASML社製)にてNA=0.85、σ/σ=0.96/0.76、Annularの条件で、マスクパターンを介して露光を行った。この際、レジスト(フォトレジスト膜)上面と液浸露光機レンズとの間には液浸溶媒として純水を配置した。その後、PB(115℃、60秒)で焼成した後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、23℃で60秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅100nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。なお、この測長には走査型電子顕微鏡(「S−9380」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
【0139】
その後、線幅100nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)上の欠陥性能を、KLA−Tencor社製の「KLA2351」を用いて測定した。具体的には、「KLA2351」にて測定された欠陥を、走査型電子顕微鏡(「S−9380」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察し、ArFエキシマレーザー液浸露光由来と予想されるウォーターマーク欠陥(water−mark欠陥)とバブル欠陥とを区別した。そして、それらの数を測定して欠陥性能とした。その結果を表3に示す。ウォーターマーク欠陥の評価は、検出されたウォーターマーク欠陥が50個未満の場合は「○」、50個以上100個未満の場合は「△」、100個を超えた場合は「×」とした。評価結果を表3に示す。なお、表3中、「ウォーターマーク欠陥」は本評価を示す。バブル欠陥の評価は、検出されたバブル欠陥が50個以下の場合は「○」、50個以上100個未満の場合は「△」、100個を超えた場合は「×」とした。評価結果を表4に示す。なお、表4中、
「バブル欠陥」は本評価を示す。
【0140】
本実施例の上層膜形成組成物により形成した上層膜は、除去性が「○」であり、後退接触角が75.0°であり、前進接触角が92.0°であり、インターミキシングが「○」であり、溶出が「○」であり、BloB欠陥が「○」であり、パターンニングが「○」であり、ウォーターマーク欠陥が「○」であり、バブル欠陥が「○」であった。
【0141】
(実施例2〜7、比較例1〜3) 表3に示す配合とした以外は、実施例1と同様にして上層膜形成組成物溶液を調製した後、上層膜を形成した。この上層膜について各種評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
表4から明らかなように、実施例1〜7の上層膜組成物は、ウォーターマーク欠陥およびバブル欠陥の発生を抑制できる液浸上層膜を形成可能であった。これは、上層膜の水に対する後退接触角と前進接触角のバランスに優れているためであると考えられる。特に、重合体(A)中の繰り返し単位(3)の含有量および全重合体成分中における重合体(A)の含有割合が好ましい範囲内である実施例1〜5の上層膜が高度にウォーターマーク欠陥およびバブル欠陥を抑制できており、好ましいものであった。また、実施例1〜7の上層膜組成物は、インターミキシング、溶出、パターニングおよいBlob欠陥の評価においても問題ないことが確認され、液浸上層膜として実用的な性能を有していることが確認できた。これに対して、本発明の重合体(A)を含まない比較例1〜3の上層膜組成物についてはウォーターマーク欠陥もしくはバブル欠陥が「×」となってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の上層膜形成組成物は、上記重合体(A)を含有するものであるため、液浸露光時にフォトレジスト膜を保護し、水などの媒体に溶出することなく安定な被膜を維持し、ウォーターマーク欠陥やバブル欠陥やパターン不良欠陥等の欠陥の発生を効果的に抑制し、高解像度のレジストパターンを形成可能であり、かつ、十分に高い後退接触角を有する上層膜を形成することができる。そのため、今後、高速度のスキャンスピードによるレジストパターン形成においても、ウォーターマーク欠陥やバブル欠陥等の欠陥の発生を効果的に抑制することができる。従って、本発明の上層膜形成組成物は、液浸露光に好適に使用可能な上層膜を形成することができ、今後、更に微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造工程において極めて好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1−1)で表される繰り返し単位および(1−2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも一種、下記一般式(2)で表される繰り返し単位および下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含有する重合体(A)と溶剤(S)とを含む液浸上層膜形成用組成物。
【化1】

(一般式(1−1)及び(1−2)中、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R及びRは互いに独立に単結合又は炭素数1〜6の直鎖状或いは分岐状の2価の炭化水素基、炭素数4〜12の脂環式の2価の炭化水素基を示し、Rは少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、または少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3〜20の脂環式の1価の炭化水素基を示す。)
【化2】

(一般式(2)中、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、Rは少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、または少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数3〜20の脂環式の1価の炭化水素基を示す。)
【化3】

(一般式(3)中、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、Rは炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状の1価の炭化水素基、または炭素数3〜20の脂環式の1価の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
上記一般式(3)で表される繰り返し単位の割合が、重合体(A)の全繰り返し単位に対して、1〜60モル%である請求項1に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記一般式(3)において、Rが炭素数3〜20の脂環式の1価の炭化水素基である請求項1または2に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【請求項4】
上記一般式(1−1)で表される繰り返し単位および(1−2)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも一種と、下記一般式(4)で表される繰り返し単位と、を含有する重合体(B)をさらに含む請求項1〜3いずれかに記載の液浸上層膜形成用組成物。
【化4】

(一般式(4)において、Rは、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示し、R10は、単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基を示す。)
【請求項5】
下記一般式(5−1)で表される繰り返し単位、下記一般式(5−2)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(5−3)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種と、上記一般式(4)で表される繰り返し単位と、を含有する重合体(C)をさらに含む請求項1〜4いずれかに記載の液浸上層膜形成用組成物。
【化5】

(一般式(5−1)〜(5−3)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、R12及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の2価の炭化水素基、又は炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基を示す。)
【請求項6】
前記重合体(A)が、前記一般式(1−1)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(2)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(3)で表される繰り返し単位を含有するものであり、前記重合体(B)が、前記一般式(1−1)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(4)で表される繰り返し単位を含有するものであり、前記重合体(C)が、前記一般式(4)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(5−1)で表される繰り返し単位を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の液浸上層膜形成用組成物。
【請求項7】
前記重合体(A)の含有割合が、重合体全量を100質量%とした場合に、20〜60質量%である請求項6に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の液浸上層膜形成用組成物を用いてなることを特徴とする液浸上層膜。
【請求項9】
基板上にフォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト膜を形成する工程(1)と、 請求項1〜7のいずれか一項に記載の液浸上層膜形成用組成物を前記フォトレジスト膜上に塗布して前記フォトレジスト膜上に上層膜を形成する工程(2)と、 前記上層膜上に液浸媒体を配し、所定のパターンを有するマスクおよび液浸液体を通過させた露光光を、前記上層膜及び前記フォトレジスト膜に照射することによって、前記上層膜及び前記フォトレジスト膜を露光する工程(3)と、 露光された前記上層膜及び前記フォトレジスト膜を現像液で現像する工程(4)と、を備えるレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−209647(P2011−209647A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79702(P2010−79702)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】